説明

フォーワード位置情報生成方法および装置ならびに記録方法および装置

【課題】記録媒体に情報を記録する際に、VOBUの再生所要時間が可変であってもFWDIを生成することができるようにする。
【解決手段】リアルタイム映像信号をエンコードして生成されたVOBUをストリームバッファに順次蓄積し、該ストリームバッファに蓄積されたVOBUのPCIに含まれた、該VOBUの再生開始時刻と再生終了時刻からその再生所要時間を取得しながら保持する。その再生開始時刻が注目データブロックの再生完了時刻の前にある対象データブロックから、注目データブロックまでの各データブロックの再生所要時間の総和を求める。該総和が、対象データブロックの再生開始時刻から記録フォーマットにより定められた所定時間後の時点が注目データブロックの再生期間に含まれることを示すとき、注目データブロックの再生位置を示す情報を対象データブロックのフォーワード位置情報として生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォーワード位置情報具体的には記録媒体に情報を記録する際のフォーワード位置情報の生成技術および記録技術に関する。
【背景技術】
【0002】
動画像をデジタル信号化しデジタルデータとして記録媒体に記録して再生に供する技術が注目されており、そのための規格も多数定められている。
【0003】
たとえば、DVD(Digital Versatile Disc)に記録するアプリケーションフォーマットとしてDVD−VideoやDVD+RW(DVD+ReWritable)Videoフォーマットなどがある。これらの規格において、ビデオ映像などの1つのタイトルは1つ以上の連結されたPGCで構成される。PGC(Program Chain)はリアル・タイム・データの再生単位であるセルの再生順位を指定するものであり、1つのPGCは1つ以上のセルの再生順位を指定する。
【0004】
セルは、さらにVOBU(Video Object Unit)により構成される。図4はセルとVOBUの構成を示す。図示のように、セルは、1つ以上のVOBUから構成され、各VOBUは、先頭にNV_PCK(Navigation Pack:ナビゲーションパック)が設けられており、それに続きGOP(Group Of Picture)整数個分のビデオデータ(図中V)、オーディオデータ(図中A)、サブピクチャデータ(図中S)などがパック化されて時分割で挿入されている。NV_PCKは、さらにPCI(Presentation Control Information)とDSI(Data Search Information)の2つのパケットから構成される。
【0005】
NV_PCKはリアルタイムの制御情報であり、VOBUの先頭に必ず設けられている。DVDビデオプレーヤは可変レート再生とシームレス再生を実現するために、ピックアップとデコーダの間にトラックバッファと呼ばれる大容量メモリを持つ。そのため、ピックアップが読み取っている信号とデコードされて再生表示されている画像や音声との間に時間ずれが生じる。そこで、リアルタイムの制御情報をPCIとDSIの2つのパケットに分割し、PCIには再生表示に関する制御情報、DSIにはアクセスに関する制御情報を格納し、プレーヤはDSIとPCIをそれぞれトラックバッファの前と後で処理する。
【0006】
なお、DVDに記録されたデータを再生する際に、再生位置の決定など再生に関する制御はVOBU単位まででき、VOBUは再生時の最小制御単位である。
【0007】
PCIに含まれる情報として、たとえば当該VOBUの再生開始時刻(VOBU_S_PTM)とVOBUの再生終了時刻(VOBU_E_PTM)がある。また、DSIに含まれる情報としては、たとえば早送りのための、当該VOBUより後のVOBUの位置を示すフォーワード位置情報FWDIがある。
【0008】
FWDIは、このVOBUの先頭から、K×0.5秒後の再生位置を示す情報である。Kは1〜240の整数値であり、規格によってその数および値が決められている。たとえば、DVD−Videoでは、FWDIとして、19個のKに対応する再生位置情報が決められており、これらのKは、それぞれ1〜15、20、60、120、240である。
【0009】
図5は、DVD−Videoの規格におけるVOBU#1のFWDIの例を示す。これは、各VOBUの再生時間を0.5秒に固定した場合の例である。
【0010】
図5において、「FWDI#」の後の数字は、Kであり、図示のように、VOBU#1のFWDIとして、FWDI#1〜FWDI#15、FWDI#20、FWDI#60、FWDI#120、FWDI#240の計19個のフォーワード位置情報がある。たとえば、FWDI#1は、VOBU#1の先頭から「K×0.5秒(K=1)」すなわち0.5後の再生位置としてVOBU#2の位置精確にはVOBU#2の先頭位置である。
【0011】
ここでVOBU#1とVOBU#2の再生所要時間がともに0.4秒である場合におけるVOBU#1のFWDI#1とFWDI#2を考える。
【0012】
VOBU#1の再生所要時間が0.4秒であるとき、VOBU#1の先頭から0.5秒後の再生位置が、VOBU#2の先頭から0.1秒後の位置になる。すなわちFWDI#1は、VOBU#2の先頭から0.1秒後の再生位置を示すものであると考えられる。ところで、前述したように、VOBUは、最小制御単位であり、早送りなどの場合においてこのVOBU単位で制御するため、FWDI#1は、VOBU#2の先頭から0.1秒後の位置を示すものではなく、VOBU#2の先頭を示す位置情報である必要がある。すなわち、VOBUのFWDIは、正確には、このVOBUの先頭からK×0.5秒後の再生位置が属するVOBUの先頭を示す位置情報である。このように、VOBU#1のFWDI#1は、VOBU#2の先頭を示す位置情報になる。
【0013】
同様に、FWDI#2は、VOBU#1の先頭から1.0秒後の再生位置が属するVOBU#3の先頭を示す位置情報となる。
【0014】
ところで、VOBU#1の再生所要時間が0.4秒であり、VOBU#2の再生所要時間が1.0秒である場合において、VOBU#1のFWDI#1は、上記の場合と同じようにVOBU#2の先頭を示す位置情報となるが、VOBU#2の再生所要時間が1秒であるとき、VOBU#2の末尾がVOBU#1の先頭から1.4秒後になるため、VOBU#1のFWDI#2は、VOBU#1の先頭から1.0秒後の再生位置が属するVOBU#2の先頭を示す位置情報となる。
【0015】
すなわち、VOBUの再生所要時間によって、FWDIが示すVOBUの位置情報が変わるものである。
【0016】
なお、FWDIにより示される再生位置は、起点から離れたデータの量で表わされる。このデータ量の単位はたとえば2048バイトを示すブロックであり、FWDIは、起点から離れたブロック数である。
【0017】
特許文献1は、DVDに情報を記録する際にFWDIを生成する手法を開示している。この手法は、各VOBUの再生所要時間が固定値になるようにエンコードし、この固定値を持用いてK×0.5秒後の再生位置が何個後のVOBUに該当するかを算出することによってFWDIを生成している。
【0018】
一方、VOBUの再生所要時間が固定時間ではなく、可変になることも生じ得る。たとえば、特許文献2に記載されたように、フレームレートが24フレーム/秒の映画タイトルをテレビ放送するときに、テレビ放送のフレームレートが30フレーム/秒であるため、一部のフレームをリピートして足りない分を補うことがなされている。このような放送映像をDVDに録画する際に、特許文献2に記載の逆3:2プルダウン処理を行い、リピートしているフレームを検出して間引きすれば、他のフレームに間引いた分の符号量を割り当てることができる。このとき、リピートしているフレームの有無、リピートしているフレームの量に応じて各VOBUの再生所要時間が可変する。
【特許文献1】特開2002−56609号公報
【特許文献2】特開2006−148275号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
すなわち、前述したように、VOBUの再生所要時間は規格によって0.4秒〜1秒の範囲内に定められおり、この範囲内であればいかなる値もとり得るとともに、VOBUの再生所要時間が可変にされるニーズもある。VOBUの再生所要時間が可変する場合には、特許文献1に記載された手法では、FWDIを生成することができない。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の一つの態様は、フォーワード位置情報生成方法である。フォーワード位置情報は、記録媒体に記録するデータストリームを構成する、再生時の最小制御単位であるデータブロックに対して、該データブロックの再生開始時刻から記録フォーマットにより定められた所定時間後の再生位置を示すものである。なお、データブロックには、このデータブロックの再生開始時刻と再生終了時刻からなる再生時間情報が含まれている。
【0021】
この方法は、データブロックをストリームバッファに順次蓄積し、蓄積されたデータブロックの再生時間情報からその再生所要時間を取得しながら保持する。そして、再生開始時刻が注目データブロックの再生完了時刻の前にある対象データブロックから、注目データブロックまでの各データブロックの再生所要時間の総和を求める。この総和が、対象データブロックの再生開始時刻から記録フォーマットにより定められた所定時間後の時点が注目データブロックの再生期間に含まれることを示すとき、注目データブロックの再生位置を示す情報をこの対象データブロックのフォーワード位置情報として生成する。
【0022】
本発明の別の態様は、記録方法である。この方法は、映像信号をエンコードして、データストリームを構成するデータブロックを順次生成する。このデータブロックは、再生時の最小制御単位であり、その再生開始時刻と再生終了時刻からなる再生時間情報を含む制御情報フィールドが設けられている。これらのデータブロックをストリームバッファに蓄積し、蓄積されたデータブロックの再生時間情報からその再生所要時間を取得しながら保持する。そして、再生開始時刻が注目データブロックの再生完了時刻の前にある対象データブロックから、注目データブロックまでの各データブロックの再生所要時間の総和を求める。該総和が、対象データブロックの再生開始時刻から記録フォーマットにより定められた所定時間後の時点が注目データブロックの再生期間に含まれることを示すとき、注目データブロックの再生位置を示す情報を対象データブロックのフォーワード位置情報として生成して該対象データブロックの制御情報フィールドに書き込む。最後に、フォーワード位置情報が書き込まれた対象データブロックを記録媒体に記録する。
【0023】
なお、上記方法を装置やシステム並びにプログラムとして表現したものも、本発明の態様としては有効である。
【発明の効果】
【0024】
本発明の技術によれば、記録媒体に情報を記録する際に、VOBUの再生所要時間が可変であってもFWDIを生成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる録画装置100を示す。録画装置100は、リアルタイムの映像信号を録画するものであり、エンコーダ110と、メモリ120と、制御CPU130と、記録媒体140を備える。
【0026】
なお、例として、録画装置100は、DVD−Videoの記録フォーマットに準拠して録画する。
【0027】
エンコーダ110は、リアルタイム映像信号に対してエンコードをし、データストリームを生成する。このデータストリームは、図4に示す階層構造を有し、再生時の最小制御単位となるVOBUから構成される。各VOBUの先頭には制御情報フィールドであるNV_PCKがあり、NV_PCKにはPCIフィールドとDSIフィールドに分けられている。
【0028】
エンコーダ110により生成されたVOBUのPCIフィールドには、このVOBUの再生開始時刻VOBU_S_PTMと再生終了時刻VOBU_E_PTMが書き込まれている。なお、VOBU_S_PTMとVOBU_E_PTMは、90kHzのカウンタ値により表されている。また、DSIフィールドには、このVOBUのフォーワード位置情報FWDI#K(K:規格により定められた複数の整数値)を書き込むエリアがあるが、フォーワード位置情報が現在のVOBUより後に生成されるVOBUの位置情報であるため、エンコーダ110は、VOBUを出力する際に、そのフォーワード位置情報としてたとえば予め決められたデフォルト値を書き込む。
【0029】
ここで、録画装置100は、DVD−Video規格に準拠して録画するものであるので、1つのVOBUに対して、そのFWDIは19個のFWDI#K(K:1〜15、20、60、120、240)を含む。
【0030】
前述したように、フレームレートが24フレーム/秒の映画タイトルをテレビ放送するときに、テレビ放送のフレームレートが30フレーム/秒であるため、一部のフレームをリピートして足りない分を補うことがなされている。録画装置100のエンコーダ110は、このような映像信号をエンコードする際に、逆3:2プルダウン処理を行い、リピートしているフレームを検出して間引きし、他のフレームに間引いた分の符号量を割り当てる。その結果、エンコーダ110により生成されたデータストリームの各VOBUの再生所要時間がDVD−Video規格により定められた0.4秒〜1秒の範囲内で互いに異なることはあり得る。
【0031】
エンコーダ110は、映像信号をエンコードしてセル毎にVOBUを順次生成して、メモリ120に設けられたストリームバッファ124に出力する。また、エンコーダ110は、各VOBUをストリームバッファ124に出力する際に、このVOBUを出力する通知も制御CPU130に通知する。なお、例として出力通知の内容はセル番号、VOBUの番号VOBU#と、VOBUのサイズ(例えば2048バイトを1ブロックとするブロック数)である。
【0032】
メモリ120のストリームバッファ124は、エンコーダ110からのVOBUを一時的に蓄積する。
【0033】
制御CPU130は、ストリームバッファ124に蓄積されたVOBUを記録媒体140に出力させる制御と、ストリームバッファ124に蓄積されたVOBUのFWDIを生成して当該VOBUのDSIフィールドに書き込むものであり、FWDIの生成実行部および書込部と、VOBUを記録媒体に記録させる記録部として機能する。
【0034】
制御CPU130は、エンコーダ110から出力通知を受ける度に、該出力通知によりその出力が知らされるVOBUを含むストリームバッファ124内のVOBUに対してFWDIを生成して該当するVOBUのDSIフィールドのFWDIを書き換える。
【0035】
メモリ120には、演算データバッファ128が設けられている。演算データバッファ128は、制御CPU130がFWDIを生成するためのデータ(以下演算データという)を一時的に記憶する。
【0036】
図2は、演算データバッファ128に記憶された演算データを示す。図示のように、演算データバッファ128において、セル番号毎に、VOBUの再生所要時間とVOBUのデータサイズがVOBUの番号と対応付けて記憶されている。なお、詳細については後述するが、演算データバッファ128は、まだ書き換えがなされてないFWDI#KがあるVOBUについてのデータのみを記憶しており、制御CPU130は、あるVOBUに対してその最後のFWDI#K(K:240)を書き換えた際に、このVOBUについてのデータを演算データバッファ128から削除する。
【0037】
ここで図3のフローチャートを参照して、録画装置100において、VOBUのFWDIの生成についての動作の流れを具体的に説明する。図3におけるステップS10〜S12はエンコーダ110の動作を示し、ステップS20からは制御CPU130の動作を示す。なお、図3は、セルの更新が無い場合すなわちエンコーダ110から出力されたVOBUが同じセルのVOBUである場合の動作を示すものである。
【0038】
エンコーダ110は、映像信号をデコードしVOBUを順次生成する。ここでVOBU#n(n:1以上の整数)が生成されたとする(S10)。エンコーダ110は、生成したVOBU#nをメモリ120のストリームバッファ124に出力するとともに、VOBU#nの出力を制御CPU130に通知する(S12)。このステップにおいて、VOBU#nの番号とデータサイズ(ブロック数)およびセル番号が制御CPU130に知らせられる。
【0039】
制御CPU130は、エンコーダ110からの出力通知を受信すると、メモリ120の演算データバッファ128に、知らせられたセル番号、VOBUの番号とデータサイズを入力する。なお、nが2以上である場合には、演算データバッファ128には、VOBU#n以前のVOBUの演算データが既に記憶されている。
【0040】
制御CPU130は、そしてストリームバッファ124にアクセスし、VOBU#nのNV_PCKのPCIフィールドから、90kHzのカウンタ値により表される、このVOBUの再生時間情報となる再生開始時刻VOBU_S_PTMと再生終了時刻VOBU_E_PTMを読み出す。読み出した2つの時刻を用いて、下記の式(1)にしたがってVOBU#nの再生所要時間Tn(単位:秒)を算出する(S20)

Tn =(VOBU_E_PTM - VOBU_S_PTM)/90000 (1)

そして、制御CPU130は、ストリームバッファ124に記憶されたVOBUのFWDIを生成する(S22〜S52)。制御CPU130は、FWDIを生成する際に、VOBUについては最後に演算データバッファ128に出力されたVOBUから、KについてはK=1、2、3、・・・、15、20、60、120、240の順でFWDI#Kを生成する。
【0041】
具体的には、まず、VOBU#n、すなわち最後にストリームバッファ124に出力されたVOBUのFWDI#1を生成する。そのために、制御CPU130は、まず、下記の式(2)により、最後に入力されたVOBU(VOBU#n)から、そのFWDIが生成されるVOBU(VOBU#x,x:FWDIが生成されるVOBUの番号)までのすべてのVOBUの再生所要時間の総和Sxを求める。
Sx = Tx + Tx+1 +・・・+ Tn (2)

制御CPU130は、演算データバッファ128に記憶された演算データから式(2)に用いられる各再生所要時間Tを取得して総和Sxを算出する。
【0042】
ここで、VOBU#xは、VOBU#nであるため、総和SxはSn=Tnとなる。
【0043】
そして、制御CPU130は、ステップS28に示される処理として、下記式(3)で示す条件が満たされるか否かを判定する。

(Sx - Tn) <= (K×0.5) < Sx (3)

式(3)の意味について考える。Sxは、式(2)に示すように、VOBU#xからVOBU#nまでの各VOBUの再生所要時間の総和を示すため、VOBU#xの先頭を始点とすると、(Sx−Tn)は、VOBU#nの先頭の再生時刻となり、SxはVOBU#nの末尾の再生時刻となる。そのため、式(3)を満たすことは、VOBU#xの先頭から(K×0.5)秒後の再生時刻が、VOBU#nの先頭から末尾までの再生時刻範囲に含まれることを意味する。すなわち、VOBU#xのFWDI#Kは、VOBU#nとなる。
【0044】
制御CPU130は、このようにして、ステップS28において式(3)が満たされるか否かを判定し、満たされていれば、VOBU#nを示す位置をVOBU#xのFWDI#Kとして生成して、ストリームバッファ124に蓄積されたVOBU#xのDSIフィールドにあるFWDI#Kを書き換える(S28:Yes、S30)。なお、VOBU#nを示す位置は、VOBU#nの先頭がVOBU#Xの先頭から離れたブロック数であり、制御CPU130は、メモリ120の演算データバッファ128に記憶されたVOBU#XからVOBU#(n−1)までのすべてのVOBUのサイズを加算して得た和をVOBU#xのFWDI#Kとして書き込む。
【0045】
制御CPU130は、ステップS32にVOBU#Xに対して書き込んだFWDI#Kの「K」が規格で定められた最後のK(DVD−Videoでは240である)であるか否かを確認し、最後のKであればVOBU#Xの演算データを演算データバッファ128から削除する(S34:No、S36)。そして、次のVOBU#Xに対してFWDIを生成する処理をすべくステップS50へ進める。なお、最後のKではなければ、制御CPU130は、Kの値を次のKにしたうえで処理をステップS24に戻す(S34:Yes、S42、S28〜)。
【0046】
VOBU#XのFWDI#KはKの小さい順から生成、書き換えがなされるので、最後のKについてのFWDI#Kが書き換えられたVOBU#Xは、すべてのFWDIが書き換えられたことになる。制御CPU130は、最後のFWDI#Kが書き換えられたVOBU#Xに対して、その演算データを演算データバッファ128から削除することによって、演算データバッファ128には、まだ書き換えられていないFWDI#Kを有するVOBUの演算データのみが記憶されることになる。
【0047】
VOBU#nのFWDI#1の例に戻る。VOBU#nのFWDI#1を求めるために算出されたSx(x:n)がTnと同じであり、(K×0.5)秒は0.5秒であるため、VOBU#nの再生所要時間Tnが0.5秒より大きければ、式(3)が満たされることになる。そのため、VOBU#nのFWDI#1はVOBU#n自身を示すものであり、0ブロックとなる。一方、VOBU#nの再生所要時間Tnが0.5秒以下であれば、(Sn=Tn<=0.5)の結果になり、式(3)が満たされないため、VOBU#nのFWDI#1がここでは生成されないことになる(S28:No)。
【0048】
ここまではFWDI#1についての処理である。制御CPU130は、FWDI#1についての処理が終わると、次のKがあるか否かを確認する(S40)、Kは1〜15、20、60、120、240の19個があるため、制御CPU130は、Kの値を次の2にして、VOBU#nのFWDI#2についての処理をする(S40:Yes、S42、S28〜)。
【0049】
制御CPU130は、このようにしてVOBU#nに対して、各Kの値についてステップS28からの処理を繰り返す。なお、VOBU#nの再生所要時間が0.5秒より大きいときには、VOBU#nのFWDI#1が0ブロックに書き換えられ、FWDI#2からFWDI#240までは、生成されないことになる。
【0050】
制御CPU130は、VOBU#nの各FWDI#Kについての処理が終わる(S40:No、またはS34:No、S36)と、xを1つデクリメントして(S50)、1つ前のVOBUのFWDIについての処理をする。すなわち、ステップS26からの処理は、VOBU#x(x:x−1)に対して行われる。
【0051】
制御CPU130は、演算データバッファ128にVOBU#x(x:x−1)の演算データがあるか否かを確認し、ある場合にはこのVOBUに対してステップS24からの処理を繰り返す(S52:Yes、S24〜)。一方、演算データバッファ128にVOBU#x(x:x−1)の演算データが無ければすなわちVOBU#xより前の全てのVOBUは、それらの最後のFWDI#Kが既に書き換えられていた場合には(S52:No)、VOBU#nについて、その前のVOBUに対するFWDI関連の処理を終了する。
【0052】
このような処理は、新しいVOBUがエンコーダ110からストリームバッファ124に出力される度に行われる。
【0053】
前述したように、図3は、セルの更新が無い場合の処理を示すものである。DVD−Videoでは、FWDIはセル内部に閉じられた情報であり、すなわち、VOBUのFWDI#Kは、このVOBUが属するセル内のVOBUのうちの、(K×0.5)秒の再生位置に該当するVOBUの再生位置である。そのため、セルの後部に位置するVOBUのFWDI#Kが示す位置がこのセルの後の他のセル内の再生位置になることは生じ得る。このような場合は、このVOBUのFWDI#Kは「対象データ無し」を示すことにされる。本実施の形態の録画装置100において、制御CPU130は、エンコーダ110から出力通知を受ける度に、この出力通知に含まれたセル番号が、演算データバッファ128に記憶された直前のセル番号と同じであるか否かを確認する。2つのセル番号が同じであればすなわち今出力されたVOBUが1つ前に出力されたVOBUと同じセルに属している場合には、制御CPU130は図3に示す処理をする一方、2つのセル番号が異なればすなわち今出力されたVOBUが1つ前に出力されたVOBUと異なるセルに属する場合には、制御CPU130は、演算データバッファ128にその演算データが記憶されており(すなわちまだ書換えがなされていないFWDI#Kがある)、今出力されたVOBU以外の各VOBUに対して、それらのまだ書き換えられていないFWDI#Kをデフォルト値から「対象データ無し」に書き換える。そして、これらのVOBUに関する演算データを演算データバッファ128から削除する。すなわち、図2に示す例では、セル番号が2であるセルのVOBU#1がストリームバッファ124に出力されると、制御CPU130は、演算データバッファ128にその演算データが記憶されている、セル番号が1である各VOBUのまだ書き換えられていないFWDI#Kを「対象データ無し」に書き換えるとともに、これらのVOUBの演算データを演算データバッファ128から削除する。その後、セル番号が2であるVOBU#2がストリームバッファ124に出力されるまで、演算データバッファ128に、セル番号が2であるVOBU#1の演算データのみが記憶されることになる。
【0054】
なお、エンコーダ110からVOBUを出力する際に、FWDI#Kのデフォルト値を「対象データ無し」にすることが好ましい。こうすれば、セルが更新された場合に、制御CPU130は、該当するVOBUのデータを演算データバッファ128から削除するのみでよく、デフォルト値からの書換え処理が不要である。
【0055】
FWDIの書換えについて説明した。次いで、ストリームバッファ124に蓄積されたVOBUを記録媒体140への記録について説明する。
【0056】
DVD−Videoでは、最小制御単位のVOBUによりセルを構成し、さらに整数個のセルより上位の制御単位VOB(Video Object)を構成する。各VOBUの先頭に設けられたNV_PCKのDSIフィールドには、このVOBUが属するVOBの再生開始時刻を示すVOB_S_PTMと、このVOBの再生終了時刻を示すVOB_E−PTMを書き込む必要がある。本実施の形態の録画装置100において、VOBUを出力する際に、そのDSIフィールドにVOB_S_PTMを書き込んで出力する。一方、VOBの最後のVOBUを除き、同じVOB内の他のVOBUについてはVOB_E_PTMが分からないので、エンコーダ110は、他のVOBUについてたとえば「未知」などを示すデフォルト値を入力して出力し、最後のVOBUについてのみ真のVOB_E_PTMを書き込んで入力する。なお、このVOB_E_PTMは、そのVOBUの再生終了時刻VOB_E_PTMと同じ値になる。
【0057】
制御CPU130は、エンコーダ110から出力されたVOBUのPCIフィールドに書き込まれたVOBU_E_PTMと、同じVOBUのDSIフィールドに書き込まれたVOB_E_PTMとを比較することによって、このVOBUがVOBの最後のVOBUであるか否かを判定する。最後のVOBUである場合には、制御CPU130は、ストリームバッファ124に蓄積されたすべてのVOBUに対して、それらのVOB_E_PTM(デフォルト値)を、最後のVOBUのVOB_E_PTMと同じ値に書き換えるとともに、このVOBに含まれたすべてのVOBUを、ストリームバッファ124から記録媒体140に出力させる。
【0058】
このように、本実施の形態の録画装置100によれば、エンコーダ110により生成されたVOBUの再生所要時間が可変な場合であっても、記録フォーマットに準拠して記録することができる。
【0059】
以上、実施の形態をもとに本発明を説明した。実施の形態は例示であり、本発明の主旨から逸脱しない限り、さまざまな変更、増減を加えてもよい。これらの変更、増減が加えられた変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0060】
たとえば、録画装置100において、エンコーダ110から制御CPU130に知らせる態様で制御CPU130がエンコーダ110から直接各VOBUのサイズを取得している。たとえば、制御CPU130は、ストリームバッファ124に蓄積された当該VOBUにアクセスしてそのヘッダ情報などから取得してもよい。
【0061】
また、録画装置100は、本発明の技術をDVD−Videoの場合に適用した場合の例であるが、VOBUのような再生時の最小制御単位から構成され、各VOBU内にこのVOBUの再生所要時間を示し得る情報が付属されているデータストリームであれば、本発明の技術によってこれらのVOBUのFWDIの生成が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施の形態にかかる録画装置を示す図である。
【図2】図1に示す録画装置における演算データバッファに記憶された演算データの例を示す図である。
【図3】図1に示す録画装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明が対象とする記録フォーマットの例を示す図である。
【図5】図4に示す記録フォーマットにおけるVOBUのFWDIの例を示す図である。
【符号の説明】
【0063】
100 録画装置
110 エンコーダ
120 メモリ
124 ストリームバッファ
128 演算データバッファ
130 制御CPU
140 記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生時の最小制御単位であり、記録媒体に記録するデータストリームを構成するデータブロックであって、該データブロックの再生開始時刻と再生終了時刻からなる再生時間情報が含まれた前記データブロックに対してフォーワード位置情報を生成する際に、
データブロックをストリームバッファに順次蓄積し、
該ストリームバッファに蓄積されたデータブロックの再生時間情報からその再生所要時間を取得しながら保持し、
その再生開始時刻が注目データブロックの再生完了時刻の前にある対象データブロックから、前記注目データブロックまでの各データブロックの再生所要時間の総和を求め、
該総和が、前記対象データブロックの再生開始時刻から記録フォーマットにより定められた所定時間後の時点が前記注目データブロックの再生期間に含まれることを示すとき、前記注目データブロックの再生位置を示す情報を前記対象データブロックのフォーワード位置情報として生成することを特徴とするフォーワード位置情報生成方法。
【請求項2】
リアルタイム映像信号からデータストリームを生成して記録媒体に記録する際に、
再生時の最小制御単位であり、前記データストリームを構成するデータブロックであって、該データブロックの再生開始時刻と再生終了時刻からなる再生時間情報を含む制御情報フィールドが設けられた前記データブロックを、リアルタイム映像信号に対してエンコードすることによって順次生成し、
生成された前記データブロックをストリームバッファに蓄積し、
該ストリームバッファに蓄積されたデータブロックの再生時間情報からその再生所要時間を取得しながら保持し、
その再生開始時刻が注目データブロックの再生完了時刻の前にある対象データブロックから、前記注目データブロックまでの各データブロックの再生所要時間の総和を求め、
該総和が、前記対象データブロックの再生開始時刻から記録フォーマットにより定められた所定時間後の時点が前記注目データブロックの再生期間に含まれることを示すとき、前記注目データブロックの再生位置を示す情報を前記対象データブロックのフォーワード位置情報として生成して該対象データブロックの制御情報フィールドに書き込み、
前記フォーワード位置情報が書き込まれた対象データブロックを記録媒体に記録することを特徴とする記録方法。
【請求項3】
前記所定時間は、記録フォーマットにより1つのデータブロックに対して複数定められており、
複数の該所定時間に対応するフォーワード位置情報が全て書き込まれた前記対象データブロックを記録媒体に記録することを特徴とする請求項2に記載の記録方法。
【請求項4】
再生時の最小制御単位であり、記録媒体に記録するデータストリームを構成するデータブロックであって、該データブロックの再生開始時刻と再生終了時刻からなる再生時間情報が含まれた前記データブロックに対してフォーワード位置情報を生成するフォーワード位置情報生成装置であって、
データブロックを順次蓄積するストリームバッファと、
該ストリームバッファに蓄積されたデータブロックの再生時間情報からその再生所要時間を取得しながら保持し、
その再生開始時刻が注目データブロックの再生完了時刻の前にある対象データブロックから、前記注目データブロックまでの各データブロックの再生所要時間の総和を求め、
該総和が、前記対象データブロックの再生開始時刻から記録フォーマットにより定められた所定時間後の時点が前記注目データブロックの再生期間に含まれることを示すとき、前記注目データブロックの再生位置を示す情報を前記対象データブロックのフォーワード位置情報として生成する生成実行部とを備えることを特徴とするフォーワード位置情報生成装置。
【請求項5】
リアルタイム映像信号からデータストリームを生成して記録媒体に記録する記録装置であって、
再生時の最小制御単位であり、前記データストリームを構成するデータブロックであって、該データブロックの再生開始時刻と再生終了時刻からなる再生時間情報を含む制御情報フィールドが設けられた前記データブロックを、リアルタイム映像信号に対してエンコードすることによって順次生成するエンコーダと、
生成された前記データブロックを蓄積するストリームバッファと、
該ストリームバッファに蓄積されたデータブロックの再生時間情報からその再生所要時間を取得しながら保持し、
その再生開始時刻が注目データブロックの再生完了時刻の前にある対象データブロックから、前記注目データブロックまでの各データブロックの再生所要時間の総和を求め、
該総和が、前記対象データブロックの再生開始時刻から記録フォーマットにより定められた所定時間後の時点が前記注目データブロックの再生期間に含まれることを示すとき、前記注目データブロックの再生位置を示す情報を前記対象データブロックのフォーワード位置情報として生成する生成実行部と、
該生成実行部により生成されたフォーワード位置情報を前記対象データブロックの制御情報フィールドに書き込む書込部と、
前記フォーワード位置情報が書き込まれた対象データブロックを記録媒体に記録する記録実行部とを備えることを特徴とする記録装置。
【請求項6】
前記所定時間は、記録フォーマットにより1つのデータブロックに対して複数定められており、
前記記録実行部は、複数の該所定時間に対応するフォーワード位置情報が全て書き込まれた前記対象データブロックを記録媒体に記録することを特徴とする請求項5に記載の記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−131547(P2008−131547A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−316804(P2006−316804)
【出願日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】