作業車両
【課題】トラクタ等の旋回制御において、ステアリングハンドルの操向操作を同一の切り角度に操作した場合、車両に軸架されている車輪のトレッド幅の違いがあっても、旋回半径を同一にするステアリング制御機構を提供する。
【解決手段】作業車両4に軸架している左右の後輪5は、油圧シリンダの伸縮作動によってトレッド幅が変更調節可能に構成され、旋回制御に関連する左右の前輪2の切れ角データは、後輪のトレッド幅に対応して決められる構成とし、前記コントローラは、トレッド幅の変更調節に際し、選択したトレッド幅に対応した切れ角データが自動的に設定される構成としたことを特徴とする作業車両のステアリング制御機構とする。
【解決手段】作業車両4に軸架している左右の後輪5は、油圧シリンダの伸縮作動によってトレッド幅が変更調節可能に構成され、旋回制御に関連する左右の前輪2の切れ角データは、後輪のトレッド幅に対応して決められる構成とし、前記コントローラは、トレッド幅の変更調節に際し、選択したトレッド幅に対応した切れ角データが自動的に設定される構成としたことを特徴とする作業車両のステアリング制御機構とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、農業用トラクタ、乗用管理機、或いは高所作業車等の作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から車両に軸架している車輪のトレッドを、変更・調節する技術は、広く知られており、例えば、特開2000−301906号公開特許公報に示されているように、本件の出願人によって出願した公知の技術がある。
【0003】
該公報に記載されている作業車両のトレッド変更装置は、車両の前輪、または後輪のトレッドを変更する油圧シリンダと、このトレッドを検出するストロークセンサとを備え、前記車両のエンジン始動時に前輪、または後輪のトレッドが変更状態にあることを検出したときにはトレッドを変更可能な状態とする入・切スイッチを「入」から「切」、「切」から「入」へ操作するまで左右後輪ブレーキを作動して車両の発進を一旦牽制する構成としたものとなっている。
【0004】
このように、公知の技術は、トレッドの変更に伴う、事後の走行の安全を期すための技術手段である。
【特許文献1】特開2000−301906号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来から、この種の作業車両、特に、農業用のトラクタにあっては、圃場の畝幅に左右の車輪位置を合わせるために、トレッド幅の変更・調節機構を装備する機種がほとんどで、これらの中に、コントローラの制御に基づく旋回制御機構を装備した車両がある。通常、作業車両の旋回制御機構は、ステアリングハンドルの操向操作によって前輪を操舵操作するのに関連して、例えば、旋回内側のサイドクラッチを切ったり、或いは、旋回内側のサイドブレーキを働かせて内側車輪に制動をかけながら旋回範囲(旋回半径)を狭く(旋回半径を小さく)して小回りの効く構成にしている。
【0006】
このような旋回制御において、トラクタは、ステアリングハンドルの操向操作を同一の切り角度に操作しても、車両に軸架されている車輪のトレッド幅の違いによって、旋回半径に大きな差が生じる課題があった。
【0007】
また、旋回制御における作業車両の旋回半径は、トレッド幅の差異と同等に、タイヤサイズの大小によっても大きく影響を受け、例えば、小径サイズのタイヤに代えて大径サイズのタイヤを装着して、同一の切り角データに基づき旋回制御をすると、旋回半径に大きく違いがでる課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、上記課題を解決するために、つぎの如き技術手段を講じている。
まず、請求項1に記載した発明は、ステアリングハンドル(1)の操作によって左右の前輪(2),(2)を操向操作すると、コントローラ(3)によって旋回制御が行われる作業車両(4)において、該作業車両(4)に軸架している左右の後輪(5),(5)は、油圧シリンダ(6),(6)の伸縮作動によってトレッド幅が変更調節可能に構成され、前記旋回制御に関連する左右の前輪(2),(2)の切れ角データは、後輪(5),(5)のトレッド幅に対応して決められる構成とし、前記コントローラ(3)は、トレッド幅の変更調節に際し、選択したトレッド幅に対応した切れ角データが自動的に設定される構成としたことを特徴とする作業車両の構成とする。
【0009】
予め、トレッド幅に応じて決めている切れ角データが、トレッドの変更毎に自動的に設定されるから、トレッド幅の調節後に行う旋回制御作用も、調節前とほとんど差異のない旋回半径で旋回することができるものとなった。しかも、切れ角データは、自動的にトレッド幅に応じて更新されるから、設定変更等の操作をする手数が省ける利点もある。
【0010】
そして、請求項2に記載した発明は、前記旋回制御に関連する切れ角データは、作業車両(4)に装着するタイヤ(7)のサイズ毎に決定され、前記コントローラ(3)は、前記作業車両(4)のタイヤ(7)をサイズの異なる別のタイヤ(7)に変更してサイズの設定操作をすると、そのサイズに対応した切れ角データが、自動的に設定される構成としたことを特徴とする請求項1記載の作業車両の構成とする。
【0011】
サイズの異なるタイヤに付け替えてサイズの設定操作をすると、それに関連して、自動的にサイズに対応した切れ角データに更新されるものである。
【発明の効果】
【0012】
まず、請求項1の発明は、トレッド幅に応じて、予め決めている切れ角データを、トレッドの変更毎に自動的に設定する構成であるから、トレッド調節後に行う旋回制御作用も、調節前の旋回に比較してほとんど差異のない旋回半径で旋回することができる優れた特徴がある。
【0013】
しかも、切れ角データは、自動的にトレッド幅に応じて更新されるから、設定変更等の操作をする手数が省ける特徴もある。
そして、請求項2の発明は、サイズの異なるタイヤに着け代えてサイズの設定操作をすると、それに関連して、サイズに対応した切れ角データが、自動的に更新される特徴がある。従来、タイヤ交換の度に、旋回制御時の旋回半径に大小の差が発生していたが、その弊害がこの発明によって解消できた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明を、図面に示す農業用トラクタ4(本件出願の作業車両4に相当する)に装備しているトレッド調節装置、および旋回制御機構の一例につき実施例を具体的に説明する。
【0015】
まず、トラクタ4は、図4、及び図5に示すように、前部のボンネット10内にエンジン11を搭載し、このエンジン11の後部に主クラッチを内装するクラッチハウジング、ギヤ式変速装置を内装するミッションケース12を一体に連結して設けている。そして、前記ミションケース12の左右両側にトレッド調節可能なリヤアクスルケース13を設け、左右両側の同ケース13の端部に後輪5,5を軸架して設けている。
【0016】
また、前記エンジン11の下方には、フロントアクスルケースを前後軸芯周りにローリング自在に設けると共に、この両側端に前輪2,2を操向自在に設けている。
そして、操縦席14は、車体上に搭載されているキャビン15内に設けられ、前方にはメータパネル16やステアリングハンドル1、その他の各操作レバー類を集中して配置した構成としている。また、レバー類の近傍には、後述(図1参照)するトレッド調節セットスイッチ17やトレッド幅設定ダイヤル18等の各種設定器を設け、これらの設定信号を前記操縦席14下方の制御部であるコントローラ3へ入力する構成としている。
【0017】
そして、図4において、前記ミッションケース12の後方上部には、作業機昇降用の油圧シリンダを内装したシリンダケース20を設けている。そして、リフトアーム21は、上記シリンダケース20内の油圧シリンダのピストンを伸縮することによって上下に回動し、これに連結している後部のロータリー耕耘装置22を昇降する構成としている。また、前記リフトアーム21の一方には作業機の高さを検出するポテンショメータ式のリフトアーム角センサが設けられ、作業機昇降用レバーのポテンショメータの検出位置と、上記リフトアーム21の回転設定位置とが一致するように、前記した昇降制御用のコントローラによる制御信号で油圧回路内の作業機上昇、又は下降用の切替制御弁が切り替えられる構成となっている。
【0018】
つぎに、旋回制御機構について説明する。
コントローラ3は、図1に示すように、入力側に操舵角センサ25が接続され、前記ステアリングハンドル1の操向操作が行われると、その操舵角度が検出されて入力される構成としている。そして、コントローラ3は、図面に示すように、出力側に左ソレノイドバルブ26と右ソレノイドバルブ27とが接続して設けられ、制御信号によって電磁的に油路が切り替わり、ブレーキ装置(図6参照)28,29の操作が行われる構成となっている。
【0019】
そして、コントローラ3による旋回制御は、前記操舵角センサ25から入力された検出情報が左旋回の場合には、旋回内側となる左ソレノイド26に制御信号を出力して油路を切り替え、左ブレーキ装置28を働かせて左後輪5に制動をかけ、逆に、右旋回ならば右ソレノイドバルブ27を介して右ブレーキ装置29を働かせて右後輪5に制動力を働かせる構成となっている。そのとき、コントローラ3は、予め、設定されている切り角データに基づいた制動タイミングによって、上記の通り旋回内側のブレーキ装置28、又は29に制動力を働かせる構成となっている。
【0020】
なお、上述した切り角データは、後輪5,5のトレッド幅に対応して決められ、前記コントローラ3は、後述する構成によって、トレッド幅の変更・調節に際し、まず、トレッド幅設定ダイヤル18によって変更するトレッド幅を設定し、続いて、トレッド調節セットスイッチ17をON操作したときに、調節するトレッド幅に対応した切れ角データが、自動的に設定され、登録される構成となっている。
【0021】
そして、旋回制御時の旋回半径は、トラクタ4に装着しているタイヤサイズによっても差異が生じることが知られている。そのために、切れ角データは、トラクタ4に装着するタイヤ7についても、サイズ毎に決定されている。したがって、コントローラ3は、トラクタ4のタイヤ7を、別のタイヤ7に変更するときには、メーターパネル16のタイヤサイズ設定装置23を操作するが、その操作に伴って、変更したタイヤサイズに対応した切れ角データが、自動的に設定される構成としている。
【0022】
つぎに、トレッド調節装置について説明する。
まず、図6において、中央に配置した後輪デフ機構30から左右に延長された駆動軸31,31は、前記ブレーキ装置28,29と、減速装置32,32とを介してそれぞれ左右伝動筒33,33に走行動力が伝動される構成となっている。一方、後輪5,5は、図面に示すように、それぞれホイールシャフト34,34に軸着されており、更に、そのホイールシャフト34,34がホイール支持ケース35,35に軸受け支持された構成となっている。
【0023】
そして、前記ホイールシャフト34,34は、図6に示すように、車体側の前記伝動筒33,33に対して、先端部(外側)の後輪5,5が左右伸縮自在(トレッド幅の調節)になるようにスプライン嵌合して摺動自由とし、前記後輪デフ機構30から走行動力が後輪5,5まで伝動できる構成としている。
【0024】
そして、トレッド調節用の油圧シリンダ6,6は、シリンダロット36をハウジングケース37(車体側)に固着し、前記伝動筒33,33と外側のホイール支持ケース35,35との間に設けるが、シリンダ室(外)6aとシリンダ室(内)6bとからなり、両室6a,6bの間における伸縮作動によってトレッド幅の調節ができる構成としている。
【0025】
図6に示した実施例は、説明のため、解り易いように、左側油圧シリンダ6は縮小時の状態(位置)に図示し、右側シリンダ6は伸長した時の状態(位置)に図示している。
そして、この場合、左右の油圧バルブ40,40は、図6に示すように、それぞれオイルタンクT(ポンプP)と油圧シリンダ6,6側の両室6a,6bとにそれぞれ配管41,41で接続し、シリンダ室(外)6aは、左側の配管41から、シリンダ内室6bは、右側の配管41からそれぞれ給・排油が行われ、伸縮する構成となっている。
【0026】
以上のように構成したトレッド調節装置は、図1に示すトレッド幅設定ダイヤル18によって、予め、調節するトレッド幅を設定し、その後、トレッド調節セットスイッチ17をON操作することによって行うものである。
【0027】
そして、ストロークセンサ42は、図6に示すように、前記油圧シリンダ6,6の横に平行に沿わせて設けるが、まず、内側端部を前記車体側のハウジングケース37に取り付け、外側端部をホイール支持ケース35に固定して、トレッド幅とその変化を計測できる構成としている。
【0028】
つぎに、コントローラ3は、図1に示すように、入力側に、既に説明したトレッド幅調節セットスイッチ17と、トレッド幅設定ダイヤル18と、ストロークセンサ(左)(右)42,42と、操舵角センサ25とを接続して各情報が入力される構成としている。
【0029】
そして、コントローラ3は、出力側にトレッド幅を調節する油圧シリンダ6,6の油路を切り替える左右の油圧バルブ40,40と、ブレーキ装置28,29への油路を切り替えるソレノイドバルブ(左)(右)26,27とを接続した構成としている。
【0030】
そして、コントローラ3は、メーターパネル16に、タイヤの取替えにあたり、タイヤサイズの変更を設定操作するために装備したタイヤサイズ設定装置23から、付け替えるタイヤサイズが通信によって入力され、そのタイヤサイズに対応する切り角データが設定される構成となっている。
【0031】
以上のように構成したトラクタ4は、トレッド幅を変更・調節する場合、まず、トレッド幅設定ダイヤル18を操作してトレッド幅(調節するトレッド幅)を設定し、トレッド幅調節セットスイッチ17をON操作すると、コントローラ3は、油圧バルブ(左)(右)に制御信号を出力して自動的に切替操作が行われ、油圧シリンダ6,6の伸長(又は縮小)によって、後輪5,5のトレッド幅が、トレッド幅設定ダイヤル18によって設定されている幅に変更・調節される。
【0032】
このようにして、後輪5,5のトレッド幅が調節されると、コントローラ3は、図2のフローチャートに示すように、調節したトレッド幅に対応する切り角データA〜Eのいずれかが自動的に設定される。
【0033】
そして、トラクタ4は、オペレータの運転によって作業を開始し、例えば、圃場の端に達して旋回する場合には、まず、旋回方向側にステアリングハンドル1を旋回操作する。すると、コントローラ3は、操舵角センサ25から入力された検出情報(操舵角度)が微小な方向変更程度を超えた操舵角と判断すると、旋回制御に移ることになる。そして、コントローラ3は、トレッド幅に対応して設定されている切り角データに基づき演算された作動タイミング、即ち設定旋回角によって、旋回内側のブレーキ装置28、又は29を制動するソレノイドバルブ26、又は27に制御信号を出力して切替作動によって油路を切替、制動することになる(図4)。
【0034】
この場合、トラクタ4は、後輪5,5のトレッド幅によって、ステアリングハンドル1の操向操作角度が同じであっても、旋回半径が左右されるが、トレッド幅に対応した切れ角データが設定されているから、旋回内側の後輪5に適確なタイミングで制動力が働いて、適確に旋回半径に制御されることになる。
【0035】
このように、この発明の実施例は、トレッド幅に応じて、予め決めている切れ角データが、トレッド幅の変更毎に自動的にコントローラ3に設定されるから、トレッド調節後に行う旋回制御作用が、調節前の旋回制御に比較してほとんど差異のない旋回半径で旋回することができるものとなっている。
【0036】
しかも、切れ角データは、トレッド幅の変更操作としてトレッド幅設定ダイヤル18で設定したトレッド幅に応じて、コントローラ3に自動的に更新されるから、旋回制御のために、別に設定変更等の操作をする手数が省ける利点がある。
【0037】
つぎに、図3のフローチャートで示すサイズの異なるタイヤ7に交換した場合、コントローラ3には、タイヤサイズ設定装置23から通信によって選択したタイヤサイズが入力され、このサイズに対応する切り角データが自動的に設定される。
【0038】
このように、実施例は、サイズの異なるタイヤに着け代えてタイヤサイズ設定装置23によって、メーターパネル16にサイズの設定操作をすると、それに関連して、サイズに対応した切れ角データが、自動的にコントローラ3に通信手段で入力されて更新されるから、従来のように、タイヤ交換の度に、旋回制御時の旋回半径に大小の差がでる等の弊害を未然に解消することができる特徴がある。
【0039】
そして、既に説明したトレッド幅設定ダイヤル18は、具体的には図示していないが、ダイヤルを手操作で回しながらトレッド幅を設定する構成にしているが、このダイヤル式に代えて、図8に示すように、トレッド幅を段階(実施例は1〜5段階)に分け、各段階ごとにLEDを配置して構成した選択スイッチ式に構成としてもよい。このように構成すると、トレッド幅の設定操作が楽になって、簡単に設定できる利点がある。
【0040】
つぎに、後輪5,5のトレッド調節装置において、調節位置をロックするためのブラケット46とロックプレート47に関する実施例を説明する。
まず、トレッド幅の調節装置は、図7に基づいて、既に、説明したが、実施例の場合、図9に示すように、油圧シリンダ6のシリンダ室(外)6aを、後輪5のホイール支持ケース35に連結して、左右方向にトレッド幅の変更・調節ができる構成としている。そして、ブラケット46は、図9に示すように、一端をホイール支持ケース35に取付け、図10(従来の構成)、及び図11(実施例)に示すように、長手方向に2本の長孔48,48を開口して設けてスライドとロック可能にし、ロックプレート47を外側から当てて、その外からロックボルト49を挿し込んでハウジングケース50に螺合して固着する構成となっている。
【0041】
そして、ブラケット46とロックプレート47は、図10に示す従来の構成では、ブラケット46の外側にロックプレート47を重ねて、ロックプレート47の挿通孔51を長孔48,48に重ね合わせ、外側からロックボルト49を挿し込んで前記ハウジングケース50にねじ込んで固定する構成としている。
【0042】
それに対して、実施例は、図11に示すように、ブラケット46に設けている上下2本の長孔48,48の外側にそれぞれロック孔53を一定間隔ごとに開孔して構成する。そして、ロックプレート47は、上下の両端にロックピン54,54を所定の間隔ごとに配列し、突出させて設け、前記ロック孔53に挿し込みができる構成としている。
【0043】
以上のように構成した実施例は、トレッド幅の変更・調節後にホイール支持ケース35を車体側のハウジングケース50にロックするとき、ロックプレート47のロックピン54を、ブラケット46のロック孔53に挿し込んで固定し、更に、ロックボルト49を、ロックプレート47の外側から挿通孔51とブラケット46の長孔48,48を通してハウジングケース50にねじ込んで固着する。
【0044】
このように、実施例は、図11に示すように、従来装置(図10参照)に比較して、ロックプレート47のロックピン54をブラケット46のロック孔53に挿入して係合し、ロックボルト49(図9参照)を螺合して固着するから、調節位置、すなわち、トレッド幅を確実に保持できる特徴がある。そして、実施例は、製造コストの面でも、従来品に比較して僅かなアップで製造できるから、きわめて有効なものである。
【0045】
つぎに、トラクタ4は、図12に示すように、プラウ作業で傾斜地を、傾斜に沿わせて(等高線に沿わせて)走行するとき、傾斜の上側を走行する車輪5の分担重量が軽くなるから、上側の車輪5についてトレッド幅の修正を容易に行うことができる。したがって、トラクタ4は、トレッド幅の変更、調節をして片側が、最初にトレッド幅設定ダイヤル18で設定した幅まで正しく移動していないときなどに、傾斜地で、例えばプラウ作業を行うと分担重量が軽いため、上側の車輪5を容易に変更・調節することができる。
【0046】
また、このようなプラウ作業時においてトレッド幅を広げた状態にしておくと、溝に落ち込んでいる側の後輪5のトレッド幅が狭く(元に戻る)なる傾向になる。これは、溝に落ちている側に後輪5には、車体の荷重が大きく作用するためである。そこで、前述のように溝に落ち込んでいる側の後輪5のトレッド幅が狭く(元に戻る)なる場合には、反対側の溝に落ち込んでいない側の車輪5のトレッド幅を広げるようにする。これにより、設定している左右後輪5,5間のトレッド幅が確保可能となる。
【0047】
この場合、トラクタ4は、トレッド幅を変更するに当たり、傾斜地を往復走行させて上側に位置する片側の車輪5ずつトレッド幅を変更すると、左右の両輪5,5を楽に変更、調節することができる利点がある。
【0048】
つぎに、図13、及び図14に示す実施例について説明する。
この実施例は、図9、及び図10に示した実施例において説明したロックボルト49を、伸縮するシリンダに代えて構成したものである。
【0049】
すなわち、シリンダ式ロックボルト60は、図面に示すように、ブラケット46のロック孔61に設け、ハウジングケース62の固定穴63に挿し込んで調節位置にロックする構成としている。
【0050】
従来、農家が行う前輪トレッド幅の調節は、不慣れのために、ロックボルトの締め付け不良が多く発生していたが、この実施例は、前輪のトレッド幅の変更、調節について、ロックボルトをシリンダ式に構成しているから、自動的に伸長して作動し、固定穴63に係合して確実に位置の固定ができるものとなった。
【0051】
つぎに、トラクタ4の左右ブレーキペダル65,65における非連結警報ランプ66について、図15、及び図16に基づき実施例を説明する。
従来、この種の警報ランプは、左右のペダルが連結されていないときには、非連結の状態にあることを、電気的に検出して操縦席のメータパネル上に警報ランプで警告する構成となっている。
【0052】
それに対して、実施例は、図15、及び図16に示すように、非連結警報ランプ66を連結プレート67の上面に設け、連結状態のときには、警報ランプ66がオペレータから目視できない構成にしている。したがって、警報ランプ66は、図15に示すように、非連結状態にあるときにのみ、オペレータから見ることができて、図16に示すように、左右のブレーキペダル65,65が連結プレート67で連結されているときにはペダルの裏側にあって見ることができない構成となっている。
【0053】
以上のように、実施例の非連結警報ランプ66は、連結プレート67に取り付けたから、両方のペダル65,65を連結すると裏側に隠れて見えなくなり、非連結状態のときに、図15に示すように、オペレータが目視することができる位置にある。なお、この非連結警報ランプ66は、エンジンの駆動中には、常に、ONの状態にして安全を確保できる構成としている。
【0054】
このように、実施例は、従来型の操縦席にあるメータパネル上に設けた警報ランプで警告する構成に比較すると、ハーネス等の配線を不要とし、構成を簡単にしているから、コストダウンを図ることができた特徴がある。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】制御機構を示すコントローラのブロック図
【図2】作用のフローチャート図
【図3】作用のフローチャート図
【図4】作用のフローチャート図
【図5】トラクタの側面図
【図6】一部を断面して示すトラクタの背面作用図
【図7】トレッド幅調節機構の断面図
【図8】実施例に係るトレッド幅設定装置
【図9】別実施例のトレッド調節機構の一部の断面図
【図10】従来のブラケットとロックプレート側面図
【図11】実施例のブラケットとロックプレートの側面図
【図12】実施例のトラクタの背面図
【図13】実施例のブラケットの斜面図
【図14】実施例のロック状態を示す一部破断した平面図
【図15】左右のブレーキペダルを非連結状態にした斜面図
【図16】左右のブレーキペダルを連結状態にした斜面図。
【符号の説明】
【0056】
1 ステアリングハンドル
2,2 左右前輪
3 コントローラ
4 作業車両
5,5 左右後輪
6,6 油圧シリンダ
6a シリンダ室(外)
6b シリンダ室(内)
7 タイヤ
【技術分野】
【0001】
この発明は、農業用トラクタ、乗用管理機、或いは高所作業車等の作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から車両に軸架している車輪のトレッドを、変更・調節する技術は、広く知られており、例えば、特開2000−301906号公開特許公報に示されているように、本件の出願人によって出願した公知の技術がある。
【0003】
該公報に記載されている作業車両のトレッド変更装置は、車両の前輪、または後輪のトレッドを変更する油圧シリンダと、このトレッドを検出するストロークセンサとを備え、前記車両のエンジン始動時に前輪、または後輪のトレッドが変更状態にあることを検出したときにはトレッドを変更可能な状態とする入・切スイッチを「入」から「切」、「切」から「入」へ操作するまで左右後輪ブレーキを作動して車両の発進を一旦牽制する構成としたものとなっている。
【0004】
このように、公知の技術は、トレッドの変更に伴う、事後の走行の安全を期すための技術手段である。
【特許文献1】特開2000−301906号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来から、この種の作業車両、特に、農業用のトラクタにあっては、圃場の畝幅に左右の車輪位置を合わせるために、トレッド幅の変更・調節機構を装備する機種がほとんどで、これらの中に、コントローラの制御に基づく旋回制御機構を装備した車両がある。通常、作業車両の旋回制御機構は、ステアリングハンドルの操向操作によって前輪を操舵操作するのに関連して、例えば、旋回内側のサイドクラッチを切ったり、或いは、旋回内側のサイドブレーキを働かせて内側車輪に制動をかけながら旋回範囲(旋回半径)を狭く(旋回半径を小さく)して小回りの効く構成にしている。
【0006】
このような旋回制御において、トラクタは、ステアリングハンドルの操向操作を同一の切り角度に操作しても、車両に軸架されている車輪のトレッド幅の違いによって、旋回半径に大きな差が生じる課題があった。
【0007】
また、旋回制御における作業車両の旋回半径は、トレッド幅の差異と同等に、タイヤサイズの大小によっても大きく影響を受け、例えば、小径サイズのタイヤに代えて大径サイズのタイヤを装着して、同一の切り角データに基づき旋回制御をすると、旋回半径に大きく違いがでる課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、上記課題を解決するために、つぎの如き技術手段を講じている。
まず、請求項1に記載した発明は、ステアリングハンドル(1)の操作によって左右の前輪(2),(2)を操向操作すると、コントローラ(3)によって旋回制御が行われる作業車両(4)において、該作業車両(4)に軸架している左右の後輪(5),(5)は、油圧シリンダ(6),(6)の伸縮作動によってトレッド幅が変更調節可能に構成され、前記旋回制御に関連する左右の前輪(2),(2)の切れ角データは、後輪(5),(5)のトレッド幅に対応して決められる構成とし、前記コントローラ(3)は、トレッド幅の変更調節に際し、選択したトレッド幅に対応した切れ角データが自動的に設定される構成としたことを特徴とする作業車両の構成とする。
【0009】
予め、トレッド幅に応じて決めている切れ角データが、トレッドの変更毎に自動的に設定されるから、トレッド幅の調節後に行う旋回制御作用も、調節前とほとんど差異のない旋回半径で旋回することができるものとなった。しかも、切れ角データは、自動的にトレッド幅に応じて更新されるから、設定変更等の操作をする手数が省ける利点もある。
【0010】
そして、請求項2に記載した発明は、前記旋回制御に関連する切れ角データは、作業車両(4)に装着するタイヤ(7)のサイズ毎に決定され、前記コントローラ(3)は、前記作業車両(4)のタイヤ(7)をサイズの異なる別のタイヤ(7)に変更してサイズの設定操作をすると、そのサイズに対応した切れ角データが、自動的に設定される構成としたことを特徴とする請求項1記載の作業車両の構成とする。
【0011】
サイズの異なるタイヤに付け替えてサイズの設定操作をすると、それに関連して、自動的にサイズに対応した切れ角データに更新されるものである。
【発明の効果】
【0012】
まず、請求項1の発明は、トレッド幅に応じて、予め決めている切れ角データを、トレッドの変更毎に自動的に設定する構成であるから、トレッド調節後に行う旋回制御作用も、調節前の旋回に比較してほとんど差異のない旋回半径で旋回することができる優れた特徴がある。
【0013】
しかも、切れ角データは、自動的にトレッド幅に応じて更新されるから、設定変更等の操作をする手数が省ける特徴もある。
そして、請求項2の発明は、サイズの異なるタイヤに着け代えてサイズの設定操作をすると、それに関連して、サイズに対応した切れ角データが、自動的に更新される特徴がある。従来、タイヤ交換の度に、旋回制御時の旋回半径に大小の差が発生していたが、その弊害がこの発明によって解消できた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明を、図面に示す農業用トラクタ4(本件出願の作業車両4に相当する)に装備しているトレッド調節装置、および旋回制御機構の一例につき実施例を具体的に説明する。
【0015】
まず、トラクタ4は、図4、及び図5に示すように、前部のボンネット10内にエンジン11を搭載し、このエンジン11の後部に主クラッチを内装するクラッチハウジング、ギヤ式変速装置を内装するミッションケース12を一体に連結して設けている。そして、前記ミションケース12の左右両側にトレッド調節可能なリヤアクスルケース13を設け、左右両側の同ケース13の端部に後輪5,5を軸架して設けている。
【0016】
また、前記エンジン11の下方には、フロントアクスルケースを前後軸芯周りにローリング自在に設けると共に、この両側端に前輪2,2を操向自在に設けている。
そして、操縦席14は、車体上に搭載されているキャビン15内に設けられ、前方にはメータパネル16やステアリングハンドル1、その他の各操作レバー類を集中して配置した構成としている。また、レバー類の近傍には、後述(図1参照)するトレッド調節セットスイッチ17やトレッド幅設定ダイヤル18等の各種設定器を設け、これらの設定信号を前記操縦席14下方の制御部であるコントローラ3へ入力する構成としている。
【0017】
そして、図4において、前記ミッションケース12の後方上部には、作業機昇降用の油圧シリンダを内装したシリンダケース20を設けている。そして、リフトアーム21は、上記シリンダケース20内の油圧シリンダのピストンを伸縮することによって上下に回動し、これに連結している後部のロータリー耕耘装置22を昇降する構成としている。また、前記リフトアーム21の一方には作業機の高さを検出するポテンショメータ式のリフトアーム角センサが設けられ、作業機昇降用レバーのポテンショメータの検出位置と、上記リフトアーム21の回転設定位置とが一致するように、前記した昇降制御用のコントローラによる制御信号で油圧回路内の作業機上昇、又は下降用の切替制御弁が切り替えられる構成となっている。
【0018】
つぎに、旋回制御機構について説明する。
コントローラ3は、図1に示すように、入力側に操舵角センサ25が接続され、前記ステアリングハンドル1の操向操作が行われると、その操舵角度が検出されて入力される構成としている。そして、コントローラ3は、図面に示すように、出力側に左ソレノイドバルブ26と右ソレノイドバルブ27とが接続して設けられ、制御信号によって電磁的に油路が切り替わり、ブレーキ装置(図6参照)28,29の操作が行われる構成となっている。
【0019】
そして、コントローラ3による旋回制御は、前記操舵角センサ25から入力された検出情報が左旋回の場合には、旋回内側となる左ソレノイド26に制御信号を出力して油路を切り替え、左ブレーキ装置28を働かせて左後輪5に制動をかけ、逆に、右旋回ならば右ソレノイドバルブ27を介して右ブレーキ装置29を働かせて右後輪5に制動力を働かせる構成となっている。そのとき、コントローラ3は、予め、設定されている切り角データに基づいた制動タイミングによって、上記の通り旋回内側のブレーキ装置28、又は29に制動力を働かせる構成となっている。
【0020】
なお、上述した切り角データは、後輪5,5のトレッド幅に対応して決められ、前記コントローラ3は、後述する構成によって、トレッド幅の変更・調節に際し、まず、トレッド幅設定ダイヤル18によって変更するトレッド幅を設定し、続いて、トレッド調節セットスイッチ17をON操作したときに、調節するトレッド幅に対応した切れ角データが、自動的に設定され、登録される構成となっている。
【0021】
そして、旋回制御時の旋回半径は、トラクタ4に装着しているタイヤサイズによっても差異が生じることが知られている。そのために、切れ角データは、トラクタ4に装着するタイヤ7についても、サイズ毎に決定されている。したがって、コントローラ3は、トラクタ4のタイヤ7を、別のタイヤ7に変更するときには、メーターパネル16のタイヤサイズ設定装置23を操作するが、その操作に伴って、変更したタイヤサイズに対応した切れ角データが、自動的に設定される構成としている。
【0022】
つぎに、トレッド調節装置について説明する。
まず、図6において、中央に配置した後輪デフ機構30から左右に延長された駆動軸31,31は、前記ブレーキ装置28,29と、減速装置32,32とを介してそれぞれ左右伝動筒33,33に走行動力が伝動される構成となっている。一方、後輪5,5は、図面に示すように、それぞれホイールシャフト34,34に軸着されており、更に、そのホイールシャフト34,34がホイール支持ケース35,35に軸受け支持された構成となっている。
【0023】
そして、前記ホイールシャフト34,34は、図6に示すように、車体側の前記伝動筒33,33に対して、先端部(外側)の後輪5,5が左右伸縮自在(トレッド幅の調節)になるようにスプライン嵌合して摺動自由とし、前記後輪デフ機構30から走行動力が後輪5,5まで伝動できる構成としている。
【0024】
そして、トレッド調節用の油圧シリンダ6,6は、シリンダロット36をハウジングケース37(車体側)に固着し、前記伝動筒33,33と外側のホイール支持ケース35,35との間に設けるが、シリンダ室(外)6aとシリンダ室(内)6bとからなり、両室6a,6bの間における伸縮作動によってトレッド幅の調節ができる構成としている。
【0025】
図6に示した実施例は、説明のため、解り易いように、左側油圧シリンダ6は縮小時の状態(位置)に図示し、右側シリンダ6は伸長した時の状態(位置)に図示している。
そして、この場合、左右の油圧バルブ40,40は、図6に示すように、それぞれオイルタンクT(ポンプP)と油圧シリンダ6,6側の両室6a,6bとにそれぞれ配管41,41で接続し、シリンダ室(外)6aは、左側の配管41から、シリンダ内室6bは、右側の配管41からそれぞれ給・排油が行われ、伸縮する構成となっている。
【0026】
以上のように構成したトレッド調節装置は、図1に示すトレッド幅設定ダイヤル18によって、予め、調節するトレッド幅を設定し、その後、トレッド調節セットスイッチ17をON操作することによって行うものである。
【0027】
そして、ストロークセンサ42は、図6に示すように、前記油圧シリンダ6,6の横に平行に沿わせて設けるが、まず、内側端部を前記車体側のハウジングケース37に取り付け、外側端部をホイール支持ケース35に固定して、トレッド幅とその変化を計測できる構成としている。
【0028】
つぎに、コントローラ3は、図1に示すように、入力側に、既に説明したトレッド幅調節セットスイッチ17と、トレッド幅設定ダイヤル18と、ストロークセンサ(左)(右)42,42と、操舵角センサ25とを接続して各情報が入力される構成としている。
【0029】
そして、コントローラ3は、出力側にトレッド幅を調節する油圧シリンダ6,6の油路を切り替える左右の油圧バルブ40,40と、ブレーキ装置28,29への油路を切り替えるソレノイドバルブ(左)(右)26,27とを接続した構成としている。
【0030】
そして、コントローラ3は、メーターパネル16に、タイヤの取替えにあたり、タイヤサイズの変更を設定操作するために装備したタイヤサイズ設定装置23から、付け替えるタイヤサイズが通信によって入力され、そのタイヤサイズに対応する切り角データが設定される構成となっている。
【0031】
以上のように構成したトラクタ4は、トレッド幅を変更・調節する場合、まず、トレッド幅設定ダイヤル18を操作してトレッド幅(調節するトレッド幅)を設定し、トレッド幅調節セットスイッチ17をON操作すると、コントローラ3は、油圧バルブ(左)(右)に制御信号を出力して自動的に切替操作が行われ、油圧シリンダ6,6の伸長(又は縮小)によって、後輪5,5のトレッド幅が、トレッド幅設定ダイヤル18によって設定されている幅に変更・調節される。
【0032】
このようにして、後輪5,5のトレッド幅が調節されると、コントローラ3は、図2のフローチャートに示すように、調節したトレッド幅に対応する切り角データA〜Eのいずれかが自動的に設定される。
【0033】
そして、トラクタ4は、オペレータの運転によって作業を開始し、例えば、圃場の端に達して旋回する場合には、まず、旋回方向側にステアリングハンドル1を旋回操作する。すると、コントローラ3は、操舵角センサ25から入力された検出情報(操舵角度)が微小な方向変更程度を超えた操舵角と判断すると、旋回制御に移ることになる。そして、コントローラ3は、トレッド幅に対応して設定されている切り角データに基づき演算された作動タイミング、即ち設定旋回角によって、旋回内側のブレーキ装置28、又は29を制動するソレノイドバルブ26、又は27に制御信号を出力して切替作動によって油路を切替、制動することになる(図4)。
【0034】
この場合、トラクタ4は、後輪5,5のトレッド幅によって、ステアリングハンドル1の操向操作角度が同じであっても、旋回半径が左右されるが、トレッド幅に対応した切れ角データが設定されているから、旋回内側の後輪5に適確なタイミングで制動力が働いて、適確に旋回半径に制御されることになる。
【0035】
このように、この発明の実施例は、トレッド幅に応じて、予め決めている切れ角データが、トレッド幅の変更毎に自動的にコントローラ3に設定されるから、トレッド調節後に行う旋回制御作用が、調節前の旋回制御に比較してほとんど差異のない旋回半径で旋回することができるものとなっている。
【0036】
しかも、切れ角データは、トレッド幅の変更操作としてトレッド幅設定ダイヤル18で設定したトレッド幅に応じて、コントローラ3に自動的に更新されるから、旋回制御のために、別に設定変更等の操作をする手数が省ける利点がある。
【0037】
つぎに、図3のフローチャートで示すサイズの異なるタイヤ7に交換した場合、コントローラ3には、タイヤサイズ設定装置23から通信によって選択したタイヤサイズが入力され、このサイズに対応する切り角データが自動的に設定される。
【0038】
このように、実施例は、サイズの異なるタイヤに着け代えてタイヤサイズ設定装置23によって、メーターパネル16にサイズの設定操作をすると、それに関連して、サイズに対応した切れ角データが、自動的にコントローラ3に通信手段で入力されて更新されるから、従来のように、タイヤ交換の度に、旋回制御時の旋回半径に大小の差がでる等の弊害を未然に解消することができる特徴がある。
【0039】
そして、既に説明したトレッド幅設定ダイヤル18は、具体的には図示していないが、ダイヤルを手操作で回しながらトレッド幅を設定する構成にしているが、このダイヤル式に代えて、図8に示すように、トレッド幅を段階(実施例は1〜5段階)に分け、各段階ごとにLEDを配置して構成した選択スイッチ式に構成としてもよい。このように構成すると、トレッド幅の設定操作が楽になって、簡単に設定できる利点がある。
【0040】
つぎに、後輪5,5のトレッド調節装置において、調節位置をロックするためのブラケット46とロックプレート47に関する実施例を説明する。
まず、トレッド幅の調節装置は、図7に基づいて、既に、説明したが、実施例の場合、図9に示すように、油圧シリンダ6のシリンダ室(外)6aを、後輪5のホイール支持ケース35に連結して、左右方向にトレッド幅の変更・調節ができる構成としている。そして、ブラケット46は、図9に示すように、一端をホイール支持ケース35に取付け、図10(従来の構成)、及び図11(実施例)に示すように、長手方向に2本の長孔48,48を開口して設けてスライドとロック可能にし、ロックプレート47を外側から当てて、その外からロックボルト49を挿し込んでハウジングケース50に螺合して固着する構成となっている。
【0041】
そして、ブラケット46とロックプレート47は、図10に示す従来の構成では、ブラケット46の外側にロックプレート47を重ねて、ロックプレート47の挿通孔51を長孔48,48に重ね合わせ、外側からロックボルト49を挿し込んで前記ハウジングケース50にねじ込んで固定する構成としている。
【0042】
それに対して、実施例は、図11に示すように、ブラケット46に設けている上下2本の長孔48,48の外側にそれぞれロック孔53を一定間隔ごとに開孔して構成する。そして、ロックプレート47は、上下の両端にロックピン54,54を所定の間隔ごとに配列し、突出させて設け、前記ロック孔53に挿し込みができる構成としている。
【0043】
以上のように構成した実施例は、トレッド幅の変更・調節後にホイール支持ケース35を車体側のハウジングケース50にロックするとき、ロックプレート47のロックピン54を、ブラケット46のロック孔53に挿し込んで固定し、更に、ロックボルト49を、ロックプレート47の外側から挿通孔51とブラケット46の長孔48,48を通してハウジングケース50にねじ込んで固着する。
【0044】
このように、実施例は、図11に示すように、従来装置(図10参照)に比較して、ロックプレート47のロックピン54をブラケット46のロック孔53に挿入して係合し、ロックボルト49(図9参照)を螺合して固着するから、調節位置、すなわち、トレッド幅を確実に保持できる特徴がある。そして、実施例は、製造コストの面でも、従来品に比較して僅かなアップで製造できるから、きわめて有効なものである。
【0045】
つぎに、トラクタ4は、図12に示すように、プラウ作業で傾斜地を、傾斜に沿わせて(等高線に沿わせて)走行するとき、傾斜の上側を走行する車輪5の分担重量が軽くなるから、上側の車輪5についてトレッド幅の修正を容易に行うことができる。したがって、トラクタ4は、トレッド幅の変更、調節をして片側が、最初にトレッド幅設定ダイヤル18で設定した幅まで正しく移動していないときなどに、傾斜地で、例えばプラウ作業を行うと分担重量が軽いため、上側の車輪5を容易に変更・調節することができる。
【0046】
また、このようなプラウ作業時においてトレッド幅を広げた状態にしておくと、溝に落ち込んでいる側の後輪5のトレッド幅が狭く(元に戻る)なる傾向になる。これは、溝に落ちている側に後輪5には、車体の荷重が大きく作用するためである。そこで、前述のように溝に落ち込んでいる側の後輪5のトレッド幅が狭く(元に戻る)なる場合には、反対側の溝に落ち込んでいない側の車輪5のトレッド幅を広げるようにする。これにより、設定している左右後輪5,5間のトレッド幅が確保可能となる。
【0047】
この場合、トラクタ4は、トレッド幅を変更するに当たり、傾斜地を往復走行させて上側に位置する片側の車輪5ずつトレッド幅を変更すると、左右の両輪5,5を楽に変更、調節することができる利点がある。
【0048】
つぎに、図13、及び図14に示す実施例について説明する。
この実施例は、図9、及び図10に示した実施例において説明したロックボルト49を、伸縮するシリンダに代えて構成したものである。
【0049】
すなわち、シリンダ式ロックボルト60は、図面に示すように、ブラケット46のロック孔61に設け、ハウジングケース62の固定穴63に挿し込んで調節位置にロックする構成としている。
【0050】
従来、農家が行う前輪トレッド幅の調節は、不慣れのために、ロックボルトの締め付け不良が多く発生していたが、この実施例は、前輪のトレッド幅の変更、調節について、ロックボルトをシリンダ式に構成しているから、自動的に伸長して作動し、固定穴63に係合して確実に位置の固定ができるものとなった。
【0051】
つぎに、トラクタ4の左右ブレーキペダル65,65における非連結警報ランプ66について、図15、及び図16に基づき実施例を説明する。
従来、この種の警報ランプは、左右のペダルが連結されていないときには、非連結の状態にあることを、電気的に検出して操縦席のメータパネル上に警報ランプで警告する構成となっている。
【0052】
それに対して、実施例は、図15、及び図16に示すように、非連結警報ランプ66を連結プレート67の上面に設け、連結状態のときには、警報ランプ66がオペレータから目視できない構成にしている。したがって、警報ランプ66は、図15に示すように、非連結状態にあるときにのみ、オペレータから見ることができて、図16に示すように、左右のブレーキペダル65,65が連結プレート67で連結されているときにはペダルの裏側にあって見ることができない構成となっている。
【0053】
以上のように、実施例の非連結警報ランプ66は、連結プレート67に取り付けたから、両方のペダル65,65を連結すると裏側に隠れて見えなくなり、非連結状態のときに、図15に示すように、オペレータが目視することができる位置にある。なお、この非連結警報ランプ66は、エンジンの駆動中には、常に、ONの状態にして安全を確保できる構成としている。
【0054】
このように、実施例は、従来型の操縦席にあるメータパネル上に設けた警報ランプで警告する構成に比較すると、ハーネス等の配線を不要とし、構成を簡単にしているから、コストダウンを図ることができた特徴がある。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】制御機構を示すコントローラのブロック図
【図2】作用のフローチャート図
【図3】作用のフローチャート図
【図4】作用のフローチャート図
【図5】トラクタの側面図
【図6】一部を断面して示すトラクタの背面作用図
【図7】トレッド幅調節機構の断面図
【図8】実施例に係るトレッド幅設定装置
【図9】別実施例のトレッド調節機構の一部の断面図
【図10】従来のブラケットとロックプレート側面図
【図11】実施例のブラケットとロックプレートの側面図
【図12】実施例のトラクタの背面図
【図13】実施例のブラケットの斜面図
【図14】実施例のロック状態を示す一部破断した平面図
【図15】左右のブレーキペダルを非連結状態にした斜面図
【図16】左右のブレーキペダルを連結状態にした斜面図。
【符号の説明】
【0056】
1 ステアリングハンドル
2,2 左右前輪
3 コントローラ
4 作業車両
5,5 左右後輪
6,6 油圧シリンダ
6a シリンダ室(外)
6b シリンダ室(内)
7 タイヤ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングハンドル(1)の操作によって左右の前輪(2),(2)を操向操作すると、コントローラ(3)によって旋回制御が行われる作業車両(4)において、該作業車両(4)に軸架している左右の後輪(5),(5)は、油圧シリンダ(6),(6)の伸縮作動によってトレッド幅が変更調節可能に構成され、前記旋回制御に関連する左右の前輪(2),(2)の切れ角データは、後輪(5),(5)のトレッド幅に対応して決められる構成とし、前記コントローラ(3)は、トレッド幅の変更調節に際し、選択したトレッド幅に対応した切れ角データが自動的に設定される構成としたことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記旋回制御に関連する切れ角データは、作業車両(4)に装着するタイヤ(7)のサイズ毎に決定され、前記コントローラ(3)は、前記作業車両(4)のタイヤ(7)をサイズの異なる別のタイヤ(7)に変更してサイズの設定操作をすると、そのサイズに対応した切れ角データが、自動的に設定される構成としたことを特徴とする請求項1記載の作業車両。
【請求項1】
ステアリングハンドル(1)の操作によって左右の前輪(2),(2)を操向操作すると、コントローラ(3)によって旋回制御が行われる作業車両(4)において、該作業車両(4)に軸架している左右の後輪(5),(5)は、油圧シリンダ(6),(6)の伸縮作動によってトレッド幅が変更調節可能に構成され、前記旋回制御に関連する左右の前輪(2),(2)の切れ角データは、後輪(5),(5)のトレッド幅に対応して決められる構成とし、前記コントローラ(3)は、トレッド幅の変更調節に際し、選択したトレッド幅に対応した切れ角データが自動的に設定される構成としたことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記旋回制御に関連する切れ角データは、作業車両(4)に装着するタイヤ(7)のサイズ毎に決定され、前記コントローラ(3)は、前記作業車両(4)のタイヤ(7)をサイズの異なる別のタイヤ(7)に変更してサイズの設定操作をすると、そのサイズに対応した切れ角データが、自動的に設定される構成としたことを特徴とする請求項1記載の作業車両。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2009−179212(P2009−179212A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−21084(P2008−21084)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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