説明

内燃機関の排気浄化装置

【課題】 フィルタ等の粒子状物質捕集手段に堆積した粒子状物質を低減できる内燃機関の排気浄化装置を提供する。
【解決手段】 本発明の内燃機関の排気浄化装置は、入口21a側から出口21b側へ延びる多孔質壁部21cにて仕切られ、かつ、入口21側又は出口21b側の一方が交互に閉塞された複数の貫通空間S,..,Sを有し、内燃機関1の排気通路4に配置されたフィルタ21と、出口21b側が閉塞された貫通空間S内を移動可能な状態で排気通路4に設けられた複数の粒状触媒24,..,24と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気通路に配置され、排気ガスの粒子状物質を捕集する内燃機関の排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の排気浄化装置として、いわゆるウォールフロータイプのフィルタを備え、このフィルタの上流側に酸化触媒を担持するとともに、下流側にNOx触媒を担持するものが知られている(特許文献1参照)。その他、本発明に関連する先行技術文献として、特許文献2及び3が存在する。
【0003】
【特許文献1】特開2003−1067号公報
【特許文献2】特開2003−245560号公報
【特許文献3】特開2004−154647号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の装置において、排気ガスの温度が低い条件では、例えばディーゼルエンジンから排出される粒子状物質が酸化されずにフィルタの基材上に堆積する場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、堆積した粒子状物質を低減できる内燃機関の排気浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の排気浄化装置は、入口側から出口側へ延びる多孔質壁部にて仕切られ、かつ、前記入口側及び前記出口側の少なくとも一方が閉塞された複数の貫通空間を有し、内燃機関の排気通路に配置された粒子状物質捕集手段と、前記複数の貫通空間のうち前記出口側が閉塞された貫通空間内を移動可能な状態で前記排気通路に設けられた複数の粒状体と、を具備することにより上述した課題を解決する(請求項1)。
【0007】
この発明によれば、内燃機関の排気通路を流れる排気ガスの運動エネルギを利用して、粒状体を粒子状物質捕集手段の貫通空間内で移動させることができる。このため、貫通空間内に堆積した粒子状物質(以下、PMという。)に粒状体を衝突させて粉砕できるので、貫通空間内に堆積したPMを低減できる。
【0008】
本発明の排気浄化装置において、前記粒子状物質捕集手段は、前記入口側が前記出口側に対して鉛直下方に位置するように傾けられて前記排気通路に設けられてもよい(請求項2)。この場合、内燃機関が停止した場合には、貫通空間内の粒状体が重力によって粒子状物質捕集手段の上流側の排気通路に集められ、その後、内燃機関が運転されたときには、再び粒状体を貫通空間内へ移動させることができるので、粒子状物質捕集手段の出口側に粒状体が停留することを防止できる。
【0009】
本発明の排気浄化装置において、前記複数の粒状体には、前記多孔質壁部の最大細孔径よりも大きな粒状体が含まれていてもよい(請求項3)。この場合は、最大細孔径よりも大きな粒状体が多孔質壁部を通過できないか、又は通過しにくくなるので、各粒状体が粒子状物質捕集手段の下流側に流失することを抑制できる。なお、多孔質壁部の最大細孔径よりも大きな粒状体とは、公知の方法、例えばJIS K3832で規定されるバブルポイント法により得られたバブルポイントに基づいて算出された多孔質壁部の最大細孔径と同一直径の円形孔を通過できない粒状体を意味する。例えば、粒状体の形状が球体であれば、その直径が最大細孔径よりも大きい場合がこれに該当し、また、粒状体の形状が長軸を回転軸とした楕円回転体であれば、その短軸の長さが最大細孔径よりも大きい場合がこれに該当する。
【0010】
本発明の排気浄化装置において、前記複数の粒状体には、酸化能を有する触媒物質が担持されている粒状体が含まれていてもよい(請求項4)。この場合は、酸化能を有する触媒物質が担持された粒状体が堆積したPMに接触して、PMの酸化を促進できるので堆積したPMを効果的に低減できる。
【0011】
本発明の排気浄化装置において、前記複数の粒状体には、前記多孔質壁部の硬度以下の表面の硬度を有する粒状体が含まれていてもよい(請求項5)。この場合は、粒状体と多孔質壁部との干渉による多孔質壁部の摩滅を抑制できる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によれば、貫通空間内を移動可能な状態で内燃機関の排気通路に複数の粒状体が設けられているので、貫通空間内に堆積したPMに粒状体を衝突させて粉砕でき、貫通空間内に堆積したPMを低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、本発明の排気浄化装置を内燃機関に適用した実施形態を示している。内燃機関1は、4つの気筒2,..,2が一列に並べられた直列4気筒型のディーゼルエンジンで、吸気通路3、排気通路4、及び内燃機関1に対して過給を行うターボ過給機5をそれぞれ備えている。吸気通路3には、吸気流量を調整可能なスロットルバルブ6と、ターボ過給機5のコンプレッサ5aと、コンプレッサ5aにて圧縮された吸気を冷却するインタークーラ7と、が設けられている。排気通路4には、ターボ過給機5のタービン5bと、排気ガス中の有害物質を削減するための排気浄化装置20と、が設けられている。吸気通路3と排気通路4とはEGR通路6にて接続されて排気ガスの一部が排気通路4から吸気通路3へ還流される。EGR通路6には、吸気通路3に還流させるべき排気ガスを冷却するEGRクーラ7と、排気ガスの還流量を調整するためのEGRバルブ8と、がそれぞれ設けられている。内燃機関1には、各気筒2に対応させて4つのインジェクタ9,..,9が設けられている。各インジェクタ9はコモンレール10に接続される。コモンレール10は、燃料タンク(不図示)から燃料を汲み上げてコモンレール10に圧送するサプライポンプ11に接続される。
【0014】
排気浄化装置20は、内燃機関1の排気ガス中のPMを捕集するともに、NOxを吸蔵及び還元する機能を有するフィルタ21と、フィルタ21の上流側に設けられたNOx吸蔵還元触媒22と、フィルタ21の下流側に設けられた酸化触媒23と、PMの酸化を促進させる機能を有する複数の粒状触媒(粒状体)24,..,24とを備えている。フィルタ21とNOx触媒22との間には温度センサ25が、フィルタ21と酸化触媒23との間には排気ガスの空燃比を検出するA/Fセンサ26が、それぞれ設けられ、これらのセンサの出力信号は図示しないエンジンコントロールユニット(ECU)に入力される。また、排気浄化装置20は、フィルタ21及びNOx触媒22によって吸蔵されたNOxを還元させるために、還元剤(燃料)を排気通路4に添加する燃料添加インジェクタ28を備えている。燃料添加インジェクタ28はサプライポンプ11と接続される。添加用インジェクタ28による燃料の添加は、フィルタ21及びNOx触媒22のそれぞれに吸蔵されたNOxを還元させる必要に応じ、温度センサ25及びA/Fセンサ26からの入力信号に基づいてECUにて制御される。
【0015】
フィルタ21は、入口21a側が出口21b側に対して鉛直下方に位置するように傾けられて排気通路4に設けられている。フィルタ21は、図2(a)及び(b)に詳しく示したように、入口21a側から出口21b側に延びる多孔質壁部21cによって仕切られた複数の貫通空間S,..,Sを有している。多孔質壁部21cは、0.3mmの厚さを有し、例えばセラミック等の多孔質材料で構成される。その他、多孔質壁部21cをアルミナ、シリカ−アルミナ、ゼオライト、コーディエライト、層状酸化物等の多孔質材料で構成してよい。各貫通空間Sは、入口21a側及び出口21b側の少なくとも一方がプラグ21dにて閉塞される。本実施形態では、入口21a側が閉塞された貫通空間Sと、出口21b側が閉塞された貫通空間Sと、が互い違いに並べらている。多孔質壁部21cの細孔径は、PMを十分に捕集可能な値に設定される。本実施形態では、多孔質壁部21cの最大細孔径は、JIS K3832で規定されるバブルポイント法により得られたバブルポイントに基づいて算出された値として、120μmに調整されている。平均細孔径は30μmである。フィルタ21の入口21aに導かれた排気ガスは、図2(b)の矢印で示した経路を通り、出口21bに導かれる。
【0016】
多孔質壁部21cには、白金(Pt)や酸化セリウム(CeO2)等の酸化触媒物質が担持されるとともに、NOxを吸蔵する機能を持つカリウム(K)、バリウム(Ba)等のアルカリ金属や、カルシウム(Ca)等のアルカリ土類、ランタン(La)等の希土類等の一つ又はこれらの組合せからなるNox吸蔵物質が担持されている。これにより、フィルタ21は、NOx触媒22と同様の機能を有し、更に、酸化触媒物質の作用により捕集したPMの酸化を促進する機能を有する。
【0017】
複数の粒状触媒24,..,24は、図3にも示したように、出口21b側が閉塞された貫通空間S内を移動可能な状態で排気通路4に設けられている。図3の矢印は排気ガスの流れ方向を示している。複数の粒状触媒24,..,24には、多孔質壁部21cに対する通り抜けを抑制するため、多孔質壁部21cの最大細孔径よりも大きいものが含まれる。本実施形態では、篩等の選別手段を利用して150μm〜250μmの範囲で各粒状触媒24の大きさが揃えられている。各粒状触媒24は、図4に示したように、セラミックや金属等の材料で構成されたコア24aと、コア24aを覆いセラミック等の材料で構成されたコート層24bと、を備えている。コート層24bには、PMの酸化を促進させる機能を持つ白金(Pt)や酸化セリウム(CeO2)等の酸化触媒物質が担持されている。各粒状触媒24は、微視的な凹凸を無視すると概略球形状をなしている。各粒状触媒24の形状は、転がり抵抗が小さい形状ほど好ましいが、貫通空間S内を移動可能なものであればどのような形状でもよい。例えば、図5に示したように長軸を回転軸とした楕円回転体であってもよい。また、複数の粒状触媒24,..,24には、多孔質壁部21cとの干渉による摩滅を防止するため、多孔質壁部21cの硬度以下の表面の硬度を有するものが含まれる。
【0018】
以上の排気浄化装置20によれば、内燃機関1の排気ガスの運動エネルギーを利用して各粒状触媒24を貫通空間S内で移動させることができる。例えば、図6に示したように、多孔質壁部21cの表面にPMが堆積し、その後排気ガスの温度が上昇することにより、多孔質壁部21cの表面と接しているPMについては酸化除去されるが、一部のPMが燃え残るため、多孔質壁部21cの表面との間に100μm程度の間隙Pを有した状態でPM堆積層Qが形成される場合がある。フィルタ21がこのような状態になると、多孔質壁部21cに担持された酸化触媒物質の作用が間隙Pによって妨げられてPM堆積層Qが固化し、PM堆積層Qが壊れにくい構造で保持される事態を招く。以上の排気浄化装置20によれば、PM堆積層Qに粒状触媒24が衝突し、PM堆積層Qを細かく粉砕できる。或いは、粒状触媒24がPM堆積層Qの表面に接触してPM堆積層Qの酸化を促進できるため、PM堆積層Qを低減できる。
【0019】
フィルタ21は、入口21a側が出口21b側に対して鉛直下方に位置するように傾けられて排気通路4に設けられているため、各粒状触媒24がフィルタ21の出口21b側に停留することを防止できる。即ち、内燃機関1が停止したときには各粒状触媒24が重力によってフィルタ21の入口側の排気通路4に集められ、再度内燃機関1が運転したときには各粒状触媒24を貫通空間Sに向けて移動させることができる。
【0020】
本発明は、以上の実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の形態にて実施してよい。例えば、粒子状物質捕集手段としては、粒子状物質を捕集できるものであればよく、酸化触媒物質のみ担持されているものや、いずれの触媒物質も担持されていない捕集手段でもよい。また、フィルタ21の構造は、図2示した形態に限定されず、入口21a側が閉塞された貫通空間Sと出口21b側が閉塞された貫通空間Sとが交互に並んでいなくてもよいし、入口21a側と出口21b側の両方が閉塞された貫通空間Sを含んでいてもよい。
【0021】
また、粒状触媒24,..,24の代わりに触媒を担持していない粒状体を排気通路4に設けてもよい。この場合でも、排気ガスの運動エネルギーを利用してその粒状体を堆積したPMに衝突させることができるので、堆積したPMを低減可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の排気浄化装置を内燃機関に適用した実施形態を示した図。
【図2】フィルタの構造の詳細を示した図であり、(a)は縦断面模式図、(b)はフィルタの入口側から見た側面図である。
【図3】図1のA部を拡大して示した模式図。
【図4】粒状触媒の構造の詳細を示した図。
【図5】粒状触媒の他の形態の詳細を示した図。
【図6】PM堆積層の状態を示した図。
【符号の説明】
【0023】
1 内燃機関
4 排気通路
21 フィルタ(粒子状物質捕集手段)
21a 入口
21b 出口
21c 多孔質壁部
24 粒状触媒(粒状体)
S 貫通空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口側から出口側へ延びる多孔質壁部にて仕切られ、かつ、前記入口側及び前記出口側の少なくとも一方が閉塞された複数の貫通空間を有し、内燃機関の排気通路に配置された粒子状物質捕集手段と、前記複数の貫通空間のうち前記出口側が閉塞された貫通空間内を移動可能な状態で前記排気通路に設けられた複数の粒状体と、を具備することを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項2】
前記粒子状物質捕集手段は、前記入口側が前記出口側に対して鉛直下方に位置するように傾けられて前記排気通路に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項3】
前記複数の粒状体には、前記多孔質壁部の最大細孔径よりも大きな粒状体が含まれることを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項4】
前記複数の粒状体には、酸化能を有する触媒物質が担持されている粒状体が含まれることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項5】
前記複数の粒状体には、前記多孔質壁部の硬度以下の表面の硬度を有する粒状体が含まれることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の内燃機関の排気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−183472(P2006−183472A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−374771(P2004−374771)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】