説明

充電器の異常検出装置

【課題】機能異常をも検出可能な充電器の異常検出装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る異常検出装置12Aは、力率を改善しながら外部から入力された交流電圧を直流電圧に変換し、該直流電圧によりバッテリーを充電する充電器の異常検出装置において、力率を改善するためのPFC部10から出力された直流のPFC出力電圧を検知するPFC出力電圧検知部20と、前記PFC出力電圧に対する閾値を設定する閾値設定部21と、PFC出力電圧と閾値電圧とを比較した結果に基づいて、PFC出力電圧が正常範囲内にあるか否かを判定する異常判定部22と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電器に備えられた異常検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、様々な機能・特性を有する充電器が存在し、用途や使用環境に応じて使い分けられている。その一例として、電気自動車の車載充電器は、商用交流電源から供給される交流電圧を所望の直流電圧に変換し、該直流電圧により車載のバッテリーを充電するもので、力率を改善するためのPFC部と、PFC部から出力される直流電圧の電圧値を調整(昇降圧)するためのDC−DC変換部とを含んでいる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、車載充電器は、過電圧の供給によりバッテリーを劣化または故障させないことが強く求められている。このため、車載充電器は、DC−DC変換部からバッテリーに向けて出力される直流電圧を監視し、異常を検出した場合に即座に充電を停止させる異常検出装置を備えることが必須となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−172093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の異常検出装置は、バッテリーを直ちに劣化または故障させる程の極端な異常を検出することはできるが、その一歩手前の異常、すなわち、充電器を構成する各部が仕様通りの動作をしなくなり、このまま使用し続けるとバッテリーを劣化または故障させるおそれがある比較的軽微な異常(以下、「機能異常」という)を検出することはできなかった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、機能異常をも検出可能な異常検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者は、鋭意検討を重ねた結果、充電器を構成するPFC部の出力電圧を監視すれば機能異常を効果的に検出できることを見出し、本願発明を完成させた。
【0008】
すなわち、上記課題を解決するために、本発明に係る異常検出装置は、力率を改善しながら外部から入力された交流電圧を直流電圧に変換し、該直流電圧によりバッテリーを充電する充電器の異常検出装置において、
力率を改善するためのPFC部から出力された直流のPFC出力電圧を検知するPFC出力電圧検知部と、PFC出力電圧に対する閾値を設定する閾値設定部と、PFC出力電圧と閾値とを比較した結果に基づいて、PFC出力電圧が正常範囲内にあるか否かを判定する異常判定部とを備えたことを特徴としている。
【0009】
この構成によれば、PFC部から出力されるPFC出力電圧がPFC出力電圧検知部によって検知され、検知されたPFC出力電圧と閾値とを比較することによりPFC出力電圧が正常範囲内にあるか否かが判定されるので、バッテリーを直ちに劣化または故障させることはない機能異常をも効果的に検出することができる。
なお、従来の異常検出装置は、PFC部に異常があれば充電器の出力(DC−DC変換部の出力)が必ず異常になるという発想に立っており、充電器の出力が異常となった場合にフェイルセーフ動作するため、PFC部に着目した異常の検出をしておらず、機能異常を検出することはできなかった。
【0010】
また、本発明に係る異常検出装置の第1の態様は、異常判定部による判定が、PFC部の起動により始まったPFC出力電圧の上昇が終了し、PFC出力電圧が安定した後に開始される。
【0011】
この構成によれば、PFC出力電圧が安定する前に異常判定部による判定が行われて機能異常が誤検出されるのを防ぐことができる。
【0012】
上記第1の態様における閾値が、正常範囲の上限を規定する上限閾値電圧および正常範囲の下限を規定する下限閾値電圧を含む場合は、正常なPFC部から出力されるPFC正常出力電圧と上限閾値電圧との差が、PFC正常出力電圧と下限閾値電圧との差よりも絶対値が小さくなるように、上限閾値電圧および下限閾値電圧を設定することが好ましい。
【0013】
この構成によれば、PFC出力電圧が高めにずれていることを厳しく監視することができるので、将来、バッテリーの劣化または故障を引き起こすであろう機能異常を早期に検出することができる。
【0014】
また、上記第1の態様に係る異常検出装置が、交流電圧を検知する入力電圧検知部をさらに備え、閾値が正常範囲の下限を規定する下限閾値電圧を含む場合は、検知された交流電圧の波高値に相当する値に基づいて下限閾値電圧を設定することが好ましい。
【0015】
この構成によれば、入力された交流電圧に基づいて下限閾値電圧が設定されるので、交流電圧の低下に伴うPFC出力電圧の低下により機能異常が誤検出されるのを防ぐことができる。
【0016】
また、本発明に係る異常検出装置の第2の態様は、異常判定部による判定が、PFC部の起動によりPFC出力電圧が上昇し始めてから、PFC出力電圧が安定するまでの間に行われる。
【0017】
この構成によれば、起動時に発生する機能異常を検出することができる。
【0018】
また、上記第2の態様は、PFC出力電圧検知部がPFC出力電圧を一定時間おきに検知する場合は、新たに検知されたPFC出力電圧と過去のPFC出力電圧との差に基づいて、PFC出力電圧の傾きを求める傾き算出部をさらに備え、閾値設定部は、PFC出力電圧の傾きに対する閾値を設定し、異常判定部は、PFC出力電圧の傾きと閾値とを比較した結果に基づいて、PFC出力電圧の傾きが正常範囲内にあるか否かを判定することが好ましい。
【0019】
この構成によれば、PFC部が起動する際のPFC出力電圧の傾きと閾値とを比較した結果に基づいて、PFC出力電圧の傾きが正常範囲内にあるか否かが判定されるので、PFC部の応答特性の観点から機能異常を検出することができる。
【0020】
また、本発明に係る異常検出装置の第3の態様は、PFC部の起動によりPFC出力電圧が上昇し始めてから、前記PFC出力電圧が安定するまでの間は、PFC出力電圧の傾きに基づいて異常判定部による判定が行われ、さらにPFC出力電圧が安定した後は、PFC出力電圧の電圧に基づいて異常判定部による判定が行われることを特徴としている。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、機能異常をも検出可能な異常検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1実施形態に係る異常検出装置および該装置を備えた車載充電器のブロック図である。
【図2】第1実施形態におけるPFC部の一例を示す回路図である。
【図3】第1実施形態に係る上限閾値電圧および下限閾値電圧の設定手法を説明するための図である。
【図4】第1実施形態に係る異常検出装置の検出フローを示すフローチャートである。
【図5】第1実施形態に係る異常検出装置の検出動作を示すグラフであって、(A)は機能異常が検出されない場合、(B)は機能異常が検出される場合のグラフである。
【図6】第2実施形態に係る異常検出装置および該装置を備えた車載充電器のブロック図である。
【図7】第2実施形態に係る異常検出装置の検出動作を示すグラフであって、(A)は機能異常が検出されない場合、(B)は機能異常が検出される場合のグラフである。
【図8】第3実施形態に係る異常検出装置および該装置を備えた車載充電器のブロック図である。
【図9】第3実施形態に係る異常検出装置の検出動作を示すグラフであって、(A)は機能異常が検出されない場合、(B)は機能異常が検出される場合のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る異常検出装置の好ましい実施形態について説明する。なお、以下では、一例として車載バッテリーを充電する車載充電器について説明するが、本発明が車載充電器に備えられた異常検出装置に限定されるものでないことは言うまでもない。
【0024】
[第1実施形態]
図1に示すように、本発明の第1実施形態に係る異常検出装置12Aは、車両外部にある商用交流電源等の外部電源1から出力された交流電圧を所望の直流電圧に変換し、該直流電圧により車載バッテリー3を充電する車載充電器2に備えられている。
外部電源1と車両は、コネクタ5により通電可能に接続されている。また、車両内部には、車載充電器2による充電の他、車両の各種制御を司る車両制御ユニット4が備えられている。
【0025】
車載充電器2は、異常検出装置12Aの他、外部電源1から供給される交流電力の力率を改善しながら、ダイオードブリッジを含む整流平滑手段により交流電圧を直流化して得た直流電圧(以下、「PFC出力電圧」という)を出力するPFC部10と、PFC出力電圧を昇降圧して所望の直流電圧(充電電圧)を出力するDC−DC変換部11と、CAN(Controller Area Network)通信ラインを介して車両制御ユニット4と通信可能な通信部13を備えている。なお、本実施形態に係る異常検出装置12Aおよび通信部13の機能は、マイコン(MPU)上で実行されるプログラムにより実現されている。
【0026】
同図に示すように、異常検出装置12Aおよび車両制御ユニット4は、通信部13を介して相互に各種データの送受信が可能となっている。これにより、異常検出装置12Aは、車両制御ユニット4からの各種指令を受信したり、検出結果を車両制御ユニット4に送信(報告)したりすることができる。
【0027】
図2に示すように、本実施形態におけるPFC部10は昇圧回路を含み、該昇圧回路が動作していない場合は入力電圧の波高値にほぼ等しいPFC出力電圧を出力し、昇圧回路が動作している場合は入力電圧の波高値よりも高いPFC出力電圧を出力するよう構成されている。
【0028】
異常検出装置12A(図1)は、PFC出力電圧検知部20と、閾値設定部21と、異常判定部22とから構成されている。このうち、PFC出力電圧検知部20は、PFC部10から出力される直流のPFC出力電圧を一定時間おきに繰り返し検知する。検知された電圧は、異常判定部22に送られる。
【0029】
異常判定部22は、PFC出力電圧検知部20によって検知されたPFC出力電圧と後述する閾値設定部21で設定された閾値電圧とを比較した結果に基づいて、PFC出力電圧が正常範囲内にあるか否かを判定し、判定結果に応じた異常検出信号を出力する。
本実施形態では、正常範囲の上限を規定する上限閾値電圧VPFCMAXと正常範囲の下限を規定する下限閾値電圧VPFCMINとが設定される。したがって、異常判定部22は、PFC出力電圧が上限閾値電圧VPFCMAXを超える場合、およびPFC出力電圧が下限閾値電圧VPFCMINを下回る場合に、PFC出力電圧が正常範囲内にないと判定し、それ以外の場合はPFC出力電圧が正常範囲内にあると判定する。
【0030】
図3に示すように、上限閾値電圧VPFCMAXおよび下限閾値電圧VPFCMINは、正常なPFC部10から出力される設計通りのPFC出力電圧(以下、「PFC正常出力電圧VPFCTYP」という)と、PFC部10の構成上、当然生じ得るバラツキと、PFC出力電圧が入力される後段(DC−DC変換部11)の許容入力電圧範囲に基づいて設定される。
より詳しくは、上限閾値電圧VPFCMAXは、PFC正常出力電圧VPFCTYPに上記バラツキを足した電圧V1と許容入力電圧範囲の最大値との間に設定される。また、下限閾値電圧VPFCMINは、PFC正常出力電圧VPFCTYPから上記バラツキを引いた電圧V2と許容入力電圧範囲の最小値との間に設定される。
【0031】
同図に示すように、本実施形態では、PFC正常出力電圧VPFCTYPと上限閾値電圧VPFCMAXとの差(VPFCTYP−VPFCMAX)が、PFC正常出力電圧VPFCTYPと下限閾値電圧VPFCMINとの差(VPFCTYP−VPFCMIN)よりも絶対値が小さくなるように、上限閾値電圧VPFCMAXおよび下限閾値電圧VPFCMINが設定されている。つまり、本実施形態では、PFC出力電圧が高めにずれることをより厳しく監視している。
これは、PFC出力電圧が高いまま使用を続けると、PFC出力電圧が低い場合よりも車載バッテリー3が劣化等する可能性が高いからである。
【0032】
次に、図4および図5を参照して、本実施形態に係る異常検出装置12Aの検出動作の具体例について説明する。これらの図に示すように、異常検出装置12Aによる検出は、外部電源1が接続され(図4のステップS1)、PFC起動信号によりPFC部10が動作を開始し(ステップS2)、予め定められた時間(t1−t0)が経過した後に、検出許可信号が“禁止”レベルから“許可”レベルに変化することにより開始される(ステップS3)。
すなわち、検出は、PFC出力電圧が安定した後に開始される。なお、PFC起動信号および検出許可信号は、マイコン内で生成される内部信号である。
【0033】
検出が開始されると、まず、閾値設定部21によって上限閾値電圧VPFCMAXおよび下限閾値電圧VPFCMINが設定される(ステップS4)。その後、PFC出力電圧検知部20によって新たなPFC出力電圧が検知される度に、検知されたPFC出力電圧と上限閾値電圧VPFCMAXおよび下限閾値電圧VPFCMINとの比較が行われ、PFC出力電圧が正常範囲内にない状態が一定時間継続すると(ステップS5の“Yes”)、機能異常を検出した旨が通信部13を介して車両制御ユニット4に送信(報告)される(ステップS6)。ステップS5の判定は、充電が終了するまで繰り返し行われる。
【0034】
図5(A)に示す検出動作の具体例では、PFC出力電圧がPFC正常出力電圧VPFCTYP付近で安定しており、上限閾値電圧VPFCMAXを超えることも、下限閾値電圧VPFCMINを下回ることもない。したがって、この具体例では、異常検出装置12Aが機能異常を検出することはない。すなわち、ステップS5の判定結果が“Yes”となることはない。
【0035】
一方、図5(B)に示す検出動作の具体例では、PFC出力電圧が上限閾値電圧VPFCMAXよりも高くなっている。したがって、この具体例では、検出が開始された時間t1から一定時間(Δt)が経過した時間tにおいて異常判定部22が機能異常であるとの判定を行い(ステップS5の判定結果が“Yes”となる)、異常検出信号を“正常”レベルから“異常”レベルに変化させる。
一定時間経過後に判定するのは、ノイズ等の影響でPFC出力電圧が一時的に変動した場合に機能異常が誤検出されるのを防ぐためである。
【0036】
判定の結果、すなわち機能異常が検出されたことは、通信部13を介して車両制御ユニット4に送信(報告)される(ステップS6)。報告を受けた車両制御ユニット4は、PFC起動信号を“停止”レベルに変化させることによりPFC部10の動作を停止させるとともに、DC−DC変換部11の動作を停止させ、充電を停止させる。
【0037】
以上をまとめると、第1実施形態に係る異常検出装置12Aによれば、PFC部10から出力されるPFC出力電圧がPFC出力電圧検知部20によって検知され、検知されたPFC出力電圧と閾値電圧(上限閾値電圧VPFCMAXおよび下限閾値電圧VPFCMIN)とを比較することによりPFC出力電圧が正常範囲内にあるか否かが判定されるので、車載バッテリー3を直ちに劣化等させることはない機能異常を検出することができる。
【0038】
[第2実施形態]
続いて、図6および図7を参照して、本発明の第2実施形態に係る異常検出装置12Bについて説明する。
図6に示すように、異常検出装置12Bは、入力電圧検知部23をさらに備えている点と、閾値設定部21において設定される閾値電圧とが、第1実施形態に係る異常検出装置12Aと相違している。
【0039】
入力電圧検知部23は、外部電源1から出力された交流電圧(入力電圧)の実効値を一定時間おきに検知し、検知した実効値を閾値設定部21に送る。
【0040】
閾値設定部21は、検知された入力電圧の実効値に基づいて、下限閾値電圧VPFCMINを設定する。より詳しくは、閾値設定部21は、次式により下限閾値電圧VPFCMINを設定する。

下限閾値電圧VPFCMIN=√2×入力電圧の実効値+調整項α [V]
=入力電圧の波高値に相当する電圧 [V]

ここで、下限閾値電圧VPFCMINを入力電圧の波高値に相当する電圧としたのは、正常なPFC部10(図2参照)から入力電圧の波高値よりも低いPFC出力電圧が出力されることは、PFC部10の構成上、あり得ないからである。
【0041】
図7(A)に示す検出動作の具体例では、PFC出力電圧がPFC正常出力電圧VPFCTYP付近で安定しており、下限閾値電圧VPFCMINを下回ることはない。したがって、この具体例では、異常検出装置12Bが機能異常を検出することはない。
【0042】
一方、図7(B)に示す検出動作の具体例では、時間t2においてPFC出力電圧が下限閾値電圧VPFCMINよりも低くなり、一定時間Δtが経過した時間tにおいてもその状態が継続している。したがって、この具体例では、時間tにおいて異常判定部22が機能異常であるとの判定を行い、異常検出信号を“正常”レベルから“異常”レベルに変化させる。
【0043】
結局、本実施形態に係る異常検出装置12Bによれば、入力電圧が低下すればそれに応じて下限閾値電圧VPFCMINも低下するので、入力電圧の低下に伴うPFC出力電圧の低下により機能異常が誤検出されるのを防ぐことができる。すなわち、PFC部10が正常であるにもかかわらず、機能異常が検出されるのを防ぐことができる。
【0044】
[第3実施形態]
続いて、図8および図9を参照して、本発明の第3実施形態に係る異常検出装置12Cについて説明する。図8に示すように、異常検出装置12Cは、傾き算出部24をさらに備えている点と、閾値設定部21において設定される閾値と、PFC出力電圧の電圧値ではなく傾き(応答特性)に基づいて機能異常を検出する点とが、第1実施形態に係る異常検出装置12Aと相違している。
【0045】
傾き算出部24は、PFC出力電圧検知部20によって一定時間おきに検知された少なくとも2つのPFC出力電圧の差に基づいて、PFC出力電圧の傾きを一定時間おきに繰り返し算出する。例えば、新たに検知された電圧が100[V]、その直前に検知された電圧が99[V]で、かつ1[msec]おきに検知が行われる場合、傾きは1000[V/sec]となる。算出された傾きは、異常判定部22に送られる。
【0046】
傾きは、直近に検知した複数のPFC出力電圧の平均値と、そのさらに前に検知した複数のPFC出力電圧の平均値との差に基づいて算出してもよい。
【0047】
閾値設定部21は、少なくとも1つの閾値傾きを設定する。図3を参照して説明した第1実施形態における閾値電圧の設定と同様に、本実施形態においても、正常なPFC部10から出力されるPFC出力電圧の設計通りの傾きと、PFC部10の構成上、当然生じ得る傾きのバラツキと、後段のDC−DC変換部11において許容される傾きの範囲とに基づいて、上限閾値傾きGMAXおよび下限閾値傾きGMINが設定される。
【0048】
異常判定部22は、傾き算出部24で算出されたPFC出力電圧の実際の傾きと、閾値設定部21で設定された上限閾値傾きGMAXおよび下限閾値傾きGMINとを比較して、PFC出力電圧の傾きが正常範囲内にあるか否かを判定し、判定結果に応じた異常検出信号を出力する。
【0049】
図9に、本実施形態に係る異常検出装置12Cの検出動作の具体例を示す。同図に示すように、検出は、PFC起動信号によりPFC部10が動作を開始し、予め定められた時間(t1−t0)が経過した後に、検出許可信号が“禁止”レベルから“許可”レベルに変化することにより開始される。
その後、予め定められた時間(t−t1)が経過して検出許可信号が“許可”レベルから“禁止”レベルに変化すると、検出は終了する。すなわち、本実施形態では、PFC出力電圧が上昇し始めてから安定するまでの間(t−t1)に、新たに算出された傾きに基づいて機能異常の検出が繰り返し行われる。
【0050】
図9(A)に示す検出動作の具体例では、PFC出力電圧の傾きが上限閾値傾きGMAXを超えることも、下限閾値傾きGMINを下回ることもない。したがって、この具体例では、異常検出装置12Cが機能異常を検出することはない。
【0051】
一方、図9(B)に示す検出動作の具体例では、PFC出力電圧の傾きが下限閾値傾きGMINよりも小さくなっている。したがって、この具体例では、時間t1から一定時間(Δt)が経過した時間tにおいて異常判定部22が機能異常であるとの判定を行い、異常検出信号を“正常”レベルから“異常”レベルに変化させる。
【0052】
判定の結果、すなわち機能異常が検出されたことは、通信部13を介して車両制御ユニット4に送信(報告)される。報告を受けた車両制御ユニット4は、PFC部10およびDC−DC変換部11の動作を停止させ、充電を停止させる。
【0053】
結局、本実施形態に係る異常検出装置12Cによれば、PFC部10の応答特性の観点から機能異常を検出することができる。
【0054】
また、本実施形態に係る異常検出装置12Cと、第1または第2実施形態に係る異常検出装置12A、12Bを組み合わせた異常検出装置、すなわちPFC出力電圧が安定するまでの間は応答特性の観点から機能異常の検出を行い、PFC出力電圧が安定した後においてはPFC出力電圧の電圧値に基づいて機能異常の検出を行う異常検出装置によれば、より確実に機能異常を検出することができる。
【0055】
以上、本発明に係る異常検出装置の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの構成に限定されるものではない。
【0056】
例えば、第1および第3実施形態では上限の閾値と下限の閾値を設定したが、閾値は少なくとも1つ設定されていればよく、いずれか一方の閾値を省略してもよい。また、第2実施形態では下限の閾値のみを設定したが、入力電圧に基づいてさらに上限の閾値を設定してもよい。
【0057】
また、入力電圧検知部23は、入力電圧の実効値に代えて、入力電圧の波高値を検知してもよい。
【0058】
また、機能異常を検出した場合に充電を停止させるか否かは、車両制御ユニット4の判断に委ねてもよい。
【0059】
また、本発明に係る異常検出装置は、PFC出力電圧またはDC−DC変換部11の出力電圧に基づいて車載充電器2の明らかな異常(故障)を検出する機能をさらに備え、明らかな異常と機能異常の両方を検出してもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 外部電源
2 車載充電器
3 車載バッテリー
4 車両制御ユニット
5 コネクタ
10 PFC部
11 DC−DC変換部
12A、12B、12C 異常検出装置
13 通信部
20 PFC出力電圧検知部
21 閾値設定部
22 異常判定部
23 入力電圧検知部
24 傾き算出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
力率を改善しながら外部から入力された交流電圧を直流電圧に変換し、該直流電圧によりバッテリーを充電する充電器の異常検出装置において、
前記力率を改善するためのPFC部から出力された直流のPFC出力電圧を検知するPFC出力電圧検知部と、
前記PFC出力電圧に対する閾値を設定する閾値設定部と、
前記PFC出力電圧と前記閾値とを比較した結果に基づいて、前記PFC出力電圧が正常範囲内にあるか否かを判定する異常判定部と、
を備えたことを特徴とする異常検出装置。
【請求項2】
前記異常判定部による判定が、前記PFC部の起動により始まった前記PFC出力電圧の上昇が終了し、前記PFC出力電圧が安定した後に開始されることを特徴とする請求項1に記載の異常検出装置。
【請求項3】
前記閾値は、前記正常範囲の上限を規定する上限閾値電圧および前記正常範囲の下限を規定する下限閾値電圧を含み、
正常な前記PFC部から出力されるPFC正常出力電圧と前記上限閾値電圧との差が、前記PFC正常出力電圧と前記下限閾値電圧との差よりも絶対値が小さくなるように、前記上限閾値電圧および前記下限閾値電圧が設定されることを特徴とする請求項2に記載の異常検出装置。
【請求項4】
前記交流電圧を検知する入力電圧検知部をさらに備え、
前記閾値は、前記正常範囲の下限を規定する下限閾値電圧を含み、
前記下限閾値電圧は、検知された前記交流電圧の波高値に相当する値に基づいて設定されることを特徴とする請求項2に記載の異常検出装置。
【請求項5】
前記異常判定部による判定が、前記PFC部の起動により前記PFC出力電圧が上昇し始めてから、前記PFC出力電圧が安定するまでの間に行われることを特徴とする請求項1に記載の異常検出装置。
【請求項6】
前記PFC出力電圧検知部は、前記PFC出力電圧を一定時間おきに検知し、
新たに検知された前記PFC出力電圧と過去の前記PFC出力電圧との差に基づいて、前記PFC出力電圧の傾きを求める傾き算出部をさらに備え、
前記閾値設定部は、前記PFC出力電圧の傾きに対する閾値を設定し、
前記異常判定部は、前記PFC出力電圧の傾きと前記閾値とを比較した結果に基づいて、前記PFC出力電圧の傾きが正常範囲内にあるか否かを判定することを特徴とする請求項5に記載の異常検出装置。
【請求項7】
前記PFC部の起動により前記PFC出力電圧が上昇し始めてから、前記PFC出力電圧が安定するまでの間は、前記PFC出力電圧の傾きに基づいて前記異常判定部による判定が行われ、さらに前記PFC出力電圧が安定した後は、前記PFC出力電圧の電圧に基づいて前記異常判定部による判定が行われることを特徴とする請求項1に記載の異常検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−114999(P2012−114999A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260238(P2010−260238)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【出願人】(000004606)ニチコン株式会社 (656)
【Fターム(参考)】