説明

保持材および保持材の製造方法

【課題】積層または捲回してもシート材に対する凹陥の発生を抑制することができる保持材を提供する。
【解決手段】連接パッド20では、厚さが同じ2枚の保持シート30の端部同士を隣接させた直線状の連接箇所15で連接し形成されている。連接パッド20では、連接する2枚の保持シート30の一面側に配された剥離材27が連接テープ18でつなぎ止められている。連接パッド20の他面側が被研磨物を保持するための保持面Pを形成している。連接テープ18の厚みT2は、100μm以下に調整されている。保持シート30は、ポリウレタン樹脂で形成されたウレタンシート22を有している。ウレタンシート22の内部には、発泡23が形成されている。厚みT2が制限されたことでウレタンシート22の弾性が機能する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は保持材および保持材の製造方法に係り、特に、凹陥性を有する同じ厚さで内部にセルが形成された複数のシート材と、シート材を連接するための粘着材とを備えた保持材および該保持材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウエハ、液晶ディスプレイ(LCD)用ガラス基板等の材料(被研磨物)では、高精度な平坦性が要求されるため、研磨パッドを使用した研磨加工が行われている。これらの被研磨物の研磨加工では、被研磨物を片面ずつ研磨加工する片面研磨機が使用されることがある。この片面研磨機では、被研磨物が保持材を介して保持用定盤に保持され、研磨用定盤に装着された研磨パッドで研磨加工される。研磨加工時には、研磨粒子を含む研磨液(スラリ)が循環されつつ供給される。
【0003】
研磨加工で使用される研磨パッドや保持材では、外力によって変形を受けやすい柔らかな材質が用いられている。一般的な研磨パッドや保持材としては、湿式凝固法により形成された発泡構造を有する軟質樹脂製のシート材と、シート材を研磨機に装着するための粘着層と、粘着層を保護する機能を有し剥離可能な剥離材とで構成されている。シート材が軟質な素材であるのに対して、粘着層の芯材や剥離材では樹脂製フィルムや洋紙のような硬質素材が多く用いられている。このような研磨パッドや保持材では、被研磨物の平坦性を向上させるために表面の平坦性が重要となるが、軟質樹脂製のシート材が外力を受けたときや自重によって凹陥(へこみ)を発生しやすい、という問題がある。すなわち、凹陥が発生すると、研磨パッド等の平坦性が損なわれるため、被研磨物の平坦化が不十分となるおそれがある。
【0004】
一方、例えば、LCD用のガラス基板では、LCDの生産性向上を目的に年々大型化が進んでおり、一辺が3mに迫る大型のガラス基板が使用されるに至っている。大型のガラス基板の研磨加工時に使用される保持材では、ガラス基板を全面で保持するため、ガラス基板のサイズ変化にあわせて大型化する必要があるが、一枚の保持材で対応することが難しくなっている。大型の被研磨物を保持するために、例えば、ベースプレートに接着材料を介して保持させる技術が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−262327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術では、接着材料を用いることで保持性は満足できるものの、研磨加工後に被研磨物に付着した接着材料を除去する作業を要するため、作業効率の点で十分といえるものではない。これに対して、2枚の同種の保持材を連接することで大型の被研磨物に対応することができる。ハンドリングや識別を容易にするために、保持材を連接したまま積層状に重ねたり、捲回したりすると、下層側の軟質なシート材の表面に上層側の連接箇所が接触することとなる。連接箇所では、粘着シートの厚みにもよるが、保持材の厚みである400〜2000μm程度の範囲で段差が形成されることがあるため、下層側のシート材に凹陥を発生させる、という問題がある。また、連接箇所で2枚の保持材間に形成される隙間が大きくなると、下層側のシート材の表面で軟質な樹脂の塑性変形により突条の圧痕が顕著になる。
【0007】
本発明は上記事案に鑑み、積層または捲回してもシート材に対する凹陥の発生を抑制することができる保持材および該保持材の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様は、凹陥性を有する同じ厚さで内部にセルが形成され直線状の端部同士が隣接するように配置された複数のシート材と、隣り合う前記シート材の隣接部分の一面側に貼付され前記シート材を連接するためのシート状の粘着材と、を備え、前記粘着材が100μm以下の厚みを有しており、かつ、前記粘着材で連接されたシート材の他面側が被研磨物を保持するための保持面を形成していることを特徴とする保持材である。
【0009】
第1の態様では、直線状の端部同士が隣接するように配置された複数のシート材が隣接部分の一面側に貼付された100μm以下の厚みを有するシート状の粘着材で連接されているため、連接されたシート材を積層状または捲回状に配置することで粘着材が保持面に接触しても、粘着材の厚みが制限されたことでシート材の形状が復元しやすくなり、各シート材に対する粘着材による凹陥の発生を抑制することができる。
【0010】
第1の態様において、シート材の隣接部分に形成される隙間が2mm以下となるように連接されていることが好ましい。粘着材が隣り合うシート材のそれぞれに均等に位置するように貼付されていてもよい。粘着材を25μm以上の厚みを有するようにすることができる。シート材が軟質樹脂で形成されており、シート材の一面側に軟質樹脂より硬質のシートが貼り合わされていてもよい。シート材を湿式凝固法によりポリウレタン樹脂で形成することができる。被研磨物を液晶ディスプレイ用ガラス基板とすることができる。
【0011】
本発明の第2の態様は、第1の態様の保持材の製造方法であって、凹陥性を有する同じ厚さで内部にセルが形成された複数のシート材を直線状の端部同士が隣接するように並置する並置ステップと、前記並置ステップで並置されたシート材の直線状の隣接部分における一面側にシート状の粘着材を貼付して隣り合うシート材を連接する連接ステップと、を含み、前記連接ステップで貼付する粘着材が100μm以下の厚みを有しており、かつ、前記粘着材で連接されたシート材の他面側が被研磨物を保持するための保持面を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、直線状の端部同士が隣接するように配置された複数のシート材が隣接部分の一面側に貼付された100μm以下の厚みを有するシート状の粘着材で連接されているため、連接されたシート材を積層状または捲回状に配置することで粘着材が保持面に接触しても、粘着材の厚みが制限されたことでシート材の形状が復元しやすくなり、各シート材に対する粘着材による凹陥の発生を抑制することができる、という効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明を適用した実施形態の2枚の保持シートが連接された連接パッドを模式的に示す断面図である。
【図2】実施形態の連接パッドを構成する1枚の保持シートを模式的に示す断面図である。
【図3】連接パッドを構成する保持シートと連接テープとの位置関係を模式的に示す底面図である。
【図4】2枚の保持シートの連接方法の概略を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明を被研磨物保持用の2枚の保持シートを連接した連接パッドに適用した実施の形態について説明する。
【0015】
<構成>
図1に示すように、連接パッド20(保持材)では、大型化する傾向のあるガラス基板等を保持するために厚さが同じ2枚の保持シート30(シート材)の端部同士を隣接させた直線状の連接箇所15で連接し形成されている。保持シート30は、ポリウレタン樹脂製のウレタンシート22と、研磨装置に装着するための両面テープ26とで形成されており、両面テープ26のウレタンシート22と反対の面側が剥離材27で覆われている(詳細後述)。連接パッド20では、連接する2枚の保持シート30の一面側に配された剥離材27が連接箇所15で連接テープ18によりつなぎ止められている。連接箇所15では、隣り合う保持シート30の直線状の境界部分の長さの全体が連接テープ18で覆われている。連接パッド20の他面側が被研磨物を保持するための保持面Pを形成している。
【0016】
連接テープ18は、本例では、基材の片面に粘着剤が塗布されている。連接テープ18の厚み、すなわち、基材と粘着剤との合計の厚みT2は、25μm以上100μm以下の範囲に調整されている。図3に示すように、連接テープ18は、2枚の保持シート30(剥離材27)をそれぞれ均等な幅でつなぎ止めるように貼付されている。連接テープ18の幅は、30〜100mmの範囲で調整することができるが、本例では、50mmに調整されている。すなわち、連接テープ18の25mm幅分ずつがそれぞれ2枚の保持シート30に貼付されている。
【0017】
連接箇所15では、2枚の保持シート30が重なりを生じないように直線状に隣接している。2枚の保持シート30間に形成される隙間が大きくなると、連接パッド20を積層状または捲回状に配置したときに、保持シート30のウレタンシート22の表面平坦性を損なう可能性がある。このため、2枚の保持シート30間の隙間は、2mm以下となるように調整されている。
【0018】
保持シート30は、図2に示すように、100%モジュラス(2倍長に引っ張る時の張力)が2〜30MPaの範囲のポリウレタン樹脂で湿式凝固法により形成されたウレタンシート22を有している。ウレタンシート22は、被研磨物を定盤に保持させるときに被研磨物に当接する保持面Pを有している。ウレタンシート22の保持面Pと反対の面(図2の下面。以下、裏面という。)側には、ウレタンシート22の厚さ(図2の縦方向の長さ)が一様となるようにバフ処理が施されている。このため、ウレタンシート22の保持面Pが略平坦に形成されている。図1に示すように、ウレタンシート22の厚みT1は、本例では、200〜1500μmの範囲に調整されている。厚みT1は、湿式凝固法によるウレタンシート22の作製時に調整することができる(詳細後述)。
【0019】
ウレタンシート22には、保持面P側に、緻密な微多孔状に形成され表面平坦性を有するスキン層24が形成されている。スキン層24の下側(ウレタンシート22のスキン層24より内部側)には、ウレタンシート22の厚み方向に長さを有する丸みを帯びた円錐状(断面縦長三角状)の発泡23(セル)が形成されている。発泡23は、保持面P側の大きさが、裏面側より小さく形成されている。すなわち、発泡23は保持面P側が裏面側より縮径されている。発泡23は、ウレタンシート22の厚み方向の長さにバラツキを有している。発泡23の間のポリウレタン樹脂は、発泡23より小さい孔径の図示しない微細孔が連続状に形成されたミクロポーラス状に形成されている。スキン層24、発泡23および図示しない微細孔は、不図示の連通孔で網目状に連通している。すなわち、ウレタンシート22は連続状の発泡構造を有している。ウレタンシート22の裏面側がバフ処理されているため、発泡23が裏面側の表面で開孔を形成している。また、保持シート30は、裏面側(バフ処理された面側)に、一面側(図2の最下面側)に剥離材27を有する両面テープ26の他面側が貼り合わされている。両面テープ26は、PET製フィルムの基材26aを有しており、基材26aの両面に粘着剤層26bがそれぞれ形成されている。剥離材27としては、洋紙等を用いることもできるが、本例では、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記する。)製の硬質な樹脂フィルムが用いられている。なお、本例では、基材26aが保持シート30、ひいては連接パッド20を支持する機能も兼ねている。
【0020】
<製造>
この連接パッド20は、湿式凝固法によりポリウレタン樹脂がシート状に形成され作製された保持シート30の2枚を連接し製造されたものである。湿式凝固法による保持シート30の作製では、ポリウレタン樹脂を有機溶媒に溶解させた樹脂溶液を成膜基材に連続的に塗布し、水系凝固液中で樹脂溶液を凝固させ形成したシート状のポリウレタン樹脂を、洗浄し乾燥させた後、両面テープ26と貼り合わせる。具体的には、連接パッド20は、以下のようにして製造される。
【0021】
樹脂溶液は、ポリウレタン樹脂、ポリウレタン樹脂を溶解可能な水混和性の有機溶媒および添加剤を混合した後、減圧下で脱泡することで調製される。有機溶媒には、本例では、N,N−ジメチルホルムアミド(以下、DMFと略記する。)が用いられる。ポリウレタン樹脂には、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリカーボネート系等の樹脂から選択して用いられる。添加剤としては、発泡の大きさや量(個数)を制御するため、顔料、親水性活性剤および疎水性活性剤等を用いることができる。調製された樹脂溶液は、帯状の成膜基材に均一な厚みとなるように塗布される。樹脂溶液の塗布厚みは、成膜基材への塗布に使用されるナイフコータ等の塗布装置により調整することができる。成膜基材には、可撓性フィルム、不織布、織布等を用いることができるが、本例では、液体浸透性を有していないPET製フィルムが用いられている。
【0022】
成膜基材に塗布された樹脂溶液は、ポリウレタン樹脂に対して貧溶媒である水を主成分とする凝固液に案内される。凝固液中では、まず、樹脂溶液の表面側に厚さ数μm程度のスキン層24が形成される。その後、樹脂溶液中のDMFと凝固液との置換の進行により樹脂溶液が凝固しシート状のポリウレタン樹脂が再生する。DMFの凝固液との置換に伴い、スキン層24より内側のポリウレタン樹脂中に発泡23が形成され、連続状の発泡構造が形成される。このとき、成膜基材のPET製フィルムが水を浸透させないため、スキン層24側で脱溶媒が生じて成膜基材側が表面側より大きな発泡23が形成される。
【0023】
再生したポリウレタン樹脂(以下、成膜樹脂という。)が成膜基材から剥離され、水等の洗浄液中で洗浄されて成膜樹脂中に残留するDMFが除去される。洗浄後、成膜樹脂をシリンダ乾燥機等で乾燥させる。乾燥後の成膜樹脂は、厚さが一様となるように、成膜樹脂のスキン層24と反対の面側がバフ処理されウレタンシート22が形成される。このバフ処理による研削除去量と、上述した樹脂溶液の塗布厚みとにより、ウレタンシート22の厚みT1が定められる。ウレタンシート22のバフ処理された面側と、一面側に剥離材27が貼付された両面テープ26の他面側とが粘着剤層26bを介して貼り合わされた後、矩形状の所望のサイズに裁断され保持シート30が作製される。
【0024】
(連接)
2枚の保持シート30を連接し連接パッド20を製造するときは、以下の手順で行う。すなわち、図4に示すように、連接テープ18を準備する準備工程、2枚の保持シート30を隣接するように並置する並置工程(並置ステップ)、隣り合う保持シート30の境界部分に連接テープ18を貼付し連接する連接工程(連接ステップ)、を経て連接パッド20を製造する。以下、工程順に説明する。
【0025】
準備工程では、基材の片面に粘着剤を塗布することで連接テープ18を準備する。基材としては、可撓性を有する樹脂フィルムや不織布等を用いることができるが、本例では、PET製フィルムを用いる。粘着剤としては、保持シート30の剥離材27との接着性を有していれば、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系等のいずれのものも用いることができるが、本例では、アクリル系の感圧型粘着剤を用いる。基材と粘着剤との合計の厚みT2が25〜100μmの範囲となるように調整する。本例では、25μmの厚みを有する基材に30μmの厚みで粘着剤を塗布し、厚みT2を55μmに調整する。また、連接テープ18の幅が50mmとなるように裁断する。粘着剤の基材と反対側の表面を剥離紙で覆うようにしておくことも可能である。
【0026】
並置工程では、2枚の保持シート30を隣接するように並置する。このとき、平坦な基台上で、保持面Pが基台側に、剥離材27が上側になるように並置する。また、2枚の保持シート30に重なりが生じないように、かつ、2枚の保持シート30間の隙間が2mm以下となるように調整し並置する。2枚の保持シート30が同じ厚みのため、保持面Pが同一平面を形成することとなる。
【0027】
連接工程では、並置された2枚の保持シート30の剥離材27が隣接する直線状の境界部分に連接テープ18を貼付する。このとき、連接テープ18が2枚の保持シート30に均等な幅で貼付されるように位置付けて貼付する。また、貼り合わせ面に空気等が咬み込まれないように、境界部分の一端側から他端側へ向けて順次貼付する。そして、汚れや異物等の付着がないことを確認する等の検査を行い連接パッド20を完成させる。製造後の連接パッド20は、積層状に積み重ねるか、または、捲回して筒状に形成する。いずれの形態としても、保管や運搬等の取扱いが容易となる。
【0028】
(作用等)
次に、本実施形態の連接パッド20および保持パッド30の連接方法の作用等について説明する。
【0029】
ここで、本実施形態の連接パッド20での説明をわかりやすくするために、従来の例について説明する。研磨加工時に被研磨物を保持するために使用される保持材では、凹陥性を有する軟質な樹脂で形成されるが、被研磨物に対する平坦性向上を図るうえでは、保持材自体の平坦性を確保することが重要となる。このような保持材を保管、運搬する場合は、取扱いのしやすさやサイズのコンパクト化を考慮して、積層状または捲回状に配置される。例えば、矩形状の1辺や円形状の直径が1000mm程度までの1枚のシートであれば、積層状で十分であるのに対して、1辺が1400mmを超える矩形状や直径が1400mmを超える円形状では、積層状にすると却って取扱いに手間がかかるため捲回状に配置される。捲回状に配置した場合、自重がかかり、また、揺れや振動(ローリングやピッチ)もかかることから、凹陥性を有する保持材の平坦性を損なう可能性がある。更には、LCD用ガラス基板等の被研磨物が大型化しており、例えば、1辺が3000mmに及ぶ矩形状のものが製造されている。このような大型の被研磨物の研磨加工では、保持材自体も大型化することが必要となるが、1枚の保持材で対応することが難しく、2枚の保持シートを連接することで対処されている。保持シートは、厚みが400〜2000μm程度のため、連接したまま積層状または捲回状に配置したときに保持シートの厚みの範囲で生じる段差による凹陥を発生することがある。すなわち、積層状のときは下側に位置する保持シートの表面に上側に位置する保持シートの段差の生じた部分が当接するため、被研磨物を保持するための保持面に凹陥を発生させるおそれがある。捲回状のときは、内周側ないし外周側で同様の問題が生じることとなる。本実施形態は、これらの問題を解決することができる連接パッド20である。
【0030】
本実施形態の連接パッド20では、2枚の保持シート30を連接テープ18で連接し製造されている。連接テープ18は、基材と粘着剤とで形成されており、全体の厚みT2が25μm以上100μm以下の範囲に調整されている。このため、連接パッド20を積層状または捲回状に配置しても、厚みT2が制限されたことで保持シート30の弾性が十分に機能する。すなわち、ウレタンシート22に若干の窪みが生じても弾性により復元し平坦性を保つことができる。これにより、保持シート30の保持面に対して連接テープ18による凹陥の発生を抑制することができる。連接テープ18の厚みT2が25μmに満たないと、2枚の保持シート30をつなぎ止めるには強度的に難しくなる。反対に、厚みT2が100μmを超えると、凹陥の発生抑制が不十分となる。
【0031】
また、本実施形態の連接パッド20では、2枚の保持シート30の隣接する境界部分における隙間が2mm以下となるように連接している。この境界部分が連接テープ18で覆われるため、積層状または捲回状に配置したときに保持面Pに連接テープ18が接触することとなる。隙間が2mmを超えるような場合は、連接テープ18が連接箇所の隙間部分で撓みを生じ、保持面Pと接触することで、保持面Pに突条の変形を生じさせることとなる。連接パッド20では、隙間の大きさが制限されているうえ、連接テープ18で覆われているため、保持面Pに対する突条の形成を抑制することができる。
【0032】
更に、本実施形態の連接パッド20では、積層状または捲回状に配置しても凹陥の発生が抑制されることから、保管や運搬に際しても保持面Pの平坦性を確保することができる。これにより、研磨加工時に被研磨物が平坦な保持面Pで保持されるため、被研磨物の平坦性向上を図ることができる。このような連接パッド20では、大型化しつつある被研磨物、すなわち、LCD用ガラス基板を研磨加工するときや表面を鏡面状態まで研磨加工するときの保持材として好適に使用することができる。
【0033】
なお、本実施形態では、2枚の保持シート30を連接テープ18で連接する例を示したが、本発明はこれに制限されるものではない。例えば、3枚以上の保持シート30を連接することも可能である。また、本実施形態では、連接テープ18が隣り合う保持シート30の境界部分の長さの全体を覆うように貼付された例を示したが、本発明はこれに制限されるものではない。連接テープ18により2枚の保持シート30をつなぎ止めることができればよく、例えば、直線状の連接箇所15の全体に貼付せずに、部分的に貼付しておくことも可能である。更に、連接テープ18として、基材の厚みが25μm、粘着剤の厚みが30μmの合計の厚みT2が55μmのものを例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、厚みT2が100μm以下であればよい。
【0034】
また、本実施形態では、保持シート30が湿式凝固法により作製されたポリウレタンシート22と両面テープ26とを有する例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、凹陥性を有し内部に発泡が連続状に形成されたシート材に適用することができる。例えば、保持パッドが、乾式法で作製された樹脂シートを有していてもよく、両面テープを有することなく樹脂シートのみでもよい。また、保持シートの材質や発泡構造についても、特に制限されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は積層または捲回してもシート材に対する凹陥の発生を抑制することができる保持材および該保持材の製造方法を提供するため、保持材の製造、販売に寄与するので、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0036】
P 保持面
18 連接テープ(粘着材)
20 連接パッド(保持材)
22 ウレタンシート
23 発泡(セル)
30 保持シート(シート材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹陥性を有する同じ厚さで内部にセルが形成され直線状の端部同士が隣接するように配置された複数のシート材と、
隣り合う前記シート材の隣接部分の一面側に貼付され前記シート材を連接するためのシート状の粘着材と、
を備え、
前記粘着材が100μm以下の厚みを有しており、かつ、前記粘着材で連接されたシート材の他面側が被研磨物を保持するための保持面を形成していることを特徴とする保持材。
【請求項2】
前記シート材は、前記隣接部分に形成される隙間が2mm以下となるように連接されたことを特徴とする請求項1に記載の保持材。
【請求項3】
前記粘着材は、隣り合う前記シート材のそれぞれに均等に位置するように貼付されたことを特徴とする請求項2に記載の保持材。
【請求項4】
前記粘着材は、25μm以上の厚みを有することを特徴とする請求項3に記載の保持材。
【請求項5】
前記シート材は、軟質樹脂で形成されており、前記シート材の一面側に前記軟質樹脂より硬質のシートが貼り合わされていることを特徴とする請求項1に記載の保持材。
【請求項6】
前記シート材は、湿式凝固法によりポリウレタン樹脂で形成されたことを特徴とする請求項5に記載の保持材。
【請求項7】
前記被研磨物は、液晶ディスプレイ用ガラス基板であることを特徴とする請求項6に記載の保持材。
【請求項8】
請求項1に記載の保持材の製造方法であって、
凹陥性を有する同じ厚さで内部にセルが形成された複数のシート材を直線状の端部同士が隣接するように並置する並置ステップと、
前記並置ステップで並置されたシート材の直線状の隣接部分における一面側にシート状の粘着材を貼付して隣り合うシート材を連接する連接ステップと、
を含み、
前記連接ステップで貼付する粘着材が100μm以下の厚みを有しており、かつ、前記粘着材で連接されたシート材の他面側が被研磨物を保持するための保持面を形成することを特徴とする製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−212807(P2011−212807A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84464(P2010−84464)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000005359)富士紡ホールディングス株式会社 (180)
【Fターム(参考)】