説明

内視鏡装置

【課題】主光源からの照明光に補助光源からの光を導入して照明光の光量を増加させた場合でも、観察画像の色味が変化することなく、常に明るい画像が得られる内視鏡装置を提供する。
【解決手段】内視鏡装置は、中心波長が互いに異なる第1、第2の照明光を生成する主光源33と、第2の照明光と実質的に同一の中心波長を有する第3の照明光を生成する補助光源45と、撮像手段と、光量制御手段と、第1の照明光の光量に対する第2、第3の照明光の合計光量の光量比に応じて観察画像を色味補正する色味補正手段とを備える。光量制御手段は、目標光量が主光源による最大出力光量となるまでは主光源により光量制御し、目標光量が主光源の最大出力光量を超える場合には、主光源を最大出力光量に維持したまま第3の照明光を導入して光量制御する。色味補正手段は、第3の照明光の導入によって光量比が変化する場合に観察画像の色味を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡装置は、生体内の観察等を行う医療分野で広く用いられている。内視鏡装置は、白色光を生体内の被写体に照射して観察する通常観察モードの他に、通常観察モードにおける照明光よりも狭い波長帯域(ピーク半値幅)の狭帯域光を被写体に照射して観察を行う狭帯域光観察モードを備えたものがある。狭帯域光観察モードは、生体の組織表層の微細血管に対する検出感度が高まり、微細血管が強調された画像が得られる(特許文献1参照)。
この狭帯域光観察モードでは、図7に示すように、血液の第一吸収ピーク(中心波長415nm)と第二吸収ピーク(中心波長545nm)の波長の光、即ち、B光とG光の狭帯域光を照明光として用いる。これらの照明光は、キセノンランプ等の白色光源と、上記特定の波長光を選択的に透過させる光学フィルタとを組み合わせることで、所望の中心波長とピーク半値幅を有する狭帯域光として抽出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−218283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のキセノンランプから抽出されるB光及びG光の狭帯域光は、その最大光量がキセノンランプの分光放射強度で決定される。そして、血液の第一吸収ピークである波長415nm前後のB光の狭帯域光は、組織表層の微細血管を検出する際の重要な光となる。しかし、図8に示すように、波長415nm前後におけるキセノンランプの分光放射強度は、長波側の放射強度より相対的に低く、且つ血液による光吸収が強いため光の減衰が大きくなる。そのため、狭帯域光観察モードにおいては、システム全体としての観察画像の最大明るさは、B光の最大光量に依存して暗くなる傾向がある。そして、内視鏡観察時に照明光を出射する照明窓と観察対象との距離が離れるほど光量不足が顕著となり、内視鏡診断に適した観察画像の取得が困難となる。
【0005】
上記B光の最大光量は、主光源であるキセノンランプとは別途に設けた補助光源からの光を追加導入することで改善できる。しかし、補助光源によりB光の光量のみ選択的に増加させて観察画像を明るくすると、B光とG光の光量比が変化するため、表示される観察画像の色味が変わってしまう。この観察画像の色味変化は、微妙な色合いの変化を観察する内視鏡診断においては無視できない場合がある。
そこで本発明は、主光源からの照明光に補助光源からの光を導入して照明光の光量を増加させた場合でも、観察画像の色味が変化することなく、常に明るい画像が得られる内視鏡装置を提供し、これにより内視鏡診断精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は下記構成からなる。
内視鏡挿入部の先端から照明光を照射して被検体を撮像し、前記被検体の観察画像を得る内視鏡装置であって、
中心波長が互いに異なる第1の照明光及び第2の照明光を生成する主光源と、
前記第2の照明光と実質的に同一の中心波長を有する第3の照明光を生成する補助光源と、
前記被検体を撮像して前記観察画像の画像信号を出力する撮像手段と、
前記第1、第2、第3の照明光の合計光量を目標光量に制御する光量制御手段と、
前記第1の照明光の光量に対する前記第2、第3の照明光の合計光量の光量比に応じて、前記観察画像の色味補正を行う色味補正手段と、
を備え、
前記光量制御手段が、前記目標光量が前記主光源による最大出力光量となるまでは、前記主光源により光量制御し、前記目標光量が前記主光源の最大出力光量を超える場合に、前記主光源を最大出力光量に維持したまま前記補助光源から前記第3の照明光を導入して光量制御し、
前記色味補正手段が、前記第3の照明光の導入によって前記光量比が変化する場合に、変化前の前記光量比の下で観察される観察画像と実質的に同じ色味の画像となるように、前記観察画像の色味を補正する色再現処理を前記画像信号に施す内視鏡装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、主光源からの照明光に補助光源からの光を導入して照明光の光量を増加させた場合でも、観察画像の色味が変化することなく、常に明るい画像を得ることができる。このため、観察画像の遠景部位に対しても明るい画像で観察でき、内視鏡診断精度を高められる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態を説明するための図で、内視鏡装置のブロック構成図である。
【図2】回転フィルタの平面図である。
【図3】(A)〜(D)は、それぞれ目標光量に応じた狭帯域B光、狭帯域G光の光量の状態を示す説明図である。
【図4】色味補正を施す色再現処理のフローチャートである。
【図5】後段信号処理部で行われる画像処理のフローチャートである。
【図6】明るい場所に順応したときの波長に対する人間の比視感度を示すグラフである。
【図7】従来の狭帯域光観察モードを説明する図で、血液の吸収ピークを示すグラフである。
【図8】一般的なキセノンランプの分光放射強度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態を説明するための図で、内視鏡装置のブロック構成図である。内視鏡装置は、内視鏡挿入部の先端から被検体に照明光を照射し、被検体を撮像して観察画像を得て、モニタに表示する機能を有する。
図1に示すように、内視鏡装置100は、体腔内に挿入される細長状の内視鏡挿入部11を有する内視鏡13と、内視鏡13に供給する照明光を生成する光源装置15と、内視鏡13で撮像された画像信号に対する信号処理を行うプロセッサ17と、撮像された観察画像を表示するモニタ19とを有して構成される。
【0010】
内視鏡13は、上述の内視鏡挿入部11と、この内視鏡挿入部11の基端に設けられた操作部21とを有する。内視鏡挿入部11内には照明光を伝送するライトガイド23が挿通されており、ライトガイド23の後端はコネクタタ25を介して光源装置15に着脱自在に接続されている。このライトガイド23は、光源装置15から供給される照明光を伝送し、内視鏡挿入部11の先端の照明窓27から照明光を出射する。
【0011】
内視鏡挿入部11の先端には、照明窓27に隣接して観察窓29が設けてある。観察窓29の内側にはCCD(Charge Coupled Device)型イメージセンサや、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型イメージセンサ等の撮像素子31が配置されている。撮像素子31は、プロセッサ17から駆動信号が入力され、撮像した観察画像の撮像信号をプロセッサ17に出力する。なお、照明窓27、観察窓29の内側には図示しないレンズ等の光学部材が配置されている。
【0012】
光源装置15は、白色光を生成するキセノンランプ(主光源)33と、このキセノンランプ33の光路P1上に配置され光量制限のための絞り機構35と、集光レンズ37と、照明光を面順次光にするための回転フィルタ39と、この回転フィルタ39を回転駆動するためのモータ41と、回転フィルタ39を内周側又は外周側に光路P1上に配置させるための移動用モータ43を備える。また、光源装置15は、中心波長が415nmの狭帯域光を発生する半導体発光素子であるLED(補助光源)45と、このLED45の光路P2上に配置され光量制限のための絞り機構47と、集光レンズ49と、上記光路P1、P2を合わせてライトガイド23の基端面51に向けて照明光を出射させるダイクロイックフィルタ53とを備える。
【0013】
LED45は、単一の発光素子に限らず、複数の発光素子の集合体であってもよい。また、補助光源としては、青色発光の半導体レーザで構成してもよい。
【0014】
絞り機構35は、主光源であるキセノンランプ33の光量調節部として機能し、観察画像の明るさが一定になるように調光部73によって制御されている。また、絞り機構47も同様に、補助光源であるLED45の光量調節部として機能し、調光部73によって制御される。また、LED45は、システムコントローラ77により、キセノンランプ33からの面順次光の出射タイミングに同期して点灯制御される。なお、絞り機構47の代わりに、LED45をパルス変調駆動して光量制御を行うことも可能である。
【0015】
回転フィルタ39は、中心を回転軸とする円板状に構成されて、図2に示すように、赤、緑、青の波長の光を透過するRフィルタ55R、Gフィルタ55G、Bフィルタ55Bが、外周側で円周方向に等間隔で配置されている。また、内周側には、フィルタ55G,55Bよりも透過波長幅の狭い狭帯域光生成用の狭帯域Gフィルタ57G、狭帯域Bフィルタが等間隔で配置されている。狭帯域Gフィルタ57Gは中心波長540nmの狭帯域光を選択的に透過する光学フィルタで、狭帯域Bフィルタ57Bは、中心波長415nmの狭帯域光を選択的に透過する光学フィルタである。
【0016】
本構成の回転フィルタ39は、通常観察用のフィルタと、狭帯域光観察用のフィルタとを共に備え、選択的にいずれかのフィルタを使用するものであるが、通常観察用の回転フィルタと、狭帯域光観察用の回転フィルタとを別々に用意して照明光の光軸上で組み合わせる構成としてもよい。
【0017】
また、上記の狭帯域光は、波長ピークの半値幅が30nmであることが好ましく、更に好ましくは20nmである。
【0018】
プロセッサ17は、撮像素子31を駆動する駆動信号を発生する撮像素子ドライバ61と、撮像素子31から出力された撮像信号をA/D変換するA/D変換部63を有する。また、プロセッサ17は、A/D変換された撮像信号に対する前段処理を行う前段信号処理部65と、同時化メモリ67a,67b,67cと、画像処理を行う後段信号処理部69と、出力用信号を生成する映像信号処理部71とを備え、この順に画像信号が流れるように構成されている。
【0019】
そして、プロセッサ17は、A/D変換された撮像信号が入力され光源装置15を調光制御するための調光信号を出力する調光部73と、調光部73及び記憶部75に接続されて光源装置15の光量制御を行うシステムコントローラ77を備える。調光部73は、入力された撮像信号に基づいて、キセノンランプ33の絞り機構35とLED45の絞り機構47の開度を制御して、照明光の調光を行う。上記光源装置15とプロセッサ17は、光量制御手段としてのシステムコントローラ77が統括制御する。
【0020】
次に、上記構成の内視鏡装置100の作用について説明する。
本構成の内視鏡装置100は、基本的には、光源装置15のキセノンランプ33を発光させ、RGBの回転フィルタ39を介することで面順次光を生成し、この面順次光を照明光として被検体に照射する。そして、照射した面順次光の戻り光を撮像してプロセッサ17で同時化処理することでカラー画像を取得するようになっている。
【0021】
内視鏡装置100の観察モードとしては、上記のように白色光を照射して観察する通常観察モード、通常観察における照明光よりも狭い波長帯域の狭帯域光を被検体に照射することにより、通常観察に比べて生体組織表層の毛細血管や微細構造模様を強調した画像で観察する狭帯域光観察モードがある。これら観察モードは、内視鏡13の操作部21やプロセッサ17に配置された図示しない操作ボタン等により、任意のタイミングで切り換え可能となっている。
【0022】
上記内視鏡装置100による被検体の撮像から内視鏡画像を表示するまでの制御内容は次の通りである。
システムコントローラ77は、観察モードが通常観察モードに設定された場合、キセノンランプ33を点灯させ、モータ41を駆動して回転フィルタ39を回転駆動する。これと共に、撮像素子ドライバ61から撮像素子31に駆動信号を出力させ、撮像素子31からR,G,Bの面順光の照射により撮像したR画像信号、G画像信号、B画像信号をそれぞれ出力させる。このときの回転フィルタ39は、外周側のRフィルタ55R、Gフィルタ55G、Bフィルタ55Bが光路P1上に順次配置されるようにする。
【0023】
撮像素子31から出力されたR,G,Bの画像信号は、A/D変換部63によりデジタルデータ化されて前段信号処理部65に送られる。前段信号処理部65は、入力された各画像信号を増幅やカラーバランスの調整を行い、調整後の画像信号を同時化メモリ67a,67b,67cにそれぞれ分配して一時記憶させる。つまり、調整後のR画像信号を同時化メモリ67aに記憶させ、同様にG画像信号を同時化メモリ67bに記憶させ、B画像信号を同時化メモリ67cに記憶させる。
【0024】
後段信号処理部69は、同時化メモリ67a,67b,67cに記憶された各画像信号を同時化処理すると共に、後述する所定の画像処理を施して観察画像の信号を生成するための色味補正手段として機能する。映像信号処理部71は、生成された観察画像の信号を映像信号に変更してモニタ19に出力する。
【0025】
また、A/D変換部63によりデジタルデータ化された観察画像の信号は、調光部73にも入力される。調光部73は、システムコントローラ77が制御する撮像素子31のA/E信号と、入力された観察画像の信号とに基づいて、観察画像が所望の明るさの画像となるように絞り機構35,47を駆動することで、照明光を光量制御する。
【0026】
一方、観察モードが狭帯域光観察モードに設定された場合、システムコントローラ77は、光源装置15の移動用モータ43を駆動して、回転フィルタ39の照明光の光路P1上に、内周側の狭帯域Gフィルタ57G、狭帯域Bフィルタ57Bが順次配置されるようにする。
【0027】
この場合には、照明窓27から出射される照明光は、狭帯域のG光と狭帯域のB光となり、撮像素子31からは、狭帯域のG光照射時に撮像された狭帯域G画像信号と、狭帯域B光照射時に撮像された狭帯域B画像信号とがそれぞれ別フレームで出力される。
【0028】
狭帯域G画像信号と、狭帯域B画像信号は、前段信号処理部65により前述の前段処理が施され、同時化メモリ67b,67cに一時記憶されて、後段信号処理部69にて同時化処理と、画像処理が施される。これにより得られる観察画像は、生体組織表層の毛細血管や微細構造模様が強調された画像となる。
【0029】
次に、上記の狭帯域光観察モードにおいて、システムコントローラ77が、主光源であるキセノンランプ33及び補助光源であるLED45と、それぞれの光量を変更する絞り機構35,47とを制御して、照明光量を目標光量に制御することについて詳細に説明する。
【0030】
システムコントローラ77は、被検体を撮像して得た画像信号の輝度情報と、その画像信号の撮像時におけるA/E信号に基づいて次フレームの目標光量を設定し、この設定された目標光量になるように照明光を調光する。その際、システムコントローラ77は、B光とG光の光量比を一定に保持したままB光、G光の各光量を増減制御する制御パターンと、キセノンランプ33を最大出力光量にすると共に、光量比を変化させながらLED45からのB光を導入して光量を増減制御する制御パターンとを、目標光量に応じて切り換える。
【0031】
図3(A)〜(D)は、それぞれ目標光量に応じた狭帯域のB光(以下、B光と略記する)、狭帯域のG光(以下、G光と略記する)の光量の状態を示す説明図である。本構成の内視鏡装置100においては、図3(A)に示すように、主光源であるキセノンランプ33によるB光の光量が最大となる目標光量までは、LED光源45を点灯させず、キセノンランプ33のみ点灯させて光量制御する。
【0032】
この光量制御は、絞り機構35の開口量を調節することで行われ、B光とG光の光量比は一定に維持される。なお、キセノンランプ33は、図9に示す分光強度分布を有しており、可視短波長に対する分光強度が相対的に低い。つまり、キセノンランプ33によるB光の最大出力光量は、G光の最大主力光量より低くなっている。
【0033】
図3(B)に示すように、目標光量が増加して、B光の光量がキセノンランプ33による最大出力光量に達すると、これ以上、B光の光量を増加させることはできない。そこで、B光の光量増加を更に必要とする場合は、図3(C)に示すように、システムコントローラ77は、LED光源45を点灯させて、不足するB光の光量を補填する。この光量制御は、絞り機構47の開口量を調節することで行われる。このB光の光量補填により、光量比を一定に維持したままで照明光の光量を増加できる。
【0034】
そして、目標光量が更に増加して、図3(C)に示すように、キセノンランプ33によるG光の光量が最大出力光量に達すると、システムコントローラ77は、図3(D)に示すように、キセノンランプ33によるG光を最大出力光量に維持したまま、LED45によるB光の光量を増加させる。このとき、B光とG光の光量比が変化するので、照明光の色調が変化する。この照明光の色調のずれを、映像信号処理部71により撮像された観察画像で補正する。そのため、光量比が変化して色調のずれた照明光の下で被検体を撮像しても、変化前の光量比の下で撮像される観察画像と実質的に同じ色味の観察画像が得られる。
【0035】
次に、上記の狭帯域光観察モードにおいて、観察画像の色味補正を施す色再現処理について、図4に示すフローチャートを用いて説明する。
まず、システムコントローラ77は、主光源であるキセノンランプ33を点灯して(S11)、予め定めた基準光量の照明光を被検体に照射する。次に、システムコントローラ77は、検体内に挿入された内視鏡挿入部11の撮像素子31から、狭帯域のB光及び狭帯域光のG光による照明光で面順次方式にて被検体を撮像し、狭帯域B画像信号(B光画像)と狭帯域G画像信号(G光画像)を取得する(S12)。そして、A/E信号が記憶された記憶部75から、これらB光画像とG光画像の撮像時におけるA/E信号を読み込む(S12)。
【0036】
システムコントローラ77は、取得したB光画像とG光画像の輝度情報から適正光量を求める(S14)。適正光量は、例えば取得画像の平均輝度と照明光量との関係をテーブル化した光量テーブルを予め記憶部75に記憶しておき、システムコントローラ77が調光部73を通じて得た取得画像の平均輝度に応じて、この光量テーブルを参照することで設定する。
【0037】
システムコントローラ77は、設定された適正光量に対応するB光、G光の目標光量を求め、絞り機構35を制御するための絞り制御パラメータを算出する(S15)。このとき、照明光を適正光量にするには、絞り制御パラメータが最大値(絞り開放状態)を超えたかを判定する(S16)。絞り制御パラメータが最大値を超えない場合(図3(A),(B)の状態)は、絞り機構35を制御してキセノンランプ33から抽出する光量を制御する(S17)。
【0038】
絞り制御パラメータが最大値を超える場合(図3(C),(D)の状態)は、絞り機構35を解放状態に制御して、補助光源であるLED45からの出射光をキセノンランプ33によるB光に導入する(S18)。この絞り制御パラメータが最大値を超えるかの判定は、面順次光となるB光、G光それぞれに対して個別に行われる。
【0039】
以上のように照明光を適正光量に設定して、被検体に向けて照射し、その反射光を撮像素子31により撮像することで、狭帯域B光画像、狭帯域G光画像を得る(S19)。こられ狭帯域B光画像、狭帯域G光画像は、プロセッサ17の後段信号処理部69で同時化処理が施され、観察画像の信号となる。
【0040】
そして、後段信号処理部69は、この同時化された観察画像の信号に対して、色再現処理のための画像処理を施す(S21)。画像処理後の観察画像は、モニタ19に表示される(S22)。以上のS13〜S22の処理を内視鏡装置100により撮像終了するまで繰り返す(S23)。
【0041】
ここで、後段信号処理部69で行われる画像処理の内容について、図5に示すフローチャートに基づき説明する。
まず、システムコントローラ77は、同時化された観察画像の撮像時に、照明光として補助光が導入され、しかも補助光の導入によりB光とG光の光量比が変化したか(図3(D)の状態)を判定する(S31)。
【0042】
光量比が変化した場合は、この観察画像が撮像されたときのB光とG光の光量比αを算出する(S32)。光量比αは(1)式で表される。
α=(B光の光量)/(G光の光量) ・・・(1)
ただし、α≧1である。
【0043】
一方、光量比が変化しなかった場合は、光量比αを基準値(B光の最大出力光量/G光の最大出力光量)に設定する(S33)。そして、この光量比αを用いて、色再現パラメータMを(2)式から算出する(S34)。
【0044】
【数1】

【0045】
係数Aijは、例えばA11=1、A12=0,A21=0,A22=1.2,A31=0,A32=0.8 とすることができる。
【0046】
次に、算出された色再現パラメータMを用いて、同時化された観察画像の信号(G,B)を、(3)式により、R,G,Bの3チャンネルの補正観察画像信号(Rch,Gch,Bch)に変換する(S35)。
【0047】
【数2】

【0048】
そして、補正観察画像信号(Rch,Gch,Bch)を輪郭強調処理等の画質調整を行い(S36)、得られた画像信号を表示用画像とする。
【0049】
色再現パラメータMによる補正観察画像信号への変換は、上記のようにマトリクス演算で求める他にも、LUT(ルックアップテーブル)による変換等、種々の形態で実現可能である。
【0050】
また、上記の補正観察画像信号(Rch,Gch,Bch)に変換する処理は、表示画像のRチャンネルの信号を増幅する効果がある。しかし、人間の視感度特性は赤色の明るさ変化には鈍感であるため、増幅によるノイズ成分の増大等の副作用は目立たず、表示画像の画質を損なうことがない。図6は、明るい場所に順応したときの波長に対する人間の比視感度(Luminosity function)を示すグラフである。比視感度とは、人間の目が最も強く感じる波長555nmの光を“1”として、他の波長の明るさを感じる度合いを、比を用いて表現したものである。図6に示すように、赤色は緑色よりも相対的に比視感度が低くなっている。
【0051】
また、上記の内視鏡装置100においては、異なる照明光を面順次に照射して、得られた複数の撮像画像を合成することで、狭帯域光観察の観察画像を生成している。このような面順次式の構成以外にも、各画素にカラーフィルタを備えて構成されたカラー撮像素子を用いた同時式の撮像光学系で被検体を撮像して、観察画像を生成する構成にすることもできる。この場合、各チャンネルの撮像タイミングが同時であるため、動きの速い被検体を観察する場合でも良好な観察画像を得ることができる。
【0052】
以上説明したように、本構成による内視鏡装置によれば、主光源からの照明光に補助光源からの光を導入して照明光の光量を増加させる際、光量比が変化しても、被検体の観察画像を色味変化させることなく内視鏡診断に適した状態に維持できる。また、観察画像が暗くなりやすい遠景の撮像場面等であっても、青色光が主光源に加えて補助光源からも追加照射されるので、常に明るい観察画像が得られる。これにより、内視鏡診断精度を向上できる。
【0053】
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【0054】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 内視鏡挿入部の先端から照明光を照射して被検体を撮像し、前記被検体の観察画像を得る内視鏡装置であって、
中心波長が互いに異なる第1の照明光及び第2の照明光を生成する主光源と、
前記第2の照明光と実質的に同一の中心波長を有する第3の照明光を生成する補助光源と、
前記被検体を撮像して前記観察画像の画像信号を出力する撮像手段と、
前記第1、第2、第3の照明光の合計光量を目標光量に制御する光量制御手段と、
前記第1の照明光の光量に対する前記第2、第3の照明光の合計光量の光量比に応じて、前記観察画像の色味補正を行う色味補正手段と、
を備え、
前記光量制御手段が、前記目標光量が前記主光源による最大出力光量となるまでは、前記主光源により光量制御し、前記目標光量が前記主光源の最大出力光量を超える場合に、前記主光源を最大出力光量に維持したまま前記補助光源から前記第3の照明光を導入して光量制御し、
前記色味補正手段が、前記第3の照明光の導入によって前記光量比が変化する場合に、変化前の前記光量比の下で観察される観察画像と実質的に同じ色味の画像となるように、前記観察画像の色味を補正する色再現処理を前記画像信号に施す内視鏡装置。
この内視鏡装置によれば、主光源からの照明光に補助光源からの照明光を導入して光量を増加させた場合でも、観察画像の色味が変化することなく、常に明るい観察画像が得られる。このため、内視鏡装置により被検体の遠景部位を撮像する場合でも、色味変化のない明るい画像で観察が行え、内視鏡診断精度を高められる。
【0055】
(2) (1)の内視鏡装置であって、
前記主光源が、白色光源と、該白色光源の光路上に配置され、前記第1の照明光を選択的に透過させる第1のフィルタ及び前記第2の照明光を選択的に透過させる第2のフィルタを有する回転フィルタと、を備える内視鏡装置。
この内視鏡装置によれば、白色光源と回転フィルタにより面順次光を生成できる。
【0056】
(3) (2)の内視鏡装置であって、
前記主光源が、前記第2の照明光の最大出力光量が、前記第1の照明光の最大出力光量より小さく、
前記光量制御手段が、前記主光源による前記第2の照明光の光量が前記主光源による最大出力光量を超え、且つ、前記主光源による前記第1の照明光の光量が前記主光源による最大出力光量以下となる目標光量である場合は、前記補助光源による前記第3の照明光を導入して前記光量比を一定に維持し、
前記主光源による前記第1の照明光の光量が、前記主光源による最大出力光量を超える目標光量である場合は、前記光量比を変更して前記補助光源による前記第3の照明光を導入する内視鏡装置。
この内視鏡装置によれば、第1の照明光より第2の照明光の最大光量が小さい場合でも、補助光源によって第3の照明光を導入することで目標光量への不足分が補え、光量比を一定に維持できる。また、第1の照明光が主光源による最大出力光量を超える場合は、光量比を変更して第3の照明光を導入すると共に、色味補正手段により観察画像の色味を補正する。これにより、照明光の色調変化によらずに観察画像の色味を一定にできる。
【0057】
(4) (3)の内視鏡装置であって、
前記光量制御手段が、前記第3の照明光を前記第2の照明光の出力タイミングに同期して出力させ、
前記撮像手段が、前記第1の照明光の出力タイミングで撮像した第1の画像信号と、前記第2の照明光又は前記第2、第3の照明光の出力タイミングで撮像した第2の画像信号とを交互に出力し、
前記色味補正手段が、前記第1の画像信号と前記第2の画像信号とを同時化処理して、該同時化処理された画像信号に前記色再現処理を施す内視鏡装置。
この内視鏡装置によれば、面順次に取り込んだ画像信号を同時化処理し、複数チャンネルの画像信号を生成する。そして、この同時化処理後の画像信号に対して色再現処理を施すことで、撮像手段の解像度を最大限に活かして第1の画像信号と第2の画像信号を取り込むことができ、高品位な観察画像が得られる。
【0058】
(5) (4)の内視鏡装置であって、
前記色味補正手段が、前記第1の画像信号と前記第2の画像信号との位置ずれ補正を行った後に両画像信号の合成を行う内視鏡装置。
この内視鏡装置によれば、異なるタイミングで取り込まれる画像信号の位置ずれが補正されることで、ブレのない高品位な観察画像が得られる。
【0059】
(6) (3)の内視鏡装置であって、
前記撮像手段が、主に前記第1の照明光に感度を有する第1の受光部と、主に前記第2、第3の照明光に感度を有する第2の受光部を備えた撮像素子を有し、
前記色味補正手段が、前記出力された画像信号から前記第1の受光部及び前記第2の受光部からの両画像信号を抽出し、該両画像信号を合成した後、当該合成した画像信号に対して前記色再現処理を施す内視鏡装置。
この内視鏡装置によれば、第1、第2の受光部を有する同時式の撮像素子を用いることで、同じタイミングで撮像した画像が得られる。このため、動きのある被検体に対する追従性能が向上し、より高画質な観察画像が得られる。
【0060】
(7) (1)〜(6)のいずれか一つの内視鏡装置であって、
前記光量制御手段が、開口量が調節可能な絞り機構により光量制御する内視鏡装置。
この内視鏡装置によれば、絞り機構により連続的な光量制御が容易に行え、光量調整の階調幅をきめ細かに設定できる。
【0061】
(8) (1)〜(7)のいずれか一つの内視鏡装置であって、
前記被検体が生体組織表層の微細血管を含み、
前記第1の照明光が、中心波長略540nmの緑色光であり、
前記第2、第3の照明光が、中心波長略415nmの青色光である内視鏡装置である。
この内視鏡装置によれば、例えば生体組織の粘膜層あるいは粘膜下層に発生する新生血管の微細構造、病変部の強調等、通常観察では得られない生体情報を簡単に可視化できる。例えば、観察対象が癌病変部である場合、青色光を粘膜組織に照射すると組織表層の微細血管や微細構造の状態がより詳細に観察できるため、病変部をより正確に診断できる。
【0062】
(9) (8)の内視鏡装置であって、
前記第2、第3の照明光が、それぞれ中心波長のピーク半値幅が30nm以下の狭帯域光である内視鏡装置。
この内視鏡装置によれば、青色光がピーク半値幅の狭い狭帯域光であることにより、組織表層の微細血管や微細構造の状態等の生体情報をより明瞭に観察できる。
【0063】
(10) (1)〜(9)のいずれか一つの内視鏡装置であって、
前記白色光源が、キセノンランプである内視鏡装置。
この内視鏡装置によれば、ブロードな分光特性を有する白色光が得られ、通常観察時における演色性が向上する。また、青色光や緑色光を効率良く抽出できる。
【0064】
(11) (1)〜(10)のいずれか一つの内視鏡装置であって、
前記補助光源が、発光ダイオード又は半導体レーザ光源である内視鏡装置。
この内視鏡装置によれば、高い応答性のため高速制御が行え、高効率で高強度の光が得られる。
【0065】
(12) (1)〜(11)のいずれか一つの内視鏡装置であって、
前記観察画像の画像信号が、R(赤色)信号,G(緑色)信号,B(青色)信号からなり、
前記色味補正手段が、前記G信号に対しては、前記光量比に基づいた係数を前記G信号に乗じてRch(赤色)信号に設定し、前記B信号に対しては、当該B信号に所定の係数を乗じてGch(緑)信号及びBch(青)信号に設定し、前記Rch,Gch,Bchの信号からなる補正観察画像信号を出力する内視鏡装置。
この内視鏡装置によれば、観察画像のG信号とB信号を、光量に応じて生体組織の血管表示に適した視認性の高い補正観察画像(Rch,Gch,Bch)にできる。
【符号の説明】
【0066】
11 内視鏡挿入部
13 内視鏡
15 光源装置
17 プロセッサ
19 モニタ
31 撮像素子
33 キセノンランプ
35 絞り機構
39 回転フィルタ
45 LED
47 絞り機構
57G 狭帯域Gフィルタ
57B 狭帯域Bフィルタ
65 前段信号処理部
67a,67b,67c 同時化メモリ
69 後段信号処理部
73 調光部
75 記憶部
77 システムコントローラ
100 内視鏡装置
α 光量比

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡挿入部の先端から照明光を照射して被検体を撮像し、前記被検体の観察画像を得る内視鏡装置であって、
中心波長が互いに異なる第1の照明光及び第2の照明光を生成する主光源と、
前記第2の照明光と実質的に同一の中心波長を有する第3の照明光を生成する補助光源と、
前記被検体を撮像して前記観察画像の画像信号を出力する撮像手段と、
前記第1、第2、第3の照明光の合計光量を目標光量に制御する光量制御手段と、
前記第1の照明光の光量に対する前記第2、第3の照明光の合計光量の光量比に応じて、前記観察画像の色味補正を行う色味補正手段と、
を備え、
前記光量制御手段が、前記目標光量が前記主光源による最大出力光量となるまでは、前記主光源により光量制御し、前記目標光量が前記主光源の最大出力光量を超える場合に、前記主光源を最大出力光量に維持したまま前記補助光源から前記第3の照明光を導入して光量制御し、
前記色味補正手段が、前記第3の照明光の導入によって前記光量比が変化する場合に、変化前の前記光量比の下で観察される観察画像と実質的に同じ色味の画像となるように、前記観察画像の色味を補正する色再現処理を前記画像信号に施す内視鏡装置。
【請求項2】
請求項1記載の内視鏡装置であって、
前記主光源が、白色光源と、該白色光源の光路上に配置され、前記第1の照明光を選択的に透過させる第1のフィルタ及び前記第2の照明光を選択的に透過させる第2のフィルタを有する回転フィルタと、を備える内視鏡装置。
【請求項3】
請求項2記載の内視鏡装置であって、
前記主光源が、前記第2の照明光の最大出力光量が、前記第1の照明光の最大出力光量より小さく、
前記光量制御手段が、前記主光源による前記第2の照明光の光量が前記主光源による最大出力光量を超え、且つ、前記主光源による前記第1の照明光の光量が前記主光源による最大出力光量以下となる目標光量である場合は、前記補助光源による前記第3の照明光を導入して前記光量比を一定に維持し、
前記主光源による前記第1の照明光の光量が、前記主光源による最大出力光量を超える目標光量である場合は、前記光量比を変更して前記補助光源による前記第3の照明光を導入する内視鏡装置。
【請求項4】
請求項3記載の内視鏡装置であって、
前記光量制御手段が、前記第3の照明光を前記第2の照明光の出力タイミングに同期して出力させ、
前記撮像手段が、前記第1の照明光の出力タイミングで撮像した第1の画像信号と、前記第2の照明光又は前記第2、第3の照明光の出力タイミングで撮像した第2の画像信号とを交互に出力し、
前記色味補正手段が、前記第1の画像信号と前記第2の画像信号とを同時化処理して、該同時化処理された画像信号に前記色再現処理を施す内視鏡装置。
【請求項5】
請求項4記載の内視鏡装置であって、
前記色味補正手段が、前記第1の画像信号と前記第2の画像信号との位置ずれ補正を行った後に両画像信号の合成を行う内視鏡装置。
【請求項6】
請求項3記載の内視鏡装置であって、
前記撮像手段が、主に前記第1の照明光に感度を有する第1の受光部と、主に前記第2、第3の照明光に感度を有する第2の受光部を備えた撮像素子を有し、
前記色味補正手段が、前記出力された画像信号から前記第1の受光部及び前記第2の受光部からの両画像信号を抽出し、該両画像信号を合成した後、当該合成した画像信号に対して前記色再現処理を施す内視鏡装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか一項記載の内視鏡装置であって、
前記光量制御手段が、開口量が調節可能な絞り機構により光量制御する内視鏡装置。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれか一項記載の内視鏡装置であって、
前記被検体が生体組織表層の微細血管を含み、
前記第1の照明光が、中心波長略540nmの緑色光であり、
前記第2、第3の照明光が、中心波長略415nmの青色光である内視鏡装置である。
【請求項9】
請求項8記載の内視鏡装置であって、
前記第2、前記第3の照明光が、それぞれ中心波長のピーク半値幅が30nm以下の狭帯域光である内視鏡装置。
【請求項10】
請求項1〜請求項9のいずれか一項記載の内視鏡装置であって、
前記白色光源が、キセノンランプである内視鏡装置。
【請求項11】
請求項1〜請求項10のいずれか一項記載の内視鏡装置であって、
前記補助光源が、発光ダイオード又は半導体レーザ光源である内視鏡装置。
【請求項12】
請求項1〜請求項11のいずれか一項記載の内視鏡装置であって、
前記観察画像の画像信号が、R(赤色)信号,G(緑色)信号,B(青色)信号からなり、
前記色味補正手段が、前記G信号に対しては、前記光量比に基づいた係数を前記G信号に乗じてRch(赤色)信号に設定し、前記B信号に対しては、当該B信号に所定の係数を乗じてGch(緑)信号及びBch(青)信号に設定し、前記Rch,Gch,Bchの信号からなる補正観察画像信号を出力する内視鏡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−94489(P2013−94489A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241340(P2011−241340)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】