ブレーキ装置
【課題】エレベータの巻上機100において、加工の手間を軽減することに加えて、ブレーキドラム2に対して進退するブレーキシュー5のストローク動作をよりスムーズにすることを目的とする。
【解決手段】回転するブレーキドラム2の内周側において、ブレーキドラム2のドラム面31に対して前進した際にブレーキドラム2のドラム面31を押圧してブレーキドラム2の回転を制動するブレーキシュー5とブレーキシュー5にかかるブレーキドラム2の回転トルク荷重を受ける固定されたガイド部材16との間に、棒状のゴムを支持体18として配置する。ブレーキシュー5とガイド部材16との間に配置された支持体18はブレーキシュー5のブレーキドラム2に対する進退時に変形し、ブレーキシュー5の進退動作をガイドする。
【解決手段】回転するブレーキドラム2の内周側において、ブレーキドラム2のドラム面31に対して前進した際にブレーキドラム2のドラム面31を押圧してブレーキドラム2の回転を制動するブレーキシュー5とブレーキシュー5にかかるブレーキドラム2の回転トルク荷重を受ける固定されたガイド部材16との間に、棒状のゴムを支持体18として配置する。ブレーキシュー5とガイド部材16との間に配置された支持体18はブレーキシュー5のブレーキドラム2に対する進退時に変形し、ブレーキシュー5の進退動作をガイドする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、エレベータ巻上機のブレーキ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図16は、エレベータの従来の巻上機100の内部構造を示す断面図である。
図16では、正面から見た従来の巻上機100の左半面についてその断面を示している。
従来のエレベータの巻上機100について、図16に基づいて以下に説明する。
例えば、従来のエレベータの巻上機100は、駆動綱車(図示省略)にエレベータのかごを懸吊するロープが巻き掛けられ、ロープの他端にはエレベータのかごの昇降を補助するための重りが懸吊されている。駆動綱車は図16においてブレーキドラム2の裏側(奥側)に位置し、ブレーキドラム2と結合している。巻上機100は、モーター(図示省略)が駆動綱車を左右に回動してエレベータのかごを昇降し、駆動綱車に連動して回動するブレーキドラム2を内側から押圧して制動することにより昇降させたエレベータのかごを制動する。
電磁ブレーキ部1は、ブレーキドラム2に内蔵され、ブレーキドラム2を制動する内部拡張型のブレーキ装置であり、可動鉄心4と電磁石になる一体型固定鉄心15とを備え、可動鉄心4の先端にはブレーキシュー5が取付けられている。また、可動鉄心4はブレーキドラム2の内周面に180°対向して配置されている。電磁ブレーキ部1は、一体型固定鉄心15に内蔵した電磁コイル13に通電して可動鉄心4を一体型固定鉄心15に吸引することによってブレーキシュー5のブレーキドラム2に対する制動を解放し、通電を遮断して吸引力を無くし、押し付けバネ12の力でブレーキシュー5をブレーキドラム2に押し付けることによってブレーキドラム2を制動する。
また、従来の巻上機100のブレーキ装置では、巻上機100の強度部材であるハウジング14がブレーキシュー5にかかるブレーキドラム2の回転トルクを受けるガイド部材16となっており、そのガイド部材16を案内としてブレーキシュー5が摺動し、ライニング17がブレーキドラム2のドラム面31に接触することでライニング17とドラム面31の摩擦によりブレーキドラム2が制動する。
【特許文献1】特開2005−016649号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
安定した摺動により高い制動力を得るためには、ブレーキシュー5とガイド部材16との間に最適なすき間(10分の数ミリメートル程度)を確保する必要がある。そのため、従来の巻上機100のブレーキ装置は、ガイド部材16の機械加工に高い精度と良好な面精度が要求され、精度を満たすために加工条件を落とさざるを得なく、加工時間が長く掛っている。
【0004】
本発明は、例えば、加工の手間を軽減することに加えて、ブレーキドラム2に対して進退するブレーキシュー5のストローク動作をよりスムーズにすることにより、加工コストを低減すると共により信頼性の高いブレーキ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のブレーキ装置は、回転するロータードラムの内周側において前記ロータードラムの内周面に面して開口する固定部材開口部を有して固定して配置された固定部材と、前記固定部材の前記固定部材開口部に配置され前記ロータードラムに対して進退し前記ロータードラムに対して前進した際に前記ロータードラムの内周面を押圧して前記ロータードラムの回転を制動するブレーキシューとを備えるブレーキ装置であり、前記固定部材と前記ブレーキシューとの間に配置され両端が前記固定部材と前記ブレーキシューとに固定され、前記ロータードラムに対して進退する前記ブレーキシューを支持する支持体を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、例えば、ブレーキシュー5とハウジング14のガイド部材16(固定部材)との間に弾性体(支持体の一例)を配置することにより、ブレーキドラム2に対して進退するブレーキシュー5のストローク動作を弾性体が変形して案内し、ブレーキシュー5のストローク動作をよりスムーズにすることができる。これにより、より制動力および信頼性の高いブレーキ装置を得ることができる。また、弾性体がストローク動作を案内することにより、ブレーキシュー5とガイド部材16との間に最適なすき間を確保するためのガイド部材16の加工には従来ほどの高い加工精度が不要となる。これにより、ガイド部材16の加工時間を短縮することができ、ブレーキ装置の製造コストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1におけるブレーキ装置101を備えた巻上機100の正面図である。図1において、A−A線から左の半面は巻上機100の断面を示している。
図2は、実施の形態1における非制動時のブレーキ装置101の拡大図である。
図3、図4は、実施の形態1における制動時のブレーキ装置101の拡大図である。
実施の形態1におけるブレーキ装置101および実施の形態1におけるブレーキ装置101を備える巻上機100について、図1〜図4に基づいて以下に説明する。
但し、上記従来技術と共通する事項については説明を省略する。なお、実施の形態1におけるブレーキ装置101は上記電磁ブレーキ部1に相当するものである。
【0008】
まず、図1に基づいて実施の形態1における巻上機100およびブレーキ装置101の全体構成について説明する。
巻上機100は基体となるハウジング14の内部に軸102を中心に一平面上で回転するブレーキドラム2(ロータードラム)を備え、さらに、ブレーキドラム2の内周側にブレーキドラム2を制動するブレーキ装置101を備える。
また、ハウジング14はブレーキシュー5にかかるブレーキドラム2の回転トルクを受ける固定のガイド部材16(固定部材)を有し、ガイド部材16はブレーキドラム2の内周側においてブレーキドラム2のドラム面31(内周面)に面して開口する開口部103(固定部材開口部)を有する。但し、ガイド部材16はハウジング14と一体的に設ける必要はなく、固定鉄心15と一体的に設けてもよく、固定されていればよい。
また、ブレーキシュー5は可動鉄心4(アーマチュア)に連結されてガイド部材16の開口部103に配置され、押し付けバネ12の伸縮と固定鉄心15の磁力とによりブレーキドラム2のドラム面31に対して進退し、ブレーキドラム2に対して前進した際にブレーキドラム2のドラム面31を押圧してブレーキドラム2の回転を制動する。
【0009】
そこで、ブレーキドラム2の回転を制動するためにはブレーキシュー5をブレーキドラム2のドラム面31に対してスムーズに案内することによりブレーキドラム2のドラム面31を十分に押圧する必要がある。
【0010】
実施の形態1におけるブレーキ装置101は、ブレーキシュー5をブレーキドラム2のドラム面31に対してスムーズに進退させる案内部として、ガイド部材16とブレーキシュー5とのすき間(数ミリメートル程度)に支持体18を備えることを特徴とする。この支持体18は、例えば、ゴム材や板ばねのような弾性体で構成され、その両端がガイド部材16とブレーキシュー5とに固定され、ブレーキシュー5を支持し、ブレーキドラム2のドラム面31に対してブレーキシュー5を案内する。
実施の形態1におけるブレーキ装置101は、支持体18を備えることにより、よりスムーズなブレーキシュー5の進退動作を得ることができ、より高い信頼性を得ることができる。また、実施の形態1におけるブレーキ装置101は、ブレーキシュー5を進退させるためにブレーキシュー5の摺動面32をガイド部材16の摺動面33に接してブレーキシュー5をガイド部材16に対して摺動させる必要がないため、ブレーキシュー5とガイド部材16との間に最適なすき間寸法(従来、10分の数ミリメートル程度)を得るための高い機械加工精度が不要となる。これにより、ブレーキ装置101の製造において、加工時間を短縮し、加工コストを低減することが可能となる。
【0011】
また、図1において、ブレーキドラム2は右回り又は左回りに回転し、ブレーキシュー5はブレーキドラム2の回転方向側の両端面に支持体18が取り付けられる。つまり、ブレーキシュー5はブレーキドラム2の回転上流側(左回りの場合、図1の左断面図における上側)とブレーキドラム2の回転下流側(左回りの場合、図1の左断面図における下側)とに支持体18を備える。支持体18は両端面それぞれに1つずつ取り付けても構わないし、複数個ずつ取り付けても構わない。
【0012】
次に、図2に基づいて、ブレーキドラム2に対する制動を解放する際のブレーキ装置101の動作について説明する。
ブレーキドラム2の回転を制動しない非制動時には、ブレーキ装置101は電磁コイル13に電流を流して固定鉄心15を磁化し、磁石となった固定鉄心15により可動鉄心4を押し付けバネ12の伸長力に抗してより強い力で引き付けることにより、可動鉄心4と連結するブレーキシュー5をブレーキドラム2から後退させる。このとき、ブレーキシュー5のブレーキドラム2と対向する面に取り付けられた摩擦材であるライニング17はブレーキドラム2のドラム面31から乖離し、ブレーキドラム2の回転に対する制動が解放される。
このとき、乖離したブレーキシュー5のライニング17とブレーキドラム2のドラム面31とのすき間は10分の数ミリメートル程度である。
【0013】
次に、図3および図4に基づいて、ブレーキドラム2の回転を制動する際のブレーキ装置101の動作について説明する。
次に、ブレーキドラム2の回転を制動する制動時には、図3において、ブレーキ装置101は電磁コイル13への通電を止め、固定鉄心15を非磁石化する。これにより、可動鉄心4は伸長する押し付けバネ12により固定鉄心15から押し離され、ブレーキシュー5は可動鉄心4に連動してブレーキドラム2に向かって前進する。そして、ブレーキシュー5に取り付けられたライニング17はブレーキドラム2のドラム面31に当接し、ブレーキドラム2の回転を制動する。
ここで、実施の形態1におけるブレーキ装置101では、ブレーキシュー5とガイド部材16とに固定して取り付けられた支持体18がブレーキシュー5の端部において変形(伸長、収縮など)して、ブレーキドラム2のドラム面31に対するブレーキシュー5の前進を補助し、ブレーキシュー5のライニング17をブレーキドラム2のドラム面31に向けてスムーズに案内する。
また、ブレーキシュー5のブレーキドラム2に対する前進時、ブレーキシュー5とガイド部材16との間に支持体18があることにより、ガイド部材16の摺動面33とブレーキシュー5の摺動面32とが接触してブレーキシュー5がガイド部材16に対して摺動することが抑止される。
【0014】
また、巻上機100がモーターを停止してブレーキドラム2の回転を止めたときでも、エレベータのかごとエレベータのかごを懸吊するロープの他端に取り付けられた重りとの重量(かご内の人・物を含む)および昇降位置の関係に応じて、ブレーキドラム2およびブレーキドラム2の回転を制動するブレーキシュー5にはエレベータのかごが懸吊されている側と重りが懸吊されている側とのいずれかの方向に回転しようとする回転トルク(制動トルク)がかかる。
【0015】
このとき、板ばね37、先端を凸半球状に形成するボルト35および凹半球状の球面座36を介して可動鉄心4と連結するブレーキシュー5は球面座36での回転と板ばね37の弾性とによりブレーキドラム2の回転トルクがかかる下流側(回転トルクによる回転先側)に傾き、回転下流側に位置する支持体18(図4における下側の支持体18)はブレーキシュー5にかかる制動トルク荷重を吸収する。これにより、ブレーキ装置101はブレーキドラム2に対する制動力を十分に確保する。
【0016】
実施の形態1において、巻上機100の構成として、ロータードラム(ブレーキドラム2)の内周側に設置されるブレーキ装置101において、ブレーキシュー5の動作をより安定させた信頼性の高いブレーキ装置101の構造について説明した。
実施の形態1において説明したこのブレーキ装置101は、ブレーキシュー5とガイド部材16とのすき間にゴム(支持体18の一例)を設置し、ブレーキシュー5の動作を弾性の変形によってガイドすることを特徴とする。
【0017】
実施の形態1における巻上機100は以下の構成を備える。
(a)巻上機100に設けられて回転し、内面に制動面(ドラム面31)を有するブレーキドラム2
(b)ブレーキドラム2の内周側に設けられた電磁石機構(電磁コイル13)
(c)ブレーキドラム2の制動面に対向して設けられ、電磁石機構によってブレーキドラム2の中心方向に進退してブレーキドラム2の回転を制動解放する制動片(ブレーキシュー5)
(d)この制動片の進退方向の直角方向の両側面に隙間を有して対向するガイド片(ガイド部材16)
(e)このガイド片と制動片との隙間に設けられ、制動片をガイド片に弾性支持する弾性体
【0018】
これにより、ドラム面31へブレーキシュー5を押し付ける時の動作を、ブレーキシュー5とガイド部材16との金属同士の摺動ではなく、弾性の変形によりガイドすることができ、金属接触をなくしブレーキシュー5のストロークをより安定化することができる。
【0019】
実施の形態2.
実施の形態2では、ブレーキシュー5の制動トルクをガイド部材16で受けることにより支持体18の負荷を軽減するために、ブレーキシュー5およびガイド部材16の支持体18を取り付ける部分に凹部を有する形態について説明する。
以下、上記実施の形態1や上記従来技術と共通する事項については説明を省略する。
【0020】
図5は、実施の形態2における非制動時のブレーキ装置101の拡大図である。
図6は、実施の形態2における非制動時の支持体取付凹部の拡大図である。
図7は、実施の形態2における制動時のブレーキ装置101の拡大図である。
図8は、実施の形態2における制動時の支持体取付凹部の拡大図である。
実施の形態2のブレーキ装置101において支持体18を取り付けるためにブレーキシュー5およびガイド部材16に設けた凹部について、図5〜図8に基づいて以下に説明する。
【0021】
図5〜図8に示すように、実施の形態2におけるブレーキ装置101は、ゴム系素材の弾性体である支持体18を取り付けるために、ブレーキシュー5の摺動面32およびガイド部材16の摺動面33に凹部40を有する。但し、凹部40はブレーキシュー5の摺動面32またはガイド部材16の摺動面33のいずれか一方にのみ設けても構わない。
【0022】
図5、図6に示す非制動時のブレーキ装置101において、非変形時の支持体18は凹部40において固定され、ブレーキシュー5を支持する。支持体18が固定して取り付けられる凹部40は非変形時の支持体18の外形寸法より大きく開口することを特徴とする。
例えば、図6に示すように、凹部40は非変形時の支持体18(上端部または下端部)の外形寸法と略同一の内形寸法を持つ固定部41を底側に有し、支持体18はこの固定部41に挿入されて凹部40に固定される。また、凹部40は非変形時の支持体18(上部または下部)の外形(円筒形、四角柱形、三角柱形など)の寸法より大きい内形寸法を持つ大形部42を固定部41と拡大部43との間に有する。また、凹部40は非変形時の支持体18(伸長方向中央部)の外形寸法より大きな内形寸法を持ち開口側に近いほど内形を広げる拡大部43(凹部開口部の一例)を開口側に有する。例えば、拡大部43は大形部42を面取りして形成される。
【0023】
前記実施の形態1におけるブレーキ装置101は、ブレーキシュー5にかかる制動トルク荷重を支持体18が繰り返し受けるため、支持体18の劣化が懸念される。
そこで、実施の形態2におけるブレーキ装置101は、図7、図8に示すように、ブレーキ制動時において、制動トルクを受けて変形した支持体18を支持体18の外形より大きく開口する凹部40に収容させることにより、ブレーキシュー5とガイド部材16とのすき間を無くし、ブレーキシュー5とガイド部材16との金属同士を接触させ、ブレーキシュー5にかかる制動トルク荷重をガイド部材16で受ける。
こうした構造にすることで、支持体18にかかる荷重負担を軽減でき、支持体18の劣化を抑制し、支持体18の長寿命化を図ることができる。
【0024】
図9、図10は、実施の形態2における非制動時の支持体取付凹部の拡大図である。
実施の形態2において、凹部40は、図9に示すように、拡大部43を有さずに固定部41と大形部42(凹部開口部の一例)とで構成しても良いし、図10に示すように、大形部42を有さずに固定部41と拡大部43(凹部開口部の一例)とで構成しても良い。また、凹部40に固定部41を有さず、支持体18の端面を凹部40の底面に直接接着して支持体18を凹部40に固定しても構わない。
【0025】
また、実施の形態2において、支持体18を形成する弾性体は、ゴム系素材だけではなく、金属製のバネ(例えば、コイルバネ)であっても構わない。
【0026】
また、1つの凹部40に取り付ける支持体18は1つでも複数でも構わない。
【0027】
実施の形態2において説明したブレーキ装置101は、ブレーキシュー5の摺動面32及びガイド部材16の摺動面33に設けられた穴(凹部40)に、例えば、円筒状のゴム(支持体18)を1つないし複数配置し、ブレーキシュー5に過度の制動トルク荷重が加わった時にはゴムが変形して摺動面同士が接触することを特徴とする。
この凹部40は、ブレーキシュー5の摺動面32とガイド部材16の摺動面33とが当接した際に当接部分に空間を形成し、凹部開口部が拡大するように形成されたことを特徴とする。
ガイド部材16がブレーキシュー5と当接して制動トルクを受ける際、凹部40内のゴム(支持体の一例)が撓むとともに進退方向に変形する。このとき、ゴムが凹部開口側においてブレーキシュー5とガイド部材16との摺動方向に変形する。凹部40が開口部を拡大するように形成されることで、ゴムが凹部40内で無理なく変形できる。
これにより、エレベータで使用されるブレーキ装置101のブレーキシュー5にかかるカゴとオモリとのアンバランス分を保持するための荷重(制動トルク荷重)を繰り返し受けるゴム(支持体18)のヘタリ及び劣化を改善することができる。つまり、ブレーキシュー5のストローク時のガイドはゴムの変形で行い、トルク保持時はガイド部材16がブレーキシュー5と金属接触して荷重を受けることにより、ゴムの延命化が可能となる。
【0028】
実施の形態3.
実施の形態3では、支持体18として、円柱形や四角柱形などの棒状のゴム材や金属性コイルバネの代わりに、金属性の板ばねを用いる形態について説明する。
以下、前記実施の形態1と異なる事項について説明し、説明を省略する事項については前記実施の形態1と同様である。
【0029】
図11は、実施の形態3における非制動時のブレーキ装置101の拡大図である。
図12、図13は、実施の形態3における制動時のブレーキ装置101の拡大図である。
支持体18に金属製の板ばねを用いた場合のブレーキ装置101について、図11〜図13に基づいて以下に説明する。
【0030】
図11〜図13に示すように、実施の形態3におけるブレーキ装置101は、ガイド部材16の摺動面33に固定された平板部51(第1の片の一例)と、ブレーキシュー5の摺動面32に固定された平板部52(第2の片の一例)と、平板部51と平板部52とを連結する連結部53(第3の片の一例)とを有する金属製の板ばねである支持体18を備えることを特徴とする。
特に、連結部53は、図11に示すように、断面において、平板部51および平板部52と連結する部分で開口し、平板部51と平板部52との間隔より大きな直径を持つ円状を形成することを特徴とする。つまり、連結部53の全体は円筒状を形成する。また、連結部53の断面は、図11に示す非制動時において、平板部51と平板部52との間隔で開口するアルファベットのC字形状を形成する。
支持体18は、連結部53が断面を円状に形成されることにより、ブレーキシュー5の進退動作をガイドし易くする。
但し、支持体18の連結部53は断面が円状でなくても構わず、平板部51と平板部52との間隔で開口する断面がくの字状(横向きV字形状)、コの字状(横向きU字形状)などを形成してもよい。
また、平板部51と平板部52とを連結する連結部53は、平板部51および平板部52に対して、一端だけでなく、両端に設けてもよく、両端において連結部53の形状が異なっても構わない。
また、支持体18の平板部51や平板部52は板状ではなく棒状であっても構わない。
【0031】
図12に示す制動時のブレーキ装置101において、支持体18は連結部53が変形することにより、ブレーキシュー5のブレーキドラム2への前進動作をガイドする。
また、図13において、ブレーキシュー5がブレーキドラム2に対する制動トルク荷重を受けた場合、ブレーキドラム2の回転下流側(図13における下側)に位置する支持体18は連結部53が平板部51および平板部52と連結する開口部分で押し潰され、平板部51と平板部52とが当接する。これにより、ブレーキシュー5にかかる制動トルク荷重をガイド部材16で受けることができ、ブレーキ装置101はブレーキドラム2を十分に制動することができる。またこのとき、ブレーキドラム2の回転上流側(図13における上側)に位置する支持体18は連結部53が平板部51および平板部52と連結する開口部分で伸長し、平板部51と平板部52との間隔が広がる。
【0032】
実施の形態3において説明したブレーキ装置101は、ブレーキシュー5とガイド部材16とのすき間に金属製の板バネを支持体18として設置し、ブレーキシュー5の動作をバネの変形によってガイドすることを特徴とする。
さらに、金属製の板バネがブレーキシュー5の進退方向の直角方向に撓むように湾曲されていることを特徴とする。
実施の形態3では、支持体18に金属製の板バネを使用することにより、支持体18の耐久性(弾性特性)が向上し、ブレーキ装置101が長期的に安定した制動を確保することができる。また、制動時において、ブレーキシュー5にかかるブレーキドラム2に対する制動トルク荷重を板バネを介してガイド部材16で確実に受けることができる。
【0033】
実施の形態4.
実施の形態4では、実施の形態1〜実施の形態3以外の支持体18の形態について説明する。
【0034】
例えば、実施の形態1および実施の形態2で説明した棒状の支持体18は、図14に示すように、ブレーキ装置101の非制動時においてブレーキシュー5およびガイド部材16との間に垂直ではなく角度を持って取り付けることにより、支持体18の伸縮力によりブレーキドラム2に対するブレーキシュー5の前進またはブレーキシュー5の後退をよりスムーズにさせてもよい。
【0035】
また例えば、図15に示すように、支持体18をローラ61(回転体の一例)、本体62およびバネ63(弾性体の一例)で構成し、ローラ61の回転によりブレーキドラム2に対するブレーキシュー5の進退動作をガイドし、バネ63の伸縮によりブレーキシュー5にかかるブレーキドラム2に対する制動トルク荷重をガイド部材16で受けるようにしてもよい。
また、ローラ61の代わりに球体(回転体の一例)を用いてもよいし、バネ63を有さずに回転体を介して制動トルク荷重をガイド部材16で受けるようにしてもよい。
【0036】
各実施の形態においてエレベータの巻上機100のブレーキ装置101について説明したが、支持体18を有することを特徴とするブレーキ装置101はエレベータ以外の巻上機100に用いても、物を昇降する巻上機100以外に用いても構わず、例えば、車のタイヤブレーキに用いても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】実施の形態1におけるブレーキ装置101を備えた巻上機100の正面図。
【図2】実施の形態1における非制動時のブレーキ装置101の拡大図。
【図3】実施の形態1における制動時のブレーキ装置101の拡大図。
【図4】実施の形態1における制動時のブレーキ装置101の拡大図。
【図5】実施の形態2における非制動時のブレーキ装置101の拡大図。
【図6】実施の形態2における非制動時の支持体取付凹部の拡大図。
【図7】実施の形態2における制動時のブレーキ装置101の拡大図。
【図8】実施の形態2における制動時の支持体取付凹部の拡大図。
【図9】実施の形態2における非制動時の支持体取付凹部の拡大図。
【図10】実施の形態2における非制動時の支持体取付凹部の拡大図。
【図11】実施の形態3における非制動時のブレーキ装置101の拡大図。
【図12】実施の形態3における制動時のブレーキ装置101の拡大図。
【図13】実施の形態3における制動時のブレーキ装置101の拡大図。
【図14】実施の形態4における非制動時のブレーキ装置101の拡大図。
【図15】実施の形態4における非制動時のブレーキ装置101の拡大図。
【図16】エレベータの従来の巻上機100の内部構造を示す断面図。
【符号の説明】
【0038】
1 電磁ブレーキ部、2 ブレーキドラム、4 可動鉄心、5 ブレーキシュー、12 押し付けバネ、13 電磁コイル、14 ハウジング、15 固定鉄心、16 ガイド部材、17 ライニング、18 支持体、31 ドラム面、32,33 摺動面、35 ボルト、36 球面座、37 板ばね、40 凹部、41 固定部、42 大形部、43 拡大部、51,52 平板部、53 連結部、61 ローラ、62 本体、63 バネ、100 巻上機、101 ブレーキ装置、102 軸、103 開口部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、エレベータ巻上機のブレーキ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図16は、エレベータの従来の巻上機100の内部構造を示す断面図である。
図16では、正面から見た従来の巻上機100の左半面についてその断面を示している。
従来のエレベータの巻上機100について、図16に基づいて以下に説明する。
例えば、従来のエレベータの巻上機100は、駆動綱車(図示省略)にエレベータのかごを懸吊するロープが巻き掛けられ、ロープの他端にはエレベータのかごの昇降を補助するための重りが懸吊されている。駆動綱車は図16においてブレーキドラム2の裏側(奥側)に位置し、ブレーキドラム2と結合している。巻上機100は、モーター(図示省略)が駆動綱車を左右に回動してエレベータのかごを昇降し、駆動綱車に連動して回動するブレーキドラム2を内側から押圧して制動することにより昇降させたエレベータのかごを制動する。
電磁ブレーキ部1は、ブレーキドラム2に内蔵され、ブレーキドラム2を制動する内部拡張型のブレーキ装置であり、可動鉄心4と電磁石になる一体型固定鉄心15とを備え、可動鉄心4の先端にはブレーキシュー5が取付けられている。また、可動鉄心4はブレーキドラム2の内周面に180°対向して配置されている。電磁ブレーキ部1は、一体型固定鉄心15に内蔵した電磁コイル13に通電して可動鉄心4を一体型固定鉄心15に吸引することによってブレーキシュー5のブレーキドラム2に対する制動を解放し、通電を遮断して吸引力を無くし、押し付けバネ12の力でブレーキシュー5をブレーキドラム2に押し付けることによってブレーキドラム2を制動する。
また、従来の巻上機100のブレーキ装置では、巻上機100の強度部材であるハウジング14がブレーキシュー5にかかるブレーキドラム2の回転トルクを受けるガイド部材16となっており、そのガイド部材16を案内としてブレーキシュー5が摺動し、ライニング17がブレーキドラム2のドラム面31に接触することでライニング17とドラム面31の摩擦によりブレーキドラム2が制動する。
【特許文献1】特開2005−016649号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
安定した摺動により高い制動力を得るためには、ブレーキシュー5とガイド部材16との間に最適なすき間(10分の数ミリメートル程度)を確保する必要がある。そのため、従来の巻上機100のブレーキ装置は、ガイド部材16の機械加工に高い精度と良好な面精度が要求され、精度を満たすために加工条件を落とさざるを得なく、加工時間が長く掛っている。
【0004】
本発明は、例えば、加工の手間を軽減することに加えて、ブレーキドラム2に対して進退するブレーキシュー5のストローク動作をよりスムーズにすることにより、加工コストを低減すると共により信頼性の高いブレーキ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のブレーキ装置は、回転するロータードラムの内周側において前記ロータードラムの内周面に面して開口する固定部材開口部を有して固定して配置された固定部材と、前記固定部材の前記固定部材開口部に配置され前記ロータードラムに対して進退し前記ロータードラムに対して前進した際に前記ロータードラムの内周面を押圧して前記ロータードラムの回転を制動するブレーキシューとを備えるブレーキ装置であり、前記固定部材と前記ブレーキシューとの間に配置され両端が前記固定部材と前記ブレーキシューとに固定され、前記ロータードラムに対して進退する前記ブレーキシューを支持する支持体を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、例えば、ブレーキシュー5とハウジング14のガイド部材16(固定部材)との間に弾性体(支持体の一例)を配置することにより、ブレーキドラム2に対して進退するブレーキシュー5のストローク動作を弾性体が変形して案内し、ブレーキシュー5のストローク動作をよりスムーズにすることができる。これにより、より制動力および信頼性の高いブレーキ装置を得ることができる。また、弾性体がストローク動作を案内することにより、ブレーキシュー5とガイド部材16との間に最適なすき間を確保するためのガイド部材16の加工には従来ほどの高い加工精度が不要となる。これにより、ガイド部材16の加工時間を短縮することができ、ブレーキ装置の製造コストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1におけるブレーキ装置101を備えた巻上機100の正面図である。図1において、A−A線から左の半面は巻上機100の断面を示している。
図2は、実施の形態1における非制動時のブレーキ装置101の拡大図である。
図3、図4は、実施の形態1における制動時のブレーキ装置101の拡大図である。
実施の形態1におけるブレーキ装置101および実施の形態1におけるブレーキ装置101を備える巻上機100について、図1〜図4に基づいて以下に説明する。
但し、上記従来技術と共通する事項については説明を省略する。なお、実施の形態1におけるブレーキ装置101は上記電磁ブレーキ部1に相当するものである。
【0008】
まず、図1に基づいて実施の形態1における巻上機100およびブレーキ装置101の全体構成について説明する。
巻上機100は基体となるハウジング14の内部に軸102を中心に一平面上で回転するブレーキドラム2(ロータードラム)を備え、さらに、ブレーキドラム2の内周側にブレーキドラム2を制動するブレーキ装置101を備える。
また、ハウジング14はブレーキシュー5にかかるブレーキドラム2の回転トルクを受ける固定のガイド部材16(固定部材)を有し、ガイド部材16はブレーキドラム2の内周側においてブレーキドラム2のドラム面31(内周面)に面して開口する開口部103(固定部材開口部)を有する。但し、ガイド部材16はハウジング14と一体的に設ける必要はなく、固定鉄心15と一体的に設けてもよく、固定されていればよい。
また、ブレーキシュー5は可動鉄心4(アーマチュア)に連結されてガイド部材16の開口部103に配置され、押し付けバネ12の伸縮と固定鉄心15の磁力とによりブレーキドラム2のドラム面31に対して進退し、ブレーキドラム2に対して前進した際にブレーキドラム2のドラム面31を押圧してブレーキドラム2の回転を制動する。
【0009】
そこで、ブレーキドラム2の回転を制動するためにはブレーキシュー5をブレーキドラム2のドラム面31に対してスムーズに案内することによりブレーキドラム2のドラム面31を十分に押圧する必要がある。
【0010】
実施の形態1におけるブレーキ装置101は、ブレーキシュー5をブレーキドラム2のドラム面31に対してスムーズに進退させる案内部として、ガイド部材16とブレーキシュー5とのすき間(数ミリメートル程度)に支持体18を備えることを特徴とする。この支持体18は、例えば、ゴム材や板ばねのような弾性体で構成され、その両端がガイド部材16とブレーキシュー5とに固定され、ブレーキシュー5を支持し、ブレーキドラム2のドラム面31に対してブレーキシュー5を案内する。
実施の形態1におけるブレーキ装置101は、支持体18を備えることにより、よりスムーズなブレーキシュー5の進退動作を得ることができ、より高い信頼性を得ることができる。また、実施の形態1におけるブレーキ装置101は、ブレーキシュー5を進退させるためにブレーキシュー5の摺動面32をガイド部材16の摺動面33に接してブレーキシュー5をガイド部材16に対して摺動させる必要がないため、ブレーキシュー5とガイド部材16との間に最適なすき間寸法(従来、10分の数ミリメートル程度)を得るための高い機械加工精度が不要となる。これにより、ブレーキ装置101の製造において、加工時間を短縮し、加工コストを低減することが可能となる。
【0011】
また、図1において、ブレーキドラム2は右回り又は左回りに回転し、ブレーキシュー5はブレーキドラム2の回転方向側の両端面に支持体18が取り付けられる。つまり、ブレーキシュー5はブレーキドラム2の回転上流側(左回りの場合、図1の左断面図における上側)とブレーキドラム2の回転下流側(左回りの場合、図1の左断面図における下側)とに支持体18を備える。支持体18は両端面それぞれに1つずつ取り付けても構わないし、複数個ずつ取り付けても構わない。
【0012】
次に、図2に基づいて、ブレーキドラム2に対する制動を解放する際のブレーキ装置101の動作について説明する。
ブレーキドラム2の回転を制動しない非制動時には、ブレーキ装置101は電磁コイル13に電流を流して固定鉄心15を磁化し、磁石となった固定鉄心15により可動鉄心4を押し付けバネ12の伸長力に抗してより強い力で引き付けることにより、可動鉄心4と連結するブレーキシュー5をブレーキドラム2から後退させる。このとき、ブレーキシュー5のブレーキドラム2と対向する面に取り付けられた摩擦材であるライニング17はブレーキドラム2のドラム面31から乖離し、ブレーキドラム2の回転に対する制動が解放される。
このとき、乖離したブレーキシュー5のライニング17とブレーキドラム2のドラム面31とのすき間は10分の数ミリメートル程度である。
【0013】
次に、図3および図4に基づいて、ブレーキドラム2の回転を制動する際のブレーキ装置101の動作について説明する。
次に、ブレーキドラム2の回転を制動する制動時には、図3において、ブレーキ装置101は電磁コイル13への通電を止め、固定鉄心15を非磁石化する。これにより、可動鉄心4は伸長する押し付けバネ12により固定鉄心15から押し離され、ブレーキシュー5は可動鉄心4に連動してブレーキドラム2に向かって前進する。そして、ブレーキシュー5に取り付けられたライニング17はブレーキドラム2のドラム面31に当接し、ブレーキドラム2の回転を制動する。
ここで、実施の形態1におけるブレーキ装置101では、ブレーキシュー5とガイド部材16とに固定して取り付けられた支持体18がブレーキシュー5の端部において変形(伸長、収縮など)して、ブレーキドラム2のドラム面31に対するブレーキシュー5の前進を補助し、ブレーキシュー5のライニング17をブレーキドラム2のドラム面31に向けてスムーズに案内する。
また、ブレーキシュー5のブレーキドラム2に対する前進時、ブレーキシュー5とガイド部材16との間に支持体18があることにより、ガイド部材16の摺動面33とブレーキシュー5の摺動面32とが接触してブレーキシュー5がガイド部材16に対して摺動することが抑止される。
【0014】
また、巻上機100がモーターを停止してブレーキドラム2の回転を止めたときでも、エレベータのかごとエレベータのかごを懸吊するロープの他端に取り付けられた重りとの重量(かご内の人・物を含む)および昇降位置の関係に応じて、ブレーキドラム2およびブレーキドラム2の回転を制動するブレーキシュー5にはエレベータのかごが懸吊されている側と重りが懸吊されている側とのいずれかの方向に回転しようとする回転トルク(制動トルク)がかかる。
【0015】
このとき、板ばね37、先端を凸半球状に形成するボルト35および凹半球状の球面座36を介して可動鉄心4と連結するブレーキシュー5は球面座36での回転と板ばね37の弾性とによりブレーキドラム2の回転トルクがかかる下流側(回転トルクによる回転先側)に傾き、回転下流側に位置する支持体18(図4における下側の支持体18)はブレーキシュー5にかかる制動トルク荷重を吸収する。これにより、ブレーキ装置101はブレーキドラム2に対する制動力を十分に確保する。
【0016】
実施の形態1において、巻上機100の構成として、ロータードラム(ブレーキドラム2)の内周側に設置されるブレーキ装置101において、ブレーキシュー5の動作をより安定させた信頼性の高いブレーキ装置101の構造について説明した。
実施の形態1において説明したこのブレーキ装置101は、ブレーキシュー5とガイド部材16とのすき間にゴム(支持体18の一例)を設置し、ブレーキシュー5の動作を弾性の変形によってガイドすることを特徴とする。
【0017】
実施の形態1における巻上機100は以下の構成を備える。
(a)巻上機100に設けられて回転し、内面に制動面(ドラム面31)を有するブレーキドラム2
(b)ブレーキドラム2の内周側に設けられた電磁石機構(電磁コイル13)
(c)ブレーキドラム2の制動面に対向して設けられ、電磁石機構によってブレーキドラム2の中心方向に進退してブレーキドラム2の回転を制動解放する制動片(ブレーキシュー5)
(d)この制動片の進退方向の直角方向の両側面に隙間を有して対向するガイド片(ガイド部材16)
(e)このガイド片と制動片との隙間に設けられ、制動片をガイド片に弾性支持する弾性体
【0018】
これにより、ドラム面31へブレーキシュー5を押し付ける時の動作を、ブレーキシュー5とガイド部材16との金属同士の摺動ではなく、弾性の変形によりガイドすることができ、金属接触をなくしブレーキシュー5のストロークをより安定化することができる。
【0019】
実施の形態2.
実施の形態2では、ブレーキシュー5の制動トルクをガイド部材16で受けることにより支持体18の負荷を軽減するために、ブレーキシュー5およびガイド部材16の支持体18を取り付ける部分に凹部を有する形態について説明する。
以下、上記実施の形態1や上記従来技術と共通する事項については説明を省略する。
【0020】
図5は、実施の形態2における非制動時のブレーキ装置101の拡大図である。
図6は、実施の形態2における非制動時の支持体取付凹部の拡大図である。
図7は、実施の形態2における制動時のブレーキ装置101の拡大図である。
図8は、実施の形態2における制動時の支持体取付凹部の拡大図である。
実施の形態2のブレーキ装置101において支持体18を取り付けるためにブレーキシュー5およびガイド部材16に設けた凹部について、図5〜図8に基づいて以下に説明する。
【0021】
図5〜図8に示すように、実施の形態2におけるブレーキ装置101は、ゴム系素材の弾性体である支持体18を取り付けるために、ブレーキシュー5の摺動面32およびガイド部材16の摺動面33に凹部40を有する。但し、凹部40はブレーキシュー5の摺動面32またはガイド部材16の摺動面33のいずれか一方にのみ設けても構わない。
【0022】
図5、図6に示す非制動時のブレーキ装置101において、非変形時の支持体18は凹部40において固定され、ブレーキシュー5を支持する。支持体18が固定して取り付けられる凹部40は非変形時の支持体18の外形寸法より大きく開口することを特徴とする。
例えば、図6に示すように、凹部40は非変形時の支持体18(上端部または下端部)の外形寸法と略同一の内形寸法を持つ固定部41を底側に有し、支持体18はこの固定部41に挿入されて凹部40に固定される。また、凹部40は非変形時の支持体18(上部または下部)の外形(円筒形、四角柱形、三角柱形など)の寸法より大きい内形寸法を持つ大形部42を固定部41と拡大部43との間に有する。また、凹部40は非変形時の支持体18(伸長方向中央部)の外形寸法より大きな内形寸法を持ち開口側に近いほど内形を広げる拡大部43(凹部開口部の一例)を開口側に有する。例えば、拡大部43は大形部42を面取りして形成される。
【0023】
前記実施の形態1におけるブレーキ装置101は、ブレーキシュー5にかかる制動トルク荷重を支持体18が繰り返し受けるため、支持体18の劣化が懸念される。
そこで、実施の形態2におけるブレーキ装置101は、図7、図8に示すように、ブレーキ制動時において、制動トルクを受けて変形した支持体18を支持体18の外形より大きく開口する凹部40に収容させることにより、ブレーキシュー5とガイド部材16とのすき間を無くし、ブレーキシュー5とガイド部材16との金属同士を接触させ、ブレーキシュー5にかかる制動トルク荷重をガイド部材16で受ける。
こうした構造にすることで、支持体18にかかる荷重負担を軽減でき、支持体18の劣化を抑制し、支持体18の長寿命化を図ることができる。
【0024】
図9、図10は、実施の形態2における非制動時の支持体取付凹部の拡大図である。
実施の形態2において、凹部40は、図9に示すように、拡大部43を有さずに固定部41と大形部42(凹部開口部の一例)とで構成しても良いし、図10に示すように、大形部42を有さずに固定部41と拡大部43(凹部開口部の一例)とで構成しても良い。また、凹部40に固定部41を有さず、支持体18の端面を凹部40の底面に直接接着して支持体18を凹部40に固定しても構わない。
【0025】
また、実施の形態2において、支持体18を形成する弾性体は、ゴム系素材だけではなく、金属製のバネ(例えば、コイルバネ)であっても構わない。
【0026】
また、1つの凹部40に取り付ける支持体18は1つでも複数でも構わない。
【0027】
実施の形態2において説明したブレーキ装置101は、ブレーキシュー5の摺動面32及びガイド部材16の摺動面33に設けられた穴(凹部40)に、例えば、円筒状のゴム(支持体18)を1つないし複数配置し、ブレーキシュー5に過度の制動トルク荷重が加わった時にはゴムが変形して摺動面同士が接触することを特徴とする。
この凹部40は、ブレーキシュー5の摺動面32とガイド部材16の摺動面33とが当接した際に当接部分に空間を形成し、凹部開口部が拡大するように形成されたことを特徴とする。
ガイド部材16がブレーキシュー5と当接して制動トルクを受ける際、凹部40内のゴム(支持体の一例)が撓むとともに進退方向に変形する。このとき、ゴムが凹部開口側においてブレーキシュー5とガイド部材16との摺動方向に変形する。凹部40が開口部を拡大するように形成されることで、ゴムが凹部40内で無理なく変形できる。
これにより、エレベータで使用されるブレーキ装置101のブレーキシュー5にかかるカゴとオモリとのアンバランス分を保持するための荷重(制動トルク荷重)を繰り返し受けるゴム(支持体18)のヘタリ及び劣化を改善することができる。つまり、ブレーキシュー5のストローク時のガイドはゴムの変形で行い、トルク保持時はガイド部材16がブレーキシュー5と金属接触して荷重を受けることにより、ゴムの延命化が可能となる。
【0028】
実施の形態3.
実施の形態3では、支持体18として、円柱形や四角柱形などの棒状のゴム材や金属性コイルバネの代わりに、金属性の板ばねを用いる形態について説明する。
以下、前記実施の形態1と異なる事項について説明し、説明を省略する事項については前記実施の形態1と同様である。
【0029】
図11は、実施の形態3における非制動時のブレーキ装置101の拡大図である。
図12、図13は、実施の形態3における制動時のブレーキ装置101の拡大図である。
支持体18に金属製の板ばねを用いた場合のブレーキ装置101について、図11〜図13に基づいて以下に説明する。
【0030】
図11〜図13に示すように、実施の形態3におけるブレーキ装置101は、ガイド部材16の摺動面33に固定された平板部51(第1の片の一例)と、ブレーキシュー5の摺動面32に固定された平板部52(第2の片の一例)と、平板部51と平板部52とを連結する連結部53(第3の片の一例)とを有する金属製の板ばねである支持体18を備えることを特徴とする。
特に、連結部53は、図11に示すように、断面において、平板部51および平板部52と連結する部分で開口し、平板部51と平板部52との間隔より大きな直径を持つ円状を形成することを特徴とする。つまり、連結部53の全体は円筒状を形成する。また、連結部53の断面は、図11に示す非制動時において、平板部51と平板部52との間隔で開口するアルファベットのC字形状を形成する。
支持体18は、連結部53が断面を円状に形成されることにより、ブレーキシュー5の進退動作をガイドし易くする。
但し、支持体18の連結部53は断面が円状でなくても構わず、平板部51と平板部52との間隔で開口する断面がくの字状(横向きV字形状)、コの字状(横向きU字形状)などを形成してもよい。
また、平板部51と平板部52とを連結する連結部53は、平板部51および平板部52に対して、一端だけでなく、両端に設けてもよく、両端において連結部53の形状が異なっても構わない。
また、支持体18の平板部51や平板部52は板状ではなく棒状であっても構わない。
【0031】
図12に示す制動時のブレーキ装置101において、支持体18は連結部53が変形することにより、ブレーキシュー5のブレーキドラム2への前進動作をガイドする。
また、図13において、ブレーキシュー5がブレーキドラム2に対する制動トルク荷重を受けた場合、ブレーキドラム2の回転下流側(図13における下側)に位置する支持体18は連結部53が平板部51および平板部52と連結する開口部分で押し潰され、平板部51と平板部52とが当接する。これにより、ブレーキシュー5にかかる制動トルク荷重をガイド部材16で受けることができ、ブレーキ装置101はブレーキドラム2を十分に制動することができる。またこのとき、ブレーキドラム2の回転上流側(図13における上側)に位置する支持体18は連結部53が平板部51および平板部52と連結する開口部分で伸長し、平板部51と平板部52との間隔が広がる。
【0032】
実施の形態3において説明したブレーキ装置101は、ブレーキシュー5とガイド部材16とのすき間に金属製の板バネを支持体18として設置し、ブレーキシュー5の動作をバネの変形によってガイドすることを特徴とする。
さらに、金属製の板バネがブレーキシュー5の進退方向の直角方向に撓むように湾曲されていることを特徴とする。
実施の形態3では、支持体18に金属製の板バネを使用することにより、支持体18の耐久性(弾性特性)が向上し、ブレーキ装置101が長期的に安定した制動を確保することができる。また、制動時において、ブレーキシュー5にかかるブレーキドラム2に対する制動トルク荷重を板バネを介してガイド部材16で確実に受けることができる。
【0033】
実施の形態4.
実施の形態4では、実施の形態1〜実施の形態3以外の支持体18の形態について説明する。
【0034】
例えば、実施の形態1および実施の形態2で説明した棒状の支持体18は、図14に示すように、ブレーキ装置101の非制動時においてブレーキシュー5およびガイド部材16との間に垂直ではなく角度を持って取り付けることにより、支持体18の伸縮力によりブレーキドラム2に対するブレーキシュー5の前進またはブレーキシュー5の後退をよりスムーズにさせてもよい。
【0035】
また例えば、図15に示すように、支持体18をローラ61(回転体の一例)、本体62およびバネ63(弾性体の一例)で構成し、ローラ61の回転によりブレーキドラム2に対するブレーキシュー5の進退動作をガイドし、バネ63の伸縮によりブレーキシュー5にかかるブレーキドラム2に対する制動トルク荷重をガイド部材16で受けるようにしてもよい。
また、ローラ61の代わりに球体(回転体の一例)を用いてもよいし、バネ63を有さずに回転体を介して制動トルク荷重をガイド部材16で受けるようにしてもよい。
【0036】
各実施の形態においてエレベータの巻上機100のブレーキ装置101について説明したが、支持体18を有することを特徴とするブレーキ装置101はエレベータ以外の巻上機100に用いても、物を昇降する巻上機100以外に用いても構わず、例えば、車のタイヤブレーキに用いても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】実施の形態1におけるブレーキ装置101を備えた巻上機100の正面図。
【図2】実施の形態1における非制動時のブレーキ装置101の拡大図。
【図3】実施の形態1における制動時のブレーキ装置101の拡大図。
【図4】実施の形態1における制動時のブレーキ装置101の拡大図。
【図5】実施の形態2における非制動時のブレーキ装置101の拡大図。
【図6】実施の形態2における非制動時の支持体取付凹部の拡大図。
【図7】実施の形態2における制動時のブレーキ装置101の拡大図。
【図8】実施の形態2における制動時の支持体取付凹部の拡大図。
【図9】実施の形態2における非制動時の支持体取付凹部の拡大図。
【図10】実施の形態2における非制動時の支持体取付凹部の拡大図。
【図11】実施の形態3における非制動時のブレーキ装置101の拡大図。
【図12】実施の形態3における制動時のブレーキ装置101の拡大図。
【図13】実施の形態3における制動時のブレーキ装置101の拡大図。
【図14】実施の形態4における非制動時のブレーキ装置101の拡大図。
【図15】実施の形態4における非制動時のブレーキ装置101の拡大図。
【図16】エレベータの従来の巻上機100の内部構造を示す断面図。
【符号の説明】
【0038】
1 電磁ブレーキ部、2 ブレーキドラム、4 可動鉄心、5 ブレーキシュー、12 押し付けバネ、13 電磁コイル、14 ハウジング、15 固定鉄心、16 ガイド部材、17 ライニング、18 支持体、31 ドラム面、32,33 摺動面、35 ボルト、36 球面座、37 板ばね、40 凹部、41 固定部、42 大形部、43 拡大部、51,52 平板部、53 連結部、61 ローラ、62 本体、63 バネ、100 巻上機、101 ブレーキ装置、102 軸、103 開口部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転するロータードラムの内周側において前記ロータードラムの内周面に面して開口する固定部材開口部を有して固定して配置された固定部材と、前記固定部材の前記固定部材開口部に配置され前記ロータードラムに対して進退し前記ロータードラムに対して前進した際に前記ロータードラムの内周面を押圧して前記ロータードラムの回転を制動するブレーキシューとを備えるブレーキ装置において、
前記固定部材と前記ブレーキシューとの間に配置され両端が前記固定部材と前記ブレーキシューとに固定され、前記ロータードラムに対して進退する前記ブレーキシューを支持する支持体
を備えたことを特徴とするブレーキ装置。
【請求項2】
前記支持体は弾性体を有することを特徴とする請求項1記載のブレーキ装置。
【請求項3】
前記支持体は前記ブレーキシューの進退に応じて変形するゴム材であることを特徴とする請求項1または請求項2記載のブレーキ装置。
【請求項4】
前記固定部材と前記ブレーキシューとの少なくともいずれかにおいて、前記支持体の一端が取り付けられる凹部であり前記支持体の非変形時の外形寸法より大きく開口する凹部を有することを特徴とする請求項3記載のブレーキ装置。
【請求項5】
前記凹部は、前記凹部の底側において前記支持体の非変形時の外形寸法と略同一の内形寸法を持ち前記支持体を前記凹部に固定する凹部固定部と、前記凹部の開口側において前記支持体の外形寸法より大きな内形寸法を持ち変形時の前記支持体を収容する凹部開口部とを有することを特徴とする請求項4記載のブレーキ装置。
【請求項6】
前記支持体は、前記固定部材に固定された第1の片と、前記ブレーキシューに固定された第2の片と、前記第1の片と前記第2の片とを連結する第3の片とを有し、前記第3の片が前記ブレーキシューの進退に応じて弾性変形する板バネであることを特徴とする請求項1または請求項2記載のブレーキ装置。
【請求項7】
前記支持体の前記第3の片は前記支持体の前記第1の片と前記支持体の前記第2の片との間隔より大きな直径を持つ円状を断面に形成することを特徴とする請求項6記載のブレーキ装置。
【請求項1】
回転するロータードラムの内周側において前記ロータードラムの内周面に面して開口する固定部材開口部を有して固定して配置された固定部材と、前記固定部材の前記固定部材開口部に配置され前記ロータードラムに対して進退し前記ロータードラムに対して前進した際に前記ロータードラムの内周面を押圧して前記ロータードラムの回転を制動するブレーキシューとを備えるブレーキ装置において、
前記固定部材と前記ブレーキシューとの間に配置され両端が前記固定部材と前記ブレーキシューとに固定され、前記ロータードラムに対して進退する前記ブレーキシューを支持する支持体
を備えたことを特徴とするブレーキ装置。
【請求項2】
前記支持体は弾性体を有することを特徴とする請求項1記載のブレーキ装置。
【請求項3】
前記支持体は前記ブレーキシューの進退に応じて変形するゴム材であることを特徴とする請求項1または請求項2記載のブレーキ装置。
【請求項4】
前記固定部材と前記ブレーキシューとの少なくともいずれかにおいて、前記支持体の一端が取り付けられる凹部であり前記支持体の非変形時の外形寸法より大きく開口する凹部を有することを特徴とする請求項3記載のブレーキ装置。
【請求項5】
前記凹部は、前記凹部の底側において前記支持体の非変形時の外形寸法と略同一の内形寸法を持ち前記支持体を前記凹部に固定する凹部固定部と、前記凹部の開口側において前記支持体の外形寸法より大きな内形寸法を持ち変形時の前記支持体を収容する凹部開口部とを有することを特徴とする請求項4記載のブレーキ装置。
【請求項6】
前記支持体は、前記固定部材に固定された第1の片と、前記ブレーキシューに固定された第2の片と、前記第1の片と前記第2の片とを連結する第3の片とを有し、前記第3の片が前記ブレーキシューの進退に応じて弾性変形する板バネであることを特徴とする請求項1または請求項2記載のブレーキ装置。
【請求項7】
前記支持体の前記第3の片は前記支持体の前記第1の片と前記支持体の前記第2の片との間隔より大きな直径を持つ円状を断面に形成することを特徴とする請求項6記載のブレーキ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
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【図11】
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【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2009−19654(P2009−19654A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−180821(P2007−180821)
【出願日】平成19年7月10日(2007.7.10)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月10日(2007.7.10)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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