二次電池の分別方法
【課題】組電池を構成する余寿命のある二次電池性能を損なうことなく、組電池を分解して再構成可能な二次電池を分別する。
【解決手段】組電池1の両端の拘束板3,4に一対の保持板を当接して組電池1を積層方向に圧縮する。圧縮前後の開放電圧を測定し、圧縮前後の開放電圧の変化量に基づいて、再構成可能な二次電池を分別する。
【解決手段】組電池1の両端の拘束板3,4に一対の保持板を当接して組電池1を積層方向に圧縮する。圧縮前後の開放電圧を測定し、圧縮前後の開放電圧の変化量に基づいて、再構成可能な二次電池を分別する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の分別方法に関し、特に、組電池を分解して正常な二次電池を分別し、組電池として再構成等するための分別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車、ハイブリッド自動車等に用いられる比較的大容量の電源装置の一種に、平板状の複数の電池モジュールを厚み方向に積層した組電池が知られている。このような組電池は、コンパクトかつ軽量に構成されるので、自動車内の限られた空間内に搭載できる利点がある。電池モジュールは、一列に列置された複数の単電池を含み、各単電池は、合成樹脂製もしくは金属製の薄い中空直方体状の箱体であって、その内部には二次電池を構成する電解質及び電極体をそれぞれ収容するための電槽が配置されている。このような電池モジュールは、例えば電槽内における水素ガス等の発生により電槽の内圧が所定値以上に上昇すると、電槽内の圧力を開放するために設けられた安全弁が作動するように構成されているものの、内圧の上昇により厚み方向に膨張するおそれがある。また、過放電反応時、過充電反応時、低温時のガス吸収性能低下時等においても同様に内圧が上昇して厚み方向に膨張するおそれがある。
【0003】
特許文献1には、組電池を一対のエンドプレートにより挟み込んで、これら一対のエンドプレートを、組電池の外側にて電池モジュールの積層方向に沿って配置された各一対の拘束バンドにより相互に結合する構成が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、単位電池の間にスペーサを配設しスペーサを用いて単位電池を保持するとともに、スペーサの構造を隣接する単位電池の位置に応じて異なる形状とすることで、必要なスペーサの強度を確保し、単位電池の変形を防止する構成が開示されている。
【0005】
さらに、特許文献3には、特別な治具を用いずに容易に作業性良く連結部材と拘束板の組付けを行うために、連結部材の端部にねじ機構を備え、ねじ機構の操作により連結部材と拘束板の組み付け/取り外しを行う構成が開示されている。
【0006】
図10に、従来の組電池の外観斜視図を示す。組電池21は、単位電池(電池モジュール)22の積層方向両端に拘束板(エンドプレート)23を配置し、両拘束板23を拘束バンド24で連結することにより各単位電池(電池モジュール)22を拘束して一体化する。拘束バンド24は、一般に帯状板にて構成され、組電池21の互いに対向する一対の長側面にそれぞれ適当間隔をあけて一対、その板面を長側面に沿わせて配設され、その両端部が拘束板23にリベット25にて固定される。
【0007】
図11に、従来の他の組電池の外観斜視図を示す。連結部材5は、断面長方形状でその長辺が組電池1の長側面に垂直に配設された板状にて構成され、冷却媒体通路20の通る冷却媒体の流れ方向に平行な平面が外面の大部分を示すように構成される。連結部材5の一端部は、連結部材5の長手方向に対してL字状に折り曲げられて拘束板3の単位電池(電池モジュール)2との対向面に重合するL字取付部5aが形成され、連結部材5の他端部には、連結部材5の断面方向にL字状に延出されて拘束板4の周側面に重合する取付板部5bが形成される。
【0008】
L字取付部5aには、連結部材5の長手方向に延びる締結ボルト6が挿通されてその頭部6aが係合固定され、締結ボルト6は拘束板3に形成されたボルト穴を貫通し、この締結ボルト6に先端側から螺合されたナット7が拘束板3の単位電池2との重合面とは反対側に係合される。取付板部5bは、取付ボルト8にて拘束板4に締結固定される。なお、単位電池(電池モジュール)2の長手方向の両端面に上端部には正極と負極の端子11,12がそれぞれ突設し、各単位電池(電池モジュール)2の内部圧力が一定以上になったときに圧力を開放するための安全弁17、及び各単位電池(電池モジュール)2の温度を検出する温度センサを装着する温度検出穴18が形成される。
【0009】
組電池1の組立時には、単位電池2を並列配置するとともにその両端に拘束板3、4を配置し、連結部材5の一端部のL字取付部5aから延出された締結ボルト6を拘束板3のボルト穴に挿通してその締結ボルト6の先端側からナット7を螺合し、連結部材5の他端部の取付板部5bを取付ボルト8にて拘束板4に締結固定し、その後、ナット7を螺進させて拘束板3を単位電池2群に押しつけることにより所定の拘束状態とすることができる。また、単位電池2の充放電に伴う膨張や内圧上昇による拘束力は締結ボルト6の軸方向の荷重で受けるため、締結ボルト6に必要な強度を持たせることで連結部材5を十分な強度を持って組み付けることができる。
【0010】
メンテナンス時等において組電池1を分解する場合には、ナット7を緩めることにより徐々に単位電池2の拘束力を解除することができ、リベットを切断する時のように拘束板3、4や連結部材5に傷をつけるおそれがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平9−120809号公報
【特許文献2】特開2006−310309号公報
【特許文献3】特開2001−68081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、従来においては、劣化した組電池を安全に分解し、なおかつ二次電池(電池モジュール)を再利用するという観点が存在していない。一対の拘束板を用いて挟むことにより各二次電池の膨張はある程度は抑止することができるが、多数の二次電池が配置されるほど所定の二次電池が膨張した場合にその膨張による圧力が他の二次電池の圧縮弾性変形により分散的に吸収されることになる。使用を経た二次電池は、組電池内のその膨張度合い、膨張圧力の異なったものが混在している状態にあり、したがって、余寿命がある二次電池(電池モジュール)の性能を損なわず、これを確実に分別して有効に再利用することが重要である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、積層された複数の二次電池を両端部の一対の拘束板で挟持しつつ、前記拘束板に連結された連結部材で全体的に拘束して一体化した組電池を分解、分別して新たな組電池を再構成するための二次電池の分別方法であって、前記組電池の前記一対の拘束板の拘束状態を保持した状態で各二次電池の開放電圧を測定する工程と、前記一対の拘束板の平行度を維持しながら、設計時の組電池寸法まで前記積層方向に圧縮する工程と、前記圧縮した状態で各二次電池の開放電圧を測定する工程と、前記拘束状態の圧縮前後における二次電池の開放電圧の変化量に基づいて、再構成可能な二次電池を分別する工程とを有することを特徴とする。
【0014】
本発明では、このように、組電池を設計時の組電池寸法まで圧縮し、この圧縮前後の開放電圧の変化量、すなわち圧縮前に測定した開放電圧と圧縮後に測定した開放電圧との変化量に基づいて、二次電池を分別する。経時変化により、組電池は積層方向に膨張する。特に、組電池を構成する二次電池(電池モジュール)の正極板が膨張し、正極板と負極板を電気的に絶縁するセパレータを圧縮する。セパレータは、この圧縮による変形で劣化し、破壊の可能性が高くなる。このような状態において組電池を設計時と同じ寸法まで圧縮すると、劣化が相当程度進んだ二次電池はこの圧縮工程によりセパレータが破壊されて短絡が生じるため、圧縮後の開放電圧は大きく低下する。一方、劣化がそれほど進んでおらず正常な二次電池は、圧縮工程においてもセパレータに異常が生ぜず、圧縮後の開放電圧は圧縮前の開放電圧とほとんど変わらない。
【0015】
そこで、圧縮前後の開放電圧の変化量に着目すれば、正常な二次電池と異常な二次電池を容易に分別でき、組電池として再利用可能な二次電池等を容易に分別することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、余寿命のある二次電池の性能を損なうことなく、組電池を分別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態の組電池の平面図である。
【図2】一方の締結ボルトを緩めた場合の分解説明図である。
【図3】実施形態の分解説明図である。
【図4】実施形態の分解用治具の構成図である。
【図5】実施形態の開放電圧測定治具の構成図である。
【図6】図5の一部断面図である。
【図7】実施形態の処理フローチャートである。
【図8】正常な二次電池(電池モジュール)の圧縮前後の開放電圧を示すグラフ図である。
【図9】異常な二次電池(電池モジュール)の圧縮前後の開放電圧を示すグラフ図である。
【図10】従来の組電池の外観斜視図である。
【図11】従来の他の組電池の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
【0019】
図1に、本実施形態の組電池1の平面図を示す。組電池1は、偏平な直方体形状をした角型電池モジュール(二次電池)2の長側面同士を対向させて積層した積層方向両端に一対の拘束板(エンドプレート)3,4を配置し、両拘束板3,4を拘束バンド等の連結部材5で連結することにより各電池モジュール2を拘束して一体化する。電池モジュール2は、一列に列置された複数の単電池を含む。図では、ニッケル水素電池からなる3個の単電池が一列に直列接続された例を示す。連結部材(拘束バンド)5は、板状(図1(b))または棒状(図1(c))にて構成され、組電池1の互いに対向する一対の長側面(図1の紙面に対して表裏の面)にそれぞれ適当間隔をあけて一対、その板面を長側面に沿わせて配設され、その両端部が拘束板3,4に締結ボルト6にて固定される。板状の場合には、連結部材5の両端部にL字取付部が形成され、このL字取付部が拘束板3,4に当接し、L字取付板に設けられたボルト穴に締結ボルトを挿通してナットを螺合し締結する。棒状の場合には、連結部材5の両端部の内壁にナットが形成され、このナット取付部が拘束板3,4に当接し、内壁に設けられたナットに締結ボルトを挿通して螺合し締結する。
【0020】
このような組電池1を電気自動車やハイブリッド自動車に搭載して使用した後に、分解して再利用する場合、連結部材5を締結している締結ボルト6を緩めて分解する。しかしながら、積層された複数の電池モジュール2のうちの特定の電池モジュール2aが劣化して内圧上昇していた場合、図2に示すように、図中右側に位置する一対の締結ボルト6R、6Lの一方の締結ボルト6Lを緩めて分解しようとすると、その劣化電池モジュール2aの膨張による圧力で隣接する電池モジュール2bその他が変形して折れ曲がってしまう事態が生じ得る(片膨れ状態)。本来であれば、隣接する電池モジュール2bは未だ劣化しておらず再利用可能であるものの、このように劣化電池モジュール2aの膨張による圧力で変形してしまうと再利用が困難あるいは不可能となってしまい、電池モジュール2の再利用率が低下する。組電池1を構成する複数の電池モジュール2のいずれが劣化により膨張するかを分解前の外観から把握することは困難である。
【0021】
そこで、本実施形態では、図3に示すように、組電池1を分解する際には、組電池1の両端の拘束板3,4が互いに平行な状態を維持するように一対の締結ボルト6R、6Lを緩めるようにする。このように拘束板3,4の平行を維持したまま拘束力を解放することで、たとえ複数の電池モジュール2のうちの特定の電池モジュール2aが劣化して膨張しても、それに隣接する電池モジュール2は膨張による圧力で変形することなく平行移動するだけであり、その特性をそのまま維持することができる。一対の拘束板3,4の平行度を維持するためには、締結ボルト6R、6Lを同時に等量ずつ緩める、あるいは所定間隔だけ離間した一対の平行な治具を用いて一対の拘束板3,4を組電池1の積層方向に圧縮しつつ締結ボルト6R、6Lを緩める等の方法がある。
【0022】
以下、組電池1の分解、分別時の処理について説明する。
【0023】
まず、使用済みの組電池1の外観を検査し、異常がないことを確認した後に組電池1に残っている残存容量を放電させる。次に、組電池1のOCV(開放電圧)を測定する。OCVは、組電池を構成する電池モジュール2毎に測定する。測定された各電池モジュール2毎の開放電圧(これをV1とする)は、測定装置のメモリに格納する。OCVを測定した後、組電池を分解用治具に取り付ける。分解用治具は、一対の互いに平行な保持板(位置決めユニットと拘束ユニット)を有し、一対の保持板の少なくとも一方は他方に対して平行度を維持したまま平行移動自在に設けられる。移動機構の一例はボールねじである。一対の保持板はそれぞれ組電池1の拘束板3,4に当接し、一対の保持板の平行移動により拘束板3,4の平行度を維持したまま組電池1を圧縮、あるいは解放する。組電池1を治具に取り付けると、一対の保持板の平行移動により拘束板3,4の平行度を維持したまま組電池1を圧縮する。連結部材5は、電池モジュール2の膨張圧力でその長さ方向に弾性変形して電池モジュール2を圧縮保持しているので、連結部材5の長さが設計時の長さ(公差範囲内の誤差は許容する)となるまで組電池1を圧縮する。一対の保持板間の距離をゲージで測定し、測定した距離が所定距離に達した時点で圧縮を停止する。
【0024】
分解用治具で組電池1を圧縮した後、組電池1のOCV(開放電圧)を再び測定する。OCVは、組電池を構成する電池モジュール2毎に測定する。圧縮後に測定された各電池モジュール2毎の開放電圧(これをV2とする)は、測定装置のメモリに格納する。その後、締結ボルト6R,6Lを緩めて組電池1を分解する。組電池1は分解用治具で圧縮されているため、締結ボルト6R,6Lを緩めても各電池モジュール2は圧縮されたままである。そして、締結ボルト6R,6Lを緩めた後、一対の保持板を徐々に平行移動させて組電池1を解放する。これにより、図3に示すように、複数の電池モジュール2のうちの特定の電池モジュール2aが劣化により膨張しても、隣接する電池モジュールその他の電池モジュールは平行移動するだけであるので影響はない。組電池1を解放した後に、個別の電池モジュール2に分解し、各電池モジュール2毎に外観を検査する。さらに、測定装置のメモリに格納された圧縮前の開放電圧V1と圧縮後の開放電圧V2から圧縮前後の変化量|V1−V2|を算出し、その変化量が所定のしきい値を超えるか否かを判定する。変化量が所定のしきい値より小さければその電池モジュール2は正常な電池モジュール2として分別する。一方、圧縮前後の変化量が所定のしきい値以上であれば、異常な電池モジュール2として分別する。正常な電池モジュール2を分別すると、これに対して充放電テストを実施して再利用に供する。なお、各電池モジュール2毎に充放電テストによるその劣化度合いを数値あるいはランクで示し、劣化度合いが同程度の電池モジュール2同士を再利用することも好適である。
【0025】
図4に、組電池1を分解するための治具50の一例を示す。治具50は、組電池1を載置するためのテーブル51と、組電池1を拘束するための拘束ユニット52と、組電池1を位置決めするための位置決めユニット64を有する。拘束ユニット52と位置決めユニット64とは組電池1を保持する一対の保持板を構成する。組電池1の左右には一対の拘束板3,4が存在し、図中左側の拘束板4は、位置決めユニット64に当接して組電池1の搭載位置を決定する。図中右側の拘束板3は、拘束ユニット52に当接する。拘束ユニット52は、ナットによりボールネジ54に締結されており、組電池1を位置決めユニット64により位置決めした後に、モータ56によりボールネジ54を回転駆動することで、図中矢印RL方向に移動させる。拘束ユニット52を図中L方向に移動させることで組電池1を圧縮する。組電池1を載置するテーブル51には、所定位置に段差Sが形成されており、この段差Sに右側の拘束板3が当接するまで拘束ユニット52を図中L方向に移動させることで、組電池1を設計時の寸法まで圧縮する。すなわち、予め段差Sは、テーブル51の位置決めユニットからの距離が組電池1の設計時の電池モジュール2積層方向の寸法に等しくなる位置に形成しておく。右側の拘束板3が段差Sに当接したことは、圧力センサ等で検知する。また、組電池1の上部には押さえ板58が当接する。押さえ板58は、シャフト60を介してシリンダ62から鉛直下方の力が印加され、組電池1を鉛直下方に押さえ付ける。
【0026】
図5及び図6に、組電池1を構成する電池モジュール2の開放電圧を測定するための治具を示す。図6は、図5のA−A断面である。開放電圧測定治具70は、電池モジュール2の積層方向に延びた一対の帯状測定板を有し、一対の帯状測定板はそれぞれ電池モジュール2に対向する位置に開口71が形成されている。図6に示すように、これらの開口71には測定端子72が設けられており、測定端子72は断面形状が逆三角状をなしてその下部が開放された端子部が設けられている。この端子部は内側に向かって弾性付勢されており、電池モジュール2の端子に押し付けるように端子部を押し下げることで、その弾性力に抗して下部開放端が開いて電池モジュール2の端子を挟持し、端子に接続する。一対の測定板の一方の測定端子を電池モジュール2の正極端子に接続し、他方の測定端子を電池モジュール2の負極端子に接続する。測定端子の端子部とは反対側には電圧検出線74が接続されており、電圧検出線74はさらに測定装置に接続される。このような治具70により、組電池1の圧縮前後の各電池モジュール2の開放電圧を測定する。なお、開口71は図5,図6におけるY方向に長穴加工されており、測定端子72がY方向に移動可能としている。その理由は、電池モジュール2の開放電圧は圧縮前と圧縮後に測定するものであるところ、圧縮後には圧縮前よりも組電池1の積層方向の寸法が縮まるため、電池モジュール2の端子位置も変化するからこれに対応できるようにするためである。
【0027】
もちろん、図4〜図6に示す治具は一例にすぎず、当業者であれば、組電池1を圧縮し、圧縮前後の電池モジュール2の開放電圧を測定するための他の治具構成を任意に設計することができよう。本実施形態は、特定の治具構成に限定されるものでないことは言うまでもない。
【0028】
図7に、本実施形態の処理フローチャートを示す。組電池1を構成する電池モジュール2のうち、正常な電池モジュール2を分別するための処理フローチャートである。まず、組電池1を図4に示すような治具50に取り付けた後、治具70を組電池1に取り付け、各電池モジュール2の開放電圧V1を測定して取得する(S101)。取得した開放電圧は、電池モジュール2毎にメモリに格納する。次に、積層方向に膨張している組電池1を設計時の寸法まで積層方向に圧縮し、圧縮した状態で各電池モジュール2の開放電圧V2を測定して取得する(S102)。取得した開放電圧は、電池モジュール2毎にメモリに格納する。
【0029】
電池モジュール毎に圧縮前後の開放電圧V1,V2を取得した後、圧縮前後の開放電圧の変化量|V1−V2|を算出し、これを所定のしきい値、例えば20mVと大小比較する(S103)。そして、変化量がしきい値より小さい場合には当該電池モジュール2は正常であると判定する(S104)。一方、変化量がしきい値以上である場合には当該電池モジュール2は異常であると判定する(S205)。以上の判定処理を組電池1を構成する全ての電池モジュール2に対して実行する。これにより、組電池1を構成する電池モジュール2のうち、正常な電池モジュール2を確実に分別することができ、これら正常な電池モジュール2を新たな組電池1を再構成するために再利用することができる。
【0030】
正常な電池モジュール2は圧縮前後で開放電圧の変化量が0もしくは小さく、異常な電池モジュール2は圧縮前後で開放電圧の変化量がしきい値以上と大きくなるのは、異常な電池モジュール2では圧縮工程で正極板と負極板を絶縁するセパレータに劣化が生じて絶縁破壊が生じ、ショートしてしまうためである。
【0031】
図8及び図9に、ニッケル水素電池からなる6個の単電池が一列に直列接続された電池モジュールにおける圧縮前後の開放電圧の変化を示す。図8は正常な電池モジュール2の変化であり、図9は異常な電池モジュール2の変化である。両図において、横軸は時間(分)を示し、縦軸は開放電圧OCV(V)を示す。組電池1を回収後、組電池1の残存容量を放電して端子電圧を6.0Vまで低下させる。残存容量を放電させるのは、電池内圧を下げて電池モジュール2の膨張圧力を下げるためである。放電させた後、組電池1の開放電圧は徐々に上昇し、30分程度放置すると開放電圧は安定する。
【0032】
開放電圧が安定した後、圧縮前の開放電圧V1を測定する。その後、時間Tにおいて組電池1を圧縮し、圧縮後に再び開放電圧V2を測定する。図8に示すように、正常な電池モジュール2では圧縮してもショートしないため、圧縮前後の開放電圧に変化はない。一方、図9に示すように、異常な電池モジュール2では圧縮工程によりショートが生じて圧縮後の開放電圧V2が大幅に低下する。本実施形態では、このような圧縮前後の開放電圧の変化に着目し、正常な電池モジュール2を容易に分別することができる。
【0033】
本実施形態では、締結ボルト6で連結部材5を拘束板3,4に締結する場合について説明したが、図10に示すように、拘束バンド24が拘束板23にリベット25で固定される場合にも同様に適用できる。すなわち、分解用治具の一対の保持板(位置決めユニット64と拘束ユニット52)で組電池1を圧縮した状態でリベットを除去し、その後、一対の保持板を平行移動させて両端の拘束板23の平行度を維持したまま解放する。
【符号の説明】
【0034】
1 組電池、2 電池モジュール、3,4 拘束板、5 連結部材、6 締結ボルト、50 分解用治具、70 開放電圧測定用治具。
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の分別方法に関し、特に、組電池を分解して正常な二次電池を分別し、組電池として再構成等するための分別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車、ハイブリッド自動車等に用いられる比較的大容量の電源装置の一種に、平板状の複数の電池モジュールを厚み方向に積層した組電池が知られている。このような組電池は、コンパクトかつ軽量に構成されるので、自動車内の限られた空間内に搭載できる利点がある。電池モジュールは、一列に列置された複数の単電池を含み、各単電池は、合成樹脂製もしくは金属製の薄い中空直方体状の箱体であって、その内部には二次電池を構成する電解質及び電極体をそれぞれ収容するための電槽が配置されている。このような電池モジュールは、例えば電槽内における水素ガス等の発生により電槽の内圧が所定値以上に上昇すると、電槽内の圧力を開放するために設けられた安全弁が作動するように構成されているものの、内圧の上昇により厚み方向に膨張するおそれがある。また、過放電反応時、過充電反応時、低温時のガス吸収性能低下時等においても同様に内圧が上昇して厚み方向に膨張するおそれがある。
【0003】
特許文献1には、組電池を一対のエンドプレートにより挟み込んで、これら一対のエンドプレートを、組電池の外側にて電池モジュールの積層方向に沿って配置された各一対の拘束バンドにより相互に結合する構成が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、単位電池の間にスペーサを配設しスペーサを用いて単位電池を保持するとともに、スペーサの構造を隣接する単位電池の位置に応じて異なる形状とすることで、必要なスペーサの強度を確保し、単位電池の変形を防止する構成が開示されている。
【0005】
さらに、特許文献3には、特別な治具を用いずに容易に作業性良く連結部材と拘束板の組付けを行うために、連結部材の端部にねじ機構を備え、ねじ機構の操作により連結部材と拘束板の組み付け/取り外しを行う構成が開示されている。
【0006】
図10に、従来の組電池の外観斜視図を示す。組電池21は、単位電池(電池モジュール)22の積層方向両端に拘束板(エンドプレート)23を配置し、両拘束板23を拘束バンド24で連結することにより各単位電池(電池モジュール)22を拘束して一体化する。拘束バンド24は、一般に帯状板にて構成され、組電池21の互いに対向する一対の長側面にそれぞれ適当間隔をあけて一対、その板面を長側面に沿わせて配設され、その両端部が拘束板23にリベット25にて固定される。
【0007】
図11に、従来の他の組電池の外観斜視図を示す。連結部材5は、断面長方形状でその長辺が組電池1の長側面に垂直に配設された板状にて構成され、冷却媒体通路20の通る冷却媒体の流れ方向に平行な平面が外面の大部分を示すように構成される。連結部材5の一端部は、連結部材5の長手方向に対してL字状に折り曲げられて拘束板3の単位電池(電池モジュール)2との対向面に重合するL字取付部5aが形成され、連結部材5の他端部には、連結部材5の断面方向にL字状に延出されて拘束板4の周側面に重合する取付板部5bが形成される。
【0008】
L字取付部5aには、連結部材5の長手方向に延びる締結ボルト6が挿通されてその頭部6aが係合固定され、締結ボルト6は拘束板3に形成されたボルト穴を貫通し、この締結ボルト6に先端側から螺合されたナット7が拘束板3の単位電池2との重合面とは反対側に係合される。取付板部5bは、取付ボルト8にて拘束板4に締結固定される。なお、単位電池(電池モジュール)2の長手方向の両端面に上端部には正極と負極の端子11,12がそれぞれ突設し、各単位電池(電池モジュール)2の内部圧力が一定以上になったときに圧力を開放するための安全弁17、及び各単位電池(電池モジュール)2の温度を検出する温度センサを装着する温度検出穴18が形成される。
【0009】
組電池1の組立時には、単位電池2を並列配置するとともにその両端に拘束板3、4を配置し、連結部材5の一端部のL字取付部5aから延出された締結ボルト6を拘束板3のボルト穴に挿通してその締結ボルト6の先端側からナット7を螺合し、連結部材5の他端部の取付板部5bを取付ボルト8にて拘束板4に締結固定し、その後、ナット7を螺進させて拘束板3を単位電池2群に押しつけることにより所定の拘束状態とすることができる。また、単位電池2の充放電に伴う膨張や内圧上昇による拘束力は締結ボルト6の軸方向の荷重で受けるため、締結ボルト6に必要な強度を持たせることで連結部材5を十分な強度を持って組み付けることができる。
【0010】
メンテナンス時等において組電池1を分解する場合には、ナット7を緩めることにより徐々に単位電池2の拘束力を解除することができ、リベットを切断する時のように拘束板3、4や連結部材5に傷をつけるおそれがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平9−120809号公報
【特許文献2】特開2006−310309号公報
【特許文献3】特開2001−68081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、従来においては、劣化した組電池を安全に分解し、なおかつ二次電池(電池モジュール)を再利用するという観点が存在していない。一対の拘束板を用いて挟むことにより各二次電池の膨張はある程度は抑止することができるが、多数の二次電池が配置されるほど所定の二次電池が膨張した場合にその膨張による圧力が他の二次電池の圧縮弾性変形により分散的に吸収されることになる。使用を経た二次電池は、組電池内のその膨張度合い、膨張圧力の異なったものが混在している状態にあり、したがって、余寿命がある二次電池(電池モジュール)の性能を損なわず、これを確実に分別して有効に再利用することが重要である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、積層された複数の二次電池を両端部の一対の拘束板で挟持しつつ、前記拘束板に連結された連結部材で全体的に拘束して一体化した組電池を分解、分別して新たな組電池を再構成するための二次電池の分別方法であって、前記組電池の前記一対の拘束板の拘束状態を保持した状態で各二次電池の開放電圧を測定する工程と、前記一対の拘束板の平行度を維持しながら、設計時の組電池寸法まで前記積層方向に圧縮する工程と、前記圧縮した状態で各二次電池の開放電圧を測定する工程と、前記拘束状態の圧縮前後における二次電池の開放電圧の変化量に基づいて、再構成可能な二次電池を分別する工程とを有することを特徴とする。
【0014】
本発明では、このように、組電池を設計時の組電池寸法まで圧縮し、この圧縮前後の開放電圧の変化量、すなわち圧縮前に測定した開放電圧と圧縮後に測定した開放電圧との変化量に基づいて、二次電池を分別する。経時変化により、組電池は積層方向に膨張する。特に、組電池を構成する二次電池(電池モジュール)の正極板が膨張し、正極板と負極板を電気的に絶縁するセパレータを圧縮する。セパレータは、この圧縮による変形で劣化し、破壊の可能性が高くなる。このような状態において組電池を設計時と同じ寸法まで圧縮すると、劣化が相当程度進んだ二次電池はこの圧縮工程によりセパレータが破壊されて短絡が生じるため、圧縮後の開放電圧は大きく低下する。一方、劣化がそれほど進んでおらず正常な二次電池は、圧縮工程においてもセパレータに異常が生ぜず、圧縮後の開放電圧は圧縮前の開放電圧とほとんど変わらない。
【0015】
そこで、圧縮前後の開放電圧の変化量に着目すれば、正常な二次電池と異常な二次電池を容易に分別でき、組電池として再利用可能な二次電池等を容易に分別することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、余寿命のある二次電池の性能を損なうことなく、組電池を分別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態の組電池の平面図である。
【図2】一方の締結ボルトを緩めた場合の分解説明図である。
【図3】実施形態の分解説明図である。
【図4】実施形態の分解用治具の構成図である。
【図5】実施形態の開放電圧測定治具の構成図である。
【図6】図5の一部断面図である。
【図7】実施形態の処理フローチャートである。
【図8】正常な二次電池(電池モジュール)の圧縮前後の開放電圧を示すグラフ図である。
【図9】異常な二次電池(電池モジュール)の圧縮前後の開放電圧を示すグラフ図である。
【図10】従来の組電池の外観斜視図である。
【図11】従来の他の組電池の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
【0019】
図1に、本実施形態の組電池1の平面図を示す。組電池1は、偏平な直方体形状をした角型電池モジュール(二次電池)2の長側面同士を対向させて積層した積層方向両端に一対の拘束板(エンドプレート)3,4を配置し、両拘束板3,4を拘束バンド等の連結部材5で連結することにより各電池モジュール2を拘束して一体化する。電池モジュール2は、一列に列置された複数の単電池を含む。図では、ニッケル水素電池からなる3個の単電池が一列に直列接続された例を示す。連結部材(拘束バンド)5は、板状(図1(b))または棒状(図1(c))にて構成され、組電池1の互いに対向する一対の長側面(図1の紙面に対して表裏の面)にそれぞれ適当間隔をあけて一対、その板面を長側面に沿わせて配設され、その両端部が拘束板3,4に締結ボルト6にて固定される。板状の場合には、連結部材5の両端部にL字取付部が形成され、このL字取付部が拘束板3,4に当接し、L字取付板に設けられたボルト穴に締結ボルトを挿通してナットを螺合し締結する。棒状の場合には、連結部材5の両端部の内壁にナットが形成され、このナット取付部が拘束板3,4に当接し、内壁に設けられたナットに締結ボルトを挿通して螺合し締結する。
【0020】
このような組電池1を電気自動車やハイブリッド自動車に搭載して使用した後に、分解して再利用する場合、連結部材5を締結している締結ボルト6を緩めて分解する。しかしながら、積層された複数の電池モジュール2のうちの特定の電池モジュール2aが劣化して内圧上昇していた場合、図2に示すように、図中右側に位置する一対の締結ボルト6R、6Lの一方の締結ボルト6Lを緩めて分解しようとすると、その劣化電池モジュール2aの膨張による圧力で隣接する電池モジュール2bその他が変形して折れ曲がってしまう事態が生じ得る(片膨れ状態)。本来であれば、隣接する電池モジュール2bは未だ劣化しておらず再利用可能であるものの、このように劣化電池モジュール2aの膨張による圧力で変形してしまうと再利用が困難あるいは不可能となってしまい、電池モジュール2の再利用率が低下する。組電池1を構成する複数の電池モジュール2のいずれが劣化により膨張するかを分解前の外観から把握することは困難である。
【0021】
そこで、本実施形態では、図3に示すように、組電池1を分解する際には、組電池1の両端の拘束板3,4が互いに平行な状態を維持するように一対の締結ボルト6R、6Lを緩めるようにする。このように拘束板3,4の平行を維持したまま拘束力を解放することで、たとえ複数の電池モジュール2のうちの特定の電池モジュール2aが劣化して膨張しても、それに隣接する電池モジュール2は膨張による圧力で変形することなく平行移動するだけであり、その特性をそのまま維持することができる。一対の拘束板3,4の平行度を維持するためには、締結ボルト6R、6Lを同時に等量ずつ緩める、あるいは所定間隔だけ離間した一対の平行な治具を用いて一対の拘束板3,4を組電池1の積層方向に圧縮しつつ締結ボルト6R、6Lを緩める等の方法がある。
【0022】
以下、組電池1の分解、分別時の処理について説明する。
【0023】
まず、使用済みの組電池1の外観を検査し、異常がないことを確認した後に組電池1に残っている残存容量を放電させる。次に、組電池1のOCV(開放電圧)を測定する。OCVは、組電池を構成する電池モジュール2毎に測定する。測定された各電池モジュール2毎の開放電圧(これをV1とする)は、測定装置のメモリに格納する。OCVを測定した後、組電池を分解用治具に取り付ける。分解用治具は、一対の互いに平行な保持板(位置決めユニットと拘束ユニット)を有し、一対の保持板の少なくとも一方は他方に対して平行度を維持したまま平行移動自在に設けられる。移動機構の一例はボールねじである。一対の保持板はそれぞれ組電池1の拘束板3,4に当接し、一対の保持板の平行移動により拘束板3,4の平行度を維持したまま組電池1を圧縮、あるいは解放する。組電池1を治具に取り付けると、一対の保持板の平行移動により拘束板3,4の平行度を維持したまま組電池1を圧縮する。連結部材5は、電池モジュール2の膨張圧力でその長さ方向に弾性変形して電池モジュール2を圧縮保持しているので、連結部材5の長さが設計時の長さ(公差範囲内の誤差は許容する)となるまで組電池1を圧縮する。一対の保持板間の距離をゲージで測定し、測定した距離が所定距離に達した時点で圧縮を停止する。
【0024】
分解用治具で組電池1を圧縮した後、組電池1のOCV(開放電圧)を再び測定する。OCVは、組電池を構成する電池モジュール2毎に測定する。圧縮後に測定された各電池モジュール2毎の開放電圧(これをV2とする)は、測定装置のメモリに格納する。その後、締結ボルト6R,6Lを緩めて組電池1を分解する。組電池1は分解用治具で圧縮されているため、締結ボルト6R,6Lを緩めても各電池モジュール2は圧縮されたままである。そして、締結ボルト6R,6Lを緩めた後、一対の保持板を徐々に平行移動させて組電池1を解放する。これにより、図3に示すように、複数の電池モジュール2のうちの特定の電池モジュール2aが劣化により膨張しても、隣接する電池モジュールその他の電池モジュールは平行移動するだけであるので影響はない。組電池1を解放した後に、個別の電池モジュール2に分解し、各電池モジュール2毎に外観を検査する。さらに、測定装置のメモリに格納された圧縮前の開放電圧V1と圧縮後の開放電圧V2から圧縮前後の変化量|V1−V2|を算出し、その変化量が所定のしきい値を超えるか否かを判定する。変化量が所定のしきい値より小さければその電池モジュール2は正常な電池モジュール2として分別する。一方、圧縮前後の変化量が所定のしきい値以上であれば、異常な電池モジュール2として分別する。正常な電池モジュール2を分別すると、これに対して充放電テストを実施して再利用に供する。なお、各電池モジュール2毎に充放電テストによるその劣化度合いを数値あるいはランクで示し、劣化度合いが同程度の電池モジュール2同士を再利用することも好適である。
【0025】
図4に、組電池1を分解するための治具50の一例を示す。治具50は、組電池1を載置するためのテーブル51と、組電池1を拘束するための拘束ユニット52と、組電池1を位置決めするための位置決めユニット64を有する。拘束ユニット52と位置決めユニット64とは組電池1を保持する一対の保持板を構成する。組電池1の左右には一対の拘束板3,4が存在し、図中左側の拘束板4は、位置決めユニット64に当接して組電池1の搭載位置を決定する。図中右側の拘束板3は、拘束ユニット52に当接する。拘束ユニット52は、ナットによりボールネジ54に締結されており、組電池1を位置決めユニット64により位置決めした後に、モータ56によりボールネジ54を回転駆動することで、図中矢印RL方向に移動させる。拘束ユニット52を図中L方向に移動させることで組電池1を圧縮する。組電池1を載置するテーブル51には、所定位置に段差Sが形成されており、この段差Sに右側の拘束板3が当接するまで拘束ユニット52を図中L方向に移動させることで、組電池1を設計時の寸法まで圧縮する。すなわち、予め段差Sは、テーブル51の位置決めユニットからの距離が組電池1の設計時の電池モジュール2積層方向の寸法に等しくなる位置に形成しておく。右側の拘束板3が段差Sに当接したことは、圧力センサ等で検知する。また、組電池1の上部には押さえ板58が当接する。押さえ板58は、シャフト60を介してシリンダ62から鉛直下方の力が印加され、組電池1を鉛直下方に押さえ付ける。
【0026】
図5及び図6に、組電池1を構成する電池モジュール2の開放電圧を測定するための治具を示す。図6は、図5のA−A断面である。開放電圧測定治具70は、電池モジュール2の積層方向に延びた一対の帯状測定板を有し、一対の帯状測定板はそれぞれ電池モジュール2に対向する位置に開口71が形成されている。図6に示すように、これらの開口71には測定端子72が設けられており、測定端子72は断面形状が逆三角状をなしてその下部が開放された端子部が設けられている。この端子部は内側に向かって弾性付勢されており、電池モジュール2の端子に押し付けるように端子部を押し下げることで、その弾性力に抗して下部開放端が開いて電池モジュール2の端子を挟持し、端子に接続する。一対の測定板の一方の測定端子を電池モジュール2の正極端子に接続し、他方の測定端子を電池モジュール2の負極端子に接続する。測定端子の端子部とは反対側には電圧検出線74が接続されており、電圧検出線74はさらに測定装置に接続される。このような治具70により、組電池1の圧縮前後の各電池モジュール2の開放電圧を測定する。なお、開口71は図5,図6におけるY方向に長穴加工されており、測定端子72がY方向に移動可能としている。その理由は、電池モジュール2の開放電圧は圧縮前と圧縮後に測定するものであるところ、圧縮後には圧縮前よりも組電池1の積層方向の寸法が縮まるため、電池モジュール2の端子位置も変化するからこれに対応できるようにするためである。
【0027】
もちろん、図4〜図6に示す治具は一例にすぎず、当業者であれば、組電池1を圧縮し、圧縮前後の電池モジュール2の開放電圧を測定するための他の治具構成を任意に設計することができよう。本実施形態は、特定の治具構成に限定されるものでないことは言うまでもない。
【0028】
図7に、本実施形態の処理フローチャートを示す。組電池1を構成する電池モジュール2のうち、正常な電池モジュール2を分別するための処理フローチャートである。まず、組電池1を図4に示すような治具50に取り付けた後、治具70を組電池1に取り付け、各電池モジュール2の開放電圧V1を測定して取得する(S101)。取得した開放電圧は、電池モジュール2毎にメモリに格納する。次に、積層方向に膨張している組電池1を設計時の寸法まで積層方向に圧縮し、圧縮した状態で各電池モジュール2の開放電圧V2を測定して取得する(S102)。取得した開放電圧は、電池モジュール2毎にメモリに格納する。
【0029】
電池モジュール毎に圧縮前後の開放電圧V1,V2を取得した後、圧縮前後の開放電圧の変化量|V1−V2|を算出し、これを所定のしきい値、例えば20mVと大小比較する(S103)。そして、変化量がしきい値より小さい場合には当該電池モジュール2は正常であると判定する(S104)。一方、変化量がしきい値以上である場合には当該電池モジュール2は異常であると判定する(S205)。以上の判定処理を組電池1を構成する全ての電池モジュール2に対して実行する。これにより、組電池1を構成する電池モジュール2のうち、正常な電池モジュール2を確実に分別することができ、これら正常な電池モジュール2を新たな組電池1を再構成するために再利用することができる。
【0030】
正常な電池モジュール2は圧縮前後で開放電圧の変化量が0もしくは小さく、異常な電池モジュール2は圧縮前後で開放電圧の変化量がしきい値以上と大きくなるのは、異常な電池モジュール2では圧縮工程で正極板と負極板を絶縁するセパレータに劣化が生じて絶縁破壊が生じ、ショートしてしまうためである。
【0031】
図8及び図9に、ニッケル水素電池からなる6個の単電池が一列に直列接続された電池モジュールにおける圧縮前後の開放電圧の変化を示す。図8は正常な電池モジュール2の変化であり、図9は異常な電池モジュール2の変化である。両図において、横軸は時間(分)を示し、縦軸は開放電圧OCV(V)を示す。組電池1を回収後、組電池1の残存容量を放電して端子電圧を6.0Vまで低下させる。残存容量を放電させるのは、電池内圧を下げて電池モジュール2の膨張圧力を下げるためである。放電させた後、組電池1の開放電圧は徐々に上昇し、30分程度放置すると開放電圧は安定する。
【0032】
開放電圧が安定した後、圧縮前の開放電圧V1を測定する。その後、時間Tにおいて組電池1を圧縮し、圧縮後に再び開放電圧V2を測定する。図8に示すように、正常な電池モジュール2では圧縮してもショートしないため、圧縮前後の開放電圧に変化はない。一方、図9に示すように、異常な電池モジュール2では圧縮工程によりショートが生じて圧縮後の開放電圧V2が大幅に低下する。本実施形態では、このような圧縮前後の開放電圧の変化に着目し、正常な電池モジュール2を容易に分別することができる。
【0033】
本実施形態では、締結ボルト6で連結部材5を拘束板3,4に締結する場合について説明したが、図10に示すように、拘束バンド24が拘束板23にリベット25で固定される場合にも同様に適用できる。すなわち、分解用治具の一対の保持板(位置決めユニット64と拘束ユニット52)で組電池1を圧縮した状態でリベットを除去し、その後、一対の保持板を平行移動させて両端の拘束板23の平行度を維持したまま解放する。
【符号の説明】
【0034】
1 組電池、2 電池モジュール、3,4 拘束板、5 連結部材、6 締結ボルト、50 分解用治具、70 開放電圧測定用治具。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数の二次電池を両端部の一対の拘束板で挟持しつつ、前記拘束板に連結された連結部材で全体的に拘束して一体化した組電池を分解、分別して新たな組電池を再構成するための二次電池の分別方法であって、
前記組電池の前記一対の拘束板の拘束状態を保持した状態で各二次電池の開放電圧を測定する工程と、
前記一対の拘束板の平行度を維持しながら、設計時の組電池寸法まで前記積層方向に圧縮する工程と、
前記圧縮した状態で各二次電池の開放電圧を測定する工程と、
前記拘束状態の圧縮前後における二次電池の開放電圧の変化量に基づいて、再構成可能な二次電池を分別する工程と、
を有することを特徴とする二次電池の分別方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、
前記分別する工程では、圧縮前後における二次電池の開放電圧の変化量が所定のしきい値より小さければ正常であり、所定のしきい値以上であれば異常と分別することを特徴とする二次電池の分別方法。
【請求項3】
請求項1,2のいずれかに記載の方法において、
圧縮前に各二次電池の開放電圧を測定する工程は、前記組電池の残存容量を放電した後に所定時間経過して、その開放電圧が安定した後に実行されることを特徴とする二次電池の分別方法。
【請求項1】
積層された複数の二次電池を両端部の一対の拘束板で挟持しつつ、前記拘束板に連結された連結部材で全体的に拘束して一体化した組電池を分解、分別して新たな組電池を再構成するための二次電池の分別方法であって、
前記組電池の前記一対の拘束板の拘束状態を保持した状態で各二次電池の開放電圧を測定する工程と、
前記一対の拘束板の平行度を維持しながら、設計時の組電池寸法まで前記積層方向に圧縮する工程と、
前記圧縮した状態で各二次電池の開放電圧を測定する工程と、
前記拘束状態の圧縮前後における二次電池の開放電圧の変化量に基づいて、再構成可能な二次電池を分別する工程と、
を有することを特徴とする二次電池の分別方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、
前記分別する工程では、圧縮前後における二次電池の開放電圧の変化量が所定のしきい値より小さければ正常であり、所定のしきい値以上であれば異常と分別することを特徴とする二次電池の分別方法。
【請求項3】
請求項1,2のいずれかに記載の方法において、
圧縮前に各二次電池の開放電圧を測定する工程は、前記組電池の残存容量を放電した後に所定時間経過して、その開放電圧が安定した後に実行されることを特徴とする二次電池の分別方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−277873(P2010−277873A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−130004(P2009−130004)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(399107063)プライムアースEVエナジー株式会社 (193)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(399107063)プライムアースEVエナジー株式会社 (193)
【Fターム(参考)】
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