説明

全稈投入型コンバインの脱穀構造

【課題】 螺旋羽根などの摩耗に対する適切な処置を簡単かつ安価に行えるようにして、螺旋羽根などの摩耗に起因した脱穀処理能力の低下を回避し易くする。
【解決手段】 扱胴16の前端部41に、その前端部41に向けて供給搬送された刈取穀稈を、扱胴16の回転に伴って後方に向けて掻き込み搬送する螺旋羽根43を装備してある全稈投入型コンバインの脱穀構造において、螺旋羽根43を着脱可能に取り付けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扱胴の前端部に、その前端部に向けて供給搬送された刈取穀稈を、前記扱胴の回転に伴って後方に向けて掻き込み搬送する螺旋羽根を装備してある全稈投入型コンバインの脱穀構造に関する。
【背景技術】
【0002】
全稈投入型コンバインの脱穀構造としては、扱胴本体の前端側に形成した前細り周面に、被処理物を掻き込むための2枚の掻き込みスクリュー(螺旋羽根)を取り付け、扱胴本体の円筒状周面に、各掻き込みスクリューの後端に連なる2条のスクリューを取り付け、各スクリューに、多数の扱歯と、各扱歯より扱胴周方向の長さが大きい複数の部分螺旋状送り羽根とを、それらが交互に位置し、かつ、スクリューの外方に突出する状態で着脱可能にボルト連結したものがある。これにより、扱胴本体の駆動回転に伴って、被処理物を扱歯の作用で脱穀処理するとともに、スクリューなどの作用で被処理物を後方に向けて搬送する(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平07−107844号公報(段落番号0013〜0014、図1〜2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
全稈投入型のコンバインは、刈取穀稈の全体が被処理物として扱胴の前端部に向けて供給搬送されることから、刈取穀稈の穂先側のみを被処理物として扱胴の前端部に向けて供給搬送する自脱型のコンバインに比較して処理量が多くなる。また、刈取穀稈の全体を被処理物として扱胴の前端部に向けて供給搬送する場合には、刈取穀稈の穂先側のみを扱胴の前端部に向けて供給搬送する場合に比較して、泥土などの異物が刈取穀稈とともに被処理物として扱胴の前端部に向けて供給搬送される可能性が高くなる。
【0004】
そのため、全稈投入型のコンバインにおいては、自脱型のコンバインに比較して、扱胴の回転に伴って被処理物に対して作用する箇所が、被処理物との接触によって摩耗する不都合が生じ易くなっている。
【0005】
特に、扱胴の前端部に装備される螺旋羽根(掻き込みスクリュー)は、機体の走行に伴って扱胴の前端部に供給搬送されてくる全ての被処理物を、扱胴の回転に伴って、後方の脱穀処理領域に向けて掻き込み搬送するものであり、収穫作業時には大量の被処理物と激しく接触するようになることから、長期の使用においては著しく摩耗することがある。
【0006】
そして、このような摩耗が生じた場合には、螺旋羽根と、その螺旋羽根による刈取穀稈の掻き込み搬送を補助するために螺旋羽根の下方に配備される搬送補助ガイドとの間に形成される隙間が大きくなり、搬送補助ガイドで受け止められた刈取穀稈に対して、螺旋羽根の掻き込み搬送作用が及び難くなる。
【0007】
つまり、全稈投入型のコンバインにおいては、長期の使用によって螺旋羽根が著しく摩耗した場合には、刈取穀稈に対する螺旋羽根の掻き込み搬送作用が低下することになり、結果、脱穀処理能力の低下を招くことになる。
【0008】
このような脱穀処理能力の低下を回避する方法としては、長期の使用によって摩耗した螺旋羽根などを取り換えることが考えられるが、前述したように、従来技術に基づく全稈投入型コンバインの脱穀構造は、扱胴本体の円筒状周面に取り付けた各スクリューに、多数の扱歯や複数の部分螺旋状送り羽根を着脱可能に取り付けるだけであって、扱胴本体の前端側に形成した前細り周面に、螺旋羽根を着脱可能に取り付けるものではないことから、長期の使用によって螺旋羽根が著しく摩耗した場合には、螺旋羽根とともに扱胴本体の全体を取り換える、といった大掛かりな処置を施す必要が生じることになる。
【0009】
つまり、従来技術に基づく全稈投入型のコンバインにおいては、螺旋羽根などの摩耗に対する適切な処置を施す場合に、かなりの手間やコストを要することから、螺旋羽根などの摩耗に起因した脱穀処理能力の低下を回避することが困難になっていた。
【0010】
本発明の目的は、螺旋羽根などの摩耗に対する適切な処置を簡単かつ安価に行えるようにして、螺旋羽根などの摩耗に起因した脱穀処理能力の低下を回避し易くすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するため、本発明のうちの請求項1に記載の発明では、扱胴の前端部に、その前端部に向けて供給搬送された刈取穀稈を、前記扱胴の回転に伴って後方に向けて掻き込み搬送する螺旋羽根を装備してある全稈投入型コンバインの脱穀構造において、
前記螺旋羽根を着脱可能に取り付けてあることを特徴とする。
【0012】
この特徴構成によると、螺旋羽根が、長期にわたる刈取穀稈などとの激しい接触によって著しく摩耗した場合には、摩耗した螺旋羽根のみを取り換えることができる。これにより、螺旋羽根を、溶接などによって扱胴の前端部に着脱不能に装備する場合に比較して、螺旋羽根の取り換えに要する手間やコストを大幅に削減することができ、結果、摩耗した螺旋羽根の取り換えが行い易くなる。そして、摩耗した螺旋羽根の取り換えが行い易くなることにより、螺旋羽根の摩耗を放置した場合に招くことのある、刈取穀稈に対する螺旋羽根の掻き込み搬送作用が低下し、その低下に伴って脱穀処理能力が低下する、といった不都合を容易に回避することができる。
【0013】
従って、扱胴の前端部に対して螺旋羽根を着脱可能に取り付けるといった簡単な改良を施すことにより、螺旋羽根の摩耗に対する適切な処置を簡単かつ安価に行えるようになり、結果、螺旋羽根の摩耗に起因した脱穀処理能力の低下を回避し易くすることができる。
【0014】
本発明のうちの請求項2に記載の発明では、上記請求項1に記載の発明において、
前記扱胴の下方に、前記扱胴の前端部を下方から覆うように配置されることにより、前記扱胴の前端部に向けて供給搬送された刈取穀稈を受け止めて、前記螺旋羽根による刈取穀稈の掻き込み搬送を補助する搬送補助ガイドを設け、
前記搬送補助ガイドを、その少なくとも前記扱胴の回転方向下手側に位置する部分が着脱可能となるように構成してあることを特徴とする。
【0015】
この特徴構成によると、搬送補助ガイドが、長期にわたる刈取穀稈などとの激しい接触によって著しく摩耗した場合には、摩耗した搬送補助ガイドのみを取り換えることができる。これにより、例えば、搬送補助ガイドを、溶接などによって支持フレームなどに着脱不能に装備した場合に比較して、摩耗した搬送補助ガイドの取り換えに要する手間やコストを大幅に削減することができ、結果、摩耗した搬送補助ガイドの取り換えが行い易くなる。そして、摩耗した搬送補助ガイドの取り換えが行い易くなることにより、搬送補助ガイドの摩耗を放置した場合に招くことのある、螺旋羽根と搬送補助ガイドとの間に形成される隙間が大きくなることに起因して、刈取穀稈に対する螺旋羽根の掻き込み搬送作用が低下し、その低下に伴って脱穀処理能力が低下する、といった不都合を容易に回避することができる。
【0016】
ところで、扱胴の回転に伴って、螺旋羽根によって後方に向けて掻き込み搬送される刈取穀稈などは、扱胴の回転による影響を受けて、搬送補助ガイドにおける扱胴の回転方向下手側部分に寄せ集められるようになる。そのため、搬送補助ガイドにおいては、その扱胴の回転方向下手側に位置する部分ほど、刈取穀稈などと激しく接触するようになり、その接触に起因した摩耗が生じ易くなる。
【0017】
そこで、その点を考慮して搬送補助ガイドにおける扱胴の回転方向下手側部分を着脱可能に構成すれば、長期にわたる刈取穀稈などとの激しい接触によって、搬送補助ガイドにおける扱胴の回転方向下手側部分が著しく摩耗した場合には、その摩耗した部分のみを取り換えることができる。これにより、搬送補助ガイドの全体を取り換える場合に比較して、取り換えに要するコストをさらに削減することができる。
【0018】
従って、搬送補助ガイドを、その少なくとも扱胴の回転方向下手側に位置する部分が着脱可能となるように構成する、といった簡単な改良を施すことにより、搬送補助ガイドの摩耗に対する適切な処置を簡単かつ安価に行えるようになり、結果、搬送補助ガイドの摩耗に起因した脱穀処理能力の低下を回避し易くすることができる。
【0019】
本発明のうちの請求項3に記載の発明では、上記請求項1または2に記載の発明において、
前記扱胴の下方に、前記扱胴の回転に伴って脱穀処理される刈取穀稈を受け止めるとともに脱穀処理で得られた処理物を漏下させる受網を、前記扱胴を下方から覆うように配備し、
前記扱胴の上方に、前記扱胴の回転に伴って前記扱胴の上部に向けて搬送された刈取穀稈および前記処理物を前記受網に向けて案内する天板を、前記扱胴を上方から覆うように配備し、
前記受網と前記天板との間に、それらの内面を一連に繋ぐ案内面を有するように形成された継目部材を着脱可能に装備してあることを特徴とする。
【0020】
この特徴構成によると、継目部材の案内面が、長期にわたる刈取穀稈などとの激しい接触によって著しく摩耗した場合には、摩耗した継目部材のみを取り換えることができる。これにより、継目部材を、溶接などによって受網または天板に着脱不能に装備した場合に比較して、摩耗した継目部材の取り換えに要する手間やコストを大幅に削減することができ、結果、摩耗した継目部材の取り換えが行い易くなる。そして、摩耗した継目部材の取り換えが行い易くなることにより、継目部材の摩耗を放置した場合に招くことのある、受網の内面と天板の内面とを継目部材の案内面によって一連に繋ぐことができなくなって、扱胴の受網と天板とにわたって刈取穀稈などが円滑に流動しなくなることに起因して、脱穀処理能力が低下する、といった不都合を容易に回避することができる。
【0021】
従って、受網と天板との間に継目部材を着脱可能に装備するといった簡単な改良を施すことにより、継目部材の摩耗に対する適切な処置を簡単かつ安価に行えるようになり、結果、継目部材の摩耗に起因した脱穀処理能力の低下を回避し易くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1には稲や麦などを収穫対象とする全稈投入型コンバインの全体側面が示されている。図2にはその全体平面が示されている。これらの図に示すように、全稈投入型コンバインは、角パイプ鋼材などにより形成した機体フレーム1の右前部にエンジン2や変速装置(図示せず)などが搭載されている。機体フレーム1の下部には、変速装置などを介して伝達されるエンジン2からの動力で駆動される左右一対のクローラ式走行装置3が配備されている。機体フレーム1の前部には、収穫対象の植立穀稈を刈り取って後方に向けて搬送する刈取搬送装置4が昇降揺動可能に連結されている。機体フレーム1の左半部には、刈取搬送装置4からの刈取穀稈に対して脱穀処理を施すとともに、その脱穀処理で得られた処理物に対して選別処理を施す脱穀装置5が搭載されている。機体フレーム1の右半部には、脱穀装置5からの穀粒を貯留するとともに、その貯留した穀粒の袋詰めを可能にする袋詰装置6が搭載されている。機体フレーム1の右前部には搭乗運転部7が形成されている。
【0023】
左右のクローラ式走行装置3は、搭乗運転部7に備えた十字揺動式で中立復帰型の操縦レバー8の左右方向への揺動操作に基づいて、操向系(図示せず)が作動することで、それらが等速駆動される直進状態と、それらが差動する旋回状態とが、切り換え現出されるように構成されている。
【0024】
刈取搬送装置4における前端の左右両側端部には、機体の走行に伴って、植立穀稈を収穫対象の植立穀稈と収穫対象外の植立穀稈とに梳き分けるデバイダ9が配備されている。刈取搬送装置4の前部上方には、左右のデバイダ9で梳き分けられた収穫対象の植立穀稈の穂先側を後方に向けて掻き込む回転リール10が装備されている。刈取搬送装置4の底部には、収穫対象の植立穀稈の株元側を切断する切断機構11が配備されている。切断機構11の後方には、切断機構11による切断後の植立穀稈(刈取穀稈)を左右方向の所定箇所に寄せ集めるとともに、その所定箇所から後方に向けて送り出すオーガ12が配備されている。オーガ12の所定箇所には、その所定箇所から送り出された刈取穀稈を脱穀装置5に向けて供給搬送する搬送コンベヤからなるフィーダ13が装備されている。
【0025】
刈取搬送装置4は、機体フレーム1とフィーダ13とにわたって架設した油圧式の昇降シリンダ(図示せず)の作動によって、機体フレーム1とフィーダ13との連結点を支点にして昇降揺動する。昇降シリンダの作動は、操縦レバー8の前後方向への揺動操作に基づいて、昇降シリンダに対する作動油の流れを制御する制御弁(図示せず)の作動状態が切り換えられることにより制御される。つまり、操縦レバー8を前後方向に揺動操作することにより、刈取搬送装置4を昇降させることができ、植立穀稈に対する切断機構11の高さ位置を変更する刈り高さ調節などを行えるように構成されている。
【0026】
図3〜5に示すように、脱穀装置5の上部には扱室14が形成されている。扱室14には、刈取穀稈の搬送方向に沿って架設した前後向きの支軸15を支点にして回転する扱胴16が配備されている。扱胴16の下方には、扱胴16の下部側を下方から覆う正面視U字状に形成された受網17が装備されている。脱穀装置5において、その脱穀処理方向の下手側端部となる受網17の後方には、脱穀処理後の穀稈を機外に排出するための排稈口18が形成されている。受網17の下方には、受網17から漏下した処理物に対して篩い選別処理を施す揺動選別機構19が配備されている。揺動選別機構19の前下方には、受網17から漏下してくる処理物や篩い選別処理中の処理物に向けて選別風を供給して、それらの処理物に風力選別処理を施す唐箕20が配備されている。唐箕20の後方には、揺動選別機構19の前部側から漏下した処理物を回収する1番回収部21が形成されている。1番回収部21の後方には、揺動選別機構19の後部側から漏下した処理物を回収する2番回収部22が形成されている。揺動選別機構19の後方には、揺動選別機構19から漏下せずに揺動選別機構19の後端部まで搬送された処理物を機外に排出するための排出口23が形成されている。扱胴16の上方には、扱胴16の上部側を上方から覆う天板24が開閉可能に装備されている。
【0027】
扱室14は、扱胴16を覆う受網17や天板24などによって区画形成されている。扱室14の前端下方部位には、フィーダ13によって搬送された刈取穀稈の全体が処理物として供給される供給口25が形成されている。
【0028】
扱胴16は、その支軸15が脱穀装置5の前壁26と後壁27とにわたって回転可能に架設されている。そして、扱胴16は、唐箕20などを介して伝達されるエンジン2からの動力で、支軸15を支点にして正面視右回りに回転駆動され、この回転駆動により、扱室14に供給された刈取穀稈に対して脱穀処理を施し、穀粒の単粒化を促しながら、その刈取穀稈を脱穀処理方向の下手側となる機体後方に向けて搬送する。
【0029】
受網17は、格子状に形成されたコンケーブ受網であり、扱室14に供給された刈取穀稈を受け止めて、刈取穀稈に対する扱胴16の脱穀処理を補助する。具体的には、受網17は、扱胴16の回転作動に伴って脱穀処理される刈取穀稈を受け止めながら、その脱穀処理によって得られた単粒化穀粒や枝梗付き穀粒、あるいは、脱穀処理で発生した稈屑などの処理物を下方の揺動選別機構19に向けて漏下させる一方で、脱粒穀稈などの揺動選別機構19への漏下を防止する。
【0030】
揺動選別機構19は、カム式の駆動機構28によって前後方向に揺動駆動される平面視枠状のシーブケース29を備えている。シーブケース29の上部には、粗選別用のグレンパン30とチャフシーブ31とストローラック32とが、その順にシーブケース29の前側から配備されている。シーブケース29の下部には、精選別用のグレンパン33とグレンシーブ34とが、その順にシーブケース29の前側から配備されている。揺動選別機構19の上部においては、単粒化穀粒や稈屑などが混在する状態で受網17から漏下した選別処理物を、上部のグレンパン30やチャフシーブ31あるいはストローラック32により受け止めて、篩い選別による粗選別処理を施す。揺動選別機構19の下部においては、単粒化穀粒や枝梗付き穀粒などが混在する状態でチャフシーブ31から漏下した選別処理物を、下部のグレンパン33やグレンシーブ34により受け止めて、篩い選別による精選別処理を施す。その結果、選別処理物を、1番物としての単粒化穀粒と、2番物としての枝梗付き穀粒や稈屑などの混在物と、3番物としての稈屑などの塵埃とに選別する。
【0031】
唐箕20は、ベルト式の伝動機構35を介して伝達されるエンジン2からの動力で、その支軸20Aを支点にして回転駆動されることにより選別風を生起する。選別風は、3つの風路R1〜R3を通って、受網17から漏下した選別処理物や、揺動選別機構19で選別される選別処理物などに向けて供給されることで、選別処理物から比重の小さい稈屑などを吹き分けて、脱穀処理方向下手側の排出口23に向けて搬送する。
【0032】
1番回収部21は、唐箕20からの選別風でワラ屑などの塵埃が除去された状態で、揺動選別機構19のグレンシーブ34から漏下した単粒化穀粒を1番物として回収する。1番回収部21の底部には、唐箕20などを介して伝達されるエンジン2からの動力で駆動される1番スクリュー36が左右向きに配備されている。1番スクリュー36は、1番回収部21にて回収された1番物を、その右端に連設した揚送スクリュー37(図2参照)に向けて搬送する。
【0033】
2番回収部22は、揺動選別機構19のグレンシーブ34から漏下せずにグレンシーブ34の後端から流下した枝梗付き穀粒や稈屑などの混在物、および、揺動選別機構19のストローラック32から漏下した枝梗付き穀粒や稈屑などの混在物を2番物として回収する。2番回収部22の底部には、唐箕20などを介して伝達されるエンジン2からの動力で駆動される2番スクリュー38が左右向きに配備されている。2番スクリュー38は、2番回収部22にて回収された2番物を、その右端に連設した2番還元機構39(図2参照)に向けて搬送する。
【0034】
揚送スクリュー37は、1番スクリュー36で搬送された1番物を揚送して、袋詰装置6の上部に備えた穀粒タンク40に供給する(図1および図2参照)。2番還元機構39は、2番スクリュー38で搬送された2番物に対して再び脱穀処理を施す再処理部(図示せず)を備え、その再処理部による脱穀処理後の2番物を揚送して揺動選別機構19に還元する(図2参照)。
【0035】
排出口23は、受網17から漏下せずに排稈口18から流下する脱粒穀稈や、篩い選別処理や風力選別処理で揺動選別機構19の後方に選別搬送された稈屑などを機外に放出する。
【0036】
図3〜9に示すように、扱胴16は、その前端部を形成する円錐台状の掻込部41と、その掻込部41の後端に連接した扱き処理部42とを備えて構成されている。掻込部41の外周面には、フィーダ13によって供給口25に供給搬送された刈取穀稈を、扱胴16の回転に伴って後方の扱き処理部42に向けて掻き込み搬送する2枚の螺旋羽根43が装備されている。
【0037】
扱き処理部42は、支軸15の前部に一体装備した第1プレート44、支軸15の前後中間部に一体装備した第2プレート45、支軸15の後端部に一体装備した第3プレート46、それらのプレート44〜46によって、支軸15に沿う前後向きの姿勢で、扱胴16の周方向に一定間隔を隔てて並ぶように支持された丸パイプ鋼材などからなる6本の扱胴フレーム47、および、各扱胴フレーム47に、扱胴フレーム47から扱胴16の外方に向けて突出する姿勢で、前後方向に所定間隔を隔てて並ぶように装備した複数の扱歯48、などにより構成されている。
【0038】
つまり、扱胴16には、その外方に向けて突出する複数の扱歯48が、扱き処理部42の周方向と前後方向とに所定間隔を隔てて並ぶように整列配備されている。また、扱胴16は、扱き処理部42の内部空間Sが扱室14に連通して、その内部空間Sへの処理物の入り込みを許容するように形成されている。その結果、扱胴16の回転作動時には、その周囲の処理物と内部空間Sに入り込んだ処理物とを攪拌しながら、それらの処理物に対して、扱胴フレーム47や扱歯48の打撃や梳き込みなどによる脱穀処理を施す。
【0039】
しかも、扱き処理部42の内部空間Sが扱室14に連通することにより、大量の刈取穀稈が処理物として扱室14に供給された場合であっても、扱き処理部42の内部空間Sを脱穀処理用の処理空間として有効利用することができる。これにより、処理空間での処理物の滞留や処理空間の飽和を回避することができる。その結果、処理物の滞留や処理空間の飽和に起因した、十分な脱穀処理が行われないまま処理物がコンケーブ3から漏下する、あるいは、脱穀処理に要する負荷が増大して扱胴16に対する伝動系が破損する、などの不都合の発生を未然に回避することができる。
【0040】
そして、扱胴16の回転作動時には、複数の扱歯48だけでなく、扱胴16の扱き処理部42を形成する6本の扱胴フレーム47までもが、処理物に作用する扱き処理部材として機能することから、脱穀性能や脱穀効率の向上を図ることができる。
【0041】
また、扱胴16の前部側での脱穀処理によって多くの穀粒が単粒化して受網17から漏下することで処理物量が減少する扱胴16の前後中間部においては、扱胴16の内部空間Sを前後に隔てる第2プレート45が、扱胴16の内部空間Sでの処理物の脱穀処理方向下手側への流動を阻止し、扱胴16の回転とともに処理物を扱胴16の周囲に導いて、処理物に対する扱歯48などの打撃や梳き込みなどによる脱穀、および、単粒化穀粒の受網17からの漏下を促すようになる。これにより、処理物に含まれる単粒化穀粒や未脱粒穀稈などが扱胴16の内部空間Sを素通りして、脱粒穀稈とともに脱穀処理方向の下手側端部に形成した排稈口18から排出されることによる3番ロスの発生を阻止することができる。
【0042】
さらに、扱胴16の回転作動時には、掻込部41の作用で掻き込み搬送される刈取穀稈とともに、螺旋羽根43の回転に伴って供給口25から吸引された外気が、扱胴16の周囲や扱き処理部42の内部空間Sにスムーズに流動するようになる。これにより、脱穀処理によって発生した稈屑などの供給口25からフィーダ13への流出を防止することができるとともに、処理物の脱穀処理方向下手側への搬送をより速やかに行える。
【0043】
その上、供給口25から吸引される外気は、供給口25に接続されたフィーダ13の内部を通るものであり、また、そのフィーダ13は、切断機構11やオーガ12などを装備した刈取搬送装置4の刈取回収部に形成した回収穀稈搬出用の搬出口(図示せず)と供給口25とを連通するものであることから、扱胴16の回転作動時には、螺旋羽根43の回転による吸引作用で、刈取回収部での刈取処理や回収処理で発生した稈屑などの塵埃も、外気とともに、刈取回収部の搬出口からフィーダ13の内部空間および供給口25を介して、扱胴16の周囲や扱き処理部42の内部空間Sに流入することになる。その結果、刈取回収部での稈屑などの付着堆積や舞い上がりを抑制することができ、その付着堆積に起因した刈取穀稈の搬送不良や、その舞い上がりに起因した作業環境および視界性の低下などを抑制することができる。
【0044】
各プレート44〜46は、支軸15を中心とする円形で、その外周側における支軸15からの等距離の位置に扱胴フレーム47がボルト連結されている。つまり、各プレート44〜46の外周側に、その周方向に一定間隔を隔てて並ぶ状態に6本の扱胴フレーム47を配備して、扱胴16の胴径が大きくなるようにしている。これにより、扱胴16に対する刈取穀稈の巻き付きを防止することができる。
【0045】
各扱胴フレーム47は、その前後方向を扱胴16の前後方向と一致させた通常姿勢と、その前後方向を扱胴16の前後方向と逆にした反転姿勢とに向き変更可能に、かつ、隣り合う扱胴フレーム47との前後向きが逆になるように、各プレート44〜46にボルト連結されている。
【0046】
各扱胴フレーム47には、扱歯48の取り付けを可能にする複数の取付孔47A,47Bが、その前後方向に一定ピッチPで並ぶ状態に、かつ、扱胴フレーム47の前端から最前の取付孔47Aの中心までの距離L1と、扱胴フレーム47の後端から最後の取付孔47Aの中心までの距離L2とを半ピッチ(=1/2P)だけ異ならせた状態で穿設されている。
【0047】
そして、各扱胴フレーム47は、隣り合うものとの前後向きが逆になる状態で各プレート44〜46に連結支持されている。これにより、6本の扱胴フレーム47として同じ構成のものを採用しながら、それらの各扱胴フレーム47に装備される扱歯48を、隣り合う扱胴フレーム47の扱歯48と前後方向に半ピッチ分だけ位置ずれさせた状態で位置させることができる。その結果、隣り合う扱歯48の間隔を小さくすることなく、処理物に対する扱歯48の打撃間隔を小さくすることができる。
【0048】
つまり、各扱胴フレーム47を同じ構成とすることによるコストの削減を図りながら、また、隣り合う扱歯48の間隔を小さくするほど招き易くなる、扱歯48に対する処理物中の穀稈の絡み付きに起因した処理物の詰まりを効果的に防止しながら、処理物に対する扱歯48の打撃回数を多くすることによる脱穀性能の向上を図ることができる。
【0049】
また、各扱胴フレーム47を、通常姿勢と反転姿勢とに向き変更可能に装備したことで、処理物量が多いことで比較的に摩耗し易い脱穀処理方向上手側に位置する扱歯48の摩耗が長期の使用によって著しくなった場合には、各扱胴フレーム47の向きを変更することで、各扱胴フレーム47に備えた複数の扱歯48を、比較的に摩耗し易い脱穀処理方向上手側の扱歯48と摩耗し難い脱穀処理方向下手側の扱歯48とを交換した状態に、一挙に位置変更することができる。これにより、摩耗の少ない脱穀処理方向下手側の扱歯48を、処理物量の多い脱穀処理方向上手側の扱歯48として有効利用することができる。
【0050】
複数の取付孔47A,47Bのうち、各扱胴フレーム47の前後両端部に位置する4つ(前後2つずつ)の取付孔47Aは、中間部に位置する取付孔47Bよりも小径に形成されている。
【0051】
各扱歯48のうち、小径の取付孔47Aを利用して取り付けられる扱歯48Aは、取付孔47Aに挿通される小径部48aを備えた段付きの丸棒鋼材で構成され、その中心が、支軸15の中心と扱胴フレーム47の中心とを通る線上に位置するように、扱胴フレーム47に着脱可能にナット止めされている。
【0052】
中間部の取付孔47Bを利用して取り付けられる扱歯48Bは、段無しの丸棒鋼材で構成され、その中心が、支軸15の中心と扱胴フレーム47の中心とを通る線上に位置するように、扱胴フレーム47に着脱不能に溶接されている。
【0053】
つまり、扱き処理部42の前後両端部に位置する各扱歯48Aが着脱可能であることから、それらの扱歯48Aが、扱胴フレーム47の向き変更を含めた長期にわたる使用で著しく摩耗した場合には、新しい扱歯48Aに簡単に交換することができる。
【0054】
また、脱粒穀稈量が多くなる脱穀処理方向下手側においては、図10に示すように、扱胴16の後端部に位置する扱歯48Aを間引いた状態で配備すれば、扱胴後端部での扱歯48Aの間隔が大きくなって、扱胴後端部での扱歯48Aに対する引っ掛かりに起因した脱粒穀稈の滞留を効果的に抑制することができる。その結果、排稈口18からの脱粒穀稈の放出を促進させることができる。
【0055】
図3〜5、図11および図12に示すように、天板24には、扱歯先端の回転軌跡Kに略沿って湾曲する湾曲部24A、その湾曲部24Aの前後両端に位置する半円状の縦壁部24B、および、湾曲部24Aの左右に位置する一直線状の側縁部24C、などが一体装備されている。天板24は、その左側の側縁部24Cに備えた複数のヒンジ24Dを支点にして、扱胴16の上部側を上方から覆う閉位置と、扱胴16の上部側を開放する開位置とにわたる開閉揺動操作が可能となるように構成されている。右側の側縁部24Cには、天板24を閉状態で固定する複数のボルト24Eが備えられている。
【0056】
湾曲部24Aは、扱胴16の回転作動に伴って扱胴16の上部に向けて搬送された処理物を、その内面によって下方の受網17に向けて円滑に案内するように湾曲形成されている。湾曲部24Aの内面には、扱胴16の回転作動に伴って、扱室14の上部に搬送された処理物を脱穀処理方向の下手側に向けて案内する複数の送塵弁49が、前後方向に所定間隔を隔てて並ぶ状態で着脱可能に固定装備されている。複数の送塵弁49のうち、最前の送塵弁49Aは、前側の縦壁部24Bから左側の側縁部24Cにわたる円弧状に形成され、他の送塵弁49Bは、左右の側縁部24Cにわたる円弧状に形成されている。
【0057】
つまり、天板24に湾曲部24Aを備えたことで、扱胴16の回転に伴って複数の扱歯48などで扱室14の上部に掻き上げ搬送された処理物を、湾曲部24Aの内面や送塵弁49に沿わせながら、脱穀処理方向下手側下方の受網17に向けて滑らかに案内することができる。また、各送塵弁49を、左側の側縁部24Cまたは左右の側縁部24Cにわたる長尺の円弧状に形成したことで、扱胴16の回転に伴って扱室14の上部に搬送された処理物に対する各送塵弁49Aの案内作用を効果的に向上させることができる。これにより、各扱歯48を、処理物に対する搬送作用を備える形状ではなく、処理物に対する打撃や梳き込みを好適に行える脱穀専用の形状に形成しながらも、処理物を脱穀処理方向下手側に向けて良好に搬送案内することができ、結果、処理物に対する脱穀性能および搬送性能の向上を図ることができる。
【0058】
左右の側縁部24Cには、湾曲部24Aの内面と受網17の内面とを一連に繋ぐ案内面50aを有するように屈曲形成された鋼板製の継目部材50が着脱可能にボルト連結されている。このように、受網17と天板24との継ぎ目に位置することにより処理物との接触が激しくなる継目部材50を着脱可能に構成したことにより、この継目部材50が、処理物との接触によって著しく摩耗した場合には、継目部材50のみを簡単に取り換えることができる。つまり、例えば、この継目部材50を天板24に着脱不能に溶接した場合のように、摩耗した継目部材50とともに天板24の全体を交換する、といった手間や経済的な不利を招くことなく、継目部材50の摩耗に対する処置を適切に行うことができる。
【0059】
ちなみに、各扱歯48の先端と各送塵弁49の下縁との間には、送塵弁49による処理物の案内を良好にするために小さいクリアランスが設定されている。また、各扱歯48の先端と受網17の内面との間には、単粒化穀粒の受網17からの漏下を促進させるために、各扱歯48の先端と各送塵弁49の下縁との間に設定したクリアランスよりも大きいクリアランスが設定されている。
【0060】
図3、図4、図6〜8および図10に示すように、扱胴16において、その掻込部41の外周面には、2枚の支持プレート41Aが螺旋状に溶接されている。そして、それらの各支持プレート41Aの背面に、対応する螺旋羽根43が、それらの外縁側を対応する支持プレート41Aの外縁よりも外方側に突出させた状態で、着脱可能にボルト連結されている。
【0061】
つまり、この扱胴16においては、その回転に伴って、フィーダ13によって供給口25に供給搬送された刈取穀稈を後方に向けて掻き込み搬送することにより、刈取穀稈と激しく接触し、その接触に起因した摩耗が生じ易くなる2枚の螺旋羽根43が、扱胴16の掻込部41に着脱可能に装備されており、これにより、長期の使用によって各螺旋羽根43が著しく摩耗した場合には、螺旋羽根43のみを簡単に取り換えることができる。その結果、例えば、螺旋羽根43を掻込部41に着脱不能に溶接した場合のように、摩耗した螺旋羽根43とともに掻込部41を取り換える、といった手間や経済的な不利を招くことなく、螺旋羽根43の摩耗に対する処置を適切に行うことができる。
【0062】
なお、各支持プレート41Aは、それらの前面と掻込部41の外周面とにわたるように溶接された複数の補強リブ41Bによって補強されている。
【0063】
図3、図4、図6、図13および図14に示すように、脱穀装置5において、その前壁26と受網17との間には、フィーダ13によって供給口25に供給搬送された刈取穀稈を受け止めて、2枚の螺旋羽根43による刈取穀稈の掻き込み搬送を補助する搬送補助ガイド51が配備されている。搬送補助ガイド51は、掻込部41の下部側を下方から覆う正面視略U字状にボルト連結される左右一対のガイド部材51A,51Bによって構成されている。左右のガイド部材51A,51Bは、脱穀装置5の前壁26、および、脱穀装置5の上部に前後向きに配備した左右一対の支持フレーム52に着脱可能にボルト連結されるステンレス製の第1プレート51aに、脱穀装置5の前壁26から受網17にわたるガイド面を形成するステンレス製の第2プレート51bを溶接して構成されている。
【0064】
つまり、この脱穀装置5においては、2枚の螺旋羽根43による刈取穀稈の掻き込み搬送を補助することにより、刈取穀稈と激しく接触し、その接触に起因した摩耗が生じ易くなる搬送補助ガイド51を、着脱可能に装備するとともに、扱胴16の回転方向上手側に位置する左側のガイド部材51Aと、扱胴16の回転方向下手側に位置する右側のガイド部材51Bとに左右に分割可能な左右2分割構造に構成しているのであり、これにより、長期の使用によって搬送補助ガイド51の全体が著しく摩耗した場合には、搬送補助ガイド51のみを簡単に取り換えることができる。また、長期の使用によって、搬送補助ガイド51における左右いずれかのガイド部材51A,51Bが著しく摩耗した場合には、摩耗の著しいガイド部材51A,51Bのみを簡単に取り換えることができる。その結果、例えば、搬送補助ガイド51を受網17や左右の支持フレーム52などに着脱不能に溶接した場合のように、搬送補助ガイド51とともに受網17または左右の支持フレーム52を取り換える、あるいは、搬送補助ガイド51を分割不能に構成した場合のように、搬送補助ガイド51の左右いずれか一方側が著しく摩耗した場合であっても搬送補助ガイド51の全体を取り換える、といった手間や経済的な不利を招くことなく、搬送補助ガイド51の摩耗に対する処置を適切に行うことができる。
【0065】
しかも、搬送補助ガイド51は、腐蝕に強く強度の高いステンレス製であることから、摩耗による取り換えの頻度を低減することができる。
【0066】
図3、図5、図6および図15に示すように、受網17は、同一形状に形成された4つの受網部材53によって構成され、左右の支持フレーム52に着脱可能にボルト連結されている。各受網部材53には、矩形状に枠組みされた基枠53Aが備えられている。基枠53Aの枠内には、帯状鋼板からなる複数の縦桟53Bが、扱胴16の周方向に一定間隔を隔てる状態で前後向きに整列配備されている。また、円弧状に湾曲形成された帯状鋼板からなる複数の第1横桟53Cが、扱胴16の支軸方向となる前後方向に所定間隔を隔てる状態で左右向きに整列配備されている。さらに、円弧状に湾曲形成されたピアノ線材からなる複数の第2横桟53Dが、隣接する第1横桟53Cの間において、前後方向に一定間隔を隔てる状態で左右向きに整列配備されている。そして、基枠53Aの枠内に形成される網目が、扱胴16の周方向に沿う方向の長さが前後方向に沿う方向の長さよりも長くなる横長の矩形状となるように、各桟53B〜53Dの配置間隔が設定されている。
【0067】
つまり、扱胴16が回転駆動される脱穀処理時には、刈取穀稈に対する脱穀処理で得られた単粒化穀粒などが、扱胴16の回転に伴って、その回転方向に流動することを考慮して、受網17を、その網目が扱胴16の回転方向に長い横長の矩形状となるように構成してある。これにより、受網17を、その網目が扱胴16の脱穀処理方向(前後方向)に長い縦長の矩形状となるように構成する場合に比較して、単粒化穀粒などが受網17の前部側から漏下し易くなる。その結果、受網17の前部側からの単粒化穀粒の漏下が抑制されることに起因した脱ぷ粒の発生を効果的に抑制することができる。また、各受網部材53を同一形状に形成したことで、受網17の生産性や組み付け性を向上させることができる。
【0068】
図3および図16に示すように、粗選別用のチャフシーブ31は、その選別方向下手側ほど上方に位置する後上がりの傾斜姿勢でシーブケース29にボルト連結された単一の選別プレート54で構成されている。
【0069】
選別プレート54の前部側(選別プレート54の全体に対する前側の約1/3の領域)には、平面視矩形状に形成された複数の漏下孔54Aが、前列の漏下孔54Aの間に後列の漏下孔54Aが位置する千鳥状に整列形成されている。選別プレート54の後部側(選別プレート54の全体に対する後側の約2/3の領域)には、選別片54a,54bを有する平面視矩形状に形成された複数の漏下孔54B,54Cが、前列の漏下孔54B,54Cの間に後列の漏下孔54B,54Cが位置する千鳥状に整列形成されている。
【0070】
各選別片54a,54bのうち、選別プレート54の左右中央側に位置する選別片54aは、その選別方向下手側ほど幅狭で上方に位置する鱗状に打ち出し形成されている。選別プレート54の左右両端に位置する選別片54bは、左右中央側の選別片54aよりも短尺の矩形状で、その選別方向下手側ほど上方に位置するように打ち出し形成されている。
【0071】
つまり、粗選別用のチャフシーブ31を単一の選別プレート54で構成することから、例えば、チャフシーブ31を、帯鋼板からなる多数のチャフリップを前後方向に一定間隔を隔てるように整列配備して構成する場合などに比較して、構成の簡素化やコストの削減を図ることができる。
【0072】
そして、単粒化穀粒の含有率が高い選別処理物が供給されるチャフシーブ31の前部側に選別片54a,54bを備えていない漏下孔54Aを形成したことで、チャフシーブ31の前部側から下方のグレンパン33やグレンシーブ34に漏下する単粒化穀粒が多くなる。その結果、グレンパン33やグレンシーブ34の下方に位置する1番回収部21での単粒化穀粒の回収率を高めることができる。
【0073】
また、チャフシーブ31の後部側に、選別片54a,54bを備えた漏下孔54B,54Cを千鳥状で前後左右に整列形成したことにより、篩い選別処理においては、チャフシーブ31上の選別処理物が左右方向に片寄りなく均等に分配されることになる。これにより、単粒化穀粒の各漏下孔54B,54Cからの漏下を促進させることができる。
【0074】
さらに、チャフシーブ31を後上がりの傾斜姿勢で装備したことにより、チャフシーブ31を水平姿勢で装備する場合に比較して、篩い選別処理において、チャフシーブ31が選別処理物を選別処理方向上手側の上方に向けて押し出す力が大きくなる。そのため、篩い選別処理の際には、選別処理物の選別方向下手側への搬送が抑制されるとともに、選別処理物の上下動が激しくなって、選別処理物の比重差選別がより効果的に行われることになり、よって、比重の大きい穀粒の各漏下孔54B,54Cからの漏下が促進されるとともに、単粒化穀粒が排出口23から機外に放出される3番ロスの発生を効果的に抑制することができ、結果、穀粒回収効率の向上を図ることができる。
【0075】
その上、チャフシーブ31における左右両端の選別片54bを、左右中央側の選別片54aよりも短尺に形成したことで、チャフシーブ31における選別処理物が堆積し易い左右両端部の漏下孔54Cからの穀粒などの漏下を促進させることができる。その結果、チャフシーブ31の左右両端部での選別処理物の堆積に起因した選別効率の低下を回避することができる。
【0076】
ちなみに、チャフシーブ31に形成される選別片54a,54bを備えていない漏下孔54Aと、選別片54a,54bを備えた漏下孔54B,54Cとの割合は、選別する穀粒の種類などに応じて種々の変更が可能である。
【0077】
また、選別プレート54の前部側に、短尺で矩形状の選別片54bを有するように平面視矩形状に形成された複数の漏下孔54Cを、前列の漏下孔54Cの間に後列の漏下孔54Cが位置する千鳥状に整列形成するようにしてもよい。
【0078】
図3に示すように、唐箕20からの選別風のうち、上段の風路R1を通る選別風は、シーブケース29に形成した風路R4を通って、扱胴16の第2プレート45に向けて流動するように設定されている。これにより、第2プレート45によって脱穀処理方向下手側への流動が阻止される処理物を、扱胴16の周囲に向けて風力搬送することができる。その結果、処理物が第2プレート45の直前箇所で堆積して、脱穀処理に支障を来す虞を未然に回避することができる。
【0079】
図3および図6に示すように、扱胴16は、その後端に位置する扱歯48Aが、受網17の後端よりも後方に位置して排稈口18に臨むようになっている。つまり、扱胴16の後端においては、受網17が存在しないことで、その周囲に比較的大きい空間が形成された状態となっている。これにより、扱胴後端の扱歯48Aに脱粒穀稈が絡み付いていたとしても、その脱粒穀稈は、扱胴16の回転に伴う遠心力で、その扱歯48Aの先端から抜け出るようになる。その結果、扱胴16の後端での扱歯48Aに対する引っ掛かりに起因した脱粒穀稈の滞留を効果的に抑制することができ、脱粒穀稈の排稈口18からの放出を促進させることができる。
【0080】
〔別実施形態〕
【0081】
〔1〕扱胴16としては、その扱き処理部42が、円筒状に形成された胴部、掻込部41に備えた2枚の螺旋羽根43と連なるように胴部の外周に装備した2枚のスクリュー、および、各スクリューの外周部に外方に向けて突出する状態で所定間隔を隔てて着脱可能に装備された多数の扱歯、などによってドラム式に構成したものであってもよい。
【0082】
〔2〕扱胴16としては、その前端部41の外周面に単一の螺旋羽根43を着脱可能に取り付けたものであってもよく、また、その前端部41の外周面に3枚以上の螺旋羽根43を着脱可能に取り付けたものであってもよい。
【0083】
〔3〕扱胴16としては、その前端部41の外周面に、螺旋羽根43が着脱可能に取り付けられる複数の支持金具を螺旋状に整列配備したものであってもよい。
【0084】
〔4〕螺旋羽根43としては、複数の羽根状部材を、扱胴前端部41の外周面に螺旋状に整列配備して構成したものであってもよい。
【0085】
〔5〕搬送補助ガイド51としては、左右に分割不能に構成したものであってもよく、また、3分割以上に分割可能に構成したものであってもよい。
【0086】
〔6〕搬送補助ガイド51としては、扱胴16の回転方向下手側に位置する部分51Bのみが着脱可能となるように構成したものであってもよい。
【0087】
〔7〕搬送補助ガイド51の素材として、ステンレス以外の炭素鋼などの鋼材を採用するようにしてもよい。
【0088】
〔8〕継目部材50としては、受網17に着脱可能に取り付けられたものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】全稈投入型コンバインの全体側面図
【図2】全稈投入型コンバインの全体平面図
【図3】脱穀装置の縦断側面図
【図4】脱穀装置の前端部の構成を示す一部縦断正面図
【図5】脱穀装置の前後中間部の構成を示す一部縦断正面図
【図6】扱胴および搬送補助ガイドの構成を示す要部の平面図
【図7】扱胴の構成を示す要部の横断平面図
【図8】螺旋羽根の取り付け構造を示す要部の断面図
【図9】扱胴の構成を示す扱胴の縦断背面図
【図10】扱胴の別構成を示す要部の横断平面図
【図11】継目部材の構成を示す要部の縦断正面図
【図12】送塵弁の長さおよび配置を示す要部の横断平面図
【図13】搬送補助ガイドの構成を示す要部の平面図
【図14】搬送補助ガイドの構成を示す要部の縦断側面図
【図15】受網の構成を示す要部の斜視図
【図16】チャフシーブの構成を示す要部の斜視図
【符号の説明】
【0090】
16 扱胴
17 受網
24 天板
41 前端部(扱胴)
43 螺旋羽根
50 継目部材
50a 案内面
51 搬送補助ガイド
51B 搬送補助ガイドの扱胴回転方向下手側部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱胴の前端部に、その前端部に向けて供給搬送された刈取穀稈を、前記扱胴の回転に伴って後方に向けて掻き込み搬送する螺旋羽根を装備してある全稈投入型コンバインの脱穀構造であって、
前記螺旋羽根を着脱可能に取り付けてあることを特徴とする全稈投入型コンバインの脱穀構造。
【請求項2】
前記扱胴の下方に、前記扱胴の前端部を下方から覆うように配置されることにより、前記扱胴の前端部に向けて供給搬送された刈取穀稈を受け止めて、前記螺旋羽根による刈取穀稈の掻き込み搬送を補助する搬送補助ガイドを設け、
前記搬送補助ガイドを、その少なくとも前記扱胴の回転方向下手側に位置する部分が着脱可能となるように構成してあることを特徴とする請求項1に記載の全稈投入型コンバインの脱穀構造。
【請求項3】
前記扱胴の下方に、前記扱胴の回転に伴って脱穀処理される刈取穀稈を受け止めるとともに脱穀処理で得られた処理物を漏下させる受網を、前記扱胴を下方から覆うように配備し、
前記扱胴の上方に、前記扱胴の回転に伴って前記扱胴の上部に向けて搬送された刈取穀稈および前記処理物を前記受網に向けて案内する天板を、前記扱胴を上方から覆うように配備し、
前記受網と前記天板との間に、それらの内面を一連に繋ぐ案内面を有するように形成された継目部材を着脱可能に装備してあることを特徴とする請求項1または2に記載の全稈投入型コンバインの脱穀構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−263913(P2008−263913A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−114283(P2007−114283)
【出願日】平成19年4月24日(2007.4.24)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】