説明

不帰還型負荷電流装置

【課題】電気負荷の半断線・半短絡状態の異常兆候を感知して異常報知を行なう。
【解決手段】電気負荷111aは駆動電源101から給電され、マイクロプロセッサ(CPU)120Aが目標電流Isと駆動電源電圧Vbに応じて開閉素子141Aの開閉通電率を制御することによって所定の目標電流が得られるようにオープンループ制御されている。開閉素子141Aのグランド側に接続された電流検出抵抗142の両端電圧は、電流検出用増幅回路部150aから多チャンネルAD変換器131を介して監視電圧EfaとしてCPU120Aに入力されている。CPU120Aは目標電流に対応した比較目標電圧Esaと監視電圧Efaとの間に第一の許容誤差以上の誤差があると異常兆候ありと判定し、更に大きな第二の許容誤差を超える誤差があると発現異常と判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、自動車用多段自動変速機における変速段切換用電磁弁を駆動する電磁ソレノイドなどの誘導性の電気負荷に対し、通電目標電流と駆動電源電圧の値に応動して電気負荷駆動用の半導体開閉素子の通電期間と通電周期との比率である通電率を制御するようにした不帰還型負荷電流制御装置の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気負荷の駆動制御回路として、電気負荷や開閉素子の断線・短絡、或いは負荷配線の断線や天絡・地絡異常の発生を検出して、異常報知を行なったり、開閉素子の焼損防止を行なうことは一般的に広く実施されていることである。
例えば、下記の特許文献1によれば、「駆動電源から電流検出抵抗と開閉素子と誘導性の電気負荷であるソレノイドの順で接続された給電回路において、電気負荷の両端電圧を「H」「L」の二値化変換してマイクロプロセッサである演算部に入力し、開閉素子の開路状態では電気負荷の断線の有無を検出し、開閉素子の閉路状態では電気負荷の短絡の有無を検出し、開閉素子の開路状態が正常持続しているときには電気負荷が実効動作しない短時間のあいだだけ開閉素子を閉路して短絡の有無を検出し、開閉素子の閉路状態が正常持続しているときには電気負荷が不作動とならない短時間のあいだだけ開閉素子を開路して断線の有無を検出するようにしたソレノイドの故障検出装置」が提示されている。
【0003】
また、下記の特許文献2によれば、「リニアソレノイドに流れる電流を検出する電流検出手段と、該電流検出手段による検出結果と目標電流との差を積分して誤差信号を生成する誤差信号生成手段と、該誤差信号生成手段にて生成された誤差信号に基づきリニアソレノイドを通電制御する通電制御手段と、上記誤差信号生成手段にて生成された誤差信号と予め設定された基準信号とを大小比較し、該比較結果に応じて当該駆動装置の故障を検出する故障検出手段とを備えたことを特徴とするリニアソレノイドの駆動装置」が提示されている。
そしてこのリニアソレノイドの駆動装置は、通電制御手段となる開閉素子と電気負荷となるリニアソレノイドと電流検出手段となる電流検出抵抗とが順次直列接続されて駆動電源に接続される給電回路構成となっている。
【0004】
【特許文献1】特開平8−293414号公報(図2、段落0024〜0028)
【特許文献2】特開平5−217737号公報(図1、要約)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1によるソレノイドの故障検出装置は、ソレノイドに対する電流制御機能を持たず、開閉素子によって単に給電または非給電状態に切換え使用する形式のものであって、例えば給電回路の含まれる接続コネクタの不完全接触によって給電回路抵抗が若干増加するような半断線状態が発生したり、ソレノイドの巻線の層間短絡などによって負荷抵抗が若干減少するような半短絡状態が発生した場合に、このような異常兆候を検知することはできない問題点がある。
また、開閉素子の閉路期間または開路期間において、電気負荷の動作状態に影響を与えないで短時間だけ開閉素子を反転動作して異常点検を行なうためには、微妙な時間制御が必要となり、誤って電気負荷が意図しない状態に動作する危険性がある。
【0006】
また、上記特許文献2によるリニアソレノイドの駆動装置は、電流検出による帰還型電流制御を行なう形式のものであって、上記のような半断線状態や半短絡状態が発生しても、所定の目標電流が得られるように給電電圧が自動的に補正されることによって、誤差信号が増大しないように構成されている。
従って、帰還制御による補正が困難となるレベル以上に電気負荷の抵抗変動がなければ異常状態を検出することができず、異常兆候が検出できないという問題点がある。
また、開閉素子と電気負荷との接続点がグランド回路に混触地絡すると、電流検出抵抗が開閉素子に対する限流抵抗として機能しないので、例え開閉素子の緊急遮断を行なったとしても開閉素子に与えるストレスが過大となり、開閉素子を損傷する危険性がある。
【0007】
この発明は上述のような問題点を解決するためになされたものであり、この発明の第一の目的は、給電回路の半断線状態あるいは半短絡状態を検出して異常兆候の有無を判定し、異常兆候があれば異常報知を行なって大事に至る前に保守点検を促すことができ、安全性の向上が図れる不帰還型負荷電流制御装置を提供することである。
また、この発明の第二の目的は、異常兆候状態が放置されさらに異常状態が高じた段階では、発現異常状態と判定して負荷駆動の停止を行なって安全性を向上することができる不帰還型負荷電流制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明による不帰還型負荷電流装置は、駆動電源と誘導性の電気負荷と開閉素子との直列回路によって構成された給電駆動回路部と、上記電気負荷に対する通電目標電流と駆動電源電圧の値に応動して上記開閉素子の通電期間と通電周期との比率である通電率を制御する給電制御回路部とを備えた不帰還型負荷電流制御装置であって、
上記給電駆動回路部は、更に上記開閉素子と上記駆動電源のグランド回路との間に接続された電流検出抵抗と、上記電流検出抵抗の両端電圧を増幅する演算増幅器と該演算増幅器の入力回路または出力回路の少なくとも一方に設けられ上記電流検出抵抗の両端電圧の平均値に略比例した測定用電圧を得る平滑コンデンサを設けた電流検出用増幅回路部と、上記電気負荷と並列接続され、上記開閉素子が閉路していたときに給電されていた負荷電流が、上記開閉素子が開路したときに還流減衰して負荷電流を平滑化する転流回路とを備えている。
【0009】
上記給電制御回路部は、上記駆動電源から給電されて駆動電源電圧よりも低い値の安定化された制御電源電圧を発生する制御電源ユニットから給電されるマイクロプロセッサと、複数のアナログ信号が入力される多チャンネルAD変換器と、上記マイクロプロセッサと協働し、負荷電流制御プログラムが格納されると共に異常兆候検出手段となるプログラムを包含した不揮発プログラムメモリとを備え、上記演算増幅器の出力は、上記制御電源電圧以下の値に制限された監視電圧として上記多チャンネルAD変換器を介して上記マイクロプロセッサに入力され、上記異常兆候検出手段は、上記通電目標電流に対応した比較目標電圧と上記監視電圧との相対誤差が正常値範囲を僅かに逸脱した第一の許容誤差幅の域外であるときに異常報知指令出力を発生し、上記異常兆候検出手段が異常検出を行なうときの上記測定用電圧は、上記制御電源電圧未満の値に設定されている。
【発明の効果】
【0010】
この発明による不帰還型負荷電流制御装置は、本来は電流検出を必要としない開ループ不帰還制御方式でありながらも電流検出抵抗による検出電流を電流検出用増幅回路部と多チャンネルAD変換器とを介してマイクロプロセッサに入力する回路構成としている。
但し、電流検出抵抗と電気負荷とが開閉素子によって分断され、電流検出抵抗には開閉素子が閉路した時点における負荷電流が流れるものの開閉素子が開路したときの転流回路への転流負荷電流は流れない構成となっていて、測定用電圧は平滑コンデンサによって負荷電流の平均値を得るようになっている。
このような回路構成にしたことによって、電気負荷の短絡事故や負側配線と正側電源線が混触する天絡事故の発生に対して開閉素子を緊急遮断するまでの過渡期間において電流検出抵抗が限流抵抗の役割を果たして開閉素子に加わる過大なストレスを軽減することができる効果がある。
また、電気負荷の半断線・半短絡異常に伴う抵抗値の変動に対して、帰還制御方式であれば自動的に目標電流が得られるように印加電圧の調整が行なわれることになるが、不帰還制御方式の場合には検出電流が変化するので、AD変換器の出力をマイクロプロセッサで監視しておくことによって異常兆候を検出し、異常報知することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面に基づいて、本発明の一実施の形態について説明する。
なお、各図間において、同一符合は、同一或いは相当のものであることを表す。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係わる不帰還型負荷電流制御装置の構成を示すブロック図である。
図1において、100Aは本実施の形態による不帰還型負荷電流制御装置であり、不帰還型負荷電流制御装置100Aは、実態としては、例えば、自動車用自動変速機の制御装置を構成するものであり、車載バッテリである駆動電源101からキースイッチなどによる電源スイッチ102を介して給電されるようになっている。
不帰還型負荷電流制御装置100Aには図示しないアクセルペダルの踏込み度合いを検出するアクセルポジションセンサ(APS)103や、車速センサ104、セレクタレバーの選択位置を検出するセレクタスイッチ105、多段自動変速機110の潤滑油の温度を検出する温度センサ(例えば、油温センサ)112などの入力信号が接続されている。
多段自動変速機110内には、例えば、前進5段、後退1段の多段変速切換え用の複数の電磁ソレノイドである誘導性の電気負荷111a、111b・・・・・111nが設けられており、不帰還型負荷電流制御装置100Aから給電駆動されるようになっている。
また、警報表示器106は、異常状態が発生したときに後述のマイクロプロセッサ(CPU)120Aが発生する異常報知指令出力Erによって駆動されるようになっている。
【0012】
不帰還型負荷電流制御装置100Aの内部の構成として、車速センサ104やセレクタスイッチ105による開閉信号が入力されるマイクロプロセッサ120Aは、例えばフラッシュメモリ等による不揮発プログラムメモリ121Aと演算処理用のRAMメモリ122を内蔵し、後述の制御電源ユニット130によって生成された制御電源電圧Vccによって駆動されるようになっている。
定電圧電源回路である制御電源ユニット130は、駆動電源101から電源スイッチ102を介して駆動電源電圧Vbが給電され、例えばDC8〜16Vである駆動電源電圧Vbの最小値よりも小さな値である例えばDC5Vの安定化制御電源電圧Vccを発生すると共に、電源スイッチ102を経由しないで駆動電源101から直接給電されて、RAMメモリ122に対する停電保持用のバックアップ電圧Vmemを発生するようになっている。
多チャンネルAD変換器(ADC)131には制御電源電圧Vccが給電され、そのアナログ入力端子には分圧抵抗132・133によって分圧された駆動電源電圧Vbに比例する電圧や、アクセルポジションセンサ(ASP)103によるアクセルペダルの踏込み検出信号、温度センサ112による電気負荷111a、111b・・・・111nの環境温度信号、後述の監視電圧Efa、Efb・・・・Efnが入力され、各アナログ信号のデジタル変換値がマイクロプロセッサ120Aに入力されるようになっている。
【0013】
電気負荷111a、111b・・・・111nの正側端子は、電源スイッチ102を介して駆動電源101の正側端子に接続されると共に、電気負荷111aの負側端子は、例えばNチャンネル型電界効果トランジスタである開閉素子141Aと電流検出抵抗142を介して駆動電源101の負側端子が接続されたグランド回路に接続されている。
なお、電気負荷111a、111b・・・・111nに対する制御回路の構成は同等であり、電気負荷111b・・・・111nに関連する制御要素は図示されていない。(以下同様)
開閉素子141Aのゲート端子は、駆動抵抗143を介してマイクロプロセッサ120Aの開閉指令出力PWMaから通電駆動され、開閉素子141Aのゲート端子とグランド回路間には開路用安定抵抗144が接続されている。
電気負荷111aの正負の端子間には転流回路145を構成するダイオードが並列接続されている。
開閉素子141A・電流検出抵抗142・転流回路145・駆動抵抗143・安定抵抗144を含むPWM給電回路140a(図2参照)は電気負荷111aに対応したものであり、各電気負荷111a〜111nに対応してPWM給電回路140a〜140nが構成され、マイクロプロセッサ120Aは各PWM給電回路140a〜140nに対して開閉指令出力PWMa〜PWMnを供給するようになっている。
【0014】
電流検出用増幅回路部150aはPWM給電回路140aに属する電流検出抵抗142の両端電圧を平滑・増幅するためのものであり、PWM給電回路140a〜140nに対応して電流検出用増幅回路部150a〜150nが設けられている。
即ち、各電気負荷111a〜111nに対応して電流検出用増幅回路部150a〜150nが設けられている。なお、図1では電流検出用増幅回路部150aのみを示している。
演算増幅器151の非反転入力端子は、入力抵抗152を介して電流検出抵抗142と開閉素子141Aのソース端子との接続点に接続されると共に、平滑用コンデンサ153を介してグランド回路に接続されている。
演算増幅器151の出力電圧であり、後述する異常兆候検出手段が異常を検出するために測定する測定電圧(以下、測定用電圧と称す)E0aは、分圧抵抗154・155によって分圧されて反転入力端子に負帰還接続されていると共に、限流抵抗156を介して平滑用コンデンサ157を充電し、平滑用コンデンサ157の充電電圧は入力抵抗158を介して多チャンネルAD変換器131の入力端子に印加され、監視電圧Efaとして入力されるようになっている。
なお、平滑用コンデンサ157の充電電圧が過大になれば電圧制限ダイオード159を介して制御電源電圧Vccレベルに抑制するようになっているが、測定用電圧E0aが制御電源電圧Vcc以下であって電圧制限ダイオード159による規制を受けない段階にあっては、測定用電圧E0aと監視電圧Efaとは同じ値になっている。
追って詳述する過電流異常検出回路160aは、演算増幅器151の出力電圧である測定用電圧E0aが所定値を超過したときに作用して開閉素子141Aのゲート電圧を遮断し、開閉素子141Aに過大電流が流れるのを防止する。
【0015】
次に、図2は、図1に示した本実施の形態に係わる不帰還型負荷電流制御装置の動作を説明するためのブロック図である。
図2において、不帰還型負荷電流制御装置100Aはマイクロプロセッサ120Aを主体とした給電制御回路部200AとPWM給電回路140a〜140nを主体とした給電駆動回路部220Aに分割されている。
給電駆動回路部220Aは、更に電流検出用増幅回路部150a〜150nと過電流異常検出回路160a〜160nを包含し、電流検出用増幅回路部150a〜150nは監視電圧Efa〜Efnを発生するようになっている。
開閉指令出力PWMa〜PWMnを発生する給電制御回路部200Aは、変速段決定手段201、適正通電率演算手段206a〜206n、比較目標電圧設定手段208a〜208n、帯域比較判定手段209a〜209nなどを主体として構成されている。
【0016】
変速段決定手段201は、アクセルポジションセンサ103から得られるアクセルペダルの踏込み度合いに関する情報と、車速センサ104から得られる車速情報と、セレクタスイッチ105から得られるシフトレバーの選択位置に関する情報をもとにして適正な変速段を決定し、電磁ソレノイドである電気負荷111a〜111nの中から通電動作したい選択ソレノイドに対応した指令メモリ202a〜202nの一つが活性化されるようになっている。
例えば、指令メモリ202aが活性化された直後には、通電切換手段203aを介して駆動初期電流設定手段204aが選択され、電気負荷111aに対する通電目標電流Isとして駆動初期電流Idが設定される。
負荷電流の増大に伴って電磁弁が動作完了するに必要な所定時間が経過すると、通電切換手段203aの選択位置が切換り、動作保持電流設定手段205aが選択され、通電目標電流Isとして動作保持電流Ihが設定される。
電気負荷111aに対する非通電期間においては、通電目標電流Isはゼロとなるが、図3で後述する工程312aに相当した不作動低電流設定手段213aの作用により定期的に短時間だけ不作動低電流Iminが通電目標電流Isとして設定されるようになっている。
適正通電率演算手段206aには、通電目標電流Is(0、Imin、Ih、Id)の値と、駆動電源電圧Vbの値と、電気負荷111aの負荷抵抗Raの値が入力されている。
【0017】
なお、電気負荷111aの負荷抵抗Raは、負荷抵抗推定手段207aによって(1)式によって算出されるものである。
Ra=K1+K2×T+K3×ΔTa ・・・・・・・・(1)
ΔTa=0、またはΔTa max、またはΔTa max/2 K1、K2、K3=定数
但し、Tは温度センサ112によって検出された電気負荷111a〜111nの環境温度であり、自動変速機の場合には潤滑油の温度を検出する油温センサが利用されている。
また、ΔTaは電気負荷111aに対する通電電流の履歴と電気負荷の熱時定数によって定まる電気負荷111aの温度上昇値であるが、この実施例では、例えばΔTa=0、または推定最大温度上昇値ΔTa max、または平均推定温度上昇値ΔTa max/2の固定値と仮定して負荷抵抗Raの算出が行なわれるようになっている。
適正通電率演算手段206aは通電目標電流Isと駆動電源電圧Vbと負荷抵抗Raの値をもとにして、(2)式によって通電率αを算出する。
α=Is×Ra/Vb ・・・・・・・・・・・・・・・(2)
【0018】
比較目標電圧設定手段208aは、電気負荷111aに対する通電目標電流Isに比例した電圧を入力として動作し、電流検出用増幅回路部150aにおける平滑コンデンサ153・157の平滑時定数に相当した応答遅れを持った比較目標電圧Esaを発生する手段となっており、平滑コンデンサ153・157の平滑時定数は電気負荷111aのインダクタンスと抵抗値との比率である電流時定数に相当した値となっている。
帯域比較判定手段209aは、比較目標電圧設定手段208aから得られる比較目標電圧Esaと電流検出用増幅回路部150aから得られる監視電圧Efaとを比較して、比較結果に乖離があるときには異常報知指令出力Erを発生して警報表示器106を作動させたり、比較結果に過大な乖離があるときには適正通電率演算手段206aに作用して通電率αをゼロにするようになっている。
【0019】
負荷温度上昇推定手段211aは、電気負荷111aに対する監視電圧Efaの二乗値を少なくとも電気負荷111aの熱時定数以上の期間にわたって定期的に格納記憶する先入先出(FIFO)データテーブル210aに格納し、格納された複数データに関する移動平均値を算出して温度換算係数を掛ける演算手段によって構成され、電気負荷の熱時定数を加味した現在時刻における温度上昇値ΔTaを推定する手段となっている。
なお、先入先出データテーブル210aに格納するデータは監視電圧Efaに替わって、電気負荷111aに対する通電目標電流Isに対応した設定電圧または比較目標設定電圧Esaの値の二乗値であってもよい。
【0020】
異常判定補正手段212aは、帯域比較判定手段209aで比較が行なわれる比較目標電圧Esaの値を負荷温度上昇推定手段211aによって推定された負荷の温度上昇値ΔTaに応動して減少させるか、または監視電圧Efの値を増加させて帯域比較を行なう手段となっている。
これは、算式(1)(2)で適用された負荷抵抗Raが電気負荷111aの通電温度上昇に伴う変動分を含んでいないので、この変動分を比較段階で補正することによって高精度な比較を行なうようにするためのものとなっている。
その他の電気負荷111b〜111nの動作が選択されたときも同様に処理されて、開閉指令出力PWMb〜PWMnを発生し、これに対応した監視電圧Efb〜Efnを得ることにより各電気負荷111b〜111nに対する異常判定が行なわれるようになっている。
なお、適正通電率演算手段206aは図3における工程302cに相当し、比較目標電圧設定手段208aは図3における工程304aに相当し、帯域比較判定手段209aは図3における工程305・306に相当し、負荷温度上昇推定手段211aは図3における309dに相当し、異常判定補正手段212aは図3における工程303bに相当するものとなっている。
【0021】
次に、図1に示された構成の本発明の実施の形態1に係わる不帰還型負荷電流制御装置の異常判定動作について、図3に示すフローチャートに基づいて説明する。
図3において、工程300aはマイクロプロセッサ120Aが電気負荷111aに関する異常検出動作を開始するステップ、続く工程301は電気負荷111aに対する通電時期であるかどうかを判定し、通電時期であれば工程302aへ移行し、通電時期でなければ工程311へ移行する判定ステップである。
なお、工程301における判定は、図2の指令メモリ202aが通電指令情報を記憶しているかどうかによって通電時期であるか否かを判定するものとなっている。
工程302aは図2における通電切換手段203aの動作位置に応じて駆動初期電流設定手段204aまたは動作保持電流設定手段205aによって設定された駆動初期電流Idまたは動作保持電流Ihを通電目標電流Isとして設定して読出すステップ、続く工程302bは多チャンネルAD変換器131に入力された駆動電源電圧Vbや環境温度Tを読出すステップ、続く工程302cは、前掲の算式(1)(2)に基づいて適正通電率αを算出し、算出された通電率に基づいて開閉素子141Aに対する開閉指令出力PWMaを発生する適正通電率演算手段となるステップである。
【0022】
続く工程303aは運転開始後の時間が所定時間を超過したかどうかを判定し、長時間経過であれば工程303bへ移行し、短時間経過であれば工程303dへ移行する選択切換手段となる判定ステップであり、工程303aにおける運転時間の判定は後述の工程309cにおいて先入先出データテーブルに所定点数以上のデータが格納されたかどうかによって判定するようになっている。
工程303bは後述の工程309dによって算出された電気負荷111aの通電温度上昇ΔTaをもとにして、前掲の算式(1)(2)によって現在温度に適応した補正通電率βを算出し、工程302cで算出された適正通電率αとの比率β/αを補正倍率として算出する異常判定補正手段となるステップである。
続く工程303cは図4で後述する異常予兆判定用の第一の許容誤差幅としてE21(例えば±10%)を選択し、発現異常判定用の第二の許容誤差幅としてE22(例えば±20%)を選択するステップとなっている。
【0023】
工程303dは後述の工程309dによる電気負荷111aの通電温度上昇が未定であるときに実行され異常判定補正を無効にするステップであり、続く工程303eは図4で後述する異常予兆判定用の第一の許容誤差幅としてE11(例えば±30%)を選択し、発現異常判定用の第二の許容誤差幅としてE12(例えば±40%)を選択する許容誤差幅補正手段となる
ステップとなっている。
なお、工程302cによって演算された適正通電率αは電気負荷111aの通電温度上昇ΔTaの変動を無視して、ΔTa=0とした初期温度方式、またはΔTa=ΔTa maxとした最大温度方式、またはΔTa=ΔTa max/2とした平均温度方式のいずれかによる仮定温度上昇値をもとにして、前掲の算式(1)(2)によって算出されている。
従って、実際の通電温度上昇ΔTaの値によって監視電圧Efaが変動することになるので、工程303eによる許容誤差幅は工程303cによる許容誤差幅よりも大きな値として、みだりに異常判定が行なわれないようになっている。
工程303cまたは工程303eに続いて実行される工程304aは工程302aで読み出された通電目標電流Isまたは後述の工程312aで設定された不作動低電流Iminに比例した電圧を入力として動作し、電流検出用増幅回路部150aにおける平滑コンデンサ153・157の平滑時定数に相当した応答遅れを持った比較目標電圧Esを発生する比較目標電圧設定手段となるステップであり、平滑コンデンサ153・157の平滑時定数は電気負荷のインダクタンスと抵抗値との比率である電流時定数に相当した値となっている。
【0024】
続く工程304bは工程304aで演算された比較目標電圧Esaの現在値と、監視電圧Efaの現在値を読み出すと共に、読み出された比較目標電圧Esaまたは監視電圧Efaのいずれか一方に対して工程303bによって算出された補正倍率による補正処理を行うステップであり、運転開始後の時間が短いときには補正処理は行われないようになっている。
続く工程305は工程304bで読出補正された比較目標電圧Esaと上記監視電圧Efaとの相対誤差が工程303cまたは工程303eで選択された第二の許容誤差幅E22またはE12の域外となる過大電流状態または過小電流状態であるかどうかを判定する発現異常検出手段となるステップであり、工程305の判定が過大・過小異常の判定であったときには工程307bへ移行して発現異常履歴をRAMメモリ122に保存してから工程308bへ移行するようになっている。
工程308bは異常報知指令出力Erを断続して警報表示器106を点滅すると共に、駆動停止指令を発生して工程302cにおける適正通電率αをゼロにする駆動停止手段となるステップである。
なお、工程308bが駆動停止指令を発生するとその状態は記憶され運転停止してから再起動するまでは開閉指令出力PWMaが発生しないようになっている。
【0025】
工程305の判定が過大・過小異常の判定ではなかったときには工程306へ移行し、工程306は工程304bで読出補正された比較目標電圧Esaと上記監視電圧Efaとの相対誤差が工程303cまたは工程303eで選択された第一の許容誤差幅E21またはE11の域内となる正常状態または域外となる異常兆候発生状態であるかどうかを判定する異常兆候検出手段となるステップであり、工程306の判定が異常兆候ありの判定であったときには工程307aへ移行して異常兆候履歴をRAMメモリ122に保存してから工程308aへ移行するようになっている。
工程308aは異常報知指令出力Erを発生して警報表示器106を点灯する異常報知指令出力手段となるステップである。
△工程306の判定が正常判定であったとき、または工程308a・308b、または後述の工程312bに続いて実行される工程309aは以下の工程309b〜309dを実行するタイミングであるかどうかを判定するステップであり、例えば10秒に一回程度の周期τで略定期的にYESの判定が行なわれるようになっている。
【0026】
工程309aの判定がYESであったときに実行される工程309bは前回の周期τ期間における監視電圧Efaの二乗値の平均値または簡略的には単純平均値の二乗値等による代表値を先入先出データテーブルに格納保存すると共に、先入先出データテーブルの移動シフト操作を行なって先頭データを削除するステップであり、電気負荷の熱時定数τaが例えば500秒である場合には先入先出データテーブルは周期τ=10秒間隔で100個のデータを移動保存し、熱時定数τaの2倍の時間にわたって通電履歴情報が保存されるようになっている。
なお、先入先出データテーブルに格納するデータは監視電圧Efaの二乗代表値であることが望ましいが、監視電圧Efaに替わって通電目標電流に比例した目標電圧の値や比較目標電圧の値の二乗代表値を使用することができる。
続く工程309cは工程309bによって格納された多数の二乗データの移動平均値を算出するステップ、続く工程309dは工程309cで算出された移動平均値に温度換算係数を掛けて現在時刻における通電温度上昇値ΔTaを推定する負荷温度上昇推定手段となるステップである。
【0027】
工程309aの判定がNOであったとき、または工程309dに続いて移行する工程310は異常判定動作の終了待機ステップであり、この工程310においてマイクロプロセッサ120Aはその他の電気負荷111b〜111nに対する異常判定を行なったり、図2における変速段決定手段201で示した変速段の演算算出処理を実行した後に、再度初期工程300aが活性化されるようになっている。
工程301の判定がNOであって電気負荷111aに対する通電時期ではないときに実行される工程311は、例えば数分間隔で1秒間だけYESの判定を行なって続く工程312aに移行する仮通電時期判定手段となるステップであり、工程312aは電気負荷111aの不作動期間帯において、電気負荷111aが実効動作しないレベルの不作動低電流Iminを設定する不作動低電流設定手段となるステップであり、工程312aに続いて工程302bへ移行するようになっている。
工程311の判定がNOであったときには工程312bへ移行し、工程312bでは通電目標電流Isの値をゼロにしてから工程309aへ移行するようになっている。
【0028】
工程307a・307bで保存された異常履歴情報は、保守点検時にマイクロプロセッサ120Aに対してシリアル接続される図示しない外部ツールを介して読出し表示されて、異常発生した電気負荷の番号や異常兆候や発現異常の区分と許容誤差幅に対する超過・未満の区分などの保守点検情報を提供し、保守点検の終了に伴ってリセットされるようになっている。
なお、異常履歴情報が格納されるRAMメモリ122は制御電源ユニット130によって生成されたバックアップ電圧Vmemによって電源スイッチ102が開路されても停電保持されているが、駆動電源101の取り外しや異常電圧低下に対応するために、図示しない不揮発メモリに対して適時に転送退避しておくことも可能である。
【0029】
図4は、図1に示した本実施の形態に係わる不帰還型負荷電流制御装置の動作を説明するための動作特性線図である。
図4において、横軸は電流検出抵抗142の両端電圧の平均値に比例した値である検出電流を示し、この検出電流が電気負荷111aに流れる負荷電流に相当している。
縦軸は電流検出抵抗142の両端電圧を増幅・平滑して得られる演算増幅器151の出力電圧であり、この出力電圧のうち演算増幅器151の出力端子に発生する測定用電圧E0aは検出電流に比例して増加し、やがて演算増幅器151に印加されている駆動電源電圧Vb以下の値で飽和するようになっている。
測定用電圧E0aから限流抵抗156を経て得られる監視電圧Efaの値も検出電流に比例して増加するが、やがて電圧制限ダイオード159によって制御電源電圧Vccレベルに規制されている。
通電目標電流Isに対応した監視電圧Efは制御電源電圧Vcc以下の値となるように演算増幅器151の増幅率が設定されており、厳密に言えば通電目標電流Isのうち駆動初期電流Idの例えば40%増しの電流に対して監視電圧Efと制御電源電圧Vccとが等しくなるようになっている。
【0030】
電気負荷111aが完全短絡するか、電気負荷111aの負側配線が駆動電源101の正側電源線と混触する天絡事故が発生すると、開閉素子141Aには駆動電源電圧Vbと電流検出抵抗142の抵抗値比率で定まる過大電流が流れようとするが、実際には開閉素子141Aの電流増幅率で定まる飽和電流以下の値に制限される。
過電流異常検出回路160aが動作する検出過大電流Imaxに対応した監視電圧に相当する制限閾値Emaxの値は例えば駆動電源電圧Vbの変動最小値であるDC8Vレベルに設定されている。
第一の許容誤差幅E11・E21は、図3の異常兆候検出手段となる工程306によって正常判定される帯域幅となっており、この帯域の域外になると異常兆候ありの判定となる。
第二の許容誤差幅E12・E22は、図3の発現異常検出手段となる工程305によって異常判定される帯域幅となっており、この帯域の域外になると発現異常ありの判定となる。
【0031】
第一許容誤差幅や第二の許容誤差幅において設定された2種類の許容誤差幅の値は、図3の工程303aによって選択使用され、工程309dによる負荷温度上昇の推定が行われた後は許容誤差幅が狭くなり、負荷温度上昇の推定が行われるまでは許容誤差幅を広げてみだりに異常判定が行なわれないようになっている。
【0032】
以上の説明で明らかなとおり、本発明の実施の形態1による不帰還型負荷電流制御装置100Aは、駆動電源101と誘導性の電気負荷111aと開閉素子141Aとの直列回路によって構成された給電駆動回路部220Aと、上記電気負荷111aに対する通電目標電流Isと駆動電源電圧Vbの値に応動して上記開閉素子141Aの通電期間と通電周期との比率である通電率αを制御する給電制御回路部200Aとを備えた不帰還型負荷電流制御装置であって、
上記給電駆動回路部220Aは、更に、上記開閉素子141Aと上記駆動電源101のグランド回路との間に接続された電流検出抵抗142と、上記電流検出抵抗142の両端電圧を増幅する演算増幅器151と該演算増幅器151の入力回路または出力回路の少なくとも一方に設けられ上記電流検出抵抗142の両端電圧の平均値に略比例した測定用電圧を得る平滑コンデンサを設けた電流検出用増幅回路部150aと、上記電気負荷111aと並列接続され、上記開閉素子141Aが閉路していたときに給電されていた負荷電流が、上記開閉素子141Aが開路したときに還流減衰して負荷電流を平滑化する転流回路145とを備えている。
そして、上記給電制御回路部200Aは、上記駆動電源101から給電されて駆動電源電圧Vbよりも低い値の安定化された制御電源電圧Vccを発生する制御電源ユニット130から給電されるマイクロプロセッサ120Aと、複数のアナログ信号が入力される多チャンネルAD変換器131と、上記マイクロプロセッサ120Aと協働し負荷電流制御プログラムが格納されると共に異常兆候検出手段306となるプログラムを包含した不揮発プログラムメモリ121Aとを備えている。
【0033】
また、上記電流検出用増幅回路部150aは、上記電流検出抵抗142の両端電圧を増幅する演算増幅器151と、該演算増幅器151の入力回路または出力回路の少なくとも一方に設けられ上記電流検出抵抗142の両端電圧の平均値に略比例した測定用電圧E0を得る平滑コンデンサ153・157とを備え、上記演算増幅器151の出力は上記制御電源電圧Vcc以下の値に制限された監視電圧Efとして上記多チャンネルAD変換器131を介して上記マイクロプロセッサ120Aに入力されている。
また、上記異常兆候検出手段306は、上記通電目標電流Isに対応した比較目標電圧Esと上記監視電圧Efとの相対誤差が正常値範囲を僅かに逸脱した第一の許容誤差幅E11・E21の域外であるときに異常報知指令出力Erを発生し、上記異常兆候検出手段306が異常検出を行なうときの上記測定用電圧E0は上記制御電源電圧Vcc未満の値に設定されている。
【0034】
従って、電気負荷の短絡事故や負側配線と正側電源線が混触する天絡事故の発生に対して開閉素子を緊急遮断するまでの過渡期間において電流検出抵抗が限流抵抗の役割を果たして開閉素子に加わる過大なストレスを軽減することができる。
また、電気負荷の半断線・半短絡異常に伴う抵抗値の変動に対して、帰還制御方式であれば自動的に目標電流が得られるように印加電圧の調整が行なわれることになるが、不帰還制御方式の場合には検出電流が変化するので、AD変換器の出力をマイクロプロセッサで監視しておくことによって異常兆候を検出し、異常報知することができる。
【0035】
また、上記不揮発プログラムメモリ121Aは、更に、発現異常検出手段305と駆動停止手段308bとなるプログラムを包含している。
そして、上記発現異常検出手段305は、上記通電目標電流Isに対応した比較目標電圧Esと上記監視電圧Efとの相対誤差が上記第一の許容誤差幅E11・E21よりも大きな値である第二の許容誤差幅E12・E22の域外となる過大電流状態または過小電流状態において異常報知指令出力Erを発生する。
また、上記駆動停止手段308bは上記発現異常検出手段305が少なくとも過大電流状態を検出したときに作用して上記開閉素子141Aに対する開閉指令出力PWMaを全開指令にする。
従って、異常兆候の発生時点で保守点検のために異常報知されていた異常状態が更に進行した場合には、発現異常検出手段によって電気負荷の駆動停止を行なって安全性を向上することができる。
【0036】
また、上記不揮発プログラムメモリ121Aは、更に不作動低電流設定手段312aとなるプログラムを包含している。
そして、上記不作動低電流設定手段312aは上記電気負荷111aの不作動期間帯において、上記電気負荷111aが実効動作しないレベルの不作動低電流Iminを上記通電目標電流Isとして所定短期間だけ仮通電する。
従って、開閉素子の非駆動期間中であっても、電気負荷を実効動作させない状態で手軽に異常兆候や発現異常を検出することができる。
【0037】
また、上記電流検出用増幅回路部150aの演算増幅器151は、上記電気負荷111aの駆動電源電圧Vbが電源電圧として印加されて動作するものであり、上記演算増幅器151の出力である測定用電圧E0は限流抵抗156を介して監視電圧Efとして上記多チャンネルAD変換器131の入力端子に印加され、上記多チャンネルAD変換器131の入力端子には上記監視電圧Efを制御電源電圧Vccレベルに制限する電圧制限ダイオード159が接続されていると共に、上記給電駆動回路部220Aは更に過電流異常検出回路160aを備えている。
そして、上記過電流異常検出回路160aは上記監視電圧Efが上記電圧制限ダイオード159によって制御電圧Vccレベルに制限された以降の状態で更に上記測定用電圧E0が上昇して所定の制限閾値Emaxを超過したときに上記開閉素子141Aに対する通電指令を停止する。
従って、演算増幅器151の出力電圧が制御電源電圧Vccを越えた状態で過電流異常検出回路160aが作動するようになっているので、異常兆候や発現異常の検出状態における演算増幅器151の出力電圧を制御電源電圧Vcc以下の範囲でなるべく大きな値に設定して検出精度を向上することができると共に、過電流異常が発生したときにはマイクロプロセッサ120Aに依存することなく速やかに開閉素子141Aを遮断して、開閉素子141Aの焼損を防止することができる。
【0038】
また、上記不揮発プログラムメモリ121Aは、更に上記電気負荷111aの環境温度を検出する温度センサ112の検出出力に応動する適性通電率演算手段302cとなるプログラムを包含している。
そして、上記適正通電率演算手段302cは上記電気負荷111aに対する目標電流Isに比例し、駆動電源電圧Vbに反比例し、上記温度センサ112によって検出された環境温度Tから推定される上記電気負荷の負荷抵抗Raに比例した通電率αを算出し、上記開閉素子141Aに対する開閉指令出力PWMaの通電指令期間と通電周期との比率を決定する。
従って、不帰還型の負荷電流制御方式でありながらも電流制御精度を向上し、その結果として異常兆候や発現異常の検出精度を向上することができる。
【0039】
また、上記不揮発プログラムメモリ121Aは、更に、負荷温度上昇推定手段309dと異常判定補正手段303bとなるプログラムを包含している。
そして、上記負荷温度上昇推定手段309dは上記電気負荷111aに対する通電履歴と電気負荷111aの熱時定数に関連して上記電気負荷111aの現在時刻における温度上昇値ΔTaを推定し、推定された温度上昇値ΔTaと上記温度センサ112によって検出された環境温度Tを加算することによって電気負荷111aの現在温度を算定する。
また、上記異常判定補正手段303bは上記異常兆候検出手段306または発現異常検出手段305において帯域比較判定が行なわれる比較目標電圧Esの値を上記負荷温度上昇推定手段309dによって推定された負荷の温度上昇値ΔTaに応動して減少させるか、または監視電圧Efの値を増加させ、上記適正通電率演算手段302cは通電負荷電流に伴う上記電気負荷111aの温度上昇とは無関係に、駆動電源電圧Vbと電気負荷111aの環境温度Tに基づいて通電率αを決定する。
従って、通電負荷電流に伴う電気負荷の温度上昇と環境温度とを考慮して、目標電流に対する実際の負荷電流との相違を予測したうえで異常判定を行なうことにより、異常兆候や発現異常の検出精度を更に向上することができる。
【0040】
また、上記不揮発プログラムメモリ121Aは、更に、選択切換手段303aと許容誤差幅補正手段303eとなるプログラムを包含している。
そして、上記選択切換手段303aは運転開始後の所定期間において上記異常判定補正手段303bは無効とする手段となっている。
また、上記許容誤差幅補正手段303eは上記異常判定補正手段303bが無効であるときには上記異常判定帯域比較における許容誤差幅を大きく設定し、異常判定補正手段303bが有効となってからは許容誤差幅が狭くなるように補正する。
従って、不確定な運転休止期間のあとで運転再開されたような場合に、電気負荷の温度上昇が推定できるまでの期間は異常判定許容誤差幅を広げてみだりに異常判定を行なわないようにすることができる。
【0041】
また、上記負荷温度上昇推定手段309dは、上記電気負荷111aに対する通電目標電流Isに対応した設定電圧または上記監視電圧Efaの二乗代表値を少なくとも上記電気負荷111aの熱時定数以上の期間にわたって定期的に格納記憶する先入先出データテーブル210aと、該データテーブル210aに格納された複数データに関する移動平均値を算出し、当該移動平均値に対して温度換算係数を掛ける演算手段とによって、電気負荷の熱時定数を加味した現在時刻における温度上昇値を推定する。
従って、負荷電流の変動があっても、簡易な演算手段によって比較的高精度に通電負荷電流に伴う電気負荷の温度上昇を推定することができる。
【0042】
また、上記不揮発プログラムメモリ121Aは、更に比較目標電圧設定手段304aとなるプログラムを包含している。
そして、上記比較目標電圧設定手段304aは、上記電気負荷111aに対する通電目標電流Isに比例した電圧を入力として動作し、上記電流検出用増幅回路部150aにおける平滑コンデンサ153・157の平滑時定数に相当した応答遅れを持った比較目標電圧Esを発生し、上記平滑コンデンサ153・157の平滑時定数は上記電気負荷111aのインダクタンスと抵抗値との比率である電流時定数に相当した値となっている。
従って、通電目標電流が変化して負荷電流が変動している過渡期間であっても比較的高精度に異常兆候や発現異常を検出することができる。
【0043】
また、上記電気負荷は、自動車用の多段自動変速機110における変速段切換え用電磁弁に対する電磁弁駆動用の複数の電磁ソレノイド111a・111b・・・111nであって、該電磁ソレノイド111a・111b・・・111nに対する通電目標電流Isは駆動初期電流Idと動作保持電流Ihに対応して大小に変化するものであると共に、上記電磁ソレノイド111a・111b・・・111nの環境温度を検出する温度センサ112は上記自動変速機110の潤滑油温度を検出する油温センサによって代替されるようになっている。
従って、既存の油温センサを活用して不帰還制御方式でありながら高精度な電流制御を行なうことができ、高速応答性が求められる帰還型の電流制御装置に比べて、多数の電磁ソレノイドに対するマイクロプロセッサの制御負担を大幅に軽減することができる。
【0044】
実施の形態2.
図5は、この発明の実施の形態2に係わる不帰還型負荷電流制御装置の構成を示す図である。
図において、100Bは、実施の形態2による不帰還型負荷電流制御装置であって、不帰還型負荷電流制御装置100Bには、実施の形態1の場合と同様に、駆動電源101、電源スイッチ102、アクセルポジションセンサ103、車速センサ104、セレクタスイッチ105、多段自動変速機110の温度センサ112、電磁ソレノイドである電気負荷111a、111b・・・・・111n、警報表示器106が外部接続されている。
以下、図1に示した実施の形態1による不帰還型負荷電流制御装置100Aとの相違点を中心にして説明する。
図5において、不帰還型負荷電流制御装置100Bには、実施の形態1の場合と同様に駆動電源101、電源スイッチ102、アクセルポジションセンサ103、車速センサ104、セレクタスイッチ105、多段自動変速機110の温度センサ112、電磁ソレノイドである電気負荷111a、111b・・・・・111n、警報表示器106が外部接続されている。
不帰還型負荷電流制御装置100Bの内部の構成として、マイクロプロセッサ(CPU)120Bは、不揮発プログラムメモリ121Bと協働するようになっており、開閉素子141Bとしては電界効果型トランジスタに代わってNPN接合型トランジスタ使用されている。
過電流異常検出回路160aは比較増幅器161と、電流検出用増幅回路部150aの出力電圧である測定用電圧E0aが印加される分圧抵抗162・163と、NPN型のトランジスタ164を駆動するベース抵抗165、トランジスタ164のベース・エミッタ端子間に接続された安定抵抗166によって構成されていて、比較増幅器161の反転入力端子には制御電源電圧Vccが印加され、比較増幅器161の非反転入力端子には分圧抵抗162・163による分圧電圧が印加され、比較増幅器161の出力端子にはトランジスタ164を駆動するベース抵抗165が接続されている。
なお、図5に示されている電流検出用増幅回路部150aの構成は、図1に示した電流検出用増幅回路部150aと同じであるが、簡略化して表示している。
【0045】
トランジスタ164のコレクタ端子は、開閉素子141Bのベース端子に接続されていて、測定用電圧E0aの値が過大であるときにはトランジスタ164が導通して、開閉素子141Bが不導通となるようになっている。
断線異常検出回路170aはレベル変換回路を構成するPNP型のトランジスタ171と、トランジスタ171のベース端子と開閉素子141Bのコレクタ端子間に接続されたベース抵抗172と、漏洩抵抗173とトランジスタ171のコレクタ端子に接続されたコレクタ抵抗174とによって構成されている。
漏洩抵抗173は、電気負荷111aの負側端子と開閉素子141Aのコレクタ端子との接続点とグランド回路間に接続されていて、開閉素子141Bが開路しているときに駆動電源101から電源スイッチ102、電気負荷111aを通じて微弱な漏洩電流が流れるようになっている。
トランジスタ171のエミッタ端子には制御電源電圧Vccが印加され、コレクタ端子は判定論理信号Diaとしてマイクロプロセッサ120Bに入力されている。
従って、開閉素子141Bが開路しているときには漏洩抵抗173の印加電圧は駆動電源電圧Vbに略等しくなってトランジスタ171が開路し、判定論理信号Diaの論理レベルは「L」となっている。
【0046】
しかし、開閉素子141Bが開路しているときであっても、電気負荷111aまたは電気負荷111aに対する給電線の断線が発生すると、漏洩抵抗173への漏洩電流が流れなくなり、トランジスタ171のベース電流がベース抵抗172と漏洩抵抗173の直列回路を通して通電され、トランジスタ171が導通することによって判定論理信号Diaの論理レベルは「H」となる。
なお、開閉素子141Bが閉路しているときには、トランジスタ171のベース電流がベース抵抗172と開閉素子141Bと電流検出抵抗142との直列回路を通して通電され、トランジスタ171が導通することによって判定論理信号Diaの論理レベルは「H」となっているが、この状態は電気負荷111aの断線状態を検出するものではない。
【0047】
次に、図5に示した本実施の形態による不帰還型負荷電流制御装置の動作説明の用ブロック図である図6について、実施の形態1による不帰還型負荷電流制御装置の動作を説明するためのブロック図である図2との相違点を中心にして説明する。
図6において、不帰還型負荷電流制御装置100Bはマイクロプロセッサ120Bを主体とした給電制御回路部200BとPWM給電回路140a〜140nを主体とした給電駆動回路部220Bに分割されている。
給電駆動回路部220Bは、更に、電流検出用増幅回路部150a〜150nと過電流検出回路160a〜160nと断線異常検出回路170a〜170nとを包含し、電流検出用増幅回路部150a〜150nは監視電圧Efa〜Efnを発生すると共に、断線異常検出回路170a〜170nは論理判定信号Dia〜Dinを発生するようになっている。
開閉指令出力PWMa〜PWMnを発生する給電制御回路部200Bは、変速段決定手段201、補正通電率演算手段606a〜606n、比較目標電圧設定手段608a〜608n、帯域比較判定手段609a〜609nなどを主体として構成されている。
【0048】
変速段決定手段201は、図2に示したものと同様に適正な変速段を決定し、電磁ソレノイドである電気負荷111a〜111nの中から通電動作したい選択ソレノイドに対応した指令メモリ202a〜202nの一つが活性化されるようになっている。
指令メモリ202aが活性化された直後には、通電切換手段203aを介して駆動初期電流設定手段204aが選択され、所定時間後には通電切換手段203aの選択位置が切換って、動作保持電流設定手段205aが選択される。
電気負荷111aに対する非通電期間においては通電目標電流Isはゼロとなり、補正通電率演算手段606aには通電目標電流Is(0、Ih、Id)の値と、駆動電源電圧Vbの値と、電気負荷111aの負荷抵抗Raの値が入力されている。
【0049】
なお、電気負荷111aの負荷抵抗Raは負荷抵抗推定手段607aによって(3)式によって算出されるものである。
Ra=K1+K2×T+K3×ΔTa ・・・・・・・・(3)
K1、K2、K3=定数
但し、Tは温度センサ112によって検出された電気負荷111a〜111nの環境温度であり、自動変速機の場合には潤滑油の温度を検出する油温センサが利用されている。
また、ΔTaは電気負荷111aに対する通電電流の履歴と電気負荷の熱時定数によって定
まる電気負荷111aの温度上昇値である。
補正通電率演算手段606aは通電目標電流Isと駆動電源電圧Vbと負荷抵抗Raの現在値をもとにして、(4)式によって補正通電率βを算出する。
β=Is×Ra/Vb ・・・・・・・・・・・・・・・(4)
【0050】
比較目標電圧設定手段608aは、電気負荷111aに対する通電目標電流Isに比例した電圧を入力として動作し、電流検出用増幅回路部150aにおける平滑コンデンサ153・157の平滑時定数に相当した応答遅れを持った比較目標電圧Esaを発生する手段となっており、平滑コンデンサ153・157の平滑時定数は電気負荷111aのインダクタンスと抵抗値との比率である電流時定数に相当した値となっている。
帯域比較判定手段609aは、比較目標電圧設定手段608aから得られる比較目標電圧Esaと電流検出用増幅回路部150aから得られる監視電圧Efaとを比較して、比較結果に乖離があるときには異常報知指令出力Erを発生して警報表示器106を作動させたり、比較結果に過大な乖離があるときや開閉素子141Bの非通電期間において判定論理信号Diaの論理レベルが「H」となったときには補正通電率演算手段606aに作用して通電率αをゼロにするようになっている。
【0051】
負荷温度上昇推定手段611aは、電気負荷111aに対する監視電圧Efaの二乗値を少なくとも電気負荷111aの熱時定数以上の期間にわたって定期的に格納記憶する先入先出データテーブル610aに格納し、格納された複数データに関する移動平均値を算出して温度換算係数を掛ける演算手段によって構成され、電気負荷の熱時定数を加味した現在時刻における温度上昇値ΔTaを推定する手段となっている。
なお、先入先出データテーブル610aに格納するデータは、監視電圧Efaに替わって、電気負荷111aに対する通電目標電流Isに対応した設定電圧または比較目標設定電圧Esaの値の二乗値であってもよい。
電気負荷111b〜111nの動作が選択されたときも同様に処理されて、開閉指令出力PWMb〜PWMnを発生し、これに対応した監視電圧Efb〜Efnを得ることにより各電気負荷111b〜111nに対する異常判定が行なわれるようになっている。
なお、補正通電率演算手段606aは、図7における工程703bに相当し、比較目標電圧設定手段608aは図7における工程704aに相当し、帯域比較判定手段609aは、図7における工程705・706に相当し、負荷温度上昇推定手段611aは、図7における709dに相当するものとなっている。
【0052】
次に、図5に示された構成の本発明の実施の形態2に係わる不帰還型負荷電流制御装置の異常判定動作について、図7に示すフローチャートに基づいて説明する。
図7において、工程700aはマイクロプロセッサ120Bが電気負荷111aに関する異常検出動作を開始するステップ、続く工程701は電気負荷111aに対する通電時期であるかどうかを判定し、通電時期であれば工程702aへ移行し、通電時期でなければ工程713へ移行する判定ステップである。
なお、工程701における判定は、図6の指令メモリ202aが通電指令情報を記憶しているかどうかによって通電時期であるか否かを判定するものとなっている。
工程702aは、図6における通電切換手段203aの動作位置に応じて、駆動初期電流設定手段204aまたは動作保持電流設定手段205aによって設定された駆動初期電流Idまたは動作保持電流Ihを通電目標電流Isとして設定して読出すステップ、続く工程702bは多チャンネルAD変換器131に入力された駆動電源電圧Vb、環境温度Tを読出すステップである。
【0053】
続く工程703aは、運転開始後の時間が所定時間を超過したかどうかを判定し、長時間経過であれば工程703bへ移行し、短時間経過であれば工程703dへ移行する選択切換手段となる判定ステップであり、工程703aにおける運転時間の判定は後述の工程709cにおいて先入先出データテーブルに所定点数以上のデータが格納されたかどうかによって判定するようになっている。
工程703bは、後述の工程709dによって算出された電気負荷111aの通電温度上昇ΔTaをもとにして、前掲の算式(3)(4)によって現在温度に適応した補正通電率βを算出し、算出された通電率に基づいて開閉素子141Bに対する開閉指令出力PWMaを発生する補正通電率演算手段となるステップである。
続く工程703cは、図4で前述した異常予兆判定用の第一の許容誤差幅としてE21(例えば±10%)を選択し、発現異常判定用の第二の許容誤差幅としてE22(例えば±20%)
を選択するステップとなっている。
【0054】
工程703dは後述の工程709dによる電気負荷111aの通電温度上昇が未定であるときに実行され、前掲の算式(1)(2)に基づいて適正通電率αを算出し、算出された通電率に基づいて開閉素子141Bに対する開閉指令出力PWMaを発生する適正通電率演算手段となるステップである。
続く工程703eは、図4で前述した異常予兆判定用の第一の許容誤差幅としてE11(例えば±30%)を選択し、発現異常判定用の第二の許容誤差幅としてE12(例えば±40%)を選択する許容誤差幅補正手段となるステップとなっている。
なお、工程703dによって演算された適正通電率αは、電気負荷111aの通電温度上昇ΔTaの変動を無視して、ΔTa=0とした初期温度方式、またはΔTa=ΔTa maxとした最大温度方式、またはΔTa=ΔTa max/2とした平均温度方式のいずれかによる仮定温度上昇値をもとにして、前掲の算式(1)(2)によって算出されている。
従って、実際の通電温度上昇ΔTaの値によって監視電圧Efaが変動することになるので、工程703eによる許容誤差幅は工程703cによる許容誤差幅よりも大きな値として、みだりに異常判定が行なわれないようになっている。
工程703cまたは工程703eに続いて実行される工程704aは、工程702aで読み出された通電目標電流Isに比例した電圧を入力として動作し、電流検出用増幅回路部150aにおける平滑コンデンサ153・157の平滑時定数に相当した応答遅れを持った比較目標電圧Esを発生する比較目標電圧設定手段となるステップであり、平滑コンデンサ153・157の平滑時定数は電気負荷111aのインダクタンスと抵抗値との比率である電流時定数に相当した値となっている。
【0055】
続く工程704bは、工程704aで演算された比較目標電圧Esaの現在値と監視電圧Efaの現在値を読み出すステップ、続く工程705は、工程704bで読出された比較目標電圧Esaと監視電圧Efaとの相対誤差が、工程703cまたは工程703eで選択された第二の許容誤差幅E22またはE12の域外となる過大電流状態または過小電流状態であるかどうかを判定する発現異常検出手段となるステップであり、工程705の判定が過大・過小異常の判定であったときには工程707bへ移行して発現異常履歴をRAMメモリ122に保存してから工程708bへ移行するようになっている。
工程708bは、異常報知指令出力Erを断続して警報表示器106を点滅すると共に、駆動停止指令を発生して工程703bまたは工程703dにおける通電率をゼロにする駆動停止手段となるステップである。
なお、工程708bが駆動停止指令を発生すると、その状態は記憶され運転停止してから再起動するまでは開閉指令出力PWMaが発生しないようになっている。
【0056】
工程705の判定が過大・過小異常の判定ではなかったときには工程706へ移行し、工程706は工程704bで読出された比較目標電圧Esaと上記監視電圧Efaとの相対誤差が、工程703cまたは工程703eで選択された第一の許容誤差幅E21またはE11の域内となる正常状態または域外となる異常兆候発生状態であるかどうかを判定する異常兆候検出手段となるステップであり、工程706の判定が異常兆候ありの判定であったときには工程707aへ移行して異常兆候履歴をRAMメモリ122に保存してから工程708aへ移行するようになっている。
工程708aは、異常報知指令出力Erを発生して警報表示器106を点灯する異常報知指令出力手段となるステップである。
工程706の判定が正常判定であったとき、または後述の工程714の判定が断線異常なしであったとき、または工程708a・708bに続いて実行される工程709aは、以下の工程709b〜709dを実行するタイミングであるかどうかを判定するステップであり、例えば10秒に一回程度の周期τで略定期的にYESの判定が行なわれるようになっている。
【0057】
工程709aの判定がYESであったときに実行される工程709bは、前回の周期τ期間における監視電圧Efaの二乗値の平均値または簡略的には単純平均値の二乗値等による代表値を先入先出データテーブルに格納保存すると共に、先入先出データテーブルの移動シフト操作を行なって先頭データを削除するステップであり、電気負荷の熱時定数τaが例えば500秒である場合には先入先出データテーブルは周期τ=10秒間隔で100個のデータを移動保存し、熱時定数τaの2倍の時間にわたって通電履歴情報が保存されるようになっている。
なお、先入先出データテーブルに格納するデータは監視電圧Efaの二乗代表値であることが望ましいが、監視電圧Efaに替わって通電目標電流に比例した目標電圧の値や比較目標電圧の値の二乗代表値を使用することができる。
続く工程709cは、工程709bによって格納された多数の二乗データの移動平均値を算出するステップ、続く工程709dは、工程709cで算出された移動平均値に温度換算係数を掛けて現在時刻における通電温度上昇値ΔTaを推定する負荷温度上昇推定手段となるステップである。
【0058】
工程709aの判定がNOであったとき、または工程709dに続いて移行する工程710は異常判定動作の終了待機ステップであり、この工程710においてマイクロプロセッサ120Bはその他の電気負荷111b〜111nに対する異常判定を行なったり、図6における変速段決定手段201で示した変速段の演算算出処理を実行した後に、再度初期工程700aが活性化されるようになっている。
工程701の判定がNOであって電気負荷111aに対する通電時期ではないときに実行される工程713は通電目標電流Isをゼロに設定するステップ、続く工程714は断線異常判定手段となるステップであり、判定論理信号Diaの論理レベルが「H」であれば断線異常ありと判定して工程715へ移行し、論理レベルが「L」であれば断線異常なしと判定して工程709aへ移行するようになっている。
工程715では断線異常履歴をRAMメモリ122に保存してから工程708bへ移行するようになっている。
【0059】
工程707a・707b・工程715で保存された異常履歴情報は、保守点検時にマイクロプロセッサ120Bに対してシリアル接続される図示しない外部ツールを介して読出し表示されて、異常発生した電気負荷の番号や異常兆候や発現異常の区分と許容誤差幅に対する超過・未満の区分、断線異常の有無などの保守点検情報を提供し、保守点検の終了に伴ってリセットされるようになっている。
なお、異常履歴情報が格納されるRAMメモリ122は制御電源ユニット130によって生成されたバックアップ電圧Vmemによって電源スイッチ102が開路されても停電保持されているが、駆動電源101の取り外しや異常電圧低下に対応するために、図示しない不揮発メモリに対して適時に転送退避しておくことも可能である。
【0060】
以上の説明で明らかなとおり、本発明の実施の形態2による不帰還型負荷電流制御装置100Bは、駆動電源101と誘導性の電気負荷111aと開閉素子141Bとの直列回路によって構成された給電駆動回路部220Bと、上記電気負荷111aに対する通電目標電流Isと駆動電源電圧Vbの値に応動して上記開閉素子141Bの通電期間と通電周期との比率である通電率αを制御する給電制御回路部200Bとを備えた不帰還型負荷電流制御装置であって、上記給電駆動回路部220Bは、更に、上記開閉素子141Bと上記駆動電源101のグランド回路との間に接続された電流検出抵抗142と、上記電流検出抵抗142の両端電圧を増幅する演算増幅器151と該演算増幅器151の入力回路または出力回路の少なくとも一方に設けられ上記電流検出抵抗142の両端電圧の平均値に略比例した測定用電圧を得る平滑コンデンサを設けた電流検出用増幅回路部150aと、上記電気負荷111aと並列接続され上記開閉素子141Bが閉路していたときに給電されていた負荷電流が上記開閉素子141Bが開路したときに還流減衰して負荷電流を平滑化する転流回路145とを備えている。
そして、上記給電制御回路部200Bは、上記駆動電源101から給電されて駆動電源電圧Vbよりも低い値の安定化された制御電源電圧Vccを発生する制御電源ユニット130から給電されるマイクロプロセッサ120Bと、複数のアナログ信号が入力される多チャンネルAD変換器131と、上記マイクロプロセッサ120Bと協働し負荷電流制御プログラムが格納されると共に異常兆候検出手段706となるプログラムを包含した不揮発プログラムメモリ121Bとを備えている。
【0061】
また、上記電流検出用増幅回路部150aは、上記電流検出抵抗142の両端電圧を増幅する演算増幅器151と、該演算増幅器151の入力回路または出力回路の少なくとも一方に設けられ上記電流検出抵抗142の両端電圧の平均値に略比例した測定用電圧E0を得る平滑コンデンサ153・157とを備え、上記演算増幅器151の出力は上記制御電源電圧Vcc以下の値に制限された監視電圧Efとして上記多チャンネルAD変換器131を介して上記マイクロプロセッサ120Bに入力されている。
また、上記異常兆候検出手段706は、上記通電目標電流Isに対応した比較目標電圧Esと上記監視電圧Efとの相対誤差が正常値範囲を僅かに逸脱した第一の許容誤差幅E11・E21の域外であるときに異常報知指令出力Erを発生し、上記異常兆候検出手段706が異常検出を行なうときの上記測定用電圧E0は、上記制御電源電圧Vcc未満の値に設定されている。
【0062】
従って、電気負荷の短絡事故や負側配線と正側電源線が混触する天絡事故の発生に対して開閉素子を緊急遮断するまでの過渡期間において電流検出抵抗が限流抵抗の役割を果たして開閉素子に加わる過大なストレスを軽減することができる。
また、電気負荷の半断線・半短絡異常に伴う抵抗値の変動に対して、帰還制御方式であれば自動的に目標電流が得られるように印加電圧の調整が行なわれることになるが、不帰還制御方式の場合には検出電流が変化するので、AD変換器の出力をマイクロプロセッサで監視しておくことによって異常兆候を検出し、異常報知することができる。
【0063】
上記不揮発プログラムメモリ121Bは更に、発現異常検出手段705と駆動停止手段708bとなるプログラムを包含している。
上記発現異常検出手段705は、上記通電目標電流Isに対応した比較目標電圧Esと上記監視電圧Efとの相対誤差が上記第一の許容誤差幅E11・E21よりも大きな値である第二の許容誤差幅E12・E22の域外となる過大電流状態または過小電流状態において異常報知指令出力Erを発生する。
上記駆動停止手段708bは、上記発現異常検出手段705が少なくとも過大電流状態を検出したときに作用して上記開閉素子141Bに対する開閉指令出力を全開指令にする。
従って、異常兆候の発生時点で保守点検のために異常報知されていた異常状態が更に進行した場合には、発現異常検出手段によって電気負荷の駆動停止を行なって安全性を向上することができる。
【0064】
また、上記電流検出用増幅回路部150aの演算増幅器151は、上記電気負荷111aの駆動電源電圧Vbが電源電圧として印加されて動作するものであり、上記演算増幅器151の出力である測定用電圧E0は限流抵抗156を介して監視電圧Efとして上記多チャンネルAD変換器131の入力端子に印加され、上記多チャンネルAD変換器131の入力端子には上記監視電圧Efを制御電源電圧Vccレベルに制限する電圧制限ダイオード159が接続されていると共に、上記給電駆動回路部220Bは更に過電流異常検出回路160aを備えている。
そして、上記過電流異常検出回路160aは上記監視電圧Efが上記電圧制限ダイオード159によって制御電圧Vccレベルに制限された以降の状態で更に上記測定用電圧E0が上昇して所定の制限閾値Emaxを超過したときに上記開閉素子141Bに対する通電指令を停止する。
従って、演算増幅器151の出力電圧が制御電源電圧Vccを越えた状態で過電流異常検出回路160aが作動するようになっているので、異常兆候や発現異常の検出状態における演算増幅器151の出力電圧を制御電源電圧Vcc以下の範囲でなるべく大きな値に設定して検出精度を向上することができると共に、過電流異常が発生したときにはマイクロプロセッサ120Bに依存することなく速やかに開閉素子141Bを遮断して、開閉素子141Bの焼損を防止することができる。
【0065】
上記給電駆動回路部220Bは更に断線異常検出回路170aを備えると共に、上記不揮発プログラムメモリ121Bは更に断線異常検出手段714となるプログラムを包含している。
上記断線異常検出回路170aは上記開閉素子141Bの開路状態において上記電気負荷111aを介して微小電流が供給される漏洩抵抗173と、該漏洩抵抗173の印加電圧レベルを二値化して上記マイクロプロセッサ120Bに判定論理信号Diaを入力するレベル変換回路171とによって構成されている。
上記断線異常検出手段714は上記開閉素子141Bの開路指令状態において上記漏洩抵抗173の印加電圧が発生していないときに断線異常判定を行なって、少なくとも異常報知指令出力Erを発生する。
従って、開閉素子の非駆動期間中であっても、電気負荷を実効動作させない状態で手軽に電気負荷の断線異常を検出することができる。
【0066】
上記不揮発プログラムメモリ121Bは、更に上記電気負荷111aの環境温度を検出する温度センサ112の検出出力に応動する適性通電率演算手段703dとなるプログラムを包含している。
上記適正通電率演算手段703dは、上記電気負荷111aに対する目標電流Isに比例し、駆動電源電圧Vbに反比例し、上記温度センサ112によって検出された環境温度Tから推定される上記電気負荷の負荷抵抗Raに比例した通電率αを算出し、上記開閉素子141Bに対する開閉指令出力PWMaの通電指令期間と通電周期との比率を決定するものとなっている。
従って、不帰還型の負荷電流制御方式でありながらも電流制御精度を向上し、その結果として異常兆候や発現異常の検出精度を向上することができる。
【0067】
上記不揮発プログラムメモリ121Bは、更に負荷温度上昇推定手段709dと補正通電率演算手段703bとなるプログラムを包含している。
上記負荷温度上昇推定手段709dは、上記電気負荷111aに対する通電履歴と電気負荷111aの熱時定数に関連して上記電気負荷111aの現在時刻における温度上昇値ΔTaを推定し、推定された温度上昇値ΔTaと上記温度センサ112によって検出された環境温度Tを加算することによって電気負荷111aの現在温度を算定する。
上記補正通電率演算手段703bは、上記負荷温度上昇推定手段709dによって推定された負荷の温度上昇の増大または減少に伴って上記適正通電率演算手段703dにおいて算出される適正通電率の値を増加補正または減少補正する。
従って、通電負荷電流に伴う電気負荷の温度上昇と環境温度と駆動電源電圧を考慮して、目標電流に対する最適な通電率を算出して開閉素子の通電制御を行なったうえで異常判定を行なうことにより、異常兆候や発現異常の検出精度を更に向上することができる。
【0068】
上記不揮発プログラムメモリ121Bは、更に選択切換手段703aと許容誤差幅補正手段703eとなるプログラムを包含している。
上記選択切換手段703aは、運転開始後の所定期間において上記補正通電率演算手段703bを無効とする。
上記許容誤差幅補正手段703eは、上記補正通電率演算手段703bが無効であるときには上記異常判定帯域比較における許容誤差幅を大きく設定し、補正通電率演算手段703bが有効となってからは許容誤差幅が狭くなるように補正する。
従って、不確定な運転休止期間のあとで運転再開されたような場合に、電気負荷の温度上昇が推定できるまでの期間は異常判定許容誤差幅を広げてみだりに異常判定を行なわないようにすることができる。
【0069】
また、上記負荷温度上昇推定手段709dは、上記電気負荷111aに対する通電目標電流Isに対応した設定電圧または上記監視電圧Efaの二乗代表値を少なくとも上記電気負荷111aの熱時定数以上の期間にわたって定期的に格納記憶する先入先出データテーブル610aと、該データテーブル610aに格納された複数データに関する移動平均値を算出し、当該移動平均値に対して温度換算係数を掛ける演算手段とによって、電気負荷の熱時定数を加味した現在時刻における温度上昇値を推定する。
従って、負荷電流の変動があっても、簡易な演算手段によって比較的高精度に通電負荷電流に伴う電気負荷の温度上昇を推定することができる。
【0070】
また、上記不揮発プログラムメモリ121Bは、更に比較目標電圧設定手段704aとなるプログラムを包含している。
そして、上記比較目標電圧設定手段704aは、上記電気負荷111aに対する通電目標電流Isに比例した電圧を入力として動作し、上記電流検出用増幅回路部150aにおける平滑コンデンサ153・157の平滑時定数に相当した応答遅れを持った比較目標電圧Esを発生する手段であり、上記平滑コンデンサ153・157の平滑時定数は上記電気負荷111aのインダクタンスと抵抗値との比率である電流時定数に相当した値となっている。
従って、通電目標電流が変化して負荷電流が変動している過渡期間であっても比較的高精度に異常兆候や発現異常を検出することができる。
【0071】
また、上記電気負荷は、自動車用の多段自動変速機110における変速段切換え用電磁弁に対する電磁弁駆動用の複数の電磁ソレノイド111a・111b・・・111nであって、該電磁ソレノイド111a・111b・・・111nに対する通電目標電流Isは駆動初期電流Idと動作保持電流Ihに対応して大小に変化するものであると共に、上記電磁ソレノイド111a・111b・・・111nの環境温度を検出する温度センサ112は上記自動変速機110の潤滑油温度を検出する油温センサによって代替されるようになっている。
従って、既存の油温センサを活用して不帰還制御方式でありながら高精度な電流制御を行なうことができ、高速応答性が求められる帰還型の電流制御装置に比べて、多数の電磁ソレノイドに対するマイクロプロセッサの制御負担を大幅に軽減することができる。
【0072】
以下、この発明のその他の実施の形態例(変形例)について説明する。
前述したこの発明の実施の形態1あるいは実施の形態2で示された過電流異常検出回路160aは、電気負荷111aの短絡異常、或いは負側配線の天絡異常が発生したときに作用して、開閉素子141A・141Bを緊急遮断してその焼損を防止するものとなっている。
しかし、開閉素子141Aあるいは141Bが緊急遮断されると測定用電圧E0aが低下して、過電流異常検出回路160aの出力が論理「H」となって、開閉素子141Aあるいは141Bが導通復帰することになる。
依然として短絡・天絡状態が持続しておれば再度過電流異常検出回路160aが作動して開閉素子141Aあるいは141Bは遮断され、開閉素子141Aあるいは141Bの断続状態が持続する。
一方、このような異常が発生したときには、やがて図3の駆動停止手段308bや図7の駆動停止手段708bが作用して開閉指令出力PWMaが停止し、負荷電流はゼロになる。
駆動停止手段308bや駆動停止手段708bが一旦動作すると、運転停止して再起動するまではその状態を記憶して駆動停止状態を維持しておくようになっている。
しかし、過電流異常検出回路160aが一旦動作すると、この状態をフリップフロップ回路によって、動作保持してから開閉素子141Aあるいは141Bを緊急遮断するようにしておけば、駆動停止手段308b・708bを併用する必要はない。
【0073】
また、図5で示した実施形態2のように断線異常検出回路170aが付加されておれば、図7で示した発現異常検出手段705を削除することも可能であって、この場合には判定論理信号Diaによって以下の要領で発現異常の発生有無を判定することができる。
まず、断線異常の場合には電気負荷111aの非駆動指令期間(開閉指令出力PWMa=「H」)において判定論理信号Diaの論理レベルが「H」となれば断線異常が発現したと判定される。
次に、短絡・天絡異常の場合には、電気負荷111aの駆動指令期間(開閉指令出力PWMa=「L」)において、判定論理信号Diaの論理レベルが「L」となれば短絡・天絡異常が発現したと判定することができる。
【0074】
一方、発現異常検出手段305あるいは705や駆動停止手段308bあるいは708bが設けられている場合には、二重系設置されている過電流異常検出回路160aを省略することも可能であって、過電流異常検出回路160aを省略した場合には演算増幅器151の駆動電源電圧を制御電源電圧Vccにしておくことによって電圧制限ダイオード159を省略することができる。
この場合、過電流状態が発生しても測定用電圧E0a自体が制御電源電圧Vccの値以上には上昇せず、異常兆候や発現異常の検出状態における演算増幅器151の出力電圧を制御電源電圧Vcc以下の範囲でなるべく大きな値に設定して検出精度を向上することができる。
【0075】
また、図3の工程304aや図7の工程704aにおいて、比較目標電圧Esaが増減変化している過渡期間においては、比較目標電圧Esaと監視電圧Efaとの間に平滑時定数の誤差に基づく乖離が発生する恐れがあるので、比較目標電圧Esaが安定するまでの期間は発現異常検出手段305あるいは705や異常兆候検出手段306あるいは706における第一・第二の許容誤差幅を広げて、みだりに異常判定を行なわないようにすることもできる。
更に、発現異常検出手段305あるいは705や異常兆候検出手段306あるいは706における判定結果をシフトレジスタに格納し、シフトレジスタに順次格納された判定結果の多数決論理によって最終的な判定結果とすることも可能であり、このようなデジタルフィルタ機能を付加することによって監視電圧Efaに含まれる脈動成分による誤判定を回避しながら高精度な異常判定を行なうことができる。
【0076】
この発明の実施の形態1あるいは実施の形態2で示された発現異常検出手段305・705や異常兆候検出手段306・706による異常判定は、制御装置の運転中は常時比較的高頻度に実施されているが、短絡・天絡異常による焼損防止機能を除いた例えば異常兆候検出手段306・706は装置の運転開始時、或いは運転停止の直前等の特定時期において実施して、運転中のマイクロプロセッサの制御負担を軽減することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0077】
この発明は、給電回路の半断線や半短絡状態を検出して異常兆候の有無を判定し、異常報知を行ない、また、異常兆候状態が放置され更に異常状態が高じた場合には発現異常状態であると判定して負荷駆動の停止を行なって安全性を向上することができ、例えば自動車用自動変速機の制御装置に好適な不帰還型負荷電流制御装置の実現に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】実施の形態1に係わる不帰還型負荷電流制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1に係わる不帰還型負荷電流制御装置の動作を説明するためのブロック図である。
【図3】実施の形態1に係わる不帰還型負荷電流制御装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】実施の形態1に係わる不帰還型負荷電流制御装置の動作説明用特性線図である。
【図5】実施の形態2に係わる不帰還型負荷電流制御装置の構成を示すブロック図である。
【図6】実施の形態2に係わる不帰還型負荷電流制御装置の動作を説明するためのブロック図である。
【図7】実施の形態2に係わる不帰還型負荷電流制御装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0079】
100A、100B 不帰還型負荷電流制御装置 101 駆動電源
110 多段自動変速機
111a〜111n 電気負荷(電磁ソレノイド) 112 温度センサ
120A、120B マイクロプロセッサ
121A、121B 不揮発プログラムメモリ 130 制御電源ユニット
131 多チャンネルAD変換器 141A、141B 開閉素子
142 電流検出抵抗 145 転流回路(転流ダイオード)
150a 電流検出用増幅回路部 151 演算増幅器
153、157 平滑用コンデンサ 156 限流抵抗
159 電圧制限ダイオード 160a 過電流異常検出回路
170a 断線異常検出回路 171 レベル変換回路
173 漏洩抵抗
200A、200B 給電制御回路部 206a 適正通電率演算手段(負荷a)
208a、608a 比較目標電圧設定手段(負荷a)
209a、609a 帯域比較判定手段(負荷a)
210a、610a 先入先出データテーブル(負荷a)
220A・220B 給電駆動回路部
302c、703d 適正通電率演算手段 303a、703a 選択切換手段
303b 異常判定補正手段 304a、704a 比較目標電圧設定手段
303e、703e 許容誤差幅補正手段 305、705 発現異常検出手段
306、706 異常兆候検出手段 308a、708a 異常報知指令出力手段
308b、708b 駆動停止手段 309d、709d 負荷温度上昇推定手段
312a 不作動低電流設定手段 606a 補正通電率演算手段(負荷a)
703b 補正通電率演算手段 714 断線異常検出手段
Dia 判定論理信号(負荷a) E0a 測定用電圧(負荷a)
E11 第一の許容誤差幅(運転開始直後)
E12 第二の許容誤差幅(運転開始直後)
E21 第一の許容誤差幅(所定時間後)
E22 第二の許容誤差幅(所定時間後)
Efa 監視電圧(負荷a) Emax 制限閾値
Er 異常報知指令出力 Es 比較目標電圧
Id 駆動初期電流 Ih 動作保持電流
Imin 不作動低電流 Is 電目標電流
PWMa 開閉指令出力(負荷a) Vb 駆動電源電圧
Vcc 制御電源電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動電源と誘導性の電気負荷と開閉素子との直列回路によって構成された給電駆動回路部と、上記電気負荷に対する通電目標電流と駆動電源電圧の値に応動して上記開閉素子の通電期間と通電周期との比率である通電率を制御する給電制御回路部とを備えた不帰還型負荷電流制御装置であって、
上記給電駆動回路部は、更に上記開閉素子と上記駆動電源のグランド回路との間に接続された電流検出抵抗と、上記電流検出抵抗の両端電圧を増幅する演算増幅器と該演算増幅器の入力回路または出力回路の少なくとも一方に設けられ上記電流検出抵抗の両端電圧の平均値に略比例した測定用電圧を得る平滑コンデンサを設けた電流検出用増幅回路部と、上記電気負荷と並列接続され、上記開閉素子が閉路していたときに給電されていた負荷電流が、上記開閉素子が開路したときに還流減衰して負荷電流を平滑化する転流回路とを備え、
上記給電制御回路部は、上記駆動電源から給電されて駆動電源電圧よりも低い値の安定化された制御電源電圧を発生する制御電源ユニットから給電されるマイクロプロセッサと、複数のアナログ信号が入力される多チャンネルAD変換器と、上記マイクロプロセッサと協働し、負荷電流制御プログラムが格納されると共に異常兆候検出手段となるプログラムを包含した不揮発プログラムメモリとを備え、
上記演算増幅器の出力は、上記制御電源電圧以下の値に制限された監視電圧として上記多チャンネルAD変換器を介して上記マイクロプロセッサに入力され、
上記異常兆候検出手段は、上記通電目標電流に対応した比較目標電圧と上記監視電圧との相対誤差が正常値範囲を僅かに逸脱した第一の許容誤差幅の域外であるときに異常報知指令出力を発生し、
上記異常兆候検出手段が異常検出を行なうときの上記測定用電圧は、上記制御電源電圧未満の値に設定されていることを特徴とする不帰還型負荷電流制御装置。
【請求項2】
上記不揮発プログラムメモリは、更に、発現異常検出手段と駆動停止手段となるプログラムを包含し、
上記発現異常検出手段は、上記通電目標電流に対応した比較目標電圧と上記監視電圧との相対誤差が上記第一の許容誤差幅よりも大きな値である第二の許容誤差幅の域外となる過大電流状態または過小電流状態において異常報知指令出力を発生し、
上記駆動停止手段は、上記発現異常検出手段が少なくとも過大電流状態を検出したときに作用して上記開閉素子に対する開閉指令出力を全開指令にすることを特徴とする請求項1に記載の不帰還型負荷電流制御装装置。
【請求項3】
上記不揮発プログラムメモリは、更に不作動低電流設定手段となるプログラムを包含し、
上記不作動低電流設定手段は、上記電気負荷の不作動期間帯において、上記電気負荷が実効動作しないレベルの不作動低電流を上記通電目標電流として所定短期間だけ仮通電することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の不帰還型負荷電流制御装置。
【請求項4】
上記電流検出用増幅回路部の演算増幅器は、上記電気負荷の駆動電源電圧が電源電圧として印加されて動作するものであり、上記演算増幅器の出力である測定用電圧は限流抵抗を介して監視電圧として上記多チャンネルAD変換器の入力端子に印加され、
上記多チャンネルAD変換器の入力端子には上記監視電圧を制御電源電圧レベルに制限する電圧制限ダイオードが接続されていると共に、
上記給電駆動回路部は、更に過電流異常検出回路を備え、
上記過電流異常検出回路は、上記監視電圧が上記電圧制限ダイオードによって制御電圧レベルに制限された以降の状態で更に上記測定用電圧が上昇して所定の制限閾値を超過したときに、上記開閉素子に対する通電指令を停止することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の不帰還型負荷電流制御装置。
【請求項5】
上記給電駆動回路部は、更に断線異常検出回路を備えると共に、上記不揮発プログラムメモリは更に断線異常検出手段となるプログラムを包含し、
上記断線異常検出回路は、上記開閉素子の開路状態において上記電気負荷を介して微小電流が供給される漏洩抵抗と、該漏洩抵抗の印加電圧レベルを二値化して上記マイクロプロセッサに判定論理信号を入力するレベル変換回路とによって構成され、
上記断線異常検出手段は、上記開閉素子の開路指令状態において、上記漏洩抵抗の印加電圧が発生していないときに断線異常判定を行ない、異常報知指令出力を発生することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の不帰還型負荷電流制御装置。
【請求項6】
上記不揮発プログラムメモリは、更に上記電気負荷の環境温度を検出する温度センサの検出出力に応動する適性通電率演算手段となるプログラムを包含し、
上記適正通電率演算手段は、上記電気負荷に対する目標電流に比例し、駆動電源電圧に反比例し、上記温度センサによって検出された環境温度から推定される上記電気負荷の負荷抵抗に比例した通電率を算出し、上記開閉素子に対する開閉指令出力の通電指令期間と通電周期との比率を決定することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の不帰還型負荷電流制御装置。
【請求項7】
上記不揮発プログラムメモリは、更に、負荷温度上昇推定手段と異常判定補正手段となるプログラムを包含し、
上記負荷温度上昇推定手段は、上記電気負荷に対する通電履歴と電気負荷の熱時定数に関連して上記電気負荷の現在時刻における温度上昇値を推定し、推定された温度上昇値と上記温度センサによって検出された環境温度を加算することによって電気負荷の現在温度を算定し、
上記異常判定補正手段は、上記異常兆候検出手段または発現異常検出手段において帯域比較判定が行なわれる比較目標電圧の値を上記負荷温度上昇推定手段によって推定された負荷の温度上昇値に応動して減少させるか、または監視電圧の値を増加させ、
上記適正通電率演算手段は、通電負荷電流に伴う上記電気負荷の温度上昇とは無関係に、駆動電源電圧と電気負荷の環境温度に基づいて通電率を決定することを特徴とする請求項6に記載の不帰還型負荷電流制御装置。
【請求項8】
上記不揮発プログラムメモリは、更に、選択切換手段と許容誤差幅補正手段となるプロ
グラムを包含し、
上記選択切換手段は、運転開始後の所定期間において上記異常判定補正手段を無効とし、
上記許容誤差幅補正手段は、上記異常判定補正手段が無効であるときには上記異常判定帯域比較における許容誤差幅を大きく設定し、異常判定補正手段が有効となってからは許容誤差幅が狭くなるように補正することを特徴とする請求項7に記載の不帰還型負荷電流制御装置。
【請求項9】
上記不揮発プログラムメモリは、更に、負荷温度上昇推定手段と補正通電率演算手段となるプログラムを包含し、
上記負荷温度上昇推定手段は、上記電気負荷に対する通電履歴と電気負荷の熱時定数に関連して上記電気負荷の現在時刻における温度上昇値を推定し、推定された温度上昇値と上記温度センサによって検出された環境温度を加算することによって電気負荷の現在温度を算定し、
上記補正通電率演算手段は、上記負荷温度上昇推定手段によって推定された負荷の温度上昇の増大または減少に伴って上記適正通電率演算手段において算出される適正通電率の値を増加補正または減少補正することを特徴とする請求項6に記載の不帰還型負荷電流制御装置。
【請求項10】
上記不揮発プログラムメモリは、更に、選択切換手段と許容誤差幅補正手段となるプログラムを包含し、
上記選択切換手段は、運転開始後の所定期間において上記補正通電率演算手段を無効とし、
上記許容誤差幅補正手段は、上記補正通電率演算手段が無効であるときには上記異常判定帯域比較における許容誤差幅を大きく設定し、補正通電率演算手段が有効となってからは許容誤差幅が狭くなるように補正することを特徴とする請求項9に記載の不帰還型負荷電流制御装置。
【請求項11】
上記負荷温度上昇推定手段は、上記電気負荷に対する通電目標電流に対応した設定電圧または上記監視電圧の二乗代表値を少なくとも上記電気負荷の熱時定数以上の期間にわたって定期的に格納記憶する先入先出データテーブルと、該データテーブルに格納された複数データに関する移動平均値を算出し、当該移動平均値に対して温度換算係数を掛ける演算手段とによって、電気負荷の熱時定数を加味した現在時刻における温度上昇値を推定することを特徴とする請求項7または請求項9に記載の不帰還型負荷電流制御装置。
【請求項12】
上記不揮発プログラムメモリは、更に比較目標電圧設定手段となるプログラムを包含し、
上記比較目標電圧設定手段は、上記電気負荷に対する通電目標電流に比例した電圧を入力として動作し、上記電流検出用増幅回路部における平滑コンデンサの平滑時定数に相当した応答遅れを持った比較目標電圧を発生し、
上記平滑コンデンサの平滑時定数は、上記電気負荷のインダクタンスと抵抗値との比率である電流時定数に相当した値となっていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の不帰還型負荷電流制御装置。
【請求項13】
上記電気負荷は、自動車用の多段自動変速機における変速段切換え用電磁弁に対する電磁弁駆動用の複数の電磁ソレノイドであって、該電磁ソレノイドに対する通電目標電流は駆動初期電流と動作保持電流に対応して大小に変化するものであると共に、上記電磁ソレノイドの環境温度を検出する温度センサは上記自動変速機の潤滑油温度を検出する油温センサによって代替されるものであることを特徴とする請求項6に記載の不帰還型負荷電流制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−47912(P2007−47912A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−229461(P2005−229461)
【出願日】平成17年8月8日(2005.8.8)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】