説明

フレキシブルフラットケーブル、およびフレキシブルフラットケーブル製造方法

【課題】急な設計変更に対応でき、部材を効率的に利用することができるようにする。
【解決手段】多数の極数のFFC110を、極数10のフレキシブルフラットケーブルに変える場合、FFC110が、導体121−10と導体121−11の間の位置において、図中水平方向に裂かれている。これにより、多数の極数のFFC110が、極数が10とされたフレキシブルフラットケーブルであるFFC110aと分離部110bに分割されることになる。FFC110には、ミシン目131a―7、ミシン目132a―7、ハーフカット133a−7、およびハーフカット134a−7が設けられているので、導体121−10と導体121−11の間の位置において、簡単に裂くことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルフラットケーブル、およびフレキシブルフラットケーブル製造方法に関し、特に、急な設計変更に対応でき、部材を効率的に利用することができるようにするフレキシブルフラットケーブル、およびフレキシブルフラットケーブル製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器等の内部で回路や装置を電気的に接続する手段の一つとして、複数の導体を絶縁被覆で覆ってなるフレキシブルフラットケーブル(以下、FFCと称する)が用いられている。
【0003】
FFCは、上面絶縁層と下面絶縁層との間に導体が精度良く所定のピッチ寸法で配線され、接着剤等により接着されて構成され、上面絶縁層の一部が削除され導体露出部を形成し、接続先のコネクタの厚み寸法を満足する補強板がさらに接着される。このような構造により、FFCは、表面(導体の配線方向)と垂直方向に十分な屈曲性を有する。
【0004】
FFCは、想定される接続先のコネクタの端子(ピン)数に合わせて、その極数が決定される。すなわち、接続先のコネクタのピン数に対応する導体が所定のピッチ寸法で配線されて構成される。
【0005】
また、狭ピッチ構造のFFCにおいて、複数の配線ごとにスリットを入れ、それぞれの中央部で分離された構造を持つことにより、あらゆる方向に屈曲することができるものも提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
さらに、FFC2の端部の絶縁被覆を除去した部分にカバーを設けることにより、導線3の先端部分を保護し、変形、切断、腐食等を防止することも提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−288041号公報
【特許文献2】特開2001−266658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、回路や装置の設計段階においては、設計の変更によりFFCの接続先コネクタのピン数が変更される場合があり、変更後の極数のFFCが必要となる。このような場合、変更後のピン数に対応するFFCの生産には相応のリードタイムを必要とする。近年、FFCの生産は海外で行なわれることも多く、変更後のピン数に対応するFFCを入手できるまでに数週間を要することも多い。
【0009】
このため、急な回路変更の必要が生じた場合、例えば、試作品完成期限までに変更後の極数のFFCの生産が間に合わない場合がある。
【0010】
また、変更後のピン数に対応するFFCの生産が間に合った場合でも、最初に生産した変更前のFFCは不要となり、そのための費用増加、廃棄物増加となる。
【0011】
このように従来のFFCは、急な設計変更に対応できず、部材を効率的に利用できていないという問題があった。
【0012】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、急な設計変更に対応でき、部材を効率的に利用することができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の側面は、挿入されるコネクタの端子と接触する所定のピッチ寸法で配置された複数の導体と、前記複数の導体の配置方向と垂直上側に配置される上面絶縁層と、前記複数の導体の配置方向と垂直下側に配置される下面絶縁層と、接続先のコネクタの厚み寸法に対応する補強板とを有し、前記上面絶縁層と、前記下面絶縁層が前記複数の導体を挟んで接着され、前記上面絶縁層および前記下面絶縁層には、前記導体の長手方向と平行にミシン目が設けられ、前記補強板には、前記導体の長手方向と平行にハーフカットが設けられるフレキシブルフラットケーブルである。
【0014】
前記ミシン目および前記ハーフカットに沿って、所定の数の導体を有する新たなフレキシブルフラットケーブルと、分離部に分割されるようにすることができる。
【0015】
本発明の第1の側面においては、前記上面絶縁層と、前記下面絶縁層が前記複数の導体を挟んで接着され、前記上面絶縁層および前記下面絶縁層には、前記導体の長手方向と平行にミシン目が設けられ、前記補強板には、前記導体の長手方向と平行にハーフカットが設けられる。
【0016】
本発明の第2の側面は、挿入されるコネクタの端子と接触する複数の導体を、所定のピッチ寸法で配置し、前記複数の導体の配置方向と垂直上側に配置される上面絶縁層と前記複数の導体の配置方向と垂直下側に配置される下面絶縁層とを、前記複数の導体を挟んで接着し、前記上面絶縁層および前記下面絶縁層に、前記導体の長手方向と平行にミシン目を設け、接続先のコネクタの厚み寸法に対応する補強板をさらに接着し、前記補強板に、前記導体の長手方向と平行にハーフカットを設けるステップを有するフレキシブルフラットケーブル製造方法である。
【0017】
本発明の第2の側面においては、挿入されるコネクタの端子と接触する複数の導体が、所定のピッチ寸法で配置され、前記複数の導体の配置方向と垂直上側に配置される上面絶縁層と前記複数の導体の配置方向と垂直下側に配置される下面絶縁層とが、前記複数の導体を挟んで接着され、前記上面絶縁層および前記下面絶縁層に、前記導体の長手方向と平行にミシン目が設けられ、接続先のコネクタの厚み寸法に対応する補強板がさらに接着され、前記補強板に、前記導体の長手方向と平行にハーフカットが設けられてフレキシブルフラットケーブルが製造される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、急な設計変更に対応でき、部材を効率的に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】従来のFFCの構成を示す図である。
【図2】図1に対応する側面図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係るFFCの構成を示す図である。
【図4】図3に対応する側面図である。
【図5】本発明のFFCの極数を変えて用いる場合の例について説明する図である。
【図6】FFC製造処理の例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0021】
まず、フレキシブルフラットケーブル(以下、FFCと称する)について説明する。
【0022】
電子機器等の内部で回路や装置を電気的に接続するためのものとして、複数の導体を絶縁被覆で覆って構成されるFFCが用いられている。
【0023】
FFCは、上面絶縁層と下面絶縁層との間に導体が精度良く所定のピッチ寸法で配線され、接着剤等により接着されて構成され、上面絶縁層の一部が削除されて導体露出部を形成し、接続先のコネクタの厚み寸法を満足する補強板がさらに接着される。このような構造により、FFCは、表面(導体の配線方向)と垂直方向に十分な屈曲性を有する。
【0024】
FFCは、想定される接続先のコネクタの端子(ピン)数に合わせて、その極数が決定される。すなわち、接続先のコネクタのピン数に対応する導体が所定のピッチ寸法で配線されて構成される。
【0025】
図1および図2は、従来のFFC10の構成を示す図である。図1は、FFC10が回路においてコネクタと接続される際に、回路の上側から見た場合のFFC10の平面図とされる。図2は、図1の矢印50の方向から見たFFC10の側面図である。
【0026】
FFC10は、図1に示されるように、導体21−1、導体21−2、導体21−3、・・・が図中上下方向に所定のピッチ寸法で配置され、それらの導体上に上面絶縁層31が設けられている。すなわち、上面絶縁層31は、導体の配置方向と垂直上側に配置される。さらに、後述するように、導体の配置方向と垂直下側には下面絶縁層32が配置される。なお、図2においては、導体21−1、導体21−2、導体21−3、・・・をまとめて導体21と示してある。
【0027】
また、図2に示されるように、導体21の図中上側の上面絶縁層31と、導体21の図中下側の下面絶縁層32が接着剤等により接着されて構成されて構成されている。すなわち、FFC10は、上面絶縁層31と下面絶縁層32により、導体21が挟み込まれたサンドイッチ構造とされている。さらに、導体21の図中下側と下面絶縁層32において、接続先のコネクタの厚み寸法を満足するために補強板33および補強板34が接着されている。
【0028】
なお、上面絶縁層31と下面絶縁層32には、例えば、ポリエステルフィルムなどの柔軟な素材が用いられる。補強板33と補強板34には、上面絶縁層31(下面絶縁層32)と同様に、絶縁素材が用いられるが、上面絶縁層31などと比較した場合、剛性が高くなるように構成される。
【0029】
このような構造により、FFC10は、例えば、図2の中央付近において図中垂直方向に十分な屈曲性を有するようになされている。
【0030】
図1に示されるように、上面絶縁層31は図中の左右両端において一部が削除され導体21−1、導体21−2、導体21−3、・・・が外部に露出されるようになされている。同図の右側端部の露出部41−1と、左側端部の露出部41−2が、例えば、コネクタに挿入され、露出した導体21−1、導体21−2、導体21−3、・・・のそれぞれが、コネクタのピンと接触するようになされている。
【0031】
従って、FFC10により、例えば、回路上の左側に配置されたコネクタの第1番目の端子(ピン)と、回路上の右側に配置されたコネクタの第1番目の端子とを導体21−1を介して導通させ、電気的に接続することができるのである。同様に、コネクタの第2番目、第3番目、・・・の端子のそれぞれについても、導体21−2、導体21−3、・・・を介して電気的に接続することができる。
【0032】
また、上述したように、FFC10は、図2における垂直方向に十分な屈曲性を有するから、例えば、コネクタ間の図1中水平方向の距離が多少変化しても、接続することが可能である。すなわち、コネクタ間の距離が短い場合、FFC10をより大きく屈曲させ、コネクタ間の距離が長い場合、FFC10をあまり屈曲させないようにすればよいのである。
【0033】
このように、FFC10を用いれば、配線スペースが小さくなり、実装密度を向上させることができ、例えば、可動部や狭い部分の配線も容易かつ確実に行うことができる。また、FFC10は、コネクタへの挿抜が簡単で、実装コストが低減できるとともに、耐振動性、耐衝撃性にもすぐれている。
【0034】
ところで、実際の回路や装置の設計段階においては、設計の変更によりフレキシブルフラットケーブルの接続先コネクタのピン数が変更される場合が多々ある。このような場合、例えば、FFC10を屈曲させるなどでは対応できず、FFC10の図1中垂直方向の長さを変えて、導体21−1、導体21−2、導体21−3、・・・の総数も変える必要が生じる。導体21−1、導体21−2、導体21−3、・・・は所定のピッチ寸法で配線され、その総数がコネクタのピン数に対応しているからである。
【0035】
そこで、本発明では、フレキシブルフラットケーブルの導体の総数(フレキシブルフラットケーブルの極数と称する)を必要に応じて変化させることができるようにする。
【0036】
図3および図4は、本発明の一実施の形態に係るフレキシブルフラットケーブル(FFC)110の構成を示す図である。図3は、FFC110が回路においてコネクタと接続される際に、回路の上側から見た場合のFFC110の平面図とされる。図4は、図3の矢印150の方向から見たFFC110の側面図である。
【0037】
FFC110は、図3に示されるように、導体121−1、導体121−2、導体121−3、・・・が図中上下方向に所定のピッチ寸法で配置され、それらの導体上に上面絶縁層131が設けられている。すなわち、上面絶縁層131は、導体の配置方向と垂直上側に配置される。さらに、後述するように、導体の配置方向と垂直下側には下面絶縁層132が配置される。なお、図4においては、導体121−1、導体121−2、導体121−3、・・・をまとめて導体121と示してある。
【0038】
また、図4に示されるように、導体121の図中上側の上面絶縁層131と、導体121の図中下側の下面絶縁層132が接着剤等により接着されて構成されて構成されている。すなわち、FFC110は、上面絶縁層131と下面絶縁層132により、導体121が挟み込まれたサンドイッチ構造とされている。さらに、導体121の図中下側と下面絶縁層132において、接続先のコネクタの厚み寸法を満足するために補強板133および補強板134が接着されている。
【0039】
なお、上面絶縁層131と下面絶縁層132には、例えば、ポリエステルフィルムなどの柔軟な素材が用いられる。補強板133と補強板134には、上面絶縁層131(下面絶縁層132)と同様に、絶縁素材が用いられるが、上面絶縁層131などと比較した場合、剛性が高くなるように構成される。
【0040】
このような構造により、例えば、FFC110は、図4の中央付近において図中垂直方向に十分な屈曲性を有するようになされている。
【0041】
図3に示されるように、上面絶縁層131は図中の左右両端において一部が削除され導体121−1、導体121−2、導体121−3、・・・が外部に露出されるようになされている。同図の右側端部の露出部141−1と、左側端部の露出部141−2が、例えば、コネクタに挿入され、露出した導体121−1、導体121−2、導体121−3、・・・のそれぞれが、コネクタのピンと接触するようになされている。
【0042】
従って、FFC110により、例えば、回路上の左側に配置されたコネクタの第1番目の端子(ピン)と、回路上の右側に配置されたコネクタの第1番目の端子とを導体121−1を介して導通させ、電気的に接続することができるのである。同様に、コネクタの第2番目、第3番目、・・・の端子のそれぞれについても、導体121−2、導体121−3、・・・を介して電気的に接続することができる。
【0043】
また、上述したように、FFC110は、図2における垂直方向に十分な屈曲性を有するから、例えば、コネクタ間の図1中水平方向の距離が多少変化しても、接続することが可能である。すなわち、コネクタ間の距離が短い場合、FFC110をより大きく屈曲させ、コネクタ間の距離が長い場合、FFC110をあまり屈曲させないようにすればよいのである。
【0044】
図3に示されるように、本発明のFFC110においては、従来のFFC10と異なり、上面絶縁層131に、図中水平方向の点線で示されるミシン目131a―1、ミシン目131a―2、ミシン目131a―3、・・・が設けられている。ミシン目131a―1、ミシン目131a―2、ミシン目131a―3、・・・は、それぞれ導体の配列の間に設けられている。
【0045】
例えば、ミシン目131a―1は、図3中上から4番目の導体(導体121−4と称する)と、上から5番目の導体(導体121−5と称する)との間に設けられている。同様に、ミシン目131a―2は、導体121−5と導体121−6との間に設けられ、ミシン目131a―3は、導体121−6と導体121−7との間に設けられている。
【0046】
そして、本発明のFFC110においては、下面絶縁層132においても、上面絶縁層131の場合と同様に、ミシン目132a―1、ミシン目132a―2、ミシン目132a―3、・・・が設けられる。すなわち、下面絶縁層132においても、ミシン目132a―1、ミシン目132a―2、ミシン目132a―3、・・・がそれぞれ導体の配列の間に設けられるのである。
【0047】
また、図3に示されるように、本発明のFFC110においては、従来のFFC10と異なり、補強板133に、図中水平方向の二重線で示されるハーフカット(切り込み)133a―1、ハーフカット133a―2、ハーフカット133a―3、・・・が設けられている。ハーフカット133a―1、ハーフカット133a―2、ハーフカット133a―3、・・・は、それぞれ導体の配列の間に設けられている。
【0048】
例えば、ハーフカット133a―1は、導体121−4と、導体121−5との間に設けられている。同様に、ハーフカット133a―2は、導体121−5と導体121−6との間に設けられ、ハーフカット133a―3は、導体121−6と導体121−7との間に設けられている。
【0049】
そして、本発明のFFC110においては、補強板134においても、補強板133の場合と同様に、ハーフカット134a―1、ハーフカット134a―2、ハーフカット134a―3、・・・が設けられている。すなわち、補強板134においても、ハーフカット134a―1、ハーフカット134a―2、ハーフカット134a―3、・・・がそれぞれ導体の配列の間に設けられている。
【0050】
なお、図4においては、図中のハッチングにより、上面絶縁層131または下面絶縁層132に設けられたミシン目が表されており、補強板133または補強板134に設けられたハーフカットが表されている。
【0051】
なお、ここでは、ミシン目131a―1、ミシン目132a―1、ハーフカット133a―1およびハーフカット134a―1が導体121−4と、導体121−5との間に設けられている例について説明したが、これは一例である。勿論、導体121−1と、導体121−2との間などにも、ミシン目、ハーフカットがそれぞれ設けられるようにしてもよい。また、必ずしも導体1本毎の間隔でミシン目、ハーフカットがそれぞれ設けられる必要はない。
【0052】
すなわち、上面絶縁層131または下面絶縁層132に設けられるミシン目のそれぞれと、補強板133または補強板134に設けられるハーフカットのそれぞれは、導体121−1、導体121−2、・・・のそれぞれの長手方向と平行に設けられるようにすればよい。
【0053】
本発明のFFC110は、このように構成されているので、フレキシブルフラットケーブルの極数を必要に応じて変化させることができる。すなわち、ミシン目とハーフカットは、各導体の長手方向と平行に設けられているので、これらのミシン目とハーフカットに沿って、FFC110を所望の位置で分割することができるのである。
【0054】
図5は、本発明のFFC110の極数を変えて用いる場合の例について説明する図である。
【0055】
同図の例では、多数の極数のFFC110を、極数10のフレキシブルフラットケーブルに変える場合の例を説明する図である。
【0056】
図5に示されるように、FFC110が、導体121−10と導体121−11の間の位置において、図中水平方向に裂かれている。これにより、多数の極数のFFC110が、極数が10とされたフレキシブルフラットケーブルであるFFC110aと分離部110bに分割されることになる。
【0057】
上述したように、FFC110には、ミシン目131a―7、ミシン目132a―7、ハーフカット133a−7、およびハーフカット134a−7が設けられているので、導体121−10と導体121−11の間の位置において、簡単に裂くことができる。すなわち、FFC110を利用するユーザは、例えば、ミシン目131a―7に沿ってFFC110を紙面と垂直方向に数回屈曲させれば、FFC110をFFC110aと分離部110bに分割することができる。
【0058】
このように、本発明FFC110の場合、例えば、カッターナイフなどの工具を用いなくとも、ユーザの手で簡単にFFC110aと分離部110bに分割することができるのである。
【0059】
従来のFFC10では、設計変更などが生じた場合、変更後のピン数に対応するフレキシブルフラットケーブルの生産には相応のリードタイムを必要としていた。また、近年、フレキシブルフラットケーブルの生産は海外で行なわれることも多く、変更後のピン数に対応するフレキシブルフラットケーブルを入手できるまでに、例えば、数週間を要することも多い。
【0060】
このため、従来の技術では、急な回路変更の必要が生じた場合、例えば、試作品完成期限までに変更後の極数のフレキシブルフラットケーブルの生産が間に合わない場合がある。
【0061】
これに対して、本発明の場合、必要に応じてユーザが所望の位置においてFFC110を裂くことにより、簡単に所望の極数のフレキシブルフラットケーブルを得ることができる。従って、例えば、設計変更などが生じてコネクタのピン数が変更された場合、変更後のピン数に対応するフレキシブルフラットケーブルを即時に得ることが可能となる。
【0062】
従って、本発明によれば、例えば、装置や回路の設計に要する期間を大幅に短縮することが可能となるのである。
【0063】
また、本発明のFFC110は、FFC110aと分離部110bに分割した後、分離部110bを再利用することも可能である。
【0064】
フレキシブルフラットケーブルは、コネクタに挿入されるとき、図5における図中最も上側の導体(導体121−1)を基準として挿入される。あるいはまた、図5における図中最も下側の導体(ここでは図示されていない)を基準として挿入されるようにすることも可能である。これらの導体は、基準極(基準ピン)などと称される。分離部110bには、図中最も下側の導体が含まれているので、その導体を基準極としてコネクタに挿入すれば、分離部110bもフレキシブルフラットケーブルとして利用することができるのである。
【0065】
なお、FFC110aの導体121−10と、分離部110bの導体121−11は、いずれも、コネクタに挿入されるとき基準極として用いることはできない。
【0066】
例えば、図5に示されるFFC110は、極数が40のフレキシブルフラットケーブルであったとし、導体121−1乃至導体121−40を含む構成であるものとする。FFC110がFFC110aと分離部110bに分割されたので、分離部110bの極数は30となっている。すなわち、分離部110bには、導体121−11乃至導体121−40が含まれている。このうち、導体121−40は、コネクタに挿入する際に基準極とされる導体として用いることができる。
【0067】
いま、ユーザが、例えば、極数が20のフレキシブルフラットケーブルを必要としている場合、導体121−20と、導体121−21との間のミシン目に沿って、分離部110bを2つに分割すればよい。これにより、分離部110bが、分離部110cと、極数が20のFFC110dにさらに分割されることになる。そして、ユーザは、このようにして得られたFFC110dを極数が20のフレキシブルフラットケーブルとして用いることができる。
【0068】
このように、本発明によれば、フレキシブルフラットケーブルが分割された後、残った部分(例えば、分離部110b)を再利用することができるのである。
【0069】
従来の技術では、例えば、設計変更などに伴って変更後のコネクタのピン数に対応するフレキシブルフラットケーブルを生産しても、最初に生産した変更前のフレキシブルフラットケーブルは不要となり、そのための費用増加、廃棄物増加となっていた。
【0070】
これに対して、本発明のFFC110は、フレキシブルフラットケーブルが分割された後、残った部分を再利用することができるので、部材を効率的に利用することができる。
【0071】
勿論、本発明のFFC110も従来のFFC10と同様に、配線スペースが小さくなり、実装密度を向上させることができ、例えば、可動部や狭い部分の配線も容易かつ確実に行うことができるという特性を有している。また、本発明のFFC110は、やはり、コネクタへの挿抜が簡単で、実装コストが低減できるとともに、耐振動性、耐衝撃性にもすぐれている。
【0072】
なお、本発明のフレキシブルフラットケーブルは、例えば、予め既定端子数(10ピン、20ピン、30ピン、40ピン等)に対応するものをそれぞれ用意しておくと便利である。また、それらの既定端子数に対応するフレキシブルフラットケーブルであって、既定長さ(50mm、100mm、200mm等)に合わせて作成されたフレキシブルフラットケーブルをそれぞれ用意しておくとさらに便利である。すなわち、このようにすることで、例えば、装置や回路の設計段階において、コネクタのピン数やコネクタの取り付け位置の変更があっても、即時対応することができる。
【0073】
次に、図6のフローチャートを参照して、本発明のFFC110を製造するフレキシブルフラットケーブル(FFC)製造処理について説明する。この処理は、例えば、FFC110を生産、製造するためのFFC製造装置により実行される。
【0074】
ステップS21において、FFC製造装置は、予め設定された数の導体を、所定のピッチ寸法で同一方向に配置する。例えば、極数40のFFC110を製造する場合、導体121−1乃至導体121−4が所定のピッチ寸法で同一方向に配置される。
【0075】
ステップS22において、FFC製造装置は、ステップS21で配置した導体121−1乃至導体121−4のそれぞれを挟み込むように、上面絶縁層131と下面絶縁層132を接着する。
【0076】
ステップS23において、FFC製造装置は、ステップS22の処理で接着された上面絶縁層131と下面絶縁層132にミシン目を設ける。このとき、ミシン目は、例えば、図3を参照して上述したように、各導体の間の位置に設けられる。
【0077】
ステップS24において、FFC製造装置は、例えば、図4に示されるように補強板133と補強板134を、下面絶縁層132の下に接着する。
【0078】
ステップS25において、FFC製造装置は、ステップS24の処理で接着された補強板133と補強板134にハーフカットを設ける。このとき、ハーフカット目は、例えば、図3を参照して上述したように、各導体の間の位置に設けられる。
【0079】
なお、予めミシン目が設けられた上面絶縁層131および下面絶縁層132、並びに予めハーフカットが設けられた補強板133および補強板134が用いられるようにしてもよい。この場合、ステップS23とステップS25の処理は、省略することができる。
【0080】
このようにして、本発明のフレキシブルフラットケーブルであるFFC110が製造されるのである。
【0081】
なお、本明細書において上述した一連の処理は、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
【0082】
また、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0083】
110 フレキシブルフラットケーブル(FFC), 121 導体, 131 上面絶縁層, 131a ミシン目, 132 下面絶縁層, 133 補強板, 133a ハーフカット, 134 補強板, 134a ハーフカット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入されるコネクタの端子と接触する所定のピッチ寸法で配置された複数の導体と、
前記複数の導体の配置方向と垂直上側に配置される上面絶縁層と、
前記複数の導体の配置方向と垂直下側に配置される下面絶縁層と、
接続先のコネクタの厚み寸法に対応する補強板とを有し、
前記上面絶縁層と、前記下面絶縁層が前記複数の導体を挟んで接着され、
前記上面絶縁層および前記下面絶縁層には、前記導体の長手方向と平行にミシン目が設けられ、
前記補強板には、前記導体の長手方向と平行にハーフカットが設けられる
フレキシブルフラットケーブル。
【請求項2】
前記ミシン目および前記ハーフカットに沿って、所定の数の導体を有する新たなフレキシブルフラットケーブルと、分離部に分割される
請求項1に記載のフレキシブルフラットケーブル。
【請求項3】
挿入されるコネクタの端子と接触する複数の導体を、所定のピッチ寸法で配置し、
前記複数の導体の配置方向と垂直上側に配置される上面絶縁層と前記複数の導体の配置方向と垂直下側に配置される下面絶縁層とを、前記複数の導体を挟んで接着し、
前記上面絶縁層および前記下面絶縁層に、前記導体の長手方向と平行にミシン目を設け、
接続先のコネクタの厚み寸法に対応する補強板をさらに接着し、
前記補強板に、前記導体の長手方向と平行にハーフカットを設ける
ステップを有するフレキシブルフラットケーブル製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−244714(P2010−244714A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−89058(P2009−89058)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】