光学装置及び光学装置の製造方法
【課題】光学手段の反射又は透過のための端面における散乱損失を低減するとともに、この端面を容易且つ低コストに作成することである。
【解決手段】光学装置としての光導波路ケーブル2は、光導波路としてのコア層231,232と、コア層231,232を覆うクラッド層21,22と、を光学手段として備え、コア層231,232及びクラッド層21,22は、光を反射するための加工面としてのダイシング面241を有し、ダイシング面241上に平滑化膜242を備える。
【解決手段】光学装置としての光導波路ケーブル2は、光導波路としてのコア層231,232と、コア層231,232を覆うクラッド層21,22と、を光学手段として備え、コア層231,232及びクラッド層21,22は、光を反射するための加工面としてのダイシング面241を有し、ダイシング面241上に平滑化膜242を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学装置及び光学装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光通信において、レーザ光の光路を折り曲げる(変換する)ための光路変換部を備える光学装置が考えられている。例えば、光路を90°折り曲げるために、光ファイバ、平面光波回路(PLC:Planar Lightwave Circit)、光導波ケーブル等の光導波路にミラー面を形成する構成が考えられている。
【0003】
図12に、従来の光ケーブルの光導波路ケーブル2Bの断面構成を示す。電気信号及び光信号の変換により光通信を行う光ケーブルにおいて、図12に示すように、光信号の送信路としての光導波路ケーブル2Bは、クラッド層21,22と、コア層231と、を備えて構成され、その端面に光路に対し45°の角度を有するミラー面部24Bが形成されている。
【0004】
ミラー面部24Bは、クラッド層21,22及びコア層231が45°のブレードによるダイシングで切削されたダイシング面241を有する。VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting LASER:面発光レーザ)311から出射されたレーザ光は、ダイシング面241で、反射されてコア層231内を伝送される。つまり、ダイシング面241における空気とコア層231との屈折率差を利用した反射により光路変換が行われる。光信号の受信路としての光導波路ケーブルでも同様にしてコア層内を伝搬されたレーザ光がダイシング面で反射されて図示しないPD(Photo Diode)に入射される。
【0005】
また、上記ミラー面としての傾斜面に誘電体多層膜が形成され、所定の波長のみ反射する構成が考えられている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、上記傾斜面に金、銀又はアルミニウムを蒸着させる構成が考えられている(例えば、特許文献2,3参照)。
【0007】
また、上記傾斜面を切り欠いたV溝に紫外線硬化樹脂を充填させる構成が考えられている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平1−312514号公報
【特許文献2】特開昭63−191111号公報
【特許文献3】特開平10−300961号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来の図12に示すようなミラー面の構成では、ダイシング面241の凹凸により散乱が発生していた。例えば、ダイシング面241表面のラフネスRaが10[nm]でも散乱は発生する。具体的には、レーザ光L8のダイシング面241での反射により反射光L71がコア層23に出射されるとともに散乱光L72が空気中に出射される。このため、反射率の低下、つまり伝送損失(散乱損失)が大きくなるという問題があった。
【0009】
特許文献1に記載の誘電体多層膜を傾斜面に形成する方法では、膜形成の目的を異にするものであり、散乱損失が依然として解消されない。また、特許文献2、3に記載の金、銀、アルミニウムを傾斜面に蒸着する方法では、散乱損失が依然として解消されない。
【0010】
また、特許文献3に記載の紫外線硬化樹脂を傾斜面のV溝に充填する方法では、散乱損失が依然として解消されない。さらに、V溝が必要であるため、適用対象が限定され、散乱損失が依然として解消されなく、また材料コストが高くなってしまう。
【0011】
上記散乱損失を防ぐためには、ミラー面を平滑化することが望まれる。例えば、レーザ光によりミラー面を作製する方法が考えられる。しかし、レーザ光による方法では、ミラー面の傾斜角度の精度を高められなかった。
【0012】
他にも、ダイシング面を形成した後、研磨を行う方法も考えられる。しかし、研磨を行う方法では、工程が複雑化する。例えば、研磨のために導波路を一旦基板に貼り付けなければならない。この作業の複雑化に伴い、コストが高くなってしまっていた。
【0013】
さらに、ダイシング用のブレードを目が細かいものにして表面の凹凸を小さくするダイシングを行う方法も考えられる。しかし、目の細かいダイシングでは、光導波路材料がポリマー系等の場合に、ブレードの目詰まりのおそれがあった。また、光導波路のミラー面だけではなく、光導波路での光の透過面(入射面又は出射面)での加工面や、光導波路以外の光学手段でも同様に、散乱損失の低減の要請がある。
【0014】
本発明の課題は、光学手段の反射又は透過のための端面における散乱損失を低減するとともに、この端面を容易且つ低コストに作成することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明の光学装置は、
光学手段を備え、
前記光学手段は、光の反射又は透過のための加工面を有し、
前記加工面上に平滑化膜を備えることを特徴とする。
【0016】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記光学手段は、
光導波路としてのコアと、
前記コアを覆うクラッドと、を備えることを特徴とする。
【0017】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の光学装置において、
前記平滑化膜は、前記コアの屈折率と同一又は略同一の屈折率を有することを特徴とする。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の光学装置において、
前記コアは、複数層であることを特徴とする。
【0019】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の光導波路装置において、
前記平滑化膜に光を出射する発光手段と、前記平滑化膜で反射された光を受光する受光手段と、前記平滑化膜に対して光を出射又は受光する光伝送手段と、の少なくとも一つを備えることを特徴とする。
【0020】
請求項6に記載の発明の光学装置の製造方法は、
光学手段を形成する光学手段形成工程と、
前記光学手段に、光の反射又は透過のための加工面を形成する加工面形成工程と、
前記加工面上に平滑化膜を形成して光学装置とする平滑化膜形成工程と、
を含むことを特徴とする。
【0021】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の光学装置の製造方法において、
前記光学手段形成工程は、光導波路としてのコア及び当該コアを覆うクラッドを前記光学手段として形成する工程であることを特徴とする。
【0022】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の光学装置の製造方法において、
前記平滑化膜形成工程において、前記コアの屈折率と同一又は略同一の屈折率の材料により前記平滑化膜を形成することを特徴とする。
【0023】
請求項9に記載の発明は、請求項7又は8に記載の光学装置の製造方法において、
前記光学手段形成工程において、前記コアを複数層形成することを特徴とする。
【0024】
請求項10に記載の発明は、請求項6から9のいずれか一項に記載の光学装置の製造方法において、
前記平滑化膜形成工程において、前記平滑化膜の液体状材料を前記加工面にたらすこと、塗布及び噴霧のいずれか一つにより形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
請求項1、6に記載の発明によれば、光学手段の加工面上に平滑化膜を有するので、光学手段の端面での反射又は透過における散乱損失を低減できるとともに、この端面としての加工面及び平滑化膜を容易且つ低コストに作成することができる。
【0026】
請求項2、7に記載の発明によれば、コア層及びクラッド層での光導波路の端面での反射又は透過における散乱損失を低減できるとともに、この端面としての加工面及び平滑化膜を容易且つ低コストに作成することができる。
【0027】
請求項3、8に記載の発明によれば、平滑化膜がコアと同一又は略同一の屈折率を有するので、端面の散乱損失をさらに低減できる。
【0028】
請求項4、9に記載の発明によれば、コアを複数層にするので、複数の光導波路で光伝送を行うことができる。
【0029】
請求項5に記載の発明によれば、発光手段、受光手段及び光伝送手段の少なくとも一つを備えるので、光学手段の端面の散乱損失を低減した光伝送を容易に実現できる。
【0030】
請求項10に記載の発明によれば、平滑化膜の液体状材料を加工面にたらすこと、塗布及び噴霧のいずれか一つにより、平滑化膜を容易且つ高精度に形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、添付図面を参照して本発明に係る実施の形態を詳細に説明する。ただし、発明の範囲は、図示例に限定されない。
【0032】
先ず、図1〜図4を参照して、本実施の形態における光ケーブル1の装置構成を説明する。図1に、本実施の形態における光ケーブル1の構成を示す。図1に示すように、光ケーブル1は2つのプリント配線基板5を接続するものであり、光導波路装置としての光導波路ケーブル2の両端にコネクタ3を備えて構成されている。コネクタ3はプリント配線基板5上に搭載されたソケット6に装着され、プリント配線基板5上には他にIC(Integrated Circuit)4が搭載されている。
【0033】
光導波路ケーブル2はフィルム状に形成されており、その内部に有する光導波路は両端に設けられたコネクタ3間でやりとりされる光の伝送路として作用する。コネクタ3は、光電変換を行う送受信サブアセンブリ3aを備えており、この送受信サブアセンブリ3aによりプリント配線基板5から入力される電気信号を光に変換し、光導波路ケーブル2を介して他端側に位置するコネクタ3に光を送出する。或いは、光導波路ケーブル2を介して他端のコネクタ3から送出された光を受光し、電気信号に変換してプリント配線基板5に出力する。
【0034】
図2に、光導波路ケーブル2とコネクタ3内の送受信サブアセンブリ3aとの接続部分の斜視構成を示す。図3に、図2の送受信サブアセンブリ3aのIII-III線における断面構成を示す。
【0035】
図2及び図3に示すように、光導波路ケーブル2は、その先端部分が、サブ基板32の実装面と、発光手段としての発光素子31a又は受光手段としての受光素子31bとの間に配置されている。また、光導波路ケーブル2は、クラッド層21側のフィルム面がサブ基板32と当接するように実装面に沿って接着されている。
【0036】
光導波路ケーブル2は、図3に示すように、クラッド層(クラッド)21、22及びコア層(コア)23から形成されており、その端部にはミラー面部24が設けられている。また、その外周面は図示しない樹脂フィルムにより覆われている。樹脂フィルムは、機材、カバーとして作用するものであり、例えばポリイミド、PET(Poly Ethylene Terepthalate)等の可撓性を有する材料から構成されている。
【0037】
クラッド層21、22及びコア層23は、ポリイミド系、ポリシラン系、エポキシ系、アクリル系の樹脂等から構成されている。
【0038】
コア層23は、クラッド層21、22間に直線状に形成され、光導波路を構成する。コア層23は、クラッド層21、22とは異なる屈折率となるように材料が調整されている。このように、コア層23の周囲が屈折率の異なるクラッド層21、22により囲まれることによって、コア層23内に送出された光を損なうことなくある一方向へ伝搬させることができる。コア層23において、後述するように、発光素子31aが発光した光の伝送路としてのコア層をコア層231とし、受光素子31bで受光する光の伝送路としてのコア層をコア層232とする。
【0039】
ミラー面部24は、コア層23を介して伝送された光を反射して光導波路ケーブル2の上部に位置する受光素子31bに導く、或いは発光素子31aから出射された光を反射してコア層23に導く光路変換手段である。光導波路ケーブル2の光導波路とは、コア層23及びこのミラー面部24により導かれるクラッド層22の光路を含めた光の伝送路をいう。ミラー面部24は、後述するように、光導波路ケーブル2の端面をブレードにより45度等の傾斜角度で切断し平滑化膜242を形成することにより形成される。
【0040】
送受信サブアセンブリ3aは、図2に示すように、サブ基板32上に発光素子31a及び受光素子31b、IC33が搭載されてなるものであり、プリント配線基板5から入出力される電気信号と光導波路ケーブル2を介して入出力される光の相互変換を行う。
【0041】
発光素子31aは、電気信号を光信号に変換する光電変換素子としてのVCSEL311を備え、図3に示すように、プリント配線基板5から入力される電気信号に応じた光をZ→Y方向に向けて発光する。発光素子31aから発光された光は、ミラー面部24で光路を変換され、W→X方向へ伝送される。発光素子31a内の光電変換素子は、VCSELに限定されるものではなく、電気信号を光信号に変換する他の光電変換素子でもよい。
【0042】
受光素子31bは、光信号を電気信号に変換する光電変換素子としてのPD312を備え、光導波路ケーブル2のコア層23においてX→W方向に伝送され、ミラー面部24を介してY→Z方向に光路変換された光を受光し、その受光量に応じた電気信号を生成する。受光素子31b内の光電変換素子は、PDに限定されるものではなく、電気信号を光信号に変換する他の光電変換素子でもよい。
【0043】
なお、本実施形態では、1つの送受信サブアセンブリ3aにおいて発光素子31a及び受光素子31bをそれぞれ1素子づつ備えて双方向の光伝送を行う例を説明するが、発光素子31a及び受光素子31bを複数素子づつ備えて双方向の伝送を複数路で行う構成であってもよいし、光ケーブル1の一端の送受信サブアセンブリ3aに発光素子31aのみ、他端の送受信サブアセンブリ3aに受光素子31bのみを備えて一方向の光伝送を行う構成としてもよい。
【0044】
光電変換素子31の高さ位置は、光導波路ケーブル2の実装面からの高さに応じて決定されている。すなわち、光電変換素子31はバンプ34を介してサブ基板32の実装面との間に空間を設けて配置されているものであるが、その光電変換素子31の高さが光導波路ケーブル2の厚み分の高さより高くなるように調整されている。また、発光素子31a、受光素子31bの基板実装面における位置は、光導波路ケーブル2のサブ基板32の実装面における設置位置を基準に、光導波路ケーブル2の光導波路と発光素子31aのVCSEL311、受光素子31bのPD312との間で伝送される光の光軸がそれぞれ一致するように決定されている。
【0045】
光電変換素子31の高さ位置は、バンプ34の大きさを可変することにより調整が可能である。すなわち、バンプ34を調整することにより、光導波路ケーブル2と発光素子31a、受光素子31bとの間の光路距離を制御することが可能となり、光導波路ケーブル2と発光素子31a、受光素子31bとの間の光結合効率が最大となるようにその距離を決定することができる。
【0046】
バンプ34は、導電体から形成され、光電変換素子31の電極とサブ基板32に設けられている電極(各電極は図示せず)とを電気的に接続している。バンプ34としては、例えばAu等の金属を適用可能である。
【0047】
光導波路ケーブル2と発光素子31a、受光素子31bとの界面に生じる間隙には、光路形成材35が充填されている。光路形成材35は、例えば光硬化樹脂等の光屈折媒質からなり、光導波路ケーブル2のクラッド層22と同程度の屈折率等、空気に対して比較的大きい屈折率となるように材料が選択されている。この光路形成材35により、光導波路ケーブル2と発光素子31a、受光素子31bとの間の光路を通る光の出射径の広がりを抑えるよう制御が可能である。
【0048】
次いで、図4を参照して、光導波路ケーブル2の端面構成を説明する。図4(a)に、光導波路ケーブル2の光送信部分における断面構成を示す。図4(b)に、光導波路ケーブル2の光受信部分における断面構成を示す。
【0049】
図4(a)に示すように、光導波路ケーブル2の光送信部分において、光学手段としてのクラッド層21,22及びコア層231の端面にミラー面部24が形成されている。ミラー面部24は、光路に対して45°の角度が付けられている。ミラー面部24は、ダイシング面241と、ダイシング面241上に形成された平滑化膜242と、を有する。
【0050】
加工面としてのダイシング面241は、ダイシングにより形成された面であり、表面に凹凸の粗面を有する。平滑化膜242は、ダイシング面241の粗面を平滑化する膜である。平滑化膜242は、例えば、屈折率調整剤や、ポリイミド系(例えばフッ素化ポリイミド)、ポリシラン系、エポキシ系等の樹脂(例えば、紫外線硬化樹脂)を材料とする。平滑化膜242の材料は、後述するように、粘度を持った液体状材料とする。
【0051】
また、平滑化膜242は、光学的には、コア層23(231,232)と同程度の屈折率のものが望ましい。ダイシング面241と平滑化膜との間の屈折率差を無くし、ダイシング面241での散乱を低減させるためである。例えば、コア層23の屈折率が1.519、クラッド層21,22の屈折率が1.495の場合に、平滑化膜242の屈折率をコア層の屈折率と同じ、あるいは屈折率を1.51程度にする。
【0052】
図4(a)の矢印に示すように、VCSEL311から出射されたレーザ光L11は、ミラー面の平滑化膜242で直角に反射された後、反射光L12としてコア層231内に導かれて伝送される。
【0053】
また、光導波路ケーブル2の光送信部分と同様に、図4(b)に示すように、光導波路ケーブル2の光受信部分において、クラッド層21,22及びコア層232の端面にミラー面部24が形成されている。図4(b)の矢印に示すように、コア層232内を伝搬されたレーザ光L21は、ミラー面の平滑化膜242で直角に反射された後、反射光L22としてPD312へ導かれて受光される。
【0054】
次に、図5を参照して、光導波路ケーブル2の製造方法を説明する。図5(a)に、ミラー面部24が未形成の光導波路ケーブルを示す。図5(b)に、ダイシング面241形成後の光導波路ケーブルを示す。図5(c)に、ミラー面部24形成後の光導波路ケーブルを示す。
【0055】
先ず、図5(a)に示すように、クラッド層21,22及びコア層23(231,232)を有する光導波路ケーブルが作成される。例えば、シリコン等の基板上に、クラッド層22がスピンコート及び熱処理等により形成される。そのクラッド層22上に全面のコア膜がスピンコート及びベーキング等により形成され、フォトリゾグラフィにより、導波路パターンのコア層23が形成される。そして、クラッド層22及びコア層23上にクラッド層21がスピンコート及びベーキング等により形成される。最後に、クラッド層21,22及びコア層23が、光導波路ケーブルとして基板から剥がされる。この光導波路ケーブルは、可撓性を有するフィルム状に形成される。
【0056】
そして、図5(b)に示すように、形成された光導波路ケーブルの端面が、45°のブレードによるダイシングで切削されてダイシング面241が形成される。ダイシング面241は、光路(コア層23)に対して45°の傾きを有する粗面からなる。
【0057】
そして、図5(c)に示すように、ダイシング面241が形成された光導波路ケーブルにおいて、ダイシング面241上に平滑化膜242の液体状材料がたらされる。例えば、平滑化膜242の材料をたらす方向に対して垂直又は斜め方向となるようにダイシング面241の位置が調整されて、平滑化膜242の液体状材料がたらされ、その液体状材料によりダイシング面241が覆われる。例えば、平滑化膜242の液体状材料が紫外線硬化樹脂の場合、ダイシング面241を覆う液体状材料に紫外線が照射されて硬化され、さらに熱処理が施されて安定化されることにより、平滑化膜242が形成されて光導波路ケーブル2とされる。
【0058】
そして、形成された光導波路ケーブル2は、コネクタ3の送受信サブアセンブリ3aに取り付けられて、光ケーブル1が形成される。
【0059】
平滑化膜242の材料は、粘度及び接着性を有する液体状材料とし、粘度が小さいものが好ましい。例えば、770[cP]のような粘度の高い材料だと、ダイシング面241上で材料(平滑化膜242)が盛り上がってしまい、ミラー面の機能が低減してしまうからである。
【0060】
平滑化膜242の形成工程は、光導波路ケーブルを光ケーブル1に実装する前や後に行うが、光導波路ケーブルを最適位置に実装するためにその実装中に行うことが望ましい。また、平滑化膜242は、材料をたらすことによる形成に限定されるものではなく、塗布方式(例えば、スピンコート方式)、スプレー(噴霧)方式等、他の方式により形成することとしてもよい。
【0061】
次に、図6〜図8を参照して、平滑化膜242を有するミラー面部24を形成した光導波路ケーブル2と、ダイシング面241のみを有する(平滑化膜242がない)ミラー面部を形成した光導波路ケーブル2と、の比較を説明する。
【0062】
先ず、図6を参照して、ミラー面部の表面のSEM(Scanning Electron Microscope:走査電子顕微鏡)像の比較結果を説明する。図6(a)に、ダイシング面のみを形成したミラー面部のSEM像を示す。図6(b)に、平滑化膜242を形成したミラー面部24のSEM像を示す。
【0063】
光導波路ケーブル2において、図6(a)に示すように、ダイシング面のみを形成したミラー面部の表面のSEM像では、ダイシングによるスジ状の凹凸が見られる。同様に光導波路ケーブル2において、図6(b)に示すように、平滑化膜242を形成したミラー面部24の表面のSEM像では、平滑化されスジ状の凹凸が見られない。なお、図6(b)のSEM像では、ピントが合っていることの証明のため、平滑化膜242にゴミ部を形成してSEM像の最下部に敢えて示した。平滑化膜242のゴミ部では、スジ状の凹凸が見られ、SEM像中央部及び上部にピントが合っていることが分かる。
【0064】
次いで、図7を参照して、ミラー面のAFM(Atomic Force Microscope:原子間力顕微鏡)測定による表面粗さの数値の比較結果を説明する。図7に、ダイシング面のみを形成したミラー面部と平滑化膜242を形成したミラー面部24との粗さを示す。
【0065】
光導波路ケーブル2において、図7に示すように、ダイシング面のみを形成したミラー面部の表面のAFM像と、平滑化膜242を形成したミラー面部24の表面のAFM測定により、Ra値(ラフネス:平均面粗さ)、P−V値(最大高低差)が得られた。図7のAFM測定範囲は、10×10[μm2]である。ダイシング面のみを形成したミラー面部の表面に比べて、平滑化膜242を形成したミラー面部24の表面のRa値及びP−V値が大幅に低減され、平滑化の度合いの数値が改善されていることが分かる。
【0066】
次いで、図8を参照して、VCSEL、PD、45°のミラー面部を有する光導波路を用いた測定による光信号の損失の比較結果を説明する。図8に、ダイシング面のみを形成したミラー面部を有する光導波路ケーブルと平滑化膜242を形成したミラー面部24を有する光導波路ケーブル2とにおけるPD312への入射量を示す。
【0067】
図8に示すように、ダイシング面のみを形成したミラー面を有する光導波路ケーブルと、平滑化膜242を形成したミラー面部24を有する光導波路ケーブル2と、において、VCSEL311から強度+2.7[dBm]のレーザー光を出射してミラー面部を反射させてコア層23内を伝送した反射光をPDで測定した。このPDに入射される光量が小さいほど、光量の損失量が大きいことを示す。ダイシング面のみを形成したミラー面部の光導波路ケーブルに比べて、平滑化膜242を形成したミラー面部24の光導波路ケーブル2のPDへの入射光量が大きく、ミラー面部での反射による光量の損失量が5.3[dB]も改善されている。
【0068】
以上、本実施の形態によれば、光導波路ケーブル2が、コア層23及びクラッド層21,22のダイシング面241に平滑化膜242を有するので、ミラー面部24の散乱損失を低減できるとともに、ミラー面部24を容易且つ低コストに作成することができる。
【0069】
また、平滑化膜242がコア層23と同程度の屈折率を有するので、ミラー面部24の散乱損失をさらに低減できる。
【0070】
また、光ケーブル1が、VCSEL311及びPD312を備えるので、ミラー面部24の散乱損失を低減した光伝送を容易に実現できる。
【0071】
また、平滑化膜242の材料をダイシング面にたらすこと、塗布及びスプレー(噴霧)のいずれか一つの方式により、平滑化膜242を容易且つ高精度に形成できる。
【0072】
なお、上記実施の形態における記述は、本発明に係る光学装置及び光学装置の製造方法の一例であり、これに限定されるものではない。
【0073】
例えば、上記実施の形態では、光導波路ケーブル2にレーザ光を入射する構成としてVCSEL311を用い、光導波路ケーブル2からレーザ光を受光する構成としてPD312を用いたが、これに限定されるものではない。例えば、図9に示すように光伝送手段としての光ファイバ7を用いる構成としてもよい。図9に、光ファイバ7を用いた光導波路ケーブル2の断面構成を示す。
【0074】
図9に示すように、光ファイバ7は、芯線状のコア71と、コア71を中心として覆う環状に形成されたクラッド72と、クラッド72を覆う図示しない被覆層と、を備え、先端部分では、被覆層が剥がされて使用される。光ファイバ7の先の図示しない光源から出射されたレーザ光L3は、光ファイバ7のコア71を介して光導波路ケーブル2に入射され、ミラー面部24の平滑化膜242で反射されてコア層23内を伝送される。また、図示しないが、光受信の構成では、光導波路ケーブル2の先の図示しない光源から出射されたレーザ光は、コア層23を介して伝送され、ミラー面部24の平滑化膜242で反射されて光ファイバ7のコア71に入射されて伝送される。
【0075】
また、上記実施の形態では、光導波路ケーブル2にコア層を1層設ける構成としたが、これに限定されるものではない。例えば、図10に示すように、光導波路ケーブルにコア層を2層設ける構成としてもよい。図10に、光導波路ケーブル8の断面構成を示す。
【0076】
光導波路ケーブル8は、クラッド層81,82,83と、クラッド層81及び82の間に設けられるコア層84と、クラッド層82及び83の間に設けられるコア層85と、を備え、光路に対し45°の角度を有するミラー面部86が形成されている。ミラー面部86は、ダイシング面861と、ダイシング面861上に形成される平滑化膜862と、を有する。
【0077】
光送信を行う構成では、VCSEL311から出射されたレーザ光L4が、ミラー面部86の平滑化膜862で反射され、その反射光がコア層84内を伝送される。VCSEL313から出射されたレーザ光L5は、ミラー面部86の平滑化膜862で反射され、その反射光がコア層85内に導かれて伝送される。
【0078】
光受信を行う構成では、同様に、光導波路ケーブル8の2つのコア層84,85を別々に伝送されてきた光信号がミラー面部86の平滑化膜862で反射され、図示しない2つのPDに導かれて別々に受光される。
【0079】
よって、コア層を2層にするので、2つの光導波路で光伝送を行うことができる。さらに、光導波路ケーブルに3層以上のコア層を設ける構成としてもよい。
【0080】
また、上記実施の形態では、ダイシング面241及び平滑化膜242を有するミラー面部24を光導波路ケーブル2に設ける構成としたが、これに限定されるものではない。例えば、光ファイバや、基板上に設けられる光導波路回路等の光導波路デバイスに、ダイシング面及び平滑化膜を有するミラー面部を形成する構成を適用できる。また、上記実施の形態では、ダイシング面241及び平滑化膜242を有するミラー面部24を有する光導波路ケーブル2を光トランシーバとしての光ケーブル1に適用する構成としたが、これに限定されるものでなく、コア層と空気との反射を利用する全ての光デバイスに適用できる。
【0081】
また、上記実施の形態では、ミラー面部24を光路に対して45°の角度を有する構成としたが、これに限定されるものではない。例えば、ミラー面部が光路に対して45°以外の角度(例えば、0°、10°、30°、90°)を有する構成としてもよい。
【0082】
図11に、反射部9及び光導波路ケーブル2Aの断面構成を示す。図11に示すように、反射部9及び光導波路ケーブル2Aを有する構成としてもよい。光学手段としての反射部9は、反射部本体91と、ミラー面部92と、を備える。反射部本体91は、石英、ポリマー等を材料として構成される。反射部本体91の材料は、空気中から入射された光を反射する屈折率のものが適宜設定される。ミラー面部92は、光路に対し45°の角度を有するダイシング面921と、ダイシング面921上に形成される平滑化膜922と、を有する。
【0083】
光導波路ケーブル2Bは、クラッド層21,22と、コア層23と、を備え、クラッド層21,22及びコア層231端面に端面部24Aを有する。端面部24Aは、光路と90°の角度を有するダイシング面241Aと、ダイシング面241A上に形成される平滑化膜242Aとを有する。
【0084】
光送信の構成では、VCSEL314から出射されたレーザ光L61は、反射部9の平滑化膜922表面で反射され、反射光L62となる。反射光L62は、光導波路ケーブル2Aの端面部24Aを介して入射され、コア層23内を伝送される。このため、ダイシング面921,241Aでの散乱損失が低減される。
【0085】
また、図示しないが光受信の構成では、光導波路ケーブル2Aのコア層内を伝送された光が端面部24Aを介して出射される。その出射光は、反射部9の平滑化膜922表面で反射され、PDで受光される。このため、ダイシング面921,241Aでの散乱損失が低減される。
【0086】
また、上記実施の形態では、光導波路ケーブル2がミラー面部24を有する例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、光導波路ケーブル2が、ダイシング面241上に形成された平滑化膜242上にさらに、金属膜(例えば、金、銀、アルミニウム)を蒸着させたミラー面部を有する構成としてもよい。この構成では、ダイシング面241及び平滑化膜242を有するミラー面部24を有する構成に比べて、散乱損失を更に低減させることができる。
【0087】
また、上記実施の形態では、ダイシング面及びその平滑化膜を有する光学手段として光導波路ケーブル2のクラッド層21,22及びコア層23を用いる場合を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、ダイシング面及びその平滑化膜を有する光学手段として、光ファイバ、平面光波回路等を用いる構成としてもよい。
【0088】
また、上記実施の形態では、加工面としてダイシング面241を有する光導波路ケーブル2を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、レーザ、ミクロトームなどで切断した面等を加工面とする構成としてもよい。
【0089】
その他、上記実施の形態における光ケーブル1の細部構成及び詳細動作に関しても、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明に係る実施の形態の光ケーブル1の外観図である。
【図2】光導波路ケーブル2とコネクタ3内の送受信サブアセンブリ3aとの接続部分の斜視図である。
【図3】図2の送受信サブアセンブリ3aのIII-III線における断面図である。
【図4】(a)は、光導波路ケーブル2の光送信部分における断面図である。(b)は、光導波路ケーブル2の光受信部分における断面図である。
【図5】(a)は、ミラー面部24が未形成の光導波路ケーブルを示す図である。(b)は、ダイシング面241形成後の光導波路ケーブルを示す図である。(c)は、ミラー面部24形成後の光導波路ケーブルを示す図である。
【図6】(a)は、平滑化膜を形成したミラー面のSEM像を示す図である。(b)は、平滑化膜242を形成したミラー面部24のSEM像を示す図である。
【図7】ダイシング面のみを形成したミラー面部と平滑化膜242を形成したミラー面部24との粗さを示す図である。
【図8】ダイシング面のみを形成したミラー面部を有する光導波路ケーブルと平滑化膜242を形成したミラー面部24を有する光導波路ケーブル2とにおけるPD312への入射量を示す図である。
【図9】光ファイバ7を用いた光導波路ケーブル2の断面図である。
【図10】光導波路ケーブル8の断面図である。
【図11】反射部9及び光導波路ケーブル2Aの断面図である。
【図12】従来の光ケーブルの光導波路ケーブル2Bの断面図である。
【符号の説明】
【0091】
1 光ケーブル
2,2A,2B 光導波路ケーブル
21,22 クラッド層
23,231,232 コア層
24,24B ミラー面部
24A 端面部
241,241A ダイシング面
242,242A 平滑化膜
3 コネクタ
3a 送受信サブアセンブリ
31 光電変換素子
31a 発光素子
31b 受光素子
311,313,314 VCSEL
312 PD
32 サブ基板
33 IC
34 バンプ
35 光路形成材
4 IC
5 プリント配線基板
6 ソケット
7 光ファイバ
71 コア
72 クラッド
8 光導波路ケーブル
81,82,83 クラッド層
84,85 コア層
86 ミラー面部
861 ダイシング面
862 平滑化膜
9 反射部
91 反射部本体
92 ミラー面部
921 ダイシング面
922 平滑化膜
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学装置及び光学装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光通信において、レーザ光の光路を折り曲げる(変換する)ための光路変換部を備える光学装置が考えられている。例えば、光路を90°折り曲げるために、光ファイバ、平面光波回路(PLC:Planar Lightwave Circit)、光導波ケーブル等の光導波路にミラー面を形成する構成が考えられている。
【0003】
図12に、従来の光ケーブルの光導波路ケーブル2Bの断面構成を示す。電気信号及び光信号の変換により光通信を行う光ケーブルにおいて、図12に示すように、光信号の送信路としての光導波路ケーブル2Bは、クラッド層21,22と、コア層231と、を備えて構成され、その端面に光路に対し45°の角度を有するミラー面部24Bが形成されている。
【0004】
ミラー面部24Bは、クラッド層21,22及びコア層231が45°のブレードによるダイシングで切削されたダイシング面241を有する。VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting LASER:面発光レーザ)311から出射されたレーザ光は、ダイシング面241で、反射されてコア層231内を伝送される。つまり、ダイシング面241における空気とコア層231との屈折率差を利用した反射により光路変換が行われる。光信号の受信路としての光導波路ケーブルでも同様にしてコア層内を伝搬されたレーザ光がダイシング面で反射されて図示しないPD(Photo Diode)に入射される。
【0005】
また、上記ミラー面としての傾斜面に誘電体多層膜が形成され、所定の波長のみ反射する構成が考えられている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、上記傾斜面に金、銀又はアルミニウムを蒸着させる構成が考えられている(例えば、特許文献2,3参照)。
【0007】
また、上記傾斜面を切り欠いたV溝に紫外線硬化樹脂を充填させる構成が考えられている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平1−312514号公報
【特許文献2】特開昭63−191111号公報
【特許文献3】特開平10−300961号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来の図12に示すようなミラー面の構成では、ダイシング面241の凹凸により散乱が発生していた。例えば、ダイシング面241表面のラフネスRaが10[nm]でも散乱は発生する。具体的には、レーザ光L8のダイシング面241での反射により反射光L71がコア層23に出射されるとともに散乱光L72が空気中に出射される。このため、反射率の低下、つまり伝送損失(散乱損失)が大きくなるという問題があった。
【0009】
特許文献1に記載の誘電体多層膜を傾斜面に形成する方法では、膜形成の目的を異にするものであり、散乱損失が依然として解消されない。また、特許文献2、3に記載の金、銀、アルミニウムを傾斜面に蒸着する方法では、散乱損失が依然として解消されない。
【0010】
また、特許文献3に記載の紫外線硬化樹脂を傾斜面のV溝に充填する方法では、散乱損失が依然として解消されない。さらに、V溝が必要であるため、適用対象が限定され、散乱損失が依然として解消されなく、また材料コストが高くなってしまう。
【0011】
上記散乱損失を防ぐためには、ミラー面を平滑化することが望まれる。例えば、レーザ光によりミラー面を作製する方法が考えられる。しかし、レーザ光による方法では、ミラー面の傾斜角度の精度を高められなかった。
【0012】
他にも、ダイシング面を形成した後、研磨を行う方法も考えられる。しかし、研磨を行う方法では、工程が複雑化する。例えば、研磨のために導波路を一旦基板に貼り付けなければならない。この作業の複雑化に伴い、コストが高くなってしまっていた。
【0013】
さらに、ダイシング用のブレードを目が細かいものにして表面の凹凸を小さくするダイシングを行う方法も考えられる。しかし、目の細かいダイシングでは、光導波路材料がポリマー系等の場合に、ブレードの目詰まりのおそれがあった。また、光導波路のミラー面だけではなく、光導波路での光の透過面(入射面又は出射面)での加工面や、光導波路以外の光学手段でも同様に、散乱損失の低減の要請がある。
【0014】
本発明の課題は、光学手段の反射又は透過のための端面における散乱損失を低減するとともに、この端面を容易且つ低コストに作成することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明の光学装置は、
光学手段を備え、
前記光学手段は、光の反射又は透過のための加工面を有し、
前記加工面上に平滑化膜を備えることを特徴とする。
【0016】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記光学手段は、
光導波路としてのコアと、
前記コアを覆うクラッドと、を備えることを特徴とする。
【0017】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の光学装置において、
前記平滑化膜は、前記コアの屈折率と同一又は略同一の屈折率を有することを特徴とする。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の光学装置において、
前記コアは、複数層であることを特徴とする。
【0019】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の光導波路装置において、
前記平滑化膜に光を出射する発光手段と、前記平滑化膜で反射された光を受光する受光手段と、前記平滑化膜に対して光を出射又は受光する光伝送手段と、の少なくとも一つを備えることを特徴とする。
【0020】
請求項6に記載の発明の光学装置の製造方法は、
光学手段を形成する光学手段形成工程と、
前記光学手段に、光の反射又は透過のための加工面を形成する加工面形成工程と、
前記加工面上に平滑化膜を形成して光学装置とする平滑化膜形成工程と、
を含むことを特徴とする。
【0021】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の光学装置の製造方法において、
前記光学手段形成工程は、光導波路としてのコア及び当該コアを覆うクラッドを前記光学手段として形成する工程であることを特徴とする。
【0022】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の光学装置の製造方法において、
前記平滑化膜形成工程において、前記コアの屈折率と同一又は略同一の屈折率の材料により前記平滑化膜を形成することを特徴とする。
【0023】
請求項9に記載の発明は、請求項7又は8に記載の光学装置の製造方法において、
前記光学手段形成工程において、前記コアを複数層形成することを特徴とする。
【0024】
請求項10に記載の発明は、請求項6から9のいずれか一項に記載の光学装置の製造方法において、
前記平滑化膜形成工程において、前記平滑化膜の液体状材料を前記加工面にたらすこと、塗布及び噴霧のいずれか一つにより形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
請求項1、6に記載の発明によれば、光学手段の加工面上に平滑化膜を有するので、光学手段の端面での反射又は透過における散乱損失を低減できるとともに、この端面としての加工面及び平滑化膜を容易且つ低コストに作成することができる。
【0026】
請求項2、7に記載の発明によれば、コア層及びクラッド層での光導波路の端面での反射又は透過における散乱損失を低減できるとともに、この端面としての加工面及び平滑化膜を容易且つ低コストに作成することができる。
【0027】
請求項3、8に記載の発明によれば、平滑化膜がコアと同一又は略同一の屈折率を有するので、端面の散乱損失をさらに低減できる。
【0028】
請求項4、9に記載の発明によれば、コアを複数層にするので、複数の光導波路で光伝送を行うことができる。
【0029】
請求項5に記載の発明によれば、発光手段、受光手段及び光伝送手段の少なくとも一つを備えるので、光学手段の端面の散乱損失を低減した光伝送を容易に実現できる。
【0030】
請求項10に記載の発明によれば、平滑化膜の液体状材料を加工面にたらすこと、塗布及び噴霧のいずれか一つにより、平滑化膜を容易且つ高精度に形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、添付図面を参照して本発明に係る実施の形態を詳細に説明する。ただし、発明の範囲は、図示例に限定されない。
【0032】
先ず、図1〜図4を参照して、本実施の形態における光ケーブル1の装置構成を説明する。図1に、本実施の形態における光ケーブル1の構成を示す。図1に示すように、光ケーブル1は2つのプリント配線基板5を接続するものであり、光導波路装置としての光導波路ケーブル2の両端にコネクタ3を備えて構成されている。コネクタ3はプリント配線基板5上に搭載されたソケット6に装着され、プリント配線基板5上には他にIC(Integrated Circuit)4が搭載されている。
【0033】
光導波路ケーブル2はフィルム状に形成されており、その内部に有する光導波路は両端に設けられたコネクタ3間でやりとりされる光の伝送路として作用する。コネクタ3は、光電変換を行う送受信サブアセンブリ3aを備えており、この送受信サブアセンブリ3aによりプリント配線基板5から入力される電気信号を光に変換し、光導波路ケーブル2を介して他端側に位置するコネクタ3に光を送出する。或いは、光導波路ケーブル2を介して他端のコネクタ3から送出された光を受光し、電気信号に変換してプリント配線基板5に出力する。
【0034】
図2に、光導波路ケーブル2とコネクタ3内の送受信サブアセンブリ3aとの接続部分の斜視構成を示す。図3に、図2の送受信サブアセンブリ3aのIII-III線における断面構成を示す。
【0035】
図2及び図3に示すように、光導波路ケーブル2は、その先端部分が、サブ基板32の実装面と、発光手段としての発光素子31a又は受光手段としての受光素子31bとの間に配置されている。また、光導波路ケーブル2は、クラッド層21側のフィルム面がサブ基板32と当接するように実装面に沿って接着されている。
【0036】
光導波路ケーブル2は、図3に示すように、クラッド層(クラッド)21、22及びコア層(コア)23から形成されており、その端部にはミラー面部24が設けられている。また、その外周面は図示しない樹脂フィルムにより覆われている。樹脂フィルムは、機材、カバーとして作用するものであり、例えばポリイミド、PET(Poly Ethylene Terepthalate)等の可撓性を有する材料から構成されている。
【0037】
クラッド層21、22及びコア層23は、ポリイミド系、ポリシラン系、エポキシ系、アクリル系の樹脂等から構成されている。
【0038】
コア層23は、クラッド層21、22間に直線状に形成され、光導波路を構成する。コア層23は、クラッド層21、22とは異なる屈折率となるように材料が調整されている。このように、コア層23の周囲が屈折率の異なるクラッド層21、22により囲まれることによって、コア層23内に送出された光を損なうことなくある一方向へ伝搬させることができる。コア層23において、後述するように、発光素子31aが発光した光の伝送路としてのコア層をコア層231とし、受光素子31bで受光する光の伝送路としてのコア層をコア層232とする。
【0039】
ミラー面部24は、コア層23を介して伝送された光を反射して光導波路ケーブル2の上部に位置する受光素子31bに導く、或いは発光素子31aから出射された光を反射してコア層23に導く光路変換手段である。光導波路ケーブル2の光導波路とは、コア層23及びこのミラー面部24により導かれるクラッド層22の光路を含めた光の伝送路をいう。ミラー面部24は、後述するように、光導波路ケーブル2の端面をブレードにより45度等の傾斜角度で切断し平滑化膜242を形成することにより形成される。
【0040】
送受信サブアセンブリ3aは、図2に示すように、サブ基板32上に発光素子31a及び受光素子31b、IC33が搭載されてなるものであり、プリント配線基板5から入出力される電気信号と光導波路ケーブル2を介して入出力される光の相互変換を行う。
【0041】
発光素子31aは、電気信号を光信号に変換する光電変換素子としてのVCSEL311を備え、図3に示すように、プリント配線基板5から入力される電気信号に応じた光をZ→Y方向に向けて発光する。発光素子31aから発光された光は、ミラー面部24で光路を変換され、W→X方向へ伝送される。発光素子31a内の光電変換素子は、VCSELに限定されるものではなく、電気信号を光信号に変換する他の光電変換素子でもよい。
【0042】
受光素子31bは、光信号を電気信号に変換する光電変換素子としてのPD312を備え、光導波路ケーブル2のコア層23においてX→W方向に伝送され、ミラー面部24を介してY→Z方向に光路変換された光を受光し、その受光量に応じた電気信号を生成する。受光素子31b内の光電変換素子は、PDに限定されるものではなく、電気信号を光信号に変換する他の光電変換素子でもよい。
【0043】
なお、本実施形態では、1つの送受信サブアセンブリ3aにおいて発光素子31a及び受光素子31bをそれぞれ1素子づつ備えて双方向の光伝送を行う例を説明するが、発光素子31a及び受光素子31bを複数素子づつ備えて双方向の伝送を複数路で行う構成であってもよいし、光ケーブル1の一端の送受信サブアセンブリ3aに発光素子31aのみ、他端の送受信サブアセンブリ3aに受光素子31bのみを備えて一方向の光伝送を行う構成としてもよい。
【0044】
光電変換素子31の高さ位置は、光導波路ケーブル2の実装面からの高さに応じて決定されている。すなわち、光電変換素子31はバンプ34を介してサブ基板32の実装面との間に空間を設けて配置されているものであるが、その光電変換素子31の高さが光導波路ケーブル2の厚み分の高さより高くなるように調整されている。また、発光素子31a、受光素子31bの基板実装面における位置は、光導波路ケーブル2のサブ基板32の実装面における設置位置を基準に、光導波路ケーブル2の光導波路と発光素子31aのVCSEL311、受光素子31bのPD312との間で伝送される光の光軸がそれぞれ一致するように決定されている。
【0045】
光電変換素子31の高さ位置は、バンプ34の大きさを可変することにより調整が可能である。すなわち、バンプ34を調整することにより、光導波路ケーブル2と発光素子31a、受光素子31bとの間の光路距離を制御することが可能となり、光導波路ケーブル2と発光素子31a、受光素子31bとの間の光結合効率が最大となるようにその距離を決定することができる。
【0046】
バンプ34は、導電体から形成され、光電変換素子31の電極とサブ基板32に設けられている電極(各電極は図示せず)とを電気的に接続している。バンプ34としては、例えばAu等の金属を適用可能である。
【0047】
光導波路ケーブル2と発光素子31a、受光素子31bとの界面に生じる間隙には、光路形成材35が充填されている。光路形成材35は、例えば光硬化樹脂等の光屈折媒質からなり、光導波路ケーブル2のクラッド層22と同程度の屈折率等、空気に対して比較的大きい屈折率となるように材料が選択されている。この光路形成材35により、光導波路ケーブル2と発光素子31a、受光素子31bとの間の光路を通る光の出射径の広がりを抑えるよう制御が可能である。
【0048】
次いで、図4を参照して、光導波路ケーブル2の端面構成を説明する。図4(a)に、光導波路ケーブル2の光送信部分における断面構成を示す。図4(b)に、光導波路ケーブル2の光受信部分における断面構成を示す。
【0049】
図4(a)に示すように、光導波路ケーブル2の光送信部分において、光学手段としてのクラッド層21,22及びコア層231の端面にミラー面部24が形成されている。ミラー面部24は、光路に対して45°の角度が付けられている。ミラー面部24は、ダイシング面241と、ダイシング面241上に形成された平滑化膜242と、を有する。
【0050】
加工面としてのダイシング面241は、ダイシングにより形成された面であり、表面に凹凸の粗面を有する。平滑化膜242は、ダイシング面241の粗面を平滑化する膜である。平滑化膜242は、例えば、屈折率調整剤や、ポリイミド系(例えばフッ素化ポリイミド)、ポリシラン系、エポキシ系等の樹脂(例えば、紫外線硬化樹脂)を材料とする。平滑化膜242の材料は、後述するように、粘度を持った液体状材料とする。
【0051】
また、平滑化膜242は、光学的には、コア層23(231,232)と同程度の屈折率のものが望ましい。ダイシング面241と平滑化膜との間の屈折率差を無くし、ダイシング面241での散乱を低減させるためである。例えば、コア層23の屈折率が1.519、クラッド層21,22の屈折率が1.495の場合に、平滑化膜242の屈折率をコア層の屈折率と同じ、あるいは屈折率を1.51程度にする。
【0052】
図4(a)の矢印に示すように、VCSEL311から出射されたレーザ光L11は、ミラー面の平滑化膜242で直角に反射された後、反射光L12としてコア層231内に導かれて伝送される。
【0053】
また、光導波路ケーブル2の光送信部分と同様に、図4(b)に示すように、光導波路ケーブル2の光受信部分において、クラッド層21,22及びコア層232の端面にミラー面部24が形成されている。図4(b)の矢印に示すように、コア層232内を伝搬されたレーザ光L21は、ミラー面の平滑化膜242で直角に反射された後、反射光L22としてPD312へ導かれて受光される。
【0054】
次に、図5を参照して、光導波路ケーブル2の製造方法を説明する。図5(a)に、ミラー面部24が未形成の光導波路ケーブルを示す。図5(b)に、ダイシング面241形成後の光導波路ケーブルを示す。図5(c)に、ミラー面部24形成後の光導波路ケーブルを示す。
【0055】
先ず、図5(a)に示すように、クラッド層21,22及びコア層23(231,232)を有する光導波路ケーブルが作成される。例えば、シリコン等の基板上に、クラッド層22がスピンコート及び熱処理等により形成される。そのクラッド層22上に全面のコア膜がスピンコート及びベーキング等により形成され、フォトリゾグラフィにより、導波路パターンのコア層23が形成される。そして、クラッド層22及びコア層23上にクラッド層21がスピンコート及びベーキング等により形成される。最後に、クラッド層21,22及びコア層23が、光導波路ケーブルとして基板から剥がされる。この光導波路ケーブルは、可撓性を有するフィルム状に形成される。
【0056】
そして、図5(b)に示すように、形成された光導波路ケーブルの端面が、45°のブレードによるダイシングで切削されてダイシング面241が形成される。ダイシング面241は、光路(コア層23)に対して45°の傾きを有する粗面からなる。
【0057】
そして、図5(c)に示すように、ダイシング面241が形成された光導波路ケーブルにおいて、ダイシング面241上に平滑化膜242の液体状材料がたらされる。例えば、平滑化膜242の材料をたらす方向に対して垂直又は斜め方向となるようにダイシング面241の位置が調整されて、平滑化膜242の液体状材料がたらされ、その液体状材料によりダイシング面241が覆われる。例えば、平滑化膜242の液体状材料が紫外線硬化樹脂の場合、ダイシング面241を覆う液体状材料に紫外線が照射されて硬化され、さらに熱処理が施されて安定化されることにより、平滑化膜242が形成されて光導波路ケーブル2とされる。
【0058】
そして、形成された光導波路ケーブル2は、コネクタ3の送受信サブアセンブリ3aに取り付けられて、光ケーブル1が形成される。
【0059】
平滑化膜242の材料は、粘度及び接着性を有する液体状材料とし、粘度が小さいものが好ましい。例えば、770[cP]のような粘度の高い材料だと、ダイシング面241上で材料(平滑化膜242)が盛り上がってしまい、ミラー面の機能が低減してしまうからである。
【0060】
平滑化膜242の形成工程は、光導波路ケーブルを光ケーブル1に実装する前や後に行うが、光導波路ケーブルを最適位置に実装するためにその実装中に行うことが望ましい。また、平滑化膜242は、材料をたらすことによる形成に限定されるものではなく、塗布方式(例えば、スピンコート方式)、スプレー(噴霧)方式等、他の方式により形成することとしてもよい。
【0061】
次に、図6〜図8を参照して、平滑化膜242を有するミラー面部24を形成した光導波路ケーブル2と、ダイシング面241のみを有する(平滑化膜242がない)ミラー面部を形成した光導波路ケーブル2と、の比較を説明する。
【0062】
先ず、図6を参照して、ミラー面部の表面のSEM(Scanning Electron Microscope:走査電子顕微鏡)像の比較結果を説明する。図6(a)に、ダイシング面のみを形成したミラー面部のSEM像を示す。図6(b)に、平滑化膜242を形成したミラー面部24のSEM像を示す。
【0063】
光導波路ケーブル2において、図6(a)に示すように、ダイシング面のみを形成したミラー面部の表面のSEM像では、ダイシングによるスジ状の凹凸が見られる。同様に光導波路ケーブル2において、図6(b)に示すように、平滑化膜242を形成したミラー面部24の表面のSEM像では、平滑化されスジ状の凹凸が見られない。なお、図6(b)のSEM像では、ピントが合っていることの証明のため、平滑化膜242にゴミ部を形成してSEM像の最下部に敢えて示した。平滑化膜242のゴミ部では、スジ状の凹凸が見られ、SEM像中央部及び上部にピントが合っていることが分かる。
【0064】
次いで、図7を参照して、ミラー面のAFM(Atomic Force Microscope:原子間力顕微鏡)測定による表面粗さの数値の比較結果を説明する。図7に、ダイシング面のみを形成したミラー面部と平滑化膜242を形成したミラー面部24との粗さを示す。
【0065】
光導波路ケーブル2において、図7に示すように、ダイシング面のみを形成したミラー面部の表面のAFM像と、平滑化膜242を形成したミラー面部24の表面のAFM測定により、Ra値(ラフネス:平均面粗さ)、P−V値(最大高低差)が得られた。図7のAFM測定範囲は、10×10[μm2]である。ダイシング面のみを形成したミラー面部の表面に比べて、平滑化膜242を形成したミラー面部24の表面のRa値及びP−V値が大幅に低減され、平滑化の度合いの数値が改善されていることが分かる。
【0066】
次いで、図8を参照して、VCSEL、PD、45°のミラー面部を有する光導波路を用いた測定による光信号の損失の比較結果を説明する。図8に、ダイシング面のみを形成したミラー面部を有する光導波路ケーブルと平滑化膜242を形成したミラー面部24を有する光導波路ケーブル2とにおけるPD312への入射量を示す。
【0067】
図8に示すように、ダイシング面のみを形成したミラー面を有する光導波路ケーブルと、平滑化膜242を形成したミラー面部24を有する光導波路ケーブル2と、において、VCSEL311から強度+2.7[dBm]のレーザー光を出射してミラー面部を反射させてコア層23内を伝送した反射光をPDで測定した。このPDに入射される光量が小さいほど、光量の損失量が大きいことを示す。ダイシング面のみを形成したミラー面部の光導波路ケーブルに比べて、平滑化膜242を形成したミラー面部24の光導波路ケーブル2のPDへの入射光量が大きく、ミラー面部での反射による光量の損失量が5.3[dB]も改善されている。
【0068】
以上、本実施の形態によれば、光導波路ケーブル2が、コア層23及びクラッド層21,22のダイシング面241に平滑化膜242を有するので、ミラー面部24の散乱損失を低減できるとともに、ミラー面部24を容易且つ低コストに作成することができる。
【0069】
また、平滑化膜242がコア層23と同程度の屈折率を有するので、ミラー面部24の散乱損失をさらに低減できる。
【0070】
また、光ケーブル1が、VCSEL311及びPD312を備えるので、ミラー面部24の散乱損失を低減した光伝送を容易に実現できる。
【0071】
また、平滑化膜242の材料をダイシング面にたらすこと、塗布及びスプレー(噴霧)のいずれか一つの方式により、平滑化膜242を容易且つ高精度に形成できる。
【0072】
なお、上記実施の形態における記述は、本発明に係る光学装置及び光学装置の製造方法の一例であり、これに限定されるものではない。
【0073】
例えば、上記実施の形態では、光導波路ケーブル2にレーザ光を入射する構成としてVCSEL311を用い、光導波路ケーブル2からレーザ光を受光する構成としてPD312を用いたが、これに限定されるものではない。例えば、図9に示すように光伝送手段としての光ファイバ7を用いる構成としてもよい。図9に、光ファイバ7を用いた光導波路ケーブル2の断面構成を示す。
【0074】
図9に示すように、光ファイバ7は、芯線状のコア71と、コア71を中心として覆う環状に形成されたクラッド72と、クラッド72を覆う図示しない被覆層と、を備え、先端部分では、被覆層が剥がされて使用される。光ファイバ7の先の図示しない光源から出射されたレーザ光L3は、光ファイバ7のコア71を介して光導波路ケーブル2に入射され、ミラー面部24の平滑化膜242で反射されてコア層23内を伝送される。また、図示しないが、光受信の構成では、光導波路ケーブル2の先の図示しない光源から出射されたレーザ光は、コア層23を介して伝送され、ミラー面部24の平滑化膜242で反射されて光ファイバ7のコア71に入射されて伝送される。
【0075】
また、上記実施の形態では、光導波路ケーブル2にコア層を1層設ける構成としたが、これに限定されるものではない。例えば、図10に示すように、光導波路ケーブルにコア層を2層設ける構成としてもよい。図10に、光導波路ケーブル8の断面構成を示す。
【0076】
光導波路ケーブル8は、クラッド層81,82,83と、クラッド層81及び82の間に設けられるコア層84と、クラッド層82及び83の間に設けられるコア層85と、を備え、光路に対し45°の角度を有するミラー面部86が形成されている。ミラー面部86は、ダイシング面861と、ダイシング面861上に形成される平滑化膜862と、を有する。
【0077】
光送信を行う構成では、VCSEL311から出射されたレーザ光L4が、ミラー面部86の平滑化膜862で反射され、その反射光がコア層84内を伝送される。VCSEL313から出射されたレーザ光L5は、ミラー面部86の平滑化膜862で反射され、その反射光がコア層85内に導かれて伝送される。
【0078】
光受信を行う構成では、同様に、光導波路ケーブル8の2つのコア層84,85を別々に伝送されてきた光信号がミラー面部86の平滑化膜862で反射され、図示しない2つのPDに導かれて別々に受光される。
【0079】
よって、コア層を2層にするので、2つの光導波路で光伝送を行うことができる。さらに、光導波路ケーブルに3層以上のコア層を設ける構成としてもよい。
【0080】
また、上記実施の形態では、ダイシング面241及び平滑化膜242を有するミラー面部24を光導波路ケーブル2に設ける構成としたが、これに限定されるものではない。例えば、光ファイバや、基板上に設けられる光導波路回路等の光導波路デバイスに、ダイシング面及び平滑化膜を有するミラー面部を形成する構成を適用できる。また、上記実施の形態では、ダイシング面241及び平滑化膜242を有するミラー面部24を有する光導波路ケーブル2を光トランシーバとしての光ケーブル1に適用する構成としたが、これに限定されるものでなく、コア層と空気との反射を利用する全ての光デバイスに適用できる。
【0081】
また、上記実施の形態では、ミラー面部24を光路に対して45°の角度を有する構成としたが、これに限定されるものではない。例えば、ミラー面部が光路に対して45°以外の角度(例えば、0°、10°、30°、90°)を有する構成としてもよい。
【0082】
図11に、反射部9及び光導波路ケーブル2Aの断面構成を示す。図11に示すように、反射部9及び光導波路ケーブル2Aを有する構成としてもよい。光学手段としての反射部9は、反射部本体91と、ミラー面部92と、を備える。反射部本体91は、石英、ポリマー等を材料として構成される。反射部本体91の材料は、空気中から入射された光を反射する屈折率のものが適宜設定される。ミラー面部92は、光路に対し45°の角度を有するダイシング面921と、ダイシング面921上に形成される平滑化膜922と、を有する。
【0083】
光導波路ケーブル2Bは、クラッド層21,22と、コア層23と、を備え、クラッド層21,22及びコア層231端面に端面部24Aを有する。端面部24Aは、光路と90°の角度を有するダイシング面241Aと、ダイシング面241A上に形成される平滑化膜242Aとを有する。
【0084】
光送信の構成では、VCSEL314から出射されたレーザ光L61は、反射部9の平滑化膜922表面で反射され、反射光L62となる。反射光L62は、光導波路ケーブル2Aの端面部24Aを介して入射され、コア層23内を伝送される。このため、ダイシング面921,241Aでの散乱損失が低減される。
【0085】
また、図示しないが光受信の構成では、光導波路ケーブル2Aのコア層内を伝送された光が端面部24Aを介して出射される。その出射光は、反射部9の平滑化膜922表面で反射され、PDで受光される。このため、ダイシング面921,241Aでの散乱損失が低減される。
【0086】
また、上記実施の形態では、光導波路ケーブル2がミラー面部24を有する例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、光導波路ケーブル2が、ダイシング面241上に形成された平滑化膜242上にさらに、金属膜(例えば、金、銀、アルミニウム)を蒸着させたミラー面部を有する構成としてもよい。この構成では、ダイシング面241及び平滑化膜242を有するミラー面部24を有する構成に比べて、散乱損失を更に低減させることができる。
【0087】
また、上記実施の形態では、ダイシング面及びその平滑化膜を有する光学手段として光導波路ケーブル2のクラッド層21,22及びコア層23を用いる場合を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、ダイシング面及びその平滑化膜を有する光学手段として、光ファイバ、平面光波回路等を用いる構成としてもよい。
【0088】
また、上記実施の形態では、加工面としてダイシング面241を有する光導波路ケーブル2を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、レーザ、ミクロトームなどで切断した面等を加工面とする構成としてもよい。
【0089】
その他、上記実施の形態における光ケーブル1の細部構成及び詳細動作に関しても、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明に係る実施の形態の光ケーブル1の外観図である。
【図2】光導波路ケーブル2とコネクタ3内の送受信サブアセンブリ3aとの接続部分の斜視図である。
【図3】図2の送受信サブアセンブリ3aのIII-III線における断面図である。
【図4】(a)は、光導波路ケーブル2の光送信部分における断面図である。(b)は、光導波路ケーブル2の光受信部分における断面図である。
【図5】(a)は、ミラー面部24が未形成の光導波路ケーブルを示す図である。(b)は、ダイシング面241形成後の光導波路ケーブルを示す図である。(c)は、ミラー面部24形成後の光導波路ケーブルを示す図である。
【図6】(a)は、平滑化膜を形成したミラー面のSEM像を示す図である。(b)は、平滑化膜242を形成したミラー面部24のSEM像を示す図である。
【図7】ダイシング面のみを形成したミラー面部と平滑化膜242を形成したミラー面部24との粗さを示す図である。
【図8】ダイシング面のみを形成したミラー面部を有する光導波路ケーブルと平滑化膜242を形成したミラー面部24を有する光導波路ケーブル2とにおけるPD312への入射量を示す図である。
【図9】光ファイバ7を用いた光導波路ケーブル2の断面図である。
【図10】光導波路ケーブル8の断面図である。
【図11】反射部9及び光導波路ケーブル2Aの断面図である。
【図12】従来の光ケーブルの光導波路ケーブル2Bの断面図である。
【符号の説明】
【0091】
1 光ケーブル
2,2A,2B 光導波路ケーブル
21,22 クラッド層
23,231,232 コア層
24,24B ミラー面部
24A 端面部
241,241A ダイシング面
242,242A 平滑化膜
3 コネクタ
3a 送受信サブアセンブリ
31 光電変換素子
31a 発光素子
31b 受光素子
311,313,314 VCSEL
312 PD
32 サブ基板
33 IC
34 バンプ
35 光路形成材
4 IC
5 プリント配線基板
6 ソケット
7 光ファイバ
71 コア
72 クラッド
8 光導波路ケーブル
81,82,83 クラッド層
84,85 コア層
86 ミラー面部
861 ダイシング面
862 平滑化膜
9 反射部
91 反射部本体
92 ミラー面部
921 ダイシング面
922 平滑化膜
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学手段を備え、
前記光学手段は、光の反射又は透過のための加工面を有し、
前記加工面上に平滑化膜を備えることを特徴とする光学装置。
【請求項2】
前記光学手段は、
光導波路としてのコアと、
前記コアを覆うクラッドと、を備えることを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項3】
前記平滑化膜は、前記コアの屈折率と同一又は略同一の屈折率を有することを特徴とする請求項2に記載の光学装置。
【請求項4】
前記コアは、複数層であることを特徴とする請求項2又は3に記載の光学装置。
【請求項5】
前記平滑化膜に光を出射する発光手段と、前記平滑化膜で反射された光を受光する受光手段と、前記平滑化膜に対して光を出射又は受光する光伝送手段と、の少なくとも一つを備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の光学装置。
【請求項6】
光学手段を形成する光学手段形成工程と、
前記光学手段に、光の反射又は透過のための加工面を形成する加工面形成工程と、
前記加工面上に平滑化膜を形成して光学装置とする平滑化膜形成工程と、
を含むことを特徴とする光学装置の製造方法。
【請求項7】
前記光学手段形成工程は、光導波路としてのコア及び当該コアを覆うクラッドを前記光学手段として形成する工程であることを特徴とする請求項6に記載の光学装置の製造方法。
【請求項8】
前記平滑化膜形成工程において、前記コアの屈折率と同一又は略同一の屈折率の材料により前記平滑化膜を形成することを特徴とする請求項7に記載の光学装置の製造方法。
【請求項9】
前記光学手段形成工程において、前記コアを複数層形成することを特徴とする請求項7又は8に記載の光学装置の製造方法。
【請求項10】
前記平滑化膜形成工程において、前記平滑化膜の液体状材料を前記加工面にたらすこと、塗布及び噴霧のいずれか一つにより形成することを特徴とする請求項6から9のいずれか一項に記載の光学装置の製造方法。
【請求項1】
光学手段を備え、
前記光学手段は、光の反射又は透過のための加工面を有し、
前記加工面上に平滑化膜を備えることを特徴とする光学装置。
【請求項2】
前記光学手段は、
光導波路としてのコアと、
前記コアを覆うクラッドと、を備えることを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項3】
前記平滑化膜は、前記コアの屈折率と同一又は略同一の屈折率を有することを特徴とする請求項2に記載の光学装置。
【請求項4】
前記コアは、複数層であることを特徴とする請求項2又は3に記載の光学装置。
【請求項5】
前記平滑化膜に光を出射する発光手段と、前記平滑化膜で反射された光を受光する受光手段と、前記平滑化膜に対して光を出射又は受光する光伝送手段と、の少なくとも一つを備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の光学装置。
【請求項6】
光学手段を形成する光学手段形成工程と、
前記光学手段に、光の反射又は透過のための加工面を形成する加工面形成工程と、
前記加工面上に平滑化膜を形成して光学装置とする平滑化膜形成工程と、
を含むことを特徴とする光学装置の製造方法。
【請求項7】
前記光学手段形成工程は、光導波路としてのコア及び当該コアを覆うクラッドを前記光学手段として形成する工程であることを特徴とする請求項6に記載の光学装置の製造方法。
【請求項8】
前記平滑化膜形成工程において、前記コアの屈折率と同一又は略同一の屈折率の材料により前記平滑化膜を形成することを特徴とする請求項7に記載の光学装置の製造方法。
【請求項9】
前記光学手段形成工程において、前記コアを複数層形成することを特徴とする請求項7又は8に記載の光学装置の製造方法。
【請求項10】
前記平滑化膜形成工程において、前記平滑化膜の液体状材料を前記加工面にたらすこと、塗布及び噴霧のいずれか一つにより形成することを特徴とする請求項6から9のいずれか一項に記載の光学装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図6】
【公開番号】特開2007−293108(P2007−293108A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−122102(P2006−122102)
【出願日】平成18年4月26日(2006.4.26)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月26日(2006.4.26)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】
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