説明

プリント基板のスルーホール壁面欠陥検査装置

【課題】プリント基板のスルーホールの壁面に対する擬似エラーの検出を飛躍的に低減させて、スルーホールの壁面の欠陥の有無を高精度に検出可能な、プリント基板のスルーホール壁面欠陥検査装置を提供する。
【解決手段】プリント基板載置手段と、プリント基板を所定速度で検査位置Sを通過するように搬送する搬送手段と、検査位置Sに位置するプリント基板に形成されたスルーホールの壁面を照射するライン状照射手段2と、ライン状照射手段を介して照射されたスルーホールの壁面の像を撮像するように、スルーホールの中心軸Y方向に対して光軸が所定角度傾斜して配置されたライン状撮像手段3を有し、ライン状照射手段2から出射した光を拡散する拡散手段4が、検査位置Sにおけるライン状照射手段2から出射した光のスルーホールの入射側近傍に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器や電子機器等に使用される、プリント基板のスルーホール壁面について、メッキの欠損や穴詰まり等の欠陥の有無を検査する、プリント基板のスルーホール壁面欠陥検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント基板には、所望の回路パターンを設けるために、スルーホールが形成される。スルーホールは、例えば、樹脂を用いて構成された多層プリント基板をドリル加工により、例えば、穴径が0.35〜0.8mm等の所定の径の大きさに設けられる。また、その壁面には、メッキが施され、隣接する回路パターン間を導通させることができるようになっている。
【0003】
ところで、スルーホールの加工時には、基板を構成する樹脂が壁面に付着したり、ドリル加工による穴の形状に大きな歪みが生じることがある。そのような場合、壁面をメッキし難くなって、メッキの欠損部が生じたり、同じ厚さでメッキできなかったり、或いは、樹脂で穴が遮蔽されたりして、回路パターンの導通不良を招き易い。
このため、プリント基板の品質検査においては、配線パターンの検査とともにスルーホールの検査が必要とされる。
【0004】
しかるに、従来、プリント基板のスルーホールの検査装置としては、例えば、特許文献1〜3に記載のものがある。
【特許文献1】特開平07−174709号公報(図6)
【特許文献2】特開2001−174420号公報(図2、図3、図5)
【特許文献3】特開2001−266127号公報(図4)
【0005】
特許文献1に記載の装置は、スルーホールの真上に配置されたレーザ光源からレーザ光を出射し、コリメータレンズを介して幅のある平行光にした後、絞りを介して、光束の大きさをスルーホールの穴径に合わせた大きさにして、スルーホールの軸方向に沿って照射する。そして、スルーホールを通過した光をその真下に配置された光センサで受光し、受光した光量が所定値に比べて減少しているか否かによって、スルーホールの欠陥の有無を判定するように構成されている。
【0006】
また、特許文献2に記載の装置は、横方向の同じ列に設けられた複数のスルーホールの真上に配置されたレーザ光源からレーザ光を出射し、コリメータレンズを介して幅のある平行光にした後、シリンドリカルレンズを介して焦線状に集束させた集束ライン照明光束を、横方向の同じ列に設けられた複数のスルーホールに沿って、該スルーホールの極く近傍を、該スルーホールの軸方向に平行に照射する。または、平行ライン照明光束を横方向の同じ列に設けられた複数のスルーホールに沿って、該スルーホールの極く近傍を、該スルーホールの軸方向に対して斜めに照射する。基板は、ある程度の透光性を有しており、上記ライン照明光束は、横方向の同じ列に設けられた複数のスルーホールの一方の側壁を照射する。そして、スルーホールの側面に欠陥部があるときにその欠陥部からスルーホール内部に漏れ込み、壁面を反射しながら出射した光を、その真下に配置されたライン光センサで受光し、受光した光量によって、スルーホールの欠陥の有無を判定するように構成されている。
【0007】
即ち、特許文献1,2に記載の装置では、プリント基板を隔てた一方の側から所定の方向に方向付けられた指向性の高い照明光をスルーホール又はその近傍に照射し、スルーホールから出射した光をプリント基板を隔てた他方の側のスルーホールと同軸上に位置する光センサで受光し、その受光量によってスルーホールの欠陥の有無を判定するようになっている。
【0008】
また、特許文献3に記載の装置は、スルーホール用ライン照明光源から出射した光をハーフミラーを介して被検査基板に対して垂直に照射し、スルーホールを通過した光をその延長線上に位置するCCDカメラによりスルーホールの形状を示す光情報として受光されるように構成されている。
【0009】
このように、上記従来のスルーホール検査装置は、いずれも、スルーホールの軸上に配置された光センサやカメラを介してスルーホールを通過する光量やスルーホールの形状を感知することによって、スルーホールの欠陥を判定するように構成されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上記従来のスルーホール検査装置は、いずれも、スルーホールの壁面に直接的に光を照射し、壁面の照射された部位の状態を感知するようには構成されていない。それでは、スルーホールの壁面の状態を高精度には検出することができず、スルーホールの欠陥の判定に誤りを生じ易い。
【0011】
しかも、近年、プリント基板は、飛躍的に高集積化、高密度化されており、製造されるプリント基板にはさらに高精度な品質が求められている。
【0012】
しかるに、プリント基板のスルーホール壁面の状態を直接的に感知することによってスルーホールの欠陥を検査する装置として、例えば、図9に示すようなプリント基板のスルーホールの壁面欠陥検査装置が検討されている。
図9は上記検討にかかるプリント基板のスルーホールの壁面欠陥検査装置の一構成例を示す説明図であり、(a)は要部の配置を示す概略構成図、(b)は(a)における検査位置Sに位置するプリント基板のスルーホールの壁面を照射する照明光の光路を模式的に示す説明図である。なお、図9(a)においては、説明の便宜上、プリント基板は省略してある。
【0013】
図9に示すスルーホール壁面欠陥検査装置は、検査位置Sに位置するプリント基板50に設けられたスルーホール51の壁面51aに対して、スルーホール51の中心軸方向(図9(a)におけるY軸方向)に対して光軸が所定角度α傾斜して配置された照明手段52を介して、斜め下方から例えばハロゲン光などの指向性の高い照明光をファイバー等を介して照射する。それとともに、スルーホール51の壁面51aに照射された光の反射方向にスルーホール51の中心軸方向に対して光軸が所定角度β傾斜して配置された撮像装置53を介して、スルーホール51の壁面51aにおいて光を照射された部位の像を撮像する。そして、その壁面51aの撮像状態を介してスルーホール51の壁面51aの欠陥の有無を判定することができるように構成される。
【0014】
このスルーホール壁面欠陥検査装置によれば、スルーホール51の壁面51aに正常にメッキが施されている場合には、スルーホール51の壁面51aを照射すると、光を照射された部位で光が反射される。このとき、撮像装置53は、スルーホール51の中心軸方向に対して光軸が所定角度β傾斜した位置に配置されている。このため、光を照射されたスルーホール51の壁面51aは、撮像装置53を介して三日月状の明るい像となって撮像されることになる。他方、スルーホール51の壁面51aにメッキの欠損や樹脂の付着による断線などの不良があった場合には、その部位は光が照射されても反射しないため、撮像装置53を介して三日月状の暗い影の像となって撮像されることになる。
そこで、撮像装置53で撮像したスルーホール51の壁面51aの三日月状の像を、既に良品として撮像されているスルーホール51の壁面51aにおける三日月状の像と、明るさ(階調差)について比較等することによって、スルーホール51の壁面51aについての欠陥の有無を判定することができると考えられる。
【0015】
しかし、図9に示すようなプリント基板のスルーホール壁面欠陥検査装置を用いてプリント基板の壁面の検査した場合、実際にはスルーホール51にメッキの欠損などの欠陥が無く正常にメッキが施されていても、上述した三日月状部分が暗い影の像となって撮像され、スルーホール51の壁面51aに欠陥有り(擬似エラー)と判定されてしまうことがあった。
【0016】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、プリント基板のスルーホールの壁面に対する擬似エラーの検出を飛躍的に低減させて、スルーホールの壁面の欠陥の有無を高精度に検出可能な、プリント基板のスルーホール壁面欠陥検査装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、本発明によるプリント基板のスルーホール壁面欠陥検査装置は、プリント基板を載置する載置手段と、前記載置手段に載置された前記プリント基板を所定速度で検査位置を通過するように搬送する搬送手段と、前記検査位置に位置する前記プリント基板に形成された横一列のスルーホールの壁面を照射するように配置されたライン状照射手段と、前記ライン状照射手段を介して照射された前記横一列のスルーホールの壁面の像を撮像するように、前記プリント基板を隔てて該ライン状照射手段とは異なる側において、前記検査位置における該横一列のスルーホールの中心軸方向に対して光軸が所定角度傾斜して配置され、プリント基板に形成されたスルーホールを横一列ごとに所定間隔で走査して撮像するライン状撮像手段を有し、該ライン状撮像手段で撮像された画像を介してプリント基板の該横一列のスルーホールの壁面に施されたメッキの状態を検査できるようにしたプリント基板のスルーホール壁面欠陥検査装置であって、前記ライン状照射手段から出射した光を拡散する拡散手段が、前記検査位置における該ライン状照射手段から出射した光の前記スルーホールの入射側近傍に配置されていることを特徴としている。
【0018】
また、本発明のプリント基板のスルーホール壁面欠陥検査装置においては、前記ライン状照射手段が、ハロゲン光源を用いて構成され、前記検査位置における前記スルーホールの中心軸方向に対して光軸が所定角度傾斜して配置されているのが好ましい。
【0019】
また、本発明のプリント基板のスルーホール壁面欠陥検査装置においては、前記ライン状照射手段が、蛍光灯を用いて構成され、前記検査位置における前記スルーホールの中心軸方向に対して光軸が同軸に配置されているのが好ましい。
【0020】
また、本発明のプリント基板のスルーホール壁面欠陥検査装置においては、前記ライン状照射手段が、前記検査位置を中心とした対称位置に複数組配置されるとともに、前記ライン状撮像手段が、前記検査位置を中心とした対称位置に、前記複数組のライン状照射手段を介して照射された前記スルーホールにおける異なる複数方向の壁面の像をそれぞれ別個に撮像するように、複数組配置されているのが好ましい。
【0021】
また、本発明のプリント基板のスルーホール壁面欠陥検査装置においては、前記ライン状撮像手段が、前記検査位置を中心とした対称位置に、前記ライン状照射手段を介して照射された前記スルーホールにおける異なる複数方向の壁面の像をそれぞれ別個に撮像するように、複数組配置されているのが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、検査位置の近傍で照明光が光拡散板を介してランダムな方向に拡散されてスルーホールの壁面に入射するので、凹部にも光が照射され易くなり、スルーホールの壁面における検査対象となる部位に形成された凹凸の高低差が大きくても、暗い影ができ難くなる。このため、本発明によれば、プリント基板のスルーホールの壁面に対する擬似エラーの検出を飛躍的に低減させて、スルーホールの壁面の欠陥の有無を高精度に検出可能なプリント基板のスルーホール壁面欠陥検査装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本件出願人は、図9に示したような構成のプリント基板のスルーホール壁面欠陥検査装置において、擬似エラーが生ずる原因について検討した。
検討した結果、その原因の一つは、スルーホールを構成する穴の壁面にドリル加工により形成される凹凸(ざらつき)であるとの結論に至った。
即ち、プリント基板にスルーホールをドリルで加工した場合、穴の壁面に形成される凹凸の状態は、使用するドリルの刃の状態に依存する。例えば、過去における使用回数の多いドリルの刃を用いてスルーホールを加工した場合には、基板に形成されたスルーホールの壁面に形成される凹凸の高低差が大きくなり、ざらつきが粗くなる。
【0024】
一方、凹凸部に斜め方向から光を照射すると、凸部で光が反射する一方、凹部を照射すべき光が凸部で遮られて、凸部における光が照射された側の反対側及びそれに続く凹部が影となり易い。そして、凹凸の高低差が大きければ大きいほど、凸部における光が照射された側の反対側及びそれに続く凹部に、影が大きく暗くでき易くなる。
【0025】
また、擬似エラーが生ずる他の原因として、スルーホールの壁面に照射する光の指向性が考えられる。
一般に、プリント基板のスルーホール検査装置の照明光束には、微小な領域を効率よく照射するために、例えば、ハロゲンを用いた指向性の高い光束が採用される。また、スルーホール検査装置に用いる照明光束は、一般に、例えば、上記特許文献1〜3に記載のように、平行光束又は所定方向に方向づけられた集束光束として照射される。
【0026】
このため、スルーホールの壁面に照射した光が凸部で遮られると、凸部における光が照射された側及びそれに続く凹部には、他方向からの光が照射され難いので、上述のようにスルーホールの壁面において凹凸の高低差が大きい場合には、影が暗く大きくでき易くなる。
【0027】
以上述べたような原因が相俟って、図9に示すプリント基板のスルーホール壁面欠陥検査装置において、検査対象であるプリント基板のスルーホールに形成された凹凸の高低差が大きい場合には、凸部における光が照射された側の反対側及びそれに続く凹部にできた暗い影が、撮像装置に撮像されて、擬似エラーとして認識され易くなると考えられる。
【0028】
そこで、本件出願人は、凹凸の高低差が大きくても凸部における光が照射された側の反対側及びそれに続く凹部に極力照明光が照射されるようにして、凸部における光が照射される側の反対側及びそれに続く凹部に影ができ難くするための手段について検討し、本発明を想到するに至った。
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
【0029】
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態にかかるプリント基板のスルーホール壁面欠陥検査装置の要部概略構成を示す説明図である。なお、図1においては、説明の便宜上、プリント基板は省略してある。
第1実施形態のプリント基板のスルーホール壁面欠陥検査装置は、載置手段(図示省略)と、搬送手段(図示省略)と、ライン状照射手段2と、ライン状撮像手段3を有している。
載置手段(図示省略)は、プリント基板を載置することが出来るように構成されている。
搬送手段(図示省略)は、公知のローダーや単軸ロボットを用いて、載置手段に載置されたプリント基板を所定速度で検査位置Sを通過するように搬送することができるように構成されている。
【0030】
ライン状照射手段2は、ハロゲン光源などの照明光源と照明光源から出射した光を平行にするためのコリメートレンズを有してなる光源装置を、検査位置Sに位置するプリント基板に形成された横一列のスルーホールの壁面を照射するように、検査位置Sにおける横一列のスルーホールの中心軸(Y軸)方向に対して光軸が所定角度α傾斜した向きにして、横一列に複数配置して構成されている。
なお、照明光源としては、例えばLEDなど、ハロゲン光源以外の指向性の高い光源を用いることもできる。
また、光源装置における照明光源とコリメートレンズとの間にファイバーを備えて構成しても良い。
【0031】
ライン状撮像手段3は、ライン状照射手段2を介して照射された横一列のスルーホールの壁面の像を撮像するように、プリント基板を隔ててライン状照射手段2とは異なる側において、検査位置Sにおける横一列のスルーホールの中心軸方向に対して光軸が所定角度β傾斜した向きにして、横一列に複数配置されたラインセンサーカメラを用いて、プリント基板に形成されたスルーホールを横一列ごとに所定間隔で走査して撮像するように構成されている。
そして、スルーホール壁面欠陥検査装置は、ライン状撮像手段3で撮像された画像を介してプリント基板の横一列のスルーホールの壁面に施されたメッキの状態を検査することができるように構成されている。
なお、これらの構成は、検討例として図9に示したプリント基板のスルーホール壁面欠陥検査装置における構成とほぼ同じである。
【0032】
さらに、第1実施形態のプリント基板のスルーホール壁面欠陥検査装置は、図9に示した構成とは異なる特徴的な構成として、図1に示すように、ライン状照射手段2から出射した光を拡散する拡散手段4が、検査位置Sにおけるライン状照射手段2から出射した光のスルーホールの入射側近傍に配置されている。
拡散手段4は、公知の拡散板を用いることができる。また、紙等、光を拡散する機能を備えた物品も、拡散板として適用可能である。
【0033】
このように構成された第1実施形態のスルーホール壁面欠陥検査装置によれば、ライン状照射手段2から出射した光が、拡散手段4を介して、指向性が低減されランダムな方向へ拡散されて、スルーホールの内部に入射する。このため、スルーホールの壁面における撮像部位の凹凸の高低差が大きくても、凸部に入射して遮光される方向とは異なるランダムな方向からの光が、凸部における光が照射された側の反対側及びそれに続く凹部に照射され、これらの部位に暗い影ができにくくなる。その結果、ライン状撮像手段3を介して三日月状の明るい像となって撮像され、擬似エラーと判断され難くなる。
【0034】
この点について、以下に詳述する。
上述したように、従来のスルーホール検査装置においては、ハロゲンを用いた指向性の高い光束を用いて、照射範囲が狭く限られるようにして、スルーホールの軸方向に沿った方向に照射していた。これでは、凹凸の高低差が大きい場合には、スルーホールの壁面を十分に照射することができない。
そこで、図9に示すように、スルーホールの壁面を十分照射するために、スルーホールの中心軸方向に対して光軸が所定角度α傾斜して配置された照明手段52を介して斜めから照射する構成が考えられる。しかし、上述したように、図9の構成では、スルーホールの壁面に形成された凹凸の高低差が大きいと、凸部における光が照射された側の反対側及びそれに続く凹部に暗い影ができ易く、擬似エラーを生じ易い。
【0035】
ここで、指向性のある光をスルーホールの壁面に斜めから照射したときの光の作用を模式的に図2に示す。
なお、図2にはスルーホールの壁面に凹凸が形成されない理想上の面を二点鎖線で示すとともに、撮像装置(ライン状撮像手段3、撮像装置3)による撮像範囲を一点鎖線で示してある。
【0036】
図2に示すように、スルーホールの壁面1aの所定部位(ここでは、凹凸部1a12〜1a21に亘る所定範囲)に光が照射されたとする。すると、光は、スルーホールの壁面1aの凸部1a12における頂部までの照射面(図2中、符号aで示す範囲の面)で反射される。一方、スルーホールの壁面1aの凸部1a12における頂部の裏側及び凹部1a21における谷部(図2中、符号bで示す範囲)には、光は照射されない。このため、他方向からスルーホールの壁面1aの凸部1a12における頂部の裏側及び凹部1a21における谷部には、暗い影ができる。それをライン状撮像手段3で撮像すると、図3(a)に明るさを模式的に示すように、壁面1aの照射範囲の画像の大部分が暗い三日月像となって、擬似エラーと判定されてしまい易くなる。
【0037】
なお、図2において、スルーホールの壁面1aに凹凸がない理想的な場合を仮定し、その場合に上記と同様の照明光を照射したとする。この場合、光は、壁面1aにおける符号a〜bで示す範囲の全領域に照射され、反射される。それをライン状撮像手段3で撮像すると、図3(b)に示すように、壁面1aの照射範囲の画像の大部分が明るい三日月状の像となる。なお、図3(b)中、二点鎖線は、図3(a)における内壁の凸部1a12の頂部における光が照射される境界線に対応する位置を便宜的に示したものである。
【0038】
これに対し、第1実施形態のスルーホール壁面欠陥検査装置によれば、指向性のある光をスルーホールの壁面1aの所定部位(ここでは、凹凸部1a12〜1a21に亘る所定範囲)に向けて斜めから出射しても、図4に示すように、拡散手段4を介してランダムな方向へ拡散される。このため、光は、図2の構成において照射されたスルーホールの壁面1aの所定部位(ここでは、凹凸部1a12〜1a21に亘る所定範囲)のみならず、拡散された範囲において他の部位を広く直接的に照射する。さらに、それら他の部位を照射された光が壁面内で反射を繰り返しながらスルーホール2の撮像側出口に進行する。このため、スルーホールの壁面1aの凸部1a12における頂部の裏側及び凹部1a21における谷部(図4中、符号bで示す範囲)にも、スルーホールの壁面内で反射を繰り返した光が照射され易くなる。それを撮像手段3で撮像すると、図5に明るさを模式的に示すように、壁面1aの照射範囲の画像の大部分がややうす暗い三日月像となるが、スルーホールの壁面1aの凸部1a12における頂部までの照射面(図4中、符号aで示す範囲の面)との明るさの差(階調差)は小さくなり、全体的に明るい画像となる。このため、正常と判定されて、擬似エラーと判定され難くなる。
【0039】
なお、図4において、スルーホールの壁面1aの凸部1a12における頂部の裏側及び凹部1a21における谷部(図4中、符号bで示す範囲)にメッキが施されていない場合には、光が照射されても、その部位で光が反射しないため、ライン状撮像手段3で撮像した場合には、暗い像となる。このため、第1実施形態のスルーホール壁面欠陥検査装置によっても、スルーホールの内壁に実際に欠陥がある場合には、エラーと判断することができる。
【0040】
従って、第一実施形態のスルーホール壁面欠陥検査装置によれば、擬似エラーの発生を低減することができ、スルーホールの壁面欠陥検査の信頼性を格段に向上させることができる。
【0041】
(第2実施形態)
図6は本発明の第2実施形態にかかるプリント基板のスルーホール壁面欠陥検査装置の要部概略構成を示す説明図である。
第2実施形態のプリント基板のスルーホール壁面欠陥検査装置では、ライン状ライン状照射手段2’が、光源装置の照明光源に蛍光灯を用いるとともに、検査位置Sにおけるスルーホールの中心軸(Y軸)方向に対して光軸を同軸に配置して構成されている。
【0042】
また、ライン状撮像手段3は、検査位置Sにおける横一列のスルーホールの中心軸(Y軸)方向に対して光軸が、第1実施形態のライン状撮像手段3における所定角度βよりも大きな角度β’傾斜して配置されている。
その他の構成は第1実施形態のプリント基板のスルーホール壁面欠陥検査装置とほぼ同じである。
【0043】
このように構成された第2実施形態のプリント基板のスルーホール壁面欠陥検査装置によれば、ライン状照射手段2’を構成する蛍光灯から出射した光は、指向性がなく、拡散された状態で拡散手段4に入射する。そして、拡散手段4でさらに拡散されて、スルーホールの内部に入射する。これにより、スルーホールの壁面には全体に亘って広範囲に多方向から様々な角度でもって均一な光が照射される。このため、スルーホールの壁面における撮像部位の凹凸の高低差が大きくても、ランダムな方向からの光が凹凸部にほぼ均等に照射され、凸部における光が入射する側とは反対側及びそれに続く凹部に暗い影がより一層できにくくなる。
【0044】
但し、第2実施形態のプリント基板のスルーホール壁面欠陥検査装置のように、ライン状照射手段2’をスルーホールの中心軸(Y軸)方向に対して光軸を同軸に配置した場合、ライン状照射手段2’から出射し、拡散手段4を経た光のうち、ほぼ光軸に沿って進む所定量の光は、光源からスルーホールの壁面に衝突しないでそのまま通過し、しかも、広範囲に拡散した状態で壁面を照射する。その結果、壁面における所望の撮像部位に照射される光の量が第1実施形態のプリント基板のスルーホール壁面欠陥検査装置に比べて少なくなる。このため、第2実施形態のプリント基板のスルーホール壁面欠陥検査装置において、ライン状撮像手段3の傾斜角度を、スルーホールの中心軸(Y軸)方向に対して光軸が第1実施形態のプリント基板のスルーホール壁面欠陥検査装置と同程度にしたのでは、壁面の画像が暗くなって、壁面の欠陥を精度良く検査できない場合が生ずるおそれがある。
【0045】
そこで、第2実施形態のプリント基板のスルーホール壁面欠陥検査装置では、壁面の光量不足を補う手段として壁面を撮影する解像度を上げるために、ライン状撮像手段3を、スルーホールの中心軸(Y軸)方向に対して光軸が第1実施形態プリント基板のスルーホール壁面欠陥検査装置における所定角度βよりも大きな角度β’傾斜して配置している。このため、スルーホールをそのまま通過した光のライン状撮像手段3への入り込みを防いで、壁面における所望の部位の像を壁面の欠陥を精度良く検査するのに適度な明るさに撮像できる。
【0046】
例えば、ここで図示省略した搬送手段を介したプリント基板を搬送する方向の解像度(送り解像度)をラインセンサーカメラの撮像素子1画素当たり16μm、φ0.8mmのスルーホールを撮影すると場合における、カメラ角度と壁面の解像度との関係について考える。
スルーホールの直径は0.8mmであるから、スルーホールの穴面全体を走査して撮影できる画素数は0.8mm÷0.016mm=50画素である。
図7(a)に示すように、スルーホールは送り解像度16μmで矢印A方向に搬送されるにしたがって、ライン撮像手段3で撮像される撮像部位が、矢印B方向に移動していく。
【0047】
ここで、送り解像度をa、ライン状撮像手段3の検査位置Sにおける横一列のスルーホールの中心軸(Y軸)方向に対する光軸の傾斜角度(カメラ角度)をθとした場合、スルーホールの壁面の撮影解像度をbとすると、図7(b)のように表すことが出来る。
即ち、壁面の撮影解像度bは、
b=a/tanθ
で求まる。
従って、カメラ角度θが9度の場合の壁面の撮影解像度b9は、
b9=0.016/tan(radians(9))≒0.101
また、カメラ角度θが20度の場合の壁面の撮影解像度b20は、
b20=0.016/tan(radians(20))≒0.044
となる。
即ち、カメラ角度θが9度の場合の壁面の撮影解像度は、約101μm、カメラ角度θが20度の場合の壁面の撮影解像度は、約44μmとなる。
【0048】
図7(a)に示すように搬送されるプリント基板のスルーホールを1ラインごとに走査することによって撮影される壁面の像はプリント基板の板厚が1.6mmのとき、図7(c)のように示すことができる。なお、図7中、L1、L2、・・・、L50は、ライン状撮像手段3による1ラインごとの画像の列を示している。
ここで、三日月状部分がスルーホールの壁面を照射した部位の像である。図7(c)に示される1ラインで撮像する撮像範囲が小さいほど解像度が高くなる。上記の計算結果から、カメラ角度θを20度としたほうがカメラ角度θを9度の場合よりも壁面の撮影解像度が高くなることがわかる。
【0049】
第2実施形態のプリント基板のスルーホール壁面欠陥検査装置では、壁面おける所望の撮像部位に照射される光量が第1実施形態のプリント基板のスルーホール壁面欠陥検査装置に比べて少なくなるので、画像の光量不足を解像度を向上することで補うようにしている。但し、ライン状撮像手段3のカメラ角度θ(=角度β)を傾けすぎると、板厚との関係でスルーホールの壁面を両端に亘って撮像することができなくなってしまう。
しかるに、第2実施形態のスルーホールプリント基板のスルーホール壁面欠陥検査装置におけるライン状撮像手段3のカメラ角度θ(=角度β’)としては、15〜20度程度が好ましい。
【0050】
一方、第1実施形態のプリント基板のスルーホール壁面欠陥検査装置では、光を壁面の所定部位に斜めから照射するため、壁面おける所望の撮像部位に照射される光量が十分あり、第2実施形態の装置ほどには解像度を上げる必要がない。しかも、ライン状撮像手段3のカメラ角度θ(=角度β)を所定角度傾けると、壁面の照射部位で反射する光量が強すぎてしまい、却って撮影画像が観察し難くなる。
しかるに、第1実施形態のスルーホールプリント基板のスルーホール壁面欠陥検査装置におけるライン状撮像手段3のカメラ角度θ(=角度β)としては、9〜15度程度が好ましい。
【0051】
以上、本発明のプリント基板のスルーホール壁面欠陥検査装置の実施形態について説明したが、これらの実施形態に限られるものではない。
例えば、上記第1実施形態のプリント基板のスルーホール壁面欠陥検査装置において、ライン状照射手段2を、検査位置Sを中心とした対称位置に複数組配置するとともに、ライン状撮像手段3を、検査位置を中心とした対称位置に、複数組のライン状照射手段2を介して照射されたスルーホールにおける異なる複数方向の壁面の像をそれぞれ別個に撮像するように、複数組配置すると好ましい。
このように構成すれば、一度にスルーホールの壁面を多方向から検査することができ、検査効率、検査速度が向上する。
【0052】
また、上記第2実施形態のプリント基板のスルーホール壁面欠陥検査装置において、ライン状撮像手段2’を、検査位置Sを中心とした対称位置に、ライン状照射手段3を介して照射されたスルーホールにおける異なる複数方向の壁面の像をそれぞれ別個に撮像するように、複数組配置すると好ましい。
このように構成しても、一度にスルーホールの壁面を多方向から検査することができ、検査効率、検査速度が向上する。
【0053】
次に、本発明のプリント基板のスルーホール壁面欠陥検査装置をプリント基板のスルーホール検査システムに適用した構成例について説明する。
図8は本発明にかかるプリント基板のスルーホール壁面欠陥検査装置を備えた、プリント基板のスルーホール検査システムの概略構成図である。
【0054】
図1において、11はプリント基板のスルーホール壁面欠陥検査部署であり、第1実施形態又は第2実施形態のスルーホール壁面欠陥検査装置を備えて構成されている(便宜上、詳細な構成の図示は省略する)。12は検査されるべきプリント基板等の搬入部署、13は検査後のプリント基板等の良品と不良品との選別回収部署である。なお、図1においては、搬送機構は公知技術の単軸ロボット等を用いてプリント基板を搬送するように構成できる。また、良品と不良品判定後の搬送機構としては、コンベア等を用いることができる。
【0055】
ここで、プリント基板のスルーホール壁面欠陥検査システムにおけるプリント基板のスルーホール壁面欠陥検査処理の処理手順を簡単に説明する。
先ず、搬入部署12において、所定枚数の積重ねの形で準備された検査されるべきプリント基板等が搬入ロボット(図8では図示省略)により1枚1枚に分離されて、検査テーブル上へ置かれる。検査テーブル上に置かれたプリント基板等は、例えばクランプ装置で四隅をクランプされた後、単軸ロボットを介して、検査部署11から選別回収部署13へと移動させられ、検査位置を通過する際に検査部署11に設けられたスルーホール壁面欠陥検査装置のライン状照明手段2(又は2’)でスルーホールの壁面を照明されるとともに、ライン状撮像手段3のCCDラインセンサーカメラ等で照射された壁面を撮像される。そして、撮像された画像を介してスルーホールの壁面の欠陥検査が行なわれる。その際、検査部署11で不良品と判定された場合は、その判定信号に基づいて制御される該当するプリント基板等が選別回収部署13へ送り込まれたとき、搬出ロボット(図1では図示省略)により、不良品置き場に回収される。これに対して、検査部署11で良品と判定された場合は、搬出ロボットにより良品置き場に回収される。検査が終了すると、検査テーブルは単軸ロボットを介して搬入部署12におけるもとの位置に戻される。不良品のプリント基板については、選別回収部署13に備えたバーコードプリンターからスルーホールの不良情報が出力される。なお、不良品に選別されたプリント基板については、CCDレビュー機等を介して、壁面の状態を個別に詳細に確認する。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、自動車やサーバー等、高精度で高品質なプリント基板が求められる分野において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるプリント基板のスルーホール壁面欠陥検査装置の要部概略構成を示す説明図である。
【図2】図9で示した検討例において、指向性のある光をスルーホールの壁面に斜めから照射したときの光の作用を模式的に示す原理説明図である。
【図3】図2に示した撮像方向からスルーホールの壁面を走査して撮像したときの画像を示す説明図であり、(a)はスルーホールの壁面に高低差のある凹凸が形成されている場合の画像、(b)はスルーホールの壁面が凹凸のない理想的な面(平面)で形成されている場合の画像をそれぞれ示している。
【図4】第1実施形態のスルーホール壁面検査装置において、指向性のある光をスルーホールの壁面に斜めから照射したときの光の作用を模式的に示す原理説明図である。
【図5】図4に示した撮像方向からスルーホールの壁面を走査して撮像したときの画像を示す説明図であり、スルーホールの壁面に高低差のある凹凸が形成されている場合の画像を示している。
【図6】本発明の第2実施形態にかかるプリント基板のスルーホール壁面欠陥検査装置の要部概略構成を示す説明図である。
【図7】(a),(b)は本発明の各実施形態にかかるプリント基板のスルーホール壁面欠陥検査装置におけるスルーホールの送り解像度と、ライン状撮像手段の角度と、スルーホールの壁面の解像度との関係を示す説明図であり、(c)は本発明の各実施形態にかかるプリント基板のスルーホール壁面欠陥検査装置におけるライン状撮像手段で撮像したスルーホールの画像を示す説明図である。
【図8】本発明にかかるプリント基板のスルーホール壁面欠陥検査装置を備えた、プリント基板のスルーホール検査システムの概略構成図である。
【図9】プリント基板のスルーホールの壁面欠陥検査装置の一構成例を示す説明図であり、(a)は要部の配置を示す概略構成図、(b)は(a)における検査位置Sに位置するプリント基板のスルーホールの壁面を照射する照明光の光路を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0058】
1a プリント基板のスルーホールの壁面
1a11、1a12、1a13、1a14 壁面1aにおける凸部
1a21、1a22、1a23 壁面1aにおける凹部
2、2’、52 ライン状照射手段
3、 ライン状撮像手段
4 拡散手段
50 プリント基板
51 スルーホール
51a スルーホールの壁面
53 撮像装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント基板を載置する載置手段と、
前記載置手段に載置された前記プリント基板を所定速度で検査位置を通過するように搬送する搬送手段と、前記検査位置に位置する前記プリント基板に形成された横一列のスルーホールの壁面を照射するように配置されたライン状照射手段と、前記ライン状照射手段を介して照射された前記横一列のスルーホールの壁面の像を撮像するように、前記プリント基板を隔てて該ライン状照射手段とは異なる側において、前記検査位置における該横一列のスルーホールの中心軸方向に対して光軸が所定角度傾斜して配置され、プリント基板に形成されたスルーホールを横一列ごとに所定間隔で走査して撮像するライン状撮像手段を有し、該ライン状撮像手段で撮像された画像を介してプリント基板の該横一列のスルーホールの壁面に施されたメッキの状態を検査できるようにしたプリント基板のスルーホール壁面欠陥検査装置であって、
前記ライン状照射手段から出射した光を拡散する拡散手段が、前記検査位置における該ライン状照射手段から出射した光の前記スルーホールの入射側近傍に配置されていることを特徴とするプリント基板のスルーホール壁面欠陥検査装置。
【請求項2】
前記ライン状照射手段が、ハロゲン光源を用いて構成され、前記検査位置における前記スルーホールの中心軸方向に対して光軸が所定角度傾斜して配置されていることを特徴とする請求項1に記載のプリント基板のスルーホール壁面欠陥検査装置。
【請求項3】
前記ライン状照射手段が、蛍光灯を用いて構成され、前記検査位置における前記スルーホールの中心軸方向に対して光軸が同軸に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のプリント基板のスルーホール壁面欠陥検査装置。
【請求項4】
前記ライン状照射手段が、前記検査位置を中心とした対称位置に複数組配置されるとともに、前記ライン状撮像手段が、前記検査位置を中心とした対称位置に、前記複数組のライン状照射手段を介して照射された前記スルーホールにおける異なる複数方向の壁面の像をそれぞれ別個に撮像するように、複数組配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のスルーホール壁面欠陥検査装置。
【請求項5】
前記ライン状撮像手段が、前記検査位置を中心とした対称位置に、前記ライン状照射手段を介して照射された前記スルーホールにおける異なる複数方向の壁面の像をそれぞれ別個に撮像するように、複数組配置されていることを特徴とする請求項1又は3に記載のスルーホール壁面欠陥検査装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−127486(P2007−127486A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−319504(P2005−319504)
【出願日】平成17年11月2日(2005.11.2)
【出願人】(000104618)キャビン工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】