説明

切断機用自在軸受装置の位置調整用装置および方法

本発明は、とりわけ切断機における自在軸受装置(21)の位置調整を行う装置と方法に関する。前記切断機、ポータルロボット等における工具のいわゆるTool Center Point(TCP)と呼ばれる、工具中心点として表されるものに関しての位置調整またはキャリブレーションが、調整装置の単一の可動な測定先端で行われ、この調整装置は工具と直接的に作用結合し、ソフトウェア制御による測定方法によって、工具の最適に調整されるべき開始位置の記録を行い、この開始位置の再現性を保つことを可能とする。TCPの決定はメンテナンスおよび調整作業の後か、または工具および切断機の衝突の後で必要となる可能性がある。本発明は装置技術としては、自在軸受装置(21)の位置調整のための調整装置であり、とりわけ切断機におけるものであり、この調整装置はフレーム(1)から見て3つのリンク部材、第1のリンク部材(3)、第2のリンク部材(4)および第3のリンク部材(5)を連結したものを備え、これらのリンク部材は互いに重なって、直動関節(12、13、14)を介して前記フレーム(1)に、直交座標系の3つの全ての軸において、互いに遊び無しに、軽く(kraftfrei)動くように結合されており、ここでどの軸にも基準位置は存在せず、そして第3のリンク部材(5)は直動関節(14)を介してフレーム(1)に結合し、第2のリンク部材(4)は直動関節(13)を介して第3のリンク部材(5)に結合し、そして第1のリンク部材(3)は直動関節(12)を介して第2のリンク部材(4)に結合し、これらのリンク部材(3、4、5)は一体型で形成されており、それぞれのリンク部材は個々に生成された部品から構成されるのでなく、1個の単一の部品であり、同様にフレームから最も離れた第1のリンク部材(3)には、重力方向に反対に物理力接続(kraftschlussig)によって、その直交する面に形状接続(formschlussig)によって測定アダプタ(16)に接続された装着部(3b)を備え、ここで第1、第2および第3のリンク部材(3、4、5)には回転型の測定センサ(6、7、8)が配置されており、これらはこれらの測定センサは測定ピニオン(9、10、11)および各々のリンク部材(3、4、5)に設けられた測定ラック(3c、4a、5a)を用いて、これらの隣接するリンク部材(4、5)および前記フレーム(1)に対する相対的運動を検出し、これらの測定値は変換装置(2)で処理され、データライン(23)による変換装置(2)とコンピュータ(24)とのオンライン接続を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、とりわけ切断機における自在軸受装置の位置調整を行う装置と方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自在軸受装置は、2つまたは3つの数値制御された駆動部で工具の方向を変更する、すなわち1つの点に対し多軸で回転することができる装置である。自在軸受装置は数値制御機械または工業用ロボットの構成部品であり、コンピュータに基づいた制御によって動作が操作され、種々の技術分野で使用されている。
自在軸受装置の基準点はいわゆる工具中心点(Tool Center Point、TCP)である。全ての回転軸はこの点を通らなければならず、そして正確にこの点に、すなわち例えば球面カッターの中心点に、工具の基準点がなければならない。
【0003】
溶接および切断技術でよく用いられている特別なモデルは「TCPで保証された」または「運動学的に分離された」と称される自在軸受装置であり、これらにおいては、例えばカップリングや円弧ガイドなどの、明らかな構造デザインによって、TCPのまわりでの工具の回転が可能となっている。自在軸受装置の製作の際、またこれを実際の生産に使用する際、例えば衝突またはメンテナンスおよび修理の後では、TCPの位置を機械座標で新しく設定することが必要となるが、この時にはTCPのおおまかな位置が分かっている。正確な位置はこの大まかな位置から、場合によっては数ミリメートル程度異なる。
この差異は確定され、これによってオペレータまたはサービスエンジニアによる適切な処置が行われなければならない。得られた測定値は自在軸受装置における幾何学的パラメータ(例えば変位距離、軸角度等)の機械的変更に用いられる。これに加えて、この自在軸受装置は複数の調整ネジおよび設定機構(Verstelleinrichtung)を備える。
【0004】
自在軸受装置の正確なキャリブレーションは、この自在軸受装置を用いて行われる技術的操作、例えば溶接、切削加工、レーザー切断などの品質に決定的な影響を与える。
これに対し、キャリブレーションプロセスは極めて手間がかかり、この仕事をまかされている作業者の多大の専門的知識を必要とする。これは調整および設定の機構の数が多く(約5から10)、またこれらの設定機構とTCPの正確さの間の機能関係が明確でないからである。これより殆どの場合、1つ以上の設定機構での操作が行われなければならない。
【0005】
一式全部供給される工業用ロボットにおいてのみ、このプロセスは特別なソフトウェアと特別な取り扱い説明書によりサポートされているが、これに対し、ただモジュールから組み立てられたポータルロボットでは、キャリブレーションは、多くの場合経験的で、時間のかかる、そして特別に教育された作業者により行われる作業である。
従来技術の観点からは、この運動学的に分離された自在軸受装置のキャリブレーションは、例えば溶接および切断技術において、しばしば不満足な手段で行われている。とりわけ必要な、生産条件でのキャリブレーションは、これに対ししばしば単に固定された尖端が用いられている。この尖端に機械の動作軸を用いて工具を向け、この点の回りの工具の動きを視覚的に判断し、これからキャリブレーション処理が導かれる。これは主観的であり、時間がかかり、また作業者やサービスエンジニアに高度な要求を突き付ける。
【0006】
製造現場での初期稼働には部分的に単にゲージが用いられる。
【0007】
米国特許第5639204号には、間欠割出しのようにして、工業用ロボットの開放的な運動学的連鎖を閉じ、また点検修理において素早くロボットの駆動モーターを交換することを可能とする装置が記載されている。
【0008】
またゲージを用いることが知られており、このゲージを自在軸受装置に特別に設けられた固定点に装着し、点状の尖端を用いて自在軸受装置の座標系におけるTCPの理想的な位置を明確にする(BevelMaster操作説明書、ESAB Cutting Systems、2003)。点検修理または工具の初期稼働の場合は、この尖端に向けるようにしなければならない。
このゲージは自在軸受装置の調整を速やかに行うのに役に立つ。このゲージの幾何形状は理論的仮定、すなわち一方では製造でのずれ、他方では衝突による自在軸受装置のの幾何形状の変化がこのようなゲージでは把握できないということに基づいている。ゲージの自在軸受装置への装着は時間がかかり専門知識を必要とする。ゲージはそれ自身、他のゲージと同様に、特別な取り扱いとメンテナンスが必要であり、製造条件における使用に適さないか、あるいは限定的にのみ使用可能である。
【0009】
例えばドイツ特許公開公報第3822597A1号に記載されているような、ダイヤルゲージを用いる装置が知られている。上記に説明したゲージでは、TCPの位置について、単に定性的で主観的な情報しか得られないが、ダイヤルゲージを用いた装置では定量的な情報を得ることができる。
このダイヤルゲージの表示からTCPの位置を決定し、これからキャリブレーション処理を導くためには、上記に説明したゲージよりももっと多くの作業者の専門知識を必要とする。
【0010】
ドイツ特許第10203002B4号には、ダイヤルゲージと昔からよく知られている座標測定方法を用いて、ロボットの動作空間に設置された理論的な位置がよく分かっている製造装置、例えば車体部品の製造のための装置で点を測定する調整装置が記載されている。
これにより、製造装置での実際の位置を厳密に決定し、オフラインで生成するロボットプログラムのためのオフセット値を生成することができる。
ここでは製造装置の傍に、広範に固定設置されている調整装置を想定しており、この調整装置はその位置が製造装置の座標システムで分かっていることが必要である。そのため、この調整装置は取付穴を持ち、この取付穴はこれに対応して、基準部すなわち上記の製造装置にセンタリングピンを必要とする。この装着誤差はキャリブレーションの精度に直接影響するため、装着は極めて正確に行われなければならない。
【0011】
製造装置の位置を求めるために、少なくとも3つの測定点が必要である。このため、ドイツ特許第10203002B4号に記載されているように、キャリブレーションを行う製造装置の傍に少なくとも3つのこのような調整装置が設置されていなければならず、または時間のかかる、この調整装置のその位置への移設が行われなければならない。
更に加えて、この調整装置は正確に定義された、繰り返し独立して調整可能な「ゼロ」位置を有しなければならない。この許容誤差もまた直接キャリブレーション精度に影響する。
他のどのような製造装置に対しても、追加の調整装置が必要である。すべての測定値、すなわち1測定当り少なくとも9個のパラメータは、自動あるいは手動でもよいが、ロボット制御に転送され、この制御で変換計算されなければならない。更に加えてロボットには特定の測定手段が必要であるが、これには、例えば測定センサーを用いて切削加工機に加工物を装着する場合に、ロボットにこの調整装置を設置することと、製造装置の点に移動することとに技術的および経済的に妥当な解がないかという課題が生じる。
【0012】
工業用ロボットの測定のため、この絶対的精度を向上する一連のシステムが知られている。これらのシステムは光学的な原理で非接触で機能する。1つのシステム(カタログ資料、Wiest AG、KonigsbrunnerStr.5, 86507 Oberottmarshausen)は測定球を用いたもので、この測定球はロボットの工具の取付フランジに装着され、ロボットにより固定された測定センサに向かって移動される。測定センサには5つのレーザー三角測量センサがあり、特殊なソフトウェアの利用により球の中心点を決定することができる。同様なシステム(カタログ資料、TECONSULT、Kaltenhofe Hinterdeich 17、20539 Hamburg)ではこれと逆に動作し、測定球が空間的に固定されて設置され、特殊な、カメラを備えた工具がロボットのフランジに固定される。
【0013】
第3の、欧州特許出願公開公報第0963816A2号に公開されているシステムは空間に固定されたカメラで機能し、このカメラは被検体の位置を空間で決定する。初めの2つの解決方法がおおよそ数センチメートルの測定範囲を持つのに対して、このシステムは被検体の動きをロボットの動作範囲の大部分で測定することができる。
【0014】
光の柵(Lichtschranken)を利用して動作する装置は場合によっては更にコストが低い。このような光の柵を利用した装置が米国特許第5907229号に記載されている。ロボットのどのような位置であっても、幾何的形状が知られている工具が光の柵に当ると、これにより光の進行が遮られる所で位置が検出される。十分多くの回数の試験測定とロボットの基準形状の知識により、このようにしてオフセット値が生成され、このオフセット値によりロボットの精度が改善される。同時に多数の光の柵を用いた同様な装置がPCT国際公開公報第WO002003059580A2号と米国特許第5177563号に記載されている。
【0015】
これら全てのシステムの光学的測定原理は、照射と埃の状況に関し特別な環境条件を要求する。空中の埃の状況が特にひどい場合には、全く使用できないことはないにしても、使用が妨げられる可能性がある。これら4つの実施例の技術的方法はそれぞれ固有の方法であり、これらはそれぞれ1つまたは多くの特別なタイプのロボットに合わせたものである。これらは手間がかかり、用いられている測定原理のため高価である。6軸の工業用ロボットの一般的モデルでの多数のフリーパラメータを決定できるようにするためには、ソフトウェア側からも、これらの方法のコストは必然的に高くなる。
【0016】
モジュールから組み上げられたポータルロボットでは、このようなキャリブレーションの課題はもっと簡単である。これは、位置軸、すなわち工具の空間位置に関する軸が、十分な精度を有し、直線軸の動きとTCPの動きとの間の明瞭かつ直線的な関係が存在するからである。これにより、位置軸のキャリブレーションへの影響は一次の近似では無視することができ、自在軸受装置のキャリブレーションを制限することができる。すなわち工具のTCPの回りでの方向を定めるのに関連する装置に限定することができる。
【0017】
TCPで保証された自在軸受のキャリブレーションの手順は、ソフトウェアの中で特性値をパラメータ化するのではなく、設定機構を用いて機械パラメータを変更することにより行われなければならないということで、他の工業用ロボットに対するものと大きく異なっている。
【0018】
上記に説明した従来技術から分かるように、従来技術はとてつもなく大きなコスト、複雑な測定システムおよび加工機または切断機の調整者の多くの経験によってのみ可能となるものであり、工具の中心点、例えば球面カッターの中心点または溶接トーチの溶接棒先端に近付けて、前以って与えられた工具中心点との相対位置を求めるものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
このため、以下の基準に合致する解決方法が求められる。
−コンパクトで軽い、荒れた生産条件(ゴミ、熱)でも取扱い可能な調整装置を用い、特別な方法を組み合わせて、TCPの位置を速やかに、正確に、そして再現可能に決定すること。
−できるだけ自動化したプロセスで位置決定を行い、この取扱いは初心者でも可能であること。
−コンピュータを利用した方法により、このコンピュータは調整装置により得られたデータをフィルターして評価し、例えばPS102005041482に記載してある装置のような公知の構造の自在軸受のために、コンピュータが正確に定めた処理指示の形式「...調整ネジ2番を0.7だけ時計方向に回転して下さい...」を供給し、これにより慣れていない使用者でも調整を行うことを可能にすること。
【0020】
従って、本発明の課題は、自在軸受のための特別な、調整装置とこの自在軸受に適合した方法を作り上げることであり、これらは生産および自在軸受の稼働においても、またメンテナンス後または衝突の後の荒れた生産環境においても適用されることが可能である。この調整装置は小型、軽量、低価格であるが、温度や汚れに関し荒れた環境にも適合して使用できなければならない。
ここで調整装置および方法は機械に依存せず自己完結型で使用できなければならない。
【0021】
本発明の課題は更に、工具中心点の位置、例えば球面カッターまたは溶接トーチの溶接棒先端を、自在軸受に固定された工具中心点を速やかに、正確に、そして再現可能に決定することである。この位置の決定はできるだけ自動化したプロセスで実行されなければならず、ここでこの取扱いは初心者でも可能でなければならない。
【0022】
また本発明の課題は、位置検出に基づいてコンピュータで処理指示を生成し、自在軸受に備えられた調整および設定機構を用いて工具のTCPを設定し、位置のずれの合計が既定の最小値を越えないようにすることである。
【0023】
本発明の課題はその他に、機械の座標システムを任意にほぼ「目視」で調整でき、機械に対し相対的にも、また機械自体においても、絶対位置基準を必要としない調整装置を提供することである。
【0024】
本発明によりこれらの課題は以下のように解決される。基本的な本発明の発想が請求項1、5、および6に記載されている。本発明の更なる実施形態は請求項2から4および7と8に示されている。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明による解決方法を以下に記載する。
本発明による調整装置はフレームから見て、関節で結合された複数のリンク部材(Glieder)を順に組み立てたものから構成される。尚、この関節は形状接続(Formschlussig、ボルトナットやリベットなど機械的構造による接続)によっても、物質接続(Stoffschlussig、溶接、半田、接着剤、圧着、硬化などによる部材材質間の接着による接続)によっても形成されることができる。
フレームから最も離れたリンク部材には、重力方向に反対に物理力接続(kraftschlussige、紐、ゴム、クリップ等による摩擦力による接続)によって、またその直交する面には形状接続によって測定アダプタに接続された装着部を備える。この測定アダプタは、自在軸受に装着された工具のTCPに置かれた球から構成される。このため工具の代わりに特殊なキャリブレーション工具が自在軸受に搭載されるか、または工具の頭部が対応するように交換されなければならない。このため例えば、溶断トーチにはこれに対応するように成形されたノズルキャップが手動もしくは自動でトーチに取り付けられる。
【0026】
この調整装置のリンク部材の数は、自在軸受の構造と設定により、キャリブレーションサイクルで拘束動作が行われ、調整装置と計測アダプターの間の接続が無い状態で自由度が1より大きくなるように選定される。
どのリンク部材の間にも測定システムが配置されている。自在軸受の回転動作とこの自在軸受に固定された工具の回転動作の際に、測定アダプターを介して自在軸受に接続された調整装置が動き、その都度測定値を供給する。これらはこの際、測定値を直交測定座標系に座標変換する必要無しに行われる。
キャリブレーションサイクルの最初には、この調整装置は中心位置の近傍にある。この調整装置は内部の基準位置を持たない。
【0027】
第2の開発ステージでは、測定データを表示する特別なコンピュータプログラムが固有の知能を持ち、プログラムの使用者がキャリブレーションサイクルを通して、測定データから、自在軸受の状態判定を可能にする情報を得られるようにガイドする。これは定性的にも、Yes/Noの情報で自在軸受の正確なキャリブレーションが判定され、キャリブレーションがずれている状態においてはキャリブレーションのための正確な処理指示が示される。このようにして初心者でもキャリブレーションを行わせることができる。
【0028】
第3の設定ステージでは、このキャリブレーション機器が機械の構成部品となる。工具が定められた間隔、例えばシフト勤務の開始の際または新たな作業の際または衝突の後で、交換機構により測定アダプターが自動的に取り付けられる。機械は自在軸受を、機械の座標系に固定されて装着されているキャリブレーション装置に向かって動かし、キャリブレーションサイクルで第2の開発ステージと同様に処理を行う。自在軸受の実際の状態は機械内部に記録される。
【0029】
全体の大きさ、重量および生産コストを最少とするため、この調整装置は1つのフレームで組み立てられ、このフレームにはリンク部材が取り付けられ、これらのリンク部材でフレームに固定されていないリンク部材はステレオリソグラフィーにより、一体型で、分割できない、1個の部品からなっている。自在軸受は極めて軽快に動作し、かつ適度に自由に動けるように組み立てられている。これに対応して、TCPの動きは測定アダプターを介してこの調整装置により全て表示され、この調整装置自身は測定アダプターを介して自在軸受に何らの反作用も及ぼさない。
【0030】
本発明による調整装置はコンピュータを用いた方法により、その測定動作で、表示され、評価され、そして最終的にTCPのゼロ位置が決定される。これは以下のように行われる。
実際の測定データが同期してコンピュータを用いた装置から高速に連続して読み出され、格納され、そしてディスプレイに軌跡の形態で表示される。更に、このコンピュータを用いた装置は知能的なプログラムにより、格納されたデータを解析し、それぞれの自在軸受の使用目的についての、この自在軸受の状態に関する定性的な情報(自在軸受が調整されているか/自在軸受の調整がずれているか)を提供し、後者の場合においては調整された状態を得るためのサポートを提供する。この自在軸受が正確にキャリブレーションされるほど、測定値の数値は小さくなる。
【0031】
この調整装置は種々の実施形態で利用することができる。先ず、標準的なインターフェースを介して任意のコンピュータと協働し、この調整回路から供給された測定データをコンピュータディスプレイにグラフィック表示し、このグラフィック情報が熟練した操作者、例えばサービスエンジニアに、素早くそして簡便に、自在軸受の状態を判断し、この自在軸受をキャリブレーションすることを可能にする。機械の側ではここで特別なNCプログラムが始動し、この自在軸受を正確に、定められたように動かす。
【0032】
本発明がここで適切な実施例を用いて詳細に説明される。
このため図1および図2を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、位置調整装置の簡略化した3次元表示である。
【図2】図2は、自在軸受の位置調整において、この機器を他の装置と共に用いる場合の概略図である。
【符号の説明】
【0034】
図1および図2で用いられている参照番号を示すものは以下の通りである。
1 フレーム
2 電気的変換装置
3 第1のリンク部材
3a 停止プレート
3b 装着部
3c 測定ラック1
4 第2のリンク部材
4a 測定ラック2
5 第3のリンク部材
5a 測定ラック3
6、7、8 測定センサー
9、10、11 測定ピニオン
12、13、14 直動関節
15 圧力ばね
16 測定アダプター
17 フット
18 カバー
19 ベロウズ型シール
20 ポータルマシン(Portalmaschine)
21 自在軸受
22 工具
23 データライン
24 コンピュータ
25 コンピュータグラフィック画面表示
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明では調整装置はフレーム1から見て、3つのリンク部材、すなわち第1のリンク部材3、第2のリンク部材4および第3のリンク部材5を順に組み立てたものとなっている。これらのリンク部材は互いに、また直動関節12、13、および14によりフレームに直交して動くように結合されており、ここで第3のリンク部材5は直動関節14を介してフレーム1に、第2のリンク部材4は直動関節13を介して第3のリンク部材に、そして第1のリンク部材3は直動関節12を介して第2のリンク部材に結合されている。尚、直動関節12、13、および14は形状接続(formschlussig)によっても、物質接続(stoffschlussig)によっても形成されることができる。
【0036】
フレームから最も離れた第1のリンク部材3には、重力方向に反対に物理力接続(kraftschlussig)によって、その直交する面に形状接続によって測定アダプタに接続された装着部を備える。この測定アダプタ16は、自在軸受に装着された工具のTCPに置かれた球から構成される。このため工具(例えば溶接トーチ、溶断トーチ、カッター)の代わりにこの測定アダプタが自在軸受に搭載されなければならない。このようにして、例えば、溶断トーチにはこれに対応するように成形され、測定アダプタ16となる、ノズルキャップが手動もしくは自動でトーチに取り付けられる。
【0037】
この装置のリンク部材の数は、位置調整サイクルで拘束動作が行われ、位置調整装置と測定アダプタ16との間の接続がない状態で自由度が1より大きくなるように選定される。
各々のリンク部材の間に測定センサ6、7、8が配置されている。自在軸受の回転動作とこの自在軸受に固定された工具の回転動作の際に、測定アダプター16を介して自在軸受に接続された位置調整装置が動き、各々の測定センサ6、7、8が、座標変換の必要なしに、測定値を直交測定座標系で供給する。
【0038】
全体の大きさ、重量および生産コストを最少とするため、また堅牢性の向上のため、この調整装置は1つの丈夫なフレームで組み立てられ、このフレームは直接CADモデルからプロトタイプを作成し、機械加工をすることなしに仕上げられたリンク部材3、4、5を備える。これら各々のリンク部材3、4、5はそれぞれ1つの一体型の部品からできている。
【0039】
この位置調整装置はフット17により、ポータルマシン(Portalmaschine)20の動作空間に任意に配置できる。この位置調整装置は、非常に小さな力ではあるが、位置調整の際に生じる力に対して、動かないように固定されていなければならない。このため、フット17は好ましくは磁石または吸着フットで形成されている。位置調整装置を機械の動作空間に手動で固定し、その向きをポータルマシン20の軸方向にすることを「目視」で行うことで全く十分である。
【0040】
ポータルロボット20の直交座標系の動作軸を用いて、測定アダプタ16を工具22に取り付けた後で、装着装置3bと測定アダプタ18との接続と、これによる位置調整装置の拘束動作が確立される。操作者はただ、位置調整装置がほぼ中心位置にあることと、フレームから最も遠い第1のリンク部材3が、停止板3aで既定された終端位置から少なくとも数ミリメートル離れているように注意しなければならない。これで位置調整装置は動作準備が整ったことになる。
【0041】
プログラムで制御された自在軸受21の動きにより、位置調整装置は、測定アダプタ16および装着装置3bを介して確立された拘束動作により、工具22のTCPと同様に動き、時間に同期し、高速に連続して、リンク部材3、4、および5の相対的動作の測定データが得られる。
【0042】
実際の測定データは電気的変換装置2により、コンピュータで読み取り可能な、規格化された信号に変換され、データライン23を介してパーソナルコンピュータ24に伝送される。パーソナルコンピュータ24では特別なコンピュータプログラムにを用いてこれらのデータが読み込まれ、格納され、そしてディスプレイに軌跡25の形態でコンピュータグラフィック表示される。
【0043】
このグラフィック表示は自在軸受21の実際の状態を示すだけでなく、自在軸受21における機械的変化を、ほとんど時間的遅れ無く表示する。このグラフィック表示により、熟練した使用者が素早くそして簡便に、自在軸受21の位置調整を行うことができる。一般的に、自在軸受21が正確にキャリブレーションされるほど、測定データの数値は小さくなる。
【0044】
測定データは格納されて、保管され、そして自在軸受21の実際の状態の再現可能な客観的な画像を提供する。
TCPで保証された自在軸受での工具先端の動きは、その運動学的構造および構造形態と関係なく、2つの円弧から出来ている。これら2つの円弧は通常は、互いに直交する平面上にある。これらの重なりでトーラスが形成される。近似によってこの幾何学的形状のパラメータを決定することができる。このパラメータはTCPの位置の理想的位置からのずれの大きさとなる。
【0045】
特別なコンピュータプログラムは「固有の知能」として、格納されたデータを前記のように分析し、それぞれの自在軸受の使用目的についての、この自在軸受の状態に関する定性的な情報(自在軸受が調整されているか/自在軸受の調整がずれているか)を提供し、後者の場合においては調整された状態を得るためのサポートを提供する。このため、このプログラムは、「ネジ4を1.5回転時計方向と反対に回転して下さい。ネジを締めて新しい測定サイクルを開始して下さい。」のような形式で、測定データから得られた指示を詳細に、位置調整サイクルを通して操作者に与え、慣れていない作業者、例えば機械のオペレータに対しても位置調整を任せることが可能となる。今まで資格のあるサービスエンジニアに限定された作業を一般的な熟練工でも行うことができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に切断機における、自在軸受(21)の位置調整のための調整装置であって、
前記調整装置は、フレーム(1)から見て、3つのリンク部材、すなわち第1のリンク部材(3)、第2のリンク部材(4)および第3のリンク部材(5)を連結したものを備え、
これらのリンク部材は互いに、また直動関節(12、13、14)を介して前記フレーム(1)に、3つの互いに直交して重なっている軸に沿って、実質的に遊び無しに、軽く(kraftfrei)動くように結合されており、ここでどの軸にも機械的な基準位置は存在せず、前記第3のリンク部材(5)は前記直動関節(14)を介して前記フレーム(1)に結合し、前記第2のリンク部材(4)は前記直動関節(13)を介して前記第3のリンク部材に結合し、そして前記第1のリンク部材(3)は前記直動関節(12)を介して前記第2のリンク部材(4)に結合し、これらのリンク部材(3、4、5)はそれぞれ個々の部品の結合によるのでなく、一体型で形成されており、また前記フレームから最も離れた第1のリンク部材(3)には、重力方向に反対に物理力接続(kraftschlussig)によって、その直交する面に形状接続(formschlussig)によって測定アダプタ(16)に接続された装着部(3b)を備え、ここで前記第1、第2および第3のリンク部材(3、4、5)には回転型の測定センサ(6、7、8)が配置されており、これらの測定センサは測定ピニオン(9、10、11)および各々のリンク部材(3、4、5)に設けられた測定ラック1(3c)、測定ラック2(4a)、および測定ラック3(5a)を用いて、これらの隣接するリンク部材(4、5)および前記フレーム(1)に対する相対的運動を検出し、この測定値は変換装置(2)で処理され、データライン(23)による変換装置(2)とコンピュータ(24)とのオンライン接続を備えることを特徴とする自在軸受(21)の位置調整のための調整装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自在軸受(21)の位置調整のための調整装置において、
前記測定アダプタは1つの球を備え、自在軸受(21)のTCPに装着された工具に置かれていることを特徴とする自在軸受(21)の位置調整のための調整装置。
【請求項3】
請求項1に記載の調整装置において、
前記調整装置は可搬で、機械に依存せず、外側から各々の自在軸受(21)の工具頭部に近接でき、この際に永久磁石を備えるかまたは吸着フットで構成されるフットにより調整装置(17)の安定した設置位置が保持されることを特徴とする調整装置。
【請求項4】
請求項1に記載の調整装置において、
前記調整装置は被覆(18)およびベロウズ型シールにより防塵、耐震かつ温度安定に密閉されていることを特徴とする調整装置。
【請求項5】
自在軸受(21)の位置調整を行うための調整装置であって、とりわけ切断機において、位置調整装置またはキャリブレーション装置が工具機械の部分として組み込まれていることを特徴とする調整装置。
【請求項6】
自在軸受(21)を位置調整する方法であって、
とりわけ切断機において請求項1による調整装置を使用するための方法であって、
リンク部材(3、4、5)およびフレーム(1)の相対動作で生ずる、測定センサ(6、7、8)で時間同期かつ高速に連続して得られる測定データが、電気的変換装置(2)により、コンピュータで読み取り可能な、規格化された信号に変換され、前記データライン(23)を介して接続されたパーソナルコンピュータ(24)に伝送され、このパーソナルコンピュータ(24)のモニターにオンラインで画面表示(25)され、この画面表示の基準点は現在の測定の開始における前記調整装置の位置であることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法において、
前記コンピュータ(24)は前記位置調整の進行をオンラインでコンピュータグラフィック表示することを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項6または7に記載の方法において、
前記データライン(23)を介して前記コンピュータ(24)に連続して送り込まれた測定データがこのコンピュータにより高速に繰り返しサイクルでフィルターされて解析され、TCP位置のコンピュータ内部での計算の基礎となり、一方ではこのTCPの位置から測定データに相対的に、他方では手首の関節のように、コンピュータ(24)は操作者に動作中の位置調整装置についての詳細な操作指示によって、設定パラメータの大きさと方向感覚を、随意に音声出力、テキスト出力またはコンピュータアニメーションによって、キャリブレーションプロセスによって、計算された前記TCPの位置ずれの総計が既定の限界値を越えない点に導くことを特徴とする方法。



【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−531238(P2010−531238A)
【公表日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−507785(P2010−507785)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【国際出願番号】PCT/DE2008/000752
【国際公開番号】WO2008/141608
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(508066027)エーエスアーベー カッティング システムズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (4)
【氏名又は名称原語表記】ESAB Cutting Systems GmbH
【住所又は居所原語表記】Robert−Bosch−Str.20, D−61184 Karben, Germany
【Fターム(参考)】