説明

使用済み研磨スラリーを処理するための方法

本発明は、基板材料を複数のウェハ状スライスに切断する工程から得られた使用済み研磨スラリーを処理するための方法及びシステムに関するものであり、前記スラリーは潤滑流体、未使用研磨粒子、及び微粉を含む。この方法は、使用済みスラリーを第1の沈降ステップで未使用研磨粒子を含む固形濃縮物と固形物減損スラリーとに分離するステップと、その後、クロスフロー濾過により固形物減損スラリーを微粉含有画分と固形物及び微粉減損再生潤滑流体とに分離するステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板材料を切断して複数のウェハ状スライスに分けるための工程から得られる使用済み研磨スラリーを処理する方法に関する。典型的には、研磨スラリーは、ワイヤソーを使用して単結晶又は多結晶シリコン、GAs及びGeから、半導体材料、例えば、インゴットを切断して半導体ウェハに分ける際に使用され、鉱物油又は水溶性液体(例えば、ポリエチレングリコール)などの高粘度の潤滑剤又は冷却流体及び炭化ケイ素などの研磨剤からの粒子状物質を含む。
【背景技術】
【0002】
インゴットを切断して複数のスライスに分けるために使用されるワイヤは、滑らかな表面を有するが、切断効果は、カッティングワイヤと複数のスライスに切断される基板材料の接触領域に送られる高粘性研磨スラリーを使用することにより得られる。
【0003】
切断動作時に、基板材料は、いわゆる鋸切り溝で研削されて粉末状物質にされる。スラリーは、さらに、鋸切り溝からそのような粉末基板材料を取り除くためにも使用される。
【0004】
切断動作時に、研磨スラリーは、以下の3種類の形で汚染される。基板材料(例えば、シリコン又は他の半導体材料)が、粉砕されて微粒子になり、スラリーにより取り込まれる。カッティングワイヤの金属(主に鉄)は、ワイヤの表面磨耗による粒子汚染のもう1つの発生源である。最後に、研磨物質それ自体の粒が、部分的に粉砕されてより小さな粒子になるが、もちろん、これも研磨スラリーに入り込んでしまう。
【0005】
これら3つの汚染物質(以下では微粉と呼ぶ)の濃度が時間の経過とともに上昇すると、切断作業の効率は低下する。スラリーが、最終的に役立たなくなると、すなわち、使用済みになるか、又は消耗してしまうと、スラリーは破棄されなければならない。
【0006】
使用済みスラリーは、これまで、処分される(焼却又は他の手段により)か、再生されてきた。
【0007】
これまで提案されていた使用済み研磨スラリーを再生する方法は、2つの異なる原理に依っている。第1の原理は、消耗したスラリーを第1の液体画分と第1の固体画分とに分離することから始まる。その後、これら2つの画分は、別々に再生されるが、これは、希釈、洗浄、分級、濾過、エッチング、蒸発などのさまざまな工程を伴う。再生された液体及び再生された固体画分は、新しいスラリーの調製に使用され得るが、後者は微粉をまったく含まないか、又は含有量が減少している。このような工程の実施例は、国際公開2002/096611号パンフレット及び欧州特許出願第1 561 557 A1号明細書において開示されている。
【0008】
この方法には多数の欠点があり、そのうち最も顕著なのは、その複雑さである。必要な工数が多く、それに加えて、それらの工程間の相互の影響が大きいと、ローカルの利用者からの使用済みスラリーを再生するために使用場所(ポイントオブユース)の近くに配置され、運用されうる小さなシステムでは、かなり高いコストがかかることになる。したがって、この技術は、使用済みスラリーが利用者の施設から再生現場へ輸送されることを必要とする大規模集中ユニットにおいて使用されてきた。したがって、研磨スラリーの再生に伴う輸送コストは、かなりの額になる。
【0009】
米国特許第6,231,628B1号明細書で提案されているように使用済みスラリーの粘度を下げ、使用済みスラリーを加熱することによりある種の改善をもたらすことも可能であろう。しかし、かなり高濃度のスラリーを加熱すると、熱伝達面のスケーリング、皮殻、汚れ、及び摩滅が生じ、その結果、熱伝達効率が低下し、加熱装置の寿命が短くなり、エネルギーコストが増大する。
【0010】
スラリー再生に使用される他の原理は、2台の遠心分離機を組み合わせて使用することに基づく。第1の遠心分離機では、粒子の分級が行われる、つまり、スラリーは、潤滑剤の部分と固形物の部分の両方を含む2つの画分に分けられる。この2つの画分は、固形物濃度と固形物の粒子サイズ分布が異なる。第1の遠心分離機のオーバーフローは、主に、潤滑剤とより小さな粒子の大半を含む(典型的には約10μm未満の、半導体材料、ワイヤ、及び研磨材料から出る微粉又は破片)。第1の遠心分離ステップの結果として得られるスラッジ(流動性を有する濃縮物)は、好ましくは、新しいスラリーのサイズに近いサイズを有する砥粒を含む(本質的には約10μmを超える)。再利用可能砥粒を含むスラッジの体積は、オーバーフローの体積よりもかなり小さい。分級効果は、遠心力場内の粒子の沈降速度に差があることで生じる。
【0011】
粒子は大きいほど速く沈み、スラッジとともに遠心分離機から出るのに都合がよい。遅い速度で沈降する小さな粒子は、遠心分離機のオーバーフロー液とともに容易に運ばれ廃棄される。オーバーフローは、第2の遠心分離機を使って浄化され、その結果、スラッジが廃棄され(少量の潤滑流体中の小さな廃粒子又は微粉)、多少浄化された潤滑剤の流れが得られる。この原理は、上述の第1の原理と比べて少ない工数で済み、またポイントオブユース工程として設置することも可能であるけれども、次の2つの大きな欠点があるため、この方法が広く使用されるには至っていない。
【0012】
まず第1に、第2の遠心分離機は、すぐに再利用できる潤滑剤を十分供給できるほど第1の遠心分離機のオーバーフロー画分を十分に浄化することができない。微粉の実質的部分が、潤滑剤中に残留し、新しいスラリーを調製するために加えられると、端からこのスラリーを汚染することになる。
【0013】
第2に、第1の遠心分離機における分級効果は、理想的というのにはほど遠い。相当量の微粉が、未使用の研磨粒子とともに遠心分離機から出て、加えて回収された研磨剤とともに調製された新しいスラリーを汚染し、新しいスラリーの寿命を制限する。
【0014】
このようなことに対する理由として、遠心分離工程のいくつかの制限が挙げられる。
【0015】
i)ふつうの鋸スラッジの高い固形物濃度は粒子間相互作用に有利に働き、大きな粒子はそれらとともに微粉を取り込む可能性があり、強制的に遠心分離機から間違った方向に排出される。この効果は、固形物の大半が濃縮されている遠心分離機のボウルの内壁に特に近いところでは強く現れる。
【0016】
ii)潤滑剤の高い粘性は、粒子間の運動量移動を増幅し、小さな粒子は、粗い粒子の影響をかなり受ける。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、より経済的な方法で使用済み研磨スラリーを処理する方法を実現することである。特に、本発明は、使用場所で実施され得る使用済みスラリーを処理し、再生のため使用済みスラリーの輸送が長距離輸送とならないようにする方法を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、請求項1に記載の方法により前記目的の解決を図るものである。
【0019】
第1の沈降ステップは、単純な重力沈降により行われ得る。本発明の好ましい実施形態では、このステップにおいて、よりコンパクトな機器を考慮した遠心力場を利用することが有効である。
【0020】
本発明は、潤滑剤から実用的にすべての微粉を除去することを可能にするクロスフロー濾過デバイス(例えば、限外濾過又はクロスフロー精密濾過)を使用する。クロスフロー濾過デバイスは、上記の第2の方法について言及されている第2の遠心分離機の下流にある処理システム内に組み込まれるか、又はそのような第2の遠心分離機を完全に置き換えることができる。再生された潤滑流体、すなわち濾過液又は透過液は、微粉、すなわち粒子及びコロイド状成分の含有物に関する限り、未使用の潤滑油に等しい。
【0021】
それを新しいスラリーの調製に使用すると、使用済みスラリーの遠心分離による従来の方法で得られた固形濃縮物と組み合わされた場合でも、微粉汚染が大幅に低減され、スラリーの寿命が延びるが、これはこの液体の優れた品質によるものである。
【0022】
好ましい一実施形態では、濾過液は、分けられ、その一部が、第1の沈降ステップの場において使用済みスラリーと混合される。この潤滑剤再循環は、使用済みスラリーを希釈して、粒子間の距離を広げ、その結果、粒子間相互作用を低減し、第1の沈降ステップの分級効率を改善する。これにより、第1の沈降ステップのスラッジ内に得られる粗い研磨粒子を汚染する微粉の量が減じられる。再生された潤滑流体とこの実施形態により得られた固形濃縮物を組み合わせることで、優れた品質の新しいスラリーが得られ、さらにスラリーの寿命が延びる。
【0023】
好ましくは、再生された潤滑流体及び使用済みスラリーは、約0.5:1〜約3:1、より好ましくは約1:1〜約3:1の体積比で混合される。
【0024】
潤滑剤と使用済みスラリーの混合は、静的ミキサ内で行うのが好ましい。
【0025】
これにより、低コストの機器が得られ、静的ミキサによりもたらされる効率は、この目的に十分なものとなる。
【0026】
より一層好ましい実施形態では、使用済みスラリーを希釈するために使用される再生された潤滑流体の一部を所定の温度になるまで加熱してから使用済みスラリーと混合する。その結果得られる使用済みスラリーと再生された潤滑流体との混合物は、高い温度、好ましくは約35℃以上、より好ましくは50℃以上の温度である。温度が高いと、スラリー/潤滑剤混合物の粘度が低下する。粘度が低ければ、流体内の粒子の沈降が加速され、遠心分離機及びクロスフロー分離デバイスに送り込まれる速度増加が過補償される。さらに、これにより、分級効率が改善され、より高い品質の第1の固形濃縮物が得られる。
【0027】
再生された潤滑流体をスラリーと混合する前に加熱するのは、使用済みスラリーそれ自体を直接加熱するよりも有利である。本発明で得られた再生された潤滑流体を使用済みスラリーと混合する前に加熱することで、熱伝達面のスケーリング、皮殻、汚れ、及び磨耗が発生するリスクが回避されるが、それは、加熱装置を通る液体が、実用上一切の粒子を含まず、コロイド状成分もほとんど含まないからである。
【0028】
新しいスラリーを生産するために再利用されるクロスフロー濾過ステップで得られた潤滑流体は、第1の沈降ステップ及びオプションの追加の新しいスラリーから得られた固形濃縮物と混合する前に冷却デバイス内で冷却されてもよい。
【0029】
本発明は、さらに、上述のような方法により使用済み研磨スラリーを処理するためのシステムを対象とする。このようなシステムは、請求項15に記載されている。
【0030】
このようなシステムの好ましい実施形態は、本発明による方法の上記説明から明らかであり、本発明のシステムで有利に使用される様々なデバイスはすでに説明してある。それらは請求項15の従属請求項の主題でもある。
【0031】
本発明を、以下の実施例及び実施形態を用いてさらに詳しく説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
図1は、外周12から開始して、ある深さまですでに切断され切り溝14を形成した例えばシリコンのインゴット10の断面を示す断面図である。切り溝14内には、ほぼ円形の断面と滑らかな外面18を有するカッティングワイヤ16が配置されている。カッティングワイヤ16がインゴット体10と接触する切り溝14の部分において、研磨スラリー20は、切削ツール及びインゴットの基板を冷却し、潤滑し、それと同時にインゴット10を構成する基板材料の研磨を支援するために存在している。そのために、研磨スラリー20は、粘性のある潤滑流体のほかに、図2にさらに詳しく示されている研磨粒子つまり砥粒22を含む。図2に示されている砥粒22の平均サイズは、約20μmであり、これらの砥粒22は、カッティングワイヤ16の長手方向の運動で駆動されるインゴット10の基板材料に作用する。なお、この運動は図面の表面に対し垂直方向である。研磨スラリーの一部を形成する潤滑液は、非常に粘性の高い流体、例えば、鉱物油、又はポリエチレングリコールなどの水溶性有機物液体である。
【0033】
高粘度は、切り溝14内の砥粒22の研磨作用を十分に行わせるために必要である。十分な潤滑を得るためには、高い粘度がさらに必要である。
【0034】
研磨スラリー20の上記の機能に加えて、スラリーは、さらに、切断動作において形成される劣化した基板材料(微粉)の除去も行う。
【0035】
したがって、消耗するまで切断デバイス内で再循環されるスラリー20は、潤滑流体、砥粒22、及び、通常は平均粒子サイズが約10μmをはるかに下回る粉末基板材料のほかに、砥粒からの劣化した材料と、さらにはカッティングワイヤの磨耗から生じた金属粒子(ここでは手短に微粉と呼ぶ)とを含む。
【0036】
本発明は、その少なくとも大きな部分が切断動作に再利用されうる程度まで使用済みスラリーを処理する費用効果の高い方法及び経済的手段をもたらすものである。
【0037】
図3aには、最も単純であるが、すでに非常に効率的な構成をとっている本発明が示されている。図3aによるデバイスは、遠心分離機を備え、また上述の切断工程から直接使用済みないしは消耗スラリーを受け入れる第1の沈降ユニット32を備える。第1の沈降ユニット32の遠心分離機は、使用済み研磨スラリーを固形濃縮物と固形物減損スラリーとに分離する。
【0038】
固形濃縮物は、管路34を通して沈降ユニット32から排出され、研磨スラリーの比較的少ない量の潤滑流体を含む。管路34を経て排出される固形濃縮物の組成は、再生された潤滑流体と組み合わせることにより新鮮な研磨スラリーを調製するために直接使用できるような組成である。
【0039】
沈降ユニット32内に生成されるオーバーフローは、管路36を通して沈降ユニット32から引き出され、クロスフロー濾過ユニット38内に送り込まれる固形物減損スラリーである。好ましくは膜分離デバイスであるクロスフロー濾過ユニット38では、潤滑流体中のコロイド状分散粒子物体を含む微粉の実質的にすべてが、管路40を経てクロスフロー濾過ユニット38から引き出され得る透過液が新しい又は新鮮な研磨スラリーの再利用及び調製にすぐに使用できるように取り除かれ得る。この固形物及び微粉減損透過液を、ここでは再生潤滑流体と称することとする。クロスフロー濾過ユニット38から引き出された微粉含有画分は、管路42から廃棄され、使用済み研磨スラリー中にすでに含まれている微粉の実質的にすべてを含む。この画分は、管路43を経て従来の方法で除去することができる。クロスフロー濾過ユニットの効率を高める、つまり、管路40を経て引き出され得る再生された潤滑流体の割合を高めるために、管路45を通して微粉含有画分の一部を再循環させ、管路36を通してクロスフロー濾過ユニット38の入口に送り込まれる固形物減損スラリーと混合するとよい。
【0040】
図3bは、第1の沈降ユニット32に加えて第2の沈降ユニット44を備える図3aのデバイスの好ましい変形実施形態を示している。第2の沈降ユニット44は、好ましくは遠心分離機を備え、管路36を通して第1の沈降ユニット32から固形物減損スラリーをそのフィードとして受け入れる。第2の沈降ユニット44は、固形物減損スラリーに含まれる微粉の一部をクロスフロー濾過ユニット38に移す前に取り除くために使用される。この実施形態では、固形物及び部分的に微粉減損のスラリーが、管路46を経てクロスフロー濾過ユニット38内に送り込まれる。管路48を経て第2の沈降ユニット44から引き出された微粉濃縮物は、主に、微粉を含み、従来は捨てられている。
【0041】
微粉濃縮物中の粒子サイズは、第1の固形濃縮物中に含まれる粒子と比べてかなり低く、また切断システムのカッティングワイヤから出る砥粒異物、粉末基板材料、及び摩滅金属粒子の相当部分を含み得る。
【0042】
図3aに関連してすでに説明したように、クロスフロー濾過ユニット38からの保持液(微粉含有画分)は、管路45を経て固形物と部分的に微粉減損しているスラリーに部分的に再循環され、これにより残留物が管路43を通して廃棄されている間に、クロスフロー濾過ユニット38の分離効率を改善することができる。
【0043】
図4は、使用済み研磨スラリーを処理するための本発明のシステム50の好ましい一実施形態を示しており、システム50は、管路52を介して使用済み研磨スラリーを受け入れる。使用済み研磨スラリーは、遠心分離機又は第1の沈降ユニット54に送られ、管路56を介して遠心分離機54から排出される固形物減損スラリーの形態でオーバーフローをもたらす。固形濃縮物として使用済みスラリーから遠心分離機54内で分離されたスラッジは、切断工程においてそのまま使用されうる砥粒の主要な部分を含む。スラッジは、管路58を通して遠心分離機54から引き出される。
【0044】
微粉をそのまま含む固形物減損スラリーは、管路56を経て遠心分離機60の形態の第2の沈降ユニットに送られ、そこで管路62を通して微粉濃縮物をスラッジとして引き出すことができる。この微粉濃縮物は、微粉の相当部分を含む。固形物及び部分的に微粉減損しているスラリーは、管路64を経て遠心分離機60からオーバーフローとして引き出され、クロス濾過ユニット66に送られる。
【0045】
システム50の変形実施形態において、第2の遠心分離機60を省略することができ、管路56を管路64に直接接続して、遠心分離機54内に形成された固形物減損スラリーが直接、クロスフロー分離ユニット66に送られるようにすることができる。
【0046】
クロスフロー分離ユニット66において、保持液は、管路68を通して微粉含有画分として引き出されるが、透過液は、管路70を通して(固形物及び微粉減損)再生潤滑流体の形態で引き出されてもよい。保持液の一部は、管路69を経て再循環され、残りは、管路71を経て破棄され得る。
【0047】
このようにして得られた再生潤滑流体の品質は、例えば、管路58を通して遠心分離機54から受け入れた固形濃縮物と、管路70を通してクロスフロー濾過ユニット66から引き出された再生潤滑流体とを組み合わせることにより、新しいスラリーを調製するためさらなる処理を行うことなく使用できるほどの品質である。
【0048】
しかし、新しい研磨スラリーを調製する工程に再生された潤滑流体のすべてを再循環させず、その一部を管路72を通して再循環させ、切断プロセスから管路52を通して受け入れた使用済みスラリーと組み合わせるのがより効率的であることがわかった。驚いたことに、再生された潤滑流体の一部を再循環し、切断工程から受け入れた使用済み研磨スラリーと組み合わせると、遠心分離機54の分離効率が高まり、管路58を通して遠心分離機54から引き出された固形濃縮物の品質が向上する。
【0049】
使用済みスラリーと組み合わされた再生潤滑流体の割合は、好ましくは約0.5:1〜約3:1の比が結果として得られるような割合である。より好ましくは、再生潤滑流体と使用済み研磨スラリーの比は、約1:1〜約3:1の範囲内である。
【0050】
第2の沈降ユニットがシステム50内に備えられているかどうかに関係なく、クロスフロー分離ユニット66から管路70内に受け入れた割合の固形物減損再生潤滑流体の部分が、再循環されて使用済みスラリーと組み合わされることになる。
【0051】
本発明のなお一層好ましい一実施形態は、図5にシステム80の形態で示されている。処理システム80は、切断デバイスから管路82を経て使用済み研磨スラリーを受け入れる。
【0052】
管路82から受け入れた使用済み研磨スラリーは、まず第1に、ミキサユニット84に通され、次いで、管路86を通して遠心分離機88の形態の第1の沈降ユニットに送られる。固形物減損スラリーは、管路90を通してオーバーフローとして遠心分離機88から引き出されるが、固形濃縮物は、管路92を経て遠心分離機88からスラッジとして引き出される。上述のシステムに関連してすでに説明したように、固形濃縮物の品質は、新しい研磨スラリーを形成するために潤滑流体への添加剤としてさらに処理することなく使用できるような品質である。
【0053】
固形物減損スラリーは、管路90を通して第2の沈降ユニット94に送られ、そこで、管路96を通して、固形物及び部分的に微粉減損しているスラリーを供給するが、微粉の相当分を含む微粉濃縮物は、管路98を通して遠心分離機94から引き出される。微粉濃縮物は、通常廃棄される。
【0054】
第2の沈降ユニット、すなわち遠心分離機94から管路96を介して引き出される固形物及び部分的に微粉減損しているスラリーは、クロスフロー分離ユニット100に送られる。クロスフロー分離ユニット100は、管路102を通してユニット100から引き出され、管路103を通して少なくとも一部は破棄される保持液を生成する。保持液の他の部分は、管路105を通して再循環され、ユニット100の分離効率を改善する。(固形物及び微粉減損)再生潤滑流体の形態の透過液は、管路104を通して引き出される。
【0055】
図4のシステムに関連してすでに説明したように、本発明のシステムの本発明のより一層好ましい一実施形態では、さらに、再生された潤滑流体の一部も管路106を通して再循環され、管路82を通してシステム内に受け入れた使用済みスラリーを希釈するために使用される。ここで、管路106は、ミキサユニット84、使用済み研磨スラリーを均一に分配することを可能にする静的ミキサ、及び再生潤滑流体の再循環部分と連通している。ミキサ84内で混合される再生潤滑流体と使用済み研磨スラリーの割合は、図4のシステム50の説明に関連して上ですでに示した推奨事項に対応する。
【0056】
ここで説明されている本発明のシステム80において、適宜な管路106は、例えば80℃の温度まで再循環される再生潤滑流体を加熱するために使用される加熱ユニット108を通る。加熱装置108から出る加熱された流体は、ミキサ84に送り込まれ、混合された使用済み研磨スラリー及び管路86を通して遠心分離機88に送られる流体の粘度を下げるために使用される再生潤滑流体の温度をかなり上昇させる。これにより、遠心分離機88内の分離プロセスが改善され、管路92を通して引き出される第1の固形濃縮物の品質が高まる。
【0057】
さらに、遠心分離機94内で実行される第2の沈降ステップは、管路90から受け取った流体の温度が増大することで改善される。
【0058】
さらに、クロスフロー分離ユニット100に管路96を通して送られる流体は、高温になり、これにより管路104から引き出された透過液(再生潤滑流体)は、周囲温度よりも高い温度になる。
【0059】
したがって、新しい研磨スラリーで再利用するために管路110を通過する再生された潤滑流体の一部は、冷却装置112を経て約20℃に冷却された後に、管路92を通して遠心分離機88から受け入れた固形濃縮物と組み合わされる。
【0060】
スラリーの研磨効率を維持するために、研磨スラリーは比較的高い粘度を有する必要があり、したがって、低温、例えば周囲温度である必要があると理解される。
【0061】
以下の例において、図5で説明したものと似たシステム120の動作が、図6によりやや詳しく説明されるている。
【0062】
管路122から受け入れた使用済みスラリーは、固体粒子の2つの集団を含む。粗いものは、サイズが主に約6〜約50μmの範囲で、ピークが約18μmである研磨性炭化ケイ素(例えば、SiC)粒子からなる。細かいものは、サイズが主に約0.2〜約5μmの範囲で、ピーク値が約1μmである、主に、(SiC)微粉と、粉砕された基板材料、例えばシリコンとの混合物である。
【0063】
使用済みスラリーは、周囲温度、例えば、約20℃で熱交換機124内に流れ込む。再生された潤滑流体(例えば、PEG)の画分が、より高い温度、例えば、約60℃で熱交換機124内に入る。そのエンタルピーの一部は、消耗したスラリーに移され、その温度を約20℃から約41℃まで上げる。再生されたPEGは、熱交換機124内で、約60℃から約30℃まで同時に冷却される。
【0064】
予熱された使用済みスラリーは、管路126を通して熱交換機124から出て、静的ミキサ128内で再生されたPEGの他の画分と混合され希釈される。再生されたPEGのこの画分は、好ましくは、例えば約80℃の温度まで加熱され、これにより、管路130を通してミキサ128から出る希釈された使用済みスラリーの温度を約60℃まで上げることができる。この混合物は、遠心分離機132、例えば、円筒円錐らせん状コンベヤーデカンタ式遠心分離機に入る。ここで、懸濁された固形物と微粉は、上述の2つの粒子サイズ画分に分けられる。粒の粗い画分(「良い粒」)は、好ましくは、回転しているボウルの内壁に移動する。これは、らせん状コンベヤーを使って約80℃の温度で遠心分離機のボウルから固形濃縮物又はスラッジとして放出され、管路136を経て混合タンク156に移される。細かい画分(「微粉」)は、好ましくは、固形物減損スラリー内に懸濁されたまま、オーバーフロー液ポート及び管路134を通って遠心分離機132を出る。
【0065】
微粉を含む固形物減損スラリーは、管路134を通してクロスフロー膜分離ユニット138に運ばれる。スラリーの大部分は、再生潤滑流体として浄化されてこの濾過ユニット138から排出される。微粉は、より小さな体積のPEG(微粉含有画分)内に濃縮される。
【0066】
管路140を通して濾過ユニット138から排出された微粉含有画分の一部は、管路141を通して管路134内に送り返され、遠心分離機132から受け入れた固形物減損スラリーと組み合わされ得る。濾過ユニット138から排出された微粉含有画分の一部と遠心分離機132から受け入れた固形物減損スラリーとを完全に混合するために、これらの流体を入れる保持タンク(図に示されていない)を備えるとよい。保持タンクの出口は、混合物を濾過ユニット138に供給するために使用される。
【0067】
微粉含有画分の他の部分は、管路142を経てシステムから出て、従来では捨てられていたものである。
【0068】
浄化された再生潤滑流体は、管路144を通して透過液として濾過ユニット138を出て、2つの画分に分けられる。一方の画分が、管路146を経て移され、前述のように熱交換機148を使って約80℃まで加熱され、静的ミキサ128内で使用済みスラリーと混合され、これにより使用済みスラリーを希釈し、約60℃まで加熱した後、遠心分離機132内に流し込む。
【0069】
再生潤滑流体の他方の画分は、管路150を経て、約30℃まで冷却する熱交換機124内に流れ込み、使用済みスラリーを周囲温度から約41℃まで加熱する。熱交換機124から、冷却された再生潤滑流体は、管路152を通して引き出され、第2の熱交換機154内に送り込まれ、そこで、さらに約9℃まで冷却され、混合タンク156内で調製された混合物が周囲温度に達する。ここで、攪拌機158で、管路136を通して遠心分離機132から来るスラッジ、ある程度の新しいPEG、及び管路160を通して受け入れた新しい研磨粒子と再生潤滑流体とを混合し、膜濾過ユニット138から排出される微粉画分による材料の損失を補う。その結果タンク156内に得られた混合物は、すぐに再利用できる再生研磨スラリーであり、管路162を通して切断デバイスに送り返される。新しいPEG及び新しい研磨粒子は、それとは別に、別の管路(図には示されていない)を経て混合タンク156内に送り込まれうることは理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】鋸切り溝内のカッティングワイヤの略図である。
【図2】研磨粒子の拡大された略図である。
【図3a】本発明の方法を実施するための基本システムを示す図である。
【図3b】本発明の方法を実施するための他の基本システムを示す図である。
【図4】本発明のシステムの好ましい一実施形態を示す図である。
【図5】本発明によるシステムのさらなる好ましい実施形態を示す図である。
【図6】好ましい本発明によるシステムの他の好ましい実施形態を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板材料を複数のウェハ状スライスに切断する工程から得られた使用済み研磨スラリーを処理する方法であって、前記使用済み研磨スラリーは、潤滑流体、未使用研磨粒子、及び微粉を含むものであり、
当該方法は、
前記使用済み研磨スラリーを、第1の沈降ステップで未使用研磨粒子を含む固形濃縮物と、固形物減損スラリーとに分離するステップと、その後、
クロスフロー濾過により前記固形物減損スラリーを、微粉含有画分と、固形物及び微粉減損再生潤滑流体とに分離するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記固形物減損スラリーに対して第2の沈降ステップを実行して、前記クロスフロー濾過の前に一定の割合の微粉を含む微粉濃縮物を除去し、固形物及び部分的に微粉減損しているスラリーを形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の沈降ステップ及び/又は前記第2の沈降ステップは、遠心力場の使用を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記再生潤滑流体の一部分は再循環され、使用済み研磨スラリーと混合されてから前記第1の沈降ステップに移行される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記再生潤滑流体及び前記使用済み研磨スラリーは、約0.5:1〜約3:1、より好ましくは約1:1〜約3:1の体積比で混合される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記再生潤滑流体及び前記使用済み研磨スラリーの一部分は、静的ミキサ内で混合される、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記再生潤滑流体の一部分は、所定の温度に加熱されてから使用済み研磨スラリーと混合される、請求項4〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記温度は約35℃以上である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記温度は約50℃以上である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記再生潤滑流体の一部分と混合された前記使用済み研磨スラリーは、約40℃〜約60℃の範囲内で選択された温度である、請求項4〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記再生潤滑流体は熱交換機に通され、使用済み研磨スラリーを加熱する、請求項6〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記固形濃縮物及び前記再生潤滑流体は混合されて、再生スラリーを形成する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記再生スラリーは、新鮮な研磨スラリーと混合される請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記再生潤滑流体、前記固形濃縮物及び新しい研磨スラリーは混合されて、追加の再生スラリーを形成する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法により使用済み研磨スラリーを処理するシステムであって、
使用済み研磨スラリー用の入口と、沈降ユニットと、固形濃縮物を排出するための第1の出口と、前記沈降ユニットから固形物減損スラリーを排出するための第2の出口とを有する第1の沈降デバイスと、
前記第1の沈降デバイスの前記第2の出口と流体的に連通している前記固形物減損スラリー用の入口と、微粉含有画分を排出するための第1の出口と、固形物及び微粉減損再生潤滑流体をクロスフロー濾過デバイスから排出するための第2の出口とを有するクロスフロー濾過デバイスと、
前記第1の沈降デバイスの前記第2の出口と前記クロスフロー濾過デバイスの前記入口との間を流体的に連通させる導管手段と
を備えるシステム。
【請求項16】
前記導管手段は、前記第1の沈降デバイスから固形物減損スラリーを受け入れ、微粉濃縮物を前記固形物減損スラリーから取り除いた後に、固形物及び部分的に微粉減損しているスラリーを前記クロスフロー濾過デバイスに送り込む第2の沈降ユニットを備える、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記第1の沈降ユニット及び/又は前記第2の沈降ユニットは遠心分離機を備える、請求項15又は16に記載のシステム。
【請求項18】
混合ユニット及び導管を備えており、
前記導管は、前記クロスフロー濾過デバイスの前記第2の出口から前記混合ユニットまでを流体的に連通させ、前記第1の沈降ユニットの前に前記再生潤滑流体の一部を再循環させて前記使用済みスラリーと混合させる、請求項15〜17のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項19】
前記使用済みスラリーを所定の温度に加熱する第1の加熱手段を備える、請求項15〜18のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項20】
前記固形物減損スラリーを所定の温度に加熱する第2の加熱手段を備える、請求項15〜19のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項21】
前記第1の加熱手段は、所定の温度の再生潤滑流体及び周囲温度の前記使用済みスラリーを受け入れる第1の熱交換機ユニットを備える、請求項19又は20に記載のシステム。
【請求項22】
再生潤滑流体を周囲温度よりも低い温度に冷却する冷却ユニットを備える、請求項19〜21のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項23】
再生潤滑流体及び前記固形濃縮物を受け入れる混合デバイスを備える、請求項15〜22のいずれか一項に記載のシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3a】
image rotate

【図3b】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2011−502054(P2011−502054A)
【公表日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−530278(P2010−530278)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【国際出願番号】PCT/EP2007/009405
【国際公開番号】WO2009/056152
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(596064112)ポール・コーポレーション (70)
【氏名又は名称原語表記】Pall Corporation
【Fターム(参考)】