説明

加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物およびこれを用いる光半導体封止体

【課題】耐熱着色安定性、薄膜硬化性、作業性、および接着性に優れ、かつ、大気中において室温で長時間使用することができる加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物およびこれを用いる光半導体封止体の提供。
【解決手段】(A)成分:ケイ素原子に結合するアルコキシ基を有する直鎖状オルガノポリシロキサン化合物と、(B)成分:前記(A)成分100質量部に対して0.01〜1質量部のモノアルキル錫化合物と、を含む加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物およびこれを用いる光半導体封止体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光半導体を封止するための組成物には樹脂としてエポキシ樹脂を使用することが提案されている(例えば、特許文献1)。しかしながら、エポキシ樹脂を含有する組成物から得られる封止体は白色LED素子からの発熱によって色が黄変するなどの問題があった。
また、シラノール基を有するオルガノポリシロキサンと、ケイ素原子に結合した加水分解可能な基を1分子中に2個以上有する化合物等と、有機ジルコニウム化合物とを含有する室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物が提案されている(例えば、特許文献2、3)。
また、特定のジオルガノポリシロキサン、ジシラアルカン化合物および硬化触媒等を含有する室温湿気硬化性シリコーンゴム組成物が提案されている(例えば、特許文献4、5)。
しかしながら、上記室温硬化性組成物は通常、室温にてゲル化が進行するため、大気中に放置すると短時間でゲル化してしまうため、大気中で長時間使用することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−228249号公報
【特許文献2】特開2001−200161号公報
【特許文献3】特開平2−196860号公報
【特許文献4】特開2007−119768号公報
【特許文献5】特開2003−221506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、耐熱着色安定性、薄膜硬化性、作業性、および接着性に優れ、かつ、大気中において室温で長時間使用することができる加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物およびこれを用いる光半導体封止体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、モノアルキル錫化合物を用いた半導体封止用組成物が、加熱条件下で雰囲気中の水分を利用して硬化することから、この組成物は大気中において室温で長時間使用可能であることを見出した。
【0006】
そして、(A)成分:ケイ素原子に結合するアルコキシ基を有する直鎖状オルガノポリシロキサン化合物と、(B)成分:前記(A)成分100質量部に対して0.01〜1質量部のモノアルキル錫化合物と、を含む組成物が、耐熱着色安定性、薄膜硬化性、作業性、および接着性に優れ、かつ、大気中において室温で長時間使用することができる加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物となりうることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、下記1〜11を提供する。
1.(A)成分:ケイ素原子に結合するアルコキシ基を有する直鎖状オルガノポリシロキサン化合物と、
(B)成分:前記(A)成分100質量部に対して0.01〜1質量部のモノアルキル錫化合物と、
を含む加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物。
【0008】
2.(C)成分:前記(A)成分100質量部に対してビス(アルコキシシリル)アルカン0.1〜10重量部をさらに含む上記1に記載の加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物。
【0009】
3.前記(C)成分が、1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,7−ビス(トリメトキシシリル)ヘプタン、1,8−ビス(トリメトキシシリル)オクタン、1,9−ビス(トリメトキシシリル)ノナンおよび1,10−ビス(トリメトキシシリル)デカンから選ばれる少なくとも1種である上記2に記載の加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物。
【0010】
4.前記(A)成分は、下記式(1)で示される分子量1,000〜1,000,000の直鎖状オルガノポリシロキサンと、下記式(2)で示されるシラン化合物および/または下記式(3)で示されるシラン化合物とを縮合してなる上記1〜3のいずれかに記載の加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物。
【化1】

・・・(1)
(式中、Rは独立して、炭素原子数1〜6のアルキル基またはアリール基を示し、nは1以上の整数を示す。)
(Rm−4−Si−(OR ・・・(2)
(式中、RおよびRは独立して、炭素原子数1〜6のアルキル基またはアリール基を示し、mは2〜4の整数を示す。)
Si(OR(4−k−l)/2 ・・・(3)
(式中、Rは独立して、水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、アシル基またはアリール基を示し、Rは独立して、炭素原子数1〜6のアルキル基を示し、kは0<k<2を示し、lは0<l<2を示す(ただし、0<k+l<3を満たす。))
【0011】
5.前記(B)成分は、下記式(4)〜式(6)から選ばれる少なくとも1種である上記1〜4のいずれかに記載の加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物。
−Sn−X ・・・(4)
【0012】
【化2】

・・・(5)
【0013】
【化3】

・・・(6)
[式(4)〜式(6)中、Rは独立して、炭素原子数1〜12のアルキル基を示し、Xは独立して、炭素原子数が1〜18である脂肪族および/または芳香族カルボン酸残基、マレイン酸モノエステル残基、または下記式(7)で表される基から選択される。
【0014】
【化4】

・・・(7)
(式中、RおよびRは独立して、炭素原子数1〜4のアルキル基を示し、jは0〜3の整数を示す。)]
【0015】
6.前記(B)成分は、モノアルキル錫脂肪酸塩である上記5に記載の加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物。
【0016】
7.実質的に水を含まない上記1〜6のいずれかに記載の加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物。
【0017】
8.実質的に溶媒を含まない上記1〜7のいずれかに記載の加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物。
【0018】
9.前記(A)成分および前記(B)成分を含む第1液と、前記(C)成分を含む第2液とを有する上記2〜8のいずれかに記載の加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物。
【0019】
10.前記(A)成分と、前記(C)成分と、前記(B)成分とからなる上記2〜8のいずれかに記載の加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物。
【0020】
11.上記1〜10のいずれかに記載の加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物をLEDチップに付与し、前記LEDチップを加熱し前記加熱硬化性光半導体封止用樹脂組成物を硬化させて前記LEDチップを封止することによって得られる光半導体封止体。
【0021】
本発明において「可使時間」とは、組成物が、室温(雰囲気温度、通常20〜25℃、湿度30〜60%)において光半導体封止用組成物として使用可能な時間をいう。
【発明の効果】
【0022】
本発明の加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物は、(A)成分および(B)成分を含むことにより、耐熱着色安定性、薄膜硬化性、作業性、および接着性に優れ、かつ、可使時間が長い。
本発明の光半導体封止体は、耐熱着色安定性および接着性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明の光半導体封止体の一例を模式的に示す上面図である。
【図2】図2は、図1に示す光半導体封止体のA−A断面を模式的に示す断面図である。
【図3】図3は、本発明の光半導体封止体の一例を模式的に示す断面図である。
【図4】図4は、本発明の光半導体封止体の一例を模式的に示す断面図である。
【図5】図5は、本発明の光半導体封止体を用いたLED表示器の一例を模式的に示す図である。
【図6】図6は、図5に示すLED表示器を用いたLED表示装置のブロック図である。
【図7】図7は、実施例において本発明の組成物を硬化させるために使用した型の断面を模式的に表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明について以下詳細に説明する。
1.加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物
本発明の加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物は、(A)成分:ケイ素原子に結合するアルコキシ基を有する直鎖状オルガノポリシロキサン化合物と、(B)成分:前記(A)成分100質量部に対して0.01〜1質量部のモノアルキル錫化合物と、を含む。
なお、本発明の加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物を以下「本発明の組成物」ということがある。
【0025】
1.1.(A)成分
1.1.1.構成
(A)成分は、ケイ素原子に結合するアルコキシ基を1分子中に少なくとも1個(好ましくは2個以上)有する。これにより、加熱条件下において、(B)成分の存在下、大気中の水分とアルコキシ基とが反応してシラノール基(−Si−OH)が生成し、このシラノール基同士あるいはアルコキシシリル基と反応し、−Si−O−Si−結合が生成して、組成物が硬化する。
【0026】
また、(A)成分は1分子中に1個以上の有機基を有することができる。(A)成分が有することができる有機基としては、例えば、酸素原子、窒素原子および硫黄原子からなる群から選ばれる少なくとも1種を含んでもよい炭化水素基が挙げられる。具体的には、例えば、アルキル基(炭素数1〜6のものが好ましい。)、(メタ)アクリレート基、アルケニル基、アリール基、これらの組合せが挙げられる。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチルアリル基が挙げられる。アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基が挙げられる。なかでも、耐熱着色安定性により優れるという観点から、メチル基、フェニル基が好ましい。
【0027】
さらに、(A)成分は、耐熱着色安定性および硬化性により優れるという観点から、例えば、下記式(8)で表される直鎖状オルガノポリジメチルシロキサン構造単位を有することがより好ましい。
【0028】
【化5】

・・・(8)
式(8)中、mは1〜15,000の整数を示し、耐クラック性の観点から、mは10〜15,000であるのが好ましい。
【0029】
(A)成分の分子量は、硬化時間、可使時間が適切な長さとなり硬化性に優れ、硬化物物性に優れるという観点から、1,000〜1,000,000であるのが好ましく、6,000〜100,000であるのがより好ましい。
【0030】
なお、本発明において、(A)成分の分子量は、クロロホルムを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
(A)成分は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0031】
1.1.2.製造
(A)成分は、その製造について特に制限されず、例えば、従来公知のものが挙げられる。
例えば、(A)成分は、下記式(1)で示される分子量1,000〜1,000,000の直鎖状オルガノポリシロキサン(化合物1)と、下記式(2)で示されるシラン化合物(化合物2)および/または下記式(3)で示されるシラン化合物(化合物3)とを縮合してなるものであることが好ましい。この場合、加熱によってより均一に硬化が進行できるという観点から、(A)成分は、直鎖状オルガノポリシロキサン骨格を主骨格として有し、かつ、ケイ素原子に結合しているアルコキシ基を末端に有するものであることが好ましい。
【0032】
【化6】

・・・(1)
(式中、Rは独立して、炭素原子数1〜6のアルキル基またはアリール基を示し、nは1以上の整数を示す。)
(Rm−4−Si−(OR ・・・(2)
(式中、RおよびRは独立して、炭素原子数1〜6のアルキル基またはアリール基を示し、mは2〜4の整数を示す。)
Si(OR(4−k−l)/2 ・・・(3)
(式中、Rは独立して、水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、アシル基またはアリール基を示し、Rは独立して、炭素原子数1〜6のアルキル基を示し、kは0<k<2を示し、lは0<l<2を示す(ただし、0<k+l<3を満たす。))
【0033】
1.1.2.1.化合物1
上記式(1)において、Rで表される炭素原子数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基が挙げられ、Rで表されるアリール基としては、フェニル基またはナフチル基が挙げられる。このうち、耐熱性、耐熱着色性より優れているという観点から、Rはメチル基またはフェニル基がより好ましい。また、上記式(1)において、作業性、耐クラック性により優れているという観点で、nは10〜150,000の整数であることが好ましい。
【0034】
化合物1としては、耐熱着色安定性および硬化性により優れているという観点から、下記式(9)で表される、2個のシラノール基が両末端に結合している直鎖状のオルガノポリジメチルシロキサン(直鎖状オルガノポリジメチルシロキサン−α,ω−ジオール)であるのが好ましい。
【0035】
【化7】

・・・(9)
式(9)中、作業性および耐クラック性に優れるという観点から、nは10〜15,000の整数であるのが好ましい。
【0036】
1.1.2.2.化合物2
式(2)において、RまたはRで表される炭素原子数1〜6のアルキル基またはアリール基としては、例えば、式(1)において、Rで表される基として例示したものが挙げられる。
【0037】
化合物2としては、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシランのようなジアルコキシシラン;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランのようなトリアルコキシシラン;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロピルオキシシランのようなテトラアルコキシシラン;トリアルコキシシラン、テトラアルコキシシランの加水分解物;メチルトリヒドロキシシラン、エチルトリヒドロキシシラン、フェニルトリヒドロキシシランのようなトリヒドロキシシラン;テトラヒドロキシシラン;γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシランのような(メタ)アクリロキシアルキルトリアルコキシシランが挙げられる。
【0038】
なお、本発明において、(メタ)アクリロキシトリアルコキシシランは、アクリロキシトリアルコキシシランまたはメタクリロキシトリアルコキシシランであることを意味する。(メタ)アクリレート基、(メタ)アクリロキシアルキル基についても同様である。
【0039】
1.1.2.3.化合物3
式(3)において、RまたはRで表される炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基等が挙げられる。なかでも、耐熱性に優れ、耐熱着色安定性により優れるという観点から、メチル基が好ましい。アルケニル基は、炭素数1〜6のものが挙げられ、具体的には例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチルアリル基が挙げられる。アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基が挙げられる。
【0040】
化合物3において、Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、アリール基以外に、アシル基を含むことができる。アシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基が挙げられる。
【0041】
化合物3としては、例えば、メチルメトキシオリゴマーのようなシリコーンアルコキシオリゴマーが挙げられる。シリコーンアルコキシオリゴマーは、主鎖がポリオルガノシロキサンであり、分子末端がアルコキシシリル基で封鎖されたシリコーンレジンである。
【0042】
メチルメトキシオリゴマーとしては、具体的には、例えば下記式(10)で表されるものが表されるものが挙げられる。
【0043】
【化8】

・・・(10)
式(10)中、bは1〜1,000の整数を示し、cは0〜1,000の整数を示す。
【0044】
メチルメトキシオリゴマーは、市販品を使用することができる。メチルメトキシオリゴマーの市販品としては、例えば、x−40−9246(重量平均分子量6,000、信越化学工業社製)が挙げられる。
【0045】
化合物3の分子量は、硬化時間、可使時間が適切な長さとなり硬化性に優れ、相溶性に優れるという観点から、100〜1,000,000であるのが好ましく、100〜10,000であるのがより好ましい。なお、本発明において、化合物3の分子量は、クロロホルムを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量であるものとする。
【0046】
化合物2および化合物3のうち、硬化性に優れ、耐熱着色安定性により優れるという観点から、テトラエトキシシランのようなテトラアルコキシシラン;γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシランのようなトリアルコキシ(メタ)アクリロキシアルキルシラン;メチルメトキシオリゴマーが好ましい。
【0047】
化合物2および化合物3はその製造について特に制限されず、例えば従来公知のものが挙げられる。化合物2および化合物3はそれぞれ、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0048】
化合物2および化合物3の総使用量は、耐クラック性、相溶性に優れるという観点から、100質量部の化合物1に対して、0.1〜100質量部であり、0.5〜50質量部であるのが好ましく、1〜10質量部であるのがより好ましい。
【0049】
1.2.(B)成分
本発明の組成物に含有されるモノアルキル錫化合物は、金属として錫原子を有するオルガノ錫金属塩である。
【0050】
(B)成分は、可使時間をより長くすることができるという観点から、例えば下記式(4)〜式(6)から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
−Sn−X ・・・(4)
【0051】
【化9】

・・・(5)
【0052】
【化10】

・・・(6)
[式(4)〜式(6)中、Rは独立して、炭素原子数1〜12のアルキル基を示し、Xは独立して、炭素原子数が1〜18である脂肪族および/または芳香族カルボン酸残基、マレイン酸モノエステル残基、または下記式(7)で表される基から選択される。
【0053】
【化11】

・・・(7)
(式中、RおよびRは独立して、炭素原子数1〜4のアルキル基を示し、jは0〜3の整数を示す。)]
【0054】
上記式(4)〜式(6)において、Rで表される炭素原子数1〜12のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、ラウリル基が挙げられ、相溶性、反応性に優れるという観点から、炭素原子数1〜8のアルキル基であることが好ましい。
【0055】
また、上記式(4)〜式(6)において、Xで表される炭素原子数が1〜18である脂肪族カルボン酸残基(−O−C(=O)−R12、ここでR12は炭素数1〜18のアルキル基を示す。)は、反応性、相溶性に優れるという観点から、炭素原子数1〜8であることがより好ましく、マレイン酸モノエステル残基(−O−C(=O)−CH=CH−C(=O)−OR13、ここでR13はアルキル基を示す。)において、R13は炭素原子数1〜8のアルキル基であることが好ましい。
【0056】
上記式(7)において、RまたはRで表される炭素原子数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基が挙げられ、硬化性に優れる観点から、メチル基、エチル基であることが好ましい。
【0057】
なお、可使時間をより長くすることができるという観点から、(B)成分は例えば、上記式(4)で表される化合物であることが好ましい。上記式(4)で表される化合物としては、例えば、モノメチル錫トリアセテート、モノメチル錫トリピバレート、モノメチル錫トリオクトエート、モノメチル錫トリス(2−エチルヘキサノエート)、モノメチル錫トリネオデカネート、モノメチル錫トリラウレート、モノメチル錫トリステアレート、モノブチル錫トリアセテート、モノブチル錫トリピバレート、モノブチル錫トリオクトエート、モノブチル錫トリス(2−エチルヘキサノエート)、モノブチル錫トリネオデカネート、モノブチル錫トリラウレート、モノブチル錫トリステアレート、モノオクチル錫トリアセテート、モノオクチル錫トリピバレート、モノオクチル錫トリオクトエート、モノオクチル錫トリス(2−エチルヘキサノエート)、モノオクチル錫トリネオデカネート、モノオクチル錫トリラウレート、モノオクチル錫トリステアレート、モノラウリル錫トリアセテート等のモノアルキル錫脂肪酸塩(モノアルキル錫トリ脂肪酸塩)、モノブチル錫トリス(ナフテート)、モノブチル錫トリス(シクロプロパンカルボキシレート)、モノブチル錫トリス(シクロヘキサンカルボキシレート)、モノブチル錫トリス(アダマンチルカルボキシレート)などの脂環式構造を含むモノアルキル錫トリ脂肪酸塩)、モノブチル錫トリス(ベンゼンカルボキシレート)等のモノアルキル錫芳香族カルボン酸塩);モノオクチル錫トリス(ブチルマレート)、モノブチル錫トリス(ベンジルマレート)等のモノアルキル錫モノエステルマレート塩;モノブチル錫トリス(トリエトキシシリケート)、モノブチル錫トリス(ジメトキシメチルシリケート)、モノオクチル錫トリス(トリエトキシシリケート)等のモノアルキル錫アルコキシシリケート等が挙げられる。これらの中で、モノアルキル錫脂肪酸塩が特に好ましい。
【0058】
上記式(5)で表されるモノアルキル錫化合物としては、例えば、1,3−ジメチル−1,1,3,3−テトラアセチルオキシジスタノキサン、1,3−ジメチル−1,1,3,3−テトラピバロイルオキシジスタノキサン、1,3−ジメチル−1,1,3,3−テトラオクタノイルオキシジスタノキサン、1,3−ジメチル−1,1,3,3−テトラキス(2−エチルヘキサノイルオキシ)ジスタノサン、1,3−ジメチル−1,1,3,3−テトラネオデカノイルオキシジスタノキサン、1,3−ジメチル−1,1,3,3−テトララウロイルオキシジスタノキサン、1,3−ジメチル−1,1,3,3−テトラステアロイルオキシジスタノキサン、1,3−ジブチル−1,1,3,3−テトラアセチルオキシジスタノキサン、1,3−ジブチル−1,1,3,3−テトラピバロイルオキシジスタノキサン、1,3−ジブチル−1,1,3,3−テトラオクタノイルオキシジスタノキサン、1,3−ジブチル−1,1,3,3−テトラキス(2−エチルヘキサノイルオキシ)ジスタノキサン、1,3−ジブチル−1,1,3,3−テトラネオデカノイルオキシジスタノキサン、1,3−ジブチル−1,1,3,3−テトララウロイルオキシジスタノキサン、1,3−ジブチル−1,1,3,3−テトラステアロイルオキシジスタノキサン、1,3−ジオクチル−1,1,3,3−テトラアセチルオキシジスタノキサン、1,3−ジオクチル−1,1,3,3−テトラピバロイルオキシジスタノキサン、1,3−ジオクチル−1,1,3,3−テトラオクタノイルオキシジスタノキサン、1,3−ジオクチル−1,1,3,3−テトラキス(2−エチルヘキサノイルオキシ)ジスタノキサン、1,3−ジオクチル−1,1,3,3−テトラネオデカノイルオキシジスタノキサン、1,3−ジオクチル−1,1,3,3−テトララウロイルオキシジスタノキサン、1,3−ジオクチル−1,1,3,3−テトラステアロイルオキシジスタノキサン等のジアルキルジスタノキサン脂肪酸塩類、1,3−ジブチル−1,1,3,3−テトラシクロプロパンカボキシレートジスタノキサン、1,3−ジブチル−1,1,3,3−テトラナフテートジスタノキサン、1,3−ジブチル−1,1,3,3−テトラシクロヘキサンカルボキシレートジスタノキサン、1,3−ジブチル錫テトラアダマンチルカルボキシレートジスタノキサンなどの脂環式構造を含むモノアルキル錫トリ脂肪酸塩)、1,3−ジブチルテトラ(ベンゼンカルボキシレート)ジスタノキサン等のモノアルキル錫芳香族カルボン酸塩)、1,3−ジブチル−1,1,3,3−テトラキス(ブチルマレノイルオキシ)ジスタノキサン、1,3−ジブチル−1,1,3,3−テトラキス(ベンジルマレノイルオキシ)ジスタノキサン、1,3−ジオクチル−1,1,3,3−テトラキス(ブチルマレノイルオキシ)ジスタノキサン、1,3−ジオクチル−1,1,3,3−テトラキス(ベンジルマレノイルオキシ)ジスタノキサン等のジアルキルジスタノキサンモノアルキルマレート塩類、1,3−ジブチル−1,1,3,3−テトラキス(トリエトキシシリロキシ)ジスタノキサン、1,3−ジオクチル−1,1,3,3−テトラキス(トリエトキシシロキシ)ジスタノキサン等のジアルキルジスタノキサンアルコキシシリケート類等が挙げられる。これらの中で、ジアルキルジスタノキサン脂肪酸塩が特に好ましい。
【0059】
上記式(6)で表されるモノアルキル錫化合物としては、例えば、モノメチル錫オキシアセテート、モノメチル錫オキシピバレート、モノメチル錫オキシオクトエート、モノメチル錫オキシ(2−エチルヘキサノエート)、モノメチル錫オキシネオデカネート、モノメチル錫オキシラウレート、モノメチル錫オキシステアレート、モノブチル錫オキシアセテート、モノブチル錫オキシピバレート、モノブチル錫オキシオクトエート、モノブチル錫オキシ(2−エチルヘキサノエート)、モノブチル錫オキシネオデカネート、モノブチル錫オキシラウレート、モノブチル錫オキシステアレート、モノオクチル錫オキシアセテート、モノオクチル錫オキシピバレート、モノオクチル錫オキシオクトエート、モノオクチル錫オキシ(2−エチルヘキサノエート)、モノオクチル錫オキシネオデカネート、モノオクチル錫オキシラウレート、モノオクチル錫オキシステアレート、モノラウリル錫オキシアセテート等のモノアルキル錫脂肪酸塩;モノブチル錫オキシブチルマレート、モノブチル錫オキシベンジルマレート等のモノアルキル錫モノアルキルマレート塩;モノブチル錫オキシトリエトキシシリケート等のモノアルキル錫アルコキシシリケート、モノブチル錫オキシナフテート、モノブチル錫トリスオキシシクロプロパンカルボキシレート、モノブチル錫オキシシクロヘキサンカルボキシレート、モノブチル錫オキシアダマンチルカルボキシレートなどの脂環式構造を含むモノアルキル錫オキシ脂肪酸塩、モノブチル錫オキシベンゼンカルボキシレート等のモノアルキル錫芳香族カルボン酸塩が挙げられる。これらの中でモノアルキル錫脂肪酸塩が特に好ましい。
(B)成分は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0060】
(B)成分の量は、可使時間をより長くすることができるという観点から、(A)成分100質量部に対して0.01〜1質量部であり、0.01〜0.5質量部であるのが好ましく、0.01〜0.3質量部であるのがより好ましい。
【0061】
(B)成分は、組成物を硬化させるための加熱の際にルイス酸として作用し、架橋反応を促進すると考えられる。
【0062】
1.3.(C)成分
本発明の組成物は(C)ビス(アルコキシシリル)アルカンを含むことができる。
(C)成分であるビス(アルコキシシリル)アルカンは、少なくとも1つのアルコキシ基を有するシリル基を2個有するアルカンである。
【0063】
本発明の組成物は(C)成分を含有することにより、接着性により優れている。
(C)成分は、プレッシャークッカー試験後における接着性により優れるという観点から、1つのシリル基に結合するアルコキシ基が2個または3個以上であるものが好ましい。
【0064】
(C)成分としては、例えば、下記式(11)で表される化合物が挙げられる。
(R11O)−Si−R12−Si−(OR11 ・・・(11)
(式中、R11は独立してアルキル基であり、R12は炭素原子数2〜10のアルキレン基である。)
【0065】
上記式(11)において、アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基が挙げられ、炭素原子数2〜10のアルキレン基としては、エチレン基、プロパンから水素原子を2個除いた基、ブタンから水素原子を2個除いた基、ペンタンから水素原子を2個除いた基、ヘキサンから水素原子を2個除いた基、ヘプタンから水素原子を2個除いた基、オクタンから水素原子を2個除いた基、ノナンから水素原子を2個除いた基、デカンから水素原子を2個除いた基が挙げられる。
【0066】
(C)成分は、プレッシャークッカー試験後における接着性により優れるという観点から、1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,7−ビス(トリメトキシシリル)ヘプタン、1,8−ビス(トリメトキシシリル)オクタン、1,9−ビス(トリメトキシシリル)ノナンおよび1,10−ビス(トリメトキシシリル)デカンからなる群から選ばれる少なくとも1種であるのが好ましく、1,6−ビス(トリメトキシシリル)へキサンがより好ましい。
(C)成分は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0067】
(C)成分の量は、プレッシャークッカー試験後における接着性により優れるという観点から、(A)成分100質量部に対して0.1〜2質量部であるのが好ましく、0.5〜1質量部であるのがより好ましい。
【0068】
本発明の組成物は、耐熱着色安定性、薄膜硬化性、作業性、および接着性に優れ、かつ、可使時間が長いという観点から、(A)成分と、(B)成分と、(C)成分とからなる組成物であるのが好ましい。
【0069】
1.4.その他の成分
また、本発明の組成物は、(A)成分、(B)成分、および(C)成分以外に、本発明の目的や効果を損なわない範囲で必要に応じてさらに添加剤を含有することができる。
【0070】
添加剤としては、例えば、無機フィラー、酸化防止剤、滑剤、紫外線吸収剤、熱光安定剤、分散剤、帯電防止剤、重合禁止剤、消泡剤、硬化促進剤、溶剤、無機蛍光体、老化防止剤、ラジカル禁止剤、接着性改良剤、難燃剤、界面活性剤、保存安定性改良剤、オゾン老化防止剤、増粘剤、可塑剤、放射線遮断剤、核剤、カップリング剤、導電性付与剤、リン系過酸化物分解剤、顔料、金属不活性化剤、物性調整剤が挙げられる。各種添加剤は特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
【0071】
無機蛍光体としては、例えば、LEDに広く利用されている、イットリウム、アルミニウム、ガーネット系のYAG系蛍光体、ZnS系蛍光体、YS系蛍光体、赤色発光蛍光体、青色発光蛍光体、緑色発光蛍光体が挙げられる。
【0072】
本発明の組成物は、雰囲気中(例えば大気中)の水を利用して硬化反応が進行するため、水を含む必要がなく、また、貯蔵安定性に優れるという観点から、実質的に水を含まないのが好ましい態様の1つとして挙げられる。本発明において実質的に水を含まないとは、本発明の組成物中における水の量が0.1質量%以下であることをいう。
【0073】
また、本発明の組成物は、作業環境性に優れるという観点から、実質的に溶媒を含まないのが好ましい態様の1つとして挙げられる。本発明において実質的に溶媒を含まないとは、本発明の組成物中における溶媒の量が1質量%以下であることをいう。
【0074】
本発明の組成物は、その製造について特に制限されない。例えば、(A)成分と、(B)成分と、(C)成分と、必要に応じて使用することができる添加剤とを混合することによって製造することができる。
【0075】
本発明の組成物は、1液型または2液型として製造することが可能である。本発明の組成物が2液型であって、かつ、例えば(C)成分を含む場合、例えば、(A)成分および(B)成分を含む第1液と、(C)成分を含む第2液とを有するものとすることができる。
【0076】
本発明の組成物は、光半導体封止用組成物として使用することができる。
【0077】
本発明の組成物を適用することができる光半導体は特に制限されない。例えば、発光ダイオード(LED)、有機電界発光素子(有機EL)、レーザーダイオード、LEDアレイが挙げられる。
【0078】
本発明の組成物の使用方法としては、例えば、光半導体に本発明の組成物を付与し、本発明の組成物が付与された光半導体を加熱して本発明の組成物を硬化させることが挙げられる。
【0079】
本発明の組成物を付与し硬化させる方法は特に制限されない。例えば、ディスペンサーを使用する方法、ポッティング法、スクリーン印刷、トランスファー成形、インジェクション成形が挙げられる。
【0080】
本発明の組成物は加熱によって硬化する。加熱温度は、加熱減量により優れ、硬化性に優れ、硬化時間、可使時間を適切な長さとすることができ、縮合反応による副生成物であるアルコールが発泡するのを抑制でき、硬化物のクラックを抑制でき、硬化物の平滑性、成形性、物性に優れるという観点から、80℃〜150℃付近で硬化させるのが好ましく、150℃付近がより好ましい。
【0081】
加熱温度が上記の場合、本発明の組成物を穏やかな条件下で硬化させることができ、かつ、縮合反応の副生成物であるアルコールによって硬化物が発泡するのを抑制することができる。
【0082】
また、本発明の組成物は、実質的に無水の条件下でなされるのが好ましい。本発明において、加熱が実質的に無水の条件下でなされるとは、加熱における環境の雰囲気(例えば大気)中の湿度が10%RH以下であることをいう。
【0083】
本発明の組成物を加熱し硬化させることによって得られる硬化物は、長期のLED(なかでも白色LED)による使用に対して、透明性を保持することができ、耐熱着色安定性および耐熱クラック性に優れている。
【0084】
本発明の組成物は、光半導体以外にも、例えば、ディスプレイ材料、光記録媒体材料、光学機器材料、光部品材料、光ファイバー材料、光・電子機能有機材料、半導体集積回路周辺材料等の用途に用いることができる。
【0085】
1.5.作用効果
本発明の組成物によれば、縮合触媒として(B)成分を使用する場合、(A)成分中のケイ素原子に結合するアルコキシ基が雰囲気中の水分と反応して、シラノール基(−Si−OH)が生成し、このシラノール基が(A)成分中のアルコキシ基および/または他のシラノール基と反応して−Si−O−Si−結合が形成される。(B)成分であるモノアルキル錫を用いるこの反応は、室温(雰囲気温度)ではほとんど進行せず、加熱によって急速に進行する。これにより、本願発明者は、(A)成分を含む組成物において、縮合触媒として(B)成分を使用する場合、室温における可使時間を長くできることを見出した。
【0086】
さらに、反応系をオープンとし、一般的なLED用途での厚さ(例えば、0.1〜2mm程度)を有するように本発明の組成物を硬化させる場合には、本発明の組成物は、本願明細書に記載の硬化条件下において良好な薄膜硬化性を発現することができる。
【0087】
なお、上記のメカニズムは本願発明者の推測であり、上記と異なるメカニズムであっても本願発明に含まれるものである。
【0088】
2.光半導体封止体
本発明の光半導体封止体は、LEDチップが本発明の接着性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物で封止されている光半導体封止体である。
【0089】
本発明の光半導体封止体の製造方法としては、例えば、本発明の接着性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物をLEDチップに付与し、前記LEDチップを加熱し前記接着性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物を硬化させて前記LEDチップを封止するものが挙げられる。
【0090】
本発明の光半導体封止体に使用される組成物は本発明の接着性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物であれば特に制限されない。
【0091】
本発明の光半導体封止体において組成物として本発明の接着性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物を使用することによって、本発明の光半導体封止体は、LEDチップからの発熱や発光等に対する耐熱着色安定性に優れ、LEDチップからの発熱や光半導体封止体の製造時における加熱等による加熱減量を抑制することができる。
【0092】
本発明の光半導体封止体に使用されるLEDチップは、発光素子として発光ダイオードを有する電子回路であれば特に制限されない。
【0093】
本発明の光半導体封止体に使用されるLEDチップはその発光色について特に制限されない。例えば、白色、青色、赤色、緑色が挙げられる。本発明の光半導体封止体は、LEDチップからの発熱による高温下に長時間さらされても、耐熱着色安定性に優れ、加熱減量を抑制することができるという観点から、白色LEDに対して適用することができる。
【0094】
LEDチップの種類は、特に制限されず、例えば、ハイパワーLED、高輝度LED、汎用輝度LEDが挙げられる。
【0095】
本発明の光半導体封止体の形態としては、例えば、硬化物が直接LEDチップを封止しているもの、砲弾型、表面実装型、複数のLEDチップまたは光半導体封止体の間および/または表面を封止しているものが挙げられる。
【0096】
本発明の光半導体封止体について添付の図面を用いて以下に説明する。なお、本発明の光半導体封止体は添付の図面に限定されない。図1は本発明の光半導体封止体の一例を模式的に示す上面図であり、図2は図1に示す光半導体封止体のA−A断面を模式的に示す断面図である。
【0097】
図1において、600は本発明の光半導体封止体であり、光半導体封止体600は、LEDチップ601と、LEDチップ601を封止する硬化物603とを備える。本発明の組成物は加熱後硬化物603となる。なお、図1において基板609は省略されている。
【0098】
図2において、LEDチップ601は基板609に例えば接着剤、はんだ(図示せず。)によってボンディングされ、またはフリップチップ構造とすることによって接続されている。なお、図2において、ワイヤ、バンプ、電極等は省略されている。
【0099】
また、図2におけるTは、硬化物603の厚さを示す。すなわち、Tは、LEDチップ601の表面上の任意の点605から、点605が属する面607に対して鉛直の方向に硬化物603の厚さを測定したときの値である。
【0100】
本発明の光半導体封止体は、透明性を確保し、密閉性に優れるという観点から、その厚さ(図2におけるT)が0.1mm以上であるのが好ましく、0.5〜1mmであるのがより好ましい。
【0101】
本発明の光半導体封止体の一例として白色LEDを使用する場合について添付の図面を用いて以下に説明する。図3は、本発明の光半導体封止体の一例を模式的に示す断面図である。図4は、本発明の光半導体封止体の一例を模式的に示す断面図である。
【0102】
図3において、光半導体封止体200は基板210の上にパッケージ204を有する。
パッケージ204には、内部にキャビティー202が設けられている。キャビティー202内には、青色LEDチップ203と硬化物202とが配置されている。硬化物202は、本発明の組成物を硬化させたものである。この場合本発明の組成物は光半導体封止体200を白色に発光させるために使用することができる蛍光物質等を含有することができる。
【0103】
青色LEDチップ203は、基板210上にマウント部材201で固定されている。青色LEDチップ203の各電極(図示せず。)と外部電極209とは導電性ワイヤー207によってワイヤーボンディングさせている。
【0104】
キャビティー202において、斜線部206まで本発明の組成物で充填してもよい。または、キャビティー202内を他の組成物で充填し、斜線部206を本発明の組成物で充填することができる。
【0105】
図4において、本発明の光半導体封止体300は、ランプ機能を有する樹脂306の内部に基板310、青色LEDチップ303およびインナーリード305を有する。
【0106】
基板310の頭部にはキャビティー(図示せず。)が設けられている。キャビティーには、青色LEDチップ303と硬化物302とが配置されている。硬化物302は、本発明の組成物を硬化させたものである。この場合本発明の組成物は光半導体封止体300を白色に発光させるために使用することができる蛍光物質等を含有することができる。また、樹脂306を本発明の組成物を用いて形成することができる。
【0107】
青色LEDチップ303は、基板310上にマウント部材301で固定されている。青色LEDチップ303の各電極(図示せず。)と基板310およびインナーリード305とはそれぞれ、導電性ワイヤー307によってワイヤーボンディングさせている。
【0108】
なお、図3、図4においてLEDチップを青色LEDチップとして説明したが、キャビティー内に赤色、緑色および青色の3色のLEDチップを配置すること、赤色、緑色および青色の3色のLEDチップのうちの1色または2色を選択してキャビティー内に配置し、選択したLEDの色に応じてLEDチップを白色に発光させるために使用することができる蛍光物質等を組成物に添加することができる。キャビティー内に本発明の組成物を例えばポッティング法によって充填し加熱することによって光半導体封止体とすることができる。
【0109】
本発明の光半導体封止体をLED表示器に利用する場合について添付の図面を用いて説明する。図5は、本発明の光半導体封止体を用いたLED表示器の一例を模式的に示す図である。図6は、図5に示すLED表示器を用いたLED表示装置のブロック図である。なお、本発明の光半導体封止体が使用されるLED表示器、LED表示装置は添付の図面に限定されない。
【0110】
図5において、LED表示器(本発明の光半導体封止体)400は、白色LEDチップ401を筐体404の内部にマトリックス状に配置し、白色LEDチップ401を硬化物406で封止し、筐体404の一部に遮光部材405を配置して構成されている。本発明の組成物を硬化物406に使用することができる。また、白色LEDチップ401として本発明の光半導体封止体を使用することができる。
【0111】
図6において、LED表示装置500は、白色LEDを用いるLED表示器501を具備する。LED表示器501は、駆動回路である点灯回路などと電気的に接続される。駆動回路からの出力パルスによって種々の画像が表示可能なディスプレイ等とすることができる。駆動回路としては、入力される表示データを一時的に記憶させるRAM(Random、Access、Memory)504と、RAM504に記憶されるデータから個々の白色LEDを所定の明るさに点灯させるための階調信号を演算する階調制御回路(CPU)503と、階調制御回路(CPU)503の出力信号でスイッチングされて、白色LEDを点灯させるドライバー502とを備える。階調制御回路(CPU)503は、RAM504に記憶されるデータから白色LEDの点灯時間を演算してパルス信号を出力する。なお、本発明の光半導体封止体はカラー表示できる、LED表示器やLED表示装置に使用することができる。
【0112】
本発明の光半導体封止体の用途としては、例えば、自動車用ランプ(ヘッドランプ、テールランプ、方向ランプ等)、家庭用照明器具、工業用照明器具、舞台用照明器具、ディスプレイ、信号、プロジェクターが挙げられる。
【実施例】
【0113】
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されない。
【0114】
1.評価
以下に示すように、粘度、耐熱着色安定性、クラックの有無、硬化性、および接着性について評価した。結果を表1に示す。
【0115】
(1)粘度
表1に示す成分を混合して製造した直後におけるRH50%および23℃の条件下での組成物の粘度(初期粘度)および製造した組成物をRH50%および23℃の条件下に置き製造から24時間経過した後の組成物の粘度を、E型粘度計を用いてRH50%、23℃の条件下で測定した。
【0116】
(2)耐熱着色安定性
下記のようにして得られた接着性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物を150℃の条件下で4時間加熱して得られた初期硬化物、および耐熱試験(初期硬化物を150℃の条件下で10日間加熱する試験)後の硬化物(いずれも厚さが2mm。)について、耐熱試験後の硬化物が、初期硬化物と比較して黄変したかどうかを目視で観察した。
【0117】
(3)クラックの有無
下記のようにして得られた接着性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物を150℃の条件下で4時間加熱して得られた初期硬化物について、それぞれ、目視で硬化の際のクラックの発生の有無を確認した。
【0118】
(4)硬化性
下記のようにして得られた接着性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物を150℃の条件下において、接着性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物が硬化するまでの時間を評価した。
硬化性の評価基準としては、6時間以内に硬化する場合を「○」、6時間以内に硬化しない場合を「×」とした。
【0119】
(5)接着性
縦25mm×横10mm×厚さ1mmのシリコーン樹脂スペーサーを用いて、得られた接着性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物を被着体:アルミナ板に流し込み、150℃の条件で4時間加熱した。得られた積層体を、プレッシャークッカー試験機を用いて121℃、100%RHの条件下に24時間置いた。プレッシャークッカー試験(PCT)後の硬化物を用いて手剥離試験を行い、試験後における接着性を試験後の硬化物の破壊形態によってプレッシャークッカー試験後における接着性を評価した。
評価は、破壊形態が凝集破壊である場合を「CF」、破壊形態が界面破壊である場合を「AF」とした。
【0120】
2.サンプルの作製
(1)サンプルの作製
サンプルの作製について添付の図面を用いて以下に説明する。
図7は、実施例において本発明の接着性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物を硬化させるために使用した型を模式的に表す断面図である。
【0121】
図7において、型8は、ガラス3(ガラス3の大きさは、縦10cm、横10cm、厚さ4mm)の上にPETフィルム5が配置され、PETフィルム5の上にシリコンモールドのスペーサー1(縦5cm、横5cm、高さ2mm)を配置されているものである。
【0122】
型8を用いてスペーサー1の内部6に組成物6を流し込み、次のとおりサンプルの硬化を行った。
【0123】
(2)サンプルの製造
組成物6が充填された型8を電気オーブンに入れて、上記の評価の条件で加熱して組成物6を硬化させ、厚さ2mmの硬化物6(初期硬化物)を製造した。
得られた硬化物6を評価用のサンプルとして用いた。
【0124】
3.接着性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物の製造
下記表1に示す成分を同表に示す量(単位:質量部)で真空かくはん機を用いて均一に混合し、接着性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物を製造した。
【0125】
【表1】

【0126】
表1に示す成分の詳細は以下のとおりである。
・(A−1)ポリシロキサン1(両末端に上記式(3)で表されるシラン化合物の縮合により生成した基を含む)の製造方法:両末端シラノール型ポリジメチルシロキサン(商品名ss70、信越化学工業社製、Mw=18000)100重量部に対してKC−89s(信越化学工業社製)10重量部、2エチルヘキサンスズ(関東化学社製)を0.01重量部添加し、60℃で8時間減圧しながら攪拌し反応を終了し、両末端がメトキシ基で変性されているポリジメチルシロキサン(ポリシロキサン1)を得た。プロトンNMRにより、シラノールのピーク消失を確認した。
・(A−2)ポリシロキサン2(両末端に上記式(2)で表されるシラン化合物の縮合により生成した基を含む)の製造方法:両末端シラノール型ポリジメチルシロキサン(商品名ss70、信越化学工業社製、Mw=18000)100重量部に対してテトラメトキシシラン(信越化学工業社製、商品名KBM−04)20重量部、2エチルヘキサンスズ(関東化学社製)を0.01重量部添加し、60℃で8時間減圧しながら攪拌し、その後130℃8時間減圧下で残渣のテトラメトキシシランを除き、両末端がトリメトキシシリルオキシ基で変性されているポリジメチルシロキサン(ポリシロキサン2)を得た。プロトンNMRにより、シラノールのピーク消失を確認した。
・(B−1)モノアルキル錫化合物:モノブチル錫トリス(2−エチルヘキサノエート)、日東化成社製
・(C−1)ビス(アルコキシシリル)アルカン1:ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、東レ・ダウコーニング社製
・(C−2)ビス(アルコキシシリル)アルカン2:ビス(トリエトキシシリル)エタン、信越化学工業社製
・(D−1)商品名MS−51、三菱化学社製(テトラメトキシシランの部分加水分解物)
・(D−2)商品名KC−89s、信越化学社製(メチルトリメトキシシランの部分加水分解物)
・U−100:ジブチル錫ジラウレート、東京化成工業社製
・U−200:ジブチル錫ジアセテート、日東化成社製
・U−303:商品名、ジブチル錫塩とケイ素化合物の反応生成物、日東化成社製
【0127】
表1に示す結果から明らかなように、モノアルキル錫化合物を含有せずジアルキル錫化合物を含有する比較例1〜6はいずれも、粘度が初期粘度から6時間以内に2倍以上になったか、あるいはゲル化が生じた。すなわち、比較例1〜6の組成物は可使時間が短いことが分かる。その理由として、比較例1〜6の組成物では、室温(23℃)にて硬化が急速に進行したことが推測される。また、比較例7および8の組成物を用いた場合、硬化物にクラックが生じた。その理由として、比較例7および8の組成物ではジメチルポリシロキサン骨格を有する成分を含まず、アルコキシシラン含有量が非常に高いため、縮合が急速に進行して硬化物が急激に収縮し、クラックが生じたことが推測される。
【0128】
これに対して、表1によれば、実施例1〜4は、耐熱着色安定性、薄膜硬化性、作業性、および接着性に優れていることが理解できる。また、実施例1〜4の組成物では、粘度の経時増加が小さく、可使時間が長い。その理由として、実施例1〜4の組成物では、室温(23℃)では加水分解の進行が非常に緩慢でゲル化がほとんど進行せず、加熱することによって加水分解縮合による硬化が速やかに進行したことが推測される。
【符号の説明】
【0129】
1 スペーサー 3 ガラス
5 PETフィルム
6 本発明の組成物(内部、硬化後に硬化物6となる)
8 型
200、300 本発明の光半導体封止体
201、301 マウント部材
202 キャビティー、硬化物 203、303 青色LEDチップ
204 パッケージ 206 斜線部
207、307 導電性ワイヤー 209 外部電極
210、310 基板 302 硬化物
305 インナーリード 306 樹脂
400、501 LED表示器 401 白色LEDチップ
404 筐体 405 遮光部材
406 硬化物 500 LED表示装置
502 ドライバー 501 LED表示器
503 階調制御手段(CPU) 504 画像データ記憶手段(RAM)
600 本発明の光半導体封止体 601 LEDチップ
603 硬化物 605 点
607 点605が属する面 609 基板
T 硬化物603の厚さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分:ケイ素原子に結合するアルコキシ基を有する直鎖状オルガノポリシロキサン化合物と、
(B)成分:前記(A)成分100質量部に対して0.01〜1質量部のモノアルキル錫化合物と、
を含む加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物。
【請求項2】
(C)成分:前記(A)成分100質量部に対してビス(アルコキシシリル)アルカン0.1〜10重量部をさらに含む請求項1に記載の加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物。
【請求項3】
前記(C)成分が、1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,7−ビス(トリメトキシシリル)ヘプタン、1,8−ビス(トリメトキシシリル)オクタン、1,9−ビス(トリメトキシシリル)ノナンおよび1,10−ビス(トリメトキシシリル)デカンから選ばれる少なくとも1種である請求項2に記載の加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物。
【請求項4】
前記(A)成分は、下記式(1)で示される分子量1,000〜1,000,000の直鎖状オルガノポリジメチルシロキサンと、下記式(2)で示されるシラン化合物および/または下記式(3)で示されるシラン化合物とを縮合してなる請求項1〜3のいずれかに記載の加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物。
【化12】

・・・(1)
(式中、Rは独立して、炭素原子数1〜6のアルキル基またはアリール基を示し、nは1以上の整数を示す。)
(Rm−4−Si−(OR ・・・(2)
(式中、RおよびRは独立して、炭素原子数1〜6のアルキル基またはアリール基を示し、mは2〜4の整数を示す。)
Si(OR(4−k−l)/2 ・・・(3)
(式中、Rは独立して、水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、アシル基またはアリール基を示し、Rは独立して、炭素原子数1〜6のアルキル基を示し、kは0<k<2を示し、lは0<l<2を示す(ただし、0<k+l<3を満たす。))
【請求項5】
前記(B)成分は、下記式(4)〜式(6)から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜4のいずれかに記載の加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物。
−Sn−X ・・・(4)
【化13】

・・・(5)
【化14】

・・・(6)
[式(4)〜式(6)中、Rは独立して、炭素原子数1〜12のアルキル基を示し、Xは独立して、炭素原子数が1〜18である脂肪族および/または芳香族カルボン酸残基、マレイン酸モノエステル残基、または下記式(7)で表される基から選択される。
【化15】

・・・(7)
(式中、RおよびRは独立して、炭素原子数1〜4のアルキル基を示し、jは0〜3の整数を示す。)]
【請求項6】
前記(B)成分は、モノアルキル錫脂肪酸塩である請求項5に記載の加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物。
【請求項7】
実質的に水を含まない請求項1〜6のいずれかに記載の加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物。
【請求項8】
実質的に溶媒を含まない請求項1〜7のいずれかに記載の加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物。
【請求項9】
前記(A)成分および前記(B)成分を含む第1液と、前記(C)成分を含む第2液とを有する請求項2〜8のいずれかに記載の加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物。
【請求項10】
前記(A)成分と、前記(C)成分と、前記(B)成分とからなる請求項2〜8のいずれかに記載の加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物をLEDチップに付与し、前記LEDチップを加熱し前記加熱硬化性光半導体封止用樹脂組成物を硬化させて前記LEDチップを封止することによって得られる光半導体封止体。

【図4】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−137119(P2011−137119A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−299306(P2009−299306)
【出願日】平成21年12月31日(2009.12.31)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】