説明

レンズ位置制御システムおよび内視鏡

【課題】トルクワイヤをねじることによりレンズを移動させる構成において、モータの停止後のレンズの変位量を低減化する。
【解決手段】電子内視鏡10は撮影光学系18、カム環19、トルクワイヤ21、モータ22、モータ駆動回路24、制御部25を有する。撮影光学系18は光軸に沿って変位可能なズーム光学系を有する。カム環19を回動させることによりズーム光学系は変位する。モータ22の回転をトルクワイヤ21によりカム環19に伝達する。モータ駆動回路24がモータ22を駆動する。制御部25がモータ駆動回路24を制御する。モータ22に印加する駆動電圧のデューティー比を停止前に時間に応じて減少させる。また、駆動電圧のデューティー比の時間経過に対する変化割合を連続させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学系に移動機構を設けた電子内視鏡に関し、特にトルクワイヤを用いたレンズ位置制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子内視鏡の撮像光学系にズーム機構を設け、観察倍率を可変とした拡大内視鏡が知られている(特許文献1参照)。内視鏡挿入管先端に設けられたズームレンズは、例えば操作部に設けられたモータによりトルクワイヤを軸方向に回転させ、挿入管先端においてトルクワイヤの回転運動を並進運動に変換させることにより、光軸に沿って変位する。撮影倍率が所定の撮影倍率となるように調整可能であることが好ましい。そのためには、ズームレンズを所定の位置で変位停止する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4249841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
内視鏡には剛性の強いトルクワイヤを用いることが困難であるため、トルクワイヤに捩れが生じることがある。それゆえ、トルクワイヤのモータ側の回転を先端側に即座に追従させることが困難である。追従困難であるため、ズームレンズの位置またはモータの回転量を検出し、モータを停止してもズームレンズが変位することがある。それゆえ、上述のような構成では、ズームレンズを所定の位置で変位停止させることは難しかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のレンズ位置制御システムは、内視鏡の先端に設けられるレンズの位置を調整するためのレンズ位置調整機構と、レンズ位置調整機構に動力を供給するモータと、モータの動力をレンズ位置調整機構に伝達するトルクワイヤと、モータの回転を検知し回転量を算出する回転量検出手段と、モータを停止状態から第1の回転量だけ回転させるようにPWM制御するモータ制御手段とを備え、モータ制御手段は第1の回転量より小さい第2の回転量から第1の回転量まで回転している期間にはモータに印加する駆動電圧のデューティー比を時間の経過に対するデューティー比の変化の割合を実質的に連続させながら時間の経過に応じて減少させることを特徴としている。
【0006】
なお、レンズは第1の端部から第2の端部まで移動可能であり、第1、第2の端部に対応するモータの回転の位置である第1、第2の基準位置までの間に第1〜第n(nは2以上の整数)のステップ位置が定められており、モータ制御手段はモータの回転駆動開始後第1、第2の基準位置および第1〜第nのステップ位置においてモータの回転を停止させ、第1の基準位置から第1のステップ位置、第(n−1)のステップ位置から第nのステップ位置および第nのステップ位置から第2の基準位置までの回転量である第1の回転量は第1の基準位置と第1のステップ位置との間、第(n−1)のステップ位置と第nのステップ位置との間および第nのステップ位置と第2の基準位置との間の回転駆動である第1の回転駆動、第nの回転駆動、終端回転駆動毎に定められることが好ましい。
【0007】
また、第2の回転量は第1、第nの回転駆動および終端回転駆動毎に定められることが好ましい。
【0008】
また、レンズを移動させる入力のONとOFFとを切替えるスイッチを備え、モータ制御手段はモータの停止状態においてスイッチをONに切替えると第1の回転量だけ回転するまでモータを回転させ、モータが第1の回転量だけ回転するとモータの回転を一時停止させ、モータの一時停止中にスイッチのON状態が継続されている場合には再度モータの回転駆動を開始することが好ましい。
【0009】
本発明の内視鏡は、挿入管の先端において光軸に沿って変位可能に設けられたレンズと、レンズの位置を調整するためのレンズ位置調整機構と、レンズ位置調整機構に動力を供給するモータと、モータの動力をレンズ位置調整機構に伝達するトルクワイヤと、モータの回転を検知し回転量を算出する回転量検出手段と、モータを停止状態から第1の回転量だけ回転させるようにPWM制御するモータ制御手段とを備え、モータ制御手段は第1の回転量より小さい第2の回転量から第1の回転量まで回転している期間にはモータに印加する駆動電圧のデューティー比を時間の経過に対するデューティー比の変化の割合を実質的に連続させながら時間の経過に応じて減少させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、駆動電圧のデューティー比が停止前に時間の経過に対するデューティー比の変化割合を連続させながら減少するので、トルクワイヤのトルクを徐々に開放させ、モータ22の回転停止後のレンズの変位量を低減化することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態であるレンズ位置制御システムを有する内視鏡を用いた電子内視鏡ユニットの構成を示す概略図である。
【図2】本実施形態の電子内視鏡の電気的、機械的な構成を模式的に示すブロック図である。
【図3】モータ駆動回路および制御部の構成を示すブロック図である。
【図4】モータ駆動回路から出力される3相駆動信号(U、V、W)とモータ駆動回路において生成される1回転検出信号の対応を示すタイミングチャートである。
【図5】モータに印加する駆動電圧のデューティー比の時間変化とモータの回転量の時間変化との関係を示す図である。
【図6】レンズ位置制御処理のフローチャートである。
【図7】1段階のモータ回転制御のサブルーチンのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態であるレンズ位置制御システムを有する内視鏡を用いた電子内視鏡ユニットの構成を示す概略図である。
【0013】
電子内視鏡システムは、電子内視鏡10、内視鏡プロセッサ11、およびモニタ12によって構成される。電子内視鏡10およびモニタ12は内視鏡プロセッサ11に着脱自在である。
【0014】
電子内視鏡10は、挿入管13、操作部14、コネクタ15、およびユニバーサルコード16によって構成される。挿入管13は可撓管によって形成され、体内や管孔内に挿入される。
【0015】
操作部14は、ユーザにより把持・操作され、挿入管13の基端部が連結される。コネクタ15は、内視鏡プロセッサ11に着脱され、電子内視鏡10と内視鏡プロセッサ11とを電気的、光学的に接続する。ユニバーサルコード16は、操作部14とコネクタ15の間を連絡する。
【0016】
内視鏡プロセッサ11には、例えば、画像処理ユニット(図示せず)とともに光源部(図示せず)が設けられる。光源部からは照明光が出射される。照明光は、コネクタ部15から挿入管13の先端部まで配設されたライトガイドファイバ(図示せず)を介して先端部まで伝送され、先端部付近の被写体に照射される。
【0017】
挿入管13の先端部に撮像素子(図1において図示せず)が設けられる。撮像素子により被写体が撮影される。撮像素子の撮影により被写体像に相当する画像信号が生成される。
【0018】
生成された画像信号は、挿入管13、操作部14、ユニバーサルコード16、およびコネクタ部15を介して内視鏡プロセッサ11に伝送される。内視鏡プロセッサ11では、画像信号に対して所定の画像処理が施される。画像信号はモニタ12に伝送され、画像信号に相当する画像が表示される。
【0019】
次に、図2を用いて、電子内視鏡10の構成を説明する。図2は、電子内視鏡10の構成を模式的に示すブロック図である。
【0020】
挿入管13の先端部には、CCDである撮像素子17および撮影光学系18が配置される。撮影光学系18により撮像素子17の受光面に被写体像が結像される。撮影光学系18は焦点距離を調整するズーム光学系(レンズ群)(図示せず)を有し、ズーム光学系は光軸にそって摺動自在なレンズ保持枠(図示せず)に保持される。
【0021】
従来周知のように、レンズ保持枠に設けられたピン(図示せず)と、カム環19に設けられたカム溝(図示せず)との係合により、カム環19の光軸周りの回転運動が、レンズ保持枠の光軸方向の直線運動に変換され、ズーム光学系の位置が調整される(レンズ位置調整機構)。これにより、撮像素子17ではズーム光学系の位置に応じた倍率の画像が撮影される。
【0022】
また、カム環19の外周面には周方向に沿ってギア部(図示せず)が形成され、ギア部には、ギア20が係合される。ギア20には、挿入部11内に配設されるトルクワイヤ21の一端が接続される。
【0023】
トルクワイヤ21の他端は操作部14に設けられたモータ22に減速ギア23を介して接続される。したがって、モータ22を回転させることによる回転力がトルクワイヤ21を介してギア20に伝達され、カム環19は光軸周りに回転される。
【0024】
モータ22は、例えば3相のセンサレス・ブラシレス・DCモータである。モータ22はコネクタ部15に設けられるモータ駆動回路24からユニバーサルコード16(図1参照)を介して送られる3相駆動信号(U、V、W)により制御される。
【0025】
モータ駆動回路24は、コネクタ部15に設けられた制御部25による制御に基づいて、3相駆動信号を出力する。なお、モータ駆動回路24によりモータ22の回転が検知され、制御部25に伝達される。
【0026】
なお、操作部14には、Teleボタン26およびWideボタン27を含む入力部28が設けられる。Teleボタン26を押下することにより望遠(ズームイン)を実行する指示が入力可能である。また、Wideボタン27を押下することにより広角(ズームアウト)を実行する指示が入力可能である。
【0027】
Teleボタン26、Wideボタン27の操作信号は、制御部25へと送られる。制御部25はこの操作信号に基づいてモータ駆動回路24を制御し、モータ22を回転させる。
【0028】
撮像素子17は、コネクタ部15に設けられたCCD駆動回路29から出力されるCCD駆動パルス信号により制御される。CCD駆動回路29は、制御部25により制御される。撮像素子17により生成された画像信号は、コネクタ部15に設けられたCCD信号処理部30に伝送される。
【0029】
CCD信号処理部30はアナログフロントエンドであって、撮像素子17が生成したアナログ画像信号に対して、初段増幅、相関二重サンプリング、AD変換を施し、制御部25へと出力する。
【0030】
また、制御部25には、通信制御部31が接続される。通信制御部31は、制御部25に入力されたデジタルの画像信号や各種制御信号を内視鏡プロセッサ11の画像処理ユニットへ出力するとともに、内視鏡プロセッサ11から受信した各種制御信号を制御部25に伝送する。
【0031】
次に、図3、図4を参照して、本実施形態におけるモータ駆動回路24および制御部25の構成の詳細について説明する。なお、図3は、モータ駆動回路24および制御部25の構成を示すブロック図である。図4は、モータ駆動回路24から出力される3相駆動信号(U、V、W)とモータ駆動回路24において生成される1回転検出信号の対応を示すタイミングチャートである。
【0032】
モータ駆動回路24は、3相センサレスモータ制御ロジック回路32、ドライブ回路33、位相検出回路34などによって構成される。3相センサレスモータ制御ロジック回路32により、モータ22に与えるU、V、W相のパルス波形が生成される。ドライブ回路33では、U、V、W相のパルス波形に基づいて、モータ22のU、V、W端子に印加されるU、V、W相の電圧が出力される。
【0033】
モータ22とドライブ回路33とを結ぶU、V、W信号線は、コンパレータ35U、35V、35Wの一方の入力端子にそれぞれ接続される。また、コンパレータ35U、35V、35Wの他方の入力端子には参照電圧VREFが入力される。
【0034】
UVW各相に印加される電圧がオフ状態のとき、対応する相では逆起電力により負電圧が発生する。本実施形態では、コンパレータ35U、35V、35Wの各々で、各相の逆起電力の発生を検知し位相検出回路34においてモータ22の位相が検出される。
【0035】
また、ある1つの相に対する上記コンパレータからの出力は、モータ22の一回転に対応する周期のパルス信号となるため、本実施形態ではこれを1回転検出信号FGとして制御部25へと出力する。なお図4には、各相における位相検出のタイミングも示される。
【0036】
制御部25には、マイコン36および不揮発性メモリ37が設けられる。マイコン36により3相センサレスモータ制御ロジック回路32は制御される。マイコン36には、位相検出回路34からU相に対応した逆気電力検出パルスが1回転検出信号として入力される。
【0037】
マイコン36では、1回転検出信号FGに基づいてモータ22の回転角に対応する回転量が算出される。なお、モータ22の回転量は、1回転検出信号FGのカウント値(例えば正転時に加算、反転時に減算して求めるパルス数)として求められる。電子内視鏡10では、モータ回転量に基づいてレンズ位置の制御が行われる。
【0038】
ズーム光学系をTele端に位置付けるモータの回転位置が第1の基準位置に定められる。モータ22を回転させるときに算出される第1の基準位置からの回転量に基づいてズーム光学系の現在位置が推定される。なお、算出される回転量は不揮発性メモリ37にも格納される。
【0039】
ズーム光学系をWide端に位置させるときの原点位置からの回転量が第2の基準位置として予め算出され、不揮発性メモリ37に格納される。また、第1の基準位置から第2の基準位置の間において、第1〜第8のステップ回転位置が予め定められ、不揮発性メモリ37に格納される。
【0040】
Tele端、第1〜第8のステップ回転位置に対応するズーム光学系の位置、およびWide端のいずれかにズーム光学系が位置付けられるように、モータ駆動回路24はモータ22を駆動する。
【0041】
すなわち、第1の基準位置および第1〜第8のステップ回転位置においてTeleボタン26を押下すると、第1〜第8のステップ回転位置および第2の基準位置に到達するまでモータ22が回転するように駆動される。
【0042】
また、Teleボタン26の押下状態を維持すると、それぞれのステップ回転位置においてモータ22の回転を一時停止し、使用者に設定されたインターバル時間の経過後、回転が再開される。なお、インターバル時間は、例えば10、41、60msecの中から使用者が設定することが可能である。
【0043】
また、Teleボタン26の押下解除後、第1〜第8のステップ回転位置または第2の基準位置の中で最初に到達する位置までモータ22が回転するように駆動される。
【0044】
同様に、第2の基準位置および第8〜第1のステップ回転位置においてWideボタン27を押下すると、第8〜第1のステップ回転位置および第1の基準位置に到達するまでモータ22が回転するように駆動される。
【0045】
また、Wideボタン27の押下状態を維持すると、それぞれのステップ回転位置においてモータ22の回転を一時停止し、使用者に設定されたインターバル時間の経過後、回転が再開される。また、Wideボタン27の押下解除後、第8〜第1のステップ回転位置または第1の基準位置の中で最初に到達する位置までモータ22が回転するように駆動される。
【0046】
次に、モータ22の駆動について図5のタイミングチャートを用いて説明する。図5はモータ22に印加する駆動電圧のデューティー比の時間変化と、モータ22の回転量の時間変化との関係を示すグラフである。
【0047】
モータ22のトルクはPWM制御により調整される。すなわち、モータ22の駆動電圧のデューティー比を変えることによりトルクが調整される。
【0048】
Teleボタン26およびWideボタン27の押下前には、駆動電圧のデューティー比はゼロに維持され、モータ22は第1、第2の基準位置または第1〜第8のステップ回転位置のいずれかの位置において回転を停止している。
【0049】
第1の基準位置および第1〜第8のステップ回転位置のいずれかにおいてWideボタン27を押下時に駆動電圧のデューティー比が最低駆動値に切替えられる。元の位置から隣接するステップ回転位置または第2の基準位置までの間、駆動電圧のデューティー比Dは、(1)式を満たすように、制御される。
【0050】
【数1】

【0051】
(1)式において、Dminは最低駆動値、Dは定数であって、実験などにより最適な値に定められる。また、(1)式における時間定数Tは、(2)式を満たすように定められた定数であって、第1の基準位置と第1のステップ回転位置との間、第n、第(n+1)のステップ回転位置の間(nは1〜7の整数)、および第8のステップ回転位置と第2の基準位置との間別に定められ、不揮発性メモリ37に格納される。
【0052】
【数2】

【0053】
(2)式において、ΔFGは第1の基準位置および第1のステップ回転位置のように互いに隣接する基準位置とステップ回転位置または互いに隣接するステップ回転位置間の回転量(第1の回転量)である。
【0054】
モータ22の回転位置が第1の基準位置においてWideボタンが押下されたときに、第1の基準位置と第1のステップ回転位置との間に対して定められる時間定数Tがマイコン36に読出され、駆動電圧のデューティー比が(1)式を満たすように制御される。
【0055】
モータ22の回転位置が第nのステップ回転位置(nは1〜7の整数)においてWideボタンが押下されたときに、第n、第(n+1)のステップ回転位置との間に対して定められる時間定数Tがマイコン36に読出され、駆動電圧のデューティー比が(1)式を満たすように制御される。
【0056】
モータ22の回転位置が第8のステップ位置においてWideボタンが押下されたときに、第8のステップ回転位置と第2の基準位置との間に対して定められる時間定数Tがマイコン36に読出され、駆動電圧のデューティー比が(1)式を満たすように制御される。
【0057】
モータ22が元の位置から隣接するステップ回転位置または第2の基準位置に到達すると、駆動電圧のデューティー比がゼロに切替えられる。
【0058】
モータ22の回転中にWideボタン27の押下が解除されると、駆動電圧のデューティー比はゼロのまま維持される。モータ22の回転停止後にもWideボタン27が押下されている場合には、モータ22の回転停止時から設定されたインターバル時間の経過時に、駆動電圧のデューティー比が最低駆動値に切替えられ、上述と同様に駆動電圧のデューティー比が調整される。
【0059】
第2の基準位置および第8〜第1のステップ回転位置のいずれかにおいてTeleボタン26を押下時に駆動電圧のデューティー比が最低駆動値に切替えられる。なお、Wideボタン27の押下時とは、駆動電圧の正相と逆相とが入替えられる。
【0060】
元の位置から隣接するステップ回転位置または第1の基準位置までの間、駆動電圧のデューティー比Dは、(1)式を満たすように、制御される。
【0061】
なお、モータ22の回転位置が第2の基準位置においてTeleボタンが押下されたときに、第8のステップ回転位置と第2の基準位置との間に対して定められる時間定数Tがマイコン36に読出され、駆動電圧のデューティー比が(1)式を満たすように制御される。
【0062】
モータ22の回転位置が第nのステップ回転位置(nは2〜8の整数)においてTeleボタンが押下されたときに、第(n−1)、第nのステップ回転位置との間に対して定められている時間定数Tがマイコン36に読出され、駆動電圧のデューティー比が(1)式を満たすように制御される。
【0063】
モータ22の回転位置が第1のステップ回転位置においてTeleボタンが押下されたときに、第1の基準位置と第1のステップ回転位置との間に対して定められている時間定数Tがマイコン36に読出され、駆動電圧のデューティー比が(1)式を満たすように制御される。
【0064】
モータ22が元の位置から隣接するステップ回転位置または第1の基準位置に到達すると、駆動電圧のデューティー比がゼロに切替えられる。
【0065】
モータ22の回転中にTeleボタン26の押下が解除されると、駆動電圧のデューティー比はゼロのまま維持される。モータ22の回転停止後にもTeleボタン26が押下されている場合には、モータ22の回転停止時から設定されたインターバル時間の経過時に、駆動電圧のデューティー比が最低駆動値に切替えられ、上述と同様に駆動電圧のデューティー比が調整される。
【0066】
次に、初期化動作後にマイコン36により実行されるレンズ位置制御処理について、図6のフローチャートを用いて説明する。図6はレンズ位置制御処理のフローチャートであり、Teleボタン26およびWideボタン27の何れか一方が押下されるときにマイコン36により実行される。
【0067】
ステップS100では、Teleボタン26およびWideボタン27の何れのボタンが押下されたかを判別する。Teleボタン26が押されている場合には、ステップS101に進む。Wideボタン27が押下されている場合には、ステップS103に進む。
【0068】
ステップS101では、モータ22の回転位置が第1の基準位置であるか否かを判別する。第1の基準位置である場合には、Tele方向に回転させることが出来ないので、ステップS100に戻る。第1の基準位置以外の位置である場合には、ステップS102に進む。
【0069】
ステップS102では、モータ22の回転方向をTele方向に設定する。回転方向の設定後、ステップS200に進む。
【0070】
一方、ステップS103では、モータ22の回転位置が第2の基準位置であるか否かを判別する。第2の基準位置である場合には、Wide方向に回転させることが出来ないので、ステップS100に戻る。第2の基準位置以外の位置である場合には、ステップS104に進む。
【0071】
ステップS104では、モータ22の回転方向をWide方向に設定する。回転方向の設定後、ステップS200に進む。
【0072】
ステップS102またはステップS104の終了後のステップS200では、モータ22の現在の回転位置から設定された回転方向における隣接する回転位置まで回転するようにモータ22を駆動させる。モータ22の回転制御後、ステップS105に進む。
【0073】
ステップS105では、モータ22の回転を停止させる。モータ22の停止後、ステップS106に進む。ステップS106では、インターバルタイマを起動する。インターバルタイマの起動後、ステップS107に進む。
【0074】
ステップS107では、設定されたインターバル時間が経過しているか否かを判別する。設定されたインターバル時間を経過していない場合はステップS107に戻り、インターバル時間が経過するまでステップS107を繰返す。インターバル時間の経過時に、ステップS100に戻る。
【0075】
次に、ステップS200で実行される1段階のモータ22回転制御について図7のフローチャートを用いて説明する。図7は、1段階のモータ22回転制御のサブルーチンである。
【0076】
ステップS201では、モータ22の現在の回転位置およびステップS102またはステップS104において設定された回転方向に基づいて、対応する時間定数Tを不揮発性メモリ37から読出す。時間定数Tの読出し後、ステップS202に進む。
【0077】
ステップS202では、ステップS201において読出した時間定数Tを用いて、時間経過に対する駆動電圧のデューティー比の関数を定める。デューティー比の設定後、ステップS203に進む。
【0078】
ステップS203では、モータ22に印加する駆動電圧のデューティー比を最低駆動値に設定し、モータ22の回転を開始させる。モータ22の回転開始後、ステップS204に進む。
【0079】
ステップS204では、時間の経過に対してステップS202において設定した関数によって変動するようにデューティー比の調整を開始する。デューティー比の調整開始後、ステップS205に進む。
【0080】
ステップS205では、モータ22の回転位置が、設定された回転方向における元の位置に隣接する基準位置またはステップ回転位置に到達しているか否かを判別する。到達していない場合はステップS205に戻り、隣接する回転位置に到達するまでステップS205を繰返す。隣接する回転位置に到達している場合には、ステップS105に進む。
【0081】
以上のように、本実施形態のレンズ位置制御システムによれば、モータ22の回転を停止させる前に駆動電圧のデューティー比を通常駆動電圧から減少させることにより、トルクを徐々に開放させることが出来る。トルクを徐々に開放することにより、モータ22の回転停止後のズーム光学系の変位量を低減化することが可能である。
【0082】
また、本実施形態によれば、時間の経過に対して正弦関数状にデューティー比が変動される。したがって、デューティー比を最小値から最低駆動値まで減少させる際に、時間の経過に対するデューティー比の変化の割合を連続させることが可能である。
【0083】
時間の経過に対するデューティー比の変化の割合を連続させることにより、一定の割合で変化させる場合に比べてさらにゆっくりとトルクを開放することが可能となる。したがって、モータ22の回転停止後のズーム光学系の変位量をさらに低減化することが可能である。
【0084】
モータ22の回転停止後のズーム光学系の変位量を低減化出来るので、所定の位置により近い位置でズーム光学系の変位を停止可能である。それゆえ、正確な位置調整が可能となるため、ズーム光学系の位置検出センサを挿入管13の先端に設ける必要が無い。
【0085】
なお、本実施形態では、駆動電圧のデューティー比を、時間の経過に対して正弦関数状に変化させる構成であるが、デューティー比の時間に対する変化は正弦関数状に限定されない。元の回転位置から隣接する回転位置までの間の回転位置(第2の回転量)から回転停止するまでの間に、時間の経過に対するデューティー比の変化の割合を実質的に連続させながら、デューティー比を減少させる構成であれば、本実施形態と同様の効果を得ることは可能である。
【0086】
また、本実施形態では、モータ22の回転開始、駆動電圧のデューティー比を徐々に増加するように制御されるが、回転開始時に一定の値に昇圧する構成であってもよい。すなわち、回転開始時にDmin+Dに昇圧し、回転開始後T/2経過後に(1)式に応じて変化するようにデューティー比を調整することによっても本実施形態と同様の効果を得ることが可能である。
【0087】
また、本実施形態では、第1〜第8のステップ回転位置でモータ22の回転を停止させる構成であるが、第1〜第8のステップ回転位置に限られない。第1〜第nのステップ回転位置(nは2以上の整数)でモータ22の回転を停止させる構成であってもよい。
【0088】
第1、第2の基準位置の間の第1〜第nのステップ回転位置においてモータ22の回転を停止させることにより、所定の撮影倍率で被写体を観察可能となる。また、それぞれのステップ回転位置でモータ22の回転を設定したインターバル時間だけ停止させる構成により、使用者の所望の倍率でズーム光学系の変位を停止させることが可能になる。
【0089】
また、本実施形態では、第1〜第8のステップ回転位置でモータ22の回転を停止させる構成であるが、いずれの位置において停止させなくてもよい。すなわち、第1、第2の基準位置でのみモータ22の回転を停止させる構成であってもよい。第1、第2の基準位置のみでモータ22の回転を停止させる構成であっても、回転停止後のズーム光学系の変位量を減少させる効果を得ることは可能である。
【0090】
また、本実施形態では、モータ制御回路24から出力される3相駆動信号の位相からモータ22の回転量を検出する構成であるが、他のいかなる方法によってモータ22の回転量を検出してもよい。例えば、モータ22の回転位置を検出するエンコーダなどの位置検出センサによって回転量を検出する構成であってもよい。
【0091】
また、本実施形態では、ズーム光学系を変位させる構成であるが、トルクワイヤによって駆動されるものはズーム光学系に限定されない。フォーカスレンズなどの他のレンズが駆動される構成であってもよい。
【0092】
また、本実施形態では、レンズの駆動にカム環を用いる構成であるが、トルクワイヤを回転させることにより駆動力が伝達される構成であれば従来周知の他の機構を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0093】
10 電子内視鏡
11 内視鏡プロセッサ
12 モニタ
13 挿入管
14 操作部
17 撮像素子
18 撮影光学系
19 カム環(レンズ位置調整機構)
20 ギア
21 トルクワイヤ
22 モータ
24 モータ駆動回路
25 制御部
26 Teleボタン
27 Wideボタン
34 位相検出回路
36 マイコン
37 不揮発性メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡の先端に設けられるレンズの位置を調整するためのレンズ位置調整機構と、
前記レンズ位置調整機構に動力を供給するモータと、
前記モータの動力を前記レンズ位置調整機構に伝達するトルクワイヤと、
前記モータの回転を検知し、回転量を算出する回転量検出手段と、
前記モータを、停止状態から第1の回転量だけ回転させるように、PWM制御するモータ制御手段とを備え、
前記モータ制御手段は、前記第1の回転量より小さい第2の回転量から前記第1の回転量まで回転している期間には、前記モータに印加する駆動電圧のデューティー比を、時間の経過に対する前記デューティー比の変化の割合を実質的に連続させながら、時間の経過に応じて減少させる
ことを特徴とするレンズ位置制御システム。
【請求項2】
前記レンズは、第1の端部から第2の端部まで移動可能であり、
前記第1、第2の端部に対応する前記モータの回転の位置である第1、第2の基準位置までの間に第1〜第n(nは2以上の整数)のステップ位置が定められており、
前記モータ制御手段は、前記モータの回転駆動開始後、前記第1、第2の基準位置、および前記第1〜第nのステップ位置において前記モータの回転を停止させ、
前記第1の基準位置から前記第1のステップ位置、前記第(n−1)のステップ位置から前記第nのステップ位置、および前記第nのステップ位置から前記第2の基準位置までの回転量である前記第1の回転量は、前記第1の基準位置と前記第1のステップ位置との間、前記第(n−1)のステップ位置と前記第nのステップ位置との間、および前記第nのステップ位置と前記第2の基準位置との間の回転駆動である第1の回転駆動、第nの回転駆動、終端回転駆動毎に定められる
ことを特徴とする請求項1に記載のレンズ位置制御システム。
【請求項3】
前記第2の回転量は、前記第1、第nの回転駆動、および前記終端回転駆動毎に定められることを特徴とする請求項2に記載のレンズ位置制御システム。
【請求項4】
前記レンズを移動させる入力のONとOFFとを切替えるスイッチを備え、
前記モータ制御手段は、
前記モータの停止状態において前記スイッチをONに切替えると、前記第1の回転量だけ回転するまで前記モータを回転させ、
前記モータが前記第1の回転量だけ回転すると、前記モータの回転を一時停止させ、
前記モータの一時停止中に前記スイッチのON状態が継続されている場合には、再度前記モータの回転駆動を開始する
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のレンズ位置制御システム。
【請求項5】
挿入管の先端において、光軸に沿って変位可能に設けられたレンズと、
前記レンズの位置を調整するためのレンズ位置調整機構と、
前記レンズ位置調整機構に動力を供給するモータと、
前記モータの動力を前記レンズ位置調整機構に伝達するトルクワイヤと、
前記モータの回転を検知し、回転量を算出する回転量検出手段と、
前記モータを、停止状態から第1の回転量だけ回転させるように、PWM制御するモータ制御手段とを備え、
前記モータ制御手段は、前記第1の回転量より小さい第2の回転量から前記第1の回転量まで回転している期間には、前記モータに印加する駆動電圧のデューティー比を、時間の経過に対する前記デューティー比の変化の割合を実質的に連続させながら、時間の経過に応じて減少させる
ことを特徴とする内視鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−75786(P2012−75786A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−225863(P2010−225863)
【出願日】平成22年10月5日(2010.10.5)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】