説明

出没式筆記具

【課題】 押子が通常の掛止位置よりも前進し軸筒内へ沈み込んで異常な後退不能状態になること防ぐ。
【解決手段】 軸筒10と、軸筒内に収容された複数のリフィール21,22と、これらリフィール21,22の後端側にそれぞれ接続された複数の押子41,42と、これら押子41,42をそれぞれ軸方向へ案内するように軸筒10の外周側に設けられた複数のガイド孔51a,51dと、各ガイド孔の前方側に連続するとともに各ガイド孔よりも軸筒周方向へ幅広に形成され押子41,42の後端部を挿通可能な挿通孔51c,51fとを備え、押子42がガイド孔51dよりも前方へ移動して挿通孔51fから軸筒内へ沈み込んだ場合に、該押子42に対し、軸筒中心側から当接して、その沈み込みを規制する沈み込み規制部42hを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸筒内に収容された複数のリフィールを、軸筒外周面から突出する押子の進退操作によって選択的に出没させる出没式筆記具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の出没式筆記具には、例えば特許文献1に記載されるもののように、軸筒内に具備された複数のリフィール(ボールペン用リフィールやシャープペンシル用リフィール等)と、これらリフィールにそれぞれ接続されて軸筒外周面から外部へ突出する複数の押子と、これら押子を後方へ付勢する複数のコイルスプリングとを備えたものがある。
この従来の出没式筆記具では、選択された何れかの押子が前方へ押されると、該押子は、軸筒周壁に形成されたガイド孔に沿って前進し、該ガイド孔の前端側の掛止段部に掛止される。そして、この掛止状態で、他の押子が前進されると、先に前進して掛止状態となった前記押子に対し、後から前進した前記他の押子が当接するため、先に前進した前記押子が、前記掛止段部から外れて前記コイルスプリングの付勢力によって後退する。
また、前記従来の出没式筆記具では、前記ガイド孔の前方側に、前記ガイド孔よりも幅広の挿通孔を有する。この挿通孔は、押子を軸筒周壁に組み付ける際に、該押子の後端部を挿通させるためにある。
【0003】
ところで、前記のような構成によれば、前記押子を前記掛止状態から更に強引に前進させて軸筒内へ押圧すると、該押子が前記挿通孔から軸筒内へ沈み込み、その沈み込んだ押子の後端部が、前記挿通孔の後端縁に掛止される。
この掛止状態で、前記押子が更に軸筒中心側へ向かって押し込まれてしまうと、この押し込まれた押子が、他の二つの押子の間に挟まれたり、他の押子に当接されない位置関係となったり等するため、前述した通常の解除操作では、前記沈み込んだ押子を後退させることができなくなる場合がある。
そこで、前記従来技術では、前記押子が前記掛止段部よりも若干前進した位置で、前記コイルスプリングを全密着させて、前記押子が過剰に前進するようなことを防いでいる。
【0004】
しかしながら、前記のようにしてコイルスプリングを全密着させたとしても、悪戯等により、掛止状態の押子が強引に前進操作されると、前記全密着状態が崩れるようにしてコイルスプリングが変形し、押子が前進し前記挿通孔から軸筒内へ沈み込んで、上述した異常な後退不能状態になってしまうおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−39888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記従来事情に鑑みてなされたものであり、その課題とする処は、押子が通常の掛止位置よりも前進し軸筒内へ沈み込んで異常な後退不能状態になること防ぐことができる出没式筆記具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための技術的手段は、軸筒と、軸筒内に収容された複数のリフィールと、これらリフィールの後端側にそれぞれ接続された複数の押子と、これら押子をそれぞれ軸方向へ案内するように前記軸筒の外周側に設けられた複数のガイド孔と、各ガイド孔の前方側に連続するとともに各ガイド孔よりも軸筒周方向へ幅広に形成されて前記押子の後端部を挿通可能な挿通孔とを備え、任意の前記押子を前進させて前記ガイド孔の前端側の掛止部に掛止するとともに、その掛止状態を解除可能にした出没式筆記具であって、前記押子が前記ガイド孔よりも前方へ移動して前記挿通孔から軸筒内へ沈み込んだ場合に、該押子に対し、軸筒中心側から当接して、その沈み込みを規制する沈み込み規制部を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、以上説明したように構成されているので、以下に記載されるような作用効果を奏する。
押子がガイド孔よりも前方へ移動して挿通孔から軸筒内へ沈み込むと、この沈み込んだ押子に対し、軸筒中心側から沈み込み規制部が当接して、その沈み込みを規制する。
よって、押子が通常の掛止位置よりも前進し軸筒中心側へ沈み込んで、他の押子の間に挟まったり、解除操作不能な位置になったり等、異常な後退不能状態になること防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る出没式筆記具の一例を示す断面図である。
【図2】(a)はクリップ支持用押子の一例を示す側面図、(b)は直接操作用押子の一例を示す側面図である。
【図3】押子ガイド体の一例を示す斜視図である。
【図4】同押子ガイド体の一部分を切欠して内部構造を見せるようにした斜視図である。
【図5】直接操作用押子が軸筒内へ沈み込んだ状態を示す要部斜視図である。なお、本図では、輪郭を明確にするために、各押子において曲面と平面の境目を実線で示している。
【図6】図5における(VI)-(VI)線端面図であり、(a)は初期状態を示し、(b)は直接操作用押子が軸筒内へ沈み込んだ状態を示す。
【図7】同出没式筆記具の要部断面図であり、(a)は直接操作用押子が軸筒内へ沈み込んだ状態を示し、(b)は沈み込んだ直接操作用押子を他の押子によってせり上げている状態を示す。
【図8】本発明に係る出没式筆記具の他例について、切欠して内部構造を見せるようにした要部構造図である。
【図9】図8の(IX)-(IX)線に沿う端面図であり、(a)は初期状態を示し、(b)は直接操作用押子を没入させた状態を示す。
【図10】押子ガイド体の他例を示す斜視図である。
【図11】同押子ガイド体を斜め前方側から視た状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を実施するための一形態では、軸筒と、軸筒内に収容された複数のリフィールと、これらリフィールの後端側にそれぞれ接続された複数の押子と、これら押子をそれぞれ軸方向へ案内するように前記軸筒の外周側に設けられた複数のガイド孔と、各ガイド孔の前方側に連続するとともに各ガイド孔よりも軸筒周方向へ幅広に形成されて前記押子の後端部を挿通可能な挿通孔とを備え、任意の前記押子を前進させて前記ガイド孔の前端側の掛止部に掛止するとともに、その掛止状態を解除可能にした出没式筆記具であって、前記押子が前記ガイド孔よりも前方へ移動して前記挿通孔から軸筒内へ沈み込んだ場合に、該押子に対し、軸筒中心側から当接して、その沈み込みを規制する沈み込み規制部を設けた。
【0011】
特に、軸筒内のスペースを有効に利用できる形態としては、前記沈み込み規制部が、沈み込む押子に対する他の押子に設けられている。
【0012】
さらに、沈み込んだ押子が他の押子と軸筒周方向に並んでしまうのを防ぐ好ましい形態としては、前記押子と前記沈み込み規制部が、凹凸状に嵌り合うようにする。
【0013】
さらに、押子の軸筒軸方向への動きが妨げられないようにする好ましい形態としては、前記沈み込み規制部が、軸筒軸方向へわたる凹溝状に形成されている。
【0014】
また、他の好ましい形態としては、前記沈み込み規制部が、前記軸筒に対し径方向へ移動不能な部位に設けられている。
【0015】
さらに、沈み込む押子が周方向へずれて、解除操作され難くなるのを防ぐ形態としては、沈み込む押子に対し、他の2つの押子を軸筒周方向の両側から近接又は接触させる。
【0016】
また、好みのリフィールを容易に組み替えできるようにした好ましい形態としては、前記各押子の前端部に、リフィール後端部を着脱可能に接続する接続部を設けるとともに、複数の前記押子の前記接続部を全て同形状に形成し、これら複数の接続部の各々に対し、任意に選択されたリフィールが着脱されるようにする。
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下の説明中、「軸筒軸方向」とは、軸筒10の軸心(中心線)が延びる方向(図1に示す筆記具1の前後方向)を意味する。
また、「軸筒径方向」とは、軸筒10の直径方向(軸筒軸方向に直交する方向)を意味する。
また、「軸筒中心方向」とは、軸筒径方向に沿って軸筒中心へ向かう方向を意味する。
また、「軸筒径外方向」とは、軸筒径方向に沿って軸筒外方へ向かう方向を意味する。
【0018】
図1は、本発明に係わる出没式筆記具の一例を示している。
この出没式筆記具1は、軸筒10と、該軸筒10内に収納された複数(本実施の形態の一例では4本又は3本)のリフィール21,22と、これらリフィール21,22をそれぞれ軸方向へ案内するリフィールガイド部材30と、リフィール21,22の後端側にそれぞれ接続された複数の押子41,42と、これら押子をそれぞれ軸方向へ案内する押子ガイド体50と、軸筒10後端側に設けられて開閉操作可能なクリップ60とを備え、前記複数の押子41,42のうち、選択された任意の押子を前進させて押子ガイド体50前端側の掛止部に掛止するとともに、その掛止状態を、他の押子の前進により解除するように構成してある。
【0019】
軸筒10は、図示例によれば、前側軸筒11に、後側軸筒12を接続してなる長尺筒状の部材である。
この軸筒10の後端側には、後述する押子ガイド体50のガイド孔51a及び挿通孔51c(図3参照)に連通する窓部12c、同押子ガイド体50のガイド孔51d及び挿通孔51f(図4参照)に連通する窓部12bが設けられる。
窓部12cの軸筒周方向の幅は、押子ガイド体50の挿通孔51cの幅と略同程度に設定されている。同様に、窓部12bの軸筒周方向の幅は、押子ガイド体50の挿通孔51fの幅と略同程度に設定されている。
【0020】
なお、軸筒10の他例としては、一本の筒体からなる態様や、筒体の先端側に先細状の先口を接続した態様、3本以上の筒体からなる態様等とすることが可能である。
【0021】
複数のリフィール21,22のうち、一つはシャープペンシル用リフィール、他方のものはボールペン用リフィールである。
シャープペンシル用リフィール21は、筆記部21a側の段部21bを軸筒10前端の開口部11a1の内縁に係止された状態で、圧縮スプリング21cよりも後側の芯タンク21dが押されて軸方向へ往復動することによって、筆記部21aから鉛芯を繰り出す周知構造を有する。
また、各ボールペン用リフィール22は、インクが充填されたインク収容管22bの前端に、回転自在に転写ボールを抱持したチップ22aを嵌着してなる。
【0022】
リフィールガイド部材30は、軸筒10内における軸方向の中央よりも若干後側に固定され、シャープペンシル用リフィール21及びボールペン用リフィール22,22のそれぞれを軸方向へ貫通挿入するとともに、これらリフィール21,22のそれぞれに環装された付勢部材31の先端部を受けている。
【0023】
複数の押子41,42のうち、一つはクリップ60を支持するクリップ支持用押子41、他方のものは直接指が掛けられて操作される直接操作用押子42である。
クリップ支持用押子41は、その前端側がスペーサ43を介してシャープペンシル用リフィール21の後端部に接続され、前記付勢部材31によって後方へ付勢されている。このクリップ支持用押子41の後端側には、軸筒10外に突出してクリップ60を開閉回動可能に支持する支持突部41bが設けられる。
このクリップ支持用押子41は、装着される前記クリップ部60が指等でスライド操作されることで進退する。
【0024】
このクリップ支持用押子41は、図2(a)に示すように、後述する押子ガイド体50の外周部に沿って前後へスライドするように設けられたスライド部41aと、スライド部41aの後端側における軸筒径外方向側に突設された支持突部41bと、スライド部41aの軸筒中心側の面から軸筒中心方向へ突設されて押子ガイド体50のガイド孔51aに嵌め合わせられる被ガイド部41cと、被ガイド部41cの軸筒中心側で軸筒径方向の両側へ突出する抜止突起41fと、被ガイド部41cの最後端部に設けられた掛止凹部41gと、リフィール21(又は22)の後端部を着脱可能に接続する接続部41iとを有する。
【0025】
スライド部41aは、押子ガイド体50のガイド孔51aよりも幅(軸筒径方向の寸法)が広く、且つガイド孔51aの表側の縁51a1に沿うように軸筒軸方向へ延設された長尺状を呈する。このスライド部41aの軸筒中心側の面は、ガイド孔51aの表側の縁51a1に安定して接触するように平坦面状に形成される。
【0026】
支持突部41bは、軸筒10外へ突出してクリップ60を揺動自在に支持するための突起であり、クリップ60の回動支点となる凹状のクリップ支点部41b1と、該支持突部41bよりも後側に設けられた凹状のスプリング装着部41b2とを有する(図2(a)参照)。スプリング装着部41b2には、クリップ60の後端側を弾発するようにコイルスプリング61が装着される。
【0027】
また、被ガイド部41cは、スライド部41aの軸筒中心側の面における幅方向の中心寄りの部分から、軸筒中心方向へ向かって突出する突起であり、クリップ支持用押子41全体の後部寄りに位置するとともに、軸筒軸方向へわたる長尺状に設けられる(図2(a)参照)。
この被ガイド部41cは、押子ガイド体50のガイド孔51aに嵌り合って前後へ導かれるように、その幅寸法(軸筒周方向の寸法)が設定されている。また、この被ガイド部41cの長さ方向(軸筒軸方向)の寸法は、ガイド孔51a(図3参照)の長さよりも若干長い寸法に設定される。
【0028】
そして、前記被ガイド部41cにおける軸筒中心側の縁には、他の押子42に係合させるための前後二つの係合突起41d,41eが設けられる(図2(a)参照)。
前側の係合突起41dは、前進位置で掛止されている他の押子42の掛止状態を解除する場合に、その押子42に対し後方から当接する突起である。
後側の係合突起41eは、前進位置で掛止されている当該クリップ支持用押子41の掛止状態を解除する場合に、他の押子42によって後方から当接される突起である。
これら係合突起41d,41eのそれぞれの突端部は、断面V字状に形成される。
【0029】
また、被ガイド部41cの軸筒中心側の縁における係合突起41d及び係合突起41eよりも前端側には、先に前進した押子42が、押子ガイド体50のガイド部よりも前方へ移動して軸筒内へ沈み込んだ場合に、該押子42に対し、軸筒中心側から当接して、その沈み込みを規制する沈み込み規制部41hが設けられる。
【0030】
沈み込み規制部41hは、他の押子42の係合突起42fに対し、凹凸状に嵌り合う溝であり(図5参照)、図示例について詳細に説明すれば、その前端部と軸筒中心側の端部とを開口して軸筒軸方向へ連続する断面V字状の凹溝である。
この沈み込み規制部41hの軸筒軸方向の長さは、係合突起42fの長さと略同等か、該長さよりも若干長く設定される。
【0031】
また、抜止突起41fは、被ガイド部41cにおける軸筒中心側で軸筒周方向の両側へ突出して、ガイド孔51aの裏側に掛止される突起である。
【0032】
また、掛止凹部41gは、被ガイド部41cの最後端部に後方向きに形成された凹部であり、クリップ支持用押子41の後退位置で、ガイド孔51a後端の縁51a2に凹凸状に嵌り合う。
【0033】
また、直接操作用押子42は、図示例によれば、その前端側がボールペン用リフィール22に接続され、前記付勢部材31によって後方へ付勢されている。
【0034】
この直接操作用押子42は、ガイド孔51dの表側の縁に摺接して前後へスライドするように設けられたスライド部42aと、スライド部42aの後端側における軸筒径外方向側に突設された操作突部42bと、スライド部42aの軸筒中心側の面から軸筒中心方向へ突設されてガイド孔51dに嵌め合わせられる被ガイド部42cと、スライド部42aから軸筒径方向の両側へ突出する抜止突起42dと、リフィール21(又は22)の後端部を着脱可能に接続する接続部42iとを有する(図2(b)参照)。
【0035】
被ガイド部42cは、おおまかには、クリップ支持用押子41の被ガイド部41cから抜止突起41f及び掛止凹部41gを省いた構成とされ、前記被ガイド部41cと略同様にして、前後の係合突起42e,42f、及び沈み込み規制部42hを有する。
【0036】
クリップ支持用押子41の接続部41iと、直接操作用押子42の接続部42iとは、同形状に形成される。各接続部41i(又は42i)は、先端側部分の幅寸法を後側部分よりも大きくした形状を呈する。
図示例によれば、クリップ支持用押子41の接続部41iは、スペーサ43を介して、シャープペンシル用リフィール21に接続される。
【0037】
前記スペーサ43は、シャープペンシル用リフィール21の後端部を間接的にクリップ支持用押子41前端の接続部41iに接続する部材であり、例えば合成樹脂材料等、弾性変形可能な材料から成形される。
すなわち、一般的に、シャープペンシル用リフィールとボールペン用リフィールでは、長さ及び後端部内径が異なるため、本実施の形態ではシャープペンシル用リフィール21と押子との接続箇所にスペーサ43を介在している。なお、他例としては、前記長さ及び後端部内径を統一するとともにスペーサ43を省いて、全てのリフィールをそれぞれ押子に直接接続した態様とすることも可能である。
【0038】
また、押子ガイド体50は、クリップ支持用押子41及び直接操作用押子42のそれぞれを、リフィール21,22前端が軸筒10前端から突出した前進位置と、同リフィール21,22が軸筒10内に没入した後退位置との間でスライドさせるように支持している。
さらに、この押子ガイド体50は、クリップ支持用押子41又は直接操作用押子42を前記前進位置で係止した状態で、軸筒10に相対して軸方向へ往復動するように設けられ、その往復動操作のためのノック部52を、軸筒10後端に挿通して外部へ突出している。
この構成によれば、クリップ支持用押子41を前記前進位置で後退不能に係止した状態で、ノック部52がノック操作されると、押子ガイド体50の往復運動がクリップ支持用押子41を介してシャープペンシル用リフィール21の後部側に伝達され、シャープペンシル用リフィール21前端から鉛芯が繰り出される。
【0039】
押子ガイド体50の形状について、さらに詳細に説明すれば、この押子ガイド体50は、図3及び図4に示すように、クリップ支持用押子41及び直接操作用押子42の進退を案内するガイド筒部51と、軸筒10後端から外部へ突出するノック部52とを具備する略段付筒状に形成される。
【0040】
ガイド筒部51は、後側軸筒12の後端側に内在され、軸方向へスライド可能な略筒状に形成され、その外周側に、クリップ支持用押子41の軸方向への進退を案内するガイド孔51aと、ガイド孔51aの前方側に連続するとともに該ガイド孔51aよりも軸筒周方向へ幅広に形成された挿通孔51cとを有する(図3及び図4参照)。
【0041】
さらに、このガイド筒部51は、前記ガイド孔51aから周方向の両側に90度ずれた位置、及び180度ずれた位置に、それぞれ、直接操作用押子42の軸方向への進退を案内するガイド孔51dと、ガイド孔51dの前方側に連続するとともに該ガイド孔51dよりも軸筒周方向へ幅広な挿通孔51fとを有する。
【0042】
ガイド孔51aは、押子ガイド体50の周壁を軸筒径方向へ貫通するとともに軸筒軸方向へわたる長尺矩形状の孔であり、クリップ支持用押子41の被ガイド部41cを遊嵌する幅に形成される。
ガイド孔51aの後端側の縁51a2は、後退した際のクリップ支持用押子41の後端部に対し、凹凸状に嵌り合って、クリップ支持用押子41のがたつきを防止する。
【0043】
ガイド孔51aの前端側には、前進位置となった際のクリップ支持用押子41の後端を係止するための掛止部51bが設けられる。
この掛止部51bは、前記ガイド孔51aの表側の縁51a1の前端側に、軸筒中心方向へ階段状に凹むようにして形成される。
【0044】
そして、ガイド孔51aの前端は、該ガイド孔51aよりも軸筒周方向へ幅広な挿通孔51cに連続している。この挿通孔51cは、クリップ支持用押子41後端の支持突部41bを含むクリップ支持用押子41全体を挿通可能なように形成される。
【0045】
また、他方のガイド孔51dは、押子ガイド体50の周壁を軸筒径方向へ貫通するとともに軸筒軸方向へわたる長尺矩形状の孔であり、直接操作用押子42の被ガイド部42cを遊嵌する幅に形成される。
このガイド孔51dの前端側には、前進位置となった際の直接操作用押子42の後端を係止するための掛止部51eが、上記掛止部51bと同様にして設けられる。
【0046】
そして、ガイド孔51dの前端は、該ガイド孔51dよりも軸筒周方向へ幅広な挿通孔51fに連続している。この挿通孔51fは、直接操作用押子42後端の操作突部42bを挿通可能であって、且つ同直接操作用押子42の両抜止突起42dを挿通不能な幅に形成されている。
【0047】
なお、図3中、符号51gは、軸筒10内周面の図示しない凸部に嵌り合って、押子ガイド体50を回転不能に保持する凹部である。
また、図4中、符号51f1は、挿通孔51fの後端縁を示す。
【0048】
また、クリップ部60は、開閉操作機能付クリップであり、その後端部が軸筒中心方向へ押圧されることで、前端部を軸筒10外周面から離間するように開放し、前記押圧力が除去されると、コイルスプリング61の付勢力によって前端部を軸筒10外周面に接近させるように、クリップ支持用押子41後端側の支持突部41bに枢支されている。
このクリップ60は、窓部12cの幅よりも幅広に形成されるとともに、クリップ支持用押子41と共に前進して掛止部51bに掛止された際に軸筒10外周面に近接又は接触するように形成される。したがって、仮にクリップ60を強引に前進させて軸筒中心方向へ押圧したとしても、クリップ支持用押子41が、挿通孔51cを介して軸筒10内へ沈み込むことはない。
【0049】
次に、上記構成の出没式筆記具1について、その特徴的な作用効果を詳細に説明する。
先ず、全ての押子41,42が後退位置にある初期状態では、図6(a)に示すように、これら押子41,42は、軸筒10内にて互いに干渉しないように配置される。
【0050】
前記状態から何れかの直接操作用押子42を掛止部51eよりも前方へ強引に前進させ、該直接操作用押子42の後端部を挿通孔51fを介して軸筒10内へ沈み込ませた場合には、図5、図6(b)及び図7(a)に示すように、直接操作用押子42後端側の係合突起42fが、軸筒径方向に対向する他の直接操作用押子42の沈み込み規制部42hに嵌り合うようにして当接する。
【0051】
この当接状態で、前記他の直接操作用押子42が前進した場合には、この前進する直接操作用押子42の沈み込み規制部42hによって、沈み込んだ直接操作用押子42の係合突起42f後端がせり上げられ、さらに、沈み込んだ直接操作用押子42の係合突起42fの後端傾斜面42f1に対し前記他の直接操作用押子42の係合突起42eが当接する。
したがって、沈み込んだ直接操作用押子42の後端部は、径外方向へ移動することで、挿通孔51fの後端縁51f1から外れ、付勢部材31の付勢力によって後退することになる。
【0052】
よって、出没式筆記具1によれば、直接操作用押子42が強引に前進されて軸筒内へ沈み込まれた場合でも、その沈み込み量を規制することができ、ひいては、直接操作用押子42が他の二つの押子の間に挟まれたり、沈み込んだ直接操作用押子42の係合突起42fが、他の直接操作用押子42の係合突起42eと周方向に並んで当接されない位置関係となったり等することによって、直接操作用押子42が後退不能になるのを防ぐことができる。
【0053】
また、上記構成の出没式筆記具1は、複数の押子41,42における前端の接続部41i,42iを全て同形状に形成し、これら複数の接続部41i,42iの各々に対し、任意に選択されたリフィール(図示例のシャープペンシル用リフィール21、ボールペン用リフィール22及び入力ペン用リフィール等を含む)が着脱されるようにしているため、前記リフィールをユーザの好みで選択し接続することが可能なのは勿論のこと、一度接続した後に組み替えることも容易である。
【0054】
次に、本発明に係る出没式筆記具の他例について説明する。なお、以下に示す出没式筆記具は、上記した出没式筆記具1に対し一部を変更したものであるため、その変更部分を主に詳細に説明し、重複する詳細説明を省略する。
【0055】
図8に要部を示す出没式筆記具2は、一つのクリップ支持用押子41と、軸筒周方向に120度の間隔を置いて配置された二つの直接操作用押子42と備え、軸筒10に対し径方向へ移動不能な部位(押子ガイド体50’)に、沈み込み規制部51hを有し、強引な前進操作により軸筒10内へ沈み込んだ際の押子42に対し、他の二つの押子41,42を軸筒周方向の両側から近接又は接触させる(図9参照)。
【0056】
この出没式筆記具2は、上記出没式筆記具1に対し、軸筒10を軸筒10’に、押子ガイド体50を押子ガイド体50’に置換した構成とされる。
【0057】
軸筒10’は、その後端側に、クリップ支持用押子41を突出させるための一つの窓部12cと、他の二つの直接操作用押子42を突出させるための二つの窓部12bとを有する。これら窓部の形状及び大きさ等は、上記出没式筆記具1のものと同様である。
【0058】
押子ガイド体50’は、上記押子ガイド体50に対し、ガイド筒部51をガイド筒部51’に置換した構成とされる。
ガイド筒部51’は、後側軸筒12の後端側に内在され、軸方向へスライド可能な略筒状に形成され、その外周側には、ガイド筒部51と同様にして、クリップ支持用押子41に対応する一つのガイド孔51a及び挿通孔51cと、直接操作用押子42に対応する二つのガイド孔51d及び挿通孔51fとを有する。
さらに、このガイド筒部51’は、一方のガイド孔51aの前方側に、挿通孔51c内の後端側で軸筒中心方向へ突出する沈み込み規制部51hを有する。
【0059】
沈み込み規制部51hは、直接操作用押子42の後端部が挿通孔51c内へ沈み込んだ場合に、該直接操作用押子42の係合突起42fに対し当接して、直接操作用押子42の沈み込みを規制するように設けられる。
この沈み込み規制部51hは、図9に示すように、軸筒周方向において、クリップ支持用押子41の被ガイド部41cの両側に位置するように二つ設けられる。
【0060】
各沈み込み規制部51hには、直接操作用押子42の係合突起42fの突端に当接させるための被当接面51h1が設けられる。この被当接面51h1は、図示例によれば、平坦面である。
【0061】
上記構成の出没式筆記具2によれば、先ず、全ての押子41,42が後退位置にある初期状態では、図9(a)に示すように、これら押子41,42、及び沈み込み規制部51hは、軸筒10内にて互いに干渉しないように配置される。
前記状態から何れかの直接操作用押子42を掛止部51eよりも前方へ強引に前進させ、該直接操作用押子42の後端部を挿通孔51fから軸筒10内へ沈み込ませた場合には、図9(b)に示すように、直接操作用押子42後端側の係合突起42fが、沈み込み規制部51hの被当接面51h1に当接するとともに、この係合突起42fに対し、軸筒周方向の両側から、クリップ支持用押子41の被ガイド部41cと、他の直接操作用押子42の被ガイド部42cとが近接又は接触する。
【0062】
したがって、沈み込んだ直接操作用押子42は、その沈み込み量が抑制されるとともに、該直接操作用押子42の係合突起42fが軸筒10の中心線と交差するように保持される。
この状態で、前記他の押子41(又は42)が前進した場合には、この前進する押子41(又は42)の係合突起41d(又は42e)が、沈み込んだ直接操作用押子42の係合突起42fに当接する。
よって、沈み込んだ直接操作用押子42の後端部は、径外方向へ移動することで、挿通孔51fの後端縁51f1から外れ、付勢部材31の付勢力によって後退することになる。
【0063】
なお、図8〜11に示す一例では、沈み込み規制部51hの被当接面51h1を平坦面としたが、他の好ましい一例としては、この被当接面を、軸筒軸方向へ延設されたV溝としてもよい。
【0064】
また、図8〜11に示す一例では、二つの沈み込み規制部51hを押子ガイド体50と一体に構成したが、他例としては、略同形状の沈み込み規制部をクリップ支持用押子41と一体に構成することも可能である。
【0065】
また、上記実施の形態では、押子41,42を押子ガイド体50(又は50’)によって進退方向へ案内するようにしたが、他例としては、押子ガイド体50(又は50’)を省き、軸筒10(又は10’)の周壁によって直接的に押子41,42の進退を案内する構造とすることも可能である。
【0066】
また、上記実施の形態では、押子41(又は42)の掛止状態を他の押子の前進により解除するようにしたが、他例としては、軸筒周壁に解除ボタンを設け、該解除ボタンが押圧操作された際に、該解除ボタンの裏側部分が掛止状態の押子に当接して、掛止状態が解除される構造とすることも可能である。
【0067】
また、図6に示す形態において、沈み込んだ直接操作用押子42に対し、その両側から他の押子41,42を近接又は接触させることも可能であり、この構成によれば、沈み込んだ直接操作用押子42が軸筒10内で周方向へ傾くのをより効果的に防止することができる。
【符号の説明】
【0068】
1,2:出没式筆記具 10:軸筒
21:シャープペンシル用リフィール 22:ボールペン用リフィール
41:クリップ支持用押子 41c,42c:被ガイド部
41d,41e,42e,42f:係合突起
41i,42i:接続部 42:直接操作用押子
50:押子ガイド体 51a,51d:ガイド孔
51b,51e:掛止部 51c,51f:挿通孔
42h,51h:沈み込み規制部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒と、軸筒内に収容された複数のリフィールと、これらリフィールの後端側にそれぞれ接続された複数の押子と、これら押子をそれぞれ軸方向へ案内するように前記軸筒の外周側に設けられた複数のガイド孔と、各ガイド孔の前方側に連続するとともに各ガイド孔よりも軸筒周方向へ幅広に形成されて前記押子の後端部を挿通可能な挿通孔とを備え、任意の前記押子を前進させて前記ガイド孔の前端側の掛止部に掛止するとともに、その掛止状態を解除可能にした出没式筆記具であって、
前記押子が前記ガイド孔よりも前方へ移動して前記挿通孔から軸筒内へ沈み込んだ場合に、該押子に対し、軸筒中心側から当接して、その沈み込みを規制する沈み込み規制部を設けたことを特徴とする出没式筆記具。
【請求項2】
前記沈み込み規制部が、沈み込む押子に対する他の押子に設けられていることを特徴とする請求項1記載の出没式筆記具。
【請求項3】
前記押子と前記沈み込み規制部が、凹凸状に嵌り合うようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載の出没式筆記具。
【請求項4】
前記沈み込み規制部が、軸筒軸方向へわたる凹溝状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の出没式筆記具。
【請求項5】
前記沈み込み規制部が、前記軸筒に対し径方向へ移動不能な部位に設けられていることを特徴とする請求項1記載の出没式筆記具。
【請求項6】
沈み込む押子に対し、他の2つの押子を軸筒周方向の両側から近接又は接触させるようにしたことを特徴とする請求項5記載の出没式筆記具。
【請求項7】
前記各押子の前端部に、リフィール後端部を着脱可能に接続する接続部を設けるとともに、複数の前記押子の前記接続部を全て同形状に形成し、これら複数の接続部の各々に対し、任意に選択されたリフィールが着脱されるようにしたことを特徴とする請求項1乃至6何れか1項記載の出没式筆記具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−200902(P2012−200902A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64915(P2011−64915)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000108328)ゼブラ株式会社 (172)
【Fターム(参考)】