説明

内視鏡装置

【課題】記録された顕微鏡的拡大観察像等を再生する際に、それが体内のどの部位のものだったのかを通常観察画像との相関により常に確実に確認することができる内視鏡装置を提供すること。
【解決手段】2系統の画像信号処理部2,3のいずれか一方に撮像信号が入力したときはその画像信号処理部2(又は3)において画像信号にスタンプされるタイムスタンプ情報を他の画像信号処理部3(又は2)に送信すると共に、他の画像信号処理部3(又は2)からタイムスタンプ情報が送られてきた時にはそれを受信してそのタイムスタンプ情報に基づく時刻をその画像信号処理部2(又は3)で画像信号にスタンプさせるタイムスタンプ情報送受信回路23,33を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、互いに独立した2系統の内視鏡画像信号を得るようにした内視鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
体内の管腔臓器内を内視鏡で視覚的に観察して病変等の有無を検査する手技が広く一般に行われている。しかし、そのような内視鏡検査で病変を見つけても、その病変が癌であるか否か等の確定診断を行うのは困難な場合が多い。
【0003】
そこで、内視鏡検査で怪しいと思われた部分については生検鉗子等を用いて組織採取が行われるが、癌でも何でもない場合が大半であるにもかかわらず、単なる検査のために体内の管腔壁の粘膜を損傷させて出血させてしまうことになる。
【0004】
そこで近年は、例えば共焦点内視鏡等のように1mmに満たない範囲の顕微鏡的拡大像を得ることができる内視鏡装置が開発され、生検組織を採取することなく、内視鏡による直接観察だけで癌であるか否かの確定診断を行えるようになってきている(例えば、特許文献1、2)。
【特許文献1】特開2004−344201
【特許文献2】特開2005−640
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び2に記載された発明においてはいずれも、顕微鏡的拡大観察機能と共に体内の広い範囲を観察する通常観察機能が設けられていて、顕微鏡的拡大観察の画像信号と通常観察の画像信号とが別個に記録される。
【0006】
しかし、そのように顕微鏡的拡大観察の画像信号と通常観察の画像信号とが別個に記録されると、顕微鏡的拡大観察像を再生した時にそれが体内のどの部位の像だったのか、周囲との関係が全くわからないため、事後の検討に支障をきたす場合がある。
【0007】
そこで、拡大観察の画像信号と通常観察の画像信号の各々に観察時刻をスタンプ(タイムスタンプ)して再生画面でその時刻を確認できるようにすれば、拡大観察画像と通常観察画像の時間的な相関がとれて、拡大観察画像を再生する際にそれが体内のどの部位のものだったのかを通常観察画像で確認することができる。
【0008】
しかし、拡大観察画像と通常観察画像の各々にスタンプされる時刻には各装置毎にバラツキがあるので、メンテナンスをきちんとしていないと、そのズレが大きくなって拡大観察画像と通常観察画像の相関がとれなくなってしまう場合がある。
【0009】
そこで本発明は、記録された顕微鏡的拡大観察像等を再生する際に、それが体内のどの部位のものだったのかを通常観察画像との相関により常に確実に確認することができる内視鏡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明の内視鏡装置は、互いに独立した2系統の内視鏡撮像信号を互いに独立して処理して画像信号を出力する2系統の画像信号処理部と、2系統の画像信号処理部から出力される画像信号を互いに独立して記録する2系統の画像信号記録手段とが設けられて、2系統の画像信号処理部の各々において現在の時刻が画像信号にスタンプされるようにした内視鏡装置において、2系統の画像信号処理部のいずれか一方に撮像信号が入力したときはその画像信号処理部において画像信号にスタンプされるタイムスタンプ情報を他の画像信号処理部に送信すると共に、他の画像信号処理部からタイムスタンプ情報が送られてきた時にはそれを受信してそのタイムスタンプ情報に基づく時刻をその画像信号処理部で画像信号にスタンプさせるタイムスタンプ情報送受信回路を設けたものである。
【0011】
なお、タイムスタンプ情報送受信回路が、2系統の画像信号処理部の各々に設けられていてもよく、2系統の内視鏡画像信号が通常観察画像信号と拡大観察画像信号であってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、顕微鏡的拡大観察画像と通常観察画像等の2系統の内視鏡観察画像にスタンプされる時刻にずれが発生しないので、2系統の画像の各々にスタンプされた時刻から両画像の時間的な相関が正確にとれて、記録された拡大観察像を再生する際等にそれが体内のどの部位のものだったのかを通常観察画像によって常に確実に確認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
互いに独立した2系統の内視鏡撮像信号を互いに独立して処理して画像信号を出力する2系統の画像信号処理部と、2系統の画像信号処理部から出力される画像信号を互いに独立して記録する2系統の画像信号記録手段とが設けられて、2系統の画像信号処理部の各々において現在の時刻が画像信号にスタンプされるようにした内視鏡装置において、2系統の画像信号処理部のいずれか一方に撮像信号が入力したときはその画像信号処理部において画像信号にスタンプされるタイムスタンプ情報を他の画像信号処理部に送信すると共に、他の画像信号処理部からタイムスタンプ情報が送られてきた時にはそれを受信してそのタイムスタンプ情報に基づく時刻をその画像信号処理部で画像信号にスタンプさせるタイムスタンプ情報送受信回路を設ける。
【実施例】
【0014】
図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図2は、本発明の実施例の内視鏡装置の全体構成を略示しており、1は、例えば100〜140°程度の広い視野角の通常観察用光学系と、例えば共焦点光学系等のように被写体の顕微鏡的拡大観察像を得ることができる拡大観察用光学系とが併設された拡大観察用内視鏡である。
【0015】
そして、それらの光学系を通して得られた通常観察像の撮像信号と拡大観察像の撮像信号とを処理するための通常観察画像信号処理部2と拡大観察画像信号処理部3とが、互いに独立して設けられ、その各々に、テレビモニタ4,7、ビデオテープレコーダ(VTR)等のような記録装置5,8(画像信号記録手段)、及びプリンタ6,9等が接続されている。また、通常観察画像信号処理部2と拡大観察画像信号処理部3との間を直接接続する接続ケーブル10が設けられている。
【0016】
図3は、通常観察画像信号処理部2と拡大観察画像信号処理部3の内部構成を略示しており、通常観察画像信号処理部2には、拡大観察用内視鏡1側に設けられている通常観察用の撮像装置の駆動等を行って撮像信号を受けるドライブ/プロセス回路21と、撮像装置側から送られてきた撮像信号を処理して画像信号を出力する画像信号処理回路22と、画像信号にスタンプする時刻の情報(タイムスタンプ情報)を送受信するためのタイムスタンプ情報送受信回路23と、通常観察画像信号処理部2内の全体的動作制御を行うためのMPU内蔵のシステムコントローラ24等が設けられている。
【0017】
また、拡大観察画像信号処理部3には、拡大観察用内視鏡1側に設けられている拡大観察用の撮像装置の駆動等を行って撮像信号を受けるドライブ/プロセス回路31と、撮像装置側から送られてきた撮像信号を処理して画像信号を出力する画像信号処理回路32と、画像信号にスタンプする時刻の情報(タイムスタンプ情報)を送受信するためのタイムスタンプ情報送受信回路33と、拡大観察画像信号処理部3内の全体的動作制御を行うためのMPU内蔵のシステムコントローラ34等が設けられ、二つの画像信号処理部2,3のタイムスタンプ情報送受信回路23,33どうしが接続ケーブル10によって接続されている。
【0018】
図1は、通常観察画像信号処理部2と拡大観察画像信号処理部3の各々においてタイムスタンプの制御を行うために実行されるソフトウェアの内容を示すフロー図であり、Sは処理ステップを示す。
【0019】
通常観察画像信号処理部2においては、まず、タイムスタンプ情報送受信回路23に拡大観察画像信号処理部3のタイムスタンプ情報送受信回路33からタイムスタンプ情報を受信しているかどうかが判定され(S1)、タイムスタンプ情報を受信している場合には、その受信したタイムスタンプ情報(時刻)を画像信号処理回路22に出力して、その時刻を通常観察の画像信号にスタンプし(S2)、S1に戻る。
【0020】
S1において拡大観察画像信号処理部3のタイムスタンプ情報送受信回路33からタイムスタンプ情報を受信していない場合は、ドライブ/プロセス回路21(又は画像信号処理回路22)に撮像信号の入力があるかどうかが判定され(S3)、入力がない場合はS1に戻る。
【0021】
S3で撮像信号の入力がある場合には、その入力時刻を、画像信号処理回路22に出力して通常観察の画像信号にスタンプすると同時に、拡大観察画像信号処理部3のタイムスタンプ情報送受信回路33にタイムスタンプ情報として送信して(S4)、S1に戻る。
【0022】
拡大観察画像信号処理部3においても、通常観察画像信号処理部2と立場が逆転しただけの同じ制御が行われる。
その結果、図4に略示されるように、通常観察画像用のテレビモニタ4に表示される時刻と拡大観察画像用のテレビモニタ7に表示される時刻とが常に正確に一致するので、拡大観察像が得られた観察位置をそれと同時刻の(及びその前後の)通常観察像から正しく判断することができる。
【0023】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、例えば、タイムスタンプされる『時刻』は、通常の24時間又は12時間表示の時刻に限らず、装置が管理する独自の『時刻』であってもよい。また、タイムスタンプ情報を送り出すのが通常観察画像信号処理部2と拡大観察画像信号処理部3のタイムスタンプ情報送受信回路23,33の一方のみであるようにしても差し支えない。
【0024】
また、本発明は、2系統の内視鏡画像信号が通常観察画像信号と拡大観察画像信号の組み合わせ以外の場合の内視鏡装置にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施例の内視鏡装置の画像信号処理部で実行されるソフトウェアの内容を示すフロー図である。
【図2】本発明の実施例の内視鏡装置の全体構成の略示図である。
【図3】本発明の実施例の内視鏡装置の画像信号処理部の内部構成を略示するブロック図である。
【図4】本発明の実施例の内視鏡装置で行われるタイムスタンプの表示例を示す略示図である。
【符号の説明】
【0026】
1 拡大観察用内視鏡
2 通常観察画像信号処理部
3 拡大観察画像信号処理部
5,8 ビデオテープレコーダ(画像信号記録手段)
10 接続ケーブル
23,33 タイムスタンプ情報送受信回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに独立した2系統の内視鏡撮像信号を互いに独立して処理して画像信号を出力する2系統の画像信号処理部と、上記2系統の画像信号処理部から出力される画像信号を互いに独立して記録する2系統の画像信号記録手段とが設けられて、上記2系統の画像信号処理部の各々において現在の時刻が画像信号にスタンプされるようにした内視鏡装置において、
上記2系統の画像信号処理部のいずれか一方に撮像信号が入力したときはその画像信号処理部において画像信号にスタンプされるタイムスタンプ情報を他の画像信号処理部に送信すると共に、他の画像信号処理部からタイムスタンプ情報が送られてきた時にはそれを受信してそのタイムスタンプ情報に基づく時刻をその画像信号処理部で画像信号にスタンプさせるタイムスタンプ情報送受信回路を設けたことを特徴とする内視鏡装置。
【請求項2】
上記タイムスタンプ情報送受信回路が、上記2系統の画像信号処理部の各々に設けられている請求項1記載の内視鏡装置。
【請求項3】
上記2系統の内視鏡画像信号が通常観察画像信号と拡大観察画像信号である請求項1又は2記載の内視鏡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−202929(P2007−202929A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−27874(P2006−27874)
【出願日】平成18年2月6日(2006.2.6)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【出願人】(500299492)オプティスキャン ピーティーワイ リミテッド (16)
【Fターム(参考)】