説明

プラスティックスタックヒール製造用金型の製造方法、この方法によって製造された金型、プラスティックスタックヒールの製造方法及びプラスティックスタックヒール

【課題】 プラスティックスタックヒールをヒール本体に積革層を貼り付けるのではなく、ヒール本体の成形時に積革(スタック)凹凸模様を同時に成形するようにする。
【解決手段】 切削加工によって形成されたヒールモデル12の表面にマスキングテープ14を貼り付けた後このヒールモデル12のマスキングテープ14を含む表面に塗料をスプレー塗布して塗料層16を形成し、マスキングテープ14を剥離して表面に凹凸模様18が形成された模様付きヒールモデルを形成し、このヒールモデルを模型としてプラスティックスタックヒール用の金型を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスティック材料から作られ表面に積革模様を有するプラスティックスタックヒールを製造するのに適した金型の製造方法、この方法によって製造された金型、この金型を用いてプラスティックスタックヒールの製造方法及びこの方法によって製造されたプラスティックヒールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
表面に積革模様を有するプラスティックスタックヒールは、材料が軽い上に金型にプラスティック材料を流し込むだけで容易に製造することができるので、最近、広く普及されている。
【0003】
従来技術の積革模様付きプラスティックスタックヒールにおいて、積革模様は、プラスティックヒール本体の表面に積皮層を貼り付けて形成されているが(特許文献1参照)、この方法は、積革層の貼り付け作業が面倒である上に、積革層を皺を生ずることなく綺麗にプラスティックヒール本体の表面に貼り付けることが難しく、また積革層が剥がれ易く、製品の品質を低下する欠点があった。
【0004】
【特許文献1】特開平6−46904号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする1つの課題は、面倒な貼り付け作業を必要とすることなく、擬似積革模様を有するプラスティックスタックヒールを製造するのに適した金型を製造する方法及びこの方法によって製造された金型を提供することにある。
【0006】
本発明が解決しようとする他の課題は、面倒な貼り付け作業をおこなうことなく、擬似積革模様を有するプラスティックスタックヒールを製造する方法及びこの方法によって製造されたプラスティックスタックヒールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の基本的な課題解決手段は、プラスティック材料を成型してプラスティックスタックヒールを成型する金型を製造する方法であって、切削加工によってヒールモデルを形成する工程と、このヒールモデルの表面にマスキングテープを貼り付けた後ヒールモデルのマスキングテープを含む表面に表面凹凸形成材料をスプレー塗布する工程と、マスキングテープを剥離して表面に凹凸模様が形成されたスタック模様付きヒールモデルを形成する工程と、この模様付きヒールモデルを模型にしてスタック模様付きヒールの金型を形成する工程とを備えたプラスティックスタックヒール製造用金型の製造方法を提供することにある。
【0008】
本発明のこの基本的な課題解決手段において、マスキングテープを剥離した後ヒールモデルの表面に形成される凹凸の段部を滑らかにするように表面凹凸材料を薄くスプレーするのが好ましい。
【0009】
また、本発明の基本的な課題解決手段において、ヒールモデルは、切削性のよい材料から作られており、スタック模様付きヒールモデルからスタック模様付きヒールの金型を形成する工程は、前記スタック模様付きヒールモデルから雌型を形成し、その後この雌型によって耐熱性材料の転写モデルを形成し、この転写モデルから金型を形成するようにするのが好ましい。
【0010】
本発明の他の課題解決手段は、上記の課題解決手段による方法によって製造されたスタック模様付きプラスティックスタックヒール製造用金型を提供することにある。
【0011】
本発明の更に他の課題解決手段は、上記の課題解決手段による金型を用いて成型されたプラスティックヒスタックヒール本体の表面に塗層を施してプラスティックスタックヒールを製造する方法を提供することにある。
【0012】
本発明の更に他の課題解決手段は、上記の課題解決手段による方法を用いて製造されたプラスティックスタックヒールを提供することにある。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、積革模様を含む金型が製造されるので、この金型を用いてヒールを成型すると、表面に積革凹凸模様を有するプラスティックスタックヒール本体が形成されるので、この凹凸模様に塗層を施すことによって擬似積革模様を有するプラスティックスタックヒールを形成することができ、従って従来の面倒な積革層を貼り付ける作業が不要となり、プラスティックスタックヒールを容易に製造することができる。
【0014】
また、積革模様は、貼り付けではなく、成型によって形成されるので、好ましくない皺の発生もない上に、積革模様が剥離することもなく、品質の高いプラスティックスタックヒールを製造することができる。
【0015】
更に、金型は、ヒールモデルを形成した後、このヒールモデルをシボ加工することによって凹凸模様を形成するが、シボ加工で用いられたマスキングテープを剥がした後、残る凹凸模様の段部をスプレー塗装によって滑らかにするので、外観の良好な積革模様を得ることができ、高い品質のプラスティックスタックヒールを得ることができる。
【0016】
更に、積革凹凸模様を有するヒールモデルは、転写を介して金型を作るようにすると、ヒールモデルは、切削性はよいが耐熱性の低い材料を用いて容易に得ることができ、金型の製造を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に述べると、図1乃至図9は、本発明の1つの実施の形態による凹凸模様付きプラスティックスタックヒール製造用金型を製造する方法を工程順に示す。
【0018】
本発明の方法は、先ず、図1に示すように、切削性のよい材料から切削によって表面が滑らかなヒールモデル12を形成する。最適な材料は、ケミカルウッドであり、これは、切削加工が容易で短時間でヒールモデル12を形成することができる上に、仕上がりがよく、後の工程で塗料の付着性がよいので好ましい。
【0019】
次に、図2に示すように、このヒールモデル12の表面にシボ加工によって積革模様となるべき凹凸模様を形成する。このシボ加工は、ヒールモデル12に凹凸模様の凹となるべき位置にマスキングテープ14を貼り付け(図2A参照)、その後このヒールモデル12のマスキングテープ14を含む表面に表面凹凸形成材料(塗料)をスプレー塗布して塗料層16を形成する(図2B参照)。
【0020】
マスキングテープ14は、例えば、紙質材料から作られており、約0.5mm程度の幅を有し、相互に約4mmの間隔を保ってヒールモデル12に貼り付けられる。また、塗料としては、例えば、ラッカー系の塗料が用いられ、そのスプレー作業は、スプレーガン又はスプレーノズルを用いて行われるが、その際、塗料の濃度を変えたりエアーやノズルを調節したりして塗料の吹き付け量を適宜制御してシボ目模様のように形成する。なお、図2ではマスキングテープ14の幅寸法に対して隣り合うマスキングテープ14の間隔が小さくなっているが、実際には、図3に示すように、マスキングテープ14の幅寸法に対して隣り合うマスキングテープ14の間隔は充分に大きく設定されている。
【0021】
塗料層16が乾燥した後、図2Cに示すように、マスキングテープ14を剥離し、これによってヒールモデル12の表面にマスキングテープ14があった位置の間に残存する塗料層部分によって凸条(塗料層16の厚み部分に相当)18Pを形成し、隣り合う凸条18Pの間に凹条18Rを形成してこれらの凹凸条によって積革(スタック)凹凸模様18が形成される。
【0022】
図2Cから解るように、凸条18Pは、塗料層16の厚みによって段部を有するので、この段部を滑らかにするために、積革凹凸模様18の上に塗料層16と同じ材料を薄くスプレー塗布する。このようにして、積革凹凸模様18は、凹凸が滑らかに連続して外観を良好にする(図2D参照)。図2Dにおいて、符号18Sは、積革凹凸模様18に追加的に施されて段部を滑らかにした上塗層を示す。このようにして滑らかな積革凹凸模様18を有するヒールモデル12Mが図4に示されている。
【0023】
このように処理が施されて形成されたヒールモデル12Mは、これを模型として金型を製造するが、図示の形態では、このヒールモデル12Mから直接金型を形成するのではなく、図5乃至図8に示すように、耐熱性の材料に転写した後、金型を形成している。
【0024】
即ち、図5に示すように、ヒールモデル12Mを木製の傾斜板20上に取り付け(図5A参照)、これをアクリル樹脂製の枠22の中に入れ、枠22内でヒールモデル12Mのまわりにシリコン容器24からシリコンを流し込んで(図5B参照)、図6に示すように、ヒールモデル12Mの雌型26Fを形成する。
【0025】
次いで、このシリコン製の雌型26Fをアクリル樹脂製の枠28内に入れ、この枠28内に鋳造用石膏容器30から石膏を流し込んで(図7参照)、石膏製の転写モデル32を形成する(図8参照)。これは、図5(A)の傾斜板付きヒールモデル12Mと全く同じ模様と形状とを有する。
【0026】
石膏製の転写モデル32が充分に乾燥した後、図9に示すように、この転写モデル32を鉄枠34内に入れてこの鉄枠34内にアルミニウム合金、亜鉛合金等の鋳造用軽合金を流し込んで、図10に示すように、本発明のプラスティックスタックヒール製造用の金型36を製造する。
【0027】
図10から解るように、この金型36は、図5Aの傾斜板付きヒールモデル12Mの雌型の形態を有し、従ってその型窪内面には積革(スタック)凹凸模様18を補完する凹凸模様を有する。
【0028】
この金型36は、図11に示すように、射出成形機38の型窪として用いられる。この射出成形機38は、金型36を有する固定部38Sと射出材料を供給する材料射出口38INを有する可動部38Mとから成り、可動部38Mを固定部38Sに衝合し、可動部38Mの材料射出口38INを介して射出材料を射出して製品を製造する。
【0029】
プラスティックスタックヒールの材料としてはABS樹脂等を用いることができ、この樹脂を射出成形機38の金型36内に射出して図12に示す如きプラスティックスタックヒール40を製造する。
【0030】
このプラスティックスタックヒール40は、金型38が形成する型窪の内面凹凸模様によって形成される積革凹凸模様40Pを有し、この模様を有する表面に仕上げ塗装を施して最終製品とする。
【0031】
図示の実施の形態で、ヒールモデル12Mから直接金型40を製造しないで、石膏製の転写モデル32を形成し、この転写モデル32を模型として金型40を製造した理由は、ヒールモデル12Mの耐熱性が低く、これに直接軽合金を流し込むことができないため、軽合金の溶融温度である400−850℃に耐えることができる石膏製のモデルに転写する必要があったからである。従って、もし、ヒールモデル12自体が耐熱性を有するなら転写工程を省略することができる。
【0032】
このように、ヒールモデル12にシボ加工を施して積革凹凸模様18を形成することによって積革模様を補完する凹凸模様を有する金型36が製造されるので、この金型36を用いて表面に積革(スタック)凹凸模様を有するプラスティックスタックヒール40が形成され、従ってこの凹凸模様に塗装を施すことによって擬似積革模様を有するプラスティックスタックヒールを製造することができることが解る。これは、従来の面倒な積革層を貼り付ける作業を不要としプラスティックスタックヒールの製造を容易にすることができる。
【0033】
また、プラスティックスタックヒール40の積革模様は、貼り付けではなく、成型によって形成されるので、皺が発生することもない上に、積革模様が剥離することもなく、品質の高いプラスティックスタックヒールを製造することができる。
【0034】
金型36は、ヒールモデルをシボ加工することによって凹凸模様を形成するが、シボ加工で用いられたマスキングテープ14を剥がした後、残る凹凸模様の段部をスプレー塗装によって滑らかにするので、外観の良好な積革模様を得ることができることが解る。
【0035】
また、積革凹凸模様を有するヒールモデルを転写して耐熱性のモデルを介して金型を作るようにすると、ヒールモデルは、切削性のよい材料を用いて容易に得ることができ、金型の製造を容易に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明によれば、プラスティックスタックヒールのモデルにシボ加工を施して積革凹凸模様を形成することによって積革模様を補完する凹凸模様を有する金型を製造することができるので、この金型を用いて表面に積革(スタック)凹凸模様を有するプラスティックスタックヒールを形成することができ、従って積革層を貼り付ける作業を必要とすることなく、品質が高く積革層が剥離することがない良質のプラスティックスタックヒールを製造することができ、産業上の利用性が高いことが解る。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係わる凹凸模様付きプラスティックスタックヒール製造用金型を製造するためのヒールモデルの斜視図である。
【図2】図1のヒールモデルにシボ加工を施す工程を示し、同図(A)は、マスキングテープを施した状態の拡大断面図、同図(B)は、ヒールモデルの表面に塗料をスプレーして塗料層を形成した状態の拡大断面図、同図(C)は、マスキングテープを剥がして積革凹凸模様を形成した状態の拡大断面図、同図(C)は、凹凸を滑らかにするために塗料を追加的にスプレー塗付した状態の拡大断面図である。
【図3】図2(B)の状態のヒールモデルの部分拡大平面図である。
【図4】積革凹凸模様付きヒールモデルの斜視図である。
【図5】図4のヒールモデルから転写モデルを形成する工程を示し、同図(A)は、図4のヒールモデルを傾斜板の上に取り付けた状態の斜視図、同図(B)は傾斜板付きヒールモデルを枠内に入れてシリコンを流す工程を示す斜視図である。
【図6】図5の工程によって製造されたヒールモデルの雌型の斜視図である。
【図7】図6の雌型にシリコンを流し込む工程を示す斜視図である。
【図8】図7の工程によって製造された転写モデルの斜視図である。
【図9】図8の転写モデルから金型を形成するために、図8の転写モデルを枠内に入れて軽合金を流し込む状態を示す斜視図である。
【図10】図9の工程によって製造された金型の斜視図である。
【図11】図10の金型を用いた射出成形機の側面図である。
【図12】図11の射出成形機によって製造されたプラスティックスタックヒールの斜視図である。
【符号の説明】
【0038】
12 ヒールモデル
12M 積革凹凸模様付きヒールモデル
14 マスキングテープ
16 塗料層
18 積革凹凸模様
18P 凸条
18R 凹条
18S 上塗層
20 傾斜板
22 枠
24 シリコン容器
26F 雌型
28 枠
30 石膏容器
32 転写モデル
34 鉄枠
36 金型
38 射出成形機
38S 固定部
38M 可動部
38IN 材料射出口
40 プラスティックスタックヒール
40P 積革模様





















【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスティック材料を成型してプラスティックスタックヒールを成型する金型を製造する方法であって、切削加工によってヒールモデルを形成する工程と、前記ヒールモデルの表面にマスキングテープを貼り付けた後前記ヒールモデルのマスキングテープを含む表面に表面凹凸形成材料をスプレー塗布する工程と、前記マスキングテープを剥離して表面にスタック模様が形成された模様付きヒールモデルを形成する工程と、前記スタック模様付きヒールモデルを模型にして内面にスタック凹凸模様を有する金型を形成する工程とを備えたプラスティックスタックヒール製造用金型の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のプラスティックスタックヒール製造用金型の製造方法であって、前記マスキングテープを剥離した後前記ヒールモデルの表面に形成される凹凸の段部を滑らかにするように前記表面凹凸材料を薄くスプレーすることを特徴とするプラスティックスタックヒール製造用金型の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のプラスティックスタックヒール製造用金型の製造方法であって、前記ヒールモデルは、切削性のよい材料から作られており、前記スタック模様付きヒールモデルから模様付きヒールの金型を形成する工程は、前記模様付きヒールモデルから雌型を形成し、その後前記雌型によって耐熱性材料の転写モデルを形成し、前記転写モデルから金型を形成するようにしたことを特徴とするプラスティックスタックヒール製造用金型の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の方法によって製造されたプラスティックスタックヒール製造用金型。
【請求項5】
請求項4に記載の金型を用いて成型されたプラスティックヒスタックヒール本体の表面に塗装を施してプラスティックスタックヒールを製造する方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法を用いて製造されたプラスティックスタックヒール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−25809(P2006−25809A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−204147(P2004−204147)
【出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【出願人】(592178152)株式会社クリハラ (1)
【Fターム(参考)】