光量決定装置、位置検出装置、描画装置、および、光量決定方法
【課題】対象面に対して光を照射し、その反射光を検出することによって当該表面の位置を検出するにあたって、適切な出射光量の値を簡易に決定できる技術を提供する。
【解決手段】光源から、光源に対して相対的に移動する対象面(基板Wの上面)に対して、出射光量を変化させながら間欠的に光を照射させるとともに、その反射光の光量分布データを受光部に取得させて、対象面内の異なる位置P(1),P(2),・・・P(N)で反射した反射光の光量分布データをサンプルデータとして次々と取得していく。続いて、取得された複数のサンプルデータのうち、受光量が許容範囲内にあるものを有効データとして抽出し、有効データを与えた最大の出射光量を、位置検出を行う位置検出用光源の出射光量の最適値とする。
【解決手段】光源から、光源に対して相対的に移動する対象面(基板Wの上面)に対して、出射光量を変化させながら間欠的に光を照射させるとともに、その反射光の光量分布データを受光部に取得させて、対象面内の異なる位置P(1),P(2),・・・P(N)で反射した反射光の光量分布データをサンプルデータとして次々と取得していく。続いて、取得された複数のサンプルデータのうち、受光量が許容範囲内にあるものを有効データとして抽出し、有効データを与えた最大の出射光量を、位置検出を行う位置検出用光源の出射光量の最適値とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、対象面に対して検出用光源から光を照射し、その反射光を検出することによって対象面の位置を検出するにあたって、検出用光源の出射光量を決定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
対象面の位置(例えば、対象面の基準点に対する相対位置)を検出する方法の1つに、対象面に対して光を照射し、その反射光を検出するという手法がある。この手法について簡単に説明する。この手法においては、例えば、図19に示すように、検出用光源901から対象面900に、所定の入射角θで光(例えば、レーザ光)を入射し、その反射光を受光部902にて受光する。いま、対象面900が基準位置hにある場合には、受光部902における反射光の受光位置が基準位置cとなることがわかっており、当該基準位置cの座標値が予め記憶されている。ここで、対象面900の相対位置が、基準位置hからズレた位置h’にある場合、受光部902における反射光の受光位置は基準位置cよりもズレた位置c’に移動する。つまり、受光部902における反射光の受光位置をみれば、対象面900が基準位置hからどれだけズレているかを特定することができる。したがって、例えば、基準点に対する基準位置hの相対位置を予め記憶しておけば、基準点に対する対象面900の相対位置を特定することができる。
【0003】
この手法は各種の装置で利用されている。例えば、いわゆる「直接描画装置」(感光材料が塗布された基板に対して光を照射して、CADデータ等から基板の表面(対象面)に直接にパターン(露光パターン)を描画するタイプの露光装置)においては、対象面に光を照射してパターンを描画する際に、上記の手法で対象面の位置を検出し、検出結果に応じて光学ヘッドが備えるレンズの位置を調整する、いわゆる「オートフォーカス」が行われる。
【0004】
ところで、直接描画装置においては、対象面である基板の表面に微細なパターンを高精度に描画する必要があり、そのためには、高精度なオートフォーカスを行う必要がある。高精度なオートフォーカスを行うためには、対象面の位置を高精度に検出しなければならない。
【0005】
対象面の位置検出精度を向上させるための技術が、例えば特許文献1に記載されている。ここに開示されている技術によると、受光部において複数の反射光の受光画像を取得し、取得された複数の受光画像を積算することによって、対象面にパターンの要素が存在する場合であってもその影響を受けにくくし、常に高い精度で対象面の位置を検出可能としている。
【0006】
ところで、対象面の位置を高精度に特定するためには、反射光の受光位置の特定精度を上げなければならないところ、受光部における反射光の受光強度が強すぎても弱すぎても、受光位置の特定精度が悪くなるという事情がある。つまり、対象面の位置を高精度に特定するためには、反射光の受光強度が適正範囲内にあることが必要である。
【0007】
反射光の受光強度を適正範囲内に収めたければ、検出用光源の出射光量を対象面の反射率から逆算して予め設定しておけばよい。ところが、受光強度が適正範囲内の反射光が得られるような出射光量を特定することは実は非常に難しく、また手間がかかる。
【0008】
というのも、対象面である基板の表面の反射率は、基板の表面状態(例えば、表面の材質、表面に塗布されている感光材料の種類、表面に塗布されている感光材料の厚み等)によって変わってくるため、ある表面状態の基板において適切な出射光量だったとしても、表面状態が僅かにでも異なる基板にとっては、それが適切な出射光量とはいえない(つまり、適正な出射光量は、基板の表面状態に依存して変わってくる)からである。
【0009】
また、同じ基板でもその表面内に形成されるパターンの影響を受けて、相対的に反射率の低い(あるいは、高い)局所領域が存在するため、ある領域で反射された場合は適正範囲内の受光強度で反射光が得られたとしても、別の領域においては適正範囲内の受光強度で反射光が得られず、その領域については位置検出精度が悪くなるという事態が生じうる。つまり、適切な出射光量を特定する際には、基板全体に存在している反射率の偏りを加味した上で決定しなければならない。
【0010】
検出用光源の出射光量は、従来は、熟練したオペレータが経験に基づいて決定することが一般的であった。しかしながら、上記の通り、基板の表面状態に適切に対応した設定値を決定することは、たとえ熟練したオペレータにとっても容易なことではない。また、たとえ熟練したオペレータであっても、常に一定の基準で出射光量を決定することは難しく、その結果、位置検出の精度を高いレベルで安定させることができない。
【0011】
例えば特許文献2では、検出用光源の出射光量を段階的に変化させながら位置検出処理を行う。この構成によると、例えば、予め設定された出射光量が、基板の表面状態に厳密に対応していなくとも、受光強度が適正範囲内の反射光を得ることができる可能性が高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2008−258365号公報
【特許文献2】特開2009−244380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述したとおり、特許文献2の技術によると、受光強度が適正範囲内の反射光を得やすくなるものの、位置検出処理において検出用光源の出射光量を変化させることができる範囲には限界があるため、出射光量の初期値が基板の表面状態からみて見当はずれな値に設定されてしまった場合、そこから出射光量を変化させていっても、受光強度が適正範囲内の反射光をほとんど得ることができないことになる。つまり、特許文献2の技術を適用する場合であっても、出射光量の初期値を、基板の表面状態に適切に対応した値に設定しておくことが重要である。そして、この初期値を基板の表面状態に適切に対応した値に決定することは、上述したとおり容易なことではない。
【0014】
この発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、対象面に対して検出用光源から光を照射し、その反射光を検出することによって対象面の位置を検出するにあたって、検出用光源の適切な出射光量の値を簡易に決定できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1に記載の発明は、対象面に対して検出用光源から光を照射し、その反射光を検出することによって前記対象面の位置を検出するにあたって、前記検出用光源の出射光量を決定する光量決定装置であって、前記対象面に向けて光を出射する光源と、前記光源から出射された光の前記対象面での反射光を受光して、前記反射光の光量分布データを取得する受光部と、前記光源と前記対象面とを相対的に移動させる搬送部と、前記光源から、前記光源に対して相対的に移動する前記対象面に対して、出射光量を変化させながら間欠的に光を照射させるとともに、その反射光の光量分布データを前記受光部に取得させて、前記対象面内の異なる位置で反射した反射光の光量分布データをサンプルデータとして次々と取得していくデータ収集部と、前記データ収集部が取得した複数のサンプルデータのうち、受光量が許容範囲内にあるものを有効データとして抽出し、前記有効データを与えた最大の前記出射光量を前記検出用光源の出射光量の最適値として取得する最適値取得部と、を備える。
【0016】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の光量決定装置であって、前記データ収集部が、先に取得されたサンプルデータが前記有効データである場合は、前記光源の出射光量を変化させず、前記先に取得されたサンプルデータが、受光量が前記許容範囲よりも大きい光量過多データである場合は、前記光源の出射光量を小さく変化させ、前記先に取得されたサンプルデータが、受光量が前記許容範囲よりも小さい光量過小データである場合は、前記光源の出射光量を大きく変化させる。
【0017】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の光量決定装置であって、前記サンプルデータが、前記対象面において、定められた長さ以上に相当する領域から有効な検出光量を得ている光量分布データである場合に、当該サンプルデータを前記光量過多データと判断する。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項2または3に記載の光量決定装置であって、前記サンプルデータが、重心として0を与える光量分布データである場合に、当該サンプルデータを前記光量過小データと判断する。
【0019】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれかに記載の光量決定装置であって、前記データ収集部が取得した前記複数のサンプルデータの全部または一部から構成されるサンプルデータ群に基づいて、当該複数のサンプルデータに基づいて得られた前記最適値を評価する評価部、をさらに備える。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の光量決定装置であって、前記評価部が、前記サンプルデータ群において、前記有効データでないサンプルデータが連続して取得された個数が所定数よりも大きい場合に否定的評価を与える。
【0021】
請求項7に記載の発明は、請求項5または6に記載の光量決定装置であって、前記評価部が、前記サンプルデータ群の全体に対して、受光量が前記許容範囲よりも大きい光量過多データとされるサンプルデータが占める割合が、所定値よりも大きい場合に、否定的評価を与える。
【0022】
請求項8に記載の発明は、請求項5から7のいずれかに記載の光量決定装置であって、前記評価部が、前記サンプルデータ群の全体に対して、前記有効データが占める割合が、所定値よりも小さい場合に、否定的評価を与える。
【0023】
請求項9に記載の発明は、請求項1から8のいずれかに記載の光量決定装置であって、前記データ収集部が、前記複数のサンプルデータを取得するデータ収集処理を、複数回繰り返して実行し、先に実行された前記データ収集処理で取得された前記複数のサンプルデータのうち、前記有効データを与えた最大の前記出射光量を、次に実行する前記データ収集処理における前記光源の初期値に設定する。
【0024】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の光量決定装置であって、前記データ収集部が、前記データ収集処理において前記出射光量を変化させる刻み幅を、先に実行された前記データ収集処理における前記刻み幅よりも小さい値とする。
【0025】
請求項11に記載の発明は、対象面に対して検出用光源から光を照射し、その反射光を検出することによって前記対象面の位置を検出する位置検出装置であって、前記対象面に向けて光を出射する光源と、前記光源から出射された光の前記対象面での反射光を受光して、前記反射光の光量分布データを取得する受光部と、前記光源と前記対象面とを相対的に移動させる搬送部と、前記光源から、前記光源に対して相対的に移動する前記対象面に対して、出射光量を変化させながら間欠的に光を照射させるとともに、その反射光の光量分布データを前記受光部に取得させて、前記対象面内の異なる位置で反射した反射光の光量分布データをサンプルデータとして次々と取得していくデータ収集部と、前記データ収集部が取得した複数のサンプルデータのうち、受光量が許容範囲内にあるものを有効データとして抽出し、前記有効データを与えた最大の前記出射光量を前記検出用光源の出射光量の最適値として取得する最適値取得部と、を備え、前記対象面の位置を検出するにあたって、前記検出用光源から、前記最適値取得部が取得した最適値により規定される光量で光を出射する。
【0026】
請求項12に記載の発明は、光学ヘッドから、前記光学ヘッドに対して相対的に移動する対象面に対して光を照射して、前記対象面にパターンを描画する描画装置であって、前記対象面に対して検出用光源から光を照射し、その反射光を検出することによって前記対象面の位置を検出する位置検出部と、前記位置検出部が検出した前記対象面の位置に基づいて、前記光学ヘッドの光学系の前記対象面に対する位置を調整する位置調整部と、を備え、前記位置検出部が、前記対象面に向けて光を出射する光源と、前記光源から出射された光の前記対象面での反射光を受光して、前記反射光の光量分布データを取得する受光部と、前記光源と前記対象面とを相対的に移動させる搬送部と、前記光源から、前記光源に対して相対的に移動する前記対象面に対して、出射光量を変化させながら間欠的に光を照射させるとともに、その反射光の光量分布データを前記受光部に取得させて、前記対象面内の異なる位置で反射した反射光の光量分布データをサンプルデータとして次々と取得していくデータ収集部と、前記データ収集部が取得した複数のサンプルデータのうち、受光量が許容範囲内にあるものを有効データとして抽出し、前記有効データを与えた最大の前記出射光量を前記検出用光源の出射光量の最適値として取得する最適値取得部と、を備え、前記対象面の位置を検出するにあたって、前記検出用光源から、前記最適値取得部が取得した最適値により規定される光量で光を出射する。
【0027】
請求項13に記載の発明は、対象面に対して検出用光源から光を照射し、その反射光を検出することによって前記対象面の位置を検出するにあたって、前記検出用光源の出射光量を決定する光量決定方法であって、a)光源から、前記光源に対して相対的に移動する前記対象面に対して、出射光量を変化させながら間欠的に光を照射させるとともに、その反射光の光量分布データを受光部に取得させて、前記対象面内の異なる位置で反射した反射光の光量分布データをサンプルデータとして次々と取得していく工程と、b)前記a)工程において取得された複数のサンプルデータのうち、受光量が許容範囲内にあるものを有効データとして抽出し、前記有効データを与えた最大の前記出射光量を前記検出用光源の出射光量の最適値として取得する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0028】
請求項1〜13に記載の発明によると、光源から、出射光量を変化させながら対象面の異なる位置に光を照射させて、複数のサンプルデータを取得する。そして、取得された複数のサンプルデータのうち、有効データを与えた最大の出射光量を検出用光源の出射光量の最適値として取得する。ここで最適値とされた値を用いて対象面の位置の検出を行えば、許容範囲内の受光量の反射光が得られる可能性が高いので、対象面の位置を高い精度で検出できる。特に、受光量が許容範囲以下となる反射光は、対象面の位置の検出精度を大きく悪化させる原因となるところ、このような反射光が得られる可能性が低くなる。つまり、この構成によると、対象面の表面状態に対応した適切な(対象面の位置を高い精度で検出可能な)出射光量の値を簡易に決定できる。
【0029】
特に、請求項2に記載の発明によると、複数のサンプルデータを取得する一連の処理の中で、先に取得されたサンプルデータが光量過多データである場合は出射光量を小さく変化させ、先に取得されたサンプルデータが光量過小データである場合は出射光量を大きく変化させるので、サンプルデータとして有効データを数多く取得できる可能性が高くなる。したがって、対象面の状態に対応した適切な出射光量の値を効率的に決定することができる。
【0030】
特に、請求項5に記載の発明によると、データ収集部が取得した複数のサンプルデータの全部または一部から構成されるサンプルデータ群に基づいて、当該複数のサンプルデータに基づいて得られた最適値を評価するので、最適値が、不適当なデータ収集処理に基づいて取得されたものである場合に、それを検知することができる。したがって、信頼性の低い最適値がそのまま出射光量として設定されてしまう危険を回避することができる。
【0031】
特に、請求項9に記載の発明によると、先に実行されたデータ収集処理において取得された複数の光量分布データのうち、有効データを与えた最大の出射光量を光源の初期値に設定して、データ収集処理を繰り返す。この構成によると、データ収集処理の実行回数を重ねるにつれて、より多くの有効データを取得できる可能性が高くなる。その結果、対象面の状態に対応した最適値を高精度に決定することができる。
【0032】
特に、請求項10に記載の発明によると、データ収集処理において出射光量を変化させる刻み幅を、データ収集処理の繰り返し回数が増えるにつれて小さくするので、対象面の状態に適切に対応した最適値をさらに高精度に特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】描画装置の側面図である。
【図2】描画装置の上面図である。
【図3】描画ユニットの構成例を模式的に示す図である。
【図4】光学ヘッド部が備える位置検出ユニットの構成例を模式的に示す図である。
【図5】光量分布データの様子を模式的に示す図である。
【図6】照明ユニットの構成例を示す図である。
【図7】アライメントユニットの構成例を示す図である。
【図8】位置検出ユニットの構成例を模式的に示す図である。
【図9】描画装置において実行される処理の流れを示す図である。
【図10】サンプルデータ収集処理の流れを示す図である。
【図11】サンプルデータ収集処理における基板と位置検出ユニットとの相対位置関係を模式的に示す図である。
【図12】サンプルデータの取得処理の流れを示す図である。
【図13】受光部が取得する一群の光量分布データを模式的に示す図である。
【図14】光量分布データを整理する処理の流れを示す図である。
【図15】サンプルデータテーブルの構成例を模式的に示す図である。
【図16】サンプルデータ収集処理の評価処理の流れを示す図である。
【図17】最適値を決定する処理の全体の流れを示す図である。
【図18】描画装置において実現される各機能を表すブロック図である。
【図19】対象面の位置を検出する手法の原理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において参照される各図には、各部材の位置関係や動作方向を明確化するために、共通のXYZ直交座標系が付されている。
【0035】
<1.描画装置100の構成>
<1−1.全体構成>
図1および図2は、本発明の一実施形態に係る描画装置100の構成を示した側面図および上面図である。描画装置100は、レジスト等の感光材料の層が形成された半導体基板(以下、単に「基板」という)Wの上面に光を照射して、所定のパターンを描画する装置(所謂「直接描画装置」)である。
【0036】
描画装置100は、本体フレーム101にカバーが取り付けられることによって形成される本体内部と、本体フレーム101の外側である本体外部とに、その備える各種の構成要素を配置した構成となっている。
【0037】
描画装置100の本体内部には、処理領域102と受渡領域103とが形成されている。処理領域102には、主として、基板Wを保持するステージ10、ステージ10を移動させるステージ移動機構20、ステージ10の位置を計測するステージ位置計測部30、基板Wの上面に光を照射する光学ヘッド部40、基板Wの上面に形成されたアライメントマークを撮像するアライメントユニット50、および、基板Wの上面の基準位置に対する相対位置(Z方向に沿う方向の位置であり、以下「高さ位置」という)を検出する位置検出ユニット60が配置される。一方、受渡領域103には、処理領域に対する基板Wの搬出入を行う搬送装置70が配置される。
【0038】
また、描画装置100の本体外部には、アライメントユニット50に照明光を供給する照明ユニット80が配置される。また、本体外部には、描画装置100が備える各部と電気的に接続されて、これら各部の動作を制御する制御部90が配置される。
【0039】
なお、描画装置100の本体外部であって、受渡領域103に隣接する位置には、カセットCを載置するためのカセット載置部104が配置される。受渡領域103に配置された搬送装置70は、カセット載置部104に載置されたカセットCに収容された未処理の基板Wを取り出して処理領域102に搬入するとともに、処理領域102から処理済みの基板Wを搬出してカセットCに収容する。カセット載置部104に対するカセットCの受け渡しは、図示しない外部搬送装置によって行われる。
【0040】
<1−2.各部の構成>
<ステージ10>
ステージ10は、平板状の外形を有し、その上面に基板Wを水平姿勢に載置して保持する保持部である。ステージ10の上面には複数の吸引孔(図示省略)が形成されており、この吸引孔に負圧(吸引圧)を形成することによって、ステージ10上に載置された基板Wをステージ10の上面に固定保持することができるようになっている。
【0041】
<ステージ移動機構20>
ステージ移動機構20は、ステージ10を主走査方向(Y軸方向)、副走査方向(X軸方向)、および回転方向(Z軸周りの回転方向(θ軸方向))に移動させる機構である。ステージ移動機構20は、ステージ10を回転させる回転機構21と、ステージ10を回転可能に支持する支持プレート22と、支持プレート22を副走査方向に移動させる副走査機構23と、副走査機構23を介して支持プレート22を支持するベースプレート24と、ベースプレート24を主走査方向に移動させる主走査機構25とを備える。回転機構21、副走査機構23、および、主走査機構25は、制御部90と電気的に接続されており、制御部90からの指示に応じてステージ10を移動させる。
【0042】
回転機構21は、支持プレート22上において、基板Wの上面に垂直な回転軸を中心としてステージ10を回転する。
【0043】
副走査機構23は、支持プレート22の下面に取り付けられた移動子とベースプレート24の上面に敷設された固定子とにより構成されたリニアモータ23aを有している。また、支持プレート22とベースプレート24との間には、副走査方向にのびる一対のガイド部23bが設けられている。このため、リニアモータ23aを動作させると、ベースプレート24上のガイド部23bに沿って支持プレート22が副走査方向に移動する。
【0044】
主走査機構25は、ベースプレート24の下面に取り付けられた移動子と描画装置100の基台106上に敷設された固定子とにより構成されたリニアモータ25aを有している。また、ベースプレート24と基台106との間には、主走査方向にのびる一対のガイド部25bが設けられている。このため、リニアモータ25aを動作させると、基台106上のガイド部25bに沿ってベースプレート24が主走査方向に移動する。
【0045】
<ステージ位置計測部30>
ステージ位置計測部30は、ステージ10の位置を計測する機構である。ステージ位置計測部30は、制御部90と電気的に接続されており、制御部90からの指示に応じてステージ10の位置を計測する。
【0046】
ステージ位置計測部30は、例えば、ステージ10に向けてレーザ光を照射し、その反射光と出射光との干渉を利用して、ステージ10の位置を計測する機構により構成することができる。この場合、ステージ位置計測部30は、例えば、レーザ光を出射する出射部31と、ビームスプリッタ32と、ビームベンダ33と、第1干渉計34と、第2干渉計35とを備える。出射部31、および各干渉計34,35は、制御部90と電気的に接続されており、制御部90からの指示に応じてステージ10の位置を計測する。
【0047】
出射部31から出射されたレーザ光は、まずビームスプリッタ32に入射し、ビームベンダ33に向かう第1分岐光と、第2干渉計35に向かう第2分岐光とに分岐される。第1分岐光は、ビームベンダ33により反射され、第1干渉計34に入射するとともに、第1の干渉計34からステージ10の第1の部位に照射される。そして、第1の部位において反射した第1分岐光が、再び第1干渉計34へ入射する。第1干渉計34は、ステージ10の第1の部位に向かう第1分岐光と第1の部位で反射された第1分岐光との干渉に基づいて第1の部位の位置に対応した位置パラメータを計測する。
【0048】
一方、第2分岐光は、第2干渉計35に入射するとともに、第2干渉計35からステージ10の−Y側の側面内における第2の部位(ただし、第2の部位は、第1の部位とは異なる位置である)に照射される。そして、第2の部位において反射した第2分岐光が、再び第2干渉計35へ入射する。第2干渉計35は、ステージ10の第2の部位に向かう第2分岐光とステージ10の第2の部位で反射された第2分岐光との干渉に基づいて第2の部位の位置に対応した位置パラメータを計測する。
【0049】
制御部90は、第1干渉計34および第2干渉計35のそれぞれから、ステージ10の第1の部位の位置に対応した位置パラメータ、および、ステージ10の第2の部位の位置に対応した位置パラメータを取得する。そして、取得した各位置パラメータに基づいて、ステージ10の位置を算出する。
【0050】
<光学ヘッド部40>
光学ヘッド部40は、ステージ10上に保持された基板Wの上面に光を照射する機構である。光学ヘッド部40は、ステージ10およびステージ移動機構20を跨ぐようにして基台106上に架設されたフレーム107に設けられる。
【0051】
光学ヘッド部40は、レーザ光を出射するレーザ発振器41と、レーザ発振器41を駆動するレーザ駆動部42と、レーザ発振器41から出射された光を、強度分布が均一な線状の光(光束断面が線状の光)とする照明光学系43とを備える。これらの各部41,42,43は、フレーム107の天板を形成するボックスの内部に配置される。また、これらの各部41,42,43は、制御部90と電気的に接続されており、制御部90からの指示に応じて動作する。
【0052】
光学ヘッド部40は、さらに、フレーム107の+Y側に取り付けられた付設ボックスの内部に収容される描画ユニット401を備える。描画ユニット401は、レーザ発振器41から出射され、照明光学系43を介して入射した光にパターンデータに応じた変調を形成して、基板Wの上面に照射する。描画ユニット401の構成について、図3を参照しながら説明する。図3は、描画ユニット401の構成例を模式的に示す図である。
【0053】
描画ユニット401は、空間変調ユニット44と、投影光学系45とを備える。描画ユニット401が備える各部44,45は、制御部90と電気的に接続されており、制御部90からの指示に応じて動作する。
【0054】
空間変調ユニット44は、複数の空間光変調素子を一列に配列したものである。空間光変調素子は、電気的な制御により光を変調させる素子であり、例えば、回折格子型の空間光変調素子であるGLV(Grating Light Valve:グレーチング・ライト・バルブ)(シリコン・ライト・マシーンズ(サンノゼ、カリフォルニア)の登録商標)を用いて構成される。回折格子型の空間光変調素子は、印可される電圧に応じてその表面状態を変化させる。具体的には、電圧オン状態では、0次光を出射する表面状態となり、電圧オフ状態では、1次回折光(±1次回折光)を出射する表面状態となる。以下に説明するように、投影光学系45は、1次回折光を遮断し、0次光のみを通過させる。つまり、0次光のみが基板Wの上面まで到達することになる。
【0055】
照明光学系43から出射された光は、ミラー431に入射し、定められた角度で空間変調ユニット44に入射する。一方で、制御部90は、パターンデータ(基板Wに描画すべきパターンを記述したCADデータ)に基づいて、ドライバ回路を介して、各空間光変調素子に対して電圧を印加する。これによって、空間変調ユニット44に入射した光に、描画すべきパターンに応じた変調が形成されることになる。
【0056】
投影光学系45は、空間変調ユニット44において空間変調された光を、基板Wの表面に導いて、基板Wの表面に結像させる機能部であり、例えば、空間変調ユニット44側から順に、ゴースト光を遮断する遮光板451と、ズーム部を構成する2個のレンズ452,453と、高次回折光を遮断する絞り板454と、フォーカス部を構成するフォーカシングレンズ455とが配置される。
【0057】
レンズ452,453を通過した光は、開口を有する絞り板454へと導かれる。ここで、一部の光(0次光)は絞り板454の開口を通過してフォーカシングレンズ455へ導かれ、残りの光(1次回折光)は絞り板464により遮断される。フォーカシングレンズ465を通過した光(0次光)は、定められた倍率で基板Wの表面に導かれる。
【0058】
なお、投影光学系45は、必ずしも、遮光板451、レンズ452,453、絞り板454、および、フォーカシングレンズ455により構成される必要はなく、他の光学素子が追加される等してもよい。
【0059】
再び図1、図2を参照する。光学ヘッド部40は、さらに、投影光学系45が備えるフォーカシングレンズ455の位置を調整する駆動部46と、基板Wの上面(具体的には、基板Wの上面内の各位置)の高さ位置を検出する位置検出ユニット47とを備える。
【0060】
駆動部46は、投影光学系45が備えるフォーカシングレンズ455をZ軸方向に沿って直線的に移動させることによって、基板Wの上面内の各位置に対するフォーカシングレンズ455の位置(すなわち、基板Wの上面内の各位置とフォーカシングレンズ455との離間距離)を変化させる。なお、駆動部46として、例えば、回転モータと、Z軸方向に平行に配置されるボールネジと、フォーカシングレンズ455の支持台(あるいは、描画ユニット401の筐体)に固定されるナット部とを有する直動機構を採用することができる。
【0061】
位置検出ユニット47は、光学ヘッド部40と対応付けられており、対応する光学ヘッド部40の付近に配置されて、基板Wの上面内の各位置(具体的には、対応する光学ヘッド部40が描画を行う予定の位置(描画予定位置))の高さ位置を検出する。位置検出ユニット47の構成は後に詳細に説明する。
【0062】
駆動部46と位置検出ユニット47とは、オートフォーカスを行う機能部(オートフォーカスユニット)構成する。すなわち、制御部90は、位置検出ユニット47に描画予定位置の高さ位置を検出させ、取得された位置情報(以下「高さ位置情報」という)に基づいて駆動部46を制御して、光学ヘッド部40のフォーカシングレンズ455が適切な位置(光学ヘッド部40から照射される光を描画予定位置に結像させる位置)に置かれるように調整する。
【0063】
ここで、位置検出ユニット47の構成について、図4を参照しながら説明する。図4は、位置検出ユニット47の構成例を模式的に示す図である。
【0064】
位置検出ユニット47は、主として、光源471と受光部472とを備える。光源471は、例えばレーザ光を出射するレーザ光源により構成される。光源471は制御部90と接続されており、制御部90からの指示に応じて動作する。制御部90は、光源471からの光の出射タイミング、光の出射時間、および、出射光量を制御する。
【0065】
光源471から出射された光は、照明光学系4711、および、ミラー4712を介して基板Wの上面まで導かれる。照明光学系4711、および、ミラー4712は、光源471から出射された光を基板Wの上面の法線方向に対して所定の角度だけ傾斜した軸に沿って基板Wの上面に入射させる。基板Wの上面に入射し、そこで反射されたた光は、ミラー4713、リレー光学系4714、および、ミラー4715を介して受光部472まで導かれる。
【0066】
受光部472は、ラインセンサ(例えば、CMOSラインセンサ、あるいは、CCDラインセンサ)により構成され、直線状に配列された複数の画素を備える。各画素が、光源471から出射され、基板Wの上面で反射された反射光を受光し、これによって、当該反射光の受光強度の分布データ(以下「光量分布データ」という)が取得される。光量分布データは、図5に模式的に示すように、反射光を受光した各画素の位置情報(画素位置)と、各画素が受光した光の光量情報(具体的には、例えば蓄積電圧)とを含むデータである。
【0067】
制御部90は、受光部472が取得した光量分布データに基づいて、基板Wの上面(具体的には、反射位置)の高さ位置を算出する。ここで、制御部90が、光量分布データに基づいて高さ位置を算出する処理について説明する。
【0068】
制御部90は、所定のタイミングで受光部472から信号を出力させ、出力された信号をA/D変換して光量分布データとして取得する。図5に例示するように、光量分布データには、受光量が急激に増加し減少するピーク部分が存在する。このピーク部分は、例えば、ガウス曲線のような形状となる。このピーク部分の位置(具体的には、ピーク部分に対応する画素の位置)を特定することによって、反射光の受光位置を特定することができる。すなわち、基板Wの上面に反りや歪みが生じている場合は、このピーク位置が基準位置からズレた値となるので、ピーク位置の基準位置(具体的には、基準とされる画素の位置)からのズレ幅を算出することによって、基板Wの上面(具体的には、反射位置)の高さ位置を特定することができる。
【0069】
適切な受光強度の光量分布データが得られている場合、ピーク位置は、重心によって与えられる。そこで、制御部90は、光量分布データを取得すると、当該光量分布データの重心を算出し、当該重心に対応する画素の位置を受光位置として取得する。さらに制御部90は、受光位置情報に基づいて、高さ位置情報を算出する。そして、取得した高さ位置情報を、反射位置を特定するための情報(以下「反射位置情報」という)と対応付けて記憶する。
【0070】
なお、上記の手法によると、光量分布データが適切な受光強度の場合、高精度に受光位置を検出できる(ひいては、高精度に高さ位置を検出できる)が、受光強度が強すぎる(あるいは、弱すぎる)場合、重心とピーク位置との誤差が大きくなり、受光位置の検出精度が悪化する(ひいては、高さ位置の検出精度が悪化する)。つまり、高さ位置を高精度に検出するためには、受光部472において適正範囲内の受光強度の光量分布データが得られていることが必要となる。受光部472において適正範囲内の受光強度の光量分布データを得るためには、光源471の出射光量が基板Wの表面状態に対応して適切に設定されていることが必要となる。この点については、後に詳細に説明する。
【0071】
<照明ユニット80>
照明ユニット80は、アライメントユニット50とファイバー801を介して接続され、アライメントユニット50に対して照明用の光を供給する。照明ユニット80の構成について、図6を参照しながら説明する。図6は、照明ユニット80の構成例を示す図である。
【0072】
照明ユニット80は、回転フィルタ82を介してファイバー801と接続されるハロゲンランプ81、ハロゲンランプ81から出射されファイバー801に入射する光Lの光路上に配置された回転フィルタ82、および、回転フィルタ82を回転させる回転モータ83を備える。ハロゲンランプ81、および、回転モータ83は、制御部90と電気的に接続されており、制御部90からの指示に応じて動作する。
【0073】
回転フィルタ82は、それぞれ異なる種類のフィルタがはめ込まれた複数の窓と、フィルタがはめ込まれていない1個の窓とを備える。各窓は、回転フィルタ82の回転軸を中心として放射状に配置されている。窓にはめ込まれている各種のフィルタは、それぞれ異なる領域の波長を透過するフィルタである。例えば、ある窓には可視光を透過するフィルタがはめ込まれており、別の窓には赤外光を透過するフィルタがはめ込まれている。
【0074】
制御部90は、アライメントユニット50に供給すべき光の波長に応じて回転モータ83を制御して回転フィルタ82を回転させ、光路上(ハロゲンランプ81からファイバー801に入射する光の光路上)に配置する窓を変更する。例えば、赤外光を供給すべき場合、制御部90は、回転モータ83を制御して、光路上に赤外光を透過するフィルタがはめ込まれた窓が配置されるように回転フィルタ82回転させる。すると、ハロゲンランプ81から出射された光のうち、赤外光のみがフィルタを透過し、ファイバー801には赤外光のみが入射することになる。すなわち、アライメントユニット50には赤外光が供給されることになる。
【0075】
<アライメントユニット50>
アライメントユニット50は、基板Wの上面に形成されたアライメントマークを撮像する。アライメントユニット50の構成について、図7を参照しながら説明する。図7は、アライメントユニット50の構成例を示す図である。
【0076】
アライメントユニット50は、鏡筒51と、対物レンズ52と、例えばエリアイメージセンサ(二次元イメージセンサ)により構成されるCCDイメージセンサセンサ53とを備える。
【0077】
照明ユニット80から延びるファイバー801により導かれる光は、鏡筒51を介して基板Wの上面に導かれ、その反射光は、対物レンズ52を介してCCDイメージセンサ53で受光される。これによって、基板Wの上面の撮像データが取得されることになる。CCDイメージセンサ53は、制御部90と電気的に接続されており、制御部90からの指示に応じて撮像データを取得し、取得した撮像データを制御部90に送信する。
【0078】
<位置検出ユニット60>
位置検出ユニット60は、基板Wの上面(対象面)の基準位置に対する高さ位置を検出する。位置検出ユニット60の構成について、図8を参照しながら説明する。図8は、位置検出ユニット60の構成例を示す図である。
【0079】
位置検出ユニット60の構成は、光学ヘッド部40が備える位置検出ユニット47の構成と同じである。すなわち、位置検出ユニット60は、光源61と受光部62とを備える。さらに、位置検出ユニット60は、照明光学系601、ミラー602,603、リレー光学系604、および、ミラー605を備える。各部の構成は、位置検出ユニット47と同様であるので、その詳細な説明を省略する。
【0080】
<制御部90>
制御部90は、各種の演算処理を実行しつつ、描画装置100が備える各部の動作を制御する。制御部90は、例えば、各種演算処理を行うCPU、ブートプログラム等を記憶するROM、演算処理の作業領域となるRAM、プログラムや各種のデータファイルなどを記憶する記憶部(例えば、ハードディスク)、各種表示を行うディスプレイ、キーボード及びマウスなどで構成される入力部、LAN等を介したデータ通信機能を有するデータ通信部、等を備えるコンピュータにより構成される。コンピュータにインストールされたプログラムにしたがってコンピュータが動作することにより、当該コンピュータが描画装置100の制御部90として機能する。制御部90において実現される各機能部は、コンピュータによって所定のプログラムが実行されることにより実現されてもよいし、専用のハードウエアによって実現されてもよい。
【0081】
制御部90が備える記憶部には、基板Wに描画すべきパターンを記述したデータ(パターンデータ)が格納される。パターンデータは、例えば、CADを用いて生成されたCADデータである。制御部90は、基板Wに対する一連の処理に先だってパターンデータを取得して記憶部に格納している。なお、パターンデータの取得は、例えば、ネットワーク等を介して接続された外部端末装置から受信することにより行われてもよいし、記録媒体から読み取ることにより行われてもよい。
【0082】
<2.処理の流れ>
描画装置100において実行される処理の流れについて、図9を参照しながら説明する。図9は、当該処理の流れを示す図である。
【0083】
描画装置100における処理は、ロット単位で行われる。搬送装置70が、処理対象となるロットの1番目の基板Wを搬入してステージ10に載置すると(ステップS1)、まず、光学ヘッド部40が備える位置検出ユニット47の光源471(検出用光源)の出射光量の最適値を決定する処理が行われ(ステップS2)、続いて、光源471の出射光量を設定する処理が行われる(ステップS3)。ステップS3の処理においては、制御部90が、ステップS2で決定された最適値をそのまま光源471の出射光量に設定してもよいし、オペレータが操作部を介して入力した値を制御部90が受け付け、制御部90が当該受け付けた値を光源471の出射光量に設定してもよい。ただし、後者の場合、ステップS2において決定された最適値を表示画面に表示させ、オペレータが表示された最適値を参考にして光源471の出射光量を決定できるようにする。
【0084】
続いて、基板Wに対する描画処理が行われる(ステップS4)。この処理においては、まず、アライメントマークの撮像が行われる(ステップS41)。具体的には、ステージ移動機構20が、制御部90からの指示に応じてステージ10を移動させることによって基板Wをアライメントユニット50に対して相対的に移動させて、アライメントユニット50の下方に、基板Wにおけるアライメントマークの形成位置がおかれるように基板Wを移動させる。基板Wが所定位置まで移動させられると、アライメントユニット50は、制御部90からの指示に応じて、基板Wの上面を撮像する。これによって、アライメントマークの撮像データが得られることになる。
【0085】
続いて、ステージ10の位置調整が行われる(ステップS42)。この処理においては、制御部90は、まず、ステップS41で得られた撮像データに基づいて、ステージ10に対する基板Wの位置および向きを特定する。ステージ10に対する基板Wの位置および向きが特定されると、制御部90は、ステージ位置計測部30およびステージ移動機構20を制御して、ステージ10に載置された基板Wが光学ヘッド部40に対して定められた位置および向きとなるように、ステージ10の位置を調整する。
【0086】
ステップS42の処理が完了すると、続いて、基板Wに対するパターンの描画が実行される(ステップS43)。この処理においては、まず、ステージ移動機構20が、制御部90からの指示に応じて、ステージ10を主走査方向(Y軸方向)に沿って移動させることによって、基板Wを光学ヘッド部40に対して主走査方向に沿って相対的に移動させる(主走査)。基板Wが主走査方向に沿って相対的に移動させられる間、光学ヘッド部40は、制御部90の制御下で、ラスタライズされたパターンデータに応じた変調が形成された光を基板Wに向けて照射する。基板Wの+Y側の端部が光学ヘッド部40の下方を通過すると、1回の主走査が終了する。1回の主走査が終了すると、基板Wの上面に1ストライプ分の描画が行われることになる。
【0087】
1回の主走査が終了すると、ステージ移動機構20が、ステージ10を副走査方向(X軸方向)に沿って、1ストライプの幅に相当する距離だけ移動させることによって、基板Wを光学ヘッド部40に対して副査方向に沿って相対的に移動させる(副走査)。
【0088】
副走査が終了すると、再び主走査が行われる。これによって、先の主走査で描画された1ストライプ分の描画領域の隣に、さらに1ストライプ分の描画が行われることになる。このように、主走査と副走査とが繰り返して行われることによって、基板Wの上面の全域にパターンが描画されることになる。
【0089】
なお、光学ヘッド部40が基板Wに対してパターンを描画している間、制御部90は、位置検出ユニット47および駆動部46にオートフォーカスを行わせる。
【0090】
具体的には、制御部90は、位置検出ユニット47の光源471から、ステップS3で設定された出射光量で光を照射させる。出射された光は基板Wの上面で反射して、その反射光が受光部472にて受光される。制御部90は、受光部472が取得した反射光の光量分布データに基づいて、基板Wの上面(具体的には、反射位置)の高さ位置を検出し、取得した高さ位置情報を反射位置情報と対応付けて記憶する。その一方で、制御部90は、駆動部46を制御してフォーカシングレンズ455の位置を調整する。具体的には、光学ヘッド部40から光が照射されようとしている基板Wの上面内の位置と対応付けて記憶されている高さ位置情報を読み出し、当該位置に光学ヘッド部40から出射される光の焦点が合うように、フォーカシングレンズ455を移動させる。
【0091】
描画処理が終了すると、搬送装置70が処理済みの基板Wを搬出する(ステップS5)。搬送装置70が、続いて、当該ロットの2番目の基板Wを搬入してステージ10に載置すると(ステップS6でYES)、当該基板Wに対する描画処理が行われる(ステップS4)。
【0092】
以降は、ステップS6、ステップS4、および、ステップS5の処理が繰り返され、ロットを構成する複数の基板Wのそれぞれに対する描画処理が次々と行われていく。ロットを構成する全ての基板Wに対する描画処理が完了すると(ステップS6でNO)、一連の処理が終了する。
【0093】
<3.出射光量の設定処理>
位置検出ユニット47の光源471の出射光量の最適値を決定する処理(図9のステップS2)について詳細に説明する。
【0094】
<3−1.サンプルデータ収集処理>
最適値を決定する処理においては、「サンプルデータ収集処理」が行われる。「サンプルデータ収集処理」は、基板Wの上面内に設定された複数のサンプル取得位置P(i)(i=1,2,・・・N)(図11参照)のそれぞれで、サンプルデータを取得する処理であり、制御部90が、位置検出ユニット60およびステージ移動機構20を制御することにより実行される。
【0095】
<a.全体の流れ>
サンプルデータ収集処理の全体の流れについて、図10を参照しながら説明する。図10は当該処理の流れを示す図である。
【0096】
サンプルデータ収集処理においては、ステージ移動機構20が、制御部90からの指示に応じて、ステージ10を移動させることによって、基板Wを位置検出ユニット60に対して相対的に移動させる。具体的には、図11に示すように、まず、ステージ10を主走査方向(Y軸方向)に沿って移動させることによって、基板Wを位置検出ユニット60に対して主走査方向に沿って相対的に移動させる(主走査)(矢印AR11)。続いて、ステージ移動機構20が、ステージ10を副走査方向(X軸方向)に沿って、所定距離だけ移動させることによって、基板Wを位置検出ユニット60に対して副査方向に沿って相対的に移動させる(副走査)(矢印AR12)。副走査が終了すると、再び主走査が行われる(矢印AR13)。このように、主走査と副走査とが繰り返して行われることによって、基板Wの上面の全域を位置検出ユニット60が通過することになる。
【0097】
制御部90は、ステージ位置計測部30からの計測値を取得することによって、位置検出ユニット60と基板Wとの相対的な位置関係を常に検出している。一方で、制御部90は、基板W上の複数点の座標を「サンプル取得位置P(i)(i=1,2,・・・,N(ただし、Nは2以上の整数))」として記憶しており、位置検出ユニット60の下方に、基板Wのサンプル取得位置P(i)が到達すると(ステップS21でYES)、位置検出ユニット60に対して、サンプルデータの取得指示を与える。なお、サンプル取得位置P(i)(i=1,2,・・・,N)は、基板Wの上面の全域に満遍なく分布していることが好ましく、例えば、図11に例示するように、基板W上に規定された格子状のラインの格子点に相当する位置をサンプル取得位置P(i)とすることが好ましい。
【0098】
位置検出ユニット60は、制御部90からサンプルデータの取得指示を受けると、当該指示に応じてサンプルデータの取得処理を行って、サンプルデータを取得する(ステップS22)。この処理が行われることによって、サンプル取得位置P(i)で反射した反射光の光量分布データが、「有効」「光量過小」「光量過多」のいずれかの属性を付与され、反射位置情報、および、出射光量と対応付けられて、サンプルデータテーブルT(図15参照)に格納される。サンプルデータの取得処理の具体的な流れについては後に説明する。
【0099】
続いて、制御部90は、ステップS22で取得されたサンプルデータに基づいて、光源61から出射する光量(出射光量)の調整を行う(ステップS23)。具体的には、ステップS22でサンプルデータとして取得された光量分布データに付与されている属性が「有効」である場合、出射光量をそのままとする(変化させない)。一方、付与されている属性が「光量過小」である場合、出射光量を、現在の設定値よりも所定の幅(以下「刻み幅」という)ΔLだけ大きい値に変化させる。また、付与されている属性が「光量過多」である場合、出射光量を、現在の設定値よりも刻み幅ΔLだけ小さい値に変化させる。
【0100】
ステップS23の処理が終了すると、次のサンプル取得位置P(i+1)に到達するのを待って、再び、サンプルデータの取得処理を行う。次のサンプル取得位置P(i+1)においては、先のサンプル取得位置P(i)で取得されたサンプルデータに基づいて調整された出射光量で、サンプルデータの取得処理が行われることになる。
【0101】
基板Wの上面の全域の走査が完了すると(具体的には、基板Wの上面の全域を位置検出ユニット60が通過し終わると)(ステップS24でYES)、サンプルデータ収集処理が終了する。
【0102】
このように、サンプルデータ収集処理においては、光源61から、出射光量を変化させながら、基板Wの上面の異なる位置(具体的には、基板Wの上面に設定された複数のサンプル取得位置P(i)(i=1,2,・・・N)のそれぞれ)に光を照射させることによって、複数のサンプルデータが取得される。
【0103】
<b.サンプルデータの取得処理>
サンプルデータの取得処理(図10のステップS22)について、図12を参照しながら説明する。図12は当該処理の流れを示す図である。
【0104】
サンプルデータの取得指示が発行されると、制御部90は、光源61から、一定間隔で複数回(例えば、5回)、設定された出射光量で、光を出射させる(ステップS221)。ステージ10は光源61から光が出射される間も移動を続けているので、光源61から出射された各光は、基板Wの上面の僅かに異なる位置(すなわち、サンプル取得位置P(i)からそれぞれ僅かにズレた位置)に入射することになるが、この位置のズレはサンプルデータの取得処理において無視できるほど小さく、各光は、同じ位置に入射しているとみなすことができる。
【0105】
光源61から次々と出射された光は、サンプル取得位置P(i)で反射して、受光部62において順に受光される。つまり、受光部62では、サンプル取得位置P(i)でそれぞれ反射された複数の反射光の光量分布データが次々と取得されることになる(ステップS222)。ただし、この際、制御部90は、受光部62における光の取り込み時間を段階的に長くする。これによって、受光部62における受光光量が段階的に変化することになる。すると、受光部62において、図13に例示するように、段階的に変化する一群の光量分布データD10(D1,D2,・・・D5)が取得されることになる。
【0106】
制御部90は、ステップS222の処理において、次々と取得される光量分布データD1,D2,・・・D5を整理して、サンプルデータを取得する(ステップS223)。具体的には、ステップS222で取得された複数の光量分布データのうち、一の光量分布データを選択してサンプルデータとして記憶する。
【0107】
<c.光量分布データの整理>
ステップS223の処理について、図14を参照しながら詳細に説明する。図14は当該処理の流れを示す図である。
【0108】
まず、制御部90は、ステップS222で取得された一群の光量分布データD10のうち、1番目に取得された光量分布データD1を読み出し(ステップS2231)、当該読み出した光量分布データD1が「有効データ」であるか否かを判断する(ステップS2232)。
【0109】
ここで「有効データ」とは、受光光量が許容範囲内にあり、数%内の誤差範囲で正確なピーク位置を与える光量分布データである。本発明の発明者によると、算出される重心が「0」でなく、かつ、基板Wの上面において所定の長さ(具体的には、100マイクロメートル程度)より短い領域から有効な検出光量を得ている光量分布データは、約1%内の誤差範囲で正確なピーク位置を与えることが見いだされている。そこで、ここでは、重心が「0」でなく、かつ、有効な検出光量を得ている画素が隣接して出現する個数(以下「画素幅」という)が所定値よりも小さい光量分布データを有効データと判断する。例えば、1画素が基板Wの面内の距離に換算して3マイクロメートルに相当する場合、当該所定値を「33(≒100/3)」とすることができる。なお、ノイズの影響を加味すれば、蓄積電圧が例えば10以上となる画素を、有効な検出光量を得ている画素とすることが好ましい。
【0110】
なお、受光光量が許容範囲より大きいために正確な重心を与えないデータ、具体的には、画素幅が所定値以上となる光量分布データを、以下「光量過多データ」という。例えば、受光光量が多く、裾広がりとなっている光量分布データの場合(例えば、図13の光量分布データD5)、画素幅が所定値よりも大きくなる。つまり、このような光量分布データは、光量過多データと判断される。
【0111】
一方、受光光量が許容範囲より小さいために正確な重心を与えないデータ、具体的には、重心が「0」である光量分布データを、以下「光量過小データ」という。例えば、受光光量が少なく、有効な検出光量を得ている画素が「0」の光量分布データの場合、当該光量分布データが与える重心は「0」となる。つまり、このような光量分布データは、光量過小データと判断される。
【0112】
1番目に取得された光量分布データD1が有効データであると判断した場合(ステップS2232でYES)、制御部90は、当該光量分布データD1に「有効」の属性を与えて、当該光量分布データD1をサンプルデータとして記憶する(ステップS2233)。具体的には、制御部90は、当該光量分布データD1を、その属性情報、その反射位置情報(当該光量分布データD1に係る反射光の基板Wの上面内における反射位置)、および、その出射光量(当該光量分布データD1を与えた際の光源61の出射光量)とそれぞれ対応付けて記憶する。なお、サンプルデータは、例えば、テーブルの形で管理される。図15には、サンプルデータを格納するテーブル(サンプルデータテーブルT)の構成例が模式的に示されている。
【0113】
一方、1番目に取得された光量分布データD1が有効データでないと判断した場合(ステップS2232でNO)、制御部90は、再びステップS2231の処理に戻り、2番目に取得された光量分布データD2を読み出し(ステップS2231)、当該読み出した光量分布データD2が「有効データ」であるか否かを判断する(ステップS2232)。
【0114】
つまり、制御部90は、有効データが取得されるまで、ステップS2231、ステップS2232,および、ステップS2234の処理ループを繰り返す。
【0115】
ステップS222の処理で取得された光量分布データ群D10のうち、最後に取得された光量分布データD5が有効データでない場合(すなわち、光量分布データ群D10に含まれる全ての光量分布データD1,D2,・・・,D5が有効データでない場合)(ステップS2234でYES)、制御部90は、光量分布データ群D10に含まれる全ての光量分布データD1,D2,・・・,D5のうち、最後に取得された光量分布データD5(すなわち、ステップS222で取得される複数の光量分布データD1,D2,・・・,D5のうち、最も受光光量が大きい光量分布データD5)が、光量過多データ、光量過小データのいずれであるかを判断する(ステップS2235)。
【0116】
そして、最後に取得された光量分布データD5に、ステップS2235の判断結果に応じた属性を与えて、当該光量分布データD5をサンプルデータとして記憶する(ステップS2236)。すなわち、最後に取得された光量分布データD5が光量過多データであると判断した場合、制御部90は、当該光量分布データD5に「光量過多」の属性を与えて、当該光量分布データD5をサンプルデータとして記憶する。また、最後に取得された光量分布データD5が光量過小データであると判断した場合、制御部90は、当該光量分布データD5に「光量過小」の属性を与えて、当該光量分布データD5をサンプルデータとして記憶する。具体的には、当該光量分布データD5を、その属性情報、その反射位置情報、および、その出射光量とそれぞれ対応付けてサンプルデータテーブルTに格納する。
【0117】
つまり、ステップS223の処理においては、ステップS222の処理で取得された光量分布データ群D10に有効データとされる光量分布データが含まれる場合は、当該光量分布データをサンプルデータとして取得し、有効データとされる光量分布データが含まれない場合は、最後に取得された光量分布データをサンプルデータとして取得することになる。
【0118】
<d.優良値>
ところで、位置検出ユニット47における検出精度を上げるためには、受光部472において「有効データ」とされる光量分布データをなるべく多く得ることが重要であるが、さらに、「光量過小データ」とされる光量分布データをなるべく少なくすることも重要である。というのも、「光量過小データ」とされる光量分布データは、上述したとおり、重心が「0」となるものであり、高さ位置の検出精度を大きく悪化させるからである。「光量過多データ」とされる光量分布データは、精度はよくないものの、一応の重心が算出可能であるので、高さ位置の検出精度に与える影響は、「光量過小データ」とされる光量分布データほどは大きくない。つまり、出射光量の理想的な値は、当該出射光量で基板Wの上面内の任意の位置において光量分布データを取得した場合に、「有効データ」とされる光量分布データの取得数が多く、かつ、「光量過小データ」とされる光量分布データの取得数が少なくなるようなものである。
【0119】
上述したサンプルデータ収集処理においては、基板Wの上面内の異なる位置において、それぞれ異なる出射光量の下でサンプルデータが取得されるところ、1回のサンプルデータ収集処理において取得された各サンプルデータの出射光量のうち、理想的な出射光量に最も近い値は、有効サンプルデータを与えた最大の出射光量である。そこで、制御部90は、1回のサンプルデータ収集処理が終了すると、当該サンプルデータ収集処理において、有効サンプルデータを与えた最大の出射光量を、「優良値」として記憶する。
【0120】
<3−2.サンプルデータ収集処理の評価>
上述したとおり、サンプルデータ収集処理が1回行われると、基板Wの上面内に設定された複数のサンプル取得位置P(i)(i=1,2,・・・N)(図11参照)のそれぞれで、一の光量分布データがサンプルデータとして取得されることになる。各サンプルデータは、属性(「有効」、「光量過小」、「光量過多」のいずれかの属性)が付与された上で、反射位置、および、出射光量と対応付けて記憶される(図15参照)。なお、以下において、属性が「有効」とされたサンプルデータを「有効サンプルデータ」と、属性が「光量過小」とされたサンプルデータを「光量過小サンプルデータ」と、属性が「光量過多」とされたサンプルデータを「光量過多サンプルデータ」と、それぞれいう。
【0121】
サンプルデータ収集処理が終了すると、制御部90は、当該サンプルデータ収集処理の評価を行う。この処理について、図16を参照しながら説明する。図16は当該処理の流れを示す図である。
【0122】
サンプルデータ収集処理の評価は、1回のサンプルデータ収集処理で取得された複数のサンプルデータの全部、あるいは、一部(例えば、後半に取得されたサンプルデータ)に基づいて行われる。ここでは、例えば、1回のサンプルデータ収集処理で取得された複数のサンプルデータのうち、後半に取得されたサンプルデータに基づいて、当該サンプルデータ収集処理の評価を行うとする。
【0123】
まず、制御部90は、1回のサンプルデータ収集処理で取得された複数のサンプルデータのうち、後半に取得されたサンプルデータを、「サンプルデータ群」として読み出す(ステップS31)。
【0124】
続いて、読み出したサンプルデータ群に基づいて、ハード異常の有無を調べる(ステップS32)。具体的には、サンプルデータ群に含まれる各サンプルデータの全てが光量過小サンプルデータである場合、あるいは、サンプルデータ群に含まれる各サンプルデータの全てが光量過多サンプルデータである場合に、ハード異常と判断する。
【0125】
一方、ハード異常が検出されない場合(ステップS32でNO)、制御部90は、続いて、サンプルデータ群における「無効データ連続数N1」に基づいて、サンプルデータ収集処理を評価する(ステップS33)。ただし、「無効位置連続数N1」とは、互いに隣接するサンプル取得位置P(i)において、重心が「0」となるデータが連続する数をいう。制御部90は、サンプルデータ群における無効データ連続数N1を特定し、特定した無効データ連続数N1が所定値(例えば、「10」)よりも大きい場合に、サンプルデータ収集処理に否定的評価を与える(ステップS36)。
【0126】
ステップS33で肯定的評価が得られた場合(すなわち、無効データ連続数N1が所定値以下の場合)、制御部90は、続いて、サンプルデータ群における「過剰光量率N2」に基づいて、サンプルデータ収集処理を評価する(ステップS34)。ただし、「過剰光量率N2」とは、サンプルデータ群の全体に対して、光量過多サンプルデータが占める割合である。制御部90は、サンプルデータ群における過剰光量率N2を特定し、特定した過剰光量率N2が所定値(例えば、「5%」)よりも大きい場合に、サンプルデータ収集処理に否定的評価を与える(ステップS36)。
【0127】
ステップS34で肯定的評価が得られた場合(すなわち、過剰光量率N2が所定値以下の場合)、制御部90は、続いて、サンプルデータ群における「正常検出率N3」に基づいて、サンプルデータ収集処理を評価する(ステップS35)。ただし、正常検出率N3とは、サンプルデータ群の全体に対して、有効サンプルデータが占める割合である。制御部90は、サンプルデータ群における正常検出率N3を特定し、特定した正常検出率N3が所定値(例えば、「95%」)よりも小さい場合に、サンプルデータ収集処理に否定的評価を与える(ステップS36)。
【0128】
ステップS35で肯定的評価が得られた場合(すなわち、正常検出率N3が所定値以下の場合)、制御部90は、サンプルデータ収集処理に肯定的評価を与える(ステップS37)。
【0129】
つまり、制御部90は、サンプルデータ群における無効データ連続数N1が所定値以下であり、かつ、サンプルデータ群における過剰光量率N2が所定値以下であり、かつ、サンプルデータ群における正常検出率N3が所定値以上である場合に、サンプルデータ収集処理に肯定的評価を与える。なお、評価の閾値となる各値は、オペレータが任意に設定できるものとする。
【0130】
サンプルデータ収集処理において、光量過多サンプルデータ(あるいは、光量過小サンプルデータ)が連続する個数が多い場合、あるいは、光量過多サンプルデータが占める割合が多い場合、あるいは、有効サンプルデータが取得されている割合が小さい場合、当該サンプルデータ収集処理は、信頼性が低い処理であり、そこから得られる優良値も信頼性が低いと判断できる。つまり、サンプルデータ収集処理の全体を評価することによって、当該サンプルデータ収集処理に基づいて取得される優良値が信頼できる値であるか否かを判断することができる。
【0131】
<3−3.出射光量を設定する処理の全体の流れ>
出射光量の最適値を決定する処理(図9のステップS2)においては、上述したサンプルデータ収集処理(および、当該サンプルデータ収集処理を評価する処理)が、定められた回数(例えば、2回)繰り返して行われた後に、最適値が決定される。
【0132】
最適値を決定する処理の全体の流れについて、図17を参照しながら説明する。図17は当該処理の流れを示す図である。
【0133】
制御部90は、サンプルデータ収集処理が終了すると(ステップS41)、当該サンプルデータ収集処理における優良値を取得し(ステップS42)、さらに、当該サンプルデータ収集処理の評価を行う(ステップS43)。なお、図示は省略しているが、ステップS43の処理においてハード異常が検出された場合(図16のステップS32でYES)、制御部90は、動作停止指示を発行する。この場合、その時点で行われているサンプルデータ収集処理が完了した時点で、定められた回数のサンプルデータ収集処理が行われていなくとも、出射光量の最適値を決定する処理を中止する。
【0134】
ステップS41〜ステップS43の処理が終了すると、続いて、制御部90は、定められた回数のサンプルデータ収集処理が終了したか否かを判断する(ステップS44)。
【0135】
定められた回数のサンプルデータ収集処理が終了していない場合は(ステップS44でNO)、制御部90は、ステップS42で取得された優良値を光源61の初期値に設定するとともに、刻み幅ΔLをより小さな値に再設定した上で(ステップS45)、もう一度サンプルデータ収集処理を行わせる(ステップS41)。
【0136】
したがって、例えばn回目のサンプルデータ収集処理においては、出射光量が、(n−1)回目のサンプルデータ収集処理において取得された優良値を初期値として、より小さな刻み幅ΔLで変化されていくことになる。このため、n回目のサンプルデータ収集処理において取得される優良値は、(n−1)回目のサンプルデータ収集処理における優良値よりも、理想的な出射光量の値により近いものとなっている可能性が高い。つまり、サンプルデータ収集処理を繰り返すにつれて、優良値は理想的な出射光量の値に近づいていく可能性が高い。なお、サンプルデータ収集処理を繰り返す回数は、オペレータが任意に設定できるものとする。
【0137】
定められた回数のサンプルデータ収集処理が終了すると(ステップS44でYES)、制御部90は、最後に実行したサンプルデータ収集処理における優良値を、出射光量の最適値として取得する(ステップS46)。
【0138】
続いて、制御部90は、ステップS46で取得された最適値の評価を行う(ステップS47)。具体的には、繰り返して実行された各サンプルデータ収集処理の全てが、肯定的評価を受けている場合に、ステップS46で取得された最適値に肯定的評価を与える。ここで、ステップS46で取得された最適値に否定的評価が与えられた場合、制御部90は、出射光量の最適値を決定できなかったとして、所定のエラー処理(例えば、エラー表示)を行って処理を終了する。一方、ステップS46で取得された最適値に工程的評価が与えられた場合、制御部90は、当該最適値を出力する。具体的には、例えば、表示画面に表示させる。つまり、ステップS47において肯定的評価が与えられた場合に限って、ステップS46で取得された最適値が、光源61の出射光量として採用され得ることになる。
【0139】
<4.機能ブロック>
ここで、描画装置100において実現される各機能について、図18を参照しながら整理しておく。図18は、描画装置100において実現される各機能を表すブロック図である。
【0140】
上述した説明から明らかになった通り、制御部90は、位置検出ユニット60およびステージ移動機構20を制御してサンプルデータ収集処理を実行させる。具体的には、制御部90は、ステージ移動機構20を制御して基板Wを光源61に対して相対的に移動させるとともに、光源61から基板Wの上面に対して、出射光量を変化させながら間欠的に光を照射させるとともに、その反射光の光量分布データを受光部62に取得させて、基板Wの上面内の異なる位置(サンプル取得位置P(i)(i=1,2,・・・N)のそれぞれ)で反射した反射光の光量分布データをサンプルデータとして次々と取得していく。つまり、制御部90には、データ収集部911としての機能が実現されている。
【0141】
データ収集部911は、上述したとおり、サンプルデータ収集処理において、先に取得されたサンプルデータに基づいて、次のサンプルデータを取得する際の光源61の出射光量を調整する。具体的には、先に取得されたサンプルデータが有効データである場合は、出射光量を変化させず、先に取得されたサンプルデータが光量過多データである場合は、出射光量を小さく変化させ、先に取得されたサンプルデータが光量過小データである場合は、出射光量を大きく変化させる。
【0142】
また、データ収集部911は、サンプルデータ収集処理を、複数回繰り返して実行する。この際に、先に実行されたサンプルデータ収集処理に基づいて取得された優良値を、次に実行するサンプルデータ収集処理における光源61の初期値に設定する。さらに、サンプルデータ収集処理において光源61からの出射光量を変化させる刻み幅ΔLを、先に実行されたサンプルデータ収集処理よりも小さい値とする。
【0143】
また、制御部90は、データ収集部911が取得した複数のサンプルデータのうち、受光量が許容範囲内にあるものを有効データとして抽出し、有効データを与えた最大の出射光量を出射光量の最適値として取得する。つまり、制御部90には、最適値取得部912としての機能が実現されている。
【0144】
また、制御部90は、データ収集部911がサンプルデータ収集処理を行うことによって取得した複数のサンプルデータの全部または一部から構成されるサンプルデータ群に基づいて、当該複数のサンプルデータに基づいて得られた最適値を評価する。つまり、制御部90には、評価部913としての機能が実現されている。
【0145】
評価部913は、サンプルデータ群において、無効データ連続数N1が所定数よりも多い場合、あるいは、過剰光量率N2が所定値よりも大きい場合、あるいは、正常検出率N3が所定値よりも小さい場合、に当該サンプルデータ収集処理(ひいては、当該サンプルデータ収集処理に基づいて取得された最適値)に否定的評価を与える。
【0146】
<5.効果>
上記の実施の形態によると、サンプルデータ収集処理を行って複数のサンプルデータを取得し、取得された複数のサンプルデータのうち、有効データを与えた最大の出射光量を最適値として取得する。上述したとおり、ここで最適値とされた値は、出射光量の理想的な値に近く、この値を用いれば、基板Wの上面の位置を高い精度で検出できる。つまり、この構成によると、基板Wの表面状態に対応した適切な出射光量の値を簡易に決定できる。
【0147】
また、上記の実施の形態においては、サンプルデータ収集処理の中で、先に取得されたサンプルデータの属性に応じて出射光量を変化させるので、サンプルデータとして有効データを数多く取得できる可能性が高くなる。したがって、基板Wの表面状態に対応した適切な出射光量の値を効率的に決定することができる。
【0148】
また、上記の実施の形態によると、サンプルデータ収集処理において取得された複数のサンプルデータの全部または一部から構成されるサンプルデータ群に基づいて、当該サンプルデータ収集処理(ひいは、当該サンプルデータ収集処理から取得された最適値)を評価するので、最適値が、不適当なサンプルデータ収集処理に基づいて取得されたものである場合に、それを検知することができる。したがって、信頼性の低い最適値がそのまま出射光量として設定されてしまう危険を回避することができる。
【0149】
また、上記の実施の形態によると、先に実行されたデータ収集処理において取得された優良値を光源の初期値に設定して、サンプルデータ収集処理を繰り返す。この構成によると、サンプルデータ収集処理の実行回数を重ねるにつれて、より多くの有効データを取得できる可能性が高くなる。その結果、理想的な値に近い最適値を取得することができる。また、サンプルデータ収集処理において出射光量を変化させる刻み幅を、サンプルデータ収集処理の繰り返し回数が増えるにつれて小さくするので、理想的な値により近い最適値を取得することができる。
【0150】
<6.変形例>
<6−1.オートフォーカス>
オートフォーカスを実行するにあたって、位置検出ユニット60は、次の態様で基板Wの上面の高さ位置を検出してもよい。
【0151】
ステージ10上に載置された基板Wが移動して、基板Wにおける検出すべき領域が位置検出ユニット60の下方に到達すると、制御部90は、光源471から、設定された出射光量で、一定間隔で複数回、設定された出射光量で光を出射させる。ステージ10は光源471から光が出射される間も移動を続けているので、光源471から出射された各光は、基板Wの上面内の僅かに異なる位置に入射することになるが、この位置のズレはオートフォーカスにおいて無視できるほど小さい。
【0152】
光源471から次々と出射された光は、基板Wの上面で反射して、受光部472において順に受光されることになる。つまり、受光部472では、基板Wの上面内のほぼ同一の位置でそれぞれ反射された複数の反射光の光量分布データが次々と取得されることになる。ただし、この際、制御部90は、受光部472における光の取り込み時間を段階的に変化させる(例えば、段階的に長くする)。これによって、受光部472における受光光量が段階的に変化することになる。すると、受光部472において、段階的に変化する光量分布データ群が取得されることになる。
【0153】
続いて、制御部90は、取得された複数の光量分布データのうち、最大受光量が所定の範囲にある光量分布データを1つ選択して、当該選択した光量分布データを用いて重心を算出する。
【0154】
上述したとおり、描画装置100においては、位置検出ユニット47における光源471の出射光量が、基板Wの表面状態に対して適切な値に設定されており、設定された出射光量を用いれば、位置検出ユニット47において、高い可能性で適切な光量分布データを得ることができるようになっているが、上記の変形例を適用すれば、適切な光量分布データを得る可能性をさらに高めることができる。
【0155】
<6−2.最適値のデータベース化>
上記の実施の形態においては、新たなロットに係る基板Wの処理を開始する際に、位置検出ユニット60の光源61の出射光量の最適値を決定する処理を行う構成としている。ここで、当該処理において取得された最適値を、基板Wの表面状態を示す情報(例えば、表面の材質、表面に塗布されている感光材料の種類、表面に塗布されている感光材料の厚み等)と対応付けて記憶部に蓄積していく構成としてもよい。
【0156】
この場合、新たなロットに係る基板Wの処理を開始する場合に、当該ロットに係る基板Wの表面状態が既知である場合は、当該表面状態と対応付けて記憶された最適値を用いて、出射光量を設定することができる。この場合、当該ロットに係る基板Wの処理を開始する際に、出射光量の最適値を決定する一連の処理を行う必要はない。つまり、出射光量の最適値を決定する処理は、未知の表面状態の基板Wに対する処理を開始する際にのみ実行すればよい。
【0157】
<6−3.アライメントユニット50でのオートフォーカス>
上記の実施の形態において、アライメントユニット50がアライメントマークを撮像する際に、オートフォーカスを行う構成としてもよい。
【0158】
この変形例においては、描画装置100は、上記の構成に加えて、対物レンズ52の位置を調整する駆動部を備える。駆動部は、対物レンズ52をZ軸方向に沿って直線的に移動させることによって、基板Wの上面の法線方向に沿う対物レンズ52の位置(すなわち、基板Wの上面と対物レンズ52との離間距離)を変化させる。なお、駆動部として、例えば、回転モータと、Z軸方向に平行に配置されるボールネジと、対物レンズ52の支持台に固定されるナット部とを有する直動機構を採用することができる。この駆動部と位置検出ユニット60とにより、アライメントユニット50のオートフォーカスを行う機能部(オートフォーカスユニット)が実現される。
【0159】
具体的には、制御部90は、位置検出ユニット60の光源61から、ステップS3で設定された出射光量で光を照射させる。出射された光は基板Wの上面で反射して、その反射光が受光部62にて受光される。制御部90は、受光部62が取得した反射光の光量分布データに基づいて、基板Wの上面(具体的には、反射位置)の高さ位置を検出し、取得した高さ位置情報を反射位置情報と対応付けて記憶する。その一方で、制御部90は、対物レンズ52の駆動部を制御して対物レンズ52の位置を調整してピント合わせを行う。
【0160】
<6−4.その他の変形例>
上記の実施の形態においては、出射光量の最適値を決定する処理は、位置検出ユニット60を用いて行われていたが、光学ヘッド部40が備える位置検出ユニット47を用いて行われてもよい。
【0161】
また、上記の実施の形態においては、空間光変調器441として、回折格子型の空間変調器を利用していたが、空間光変調器441の構成はこれに限らない。例えば、DMD(Digital Micromirror Device:デジタル・マイクロミラー・デバイス)を利用してもよい。
【0162】
また、上記の実施の形態においては、処理対象となる基板Wは、半導体基板であるとしたが、その他の各種の基板(例えば、プリント基板、液晶表示装置に具備されるカラーフィルタ用基板、液晶表示装置やプラズマ表示装置などのフラットパネルディスプレイ(FPD)用ガラス基板等)が処理対象とされてもよい。
【符号の説明】
【0163】
40 光学ヘッド部
47 位置検出ユニット
60 位置検出ユニット
61 光源
62 受光部
90 制御部
100 描画装置
W 基板
【技術分野】
【0001】
この発明は、対象面に対して検出用光源から光を照射し、その反射光を検出することによって対象面の位置を検出するにあたって、検出用光源の出射光量を決定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
対象面の位置(例えば、対象面の基準点に対する相対位置)を検出する方法の1つに、対象面に対して光を照射し、その反射光を検出するという手法がある。この手法について簡単に説明する。この手法においては、例えば、図19に示すように、検出用光源901から対象面900に、所定の入射角θで光(例えば、レーザ光)を入射し、その反射光を受光部902にて受光する。いま、対象面900が基準位置hにある場合には、受光部902における反射光の受光位置が基準位置cとなることがわかっており、当該基準位置cの座標値が予め記憶されている。ここで、対象面900の相対位置が、基準位置hからズレた位置h’にある場合、受光部902における反射光の受光位置は基準位置cよりもズレた位置c’に移動する。つまり、受光部902における反射光の受光位置をみれば、対象面900が基準位置hからどれだけズレているかを特定することができる。したがって、例えば、基準点に対する基準位置hの相対位置を予め記憶しておけば、基準点に対する対象面900の相対位置を特定することができる。
【0003】
この手法は各種の装置で利用されている。例えば、いわゆる「直接描画装置」(感光材料が塗布された基板に対して光を照射して、CADデータ等から基板の表面(対象面)に直接にパターン(露光パターン)を描画するタイプの露光装置)においては、対象面に光を照射してパターンを描画する際に、上記の手法で対象面の位置を検出し、検出結果に応じて光学ヘッドが備えるレンズの位置を調整する、いわゆる「オートフォーカス」が行われる。
【0004】
ところで、直接描画装置においては、対象面である基板の表面に微細なパターンを高精度に描画する必要があり、そのためには、高精度なオートフォーカスを行う必要がある。高精度なオートフォーカスを行うためには、対象面の位置を高精度に検出しなければならない。
【0005】
対象面の位置検出精度を向上させるための技術が、例えば特許文献1に記載されている。ここに開示されている技術によると、受光部において複数の反射光の受光画像を取得し、取得された複数の受光画像を積算することによって、対象面にパターンの要素が存在する場合であってもその影響を受けにくくし、常に高い精度で対象面の位置を検出可能としている。
【0006】
ところで、対象面の位置を高精度に特定するためには、反射光の受光位置の特定精度を上げなければならないところ、受光部における反射光の受光強度が強すぎても弱すぎても、受光位置の特定精度が悪くなるという事情がある。つまり、対象面の位置を高精度に特定するためには、反射光の受光強度が適正範囲内にあることが必要である。
【0007】
反射光の受光強度を適正範囲内に収めたければ、検出用光源の出射光量を対象面の反射率から逆算して予め設定しておけばよい。ところが、受光強度が適正範囲内の反射光が得られるような出射光量を特定することは実は非常に難しく、また手間がかかる。
【0008】
というのも、対象面である基板の表面の反射率は、基板の表面状態(例えば、表面の材質、表面に塗布されている感光材料の種類、表面に塗布されている感光材料の厚み等)によって変わってくるため、ある表面状態の基板において適切な出射光量だったとしても、表面状態が僅かにでも異なる基板にとっては、それが適切な出射光量とはいえない(つまり、適正な出射光量は、基板の表面状態に依存して変わってくる)からである。
【0009】
また、同じ基板でもその表面内に形成されるパターンの影響を受けて、相対的に反射率の低い(あるいは、高い)局所領域が存在するため、ある領域で反射された場合は適正範囲内の受光強度で反射光が得られたとしても、別の領域においては適正範囲内の受光強度で反射光が得られず、その領域については位置検出精度が悪くなるという事態が生じうる。つまり、適切な出射光量を特定する際には、基板全体に存在している反射率の偏りを加味した上で決定しなければならない。
【0010】
検出用光源の出射光量は、従来は、熟練したオペレータが経験に基づいて決定することが一般的であった。しかしながら、上記の通り、基板の表面状態に適切に対応した設定値を決定することは、たとえ熟練したオペレータにとっても容易なことではない。また、たとえ熟練したオペレータであっても、常に一定の基準で出射光量を決定することは難しく、その結果、位置検出の精度を高いレベルで安定させることができない。
【0011】
例えば特許文献2では、検出用光源の出射光量を段階的に変化させながら位置検出処理を行う。この構成によると、例えば、予め設定された出射光量が、基板の表面状態に厳密に対応していなくとも、受光強度が適正範囲内の反射光を得ることができる可能性が高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2008−258365号公報
【特許文献2】特開2009−244380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述したとおり、特許文献2の技術によると、受光強度が適正範囲内の反射光を得やすくなるものの、位置検出処理において検出用光源の出射光量を変化させることができる範囲には限界があるため、出射光量の初期値が基板の表面状態からみて見当はずれな値に設定されてしまった場合、そこから出射光量を変化させていっても、受光強度が適正範囲内の反射光をほとんど得ることができないことになる。つまり、特許文献2の技術を適用する場合であっても、出射光量の初期値を、基板の表面状態に適切に対応した値に設定しておくことが重要である。そして、この初期値を基板の表面状態に適切に対応した値に決定することは、上述したとおり容易なことではない。
【0014】
この発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、対象面に対して検出用光源から光を照射し、その反射光を検出することによって対象面の位置を検出するにあたって、検出用光源の適切な出射光量の値を簡易に決定できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1に記載の発明は、対象面に対して検出用光源から光を照射し、その反射光を検出することによって前記対象面の位置を検出するにあたって、前記検出用光源の出射光量を決定する光量決定装置であって、前記対象面に向けて光を出射する光源と、前記光源から出射された光の前記対象面での反射光を受光して、前記反射光の光量分布データを取得する受光部と、前記光源と前記対象面とを相対的に移動させる搬送部と、前記光源から、前記光源に対して相対的に移動する前記対象面に対して、出射光量を変化させながら間欠的に光を照射させるとともに、その反射光の光量分布データを前記受光部に取得させて、前記対象面内の異なる位置で反射した反射光の光量分布データをサンプルデータとして次々と取得していくデータ収集部と、前記データ収集部が取得した複数のサンプルデータのうち、受光量が許容範囲内にあるものを有効データとして抽出し、前記有効データを与えた最大の前記出射光量を前記検出用光源の出射光量の最適値として取得する最適値取得部と、を備える。
【0016】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の光量決定装置であって、前記データ収集部が、先に取得されたサンプルデータが前記有効データである場合は、前記光源の出射光量を変化させず、前記先に取得されたサンプルデータが、受光量が前記許容範囲よりも大きい光量過多データである場合は、前記光源の出射光量を小さく変化させ、前記先に取得されたサンプルデータが、受光量が前記許容範囲よりも小さい光量過小データである場合は、前記光源の出射光量を大きく変化させる。
【0017】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の光量決定装置であって、前記サンプルデータが、前記対象面において、定められた長さ以上に相当する領域から有効な検出光量を得ている光量分布データである場合に、当該サンプルデータを前記光量過多データと判断する。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項2または3に記載の光量決定装置であって、前記サンプルデータが、重心として0を与える光量分布データである場合に、当該サンプルデータを前記光量過小データと判断する。
【0019】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれかに記載の光量決定装置であって、前記データ収集部が取得した前記複数のサンプルデータの全部または一部から構成されるサンプルデータ群に基づいて、当該複数のサンプルデータに基づいて得られた前記最適値を評価する評価部、をさらに備える。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の光量決定装置であって、前記評価部が、前記サンプルデータ群において、前記有効データでないサンプルデータが連続して取得された個数が所定数よりも大きい場合に否定的評価を与える。
【0021】
請求項7に記載の発明は、請求項5または6に記載の光量決定装置であって、前記評価部が、前記サンプルデータ群の全体に対して、受光量が前記許容範囲よりも大きい光量過多データとされるサンプルデータが占める割合が、所定値よりも大きい場合に、否定的評価を与える。
【0022】
請求項8に記載の発明は、請求項5から7のいずれかに記載の光量決定装置であって、前記評価部が、前記サンプルデータ群の全体に対して、前記有効データが占める割合が、所定値よりも小さい場合に、否定的評価を与える。
【0023】
請求項9に記載の発明は、請求項1から8のいずれかに記載の光量決定装置であって、前記データ収集部が、前記複数のサンプルデータを取得するデータ収集処理を、複数回繰り返して実行し、先に実行された前記データ収集処理で取得された前記複数のサンプルデータのうち、前記有効データを与えた最大の前記出射光量を、次に実行する前記データ収集処理における前記光源の初期値に設定する。
【0024】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の光量決定装置であって、前記データ収集部が、前記データ収集処理において前記出射光量を変化させる刻み幅を、先に実行された前記データ収集処理における前記刻み幅よりも小さい値とする。
【0025】
請求項11に記載の発明は、対象面に対して検出用光源から光を照射し、その反射光を検出することによって前記対象面の位置を検出する位置検出装置であって、前記対象面に向けて光を出射する光源と、前記光源から出射された光の前記対象面での反射光を受光して、前記反射光の光量分布データを取得する受光部と、前記光源と前記対象面とを相対的に移動させる搬送部と、前記光源から、前記光源に対して相対的に移動する前記対象面に対して、出射光量を変化させながら間欠的に光を照射させるとともに、その反射光の光量分布データを前記受光部に取得させて、前記対象面内の異なる位置で反射した反射光の光量分布データをサンプルデータとして次々と取得していくデータ収集部と、前記データ収集部が取得した複数のサンプルデータのうち、受光量が許容範囲内にあるものを有効データとして抽出し、前記有効データを与えた最大の前記出射光量を前記検出用光源の出射光量の最適値として取得する最適値取得部と、を備え、前記対象面の位置を検出するにあたって、前記検出用光源から、前記最適値取得部が取得した最適値により規定される光量で光を出射する。
【0026】
請求項12に記載の発明は、光学ヘッドから、前記光学ヘッドに対して相対的に移動する対象面に対して光を照射して、前記対象面にパターンを描画する描画装置であって、前記対象面に対して検出用光源から光を照射し、その反射光を検出することによって前記対象面の位置を検出する位置検出部と、前記位置検出部が検出した前記対象面の位置に基づいて、前記光学ヘッドの光学系の前記対象面に対する位置を調整する位置調整部と、を備え、前記位置検出部が、前記対象面に向けて光を出射する光源と、前記光源から出射された光の前記対象面での反射光を受光して、前記反射光の光量分布データを取得する受光部と、前記光源と前記対象面とを相対的に移動させる搬送部と、前記光源から、前記光源に対して相対的に移動する前記対象面に対して、出射光量を変化させながら間欠的に光を照射させるとともに、その反射光の光量分布データを前記受光部に取得させて、前記対象面内の異なる位置で反射した反射光の光量分布データをサンプルデータとして次々と取得していくデータ収集部と、前記データ収集部が取得した複数のサンプルデータのうち、受光量が許容範囲内にあるものを有効データとして抽出し、前記有効データを与えた最大の前記出射光量を前記検出用光源の出射光量の最適値として取得する最適値取得部と、を備え、前記対象面の位置を検出するにあたって、前記検出用光源から、前記最適値取得部が取得した最適値により規定される光量で光を出射する。
【0027】
請求項13に記載の発明は、対象面に対して検出用光源から光を照射し、その反射光を検出することによって前記対象面の位置を検出するにあたって、前記検出用光源の出射光量を決定する光量決定方法であって、a)光源から、前記光源に対して相対的に移動する前記対象面に対して、出射光量を変化させながら間欠的に光を照射させるとともに、その反射光の光量分布データを受光部に取得させて、前記対象面内の異なる位置で反射した反射光の光量分布データをサンプルデータとして次々と取得していく工程と、b)前記a)工程において取得された複数のサンプルデータのうち、受光量が許容範囲内にあるものを有効データとして抽出し、前記有効データを与えた最大の前記出射光量を前記検出用光源の出射光量の最適値として取得する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0028】
請求項1〜13に記載の発明によると、光源から、出射光量を変化させながら対象面の異なる位置に光を照射させて、複数のサンプルデータを取得する。そして、取得された複数のサンプルデータのうち、有効データを与えた最大の出射光量を検出用光源の出射光量の最適値として取得する。ここで最適値とされた値を用いて対象面の位置の検出を行えば、許容範囲内の受光量の反射光が得られる可能性が高いので、対象面の位置を高い精度で検出できる。特に、受光量が許容範囲以下となる反射光は、対象面の位置の検出精度を大きく悪化させる原因となるところ、このような反射光が得られる可能性が低くなる。つまり、この構成によると、対象面の表面状態に対応した適切な(対象面の位置を高い精度で検出可能な)出射光量の値を簡易に決定できる。
【0029】
特に、請求項2に記載の発明によると、複数のサンプルデータを取得する一連の処理の中で、先に取得されたサンプルデータが光量過多データである場合は出射光量を小さく変化させ、先に取得されたサンプルデータが光量過小データである場合は出射光量を大きく変化させるので、サンプルデータとして有効データを数多く取得できる可能性が高くなる。したがって、対象面の状態に対応した適切な出射光量の値を効率的に決定することができる。
【0030】
特に、請求項5に記載の発明によると、データ収集部が取得した複数のサンプルデータの全部または一部から構成されるサンプルデータ群に基づいて、当該複数のサンプルデータに基づいて得られた最適値を評価するので、最適値が、不適当なデータ収集処理に基づいて取得されたものである場合に、それを検知することができる。したがって、信頼性の低い最適値がそのまま出射光量として設定されてしまう危険を回避することができる。
【0031】
特に、請求項9に記載の発明によると、先に実行されたデータ収集処理において取得された複数の光量分布データのうち、有効データを与えた最大の出射光量を光源の初期値に設定して、データ収集処理を繰り返す。この構成によると、データ収集処理の実行回数を重ねるにつれて、より多くの有効データを取得できる可能性が高くなる。その結果、対象面の状態に対応した最適値を高精度に決定することができる。
【0032】
特に、請求項10に記載の発明によると、データ収集処理において出射光量を変化させる刻み幅を、データ収集処理の繰り返し回数が増えるにつれて小さくするので、対象面の状態に適切に対応した最適値をさらに高精度に特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】描画装置の側面図である。
【図2】描画装置の上面図である。
【図3】描画ユニットの構成例を模式的に示す図である。
【図4】光学ヘッド部が備える位置検出ユニットの構成例を模式的に示す図である。
【図5】光量分布データの様子を模式的に示す図である。
【図6】照明ユニットの構成例を示す図である。
【図7】アライメントユニットの構成例を示す図である。
【図8】位置検出ユニットの構成例を模式的に示す図である。
【図9】描画装置において実行される処理の流れを示す図である。
【図10】サンプルデータ収集処理の流れを示す図である。
【図11】サンプルデータ収集処理における基板と位置検出ユニットとの相対位置関係を模式的に示す図である。
【図12】サンプルデータの取得処理の流れを示す図である。
【図13】受光部が取得する一群の光量分布データを模式的に示す図である。
【図14】光量分布データを整理する処理の流れを示す図である。
【図15】サンプルデータテーブルの構成例を模式的に示す図である。
【図16】サンプルデータ収集処理の評価処理の流れを示す図である。
【図17】最適値を決定する処理の全体の流れを示す図である。
【図18】描画装置において実現される各機能を表すブロック図である。
【図19】対象面の位置を検出する手法の原理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において参照される各図には、各部材の位置関係や動作方向を明確化するために、共通のXYZ直交座標系が付されている。
【0035】
<1.描画装置100の構成>
<1−1.全体構成>
図1および図2は、本発明の一実施形態に係る描画装置100の構成を示した側面図および上面図である。描画装置100は、レジスト等の感光材料の層が形成された半導体基板(以下、単に「基板」という)Wの上面に光を照射して、所定のパターンを描画する装置(所謂「直接描画装置」)である。
【0036】
描画装置100は、本体フレーム101にカバーが取り付けられることによって形成される本体内部と、本体フレーム101の外側である本体外部とに、その備える各種の構成要素を配置した構成となっている。
【0037】
描画装置100の本体内部には、処理領域102と受渡領域103とが形成されている。処理領域102には、主として、基板Wを保持するステージ10、ステージ10を移動させるステージ移動機構20、ステージ10の位置を計測するステージ位置計測部30、基板Wの上面に光を照射する光学ヘッド部40、基板Wの上面に形成されたアライメントマークを撮像するアライメントユニット50、および、基板Wの上面の基準位置に対する相対位置(Z方向に沿う方向の位置であり、以下「高さ位置」という)を検出する位置検出ユニット60が配置される。一方、受渡領域103には、処理領域に対する基板Wの搬出入を行う搬送装置70が配置される。
【0038】
また、描画装置100の本体外部には、アライメントユニット50に照明光を供給する照明ユニット80が配置される。また、本体外部には、描画装置100が備える各部と電気的に接続されて、これら各部の動作を制御する制御部90が配置される。
【0039】
なお、描画装置100の本体外部であって、受渡領域103に隣接する位置には、カセットCを載置するためのカセット載置部104が配置される。受渡領域103に配置された搬送装置70は、カセット載置部104に載置されたカセットCに収容された未処理の基板Wを取り出して処理領域102に搬入するとともに、処理領域102から処理済みの基板Wを搬出してカセットCに収容する。カセット載置部104に対するカセットCの受け渡しは、図示しない外部搬送装置によって行われる。
【0040】
<1−2.各部の構成>
<ステージ10>
ステージ10は、平板状の外形を有し、その上面に基板Wを水平姿勢に載置して保持する保持部である。ステージ10の上面には複数の吸引孔(図示省略)が形成されており、この吸引孔に負圧(吸引圧)を形成することによって、ステージ10上に載置された基板Wをステージ10の上面に固定保持することができるようになっている。
【0041】
<ステージ移動機構20>
ステージ移動機構20は、ステージ10を主走査方向(Y軸方向)、副走査方向(X軸方向)、および回転方向(Z軸周りの回転方向(θ軸方向))に移動させる機構である。ステージ移動機構20は、ステージ10を回転させる回転機構21と、ステージ10を回転可能に支持する支持プレート22と、支持プレート22を副走査方向に移動させる副走査機構23と、副走査機構23を介して支持プレート22を支持するベースプレート24と、ベースプレート24を主走査方向に移動させる主走査機構25とを備える。回転機構21、副走査機構23、および、主走査機構25は、制御部90と電気的に接続されており、制御部90からの指示に応じてステージ10を移動させる。
【0042】
回転機構21は、支持プレート22上において、基板Wの上面に垂直な回転軸を中心としてステージ10を回転する。
【0043】
副走査機構23は、支持プレート22の下面に取り付けられた移動子とベースプレート24の上面に敷設された固定子とにより構成されたリニアモータ23aを有している。また、支持プレート22とベースプレート24との間には、副走査方向にのびる一対のガイド部23bが設けられている。このため、リニアモータ23aを動作させると、ベースプレート24上のガイド部23bに沿って支持プレート22が副走査方向に移動する。
【0044】
主走査機構25は、ベースプレート24の下面に取り付けられた移動子と描画装置100の基台106上に敷設された固定子とにより構成されたリニアモータ25aを有している。また、ベースプレート24と基台106との間には、主走査方向にのびる一対のガイド部25bが設けられている。このため、リニアモータ25aを動作させると、基台106上のガイド部25bに沿ってベースプレート24が主走査方向に移動する。
【0045】
<ステージ位置計測部30>
ステージ位置計測部30は、ステージ10の位置を計測する機構である。ステージ位置計測部30は、制御部90と電気的に接続されており、制御部90からの指示に応じてステージ10の位置を計測する。
【0046】
ステージ位置計測部30は、例えば、ステージ10に向けてレーザ光を照射し、その反射光と出射光との干渉を利用して、ステージ10の位置を計測する機構により構成することができる。この場合、ステージ位置計測部30は、例えば、レーザ光を出射する出射部31と、ビームスプリッタ32と、ビームベンダ33と、第1干渉計34と、第2干渉計35とを備える。出射部31、および各干渉計34,35は、制御部90と電気的に接続されており、制御部90からの指示に応じてステージ10の位置を計測する。
【0047】
出射部31から出射されたレーザ光は、まずビームスプリッタ32に入射し、ビームベンダ33に向かう第1分岐光と、第2干渉計35に向かう第2分岐光とに分岐される。第1分岐光は、ビームベンダ33により反射され、第1干渉計34に入射するとともに、第1の干渉計34からステージ10の第1の部位に照射される。そして、第1の部位において反射した第1分岐光が、再び第1干渉計34へ入射する。第1干渉計34は、ステージ10の第1の部位に向かう第1分岐光と第1の部位で反射された第1分岐光との干渉に基づいて第1の部位の位置に対応した位置パラメータを計測する。
【0048】
一方、第2分岐光は、第2干渉計35に入射するとともに、第2干渉計35からステージ10の−Y側の側面内における第2の部位(ただし、第2の部位は、第1の部位とは異なる位置である)に照射される。そして、第2の部位において反射した第2分岐光が、再び第2干渉計35へ入射する。第2干渉計35は、ステージ10の第2の部位に向かう第2分岐光とステージ10の第2の部位で反射された第2分岐光との干渉に基づいて第2の部位の位置に対応した位置パラメータを計測する。
【0049】
制御部90は、第1干渉計34および第2干渉計35のそれぞれから、ステージ10の第1の部位の位置に対応した位置パラメータ、および、ステージ10の第2の部位の位置に対応した位置パラメータを取得する。そして、取得した各位置パラメータに基づいて、ステージ10の位置を算出する。
【0050】
<光学ヘッド部40>
光学ヘッド部40は、ステージ10上に保持された基板Wの上面に光を照射する機構である。光学ヘッド部40は、ステージ10およびステージ移動機構20を跨ぐようにして基台106上に架設されたフレーム107に設けられる。
【0051】
光学ヘッド部40は、レーザ光を出射するレーザ発振器41と、レーザ発振器41を駆動するレーザ駆動部42と、レーザ発振器41から出射された光を、強度分布が均一な線状の光(光束断面が線状の光)とする照明光学系43とを備える。これらの各部41,42,43は、フレーム107の天板を形成するボックスの内部に配置される。また、これらの各部41,42,43は、制御部90と電気的に接続されており、制御部90からの指示に応じて動作する。
【0052】
光学ヘッド部40は、さらに、フレーム107の+Y側に取り付けられた付設ボックスの内部に収容される描画ユニット401を備える。描画ユニット401は、レーザ発振器41から出射され、照明光学系43を介して入射した光にパターンデータに応じた変調を形成して、基板Wの上面に照射する。描画ユニット401の構成について、図3を参照しながら説明する。図3は、描画ユニット401の構成例を模式的に示す図である。
【0053】
描画ユニット401は、空間変調ユニット44と、投影光学系45とを備える。描画ユニット401が備える各部44,45は、制御部90と電気的に接続されており、制御部90からの指示に応じて動作する。
【0054】
空間変調ユニット44は、複数の空間光変調素子を一列に配列したものである。空間光変調素子は、電気的な制御により光を変調させる素子であり、例えば、回折格子型の空間光変調素子であるGLV(Grating Light Valve:グレーチング・ライト・バルブ)(シリコン・ライト・マシーンズ(サンノゼ、カリフォルニア)の登録商標)を用いて構成される。回折格子型の空間光変調素子は、印可される電圧に応じてその表面状態を変化させる。具体的には、電圧オン状態では、0次光を出射する表面状態となり、電圧オフ状態では、1次回折光(±1次回折光)を出射する表面状態となる。以下に説明するように、投影光学系45は、1次回折光を遮断し、0次光のみを通過させる。つまり、0次光のみが基板Wの上面まで到達することになる。
【0055】
照明光学系43から出射された光は、ミラー431に入射し、定められた角度で空間変調ユニット44に入射する。一方で、制御部90は、パターンデータ(基板Wに描画すべきパターンを記述したCADデータ)に基づいて、ドライバ回路を介して、各空間光変調素子に対して電圧を印加する。これによって、空間変調ユニット44に入射した光に、描画すべきパターンに応じた変調が形成されることになる。
【0056】
投影光学系45は、空間変調ユニット44において空間変調された光を、基板Wの表面に導いて、基板Wの表面に結像させる機能部であり、例えば、空間変調ユニット44側から順に、ゴースト光を遮断する遮光板451と、ズーム部を構成する2個のレンズ452,453と、高次回折光を遮断する絞り板454と、フォーカス部を構成するフォーカシングレンズ455とが配置される。
【0057】
レンズ452,453を通過した光は、開口を有する絞り板454へと導かれる。ここで、一部の光(0次光)は絞り板454の開口を通過してフォーカシングレンズ455へ導かれ、残りの光(1次回折光)は絞り板464により遮断される。フォーカシングレンズ465を通過した光(0次光)は、定められた倍率で基板Wの表面に導かれる。
【0058】
なお、投影光学系45は、必ずしも、遮光板451、レンズ452,453、絞り板454、および、フォーカシングレンズ455により構成される必要はなく、他の光学素子が追加される等してもよい。
【0059】
再び図1、図2を参照する。光学ヘッド部40は、さらに、投影光学系45が備えるフォーカシングレンズ455の位置を調整する駆動部46と、基板Wの上面(具体的には、基板Wの上面内の各位置)の高さ位置を検出する位置検出ユニット47とを備える。
【0060】
駆動部46は、投影光学系45が備えるフォーカシングレンズ455をZ軸方向に沿って直線的に移動させることによって、基板Wの上面内の各位置に対するフォーカシングレンズ455の位置(すなわち、基板Wの上面内の各位置とフォーカシングレンズ455との離間距離)を変化させる。なお、駆動部46として、例えば、回転モータと、Z軸方向に平行に配置されるボールネジと、フォーカシングレンズ455の支持台(あるいは、描画ユニット401の筐体)に固定されるナット部とを有する直動機構を採用することができる。
【0061】
位置検出ユニット47は、光学ヘッド部40と対応付けられており、対応する光学ヘッド部40の付近に配置されて、基板Wの上面内の各位置(具体的には、対応する光学ヘッド部40が描画を行う予定の位置(描画予定位置))の高さ位置を検出する。位置検出ユニット47の構成は後に詳細に説明する。
【0062】
駆動部46と位置検出ユニット47とは、オートフォーカスを行う機能部(オートフォーカスユニット)構成する。すなわち、制御部90は、位置検出ユニット47に描画予定位置の高さ位置を検出させ、取得された位置情報(以下「高さ位置情報」という)に基づいて駆動部46を制御して、光学ヘッド部40のフォーカシングレンズ455が適切な位置(光学ヘッド部40から照射される光を描画予定位置に結像させる位置)に置かれるように調整する。
【0063】
ここで、位置検出ユニット47の構成について、図4を参照しながら説明する。図4は、位置検出ユニット47の構成例を模式的に示す図である。
【0064】
位置検出ユニット47は、主として、光源471と受光部472とを備える。光源471は、例えばレーザ光を出射するレーザ光源により構成される。光源471は制御部90と接続されており、制御部90からの指示に応じて動作する。制御部90は、光源471からの光の出射タイミング、光の出射時間、および、出射光量を制御する。
【0065】
光源471から出射された光は、照明光学系4711、および、ミラー4712を介して基板Wの上面まで導かれる。照明光学系4711、および、ミラー4712は、光源471から出射された光を基板Wの上面の法線方向に対して所定の角度だけ傾斜した軸に沿って基板Wの上面に入射させる。基板Wの上面に入射し、そこで反射されたた光は、ミラー4713、リレー光学系4714、および、ミラー4715を介して受光部472まで導かれる。
【0066】
受光部472は、ラインセンサ(例えば、CMOSラインセンサ、あるいは、CCDラインセンサ)により構成され、直線状に配列された複数の画素を備える。各画素が、光源471から出射され、基板Wの上面で反射された反射光を受光し、これによって、当該反射光の受光強度の分布データ(以下「光量分布データ」という)が取得される。光量分布データは、図5に模式的に示すように、反射光を受光した各画素の位置情報(画素位置)と、各画素が受光した光の光量情報(具体的には、例えば蓄積電圧)とを含むデータである。
【0067】
制御部90は、受光部472が取得した光量分布データに基づいて、基板Wの上面(具体的には、反射位置)の高さ位置を算出する。ここで、制御部90が、光量分布データに基づいて高さ位置を算出する処理について説明する。
【0068】
制御部90は、所定のタイミングで受光部472から信号を出力させ、出力された信号をA/D変換して光量分布データとして取得する。図5に例示するように、光量分布データには、受光量が急激に増加し減少するピーク部分が存在する。このピーク部分は、例えば、ガウス曲線のような形状となる。このピーク部分の位置(具体的には、ピーク部分に対応する画素の位置)を特定することによって、反射光の受光位置を特定することができる。すなわち、基板Wの上面に反りや歪みが生じている場合は、このピーク位置が基準位置からズレた値となるので、ピーク位置の基準位置(具体的には、基準とされる画素の位置)からのズレ幅を算出することによって、基板Wの上面(具体的には、反射位置)の高さ位置を特定することができる。
【0069】
適切な受光強度の光量分布データが得られている場合、ピーク位置は、重心によって与えられる。そこで、制御部90は、光量分布データを取得すると、当該光量分布データの重心を算出し、当該重心に対応する画素の位置を受光位置として取得する。さらに制御部90は、受光位置情報に基づいて、高さ位置情報を算出する。そして、取得した高さ位置情報を、反射位置を特定するための情報(以下「反射位置情報」という)と対応付けて記憶する。
【0070】
なお、上記の手法によると、光量分布データが適切な受光強度の場合、高精度に受光位置を検出できる(ひいては、高精度に高さ位置を検出できる)が、受光強度が強すぎる(あるいは、弱すぎる)場合、重心とピーク位置との誤差が大きくなり、受光位置の検出精度が悪化する(ひいては、高さ位置の検出精度が悪化する)。つまり、高さ位置を高精度に検出するためには、受光部472において適正範囲内の受光強度の光量分布データが得られていることが必要となる。受光部472において適正範囲内の受光強度の光量分布データを得るためには、光源471の出射光量が基板Wの表面状態に対応して適切に設定されていることが必要となる。この点については、後に詳細に説明する。
【0071】
<照明ユニット80>
照明ユニット80は、アライメントユニット50とファイバー801を介して接続され、アライメントユニット50に対して照明用の光を供給する。照明ユニット80の構成について、図6を参照しながら説明する。図6は、照明ユニット80の構成例を示す図である。
【0072】
照明ユニット80は、回転フィルタ82を介してファイバー801と接続されるハロゲンランプ81、ハロゲンランプ81から出射されファイバー801に入射する光Lの光路上に配置された回転フィルタ82、および、回転フィルタ82を回転させる回転モータ83を備える。ハロゲンランプ81、および、回転モータ83は、制御部90と電気的に接続されており、制御部90からの指示に応じて動作する。
【0073】
回転フィルタ82は、それぞれ異なる種類のフィルタがはめ込まれた複数の窓と、フィルタがはめ込まれていない1個の窓とを備える。各窓は、回転フィルタ82の回転軸を中心として放射状に配置されている。窓にはめ込まれている各種のフィルタは、それぞれ異なる領域の波長を透過するフィルタである。例えば、ある窓には可視光を透過するフィルタがはめ込まれており、別の窓には赤外光を透過するフィルタがはめ込まれている。
【0074】
制御部90は、アライメントユニット50に供給すべき光の波長に応じて回転モータ83を制御して回転フィルタ82を回転させ、光路上(ハロゲンランプ81からファイバー801に入射する光の光路上)に配置する窓を変更する。例えば、赤外光を供給すべき場合、制御部90は、回転モータ83を制御して、光路上に赤外光を透過するフィルタがはめ込まれた窓が配置されるように回転フィルタ82回転させる。すると、ハロゲンランプ81から出射された光のうち、赤外光のみがフィルタを透過し、ファイバー801には赤外光のみが入射することになる。すなわち、アライメントユニット50には赤外光が供給されることになる。
【0075】
<アライメントユニット50>
アライメントユニット50は、基板Wの上面に形成されたアライメントマークを撮像する。アライメントユニット50の構成について、図7を参照しながら説明する。図7は、アライメントユニット50の構成例を示す図である。
【0076】
アライメントユニット50は、鏡筒51と、対物レンズ52と、例えばエリアイメージセンサ(二次元イメージセンサ)により構成されるCCDイメージセンサセンサ53とを備える。
【0077】
照明ユニット80から延びるファイバー801により導かれる光は、鏡筒51を介して基板Wの上面に導かれ、その反射光は、対物レンズ52を介してCCDイメージセンサ53で受光される。これによって、基板Wの上面の撮像データが取得されることになる。CCDイメージセンサ53は、制御部90と電気的に接続されており、制御部90からの指示に応じて撮像データを取得し、取得した撮像データを制御部90に送信する。
【0078】
<位置検出ユニット60>
位置検出ユニット60は、基板Wの上面(対象面)の基準位置に対する高さ位置を検出する。位置検出ユニット60の構成について、図8を参照しながら説明する。図8は、位置検出ユニット60の構成例を示す図である。
【0079】
位置検出ユニット60の構成は、光学ヘッド部40が備える位置検出ユニット47の構成と同じである。すなわち、位置検出ユニット60は、光源61と受光部62とを備える。さらに、位置検出ユニット60は、照明光学系601、ミラー602,603、リレー光学系604、および、ミラー605を備える。各部の構成は、位置検出ユニット47と同様であるので、その詳細な説明を省略する。
【0080】
<制御部90>
制御部90は、各種の演算処理を実行しつつ、描画装置100が備える各部の動作を制御する。制御部90は、例えば、各種演算処理を行うCPU、ブートプログラム等を記憶するROM、演算処理の作業領域となるRAM、プログラムや各種のデータファイルなどを記憶する記憶部(例えば、ハードディスク)、各種表示を行うディスプレイ、キーボード及びマウスなどで構成される入力部、LAN等を介したデータ通信機能を有するデータ通信部、等を備えるコンピュータにより構成される。コンピュータにインストールされたプログラムにしたがってコンピュータが動作することにより、当該コンピュータが描画装置100の制御部90として機能する。制御部90において実現される各機能部は、コンピュータによって所定のプログラムが実行されることにより実現されてもよいし、専用のハードウエアによって実現されてもよい。
【0081】
制御部90が備える記憶部には、基板Wに描画すべきパターンを記述したデータ(パターンデータ)が格納される。パターンデータは、例えば、CADを用いて生成されたCADデータである。制御部90は、基板Wに対する一連の処理に先だってパターンデータを取得して記憶部に格納している。なお、パターンデータの取得は、例えば、ネットワーク等を介して接続された外部端末装置から受信することにより行われてもよいし、記録媒体から読み取ることにより行われてもよい。
【0082】
<2.処理の流れ>
描画装置100において実行される処理の流れについて、図9を参照しながら説明する。図9は、当該処理の流れを示す図である。
【0083】
描画装置100における処理は、ロット単位で行われる。搬送装置70が、処理対象となるロットの1番目の基板Wを搬入してステージ10に載置すると(ステップS1)、まず、光学ヘッド部40が備える位置検出ユニット47の光源471(検出用光源)の出射光量の最適値を決定する処理が行われ(ステップS2)、続いて、光源471の出射光量を設定する処理が行われる(ステップS3)。ステップS3の処理においては、制御部90が、ステップS2で決定された最適値をそのまま光源471の出射光量に設定してもよいし、オペレータが操作部を介して入力した値を制御部90が受け付け、制御部90が当該受け付けた値を光源471の出射光量に設定してもよい。ただし、後者の場合、ステップS2において決定された最適値を表示画面に表示させ、オペレータが表示された最適値を参考にして光源471の出射光量を決定できるようにする。
【0084】
続いて、基板Wに対する描画処理が行われる(ステップS4)。この処理においては、まず、アライメントマークの撮像が行われる(ステップS41)。具体的には、ステージ移動機構20が、制御部90からの指示に応じてステージ10を移動させることによって基板Wをアライメントユニット50に対して相対的に移動させて、アライメントユニット50の下方に、基板Wにおけるアライメントマークの形成位置がおかれるように基板Wを移動させる。基板Wが所定位置まで移動させられると、アライメントユニット50は、制御部90からの指示に応じて、基板Wの上面を撮像する。これによって、アライメントマークの撮像データが得られることになる。
【0085】
続いて、ステージ10の位置調整が行われる(ステップS42)。この処理においては、制御部90は、まず、ステップS41で得られた撮像データに基づいて、ステージ10に対する基板Wの位置および向きを特定する。ステージ10に対する基板Wの位置および向きが特定されると、制御部90は、ステージ位置計測部30およびステージ移動機構20を制御して、ステージ10に載置された基板Wが光学ヘッド部40に対して定められた位置および向きとなるように、ステージ10の位置を調整する。
【0086】
ステップS42の処理が完了すると、続いて、基板Wに対するパターンの描画が実行される(ステップS43)。この処理においては、まず、ステージ移動機構20が、制御部90からの指示に応じて、ステージ10を主走査方向(Y軸方向)に沿って移動させることによって、基板Wを光学ヘッド部40に対して主走査方向に沿って相対的に移動させる(主走査)。基板Wが主走査方向に沿って相対的に移動させられる間、光学ヘッド部40は、制御部90の制御下で、ラスタライズされたパターンデータに応じた変調が形成された光を基板Wに向けて照射する。基板Wの+Y側の端部が光学ヘッド部40の下方を通過すると、1回の主走査が終了する。1回の主走査が終了すると、基板Wの上面に1ストライプ分の描画が行われることになる。
【0087】
1回の主走査が終了すると、ステージ移動機構20が、ステージ10を副走査方向(X軸方向)に沿って、1ストライプの幅に相当する距離だけ移動させることによって、基板Wを光学ヘッド部40に対して副査方向に沿って相対的に移動させる(副走査)。
【0088】
副走査が終了すると、再び主走査が行われる。これによって、先の主走査で描画された1ストライプ分の描画領域の隣に、さらに1ストライプ分の描画が行われることになる。このように、主走査と副走査とが繰り返して行われることによって、基板Wの上面の全域にパターンが描画されることになる。
【0089】
なお、光学ヘッド部40が基板Wに対してパターンを描画している間、制御部90は、位置検出ユニット47および駆動部46にオートフォーカスを行わせる。
【0090】
具体的には、制御部90は、位置検出ユニット47の光源471から、ステップS3で設定された出射光量で光を照射させる。出射された光は基板Wの上面で反射して、その反射光が受光部472にて受光される。制御部90は、受光部472が取得した反射光の光量分布データに基づいて、基板Wの上面(具体的には、反射位置)の高さ位置を検出し、取得した高さ位置情報を反射位置情報と対応付けて記憶する。その一方で、制御部90は、駆動部46を制御してフォーカシングレンズ455の位置を調整する。具体的には、光学ヘッド部40から光が照射されようとしている基板Wの上面内の位置と対応付けて記憶されている高さ位置情報を読み出し、当該位置に光学ヘッド部40から出射される光の焦点が合うように、フォーカシングレンズ455を移動させる。
【0091】
描画処理が終了すると、搬送装置70が処理済みの基板Wを搬出する(ステップS5)。搬送装置70が、続いて、当該ロットの2番目の基板Wを搬入してステージ10に載置すると(ステップS6でYES)、当該基板Wに対する描画処理が行われる(ステップS4)。
【0092】
以降は、ステップS6、ステップS4、および、ステップS5の処理が繰り返され、ロットを構成する複数の基板Wのそれぞれに対する描画処理が次々と行われていく。ロットを構成する全ての基板Wに対する描画処理が完了すると(ステップS6でNO)、一連の処理が終了する。
【0093】
<3.出射光量の設定処理>
位置検出ユニット47の光源471の出射光量の最適値を決定する処理(図9のステップS2)について詳細に説明する。
【0094】
<3−1.サンプルデータ収集処理>
最適値を決定する処理においては、「サンプルデータ収集処理」が行われる。「サンプルデータ収集処理」は、基板Wの上面内に設定された複数のサンプル取得位置P(i)(i=1,2,・・・N)(図11参照)のそれぞれで、サンプルデータを取得する処理であり、制御部90が、位置検出ユニット60およびステージ移動機構20を制御することにより実行される。
【0095】
<a.全体の流れ>
サンプルデータ収集処理の全体の流れについて、図10を参照しながら説明する。図10は当該処理の流れを示す図である。
【0096】
サンプルデータ収集処理においては、ステージ移動機構20が、制御部90からの指示に応じて、ステージ10を移動させることによって、基板Wを位置検出ユニット60に対して相対的に移動させる。具体的には、図11に示すように、まず、ステージ10を主走査方向(Y軸方向)に沿って移動させることによって、基板Wを位置検出ユニット60に対して主走査方向に沿って相対的に移動させる(主走査)(矢印AR11)。続いて、ステージ移動機構20が、ステージ10を副走査方向(X軸方向)に沿って、所定距離だけ移動させることによって、基板Wを位置検出ユニット60に対して副査方向に沿って相対的に移動させる(副走査)(矢印AR12)。副走査が終了すると、再び主走査が行われる(矢印AR13)。このように、主走査と副走査とが繰り返して行われることによって、基板Wの上面の全域を位置検出ユニット60が通過することになる。
【0097】
制御部90は、ステージ位置計測部30からの計測値を取得することによって、位置検出ユニット60と基板Wとの相対的な位置関係を常に検出している。一方で、制御部90は、基板W上の複数点の座標を「サンプル取得位置P(i)(i=1,2,・・・,N(ただし、Nは2以上の整数))」として記憶しており、位置検出ユニット60の下方に、基板Wのサンプル取得位置P(i)が到達すると(ステップS21でYES)、位置検出ユニット60に対して、サンプルデータの取得指示を与える。なお、サンプル取得位置P(i)(i=1,2,・・・,N)は、基板Wの上面の全域に満遍なく分布していることが好ましく、例えば、図11に例示するように、基板W上に規定された格子状のラインの格子点に相当する位置をサンプル取得位置P(i)とすることが好ましい。
【0098】
位置検出ユニット60は、制御部90からサンプルデータの取得指示を受けると、当該指示に応じてサンプルデータの取得処理を行って、サンプルデータを取得する(ステップS22)。この処理が行われることによって、サンプル取得位置P(i)で反射した反射光の光量分布データが、「有効」「光量過小」「光量過多」のいずれかの属性を付与され、反射位置情報、および、出射光量と対応付けられて、サンプルデータテーブルT(図15参照)に格納される。サンプルデータの取得処理の具体的な流れについては後に説明する。
【0099】
続いて、制御部90は、ステップS22で取得されたサンプルデータに基づいて、光源61から出射する光量(出射光量)の調整を行う(ステップS23)。具体的には、ステップS22でサンプルデータとして取得された光量分布データに付与されている属性が「有効」である場合、出射光量をそのままとする(変化させない)。一方、付与されている属性が「光量過小」である場合、出射光量を、現在の設定値よりも所定の幅(以下「刻み幅」という)ΔLだけ大きい値に変化させる。また、付与されている属性が「光量過多」である場合、出射光量を、現在の設定値よりも刻み幅ΔLだけ小さい値に変化させる。
【0100】
ステップS23の処理が終了すると、次のサンプル取得位置P(i+1)に到達するのを待って、再び、サンプルデータの取得処理を行う。次のサンプル取得位置P(i+1)においては、先のサンプル取得位置P(i)で取得されたサンプルデータに基づいて調整された出射光量で、サンプルデータの取得処理が行われることになる。
【0101】
基板Wの上面の全域の走査が完了すると(具体的には、基板Wの上面の全域を位置検出ユニット60が通過し終わると)(ステップS24でYES)、サンプルデータ収集処理が終了する。
【0102】
このように、サンプルデータ収集処理においては、光源61から、出射光量を変化させながら、基板Wの上面の異なる位置(具体的には、基板Wの上面に設定された複数のサンプル取得位置P(i)(i=1,2,・・・N)のそれぞれ)に光を照射させることによって、複数のサンプルデータが取得される。
【0103】
<b.サンプルデータの取得処理>
サンプルデータの取得処理(図10のステップS22)について、図12を参照しながら説明する。図12は当該処理の流れを示す図である。
【0104】
サンプルデータの取得指示が発行されると、制御部90は、光源61から、一定間隔で複数回(例えば、5回)、設定された出射光量で、光を出射させる(ステップS221)。ステージ10は光源61から光が出射される間も移動を続けているので、光源61から出射された各光は、基板Wの上面の僅かに異なる位置(すなわち、サンプル取得位置P(i)からそれぞれ僅かにズレた位置)に入射することになるが、この位置のズレはサンプルデータの取得処理において無視できるほど小さく、各光は、同じ位置に入射しているとみなすことができる。
【0105】
光源61から次々と出射された光は、サンプル取得位置P(i)で反射して、受光部62において順に受光される。つまり、受光部62では、サンプル取得位置P(i)でそれぞれ反射された複数の反射光の光量分布データが次々と取得されることになる(ステップS222)。ただし、この際、制御部90は、受光部62における光の取り込み時間を段階的に長くする。これによって、受光部62における受光光量が段階的に変化することになる。すると、受光部62において、図13に例示するように、段階的に変化する一群の光量分布データD10(D1,D2,・・・D5)が取得されることになる。
【0106】
制御部90は、ステップS222の処理において、次々と取得される光量分布データD1,D2,・・・D5を整理して、サンプルデータを取得する(ステップS223)。具体的には、ステップS222で取得された複数の光量分布データのうち、一の光量分布データを選択してサンプルデータとして記憶する。
【0107】
<c.光量分布データの整理>
ステップS223の処理について、図14を参照しながら詳細に説明する。図14は当該処理の流れを示す図である。
【0108】
まず、制御部90は、ステップS222で取得された一群の光量分布データD10のうち、1番目に取得された光量分布データD1を読み出し(ステップS2231)、当該読み出した光量分布データD1が「有効データ」であるか否かを判断する(ステップS2232)。
【0109】
ここで「有効データ」とは、受光光量が許容範囲内にあり、数%内の誤差範囲で正確なピーク位置を与える光量分布データである。本発明の発明者によると、算出される重心が「0」でなく、かつ、基板Wの上面において所定の長さ(具体的には、100マイクロメートル程度)より短い領域から有効な検出光量を得ている光量分布データは、約1%内の誤差範囲で正確なピーク位置を与えることが見いだされている。そこで、ここでは、重心が「0」でなく、かつ、有効な検出光量を得ている画素が隣接して出現する個数(以下「画素幅」という)が所定値よりも小さい光量分布データを有効データと判断する。例えば、1画素が基板Wの面内の距離に換算して3マイクロメートルに相当する場合、当該所定値を「33(≒100/3)」とすることができる。なお、ノイズの影響を加味すれば、蓄積電圧が例えば10以上となる画素を、有効な検出光量を得ている画素とすることが好ましい。
【0110】
なお、受光光量が許容範囲より大きいために正確な重心を与えないデータ、具体的には、画素幅が所定値以上となる光量分布データを、以下「光量過多データ」という。例えば、受光光量が多く、裾広がりとなっている光量分布データの場合(例えば、図13の光量分布データD5)、画素幅が所定値よりも大きくなる。つまり、このような光量分布データは、光量過多データと判断される。
【0111】
一方、受光光量が許容範囲より小さいために正確な重心を与えないデータ、具体的には、重心が「0」である光量分布データを、以下「光量過小データ」という。例えば、受光光量が少なく、有効な検出光量を得ている画素が「0」の光量分布データの場合、当該光量分布データが与える重心は「0」となる。つまり、このような光量分布データは、光量過小データと判断される。
【0112】
1番目に取得された光量分布データD1が有効データであると判断した場合(ステップS2232でYES)、制御部90は、当該光量分布データD1に「有効」の属性を与えて、当該光量分布データD1をサンプルデータとして記憶する(ステップS2233)。具体的には、制御部90は、当該光量分布データD1を、その属性情報、その反射位置情報(当該光量分布データD1に係る反射光の基板Wの上面内における反射位置)、および、その出射光量(当該光量分布データD1を与えた際の光源61の出射光量)とそれぞれ対応付けて記憶する。なお、サンプルデータは、例えば、テーブルの形で管理される。図15には、サンプルデータを格納するテーブル(サンプルデータテーブルT)の構成例が模式的に示されている。
【0113】
一方、1番目に取得された光量分布データD1が有効データでないと判断した場合(ステップS2232でNO)、制御部90は、再びステップS2231の処理に戻り、2番目に取得された光量分布データD2を読み出し(ステップS2231)、当該読み出した光量分布データD2が「有効データ」であるか否かを判断する(ステップS2232)。
【0114】
つまり、制御部90は、有効データが取得されるまで、ステップS2231、ステップS2232,および、ステップS2234の処理ループを繰り返す。
【0115】
ステップS222の処理で取得された光量分布データ群D10のうち、最後に取得された光量分布データD5が有効データでない場合(すなわち、光量分布データ群D10に含まれる全ての光量分布データD1,D2,・・・,D5が有効データでない場合)(ステップS2234でYES)、制御部90は、光量分布データ群D10に含まれる全ての光量分布データD1,D2,・・・,D5のうち、最後に取得された光量分布データD5(すなわち、ステップS222で取得される複数の光量分布データD1,D2,・・・,D5のうち、最も受光光量が大きい光量分布データD5)が、光量過多データ、光量過小データのいずれであるかを判断する(ステップS2235)。
【0116】
そして、最後に取得された光量分布データD5に、ステップS2235の判断結果に応じた属性を与えて、当該光量分布データD5をサンプルデータとして記憶する(ステップS2236)。すなわち、最後に取得された光量分布データD5が光量過多データであると判断した場合、制御部90は、当該光量分布データD5に「光量過多」の属性を与えて、当該光量分布データD5をサンプルデータとして記憶する。また、最後に取得された光量分布データD5が光量過小データであると判断した場合、制御部90は、当該光量分布データD5に「光量過小」の属性を与えて、当該光量分布データD5をサンプルデータとして記憶する。具体的には、当該光量分布データD5を、その属性情報、その反射位置情報、および、その出射光量とそれぞれ対応付けてサンプルデータテーブルTに格納する。
【0117】
つまり、ステップS223の処理においては、ステップS222の処理で取得された光量分布データ群D10に有効データとされる光量分布データが含まれる場合は、当該光量分布データをサンプルデータとして取得し、有効データとされる光量分布データが含まれない場合は、最後に取得された光量分布データをサンプルデータとして取得することになる。
【0118】
<d.優良値>
ところで、位置検出ユニット47における検出精度を上げるためには、受光部472において「有効データ」とされる光量分布データをなるべく多く得ることが重要であるが、さらに、「光量過小データ」とされる光量分布データをなるべく少なくすることも重要である。というのも、「光量過小データ」とされる光量分布データは、上述したとおり、重心が「0」となるものであり、高さ位置の検出精度を大きく悪化させるからである。「光量過多データ」とされる光量分布データは、精度はよくないものの、一応の重心が算出可能であるので、高さ位置の検出精度に与える影響は、「光量過小データ」とされる光量分布データほどは大きくない。つまり、出射光量の理想的な値は、当該出射光量で基板Wの上面内の任意の位置において光量分布データを取得した場合に、「有効データ」とされる光量分布データの取得数が多く、かつ、「光量過小データ」とされる光量分布データの取得数が少なくなるようなものである。
【0119】
上述したサンプルデータ収集処理においては、基板Wの上面内の異なる位置において、それぞれ異なる出射光量の下でサンプルデータが取得されるところ、1回のサンプルデータ収集処理において取得された各サンプルデータの出射光量のうち、理想的な出射光量に最も近い値は、有効サンプルデータを与えた最大の出射光量である。そこで、制御部90は、1回のサンプルデータ収集処理が終了すると、当該サンプルデータ収集処理において、有効サンプルデータを与えた最大の出射光量を、「優良値」として記憶する。
【0120】
<3−2.サンプルデータ収集処理の評価>
上述したとおり、サンプルデータ収集処理が1回行われると、基板Wの上面内に設定された複数のサンプル取得位置P(i)(i=1,2,・・・N)(図11参照)のそれぞれで、一の光量分布データがサンプルデータとして取得されることになる。各サンプルデータは、属性(「有効」、「光量過小」、「光量過多」のいずれかの属性)が付与された上で、反射位置、および、出射光量と対応付けて記憶される(図15参照)。なお、以下において、属性が「有効」とされたサンプルデータを「有効サンプルデータ」と、属性が「光量過小」とされたサンプルデータを「光量過小サンプルデータ」と、属性が「光量過多」とされたサンプルデータを「光量過多サンプルデータ」と、それぞれいう。
【0121】
サンプルデータ収集処理が終了すると、制御部90は、当該サンプルデータ収集処理の評価を行う。この処理について、図16を参照しながら説明する。図16は当該処理の流れを示す図である。
【0122】
サンプルデータ収集処理の評価は、1回のサンプルデータ収集処理で取得された複数のサンプルデータの全部、あるいは、一部(例えば、後半に取得されたサンプルデータ)に基づいて行われる。ここでは、例えば、1回のサンプルデータ収集処理で取得された複数のサンプルデータのうち、後半に取得されたサンプルデータに基づいて、当該サンプルデータ収集処理の評価を行うとする。
【0123】
まず、制御部90は、1回のサンプルデータ収集処理で取得された複数のサンプルデータのうち、後半に取得されたサンプルデータを、「サンプルデータ群」として読み出す(ステップS31)。
【0124】
続いて、読み出したサンプルデータ群に基づいて、ハード異常の有無を調べる(ステップS32)。具体的には、サンプルデータ群に含まれる各サンプルデータの全てが光量過小サンプルデータである場合、あるいは、サンプルデータ群に含まれる各サンプルデータの全てが光量過多サンプルデータである場合に、ハード異常と判断する。
【0125】
一方、ハード異常が検出されない場合(ステップS32でNO)、制御部90は、続いて、サンプルデータ群における「無効データ連続数N1」に基づいて、サンプルデータ収集処理を評価する(ステップS33)。ただし、「無効位置連続数N1」とは、互いに隣接するサンプル取得位置P(i)において、重心が「0」となるデータが連続する数をいう。制御部90は、サンプルデータ群における無効データ連続数N1を特定し、特定した無効データ連続数N1が所定値(例えば、「10」)よりも大きい場合に、サンプルデータ収集処理に否定的評価を与える(ステップS36)。
【0126】
ステップS33で肯定的評価が得られた場合(すなわち、無効データ連続数N1が所定値以下の場合)、制御部90は、続いて、サンプルデータ群における「過剰光量率N2」に基づいて、サンプルデータ収集処理を評価する(ステップS34)。ただし、「過剰光量率N2」とは、サンプルデータ群の全体に対して、光量過多サンプルデータが占める割合である。制御部90は、サンプルデータ群における過剰光量率N2を特定し、特定した過剰光量率N2が所定値(例えば、「5%」)よりも大きい場合に、サンプルデータ収集処理に否定的評価を与える(ステップS36)。
【0127】
ステップS34で肯定的評価が得られた場合(すなわち、過剰光量率N2が所定値以下の場合)、制御部90は、続いて、サンプルデータ群における「正常検出率N3」に基づいて、サンプルデータ収集処理を評価する(ステップS35)。ただし、正常検出率N3とは、サンプルデータ群の全体に対して、有効サンプルデータが占める割合である。制御部90は、サンプルデータ群における正常検出率N3を特定し、特定した正常検出率N3が所定値(例えば、「95%」)よりも小さい場合に、サンプルデータ収集処理に否定的評価を与える(ステップS36)。
【0128】
ステップS35で肯定的評価が得られた場合(すなわち、正常検出率N3が所定値以下の場合)、制御部90は、サンプルデータ収集処理に肯定的評価を与える(ステップS37)。
【0129】
つまり、制御部90は、サンプルデータ群における無効データ連続数N1が所定値以下であり、かつ、サンプルデータ群における過剰光量率N2が所定値以下であり、かつ、サンプルデータ群における正常検出率N3が所定値以上である場合に、サンプルデータ収集処理に肯定的評価を与える。なお、評価の閾値となる各値は、オペレータが任意に設定できるものとする。
【0130】
サンプルデータ収集処理において、光量過多サンプルデータ(あるいは、光量過小サンプルデータ)が連続する個数が多い場合、あるいは、光量過多サンプルデータが占める割合が多い場合、あるいは、有効サンプルデータが取得されている割合が小さい場合、当該サンプルデータ収集処理は、信頼性が低い処理であり、そこから得られる優良値も信頼性が低いと判断できる。つまり、サンプルデータ収集処理の全体を評価することによって、当該サンプルデータ収集処理に基づいて取得される優良値が信頼できる値であるか否かを判断することができる。
【0131】
<3−3.出射光量を設定する処理の全体の流れ>
出射光量の最適値を決定する処理(図9のステップS2)においては、上述したサンプルデータ収集処理(および、当該サンプルデータ収集処理を評価する処理)が、定められた回数(例えば、2回)繰り返して行われた後に、最適値が決定される。
【0132】
最適値を決定する処理の全体の流れについて、図17を参照しながら説明する。図17は当該処理の流れを示す図である。
【0133】
制御部90は、サンプルデータ収集処理が終了すると(ステップS41)、当該サンプルデータ収集処理における優良値を取得し(ステップS42)、さらに、当該サンプルデータ収集処理の評価を行う(ステップS43)。なお、図示は省略しているが、ステップS43の処理においてハード異常が検出された場合(図16のステップS32でYES)、制御部90は、動作停止指示を発行する。この場合、その時点で行われているサンプルデータ収集処理が完了した時点で、定められた回数のサンプルデータ収集処理が行われていなくとも、出射光量の最適値を決定する処理を中止する。
【0134】
ステップS41〜ステップS43の処理が終了すると、続いて、制御部90は、定められた回数のサンプルデータ収集処理が終了したか否かを判断する(ステップS44)。
【0135】
定められた回数のサンプルデータ収集処理が終了していない場合は(ステップS44でNO)、制御部90は、ステップS42で取得された優良値を光源61の初期値に設定するとともに、刻み幅ΔLをより小さな値に再設定した上で(ステップS45)、もう一度サンプルデータ収集処理を行わせる(ステップS41)。
【0136】
したがって、例えばn回目のサンプルデータ収集処理においては、出射光量が、(n−1)回目のサンプルデータ収集処理において取得された優良値を初期値として、より小さな刻み幅ΔLで変化されていくことになる。このため、n回目のサンプルデータ収集処理において取得される優良値は、(n−1)回目のサンプルデータ収集処理における優良値よりも、理想的な出射光量の値により近いものとなっている可能性が高い。つまり、サンプルデータ収集処理を繰り返すにつれて、優良値は理想的な出射光量の値に近づいていく可能性が高い。なお、サンプルデータ収集処理を繰り返す回数は、オペレータが任意に設定できるものとする。
【0137】
定められた回数のサンプルデータ収集処理が終了すると(ステップS44でYES)、制御部90は、最後に実行したサンプルデータ収集処理における優良値を、出射光量の最適値として取得する(ステップS46)。
【0138】
続いて、制御部90は、ステップS46で取得された最適値の評価を行う(ステップS47)。具体的には、繰り返して実行された各サンプルデータ収集処理の全てが、肯定的評価を受けている場合に、ステップS46で取得された最適値に肯定的評価を与える。ここで、ステップS46で取得された最適値に否定的評価が与えられた場合、制御部90は、出射光量の最適値を決定できなかったとして、所定のエラー処理(例えば、エラー表示)を行って処理を終了する。一方、ステップS46で取得された最適値に工程的評価が与えられた場合、制御部90は、当該最適値を出力する。具体的には、例えば、表示画面に表示させる。つまり、ステップS47において肯定的評価が与えられた場合に限って、ステップS46で取得された最適値が、光源61の出射光量として採用され得ることになる。
【0139】
<4.機能ブロック>
ここで、描画装置100において実現される各機能について、図18を参照しながら整理しておく。図18は、描画装置100において実現される各機能を表すブロック図である。
【0140】
上述した説明から明らかになった通り、制御部90は、位置検出ユニット60およびステージ移動機構20を制御してサンプルデータ収集処理を実行させる。具体的には、制御部90は、ステージ移動機構20を制御して基板Wを光源61に対して相対的に移動させるとともに、光源61から基板Wの上面に対して、出射光量を変化させながら間欠的に光を照射させるとともに、その反射光の光量分布データを受光部62に取得させて、基板Wの上面内の異なる位置(サンプル取得位置P(i)(i=1,2,・・・N)のそれぞれ)で反射した反射光の光量分布データをサンプルデータとして次々と取得していく。つまり、制御部90には、データ収集部911としての機能が実現されている。
【0141】
データ収集部911は、上述したとおり、サンプルデータ収集処理において、先に取得されたサンプルデータに基づいて、次のサンプルデータを取得する際の光源61の出射光量を調整する。具体的には、先に取得されたサンプルデータが有効データである場合は、出射光量を変化させず、先に取得されたサンプルデータが光量過多データである場合は、出射光量を小さく変化させ、先に取得されたサンプルデータが光量過小データである場合は、出射光量を大きく変化させる。
【0142】
また、データ収集部911は、サンプルデータ収集処理を、複数回繰り返して実行する。この際に、先に実行されたサンプルデータ収集処理に基づいて取得された優良値を、次に実行するサンプルデータ収集処理における光源61の初期値に設定する。さらに、サンプルデータ収集処理において光源61からの出射光量を変化させる刻み幅ΔLを、先に実行されたサンプルデータ収集処理よりも小さい値とする。
【0143】
また、制御部90は、データ収集部911が取得した複数のサンプルデータのうち、受光量が許容範囲内にあるものを有効データとして抽出し、有効データを与えた最大の出射光量を出射光量の最適値として取得する。つまり、制御部90には、最適値取得部912としての機能が実現されている。
【0144】
また、制御部90は、データ収集部911がサンプルデータ収集処理を行うことによって取得した複数のサンプルデータの全部または一部から構成されるサンプルデータ群に基づいて、当該複数のサンプルデータに基づいて得られた最適値を評価する。つまり、制御部90には、評価部913としての機能が実現されている。
【0145】
評価部913は、サンプルデータ群において、無効データ連続数N1が所定数よりも多い場合、あるいは、過剰光量率N2が所定値よりも大きい場合、あるいは、正常検出率N3が所定値よりも小さい場合、に当該サンプルデータ収集処理(ひいては、当該サンプルデータ収集処理に基づいて取得された最適値)に否定的評価を与える。
【0146】
<5.効果>
上記の実施の形態によると、サンプルデータ収集処理を行って複数のサンプルデータを取得し、取得された複数のサンプルデータのうち、有効データを与えた最大の出射光量を最適値として取得する。上述したとおり、ここで最適値とされた値は、出射光量の理想的な値に近く、この値を用いれば、基板Wの上面の位置を高い精度で検出できる。つまり、この構成によると、基板Wの表面状態に対応した適切な出射光量の値を簡易に決定できる。
【0147】
また、上記の実施の形態においては、サンプルデータ収集処理の中で、先に取得されたサンプルデータの属性に応じて出射光量を変化させるので、サンプルデータとして有効データを数多く取得できる可能性が高くなる。したがって、基板Wの表面状態に対応した適切な出射光量の値を効率的に決定することができる。
【0148】
また、上記の実施の形態によると、サンプルデータ収集処理において取得された複数のサンプルデータの全部または一部から構成されるサンプルデータ群に基づいて、当該サンプルデータ収集処理(ひいは、当該サンプルデータ収集処理から取得された最適値)を評価するので、最適値が、不適当なサンプルデータ収集処理に基づいて取得されたものである場合に、それを検知することができる。したがって、信頼性の低い最適値がそのまま出射光量として設定されてしまう危険を回避することができる。
【0149】
また、上記の実施の形態によると、先に実行されたデータ収集処理において取得された優良値を光源の初期値に設定して、サンプルデータ収集処理を繰り返す。この構成によると、サンプルデータ収集処理の実行回数を重ねるにつれて、より多くの有効データを取得できる可能性が高くなる。その結果、理想的な値に近い最適値を取得することができる。また、サンプルデータ収集処理において出射光量を変化させる刻み幅を、サンプルデータ収集処理の繰り返し回数が増えるにつれて小さくするので、理想的な値により近い最適値を取得することができる。
【0150】
<6.変形例>
<6−1.オートフォーカス>
オートフォーカスを実行するにあたって、位置検出ユニット60は、次の態様で基板Wの上面の高さ位置を検出してもよい。
【0151】
ステージ10上に載置された基板Wが移動して、基板Wにおける検出すべき領域が位置検出ユニット60の下方に到達すると、制御部90は、光源471から、設定された出射光量で、一定間隔で複数回、設定された出射光量で光を出射させる。ステージ10は光源471から光が出射される間も移動を続けているので、光源471から出射された各光は、基板Wの上面内の僅かに異なる位置に入射することになるが、この位置のズレはオートフォーカスにおいて無視できるほど小さい。
【0152】
光源471から次々と出射された光は、基板Wの上面で反射して、受光部472において順に受光されることになる。つまり、受光部472では、基板Wの上面内のほぼ同一の位置でそれぞれ反射された複数の反射光の光量分布データが次々と取得されることになる。ただし、この際、制御部90は、受光部472における光の取り込み時間を段階的に変化させる(例えば、段階的に長くする)。これによって、受光部472における受光光量が段階的に変化することになる。すると、受光部472において、段階的に変化する光量分布データ群が取得されることになる。
【0153】
続いて、制御部90は、取得された複数の光量分布データのうち、最大受光量が所定の範囲にある光量分布データを1つ選択して、当該選択した光量分布データを用いて重心を算出する。
【0154】
上述したとおり、描画装置100においては、位置検出ユニット47における光源471の出射光量が、基板Wの表面状態に対して適切な値に設定されており、設定された出射光量を用いれば、位置検出ユニット47において、高い可能性で適切な光量分布データを得ることができるようになっているが、上記の変形例を適用すれば、適切な光量分布データを得る可能性をさらに高めることができる。
【0155】
<6−2.最適値のデータベース化>
上記の実施の形態においては、新たなロットに係る基板Wの処理を開始する際に、位置検出ユニット60の光源61の出射光量の最適値を決定する処理を行う構成としている。ここで、当該処理において取得された最適値を、基板Wの表面状態を示す情報(例えば、表面の材質、表面に塗布されている感光材料の種類、表面に塗布されている感光材料の厚み等)と対応付けて記憶部に蓄積していく構成としてもよい。
【0156】
この場合、新たなロットに係る基板Wの処理を開始する場合に、当該ロットに係る基板Wの表面状態が既知である場合は、当該表面状態と対応付けて記憶された最適値を用いて、出射光量を設定することができる。この場合、当該ロットに係る基板Wの処理を開始する際に、出射光量の最適値を決定する一連の処理を行う必要はない。つまり、出射光量の最適値を決定する処理は、未知の表面状態の基板Wに対する処理を開始する際にのみ実行すればよい。
【0157】
<6−3.アライメントユニット50でのオートフォーカス>
上記の実施の形態において、アライメントユニット50がアライメントマークを撮像する際に、オートフォーカスを行う構成としてもよい。
【0158】
この変形例においては、描画装置100は、上記の構成に加えて、対物レンズ52の位置を調整する駆動部を備える。駆動部は、対物レンズ52をZ軸方向に沿って直線的に移動させることによって、基板Wの上面の法線方向に沿う対物レンズ52の位置(すなわち、基板Wの上面と対物レンズ52との離間距離)を変化させる。なお、駆動部として、例えば、回転モータと、Z軸方向に平行に配置されるボールネジと、対物レンズ52の支持台に固定されるナット部とを有する直動機構を採用することができる。この駆動部と位置検出ユニット60とにより、アライメントユニット50のオートフォーカスを行う機能部(オートフォーカスユニット)が実現される。
【0159】
具体的には、制御部90は、位置検出ユニット60の光源61から、ステップS3で設定された出射光量で光を照射させる。出射された光は基板Wの上面で反射して、その反射光が受光部62にて受光される。制御部90は、受光部62が取得した反射光の光量分布データに基づいて、基板Wの上面(具体的には、反射位置)の高さ位置を検出し、取得した高さ位置情報を反射位置情報と対応付けて記憶する。その一方で、制御部90は、対物レンズ52の駆動部を制御して対物レンズ52の位置を調整してピント合わせを行う。
【0160】
<6−4.その他の変形例>
上記の実施の形態においては、出射光量の最適値を決定する処理は、位置検出ユニット60を用いて行われていたが、光学ヘッド部40が備える位置検出ユニット47を用いて行われてもよい。
【0161】
また、上記の実施の形態においては、空間光変調器441として、回折格子型の空間変調器を利用していたが、空間光変調器441の構成はこれに限らない。例えば、DMD(Digital Micromirror Device:デジタル・マイクロミラー・デバイス)を利用してもよい。
【0162】
また、上記の実施の形態においては、処理対象となる基板Wは、半導体基板であるとしたが、その他の各種の基板(例えば、プリント基板、液晶表示装置に具備されるカラーフィルタ用基板、液晶表示装置やプラズマ表示装置などのフラットパネルディスプレイ(FPD)用ガラス基板等)が処理対象とされてもよい。
【符号の説明】
【0163】
40 光学ヘッド部
47 位置検出ユニット
60 位置検出ユニット
61 光源
62 受光部
90 制御部
100 描画装置
W 基板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象面に対して検出用光源から光を照射し、その反射光を検出することによって前記対象面の位置を検出するにあたって、前記検出用光源の出射光量を決定する光量決定装置であって、
前記対象面に向けて光を出射する光源と、
前記光源から出射された光の前記対象面での反射光を受光して、前記反射光の光量分布データを取得する受光部と、
前記光源と前記対象面とを相対的に移動させる搬送部と、
前記光源から、前記光源に対して相対的に移動する前記対象面に対して、出射光量を変化させながら間欠的に光を照射させるとともに、その反射光の光量分布データを前記受光部に取得させて、前記対象面内の異なる位置で反射した反射光の光量分布データをサンプルデータとして次々と取得していくデータ収集部と、
前記データ収集部が取得した複数のサンプルデータのうち、受光量が許容範囲内にあるものを有効データとして抽出し、前記有効データを与えた最大の前記出射光量を前記検出用光源の出射光量の最適値として取得する最適値取得部と、
を備える光量決定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光量決定装置であって、
前記データ収集部が、
先に取得されたサンプルデータが前記有効データである場合は、前記光源の出射光量を変化させず、
前記先に取得されたサンプルデータが、受光量が前記許容範囲よりも大きい光量過多データである場合は、前記光源の出射光量を小さく変化させ、
前記先に取得されたサンプルデータが、受光量が前記許容範囲よりも小さい光量過小データである場合は、前記光源の出射光量を大きく変化させる光量決定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の光量決定装置であって、
前記サンプルデータが、前記対象面において、定められた長さ以上に相当する領域から有効な検出光量を得ている光量分布データである場合に、当該サンプルデータを前記光量過多データと判断する光量決定装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の光量決定装置であって、
前記サンプルデータが、重心として0を与える光量分布データである場合に、当該サンプルデータを前記光量過小データと判断する光量決定装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の光量決定装置であって、
前記データ収集部が取得した前記複数のサンプルデータの全部または一部から構成されるサンプルデータ群に基づいて、当該複数のサンプルデータに基づいて得られた前記最適値を評価する評価部、
をさらに備える光量決定装置。
【請求項6】
請求項5に記載の光量決定装置であって、
前記評価部が、
前記サンプルデータ群において、前記有効データでないサンプルデータが連続して取得された個数が所定数よりも大きい場合に否定的評価を与える光量決定装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載の光量決定装置であって、
前記評価部が、
前記サンプルデータ群の全体に対して、受光量が前記許容範囲よりも大きい光量過多データとされるサンプルデータが占める割合が、所定値よりも大きい場合に、否定的評価を与える光量決定装置。
【請求項8】
請求項5から7のいずれかに記載の光量決定装置であって、
前記評価部が、
前記サンプルデータ群の全体に対して、前記有効データが占める割合が、所定値よりも小さい場合に、否定的評価を与える光量決定装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の光量決定装置であって、
前記データ収集部が、
前記複数のサンプルデータを取得するデータ収集処理を、複数回繰り返して実行し、
先に実行された前記データ収集処理で取得された前記複数のサンプルデータのうち、前記有効データを与えた最大の前記出射光量を、次に実行する前記データ収集処理における前記光源の初期値に設定する光量決定装置。
【請求項10】
請求項9に記載の光量決定装置であって、
前記データ収集部が、
前記データ収集処理において前記出射光量を変化させる刻み幅を、先に実行された前記データ収集処理における前記刻み幅よりも小さい値とする光量決定装置。
【請求項11】
対象面に対して検出用光源から光を照射し、その反射光を検出することによって前記対象面の位置を検出する位置検出装置であって、
前記対象面に向けて光を出射する光源と、
前記光源から出射された光の前記対象面での反射光を受光して、前記反射光の光量分布データを取得する受光部と、
前記光源と前記対象面とを相対的に移動させる搬送部と、
前記光源から、前記光源に対して相対的に移動する前記対象面に対して、出射光量を変化させながら間欠的に光を照射させるとともに、その反射光の光量分布データを前記受光部に取得させて、前記対象面内の異なる位置で反射した反射光の光量分布データをサンプルデータとして次々と取得していくデータ収集部と、
前記データ収集部が取得した複数のサンプルデータのうち、受光量が許容範囲内にあるものを有効データとして抽出し、前記有効データを与えた最大の前記出射光量を前記検出用光源の出射光量の最適値として取得する最適値取得部と、
を備え、
前記対象面の位置を検出するにあたって、前記検出用光源から、前記最適値取得部が取得した最適値により規定される光量で光を出射する位置検出装置。
【請求項12】
光学ヘッドから、前記光学ヘッドに対して相対的に移動する対象面に対して光を照射して、前記対象面にパターンを描画する描画装置であって、
前記対象面に対して検出用光源から光を照射し、その反射光を検出することによって前記対象面の位置を検出する位置検出部と、
前記位置検出部が検出した前記対象面の位置に基づいて、前記光学ヘッドの光学系の前記対象面に対する位置を調整する位置調整部と、
を備え、
前記位置検出部が、
前記対象面に向けて光を出射する光源と、
前記光源から出射された光の前記対象面での反射光を受光して、前記反射光の光量分布データを取得する受光部と、
前記光源と前記対象面とを相対的に移動させる搬送部と、
前記光源から、前記光源に対して相対的に移動する前記対象面に対して、出射光量を変化させながら間欠的に光を照射させるとともに、その反射光の光量分布データを前記受光部に取得させて、前記対象面内の異なる位置で反射した反射光の光量分布データをサンプルデータとして次々と取得していくデータ収集部と、
前記データ収集部が取得した複数のサンプルデータのうち、受光量が許容範囲内にあるものを有効データとして抽出し、前記有効データを与えた最大の前記出射光量を前記検出用光源の出射光量の最適値として取得する最適値取得部と、
を備え、
前記対象面の位置を検出するにあたって、前記検出用光源から、前記最適値取得部が取得した最適値により規定される光量で光を出射する描画装置。
【請求項13】
対象面に対して検出用光源から光を照射し、その反射光を検出することによって前記対象面の位置を検出するにあたって、前記検出用光源の出射光量を決定する光量決定方法であって、
a)光源から、前記光源に対して相対的に移動する前記対象面に対して、出射光量を変化させながら間欠的に光を照射させるとともに、その反射光の光量分布データを受光部に取得させて、前記対象面内の異なる位置で反射した反射光の光量分布データをサンプルデータとして次々と取得していく工程と、
b)前記a)工程において取得された複数のサンプルデータのうち、受光量が許容範囲内にあるものを有効データとして抽出し、前記有効データを与えた最大の前記出射光量を前記検出用光源の出射光量の最適値として取得する工程と、
を備える光量決定方法。
【請求項1】
対象面に対して検出用光源から光を照射し、その反射光を検出することによって前記対象面の位置を検出するにあたって、前記検出用光源の出射光量を決定する光量決定装置であって、
前記対象面に向けて光を出射する光源と、
前記光源から出射された光の前記対象面での反射光を受光して、前記反射光の光量分布データを取得する受光部と、
前記光源と前記対象面とを相対的に移動させる搬送部と、
前記光源から、前記光源に対して相対的に移動する前記対象面に対して、出射光量を変化させながら間欠的に光を照射させるとともに、その反射光の光量分布データを前記受光部に取得させて、前記対象面内の異なる位置で反射した反射光の光量分布データをサンプルデータとして次々と取得していくデータ収集部と、
前記データ収集部が取得した複数のサンプルデータのうち、受光量が許容範囲内にあるものを有効データとして抽出し、前記有効データを与えた最大の前記出射光量を前記検出用光源の出射光量の最適値として取得する最適値取得部と、
を備える光量決定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光量決定装置であって、
前記データ収集部が、
先に取得されたサンプルデータが前記有効データである場合は、前記光源の出射光量を変化させず、
前記先に取得されたサンプルデータが、受光量が前記許容範囲よりも大きい光量過多データである場合は、前記光源の出射光量を小さく変化させ、
前記先に取得されたサンプルデータが、受光量が前記許容範囲よりも小さい光量過小データである場合は、前記光源の出射光量を大きく変化させる光量決定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の光量決定装置であって、
前記サンプルデータが、前記対象面において、定められた長さ以上に相当する領域から有効な検出光量を得ている光量分布データである場合に、当該サンプルデータを前記光量過多データと判断する光量決定装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の光量決定装置であって、
前記サンプルデータが、重心として0を与える光量分布データである場合に、当該サンプルデータを前記光量過小データと判断する光量決定装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の光量決定装置であって、
前記データ収集部が取得した前記複数のサンプルデータの全部または一部から構成されるサンプルデータ群に基づいて、当該複数のサンプルデータに基づいて得られた前記最適値を評価する評価部、
をさらに備える光量決定装置。
【請求項6】
請求項5に記載の光量決定装置であって、
前記評価部が、
前記サンプルデータ群において、前記有効データでないサンプルデータが連続して取得された個数が所定数よりも大きい場合に否定的評価を与える光量決定装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載の光量決定装置であって、
前記評価部が、
前記サンプルデータ群の全体に対して、受光量が前記許容範囲よりも大きい光量過多データとされるサンプルデータが占める割合が、所定値よりも大きい場合に、否定的評価を与える光量決定装置。
【請求項8】
請求項5から7のいずれかに記載の光量決定装置であって、
前記評価部が、
前記サンプルデータ群の全体に対して、前記有効データが占める割合が、所定値よりも小さい場合に、否定的評価を与える光量決定装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の光量決定装置であって、
前記データ収集部が、
前記複数のサンプルデータを取得するデータ収集処理を、複数回繰り返して実行し、
先に実行された前記データ収集処理で取得された前記複数のサンプルデータのうち、前記有効データを与えた最大の前記出射光量を、次に実行する前記データ収集処理における前記光源の初期値に設定する光量決定装置。
【請求項10】
請求項9に記載の光量決定装置であって、
前記データ収集部が、
前記データ収集処理において前記出射光量を変化させる刻み幅を、先に実行された前記データ収集処理における前記刻み幅よりも小さい値とする光量決定装置。
【請求項11】
対象面に対して検出用光源から光を照射し、その反射光を検出することによって前記対象面の位置を検出する位置検出装置であって、
前記対象面に向けて光を出射する光源と、
前記光源から出射された光の前記対象面での反射光を受光して、前記反射光の光量分布データを取得する受光部と、
前記光源と前記対象面とを相対的に移動させる搬送部と、
前記光源から、前記光源に対して相対的に移動する前記対象面に対して、出射光量を変化させながら間欠的に光を照射させるとともに、その反射光の光量分布データを前記受光部に取得させて、前記対象面内の異なる位置で反射した反射光の光量分布データをサンプルデータとして次々と取得していくデータ収集部と、
前記データ収集部が取得した複数のサンプルデータのうち、受光量が許容範囲内にあるものを有効データとして抽出し、前記有効データを与えた最大の前記出射光量を前記検出用光源の出射光量の最適値として取得する最適値取得部と、
を備え、
前記対象面の位置を検出するにあたって、前記検出用光源から、前記最適値取得部が取得した最適値により規定される光量で光を出射する位置検出装置。
【請求項12】
光学ヘッドから、前記光学ヘッドに対して相対的に移動する対象面に対して光を照射して、前記対象面にパターンを描画する描画装置であって、
前記対象面に対して検出用光源から光を照射し、その反射光を検出することによって前記対象面の位置を検出する位置検出部と、
前記位置検出部が検出した前記対象面の位置に基づいて、前記光学ヘッドの光学系の前記対象面に対する位置を調整する位置調整部と、
を備え、
前記位置検出部が、
前記対象面に向けて光を出射する光源と、
前記光源から出射された光の前記対象面での反射光を受光して、前記反射光の光量分布データを取得する受光部と、
前記光源と前記対象面とを相対的に移動させる搬送部と、
前記光源から、前記光源に対して相対的に移動する前記対象面に対して、出射光量を変化させながら間欠的に光を照射させるとともに、その反射光の光量分布データを前記受光部に取得させて、前記対象面内の異なる位置で反射した反射光の光量分布データをサンプルデータとして次々と取得していくデータ収集部と、
前記データ収集部が取得した複数のサンプルデータのうち、受光量が許容範囲内にあるものを有効データとして抽出し、前記有効データを与えた最大の前記出射光量を前記検出用光源の出射光量の最適値として取得する最適値取得部と、
を備え、
前記対象面の位置を検出するにあたって、前記検出用光源から、前記最適値取得部が取得した最適値により規定される光量で光を出射する描画装置。
【請求項13】
対象面に対して検出用光源から光を照射し、その反射光を検出することによって前記対象面の位置を検出するにあたって、前記検出用光源の出射光量を決定する光量決定方法であって、
a)光源から、前記光源に対して相対的に移動する前記対象面に対して、出射光量を変化させながら間欠的に光を照射させるとともに、その反射光の光量分布データを受光部に取得させて、前記対象面内の異なる位置で反射した反射光の光量分布データをサンプルデータとして次々と取得していく工程と、
b)前記a)工程において取得された複数のサンプルデータのうち、受光量が許容範囲内にあるものを有効データとして抽出し、前記有効データを与えた最大の前記出射光量を前記検出用光源の出射光量の最適値として取得する工程と、
を備える光量決定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−73188(P2012−73188A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219872(P2010−219872)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】
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