説明

中敷及び履物

【課題】 正しい姿勢で歩行又は走行などを行うようサポートする履物を提供する。
【解決手段】 履物の中敷1は、シート部1と支持部材2とで構成される。支持部材2は、立体形状の弾性板であり、その裏面のうち、無加重状態で平面Pに接するのは、後方接地領域212及び前方接地領域214のみであり、これらの間の領域はアーチ状になっている。後方接地領域212及び前方接地領域214は狭い領域であるため、支持部材2は履物の左右方向に不安定となる。装着者が歩行動作によって踵側から支持部材2に加重していくと、支持部材2が撓んで開口前縁部216が接地し、次に、装着者が重心を前方に移動させると、第2前方接地領域218が接地する。さらに装着者が重心を前方に移動させると、支持部材2の外側の加重が抜けて、支持部材2の内側の加重が強くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、履物に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、屈曲性及びクッション性に優れた軟質弾性部と、軟質弾性部よりも曲げ剛性が高い第2弾性部とを有するミッドソール及びカップインソールが開示されている。
【特許文献1】特開2005−296604号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上述した背景からなされたものであり、正しい姿勢で歩行又は走行などを行うようサポートする履物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本発明に係る中敷は、履物の中敷であって、足に当接するシート部と、前記シート部の一部を立体的な形状となるように支持する支持手段とを有し、前記支持手段は、シート部に対して加重されていない無加重状態において、シート部の一部の底面が履物の左右方向に不安定となる形状に支持する。ここで、履物左右方向とは、履物の装着者から見た履物の左右方向である。
【0005】
好適には、前記支持手段は、無加重状態の時に、シート部の一部の底面において、履物の左右方向に少なくとも1つの凸曲面を形成するように支持する。
【0006】
好適には、前記支持手段は、無加重状態の時に、シート部の一部の底面が履物の前後方向にアーチ形状を形成するように支持し、かつ、このアーチ形状の両端において、履物の左右方向の凸曲面を形成するように支持する。ここで、履物の前後方向とは、履物の装着者から見た前後方向であり、前方向がつま先側、後方向が踵側である。
【0007】
好適には、前記支持手段は、立体形状を有する板状の弾性体であり、歩行による重心移動に応じて弾性的に変形して、歩行者のあおり歩行を促すように、シート部の一部の立体形状を変形させる。
【0008】
また、本発明に係る履物は、履物本体と、前記履物本体に挿入された中敷とを有し、前記中敷は、足に当接するシート部と、前記シート部の一部を立体的な形状となるように支持する支持手段とを有し、前記支持手段は、シート部に対して加重されていない無加重状態において、シート部の一部の底面が履物の左右方向に不安定となる形状に支持する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、正しい立ち方、歩行又は走行などをサポートする履物を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
まず、中敷1の全体構成を説明する。
図1は、中敷1の裏面(すなわち、履物の中底と当接する面)を模式的に表す図である。なお、本例では、左足用のものを説明するが、右足用のものは、左右が反転している点を除き、左足用のものと実質的に同一である。
図1に例示するように、中敷1は、シート部100と、支持部材2とで構成されている。シート部100は、可撓性を有するシート状の部材であり、例えば、合成皮革である。シート部100の表面は、装着者の足に当接する面である。
支持部材2は、シート部100よりも曲げ剛性の高い弾性板であり、シート部100の一部を立体的形状となるように支持する。具体的には、支持部材2はシート部100の裏面に貼り付けられており、支持部材2の剛性によってシート部100の一部の立体形状を維持する。支持部材2は、例えば、ポリアセタールコポリマーなどのエンジニアリングプラスチックを成形して作成される。
本例の中敷1を履物本体の中に挿入すると、支持部材2が立体形状を維持した状態で履物の中底に当接する。装着者がこの履物を履いて歩くと、支持部材2が、歩行による重心移動に応じて弾性的に変形して、装着者のあおり歩行を促す。
【0011】
図2は、支持部材2の表面を表す図である。支持部材2の表面とは、シート部100に接着される面である。すなわち、装着者が装着した時の上面である。なお、本図において、図の上方向が装着者(履物)の後ろ方向であり、図の下方向が装着者(履物)の前方向であり、図の右方向が装着者の左方向(すなわち、左足用履物の外側)であり、図の左方向が装着者の右方向(すなわち、左足用履物の内側)である。
図2に例示するように、支持部材2には、開口200が設けられている。開口200には、後述する制振部材3が挿入される。この開口200は、装着者の踵に相当する位置に配置されている。支持部材2の表面は、装着者の踵をホールドするように、開口200から後縁部202に向かってせり上がっている。
また、支持部材2の表面は、履物の前後方向(図の上下方向)で見ると、開口200から前縁部204(支持部材2の前側の縁)まで略アーチ状に緩やかに突出しており、装着者のつちふまずの最前端に相当する領域210でアーチの頂点となる。
また、支持部材2の表面は、履物の左右方向(図の左右方向)で見ると、装着者の足を包み込むように、左縁部206(支持部材2の左側の縁)と右縁部208(支持部材2の右側の縁)との間が略凹曲面となっている。
【0012】
図3は、支持部材2の裏面を表す図である。支持部材2の裏面とは、履物の中底と当接する面である。なお、本図において、図の上方向が装着者(履物)の後ろ方向であり、図の下方向が装着者(履物)の前方向であり、図の左方向が装着者の左方向(すなわち、左足用履物の外側)であり、図の右方向が装着者の右方向(すなわち、左足用履物の内側)である。
図2に例示するように、開口200の最後部近傍に、後方接地領域212が設けられている。後方設置領域212は、支持部材2の後半分において最も高い点となっており、この支持部材2を平面上に置くと、この後方接地領域212のみが平面に接する。支持部材2の裏面は、その後半分において、履物の前後方向から見ても、履物の左右方向から見ても、後方接地領域212を頂点とした凸曲面を有する。
【0013】
開口200の前側の縁である開口前縁部216は、略直線となっており、装着者が踵に加重した時に、支持部材2が撓んで、この開口前縁部216が接地して履物を安定化させる。
【0014】
前縁部204から0.2cm〜1.5cm程度後方には、前方接地領域214が設けられている。前方接地領域214は、支持部材2の前半分において最も高い領域となる。すなわち、この支持部材2を平面上に置くと、この前方接地領域214のみが平面に接する。前方接地領域214と後方設置領域212との間は、略凹曲面となっている。
このように、後方設置領域212及び前方接地領域214は狭い領域であり、かつ、この2つの領域のみが無加重状態で平面上に接地するため、支持部材2は無加重状態において左右方向に不安定となる。
【0015】
また、支持部材裏面の前半分において、左縁部206から1.0cm〜2.0cm程度内側に入った領域には、第2前方接地領域218が設けられている。第2前方接地領域218は、歩行者の歩行動作によって支持部材2が外側に傾くか撓むことによって、接地する領域である。第2前方接地領域218は、履物の前後方向に1.0cm〜4.0cm程度の細長い領域である。
【0016】
図4は、支持部材2を左側(履物の外側)から見た図である。
図4に示すように、支持部材2の裏面のうち、無加重状態で平面Pに接するのは、後方接地領域212及び前方接地領域214のみであり、これらの間の領域はアーチ状になっている。装着者が歩行動作によって踵側から支持部材2に加重していくと、支持部材2が撓んで開口前縁部216が接地する。次に、装着者が重心を前方に移動させると、第2前方接地領域218が接地する。さらに装着者が重心を前方に移動させると、支持部材2の外側への加重が抜けて、支持部材2の内側が強く加重されることになる。
【0017】
図5は、支持部材2の表面を前方から見た図である。
図5に示すように、支持部材2の表面には、開口200を中心とした窪みと、右縁部206と左縁部208との間の凹曲面とが設けられており、この窪みと凹曲面によって装着者の足がホールドされる。この支持部材2は、裏面の形状と加重による撓みによって動くため、これにホールドされている足もその動きに追従することになる。この支持部材2の動き及び変形は、装着者のあおり歩行を促すものである。
【0018】
図6は、制振部材3の斜視図である。
図6に示すように、制振部材3は、開口200の周縁部に接着するための接着領域300と、平面領域302とで構成されている。接着領域300及び平面領域302は、例えば、エラストマー系制振材などによって一体成形される。
このような制振部材3で開口200を塞ぐことによって、装着者が踵をつくときの衝撃を抑えることができる。
【0019】
以上説明したように、本実施形態の中敷1によれば、装着者の足をホールドする空間を安定的に支えるのではなく、不安定にして動かすことにより、装着者の立つ能力、歩行能力、又は走行能力などを高めることが期待できる。
また、中敷1の動きが、正しい歩行の動きを促すため、装着者に対する歩行又は走行の矯正が期待できる。
また、中敷1の不安定感によって、緊張筋線維と相性筋線維とをバランスよく強化することが期待できる。
【0020】
なお、上記実施形態では、シート部100の裏面に支持部材2を貼り付ける形態を説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、支持部材2をシート部100の内部に組み込んでもよい。
また、上記実施形態では、支持手段の一例として、シート部100と一体となる支持部材2を説明したが、これに限定されるものではなく、シート部100の底面を上記のような不安定形状に維持できるものであればどのようなものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】中敷1の裏面を模式的に表す図である。
【図2】支持部材2の表面を表す図である。
【図3】支持部材2の裏面を表す図である。
【図4】支持部材2を左側から見た図である。
【図5】支持部材2の表面を前方から見た図である。
【図6】制振部材3の斜視図である。
【符号の説明】
【0022】
1・・・中敷
100・・・シート部
2・・・支持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
履物の中敷であって、
足に当接するシート部と、
前記シート部の一部を立体的な形状となるように支持する支持手段と
を有し、
前記支持手段は、シート部に対して加重されていない無加重状態において、シート部の一部の底面が履物の左右方向に不安定となる形状に支持する
中敷。
【請求項2】
前記支持手段は、無加重状態の時に、シート部の一部の底面において、履物の左右方向に少なくとも1つの凸曲面を形成するように支持する
請求項1に記載の中敷。
【請求項3】
前記支持手段は、無加重状態の時に、シート部の一部の底面が履物の前後方向にアーチ形状を形成するように支持し、かつ、このアーチ形状の両端において、履物の左右方向の凸曲面を形成するように支持する
請求項2に記載の中敷。
【請求項4】
前記支持手段は、立体形状を有する板状の弾性体であり、歩行による重心移動に応じて弾性的に変形して、歩行者のあおり歩行を促すように、シート部の一部の立体形状を変形させる
請求項1に記載の中敷。
【請求項5】
履物本体と、
前記履物本体に挿入された中敷と
を有し、
前記中敷は、
足に当接するシート部と、
前記シート部の一部を立体的な形状となるように支持する支持手段と
を有し、
前記支持手段は、シート部に対して加重されていない無加重状態において、シート部の一部の底面が履物の左右方向に不安定となる形状に支持する
履物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−63845(P2010−63845A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−235770(P2008−235770)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(508122460)
【Fターム(参考)】