説明

作物収穫機

【課題】搬送機構で搬送される人参をカメラで撮影して品質の判定を正確に行う。
【解決手段】搬送機構Caで茎葉部Wが挟持される形態で搬送される人参Xを側方位置からカメラ21で撮影し、撮影結果に基づいて人参Xの等級を判定し、低い等級の人参Xを排出カッター25で茎葉部Wから切り離して排出する選別ユニットを備えた。この選別ユニットでは、人参Xの搬送方向の上流側と下流側とに開閉自在な遮光板28を有する遮光機構Gを備え、1つの人参Xを外部からの光線を遮断した状態でカメラ21で撮影して正確な判定を実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体の走行に伴って作物の茎葉部に機体後方上方に向かう搬送力を作用させて前記作物の地中塊部を圃場から引き抜く搬送機構を備えている作物収穫機に関し、詳しくは、搬送機構で搬送される作物の品質に基づいて選別を行う技術の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のように構成された作物収穫機として特許文献1には、搬送機構(文献では引抜搬送体)で搬送される地中塊部(文献では根菜類)に接触することで長さを検出する複数のセンサーを備え、搬送機構の搬送方向でセンサーによる検出位置より少し後方位置に可動式カッターを配置し、搬送機構の搬送終端位置に固定式カッターを配置した構成が示されている。
【0003】
この特許文献1では、センサーにより不良な長さであることが判別された場合に、可動式カッターにより茎葉部から地中塊部を切り離して、この下方位置の不良品回収用の容器に落下させ、これとは逆にセンサーにより良好な長さであることが判別された場合には、搬送経路の終端位置の固定式カッターにより茎葉部から地中塊部を切り離して良品回収用の容器に落下させて回収する制御形態が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、搬送機構(文献では挟持搬送ベルト)で搬送される地中塊部(文献では根菜)を撮影するカメラを備え、搬送機構の終端位置にカッターを備え、この下方位置に不良品回収用のコンテナを配置し、これと横方向に並列する位置に良品回収用のコンテナを配置し、カッターから落下する根菜を前述した2つのコンテナの何れか一方に案内する分離ガイドを備えた構成が記載されている。
【0005】
この特許文献2では、カメラの撮影により地中塊部が不良品と判別した場合には、カッターで切断された地中塊部を分離ガイドにより不良品回収用のコンテナに案内し、地中塊部が良品と判別した場合には、カッターで切断された地中塊部を分離ガイドにより良品回収用のコンテナに案内して回収する制御形態が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9‐308349号公報
【特許文献2】特開平9‐220010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば、作物収穫機で人参を収穫する作業を考えると、搬送機構で搬送される際に人参の良品と不良品との選別を行うものは、この後の選別作業を省略できる点で有効である。また、良品と不良品との判定を行うために特許文献1に記載されるように接触型のセンサーを用いるものでは寸法の計測程度しか行えないため、人参が二叉状であることや、表面の割れがある場合の判定が行えず、特許文献2にも記載されるようにカメラの撮影による品質の判定が望まれる。
【0008】
画像処理技術の進歩により、カメラで撮影した画像情報から地中塊部の形状やサイズの計測だけではなく、色濃度の分布形態から表面の状態の判定も短時間の処理で可能であるため、カメラの撮影による品質の判定は有効である。
【0009】
しかしながら、搬送機構で搬送される地中塊部を単純にカメラで撮影するものでは、外部からの光線の影響を受けて不正確な判定を招くことも考えられ、改善の余地がある。
【0010】
本発明の目的は、搬送機構で搬送される作物の地中塊部をカメラで撮影して品質の判定を正確に行う作物収穫機を合理的に構成する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の特徴は、機体の走行に伴って作物の茎葉部に機体後方上方に向かう搬送力を作用させて前記作物の地中塊部を圃場から引き抜く搬送機構を備えている作物収穫機であって、
前記搬送機構で搬送される作物の地中塊部を撮影する撮影手段を備えると共に、前記撮影手段の撮影領域への前記地中塊部の移動を許容しながら、前記撮影領域への外部からの光線を遮る遮光機構を備えている点にある。
【0012】
この構成によると、搬送機構によって地中塊部がカメラの撮影領域に移動する際には、この移動を遮光機構が許容することになり、撮影領域に地中塊部が移動した状態では、遮光機構が撮影領域への外部からの光線を遮るため、外部からの光線の影響を排除した状態で撮影手段による地中塊部の撮影が可能となる。
従って、搬送機構で搬送される作物の地中塊部をカメラで撮影して品質の判定を正確に行える作物収穫機が構成された。
【0013】
本発明は、前記撮影手段が、前記搬送機構の搬送経路の側部位置から前記地中塊部を撮影する位置に配置され、前記撮影手段の前記撮影領域の搬送上流側と、搬送下流側との各々の位置に前記遮光機構が備えられても良い。
【0014】
これによると、搬送機構の搬送方向の上流側と下流側とからの光線が撮影領域へ侵入する現象を遮光機構が抑制する状態での撮影が実現する。
【0015】
本発明は、前記遮光機構が、前記搬送機構で搬送される前記地中塊部が当接することで開放作動して前記地中塊部の通過を許容し、通過の後には付勢力により閉じ姿勢に復帰する2枚の遮光板を有して構成されても良い。
【0016】
これによると、2枚の遮光板の開放作動により地中塊部の通過を許容し、通過の後には2枚の付勢力により遮光板が閉じ姿勢に復帰することで、外部からの光線が撮影領域に侵入する不都合を抑制する。また、この構成では2枚の遮光板を用いることにより、1枚の遮光板を用いるものと比較して遮光板の揺動領域が小さいため配置に無理がない。特に、遮光板が地中塊部に当接する際に、この遮光板が地中塊部に付着している土を取り去ると共に、遮光板との当接により地中塊部の揺れを抑制し、表面の土が取り去られ、揺れが抑制された地中塊部を撮影手段で撮影して品質の判定の精度の向上が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】人参収穫機の全体側面図である。
【図2】人参収穫機の全体平面図である。
【図3】人参収穫機の後面図である。
【図4】収穫物収容部からの人参の排出状態を示す側面図である。
【図5】搬送機構での人参の搬送形態を示す側面図である。
【図6】遮光機構とカメラと排出カッターとの配置を示す平面図である。
【図7】排出カッターと排出ガイドとの配置を示す後面図である。
【図8】制御構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔全体構成〕
図1〜図5に示すように、左右一対のクローラ走行装置1で走行する走行機体Aの前部右側に搭乗運転部Bを配置し、走行機体Aの左側に収穫搬送部Cを配置し、この後部位置に分離部Dを配置し、この分離部Dで分離された収穫物としての人参Xを機体右方向に搬送する横搬送コンベア2を備え、この横搬送コンベア2で搬送された人参Xを貯留する収穫物収容部Rを機体右側に備え、走行機体Aの後部位置に分離部で分離された茎葉部Wを機体右側に落下させる形態で排出する排出コンベア4を備えて作物収穫機の一例として1条収穫用の人参収穫機が構成されている。
【0019】
本発明では、作物のうち茎や葉を含む地上部分を茎葉部Wと称すると共に、地中の根菜、球茎、根茎、あるいは、芋類等を含む地中部分を地中塊部としており、この地中塊部の具体例を単に人参Xと称して以下に説明する。
【0020】
この人参収穫機では、搭乗運転部Bに運転座席5、操縦ハンドル6等を配置し、運転座席5の下側にエンジンEが配置されている。図面には示していないがエンジンEの駆動力を左右のクローラ走行装置1に伝える走行伝動系と、収穫搬送部C、分離部D等に供給する収穫伝動系とが備えられている。
【0021】
収穫搬送部Cは、作物の一例としての人参Xの引き抜き先立ち、振動により圃場を切り崩して土面を柔らかくするためのソイラ機構11を前端下側に備え、この上側に左右一対の引起装置12を備え、走行機体Aの走行に伴って茎葉部Wを左右から圧着して機体後方上方に向かう搬送力を作用させて前記作物の地中塊部としての人参Xを圃場から引き抜く左右一対の搬送ベルト13を有した搬送機構Caを備えている。
【0022】
分離部Dは、搬送機構Caの終端位置に第2切断機構として駆動回転型の円盤状に形成される左右の収穫カッター15と、人参Xが切り離された後の茎葉部Wを後方に搬送するための左右一対の茎葉除去ベルト16とを備えている。
【0023】
この分離部Dの下方位置には、人参Xを前部で受け止め、茎葉部Wを後部で受け止める後方搬送コンベア17を備えており、この後方搬送コンベア17の前部で搬送される人参Xを横搬送コンベア2の搬送始端位置に送り出す横送ローラ18を、この後方搬送コンベア17の搬送方向での中間位置の上面で、平面視で斜め姿勢で備えている。また、茎葉除去ベルト16から後方搬送コンベア17の後部(横送ローラ18より後方位置)に送られた茎葉部Wを排出コンベア4に送り出す案内シュート19を、この後方搬送コンベア17の後方位置に備えている。
【0024】
このような構成から、圃場において人参Xが植付られている条に収穫搬送部Cの先端位置をセットした状態で、この条に沿って走行機体Aを沿って移動させることで、このソイラ機構11の振動により土面を柔らかくし、引起装置12で茎葉部Wを引き起こし、この茎葉部Wを搬送機構Caの搬送ベルト13で挟持して機体後方上方に搬送する作動が行われるため、人参Xを圃場から引き抜き、分離部Dにおいて収穫カッター15で茎葉部Wと人参Xとが切り離される。この後に、分離部Dから下方に落下した人参Xは後方搬送コンベア17の前端位置に落下し、横送ローラ18から横搬送コンベア2に送り出され、この横搬送コンベア2から収穫物収容部Rに収容される。また、茎葉部Wは茎葉除去ベルト16から案内シュート19を介して後方搬送コンベア17の後端側に送り出され、この後方搬送コンベア17から排出コンベア4に送り出され、この排出コンベア4により圃場面に放出される。
【0025】
〔収穫物収容部〕
特に、この人参収穫機では、横搬送コンベア2が無端チェーンに対して多数のコンベアバーを平行姿勢で備えた構造を有し、搬送に伴いコンベアバーに載置した人参Xを斜め上方に搬送するように全体的に斜め姿勢に設定されている。また、横搬送コンベア2の搬送方向で上流側の基端部2Aに対して搬送方向で下流側の搬送終端部2Bが前後向き姿勢の屈折軸芯Pを中心にして、屈折自在に連結した構成を有しており、搬送終端部2Bの姿勢を設定する昇降シリンダ41が備えられている。更に、搬送終端部2Bの先端位置には一対の連結アーム42を介して支持軸43を備え、この支持軸43に枠状のハンガー44を備えている。
【0026】
収穫物収容部Rは、上下方向に開放する布状の柔軟な素材で角筒状に形成される側壁体46と、この側壁体46の底部の開口を閉塞する位置に配置される矩形の底壁体47とを備えており、側壁体46は、その上端の開口部分がハンガー44に対して吊り下げられる状態で支持される。
【0027】
底壁体47は、支持台48の後部位置において横向き姿勢のダンプ軸芯Qを中心にして揺動自在に支持され、この底壁体47の周囲には側壁体46の下端の開口縁からの収穫物(人参X)の漏れ出しを阻止するように側壁体46の下端部分を取り囲む下部壁体49が形成されている。この下部壁体49のうち機体後部側のものは開閉軸芯Tを中心にして開閉自在に支持されている。また、底壁体47をダンプ軸芯Qを中心にして揺動作動させる電動シリンダ50を支持台48に備え、この電動シリンダ50のピストンロッドを底壁体47のアーム部47Aに連結している。
【0028】
このような構成から、人参Xを収穫物収容部Rに収容する場合には、底壁体47を上方に揺動させて水平姿勢に維持し、収容の初期には昇降シリンダ41により横搬送コンベア2の搬送終端部2Bを下降させることで側壁体46が蛇腹状に折り畳まれる形態となり底壁体47までの落差を小さくして人参Xの傷みを抑制する状態での収容を実現する。また、収穫物収容部Rに収容される人参Xの量の増大に連係して昇降シリンダ41により搬送終端部2Bを上昇させることで側壁体46の上端が引き上げられるため収容可能な容積を増大させることが可能となる。
【0029】
そして、収穫物収容部Rから人参X(収穫物)を排出する場合には、図4に示す如く、下部壁体49を開放姿勢(図示せず)に設定し、電動シリンダ50の作動により底壁体47をダンプ軸芯Qを中心にして揺動させることにより、この底壁体47の後端側を下方に向かわせる傾斜姿勢に設定して自重により人参Xが排出される。
【0030】
〔選別ユニット〕
図5〜図8に示すように、本発明の人参収穫装置では、搬送機構Caで搬送される人参Xを撮像手段としてのデジタルスチル型のカメラ21で撮影し、カメラ21で撮影された撮影画像情報に基づいて処理装置Fが画像処理を行い、この画像処理の結果、人参Xが低品質であることを判定した場合には、この人参Xを茎葉部Wから切り離して下方に排出する選別ユニットを備えている。
【0031】
選別ユニットは、搬送機構Caにおける人参Xの搬送方向と直交する横方向から(搬送経路の側部位置から)撮影するカメラ21を有している。このカメラ21は、撮影レンズ21Aを備えると共に、人参Xのカラーの撮影画像情報を取得するCCDやCMOS型等の撮像素子21Bとを備え、撮影レンズ21Aの外周を取り囲む位置には撮影用の光線を照射するためLEDを有する撮影光源22を備えている。尚、カメラ21による人参Xの撮影方向は、搬送方向と直交する方向に限るものではなく、搬送下流側の斜め下方側から見上げるように撮影方向を設定しても良い。
【0032】
搬送機構Caの両側部のうち、カメラ21が配置される左側部位置と、撮影領域の背景となる右側部位置とに黒色の遮光壁体23が配置され、このカメラ21の撮影領域を基準にして搬送機構Caの搬送方向の上流側と下流側とに遮光機構Gが配置されている。また、撮影領域の中央の撮影位置に人参Xが達したことを検出する非接触型の位置センサ24として、一対の遮光壁体23の一方に光源24Aを備え、他方に受光センサ24Bを備えている。
【0033】
この位置センサ24は、搬送方向での上流側の遮光機構Gを人参Xが通過した後に、遮光機構Gの一対の遮光板28が閉じ姿勢に達する位置で人参Xを検出する位置に配置され、遮光板28が閉じ姿勢にあるタイミングでのカメラ21による撮影を実現する。尚、位置センサ24として搬送機構Caで搬送される人参Xに接触するセンサロッドの揺動量から人参Xを検出する接触型のものを用いても良く、撮影光源22としてストロボライトを備えても良い。
【0034】
また、人参Xの撮影領域を基準にして搬送方向の下流側で、収穫カッター15より搬送方向の上流側に第1切断機構として駆動回転型の円盤状に形成される左右の排出カッター25と、この一対の排出カッター25を切断位置まで作動させる作動装置26とを備えている。作動装置26は、左右の排出カッター25を支持する揺動型の左右の作動アーム26Aと、この作動アーム26Aを揺動させる左右の電動アクチュエータとで構成され、切断時に左右の排出カッター25を同時に搬送機構Caの搬送経路側に作動させ、非切断時には左右の排出カッター25が茎葉部Wに接触しない位置まで作動させるように電動アクチュエータで作動アーム26Aを揺動させるように構成されている。特に、排出カッター25は、搬送方向で下流側の遮光機構Gを通過した直後の人参Xの切り離しが可能な位置に配置され、カメラ21で撮影された人参Xが低品質であることが判定された場合には、遮光機構Gから送り出された直後に茎葉部Wから切り離して排出できるように構成されている。
【0035】
このように選別ユニットは、カメラ21と、遮光壁体23と、遮光機構Gと、位置センサ24と、排出カッター25と、作動装置26と処理装置Fとを備えて構成されている。
【0036】
搬送機構Caの搬送経路は、平面視において左側のクローラ走行装置1の外側に配置され、排出カッター25で茎葉部Wから切り離された人参Xが、自重によってクローラ走行装置1の外側の圃場面に落下させる位置関係となる。また、排出カッター25で茎葉部Wから切り離された人参Xを搬送経路外に案内する排出経路Hに沿って送り出す排出ガイド体27が排出カッター25の下側に配置され、これによりクローラ走行装置1で踏みつけられない圃場面に人参Xを確実に排出するように構成されている。
【0037】
遮光機構Gは、撮影領域に対して1つの人参Xが導入される間隔で配置され、この遮光機構Gは、搬送機構Caによる人参Xの搬送経路を挟む位置にゴム製で黒色の左右一対の遮光板28を縦向き姿勢の揺動支軸28aを中心にして揺動自在に支持すると共に、遮光板28を閉じ姿勢に付勢するコイル型のバネ29を備えて構成されている。この遮光機構Gでは左右の遮光板28が閉じ姿勢に達した場合に、左右の遮光板28の揺動端側同士が密着状態で重なり合うように相対的な位置関係が設定され、この重なり合う部分により外部からの光線の侵入を良好に遮断するように構成されている。このように一対の遮光板28がバネ29によって閉じ姿勢に付勢されているので、人参Xが通過した後には一対の遮光板28がバネ29の付勢力によって極めて短時間のうちに閉じ姿勢に復元して遮光を実現する。尚、バネ29として板バネやトーションバネを用いても良い。
【0038】
処理装置Fは、マイクロプロセッサやDSPのようにソフトウエア(プログラム)によって処理を実行できるように構成され、ソフトウエアで成る画像情報取得手段31と、領域情報抽出手段32と、形状・サイズ等級判定手段33と、色濃度分布抽出手段34と、表面状態等級判定手段35と、排出制御手段36とを備えている。尚、これらはハードウエアで構成しても良く、ハードウエアとソフトウエアとの組み合わせによって構成しても良い。
【0039】
画像情報取得手段31は、位置センサ24で人参Xを検出したタイミングでカメラ21で撮影を行わせ撮影画像情報を取得する処理を行う。領域情報抽出手段32は、画像情報取得手段31で取得した画像情報の2値化処理や、輪郭抽出処理により撮影画像情報に含まれる人参Xの形状に対応する領域情報を背景から切り取る形態で抽出する処理を行う。
【0040】
形状・サイズ等級判定手段33は、領域情報抽出手段32で抽出された領域情報の形状とサイズとから人参Xの品質情報としての等級を判定する。具体的には、領域情報の輪郭から人参Xの形状を抽出し、この形状が二叉である場合、欠けがある場合、閾値を越える変形があるものには最も大きい数値となる等級を与え、形状が適正な値に含まれるものについては、長さの値と太さの値とが大きいものほど小さい数値の等級を与える処理を行う。
【0041】
色濃度分布抽出手段34は、領域情報抽出手段32で抽出された領域情報において高品質となる人参特有の表面色を有するものには、品質情報として小さい数値の等級を与え、人参特有の表面色と異なる色濃度で、割れや腐れ等を示す典型的な色濃度の分布が存在する場合には、品質情報として最も大きい数値となる等級を与える処理を行う。
【0042】
前述したように外形から判定した等級も、表面の色濃度から判定した等級も小さい値のものほど良い品質を表し、大きい値のものほど品質が低いものであることを表している。従って、排出制御手段36は、形状・サイズ等級判定手段33又は色濃度分布抽出手段34において与えられた等級が、予め設定された等級より大きい値の等級が与えられた人参Xである場合には排出カッター25により茎葉部Wから人参Xを切り離す処理を行い、設定された等級より小さい値の等級が与えられた人参Xである場合には排出を行わない。これにより収穫物収容部Rに収容された人参Xは、設定された等級を越える良好な品質のものだけであり、この人参Xを改めて選別する必要がない。
【0043】
〔実施形態の作用・効果〕
このような構成から、搬送機構Caの搬送により圃場から引き抜かれた人参Xは、左右の遮光壁体23と前後の遮光機構Gとで取り囲まれる空間となる撮影領域に導入され、センサで検出されたタイミングでカメラ21により撮影される。撮影領域には1つの人参Xだけが導入され、撮影時には外部からの不要な光線が遮断されるので撮影光源22からの光線の照射のみによって1つの人参Xの撮影画像が取得される。処理装置Fでは、撮影画像情報に外部の構成が含まれず、1つの人参Xだけを撮影しているため等級を判定する処理(品質を判定する処理)を行う場合に不正確な判定に繋がる不都合を回避して、品質の判定を正確に行える。
【0044】
また、カメラ21は搬送機構Caの搬送方向と直交する方向から人参Xを撮影するので、この人参Xの搬送時に泥土が飛散することがあってもカメラ21の撮影レンズ21Aには付着し難く、清浄な状態で継続的な撮影が可能となる。カメラ21の撮影方向を、例えば、人参Xの搬送方向と平行する方向から撮影するものと比較すると、撮影対象とする人参Xの直前や直後の人参Xの一部が撮影領域に侵入することがあっても、このように侵入した人参Xの一部が、撮影対象とする人参Xに重なり合うことがなく、適正は判定が実現する。特に、撮影画像情報に直前や直後に搬送される人参Xの一部が撮り込むことがあっても、画像処理によって取り除くことが容易であり、品質の判定に影響することはない。
【0045】
遮光機構Gは、搬送機構Caの搬送方向で撮影領域の上流側と下流側と配置される2枚の遮光板28で構成され、人参Xが当接することにより揺動支軸28aを中心にして揺動することで開放して人参Xの通過を許し、通過の後にはバネ29の付勢力により即座に遮光板28の揺動端部が重なり合う閉じ姿勢に達し、この閉じ姿勢では光線の侵入を阻止するため良好な遮光を行う。更に、遮光板28が人参Xに当接する際に、この遮光板28が人参Xに付着している土を取り去ると共に、遮光板28との当接により人参Xの揺れを抑制する。これにより、表面の土が取り去られ、揺れが抑制された人参Xをカメラ21で撮影して品質の判定の精度の向上が実現する。
【0046】
カメラ21で撮影された撮影画像情報は、処理装置Fに与えられ、この処理装置Fでは、人参X毎に形状・サイズに基づく等級と、人参表面の色濃度の分布に基づく等級とを与える。このように与えされた2種の等級のうち一方でも、最も低い等級を与えられている人参Xは排出カッター25により茎葉部Wから切り離され、排出経路Hに沿って落下する形態で圃場面に排出される。これにより、例えば、商品価値のない人参Xが収穫物収容部Rに収容される構成と比較すると、収穫物収容部Rが満杯になるまでの時間を長くすることが可能となるだけではなく、不要な人参Xを運搬することがなく、走行機体Aを走行させるエネルギーを無駄に消費することがない。また、低品質であることが判定された人参Xは、搬送方向で下流側の遮光機構Gを通過した直後に排出カッター25により茎葉部Wから切り離され排出されるので、この切り離しの対象となる人参Xの特定に誤りがなく、搬送機構Caの搬送経路で無駄に搬送することなく早期の排出が実現する。
【0047】
〔別実施形態〕
本発明は、上記した実施形態以外に以下のように構成しても良い。
【0048】
(a)遮光機構Gとして、実施形態で説明したもの同様の遮光板28を左右方向にスライド移動自在に支持し、この左右の遮光板28をスライド方向に駆動するアクチュエータを備え、更に、人参Xが遮光機構Gに接近したことを検出するセンサ類を備え、このセンサ類で人参Xを検出したタイミングで左右の遮光板28を開いて人参Xの通過を許し、通過した後に閉じる制御ユニットを備えても良い。このように構成することにより、人参Xに遮光板28を接触させない状態で開閉が可能となり、人参Xの表面を傷めることがなく開閉時間の短縮化も実現する。
【0049】
(b)前述した別実施形態(a)のように遮光板類をアクチュエータで作動させる構成として、遮光板類の作動方向は上下方向であっても良く、直線的にスライドさせるものの他に揺動により開閉する構成のものを採用しても良い。
【0050】
(c)遮光機構Gを、2枚の布類を用い実施形態の遮光板28と同様の位置に配置し、暖簾のように、布類の変形により人参Xの通過を許し、通過の後には布類が自重によって垂れ下がることにより閉じ状態に達するように構成する。このように構成することで、実施形態の遮光板28の揺動支軸28aを備えずに済み構成が単純で、少ない部品点数で構成することが可能となる。
【0051】
(d)撮影手段として動画を撮影するデジタルムービーカメラを備えることで複数コマとなる撮影画像情報を取得するように構成する。このように複数コマの撮影画像情報を取得する構成では、複数のコマの撮影画像情報から最も良好に撮影された撮影画像情報に基づいて品質の判定を行うことや、複数のコマの撮影画像情報を合成したものに基づいて品質の判定が可能となり、判定精度を高めることが可能となる。
【0052】
(e)撮影手段として、地中塊部(人参X)を異なる方向から撮影する複数のカメラ21を備える。このカメラ21は、別実施形態(d)のようにデジタルムービーカメラであっても良い。このように複数のカメラ21で地中塊部(人参X)を撮影することで、例えば、地中塊部(人参X)の立体形状を把握して、品質の判定の精度を高めることが可能となる。
【0053】
(f)作物として、人参Xのほか、大根、牛蒡、玉葱、芋類等の地中で成長するものを収穫対象としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、作物の茎葉部に搬送力を作用させることで地中塊部を圃場から引き抜く形態で収穫を行う作物収穫機に利用することができる。
【符号の説明】
【0055】
21 撮影手段(カメラ)
28 遮光板
A 機体(走行機体)
Ca 搬送機構
G 遮光機構
W 茎葉部
X 地中塊部(人参)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体の走行に伴って作物の茎葉部に機体後方上方に向かう搬送力を作用させて前記作物の地中塊部を圃場から引き抜く搬送機構を備えている作物収穫機であって、
前記搬送機構で搬送される作物の地中塊部を撮影する撮影手段を備えると共に、前記撮影手段の撮影領域への前記地中塊部の移動を許容しながら、前記撮影領域への外部からの光線を遮る遮光機構を備えている作物収穫機。
【請求項2】
前記撮影手段が、前記搬送機構の搬送経路の側部位置から前記地中塊部を撮影する位置に配置され、前記撮影手段の前記撮影領域の搬送上流側と、搬送下流側との各々の位置に前記遮光機構が備えられている請求項1記載の作物収穫機。
【請求項3】
前記遮光機構が、前記搬送機構で搬送される前記地中塊部が当接することで開放作動して前記地中塊部の通過を許容し、通過の後には付勢力により閉じ姿勢に復帰する2枚の遮光板を有して構成されている請求項1又は2記載の作物収穫機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−74797(P2013−74797A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214959(P2011−214959)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】