説明

リチウム電池用高レートおよび高エネルギーカソード物質

【課題】非水電気化学セルで用いるのに適切なカソード物質を提供する。
【解決手段】それには、銅マンガンバナジウム酸化物および、随意に、フッ化炭素が含まれる。非水電気化学セルには、そのようなカソード物質、および追加的にリチウムアノードを含む非水電気化学セルが含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景を説明する。本開示は概して、銅マンガンバナジウム酸化物および、随意に、フッ化炭素を含む非水電気化学セルにおける使用のために適したカソード物質に関する。加えて、本開示は、そのようなカソード物質を含む非水電気化学セルに関し、およびリチウムアノードをさらに含む、そのような非水電気化学セルに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム電気化学セルは、より一層普通には、電池(バッテリー)と称され、様々な軍需製品および消費者製品において広く用いられる。これらの製品の多くは高エネルギーおよび高パワーバッテリーを用いる。ある程度には、携帯用電子機器の小型化のせいで、増加したパワー性能および使用期間を有するさらにより一層小さなリチウムバッテリーを開発するのが望まれる。上昇したパワー性能を有するより一層小さなバッテリーを開発するための1つの方法は、高エネルギーカソード物質を開発することである。
【0003】
高エネルギーカソード物質の1つの例はフッ化炭素(すなわち、CFx)である。CFxは、非充電式(一次)バッテリーにおいて、とりわけ、軍事デバイスおよび埋め込み型医療装置のためのリチウムアノードと共に用いられることが多い。CFx(式中x=1.0)は、約860mAh/gの比エネルギーを有する。高エネルギーカソード物質の他の例には、銀バナジウム酸化物および二酸化マンガンが含まれ、それらはそれぞれ、約315および308mAh/gの比エネルギーを有する。
【0004】
Liイオンバッテリーのような、充電式(二次)バッテリー用のカソードは、概して一次バッテリーカソードよりも低いエネルギー蓄積能力を有する。しかし、二次バッテリーは典型的に、数百時間充電することができ、それは生涯コストならびにバッテリー処分コストを著しく減少させる。Liイオンバッテリーで用いる二次バッテリーカソードの例には、リチウムコバルト酸化物、リン酸鉄リチウム、およびリチウムニッケルコバルト酸化物が含まれる。
【0005】
より一層長い耐久性および/またはより一層小さいバッテリーを求める要求を満たすために、一次電池のように、より一層高いエネルギーを見せ、二次電池のような、部分的または十分な充電能力を有し、このようにして、バッテリーの寿命を延ばし、そして効果的に全体的コストを下げるカソードの必要性があり続ける。そのような改善された一次および/または二次バッテリーを達成するための可能性がある1つのアプローチとして、混合されたカソード物質が提案されている。混合カソード物質の他の利益には、カソードのレート性能(rate capability)および/または安定性を高めることが含まれ、その一方で単位重量につき、および/または単位容量につき、エネルギー密度が維持される。そのような利益を達成するためのアプローチは、典型的に、高レート対応のカソード物質を、高エネルギー密度カソード物質と混合することが必要であった。
【0006】
米国特許第7,476,467号明細書は、二次リチウムバッテリー用カソード物質を開示する。カソード活物質は(A)スピネル型構造を有するリチウムマンガン金属複合体酸化物および(B)層状構造を有するリチウムニッケルマンガンコバルト複合体酸化物の混合物を含む。カソード活物質は、リチウムおよび金属酸化物の改善された特性のため、室温および高温の双方にて、優れた安全性および長期の使用期間を有していると言われている。
【0007】
この技術における熟練者には、若干の金属酸化物と共にフッ化炭素を含む複合体カソードが、減少した電圧遅延、改善されたレート性能、および低い温度パフォーマンスと一緒にバッテリーを提供する目的のために用いられることが知られている。たとえば、米国特許第5,667,916号は、CFxと、たとえば、酸化銅、または他の物質の混合物を含めた他の物質とのカソード混合物を有するバッテリーを記載する。同様に、米国特許第5,180,642号は、二酸化マンガン(MnO2)、一フッ化炭素(CFx、式中x=1)、または二つの混合物、および酸化バナジウム、バナジウム酸銀、フッ化ビスマス、および硫化チタンからなる群より選ばれる他の添加物を含むカソード混合物を有する電気化学セルまたはバッテリーを開示する。
【0008】
銅バナジウム酸化物電極は、一般に、リチウムバッテリー用によく知られている。たとえば、米国特許第4,310,609号は、正極として、グループIB、IIB、IIIB、IVB、VB、VIB、VIIB、またはVIIIBの金属で、たとえば、酸化銅のようなものと化学的に反応した酸化バナジウムからなる複合体酸化物基材(マトリクス)を有する電気化学セルの使用を開示する。米国特許第5,670,276号は、硝酸銅および酸化銀、または酸化銅および硝酸銀と組合わされるバナジウム酸化物から作成される、銅銀バナジウム酸化物のカソードを有する非水電気化学セルを記載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第7476467号明細書
【特許文献2】米国特許第5667916号明細書
【特許文献3】米国特許第5180642号明細書
【特許文献4】米国特許第4310609号明細書
【特許文献5】米国特許第5670276号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
米国特許第4,310,609号および第5,670,276号の双方において記述される電極物質のエネルギー密度は、酸化マンガンのような若干の活物質に対して改善されるが、リチウムセルおよびバッテリーのため、特にCFxのような高いエネルギー密度の材料と組み合わせて用いるための銅バナジウム酸化物系電極の電気化学的特性および耐用年数を向上させるためにはまだ、著しい必要性が存在する。本発明者らは、今回、簡素で環境に優しい化学合成を用いることによって、増大した容量および望ましい放電プロファイルを有する混合酸化物電極を形成するために、マンガン、銅、およびバナジウムを組み合わせることができることを発見した。
【課題を解決するための手段】
【0011】
概略を説明する。1つの見地は、非水電気化学セルに向けられる。このセルは、次のものを含む。すなわち、(i)アノード、(ii)銅マンガンバナジウム酸化物を含むカソード、(iii)アノードおよびカソードの間に配置されたセパレーター、および(iv)アノード、カソード、およびセパレーターと流体連通する非水電解質である。
【0012】
別の見地は、非水電気化学セルを対象とし、そこでは、銅マンガンバナジウム酸化物は式CuxMnyVzOwを有し、および(i)式中の銅は約1および約3の間の酸化状態を有し、(ii)そのマンガンは約2および約7の間の酸化状態を有し、(iii)そのバナジウムは約2および約5の間の酸化状態を有し、(iv)x、y、およびzの各々は1よりも大きいか、またはゼロに等しい値を有し、(v)x+y+zの合計は約1および約3の間であり、および(vi)wは、ゼロよりも大きな値を有し、そして実験的に決定することができ、そしてx、y、およびzの値と、および銅、マンガン、およびバナジウムの酸化状態とに整合する。
【0013】
別の見地は、上述の非水電気化学セルの1つを対象とし、そこで、カソード物質は追加的にフッ化炭素を含む。
【0014】
別の見地は、そのような電気化学セルを含む種々の電子デバイスを対象とする。
【0015】
以下に詳述する1またはそれよりも多く(1以上)の追加の特長が、本開示の範囲から離れることなく、上記に示した見地の1またはそれよりも多くに組み込むことができることは注目に値する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】例3のCuMnVOのX線回折パターンを示す。
【図2】電気化学試験セルを示す。
【図3】例2のCuMnVOの放電プロファイルを示す。
【図4】例3のCuMnVOの放電プロファイルを示す
【図5】CuMnVO/CF1系セルの放電プロファイルを示す。
【図6】CF1系セルの放電プロファイルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
具体化の詳細な記載を示す。
1.カソード物質組成およびセル成分
【0018】
非水電気化学セルの1以上の性能特性は、銅マンガンバナジウム酸化物を含むカソード物質を用いることによって改善し、または高めることができる。具体化では、そのような非水セルの性能は、銅マンガンバナジウム酸化物を、フッ化炭素(すなわち、CFx)と組み合わせて用いるときに改善し、または高めることができる。
【0019】
ここで用いるように、「非水」は、電解質として有機溶媒および無機または有機塩を含むか、または利用する電気化学セルに言及する。追加の水は存在しない。すなわち、水は、電解質に対して、その分けられたか、または別個の成分として添加されない。それでもなお、水は、電解質を調製するために用いる有機溶媒(群)の痕跡量、または潜在する成分または混入物質として存在することがある。たとえば、1以上の非制限的具体例において、電解質は、約1000ppm、約750ppm、約500ppm、約250ppm、約100ppm、約50ppm、約25ppmの未満、またはさらに一層少ない量の水分量を有することができる。
【0020】
その他の点で、電気化学セルは、ここでは、バッテリー、キャパシター、セル、電気化学的装置、またはその他のものと称する場合がある。これらの参照が制限的でなく、そして電極と電解質との間で電子移動を含む任意のセルも本開示の範囲内であると考えられることを理解すべきである。
【0021】
たとえば、ここに詳述するように同様に調製され、または設計されるが、銅マンガンバナジウム酸化物カソード物質を欠く非水電気化学セルに比較して、「改善された」または「高められた」性能特性は、概して、比エネルギー、エネルギー密度、作動電圧、および/または非水電気化学セルのレート性能の改善または強化に言及する。
【0022】
銅マンガンバナジウム酸化物カソード物質は、概して、式CuxMnyVzOwによって表すことができ、そして1以上の具体化において式CuxMnyVzOw・nH2Oによって表すことができ、式中「nH2O」はカソード物質において存在する構造水および/または表面水を表す。カソード物質では、銅はおよそ1およびおよそ3の間の酸化状態を有することができ;(ii)その中でマンガンはおよそ2およびおよそ7の間の酸化状態を有することができ;(iii) その中でバナジウムはおよそ2乃至(〜)およそ5の間の酸化状態を有することができ;(iv)x、yおよびzは各々ゼロより大きな値を有することができ;(v)x+y+zの合計は、およそ1およびおよそ3の間であり;および(vi)wは、ゼロよりも大きな値を有することができ、またそれは実験的に定めることができ、そしてx、y、およびzの値および銅、マンガン、およびバナジウムの酸化状態と整合する。
【0023】
銅マンガンバナジウム酸化物カソード物質は、およそ4g/cm3、およそ4.5g/cm3、およそ5g/cm3、およそ5.5g/cm3、およそ6g/cm3、またはより一層多く(たとえば、およそ4g/cm3からおよそ6g/cm3まで、またはおよそ4.5g/cm3からおよそ4.5g/cm3までにわたる密度)の平均密度を有することができる。その上、またはあるいは、カソード物質は、少なくともおよそ25m2/g、少なくともおよそ45m2/g、およそ90m2/g、およそ100m2/g、およそ125m2/g、またはより一層多くの表面積を有することができる(たとえば、BET方法を含め、この技術で通常知られる手段を用いて定められるように)。1以上の具体化において、カソード物質は、たとえば、およそ25〜およそ125m2/gまたはおよそ75〜およそ125m2/gの範囲内で、BET表面を有することができる(材料がより一層結晶質になるにつれて表面積は減少する)。
【0024】
ここに詳述する銅マンガンバナジウム酸化物カソード物質に加え、非水電気化学セルの他の構成要素は、この技術で一般に知られるものの中から選ぶことができる。たとえば、種々の具体化によれば、カソードはまた、結合剤(バインダー)、たとえば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはポリフッ化ビニリデン(PVDF)のような重合体(高分子)結合剤も含むことができ、それは随意に粉体形状であってよい。さらに、カーボンブラック〔例は、Timcal(ティムカル社)から、Super P(スーパーP)〕、天然および合成黒鉛、ならびにそれらの種々の誘導体(グラフェン、グラファイトナノプレートレット、膨張黒鉛−KS4、ティムカル社からのようなものが含まれ)、カーボンナノファイバー、および炭素で、たとえば、コークス、炭、または活性炭のようなものの非黒鉛形態は、カソード中の伝導性充填剤として用いることができる。
【0025】
具体化において、カソード物質はさらに炭素質活物質を含むことができ、そして黒鉛状材料で、たとえば、天然および合成黒鉛およびすべてのそれらの誘導体のようなもので、グラフェン、グラファイトナノプレートレット、膨張黒鉛、カーボンナノファイバーおよび炭素の非黒鉛の形態で、たとえば、コークス、炭、または活性炭のようなものを含めたものを含むことができる。具体化において、炭素質物質は、炭素およびフッ素から調製することができる(すなわち、それはフッ化炭素物質である)。フッ化炭素物質は概して式(CFx)nによって表すことができ、式中、xは典型的には、およそ0.1〜1.9の間で、たとえば、およそ0.4および1.2の間のように、そしておよそ0.6および1.0の間でのように変動する。フッ化炭素はまた、(CFx1)nおよび(CFx2)mの混合物であることができ、式中、x1はおよそ0.8〜1.2であることができ、そしてx2はおよそ0.4〜0.8であることができる。式(CFx)n、(CFx1)n、および(CFx2)mでは、nおよびmはモノマー単位の数に言及し、それは広範囲に変動しうるが、たとえば、およそ1〜およそ5の範囲内にあることができる。したがって、比率(CFx1)対(CFx2)は、たとえば、およそ5:1およびおよそ1:5、およそ4:1およびおよそ1:4、およそ3:1およびおよそ1:3、およそ2:1およびおよそ1:2、またはおよそ1:1の間であることができる。別の言い方をすると、カソード物質は、種々な具体化において、たとえば、CF1/CF0.6の混合物のような、CFxの混合物を含むことができ、式中、たとえば、混合物は、およそ90%のCF1および10%のCF0.6、およそ80%のCF1およびおよそ20%のCF0.6について、およそ75%のCF1およびおよそ25%のCF0.6、およそ67%のCF1およびおよそ33%のCF0.6、およそ50%のCF1およびおよそ50%のCF0.6、また逆の場合も同じである。
【0026】
この技術において一般に知られる手段により、銅マンガンバナジウム酸化物のそれぞれの濃度および/またはカソード物質に存在するフッ化炭素を、所定の用途または使用のために最適化することができる。1つの具体化において、カソード混合物は、フッ化炭素のおよそ60%〜およそ95重量%の間を含むことができ、そして若干の具体化は、およそ65%〜およそ90%、またはおよそ70%〜およそ85重量%の間を含むことができる。加えて、カソード混合物は、銅マンガンバナジウム酸化物のおよそ5%〜40重量%の間を含むことができ、そして若干の具体化は、およそ10%とおよそ35%、または15%とおよそ30重量%の間を含むことができる。しかし、そのような濃度は、制限された意味にとらえてはなりません。たとえば、具体化において、銅マンガンバナジウム酸化物は、カソード物質の主要構成要素であることができる(むしろ、たとえば、フッ化炭素よりも)。
【0027】
種々の具体化において、カソード物質は非リチウム化することができる。別の言い方をすれば、少なくともまず最初に(すなわち、使用の前に)、カソード物質がリチウムまたはリチウムイオンを基本的に含まない(すなわち、リチウムまたはリチウムイオンが調製の間にカソード物質の構成要素として意図的に加えられない)ように、カソード物質を調製することができる。具体化では、カソード物質は、基本的に銅マンガンバナジウム酸化物、フッ化炭素、および、随意に、バインダー物質および/または導電性添加物からなる(その双方をさらに下記に詳述する)。たとえば、具体化において、カソード物質は、重さによって、フッ化炭素のおよそ81%、銅マンガンバナジウム酸化物のおよそ12%、およそ3%のバインダー物質、およびおよそ4%の導電性添加物を含むか、または本質的にそれからなる。しかし、そのようなカソード物質はまた、一次(非充電式)または二次(充電式)のバッテリーのために、リチウム(Li)アノードを有する電気化学セルで利用することもできる。結果的に、電気化学セルの使用においては、リチウムまたはリチウムイオンは、そのようなカソード物質中に存在しうる。したがって、そのようなリチウムまたはリチウムイオンの電気化学セルの使用における存在は、制限的な意味で見てはならない。
【0028】
電気化学セルはさらにアノードを含むことができ、それには、非水電気化学セルでの使用に適する任意のアノード物質が本質的に含まれうる。アノードには、たとえば、リチウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、その他を含む元素の周期律表のグループIAまたはグループIIAから選ばれる金属、およびそれらの合金および金属間化合物で、たとえば、Li-Mg、Li-Al、Li-Al-Mg、Li-Si、Li-B、およびLi-Si-Bの合金および金属間化合物を含むものが包含される。アノードの形態は変動しうるが、しかし、それはアノード金属の薄いホイルとして作成することができ、そしてコレクター(集電装置)はそのアノードホイルにアフィックスされた拡張タブまたはリードを有する。
【0029】
電気化学セルはさらに、非水の、イオンによる伝導性の電解質を含むことができ、それは、セルの電気化学反応の間にアノードとカソード電極の間のイオンの移動のための経路として働く。電解質は、液体状態または固体状態、または双方のいずれかであることができる。電極での電気化学反応は、アノードからカソードに移動する原子または分子の形態におけるイオンの転換に関与する。このように、非水電解質は、アノードおよびカソード物質に対し実質化学的に不活性でありうる。さらにまた、液体状態において電解質は、イオン輸送(たとえば、低い粘性、低い表面張力、および/または良好な湿潤性)のために有益である物性を見せることができる。
【0030】
電解質の種々の構成要素は、この技術で一般に知られるものの中から選ぶことができ、それらは、ここでのどこかほかで詳述するカソード物質と組み合わせて使用するのに適する。具体化において、電解質は、無機の、イオンによる伝導性の塩を非水溶媒(または溶媒システムで、溶媒の混合物が使われるときのもの)において溶解したものを有することができる。電解質は、非プロトン性有機溶媒または低粘性溶媒および高誘電率溶媒を含む溶媒の混合物において溶かされるイオン化するアルカリ金属塩を含むことができる。どんな特定の理論にとらわれることなく、無機の、イオンによる伝導性の塩は、カソード活物質と反応するアノードイオンの移動のための媒介物として働くと考えられる。したがって、イオン形成アルカリ金属塩は、アノードを含むアルカリ金属と類似することがある。
【0031】
1つの具体化において、電解質のために、イオンによる伝導性の塩は、一般式MM'F6またはMM'F4を有することができ、式中、Mは、アノードにおいて少なくとも1つの金属と同じアルカリ金属であることができ、およびM'は、リン、ヒ素、アンチモン、およびホウ素からなる群より選ばれる元素であることができる。式M'F6を得るのに適した塩類には、たとえば、ヘキサフルオロホスファート(PF6)、ヘキサフルオロアルセナート(AsF6)、およびヘキサフルオロアンチモナート(SbF6)が含まれ、その一方、式M'F4を得るのに適した塩類には、たとえば、テトラフルオロボラート(BF4)が含まれる。あるいはまた、対応するナトリウムまたはカリウム塩類を用いることができる。このように、リチウムアノードのために、電解質のアルカリ金属塩は、たとえば、LiPF6、LiAsF6、LiSbF6およびLiBF4、ならびにそれらの混合物から、随意に選ぶことができる。リチウムアノードと共に有用でありうる他の塩類には、たとえば、LiClO4、LiAlCl4、LiGaCl4、LiC(SO2CF3)3、LiB(C6H4O2)2、LiN(CF3SO2)2、およびLi(CF3SO3)、ならびにそれらの混合物が含まれる。
【0032】
電気化学セルで用いられうる低粘性溶媒には、たとえば、以下のものが含まれる。すなわち、ジメチルカルボナート(ジメチル炭酸塩)(DMC);ジエチルカルボナート(DEC);1,2-ジメトキシエタン(DME);テトラヒドロフラン(THF);メチルアセタート(酢酸メチル)(MA);ジグリム;トリグリム;テトラグリム;および、たとえば、高誘電率溶媒類で、たとえば、サイクリックカルボナート類(環状炭酸塩類)、サイクリックエステル類、およびサイクリックアミド類〔たとえば、プロピレンカルボナート(PC)、エチレンカルボナート(EC)、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド(DMS)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ガンマ-ブチロラクトン(GBL)、およびN-メチル-ピロリジノン(NMP)〕、ならびにそれらの種々の混合物または組合せを含むものである。
【0033】
本開示の電気化学セルの1以上の物理的および/または性能特性を最適化するため、電解質において用いる溶媒の種類および組成、および/またはその中に存在する塩の種類および濃度を選ぶことができる。たとえば、1以上の具体化において、電解質中の塩の濃度は、およそ0.5Mからおよそ2.5Mまで、およそ0.75Mからおよそ2.25Mまで、またはおよそ1Mからおよそ2Mまでの範囲にあることができる。混合した溶媒システム(溶媒系)が採用される具体化において、比率(容量による)は、たとえば、第1の溶媒(例は、プロピレンカルボナートのようなカルボナート溶媒)および第2の溶媒〔例は、1,2-ジメトキシルエタン(dimethoxylethane)のような置換されたアルカン溶媒〕のおよそ1:9およびおよそ9:1の間から変動させることができ、つまり、溶媒システムは、第1の溶媒のおよそ10容量%からおよそ90容量%まで、およそ20容量%からおよそ80容量%まで、またはおよそ30容量%からおよそ70容量%までで、その溶媒システムのバランスのすべてまたは実質すべてが第2の溶媒であるものを含むことができる。具体化において、アノードはリチウム金属であることができ、そして電解質は、混合されたPC/DME溶媒システムにおいて1.0M〜1.8MのLiBF4であることができる(溶媒システムの濃度は、およそ10容量%のPC/90容量%のDMEおよびおよそ70容量%のPC/90容量%のDMEの間である)。
【0034】
内部短絡条件を防ぐために、電気化学セルはさらに、適切なセパレーター物質を含むことができ、それはカソード/カソード物質をグループIAまたはIIAアノード/アノード物質から分離するのに選ばれる。セパレーターは、電気絶縁(および、時にはイオンによる伝導性)であり、アノードおよびカソード活物質と化学的に反応せず、および双方が電解質と化学的に反応せず、それに溶解しないようにこの技術で知られる材料から選ぶことができる。そのうえ、セパレーター材料は、それが、セルの電気化学反応の間、電解質の貫流を許すのに十分な程度の多孔性を有することができるように選ぶことができる。最後に、セパレーター物質は、たとえば、およそ15ミクロン(μm)からおよそ75ミクロンまで、またはおよそ20ミクロンからおよそ40ミクロンまでにわたる厚さを有するように選ぶことができる。
【0035】
したがって、適切なセパレーター物質には、多孔性または無孔性のポリマー膜で、たとえば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド(例は、ナイロン)、ポリスルホン、ポリ塩化ビニル(PVC)、および類似した物質、およびそれらの組合せ(例は、三層膜、たとえば、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレンの三層膜のようなもの)、ならびにフッ素重合体の繊維から織られた織物(ファブリック)で、たとえば、ポリビニリジンフルオリド(polyvinylidine fluoride、PVDF)、ポリビニリジンフルオリド-コハイドロフルオルプロピレン(cohydrofluorpropylene、PVDF-HFP)、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体(PETFE)、クロロトリフルオロエチレン-エチレン共重合体、およびそれらの組合せを含むものが含まれ、またはそれから選ぶことができる。これらのフッ素重合体繊維から織られたファブリックは、単独でかまたは微小孔性フィルム(例は、フッ素重合体の微小孔性フィルム)にラミネートして用いることができる。
【0036】
電気化学セルの形態または構成は、概して、この技術で知られるものから選ぶことができる。具体化において、ケースニュートラルの設計が適切である場合もあるが、電気化学セルの形態または構成は、ケースネガティブの設計であることができ、そこでは、ケーシングがケースネガティブ構成においてアノード集電装置に接続することができるように、カソード/アノード/セパレーター/電解質構成要素を、導電性金属ケースに入れる。ケーシングのための材料はチタンであることができるが、ステンレス鋼、ニッケル、およびアルミニウムもまた適切である。ケーシングヘッダーは、カソード電極のためのガラス対金属シール/ターミナルピンフィードスルーに適応するために十分な数の開口を有する金属ふたを含む。アノード電極はケースに接続することができる。付加的な開口を、電解質充填のために提供することができる。ケーシングヘッダーは、電気化学セルの他の構成要素と適合する元素を含むことができ、および腐食に対して抵抗性である。セルは、その後、先に記述した電解質溶液を充填することができ、そしてたとえば、フィルホール上にステンレス鋼プラグを溶接することによって密閉される。セルはあるいは、ケースポジティブの設計において構築することができる。したがって、ここに提供する説明は、制限的に見てはならない。
【0037】
本開示の範囲を離れることなく、概して、この技術で知られるそれらの構成要素の中から、電気化学セルの他の構成要素(例は、集電装置など)を選ぶこともできる。
【0038】
一旦カソード物質が調製されたなら、それを、単一の、実質同種の混合物の形態においてカソード集電装置の上に堆積させることができる(例は、そこでは、銅マンガンバナジウム酸化物粒子がCFx粒子中に分散するか、あるいはまた逆も同じであり、どれが主要構成要素であり、そしてどれがカソード物質の微量構成要素であるか次第であり、次いでこの混合物はカソード集電装置上に単一の層の形態で堆積することができる)。しかし、あるいはまた、カソード構成要素の混合物または物質が用いられるとき、これらの物質は、(i)集電装置の同じ側(例は、集電装置の表面上に堆積した銅マンガンバナジウム酸化物の層、次いでCFxの層は、銅マンガンバナジウム酸化物の層上に堆積するか、または逆もまた同じである)、あるいは(ii)集電装置の反対側で、層の形態において堆積することができる。
【0039】
特に明記しない限り、種々の濃度、濃度範囲、比率、その他がここに規定され、説明目的に対してだけ提供されており、そして従って、制限的な意味に見られてはならない点に注目される。また、組成、濃度、比率、構成要素、その他のすべての種々の組合せおよび順列は、本開示の範囲内にあり、それによって支持されることを目的とする。
2.カソード物質調製
【0040】
銅マンガンバナジウム酸化物のカソード物質は、概して、この技術で知られる手段、たとえば、種々の銅、バナジウム、およびマンガン塩類または双方の金属の酸化物類の化学反応が含まれるものによって、いずれかの固体反応によってか、または湿式化学(たとえば、熱処置、ゾル-ゲル形成、および混合状態での熱水合成を含む)によって調製することができる。
【0041】
具体化において、不定形または結晶性形態または状態で物質を提供するか、または生産する方法において、銅マンガンバナジウム酸化物物質を調製することができる。たとえば、そのような銅マンガンバナジウム酸化物物質は、酸化剤、たとえば、過硫酸カリウムまたは過塩素酸カリウムの存在下または不存在下で、銅塩類、バナジウム塩類、およびマンガン塩類の、水酸化カリウム、水酸化リチウム、または炭酸ナトリウムのような沈殿剤による共沈プロセスによって調製することができる。あるいはまた、カソード物質は、適切な環境において銅塩類、バナジウム塩類およびマンガン塩類の熱分解の生成物であることができる。それによって生産される物質は、銅マンガンバナジウム酸化物、またはそれらの組合せまたは混合物を含むことができる。
【0042】
一旦調製されと、結果として生じる銅マンガンバナジウム酸化物は、およそ10ナノメートルからおよそ150ナノメートルまで、またはおよそ80ナノメートルからおよそ300ナノメートルまでにわたる平均粒径を有する粒子の形態で(直接的に、または若干の種類のミリングまたはグライディング後にのいずれかで)得ることができる。粒子は随意に、より一層大きな粒子を形成するように凝集することができ、それはたとえば、およそ5からおよそ15ミクロンまで、またはおよそ7からおよそ45ミクロンまで変動する平均粒径を有する。
【0043】
以下の例は、種々の具体化によって電気化学セルを製造するプロセスを説明する。これらは、多数の変形の中のいくつかの具体例である。したがって、これらの例は、本発明の内容をどんな形であれ制限しない。
【実施例】
【0044】
例1
CuxMnyVzOwを以下のように調製した。
【0045】
CuSO4・5H2O(0.25モル)、VOSO4nH2O(0.25モル)およびMnSO4・H2O(0.125モル)を、溶液を形成するために脱イオン水の適量に溶解した。水酸化カリウム溶液(10%)を、バナジル、銅およびマンガンのサルフェートの撹拌した溶液のpHを8にまで調整するために滴下により加えた。得られた沈殿物をろ過により収集し、そして約24時間60℃で乾燥させた。若干のケースでは、得られた沈殿物を、乾燥または焼成した後、脱イオン水により洗浄した。乾燥した物質は、その後オーブンに入れ、そして約15時間、ほぼ250℃の空気中で加熱した。最終的に、物質をさらに約2時間、400℃で焼成し、そして室温にまで冷却した後、それを乳鉢および乳棒を用いて粉砕し、そして60ミクロンメッシュの篩を通して篩別した。
例2
【0046】
CuxMnyVzOwを以下のように調製した。
【0047】
CuSO4・5H2O(0.16モル)、VOSO4nH2O(0.16モル)、MnSO4・H2O(0.04モル)およびK2S2O8(0.20モル)を、脱イオン水の適量に溶解し、溶液を形成した。次に、得られた溶液のpHを、5%KOHの溶液を滴下して加えることにより8に調整した。手順が完了したとき、沈殿物を、撹拌しながら約4時間、母液中室温で熟成させた。熟成した沈殿物をろ過し、蒸留水で洗浄し、そしてほぼ24時間、約60℃で乾燥させた。若干のケースでは、得られた沈殿物を乾燥または焼成した後、脱イオン水で洗浄した。カソード活物質として用いる前に、乾燥した試料を、最大で24時間までほぼ250℃で熱処理した。
例3
【0048】
CuxMnyVzOwを以下のように調製した。
【0049】
CuSO4・5H2O(0.16モル)、VOSO4nH2O(0.16モル)、MnSO4・H2O(0.02モル)および(NH3)2S2O8(0.18モル)を、脱イオン水の適切な量に溶解し、溶液を形成した。次に、得られた溶液のpHを、5%のLiOHの溶液を滴下により添加することによって8に調整した。手順が完了したときに、沈殿物を、撹拌しながら約4時間、母液中、室温で熟成させた。熟成した沈殿物をろ過し、ほぼ24時間、約60℃で乾燥させた。若干のケースにおいて、得られた沈殿物を乾燥または焼成した後、脱イオン水で洗浄した。カソード活物質として用いる前に、乾燥した試料を、ほぼ250℃で最大24〜72時間、または400℃でほぼ2時間熱処理した。随意に、乾燥した試料は、約15時間、ほぼ250℃で熱処理することができる。図1に例示するように、調製した物質としてのX線回折は、結晶性生成物であることを明らかにした。
例4
【0050】
CuxMnyVzOwを以下のように調製した。
【0051】
CuSO4・5H2O(0.24モル)、VOSO4nH2O(0.16モル)およびMnSO4・H2O(0.02モル)およびK2S2O8(0.18モル)を、脱イオン水の適量に溶解し、溶液を形成した。次に、得られた溶液のpHを、10%KOHの溶液を滴下で添加することによって8に調整した。得られた沈殿物をろ過により回収し、そして24時間60℃で乾燥させた。若干のケースでは、得られた沈殿物を乾燥または焼成した後に、脱イオン水で洗浄した。カソード活物質として用いる前に、乾燥した試料をほぼ250℃および400℃でそれぞれ約15時間と2時間熱処理した。最後に、生成物を、乳鉢と乳棒を用いて粉砕し、そして60ミクロンメッシュの篩を通して篩別した。
【0052】
CuxMnyVzOw物質を、1.5:1:0.125以外の異なるCu:Mn:Vのモル比を含む前駆体から、上記の方法を用いて調製することができる。
例5
【0053】
CuxMnyVzOwを以下のように調製した。
【0054】
CuSO4・5H2O(0.25モル)、MnSO4・H2O(0.25モル)、VOSO4nH2O(0.25モル)および(NH3)2S2O8(0.5モル)を、脱イオン水の適切な量に溶解し、溶液を形成した。次に、得られた溶液のpHを、10%KOHの溶液を滴下で添加することによって8に調整した。手順が完了したとき、沈殿物を、撹拌しながら、約4時間、母液において室温で熟成させた。熟成した沈殿物を、ろ過し、そしてほぼ24時間約60℃で乾燥させた。若干のケースでは、得られた沈殿物を、乾燥または焼成した後、脱イオン水で洗浄した。カソード活物質として用いる前に、乾燥した試料を、ほぼ250℃と400℃でそれぞれ約15時間と2時間熱処理した。
例6
【0055】
CuxMnyVzOwを以下のように調製した。
【0056】
CuSO4・5H2O(0.5モル)、MnSO4・H2O(0.25モル)、VOSO4nH2O(0.16モル)および(NH3)2S2O8(0.38モル)を、脱イオン水の適切な量に溶解し、溶液を形成した。次いで、およそ8のpHに達するまで、10%のLiOH溶液を、撹拌した溶液に滴下により添加し、その点で、生成物の沈殿は完了する。手順が完了したとき、沈殿物を、撹拌しながら、約4時間、母液において室温で熟成させた。熟成した沈殿物を、ろ過し、そしてほぼ24時間約60℃で乾燥させた。若干の場合には、結果として生じる沈殿物を、乾燥または焼成の後、脱イオン水で洗浄した。カソード活物質として用いる前に、乾燥試料を、約15時間と2時間、ほぼ250℃と400℃で、それぞれ熱処理した。
例7
【0057】
CuxMnyVzOwを以下のように調製した。
【0058】
CuxMnyVzOwの試料を、沈殿剤が水酸化カリウムであったこと以外は、例5に記載したように調製した。
例8
【0059】
CuxMnyVzOwは以下のように調製した。
【0060】
CuxMnyVzOwの試料を、酸化剤がK2S2O8および(NH3)2S2O8の1:1のモル比を有する混合物であったこと以外、例5に記載したように調製した。
試験セルを用いるCuxMnyVzOwの電気化学試験
【0061】
CuxMnyVzOwから構成するカソードの放電特性を評価するために、図2で示す模範的なコインセルバッテリーを試験媒介物として用いた。図2に関し、模範的な試験セルは、セル缶(カン)、カソード、セパレーター、非水電解質、ステンレス鋼スペーサー、ガスケット、さらばね(Belleville spring)、セルキャップ、およびアノードを含む。セルは、再充電型または非充電型の電気化学セルとしてのいずれかで用いることができる。アノード、カソード、セパレーター、および電解質は、セルカンおよびセルキャップ内に含まれるように構成される。種々の具体化に従う他の電気化学セルは、任意の構成、たとえば、筒状の巻き付けられたセル、プリズム状のセル、硬質層状セル(rigid laminar cell)、またはフレキシブル(柔軟)ポーチ、エンベロープ、またはバッグであってよい。
【0062】
例2のCuxMnyVzOwの電気化学的挙動は、2325サイズのコインセルで評価し、アノードとしてリチウム金属を用い、上記で提供する詳細と矛盾しないように構築した。カソードは、活物質として70%のCuxMnyVzOw、20%のカーボンブラック、導電性充填剤としての5%KS4黒鉛、およびバインダーとしての5%PTFEからなった。CuxMnyVzOwおよびKS4を、モルタル乳棒を使って最初に混ぜた。次いで、カソードシートを形成するために混合する間、PTFE粉体を結果として生じる混ぜ物に添加した。電極は、型を用いて得られたシートから切り取られた。2325サイズのコインセルでの試験の前に、カソードを、4時間120℃で減圧乾燥させた。測定は、アービン(Arbin)テスターシステムを用いるガルバノスティック条件の下で、室温で行った。
【0063】
図3は、アノードとしてリチウム金属を用いるコインセルにおいて、上記で議論した例2のカソード物質のCuxMnyVzOwの放電プロファイルを示す。測定は、カソード活物質の1グラムにつき5および50ミリアンペア(mA/g)の放電率で、ガルバノスティックな条件の下、室温で、それぞれ行った。セルは、約420mAh/gmの5mA/gmで1.5ボルトに対する比放電容量(specific discharge capacity)を供給し、ところが50mA/gmでは、それは約390mAh/gmであった。
【0064】
アノードとしてリチウム金属を用いた例3のCuxMnyVzOw物質のコインセルにおける放電性能は、図4に例示される。測定は、カソード活物質の1グラムにつき5および50ミリアンペア(mA/g)の放電率で、ガルバノスティック条件の下、室温でそれぞれ行った。セルは約420mAh/gの5mA/gmで1.5ボルトに対して比放電容量を供給し、ところが50mA/gmでは、それは約390mAh/gmであった。
【0065】
電極の理論的比容量は、四価マンガンの三価状態への還元、六価バナジウムの三価状態への還元および二価銅の一価状態への還元を仮定して計算した。上記の仮定から、例3の電極化合物の式が導き出され、そしてCuV0.6Mn0.1O2.7であることが見出され、そしてそれは430mAh/gmの理論的比容量を提供した。
CuxMnyVzOwおよびCFXを有する電極
【0066】
前記のように、具体例において、カソード物質は、高い比容量(specific capacity)を有する1以上の他のカソード物質で、たとえば、フッ化炭素(例は、CFx)のようなものと組み合わされるCuxMnyVzOwを含むことができる。CuxMnyVzOwおよびCFxを含むカソードを有するバッテリーは、CFx単独を伴うバッテリーと比較して高められた電気化学的性能(例は、比エネルギー、エネルギー密度、作動電圧、およびレート能)を示すことができる。
【0067】
具体化において、上記の例3によって形成されるCuxMnyVzOwを、フッ化炭素と共に、より一層詳しくはCF1と、カソードを形成するために混合した。50%(重さによって)の炭素フッ化物および50%(重さによって)のCuxMnyVzOwからなるブレンドのカソード活性部分は、Super P(スーパーP)、KS4およびテフロン(商標、Teflon)粉体を混ぜ合わせられた。
【0068】
1グラムにつき50ミリアンペアの放電率で注目されたカソード混合物から調製されるカソードにより作られるセルの放電プロファイルを、図5に図示する。活物質として単独で炭素フッ化物により作られるセルのための放電データを、比較のために図6に提供する。カソード物質として炭素フッ化物およびCuxMnyVzOwの混ぜ物で作られるセルの1.5ボルトに対する比容量は、約600mAh/gである。単独で評価されるとき、炭素フッ化物系セルは、約820mAh/gの1.5ボルトに対する比容量を供給した。図6から分かるように、混ぜ物のカソード活物質の放電の初期に観察される高圧部分は、CuMnVOに起因する。
【0069】
50%のCF1で、約410mAh/gの期待される容量を有し、および50%のCuxMnyVzOwで、約200mAh/gの期待される容量を有するものの混合物が、約610mAh/gの容量を供給する複合型(ハイブリッド)カソードを生産したのが当然であることに注目される。CF1およびCuxMnyVzOwのカソードの混ぜ物で作成されたセルが、単独で100%のCF1のセルと比較して、放電中により少ない熱しか発生させないことが予期される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノード、
電解質、および
カソードであり、CuMnを含み、式中、
銅は約1および約3の間の酸化状態を有し、
マンガンは約1および約7の間の酸化状態を有し、
バナジウムは約2および約5の間の酸化状態を有し、
x、y、およびzは各々ゼロよりも大きく、
x+y+zの合計は約1および約3の間であり、および
wは、ゼロよりも大きな値を有し、そしてx、y、およびzの値と、および銅、マンガン、およびバナジウムの酸化状態とに整合するカソード
を含む、非水電気化学セル。
【請求項2】
銅−マンガン−バナジウム−酸化物カソード物質は、式CuMn・nHOを有し、
式中、銅は約1および約3の間の酸化状態を有し、
マンガンは約1および約7の間の酸化状態を有し、
バナジウムは約2および約5の間の酸化状態を有し、
x、y、およびzは各々ゼロよりも大きく、
x+y+zの合計は約1および約3の間であり、
wは、ゼロよりも大きな値を有し、そしてx、y、およびzの値と、および銅、マンガン、およびバナジウムの酸化状態とに整合し、および
nHOは銅マンガンバナジウム酸化物カソード物質に存在する表面水、構造水、またはそれらの双方を表す、請求項1に従う非水電気化学セル。
【請求項3】
銅−マンガン−バナジウム−酸化物は、約4g/cm乃至約6g/cmの平均密度を有する、請求項1に従う非水電気化学セル。
【請求項4】
銅−マンガン−バナジウム−酸化物は、約25m/g乃至約125m/gの表面積を有する、請求項1に従う非水電気化学セル。
【請求項5】
カソードはさらに炭素質活物質を含む、請求項1に従う非水電気化学セル。
【請求項6】
炭素質活物質はフッ化炭素である、請求項5に従う非水電気化学セル。
【請求項7】
フッ化炭素は、式(CFによって表され、式中、
xは約0.1乃至約1.9であり、および
nは約1乃至約5である、請求項6に従う非水電気化学セル。
【請求項8】
フッ化炭素は式(CFx1および(CFx1を有するフッ化炭素の混合物であり、式中、
x1は約0.8乃至約1.2であり、
x2は約0.4乃至約0.8であり、および
nおよびmは各々約1乃至約5である、請求項6に従う非水電気化学セル。
【請求項9】
(CFx1対(CFx1の比は約1:5乃至約5:1である、請求項8に従う非水電気化学セル。
【請求項10】
カソードにおけるフッ化炭素の重量による濃度は、1%乃至約99%の間であり、およびカソードにおける銅−マンガン−バナジウム−酸化物の重量による濃度は99%および1%の間である、請求項6に従う非水電気化学セル。
【請求項11】
アノードには、グループIA金属、グループIIA金属、またはそれらの混合物が含まれる、請求項1に従う非水電気化学セル。
【請求項12】
アノードには、グループIA金属、グループIIA金属、またはそれらの混合物が含まれる、請求項6に従う非水電気化学セル。
【請求項13】
アノードには、リチウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、リチウム−マグネシウム、リチウム−アルミニウム、リチウム−アルミニウム−マグネシウム、リチウム−シリコン、リチウム−ホウ素、およびリチウム−シリコン−ホウ素からなる群より選ばれる1種が含まれる、請求項11に従う非水電気化学セル。
【請求項14】
アノードは、リチウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、リチウム−マグネシウム、リチウム−アルミニウム、リチウム−アルミニウム−マグネシウム、リチウム−シリコン、リチウム−ホウ素、およびリチウム−シリコン−ホウ素からなる群より選ばれる1種を含む、請求項12に従う非水電気化学セル。
【請求項15】
電解質には、
イオン化するアルカリ金属塩、および
非プロトン性有機溶媒または溶媒の混合物
が含まれる、請求項1に従う非水電気化学セル。
【請求項16】
電解質には、
イオン化するアルカリ金属塩、および
非プロトン性有機溶媒または溶媒の混合物
が含まれる、請求項6に従う電気化学セル。
【請求項17】
電解質には、
イオン化するアルカリ金属塩、および
非プロトン性有機溶媒または溶媒の混合物
が含まれる、請求項12に従う非水電気化学セル。
【請求項18】
イオン化するアルカリ金属塩はアノードにおける金属と同様である、請求項17に従う非水電気化学セル。
【請求項19】
イオン化するアルカリ金属塩は、式MM´FまたはMM´Fを有し、式中、
Mはアノードにおける金属の少なくとも1種と同じアルカリ金属であり、および
M´は、リン、ヒ素、アンチモン、およびホウ素からなる群より選ばれる元素である、請求項17に従う非水電気化学セル。
【請求項20】
非プロトン性有機溶媒または溶媒の混合物は、ジメチルカルボナート、ジエチルカルボナート、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、メチルアセタート、ジグリム、トリグリム、テトラグリム、高誘電率溶媒、およびそれらの混合物からなる群より選ばれる、請求項15に従う非水電気化学セル。
【請求項21】
非プロトン性有機溶媒または溶媒の混合物は、ジメチルカルボナート、ジエチルカルボナート、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、メチルアセタート、ジグリム、トリグリム、テトラグリム、高誘電率溶媒、およびそれらの混合物からなる群より選ばれる、請求項16に従う非水電気化学セル。
【請求項22】
非プロトン性有機溶媒または溶媒の混合物は、ジメチルカルボナート、ジエチルカーボナート、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、メチルアセタート、ジグリム、トリグリム、テトラグリム、高誘電率溶媒、およびそれらの混合物からなる群より選ばれる、請求項17に従う電気化学セル。
【請求項23】
電解質においてイオン化するアルカリ金属塩は、約0.5Mから約2.5Mまでの範囲内に存在する、請求項15に従う非水電気化学セル。
【請求項24】
電解質においてイオン化するアルカリ金属塩は、約0.5Mから約2.5Mまでの範囲内に存在する、請求項16に従う非水電気化学セル。
【請求項25】
電解質においてイオン化するアルカリ金属塩は、約0.5Mから約2.5Mまでの範囲内に存在する、請求項17に従う非水電気化学セル。
【請求項26】
さらにセパレーターを含む、請求項1に従う非水電気化学セル。
【請求項27】
セパレーターは約15ミクロン(μm)から約75ミクロンまでの範囲内の厚さを有する、請求項26に従う非水電気化学セル。
【請求項28】
セパレーターは、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリスルホン、ポリ塩化ビニル、およびそれらの混合物からなる群より選ばれる、請求項26に従う非水電気化学セル。
【請求項29】
セパレーターは、フッ化ポリビニリジン、フッ化ポリビニリジン−コヒドロフルオルプロピレン、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体、およびそれらの組合せからなる群より選ばれるフルオロポリマー繊維から織られた織物である、請求項26に従う非水電気化学セル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−58479(P2013−58479A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−197623(P2012−197623)
【出願日】平成24年9月7日(2012.9.7)
【出願人】(510238959)イーグルピッチャー テクノロジーズ,エルエルシー (14)
【Fターム(参考)】