説明

乗用型直播機

【課題】特に鳥等に種籾が食われる可能性が低い地域で使用される乗用型直播機において、構造の簡素化及び低コスト化を図る。
【解決手段】直播装置の支持フレーム48の左右方向の横軸芯77周りに、フロート9を上下揺動自在に支持する。田面に溝を形成しながら肥料を溝に供給する肥料供給部17を、側面視で横軸芯77の近傍に位置するようにフロート9に取り付ける。田面に溝を形成しながら種籾を溝に供給する種籾供給部12を、肥料供給部17よりも前方又は後方に離れたフロート9の部分に取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体の進行に伴って田面に種籾を供給し、田面に種籾を供給すると同時に田面に肥料を供給するように構成された乗用型直播機に関する。
【背景技術】
【0002】
前述のような乗用型直播機としては、特許文献1に開示されているような構造を備えたものがある。特許文献1では、機体の後部に苗植付装置(特許文献1の図16の4)が備えられており、苗植付装置の植付ケース(特許文献1の図11及び図16の15)の後部に、種籾供給部(特許文献1の図11及び図16の64)及び覆土部材(特許文献1の図16の68)が、平行四連リンク機構(特許文献1の図11及び図16の62)により昇降自在に支持されている。苗植付装置のフロート(特許文献1の図16の14)に、肥料供給部(特許文献1の図16の8)が取り付けられている。
【0003】
これにより、機体の進行に伴って種籾供給部により田面に溝が形成され、種籾供給部から溝に種籾が供給されるのであり、種籾供給部により田面に形成された溝に向かって覆土部材により泥が押されて、種籾が田面内に埋められる。機体の進行に伴って肥料供給部により田面に溝が形成され、肥料供給部から溝に肥料が供給される。
【0004】
前述のように、種籾供給部及び覆土部材を平行四連リンク機構により昇降自在に支持するのは、苗植付装置の昇降に関係なく種籾供給部により田面から一定の深さの溝が形成されて、この溝に種籾が供給されるようにする為であり、覆土部材により種籾が安定して田面内に埋められるようにする為である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−315407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のように、田面内に種籾を埋めるのは、田面に種籾を供給した後に、鳥等に種籾が食われないようにする為であると言われている。田面内に種籾が埋められると、種籾が窒息して発芽しない可能性があるので、カルパコーティングされた種籾(カルパ種籾)が使用されことが多い。カルパ種籾とは、水に溶けると酸素を発生する薬剤が外面にコーティングされた種籾であり、田面内に埋められた種籾が窒息しないようにしたものである。
【0007】
前述のように鳥等に種籾が食われる可能性が高い地域では、特許文献1のような乗用型直播機は有効である。しかしながら、鳥等に種籾が食われる可能性が低い地域では、作溝器及び覆土部材が平行四連リンク機構を介して支持される構造である点、カルパ種籾を使用する必要がある点により、乗用型直播機の構造が複雑なものとなり、乗用型直播機の使用が高コストになる傾向にある。
本発明は、特に鳥等に種籾が食われる可能性が低い地域で使用される乗用型直播機において、乗用型直播機の構造の簡素化を図ることを目的としており、乗用型直播機の使用での低コスト化を図ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[I]
(構成)
本発明の第1特徴は、乗用型直播機において次のように構成することにある。
機体の後部に直播装置を備えて、前記直播装置の支持フレームの左右方向の横軸芯周りにフロートを上下揺動自在に支持し、
田面に溝を形成しながら肥料を溝に供給する肥料供給部を、側面視で前記横軸芯の近傍に位置するように前記フロートに取り付け、
田面に溝を形成しながら種籾を溝に供給する種籾供給部を、前記肥料供給部よりも前方又は後方に離れた前記フロートの部分に取り付ける。
【0009】
(作用)
[I]−1
直播装置は特許文献1の苗植付装置と同様にフロートを備えており、機体の進行に伴ってフロートが田面に接地追従するように、直播装置の支持フレームの横軸芯周りにフロートが上下揺動自在に支持されている。
本発明の第1特徴によると、田面に溝を形成しながら種籾を田面の溝に供給する種籾供給部をフロートに取り付けている。前述のように機体の進行に伴ってフロートが横軸芯周りに上下揺動して田面に接地追従していくので、特許文献1のような平行四連リンク機構を使用せずに、種籾供給部をフロートに取り付けても、種籾供給部により支障なく田面に溝が形成されるのであり、種籾供給部から溝に種籾が供給される。これにより、特許文献1のような種籾供給部を昇降自在に支持する平行四連リンク機構が不要になる。
【0010】
[I]−2
田面に浅い溝を形成して、この浅い溝に肥料を供給すると、この後に溝から肥料が流出する可能性があり、この肥料が水田の各部に流出すると、水田の環境保全と言う面から好ましくない。逆に肥料の流出を抑える為に田面に深い溝を形成して、この深い溝に肥料を供給すると、種籾と肥料とが田面の深さ方向で離れてしまい、種籾が肥料を吸収することができず、肥料としての機能を発揮させることができない。これにより、田面から一定の深さの溝(浅すぎず、深すぎない溝)を精度良く形成し、この溝に肥料を供給する必要がある。
【0011】
これに対して鳥等に種籾が食われる可能性が低い地域では、種籾を田面内に埋める必要が少なくなり、田面に比較的浅い溝を形成して、この溝に種籾を供給すればよい。この場合、溝は種籾が流出して他の箇所に移動しないようにする為のものであるので、溝において深さの精度はあまり重要ではない。種籾を田面内に埋める必要が少なくなれば、種籾を田面内に埋める覆土部材を備える必要が無くなるのであり、カルパ種籾を使用する必要も少なくなる。
【0012】
[I]−3
前項[I]−2に記載の状態において、本発明の第1特徴によると、田面に溝を形成しながら肥料を溝に供給する肥料供給部をフロートに取り付けている。この場合、肥料供給部を側面視で横軸芯の近傍に位置するようにフロートに取り付け、種籾供給部を肥料供給部よりも前方又は後方に離れたフロートの部分に取り付けている。
【0013】
一般にフロートの横幅の制限等により、肥料供給部と種籾供給部とを左右方向に並べてフロートに配置することは困難であるため、本発明の第1特徴では、肥料供給部と種籾供給部とを前後方向にフロートに配置している。この場合、機体の進行に伴ってフロートが横軸芯周りに上下揺動して田面に接地追従していく際、フロートにおける横軸芯の近傍の部分は上下変位が小さいものとなる。
これにより、本発明の第1特徴によると、機体の進行に伴ってフロートが横軸芯周りに上下揺動して田面に接地追従しても、肥料供給部はあまり上下動することなく田面から一定の深さの溝を精度良く形成するのであり、肥料供給部から溝に肥料が供給される。
【0014】
本発明の第1特徴によると、肥料供給部に比べて種籾供給部の上下変位は大きくなり、種籾供給部により田面に形成される溝の深さの精度は比較的低くなる可能性がある。
しかしながら、前項[I]−2に記載のように、鳥等に種籾が食われる可能性が低い地域では、種籾が流出して他の箇所に移動しないような程度の溝を種籾供給部により田面に形成すればよく、種籾供給部により深さの精度が比較的低い溝が形成され、種籾供給部から溝に種籾が供給されても、この後の種籾の発芽に支障はない。
【0015】
前述のように種籾供給部の上下変位が大きくなった場合、種籾供給部に泥が滞留しかけても、この泥が上下動で落ちることが期待でき、種籾供給部での泥の詰り防止が期待できる。例えば肥料供給部よりも後方に離れたフロートの部分に種籾供給部を取り付けると、フロートが通過した後の落ち着いた田面を種籾供給部が通過して、田面に溝を形成する。従って、前述のような2点においても、種籾供給部から溝に種籾が安定して供給されるのであり、種籾の発芽への支障が少ないものとなる。
本発明の第1特徴によると、種籾を田面内に埋めることをあまり想定していないので、種籾を田面内に埋める覆土部材を備える必要が無くなるのであり、カルパ種籾を使用する必要も少なくなる。
【0016】
(発明の効果)
本発明の第1特徴によると、種籾供給部をフロートに取り付けることにより、特許文献1のような種籾供給部を昇降自在に支持する平行四連リンク機構が不要になって、乗用型直播機の構造の簡素化及び低コスト化を図ることができた。
この場合、種籾を田面内に埋める覆土部材を備える必要が無いので、この点においても乗用型直播機の構造の簡素化及び低コスト化の面で有利なものとなるのであり、カルパ種籾を使用する必要が少ないことにより、乗用型直播機の使用での低コスト化の面でも有利なものとなる。
【0017】
本発明の第1特徴によると、機体の進行に伴って田面に種籾と肥料とを供給する場合、肥料供給部があまり上下動することなく田面から一定の深さの溝を精度良く形成するようになるので、溝からの肥料の流出が抑えられて、水田の環境保全と言う面で有利なものとなった。
これと同時に、種籾と肥料とが田面の深さ方向で離れてしまうような状態を少なくすることができ、種籾が肥料を適切に吸収することができるようになる点、並びに、種籾供給部から溝に種籾が安定して供給される点により、種籾の発芽率の向上及び苗の成長の促進と言う面で有利なものとなった。
【0018】
[II]
(構成)
本発明の第2特徴は、本発明の第1特徴の乗用型直播機において次のように構成することにある。
前記フロートに支持ブラケットを取り付けて、前記支持ブラケットを介して前記支持フレームの横軸芯周りに前記フロートを上下揺動自在に支持し、
前記種籾供給部を前記支持ブラケットに取り付ける。
【0019】
(作用)
一般にフロートはブロー成型によって合成樹脂により形成されることが多いので、直播装置の支持フレームの左右方向の横軸芯周りにフロートを上下揺動自在に支持する場合、フロートに支持ブラケットを取り付けて、支持ブラケットを介してフロートを上下揺動自在に支持するように構成することが多い。
【0020】
本発明の第2特徴によると、前述のように既存の部材と言ってよい支持ブラケットに種籾供給部を取り付けているので、種籾供給部をフロートに取り付ける為の部材に支持ブラケットを兼用することができる。これにより、種籾供給部をフロートに取り付ける為の専用の部材が不要になる(種籾供給部をフロートに取り付ける為の専用の部材を備えたとしても、小規模の部材でよくなる)。
【0021】
(発明の効果)
本発明の第2特徴によると、種籾供給部をフロートに取り付ける場合、種籾供給部をフロートに取り付ける為の専用の部材が不要になって(種籾供給部をフロートに取り付ける為の専用の部材を備えたとしても、小規模の部材でよくなって)、構造の簡素化及び低コスト化を図ることができた。
【0022】
[III]
(構成)
本発明の第3特徴は、本発明の第1又は第2特徴の乗用型直播機において次のように構成することにある。
前記種籾供給部を、前記肥料供給部の後方から左右方向の一方に配置し、
前記肥料供給部により田面に形成された溝に向かって泥を押す覆土部材を、前記肥料供給部の後方から左右方向における前記種籾供給部とは反対側に位置するように、前記フロートに取り付ける。
【0023】
(作用)
肥料供給部により田面に溝を形成し、肥料供給部から溝に肥料を供給する場合、前項[I]−2,3の記載により、肥料を田面内に埋めることが好ましい。この場合、肥料を田面内に確実に埋める為には、肥料供給部により田面に形成された溝に向かって泥を押す覆土部材を、肥料供給部の後方において左右方向の両側に備えればよい。
【0024】
本発明の第3特徴によると、肥料供給部の後方において左右方向の一方に覆土部材を備え、左右方向の他方に種籾供給部を備えている。機体の進行に伴って種籾供給部が田面に溝を形成する場合に、種籾供給部は泥を左右方向に押し退けながら田面に溝を形成するので、種籾供給部は肥料供給部により田面に形成された溝に向かって泥を押すことになり、種籾供給部は覆土部材と同じような機能を備えることになって、肥料供給部の後方において左右方向の両側に覆土部材を備えた状態と同じような状態が得られる。
これにより、種籾供給部を覆土部材に兼用することができて、肥料供給部の後方において左右方向の両側に覆土部材を備える必要がない。
【0025】
(発明の効果)
本発明の第3特徴によると、肥料供給部により田面に溝を形成し、肥料供給部から溝に肥料を供給して、肥料を田面内に埋めるように構成する場合、種籾供給部を覆土部材に兼用することができ、肥料供給部の後方において左右方向の両側に覆土部材を備える必要がなくなって、構造の簡素化及び低コスト化を図ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】乗用型直播機の全体側面図である。
【図2】乗用型直播機の全体平面図である。
【図3】施肥装置(ホッパー及び繰り出し部)の側面図である。
【図4】直播装置及び整地装置の側面図である。
【図5】施肥装置(ホッパー及び繰り出し部)の背面図である。
【図6】直播装置の背面図である。
【図7】直播装置の繰り出し部の付近の横断平面図である。
【図8】直播装置の種籾作溝器の付近の横断平面図である。
【図9】直播装置の繰り出し部及び第1〜4直播クラッチの概略、施肥装置の繰り出し部及び第1〜4施肥クラッチの概略を示す平面図である。
【図10】センターフロートの付近の側面図である。
【図11】センターフロートの支持構造を示す分解斜視図である。
【図12】サイドフロートの付近の側面図である。
【図13】サイドフロートの付近の側面図である。
【図14】サイドフロートの支持構造を示す側面図である。
【図15】サイドフロートの支持構造を示す分解斜視図である。
【図16】整地装置の背面図である。
【図17】整地装置の左側部分の背面図である。
【図18】整地装置の左側部分の横断平面図である。
【図19】直播装置の繰り出し部及び整地装置に動力を伝達する伝動ケースの付近の横断平面図である。
【図20】整地部材の斜視図である。
【図21】制御装置と各部との連係状態を示す図である。
【図22】発明の実施の第1別形態における整地部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[1]
図1及び図2に示すように、右及び左の前輪1、右及び左の後輪2により支持された機体の後部に、リンク機構3が昇降自在に支持され、リンク機構3を昇降操作する油圧シリンダ4が備えられており、リンク機構3に直播装置5が支持されて、乗用型直播機が構成されている。直播装置5に整地装置37が支持されて、機体と直播装置5との間に整地装置37が備えられており、機体の後部に施肥装置20が支持されている。
【0028】
図1及び図3に示すように、右及び左の機体フレーム28が前後方向に配置されて、縦壁状の右及び左の支持板29が右及び左の機体フレーム28の後部に連結されている。リンク機構3は、1本のトップリンク3a、2本のロアリンク3b、トップリンク3a及びロアリンク3bの後部に亘って接続された縦リンク3cにより構成されている。リンク機構3のトップリンク3a及び油圧シリンダ4が右及び左の支持板29に上部に上下揺動自在に支持され、リンク機構3のロアリンク3bが右及び左の機体フレーム28の後部に上下揺動自在に支持されている。
【0029】
次に、直播装置5の概要について説明する。
図1,2,6に示すように、直播装置5は、種籾を貯留する2条対応の4個のホッパー6、2条対応の4個の繰り出し部7、1個のブロア8が備えられており、2条対応の1個のセンターフロート9、2条対応の2個のサイドフロート10、1条対応の2個のサイドフロート11が左右方向に並べて備えられている。左右方向に所定間隔をおいて配置された8個の種籾作溝器12(種籾供給部に相当)が備えられ、繰り出し部7と種籾作溝器12とに亘ってホース13が接続されている。
【0030】
図1,2,6に示すように、右及び左のマーカー22が直播装置5の右及び左部に備えられており、田面Gに接地して指標を形成する作用姿勢、及び田面Gから上方に離れた格納姿勢(図1,2,6参照)に操作自在に構成されている。右及び左のマーカー22は上下揺動自在に直播装置5に支持されたアーム部22aと、アーム部22aの先端部に自由回転自在に支持された回転体22bとを備えて構成されており、右及び左のマーカー22を作用姿勢及び格納姿勢に操作する電動モータ23が備えられている。
【0031】
[2]
次に、施肥装置20について説明する。
図1,2,3に示すように、右及び左の支持板29に支持フレーム30,33が連結されて、右及び左の支持板29に支持された後部ステップ34(後述する4個のホッパー14の全体の横幅よりも少し大きな横幅(又は略同じ横幅)を備えている)よりも上方に、支持フレーム30,33が位置している。
【0032】
図1,3,5に示すように、支持フレーム30の上端の横軸芯P1周りに、左右方向に向く横フレーム31が回転自在に支持されており、2条単位の4個の繰り出し部15が横フレーム31に連結され、粉粒状の肥料を貯留する4個のホッパー14が繰り出し部15の上部に連結されて、4個のホッパー14が互いに連結されている。横フレーム31に連結されたフレーム35が前方に延出されて、フレーム35によりホッパー14の中間部が支持されており、フレーム35がバックル機構36を介して支持フレーム33に連結されている。これにより、ホッパー14及び繰り出し部15が、機体の後部(運転座席21の後側で後部ステップ34の上側)に備えられている。
【0033】
図1,3,5に示すように、運転座席21の下側で右及び左の支持板29の間にブロア16が備えられており、ブロア16から二股状に延出されたダクト32が繰り出し部15に接続されている。図4,6,8に示すように、センターフロート9に2個の肥料作溝器17(対地作業部に相当)、サイドフロート10に2個の肥料作溝器17(対地作業部に相当)、サイドフロート11に1個の肥料作溝器17(肥料供給部に相当)が備えられている。図2,4,5に示すように、繰り出し部15と肥料作溝器17とに亘って、可撓性を備えたホース18,19が接続されており、ホース18,19を接続する中間パイプ130(硬質樹脂製)が縦フレーム25,26(図4及び図6、後述する[3]参照)に接続されて支持されている。
以上のようにホッパー14、繰り出し部15、ブロア16、ダクト32、肥料作溝器17、ホース18,19等により施肥装置20が構成されている。
【0034】
図3に示すように、繰り出し部15はホッパー14に接続される上側部分15aと、ホース18及びダクト32に接続される下側部分15bの2分割構造に構成されており、繰り出し部15の下側部分15bに対して上側部分15aが、横軸芯P1の付近の横軸芯周りに上方に揺動自在(開閉自在)に接続されて、連結部材15cにより繰り出し部15の上側及び下側部分15a,15bが閉じられて連結されている。
【0035】
図3に示すように、繰り出し部15の連結部材15cを取り外して、バックル機構36を解除することにより(取り外すことにより)、繰り出し部15の下側部分15bを残した状態で、ホッパー14及び繰り出し部15の上側部分15a、横フレーム31及びフレーム35を図3に示す状態から横軸芯P1周りに後方上方に持ち上げることができる。これにより、繰り出し部15の内部のメンテナンス作業や、繰り出し部15の下側部分15b、ダクト32及び後部ステップ34の付近のメンテナンス作業が容易に行える。
【0036】
[3]
次に、直播装置5の全体構造及び支持構造について説明する。
図4,6,7,8に示すように、角パイプ状の左右方向に向く支持フレーム24が備えられて、支持フレーム24の左右中央付近に2本の縦フレーム25が連結され、支持フレーム24の右及び左部に2本の縦フレーム26が連結されており、縦フレーム25,26の上下中間部に亘って左右方向に向く横フレーム27が連結されている。
【0037】
図4,6,7,8に示すように、縦フレーム25,26の上部に亘って左右方向に向く横フレーム38が連結され、縦フレーム26の上部に前方に向く横フレーム39が連結されている。横フレーム39の前部に亘って左右方向に向く横フレーム40が連結されており、横フレーム38,40に亘って前後方向に向く横フレーム41が連結されている。
【0038】
図4,6,8,17に示すように、縦フレーム25の下部に亘って左右方向に向く横フレーム42が連結され、横フレーム42と支持フレーム24とに亘って縦フレーム43が連結されており、ローリング用のボス部44が支持フレーム24及び縦フレーム43を貫通して連結されている。前後方向に向く支持軸(図示せず)がリンク機構3の縦リンク3cの下部に備えられており、ボス部44がリンク機構3の支持軸に回転自在(ローリング自在)に外嵌されている。
【0039】
図4,6,7に示すように、縦フレーム89が横フレーム39に連結されて、前方から上方に向けて延出されている。縦フレーム89に連結されたフック89aが右及び左方(外方)に延出されており、縦フレーム89に連結された接続部89bがホッパー6の前側を左右中央に向けて延出されている。図6及び図7に示すように、右の横フレーム39にアーム39aが連結されて、右方(外方)に延出されている。左の縦フレーム26にアーム26aが連結されて、ブロア8及び電動モータ45の下側を左方(外方)に延出されている。
【0040】
これにより、支持フレーム24等に直播装置5の全体が支持された構造となっており、直播装置5がリンク機構3の支持軸(ボス部44)の前後軸芯P2周りにローリング自在に支持され、リンク機構3により昇降自在に支持されている。直播装置5(ボス部44)をリンク機構3の支持軸から取り外すことができるように構成されており、直播装置5を取り外した場合、支持フレーム24に連結されたボス部24a(図6及び図7参照)にスタンド(図示せず)を取り付けて、直播装置5を自立させることができる。
【0041】
[4]
次に、直播装置5において繰り出し部7及びホッパー6の支持構造について説明する。
図4,6,7に示すように、横フレーム38,40の間に位置するように、繰り出し部7が横フレーム38,40に連結されており、種籾を貯留する4個のホッパー6が繰り出し部7の上部に連結されて、4個のホッパー6が互いに連結されている。この場合、図2に示すように、4個のホッパー6の全体の横幅が、4個のホッパー14の全体の横幅と略同じものとなっており、左右方向において、4個のホッパー6の全体の右及び左端部と、4個のホッパー14の全体の右及び左端部とが略同じ位置に位置している(前後方向から目視して、4個のホッパー6の全体の右及び左端部と、4個のホッパー14の全体の右及び左端部とが略同じ位置に位置している)。
【0042】
図6に示すように、右端の種籾作溝器12と左端の種籾作溝器12との間隔よりも、4個のホッパー6の全体の横幅及び4個のホッパー14の全体の横幅が狭いものとなっている。これについて言い換えると4個のホッパー6,14の全体の右端部が、右端の種籾作溝器12よりも左右中央側に位置しており、4個のホッパー6,14の全体の左端部が、左端の種籾作溝器12よりも左右中央側に位置している。
【0043】
図4,6,7に示すように、左の縦フレーム26にブロア8が連結されて、ブロア8の内部の回転羽根(図示せず)の回転軸芯が機体前後方向に向いた状態となっており、ブロア8を駆動する電動モータ45がブロア8の前部に連結され、下向きの吸気口46aを備えた吸気カバー46がブロア8の後部に連結されている。ブロア8からダクト47が延出されて、ダクト47が繰り出し部7に接続されており、繰り出し部7と種籾作溝器12とに亘ってホース13が接続されている。
【0044】
図6及び図7に示すように、右及び左のマーカー22を格納姿勢に操作した場合、右及び左のマーカー22を縦フレーム89のフック89aに掛けることにより、格納姿勢に保持することができる。
左のマーカー22を縦フレーム89のフック89aに掛けて格納姿勢に保持すると、左のマーカー22(アーム部22a)がブロア8の前側で電動モータ45の左側に位置するのであり、図6に示すように背面視(正面視)において、左のマーカー22(アーム部22a)がブロア8に重複する状態となる。左のマーカー22において、電動モータ23がブロア8及び電動モータ45の下方に位置し、左の縦フレーム26と格納姿勢の左のマーカー22(アーム部22a)との間に位置する状態となる。右のマーカー22において、電動モータ23が右の縦フレーム26と格納姿勢の右のマーカー22(アーム部22a)との間に位置する状態となる。
【0045】
[5]
次に、直播装置5において、センターフロート9及びサイドフロート10,11の支持構造について説明する。
図4,6,7,8に示すように、支持フレーム24の下部に5個の支持フレーム48が連結されて後方に延出されており、支持フレーム48の後端部に連結されたブラケット48aが下方に延出されている。
【0046】
図8,10,11に示すように、センターフロート9はブロー成型によって合成樹脂により形成されており、正面視でU字状の金属製の支持ブラケット82がセンターフロート9の後部に連結されている。支持ピン77が左右方向に向いて、支持フレーム48のブラケット48aと支持ブラケット82とに亘り挿入されて取り付けられている。平面視でクランク状に折り曲げられたアーム79が、支持ピン77(横軸芯に相当)周りに上下揺動自在に支持されて前方に延出されており、センターフロート9の前部に連結された正面視L字状のブラケット9aと、アーム79の前部とがボルト122により連結されている。これにより、センターフロート9及びアーム79が、支持ピン77周りに上下揺動自在に支持されている。
【0047】
図10及び図11に示すように、支持フレーム24においてセンターフロート9の上方に位置する部分に、フレーム49が連結されて後方に延出されており、ポテンショメータで構成された高さセンサー78がフレーム49に取り付けられている。高さセンサー78の検出アーム78aとアーム79の端部とに亘ってロッド80が接続され、高さセンサー78の検出アーム78aを下方に付勢するバネ81が取り付けられており、バネ81によりセンターフロート9の前部が下方に付勢されている。
【0048】
図8及び図15に示すように、サイドフロート10,11はブロー成型によって合成樹脂により形成されており、正面視でU字状の金属製の支持ブラケット83がサイドフロート10,11の後部に連結されている。図12,13,14,15に示すように、支持ピン77が左右方向に向いて、支持フレーム48のブラケット48aと支持ブラケット83とに亘り挿入されて取り付けられている。支持ブラケット83からアーム83aが上方に延出され、アーム83aの端部に切り欠き部83bが形成されており、支持フレーム48の支持ブラケット48aに連結されたピン48bが、支持ブラケット83の切り欠き部83bに入り込んでいる。
これにより、図12,13,14に示すように、サイドフロート10,11が支持ピン77周りに上下揺動自在に支持されているのであり、サイドフロート10,11の上下揺動範囲が支持ブラケット83の切り欠き部83bの範囲に規制される。
【0049】
[6]
次に、種籾及び肥料作溝器12,17について説明する。
図8,10〜13に示すように、側面視で三角形状、平面視で先細り状(クサビ状)の溝切り部材84が、センターフロート9(サイドフロート10,11)の左右中央側(支持ブラケット83に近い部分)に連結されて、センターフロート9(サイドフロート10,11)の底面から下方に突出している。
【0050】
図8,10〜13に示すように、平面視U字状に形成された肥料作溝器17が溝切り部材84の後部に連結されており、ゴム製でジャバラの筒状の接続部材85が肥料作溝器17の上部に取り付けられて、ホース19が接続部材85に挿入されている。溝切り部材84の後部の横幅と肥料作溝器17の横幅とが略同じ横幅となっており、溝切り部材84の後部の下端部と肥料作溝器17の下端部とが略同じ位置に位置している。図10,12,13に示すように側面視において、肥料作溝器17が支持ピン77に重複する位置(支持ピン77の近傍の位置)に配置されている。
【0051】
図8,10〜13に示すように、アングル材の支持フレーム86が支持ブラケット83の後部に連結されて、支持フレーム86が肥料作溝器17及び溝切り部材84を越えてセンターフロート9(サイドフロート10,11)の外側に延出されている。側面視で三角形状、平面視で先細り状(クサビ状)の溝切り部材87が、支持フレーム86の右及び左端部に連結されている。平面視U字状に形成された種籾作溝器12が溝切り部材87の後部に連結されており、ゴム製でジャバラの筒状の接続部材85が種籾作溝器12の上部に取り付けられて、ホース13が接続部材85に挿入されている。
【0052】
図7,10,12,13に示すように、丸棒状の支持フレーム135が支持フレーム86に上下向きに連結され、支持フレーム136が支持フレーム135の上端に前後向きに連結されている。支持フレーム136の前端部が円弧状に形成されて、支持フレーム136の前端部により接続部材85(肥料作溝器17)の上部及びホース19の下部が保持されており、支持フレーム136の後端部が円弧状に形成されて、支持フレーム136の後端部により接続部材85(種籾作溝器12)の上部及びホース13の下部が保持されている。
【0053】
これによって、図8,10〜13に示すように、種籾作溝器12が支持フレーム86を介して、肥料作溝器17の後方に離れたセンターフロート9(サイドフロート10,11)の部分に取り付けられた状態となっており、種籾作溝器12が肥料作溝器17の後方からセンターフロート9(サイドフロート10,11)の外側(左右方向の一方)に配置された状態となっている。
【0054】
図8,10〜13に示すように、種籾作溝器12の横幅と肥料作溝器17の横幅とが略同じ横幅となっており、種籾作溝器12の横幅よりも溝切り部材87の後部の横幅が大きな横幅となっている。種籾作溝器12の下端部と溝切り部材87の後部の下端部とがセンターフロート9(サイドフロート10,11)の底面よりも少し下方に位置し、溝切り部材87の後部の下端部が種籾作溝器12の下端部よりも少し下方に位置しており、溝切り部材84の後部の下端部と肥料作溝器17の下端部とが、溝切り部材87の後部の下端部よりも下方に位置している。これにより、種籾作溝器12の下端部が田面Gに突入する深さが比較的浅い状態となっている。
【0055】
図8,10〜13に示すように、肥料作溝器17からセンターフロート9(サイドフロート10,11)の左右中央側(支持ブラケット83に近い部分)に、覆土部材88が連結されている。覆土部材88は板材を折り曲げて構成されており、センターフロート9(サイドフロート10,11)から右及び左の斜め後方に延出されて、覆土部材88の先端部が肥料作溝器17の後方に位置している。これにより、図8に示すように、覆土部材88が肥料作溝器17の後方から左右方向における種籾作溝器12とは反対側に位置する状態となっている。
【0056】
図8,10〜13に示すように、機体の進行に伴って、肥料作溝器17が田面Gに溝を形成しながら、肥料作溝器17から溝に肥料が供給されるのであり、種籾作溝器12が田面Gに比較的浅い溝を形成しながら、種籾作溝器12から比較的浅い溝に種籾が供給される(表面播き状態)。機体の進行に伴って、肥料作溝器17により田面Gに形成された溝に向かって覆土部材88が泥を押し、肥料作溝器17により田面Gに形成された溝に向かって種籾作溝器12が泥を押すのであり、種籾作溝器12及び覆土部材88により押された泥によって肥料が田面G内に埋められる。
【0057】
図8,10〜13に示すように、種籾作溝器12より田面Gに形成された比較的浅い溝に種籾が供給されるので(表面播き状態となっているので)、播種精度(田面Gからどれだけの深さに種籾を位置させるか)はあまり考慮する必要がなく、田面Gの水の量(水の張り具合)の管理も容易であり、欠粒(田面Gに種籾が供給されていない部分)も容易に発見することができる。これにより、各種の作業条件(種籾の種類や田面Gの状態等)に適応することができるのであり、田面Gに肥料を供給することにより、種籾の発芽率の向上及び苗の成長の促進を図ることができる。
【0058】
[7]
次に、直播装置5(繰り出し部7)及び施肥装置20(繰り出し部15)への伝動構造について説明する。
図1に示すように、機体の前部に搭載されたエンジン50の動力が伝動ベルト(図示せず)を介して、機体の前部の静油圧式無段変速装置(図示せず)及びミッションケース51に伝達され、ミッションケース51の副変速装置(図示せず)から右及び左の前輪1に伝達される。ミッションケース51の副変速装置(図示せず)の動力が伝動軸52を介して右及び左の後輪2に伝達される。
【0059】
図1及び図21に示すように、ミッションケース51の副変速装置(図示せず)の動力が第1作業クラッチ53及び伝動軸55を介して繰り出し部7に伝達されており、ミッションケース51の副変速装置(図示せず)の動力が、第2作業クラッチ54、伝動軸56及びロッド70を介して繰り出し部15に伝達されている。第1及び第2作業クラッチ53,54を伝動及び遮断状態に操作する電動モータ57が備えられている。
【0060】
図4,8,17,19に示すように、支持フレーム24の左右中央部に縦フレーム58が連結され、縦フレーム43,58に亘って前後方向に向くボス部59が連結されて、ボス部59に入力軸60が支持されており、伝動軸55が自在継手61を介して入力軸60に接続されている。ボス部59に伝動ケース62が連結され、伝動ケース62に伝動軸63が支持されており、入力軸60のベベルギヤ60aと伝動軸63のベベルギヤ63aとが咬合している。
【0061】
図6及び図9に示すように、直播装置5において、繰り出し部7の各々に繰り出しロール64が内装されており、1本の駆動軸65が繰り出し部7に亘って回転自在に支持されている。駆動軸65と繰り出し部7の繰り出しロール64とを伝動及び遮断状態に操作して、繰り出し部7(繰り出しロール64)を作動及び停止操作する第1,2,3,4直播クラッチ66a,66b,66c,66dが繰り出し部7の各々に備えられており、第1〜4直播クラッチ66a〜66dがバネ68により伝動状態に付勢されている。
【0062】
図17及び図19に示すように、伝動軸63の端部に偏芯したピン63bが固定され、図6及び図9に示すように、駆動軸65にワンウェイクラッチ69が外嵌されており、伝動軸63のピン63bとワンウェイクラッチ69のアーム69aとに亘ってロッド70が接続されている。
これにより、伝動軸63の回転運動によるロッド70の往復運動が、ワンウェイクラッチ69により回転運動に変換されて、駆動軸65が間欠的に回転駆動される。第1〜4直播クラッチ66a〜66dを介して繰り出し部7の繰り出しロール64が間欠的に回転駆動され、ホッパー6の種籾が繰り出し部7から所定量ずつ繰り出される。ブロア8からの高圧の風がダクト47を通ってホース13に供給されており、高圧の風により種籾がホース13を通って種籾作溝器12に供給され、種籾作溝器12により田面Gに形成された溝に種籾が供給される。
【0063】
図5及び図9に示すように、施肥装置20において、繰り出し部15の各々に繰り出しロール64が内装されており、1本の駆動軸65が繰り出し部15に亘って回転自在に支持されている。駆動軸65と繰り出し部15の繰り出しロール64とを伝動及び遮断状態に操作して、繰り出し部15(繰り出しロール64)を作動及び停止操作する第1,2,3,4施肥クラッチ67a,67b,67c,67dが繰り出し部15の各々に備えられており、第1〜4施肥クラッチ67a〜67dがバネ68により伝動状態に付勢されている。
【0064】
図3,5,9に示すように、伝動軸56の端部にアーム56aが固定され、駆動軸65にワンウェイクラッチ69が外嵌されており、伝動軸56のアーム56aとワンウェイクラッチ69のアーム69aとに亘ってロッド70が接続されている。
これにより、伝動軸56の回転運動によるロッド70の往復運動が、ワンウェイクラッチ69により回転運動に変換されて、駆動軸65が間欠的に回転駆動される。第1〜4施肥クラッチ67a〜67dを介して繰り出し部15の繰り出しロール64が間欠的に回転駆動され、ホッパー14の肥料が繰り出し部15から所定量ずつ繰り出される。ブロア16からの高圧の風がダクト32を通ってホース18,19に供給されており、高圧の風により肥料がホース18,19を通って肥料作溝器17に供給され、肥料作溝器17により田面Gに形成された溝に肥料が供給される。
【0065】
[8]
次に、第1〜4直播クラッチ66a〜66d及び第1〜4施肥クラッチ67a〜67dの操作系について説明する。
図6及び図9に示すように、直播装置5において、駆動軸65と平行に繰り出し部7に亘って操作軸71が回転自在に支持されており、操作軸71において第1〜4直播クラッチ66a〜66dに対向する部分に、第1,2,3,4カム部材71a,71b,71c,71dが所定角度ずつ位相をずらして固定されている。操作軸71を回転駆動する電動モータ72が操作軸71の一端に備えられて、操作軸71の位相を検出するポテンショメータ73が操作軸71の他端に備えられている。
【0066】
図5及び図9に示すように、施肥装置20において、駆動軸65と平行に繰り出し部15に亘って操作軸71が回転自在に支持されており、操作軸71において第1〜4施肥クラッチ67a〜67dに対向する部分に、第1,2,3,4カム部材71a,71b,71c,71dが所定角度ずつ位相をずらして固定されている。操作軸71を回転駆動する電動モータ72が操作軸71の一端に備えられて、操作軸71の位相を検出するポテンショメータ73が操作軸71の他端に備えられている。
【0067】
図1及び図21に示すように、右及び左の前輪1を操向操作する操縦ハンドル74の下側に、第1,2,3,4停止スイッチ75a,75b,75c,75dが右側から順に左方に配置されている。第1〜4停止スイッチ75a〜75dはプッシュオン・プッシュオフ型式の押しボタン式に構成されて、第1〜4停止スイッチ75a〜75dにランプ(図示せず)が内装されており、第1〜4停止スイッチ75a〜75dの操作位置が制御装置100に入力されている。
【0068】
図21に示すように、制御装置100は後述する[9]に記載のように第1〜4停止スイッチ75a〜75dの操作に基づいて、電動モータ72を操作するのであり、ポテンショメータ73の検出信号が制御装置100に入力されている。これにより、第1〜4直播クラッチ66a〜66d及び第1〜4施肥クラッチ67a〜67dが遮断状態に操作されて、遮断状態に操作された第1〜4直播クラッチ66a〜66dに対応する繰り出し部7(繰り出しロール64)が停止し、遮断状態に操作された第1〜4施肥クラッチ67a〜67dに対応する繰り出し部15(繰り出しロール64)が停止する。
【0069】
[9]
次に、第1〜4停止スイッチ75a〜75dによる第1〜4直播クラッチ66a〜66d及び第1〜4施肥クラッチ67a〜67dの操作について説明する。
図9及び図21に示すように、第1〜4停止スイッチ75a〜75dを押し操作していない状態(第1〜4停止スイッチ75a〜75dを作動位置に操作した状態)で、第1〜4停止スイッチ75a〜75dのランプが消灯している(全条作動状態)。全条作動状態において、操作軸71の第1〜4カム部材71a〜71dが第1〜4直播クラッチ66a〜66d及び第1〜4施肥クラッチ67a〜67dから離れて、第1〜4直播クラッチ66a〜66d及び第1〜4施肥クラッチ67a〜67dが伝動状態に操作されている。
【0070】
図9及び図21に示すように、全条作動状態において第1停止スイッチ75aを押し操作して停止位置に操作すると、第1停止スイッチ75aのランプが点灯する。これにより電動モータ72により操作軸71が所定角度だけ回転操作されて、操作軸71の第1カム部材71aにより第1直播及び施肥クラッチ66a,67aが遮断状態に操作される。
【0071】
図9及び図21に示すように、第1停止スイッチ75aを押し操作して停止位置に操作した状態において、第2停止スイッチ75bを押し操作して停止位置に操作すると、第2停止スイッチ75bのランプが点灯する。これにより、電動モータ72により操作軸71がさらに所定角度だけ回転駆動されて、操作軸71の第2カム部材71bにより第2直播及び施肥クラッチ66b,67bが遮断状態に操作される。この場合、操作軸71の第1カム部材71aにより、第1直播及び施肥クラッチ66a,67aは遮断状態に維持されているのであり、図9に示す状態が第1,2停止スイッチ75a,75bを押し操作して停止位置に操作した状態に相当する。
【0072】
図9及び図21に示すように、第1,2停止スイッチ75a,75bを押し操作して停止位置に操作した状態において、第3停止スイッチ75cを押し操作して停止位置に操作すると、第3停止スイッチ75cのランプが点灯する。これにより、電動モータ72により操作軸71がさらに所定角度だけ回転駆動されて、操作軸71の第3カム部材71cにより第3直播及び施肥クラッチ66c,67cが遮断状態に操作される。この場合、操作軸71の第1,2カム部材71a,71bにより第1,2直播及び施肥クラッチ66a,66b,67a,67bが遮断状態に維持されている。
【0073】
図9及び図21に示すように、第1,2,3停止スイッチ75a,75b,75cを押し操作して停止位置に操作した状態において、第4停止スイッチ75dを押し操作して停止位置に操作すると、第4停止スイッチ75dのランプが点灯する。これにより、電動モータ72により操作軸71がさらに所定角度だけ回転駆動されて、操作軸71の第4カム部材71dにより第4直播及び施肥クラッチ66d,67dが遮断状態に操作される。この場合、操作軸71の第1,2,3カム部材71a,71,71cにより第1,2,3直播及び施肥クラッチ66a,66b,66c,67a,67b,67cが遮断状態に維持されている。
前述の状態により、第1〜4直播及び施肥クラッチ66a〜66d,67a〜67dが遮断状態に操作された全条停止状態となる。
【0074】
以上の操作とは逆に、第1〜4停止スイッチ75a〜75dを押し操作していない状態(第1〜4停止スイッチ75a〜75dを作動位置に操作した状態)において、第4停止スイッチ75dを押し操作し、第3停止スイッチ75cを押し操作し、第2停止スイッチ75bを押し操作し、第1停止スイッチ75aを押し操作すると、前述とは逆に第4直播及び施肥クラッチ66d,67dの遮断状態、第4,3直播及び施肥クラッチ66d,66c,67d,67cの遮断状態、第4,3,2直播及び施肥クラッチ66d,66c,66b,67d,67c,67bの遮断状態、全条停止状態が得られる。
【0075】
図21に示すように、第1〜4停止スイッチ75a〜75dとは別に施肥停止スイッチ76が備えられている。施肥停止スイッチ76はプッシュオン・プッシュオフ型式の押しボタン式に構成されて、ランプ(図示せず)が内装されており、施肥停止スイッチ76の操作位置が制御装置100に入力されている。
【0076】
図9及び図21に示すように、施肥停止スイッチ76を押し操作して停止位置に操作すると、施肥停止スイッチ76のランプが点灯する。これにより、第1〜4直播クラッチ66a〜66d及び繰り出し部7(繰り出しロール64)が、施肥停止スイッチ76の停止位置への操作前の状態に残された状態で、全ての第1〜4施肥クラッチ67a〜67dが遮断状態に操作されて、施肥装置20(全ての繰り出し部15(繰り出しロール64))が停止する。次に施肥停止スイッチ76を押し操作して作動位置に操作すると、第1〜4施肥クラッチ67a〜67dが施肥停止スイッチ76の停止位置への操作前の状態に復帰する。
【0077】
[10]
次に、整地装置37の全体構造について説明する。
図4,8,18に示すように、支持フレーム24の左端部に固定されたブラケット24bに支持ケース90がボルト連結されて、支持ケース90に支持ケース91がボルト連結されており、支持ケース91に伝動ケース92が左右方向の横軸芯P3周りに上下揺動自在に支持されている。
【0078】
図8に示すように、支持フレーム24の右端部にブラケット24cが固定されており、支持フレーム24のブラケット24cの左右方向の横軸芯P3周りに、支持アーム93が上下揺動自在に支持されている。図8及び図18に示すように、伝動ケース92及び支持アーム93に亘って、断面四角状の角パイプ状の駆動軸94が回転自在に左右方向に支持されており、駆動軸94に多数の整地部材98及び4個の溝形成部材99が一体回転自在に取り付けられている。
【0079】
図18及び図20に示すように、整地部材98は、断面円状のボス部98bに断面四角状の取付孔98aが備えられて、ボス部98bの外周部にリング状のフランジ部98cが備えられており、複数の凸部を備えた整地部98dがフランジ部98cの外周部に6個備えられて、合成樹脂により一体的に形成されている。整地部材98の取付孔98aに駆動軸94が挿入されて、整地部材98が駆動軸94と一体回転するように取り付けられており、整地部材98においてボス部98bの横幅と整地部98dの横幅が略同じ横幅に設定されている。
【0080】
図18に示すように、溝形成部材99は、所定の間隔を置いて形成された一対の横面部99a、一対の横面部99aの半径方向外側の端部から互いに接近するように半径方向外側の斜めに延出された一対の傾斜面部99b、一対の傾斜面部99bの先端部をつなぐように形成された円弧面部99c(円弧状の断面部)を備えて、合成樹脂により円盤状(ソロバン玉状)に一体的に形成されており、中央に断面四角状の取付孔99dが備えられている。溝形成部材99の取付孔99dに駆動軸94が挿入されて、溝形成部材99が駆動軸94と一体回転するように取り付けられている。
【0081】
図8,16,18に示すように、駆動軸94に整地部材98及び溝形成部材99が取り付けられ、整地部材94の間に円筒状のスペーサ101,102,103が取り付けられている。図18に示すように、溝形成部材99の一対の横面部99aが、所定の間隔を置いて駆動軸94の長手方向に沿って配置されて駆動軸94と直交する状態となっており、溝形成部材99の一対の傾斜面部99bが、溝形成部材99の一対の横面部99aの半径方向外側の端部から互いに接近するように半径方向外側の斜めに延出された状態となっている。
【0082】
図18に示すように、整地部材98のボス部98b及び整地部98dが、溝形成部材99の横面部99aに接している。整地部材98(ボス部98b及び整地部98d)の横幅W1よりも、溝形成部材99の横幅W2(溝形成部材99の一対の横面部99aの間隔)が、大きな横幅に設定されている。整地部材98(整地部98d)の外径D1と、溝形成部材99の横面部99aの外径D2とが略同じ外径に設定されており、整地部材98(整地部98d)の外径D1よりも、溝形成部材99(傾斜面部99b及び円弧面部99c)の外径D3が、大きな外径に設定されている。
【0083】
図18に示すように、伝動ケース92に短い伝動軸104が回転自在に支持されて、駆動軸94が伝動軸104に連結されている。伝動ケース92の外側(図18の紙面左側)において、断面四角状の角パイプ状の短い駆動軸105がボルト106により連結されており、1個の整地部材98が駆動軸105に一体回転自在に取り付けられている。これにより、ボルト106を外すことによって、駆動軸105及び1個の整地部材98を伝動軸104から取り外すことができる。この構造は、図8に示す支持アーム93の外側(図8の紙面右側)においても採用されている。
【0084】
図4,8,16に示すように、伝動ケース92にブラケット92aが連結され、支持アーム93にブラケット93aが連結されて、伝動ケース92及び支持アーム93のブラケット92a,93aに亘って棒状の支持フレーム107が連結されている。金属板の平板状の泥除け部材108が支持フレーム107、伝動ケース92及び支持アーム93のブラケット92a,93aに連結されて、泥除け部材108が整地部材98の後方に位置するように配置されており、泥除け部材108の下端部が整地部材98の回転軌跡の下端部よりも上方に位置している(図4及び図17参照)。
【0085】
図8,16,17に示すように、間隔を開けて隣接する泥除け部材108の間の前方に溝形成部材99が位置するように泥除け部材108が配置されて、泥除け部材108が溝形成部材99の後方に配置されていない状態となっており、間隔を開けて隣接する泥除け部材108の間から溝形成部材99が後方に突出する状態となっている(図4参照)。
【0086】
[11]
次に、整地装置37への伝動構造について説明する。
図17及び図18に示すように、支持ケース90に伝動軸95が支持されて、伝動軸63(図19参照)と伝動軸95とに亘って、伝動軸96が自在継手97(ユニバーサルジョイント)を介して接続されている。図8,17,18,19に示すように、伝動軸96及び自在継手97を覆う円筒状のカバー134が、伝動ケース62及び支持ケース90に亘って取り付けられている。
【0087】
図18に示すように、支持ケース91及び伝動ケース92に亘って伝動軸109が支持されて、伝動軸95,109が円筒状の連結部材110を介して連結されている。伝動軸104にスプロケット104aが連結され、トルクリミッタ111を介して伝動軸109にスプロケット109aが外嵌されており、伝動軸104,109のスプロケット104a,109aに亘って伝動チェーン112が巻回されている。
【0088】
これにより、図17,18,19に示すように、伝動軸63の動力が伝動軸96,95,109、トルクリミッタ111、伝動チェーン112及び伝動軸104を介して駆動軸94に伝達されて、駆動軸94、整地部材98及び溝形成部材99が図4の紙面反時計方向に高速で回転駆動される。
【0089】
図18に示すように、トルクリミッタ111は、伝動軸109にスプライン構造により一体回転及びスライド自在な第1咬合部111a、伝動軸109に相対回転自在に外嵌されて伝動軸109のスプロケット109aが連結された第2咬合部111b、第1咬合部111aを第2咬合部111bに付勢するバネ111cを備えて構成されている。これにより、通常の状態ではバネ111cの付勢力により第1及び第2咬合部111a,111bが咬合した状態で、伝動軸109の動力が伝動軸109のスプロケット109aに伝達される。整地装置37に大きな負荷が掛かった場合、バネ111cに抗して第1咬合部111aが第2咬合部111bから離れて、伝動軸109の動力がトルクリミッタ111において遮断される。
【0090】
[12]
次に、整地装置37の昇降構造について説明する。
図4,16,21に示すように、支持フレーム24においてリンク機構3の左側に隣接する部分に支持板113が連結されて、支持板113の左右方向の横軸芯P4周りに、扇型の昇降ギヤ114が上下揺動自在に支持されている。ボス部115が駆動軸94に相対回転自在に外嵌されて、ボス部115のアーム115aが昇降ギヤ114に接続されている。
【0091】
図4,16,21に示すように、支持板113にギヤ機構116が連結されて、ギヤ機構116のピニオンギヤ116aが昇降ギヤ114に咬合しており、ギヤ機構116を駆動する電動モータ117がギヤ機構116に連結されている。電動モータ117によりギヤ機構116のピニオンギヤ116aを駆動して、昇降ギヤ114を上下に揺動駆動することにより、整地装置37を横軸芯P3周りに昇降駆動することができる。左の縦フレーム26のアーム26aと支持フレーム107とに亘って、並びに、右の横フレーム39のアーム39aと支持フレーム107とに亘って、整地装置37を上方に付勢するバネ119が接続されており、電動モータ117による整地装置37の上昇駆動を助けている。
【0092】
図4,16,21、後述する[18]に記載のように、制御装置100により電動モータ117が操作される。支持板113に対する昇降ギヤ114の角度を検出するポテンショメータ118が支持板113に取り付けられて、ポテンショメータ118の検出値が制御装置100に入力されており、ポテンショメータ118の検出値により、直播装置5に対する整地装置37の高さを検出することができる。
【0093】
[13]
次に、整地装置37と各部との位置関係について説明する。
図8に示すように、右及び左の後輪2に後方にスペーサ102が位置し、右及び左の後輪2、スペーサ102の後方にサイドフロート10が位置しており、右及び左の後輪2の後方から左右方向に離れた位置に、溝形成部材99が位置している。右及び左の後輪2の間に2個の溝形成部材99が位置し、右の後輪2の外側(図8の紙面右側)に1個の溝形成部材99が位置しており、左の後輪2の外側(図8の紙面左側)に1個の溝形成部材99が位置している。
【0094】
図8に示すように、右及び左の後輪2の間の溝形成部材99の後方に、センターフロート9とサイドフロート10との間が位置しており、右及び左の後輪2の外側の溝形成部材99の後方に、サイドフロート10,11の間が位置している。
これについて言い換えると、溝形成部材99の後方に種籾作溝器12及び肥料作溝器17が位置しておらず、隣接する種籾作溝器12の間の前方に、右及び左の後輪2の間の溝形成部材99が位置しており、隣接する種籾作溝器12と肥料作溝器17(種籾作溝器12)の間の前方に、右及び左の後輪2の外側の溝形成部材99が位置している。
【0095】
図8に示すように、右及び左の後輪2の間の溝形成部材99と、センターフロート9とサイドフロート10との間とにおいて、溝形成部材99の横幅W2(溝形成部材99の一対の横面部99aの間隔)(図18参照)よりも、センターフロート9とサイドフロート10との間隔W3が、少し大きな間隔に設定されている。右及び左の後輪2の外側の溝形成部材99において、溝形成部材99の横幅W2(溝形成部材99の一対の横面部99aの間隔)(図18参照)よりも、サイドフロート10,11の間隔W4が、少し狭い間隔に設定されている。
【0096】
図8及び図16に示すように、スペーサ101の後方において、隣接する泥除け部材108の間が位置しており、スペーサ101及び隣接する泥除け部材108の間の後方にセンターフロート9が位置している。支持フレーム107の中央部107aが下方に折り曲げられて、支持フレーム107の他の部分よりも、支持フレーム107の中央部107aが低い位置に設定されている。
【0097】
これによって、図8及び図16に示すように、伝動軸55、自在継手61及び入力軸60が、スペーサ101の上方、支持フレーム107の中央部107aの上方に位置している。従って、後述する[16][17]に記載のように、直播装置5が上限位置に上昇しても、伝動軸55、自在継手61及び入力軸60が、スペーサ101、支持フレーム107の中央部107aに接触することがない。
【0098】
[14]
次に、直播装置5の自動昇降制御手段120について説明する。
図21に示すように、自動昇降制御手段120が制御装置100に備えられており、高さセンサー78(図10及び図11参照)の検出値が制御装置100に入力されている。機体の進行に伴ってセンターフロート9が田面Gに接地追従するのであり、高さセンサー78の検出値により直播装置5に対するセンターフロート9の高さを検出することによって、田面G(センターフロート9)から直播装置5までの高さを検出することができる。
【0099】
図21に示すように、油圧シリンダ4に作動油を給排操作する制御弁121が備えられており、制御装置100により制御弁121が操作される。制御弁121により油圧シリンダ4に作動油が供給されると、油圧シリンダ4が収縮作動して直播装置5が上昇し、制御弁121により油圧シリンダ4から作動油が排出されると、油圧シリンダ4が伸長作動して直播装置5が下降する。
【0100】
図21に示すように、直播装置5に対するセンターフロート9の高さ(田面G(センターフロート9)から直播装置5までの高さ)に基づいて、直播装置5が田面Gから設定高さに維持されるように(高さセンサー78の検出値(高さセンサー78とセンターフロート9との上下間隔)が設定値H1に維持されるように)、制御弁121が操作され、油圧シリンダ4が伸縮作動して、直播装置5が自動的に昇降する(以上、自動昇降制御手段120の作動状態)。
【0101】
図10及び図11に示すように、アーム79に沿って平行(水平)に、3個の連結孔79aが形成されており、センターフロート9のブラケット9aに沿って斜めに、3個の連結孔9bが形成されている(後側の連結孔9bほど高い位置に位置している)。これにより、センターフロート9及びアーム79の中央の連結孔9b,79aを使用して、ボルト122によりセンターフロート9のブラケット9aとアーム79と連結すると、アーム79に対してセンターフロート9が平行な姿勢で連結される。
【0102】
図10及び図11に示すように、センターフロート9及びアーム79の前側の連結孔9b,79aを使用して、ボルト122によりセンターフロート9のブラケット9aとアーム79と連結すると、アーム79に対してセンターフロート9が少し前上がり姿勢で連結される。これにより、田面Gへのセンターフロート9の接地面積が小さくなり、センターフロート9の田面Gへの接地追従感度が鈍感になる(自動昇降制御手段121の制御感度が鈍感になる)。この状態は、田面Gの水が比較的少なく、田面Gの泥が比較的硬い状態に対して適している。
【0103】
図10及び図11に示すように、センターフロート9及びアーム79の後側の連結孔9b,79aを使用して、ボルト122によりセンターフロート9のブラケット9aとアーム79と連結すると、アーム79に対してセンターフロート9が少し前下がり姿勢で連結される。これにより、田面Gへのセンターフロート9の接地面積が大きくなり、センターフロート9の田面Gへの接地追従感度が敏感になる(自動昇降制御手段121の制御感度が敏感になる)。この状態は、田面Gの水が比較的多く、田面Gの泥が比較的軟らかい状態に対して適している。
【0104】
[15]
次に、直播装置5のローリング制御手段126について説明する。
図21に示すように、ローリング制御手段126が制御装置100に備えられている。図19及び図21に示すように、支持フレーム24において、縦フレーム43及びボス部44,59の近傍部分に傾斜センサー127が取り付けられて、傾斜センサー127の検出値が制御装置100に入力されており、傾斜センサー127により水平面に対する直播装置5(支持フレーム24)の左右方向の傾斜角度が検出される。
【0105】
図4及び図7に示すように、リンク機構3の縦リンク3cの上部にローリング機構128が取り付けられている。ローリング機構128は、電動モータ128aと、電動モータ128aにより押し引き駆動されるワイヤ128bとを備えて構成されており、縦フレーム89の接続部89bとローリング機構128のワイヤ128bとに亘って、バネ129が接続されている。
【0106】
これにより、ローリング機構128の電動モータ128aによりワイヤ128bが押し引き駆動されることによって、バネ129を介して直播装置5及び整地装置37が前後軸芯P2周りにローリングするのであり、直播装置5及び整地装置37が水平となるように傾斜センサー127の検出値に基づいて、制御装置100がローリング機構128の電動モータ128aを操作する(ローリング制御手段126の作動状態)。
【0107】
[16]
次に、昇降レバー123について説明する。
図1,2,21に示すように、運転座席21の右横側に昇降レバー123が備えられ、昇降レバー123は自動位置、上昇位置、中立位置、下降位置及び作業位置に操作及び保持自在に構成されており、昇降レバー123の操作位置が制御装置100に入力されている。機体に対するリンク機構3の上下角度を検出する角度センサー124が備えられて、角度センサー124の検出値が制御装置100に入力されており、機体に対するリンク機構3の上下角度を検出することによって、機体に対する直播装置5の高さを検出することができる。
【0108】
図21に示すように、昇降レバー123を上昇位置、中立位置、下降位置及び作業位置に操作した状態(昇降レバー123を自動位置に操作していない状態)において、以下の説明のように制御装置100により、制御弁121及びローリング機構128の電動モータ128a、電動モータ23,57が操作されて、油圧シリンダ4及びローリング機構128、第1及び第2作業クラッチ53,54、右及び左のマーカー22が操作される。この場合、後述する[17]に記載の操作レバー125の上昇位置U及び下降位置Dの機能は作動せず、操作レバー125の右及び左マーカー位置R,Lの機能だけが作動する。
【0109】
図21に示すように、昇降レバー123を上昇位置に操作すると、自動昇降制御手段120及びローリング制御手段126が停止し、第1及び第2作業クラッチ53,54が遮断状態に操作され(直播装置5及び施肥装置20、整地装置37の停止状態)、右及び左のマーカー22が格納姿勢に操作されて、油圧シリンダ4が収縮作動して直播装置5が上昇する。昇降レバー123を上昇位置に操作した状態で、直播装置5が上限位置に達したことが角度センサー124により検出されると、油圧シリンダ4が自動的に停止する。
【0110】
図21に示すように、昇降レバー123を下降位置に操作すると、自動昇降制御手段120及びローリング制御手段126が停止し、第1及び第2作業クラッチ53,54が遮断状態に操作され(直播装置5及び施肥装置20、整地装置37の停止状態)、右及び左のマーカー22が格納姿勢に操作された状態で、油圧シリンダ4が伸長作動して直播装置5が下降する。センターフロート9が田面Gに接地すると自動昇降制御手段120が作動して、直播装置5が田面Gに接地して停止した状態となる(直播装置5が田面Gから設定高さに維持されるように(高さセンサー78の検出値(高さセンサー78とセンターフロート9との上下間隔)が設定値H1に維持されるように)、直播装置5が自動的に昇降する状態)。
【0111】
図21に示すように、昇降レバー123を中立位置に操作すると、自動昇降制御手段120及びローリング制御手段126が停止し、第1及び第2作業クラッチ53,54が遮断状態に操作され(直播装置5及び施肥装置20、整地装置37の停止状態)、右及び左のマーカー22が格納姿勢に操作された状態で、油圧シリンダ4が停止する。このように昇降レバー123を上昇位置、中立位置及び下降位置に操作することによって、直播装置5を任意の高さに上昇及び下降させて停止させることができる。
【0112】
図21に示すように、昇降レバー123を作業位置に操作すると、右及び左のマーカー22が格納姿勢に操作された状態で、自動昇降制御手段120及びローリング制御手段126が作動し、第1及び第2作業クラッチ53,54が伝動状態に操作される。
これにより、前項[7]に記載のように、直播装置5(繰り出し部7)及び施肥装置20(繰り出し部15)に動力が伝達されて、種籾及び肥料作溝器12,17により田面Gに形成された溝に種籾及び肥料が供給されるのであり、前項[11]に記載のように、整地装置37に動力が伝達されて、駆動軸94、整地部材98及び溝形成部材99が図4の紙面反時計方向に高速で回転駆動される。
【0113】
[17]
次に、操作レバー125について説明する。
図1,2,21に示すように、操縦ハンドル74の下側の右横側に操作レバー125が備えられて、操作レバー125が右の横外方に延出されている。操作レバー125は中立位置Nから上方の上昇位置U、下方の下降位置D、後方の右マーカー位置R及び前方の左マーカー位置Lの十字方向に操作自在に構成されて、中立位置Nに付勢されており、操作レバー125の操作位置が制御装置100に入力されている。
【0114】
昇降レバー123を自動位置に操作した状態において、以下の説明ように、操作レバー125の操作に基づいて、制御装置100により制御弁121及びローリング機構128の電動モータ128a、電動モータ23,57が操作されて、油圧シリンダ4及びローリング機構128、第1及び第2作業クラッチ53,54、右及び左のマーカー22が操作される。
【0115】
図21に示すように、操作レバー125上昇位置Uに操作すると(上昇位置Uに操作して中立位置Nに操作すると)、第1及び第2作業クラッチ53,54が遮断状態に操作され(直播装置5及び施肥装置20、整地装置37の停止状態)、自動昇降制御手段120及びローリング制御手段126が停止し、油圧シリンダ4が収縮作動して直播装置5が上昇し、右及び左のマーカー22が格納姿勢に操作される。直播装置5が上限位置に達したことが角度センサー124により検出されると、油圧シリンダ4が自動的に停止する。
【0116】
図21に示すように、操作レバー125を下降位置Dに操作すると(下降位置Dに操作して中立位置Nに操作すると)、自動昇降制御手段120及びローリング制御手段126が停止し、第1及び第2作業クラッチ53,54が遮断状態に操作され(直播装置5及び施肥装置20、整地装置37の停止状態)、右及び左のマーカー22が格納姿勢に操作された状態で、油圧シリンダ4が伸長作動して直播装置5が下降する。
センターフロート9が田面Gに接地すると、自動昇降制御手段120及びローリング制御手段126が作動して、直播装置5が田面Gに接地して停止した状態となる(直播装置5が田面Gから設定高さに維持されるように(高さセンサー78の検出値(高さセンサー78とセンターフロート9との上下間隔)が設定値H1に維持されるように)、直播装置5が自動的に昇降する状態)。
【0117】
前述のように、操作レバー125を下降位置Dに操作した後(下降位置Dに操作して中立位置Nに操作した後)、操作レバー125を再び下降位置Dに操作すると(再び下降位置Dに操作して中立位置Nに操作すると)、自動昇降制御手段120及びローリング制御手段126が作動した状態で、第1及び第2作業クラッチ53,54が伝動状態に操作される。
【0118】
図21に示すように、角度センサー124により検出される直播装置5の高さが、事前に設定された所定高さよりも低い状態において、以下のような操作が行われる。
右(左)のマーカー22が格納姿勢に操作された状態において、操作レバー125を右マーカー位置R(左マーカー位置L)に第1設定時間(比較的短い時間)以上に亘って操作すると、右(左)のマーカー22が作用姿勢に操作される。
右(左)のマーカー22が作用姿勢に操作された状態において、操作レバー125を右マーカー位置R(左マーカー位置L)に第2設定時間(第1設定時間よりも長い時間)以上に亘って操作すると、右(左)のマーカー22が格納姿勢に操作される。
【0119】
図21に示すように、直播装置5が上昇して、角度センサー124により検出される直播装置5の高さが、前述の事前に設定された所定高さよりも高くなると、作用姿勢の右及び左のマーカー22が格納姿勢に操作される。角度センサー124により検出される直播装置5の高さが、前述の事前に設定された所定高さよりも高い状態では、前述のように操作レバー125を右及び左マーカー位置R,Lに操作しても、これに関係なく右及び左のマーカー22が格納姿勢に維持される。
【0120】
[18]
次に、整地装置37の昇降制御について説明する。
図1及び図21に示すように、操縦ハンドル74の下側に位置する操作パネル131にダイヤル操作式の昇降スイッチ132、及びダイヤル操作式の深さスイッチ133が備えられており、昇降スイッチ132及び深さスイッチ133の操作位置が制御装置100に入力されている。
【0121】
前項[14]及び図21に示すように、自動昇降制御手段120の作動状態において、直播装置5が田面Gから設定高さに維持されている(高さセンサー78の検出値(高さセンサー78とセンターフロート9との上下間隔)が設定値H1に維持されている)。
この状態において、ポテンショメータ118の検出値により直播装置5に対する整地装置37の高さを検出することにより、設定値H1に基づいて田面Gに対する整地装置37の高さが、制御装置100において検出される。昇降スイッチ132の操作位置及び田面Gに対する整地装置37の高さに基づいて、制御装置100により電動モータ117が操作されて、以下のように整地装置37が後述する第1作業位置A1、第2作業位置A2及び格納位置A3に昇降駆動されて維持される。
【0122】
図21に示すように、昇降スイッチ132を第1位置に操作すると、整地装置37が第1作業位置A1に昇降駆動されて第1作業位置A1に維持される。第1作業位置A1において、整地部材98及び溝形成部材99が田面Gに接地する(入り込む)のであり、溝形成部材99の傾斜面部99b及び円弧面部99c(図18参照)の略全てが田面Gに入り込む状態となり、溝形成部材99の横面部99a(図18参照)の半径方向外側の端部が田面Gに接地する状態となる。
【0123】
図21に示すように、整地装置37が第1作業位置A1に維持されている状態において駆動軸94、整地部材98及び溝形成部材99が図21の紙面反時計方向に高速で回転駆動されることにより、整地部材98の位置の田面Gが整地される。溝形成部材99の位置の田面Gに溝が形成されるのであり、溝形成部材99の傾斜面部99b及び円弧面部99cにより田面Gに断面V字状の溝が形成される。
【0124】
図21に示すように、整地装置37が第1作業位置A1に維持されている状態において深さスイッチ133を操作することにより、田面Gに対する整地装置37の高さに基づいて、整地部材98及び溝形成部材99の田面Gへの接地深さ(入り込み深さ)を、深い側及び浅い側に微調節することができる。
【0125】
図21に示すように、昇降スイッチ132を第2位置に操作すると、整地装置37が第2作業位置A2に昇降駆動されて第2作業位置A2に維持される。第2作業位置A2において、整地部材98が田面Gから上方に位置して(田面Gに接地しない)、溝形成部材99が田面Gに接地する(入り込む)のであり、溝形成部材99の傾斜面部99b及び円弧面部99c(図18参照)が田面Gに入り込む状態となり、溝形成部材99の横面部99a(図18参照)の半径方向外側の端部が田面Gに接地しない状態となる。
【0126】
図21に示すように、整地装置37が第2作業位置A2に維持されている状態において駆動軸94、整地部材98及び溝形成部材99が図21の紙面反時計方向に高速で回転駆動されることにより、溝形成部材99の位置の田面Gに溝が形成されるのであり、溝形成部材99の傾斜面部99b及び円弧面部99cにより田面Gに断面V字状の溝が形成される。
【0127】
図21に示すように、整地装置37が第2作業位置A2に維持されている状態において深さスイッチ133を操作することにより、田面Gに対する整地装置37の高さに基づいて、溝形成部材99の田面Gへの接地深さ(入り込み深さ)を、深い側及び浅い側に微調節することができる。この場合、溝形成部材99の傾斜面部99bの機能により、田面Gに形成される溝の深さを深い側に変更すると、溝の横幅が大きくなるのであり、田面Gに形成される溝の深さを浅い側に変更すると、溝の横幅が小さくなる。
【0128】
図21に示すように、昇降スイッチ132を第3位置に操作すると、整地装置37が格納位置A3に昇降駆動されて格納位置A3に維持される。格納位置A3において、整地部材98及び溝形成部材99が田面Gから上方に位置している(田面Gに接地しない)。整地装置37が格納位置A3に維持されている状態において、深さスイッチ133を操作しても、整地装置37の高さの微調節は行われずに、整地装置37は格納位置A3に維持される。
【0129】
[発明の実施の第1別形態]
図20に示す整地部材98に代えて、図22に示すような整地部材98を使用してもよい。図22に示すように、整地部材98は、断面円状のボス部98bに断面四角状の取付孔98aが備えられて、ボス部98bの外周部に6個のアーム部98eが備えられ、複数の凸部を備えた整地部98dがアーム部98eの先端部に備えられて、隣接するアーム部98eの間に切り欠き部98fが形成されており、合成樹脂により一体的に形成されている。
【0130】
これにより、前項[18]に記載のように、整地装置37が第1作業位置A1に維持されている状態において、整地部材98により田面Gが整地される場合、田面Gの泥や水が整地部材98の切り欠き部98fを通って左右方向に流れ易くなるのであり、機体の進行に伴って整地装置37により田面Gの泥や水を前方に押してしまうような状態が少なくなる。
【0131】
[発明の実施の第2別形態]
前述の[発明を実施するための形態][発明の実施の第1別形態]の図7及び図8において、種籾作溝器12を肥料作溝器17の後方から、センターフロート9及びサイドフロート10,11の左右中央側(左右方向の一方)に配置して、センターフロート9及びサイドフロート10,11に直接に取り付けてもよい。このように構成した場合、支持フレーム86の右及び左部に覆土部材88を取り付けることにより、覆土部材88を肥料作溝器17の後方から左右方向における種籾作溝器12とは反対側に位置させる。
【0132】
[発明の実施の第3別形態]
前述の[発明を実施するための形態][発明の実施の第1別形態][発明の実施の第2別形態]において、覆土部材88を肥料作溝器17の後方に残した状態で、肥料作溝器17よりも前方に離れたセンターフロート9及びサイドフロート10,11の部分に、種籾供給部12を直接に(又は支持ブラケット82を介して)取り付けるように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明は、粉粒状の肥料を田面Gに供給するものばかりではなく、液状(ペースト状)の肥料を田面Gに供給する乗用型直播機にも適用できる。
【符号の説明】
【0134】
5 直播装置
9,10,11 フロート
12 種籾供給部
17 肥料供給部
48 支持フレーム
77 横軸芯
83 支持ブラケット
88 覆土部材
G 田面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体の後部に直播装置を備えて、前記直播装置の支持フレームの左右方向の横軸芯周りにフロートを上下揺動自在に支持し、
田面に溝を形成しながら肥料を溝に供給する肥料供給部を、側面視で前記横軸芯の近傍に位置するように前記フロートに取り付け、
田面に溝を形成しながら種籾を溝に供給する種籾供給部を、前記肥料供給部よりも前方又は後方に離れた前記フロートの部分に取り付けてある乗用型直播機。
【請求項2】
前記フロートに支持ブラケットを取り付けて、前記支持ブラケットを介して前記支持フレームの横軸芯周りに前記フロートを上下揺動自在に支持し、
前記種籾供給部を前記支持ブラケットに取り付けてある請求項1に記載の乗用型直播機。
【請求項3】
前記種籾供給部を、前記肥料供給部の後方から左右方向の一方に配置し、
前記肥料供給部により田面に形成された溝に向かって泥を押す覆土部材を、前記肥料供給部の後方から左右方向における前記種籾供給部とは反対側に位置するように、前記フロートに取り付けてある請求項1又は2に記載の乗用型直播機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2011−30439(P2011−30439A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−176852(P2009−176852)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】