説明

ヒータユニット及び車両用シート

【課題】温度リップルを小さくして快適に暖房をすることが可能なヒータユニットを提供すること。
【解決手段】 基材と、該基材上に配設されたヒータ素子と、該ヒータ素子からの温度を検知して該ヒータ素子を制御する温度検知素子と、該温度検知素子を保護するためのカバー材とを有し、該温度検知素子が上記基材の所定の位置に設置されるとともに、上記温度検知素子を含む範囲を覆うように上記カバー材が配置され、上記温度検知素子が上記カバー材と上記基材によって挟持されており、上記カバー材には、上記温度検知素子が位置する箇所に貫通孔が形成されているヒータユニット。上記貫通孔が、上記温度検知素子が位置する範囲内に収まっているヒータユニット。上記基材及びカバー材が、ともに不織布であるヒータユニット。上記のヒータユニットを配置した車両用シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両用などに好適に使用可能なヒータユニットとこのヒータユニットが配置された車両用シートに係り、特に、温度リップルを小さくして快適に暖房をすることが可能なものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両用シートに装着されシートヒータとして供されるヒータユニットとしては、例えば、基材上にヒータ素子として熱融着層を備えたコード状ヒータを蛇行配線し、加熱加圧による熱融着により基材と熱融着層を接着固定した構成のもの(例えば、特許文献1、2参照)、カレンダー加工を施して表面を硬化させた不織布を基材とし、基材の硬化させた表面上にヒータ素子としてコード状ヒータを縫合したもの(例えば、特許文献3)、硬度の異なる柔軟性を有する材料を溶着させることにより、異なる表面硬さを有する基材とし、この基材の表面硬さの硬い面にヒータ素子としてコード状ヒータを配設したもの(例えば、特許文献4)などがある。また、本発明に関連する技術として、例えば、特許文献5〜8が挙げられる。
【0003】
このようなヒータユニットの温度制御、特に、温度過昇防止は、主にサーモスタットによって行われる。具体的には、サーモスタットが所定の温度に加熱されることにより、サーモスタットがOFFとなり、ヒータ素子への通電が遮断されることになる。ヒータ素子への通電が遮断されることで加熱が止まるとサーモスタットの温度も徐々に低下していき、再びサーモスタットはONとなり、ヒータ素子への通電がなされるようになる。このような動作を繰り返すことで、ヒータユニットは所定の温度に制御されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平6−25916号公報:クラベ
【特許文献2】特許第4202071号公報:クラベ
【特許文献3】特開2007−200866公報:松下電器産業
【特許文献4】特開2007−280787公報:松下電器産業
【特許文献5】国際公開WO2007/18271:クラベ
【特許文献6】特表平8−57404号公報:スカンドメック
【特許文献7】特開2003−297532公報:松下電器産業
【特許文献8】特開2010−185643公報:クラベ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなサーモスタット、或いは、サーミスタなどの温度検知素子は、ヒータ素子の熱を検知するものであるため、ヒータ素子と同様、基材上に配置されている。ここで温度検知素子は、可撓性のない塊状の物体であり、配線接続部といった強度的に脆弱な部分を有するものであるため、不織布等のカバー材によって保護されることがなされている。例えば、上記特許文献8には、ヒータ素子と接続されたケーブルが粘着テープで基材に固定されるとともに、この粘着テープを覆うように不織布からなるカバー材が貼り付けられたものが記載されている。この特許文献8において、カバー材を貼り付ける範囲を温度検知素子まで広げ、温度検知素子を基材とカバー材で挟持し、保護を行うことは既になされている。
【0006】
このように、温度検知素子が基材とカバー材で挟持したものは、別の新たな課題を発生させるものであった。即ち、温度検知素子が基材とカバー材とで覆われて保温されてしまうことになるため、所定温度に達して通電が遮断された後、温度検知素子の温度降下に時間がかかることになる。それにより、温度検知素子の温度降下よりシート表皮の温度降下が早くなってしまうことになり、シート表皮が冷めてしまっても温度検知素子がONにならず通電・加熱がされないという状態になる。このような状態であると、シート表皮には、大きな温度リップル(温度の昇降の波)が発生し、着座者の快適性が十分なものとならないことになってしまう。
【0007】
本発明はこのような従来技術の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、温度リップルを小さくして快適に暖房をすることが可能なヒータユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するべく、本発明によるヒータユニットは、基材と、該基材上に配設されたヒータ素子と、該ヒータ素子からの温度を検知して該ヒータ素子を制御する温度検知素子と、該温度検知素子を保護するためのカバー材とを有し、該温度検知素子が上記基材の所定の位置に設置されるとともに、上記温度検知素子を含む範囲を覆うように上記カバー材が配置され、上記温度検知素子が上記カバー材と上記基材によって挟持されたヒータユニットであって、上記カバー材には、上記温度検知素子が位置する箇所に貫通孔が形成されていることを特徴とするものである
また、上記貫通孔が、上記温度検知素子が位置する範囲内に収まっていることが考えられる。
また、上記基材及びカバー材が、ともに不織布であることが考えられる。
また、本発明による車両用シートは、上記のヒータユニットを配置したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によるヒータユニットによれば、カバー材に形成された貫通孔により、温度検知素子の放熱がなされることになるため、通電が遮断された後の温度検知素子の温度降下が早くなる。これにより、シート表皮の温度降下と温度検知素子の温度降下が同調することになり、温度リップルを最小限に小さくすることができ、快適に暖房をすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明による実施の形態を示す図で、ヒータユニットの構成を示す平面図である。
【図2】本発明による実施の形態を示す図で、ヒータユニットが設置されたシートを一部切り欠いて示す斜視図である。
【図3】本発明による実施の形態を示す図で、ヒータユニットの要部を拡大して示す平面図である。
【図4】本発明による他の実施の形態を示す図で、ヒータユニット要部を拡大して示す平面図である。
【図5】本発明による実施の形態と比較の形態における、温度の経時変化を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図1〜図3を参照して本発明の実施の形態を説明する。これらの実施の形態は、本発明を車両用シートに適用することを想定した例を示すものである。
【0012】
図1に示すように、本実施の形態で使用するヒータユニットは構成される。不織布等からなる基材5の上に、ヒータ素子として銅合金線やNi−Cr線等の抵抗線を有するコード状ヒータ3が所定のパターン形状で配設される。コード状ヒータ3を基材5上に固定保持する方法としては、コード状ヒータ3の外周に形成された熱融着層により接着する方法、縫製による方法など種々の方法が公知である。また、基材5におけるコード状ヒータ3を配設した側の面には接着層の形成、或いは、両面テープの貼り付けがなされている。これは、座席に取り付ける際、ヒータユニット1をシートのパットに固定するためのものである。
【0013】
また、上記コード状ヒータ3と直列になるように、温度検知素子7としてサーモスタットがリード線(図示しない)を介して接続される。この温度検知素子7は、基材5上に設置され、ヒータ素子3と直列に接続される補助ヒータ(図示しない)によって加熱され、その温度によりON−OFF動作をし、ヒータ素子3への通電を制御することになる。そして、図3に拡大して示すように、基材5における温度制御素子7の近傍には、不織布等からなるカバー材9が配置され、温度検知素子7がカバー材9と基材5によって挟持される。この際、カバー材9には、貫通孔9aが形成されており、温度検知素子7の一部が露出する形態となっている。なお、図3において、カバー材9に隠れている部分は破線にて示されている。
【0014】
上記のようにして、図1に示すようなヒータユニット1を得ることができる。尚、このヒータユニット1には、適宜、コード、コネクタ等が接続され、このコネクタを介して車両の電気系統に接続されることになる。
【0015】
そして、上記構成をなすヒータユニット1は、図2に示すような状態で、車両用のシート11内に埋め込まれて配置することができる。即ち、ヒータユニット1は、シート11の表皮カバー19とパット17との間に配置される。
【0016】
上記のようにして得られたヒータユニット1について、上記の通り図2に示すような状態で車両用のシート11内に埋め込み、ヒータユニットに通電を行って、座面中央部(図2でMと示す箇所)の温度の経時変化を測定した。測定データを図5に示す。併せて、比較の形態として、カバー材9に貫通孔9aを形成しなかったものについても、温度の経時変化を測定した。測定箇所としては、上記実施の形態と同様の箇所とした。測定データを図5に併せて示す。なお、測定時の雰囲気温度は、実施の形態及び比較の形態ともに0℃とした。
【0017】
本実施の形態によるヒータユニット1は、貫通孔9によって通電が遮断された後の温度検知素子7の放熱がなされるため、温度検知素子7の温度降下が早くなる。そのため、図5に示すように、温度リップル(温度の昇降の波)が小さく、安定した温度で加熱がされていることが確認された。一方、比較の形態によるヒータユニットは、通電がOFFになった後の温度検知素子7の温度降下が遅く、ヒータ表皮の温度降下とズレが生じてしまった。そのため、温度リップルが大きくなっており、着座者が温度差の違和感を受けることとなってしまった。
【0018】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、ヒータ素子3として、上記のコード状ヒータの他に、例えば、エッチングヒータ、カーボンヒータ、箔状ヒータ等、種々のヒータを使用することができる。
【0019】
基材5とカバー材9としては、上記の不織布の他に、例えば、織布、発泡樹脂シート、発泡ゴムシート、ゴムシート、アルミ箔、樹脂フィルム等、種々のものを使用することができる。
【0020】
温度検知素子7としては、上記のサーモスタットの他に他の態様も考えられ、例えば、サーミスタ、熱電対など、種々のものを使用することができ、複数の温度検知素子を使い分けることも考えられる。温度検知素子としてサーミスタを使用した場合、この温度検知素子からの出力によりヒータ素子の温度を制御する温度制御回路とからなるものも考えられる。これら温度検知素子のみでなく、温度制御回路も基材上に配置され、基材とカバー材により挟持されることがある。
【0021】
また、基材に形成された貫通孔9aについては、図3に示した形状の他、例えば図4に示すように、温度検知素子7が位置しない箇所にまで連続している形状も考えられる。しかし、温度検知素子7を外力等から保護するという観点から、図3に示すように、貫通孔9aが温度検知素子7の位置する範囲内に収まっていることが好ましい。この「範囲内に収まっている」という状態には、貫通孔9aと温度検知素子7が同寸法であるものは含まれない。なお、図3及び図4において、貫通孔9の形状は略四角形となっているが、勿論、円形や他の形状であって構わない。なお、図3及び図4において、カバー材9に隠れている部分は破線にて示されている。
【0022】
なお、ヒータユニットは、座席の座面側に配置しても良いし、背面側に配置しても良いし、両方に配置しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0023】
以上詳述したように本発明によれば、温度リップルを小さくして快適に暖房をすることが可能なヒータユニットを得ることができる。このヒータユニットは、例えば、自動車,自動二輪車,鉄道車両等の車両用シート、船舶や航空機などのシート、遊園地の観覧車のシート、各種競技場の観覧用シート、劇場や映画館等の鑑賞用シート、家庭内やオフィスで使用されるソファー、理髪店のシート、各種医療機関で使用されている医療用シートなど、種々の用途で好適に使用可能である。
【符号の説明】
【0024】
1 ヒータユニット
3 コード状ヒータ
5 基材
7 温度制御装置
9 カバー材
9a 貫通孔
11 シート
17 パット
19 表皮カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材上に配設されたヒータ素子と、該ヒータ素子からの温度を検知して該ヒータ素子を制御する温度検知素子と、該温度検知素子を保護するためのカバー材とを有し、該温度検知素子が上記基材の所定の位置に設置されるとともに、上記温度検知素子を含む範囲を覆うように上記カバー材が配置され、上記温度検知素子が上記カバー材と上記基材によって挟持されたヒータユニットであって、
上記カバー材には、上記温度検知素子が位置する箇所に貫通孔が形成されていることを特徴とするヒータユニット。
【請求項2】
上記貫通孔が、上記温度検知素子が位置する範囲内に収まっていることを特徴とする請求項1記載のヒータユニット。
【請求項3】
上記基材及びカバー材が、ともに不織布であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のヒータユニット。
【請求項4】
請求項1〜請求項3何れか記載のヒータユニットを配置した車両用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−124088(P2012−124088A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275420(P2010−275420)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(000129529)株式会社クラベ (125)
【Fターム(参考)】