説明

位置制御装置、位置制御方法及び位置制御プログラム

【課題】リンク機構の制御動作を安定化及び高信頼化することができるとともに、リンク機構を高精度に制御することができる位置制御装置を提供する。
【解決手段】データ変換処理部13は、ロボットアーム21の先端部の目標データPから関節角度θを求める解法処理に使用される係数aij及び係数bを浮動小数点データ形式から可変長整数データ形式へ変換し、無誤差制御処理部16は、可変長整数データ形式の係数aij及び係数bを用いて除算を除く加減算及び乗算からなる無誤差演算を実行して係数aii及び係数bを求め、データ変換処理部13は、係数aii及び係数bを可変長整数データ形式から浮動小数点データ形式へ変換し、誤差有制御処理部15は、上記解法処理において浮動小数点データ形式の係数aii及び係数bを用いて1回のみの除算を含む浮動小数点演算を実行することにより浮動小数点データ形式の関節角度θを求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、関節を介して複数のリンクを連結したリンク機構の所定部位、例えば、先端部を目標3次元位置及び目標方向に制御する位置制御装置、位置制御方法及び位置制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のロボットアームの制御方式としては、スレーブアームと同じ軸構成等を有するマスターアームを操作者が操作してスレーブアームを制御するマスターアーム方式、操作者の腕と手の主要部(各関節)にセンサを装着して操作者の腕と手の関節の動きを検出してロボットアームを制御するモーションキャプチャー方式、操作者の手首・手の甲等に付けた3次元位置方向センサにより操作者の手首・手の甲の3次元位置及び方向を検出し、このデータを用いてアーム(リンク)の各関節角度を求める逆変換を行ってロボットアームを制御する逆変換方式等の種々の方式がある。
【0003】
上記のマスターアーム方式では、操作者側には、制御されるスレーブアームだけでなく、マスターアームが必要となり、システムが重装備になる。また、モーションキャプチャー方式では、操作者の腕と手の複数箇所にセンサを装着する必要があり、操作者にとって煩わしいものとなる。
【0004】
一方、逆変換方式では、操作者は手の甲等に1個のセンサのみを装着するだけで済み、操作者にとって煩わしさがないが、操作者の手首の位置と方向データから各関節角度を求める逆変換が必要となる。この逆変換では、人の腕のような高い自由度(6自由度以上)を持つ軸構成における各関節角度を求める必要があるため、逆変換が非線形連立方程式となり、複雑な計算となる。
【0005】
このため、本願発明者は、逆変換が非線形連立方程式とならず、単純且つ少ない演算量で厳密解を求めることができるロボットアーム・ハンドの操作方法を提案した(特許文献1参照)。この操作方法では、ロボットアームの操作者の手首に付けたセンサにより検出された3次元位置及び方向からアームの各関節角度を求めるために、浮動小数点演算を用いた誤差有り演算を用いている。この浮動小数点フォーマットを用いた実数表現は、非常に小さな数から大きな数まで表現でき、計算効率がよいという優れた特徴があるため、逆変換のような実数の数値計算に適している。
【特許文献1】特開2005−46931号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の浮動小数点演算を用いた数値制御では、以下のような問題がある。
(1)浮動小数点演算では、数値演算誤差が発生し、且つその蓄積が起こるため、演算結果に大きな誤差が含まれる場合があり、ロボットアームの先端位置が大幅にずれる場合がある。
(2)上記の数値演算誤差とその蓄積のために、当初想定していなかった状態が発生し、結果として制御が破綻してロボットアーム動作が暴走する状況が発生する。
(3)上記のロボットアーム動作の暴走を防止するためには、暴走対策を施す必要があり、制御が複雑化する。
【0007】
本発明の目的は、リンク機構の制御動作を安定化及び高信頼化することができるとともに、リンク機構を高精度に制御することができる位置制御装置、位置制御方法及び位置制御プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る位置制御装置は、関節を介して複数のリンクを連結したリンク機構の所定部位を目標3次元位置及び目標方向に制御する位置制御装置であって、リンク機構の所定部位の目標3次元位置データ及び目標方向データからなる目標データをP、リンク機構の各関節角度をθとし、目標データPから関節角度θを求める解法処理に使用されるデータを固定長数値データ形式から可変長整数データ形式へ変換する変換手段と、上記解法処理において、変換手段により変換された可変長整数データ形式のデータを用いて、除算を除く加減算及び乗算からなる無誤差演算を実行する無誤差演算手段とを備えるものである。
【0009】
本発明に係る位置制御装置では、目標データPから関節角度θを求める解法処理において、この解法処理に使用されるデータが固定長数値データ形式から可変長整数データ形式へ変換され、変換された可変長整数データ形式のデータを用いて、除算を除く加算、減算及び乗算からなる無誤差演算が実行される。この無誤差演算においては、数値演算誤差が発生せず、その蓄積もないため、リンク機構の制御動作を安定化及び高信頼化することができるとともに、リンク機構を高精度に制御することができる。
【0010】
変換手段は、無誤差演算手段の演算結果を可変長整数データ形式から固定長数値データ形式へ変換し、上記位置制御装置は、上記解法処理において、変換手段により変換された固定長数値データ形式の演算結果を用いて1回のみの除算を含む固定長数値演算を実行することにより固定長数値データ形式の関節角度θを求める誤差演算手段をさらに備えることが好ましい。
【0011】
この場合、目標データPから関節角度θを求める解法処理において、可変長整数データ形式の係数データを用いて、除算を除く加算、減算及び乗算からなる無誤差演算が実行された後、この演算結果が可変長整数データ形式から固定長数値データ形式へ変換され、変換された固定長数値データ形式の演算結果を用いて1回のみの除算を含む固定長数値演算が実行され、固定長数値データ形式の関節角度θが算出されるので、上記解法処理において、数値演算誤差の発生を多くとも1回の除算によるものだけに制限して数値演算誤差を非常に小さくすることができるとともに、その蓄積を防止することができる。
【0012】
無誤差演算手段は、θ=θ’+Δθ(i=1,…,n)(ここで、θは関節iの求める関節角度、θ’は微小時間Δt前の関節iの関節角度、Δθは微小時間Δt経過後の関節iの微小関節角度変化量、nは求める関節角度θの数)とし、n元連立一次方程式AΔθ=B(ここで、Aはその要素aij(i=1,…,n、j=1,…,n)がリンク機構のリンク長及び微小時間Δt前の関節iの関節角度θ’により決定される係数行列、Bはその要素b(i=1,…,n)が目標データP及び微小時間Δt前の位置方向データP’により決定されるベクトル)をAnΔθ=Bn(ここで、Anは対角要素an+1ii(i=1,…,n)以外が0となる対角行列、Bnは要素bn+1(i=1,…,n)のベクトル)に変形したときの係数データan+1ii及び係数データbn+1を、除算を除く加算、減算及び乗算からなる無誤差演算を用いて求め、変換手段は、無誤差演算手段により求められた係数データan+1ii及び係数データbn+1を可変長整数データ形式から固定長数値データ形式へ変換し、誤差演算手段は、変換手段により変換された固定長数値データ形式の係数データan+1ii及び係数データbn+1を用いて、θ=θ’+bn+1/an+1ii(i=1,…,n)を固定長数値演算により求めることが好ましい。
【0013】
この場合、目標データPから関節角度θを求める解法処理において、θ=θ’+bn+1/an+1ii以外の演算を、除算を除く加算、減算及び乗算からなる無誤差演算により実行するとともに、数値演算誤差の発生を多くともθ=θ’+bn+1/an+1iiにおける1回の除算だけに制限しているので、関節角度θを高精度に求めることができる。
【0014】
上記位置制御装置は、操作者の所定部位の3次元位置及び方向を検出する検出手段をさらに備え、検出手段により検出された3次元位置及び方向をリンク機構の所定部位の目標3次元位置データ及び目標方向データとして用いて、リンク機構の所定部位を目標3次元位置及び目標方向に制御することが好ましい。
【0015】
この場合、リンク機構の所定部位を操作者の所定部位の動きに応じた目標3次元位置及び目標方向に高精度に制御することができる。
【0016】
本発明に係る位置制御方法は、関節を介して複数のリンクを連結したリンク機構の所定部位を目標3次元位置及び目標方向に制御するロボットアーム制御方法であって、リンク機構の所定部位の目標3次元位置データ及び目標方向データからなる目標データをP、リンク機構の各関節角度をθとし、目標データPから関節角度θを求める解法処理に使用されるデータを固定長数値データ形式から可変長整数データ形式へ変換するステップと、上記解法処理において、変換された可変長整数データ形式のデータを用いて、除算を除く加算、減算及び乗算からなる無誤差演算を実行するステップとを含むものである。
【0017】
本発明に係る位置制御プログラムは、関節を介して複数のリンクを連結したリンク機構の所定部位を目標3次元位置及び目標方向に制御するための位置制御プログラムであって、リンク機構の所定部位の目標3次元位置データ及び目標方向データからなる目標データをP、リンク機構の各関節角度をθとし、目標データPから関節角度θを求める解法処理に使用されるデータを固定長数値データ形式から可変長整数データ形式へ変換する変換手段と、上記解法処理において、変換手段により変換された可変長整数データ形式の係数データを用いて、除算を除く加算、減算及び乗算からなる無誤差演算を実行する無誤差演算手段としてコンピュータを機能させるものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、目標データPから関節角度θを求める解法処理において、可変長整数データ形式のデータを用いて、除算を除く加算、減算及び乗算からなる無誤差演算が実行され、この無誤差演算においては、数値演算誤差が発生せず、その蓄積もないため、リンク機構の制御動作を安定化及び高信頼化することができるとともに、リンク機構を高精度に制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施の形態による位置制御装置の一例であるロボットアーム制御装置をいたロボットアーム制御システムについて図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施の形態によるロボットアーム制御装置を用いたロボットアーム制御システムの構成を示すブロック図である。図1に示すロボットアーム制御システムは、ロボットアーム制御装置1、ロボットアーム部2、3次元操作グローブ3、3次元位置方向センサ4及び3次元ディスプレイ5を備える。
【0021】
ロボットアーム部2は、一対のロボットアーム21及びハンド22、胴体部23並びにカメラ部24を備え、人の上半身(頭部を除く)と同程度の大きさと自由度とを有し、両腕と両手の機能を実現している。
【0022】
ロボットアーム21は、肩、肘及び手首に関節を有し、これらの関節を介してリンクとなる上腕21a及び前腕21bが連結されたリンク機構(マニプレータ)であり、人の腕と同程度の大きさ及び自由度を有する。ハンド22は、人の手と同程度の大きさと自由度を有する触覚付きの5本指ロボットハンドであり、前腕21bの先端に取り付けられる。ハンド22には触覚センサ(図示省略)が設けられており、物をつかんだ時の触覚(圧力)がロボットアーム制御装置1を介して3次元操作グローブ3へ伝達される。
【0023】
なお、図示を省略しているが、ロボットアーム21及びハンド22は、その内部にモータ等の駆動源を有し、この駆動源により任意の角度に駆動される。また、本実施の形態では、ロボットアーム21を人の腕に模倣させ、ハンド22を人の手指に模倣させているが、ロボットアーム及びハンドの構成は、この例に特に限定されず、ハンド22の指の数を増減させる等の種々の変更が可能である。また、リンク機構の関節数及びリンク数も、上記の例に特に限定されず、種々の変更が可能である。
【0024】
カメラ部24は、3次元カメラ(ステレオカメラ)等から構成され、ロボットアーム制御装置1を介して、撮影した画像を3次元ディスプレイ5へ出力する。3次元ディスプレイ5は、カメラ部24により撮影された画像を表示し、操作者Mに提示する。なお、撮影された画像の提示方法は、この例に特に限定されず、3次元ディスプレイに替えて、操作者Mに装着させたヘッドマウントディスプレイに表示させる等の種々の変更が可能である。
【0025】
3次元操作グローブ3は、公知の3次元操作用データグローブから構成され、操作者Mの両手にそれぞれ装着される。3次元操作グローブ3は、操作者Mの手の甲及び指の動き(関節角度)を検出し、検出した関節角度データをロボットアーム制御装置1へ出力する。3次元操作グローブ3の手首の位置には、3次元位置方向センサ4が取り付けられ、3次元位置方向センサ4は、前腕21bの先端部の目標3次元位置及び目標方向として、操作者Mの手首の3次元位置及び方向を検出し、検出した3次元位置データ及び方向データをロボットアーム制御装置1へ出力する。
【0026】
なお、目標3次元位置及び目標方向を検出又は入力する方法は、上記の例に特に限定されず、データグローブ又はデータスーツ等から操作者の所定部位の3次元位置及び方向を検出したり、ハプティクス・デバイス等を用いて入力したりしてもよい。
【0027】
ロボットアーム制御装置1は、操作者Mの両手に装着された3次元操作グローブ3及び3次元位置方向センサ4からの検出結果を基に、ロボットアーム21及びハンド22の各関節角度を算出する。ハンド22に関しては、3次元操作グローブ3が手の甲の曲がり(手首の)角度及び指の関節角度を検出し、ロボットアーム制御装置1は、これらの角度データに基づいてハンド22を制御する。
【0028】
一方、ロボットアーム21に関しては、操作者Mの手首に装着した3次元位置方向センサ4から操作者Mの手首の三次元位置及びその方向、すなわち、ロボットアーム21の先端部の目標3次元位置及び目標方向が得られるだけである。このため、ロボットアーム21の先端部の目標3次元位置データ及び目標方向データから、ロボットアーム21の各関節角度を計算する必要がある。このように、ロボットアーム21の先端部の3次元位置及び方向からロボットアーム21の各関節角度を計算することを逆変換と呼び、これとは逆に、ロボットアーム21の各関節角度からロボットアーム21の先端部の3次元位置及び方向を計算することを順変換と呼ぶことにする。
【0029】
図2は、図1に示すロボットアーム制御装置1の構成を示すブロック図である。図2に示すように、ロボットアーム制御装置1は、外部インターフェース部11、浮動小数点データ記憶部12、データ変換処理部13、可変長整数データ記憶部14、誤差有制御処理部15及び無誤差制御処理部16を備える。誤差有制御処理部15は、座標変換処理部15a及び浮動小数点演算部15bを備え、無誤差制御処理部16は、方程式解法処理部16a及び可変長整数演算部16bを備える。
【0030】
ロボットアーム制御装置1は、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、外部記憶装置、記録媒体駆動装置、入力装置、表示装置、外部機器インターフェース等を備えるコンピュータから構成することができる。この場合、後述するロボットアーム制御処理(位置制御処理)を実行するためのロボットアーム制御プログラム(位置制御プログラム)を、CPU等を用いて実行することにより、外部インターフェース部11、浮動小数点データ記憶部12、データ変換処理部13、可変長整数データ記憶部14、誤差有制御処理部15及び無誤差制御処理部16としてコンピュータを機能させることができる。なお、ロボットアーム制御装置1の構成は、この例に特に限定されず、上記の各機能の一部又は全部を専用のハードウエアから構成する等の種々の変更が可能である。
【0031】
外部インターフェース部11は、3次元位置方向センサ4から3次元位置データ及び方向データを取得して浮動小数点データ記憶部12に格納する。また、外部インターフェース部11は、ロボットアーム制御処理により求められた関節角度を浮動小数点データ記憶部12から読み出してロボットアーム部2へ出力し、ロボットアーム21の各関節角度がロボットアーム制御処理により求められた関節角度に制御される。
【0032】
浮動小数点データ記憶部12は、誤差有制御処理部15において処理される種々のデータを浮動小数点データ形式で記憶し、可変長整数データ記憶部14は、無誤差制御処理部16において処理される種々のデータを可変長整数データ形式で記憶する。
【0033】
図3は、浮動小数点データ及び可変長整数データのデータ構成の一例を示す図である。図3の(a)に示すように、固定長数値データの一例である浮動小数点データは、符号部、指数部及び仮数部から構成され、このようなデータ形式で浮動小数点データ記憶部12に格納される。また、図3の(b)に示すように、可変長整数データは、語長部、符号部、及び数値部(整数表現)から構成され、このようなデータ形式で可変長整数データ記憶部14に格納される。
【0034】
データ変換処理部13は、浮動小数点データ記憶部12から浮動小数点データを読み出し、読み出した浮動小数点データを可変長整数データへ変換し、変換した可変長整数データを可変長整数データ記憶部14に格納する。また、データ変換処理部13は、可変長整数データ記憶部14から可変長整数データを読み出し、読み出した可変長整数データを浮動小数点データへ変換し、変換した浮動小数点データを浮動小数点データ記憶部12に格納する。
【0035】
なお、本発明に用いられる固定長数値データは、上記の例に特に限定されず、例えば、固定長整数データを用いることもできる。図3の(c)に示すように、固定長整数データは、符号部及び数値部(整数表現)から構成され、この固定長整数データ形式も、固定長であるため、誤差(数値のオーバーフロー及びそのまるめによる誤差)が発生し、本発明を同様に適用することができる。
【0036】
例えば、3次元位置方向センサ4が出力する値(角度)が、−255〜+255等の整数値であり、ロボットアーム21の関節を動作させるモータに対する出力(回転角度)も、−1000〜+1000パルス等の整数値である場合、浮動小数点データ記憶部12を固定長数値データ記憶部に変更し、固定長整数データ形式で各データを格納するようにしてもよい。また、固定長整数データ形式でデータを取り扱う場合、浮動小数点演算部15bを固定長整数演算部に変更し、固定長整数演算部により固定長整数演算を実行するようにしてもよい。
【0037】
誤差有制御処理部15は、ロボットアーム部2のロボットアーム21及びハンド22の制御処理のうち、固定長数値演算の一例である浮動小数点演算を用いた誤差有制御処理を実行する。座標変換処理部15aは、浮動小数点データ記憶部12から浮動小数点データを読み出し、浮動小数点演算部15bを用いて座標変換処理等(sin、cos演算)を浮動小数点演算で実行し、演算結果を浮動小数点データ記憶部12に格納する。浮動小数点演算部15bは、加算器、減算器、乗算器及び除算器としての機能を有し、浮動小数点演算を用いて、加算、減算、乗算及び除算を実行する。
【0038】
無誤差制御処理部16は、ロボットアーム部2のロボットアーム21及びハンド22の制御処理のうち、可変長整数演算を用いた無誤差制御処理を実行する。方程式解法処理部16aは、可変長整数データ記憶部14から可変長整数データを読み出し、制御方程式の求解等を可変長整数演算部16bを用いて可変長整数演算で実行し、演算結果を可変長整数データ記憶部14に格納する。可変長整数演算部16bは、加算器、減算器及び乗算器としての機能を有し、可変長整数演算を用いて、加算、減算及び乗算を無誤差で実行する。
【0039】
ここで、本実施の形態の制御対象となるロボットアーム21について詳細に説明する。図4は、図1に示すロボットアーム部2における右側のロボットアーム21の構成を示す模式図であり、図5は、図1に示す右側のロボットアーム21の座標系を説明するための図である。なお、左側のロボットアーム21も、図4及び図5に示す右側のロボットアーム21と同様に構成されているので、詳細な説明は省略する。
【0040】
図4に示すように、グローバル座標系の原点Oを上腕21aの右肩(第1関節)に、グローバル座標系のX座標軸を胴体部23(図1参照)の正面方向に沿って床面と平行方向に、グローバル座標系のY座標軸を右肩から左肩方向に、グローバル座標系のZ座標軸を床面から天井への垂直方向にそれぞれ設定する。また、ロボットアーム21の上腕21aの長さをe、前腕21bの長さをeとし、上腕21aの肩関節のうち第1関節(Y軸回り)の関節角度θ、第2関節(X軸回り)の関節角度θ、第3関節(Z軸回り)の関節角度θとし、上腕21aと前腕21bとの間の第4関節(Y軸回り)の関節角度θ、第5関節(Z軸回り)の関節角度θとし、前腕21bとハンド22との間の第6関節(Y軸回り)の関節角度θとする。
【0041】
このとき、前腕21bの先端位置・方向Pすなわち操作者Mの手首に装着した3次元位置方向センサ4が示すグローバル座標に対する変換行列をH0sとすると、以下の式(1)のように表現することができる。
【0042】
【数1】

【0043】
ここで、図5に示すように、3次元位置方向センサ4の3次元位置はP(x,y,z)、3次元位置方向センサ4の方向を表すX軸方向の単位ベクトルはdxs(uxs,vxs,wxs)、Y軸方向の単位ベクトルはdys(uys,vys,wys)、Z軸方向の単位ベクトルはdzs(uzs,vzs,wzs)となる。これらの値はすべて、3次元位置方向センサ4から取得されるので、既知となる。一方、H0sの各要素は、各アーム(上腕21a及び前腕21b)の軸の長さe,eと各関節角度θ,θ,θ,θ,θを用いて、以下のように表現することができる。
【0044】
【数2】

【0045】
ここで、C=cos(θ)、S=sin(θ)(n=1,…,5)であり、関節角度θは、アーム動作により刻々と変化するので、時間tの関数となり、θ’を微小時間Δt前の関節角度(直前の関節角度)とし、微小時間Δt経過後における微小関節角度変化量をΔθとすると、以下のように表現することができる。
θ=θ’+Δθ (6)
ここで、微小時間Δt前の関節角度値θ’は既知であり、微小時間Δtは制御時間間隔である。
【0046】
上記の前提を基に、以下のように近似することができる。なお、下記式では、(Δθ)は微小であるので、(Δθ)以上の高次項は無視できるとした。
sin(θ)=sin(θ’+Δθ)≒sin(θ’)+(sin(θ’))’Δθ=sin(θ’)+cos(θ’)Δθ (7a)
cos(θ)=cos(θ’+Δθ)≒cos(θ’)+(cos(θ’))’Δθ=cos(θ’)−sin(θ’)Δθ (7b)
上記の式(7a)、(7b)を式(2)〜(5)へ代入すると、以下となる。なお、ここでも、ΔθΔθ等の高次のΔθは微小であり、無視できるとした。
【0047】
【数3】

【0048】
【数4】

【0049】
【数5】

【0050】
【数6】

【0051】
上記各式より、式(1)は、以下のように表現することができる。
【0052】
【数7】

【0053】
そこで、Δθ,Δθ,Δθ,Δθ,Δθは、以下の5元連立一次方程式の解として求めることができる。
【0054】
【数8】

【0055】
また、上式の左辺の行列の各要素を係数aij(i=1,…,5、j=1,…,5)、右辺のベクトルの各要素を係数b(i=1,…,5)で表すと、以下のように表現することができる。
【0056】
【数9】

【0057】
上記の5元連立一次方程式の解法では、加減乗除算が繰り返されるために、浮動小数点演算を用いた数値計算では、数値演算誤差とその蓄積のために解の誤差が大きくなり、連立方程式の解を求める処理が演算誤差のために暴走及び破綻することが多々ある。このように解の誤差が大きくなること、及び連立方程式の解を求める処理が暴走及び破綻することは、ロボットアームが人に危害を加える恐れがあるため、ロボットアームの制御においては許されない。また、除算を使用する場合、数値計算に計算精度の低下等の様々な悪影響を及ぼすことはもちろんのこと、無誤差演算自体を行うことはできない。
【0058】
このため、本実施の形態では、ガウス・ジョルダンの消去法を基本にし、最後の1回を除いて除算が発生しない無誤差連立一次方程式解法処理を考案し、式(15)の解法に誤差を発生させない無誤差演算を用い、各関節角度θ,θ,θ,θ,θを以下のようにして求めている。
【0059】
まず、式(15)の係数aij(i=1,…,5、j=1,…,5)及び係数b(i=1,…,5)を用いて、k=1,…,5として、下記の式を繰り返し演算することにより係数aij及び係数bを求める。
k+1ij=aij (i=k) (16a)
k+1ij=aijkk−akjik (i≠k) (16b)
k+1=b (i=k) (16c)
k+1=bkk−bik (i≠k) (16d)
上記の係数aij及び係数bにより、式(15)は以下の形式となる。
【0060】
【数10】

【0061】
上記のように、式(17)の左辺の係数行列は、対角要素以外が0となる対角行列となる。上記の演算までは、除算を使用する必要がないため、本実施の形態では、式(15)の連立一次方程式の解法処理のうち上記の演算までの処理を、無誤差制御処理部16による無誤差演算を用いて実行し、ここまでの演算を無誤差で行っている。
【0062】
次に、各関節角度θ,θ,θ,θ,θは、以下の式により求めることができる。
【0063】
【数11】

【0064】
上記の式(18)の演算だけは、除算が回避できないために、本実施の形態では、誤差有制御処理部15による浮動小数点演算を用いて実行している。この浮動小数点演算により誤差が発生するが、この処理は最終処理であり、且つ1回の除算を行うだけであるため、除算に充分な精度が確保されていれば、誤差が問題になることはなく、誤差の蓄積も起こらない。なお、手首の角度θは、3次元操作グローブ3により直接取得することができるので、上記の無誤差連立一次方程式解法処理からは求めていない。
【0065】
ロボットアーム制御装置1は、上記の無誤差連立一次方程式解法処理(目標データPから関節角度θを求める解法処理)を以下のようにして実行している。
【0066】
外部インターフェース部11は、ロボットアームの21の先端部の目標3次元位置(3次元位置方向センサ4の3次元位置P)及び目標方向(X、Y、Z軸方向の単位ベクトルdxs、dys、dzs)からなる目標データPを3次元位置方向センサ4から取得し、浮動小数点データ記憶部12に浮動小数点データ形式で記憶させる。このとき、浮動小数点データ記憶部12には、微小時間Δt前の位置方向データP’及び微小時間Δt前の関節角度データθ’が記憶されており、また、上腕21aの長さe、前腕21bの長さe等の初期値は予め記憶されているものとする。
【0067】
ここで、上記の微小時間Δt前の位置方向データP’は、微小時間Δt前の目標データではなく、微小時間Δt前の実際の3次元位置データ及び方向データであり、微小時間Δt前の関節角度データθ’もアームの実際の関節角度である。これは、後述するように、P’、θ’及びPからΔθを求め(線形近似後、連立一次方程式を無誤差で解く)、そして、θ=θ’+Δθからθを求めており、ここで(線形)近似しているため、このθから求めた実際の位置方向データは目標データと一致せず、次の時刻の計算では、微小時間Δt前の目標データ等ではなく、微小時間Δt前の実際の3次元位置データ及び方向データ、並びに微小時間Δt前の実際の関節角度データを用いているためである。
【0068】
座標変換処理部15aは、浮動小数点データ記憶部12から微小時間Δt前の関節角度θ’、上腕21aの長さe、前腕21bの長さeを読み出し、浮動小数点演算部15bを用いて浮動小数点演算を実行することにより式(15)の係数データaijを算出し、浮動小数点データ記憶部12に記憶させる。また、座標変換処理部15aは、浮動小数点データ記憶部12から目標データP及び微小時間Δt前の位置方向データP’を読み出し、浮動小数点演算部15bを用いて浮動小数点演算を実行することにより式(15)の係数データbを算出し、浮動小数点データ記憶部12に記憶させる。
【0069】
データ変換処理部13は、浮動小数点データ記憶部12から係数aij及び係数bを順次読み出し、浮動小数点データ形式から可変長整数データ形式に変換した係数aij及び係数bを、係数aij及び係数bとして可変長整数データ記憶部14に格納する。
【0070】
方程式解法処理部16aは、可変長整数データ記憶部14から係数aij及び係数bを読み出し、可変長整数演算部16bを用いて可変長整数演算(無誤差演算)を実行することにより、式(16a)乃至(16d)を用いて係数ak+1ij及びbk+1を順次算出し、最終的に係数aij及びbを可変長整数データ記憶部14に格納する。
【0071】
データ変換処理部13は、可変長整数データ記憶部14から係数aii及び係数bを順次読み出し、可変長整数データ形式から浮動小数点データ形式に変換した係数aii及び係数bを浮動小数点データ記憶部12に格納する。
【0072】
座標変換処理部15aは、浮動小数点データ記憶部12から係数aii及び係数bを順次読み出し、浮動小数点演算部15bを用いて浮動小数点演算の除算を1回だけ実行することにより、微小関節角度変化量Δθ=b/aiiを算出し、浮動小数点データ記憶部12に格納する。そして、座標変換処理部15aは、浮動小数点データ記憶部12から直前の関節角度値θ’及び微小関節角度変化量Δθを順次読み出し、浮動小数点演算部15bを用いて浮動小数点演算を実行することにより式(18)を用いて関節角度θを算出し、浮動小数点データ記憶部12に格納する。
【0073】
外部インターフェース部11は、浮動小数点データ記憶部12から関節角度θを読み出してロボットアーム部2へ出力する。ロボットアーム部2は、ロボットアーム21の各関節角度が関節角度θとなるようにロボットアーム21を動作させる。
【0074】
上記の制御動作により、操作者Mは、3次元ディスプレイ5を用いて、カメラ部24により撮影された画像を見ながら、両手に装着した3次元操作グローブ3を用いて、ロボットアーム21及びハンド22を操作し、操作者Mの腕と手の動きとがロボットアーム21及びハンド22により忠実に再現される。
【0075】
本実施の形態では、データ変換処理部13が変換手段の一例に相当し、無誤差制御処理部16(方程式解法処理部16a及び可変長整数演算部16b)が無誤差演算手段の一例に相当し、誤差有制御処理部15(座標変換処理部15a及び浮動小数点演算部15b)が誤差演算手段の一例に相当する。
【0076】
次に、上記のように構成されたロボットアーム制御装置1によるロボットアーム制御処理について説明する。図6は、図1に示すロボットアーム制御装置1によるロボットアーム制御処理を説明するためのフローチャートである。
【0077】
図6に示すように、まず、ステップS11において、外部インターフェース部11は、3次元位置方向センサ4から3次元位置データP(x,y,z)、X軸方向の単位ベクトルdxs(uxs,vxs,wxs)、Y軸方向の単位ベクトルdys(uys,vys,wys)、及びZ軸方向の単位ベクトルdzs(uzs,vzs,wzs)を取得して浮動小数点データ記憶部12に格納する。
【0078】
次に、ステップS12において、座標変換処理部15aは、浮動小数点データ記憶部12から3次元位置データP(x,y,z)等を順次読み出し、浮動小数点演算部15bを用いて、式(15)の係数aij(i=1,…,5、j=1,…,5)及び係数b(i=1,…,5)を求め、浮動小数点データ記憶部12に格納する。
【0079】
次に、ステップS13において、データ変換処理部13は、浮動小数点データ記憶部12から係数aij及び係数bを順次読み出し、浮動小数点データ形式から可変長整数データ形式に変換した係数aij及び係数bを、係数aij及び係数bとして可変長整数データ記憶部14に格納する。
【0080】
なお、上記のステップS12及びS13では、浮動小数点演算を用いて3次元位置データP(x,y,z)等から係数aij及び係数bを求めた後に、可変長整数データへフォーマット変換したが、この例に特に限定されず、データ変換処理部13により3次元位置データP(x,y,z)、X軸方向の単位ベクトルdxs(uxs,vxs,wxs)、Y軸方向の単位ベクトルdys(uys,vys,wys)、及びZ軸方向の単位ベクトルdzs(uzs,vzs,wzs)を浮動小数点データから可変長整数データに変換し、その後、方程式解法処理部16aにより可変長整数データの3次元位置データP(x,y,z)等から可変長整数データの係数aij及び係数bを求めるようにしてもよい。
【0081】
次に、ステップS14〜S16において、方程式解法処理部16aは、初期設定として、k=1、i=1、j=1に設定する。次に、ステップS17において、方程式解法処理部16aは、可変長整数データ記憶部14から係数aij,akk,akj,aikを読み出し、可変長整数演算部16bを用いて、i=kの場合はak+1ij=aijに設定し、i≠kの場合はak+1ij=aijkk−akjikを算出し、係数ak+1ijを可変長整数データ記憶部14に格納する。
【0082】
次に、ステップS18において、方程式解法処理部16aは、j<5であるか否かを判断し、j<5の場合、ステップS27においてjを1だけインクリメントしてステップS17以降の処理を継続し、j<5でない(j=5)場合、ステップS19へ処理を移行する。
【0083】
j<5でない場合、ステップS19において、方程式解法処理部16aは、可変長整数データ記憶部14から係数b,akk,b,aikを読み出し、可変長整数演算部16bを用いて、i=kの場合はbk+1=bに設定し、i≠kの場合はbk+1=bkk−bikを算出し、係数bk+1を可変長整数データ記憶部14に格納する。
【0084】
次に、ステップS20において、方程式解法処理部16aは、i<5であるか否かを判断し、i<5の場合、ステップS26においてiを1だけインクリメントしてステップS16以降の処理を継続し、i<5でない(i=5)場合、ステップS21へ処理を移行する。
【0085】
i<5でない場合、ステップS21において、方程式解法処理部16aは、k<5であるか否かを判断し、k<5の場合、ステップS25においてkを1だけインクリメントしてステップS15以降の処理を継続し、k<5でない(k=5)場合、ステップS22へ処理を移行する。このように、ステップS14〜S21及びS25〜S27までの処理が無誤差演算を用いて実行される。
【0086】
次に、ステップS22において、データ変換処理部13は、可変長整数データ記憶部14から係数aii及び係数b(i=1,…,5)を順次読み出し、可変長整数データ形式から浮動小数点データ形式に変換し、変換した係数aii及び係数bを浮動小数点データ記憶部12に格納する。
【0087】
次に、ステップS23において、座標変換処理部15aは、浮動小数点データ記憶部12から係数aii及び係数b(i=1,…,5)を順次読み出し、浮動小数点演算部15bを用いて、微小関節角度変化量Δθ=b/aii(i=1,…,5)を算出し、浮動小数点データ記憶部12に格納する。
【0088】
次に、ステップS24において、座標変換処理部15aは、浮動小数点データ記憶部12から直前の関節角度値θ’及び微小関節角度変化量Δθ(i=1,…,5)を順次読み出し、浮動小数点演算部15bを用いて、式(18)に従って関節角度θ=θ’+Δθ(i=1,…,5)を算出し、浮動小数点データ記憶部12に格納する。このとき、外部インターフェース部11は、浮動小数点データ記憶部12から関節角度θ,θ,θ,θ,θを読み出してロボットアーム部2へ出力する。
【0089】
ロボットアーム部2は、ロボットアーム21の各関節角度が関節角度θ,θ,θ,θ,θとなるようにロボットアーム21を動作させる。なお、手首の関節角度θは、3次元操作グローブ3から直接取得することができるので、3次元操作グローブ3により検出された関節角度θがロボットアーム制御装置1を介してロボットアーム部2へ出力され、ロボットアーム部2は、ロボットアーム21の手首の関節角度が関節角度θとなるようにロボットアーム21を動作させる。上記の処理が制御時間間隔ごとに繰り返され、ロボットアーム21の先端位置が操作者Mの手首の位置に応じて正確に制御される。
【0090】
上記の処理により、本実施の形態では、ロボットアーム制御処理において用いられる逆変換制御演算(連立一次方程式解法)に使用される数値を可変長の整数により表現するとともに、除算を実行することなく(最後の除算を除く)、加算、減算及び乗算のみを用いた無誤差演算処理を実行し、制御演算誤差をなくすことができる。
【0091】
この結果、ロボットアーム21の先端部を高精度に制御することができるとともに、制御処理の破綻をなくしてロボットアーム21の動作の暴走等をなくすことができ、ロボットアーム21の動作の安定化及び高信頼化を図ることができる。また、ロボットアーム21の暴走防止対策等が不要となるので、ロボットアーム制御装置1の構成を単純化することができ、装置の低コスト化を実現することができる。
【0092】
なお、本実施の形態では、操作者の手首の位置及び方向を検出し、これらを目標位置及び目標方向として制御したが、本発明による制御例は、この例に特に限定されず、3次元操作グローブ3、3次元位置方向センサ4及び3次元ディスプレイ5を省略し、テーチングを行うことにより浮動小数点データ記憶部12に記憶した目標位置及び目標方向となるようにロボットアーム21を制御する等の他の制御例にも適用可能である。また、ロボットアーム21を制御対象としたが、この例に特に限定されず、ハンド22を制御対象にする等の種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の一実施の形態によるロボットアーム制御装置を用いたロボットアーム制御システムの構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示すロボットアーム制御装置の構成を示すブロック図である。
【図3】浮動小数点データ及び可変長整数データのデータ構成の一例を示す図である。
【図4】図1に示すロボットアーム部における右側のロボットアームの構成を示す模式図である。
【図5】図3に示す右側のロボットアームの座標系を説明するための図である。
【図6】図1に示すロボットアーム制御装置によるロボットアーム制御処理を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0094】
1 ロボットアーム制御装置
2 ロボットアーム部
3 3次元操作グローブ
4 3次元位置方向センサ
5 3次元ディスプレイ
11 外部インターフェース部
12 浮動小数点データ記憶部
13 データ変換処理部
14 可変長整数データ記憶部
15 誤差有制御処理部
15a 座標変換処理部
15b 浮動小数点演算部
16 無誤差制御処理部
16a 方程式解法処理部
16b 可変長整数演算部
21 ロボットアーム
21a 上腕
21b 前腕
22 ハンド
23 胴体部
24 カメラ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
関節を介して複数のリンクを連結したリンク機構の所定部位を目標3次元位置及び目標方向に制御する位置制御装置であって、
リンク機構の所定部位の目標3次元位置データ及び目標方向データからなる目標データをP、リンク機構の各関節角度をθとし、目標データPから関節角度θを求める解法処理に使用されるデータを固定長数値データ形式から可変長整数データ形式へ変換する変換手段と、
前記解法処理において、前記変換手段により変換された可変長整数データ形式のデータを用いて、除算を除く加算、減算及び乗算からなる無誤差演算を実行する無誤差演算手段とを備えることを特徴とする位置制御装置。
【請求項2】
前記変換手段は、前記無誤差演算手段の演算結果を可変長整数データ形式から固定長数値データ形式へ変換し、
前記解法処理において、前記変換手段により変換された固定長数値データ形式の演算結果を用いて1回のみの除算を含む固定長数値演算を実行することにより固定長数値データ形式の関節角度θを求める誤差演算手段をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の位置制御装置。
【請求項3】
前記無誤差演算手段は、θ=θ’+Δθ(i=1,…,n)(ここで、θは関節iの求める関節角度、θ’は微小時間Δt前の関節iの関節角度、Δθは微小時間Δt経過後の関節iの微小関節角度変化量、nは求める関節角度θの数)とし、n元連立一次方程式AΔθ=B(ここで、Aはその要素aij(i=1,…,n、j=1,…,n)がリンク機構のリンク長及び微小時間Δt前の関節iの関節角度θ’により決定される係数行列、Bはその要素b(i=1,…,n)が目標データP及び微小時間Δt前の位置方向データP’により決定されるベクトル)をAnΔθ=Bn(ここで、Anは対角要素an+1ii(i=1,…,n)以外が0となる対角行列、Bnは要素bn+1(i=1,…,n)のベクトル)に変形したときの係数データan+1ii及び係数データbn+1を、除算を除く加算、減算及び乗算からなる無誤差演算を用いて求め、
前記変換手段は、前記無誤差演算手段により求められた係数データan+1ii及び係数データbn+1を可変長整数データ形式から固定長数値データ形式へ変換し、
前記誤差演算手段は、前記変換手段により変換された固定長数値データ形式の係数データan+1ii及び係数データbn+1を用いて、θ=θ’+bn+1/an+1ii(i=1,…,n)を固定長数値演算により求めることを特徴とする請求項2記載の位置制御装置。
【請求項4】
操作者の所定部位の3次元位置及び方向を検出する検出手段をさらに備え、
前記検出手段により検出された3次元位置及び方向を前記リンク機構の所定部位の目標3次元位置データ及び目標方向データとして用いて、前記リンク機構の所定部位を目標3次元位置及び目標方向に制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の位置制御装置。
【請求項5】
関節を介して複数のリンクを連結したリンク機構の所定部位を目標3次元位置及び目標方向に制御するロボットアーム制御方法であって、
前記リンク機構の所定部位の目標3次元位置データ及び目標方向データからなる目標データをP、前記リンク機構の各関節角度をθとし、目標データPから関節角度θを求める解法処理に使用されるデータを固定長数値データ形式から可変長整数データ形式へ変換するステップと、
前記解法処理において、変換された可変長整数データ形式の係数データを用いて、除算を除く加算、減算及び乗算からなる無誤差演算を実行するステップとを含むことを特徴とする位置制御方法。
【請求項6】
関節を介して複数のリンクを連結したリンク機構の所定部位を目標3次元位置及び目標方向に制御するための位置制御プログラムであって、
前記リンク機構の所定部位の目標3次元位置データ及び目標方向データからなる目標データをP、前記リンク機構の各関節角度をθとし、目標データPから関節角度θを求める解法処理に使用されるデータを固定長数値データ形式から可変長整数データ形式へ変換する変換手段と、
前記解法処理において、前記変換手段により変換された可変長整数データ形式の係数データを用いて、除算を除く加算、減算及び乗算からなる無誤差演算を実行する無誤差演算手段としてコンピュータを機能させることを特徴とする位置制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−7837(P2007−7837A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−325277(P2005−325277)
【出願日】平成17年11月9日(2005.11.9)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度独立行政法人情報通信研究機構、研究テーマ「超高速知能ネットワーク社会に向けた新しいインタラクション・メディアの研究開発」に関する委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(393031586)株式会社国際電気通信基礎技術研究所 (905)
【Fターム(参考)】