説明

ロータリー耕耘機

【課題】手を汚さずにリヤカバーを持ち上げることのできるロータリー耕耘機を提供する。
【解決手段】爪軸17aの周りに耕耘爪17を回転させて耕作面Gの耕耘作業を行うとともにリヤカバー19の整地部19Aにて耕耘爪17で耕耘した耕耘土の整地作業を行うものであり、耕耘深さの調節を行うデプスビーム31と、そのデプスビーム31を昇降させるためのアジャストスクリュー(昇降手段)30とを備え、リヤカバー19の外側面に一端を取り付けるとともに他端をデプスビーム31に取り付けるハンガーロッド(連結部)26を備え、調整ハンドル(昇降手段)32を操作してリヤカバー19の整地部19Aを耕作面Gから持ち上げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、爪軸の周りに耕耘爪を回転させて耕作面の耕耘作業を行うロータリー耕耘機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のロータリー耕耘機は、図4,5に示すように、トラクタTの後部に取り付けて爪軸1の周りに耕耘爪2を回転させて耕作面Cの耕耘作業を行うとともに、リヤカバー3を取り付けて、耕耘爪2で耕耘した耕耘土を整地部3bにて整地するものである。
ロータリー耕耘機4は、耕耘深さの調節を行うデプスビーム5と、そのデプスビーム5を昇降させるための昇降手段6などを備える。昇降手段6は、さらにアジャストスクリュー6aとそのアジャストスクリュー6aを伸縮操作させる調節ハンドル6bとを備える。また、リヤカバー3にはハンガーロッド7の一端が取り付けられている。ハンガーロッド7の他端は保持部材9を介してロータリー耕耘機4の本体に摺動自在に取り付けられている。
ハンガーロッド7の側面には、切り欠き7aが設けられており、リヤカバー3の清掃時などには、リヤカバー3を支点3aを回動中心として図4中、反時計回りに回動させて持ち上げ、切り欠き7aにクイックハンガー8の先端部8aを掛け止めて、リヤカバー3を持ち上げた状態に保持することができる。
【0003】
なお、クイックハンガー8の先端部8aは、保持部材9に設けられた貫通孔9aを貫通して備える。先端部8aおよび保持部材9は通常、鋼製であるので、先端部8aと貫通孔9aとの摩擦などによって貫通孔9aの表面およびクイックハンガー8の先端部8aの表面に傷がつき、その傷が錆びて先端部8aと貫通孔9aとの動作を悪くし、クイックハンガー8の操作性を悪くする原因となっている。このため、貫通孔9aの周囲に樹脂ブッシュ9bなどを取り付けて、貫通孔9aの錆を防止する方法もある。このようにするとクイックハンガー8の操作が軽快に行える。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リヤカバー3の清掃時などには、整地部3bを手で持ってリヤカバー3を支点3aを中心として上方に回動させて持ち上げる。しかし、その際、整地部3bは耕作面Cに接触して耕耘爪2が耕耘した土を整地するので土が付着しており、作業者が手を汚してしまうという問題があった。
またリヤカバー3が重いため、作業者が高齢の場合には手で持ち上げるのに苦労するという問題もあった。
そこでこの発明の目的は、作業者が直に手を触れずにリヤカバーを持ち上げることのできるロータリー耕耘機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため請求項1に記載の発明は、爪軸の周りに耕耘爪を回転させて耕作面の耕耘作業を行うとともにリヤカバーの整地部にて前記耕耘爪で耕耘した耕耘土の整地作業を行うロータリー耕耘機であって、
耕耘深さの調節を行うデプスビームと、
該デプスビームを昇降させるための昇降手段とを備えるロータリー耕耘機において、
前記リヤカバーの外側面に一端を取り付けるとともに他端を前記デプスビームに取り付ける連結部を備え、
前記昇降手段を操作して前記リヤカバーの整地部を前記耕作面から持ち上げることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のロータリー耕耘機において、前記連結部の一端が前記リヤカバーの外側面に取り外し自在に取り付けられていることを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のロータリー耕耘機において、前記連結部の一端がかぎ状に形成され、該かぎ状部分に掛け止めるためのピンを前記リヤカバーの外側面に設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、リヤカバーの外側面に一端を取り付けるとともに他端をデプスビームに取り付ける連結部を備え、デプスビームを昇降する昇降手段を操作してリヤカバーの整地部を耕作面から持ち上げるので、耕耘作業後の汚れたリヤカバーに直接手を触れずにリヤカバーを持ち上げることができる。また、重いリヤカバーを手で持ち上げる必要もなく、作業者の負荷を低減することができる。
したがって、作業者が直に手を触れずにリヤカバーを持ち上げることのできるロータリー耕耘機を提供することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、連結部の一端がリヤカバーの外側面に取り外し自在に取り付けられているので、連結部の一端をリヤカバーの外側面から外したときは、リヤカバーを昇降させることなく、デプスビームの昇降操作のみを行うことができる。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、連結部の一端がかぎ状に形成され、そのかぎ状部分に掛け止めるためのピンをリヤカバーの外側面に設けるので、連結部をリヤカバーから容易に外すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、この発明を実施するための最良の形態について詳述する。
図1はこの発明の一例としてのロータリー耕耘機15の側面図である。
ロータリー耕耘機15の前方にはトラクタ(自走式作業機)10を連結している。トラクタ10の後部には、トップリンク11と左右一対のロワーリンク12、およびPTO軸13を延設する。トップリンク11および左右一対のロワーリンク12の先端には、ロータリー耕耘機15を取り付ける。なお、PTO軸13にはユニバーサルジョイント14を介して、ロータリー耕耘機15のギアボックスを連結する。
【0012】
このギアボックス内にて、PTO軸の回転方向が変えられ、メインビームを介してチェーンケース16内のチェーンに動力が伝達され、耕耘爪17を取り付けた爪軸17aを回転させるようになっている。耕耘爪17の回転する上方にはロータリーカバー18を備え、そのロータリーカバー18の後端にはリヤカバー19が回動部20を介して回動自在に連結されている。
ロータリーカバー18は、ハンドル25を回動操作することによって爪軸17aを中心に前後回動可能に構成されて、耕深に合わせて位置調整することができるようになっている。このハンドル25に耕深ごとにデテント機構を設けると、所望の耕深を正確に位置あわせできる。また、デテント機構を設けるとトラクタ10の運転席から後方に向いてハンドル25を操作することができ、従来、作業者がトラクタ10から降車してロータリーカバー18上に取り付けられた位置合わせ用の銘板を見ながら行っていた耕深調整を効率的に行うことができる。
【0013】
リヤカバー19にはハンガーロッド26の下端が軸支されている。一方、ハンガーロッド26の上端はデプスビーム31に固設された取付部27にボルト27aを介して回動自在に取り付けられている。また、ハンガーロッド26の連結部26Jには後述するコイルバネが取りつけられ、リヤカバー19を下方に付勢している。
【0014】
また、ロータリー耕耘機15のチェーンケース16上部に設けられたV字状のアッパーアーム29の一端には前述のトラクタ10のトップリンク11が取り付けられるとともに、アッパーアーム29の別の一端にはアジャストスクリュー(昇降手段)30が取り付けられている。このアジャストスクリュー30の下端はデプスビーム31にボルトを介して回動自在に取り付けられている。そして、調整ハンドル32を操作することによってアジャストスクリュー30が伸縮し、デプスビーム31を不図示の回動支点を中心として矢印a−b方向に回動させることができるようになっている。
【0015】
さらに、リヤカバー19の下部にはロータリー耕耘機15の幅方向(すなわち爪軸17aの方向)に延びたタンク21を備える。このタンク21の側部には排水口(注入出口)21aを設けるとともに、上部には注入口(注入出口)21bを設ける。このタンク21には、水などの液体を注入口21bより注入したり排水口21aより排出したりして、リヤカバー19の重さを調節することが容易にできるようになっている。
なお、ロータリーカバー18の後部にはサイドカバーを取り付けたり、リヤカバー19の下部にはサイドアンダーカバーを取り付けたりしてもよい。
【0016】
図2にハンガーロッド26の連結部26J付近の拡大図を示す。ハンガーロッド26はともにパイプ状の上部ロッド26Aと下部ロッド26Bとからなる。上部ロッド26Aの外径と下部ロッド26Bの内径とは、上部ロッド26Aが下部ロッド26Bに容易に入り込むことができるような関係となっている。
下部ロッド26Bの下端はパイプをつぶして貫通孔を形成し、リヤカバー19に形成された貫通孔と合わせた後、ボルト19aを貫通させて、下部ロッド26Bをリヤカバー19に回動自在に取り付ける。なお、下部ロッド26Bの上部内側には上部ロッド26Aの下部が当接するコイルバネ(弾性部材)26cを備え、下部ロッド26Bを下方に付勢している。また、上部ロッド26Aの下部には長孔26aを形成するとともに、下部ロッド26Bの上部には貫通孔26bを形成し、両者にピンを貫通させて上部ロッド26Aと下部ロッド26Bとを連結する。
【0017】
これによって、下部ロッド26Bは長孔26aの長軸方向に沿ってコイルバネ26cに付勢されながら上下運動するように構成されている。したがって、コイルバネ26cは耕作面Gの凹凸によるリヤカバー19の上下動をこの連結部26Jにて吸収するとともに、常にリヤカバー19の整地面19Aを耕作面Gに当接させるように付勢している。
【0018】
このように構成されたロータリー耕耘機のリヤカバーを持ち上げるときは、作業者は、トラクタ10の運転席から後方にあるロータリー耕耘機15の調整ハンドル32を所望の方向に回転させる。すると、アジャストスクリュー30が縮んでデプスビーム31が不図示の回動支点を中心として図1中で矢印aの方向に回動する。リヤカバー19はハンガーロッド26を介してデプスビーム31に連結されているので、デプスビーム31の回動にあわせて、回動部20を支点として反時計回りに回動する。
そして、所望の角度までリヤカバー30を回動したら調整ハンドル32から手を離して回転操作を停止する。そして不図示のロック機構を用いて調整ハンドル32の回転をロックする。
一方、リヤカバー19を下げるときは、ロータリー耕耘機15の調整ハンドル32のロック機構を解除して調整ハンドル32を所望の方向に回転させる。すると、アジャストスクリュー30が伸びてデプスビーム31が不図示の回動支点を中心として図1中で矢印bの方向に回動する。リヤカバー19はハンガーロッド26を介してデプスビーム31に連結されているので、デプスビーム31の回動にあわせて、回動部20を支点として時計回りに回動する。
そして、所望の角度までリヤカバー30を回動したら調整ハンドル32から手を離して回転操作を停止する。
このように、この例のロータリー耕耘機では、リヤカバー19の昇降はトラクタ10の運転席から調整ハンドル32を回転して操作することによって行うことができる。
【0019】
このように、この例のロータリー耕耘機は、爪軸17aの周りに耕耘爪17を回転させて耕作面Gの耕耘作業を行うとともにリヤカバー19の整地部19Aにて耕耘爪17で耕耘した耕耘土の整地作業を行うものであり、耕耘深さの調節を行うデプスビーム31と、そのデプスビーム31を昇降させるためのアジャストスクリュー(昇降手段)30とを備え、リヤカバー19の外側面に一端を取り付けるとともに他端をデプスビーム31に取り付けるハンガーロッド(連結部)26を備え、調整ハンドル(昇降手段)32を操作してリヤカバー19の整地部19Aを耕作面Gから持ち上げることができるものである。
また、ハンガーロッド26にコイルバネ(弾性部材)26cを備え、そのコイルバネ26cによってリヤカバー19が耕作面Gから受ける衝撃を緩和するようになっている。
したがって、リヤカバーを耕作面に確実に追随させることができ効率よく耕作面の整地ができるとともに、耕作面から受ける衝撃を弾性部材にて吸収してデプスビームに伝達することがなく、デプスビームに作業機などを取り付ける場合にも、その取付精度を低下させることがない。
さらに、リヤカバー19にタンク21を設け、そのタンク21に水(液体)を注入する注入口(注入出口)21bと排水する排水口(注入出口)21aとを設けるものである。
したがって、リヤカバーの自重を容易に変更することができ、所望の押し当て力で耕作面にリヤカバーを押し当てることができ、よりいっそうリヤカバーを耕作面に確実に追随させて効率よく耕作面の整地をすることができる。また、ロータリー耕耘機を移動する際には注入出口より液体を排出するので、リヤカバーを地面に引きずって傷つけることがない。また、液体として水を用いると廃液などが生じず、環境に配慮したロータロー作業機を提供することができる。さらに、重量調整の手段として液体を用いるので、従来用いてきた鋼製の錘を製造する必要がなく、低コストなロータリー耕耘機を提供することができる。
【0020】
ところで、図3に示すようにハンガーロッド28をパイプ状の上部ロッド28Aと下部ロッド28Bとから構成してもよい。上部ロッド28Aの外径と下部ロッド28Bの内径とは、下部ロッド28Bが上部ロッド28Aに容易に入り込むことができるような関係となっている。
なお、上部ロッド28Aの下部内側には下部ロッド28Bの上部が当接するコイルバネ(弾性部材)28cを備え、下部ロッド28Bを下方に付勢している。また、下部ロッド28Bの上部には長孔28aを形成するとともに、上部ロッド28Aの下部には貫通孔28bを形成し、両者にピンを貫通させて上部ロッド28Aと下部ロッド28Bとを連結する。
【0021】
これによって、下部ロッド28Bは長孔28aの長軸方向に沿ってコイルバネ28cに付勢されながら上下運動するように構成されている。したがって、コイルバネ28cは耕作面Gの凹凸によるリヤカバー19の上下動を吸収するとともに、常にリヤカバー19の整地面19Aを耕作面Gに当接させるように付勢している。
一方、下部ロッド28Bの下端はかぎ状に構成され、リヤカバー19に設けられたピン19bに掛け止めることができるようになっている。このようにすると、ハンガーロッド28をリヤカバー19から容易に外すことができる。
すなわち、下部ロッド(連結部)28Bの下端(一端)がリヤカバー19の外側面に取り外し自在に取り付けられている。この下部ロッド28Bの下端がかぎ状に形成され、そのかぎ状部分に掛け止めるためのピン19aをリヤカバーの外側面に設ける。このとき、デプスビーム31を回動させることによってかぎ状部分の引掛け位置の調整が容易となる。
なお、本発明は上述の例に限定されるものではなく、あらゆるロータリー耕耘機に適用しうるものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明のロータリー耕耘機の側面図である。
【図2】図1のロータリー耕耘機に備えるハンガーロッドの一部拡大図である。
【図3】ハンガーロッドの別の例を示す図である。
【図4】従来のロータリー耕耘機の側面図である。
【図5】図4のロータリー耕耘機に備えるクイックハンガーの拡大断面図である。
【符号の説明】
【0023】
10 トラクタ
11 トップリンク
12 ロワーリンク
13 PTO軸
14 ユニバーサルジョイント
15 ロータリー耕耘機
16 チェーンケース
17 耕耘爪
17a 爪軸
18 ロータリーカバー
19 リヤカバー
19A 整地部
19a,27a ボルト
19b ピン
20 回動部
21 タンク
21a 排水口(注入出口)
21b 注入口(注入出口)
22 ギアボックス
25 ハンドル
26,28 ハンガーロッド(連結部)
26A,28A 上部ロッド
26B,28B 下部ロッド
26J 接続部
26a,28a 長孔
26b,28b 孔
26c,28c コイルバネ(弾性部材)
27 取付部
29 アッパーアーム
30 アジャストスクリュー(昇降手段)
31 デプスビーム
32 調整ハンドル(昇降手段)
G 耕作面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
爪軸の周りに耕耘爪を回転させて耕作面の耕耘作業を行うとともにリヤカバーの整地部にて前記耕耘爪で耕耘した耕耘土の整地作業を行うロータリー耕耘機であって、
耕耘深さの調節を行うデプスビームと、
該デプスビームを昇降させるための昇降手段とを備えるロータリー耕耘機において、
前記リヤカバーの外側面に一端を取り付けるとともに他端を前記デプスビームに取り付ける連結部を備え、
前記昇降手段を操作して前記リヤカバーの整地部を前記耕作面から持ち上げることを特徴とする、ロータリー耕耘機。
【請求項2】
前記連結部の一端が前記リヤカバーの外側面に取り外し自在に取り付けられていることを特徴とする、請求項1に記載のロータリー耕耘機。
【請求項3】
前記連結部の一端がかぎ状に形成され、該かぎ状部分に掛け止めるためのピンを前記リヤカバーの外側面に設けることを特徴とする、請求項2に記載のロータリー耕耘機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−115735(P2006−115735A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−305727(P2004−305727)
【出願日】平成16年10月20日(2004.10.20)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】