説明

レーザ光源装置およびそれを搭載する画像表示装置

【課題】本来用いられるべき装置から取り外された場合、単独動作時には出力を低下させるようにし、その一方で、本来用いられるべき装置に組み込まれた状態にある場合は、緑色レーザ光が正常に発光されるよう構成されたレーザ光源装置と、そのレーザ光源装置を搭載し緑色レーザ光を発光させることが可能な画像表示装置を提供する。
【解決手段】励起用レーザ光を出力する半導体レーザ31と、その励起用レーザ光により励起されて基本レーザ光を出力する固体レーザ素子34と、半導体レーザおよび固体レーザ素子34を支持する基台38と、を備え、固体レーザ素子34は略直方体の形状を有し、半導体レーザ31からの励起用レーザ光の入射面および基本レーザ光の出射面を除く4つ面のうち、少なくとも互いに隣接する2つの面のそれぞれにおいて、その表面積よりも小さな接触面積により基台38と当接したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザを用いたレーザ光源装置に関し、特に画像表示装置の光源に用いられるレーザ光源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、画像表示装置の光源に半導体レーザを用いる技術が注目されている。この半導体レーザは、従来から画像表示装置に多用されてきた水銀ランプに比較して、色再現性がよい点、瞬時点灯が可能である点、長寿命である点、高効率で消費電力を低減することができる点、ならびに小型化が容易である点など、種々の利点を有している。
【0003】
このような画像表示装置に用いられるレーザ光源装置においては、緑色レーザ光を直接出力する半導体レーザに高出力のものがないため、半導体レーザから励起用レーザ光を出力させ、この励起用レーザ光で固体レーザ素子を励起させて赤外レーザ光を出力させ、この赤外レーザ光の波長を波長変換素子で変換して緑色レーザ光を出力するようにした技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−16833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記のような構成の画像表示装置においては、緑色レーザ光源装置を始めとするレーザ光源装置からの出力光が不用意にユーザの目に当たることを防ぐために、その出力パワーが制限されるとともに、ユーザによる装置の分解が禁じられている。
【0006】
しかしながら、ユーザは画像表示装置に取り付けられている緑色レーザ光源装置に興味を持ち、それを例えばポインタなどの別の用途のために単独で緑色レーザ光源装置を使用しようとするかもしれない。この状況は特に、画像表示装置本体の緑色レーザ光源装置以外の部分が故障して使えなくなったときや、ユーザが緑色レーザ光源の動作を知りたいと考えたときなどに、特に起こりうる。このような、本来の画像表示ではない用途に緑色レーザ光源装置が単独で用いられることはもちろん想定されておらず、それによって予期しない事態が起きる可能性があり、それは決して好ましいことではない。
【0007】
次に、このような波長変換による緑色レーザ光源装置の内部では、先にも述べたように赤外レーザ光が出力されている。もし、ユーザによって緑色レーザ光源装置のみが画像表示装置から取り外され、ユーザがその緑色レーザ光源装置を単独で発光させようとしたときに、緑色レーザ光源装置を構成する部材の一部が誤って脱落する可能性がある。そうなれば、赤外レーザ光が緑色レーザ光源装置の外部に漏出し、それがユーザの目に当たっても、ユーザはそのことを知ることができないため、最悪の場合、その赤外光が長時間ユーザの目に当たり続けることになり、大変危険である。
【0008】
本発明は、このような従来技術の問題点を解消するべく案出されたものであり、その主な目的は、まず、波長変換によるレーザ光源装置が取り外されたとしても、その緑色レーザ光源装置の単独動作時には出力を低下させるようにすることにある。次に、その一方で、画像表示装置に組み込まれた状態にある場合は、緑色レーザ光が発光されるように構成されたレーザ光源装置と、そのレーザ光源装置を搭載し緑色レーザ光を発光させることが可能な画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のレーザ光源装置は、励起用レーザ光を出力する半導体レーザと、前記励起用レーザ光により励起されて基本レーザ光を出力する固体レーザ素子と、前記半導体レーザおよび前記固体レーザ素子を支持する基台と、を備え、前記固体レーザ素子は、略直方体の形状を有し、前記半導体レーザからの励起用レーザ光の入射面および前記基本レーザ光の出射面を除く4つ面のうち、少なくとも互いに隣接する2つの面のそれぞれにおいて、その表面積よりも小さな接触面積により前記基台と当接した構成とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、このレーザ光源装置が本来とは異なる用途のために、本来用いられるべき装置、すなわち画像表示装置から取り外された場合、そのレーザ光源装置は単独では低い出力でしか動作せず、その一方で、このレーザ光源装置が本来用いられるべき装置、すなわち画像表示装置に組み込まれた状態にある場合は、緑色レーザ光の基となる基本レーザ光が正常に発光される。これにより、画像表示装置としての動作を損なうことなく、その一方で緑色レーザ光源装置が画像表示装置の本体より取り外され単体動作が試みられたとしても、そのレーザ光の出力は人体に影響を与えない程度に低いので、その安全性は確保される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による画像表示装置1を携帯型情報処理装置151に内蔵した例を示す斜視図
【図2】本発明による画像表示装置1の光学エンジンユニット156の概略構成図
【図3】緑色レーザ光源装置2におけるレーザ光の状況を示す模式図
【図4】緑色レーザ光源装置2の内部斜視図
【図5】緑色レーザ光源装置2の断面図
【図6】波長変換素子35の斜視図
【図7】光軸方向に対する波長変換素子35の傾斜角度θに応じた波長変換効率ηの変化状況を示す図
【図8】図1に示した画像表示装置1の機能ブロック図
【図9】緑色レーザ光源装置2、赤色レーザ光源装置3および青色レーザ光源装置4を点灯させる第1の通常点灯シーケンスによって白色表示を行う通常動作時の点灯シーケンスと、空間光変調素子25の動作との関係を示す図
【図10】第1の通常点灯シーケンスにより緑色レーザ光源装置2の点灯を開始した直後の出力を示す図
【図11】第1の通常点灯シーケンスにおいて緑色レーザ光源装置2、赤色レーザ光源装置3および青色レーザ光源装置4を点灯させて青色表示を行いながら、緑色レーザ光源装置2の起動を早めるための第1のウォームアップシーケンスと、空間光変調素子25の動作との関係を示す図
【図12】第1のウォームアップシーケンスによる緑色レーザ光源装置起動時の出力を示す図
【図13】緑色レーザ光源装置2、赤色レーザ光源装置3および青色レーザ光源装置4を点灯させる他の通常点灯シーケンスの例を示す図
【図14】緑色レーザ光源装置2を構成する部品のうち、固体レーザ素子34およびそれを支持する基台38を中心に示した斜視図
【図15】固体レーザ素子34およびその周辺部の拡大斜視図
【図16】緑レーザ光源装置2を上面より見た図
【図17】本実施の形態の緑色レーザ光源装置2の動作特性を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
前記課題を解決するためになされた第1の発明は、励起用レーザ光を出力する半導体レーザと、励起用レーザ光により励起されて基本レーザ光を出力する固体レーザ素子と、半導体レーザおよび固体レーザ素子を支持する基台と、を備え、固体レーザ素子は、略直方体の形状を有し、半導体レーザからの励起用レーザ光の入射面および基本レーザ光の出射面を除く4つ面のうち、少なくとも互いに隣接する2つの面のそれぞれにおいて、その表面積よりも小さな接触面積により基台と当接した構成とする。
【0013】
これによると、本来とは異なる用途のために本来用いられるべき装置から取り外された場合、低い出力でしか動作しないようにし、その一方で、本来用いられるべき装置に組み込まれた状態にある場合は、緑色レーザ光の基となる基本レーザ光が正常に発光される。
【0014】
また、第2の発明は、前記第1の発明において、半導体レーザが連続駆動されたときに固体レーザ素子が出力する基本レーザ光のパワーは、半導体レーザがパルス駆動されたときよりも小さい構成とする。
【0015】
これによると、本来用いられるべき装置から取り外された場合、通常は半導体レーザがパルス駆動されるため、単独では低い出力でしか動作せず、その一方で、本来用いられるべき装置に組み込まれた状態にある場合は、半導体レーザが連続駆動されるため、緑色レーザ光の基となる基本レーザ光が正常に発光される。
【0016】
さらに、第3の発明は、波長変換素子と凹面ミラーとをさらに有する請求項1記載のレーザ光源装置と、半導体レーザの駆動手段と、を備え、半導体レーザが駆動手段によりパルス駆動されたときに固体レーザ素子が出力する基本レーザ光のパワーは、半導体レーザがパルス駆動されたときよりも小さい構成とする。
【0017】
これによると、レーザ光源装置が本来用いられるべき装置、すなわち画像表示装置から取り外された場合、通常は半導体レーザが連続駆動されるため、単独ではパワーの低い緑色レーザ光しか出力せず、その一方で、本来用いられるべき装置、すなわち画像表示装置に組み込まれた状態にある場合は、半導体レーザがパルス駆動されるため、レーザ光が正常に発光される。その結果、画像表示装置としての動作を損なうことなく、その一方でレーザ光源装置が画像表示装置の本体より取り外され単体動作が試みられたとしてもレーザ光が出力しないので、その安全性は確保される。
【0018】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1は、本発明による画像表示装置1を携帯型情報処理装置151に内蔵した例を示す斜視図である。携帯型情報処理装置151の本体152には、光ディスク装置などの周辺機器が取り替え可能に収容される収容スペース、いわゆるドライブベイが、キーボード153の裏面側に形成されており、このドライブベイに画像表示装置1が出没自在に取り付けられている。
【0020】
画像表示装置1は、収容体154と、収容体154に対して出し入れ可能に設けられた可動体155と、を有している。可動体155は、レーザ光をスクリーンSに投射するための光学部品が収容された光学エンジンユニット156と、この光学エンジンユニット156内の光学部品を制御するための基板などが収容された制御ユニット157とで構成され、光学エンジンユニット156が上下方向に回動可能に制御ユニット157に支持されている。
【0021】
この画像表示装置1は、不使用時に可動体155が収容体154内に格納され、使用時には可動体155が収容体154から引き出され、光学エンジンユニット156を回動させて、光学エンジンユニット156からのレーザ光の投射角度を調整することで、レーザ光をスクリーンS上に適切に投射させることができる。
【0022】
図2は、本発明による画像表示装置1の光学エンジンユニット156の概略構成図である。この光学エンジンユニット156は、所要の画像をスクリーンに投影表示するものであり、緑色レーザ光を出力する緑色レーザ光源装置2と、赤色レーザ光を出力する赤色レーザ光源装置3と、青色レーザ光を出力する青色レーザ光源装置4と、映像信号に応じて各レーザ光源装置2〜4からのレーザ光の変調を行う液晶反射型の空間光変調器5と、各レーザ光源装置2〜4からのレーザ光を反射させて空間光変調器5に照射させるとともに空間光変調器5から出射された変調レーザ光を透過させる偏光ビームスプリッタ6と、各レーザ光源装置2〜4から出射されるレーザ光を偏光ビームスプリッタ6に導くリレー光学系7と、偏光ビームスプリッタ6を透過した変調レーザ光をスクリーンに投射する投射光学系8と、を備えている。
【0023】
この光学エンジンユニット156は、いわゆるフィールドシーケンシャル方式でカラー画像を表示するものであり、各レーザ光源装置2〜4から各色のレーザ光が時分割で順次出力され、各色のレーザ光による画像が視覚の残像効果によってカラー画像として認識される。
【0024】
リレー光学系7は、各レーザ光源装置2〜4から出射される各色のレーザ光を平行ビームに変換するコリメータレンズ11〜13と、コリメータレンズ11〜13を通過した各色のレーザ光を所要の方向に導く第1および第2のダイクロイックミラー14,15と、ダイクロイックミラー14,15により導かれたレーザ光を拡散させる拡散板16と、拡散板16を通過したレーザ光を収束レーザに変換するフィールドレンズ17と、を備えている。
【0025】
投射光学系8からスクリーンSに向けてレーザ光が出射される側を前側とすると、青色レーザ光源装置4から青色レーザ光が後方に向けて出射され、この青色レーザ光の光軸に対して緑色レーザ光の光軸および赤色レーザ光の光軸が互いに直交するように、緑色レーザ光源装置2および赤色レーザ光源装置3から緑色レーザ光および赤色レーザ光が出射され、この青色レーザ光、赤色レーザ光、および緑色レーザ光が、2つのダイクロイックミラー14,15で同一の光路に導かれる。すなわち、青色レーザ光と緑色レーザ光が第1のダイクロイックミラー14で同一の光路に導かれ、青色レーザ光および緑色レーザ光と赤色レーザ光が第2のダイクロイックミラー15で同一の光路に導かれる。
【0026】
第1および第2のダイクロイックミラー14,15は、表面に所定の波長のレーザ光を透過および反射させるための膜が形成されたものであり、第1のダイクロイックミラー14は、青色レーザ光を透過するとともに緑色レーザ光を反射させる。第2のダイクロイックミラー15は、赤色レーザ光を透過するとともに青色レーザ光および緑色レーザ光を反射させる。
【0027】
これらの各光学部材は、筐体21に支持されている。この筐体21は、各レーザ光源装置2〜4で発生した熱を放熱する放熱体として機能し、アルミニウムや銅などの熱伝導性の高い材料で形成されている。
【0028】
緑色レーザ光源装置2は、側方に向けて突出した状態で筐体21に形成された取付部22に取り付けられている。この取付部22は、リレー光学系7の収容スペースの前方と側方にそれぞれ位置する前壁部23と側壁部24とが交わる角部から側壁部24に直交する向きに突出した状態で設けられている。赤色レーザ光源装置3は、ホルダ25に保持された状態で側壁部24の外面側に取り付けられている。青色レーザ光源装置4は、ホルダ26に保持された状態で前壁部23の外面側に取り付けられている。
【0029】
赤色レーザ光源装置3および青色レーザ光源装置4は、いわゆるCANパッケージで構成され、レーザ光を出力するレーザチップが、ステムに支持された状態で缶状の外装部の中心軸上に光軸が位置するように配置されたものであり、外装部の開口に設けられたガラス窓からレーザ光が出射される。この赤色レーザ光源装置3および青色レーザ光源装置4は、ホルダ25,26に開設された取付孔27,28に圧入するなどしてホルダ25,26に対して固定される。青色レーザ光源装置4および赤色レーザ光源装置3のレーザチップの発熱は、ホルダ25,26を介して筐体21に伝達されて放熱され、各ホルダ25,26は、アルミニウムや銅などの熱伝導率の高い材料で形成されている。
【0030】
緑色レーザ光源装置2は、励起用レーザ光を出力する半導体レーザ31と、半導体レーザ31から出力された励起用レーザ光を集光する集光レンズであるFAC(Fast−Axis Collimator)レンズ32およびロッドレンズ33と、励起用レーザ光により励起されて基本レーザ光(赤外レーザ光)を出力する固体レーザ素子34と、基本レーザ光の波長を変換して半波長レーザ光(緑色レーザ光)を出力する波長変換素子(光学素子)35と、固体レーザ素子34とともに共振器を構成する凹面ミラー36と、励起用レーザ光および基本波長レーザ光の漏洩を阻止するガラスカバー37と、各部を支持する基台38と、各部を覆うカバー体39と、を備えている。
【0031】
この緑色レーザ光源装置2は、基台38を筐体21の取付部22に取り付けて固定され、緑色レーザ光源装置2と筐体21の側壁部24との間に所要の幅(例えば0.5mm以下)の間隙が形成される。これにより、緑色レーザ光源装置2の熱が赤色レーザ光源装置3に伝わりにくくなり、赤色レーザ光源装置3の昇温を抑制して、温度特性の悪い赤色レーザ光源装置3を安定的に動作させることができる。また、赤色レーザ光源装置3の所要の光軸調整代(例えば0.3mm程度)を確保するため、緑色レーザ光源装置2と赤色レーザ光源装置3との間に所要の幅(例えば0.3mm以上)の間隙が設けられている。
【0032】
図3は、緑色レーザ光源装置2におけるレーザ光の状況を示す模式図である。半導体レーザ31のレーザチップ41は、波長808nmの励起用レーザ光を出力する。FACレンズ32は、レーザ光のファースト軸(光軸方向に対して直交し且つ図の紙面に沿う方向)の拡がりを低減する。ロッドレンズ33は、レーザ光のスロー軸(図の紙面に対して直交する方向)の拡がりを低減する。
【0033】
固体レーザ素子34は、いわゆる固体レーザ結晶であり、ロッドレンズ33を通過した波長808nmの励起用レーザ光により励起されて波長1064nmの基本波長レーザ光(赤外レーザ光)を出力する。この固体レーザ素子34は、Y(イットリウム)VO4(バナデート)からなる無機光学活性物質(結晶)にNd(ネオジウム)をドーピングしたものであり、より具体的には、母材であるYVO4のYに蛍光を発する元素であるNd+3に置換してドーピングしたものである。
【0034】
固体レーザ素子34におけるロッドレンズ33に対向する側には、波長808nmの励起用レーザ光に対する反射防止と、波長1064nmの基本波長レーザ光および波長532nmの半波長レーザ光に対する高反射の機能を有する膜42が形成されている。固体レーザ素子34における波長変換素子35に対向する側には、波長1064nmの基本波長レーザ光および波長532nmの半波長レーザ光に対する反射防止の機能を有する膜43が形成されている。
【0035】
波長変換素子35は、いわゆるSHG(Second Harmonics Generation)素子であり、固体レーザ素子34から出力される波長1064nmの基本波長レーザ光(赤外レーザ光)の波長を変換して波長532nmの半波長レーザ光(緑色レーザ光)を生成する。
【0036】
波長変換素子35における固体レーザ素子34に対向する側には、波長1064nmの基本波長レーザ光に対する反射防止と、波長532nmの半波長レーザ光に対する高反射の機能を有する膜44が形成されている。波長変換素子35における凹面ミラー36に対向する側には、波長1064nmの基本波長レーザ光および波長532nmの半波長レーザ光に対する反射防止の機能を有する膜45が形成されている。
【0037】
凹面ミラー36は、波長変換素子35に対向する側に凹面を有し、この凹面には、波長1064nmの基本波長レーザ光に対する高反射と、波長532nmの半波長レーザ光に対する反射防止の機能を有する膜46が形成されている。これにより、固体レーザ素子34の膜42と凹面ミラー36の膜46との間で、波長1064nmの基本波長レーザ光が共振して増幅される。
【0038】
波長変換素子35では、固体レーザ素子34から入射した波長1064nmの基本波長レーザ光の一部が波長532nmの半波長レーザ光に変換され、変換されずに波長変換素子35を通過した波長1064nmの基本波長レーザ光は、凹面ミラー36で反射されて波長変換素子35に再度入射し、波長532nmの半波長レーザ光に変換される。この波長532nmの半波長レーザ光は、波長変換素子35の膜44で反射されて波長変換素子35から出射される。
【0039】
ここで、固体レーザ素子34から波長変換素子35に入射して波長変換素子35で波長変換されて波長変換素子35から出射されるレーザ光のビームB1と、凹面ミラー36で一旦反射されて波長変換素子35に入射して膜44で反射されて波長変換素子35から出射されるレーザ光のビームB2とが互いに重なり合う状態では、波長532nmの半波長レーザ光と波長1064nmの基本波長レーザ光とが干渉を起こして出力が低下する。
【0040】
そこでここでは、波長変換素子35を光軸方向に対して傾斜させて、入射面35aおよび出射面35bでの屈折作用により、レーザ光のビームB1、B2が互いに重なり合わないようにして、波長532nmの半波長レーザ光と波長1064nmの基本波長レーザ光との干渉を防ぐようにしており、これにより出力低下を避けることができる。
【0041】
なお、図2に示したガラスカバー37には、波長808nmの励起用レーザ光および波長1064nmの基本波長レーザ光が外部に漏洩することを防止するため、これらのレーザ光を透過しない膜が形成されている。また、図2に示した緑色レーザ光源装置2のカバー体39には、孔39aが設けられている。緑色レーザ光源装置2は、まずカバー体39以外の部分が組み立てられ、光軸調整など全ての光学部材の調整が終わった後、カバー体39が取り付けられる。そして、緑色レーザ光源装置2が調整ズレを起こさないよう、孔39aより接着剤が注入され、各光学部材と基台38の孔39aに対向する面とが全面的に固着される。接着剤は、その硬化の過程においてガスを発生するので、カバー体39に設けられた孔39aは、この発生したガスの排出口ともなっている。接着剤が硬化し、ガスが十分に排出されたら、このカバー体39に設けられた孔39aを覆うように、封止部材39bがカバー体39に貼付される。これにより、緑色レーザ光源装置2の内部への粉塵などの混入が防止され、緑色レーザ光源装置2の発光効率の低下が回避される。
【0042】
図4は、緑色レーザ光源装置2の内部斜視図である。図5は、緑色レーザ光源装置2の内部断面図である。
【0043】
図4に示すように、半導体レーザ31、FACレンズ32、ロッドレンズ33、固体レーザ素子34、波長変換素子35、および凹面ミラー36は、基台38に一体的に支持されている。基台38の底面51は光軸方向に対して平行となる。なお、ここでは、基台38の底面51に対して直交する方向を高さ方向とし、この高さ方向および光軸方向に対して直交する方向を幅方向とする。また、基台38の底面51に近接する側を下、底面51と相反する側を上として説明するが、これは実際の装置の上下方向と必ずしも一致するものではない。
【0044】
半導体レーザ31は、レーザ光を出力するレーザチップ41をマウント部材52に実装したものである。レーザチップ41は、光軸方向に長い帯板状をなし、光出射面をFACレンズ32側に向けた状態で、板状をなすマウント部材52の一面の幅方向の略中心位置に固着されている。この半導体レーザ31は、基台38に耐熱性の高い銀ペーストを含有する半田により半田付け固定される。これによりレーザチップ41の発熱が基台38に伝達されて放熱することができる。
【0045】
FACレンズ32およびロッドレンズ33は、集光レンズホルダ54に保持される。この集光レンズホルダ54は、略コの字形で且つその先端部側が絞り気味に形成された弾性部材55によって、基台38に支持される。より具体的には、弾性部材55は、基台38上において集光レンズホルダ54が配置される部分の片側に立設された側壁部51aと、基台38の底部51との間に設けられた、図示しない長方形の穴より、まずその一方の側面55aが通される。次に、先ほどの側面55aと底面55bとの間にある角部が図示しない長方形の穴に来たときに、弾性部材55は、底面55bが図示しない長方形の穴を通過できるよう、回転される。そして、この底面55bともう一方の側面55cとの間にある角部が図示しない長方形の穴に来たときに、弾性部材55は再び回転され、基台38の底面51上に配置される。この状態で、FACレンズ32およびロッドレンズ33があらかじめ実装された集光レンズホルダ54は、基台38の側壁部51aと、弾性部材55の一方の側面55aとの間に、高さ方向の上部より挿入される。このとき、弾性部材55のもう一方の側面55cは、基台38の側壁部51aを挟んで集光レンズホルダ54とは反対側の側面に配置されている。そして、先ほども述べたように、弾性部材55の両側面55aおよび55cの先端部側は、底面55bよりも絞り気味に形成されているため、その先端には内向きの弾性力が発生する。こうして、弾性部材55が有する弾性力により、集光レンズホルダ54は、基台38の側壁部51aの側に押圧されて配置される。
【0046】
以上のように配置された集光レンズホルダ54は、光軸方向に移動可能で、これにより集光レンズホルダ54、すなわちFACレンズ32およびロッドレンズ33の位置が、光軸方向に調整される。FACレンズ32およびロッドレンズ33は位置調整作業の前に集光レンズホルダ54に接着剤で固定され、位置調整作業の後に、集光レンズホルダ54と基台38および弾性部材55とが接着剤で互いに固定される。
【0047】
固体レーザ素子34は、基台38に一体的に形成された固体レーザ素子支持部56に支持される。また、固体レーザ素子34を保持する固体レーザ素子保持部57が、先ほどの側壁部と連続する形で側方に突出するように設けられている。固体レーザ素子支持部56および固体レーザ素子保持部57の構造と、固体レーザ素子34の固定方法については、後ほど詳細に述べる。
【0048】
波長変換素子35は、波長変換素子ホルダ58に保持される。この波長変換素子ホルダ58は、波長変換素子35の幅方向の位置および光軸方向に対する傾斜角度を調整することができるように、基台38に対して、幅方向に移動可能に、且つ光軸方向に対して略直交する軸周りに回動可能に設けられている。波長変換素子35は位置調整作業の前に波長変換素子ホルダ58に接着剤で固定され、位置調整作業の後に、波長変換素子ホルダ58と基台38とが接着剤で互いに固定される。凹面ミラー36は、基台38に一体的に形成された凹面ミラー支持部59に支持される。なお、前記の各部材、例えば波長変換素子ホルダ58と基台38との固定に用いる接着剤は、例えばUV硬化型接着剤が好適である。
【0049】
図6は、波長変換素子35の斜視図である。図6に示すように、波長変換素子35は、略直方体状をなし、強誘電体結晶に分極反転領域61と非分極反転領域62とが交互に形成された、周期的な分極反転構造を備えたものであり、分極反転周期方向(分極反転領域61の配列方向)に基本波長レーザ光を入射させる。これにより、擬似位相整合による入射光の第2次高調波発生で2倍の周波数、すなわち1/2の波長のレーザ光を得ることができる。強誘電体結晶には、例えばLN(ニオブ酸リチウム)にMgOを添加したものが用いられる。
【0050】
周期的な分極反転構造を形成するには、周期電極63と対向電極64を用いて、単分極した強誘電体結晶に分極方向と逆方向の電界を印加する。これにより周期電極63に対応する部分の分極方向が反転し、分極反転領域61が周期電極63から対向電極64に向けて楔形状に形成される。
【0051】
図6に示したように、分極反転領域61は、深さ方向に沿って厚さが次第に小さくなる楔形状をなし、入射するレーザ光に対して、分極反転領域61の深さ方向に波長変換素子35を移動させることで、レーザ光の光路上に位置する分極反転領域61と非分極反転領域62との割合が変化し、これに応じて波長変換効率が変化する。そこで、波長変換効率が最大となる、すなわちレーザ光の出力が最大となるように、レーザ光の光軸に対する波長変換素子35の位置が調整される。この波長変換素子35の位置調整については後に詳しく説明する。
【0052】
なお、図6では、説明の便宜上、波長変換素子35の側面35c,35dに周期電極63および対向電極64を図示したが、この周期電極63および対向電極64は、スタックの段階で研磨により削除される。
【0053】
図7は、光軸方向に対する波長変換素子35の傾斜角度θに応じた波長変換効率ηの変化状況を示す図である。波長変換素子35の波長変換効率ηは、光軸方向に対する波長変換素子35の傾斜角度θに応じて変化し、光軸方向に対して傾斜していない状態(θ=0)では波長変換効率ηが低く、光軸方向に対して傾斜させることで波長変換効率ηを高めることができる。
【0054】
これは、傾斜角度θが0の場合、図3に示したように、レーザ光のビームB1,B2が互いに重なり合うことで、波長532nmの半波長レーザ光と波長1064nmの基本波長レーザ光とが干渉を起こすことによるためであり、波長変換素子35を光軸方向に対して傾斜させることで、入射面35aおよび出射面35bでの屈折作用により、レーザ光のビームB1,B2がずれるため、干渉による出力低下を傾けることができる。
【0055】
特にここでは、波長変換効率のピーク点(ここではθ=±0.6度)を中心にした所要の範囲(例えば±0.4度)の高効率領域に入るように波長変換素子35の傾斜角度θを調整し、この調整代に相当する角度範囲で波長変換素子ホルダ58を基台38に対して傾動させることができるように各部の寸法が設定される。
【0056】
図8は、図1に示した画像表示装置1の機能ブロック図である。制御ユニット157には、各色のレーザ光源装置2〜4を制御するレーザ光源制御部71と、携帯型情報処理装置151から入力される映像信号を変換する映像信号変換部72およびその出力信号に基づいて空間光変調素子25を制御する空間光変調素子制御部73を備えた画像表示制御部74と、携帯型情報処理装置151から供給される電力をレーザ光源制御部71および画像表示制御部74に供給する電源部75と、各部を総括的に制御する主制御部76と、を有している。
【0057】
主制御部76は、画像表示制御部74から入力される画像表示信号に基づき、各色のレーザ光源装置2〜4の点灯を制御する制御信号として、各レーザ光源装置2〜4の点灯を許可する点灯許可信号(LD ON)と、赤色、緑色および青色の各レーザ光源装置2〜4をそれぞれ点灯させる赤色点灯信号(LD RON)、緑色点灯信号(LD GON)および青色点灯信号(LD BON)を生成して、これらの制御信号をレーザ光源制御部71に出力する。
【0058】
レーザ光源制御部71は、主制御部76から入力される制御信号に基づき、各レーザ光源装置2〜4に対する駆動電流の印加を制御するための駆動制御信号(Ig、Ir、およびIb)を各レーザ光源装置2〜4に出力する。
【0059】
空間光変調素子制御部73は、映像信号変換部72から出力される映像信号に基づき、空間光変調素子25の動作を制御する制御信号として、基準電圧信号(LCOS VCOM)および画素電圧信号(LCOS ΔV)を生成して、これらの制御信号を空間光変調素子25に出力する。画素電圧信号(LCOS ΔV)は、実際には、空間光変調素子25が有する画素数分の信号数が存在するが、本実施の形態においては便宜上、空間光変調素子25が有するn番目の画素の画素電圧信号を「LCOS ΔV」として説明する。
【0060】
空間光変調素子25は、反射型の液晶表示素子、いわゆるLCOS(Liquid Crystal On Silicon)であり、シリコン基板上に形成した液晶層を透過したレーザ光をシリコン基板上の反射層で反射させて出射させる構成のものである。この空間光変調素子25では、空間光変調素子制御部73から入力される画素電圧信号(LCOS ΔV)に応じてレーザ光の出力(輝度)が増減し、各色のレーザ光源装置2〜4から時分割で入力される各色のレーザ光の出力を増減することで、所要の色相を表示させることができる。
【0061】
また、この空間光変調素子25は、空間光変調素子制御部73から入力される基準電圧信号(LCOS VCOM)に基づいて極性(pおよびn)が制御され、画素電圧信号(LCOS ΔV)は、基準電圧信号(LCOS VCOM)に応じて正負が反転する。
【0062】
図9は、緑色レーザ光源装置2、赤色レーザ光源装置3および青色レーザ光源装置4を点灯させる第1の通常点灯シーケンスによって白色表示を行う通常動作時の点灯シーケンスと、空間光変調素子25の動作との関係を示す図である。
【0063】
図9に示す例では、1フレームが3つの点灯区間(サブフレーム)に分割され、1フレームで緑色、赤色および青色をそれぞれ1回点灯させる表示となっており、1フレームにおいて赤色、緑色および青色の順序で点灯する。
【0064】
前記のように(図8を併せて参照されたい)、点灯許可信号(LD ON)と、赤色点灯信号(LD RON)、緑色点灯信号(LD GON)および青色点灯信号(LD BON)とが主制御部76からレーザ光源制御部71に出力され、点灯許可信号(LD ON)がオンとなると、赤色点灯信号(LD RON)、緑色点灯信号(LD GON)および青色点灯信号(LD BON)に応じて、赤色、緑色および青色の各レーザ光源装置2〜4が点灯する。
【0065】
また、基準電圧信号(LCOS VCOM)および画素電圧信号(LCOS ΔV)が空間光変調素子制御部73から空間光変調素子25に出力され、基準電圧信号(LCOS VCOM)に応じて空間光変調素子25の極性が切り替えられ、画素電圧信号(LCOS ΔV)に応じて空間光変調素子25の透過率が変化して各色レーザ光の出力(輝度)が調整される。
【0066】
ここで、白色を表示する場合、空間光変調素子25で赤色、緑色、青色のレーザを変調させればよく、画素電圧信号の絶対値(LCOS |ΔV|)は、赤色、緑色、青色全ての点灯区間A1〜A6、B1〜B6、C1〜C3で最低電圧となり、出力(輝度)は最大レベル(255)となる。またここでは、赤色、緑色および青色の順序で点灯するRGB点灯パターンを採用しているため、空間光変調素子25に対して赤色、緑色、青色の順序でレーザ光が出力される。
【0067】
ところが、低温下において緑色レーザ光源装置2は発振効率が悪く、立ち上がりの際に時間がかかる。図10は、図6に示す第1の通常点灯シーケンスにより緑色レーザ光源装置2の点灯を開始した直後の出力を示す図である。図10に示すように、緑色の出力が安定し、例えばあらかじめ決められた値である0.25W以上となるまでには、起動後90sec程度の時間がかかる。このため、画像表示装置1を起動してから暫くの間は緑色が表示できないか、または他の色のレーザ光とバランスが取れるだけの光量を得ることができず、所望の画像表示ができないという問題が生じる。例えば起動直後に白色画像を表示した場合、緑色が表示できないため赤色と青色の混合色であるマゼンタ色となる。しかもその表示色は時間とともに変化し、通常あるべき表示色に徐々に近づいていく。このような異常な表示色の変化状態は、白色画像のみに関わらず、他の画像や映像においても同様に起こる。したがってユーザは、自分が先入観として持っているものとは異なる表示色を有する画像や映像を観ることになるため、実際には故障ではないのに、画像表示装置1が故障したのではないか、と勘違いすることになる。
【0068】
これを改善するためには、例えば図11に示す制御を行えばよい。図11は、第1の通常点灯シーケンスにおいて緑色レーザ光源装置2、赤色レーザ光源装置3および青色レーザ光源装置4を点灯させて青色表示を行いながら、緑色レーザ光源装置2の起動を早めるための第1のウォームアップシーケンスと、空間光変調素子25の動作との関係を示す図である。
【0069】
この実施の形態では、通常時、緑色レーザ光源装置2を点灯させる区間A2、A5、B2、B5、C2・・・に加え、緑色以外のレーザ光源装置が点灯する区間(図11では赤色の点灯区間A1、A4、B1、B4、C1・・・)でも緑色レーザ光源装置2が点灯する構成となっている。すなわち、本来は赤色レーザ光源装置3の点灯割当区間A1、A4、B1、B4、C1・・・を、追加的に緑色レーザ光源装置2の点灯に充てている。それに加えて、追加的に充てた緑色レーザ光源装置2の点灯区間A1、A4、B1、B4、C1・・・を、通常時の緑色レーザ光源装置2の点灯区間A2、A5、B2、B5、C2・・・と隣接させることで、全体的な緑色レーザ光源装置2の点灯区間が長くなり、それにより励起レーザの発熱が促され、励起効率が向上し、その結果、緑色レーザ光源装置2の起動時間を短縮することができる。低温下では緑色レーザ光源装置2の起動に時間がかかるが、本実施の形態をとることでレーザ自身の発熱により起動時間を短縮することができる。
【0070】
図11に示すこの第1のウォームアップシーケンスにおいて、追加的に緑色レーザ光源装置2の点灯に充てなかったのは、青色レーザ光源装置4の点灯区間A3、A6、B3、B6、C3である。この青色レーザ光源装置4の点灯時間は、例えば画像表示装置1を起動してから緑色レーザ光の出力が安定すると思われるまでの一定時間、青色のみを投影するために用いられる。すなわち、いわゆるブルーバック表示である。このようにブルーバックを表示すれば、緑色レーザの出力が安定していなくても、投影画像にはその異常が見られないため、問題にならない。
【0071】
図12は、第1のウォームアップシーケンスによる緑色レーザ光源装置起動時の出力を示す図である。白の四角で表される点は、図9に示す第1の通常点灯シーケンスによって白色表示を行う通常動作時の点灯シーケンスによるものであり、これは図10と同じものである。そして、黒の四角で表される点が、図11に示す第1のウォームアップシーケンスにより起動を行った場合に対応する。起動後、緑色の出力が例えばあらかじめ決められた値である0.25W以上と安定するまでに20secと短縮されるため、所望の画像表示を行う時間を90secから20secに短縮することができる。その結果、ユーザが所望する映像の表示にいち早く切り替えることができる。
【0072】
また緑色レーザ光源装置2の照射光量があらかじめ決められた値以上となるまでの間は、緑色レーザ光源装置2を点灯させる区間(図11では点灯区間A1、A2、A4、A5、B1、B2、B4、B5、C1、C2・・・)においては、緑色レーザ光源装置2からの出力光が外部へ投射されないよう、空間光変調素子25を制御し、緑色以外の光源装置を点灯させる区間(図11では青色の点灯区間A3、A6、B3、B6、C3・・・)においては、その光源装置からの出力光が外部へ投射されるよう、空間光変調素子25を制御することで、ユーザに与える不安感の解消することができる。
【0073】
本実施の形態においては、画像表示装置1の起動直後から一定時間、ブルーバックを表示するようにした。しかしながら、追加的に緑色以外のレーザ光源装置のいずれかの点灯区間を緑色レーザ光源の点灯に充て、且つ緑色レーザ光源の点灯時に緑色レーザ光が外部へ投影されないよう制御するのであれば、表示画像はブルーバックに限定しなくてもよい。例えば、正常時はブルーバックを表示し、異常時はレッドバックを表示するようにしてもよい。もしくは、緑色以外を使用して起動時間のメータを表示し起動までの残り時間を表示するようにしてもよいし、緑色以外を使用して会社のロゴ、機器の操作方法、注意事項を表示する、などの画像表示を行ってもよい。この場合、緑色レーザ光源装置2を点灯させる区間を増やしながら、緑色以外の光源装置を点灯させる区間で、フレームおきに青色および赤色の点灯を行い、色表現を行うこととなる。
【0074】
以上、1フレームが3つの点灯区間に分割され、レーザ光源装置2〜4を赤色、緑色、青色の順に点灯させる例を用いて、緑色レーザ光源装置2の起動を早める手法について説明したが、本発明におけるレーザ光源装置2〜4の点灯パターンは、これに限らない。各色のレーザ光源装置2〜4より発光される光は、CIExy色度図上における標準的な緑色、赤色、青色とは異なる場合がある。よって、投影される画像の色ズレがなるべく小さくなるよう、1フレームにおける各色のレーザ光源装置2〜4の駆動デューティは設定される。
【0075】
図13は、緑色レーザ光源装置2、赤色レーザ光源装置3および青色レーザ光源装置4を点灯させる他の通常点灯シーケンスの例を示す図である。例えば、図13(A)に示す第2の通常点灯シーケンスのように、1フレームが4つの点灯区間に分割され、レーザ光源装置2〜4を赤色、緑色、青色、緑色の順で点灯してもよい。ここでは、緑色および赤色の順序で点灯するGR点灯パターンが、隣接する2つのフレームに跨って存在する。すなわち、フレームの最後の点灯区間で緑色が点灯され、次のフレームの最初の点灯区間で赤色が点灯される。また、1フレーム内に緑色、青色および緑色の順序で点灯するGBG点灯パターンが存在する。そしてこのような点灯パターンでは、1フレームにおける緑色の点灯回数が2回となるのに対して、赤色および青色の点灯回数はそれぞれ1回となり、1フレームにおいて、視感度の高い赤色および緑色のうち、緑色の点灯回数が、青色の点灯回数より多くなっている。このため、レーザ光源装置2,3,4の切り替え速度や空間光変調素子25の応答速度が高くなくても、カラーブレーキング(虹現象)を効率的に低減することができる。
【0076】
また、図13(B)に示す第3の通常点灯シーケンスのように、1フレームが5つの点灯区間に分割され、レーザ光源装置2〜4を赤色、緑色、赤色、青色、緑色の順で点灯してもよい。ここでは、図13(A)に示す第2の通常点灯シーケンスと同様に、緑色および赤色の順序で点灯するGR点灯パターンが、隣接する2つのフレームに跨って存在する。
【0077】
この第3の通常点灯シーケンスでは、1フレームにおいて赤色および緑色の点灯回数がそれぞれ2回となるのに対して、青色の点灯回数は1回となり、1フレームにおいて、視感度の高い赤色および緑色の点灯回数が、青色の点灯回数より多くなっている。このため、レーザ光源装置2〜4の切り替え速度や空間光変調素子25の応答速度が高くなくても、カラーブレーキング(虹現象)を効率的に低減することができる。
【0078】
また、この第3の通常点灯シーケンスでは、1フレームを構成する点灯区間が奇数個となっているため、各フレームの点灯区間ごとに空間光変調素子25の極性を反転させるとともに、各点灯区間での空間光変調素子25の極性を各フレームで同一とすると、フレームの最後の点灯区間と次のフレームの最初の点灯区間とが同一の極性となり、空間光変調素子25に発生する残留電荷を点灯区間ごとに確実に打ち消すことができない。
【0079】
そこで、ここでは、空間光変調素子25の極性を、点灯区間ごとに反転させ且つ隣接するフレームにおいて対応する点灯区間が互いに逆の極性となるように切り替えるようにしている。これにより、1フレームを超えて点灯区間ごとに空間光変調素子25の極性が反転する状態となるため、空間光変調素子25に発生する残留電荷を点灯区間ごとに確実に打ち消すことができ、これにより空間光変調素子25の焼き付きを防止することができる。
【0080】
図13(C)は、第4の通常点灯シーケンスによる、赤色、緑色および青色の各レーザ光源装置2〜4を点灯させる順番と、空間光変調素子25の極性を示す図である。ここでは、図13(A)に示す第2の通常点灯シーケンスと同様に、レーザ光源装置2〜4を赤色、緑色、青色、緑色の順で点灯するが、1フレームが4つの点灯グループに分割されるとともに、各点灯グループが2つの点灯区間に分割され、同じ色を連続して2回ずつ点灯させるようにしている。
【0081】
このように同じ色を連続して複数回ずつ点灯させるようにすると、各レーザ光源装置2〜4における1回の点灯時間が短くなるため、レーザ光源装置2〜4の温度上昇を抑えるとともに、空間光変調素子25の立ち上がり応答性の低さを補うことができる。
【0082】
また、このように同じ色を連続して複数回ずつ点灯させる場合には、レーザ光源装置2〜4の点灯順序を表す点灯パターンは、点灯グループ単位で考えればよく、この第4の通常点灯シーケンスでも、第2の通常点灯シーケンスと同様に、GR点灯パターンとGBG点灯パターンとを有しており、空間光変調素子25の立ち上がり応答性による緑色の出力不足と、緑色レーザ光源装置2が発する緑色レーザ光自体の色相ズレとが互いに相殺されることで、表示される黄色およびシアンの色相ズレを低減することができる。
【0083】
なお、以上に述べた第2〜第4の通常点灯シーケンスにおいては、GR点灯パターンに重複しない独立したRG点灯パターンが存在しない構成となっているが、このような独立したRG点灯パターンがGR点灯パターンと混在する構成も可能である。本発明は、前記のように、GR点灯パターンにより緑色の出力不足を発生させて緑色レーザ光自体の色相ズレと相殺させることで中間色の色相ズレを低減するものであり、一方、独立したRG点灯パターンは、赤色の出力不足を発生させることから、GR点灯パターンによる効果を低下させるものとなる。したがって、独立したRG点灯パターンをGR点灯パターンと混在させる構成では、1フレーム当たり、GR点灯パターンが、独立したRG点灯パターンと同じ回数かそれよりも多い回数存在する構成とするとよい。これにより、独立したRG点灯パターンの影響を抑えて、中間色の色相ズレを低減することができる。
【0084】
さらに、これまで述べた第2〜第4の通常点灯シーケンスに代わって、起動時においては第1の点灯シーケンスと同様に、緑色レーザ光源装置の起動を早めるためのウォームアップシーケンスを有していてもよい。例えば、先の図13(A)に示した第2の通常点灯シーケンスにおいて、各フレームの第1点灯区間では、赤色(R)の代わりに緑色(G)を点灯させることにし、これを第2のウォームアップシーケンスとする。そうすれば、第4点灯区間で点灯させる緑色(G)から、次のフレームにある第1点灯区間および第2の点灯区間までに跨って、3つの点灯区間を用いて緑色(G)が連続的に点灯することになる。こうして、第2のウォームアップシーケンスにより、緑色レーザ光源装置の起動を早めることができる。
【0085】
また、先の図13(B)に示した第3の通常点灯シーケンスにおいて、各フレームの第1および第3点灯区間では、赤色(R)の代わりに緑色(G)を点灯させることにし、これを第3のウォームアップシーケンスとする。そうすれば、第5点灯区間で点灯させる緑色(G)から、次のフレームにある第1〜第3の点灯区間までに跨って、4つの点灯区間を用いて緑色(G)が連続的に点灯することになる。こうして、第3のウォームアップシーケンスにおいても、緑色レーザ光源装置の起動を早めることができる。
【0086】
さらに、先の図13(C)に示した第4の通常点灯シーケンスにおいて、各フレームの第1点灯グループでは、赤色(R)の代わりに緑色(G)を点灯させることにし、これを第4のウォームアップシーケンスとする。そうすれば、第4点灯グループで点灯させる緑色(G)から、次のフレームにある第1および第2の点灯グループまでに跨って、3つの点灯区間(すなわち6つの点灯区間)を用いて緑色(G)が連続的に点灯することになる。こうして、第4のウォームアップシーケンスにおいても、緑色レーザ光源装置の起動を早めることができる。
【0087】
以上の構成を有する緑色レーザ光源装置およびそれを搭載する画像表示装置において、本発明の主要な部分について述べる。
【0088】
図14は、緑色レーザ光源装置2を構成する部品のうち、固体レーザ素子34およびそれを支持する基台38を中心に示す斜視図である。図15は、図14における固体レーザ素子34およびその周辺部の拡大斜視図である。そして図16は、図14に示す緑レーザ光源装置を上面より見た図である。
【0089】
特に図14に示すように、固体レーザ素子34は略直方体の形状を有し、半導体レーザ31からの出力光の光軸方向と平行な、すなわち入射面および出射面を除く4つ面のうち、互いに隣接する2つの面で基台38と当接する。本実施の形態においては、固体レーザ素子34の底面(高さ方向のマイナス側)が基台38の固体レーザ素子支持部56と、側面のうちの一つ(幅方向のプラス側)が基台38の固体レーザ素子保持部57と、それぞれ当接している。ここで、先にも述べたように、半導体レーザ31からの出力光は、急激な角度で拡がる方向を有している。本実施の形態の場合、それは半導体レーザ31のファースト軸、すなわち図14における高さ方向である。これを、まずFACレンズ32により集束させている。しかしながら、半導体レーザ31からの出力光は、先ほどの高さ方向ほどではないものの、これと直交する半導体レーザ31のスロー軸、すなわち図14における幅方向にも拡がりながら放射されている。これは、ロッドレンズ33により集束される。よって、これらFACレンズ32およびロッドレンズ33により、半導体レーザ31からの出力光が固体レーザ素子34の入射面の略中心に集束するよう、各部品の固定位置が設計段階で決定される。
【0090】
特に、図16においてさらに理解できるように、FACレンズ32、ロッドレンズ33および固体レーザ素子34の幅方向には、それらがあらかじめ決められた位置に取り付けられるよう、半導体レーザ31の想定される光軸と並行に、複数の取付当て面が配置された構造を有している。これらの取付当て面は、FACレンズ32、ロッドレンズ33および固体レーザ素子34の各部品の中心を、半導体レーザ31からの出射光軸が通るよう配置される。言い替えれば、スロー軸である幅方向には、FACレンズ32、ロッドレンズ33、および固体レーザ素子34は取付当て面により、位置が固定されている。このような構成にしている理由を以下に述べる。まず、FACレンズ32は幅方向にレンズパワーを有していないため、幅方向の位置決め精度は高くなく、当て面固定が可能である。それに対し、ロッドレンズは幅方向にレンズパワーを有するが、スロー軸であるため、位置精度がファースト軸に比べると高くなく、当て面固定が可能である。一方、ファースト軸はスロー軸に比べ広がり角が大きいため、取り込み効率を高くし、且つ小型のレンズを使う場合、つまり、FACレンズ32のような小型レンズを使う場合、半導体レーザ31とFACレンズ32は、0.1〜0.3mm程度と、1mm以下に近接させる必要がある。そのため、FACレンズ32の位置は半導体レーザ31に対し、精度よく配置する必要がある。このような理由により、少なくとも幅方向は、当て面固定の構成となっているのである。
【0091】
なお、本実施の形態に使用している半導体レーザ31は、ワットクラスの高出力半導体レーザである。高出力半導体レーザは、一般に横モードがマルチモードであるレーザである。言い替えれば、シングルモードの半導体レーザに比べ、エミッタが幅方向に長くなり、レーザの広がり角はエミッタ幅方向、つまり、スロー軸が小さくなっているという特徴を有している。
【0092】
このような理由により、半導体レーザ31はエミッタ幅方向がエミッタ厚み方向に比べ大きい。例えば、エミッタの幅が0.05〜0.3mmであり、エミッタの厚みが0.001〜0.003mmである。このような半導体レーザ31を固体レーザ素子に集光する場合、ビーム径を小さく、且つ、NAを小さくすることが好ましい。なぜならば、このような構成とすることにより、固体レーザ素子とミラーから構成される共振器と結合効率を高くすることができるからである。そうした場合、固体レーザ素子の内部に集光されたビームは、エミッタ幅方向に長いビームとなる。そのため、固体レーザ素子34は、高さ方向よりも幅方向の方が長い形状を有している。このことにより、取付誤差が発生し、半導体レーザ31からの出力光が固体レーザ素子34の半導体レーザ31からのレーザ光入射面の中心から多少ずれたとしても、それが固体レーザ素子34による励起に与える影響を小さくすることができる。
【0093】
なお、図15に示すように、本実施の形態の固体レーザ素子34は、その入射面の底面側角部においても、基台38と当接している。但し、この入射面における当接部分は、あくまでも半導体レーザ31からの出力光を遮らない位置に設けられる。そして、図16に示すように、固体レーザ素子34は、以下のように固定される。すなわち、まず、基台38の固体レーザ素子保持部57と当接する側面側にある空間57aに接着剤が滴下される。そして、この固体レーザ素子34を挟んで固体レーザ素子保持部57と反対側にある固体レーザ素子支持部56上には、凸部56bが設けられている。この凸部56bと、それに相対する固体レーザ素子34の光軸方向における側面中央部との間にある空間56aにも、接着剤が滴下される。こうして固体レーザ素子34は、基台38に固定される。このとき用いられる接着剤としては、例えばいわゆる瞬間接着剤や光硬化型接着剤などがある。先に述べたように、固体レーザ素子支持部56上に凸部56bを設ければ、固体レーザ素子34を固定する接着剤が硬化前に流れ出すのを食い止めることができる。
【0094】
本実施の形態に示すように、固体レーザ素子34が基台38と当接する面は3つ以上であっても構わないが、少なくとも、入射面および出射面を除く4つ面のうち、互いに隣接する2つの面を基台38と当接させるのがよい。そうすれば、固体レーザ素子34は、図14における高さ方向軸および幅方向軸回りの回転が抑制される。特に、接着剤の硬化時点において発生する収縮力のアンバランスの影響が小さくなるので、このような回転はさらに抑制される。その結果、その入射面および出射面が半導体レーザ31からの出力光の光軸と直交するよう、固体レーザ素子34は基台38に取り付けられる。
【0095】
ところで、本実施の形態において、これら固体レーザ素子34の基台38との当接面は、それらの全面に渡って基台38と当接しているわけでは無い。特に図15に示すように、固体レーザ素子34は、その底面が基台38の固体レーザ素子支持部56上に設けられた3箇所の凸部56cに当接し支持される(いわゆる「3点支持」)。そして、その底面に隣接する片方の側面が、基台38の固体レーザ素子保持部57に設けられた2箇所の凸部57bおよび57cと当接(いわゆる「2点当て」)している。すなわち、固体レーザ素子34のそれらの面それぞれが有する表面積よりも小さな接触面積で、固体レーザ素子34と基台38とは当接している。全面当接ではなく、このように部分当接としたことには、先ほど説明した図14における固体レーザ素子34の高さ方向軸および幅方向軸回りの回転抑制効果以外に、実は大きな理由がある。それについて、図17を用いてこれより説明する。
【0096】
図17は、本実施の形態の緑色レーザ光源装置2の動作特性を示す図である。(a)は固体レーザ素子34と基台38の固定面、すなわち固体レーザ素子支持部56および固体レーザ素子保持部57とを全面当接とした従来の動作特性である。そして(b)は、固体レーザ素子34と基台38の固定面、すなわち固体レーザ素子支持部56および固体レーザ素子保持部57とを、図15に示すように部分当接とした本発明の動作特性を示すものである。また、これら図17において、実線は緑色レーザ光源装置2をパルス駆動した場合のものであり、点線はCW駆動(continuous wave(連続波)駆動)、すなわち一定の電流を連続的に流した駆動を行った場合のものである。
【0097】
図17の各図において、横軸は半導体レーザ31に投入する電流値を示す。これはすなわち、半導体レーザ31からの出力光(808nm)のパワーに比例することになる。そして、縦軸は半導体レーザ31からの出力光(808nm)を受けて固体レーザ素子34より出力される励起光(1064nm)のパワーを示している。なお、半導体レーザ31に投入される電流は、図14において電極53からレーザチップ41を介して、マウント部材52の底部およびそれが接着される基台38へと流れる。
【0098】
図17に戻り、もし、固体レーザ素子34と基台38の固定面とを全面当接とすると、図17(a)に示すように、このような構成を有する緑色レーザ光源装置2は、パルス駆動を行った場合であっても、CW駆動を行った場合であっても、略同じ特性を有する。すなわち、いずれの駆動方式であっても、半導体レーザ31に投入する電流値と、その結果として固体レーザ素子34より出力される励起光のパワーとは、略比例関係にある。これは固体レーザ素子34と基台38の固定面との接触面積が大きく、半導体レーザ31からの出力光を受けて固体レーザ素子34より発生する熱が効率よく放熱されるためである。
【0099】
しかしながら、本実施の形態のように、固体レーザ素子34と基台38の固定面とを部分当接とすると、このような構成を有する緑色レーザ光源装置2は、パルス駆動を行った場合と、CW駆動を行った場合とでは、異なる動作特性を発揮する。すなわち、パルス駆動を行った場合、半導体レーザ31に投入する電流値と、その結果として固体レーザ素子34より出力される励起光のパワーとは、全面当接の場合と同様、略比例関係にある。これに対して、CW駆動を行った場合は、半導体レーザ31に投入する電流値を上げても、固体レーザ素子34より出力される励起光のパワーはそれほど上がらず、逆にある電流値を境に下がってしまう。これは、固体レーザ素子34と基台38の固定面との接触面積が、全面当接の場合よりも小さくなり、固体レーザ素子34からの放熱効率が落ちたためである。但し、パルス駆動において全面当接の場合と遜色の無い動作特性を有する程度に、その放熱効率は確保されている。
【0100】
先の図9および図13に示したように、本実施の形態の画像表示装置1は、緑色レーザ光源装置2、赤色レーザ光源装置3および青色レーザ光源装置4を1フレーム内において交互に点灯させながら、画像を表示する。すなわち、緑色レーザ光源装置2、赤色レーザ光源装置3および青色レーザ光源装置4のいずれも、常にパルス駆動を行っていることになる。本実施の形態の空間光変調素子は、1フレームあたり57Hz(17.5msec)で動作している。そして、通常点灯シーケンス(図9、図13参照)における緑色レーザ光源装置2の駆動デューティは、1フレームの50%を超えることが無い。ちなみに、緑色レーザ光源装置2を単体で駆動させた場合においても、その駆動デューティが上記1フレームの50%となるまでは緑色レーザ光源装置2から緑色レーザ光が出力されることを、実験により確認した。
【0101】
このように、通常の動作時、すなわち、画像表示装置1に組み込まれた状態において、緑色レーザ光源装置2は常にパルス駆動により動作され、緑色光が問題なく出力されるので、画像表示装置としての動作を損なうことは無い。そして、そのような通常状態で使用されない場合には緑色光の出力が小さくなる。その結果、緑色レーザ光源装置2が画像表示装置1本体より取り外され、単体動作を試みられたとしても、その安全性は全面当接のときよりも高くなる。
【0102】
より具体的には以下の通りである。現在のところ、高出力の緑色半導体レーザはもちろん世の中には存在せず、本実施の形態において用いられる緑色レーザ光源装置2は高出力であり貴重なものである。緑色光は、その視感度(明るいと感じる度合い)が赤色や青色よりも高いため、このような緑色レーザ光源装置2が高輝度なレーザポインタや、墨だし機として使われる可能性は十分にある。図2などに示すように、緑色レーザ光源装置2は、他の赤色および青色半導体レーザのようにホルダに嵌め込んで取り付けられるタイプとは異なり、光学エンジンユニット156に設けられた突起状の取付部22にネジ止めされているだけである。しかも、その緑色レーザ光の出射口と筺体21との間には隙間がある。この隙間から緑色光の発光が確認でき、しかも緑色レーザ光源装置がある程度の大きさを有するため、この符号2の部分が緑色レーザ光源装置であることは、誰の目にも容易に理解できる。したがって、この緑色レーザ光源装置2が、画像表示装置1の光学エンジンユニット156から取り外され、単品で使われる可能性がある。このような、本来の画像表示ではない用途に緑色レーザ光源装置が単独で用いられることはもちろん想定されておらず、それによって予期しない事態が起きる可能性があり、それは決して好ましいことではない。
【0103】
画像表示装置の分解による部品流用を防ぐこと自体も一つの目的であるが、それに加えて、この緑色レーザ光源装置2は、その内部において赤外光が出力されている。すなわち、半導体レーザ31の出力光(808nm)と、それを受けて固体レーザ素子34により変換され出力される励起光(1064nm)である。万が一、波長変換素子35が脱落するなどにより、このような光が漏れ出てくるようなことがあれば、それを取り扱う者は赤外光が出力されていることがわからないため、最悪の場合、その赤外光が長時間、目に当たり続けることになり、大変危険である。
【0104】
よって、本実施の形態では、特に図15に示すように、緑色レーザ光源装置2の固体レーザ素子34と基台38の固定面とを全面当接とはせず、その接触面積を、固体レーザ素子34のそれらの面それぞれが有する表面積より小さくしている。このように部分当接としても、通常の動作時、すなわち、画像表示装置1に組み込まれた状態において、緑色レーザ光源装置2は常にパルス駆動により動作され、緑色光が問題なく出力されるので、画像表示装置としての動作を損なうことは無い。そして、この緑色レーザ光源装置2を取り外して他の用途に流用しようとする者は、まず一定の電流をこの緑色レーザ光源装置2に印加して単体動作を試みるはずである。しかしながらその場合には、先の図17を用いて述べたように、その内部にある固体レーザ素子34からの励起光(1064nm)の出力が人体に影響を与えないレベル、もしくは安全規格を満足するレベルにまで小さくなる。その結果、緑色光の出力も、画像表示装置の光源としてはもちろん使用できるレベルには無く、流用しようとする者が期待していたレベルよりも大幅に小さくなる。緑色光の出力が小さくなれば、流用しようとした者は、その緑色レーザ光源装置が故障したと思い込み、それ以上の動作を試みる可能性が低くなる。こうして、緑色レーザ光源装置2が画像表示装置1本体より取り外され、単体動作が試みられたとしても、その安全性は全面当接のときよりさらに高まる。
【0105】
このような緑色レーザ光源装置2の構成は、画像表示装置1のウォームアップ時においても、その効果を発揮する。先の図11において、画像表示装置1のウォームアップ時においては、緑色レーザ光源装置2を点灯させる区間に加え、緑色以外のレーザ光源装置が点灯する区間(図11では赤色光源の点灯区間)でも緑色レーザ光源装置2が点灯することを述べた。これにより、全体的な緑色レーザ光源装置2の点灯区間が長くなり、それにより励起レーザの発熱が促され、励起効率が向上し、その結果、緑色レーザ光源装置2の起動時間を短縮することができる。
【0106】
このとき、図11を見ればわかるように、緑色レーザ光源装置2の駆動デューティは50%を超えているが、緑色レーザ光源装置2の固体レーザ素子34と基台38(図15参照)とが従来の全面当接である場合、この状態でも緑色光は出力される。したがって、この緑色レーザ光源装置2からの出力光が外部へ投射されないよう、空間光変調素子25(図2参照)は、信号LCOS_VCOMおよびLCOS_|ΔV|により制御される。
【0107】
しかしながら、本実施の形態に示したように、緑色レーザ光源装置2の固体レーザ素子34と基台38とが部分当接(図15参照)である場合は、その駆動デューティは50%を超えるため、固体レーザ素子34からは1064nmの赤外光の出力が小さくなる。そしてその結果、緑色レーザ光源装置2からの緑色光の出力も小さくなる。したがって、ウォームアップ時における緑色光の漏出がより確実に防がれるとともに、万が一、空間光変調素子25が故障したとしても、その緑色光の過大な漏出が回避される。それでいながら、半導体レーザ31には電流が流れているので、半導体レーザ31からは808nmの光が出力され、その光が固体レーザ素子34に照射され続ける。その照射エネルギーが固体レーザ素子34を温める点については、従来の全面当接の場合と何ら変わりは無い。したがって、図11に示す緑色レーザ光源装置2の起動を早めるための第1のウォームアップシーケンスは、本実施の形態において採用する部分当接(図15参照)の構造であっても、十分に機能する。もちろん、図13を用いて先に説明した、第2〜第4のウォームアップシーケンスにおいても同様である。
【0108】
以上のように本発明によれば、波長変換によるレーザ光源装置が取り外されたとしても、そのレーザ光源装置は単独では低い出力でしか動作せず、その一方で、このレーザ光源装置が正常に組み込まれた状態にある場合は、緑色レーザ光が発光される。これにより、画像表示装置としての動作を損なうことなく、その一方で緑色レーザ光源装置が画像表示装置の本体より取り外され、単体動作されたとしても、その安全性はさらに高まる。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明にかかるレーザ光源装置およびそれを搭載する画像表示装置は、画像表示装置としての動作を損なうことなく、その一方で緑色レーザ光源装置が画像表示装置の本体より取り外され単体動作が試みられたとしてもそのレーザ光の出力は人体に影響を与えない程度に低いという効果を有するので、光源として特に半導体レーザを用いたレーザ光源装置を備えた時分割表示方式の画像表示装置などとして有用である。
【符号の説明】
【0110】
1 画像表示装置
2 緑色レーザ光源装置
3 赤色レーザ光源装置
4 青色レーザ光源装置
5 空間光変調器
6 偏光ビームスプリッタ
7 リレー光学系
8 投射光学系
11〜13 コリメータレンズ
14,15 第1および第2のダイクロイックミラー
16 拡散板
17 フィールドレンズ
21 筐体
22 取付部
23 前壁部
24 側壁部
25,26 ホルダ
27,28 取付孔
31 半導体レーザ
32 FAC(Fast−Axis Collimator)レンズ
33 ロッドレンズ
34 固体レーザ素子
35 波長変換素子(光学素子)
35a 入射面
35b 出射面
35c,35d 側面
36 凹面ミラー
37 ガラスカバー
38 基台
39 カバー体
41 レーザチップ
42,43,44,45,46 膜
51 底面
51a 側壁部
52 マウント部材
53 電極
54 集光レンズホルダ
55 弾性部材
56 固体レーザ素子支持部
57 固体レーザ素子保持部
58 波長変換素子ホルダ
59 凹面ミラー支持部
61 分極反転領域
62 非分極反転領域
63 周期電極
64 対向電極
151 携帯型情報処理装置
152 本体
153 キーボード
154 収容体
155 可動体
156 光学エンジンユニット
157 制御ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起用レーザ光を出力する半導体レーザと、
前記励起用レーザ光により励起されて基本レーザ光を出力する固体レーザ素子と、
前記半導体レーザおよび前記固体レーザ素子を支持する基台と、を備え、
前記固体レーザ素子は、略直方体の形状を有し、
前記半導体レーザからの励起用レーザ光の入射面および前記基本レーザ光の出射面を除く4つ面のうち、少なくとも互いに隣接する2つの面のそれぞれにおいて、その表面積よりも小さな接触面積により前記基台と当接したことを特徴とするレーザ光源装置。
【請求項2】
前記半導体レーザが連続駆動されたときに前記固体レーザ素子が出力する基本レーザ光のパワーは、前記半導体レーザがパルス駆動されたときよりも小さいことを特徴とする請求項1記載のレーザ光源装置。
【請求項3】
波長変換素子と凹面ミラーとをさらに有する請求項1記載のレーザ光源装置と、
前記半導体レーザの駆動手段と、を備え、
前記半導体レーザが前記駆動手段によりパルス駆動されたときに前記固体レーザ素子が出力する基本レーザ光のパワーは、前記半導体レーザがパルス駆動されたときよりも小さいことを特徴とする画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−12511(P2013−12511A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142564(P2011−142564)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【特許番号】特許第4924767号(P4924767)
【特許公報発行日】平成24年4月25日(2012.4.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】