説明

作業車輌

【課題】エンジンからHSTに動力伝達する無端体に作用するテンションプーリーを支持する揺動アームが付勢部材によって常時張力付与方向へ付勢されている作業車輌において、エンジン始動性の向上及び走行ブレーキ機構の制動力付加時におけるHSTの確実な出力停止を図る。
【解決手段】人為操作に応じて前記付勢部材の付勢力に抗して張力解除方向へ前記揺動アームを揺動させる張力操作機構を備えると共に、前記張力操作機構が、人為操作可能な切換部材によって、前記ブレーキ操作部材のブレーキ作動方向への動きに連動して前記揺動アームを張力解除方向へ揺動させる連動モードと前記ブレーキ操作部材との連動関係が解除された解除モードとに切り換えられるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行系伝動経路に介挿されたHSTのポンプ軸がエンジンの出力部にプーリー伝動機構を介して作動連結されている作業車輌に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの出力部がプーリー伝動機構を介してHSTのポンプ軸に作動連結されている作業車輌が提案されている(下記特許文献1,2参照)。
【0003】
詳しくは、前記プーリー伝動機構は、前記エンジンに作動連結された駆動側プーリーと、前記ポンプ軸に作動連結された従動側プーリーと、前記駆動側プーリー及び前記従動側プーリーに巻き回された無端帯と、テンションプーリーと、基端部が枢支軸回り回動可能に支持され且つ先端部において前記テンションプーリーを支持する揺動アームであって、前記枢支軸回り一方側の張力付与方向へ回動されると前記テンションプーリーを介して前記無端体に張力を付与し且つ前記枢支軸回り他方側の張力解除方向へ回動されると前記テンションプーリーを介した前記無端体への張力付与を解除する揺動アームと、前記揺動アームを前記張力付与方向へ向けて付勢する付勢部材とを含んでおり、前記無端体は、常時、張力付与状態に維持されている。
【0004】
斯かる構成を備えた作業車輌においては、前記エンジンの始動時に前記作業車輌が意に反して走行し始めることを防止する為に、前記エンジンの始動時には前記HSTのモータ軸が出力停止状態となるように可動斜板が中立状態とされる。
【0005】
しかしながら、従来の作業車輌においては、前記エンジンと前記ポンプ軸とは常に作動連結されたままである。つまり、前記可動斜板によって前記モータ軸の回転は停止されるものの、前記ポンプ軸は前記エンジンからの回転動力によって回転され続けることになる。すなわち、従来の作業車輌においては、スターターは、前記ポンプ軸及びこれに支持された油圧ポンプが出力部に作動連結された状態のままでエンジンを始動しなければならず、前記スターターの負荷が大きいという問題があった。
【0006】
さらに、前記HSTの油圧ポンプ及び油圧モータ間の作動油の流れが完全に停止するように前記可動斜板の傾転位置を理論上の完全中立位置に位置させることは非常に困難である。従って、一般的には、若干量の作動油の流れは生じるものの前記モータ軸の回転が生じない回転防止傾転範囲に前記可動斜板の傾転位置を調整することで、前記可動斜板の中立状態が実現される。
【0007】
このように、前記エンジンの駆動開始に先立って前記可動斜板を前記回転防止傾転範囲に位置させることで、前記エンジンの始動時に前記作業車輌が意に反して走行し始めることを有効に防止できるが、その際に生じるHST作動油の流れは前記エンジンを始動させる為のスターターにとって負荷となる。即ち、前記作業車輌においては、前記スターターは、前記エンジンを単独で起動させる為の起動トルクに加えて、前記ポンプ軸及び前記油圧ポンプを回転させるトルク並びに前記HST作動油に流れを生じさせる為のトルクを発生しなければならない。
【0008】
特に、低温時においては前記作動油の粘性が高くなり、前記スターターに掛かる負荷は大きくなる。その為、前記従来の作業車輌においては、低温時に前記エンジンの始動が困難になるという問題があった。
前記スターターは前記作業車輌に備えられるバッテリーから動力を得ているが、前記バッテリーが弱まっている場合にも前記エンジンの始動が困難になり得る。
【0009】
また、前記作業車輌には、前記HSTから駆動輪へ至る走行系伝動経路に制動力を付加し得る走行ブレーキ機構と前記走行ブレーキ機構を操作する為のブレーキ操作機構とが備えられている。
【0010】
ここで、前記ブレーキ操作機構は、前記走行ブレーキ機構の制動力付加時においては前記HSTが中立状態となるように前記HSTを操作する為の変速操作機構にリンク機構を介して連結されている。
斯かる構成によれば、前記走行ブレーキ機構の制動力付加時に前記HSTから回転動力が出力されることを防止することができる。
【0011】
しかしながら、前述の通り、前記エンジンの出力部は前記HSTのポンプ軸に常時、連結されており、前記走行ブレーキ機構によって走行系伝動経路に制動力を付加している状態においても前記ポンプ軸及び前記油圧ポンプは回転され続けている。
【0012】
従って、前記リンク機構の組み付け誤差等によっては前記走行ブレーキ機構の制動力付加時に前記HSTの可動斜板を正確に中立位置に位置させることができず、前記HSTが意に反して回転動力を出力する事態を引き起こす虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】実公平02−049050号公報
【特許文献2】実公昭59−064369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、斯かる従来技術に鑑みなされたものであり、エンジンからHSTに回転動力を伝達する無端体に作用するテンションプーリーを支持する揺動アームが付勢部材によって常時張力付与方向へ付勢されている作業車輌において、前記エンジンの始動性を向上させることができ、さらに、走行ブレーキ機構の制動力付加時に前記HSTを確実に出力停止状態とさせ得る作業車輌の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、前記目的を達成するために、エンジンからHSTのポンプ軸に回転動力を伝達する為のプーリー伝動機構と前記HSTのモータ軸から走行部へ至る伝動経路に制動力を付加する為の走行ブレーキ機構と前記走行ブレーキ機構を操作する為のブレーキ操作機構とを備え、前記プーリー伝動機構は駆動側プーリーと従動側プーリーと前記両プーリーに巻き回された無端帯とテンションプーリーと枢支軸回り揺動可能な状態で前記テンションプーリーを支持する揺動アームと張力付与方向へ前記揺動アームを付勢する付勢部材とを有し、前記ブレーキ操作機構は人為操作に応じてブレーキ操作軸線回りに回動するブレーキ操作部材と前記ブレーキ操作部材及び前記走行ブレーキ機構を作動連結するブレーキリンク機構とを有している作業車輌において、人為操作に応じて前記付勢部材の付勢力に抗して張力解除方向へ前記揺動アームを揺動させる張力操作機構を備え、前記張力操作機構は、人為操作可能な切換部材によって、前記ブレーキ操作部材のブレーキ作動方向への動きに連動して前記揺動アームを張力解除方向へ揺動させる連動モードと前記ブレーキ操作部材との連動関係が解除された解除モードとに切り換えられる作業車輌を提供する。
【0016】
好ましくは、前記張力操作機構は、基端部が操縦部の操縦空間内に位置された状態で軸線方向移動可能とされた張力操作軸と、前記ブレーキ操作軸線と同軸上の張力操作軸線回り回動可能とされた張力操作アームであって、前記張力操作軸線回りの回動によって前記張力操作軸を軸線方向に移動させるように前記張力操作軸に作動連結された張力操作アームと、前記張力操作軸の軸線方向一方側及び他方側への移動に応じて前記揺動アームを張力解除方向及び張力付与方向へ揺動させるように前記張力操作軸の先端部を前記揺動アームに作動連結するリンク部材とを有するものとされる。
この場合に、前記切換部材は、人為操作に応じて、前記ブレーキ操作部材の前記ブレーキ操作軸線回りブレーキ作動方向への回動に連動して前記張力操作アームが前記張力操作軸線回りに張力解除方向へ回動するように前記ブレーキ操作部材及び前記張力操作アームを係合する連動姿勢と前記ブレーキ操作部材及び前記張力操作アームの連動関係を解除する解除姿勢とをとり得るように構成される。
【0017】
より好ましくは、前記ブレーキ操作部材は、前記ブレーキ操作軸線上において軸線回り回転自在とされた基端軸部と前記基端軸部から前記ブレーキ操作軸線を基準にして径方向外方へ延びる延在部とを有し、前記張力操作アームは、前記張力操作軸線上において軸線回り回転自在とされた回動軸部と前記回動軸部から前記張力操作軸線を基準にして径方向外方へ延び且つ前記張力操作軸の基端部が連結された第1アーム部と前記回動軸部から前記張力操作軸線を基準にして径方向外方へ延びる第2アーム部とを有するものとされる。
この場合に、前記切換部材は前記延在部又は前記第2アーム部の一方に設けられ、前記連動姿勢においては前記ブレーキ操作部材の前記ブレーキ操作軸線回りブレーキ作動方向への回動に連動して前記張力操作アームが前記張力操作軸線回りに張力解除方向へ回動するように前記延在部又は前記第2アーム部の他方と係合し、且つ、前記解除姿勢においては前記ブレーキ操作部材及び前記張力操作アームがそれぞれ前記ブレーキ操作軸線及び前記張力操作軸線回りに独立して回動することを許容するように構成される。
【0018】
一形態においては、前記作業車輌は、本機フレームと、前記本機フレームに連結された前記走行部と、前記本機フレームに支持された前記エンジンと、前記本機フレームの前方側で且つ車輌幅方向一方側に配置された操縦部と、前記操縦部より前方に位置するように前記本機フレームに支持された刈取部と、前記刈取部で刈り取られた穀稈を前記操縦部の車輌幅方向他方側の穀稈搬送経路を通して後方側へ搬送する搬送部と、前記搬送部によって送られてくる穀稈に対して脱穀を行う脱穀部と、前記HST及び前記走行ブレーキ機構を含む変速装置であって、車輌前後方向に関し前記操縦部とオーバーラップした位置で前記操縦部より下方において前記本機フレームに支持された変速装置とを備え得る。
この場合に、前記張力操作軸は前記操縦部の底壁を貫通した状態で略垂直方向に沿うように配置される。
そして、前記リンク部材は、前記操縦部の下方において車輌幅方向に沿った状態で軸線回り回転自在に前記操縦部に支持された中間軸と、基端部が前記中間軸の一端部に連結され且つ先端部が前記操作軸の先端部に作動連結された操作側アームと、基端部が前記中間軸の他端部に連結された作動側アームと、一端部が前記作動側アームの先端部に連結され且つ他端部が前記揺動アームに作動連結されたロッドとを有するものとされる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、エンジンからHSTのポンプ軸に回転動力を伝達する為のプーリー伝動機構が駆動側プーリーと従動側プーリーと両プーリーに巻き回された無端体と前記無端体に作用するテンションプーリーと前記テンションプーリーを支持する揺動アームと前記揺動アームを枢支軸回りに張力付与方向へ付勢する付勢部材とを含んでいる作業車輌において、人為操作に応じて前記付勢部材の付勢力に抗して張力解除方向へ前記揺動アームを揺動させる張力操作機構を備えると共に、前記張力操作機構が、人為操作可能な切換部材によって、ブレーキ操作部材のブレーキ作動方向への動きに連動して前記揺動アームを張力解除方向へ揺動させる連動モードと前記ブレーキ操作部材との連動関係が解除された解除モードとに切り換えられるように構成したので、前記切換部材によって前記張力操作機構を連動モードとすることにより、走行ブレーキ機構を作動させる為の前記ブレーキ操作部材の動きを利用して、前記エンジンから前記HSTへの動力伝達を容易に遮断させることができる。
よって、前記エンジンの出力部と前記HSTのポンプ軸との作動連結を解除した状態で前記エンジンを起動させることができ、これによって、前記エンジンの出力部と前記HSTのポンプ軸とが作動連結された状態のままで前記エンジンを起動しなければならない従来構成に比して、前記エンジンを起動させる為のスターターの負荷を小さくすることができ、エンジンの始動性を向上させることができる。
さらに、前記張力操作機構を連動モードとした状態での前記作業車輌の走行中に前記ブレーキ操作部材を操作すると前記エンジンから前記HSTへの動力伝達を遮断されるから、前記走行ブレーキ機構が走行系伝動経路に制動力を付加しているにも拘わらず前記HSTから回転動力が出力されることを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、コンバインの形態をなす本発明の一実施の形態に係る作業車輌の側面図である。
【図2】図2は、前記作業車輌の平面図である。
【図3】図3は、前記作業車輌の伝動模式図である。
【図4】図4は、前記作業車輌における操縦部及びトランスミッション近傍の部分斜視図である。
【図5】図5は、前記トランスミッションの伝動模式図である。
【図6】図6は、前記トランスミッション近傍の部分拡大斜視図である。
【図7】図7は、前記作業車輌に備えられた張力操作機構の斜視図である。
【図8】図8は、前記張力操作機構の斜視図であり、図7とは反対側から視た状態を示している。
【図9】図9は、前記操縦部及び前記トランスミッション近傍の部分斜視図であって、前記操縦部の周壁を取り外した状態を示している。
【図10】図10は、前記操縦部近傍の部分拡大斜視図である。
【図11】図11は、前記操縦部近傍の部分拡大図であり、図9とは異なる方向から視た状態を示している。
【図12】図12は、前記作業車輌に備えられた切換部材、ブレーキ操作部材及び張力操作軸の関係を示す模式側面図である。
【図13】図13は、前記切換部材、前記ブレーキ操作部材及び前記張力操作軸の関係を示す模式平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る作業車輌の一実施の形態について添付図面を参照しつつ説明する。
図1〜図3に、それぞれ、本実施の形態に係る作業車輌1の側面図、平面図及び伝動模式図を示す。
【0022】
図1〜図3に示すように、本実施の形態に係る作業車輌1はコンバインの形態をなしている。
即ち、前記作業車輌1は、本機フレーム2と、前記本機フレーム2に支持された駆動源としてのエンジンEと、前記本機フレーム2の下部に連結されたクローラの形態をなす左右一対の走行部3と、前記本機フレーム2の前方側で且つ車輌幅方向一方側(ここでは前進方向を向いて右側)に配設された操縦部11と、本機フレーム2の前方に配置され且つ前記本機フレーム2に昇降可能に連結された刈取部4と、前記刈取部4によって刈り取られた穀稈を前記操縦部11の車輌幅方向他方側(ここでは前進方向を向いて左側)の穀稈搬送経路を通して後方側へ搬送する搬送部5と、前記搬送部5によって搬送された穀稈に対して脱穀処理を行う脱穀部6と、前記脱穀部6の脱穀処理により生成された脱穀物に対して選別処理を行う選別部7と、前記操縦部11の後方に配設されたグレンタンク8と、前記脱穀部6の後方に配設された排藁処理部9と、前記グレンタンク8に貯留された穀粒を機外に排出する穀粒排出部10とを備える。
【0023】
前記エンジンEは、図3に示すように、前記走行部3の動力源として作用すると共に、前記刈取部4、前記搬送部5、前記脱穀部6、前記選別部7、前記排藁処理部9及び前記穀粒排出部10を含む作業機の動力源としても作用している。
なお、図3中の符号13は、前記エンジンEから前記刈取部4へ至る伝動経路に介挿された刈取変速機構を収容するカウンターケース13である。
又、図3中の符号57は、前記エンジンEから前記刈取部4へ至る伝達経路に介挿された刈取クラッチである。
【0024】
前記刈取部4は、図1に示すように、刈取プラットホーム42と、前記刈取プラットホーム42の前側に配設された穀稈分草板43と、前記穀稈分草板43によって分草された穀稈を掻き込む掻込みリール44と、前記掻込みリール44によって掻き込まれた穀桿を切断する穀稈切断装置45と、前記穀稈切断装置45により切断された穀稈を前記刈取プラットホーム42内で後方へ送るプラットホームオーガ47(図3参照)とを有している。
【0025】
前記掻込みリール44は、後端部が前記刈取プラットホーム42に揺動可能に支持された左右一対の揺動アーム46に支持されている。
詳しくは、前記掻込みリール44は、図1に示すように、車輌幅方向に延びるリール支軸部451と、前記リール支軸部451の左右両端に取り付けられた左右一対のリール構成部材452と、前記リール支持軸451の軸線回りに配列されるように前記一対の前記リール構成部材452間において車輌幅方向に延びるリールバー453と、各リールバー453に取り付けられたタイン454とを有している。
【0026】
前記搬送部5は、前記刈取部4から送られてくる刈取穀稈を前記脱穀部6へ向けて搬送するものである。
詳しくは、前記搬送部5は、前端開口が前記刈取プラットホーム42に連結され且つ後端開口が前記脱穀部6の扱室に連結されたフィーダハウジング51(図1参照)と、前記フィーダハウジング51内に収容された搬送コンベア52(図3参照)とを有している。
【0027】
なお、前記搬送部5は、油圧シリンダ等の昇降アクチュエータによって前記本機フレーム2に対して車輌幅方向に沿った刈取入力軸53(図3参照)の軸線回りに昇降可能とされており、前記昇降アクチュエータによって前記刈取部4による穀稈の刈り取り高さが調節可能となっている。
【0028】
前記脱穀部6は、図3に示すように、前記扱室内に配設されたロータ61を有している。前記ロータ61は、外周面に複数の扱歯を有するスクリュー61aを有している。
前記ロータ61の下側には、前記扱歯と協働して穀稈を揉みほぐし穀稈を穀粒と排藁とに分離する(脱穀動作する)ための図略の受網が配置されている。
【0029】
前記脱穀部6は、前記搬送部5から送られてきた穀稈を前記エンジンEからの駆動力による前記ロータ61の回転によって脱穀する。この脱穀処理によって分離された穀粒は前記受網を介して前記選別部7へ流下し、一方、排藁は前記ロータ61の回転によって前記排藁処理部9へ搬送される。
【0030】
なお、図3に示すように、前記エンジンEから前記脱穀部6へ至る伝達経路には、該動力伝達経路を係脱する脱穀クラッチ58が介設されている。
【0031】
前記選別部7は、前記脱穀物を一番物、二番物及び不要物に選別する。
前記選別部7は、図3に示すように、前記受網から漏下する脱穀物に対して揺動選別を行う揺動選別部71と前記脱穀物に対して風選別を行う風選別部72とを有している。
前記一番物は一番コンベア73を介して前記グレンタンク8に搬送され、前記二番物は二番コンベア74a、二番縦コンベア74b及び二番上コンベア74cを介して再び前記選別部7へ戻される。
【0032】
前記グレンタンク8は前記一番コンベア73から送られてくる穀粒を貯留する。
前記グレンタンク8の下部には、前記穀粒排出部10の一部を構成する穀粒排出コンベア10aが配設されている。
前記穀粒排出部10は、図3に示すように、前記穀粒排出コンベア10aに加えて、前記穀粒排出コンベア10aに連結された縦オーガコンベア10bと前記縦オーガコンベア10bに連結された横オーガコンベア10cとを有している。
なお、図3中の符号10Aは、前記エンジンEから前記穀粒排出部10へ至る伝動経路に介挿されたオーガクラッチである。
【0033】
前記排藁処理部9は、前記脱穀部6から搬送されてきた排藁を受け取り、受け取った排藁を細断して機外に排出するものである。
【0034】
前記作業車輌1は、さらに、前記エンジンEから前記走行部3へ至る走行系伝動経路に介挿されて主変速装置として作用する走行用HST(静油圧式無段変速装置)510と、人為操作に応じて前記走行系伝動経路に制動力を付加する走行ブレーキ機構560とを備えている。
【0035】
本実施の形態においては、前記走行用HST510及び前記走行ブレーキ機構560はトランスミッション12の構成部材としてミッションケース500に支持されている。
【0036】
図4に、前記操縦部11及び前記トランスミッション12近傍の部分斜視図を示す。
又、図5に、前記トランスミッション12の伝動模式図を示す。
図5に示すように、前記トランスミッション12は、前記走行用HST510及び前記走行ブレーキ機構560に加えて、旋回用HST520と、前記走行用HST510からの回転動力を多段変速する機械式多段変速機構530と、前記機械式多段変速機構530からの回転動力及び前記旋回用HST520からの回転動力を合成して前記一対の走行部3へ向けて出力する差動機構540とを備えている。
【0037】
なお、前記走行用HST510及び前記旋回用HST520は前記ミッションケース500の外面に連結されており、前記機械式多段変速機構530、前記走行ブレーキ機構560及び及び前記差動機構540は前記ミッションケース500内に収容されている。
【0038】
前記走行用HST510は、図5に示すように、前記エンジンEに作動連結された走行用ポンプ軸511と、前記走行用ポンプ軸511に相対回転不能に支持された走行用油圧ポンプ本体512と、前記走行用油圧ポンプ本体512と一対の走行用油圧ライン(図示せず)を介して流体接続された走行用油圧モータ本体513と、前記走行用油圧モータ本体513を相対回転不能に支持する走行用モータ軸514と、前記走行用油圧ポンプ本体512及び前記走行用油圧モータ本体513の少なくとも一方の給排油量を変更させる走行用可動斜板515とを備えている。
【0039】
なお、本実施の形態においては、前記走行用可動斜板515は前記走行用油圧ポンプ本体512の給排油量を変更するように構成されている。
前記走行用可動斜板515は、人為操作可能な主変速操作部材(図示せず)の操作に応じて対応する油圧回転体(本実施の形態においては前記走行用油圧ポンプ本体512)の給排油量を変更する。
【0040】
例えば、前記作業車輌1に、前記走行用可動斜板515を作動させるアクチュエータ(図示せず)と、前記主変速操作部材の操作量を電気的に検出するセンサ(図示せず)と、制御装置(図示せず)とを備え、前記走行用可動斜板515が前記主変速操作部材の操作に応じて傾転するように前記制御装置が前記アクチュエータの作動制御を行うように構成され得る。
【0041】
本実施の形態においては、図3及び図5に示すように、前記走行用HST510の前記走行用ポンプ軸511はプーリー伝動機構104を介して前記エンジンEに作動連結されている。
このプーリー伝動機構100の詳細については後述する。
【0042】
前記旋回用HST520は、図5に示すように、前記エンジンEに作動連結された旋回用ポンプ軸521と、前記旋回用ポンプ軸521に相対回転不能に支持された旋回用油圧ポンプ本体522と、前記旋回用油圧ポンプ本体522と一対の旋回用油圧ライン(図示せず)を介して流体接続された旋回用油圧モータ本体523と、前記旋回用油圧モータ本体523を相対回転不能に支持する旋回用モータ軸524と、前記旋回用油圧ポンプ本体522及び前記旋回用油圧モータ本体524の少なくとも一方(図示の形態においては、前記旋回用油圧ポンプ本体522)の給排油量を変更させる旋回用可動斜板525とを備えている。
【0043】
前記旋回用可動斜板525は、人為操作可能な旋回操作部材(図示せず)の操作に応じて対応する油圧回転体(本実施の形態においては前記旋回用油圧ポンプ本体522)の給排油量を変更する。
【0044】
前記多段変速機構530は副変速機構として作用する。
詳しくは、前記多段変速機構530は、図5に示すように、前記走行用モータ軸514に作動連動された駆動軸531と、前記駆動軸531に平行に配設された従動軸532と、前記駆動軸531の回転動力を前記従動軸532に伝達可能な複数のギヤ列533a〜533cであって、互いに対して変速比が異なる複数のギヤ列533a〜533cと、前記複数のギヤ列533a〜533cの何れか一のギヤ列を選択的に伝動状態とさせ得るシフター534とを備えている。
【0045】
前記差動機構540は、一対の第1及び第2遊星ギヤ機構550a,550bを有している。
前記走行用HST510から前記多段変速機構530を介して伝達される走行用回転動力は前記一対の第1及び第2遊星ギヤ機構550a,550bの第1要素に同一回転方向で入力され、前記旋回用HST520から伝達される旋回用回転動力は前記一対の第1及び第2遊星ギヤ機構550a,550bの第2要素に異なる回転方向で入力される。そして、前記第1及び第2遊星ギヤ機構550a,550bは、第3要素から対応する走行部3に向けて回転動力を出力する。
【0046】
本実施の形態においては、図5に示すように、前記第1及び第2遊星ギヤ機構550a,550bのそれぞれは、サンギヤ551と、前記サンギヤ551の回りを公転するように前記サンギヤ551と噛合する遊星ギヤ552と、前記遊星ギヤ552を相対回転自在に支持しつつ前記遊星ギヤ552と共に前記サンギヤ551の回りを公転するキャリヤ553と、前記遊星ギヤ552と噛合するインターナルギヤ554とを備えており、前記インターナルギヤ554,前記サンギヤ551及び前記キャリヤ553がそれぞれ前記第1〜第3要素として作用している。
【0047】
前記走行ブレーキ機構560は、前述の通り、人為操作に応じて前記エンジンEから前記走行部3へ至る走行系伝動経路に制動力を付加し得るように構成されている。
本実施の形態においては、図5に示すように、前記差動機構540の伝動方向上流側において前記走行系伝動経路に制動力を付加するように配置されている。
【0048】
前記走行ブレーキ機構560は、人為操作に応じて前記走行系伝動経路に制動力を付加し得る限り、種々の形態をとり得る。
本実施の形態においては、図5に示すように、前記走行ブレーキ機構560は摩擦板式とされている。
【0049】
本実施の形態においては、前記トランスミッション12は、図5に示すように、さらに、前記旋回用モータ軸521に作動的に制動力を付加し得る旋回用ブレーキ機構570と、前記旋回用モータ軸521から前記差動機構540への動力伝達を係脱させる旋回用クラッチ機構580と、前記走行用HST510及び前記旋回用HST520に作動油を補給するチャージポンプ590a,590bとを備えている。
【0050】
ここで、前記プーリー伝動機構100について説明する。
図6に、前記トランスミッション近傍12の部分拡大斜視図を示す。
【0051】
図3、図4及び図6に示すように、前記プーリー伝動機構100は、前記エンジンEの出力軸に作動連結された駆動側プーリー101と、前記走行用HST510の前記走行用ポンプ軸511に作動連結された従動側プーリー102と、前記駆動側プーリー101及び前記従動側プーリー102に巻き回された無端帯103と、テンションプーリー104と、前記テンションプーリー104を支持する揺動アーム105と、付勢部材とを備える。
なお、図面の視認性を考慮して図4及び図6においては前記無端帯103及び前記付勢部材の図示を省略している。
【0052】
前記駆動側プーリー101は、図4及び図6に示すように、前記エンジンEに作動連結された状態で回転軸線が所定の基準方向に沿うように配設されている。なお、本実施の形態においては前記基準方向は車輌幅方向とされている。
【0053】
前記従動側プーリー102は、図4及び図6に示すように、前記走行用ポンプ軸511に作動連結された状態で回転軸線が前記基準方向に沿うように配設されている。
【0054】
前記揺動アーム105は、基端部が前記基準方向に沿った枢支軸L回り回動可能に支持され且つ先端部において前記テンションプーリー104を支持している。
【0055】
前記付勢部材は、例えばバネにより構成され、前記枢支軸L回りに前記テンションプーリー104を張力付与方向(図6における矢印Aの方向)へ付勢しており、これにより、外力が作用しない状態においては、前記無端帯103は前記テンションプーリー104によって、常時、張力付与状態とされる。
【0056】
本実施の形態に係る前記作業車輌1は、さらに、人為操作に応じて前記付勢部材の付勢力に抗して前記揺動アーム105を前記枢支軸L回りに張力解除方向(図6における矢印Bの方向)へ揺動させる張力操作機構150を備えている。
【0057】
図7及び図8に、前記張力操作機構150の斜視図を示す。
なお、図7は図6と同一方向から視た斜視図であり、図8は図7とは反対側から視た斜視図である。
【0058】
前記張力操作機構150は、人為操作に応じて前記揺動アーム150を前記枢支軸L回りに回動させ得るようになっている。
【0059】
本実施の形態においては、図7及び図8に示すように、前記張力操作機構150は、基端部が前記操縦部11の操縦空間内に位置された状態で軸線方向移動可能とされた張力操作軸160と、前記張力操作軸160の軸線方向一方側及び他方側への移動に応じて前記揺動アーム105を前記枢支軸L回りに張力解除方向及び張力付与方向へ揺動させるように前記張力操作軸160の先端部を前記揺動アーム105に作動連結するリンク部材170とを備えている。
【0060】
本実施の形態においては、前記張力操作機構150は、後述する人為操作可能な切換部材300によって、前記走行ブレーキ機構560を操作する為のブレーキ操作部材210のブレーキ作動方向への動きに連動して前記揺動アーム105を張力解除方向へ揺動させる連動モードと前記ブレーキ操作部材210との連動関係が解除された解除モードとに切り換えられるように構成されている。
【0061】
詳しくは、前記作業車輌1は、前記ブレーキ操作部材210を含むブレーキ操作機構200を備えている。
図9に、前記操縦部11及び前記トランスミッション12近傍の斜視図を示す。
又、図10及び図11に前記操縦部11の拡大斜視図を示す。
図12及び図13に、それぞれ、前記切換部材300、前記ブレーキ操作部材210及び前記張力操作軸160の関係を示す模式側面図及び模式平面図を示す。
なお、前記ブレーキ操作機構200の理解容易化の為に図10及び図11においては前記切換部材300及び前記張力操作軸160の図示を省略している。
【0062】
図9〜図11に示すように、前記ブレーキ操作機構200は、人為操作に応じてブレーキ操作軸線X1回りに回動する前記ブレーキ操作部材210と、前記ブレーキ操作部材210及び前記走行ブレーキ機構560を作動連結するブレーキリンク機構220とを有している。
【0063】
図12及び図13に示すように、前記張力操作機構150は、前記張力操作軸160及び前記リンク部材170に加えて、前記ブレーキ操作軸線X1と同軸上の張力操作軸線X2回り回動可能とされた張力操作アーム180であって、前記張力操作軸線X2回りの回動によって前記張力操作軸160を軸線方向に移動させるように前記張力操作軸160に作動連結された張力操作アーム180を有している。
【0064】
図12及び図13に示すように、前記切換部材300は、人為操作に応じて、前記ブレーキ操作部材210の前記ブレーキ操作軸線X1回りブレーキ作動方向への回動に連動して前記張力操作アーム180が前記張力操作軸線X2回りに張力解除方向へ回動するように前記ブレーキ操作部材210及び前記張力操作アーム180を係合させる連動姿勢(図13における実線)と前記ブレーキ操作部材210及び前記張力操作アーム180の連動関係を解除する解除姿勢(図13における二点鎖線)とをとり得るように構成されている。
【0065】
本実施の形態においては、図12及び図13に示すように、前記ブレーキ操作部材210は、前記ブレーキ操作軸線X1上において軸線回り回転自在とされた基端軸部211と、前記基端軸部211から前記ブレーキ操作軸線X1を基準にして径方向外方へ延びる延在部212とを有している。
なお、前記ブレーキ操作部材210は、さらに、前記延在部212の自由端側に操縦者が踏み込み可能なステップ部213を有している。
【0066】
一方、前記張力操作アーム180は、図12及び図13に示すように、前記張力操作軸線X2上において軸線回り回転自在とされた回動軸部181と、前記回動軸部181から前記張力操作軸線X2を基準にして径方向外方へ延び且つ前記張力操作軸160の基端部が連結された第1アーム部182と、前記回動軸部181から前記張力操作軸線X2を基準にして径方向外方へ延びる第2アーム部183とを有している。
【0067】
そして、前記切換部材300は、前記延在部212又は前記第2アーム部183の一方に設けられ、前記連動姿勢においては前記ブレーキ操作部材210の前記ブレーキ操作軸線X1回りブレーキ作動方向への回動に連動して前記張力操作アーム180を前記張力操作軸線X2回りに張力解除方向へ回動させるように前記延在部212又は前記第2アーム部183の他方と係合し、且つ、前記解除姿勢においては前記ブレーキ操作部材210及び前記張力操作アーム180がそれぞれ前記ブレーキ操作軸線X1及び前記張力操作軸線X2回りに独立して回動することを許容するように構成されている。
【0068】
なお、本実施の形態においては、前記ブレーキリンク機構220は、前記ブレーキ操作部材210への人為操作に応じて前記ブレーキ操作軸線X1回りに回動するブレーキ作動側アーム221と、前記ブレーキ作動側アーム221及び前記走行用ブレーキ機構560を作動連結する長尺のワイヤ222とを含んでいる。
【0069】
又、前記ブレーキ操作機構200には、さらに、前記ブレーキ操作部材210の非操作時に前記走行用ブレーキ機構560をブレーキ解除状態とする為のブレーキ解除用付勢部材230が備えられている。
本実施の形態においては、図9及び図10に示すように、前記ブレーキ解除用付勢部材230は、前記ワイヤ222をブレーキ解除方向へ引張する第1付勢部材231と前記ブレーキ操作部材210を前記ブレーキ操作軸線X1回りにブレーキ解除方向へ付勢する第2付勢部材232とを含んでいる。
なお、図9及び図10における符号240は、前記ブレーキ操作機構200がブレーキ作動状態とされているか否かを検出する為のブレーキ操作センサである。
【0070】
本実施の形態に係る前記作業車輌1は以下の効果を奏することができる。
即ち、前記切換部材300によって前記張力操作機構150を連動モードとした上で前記ブレーキ操作部材210を操作することにより前記エンジンEの出力部と前記走行用HST510の走行用ポンプ軸511との作動連結を容易に解除させることができる。
従って、例えば、前記エンジンEの起動に先だって前記切換部材300による連動モードの設定及び前記ブレーキ操作部材210によるブレーキ操作を行った上で前記エンジンEを起動させることで、前記エンジン起動時のスターターの負荷を低減でき、前記エンジンEの始動性を向上させることができる。
【0071】
即ち、従来の作業車輌においては、エンジンの出力部と走行用HSTのポンプ軸とが常時、作動連結されている。従って、前記エンジンを起動させるスターターは、前記エンジンを起動させるトルクに加えて、前記ポンプ軸及びこのポンプ軸に支持される油圧ポンプを回転させるトルクを出力しなければならない。
【0072】
これに対し、本実施の形態に係る作業車輌1においては、前記切換部材300によって前記張力操作機構150を連動モードとさせた状態で前記ブレーキ操作部材210を操作することにより前記エンジンEの出力部と前記走行用HST510の走行用ポンプ軸511との作動連結を解除させることができ、従って、この状態で前記エンジンEを起動させることにより、従来構成に比して前記スターターの負荷を小さくすることができ、前記エンジンEの始動性を向上させることができる。
【0073】
又、本実施の形態においては、前記スターターの負荷を小さくすることができるから、前記スターターに電力を供給するバッテリーが弱まっていても、前記エンジンEの始動が困難になるのを防止又は抑制することができる。
【0074】
さらに、前記エンジンの出力部と前記走行用HSTの走行用ポンプ軸とが常時、作動連結されている従来構成においては、前記エンジンの始動時に前記作業車輌が意に反して走行し始めることを防止する為に、前記エンジンの始動時においては前記HSTのモータ軸が出力停止状態となるように可動斜板を中立位置に位置させる必要がある。
しかしながら、前記可動斜板を厳密に中立位置に位置させることは困難であるから、通常は、前記可動斜板の傾転位置を所定の中立許容範囲(若干量のHST作動油の流れが生じるもののモータ軸の回転が生じない範囲)に調整することで、前記エンジンの始動時における前記作業車輌の意に反した走行を防止している。
ところが、このような若干量のHSTの作動油の循環も前記スターターにとっては負荷になる。
【0075】
これに対し、本実施の形態においては、前記操作によって前記エンジンEと前記ポンプ軸511との動力伝達状態を解除できるので、前記スターターが前記HST作動油の流れに対抗する為のトルクを発生する必要が無くなる。これによっても、従来に比してエンジンEの始動性が向上される。
【0076】
また、本実施の形態においては、前記スターターが前記HST作動油の流れに対抗する為のトルクを発生する必要が無くなるから、前記エンジンEを始動させる際の前記HST作動油の粘性が高くても前記エンジンEの始動が困難になるのを可及的に防止することができる。
【0077】
さらに、前記作業車輌1によれば、前記連動モードで車輌走行中に前記走行ブレーキ機構560を作動させる際に、前記走行用HST510を確実に出力停止状態とさせることができる。従って、前記走行ブレーキ機構560の制動力付加時に前記走行用HST510が回転動力を出力することを確実に防止することができる。
【0078】
なお、本実施の形態に係る前記作業車輌1においては、前記ミッションケース500は、図2及び図4に示すように、車輌前後方向に関し前記操縦部11とオーバーラップする位置で前記操縦部11より下方において前記本機フレーム2に支持されている。
【0079】
前記操縦部11及び前記ミッションケース500の相対位置において、前記張力操作リンク機構150の構造簡略化を図る為に本実施の形態においては下記構成を採用している。
即ち、図7及び図8等に示すように、前記張力操作軸160は前記操縦部11の底壁を貫通した状態で略垂直方向に沿っており、前記リンク部材170は、前記操縦部11の下方において車輌幅方向に沿った状態で軸線回り回転自在に前記操縦部11に支持された中間軸172と、基端部が前記中間軸172の一端部に連結され且つ先端部が前記張力操作軸160の先端部に作動連結された操作側アーム171と、基端部が前記中間軸172の他端部に連結された作動側アーム173と、一端部が前記作動側アーム173の先端部に連結され且つ他端部が前記揺動アーム105に作動連結されたロッド174とを含んでいる。
【符号の説明】
【0080】
1 作業車輌
2 本機フレーム
3 走行部
4 刈取部
5 搬送部
6 脱穀部
11 操縦部
12 トランスミッション
100 プーリー伝動機構
101 駆動側プーリー
102 従動側プーリー
103 無端帯
104 テンションプーリー
105 揺動アーム
150 張力操作機構
160 張力操作軸
170 リンク部材
171 操作側アーム
172 中間軸
173 作動側アーム
174 ロッド
180 張力操作アーム
181 回動軸部
182 第1アーム部
183 第2アーム部
200 ブレーキ操作機構
210 ブレーキ操作部材
211 基端軸部
212 延在部
220 ブレーキリンク機構
300 切換部材
510 走行用HST
511 走行用ポンプ軸
514 走行用モータ軸
560 走行用ブレーキ機構
E エンジン
L 枢支軸
X1 ブレーキ操作軸線
X2 張力操作軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンからHSTのポンプ軸に回転動力を伝達する為のプーリー伝動機構と前記HSTのモータ軸から走行部へ至る伝動経路に制動力を付加する為の走行ブレーキ機構と前記走行ブレーキ機構を操作する為のブレーキ操作機構とを備え、前記プーリー伝動機構は駆動側プーリーと従動側プーリーと前記両プーリーに巻き回された無端帯とテンションプーリーと枢支軸回り揺動可能な状態で前記テンションプーリーを支持する揺動アームと張力付与方向へ前記揺動アームを付勢する付勢部材とを有し、前記ブレーキ操作機構は人為操作に応じてブレーキ操作軸線回りに回動するブレーキ操作部材と前記ブレーキ操作部材及び前記走行ブレーキ機構を作動連結するブレーキリンク機構とを有している作業車輌において、
人為操作に応じて前記付勢部材の付勢力に抗して張力解除方向へ前記揺動アームを揺動させる張力操作機構を備え、
前記張力操作機構は、人為操作可能な切換部材によって、前記ブレーキ操作部材のブレーキ作動方向への動きに連動して前記揺動アームを張力解除方向へ揺動させる連動モードと前記ブレーキ操作部材との連動関係が解除された解除モードとに切り換えられることを特徴とする作業車輌。
【請求項2】
前記張力操作機構は、基端部が操縦部の操縦空間内に位置された状態で軸線方向移動可能とされた張力操作軸と、前記ブレーキ操作軸線と同軸上の張力操作軸線回り回動可能とされた張力操作アームであって、前記張力操作軸線回りの回動によって前記張力操作軸を軸線方向に移動させるように前記張力操作軸に作動連結された張力操作アームと、前記張力操作軸の軸線方向一方側及び他方側への移動に応じて前記揺動アームを張力解除方向及び張力付与方向へ揺動させるように前記張力操作軸の先端部を前記揺動アームに作動連結するリンク部材とを有し、
前記切換部材は、人為操作に応じて、前記ブレーキ操作部材の前記ブレーキ操作軸線回りブレーキ作動方向への回動に連動して前記張力操作アームが前記張力操作軸線回りに張力解除方向へ回動するように前記ブレーキ操作部材及び前記張力操作アームを係合する連動姿勢と前記ブレーキ操作部材及び前記張力操作アームの連動関係を解除する解除姿勢とをとり得るように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の作業車輌。
【請求項3】
前記ブレーキ操作部材は、前記ブレーキ操作軸線上において軸線回り回転自在とされた基端軸部と前記基端軸部から前記ブレーキ操作軸線を基準にして径方向外方へ延びる延在部とを有し、
前記張力操作アームは、前記張力操作軸線上において軸線回り回転自在とされた回動軸部と前記回動軸部から前記張力操作軸線を基準にして径方向外方へ延び且つ前記張力操作軸の基端部が連結された第1アーム部と前記回動軸部から前記張力操作軸線を基準にして径方向外方へ延びる第2アーム部とを有し、
前記切換部材は前記延在部又は前記第2アーム部の一方に設けられ、前記連動姿勢においては前記ブレーキ操作部材の前記ブレーキ操作軸線回りブレーキ作動方向への回動に連動して前記張力操作アームが前記張力操作軸線回りに張力解除方向へ回動するように前記延在部又は前記第2アーム部の他方と係合し、且つ、前記解除姿勢においては前記ブレーキ操作部材及び前記張力操作アームがそれぞれ前記ブレーキ操作軸線及び前記張力操作軸線回りに独立して回動することを許容するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の作業車輌。
【請求項4】
本機フレームと、前記本機フレームに連結された前記走行部と、前記本機フレームに支持された前記エンジンと、前記本機フレームの前方側で且つ車輌幅方向一方側に配置された操縦部と、前記操縦部より前方に位置するように前記本機フレームに支持された刈取部と、前記刈取部で刈り取られた穀稈を前記操縦部の車輌幅方向他方側の穀稈搬送経路を通して後方側へ搬送する搬送部と、前記搬送部によって送られてくる穀稈に対して脱穀を行う脱穀部と、前記HST及び前記走行ブレーキ機構を含む変速装置であって、車輌前後方向に関し前記操縦部とオーバーラップした位置で前記操縦部より下方において前記本機フレームに支持された変速装置とを備え、
前記張力操作軸は前記操縦部の底壁を貫通した状態で略垂直方向に沿っており、
前記リンク部材は、前記操縦部の下方において車輌幅方向に沿った状態で軸線回り回転自在に前記操縦部に支持された中間軸と、基端部が前記中間軸の一端部に連結され且つ先端部が前記操作軸の先端部に作動連結された操作側アームと、基端部が前記中間軸の他端部に連結された作動側アームと、一端部が前記作動側アームの先端部に連結され且つ他端部が前記揺動アームに作動連結されたロッドとを有していることを特徴とする請求項2又は3に記載の作業車輌。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−140113(P2012−140113A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1046(P2011−1046)
【出願日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】