説明

半導体装置および固体撮像装置

【課題】トランジスタ数と制御配線数と直列pMOS数をバランスよく削減できるセレクタにする。
【解決手段】1個のpMOSの第1トランジスタ401を有する第1トランジスタ部402と、M−1個のnMOSの第2トランジスタ403を有する第2トランジスタ部404でスイッチセルSWを構成してM対並列に配置する。第1トランジスタ401の配置段は組ごとに異ならせ、組ごとに第2トランジスタ403を残りの段に配置する。各トランジスタ部402,404の対の各入出力を共通に接続する。各スイッチセルSWは、入出力の一方を各別の信号入力とし他方を共通に接続して信号出力とする。pMOS,nMOSを問わず、同一段の各ゲートを共通に接続して制御配線にする。M本の制御配線のうち1本のみをアクティブLとし、残りのM−1本の制御配線をインアクティブHとすることで、何れか1つの入力信号のみを選択して出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置および固体撮像装置に関する。より詳細には、複数の信号の内の何れか1つを選択して出力する、あるいは逆に、1つの信号を、複数の出力先の何れかに選択して出力する信号選択機能を持つ半導体装置および当該信号選択機能を利用する固体撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像処理装置や撮像装置・固体撮像装置などの各種の電子機器や半導体装置においては、複数系統の各信号の何れかを選択して1系統の出力にする、あるいは逆に1系統の信号を複数系統の何れかに選択して出力する信号選択回路が用いられることがある。
【0003】
信号選択回路としては、たとえば、pチャネル型のMOSトランジスタ(pMOS)とnチャネル型のMOSトランジスタ(nMOS)を相補型に並列接続した1対の相補スイッチ(トランスファーゲートやトランスミッションゲート)を入出力間に配置するものが知られている(たとえば特許文献1〜3を参照)。MOSトランジスタに代えてバイポーラトランジスタで構成することもある。
【0004】
【特許文献1】特開平10−93069号公報
【特許文献2】特開平11−166863号公報
【特許文献3】特開昭63−107222号公報
【0005】
特許文献1〜3に記載の仕組みから明らかなように、各相補スイッチ(pMOSおよびnMOS)は、相補関係にある1対の選択制御信号により各別に制御される。
【0006】
また、特許文献3に記載の仕組みでは、複数の相補スイッチの組合せで第1の信号選択回路を構成し、その出力側にさらに、複数の相補スイッチの組合せで第2の信号選択回路を構成し(以下複数段構成の信号選択回路と称する)、第1の信号選択回路には各別の信号を入力し、第2の信号選択回路の出力を1本の信号線に伝達するようにしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、相補スイッチを並列に配置し各別に制御する構成の信号選択回路(以下単純構成の信号選択回路と称する)では、各相補スイッチは、相補関係にある1対の選択制御信号により各別に制御されるので、単純構成の信号選択回路が対応する信号入力数が多くなると制御配線数が多くなる難点がある。
【0008】
たとえば、M入力−1出力型を考えた場合、制御配線は2×M本になり、信号選択回路が多数制御配線に接続されるようになると、制御配線を太くする必要が生じる。配線レイアウトの事情を考えた場合、制御配線数は極力減らすべきである。
【0009】
たとえば特許文献3の図1に示されているように、相補関係にある1対の内の一方をインバータで論理反転することも考えられるが(以下改良構成の信号選択回路と称する)、この場合、インバータ用にトランジスタが増えてしまう。
【0010】
特許文献3に記載の仕組みは、信号選択回路を縦続配置するので、信号入力数に対するトランジスタ数や制御配線数の割合を2×M本よりも少なくできる。しかしながら、特許文献3に記載の仕組みでは、信号の入出力間に、複数の信号選択回路が縦続接続されるので、当然にMOSも縦続接続される。pチャネル型のMOSトランジスタはnチャネル型のMOSトランジスタに比べると数倍低速である難点がある。このことは、MOSトランジスタに代えてバイポーラトランジスタで構成する場合についても言え、PNPトランジスタはNPNトランジスタに比べて低速である。したがって、その縦続段数が増えると、直列pMOS数(あるいは直列PNP数:以下同様)が多くなり、信号を信号線に高速で伝達することが困難になる。
【0011】
このように、1つの信号選択回路が対応する信号入力数との関係において、制御配線、トランジスタ数、直列pMOS数の何れかの観点で依然として難点があり、全てが解決されているという信号選択回路が存在しないのが実情である。制御配線、トランジスタ数、直列pMOS数の何れかの観点でさらなる改善がされた新たな信号選択回路が求められている。新たな信号選択回路があれば、使用用途に合わせた信号選択回路の選択の幅が広がる。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、1つの信号選択回路が対応する信号入力数との関係において、各種ある従前の仕組みの何れかに対して、制御配線、トランジスタ数、直列pMOS数の少なくとも1つの観点でさらなる改善を図り、使用用途に合わせた信号選択回路の選択の幅を広げることのできる仕組みを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る半導体装置の一態様は、第1の導電型の第1トランジスタを1つ有する第1トランジスタ部と、第1の導電型とは異なる第2の導電型の第2トランジスタが“M−1”個(Mは3以上の正の整数)縦続接続された第2トランジスタ部とを備えるものとする。そして、第1トランジスタ部および第2トランジスタ部の対でM組を並列配置する。
【0014】
そして、このような構成のもので、信号選択機能を働かせる。たとえば、第1トランジスタ部と第2トランジスタ部の対でスイッチセルとし各入出力を共通に接続する。各スイッチセルの入出力の一方を各別の信号入力とし、他方を共通に接続して信号出力とする。
【0015】
M組の第1トランジスタ部および第2トランジスタ部の内の何れか1つに対して、第1トランジスタの制御入力端に当該第1トランジスタをオンさせるアクティブレベルを入力し、このとき当該第1トランジスタが属する組の全ての第2トランジスタの制御入力端にも各第2トランジスタをオンさせるアクティブレベルを入力する。また、当該第1トランジスタが属さない他の組のそれぞれについては、第1トランジスタの制御入力端には当該第1トランジスタをオフさせるインアクティブレベルを入力し、かつ、少なくとも1つの第2トランジスタの制御入力端にも第2トランジスタをオフさせるインアクティブレベルを入力する。このような仕組みを採ることで、M×M個のトランジスタとM本の制御配線により、M入力−1出力型、あるいは逆に1入力−M出力型の信号選択機能が実現できる。
【0016】
単純構成の信号選択回路に比べると制御信号線数は少なくなる。インバータを利用した改良構成の信号選択回路に比べるとトランジスタ数は少なくなる。
【0017】
特に、MOS構成にする場合は、第1トランジスタをpMOSかつ第2トランジスタをnMOSにし、バイポーラ構成にする場合は、第1トランジスタをPNPトランジスタかつ第2トランジスタをNPNトランジスタにするのがよい。第1トランジスタをpMOSやPNPトランジスタにすると、入力数Mに関わらず直列pMOS数や直列PNP数を確実に1つにできる。そのため、特許文献3に記載の仕組みの複数段構成の信号選択回路を利用して、2入力−1出力型の信号選択回路を複数段配置して3入力以上に対応する場合に比べると、直列pMOS数や直列PNP数は確実に少なくなる。
【0018】
このような信号選択回路は、複数段構成にも利用できる。その場合、トランジスタ数に鑑みれば、当該信号選択回路は3入力−1出力型とし、2つの相補スイッチで構成された2入力−1出力型の信号選択回路と組み合わせて複数段構成にするのがよい。特に、3入力−1出力型にした当該信号選択回路を最下段側に配置したものがよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一態様によれば、制御配線、トランジスタ数、直列pMOS数(PNP数)の少なくとも1つの観点で、各種ある従前の仕組みの何れかに対して改善が図られた新たな信号選択機能を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。各機能要素について実施形態別や変形例別に区別する際には、A,B,C,…などのように大文字の英語の参照子を付して記載し、特に区別しないで説明する際にはこの参照子を割愛して記載する。図面においても同様である。
【0021】
<半導体装置:基本構成>
図1〜図1Dは、本実施形態の半導体装置の基本構成を説明する図である。ここで、図1および図1Aは本実施形態の半導体装置400の基本構成を示す図である。図1Bは本実施形態の半導体装置400を制御する制御信号を説明する図である。図1Cは本実施形態の半導体装置400に対する第1・第2比較例の半導体装置400X,400Yを示す図である。図1Dは本実施形態の半導体装置400に対する第3比較例の半導体装置400Zを示す図である。
【0022】
図1に示すように、第1例の半導体装置400Aは、pMOS(pチャネル型のMOSトランジスタ)やPNPトランジスタ(PNP型のバイポーラトランジスタ)などの第1の導電型(第1導電型)の第1トランジスタ401を1つ有する第1トランジスタ部402と、nMOS(nチャネル型のMOSトランジスタ)やNPNトランジスタ(NPN型のバイポーラトランジスタ)などの第1の導電型とは異なる第2の導電型(第2導電型)の第2トランジスタ403が“M−1”個(Mは3以上の正の整数)縦続接続された第2トランジスタ部404を備える。半導体装置400Aは、第1トランジスタ部402と第2トランジスタ部404が対となって、M組並列に配置されている。
【0023】
図では、pMOSを第1トランジスタに使用しnMOSを第2トランジスタに使用する例で示している。“M−1”個のnMOSの第2トランジスタ403が縦続接続された第2トランジスタ部404は、全体としてもnMOSの性質を呈し、pMOSの第1トランジスタ401と相補関係を持つ。バイポーラトランジスタで構成する場合は、第1トランジスタをPNP型のトランジスタに置き換え、第2トランジスタをNPN型のトランジスタに置き換えればよい。
【0024】
なお、第1の導電型と第2の導電型は相補関係にあり、導電型を逆転させた構成にすることもできる。たとえば、図1Aに示すように、第2例の半導体装置400Bは、nMOSやNPNトランジスタなどの第1の導電型の第1トランジスタを1つ有する第1トランジスタ部402と、pMOSやPNPトランジスタなどの第1の導電型とは異なる第2の導電型の第2トランジスタが“M−1”個(Mは3以上の正の整数)縦続接続された第2トランジスタ部404を備える。半導体装置400Bは、第1トランジスタ部402と第2トランジスタ部404が対となって、M組並列に配置されている。
【0025】
図では、nMOSを第1トランジスタに使用しpMOSを第2トランジスタに使用する例で示している。“M−1”個のpMOSの第2トランジスタ403が縦続接続された第2トランジスタ部404は、全体としてもpMOSの性質を呈し、nMOSの第1トランジスタ401と相補関係を持つ。バイポーラトランジスタで構成する場合は、第1トランジスタをNPN型のトランジスタに置き換え、第2トランジスタをPNP型のトランジスタに置き換えればよい。
【0026】
各トランジスタ401,403の制御入力端(MOSのゲートやバイポーラのベース)は、各トランジスタ401,403をオン/オフ制御する制御信号が入力される制御入力端400CNT1,400CNT2に接続されている。
【0027】
各第1トランジスタ部402の第1トランジスタ401の入力端は信号用の各入力端400IN1に個別に接続されている。各第1トランジスタ部402の第1トランジスタ401の出力端は第1トランジスタ部402で選択された信号用の各出力端400OUT1に個別に接続されている。
【0028】
各第2トランジスタ部404の最も信号入力側に近い第2トランジスタ403の入力端は信号用の各入力端400IN2に個別に接続されている。各第2トランジスタ部404の最も信号出力側に近い第2トランジスタ403の出力端は第2トランジスタ部404で選択された信号用の各出力端400OUT2に個別に接続されている。
【0029】
このような構成の半導体装置400の利用形態としては、入力端400IN1 ,400IN2 に入力された各信号の何れかを選択して出力端400OUT1,400OUT2から出力する信号選択機能が考えられる。このときの制御入力端400CNT1,400CNT2、入力端400IN1 ,400IN2 、出力端400OUT1,400OUT2の接続態様は次のようにする。
【0030】
先ず、同一組の入力端400IN1 ,400IN2 を接続し、対となる第1トランジスタ部402と第2トランジスタ部404に同一信号が共通に入力されるようにする。全ての組の出力端400OUT1,400OUT2を共通に接続して、各第1トランジスタ部402_kと第2トランジスタ部404_kで選択された信号が1系統で後段側に伝達されるようにする。
【0031】
これにより、対となる第1トランジスタ部402_kと第2トランジスタ部404_kのスイッチセルSW_Kは、第1トランジスタ401と第2トランジスタ403が相補接続されている相補スイッチ(CMOSスイッチ)として機能するようになる。そしてこれをさらに、それらがM組並列接続されることで、半導体装置400がM入力−1出力型の信号選択回路(M入力セレクタ)として機能するようにするべく、制御入力端400CNT1_k,400CNT2_kの接続を次のようにする。
【0032】
すなわち、M個の第1トランジスタ部402および第2トランジスタ部404の内の何れか1つに対して、第1トランジスタ401の制御入力端400CNT1_kに第1トランジスタ401をオンさせるアクティブレベルが入力されるときには、第1トランジスタ401が属するk組の全ての第2トランジスタ403の制御入力端400CNT2_*(*はk以外)にも各第2トランジスタ403をオンさせるアクティブレベルが入力されるようにする。第1トランジスタ401が属さない他の組のそれぞれについては、第1トランジスタ401の制御入力端400CNT1_*(*はk以外)には第1トランジスタ401をオフさせるインアクティブレベルが入力され、かつ、少なくとも1つの第2トランジスタ403の制御入力端400CNT2_*(*はkを含んでよい)にも第2トランジスタ403をオフさせるインアクティブレベルが入力されるようにする。
【0033】
このため、それぞれの組のアクティブレベルが入力される第1トランジスタ401の制御入力端400CNT1_kは、当該第1トランジスタ401が属さない他の組の各第2トランジスタ部404との間で、それぞれ異なる何れか1つの第2トランジスタ403の制御入力端400CNT2_kと接続する。
【0034】
一例としては、図示のように、各組の第1トランジスタ部402の第1トランジスタ401の配置段jをそれぞれ異なるように配置する。そして、第1トランジスタ部402と対となる第2トランジスタ部404においては、第1トランジスタ401が配置されていない残りの段に“M−1”個の第2トランジスタ403を配置する。
【0035】
このような状態で、全ての組を貫通するように、同一段の第1トランジスタ401の制御入力端400CNT1_kおよび第2トランジスタ403の制御入力端400CNT2_kを共通に接続するのが簡単な接続方法である。以下、k組のj段の各トランジスタ401,403を、それぞれ第1トランジスタ401_k,j,第2トランジスタ403_k,jのように記す。各入出力端についても同様である。こうすることで、計M×M個のトランジスタ401,403を、M本の制御配線により制御できるようになる。
【0036】
たとえば、1組の1段目の第1トランジスタ401_1,1の制御入力端400CNT1_1は、1組を除く他の全てのk組の第2トランジスタ403_k,1の制御入力端400CNT2_kと共通に接続する。2組の2段目の第1トランジスタ401_2,2の制御入力端400CNT1_1は、2組を除く他の全てのk組の第2トランジスタ403_k,2の制御入力端400CNT2_kと共通に接続する。以下同様に、j組のj段目の第1トランジスタ401_j,jの制御入力端400CNT1_1は、j組を除く他の全てのk組の第2トランジスタ403_k,jの制御入力端400CNT2_kと共通に接続する。
【0037】
このような構成では、組ごとにnMOS(もしくはpMOS)が縦続接続にされる。各組との関係ではpMOS,nMOSの配置段の組合せが異なる。入力数M分だけ第1トランジスタ部402と第2トランジスタ部404の対が並列配置されている。トランジスタの導電型に関わらず各組の各段のトランジスタの制御入力端(ゲート)には共通に制御信号が入力される。縦続接続にしない方の第1トランジスタ401について制御信号をアクティブレベルに、このときのアクティブレベルが、他組の縦続接続にした第2トランジスタ403についてはインアクティブレベルが制御信号として入力されるようにすることで、信号の選択動作を行なう。
【0038】
図では、作図や実際の配線レイアウトの容易性に鑑みて、M本の制御配線CNが直線状に配線されるように第1トランジスタ401の配置段が組みごとに異なり、第2トランジスタ403を残りの段に配置するように示しているが、このことは必須でない。各トランジスタへの制御配線の接続関係が後述する信号選択動作をするように維持される限り、第1トランジスタ401と第2トランジスタ403の配置段は図示したものに限定されない。このような配置段の変形例も、実質的に、第1トランジスタ401の配置段が組みごとに異なり、第2トランジスタ403が残りの段に配置され、縦続接続されていない第1トランジスタ401に入力される制御信号のアクティブレベルが、他組の縦続接続されている第2トランジスタ403についてはインアクティブレベルとなる構成と見なす。究極的には、ある組の第1トランジスタ401が他の全ての組の第2トランジスタ部404のそれぞれ異なる何れか1つの第2トランジスタ403と各制御入力端400CNT が共通に接続され(あるいは接続可能で)、第1トランジスタ401の制御入力端400CNT に入力される制御信号のアクティブレベルが、他組の第2トランジスタ403の制御入力端400CNT にはインアクティブレベルとして入力される構成であればよい。
【0039】
図1Bには、図1および図1Aに示した半導体装置400A,400Bにおける制御信号の与え方が示されている。k組に入力される信号は入力kであるとする。pMOSの場合、ゲート(制御入力端)をL(ロー)にするのがアクティブレベルで、ゲートをH(ハイ)にするのがインアクティブレベルであり、第1例の半導体装置400Aの場合は、図1B(1)に示すように、アクティブLの制御信号 XCN_kが使用される。一方、nMOSの場合、ゲートをHにするのがアクティブレベルで、ゲートをLにするのがインアクティブレベルであり、第2例の半導体装置400Bの場合は、図1B(2)に示すように、アクティブHの制御信号CN_kが使用される。
【0040】
第1例の半導体装置400Aの場合、図1B(1)から分かるように、j組の第1トランジスタ401_j,jの制御入力端400CNT1_jがアクティブLのとき、他の全ての組の第1トランジスタ401_*,*(*はj以外)の制御入力端400CNT1_*がインアクティブHとなる。このインアクティブHは、j組の各第2トランジスタ403_j,*の制御入力端400CNT2_j,*にとっては、アクティブHとなる。その結果、j組では、第1トランジスタ部402_jの第1トランジスタ401_j,jがオンするとともに、第2トランジスタ部402_jの全ての第2トランジスタ401_j,*がオンする。これに対して、j組以外では、第1トランジスタ部402および第2トランジスタ403が全てオフする。これにより、j組に入力された信号(入力j)のみが選択されて出力されるようになる。M本の制御配線のうち1本のみをアクティブL(電位ロー)とし、残りの“M−1”本の制御配線をインアクティブH(電位ハイ)とすることで、信号選択ができる。
【0041】
第2例の半導体装置400Bの場合、図1B(2)から分かるように、j組の第1トランジスタ401_j,jの制御入力端400CNT1_jがアクティブHのとき、他の全ての組の第1トランジスタ401_*,*(*はj以外)の制御入力端400CNT1_*がインアクティブLとなる。このインアクティブLは、j組の各第2トランジスタ403_j,*の制御入力端400CNT2_j,*にとっては、アクティブLとなる。その結果、j組では、第1トランジスタ部402_jの第1トランジスタ401_j,jがオンするとともに、第2トランジスタ部402_jの全ての第2トランジスタ401_j,*がオンする。これに対して、j組以外では、第1トランジスタ部402および第2トランジスタ403が全てオフする。これにより、j組に入力された信号(入力j)のみが選択されて出力されるようになる。M本の制御配線のうち1本のみをアクティブH(電位ハイ)とし、残りの“M−1”本の制御配線をインアクティブL(電位ロー)とすることで、信号選択ができる。
【0042】
このように、本実施形態の半導体装置400A、400Bは、前述のような構成および使用に当たっての接続態様を採ることで、M入力−1出力型の信号選択回路が、M本の制御配線で、かつ、M×M個のトランジスタで実現されるようになる。加えて、本実施形態の半導体装置400では、nMOSとpMOSの両方を利用したトランスミッションゲート(詳細は後述する)が等価的に構成され、その性質を享受できる利点もある。
【0043】
ここで、pMOSを第1トランジスタ401に使用している第1例の半導体装置400Aと、nMOSを第1トランジスタ401に使用している第2例の半導体装置400Bを比較すると、半導体装置400Aは、入力数Mに関わらず、直列pMOS数が1個である点も加味すれば、制御配線数と直列pMOS数においてバランスよく削減できると言える。両者には、制御配線数やトランジスタ数は差異がないが、第2例の半導体装置400Bでは、第2トランジスタ部404においてpMOSの第2トランジスタ403が直列接続されることの不利益が発生する。すなわち、pMOSとnMOSを比較した場合、一般的にnMOSに対してpMOSは数倍低速である。よって、pMOSが直列接続される第2例の半導体装置400Bは第1例の半導体装置400Aよりも、入力の変化に対する出力の変化は遅く、信号遅延が大きくなる。
【0044】
<比較例>
図1C(1)に示すように、第1比較例の半導体装置400Xでは、第1トランジスタ401(pMOSおよびnMOSの一方:ここではpMOSとする)と第2トランジスタ403(pMOSおよびnMOSの他方:ここではnMOSとする)が相補接続されている相補スイッチ408がM個並列配置されてM入力−1出力型の信号選択回路500Xとして機能するようになっている。相補接続とは、第1トランジスタ401と第2トランジスタ403が互いに他方を補うように並列に接続されていることである。
【0045】
これにより、半導体装置400Xは、第1トランジスタ401と第2トランジスタ403をCMOS型で並列接続したアナログスイッチとして働くCMOS構成のトランスファーゲートをM個持つ。CMOS構成のトランスファーゲートは、特にトランスミッションゲートやトランスミッションスイッチとも称される。
【0046】
pMOSの各第1トランジスタ401のゲートにはアクティブLの制御信号 XCN_kが各別に入力され、nMOSの各第2トランジスタ403のゲートにはアクティブHの制御信号CN_kが各別に入力される。アクティブLの制御信号 XCN_kとアクティブHの制御信号CN_kは論理反転(相補関係)の関係にある。M入力−1出力型の信号選択回路500Xとして機能する半導体装置400Xは、2×M本の制御配線によって制御される。1対の制御信号CN_k, XCN_kなどのように相補関係にある制御信号を以下相補制御信号とも称する。
【0047】
トランスミッションゲートつまりCMOSスイッチは、第1トランジスタ401のゲートがアクティブLでかつ第2トランジスタ403のゲートがアクティブHのときに双方がオンすることにより、入力されたデータをそのまま出力する。
【0048】
アナログスイッチとしては、nMOSとpMOSのどちらか一方のみによるトランジスタスイッチでもよいが、その場合、素子数は少ないもののオン抵抗や閾値電圧Vthの問題がある。加えて、閾値電圧Vthとも関係するが、デジタルデータのスイッチとして使用する場合、nMOSはLレベルは通せるがHレベルは通せないし、pMOSはHレベルは通せるがLレベルは通せないという問題も発生する。そこで、トランジスタ数が多くなってしまうが、nMOSとpMOSを相補接続形で並列接続することによりLレベルもHレベルも通すことができる理想的なスイッチとして機能するトランスミッションゲートを採用している。その結果、第1比較例の半導体装置400Xでは、M入力−1出力型の信号選択回路とするに当たり、2×M本の制御配線と2×M個のトランジスタが必要となる。
【0049】
本実施形態の半導体装置400A,400Bと第1比較例の半導体装置400Xを比べた場合、トランジスタ数は半導体装置400Xの方が少ないものの、制御配線数は半導体装置400Xの方が多くなってしまう。たとえば、セレクタの利用態様として後述するように固体撮像装置(CMOSセンサ)が考えられるが、この場合、全入力数Nは数百〜数千となることが想定され、それに対して3や6程度の入力数のセレクタが使用されると、非常に多くのセレクタが同一の制御配線でコントロールされることになる。セレクタが多数制御配線に接続されるようになると、制御配線を太くする必要が生じ、レイアウトの事情から制御配線数は極力減らすべきである。そのような観点において、制御配線数が少ない本実施形態の方が有利と考えられる。
【0050】
制御配線数を少なくする仕組みとして、アクティブLの制御信号とアクティブHの制御信号が論理反転(相補関係)の関係にある点に着目した変形例を考えることができる。たとえば図1C(2)に示すように、第2比較例の半導体装置400Yでは、アクティブLの制御信号が入力されるpMOSの第1トランジスタ401のゲート側にそれぞれインバータ409を有する。各インバータ409には、対となるnMOSの第2トランジスタ403のゲートと共通にアクティブHの制御信号が入力される。図示を割愛するが、アクティブHの制御信号が入力されるnMOSの第2トランジスタ403のゲート側にそれぞれインバータ409を設け、各インバータ409に対となるpMOSの第1トランジスタ401のゲートと共通にアクティブLの制御信号が入力されるようにしてもよい。
【0051】
このように、M入力−1出力型の信号選択回路500Yとして機能する第2比較例の半導体装置400Yでは、アクティブHの制御信号とアクティブLの制御信号の一方について、他方をインバータ409により論理反転(相補関係)することで自身で該当信号を生成するようにしている。こうすることで、M入力−1出力型の信号選択回路は、M本の制御配線によって制御可能になる。
【0052】
しかしながらこの場合、半導体装置400Yはインバータ409の追加分だけ第1比較例の半導体装置400Xよりも大きくなる。たとえば、インバータ409の構成として、図示のようにpMOS409pとnMOS409nが縦続接続されたCMOSインバータを採用すると、インバータ409部分でそれぞれ2個のトランジスタが必要になり、M入力の場合は2×M個のトランジスタが追加使用される。その結果、第2比較例の半導体装置400Yでは、M入力−1出力型の信号選択回路とするに当たり、M本の制御配線と4×M個のトランジスタが必要となる。
【0053】
本実施形態の半導体装置400A,400Bと第2比較例の半導体装置400Yを比べた場合、制御配線数は同じであるが、トランジスタ数は半導体装置400Yの方が多くなるので、本実施形態の方が有利となる。
【0054】
また、制御配線数を少なくする他の仕組みとして、図1D(1)に示す第3比較例(第1例)の半導体装置400Z_1のように、相補スイッチ408が2個並列接続された2入力−1出力型の信号選択回路(2入力セレクタ502V)を2^(K−1)個ずつ多段に配置して、2^K入力−1出力型の信号選択回路500Z_1にすることも考えられる。また、図1D(2)に示す第3比較例(第2例)の半導体装置400Z_2のように所定の段で所定数の2入力セレクタ502Vを割愛してその下段の2入力セレクタ502Vに信号を直接入力する形態を採ることで2^Kに限定されない任意の入力数MとするM入力−1出力型の信号選択回路500Z_2への対処も可能である。
【0055】
2入力セレクタ502Vは、他方の相補スイッチ408との間で、pMOSとnMOSの各ゲートが共通に接続される。そして、同一段では、それらゲートが共通に接続されている。各段では、2入力セレクタ502Vに、相補関係にある1対の制御信号CN_k, XCN_kが共通に入力される。
【0056】
なお、図示しないが、図1D(1),(2)においても、図1A(2)と同様に、インバータ409を設け、相補制御信号の一方を論理反転して他方を生成する仕組みを採ることも考えられる。
【0057】
これら第3比較例の半導体装置400Zでは、入力数Mに関わらず、制御配線数は本実施形態の半導体装置400A,400Bと同程度もしくは以下になることが推測される。一方、3入力ではトランジスタ数が本実施形態の半導体装置400A,400Bよりも多くなる。4入力以上ではトランジスタ数が本実施形態の半導体装置400A,400Bよりも少なくなる。しかしながら、第3比較例の半導体装置400Zでは、入力数Mに関わらず、pMOSが直列接続されることの不利益が発生する。このことは、本実施形態の第2例の半導体装置400Bと似通った現象である。よって、第3比較例の半導体装置400Zは、入力数Mに関わらず、本実施形態の第1例の半導体装置400Aに比べると、遅延が大きくなってしまう。
【0058】
<信号選択回路:基本構成>
図2〜図2Cは、本実施形態の信号選択回路の基本構成を説明する図である。本実施形態の信号選択回路500は、前述の本実施形態の半導体装置400A,400Bの仕組みを利用して、各トランジスタの端子の接続態様や信号の入出力端との接続関係を予め信号選択回路としての使用に特化して構成したものである。いわゆるセレクタ用の集積回路として市場に提供する場合に好適な構成である。
【0059】
前述のM入力−1出力型の信号選択回路として使用可能な半導体装置400の各入出力端のままでセレクタ用の集積回路(信号選択回路)として提供することも可能である。しかしながらその場合、当然に端子数が多くなり、ユーザ側でパターンレイアウトを行なうなど使い勝手が悪いし端子コストも掛かる。その対策として、本実施形態の信号選択回路500は、予めM入力−1出力型の信号選択回路用として必要な最低限の入出力端子のみにしてユーザに提供する仕組みをとる。
【0060】
図2に示す第1例の信号選択回路500Aは、第1例の半導体装置400Aに対応するもので、図2Aに示す第2例の信号選択回路500Bは、第2例の半導体装置400Bに対応するものである。信号選択回路500A,500Bは、外部から信号が入力されるM個の信号入力端500IN_kと、1個の信号出力端500OUT と、M個の制御入力端500CNT_k を有する。
【0061】
対となる第1トランジスタ部402_kの入力端400IN1_k と第2トランジスタ部404_kの入力端400IN2_k が共通に信号入力端500IN_kに接続されている。信号入力端500IN_kには入力kが信号として入力される。全ての組の出力端400OUT1_k,400OUT2_kは共通に信号出力端500OUT に接続され、ここから信号選択回路500A,500Bで選択された何れかの入力kが出力される。
【0062】
各組の第1トランジスタ部402の第1トランジスタ401は、それぞれ異なる段位置(j段)に配置されている。第1トランジスタ部402と対となる第2トランジスタ部404においては、第1トランジスタ401が配置されていない残りの段に“M−1”個の第2トランジスタ403が配置されている。全ての組を貫通するように、同一段の第1トランジスタ401のゲートおよび第2トランジスタ403のゲートが共通に接続され、制御入力端500CNT_k に接続されている。
【0063】
これにより、それぞれの組のアクティブレベルが入力される第1トランジスタ401_j,jのゲートは、当該第1トランジスタ401_j,jが属さない他の組の各第2トランジスタ部404_*( jを除く)との間で、それぞれ異なる何れか1つの第2トランジスタ403_*,*( j,jを除く)のゲートと共通に制御入力端500CNT_j に接続される。
【0064】
全体として、計M×M個のトランジスタ401,403を、M本の制御配線により制御するM入力−1出力型の信号選択回路500A,500Bが構成されている。この本実施形態の信号選択回路500A,500Bの動作は、前述の本実施形態の半導体装置400A,400Bを信号選択回路として使用する場合と同様であるので、ここでは説明を割愛する。その代わりに、以下に具体的な構成を示して説明する。
【0065】
なお、本実施形態の半導体装置400A,400Bの信号選択回路500としての使用や、本実施形態の信号選択回路500A,500Bは、M入力−1出力型(いわゆるマルチプレクサ:multiplexer )としての使用・構成に限らない。一般的な信号選択回路(セレクタ回路)と同様に、信号の入出力の扱いを逆にした1入力−M出力型(いわゆるデマルチプレクサ:demultiplexer )としての使用・構成も可能であり、そのような変形も本実施形態の範囲である。たとえば図2Bに示す第3例の信号選択回路500Cは第1例の信号選択回路500Aの入出力を逆にし、図2Cに示す第4例の信号選択回路500Dは第2例の信号選択回路500Bの入出力を逆にしたものである。トランジスタがオンすることで入出力間に信号が伝達されるものであるから、MOSを使用する場合は特段の回路変更もなく対処可能であるし、バイポーラトランジスタを使用する場合は信号の伝達方向に合わせてトランジスタのエミッタ・コレクタを配置すればよい。
【0066】
<3入力セレクタ:基本>
図3〜図3Bは、本実施形態の信号選択回路500の第1具体例である3入力−1出力型の信号選択回路500(3入力−1出力型の入力セレクタ502、以下3入力セレクタ502Aと称する)を説明する図である。ここで、図3は本実施形態の3入力セレクタ502Aの回路構成を示す図である。図3Aは本実施形態の3入力セレクタ502Aを1次元に複数(図では3つ)並べたセレクタ群を示す図である。図3Bは、本実施形態の3入力セレクタ502Aを制御する制御信号を説明する図である。
【0067】
図3に示すように、3入力セレクタ502Aは、pMOSの第1トランジスタ401_1,1を1つ有する第1トランジスタ部402_1と、2個のnMOSの第2トランジスタ403_1,2,403_1,3が縦続接続された第2トランジスタ部404_1を備える。第1トランジスタ401_1,1のソースと第2トランジスタ403_1,2のドレインは、入力1が入力される信号入力端500IN_1に共通に接続されている。
【0068】
3入力セレクタ502Aはさらに、pMOSの第1トランジスタ401_2,2を1つ有する第1トランジスタ部402_2と、2個のnMOSの第2トランジスタ403_2,1,403_2,3が縦続接続された第2トランジスタ部404_2を備える。第1トランジスタ401_2,2のソースと第2トランジスタ403_2,1のドレインは、入力2が入力される信号入力端500IN_2に共通に接続されている。
【0069】
3入力セレクタ502Aはさらに、pMOSの第1トランジスタ401_3,3を1つ有する第1トランジスタ部402_3と、2個のnMOSの第2トランジスタ403_3,1,403_3,2が縦続接続された第2トランジスタ部404_3を備える。第1トランジスタ401_3,3のソースと第2トランジスタ403_3,1のドレインは、入力3が入力される信号入力端500IN_3に共通に接続されている。
【0070】
第1トランジスタ401_1,1のドレイン、第2トランジスタ403_1,3のソース、第1トランジスタ401_2,2のドレイン、第2トランジスタ403_2,3のソース、第1トランジスタ401_3,3のドレイン、第2トランジスタ403_3,2のソースは、信号出力端500OUT に共通に接続されている。
【0071】
第1トランジスタ401_1,1のゲートと第2トランジスタ403_2,1,403_3,1のゲートは、制御信号XAが入力される制御入力端500CNT_1 に共通に接続されている。第1トランジスタ401_2,2のゲートと第2トランジスタ403_1,2,403_3,2のゲートは、制御信号XBが入力される制御入力端500CNT_2 に共通に接続されている。第1トランジスタ401_3,3のゲートと第2トランジスタ403_1,3,403_2,3のゲートは、制御信号XCが入力される制御入力端500CNT_3 に共通に接続されている。
【0072】
図3Aに示すように、3入力セレクタ502Aを1次元に複数並べたセレクタ群においては、制御信号XA,XB,XCが各3入力セレクタ502A_1,502A_2,502A_3で共通に使用されるように接続される。
【0073】
制御信号XA,XB,XCは何れも、pMOSの第1トランジスタ401_1,1,401_2,2,401_3,3にとってはアクティブLであるが、nMOSの各第2トランジスタ403にとってはインアクティブLである。このため、図3Bに示すように、制御信号XAがLで制御信号XB,XCがHのときには入力1が選択され信号出力端500OUT から出力される。制御信号XBがLで制御信号XA,XCがHのときには入力2が選択され信号出力端500OUT から出力される。制御信号XCがLで制御信号XA,XBがHのときには入力3が選択され信号出力端500OUT から出力される。3つの制御信号XA,XB,XCの内の何れか1つのみを電位ローとし、残りの2つを電位ハイとすることで入力1,2,3の何れかを選択して信号出力端500OUT から出力する動作が行なわれる。
【0074】
<3入力セレクタの比較>
図4〜図4Fは、本実施形態の3入力セレクタ502Aと比較例との対比を説明する図である。ここで、図4は第1比較例の3入力セレクタ502Wの回路構成を示す図である。図4Aは第2比較例の3入力セレクタ502Xの回路構成を示す図である。図4Bは第3比較例の3入力セレクタ502Yの回路構成を示す図である。図4Cは第4比較例の3入力セレクタ502Zの回路構成を示す図である。図4Dは第1比較例の3入力セレクタ502Wを1次元に複数並べたセレクタ群を示す図である。図4Eおよび図4Fは、本実施形態の3入力セレクタ502Aの作用効果を比較例との対比で纏めた図である。
【0075】
図4に示す第1比較例の3入力セレクタ502Wは、図1C(1)に示した思想のもので、3つの相補スイッチ408_1,408_2,408_3を有する。相補スイッチ408_1,408_2,408_3は、各入力側が対応する信号入力端500IN_1,500IN_2,500IN_3に個別に接続され、各出力側が信号出力端500OUT に共通に接続されている。nMOSの第1トランジスタ401_1,401_2,401_3にはそれぞれ制御信号 A, B, Cが各別に入力され、pMOSの第2トランジスタ403_1,403_2,403_3にはそれぞれ制御信号XA,XB,XCが各別に入力される。制御信号 A, B, Cと制御信号XA,XB,XCは相補関係にある。
【0076】
図4Dに示すように、第1比較例の3入力セレクタ502Wを1次元に複数並べたセレクタ群においては、制御信号XA,XB,XCと制御信号XA,XB,XCがそれぞれ各3入力セレクタ502W_1,502W_2,502W_3で共通に使用されるように接続される。6本の制御配線が、3入力セレクタ502Wの配列方向に沿って延びる。
【0077】
図4Eに示すように、3入力セレクタ502Wは、制御配線数(以下CN数と記すこともある)は6本、トランジスタ数(以下TR数と記すこともある)は6個で、制御配線数が多くなってしまう。
【0078】
図4Aに示す第2比較例の3入力セレクタ502Xは、図1C(2)に示した思想のもので、第1比較例の3入力セレクタ502Xに対して、相補制御信号の一方(制御信号XA,XB,XCが入力されるpMOSの第2トランジスタ403_1,403_2,403_3のゲート側にそれぞれ、pMOS409pとnMOS409nが縦続接続されたインバータ409_1,409_2,409_3(CMOSインバータ)が追加されている。インバータ409_1,409_2,409_3には、対となるnMOSの第1トランジスタ401_1,401_2,401_3のゲートと共通に相補制御信号の他方である制御信号 A, B, Cが各別に入力され、制御信号XA,XB,XCを各別に生成する。
【0079】
図4Eに示すように、3入力セレクタ502Xは、制御信号 A, B, Cをインバータ409により論理反転(相補関係)することで自身で制御信号XA,XB,XCを生成するので、第1比較例の3入力セレクタ502Wに対して、制御配線数は半分の3本に削減されるが、トランジスタ数は3個のインバータ409(TR数=2)のために6個増加し12個となり、トランジスタ数が多くなってしまう。
【0080】
図4Bに示す第3比較例の3入力セレクタ502Yは、2個の相補スイッチ408_1,408_2が並列接続された2入力セレクタ502Vが1個ずつ2段に配置されている。1段目の2入力セレクタ502V_1は、一方の入力端は入力1が入力される信号入力端500IN_1に接続され、他方の入力端は入力2が入力される信号入力端500IN_2に接続されている。2段目の2入力セレクタ502V_2は、一方の入力端は1段目の2入力セレクタ502V_1の出力に接続され、他方の入力端は入力3が入力される信号入力端500IN_3に接続され、出力端は信号出力端500OUT に接続されている。
【0081】
2入力セレクタ502V_1,502V_2はそれぞれ、相補スイッチ408_1,408_2の間で、互いにpMOSとnMOSの各ゲートが共通に接続されている。1段目の2入力セレクタ502V_1には相補関係にある制御信号 Aと制御信号XAが入力される。2段目の2入力セレクタ502V_2には相補関係にある制御信号 Dと制御信号XDが入力される。
【0082】
図4Eに示すように、3入力セレクタ502Yは、制御配線数が4本であり、トランジスタ数は8個であり、制御配線数はまだ多い。加えて、入力と出力の間にpMOSが最大2段入り(入力1や入力2が選択されるとき)、遅延が大きくなってしまう。
【0083】
図4Cに示す第4比較例の3入力セレクタ502Zは、第3比較例の3入力セレクタ502Yをベースに、インバータ409_1,409_2(CMOSインバータ)を追加している。インバータ409_1は、入力に制御信号 Aが入力され制御信号XAを生成する。インバータ409_2は、入力に制御信号 Dが入力され制御信号XDを生成する。
【0084】
図4Eに示すように、3入力セレクタ502Zは、制御信号 A, Dをインバータ409により論理反転(相補関係)することで自身で制御信号XA,XDを生成するので、第3比較例の3入力セレクタ502Yに対して、制御配線数は半分の2本に削減できるが、トランジスタ数は2個のインバータ409(TR数=2)のために4個増加し12個となり、トランジスタ数が多くなってしまう。加えて、この場合も入力と出力の間にpMOSが最大2段入り(入力1や入力2が選択されるとき)、遅延が大きくなってしまう。
【0085】
このように、第1〜第4比較例の3入力セレクタ502W〜502Zでは、トランジスタ数が多くなってしまうか、制御配線が多くなってしまうかの何れかとなってしまう。
【0086】
これに対して、本実施形態の3入力セレクタ502Aでは、図4Eに示すように、制御配線数が3本で、トランジスタ数が9個である。制御配線数を3以下にする必要がある場合は、トランジスタ数を最少にでき、トランジスタ数を9以下にする必要がある場合は制御配線数を最少にできる。第1〜第4比較例に比べて本実施形態の3入力セレクタ502Aの方が、制御配線数とトランジスタ数においてバランスよく削減できていることが分かる。また本実施形態の3入力セレクタ502Aでは、直列pMOS数が1個であり、入力の変化に対する出力の変化は高速である。トランジスタ数と制御配線数と直列pMOS数をバランスよく削減でき信号選択回路(セレクタ)の新たな選択肢となる。加えて、プリチャージなどは行なわなくてよい。制御配線数、トランジスタ数をバランスよく減らし、さらに直列pMOS数も減らすことができる3入力セレクや、3入力セレクタを1次元に複数並べたセレクタ群を実現できる。
【0087】
<3入力セレクタ:第1変形例>
図5は、本実施形態の信号選択回路500の第2具体例である3入力−1出力型の信号選択回路500(以下第1変形例の3入力セレクタ502Bと称する)を1次元に複数並べたセレクタ群を示す図である。
【0088】
第1変形例の各3入力セレクタ502B_kは、前述の3入力セレクタ502Aをベースに、pMOS509pとnMOS509nが縦続接続されたインバータ509_1,509_2,509_3(CMOSインバータ)を追加している。各インバータ509_1は、制御信号 Aが共通に入力され、各別に制御信号XA_kを生成する。各インバータ509_2は、制御信号 Bが共通に入力され、各別に制御信号XB_kを生成する。各インバータ509_3は、制御信号 Cが共通に入力され、各別に制御信号XC_kを生成する。
【0089】
各3入力セレクタ502B_kの制御ノードは、制御信号XA_1,XB_1,XC_1、制御信号XA_2,XB_2,XC_2、制御信号XA_3,XB_3,XC_3と異なるが、共通の制御信号 A, B, Cによってドライブされ、各3つある制御信号XA_1,XB_1,XC_1、制御信号XA_2,XB_2,XC_2、制御信号XA_3,XB_3,XC_3の組はそれぞれ同様に振る舞う。信号選択動作としては、3入力セレクタ502Aと大差がない。
【0090】
ただし、各3入力セレクタ502B_kは、トランジスタ数は3個のインバータ509_k(TR数=2)のために6個増加し18個になり、トランジスタ数が多くなってしまう。制御配線数とトランジスタ数におけるバランスの観点では基本構成の3入力セレクタ502Aより劣るが、少なくとも第1・第3比較例よりも制御配線数を少なくできるし、直列pMOS数を確実に「1」にできる。制御配線数と直列pMOS数においてバランスよく削減できていると言える。
【0091】
<3入力セレクタ:第2変形例>
図6〜図6Bは、本実施形態の信号選択回路500の第3具体例である3入力−1出力型の信号選択回路500(以下第2変形例の3入力セレクタ502Cと称する)を説明する図である。ここで、図6は3入力セレクタ502Cの回路構成を示す図である。図6Aは第2変形例の3入力セレクタ502Cを1次元に複数(図では3つ)並べたセレクタ群を示す図である。図6Bは、第2変形例の3入力セレクタ502Cを制御する制御信号を説明する図である。
【0092】
第2変形例の3入力セレクタ502Cは、3入力セレクタ502Aに対して、第1トランジスタ401、第2トランジスタ403について、pMOSとnMOSの使用を逆にしたものである。
【0093】
図6に示すように、3入力セレクタ502Cは、nMOSの第1トランジスタ401_1,1を1つ有する第1トランジスタ部402_1と、2個のpMOSの第2トランジスタ403_1,2,403_1,3が縦続接続された第2トランジスタ部404_1を備える。第1トランジスタ401_1,1のソースと第2トランジスタ403_1,2のドレインは、入力1が入力される信号入力端500IN_1に共通に接続されている。
【0094】
3入力セレクタ502Cはさらに、nMOSの第1トランジスタ401_2,2を1つ有する第1トランジスタ部402_2と、2個のpMOSの第2トランジスタ403_2,1,403_2,3が縦続接続された第2トランジスタ部404_2を備える。第1トランジスタ401_2,2のソースと第2トランジスタ403_2,1のドレインは、入力2が入力される信号入力端500IN_2に共通に接続されている。
【0095】
3入力セレクタ502Cはさらに、nMOSの第1トランジスタ401_3,3を1つ有する第1トランジスタ部402_3と、2個のpMOSの第2トランジスタ403_3,1,403_3,2が縦続接続された第2トランジスタ部404_3を備える。第1トランジスタ401_3,3のソースと第2トランジスタ403_3,1のドレインは、入力3が入力される信号入力端500IN_3に共通に接続されている。
【0096】
第1トランジスタ401_1,1のドレイン、第2トランジスタ403_1,3のソース、第1トランジスタ401_2,2のドレイン、第2トランジスタ403_2,3のソース、第1トランジスタ401_3,3のドレイン、第2トランジスタ403_3,2のソースは、信号出力端500OUT に共通に接続されている。
【0097】
第1トランジスタ401_1,1のゲートと第2トランジスタ403_2,1,403_3,1のゲートは、制御信号 Aが入力される制御入力端500CNT_1 に共通に接続されている。第1トランジスタ401_2,2のゲートと第2トランジスタ403_1,2,403_3,2のゲートは、制御信号 Bが入力される制御入力端500CNT_1 に共通に接続されている。第1トランジスタ401_3,3のゲートと第2トランジスタ403_1,3,403_2,3のゲートは、制御信号 Cが入力される制御入力端500CNT_1 に共通に接続されている。
【0098】
図6Aに示すように、3入力セレクタ502Cを1次元に複数並べたセレクタ群においては、制御信号 A, B, Cが各3入力セレクタ502C_1,502C_2,502C_3で共通に使用されるように接続される。
【0099】
制御信号 A, B, Cは何れも、nMOSの第1トランジスタ401_1,1,401_2,2,401_3,3にとってはアクティブHであるが、pMOSの各第2トランジスタ403にとってはインアクティブHである。このため、図6Bに示すように、制御信号 AがHで制御信号 B, CがLのときには入力1が選択され信号出力端500OUT から出力される。制御信号 BがHで制御信号 A, CがLのときには入力2が選択され信号出力端500OUT から出力される。制御信号 CがHで制御信号 A, BがLのときには入力3が選択され信号出力端500OUT から出力される。3つの制御信号 A, B, Cの内の何れか1つのみを電位ハイとし、残りの2つを電位ローとすることで入力1,2,3の何れかを選択して信号出力端500OUT から出力する動作が行なわれる。
【0100】
第2変形例の3入力セレクタ502Cは、3入力セレクタ502Aに対して、第1トランジスタ401、第2トランジスタ403についてpMOSとnMOSの使用を逆にしており、制御信号レベルの扱いも逆になるが、基本的な信号選択動作においては大差がない。制御配線数が3本で、トランジスタ数が9個である点も3入力セレクタ502Aと同じであり、第1〜第4比較例に比べて3入力セレクタ502Cの方が、制御配線数とトランジスタ数においてバランスよく削減できるし、プリチャージなどは行なわなくてよい。
【0101】
ただし、何れの入力が選択される場合も、入力と出力の間にpMOSが2段入り、遅延が大きくなってしまう。3入力セレクタ502Aより入力の変化に対する出力の変化は遅くなる。
【0102】
図示しないが、この3入力セレクタ502Cをベースにして、3入力セレクタ502Aをベースにした第1変形例と同様の変形構成を採ることもできる。このような変形例でも、少なくとも第1・第3比較例よりも制御配線数を少なくできる。
【0103】
<4入力セレクタ:基本>
図7および図7Aは、本実施形態の信号選択回路500の第4具体例である4入力−1出力型の信号選択回路500(以下第1例の4入力セレクタ502Dと称する)を説明する図である。ここで、図7は、第1例の4入力セレクタ502Dの回路構成を示す図である。図7Aは、第1例の4入力セレクタ502Dを制御する制御信号を説明する図である。
【0104】
4入力対応とするため、4入力セレクタ502Dは、第1トランジスタ部402_kと第2トランジスタ部404_kの対を4組持ち、各第2トランジスタ部404_kに3つのnMOSの第2トランジスタ403_k,jを縦続接続している。ゲート、ソース、ドレインの接続態様の考え方は、半導体装置400Aや信号選択回路500Aや3入力セレクタ502Aの場合と同様である。たとえば、入力4が入力される4組目の第1トランジスタ401_4,4のゲートと第2トランジスタ403_1,4,403_2,4,403_3,4のゲートは、制御信号XDが入力される制御入力端500CNT_4 に共通に接続されている。
【0105】
制御信号XA,XB,XC,XDは何れも、pMOSの第1トランジスタ401_1,1,401_2,2,401_3,3,401_4,4にとってはアクティブLであるが、nMOSの各第2トランジスタ403にとってはインアクティブLである。このため、図7Aに示すように、制御信号XAがLで制御信号XB,XC,XDがHのときには入力1が選択され信号出力端500OUT から出力される。制御信号XBがLで制御信号XA,XC,XDがHのときには入力2が選択され信号出力端500OUT から出力される。制御信号XCがLで制御信号XA,XB,XDがHのときには入力3が選択され信号出力端500OUT から出力される。制御信号XDがLで制御信号XA,XB,XCがHのときには入力4が選択され信号出力端500OUT から出力される。4個の制御信号XA,XB,XC,XDの内の何れか1つのみを電位ローとし、残りの3つを電位ハイとすることで入力1,2,3,4の何れかを選択して信号出力端500OUT から出力する動作が行なわれる。
【0106】
<4入力セレクタの比較>
図7Bは、第1例の4入力セレクタ502Dと比較例との対比を説明する図である。4入力セレクタ502Dの作用効果を比較例との対比で纏めて示している。
【0107】
図示を割愛するが、各比較例は次のような構成である。第1比較例の4入力セレクタは、第1比較例の3入力セレクタ502Wと同様に図1C(1)に示した思想のもので、4個の相補スイッチ408を有する構成である。各相補スイッチ408は、制御信号 A, B, C, Dと制御信号XA,XB,XC,XDの対で制御される。第1比較例の4入力セレクタは、3入力セレクタ502Yとの比較では、制御配線数は2本追加され8(=2×4)本になり、1つの相補スイッチ408が追加されるのでトランジスタ数が2つ増加し8個となる。
【0108】
第2比較例の4入力セレクタは、第2比較例の3入力セレクタ502Xと同様に図1C(2)に示した思想のもので、第1比較例の4入力セレクタをベースに、4個のCMOSインバータを追加し、各CMOSインバータにより相補制御信号の一方(制御信号 A, B, C, D)に基づき相補制御信号の他方(制御信号XA,XB,XC,XD)を各別に生成する。第2比較例の4入力セレクタは、第1比較例の4入力セレクタに対して、制御配線数は半分の4本に削減されるが、トランジスタ数は4個のCMOSインバータ(TR数=2)のために8個増加し16個となり、トランジスタ数が多くなってしまう。
【0109】
第3比較例の4入力セレクタは、第3比較例の3入力セレクタ502Yと同様の思想のもので、2個の2入力セレクタ502Vを1段目に配置し、1個の2入力セレクタ502Vを2段目に配置したものである。1段目では各入力端に入力1,2,3,4を各別に入力し、1段目の2入力セレクタ502Vの各出力を2段目の入力とする。1段目と2段目は、それぞれ別の相補制御信号(制御信号 A,XAや制御信号 D,XD)で制御される。第3比較例の4入力セレクタは、3入力セレクタ502Yとの比較では、制御配線数は変わらず4本であるが、1個の2入力セレクタ502Vが追加されるので、トランジスタ数は4個増加し12個となる。また、入力と出力の間にpMOSが2段入る。
【0110】
第4比較例の4入力セレクタは、第4比較例の3入力セレクタ502Zと同様の思想のもので、第3比較例の4入力セレクタをベースに、2個のCMOSインバータを追加し、各CMOSインバータにより相補制御信号の一方(制御信号 A, D)に基づき相補制御信号の他方(制御信号XA,XD)を各別に生成する。第4比較例の4入力セレクタは、第3比較例の4入力セレクタに対して、制御配線数は半分の2本に削減されるが、2個のCMOSインバータ(TR数=2)が追加されるので、トランジスタ数は4個増加し16個となる。
【0111】
第1例の4入力セレクタ502Dは、制御配線数が4本で、トランジスタ数が16個で直列pMOS数が1個であり、第2比較例との対比では同等である。しかしながら、第1比較例との対比では制御配線数を少なくできるし、第3・第4比較例との対比では入力の変化に対する出力の変化は高速である。直列pMOS数が1個である点も加味すれば、制御配線数と直列pMOS数においてバランスよく削減できていると言える。
【0112】
<<素因数分解を利用したセレクタ:基本>>
信号選択回路500を構成するに当たり、入力数Mを、“M=M_1×M_2×M_3×…”のように素数M_k(kは1以上の正の整数)の掛算の形に素因数分解して、M_k入力−1出力型の信号選択回路500を階層化(多段構成に)することもできる。M_k入力−1出力型の信号選択回路500を複数並列配置する段では、制御信号を共通に供給する構成をとることで、全体としての制御配線数を削減し配線レイアウト上のメリットを享受するものである。以下に具体的な構成を示して説明する。
【0113】
<6入力セレクタ:基本>
図8〜図8Cは、本実施形態の信号選択回路500の第5具体例である6入力−1出力型の信号選択回路500(以下6入力セレクタ502Eと称する)を説明する図である。ここで、図8は本実施形態の6入力セレクタ502Eの回路ブロック図である。図8Aは本実施形態の6入力セレクタ502Eの回路構成を示す図である。図8Bは本実施形態の6入力セレクタ502Eを1次元に複数(図では3つ)並べたセレクタ群を示す図である。図8Cは、本実施形態の6入力セレクタ502Eを制御する制御信号を説明する図である。
【0114】
6を素因数分解すると「2×3」となるので、「3」の部分に本実施形態の3入力セレクタ502A〜502Cの何れかを使用し、2入力セレクタ502Vと組み合わせて、2段の階層化にすることで6入力セレクタ502Eを構成できる。6入力対応とするための各段の配置の仕方としては、「2入力→3入力」,「3入力→2入力」の2通りが考えられる。
【0115】
図8(1)や図8Aに示した第1例の6入力セレクタ502Eaでは、1段目には3つの2入力セレクタ502V_1,502V_2,502V_3を配置し、それらの出力を受ける3入力セレクタ502Aなどを2段目に配置している。1段目の2入力セレクタ502V_1,502V_2,502V_3には、相補関係にある制御信号 Dと制御信号XDを共通に供給する。図示した例では、1段目では、制御信号 DがHで制御信号XDがLのときに入力1,3,5が選択され、制御信号 DがLで制御信号XDがHのときに入力2,4,6が選択されるようにしている。2入力セレクタ502V_1により入力1と入力2の内の片方が選択され、2入力セレクタ502V_2により入力3と入力4のうちの片方が選択され、2入力セレクタ502V_3により入力5と入力6のうちの片方が選択される。そして、3つの2入力セレクタ502V_1,502V_2,502V_3で選択された3つの信号のうち1つが3入力セレクタ502Aにより選択される。
【0116】
図8(2)に示した第2例の6入力セレクタ502Ebでは、1段目には2個の3入力セレクタ502A_1,502A_2を配置し、それらの出力を受ける2入力セレクタ502Vを2段目に配置している。1段目の3入力セレクタ502A_1,502A_2には、pMOSにとってのアクティブLの制御信号XA,XB,XCを共通に供給する。3入力セレクタ502A_1により入力1,入力2,入力3の内の1つが選択され、3入力セレクタ502A_2により入力4,入力5,入力6の内の1つが選択される。そして、2個の3入力セレクタ502A_1,502A_2で選択された2個の信号のうち1つが2入力セレクタ502Vにより選択される。「3」が1段目に入る当該構成では本実施形態の3入力セレクタ502Aを2個使用するのでトランジスタ数が多くなる。第1例の方がトランジスタ数が少なく有利である。
【0117】
図8Bに示すように、6入力セレクタ502Eaを1次元に複数並べたセレクタ群においては、1段目に関する制御信号 D,XDと2段目に関する制御信号XA,XB,XCが各6入力セレクタ502Ea_1,502Ea_2,502Ea_3で共通に使用されるように接続される。
【0118】
図8Cに示すように、制御信号XAがLで制御信号XB,XCがHのときには入力1,2の何れかが選択されるが、制御信号 DがHであれば入力1が選択され制御信号XDがHであれば入力2が選択されて、信号出力端500OUT から出力される。制御信号XBがLで制御信号XA,XCがHのときには入力3,4の何れかが選択されるが、制御信号 DがHであれば入力3が選択され制御信号XDがHであれば入力4が選択されて、信号出力端500OUT から出力される。制御信号XCがLで制御信号XA,XBがHのときには入力5,6の何れかが選択されるが、制御信号 DがHであれば入力5が選択され制御信号XDがHであれば入力6が選択されて、信号出力端500OUT から出力される。3つの制御信号XA,XB,XCの内の何れか1つのみを電位ローとし残りの2つを電位ハイとするとともに、1組の制御信号 D,XDの内の一方のみを電位ハイとし他方を電位ローとすることで入力1,2,3,4,5,6の何れか1つのみを選択して信号出力端500OUT から出力する動作が行なわれる。
【0119】
<6入力セレクタの比較>
図8Dおよび図8Eは、本実施形態の第1例の6入力セレクタ502Eaと比較例との対比を説明する図である。6入力セレクタ502Eaの作用効果を比較例との対比で纏めて示している。
【0120】
図示を割愛するが、各比較例は次のような構成である。第1比較例の6入力セレクタは、第1比較例の3入力セレクタ502Wと同様に図1C(1)に示した思想のもので、6個の相補スイッチ408を有する構成である。各相補スイッチ408は、nMOSにとってアクティブHの制御信号とpMOSにとってアクティブLの制御信号の対で制御される。制御配線数は12(=2×6)本になり、トランジスタ数は12(=2×6)個となる。
【0121】
第2比較例の6入力セレクタは、第2比較例の3入力セレクタ502Xと同様に図1C(2)に示した思想のもので、第1比較例の6入力セレクタをベースに、6個のCMOSインバータを追加し、各CMOSインバータにより相補制御信号の一方に基づき相補制御信号の他方を各別に生成する。第2比較例の6入力セレクタは、第1比較例の6入力セレクタに対して、制御配線数は半分の6本に削減されるが、トランジスタ数は6個のCMOSインバータ(TR数=2)のために12個増加し24個となり、トランジスタ数が多くなってしまう。
【0122】
第3比較例の6入力セレクタは、第3比較例の3入力セレクタ502Xと同様の思想のもので、たとえば、2個の2入力セレクタ502Vを1段目に、2個の2入力セレクタ502Vを2段目に、1個の2入力セレクタ502Vを3段目に配置する。1段目では、各入力端に入力1,2,3,4を各別に入力し、1段目の2入力セレクタ502Vの各出力を2段目の一方の2入力セレクタ502Vの2個の入力端への入力とする。2段目の他方の2入力セレクタ502Vには入力5,6を各別に入力する。3段目は、2段目の2入力セレクタ502Vの各出力を2個の入力端への入力とする。第3比較例の6入力セレクタは、3段構成となるので相補制御信号が3組使用され、制御配線数は6(=2×3)本となり、5個の2入力セレクタ502V(TR数=4)が使用されるのでトランジスタ数は20個となる。また、入力と出力の間にpMOSが3段入る。
【0123】
第4比較例の6入力セレクタは、第4比較例の3入力セレクタ502Zと同様の思想のもので、第3比較例の6入力セレクタをベースに、3つのCMOSインバータを追加し、各CMOSインバータにより相補制御信号の一方に基づき相補制御信号の他方を各別に生成する。第4比較例の6入力セレクタは、第3比較例の6入力セレクタに対して、制御配線数は半分の3本に削減されるが、3つのCMOSインバータ(TR数=2個)が追加されるので、トランジスタ数は6個増加し26個となる。
【0124】
本実施形態の第1例の6入力セレクタ502Eaは、3つの2入力セレクタ502V(CN数=2、TR数=4)を1段目に配置し、1つの3入力セレクタ502A(CN数=3、TR数=9)を2段目に配置した構成である。よって、制御配線数が5本で、トランジスタ数が21(=3×4+9)個で直列pMOS数が2個である。制御配線数を5以下にする必要がある場合は、トランジスタ数を最少にでき、トランジスタ数を21以下にする必要がある場合は制御配線数を最少にできる。第1〜第4比較例に比べて本実施形態の6入力セレクタ502Eの方が、制御配線数とトランジスタ数においてバランスよく削減できていることが分かる。プリチャージなどは行なわなくてよい。本実施形態の6入力セレクタ502Eは、直列pMOS数が2個で出力の変化が遅くなる難点はあるが、6入力セレクタにおいて新たな選択肢となる。
【0125】
<9入力セレクタ:基本>
図9は、本実施形態の信号選択回路500の第6具体例である9入力−1出力型の信号選択回路500(以下9入力セレクタ502Fと称する)の回路ブロック図である。
【0126】
9を素因数分解すると「3×3」となるので、本実施形態の3入力セレクタ502A〜502Cの何れかを2段の階層化にすることで9入力セレクタ502Fを構成できる。
【0127】
9入力対応とするための各段の配置の仕方としては、「3入力→3入力」の1通りなる。たとえば、1段目には3つの3入力セレクタ502A_1,502A_2,502A_3を配置し、それらの出力を受ける3入力セレクタ502A_4を2段目に配置している。1段目の3入力セレクタ502A_1,502A_2,502A_3には、制御信号XD,XE,XFを共通に供給する。2段目の3入力セレクタ502A_4には、制御信号XA,XB,XCを供給する。
【0128】
1段目の3つの3入力セレクタ502A_1,502A_2,502A_3により各組の3つの入力の何れか1つが選択され、2段目の3入力セレクタ502A_4により、1段目の3入力セレクタ502A_1,502A_2,502A_3で選択された3つの信号のうち1つが選択される。たとえば、3入力セレクタ502A_1により入力1,2,3の何れか1つのみが選択され、3入力セレクタ502A_2により入力4,5,6の何れか1つのみが選択され、3入力セレクタ502A_3により入力7,8,9の何れか1つのみが選択される。そして、3つの3入力セレクタ502A_1,502A_2,502A_3で選択された3つの信号のうち1つが3入力セレクタ502A_4により選択される。
【0129】
3つの制御信号XA,XB,XCの内の何れか1つのみを電位ローとし残りの2つを電位ハイとするとともに、3つの制御信号XD,XE,XFの内の何れか1つのみを電位ローとし残りの2つを電位ハイとすることで、入力1〜9の何れか1つのみを選択して信号出力端500OUT から出力する動作が行なわれる。
【0130】
<9入力セレクタの比較>
図9Aは、本実施形態の9入力セレクタ502Fと比較例との対比を説明する図である。9入力セレクタ502Fの作用効果を比較例との対比で纏めて示している。
【0131】
図示を割愛するが、各比較例は次のような構成である。第1比較例の9入力セレクタは、第1比較例の3入力セレクタ502Wと同様に図1C(1)に示した思想のもので、9個の相補スイッチ408を各別に、pMOSにとってのアクティブLの制御信号とnMOSにとってのアクティブHの制御信号の対で制御する構成である。第1比較例の9入力セレクタは、制御配線数は18(=2×9)本になり、トランジスタ数は18(=2×9)個となる。
【0132】
第2比較例の9入力セレクタは、第2比較例の3入力セレクタ502Xと同様に図1C(2)に示した思想のもので、第1比較例の9入力セレクタをベースに、9個のCMOSインバータを追加し、各CMOSインバータにより相補制御信号の一方に基づき相補制御信号の他方を各別に生成する。第2比較例の9入力セレクタは、第1比較例の9入力セレクタに対して、制御配線数は半分の9本に削減されるが、トランジスタ数は9個のCMOSインバータ(TR数=2)のために18個増加し36個となり、トランジスタ数が多くなってしまう。
【0133】
第3比較例の9入力セレクタは、第3比較例の3入力セレクタ502Xと同様の思想のもので、たとえば、4個の2入力セレクタ502Vを1段目に、2個の2入力セレクタ502Vを2段目に、1個の2入力セレクタ502Vを3段目に、1個の2入力セレクタ502Vを4段目に配置する。3段目までで入力1〜8の何れか1つのみを選択し、4段目で残りの入力9との切り分けを行なう。このため、1段目では、各入力端に8つの入力1〜8を各別に入力し、1段目の4個の2入力セレクタ502Vの各出力を2段目の2個の2入力セレクタ502Vの各入力とする。2段目の2入力セレクタ502Vの各出力を3段目の2入力セレクタ502Vの入力とし、3段目の出力を4段目の2入力セレクタ502Vの一方の入力とする。残りの入力9は4段目の2入力セレクタ502Vの他方に入力する。第3比較例の9入力セレクタは、4段構成となるので相補制御信号が4組使用され、制御配線数は8(=2×4)本となり、8個の2入力セレクタ502V(TR数=4)が使用されるのでトランジスタ数は32個となる。また、入力と出力の間にpMOSが4段入る。
【0134】
第4比較例の9入力セレクタは、第4比較例の3入力セレクタ502Zと同様の思想のもので、第3比較例の9入力セレクタをベースに、4個のCMOSインバータを追加し、各CMOSインバータにより相補制御信号の一方に基づき相補制御信号の他方を各別に生成する。第4比較例の9入力セレクタは、第3比較例の9入力セレクタに対して、制御配線数は半分の4本に削減されるが、4個のCMOSインバータ(TR数=2個)が追加されるので、トランジスタ数は8つ増加し40個となる。
【0135】
本実施形態の9入力セレクタ502Fは、4個の3入力セレクタ502A(CN数=3、TR数=9)を使用して、1段目に3つ配置し2段目に1つ配置した構成であるので、制御配線数が6(=3×2)本で、トランジスタ数が36(=9×4)個で直列pMOS数が2個である。制御配線数を6以下にする必要がある場合は、トランジスタ数を最少にでき、トランジスタ数を36以下にする必要がある場合は制御配線数を最少にできる。第1〜第4比較例に比べて本実施形態の9入力セレクタ502Fの方が、制御配線数とトランジスタ数と直列pMOS数においてバランスよく削減できていることが分かる。プリチャージなどは行なわなくてよい。本実施形態の9入力セレクタ502Fは、直列pMOS数が2個で出力の変化が遅くなる難点はあるが、9入力セレクタにおいて新たな選択肢となる。
【0136】
図示しないが、3入力セレクタ502Aのみを組み合わせて3^K入力セレクタ(Kは3以上)を構成する場合についても、同様の思想の各比較例との対比では、同様の作用効果が得られる。
【0137】
<12入力セレクタ:基本>
図10は、本実施形態の信号選択回路500の第7具体例である12入力−1出力型の信号選択回路500(以下12入力セレクタ502Gと称する)の回路ブロック図である。
【0138】
12を素因数分解すると「2×2×3」となるので、各段の配置の仕方としては、「2入力→2入力→3入力」,「2入力→3入力→2入力」,「3入力→2入力→2入力」の3通りが考えられる。「3」の部分に本実施形態の3入力セレクタ502A〜502Cの何れかを使用する。「2入力→2入力→3入力」の構成は、「2入力→2入力」で構成した4入力セレクタの出力にさらに3入力セレクタを配置した構成となる。「2入力→3入力→2入力」,「3入力→2入力→2入力」の構成は、「2入力→3入力」もしくは「3入力→2入力」で構成した6入力セレクタの出力にさらに2入力セレクタを配置した構成となる。「3」が1段目に入る構成では本実施形態の3入力セレクタ502A〜502Cの何れかを4個使用するし、「3」が2段目に入る構成では本実施形態の3入力セレクタ502A〜502Cの何れかを2個使用するので何れもトランジスタ数が多くなる。
【0139】
そこで、本実施形態では、「2入力→2入力→3入力」の構成を採用する。図10に示す本実施形態の12入力セレクタ502Gは、6個の2入力セレクタ502Vを1段目に配置し、3つの2入力セレクタ502Vを2段目に配置し、1つの3入力セレクタ502Aを3段目に配置する。本実施形態の第1例の6入力セレクタ502Eaの入力側に6個の2入力セレクタ502V_4〜502V_9を配置した構成と見ることができる。
【0140】
1段目の2入力セレクタ502V_4〜502V_9には、相補関係にある制御信号 Eと制御信号XEを共通に供給する。2入力セレクタ502V_4により入力1と入力2の内の片方が選択され、2入力セレクタ502V_5により入力3と入力4のうちの片方が選択され、2入力セレクタ502V_6により入力5と入力6のうちの片方が選択される。2入力セレクタ502V_7により入力7と入力8の内の片方が選択され、2入力セレクタ502V_8により入力9と入力10のうちの片方が選択され、2入力セレクタ502V_9により入力11と入力12のうちの片方が選択される。
【0141】
これら1段目の6個の選択結果が、さらに本実施形態の第1例の6入力セレクタ502Eaに入力されることで、入力1〜12の何れか1つのみが選択される。3つの制御信号XA,XB,XCの内の何れか1つのみを電位ローとし残りの2つを電位ハイとするとともに、1組の制御信号 D,XDの内の一方のみを電位ハイとし他方を電位ローとし、さらに、1組の制御信号 E,XEの内の一方のみを電位ハイとし他方を電位ローとすることで入力1〜12の何れか1つのみを選択して信号出力端500OUT から出力する動作が行なわれる。
【0142】
<12入力セレクタの比較>
図10Aは、本実施形態の12入力セレクタ502Gと比較例との対比を説明する図である。12入力セレクタ502Gの作用効果を比較例との対比で纏めて示している。
【0143】
図示を割愛するが、各比較例は次のような構成である。第1比較例の12入力セレクタは、第1比較例の3入力セレクタ502Wと同様に図1C(1)に示した思想のもので、12個の相補スイッチ408を各別に、12組の相補制御信号で制御する構成である。第1比較例の12入力セレクタは、制御配線数は24(=2×12)本になり、トランジスタ数は24(=2×12)個となる。
【0144】
第2比較例の12入力セレクタは、第2比較例の3入力セレクタ502Xと同様に図1C(2)に示した思想のもので、第1比較例の12入力セレクタをベースに、12個のCMOSインバータを追加し、各CMOSインバータにより相補制御信号の一方に基づき相補制御信号の他方を各別に生成する。第2比較例の12入力セレクタは、第1比較例の12入力セレクタに対して、制御配線数は半分の12本に削減されるが、トランジスタ数は12個のCMOSインバータ(TR数=2)のために24個増加し48個となり、トランジスタ数が多くなってしまう。
【0145】
第3比較例の12入力セレクタは、第3比較例の3入力セレクタ502Xと同様の思想のもので、たとえば、2入力セレクタ502Vの組合せで構成した8入力セレクタと2入力セレクタ502Vの組合せで構成した4入力セレクタの各出力をさらに2入力セレクタ502Vで選択する構成をとる。一例として、8入力セレクタ用に4個の2入力セレクタ502Vを1段目に、8入力セレクタ用と4入力セレクタ用に各2個の2入力セレクタ502Vを2段目に、8入力セレクタ用と4入力セレクタ用に各1個の2入力セレクタ502Vを3段目に、1個の2入力セレクタ502Vを4段目に配置する。第3比較例の12入力セレクタは、4段構成となるので4組の相補制御信号が使用され、制御配線数は8(=2×4)本となり、11個の2入力セレクタ502V(TR数=4)が使用されるのでトランジスタ数は44個となる。また、入力と出力の間にpMOSが4段入る。
【0146】
第4比較例の12入力セレクタは、第4比較例の3入力セレクタ502Zと同様の思想のもので、第3比較例の12入力セレクタをベースに、4個のCMOSインバータを追加し、各CMOSインバータにより相補制御信号の一方に基づき相補制御信号の他方を各別に生成する。第4比較例の12入力セレクタは、第3比較例の12入力セレクタに対して、制御配線数は半分の4本に削減されるが、4個のCMOSインバータ(TR数=2個)が追加されるので、トランジスタ数は8つ増加し52個となる。
【0147】
本実施形態の12入力セレクタ502Gは、1段目に6個の2入力セレクタ502V(CN数=2、TR数=4)と2段目に3個の2入力セレクタ502V(CN数=2、TR数=4)と、3段目に1個の3入力セレクタ502A(CN数=3、TR数=9)を使用した構成であるので、制御配線数が7本で、トランジスタ数が45(=4×6+4×3+9)個で直列pMOS数が3個である。12入力セレクタ502Gは、制御配線数とトランジスタ数と直列pMOS数においてバランスよく削減できていることが分かる。プリチャージなどは行なわなくてよい。本実施形態の12入力セレクタ502Gは、直列pMOS数が3個で出力の変化が遅くなる難点はあるが、12入力セレクタにおいて新たな選択肢となる。
【0148】
<<補正込みの素因数分解を利用したセレクタ>>
信号選択回路500を構成するに当たり、入力数Mが素数である場合に、適当な数値αを加算して“M+α=M_1×M_2×M_3×…”のように素数M_k(kは1以上の正の整数)の掛算の形に素因数分解して、M_k入力−1出力型のサブセレクタを階層化(多段構成に)することもできる。Mに適当な数値αを加算する点を除いて、素因数分解を利用したセレクタの基本構成と同様である。以下に具体的な構成を示して説明する。
【0149】
<5入力セレクタ:基本>
図11は、本実施形態の信号選択回路500の第8具体例である5入力−1出力型の信号選択回路500(以下5入力セレクタ502Hと称する)の回路ブロック図である。
【0150】
α=1を加算して6入力型にすることで6入力セレクタ502Eの仕組みを利用する。「3」の部分に本実施形態の3入力セレクタ502A〜502Cの何れかを使用する。そして、その内のα=1の分を未使用にする。
【0151】
図11(1)に示した第1例の5入力セレクタ502Haでは、第1例の6入力セレクタ502Eaをベースにして、1段目の2入力セレクタ502V_3を取り外して2段目の3入力セレクタ502Aの3番目の入力端に入力5を直接に入力する。α=1の分として2入力セレクタ502V_3を未使用にする例である。
【0152】
図11(2)に示した第2例の5入力セレクタ502Hbでは、第2例の6入力セレクタ502Ebをベースにして、1段目の一方の3入力セレクタ502A_2を2入力セレクタ502V_2に置き換える。α=1の分として3入力セレクタ502A_2を未使用にする例である。
【0153】
どちらも2個の2入力セレクタ502Vと1個の3入力セレクタ502Aを使用するので、トランジスタ数は同じであるが、第2例では1段目で2入力セレクタ502V用の制御信号 E,XEと3入力セレクタ502A用の制御信号XA,XB,XCの各制御配線が必要となり制御配線数が多くなる。各段に同種の入力セレクタのみを配置している第1例の方が制御配線数が少なく有利である。
【0154】
なお、第2例において、1段目の一方の3入力セレクタ502A_2の1入力端を未使用にすることで、各段に同種の入力セレクタのみを配置することも考えられる。しかしながらこの場合は、6入力セレクタ502Ebと同様に、1段目で3入力セレクタ502Aを2個使用するのでトランジスタ数が多くなり、やはり第1例の方がトランジスタ数が少なく有利である。
【0155】
<5入力セレクタの比較>
図11Aは、本実施形態の第1例の5入力セレクタ502Haと比較例との対比を説明する図である。5入力セレクタ502Haの作用効果を比較例との対比で纏めて示している。
【0156】
図示を割愛するが、各比較例は次のような構成である。第1比較例の5入力セレクタは、第1比較例の3入力セレクタ502Wと同様に図1C(1)に示した思想のもので、5個の相補スイッチ408を各別に、5組の相補制御信号で制御する構成である。第1比較例の5入力セレクタは、制御配線数は10(=2×5)本になり、トランジスタ数は10(=2×5)個となる。
【0157】
第2比較例の5入力セレクタは、第2比較例の3入力セレクタ502Xと同様に図1C(2)に示した思想のもので、第1比較例の5入力セレクタをベースに、5個のCMOSインバータを追加し、各CMOSインバータにより相補制御信号の一方に基づき相補制御信号の他方を各別に生成する。第2比較例の5入力セレクタは、第1比較例の5入力セレクタに対して、制御配線数は半分の5本に削減されるが、トランジスタ数は5個のCMOSインバータ(TR数=2)のために10個増加し20個となり、トランジスタ数が多くなってしまう。
【0158】
第3比較例の5入力セレクタは、第3比較例の3入力セレクタ502Xと同様の思想のもので、たとえば、2入力セレクタ502Vの組合せで構成した4入力セレクタと2入力セレクタ502Vを各1個使用し、4入力セレクタの出力と入力5をさらに2入力セレクタ502Vで選択する構成をとる。2段構成の4入力セレクタに2入力セレクタ502Vが加わるので3段構成となり、3組の相補制御信号が使用され、制御配線数は6(=2×3)本となり、4個の2入力セレクタ502V(TR数=4)が使用されるのでトランジスタ数は16個となる。また、入力と出力の間にpMOSが3段入る。
【0159】
第4比較例の5入力セレクタは、第4比較例の3入力セレクタ502Zと同様の思想のもので、第3比較例の5入力セレクタをベースに、3個のCMOSインバータを追加し、各CMOSインバータにより相補制御信号の一方に基づき相補制御信号の他方を各別に生成する。第4比較例の5入力セレクタは、第3比較例の5入力セレクタに対して、制御配線数は半分の3本に削減されるが、3個のCMOSインバータ(TR数=2個)が追加されるので、トランジスタ数は6つ増加し22個となる。
【0160】
本実施形態の第1例の5入力セレクタ502Haは、1段目に2個の2入力セレクタ502V(CN数=2、TR数=4)と2段目に1個の3入力セレクタ502A(CN数=3、TR数=9)を使用した構成であるので、制御配線数が5本で、トランジスタ数が17(=4×2+9)個で直列pMOS数が2個である。5入力セレクタ502Haは、制御配線数とトランジスタ数と直列pMOS数においてバランスよく削減できていることが分かる。プリチャージなどは行なわなくてよい。本実施形態の5入力セレクタ502Haは、直列pMOS数が2個で出力の変化が遅くなる難点はあるが、5入力セレクタにおいて新たな選択肢となる。
【0161】
<4入力セレクタ:基本>
図12は、本実施形態の信号選択回路500の第9具体例である4入力−1出力型の信号選択回路500(以下4入力セレクタ502Iと称する)の回路ブロック図である。
【0162】
α=2を加算して6入力型にすることで6入力セレクタ502Eの仕組みを利用する。「3」の部分に本実施形態の3入力セレクタ502A〜502Cの何れかを使用する。そして、その内のα=2の分を未使用にする。
【0163】
図12(1)に示した第2例の4入力セレクタ502Iaでは、第1例の6入力セレクタ502Eaをベースにして、1段目の2入力セレクタ502V_2,502V_3を取り外して、2段目の3入力セレクタ502Aについては、1番目の入力端に1段目の2入力セレクタ502V_1の出力を、2番目の入力端に入力3を直接に、3番目の入力端に入力4を直接に入力する。α=2の分として2つの2入力セレクタ502V_2,502V_3を未使用にする例である。
【0164】
図12(2)に示した第3例の4入力セレクタ502Ibでは、第2例の6入力セレクタ502Ebをベースにして、1段目の一方の3入力セレクタ502A_2を取り外す。2段目の2入力セレクタ502Vについては、1番目の入力端に1段目の3入力セレクタ502A_1の出力を、2番目の入力端に入力4を直接に入力する。
【0165】
どちらも1個の2入力セレクタ502Vと1個の3入力セレクタ502Aを使用するので、制御配線数、トランジスタ数、直列pMOS数は同じである。
【0166】
<4入力セレクタの比較>
図12Aは、第2例・第3例の4入力セレクタ502I(502Ia,502Ib)と比較例との対比を説明する図である。4入力セレクタ502Iの作用効果を比較例や第1例の4入力セレクタ502Dとの対比で纏めて示している。各比較例については、前述の4入力セレクタ502Dで説明したものと同じである。
【0167】
第2例・第3例の4入力セレクタ502Iでは、1個の2入力セレクタ502V(CN数=2、TR数=4)と1個の3入力セレクタ502A(CN数=3、TR数=9)を使用するので、制御配線数が5本で、トランジスタ数が13個で、直列pMOS数が2個である。
【0168】
第2例・第3例の4入力セレクタ502Iは、第1例の4入力セレクタ502Dに対して制御配線が1本増え、直列pMOSが1個増えるが、トランジスタは3個減らせる。制御配線数、トランジスタ数、直列pMOS数の観点では、第3比較例に対しては優る要素が1つもないが、その他の比較例に対しては優る要素がある。たとえば、第1比較例との対比では制御配線数を少なくできるし、第2・第4比較例との対比ではトランジスタ数を少なくできる。
【0169】
各種のM入力−1出力型の信号選択回路500の説明から推測されるように、4入力以上とする場合は、本実施形態の3入力−1出力型の信号選択回路500と、2個の相補スイッチ408が並列接続され、それぞれを相補制御信号で制御する2入力セレクタ502Vの組合せにするのが好適である。特に、制御配線数、トランジスタ数、直列pMOS数の総合的なバランスの側面では、本実施形態の3入力−1出力型の信号選択回路500(特に3入力セレクタ502A)を最下段に配置する構成をとった5入力以上の構成が有効である。3入力セレクタ502Aを最下段に配置する構成では、セレクタ回路を1次元または2次元に配列した半導体装置において、トランジスタ数、制御配線数、直列pMOS数をバランスよく削減でき、セレクタの新たな選択肢となる。
【0170】
次に、本実施形態のM入力−1出力型の信号選択回路として使用可能な半導体装置400やM入力−1出力型の信号選択回路500の好適な利用例について説明する。
【0171】
<固体撮像装置:基本構成>
図13は、本発明に係る固体撮像装置の一実施形態であるCMOS型の固体撮像装置(CMOSイメージセンサ)の基本構成図である。固体撮像装置も半導体装置の一例である。
【0172】
なお、以下においては、X−Yアドレス型の固体撮像装置の一例である、CMOS型の固体撮像装置をデバイスとして使用した場合を例に説明する。また、特に断りのない限り、CMOS型の固体撮像装置は、全ての単位画素がnMOS(nチャネル型のMOSトランジスタ)よりなり、信号電荷は負電荷(電子)であるものとして説明する。ただしこれは一例であって、対象となるデバイスはMOS型の固体撮像装置に限らないし、単位画素がpMOS(pチャネル型のMOSトランジスタ)で構成されていてもよいし、信号電荷は正電荷(正孔・ホール)であってもよい。
【0173】
光や放射線などの外部から入力される電磁波に対して感応性をする単位画素をライン状もしくはマトリクス状に複数個配列してなりアドレス制御にて信号を読み出す物理量分布検知用の半導体装置の全てに、後述する実施形態が同様に適用できる。
【0174】
固体撮像装置1は、複数個の単位画素3が2次元マトリクス状に配列された画素アレイ部10を有する。固体撮像装置1は、たとえばR,G,Bの色フィルタがベイヤー配列とされている色分解(色分離)フィルタを使用することで、画素アレイ部10をカラー撮像対応にすることができる。
【0175】
図13では、簡単のため行および列の一部を省略して示しているが、現実には、各行や各列には、数十から数千の単位画素3が配置される。後述するように、単位画素3は検知部の一例である受光素子(電荷生成部)としてのフォトダイオードの他にたとえば、電荷転送用やリセット用や増幅用などの3個あるいは4個のトランジスタを有する画素内アンプを有する。単位画素3からは、列ごとに垂直信号線19を介して画素信号電圧Vxが出力される。画素信号電圧Vxは、リセットレベルSrst (P相成分)と信号レベルSsig (D相成分)を含む。
【0176】
固体撮像装置1はさらに、CDS(Correlated Double Sampling;相関2重サンプリング)処理機能やデジタル変換機能をなすAD変換部250が列並列に設けられているカラムAD変換部26を有する。“列並列”とは、垂直列の垂直信号線19(列信号線の一例)に対して実質的に並列に複数のCDS処理機能部やデジタル変換部(AD変換部)などが設けられていることを意味する。このような読出方式をカラム読出方式と称する。
【0177】
固体撮像装置1はさらに、駆動制御部7、単位画素3に画素信号読出用の動作電流(読出電流)を供給する読出電流源部24と、カラムAD変換部26にAD変換用の参照信号SLP_ADC を供給する参照信号生成部27と、出力部28と、データセレクタ部300を備えている。
【0178】
駆動制御部7は、画素アレイ部10の信号を順次読み出すための制御回路機能の実現のため水平走査部12(列走査回路)、垂直走査部14(行走査回路)、および通信・タイミング制御部20を備えている。水平走査部12は、データセレクタ部300におけるデータ転送動作時に読み出すべきデータのカラム位置を指示する。
【0179】
水平走査部12は、列アドレスや列走査を制御する水平アドレス設定部12aや水平駆動部12bなどを有する。垂直走査部14は、行アドレスや行走査を制御する垂直アドレス設定部14aや垂直駆動部14bなどを有する。水平走査部12や垂直走査部14は、通信・タイミング制御部20から与えられる制御信号CN1,CN2に応答して行・列の選択動作(走査)を開始する。
【0180】
データセレクタ部300は、通信・タイミング制御部20からの制御信号CN9や水平走査部12からの指示に基づき、カラムAD変換部26の水平位置(カラム位置)を選択して、選択されたカラム位置のデータを出力部28側に転送する。詳細は後述するが、データセレクタ部300は、3列以上分のラッチ257を担当し各ラッチ257のデータの何れかを選択するサブセレクタ302と、サブセレクタ302で選択されるデータに基づき水平信号線18を駆動する水平転送ドライバ308の対を複数個有する。サブセレクタ302は、通信・タイミング制御部20からの選択制御信号に基づきデータ選択動作を行ない、水平転送ドライバ308は水平走査部12からの選択制御信号に基づき転送動作を行なう。
【0181】
通信・タイミング制御部20は、端子5aを介して入力されるマスタークロックCLK0に同期したクロックをデバイス内の各部(走査部12,14やカラムAD変換部26)に供給するタイミングジェネレータ(読出アドレス制御装置の一例)の機能ブロックを備える。さらに、端子5aを介して外部の主制御部から供給されるマスタークロックCLK0を受け取り、また端子5bを介して外部の主制御部から供給される動作モードなどを指令するデータを受け取り、さらに固体撮像装置1の情報を含むデータを外部の主制御部に出力する通信インタフェースの機能ブロックを備える。
【0182】
たとえば、通信・タイミング制御部20は、内部クロックを生成するクロック変換部の機能を持つクロック変換部20aおよび通信機能や各部を制御する機能を持つシステム制御部20bなどを有する。クロック変換部20aは、端子5aを介して入力されるマスタークロックCLK0に基づき、マスタークロックCLK0よりも高速周波数のパルスを生成する逓倍回路を内蔵しており、カウントクロックCKcnt1やカウントクロックCKdac1などの内部クロックを生成する。
【0183】
出力部28は、データ転送用の信号線(転送配線)である水平信号線18上の信号(デジタルデータではあるが小振幅)を検出するセンスアンプ28a(S・A)と、固体撮像装置1と外部とのインタフェース機能をなすインタフェース部28b(IF部)を有する。インタフェース部28bの出力は出力端5cに接続されており、映像データが後段回路に出力される。出力部28はまた、センスアンプ28aとインタフェース部28bとの間に、各種のデジタル演算処理を行なうデジタル演算部を設けてもよい。
【0184】
単位画素3は、行選択のための行制御線15を介して垂直走査部14と、また垂直信号線19を介してカラムAD変換部26の垂直列ごとに設けられているAD変換部250と、それぞれ接続されている。ここで、行制御線15は垂直走査部14から画素に入る配線全般を示す。
【0185】
垂直走査部14は、画素アレイ部10の行を選択し、その行に必要なパルスを供給するものである。垂直アドレス設定部14aは、信号を読み出す行(読出し行:選択行や信号出力行とも称する)の他に、電子シャッタ用の行なども選択する。
【0186】
AD変換部250におけるAD変換方式としては、回路規模や処理速度(高速化)や分解能などの観点から様々な方式が考えられているが、一例として、参照信号比較型、スロープ積分型、あるいはランプ信号比較型などとも称されるAD変換方式を採用する。参照信号比較型のAD変換に当たっては、変換開始(比較処理の開始)から変換終了(比較処理の終了)までの時間に基づいてカウント動作有効期間を決定し、その期間を示すカウントイネーブル信号ENに基づきアナログの処理対象信号をデジタルデータに変換する。
【0187】
このため、参照信号生成部27は、DA変換部270(DAC;Digital Analog Converter)を有し、通信・タイミング制御部20からの制御データCN4で示される初期値からカウントクロックCKdac1に同期して、制御データCN4で示される傾き(変化率)の参照信号SLP_ADC を生成する。カウントクロックCKdac1はカウンタ部254用のカウントクロックCKcnt1と同一にしてもよい。
【0188】
AD変換部250は、比較部252(COMP)と、アップカウントモードとダウンカウントモードを切替可能なカウンタ部254を備える。本例ではさらに、カウンタ部254の後段に、水平転送用のラッチ257(データ保持回路,メモリ)を内蔵したデータ記憶部256を備える。比較部252は、参照信号生成部27で生成される参照信号SLP_ADC と、選択行の単位画素3から垂直信号線19(H1,H2,…,Hh)を経由し得られるアナログの画素信号電圧Vxを比較する。カウンタ部254は、比較部252の比較出力Coと一定の関係を持つカウントイネーブル信号ENのアクティブ期間をカウントクロックCKcnt1でカウントし、カウント結果を保持する。
【0189】
通信・タイミング制御部20から各AD変換部250のカウンタ部254には、カウンタ部254がP相・D相のカウント処理をダウンカウントモードで動作するのかアップカウントモードで動作するのかや、P相のカウント処理における初期値Dini の設定やリセット処理など、その他の制御情報を指示する制御信号CN5が入力されている。
【0190】
比較部252の一方の入力端子(+)は、他の比較部252の入力端子(+)と共通に、参照信号生成部27で生成される参照信号SLP_ADC が入力され、他方の入力端子(−)には、それぞれ対応する垂直列の垂直信号線19が接続され、画素アレイ部10からの画素信号電圧Vxが個々に入力される。
【0191】
カウンタ部254のクロック端子CKには、他のカウンタ部254のクロック端子CKと共通に、通信・タイミング制御部20からカウントクロックCKcnt1が入力されている。データ記憶部256を設けない場合、カウンタ部254には、水平走査部12から制御線12cを介して制御パルスが入力される。カウンタ部254は、カウント結果を保持するラッチ機能を有しており、制御線12cを介しての制御パルスによる指示があるまでは、カウンタ出力値を保持する。
【0192】
本実施形態では、AD変換部250にてCDS処理を完結させておくが、リセットレベルSrst のP相データと信号レベルSsig のD相データを個別に出力部28側に転送し、AD変換部250の後段のデジタル演算部でCDS処理を行なってもよい。本出願人は、AD変換部250にてAD変換とCDS処理を行なう参照信号比較型のAD変換方式を種々提案しており、それらも基本的には各実施形態で採用し得るものである。
【0193】
水平走査部12や垂直走査部14などの駆動制御部7の各要素は、画素アレイ部10とともに、半導体集積回路製造技術と同様の技術を用いて単結晶シリコンなどの半導体領域に一体的に形成されたいわゆる1チップもの(同一の半導体基板上に設けられているもの)として、本実施形態の固体撮像装置1が構成される。
【0194】
固体撮像装置1は、このように各部が半導体領域に一体的に形成された1チップとして形成された形態であってもよいし、図示を割愛するが、画素アレイ部10、駆動制御部7、カラムAD変換部26などの各種の信号処理部の他に、撮影レンズ、光学ローパスフィルタ、あるいは赤外光カットフィルタなどの光学系をも含む状態で、これらを纏めてパッケージングされた撮像機能を有するモジュール状の形態としてもよい。
【0195】
個々のAD変換部250の出力側は、たとえば、カウンタ部254の出力をデータセレクタ部300を介して水平信号線18に接続することができる。あるいは、図示のように、カウンタ部254の後段に、このカウンタ部254の保持したカウント結果を保持するラッチを具備したメモリ装置としてのデータ記憶部256を備える構成を採ることもできる。本実施形態では、さらにデータ記憶部256の後段にデータセレクタ部300を備えており、データ記憶部256とデータセレクタ部300により、水平転送系Htrans を構成している。データ記憶部256は、所定のタイミングでカウンタ部254から出力されたカウントデータを保持・記憶する。
【0196】
水平走査部12は、カラムAD変換部26の各比較部252とカウンタ部254とが、それぞれが担当する処理を行なうのと並行して、各データ記憶部256が保持していたカウント値を読み出す読出走査部の機能を持つ。データ記憶部256の出力は、データセレクタ部300を介して水平信号線18に接続されている。水平信号線18は、AD変換部250のビット幅分もしくはその2倍幅分(たとえば相補出力とするとき)の信号線を有し、それぞれの出力線に対応したセンスアンプ28aを有する出力部28に接続される。水平信号線18の水平転送チャネルは1つに限らず、複数チャネルにし複数カラムずつグループ化してデータ転送を行なう場合もある。なお、カウンタ部254、データ記憶部256、データセレクタ部300、および水平信号線18はそれぞれ、nビットに対応した構成を採っている。
【0197】
<水平データ転送の問題点について>
ここで、各列のラッチ257に保持されたデータを、バスラインである水平信号線18を介して順次出力部28側に転送する場合、出力部28と接続された水平信号線18に寄生容量が存在するため、転送スピードの劣化や、寄生容量抑制のため水平信号線18に使われる配線幅( Metal幅)を広げなければならずチップサイズが大きくなるなどの、寄生容量の存在により様々な問題が生ずる。
【0198】
たとえば、寄生容量の値は、
(1)水平信号線18による容量、
(2)出力部28の入力段による容量、
(3)ラッチ257の出力段による容量×ラッチ257の総数、
(4)水平信号線18と1つのラッチ257の出力段とを接続する配線の容量×ラッチ257の総数、
などを合計した値となる。
【0199】
したがって、各列のラッチ257に保持されたデータを、ラッチ257を順次選択して水平信号線18に読み出す場合、水平信号線18の寄生容量のため、データ転送に障害が生じる。特に、寄生容量の容量値が大きくなれば、信号遅延の原因となり、データ転送の高速化を妨げることとなる。
【0200】
たとえば、フレームレートを上げるなど理由で高速動作を行なう場合は、行走査、AD変換および水平データ転送などの動作を高速に動作させる必要がある。この中で、水平データ転送を高速化させたい場合、水平走査部12で選択されたラッチ257の出力データに基づき水平信号線18を駆動し、その信号が出力部28に到達するまでの時間が支配的となる。
【0201】
水平方向の画素分、たとえば2000列の単位画素3を有する画素アレイ部10の場合、2000個のラッチ257が水平信号線18に接続されることになり、ラッチ257の出力段おのおのの持つ寄生容量が合成され、選択されたラッチ257はその大きな容量を負荷として駆動することになる。近年は多画素化の要求があるため水平信号線18に接続されるラッチ257の数が増加傾向にあり、近年、特に要求のある高速動作化の制約となってしまう。
【0202】
高速化のため水平転送を相補(差動)信号線対による電流転送を行なう場合でも、水平信号線18に接続される水平転送ドライバ308が多くなると水平信号線18の寄生容量が大きくなり、電流転送を行なっていても転送に時間が掛かってしまう。
【0203】
このような問題を解決する一手法として、寄生容量を抑制するため水平信号線18に使われる配線幅を広げる手法が考えられるが、ビット別のデータをバスラインとしての水平信号線18で転送するには、チップサイズが大きくなってしまう。
【0204】
また、このような問題を解決する別手法として、特開2000−32344号公報のように、列である数ごとに並列して処理する方法も考えられる。しかしながら、当該仕組みはアナログ情報のままで固体撮像装置1の外部に出力する場合での適用事例であり、特に画素信号をデジタル変換して固体撮像装置1の外部に出力を行なう仕組みに当該仕組みを適用しようとすると、出力端子数が増加してしまったり、出力部分のマルチプレクス処理が必要であったりといった問題が生じる。
【0205】
そこで、本実施形態では、画素信号をデジタル変換して固体撮像装置1の外部に出力を行なう仕組みにおいて、カラム処理部26や水平走査部12を、水平信号線18の寄生容量に起因する問題を改善することのできる仕組みにする。
【0206】
その仕組みの基本は、カウンタ部254とデータ記憶部256の水平転送用のラッチ257が分離された参照信号比較型のカラムADC方式を採る場合に、水平転送ドライバをM(Mは3以上の正の整数)カラムで共有し、水平転送ドライバの入力にどのラッチを接続するかを決めるM入力−1出力型のセレクタを用いる。こうすることにより、水平転送系Htrans を階層化し効率化する。隣のMカラムも同様の構造とするが、異なる水平転送チャネルに接続する。したがって、水平転送チャネル数をJとしたときには、J×Mカラム周期の回路構成となる。
【0207】
Mカラムに対して1つのセレクタを配置してセレクタごとに1つの水平転送ドライバを設けるが、1つのセレクタが対応するカラム数は3以上である限り任意である。本実施形態では、このセレクタに、前述の信号選択回路500(特に3入力−1出力型をもつもの)を利用する。
【0208】
<水平データ転送系;基本>
図14〜図14Bは、本実施形態の固体撮像装置1の水平データ転送系を説明する図である。ここで、図14は固体撮像装置1の水平データ転送系の基本構成を示す図である。図14Aおよび図14Bは図14に示す本実施形態の水平データ転送系に対する比較例を示す図である。因みに、図14および図14Aは水平転送チャネルが4つの場合、図14Bは水平転送チャネルが1つの場合を示す。
【0209】
本実施形態の固体撮像装置1においては、水平信号線18の寄生容量を低減する仕組みとして、各データ記憶部256のデータをそのまま列ごとに出力ドライバを介して水平信号線18に出力するのではなく、データ記憶部256の全列数よりも少ない数の出力ドライバを介して水平信号線18に出力する構成をとる。
【0210】
そのための仕組みとしては、様々な仕組みが考えられるが、本実施形態では、データセレクタ方式でデータを水平信号線18に出力する方式にする。データ記憶部256は、カラム(垂直信号線19)ごとにデータを保持するラッチ257をビット数分有する。データセレクタ部300は、サブセレクタ302を複数個有するセレクタ部301と、水平転送ドライバ308(水平転送DR)を複数個有するドライバ部307を備える。サブセレクタ302は、複数列の各ラッチ257のデータの何れかを選択する信号選択部の一例である。水平転送ドライバ308は、サブセレクタ302で選択されるデータに基づき水平信号線18を駆動する転送駆動部の一例である。
【0211】
データ記憶部256の全列をそれぞれがM列(Mは3以上の正の整数)を含む複数ブロックに分け、1ブロックにつき、水平転送ドライバ308を1つ設ける。そして、ブロックごとに、水平転送ドライバ308とM列の各ラッチ257との間にM入力−1出力型のサブセレクタ302を設ける。水平転送ドライバ308の出力は、バスラインである水平信号線18を介して図示を割愛した出力部28に接続されている。図14に示す態様は、水平転送チャネルを4チャネル分にする場合を示しており、また、相補データ形式でデータ転送する場合を示しており、チャネル別に前記の構成が採られている。
【0212】
サブセレクタ302を利用して水平転送系を階層化し、親階層は水平走査部12により制御される水平転送ドライバ308内の選択トランジスタ(詳細は後述する)により選択し、子階層は図示を割愛した通信・タイミング制御部20により制御されるサブセレクタ302により選択するようにする。
【0213】
本実施形態では、M=6とした例を示しており、6つのラッチ257(ラッチ群)が共通に1つの6入力型のサブセレクタ302(6入力サブセレクタ302Aと称する)に入力され、6入力サブセレクタ302Aの出力が水平転送ドライバ308を制御し、水平転送ドライバ308が水平転送チャネルをドライブする。水平走査部12が、特定の水平転送ドライバ308の内の選択トランジスタをオンすることにより特定のラッチ群を選択する。1つの水平転送系Htrans0は、6つのラッチ257と、1つの6入力サブセレクタ302Aと、1つの水平転送ドライバ308を備える。
【0214】
各6入力サブセレクタ302Aは通信・タイミング制御部20からの共通の制御配線により制御される。つまり、通信・タイミング制御部20は、セレクタ部301の各サブセレクタ302(ここでは6入力サブセレクタ302A)を制御してデータを選択させる選択制御部の機能を持つ。多数のサブセレクタ302(6入力サブセレクタ302A)を使用する場合でも、通信・タイミング制御部20からの制御配線数の大幅な増加はないと言える。
【0215】
水平転送チャネルは4個あり、それぞれに水平転送系Htrans0が用意され、4個の水平転送系Htrans0で1つの水平転送系Htrans1が構成される。隣り合う4個の水平転送ドライバ308はそれぞれ異なる水平転送チャネルの水平信号線18_0〜18_3をドライブする。水平転送チャネル(水平信号線18_0〜18_3)の内容は、図示を割愛した出力部28のセンスアンプ28aによって読み出され、必要に応じてデジタル処理をした後でチップ外に読み出される。
【0216】
このように、本実施形態の水平転送系Htrans は、カウンタ部254と水平転送用のラッチ257を内蔵したデータ記憶部256を備える構成において、データセレクタ部300の水平転送ドライバ308をMカラム(本例では6カラム)で共有する水平転送系Htrans0_kとし、水平転送ドライバ308の入力にどのラッチ257を接続するかを決める6入力サブセレクタ302Aを用いている。水平転送ドライバ308を数カラムで共有することにより、水平転送系Htrans を階層化でき、水平転送の効率化を図ることができる。隣の6カラムの水平転送系Htrans0_kも同様の構造とするが、異なる水平転送チャネル(本例では4個ある)に接続している。したがって、4チャネル構成の場合、24カラム周期の回路構成となる。
【0217】
つまり、4チャネル分の水平信号線18が設けられ、セレクタ部301の各サブセレクタ302(6入力サブセレクタ302A)およびドライバ部307の各水平転送ドライバ308は、4チャネルの各水平信号線18_1〜18_4に均等に配分されている。間引き動作の有無を問わず、各水平転送ドライバ308や各水平信号線18_1〜18_4の使用状態の均衡を図るためである。画素アレイ部10の全垂直列についても、この関係を維持するようにする(図15A参照)。
【0218】
サブセレクタ302の入力数を6以外にする場合やチャネル数を4以外にする場合でも同様であり、Jチャネル分の水平信号線18が設けられるときには、セレクタ部301の各サブセレクタ302およびドライバ部307の各水平転送ドライバ308は、Jチャネルの各水平信号線18に均等に配分し、画素アレイ部10の全垂直列についてもこの関係を維持するようにする。
【0219】
一方、図14Aおよび図14Bに示した比較例では、各ラッチ257の出力データが個別の水平転送ドライバ308Zにより水平信号線18に伝達される。図14Bに示すように、水平転送ドライバ308Zは、1対(2つ)の転送用トランジスタ332,334と、1対(2つ)の選択トランジスタ336,338を有する。各トランジスタ332,334,336,338は、何れもnMOSである。1個の水平転送ドライバ308は、4個のトランジスタを使用する。転送用トランジスタ334のゲートにはラッチ257の出力データが入力され、転送用トランジスタ332のゲートにはラッチ257のインバータ296の出力データが入力される。
【0220】
水平転送ドライバ308とその出力側に接続されるバスラインである水平信号線18との関係においては、本実施形態の水平転送系Htrans は、列(カラム)をM本(本実施形態では6本)ずつのグループに纏めている。水平信号線18に接続される水平転送ドライバ308の数が、図14Aおよび図14Bに示した比較例のように列ごとに水平転送ドライバ308を設ける場合に比べて1/Mに削減できる。その結果、水平転送ドライバ308がドライブしなくてはならない水平転送チャネルの寄生容量を減らすことができ、結果として高速動作が実現される。
【0221】
また、水平転送ドライバ308が多段で接続されておらず、水平転送ドライバ308がドライブするときに流れる電流経路上に追加のトランジスタが必要ではなく、直列抵抗は増えない。サブセレクタ302の構成に関わらず水平転送ドライバ308は1段でよく、水平信号線18を駆動する際の直列抵抗が増大することはない。その結果、従前よりも確実に高速なデータ転送が可能になる。
【0222】
なお、トランジスタ数や制御配線数を考慮した場合、2カラムで1つの水平転送ドライバ308を共有する場合では差が殆どなく、3カラム以上で1つの水平転送ドライバ308を共有すると効果が出てくる。
【0223】
<水平データ転送系:詳細>
図15〜図15Bは、図14に示した本実施形態の水平転送系の詳細構成例を説明する図である。ここで、図15は1ブロック分(1つの6入力サブセレクタ302Aが担当する部分)を示し、図15Aは4つの水平転送チャネル分を簡略化して示している。図15Bは、ラッチ257に使用されるクロックドインバータの構成例を示す図である。
【0224】
図15に示すように、ラッチ257は、2つのクロックドインバータ292,294と1つの普通のインバータ296を有する。「普通の」とは前述のインバータ409のようにpMOSとnMOSが縦続接続されたCMOSインバータである。クロックドインバータ292,294は、たとえば図15B(1),(2)に示すように、2つのpMOS290_p1 ,290_p2 が正電源Vdd側となり2つのnMOS290_n1 ,290_n2 が負電源Vssもしくは接地GND 側となるように縦続接続されたもので、4個のトランジスタが使用される。よって、1個のラッチ257は、インバータ296を含めると、10個のトランジスタを使用する。
【0225】
クロックドインバータは、中間のpMOS290_p2 ,nMOS290_n1 の各ドレインの接続点をデータ出力端子OUT とする。ここで、クロックドインバータの使い方としては、図15B(1)に示すように、中間のpMOS290_p2 ,nMOS290_n1 のゲートを共通に接続してデータ入力端子INとし、正電源側のpMOS290_p1 のゲートを反転クロック端子 XCK、接地あるいは負電源側のnMOS290_n2 のゲートを非反転クロック端子CKとする第1例がある。反転クロック端子 XCKにHレベル、非反転クロック端子CKにLレベルが入力されると、pMOS290_p1 およびnMOS290_n2 がオフ(遮断)して、データ出力端子OUT はハイインピーダンスとなりデータ通過を遮断する。一方、反転クロック端子 XCKにLレベル、非反転クロック端子CKにHレベルが入力されると、pMOS290_p1 およびnMOS290_n2 がオン(導通)するので、データ入力端子INに入力されたデータがpMOS290_p2 ,nMOS290_n1 で反転されて、データ出力端子OUT から出力される。
【0226】
また、図15B(2)に示すように、両サイドのpMOS290_p1 ,nMOS290_n2 のゲートを共通に接続してデータ入力INとし、pMOS290_p2 のゲートを反転クロック端子 XCK、nMOS290_n1 のゲートを非反転クロック端子CKとする第2例がある。反転クロック端子 XCKにHレベル、非反転クロック端子CKにLレベルが入力されると、pMOS290_p2 およびnMOS290_n1 がオフ(遮断)して、データ出力端子OUT はハイインピーダンスとなりデータ通過を遮断する。一方、反転クロック端子 XCKにLレベル、非反転クロック端子CKにHレベルが入力されると、pMOS290_p2 およびnMOS290_n1 がオン(導通)するので、データ入力端子INに入力されたデータがpMOS290_p1 ,nMOS290_n2 で反転されて、データ出力端子OUT から出力される。
【0227】
クロックドインバータ292,294の出力は共通に接続されインバータ296の入力となるとともに、6入力サブセレクタ302Aの入力ともなる。カウンタ部254のデータDATA<K>がクロックドインバータ292に入力され、インバータ296の出力データがクロックドインバータ294に入力される。
【0228】
クロックドインバータ292の非反転クロック端子CKおよびクロックドインバータ294の反転クロック端子 XCKには通信・タイミング制御部20からの制御信号CN9に含まれるロード信号CRDLが入力される。クロックドインバータ292の反転クロック端子 XCKおよびクロックドインバータ294の非反転クロック端子CKには通信・タイミング制御部20からの制御信号CN9に含まれるロード信号 XCRDLが入力される。ロード信号CRDLとロード信号 XCRDLは論理反転(相補関係)の関係にある。
【0229】
本構成では、カウンタ部254の各データDATA<K>は、ラッチ257のクロックドインバータ292により論理反転(相補関係)されて、データ XDATA<K>が6入力サブセレクタ302Aに供給されるようになる。
【0230】
6入力サブセレクタ302Aとしては、前述したような2個の2入力セレクタ502V_1,502V_2,502V_3と1個の3入力セレクタ502Aを組み合わせた6入力セレクタ502Eaの構成が使用されている。1段目の2入力セレクタ502V_1,502V_2,502V_3の各入力には、それぞれ対応するラッチ257から出力データが入力される。
【0231】
1段目の2入力セレクタ502V_1,502V_2,502V_3には、相補関係にあるサブセレクト信号SUBSEL_D, XSUBSEL_Dを共通に供給する。2段目の3入力セレクタ502Aの制御信号は次のようにする。1段目の第1トランジスタ401および第2トランジスタ403のゲートに、サブセレクト信号 XSUBSEL_Aを全組共通に供給する。2段目の第1トランジスタ401および第2トランジスタ403のゲートに、サブセレクト信号 XSUBSEL_Bを全組共通に供給する。3段目の第1トランジスタ401および第2トランジスタ403のゲートに、サブセレクト信号 XSUBSEL_Cを全組共通に供給する。
【0232】
3つのサブセレクト信号 XSUBSEL_A, XSUBSEL_B, XSUBSEL_Cの内の何れか1つのみを電位ローとし残りの2つを電位ハイとするとともに、1対のサブセレクト信号SUBSEL_D, XSUBSEL_Dの内の一方のみを電位ハイとし他方を電位ローとすることで、6つのラッチ257の何れか1つの出力データのみを選択して、水平転送ドライバ308に入力する動作が行なわれる。6入力サブセレクタ302Aの出力は、相補(差動)ではなくシングルエンドである。
【0233】
水平転送ドライバ308は、図14Aで示した水平転送ドライバ308Zに対して、1つのインバータ331を追加した構成である。インバータ331は、インバータ331は、前述のインバータ409のようにpMOSとnMOSが縦続接続されたCMOSインバータである。よって、1個の水平転送ドライバ308は、6個のトランジスタを使用する。
【0234】
インバータ331の入力端と転送用トランジスタ334のゲートが共通に接続され、6入力サブセレクタ302Aを構成する6つのnMOS322,pMOS324からの出力データが入力される。インバータ331の出力データが転送用トランジスタ332のゲートに入力される。
【0235】
転送用トランジスタ332,334の各ソースは接地されている。転送用トランジスタ332のドレインは選択トランジスタ336のソースに接続され、転送用トランジスタ334のドレインは選択トランジスタ338のソースに接続されている。選択トランジスタ336のドレインは非反転データ(D0)用の水平信号線18aに接続され、選択トランジスタ338のドレインは反転データ(XD0)用の水平信号線18bに接続されている。選択トランジスタ336,338のゲートは共通に接続され水平走査部12からの選択制御信号MSELが入力される。高速化のため、水平転送は差動信号線対による電流転送を採用している。
【0236】
6入力サブセレクタ302A(つまりラッチ群)1つにつき水平信号線18を駆動する転送用トランジスタ332,334を設け、かつ、多数ある6入力サブセレクタ302Aの選択を選択トランジスタ336,338で行なってデータ転送を行なう構成にする。これが、転送用トランジスタ332と選択トランジスタ336あるいは転送用トランジスタ334と選択トランジスタ338の各直列回路で簡単に実現できる。なお、それぞれ直列に接続されている転送用トランジスタ332と選択トランジスタ336や転送用トランジスタ334と選択トランジスタ338の各配置順は逆でもよい。
【0237】
転送用トランジスタ332および選択トランジスタ336の各ゲートがHレベルのときに、各トランジスタ332,336がオンして、図示を割愛したセンスアンプ28aから非反転データ用の水平信号線18aを介して電流が接地側に流れる。同様に、転送用トランジスタ334および選択トランジスタ338の各ゲートがHレベルのときに、各トランジスタ334,338がオンして、図示を割愛したセンスアンプ28aから反転データ用の水平信号線18bを介して電流が接地側に流れる。たとえば、センスアンプ28aが図中の左にある場合は、電流が左から右に流れる方向が正である。
【0238】
つまり、水平転送ドライバ308は、転送用トランジスタ332と選択トランジスタ336の双方がオンしたときに、6入力サブセレクタ302Aでの選択に基づくラッチ257の非反転データを水平信号線18aを介してセンスアンプ28aに転送するように動作する。また、水平転送ドライバ308は、転送用トランジスタ334と選択トランジスタ338の双方がオンしたときに、6入力サブセレクタ302Aでの選択に基づくラッチ257の反転データを水平信号線18bを介してセンスアンプ28aに転送するように動作する。
【0239】
水平走査部12は、DFF12X(ディレイ・フリップフロップ)を多数持つが、6入力サブセレクタ302Aのそれぞれに対してDFF12Xは1つである。DFF12Xは、選択トランジスタ336,338のゲートに、アクティブHの選択制御信号MSELを供給する。
【0240】
カウンタ部254のデータDATA<K>は6つのラッチ257に保持されて論理反転(相補関係)されたデータ XDATA<K>として出力され、シングルエンドの6入力サブセレクタ302Aにより1つが選択され水平転送ドライバ308に入力される。6入力サブセレクタ302Aにより選択された1つのデータ XDATA<K>は、水平転送ドライバ308のインバータ331に入力され反転される。
【0241】
ここで、6入力サブセレクタ302Aにより選択された1つのデータは、水平転送ドライバ308内の選択トランジスタ336,338の内の一方の選択トランジスタ338を駆動し、インバータ331で反転されたデータは、水平転送ドライバ308内の選択トランジスタ336,338の内の他方の選択トランジスタ336を駆動する。
【0242】
水平転送ドライバ308は、多数存在する水平転送ドライバセットのうち4つ1セットにアクティブHの選択制御信号MSELを選択トランジスタ336,338のゲートに与える。つまり、水平走査部12のDFF12Xの出力は、水平転送ドライバ308内の選択トランジスタ336,338を選択する。
【0243】
6入力サブセレクタ302Aをシングルエンドとすることにより、トランジスタ数を節約することができる。6入力サブセレクタ302Aの出力データは、インバータ331により、当該インバータ331の入力との関係で相補データ(差動信号)となり、相補(差動)方式の水平転送チャネル(2つの水平信号線18a,18b)を駆動する。この場合、センスアンプ28aは差動増幅回路でデータを再生するようにする。
【0244】
デジタルデータを相補データで転送して後段のセンスアンプ28aが具備する差動増幅回路で再生するようにすれば、水平信号線18a、18bにノイズが混入しても、その影響をキャンセルできる。また、相補の水平信号線18a,18bとセンスアンプ28aとの間にさらに増幅回路を介在させ、水平信号線18a,18b側の振幅は小さくし、かつセンスアンプ28aの入力側は振幅を大きくするようにすれば、バスラインである水平信号線18a,18b上の寄生容量に起因する問題を改善できる。大振幅の情報での転送よりも小振幅の情報での転送の方が、低消費電力であり、また高速転送動作が可能になるからである。
【0245】
もちろん、このように相補形式でデータ転送することは必須ではなく、水平信号線18a,18bの何れか一方のみを使用したデータ転送でもよい。水平信号線18a側のみを使用する場合には、転送用トランジスタ334および選択トランジスタ338を水平転送ドライバ308から取り外すことができる。水平信号線18b側のみを使用する場合には、インバータ331、転送用トランジスタ332、および選択トランジスタ336を水平転送ドライバ308から取り外すことができる。
【0246】
図15Aでは、水平転送系の96カラム分を簡略化して示しているが、図15に示すような構成の水平転送系Htrans0が4つの水平転送チャネル分用意されて図14に示すような構成の水平転送系Htrans1が構成される。そして、図15Aでは、水平転送系Htrans1が4つ並んでいる。水平転送ドライバ308は、4つ単位で選択される。各グループ(水平転送系Htrans1)の4つの水平転送ドライバ308を纏めて水平転送ドライバセット309と称する。水平転送ドライバセット309(同一水平転送系Htrans1内の4つの水平転送ドライバ308)には、水平走査部12のDFF12Xから共通に選択制御信号MSELが供給される。
【0247】
<水平転送系の基本動作例>
図16および図16Aは、具体的なデータ例での本実施形態の水平転送系Htrans の基本的な動作を説明する図である。ここで、図16は水平転送系Htrans0のデータ例を示し、図16Aは、図16のデータ例における水平転送系Htrans1(4つの水平転送系Htrans0)の基本動作を説明するタイミングチャートである。
【0248】
図16において、ラッチ257の部分に、当該ラッチ257が保持している所定ビット位置(たとえば0ビット目)のデータ例が示されている。ラッチ257内には、画素アレイ部10の単位画素3にて検出した画素情報をAD変換部250でAD変換した結果に基づいて、“0”または“1”が記憶されている。たとえば、水平転送系Htrans0_0では、水平走査方向の上流側から“010101”となっており、これが出力データD0<0>として現われ、これを論理反転(相補関係)して出力データXD0<0>として現われる。水平転送系Htrans0_1では、水平走査方向の上流側から“101011”となっており、これが出力データD0<1>として現われ、これを論理反転(相補関係)して出力データXD0<1>として現われる。水平転送系Htrans0_2では、水平走査方向の上流側から“000011”となっており、これが出力データD0<2>として現われ、これを論理反転(相補関係)して出力データXD0<2>として現われる。水平転送系Htrans0_3では、水平走査方向の上流側から“101110”となっており、これが出力データD0<3>として現われ、これを論理反転(相補関係)して出力データXD0<3>として現われる。
【0249】
図16Aに示すように、水平走査部12のDFF12Xは、選択制御信号MSELを順次1つずつ順番にアクティブHにしていく。これにより、各水平転送ドライバ308の内4つ1セットの水平転送ドライバセット309を順番に選択する。
【0250】
通信・タイミング制御部20は、特定の選択制御信号MSELがアクティブHになっている期間中の最初の1/3で、サブセレクト信号 XSUBSEL_Aを電位ローに、サブセレクト信号 XSUBSEL_B, XSUBSEL_Cを電位ハイにする。さらに、通信・タイミング制御部20は次の1/3で、サブセレクト信号 XSUBSEL_Bを電位ローに、サブセレクト信号 XSUBSEL_A, XSUBSEL_Cを電位ハイにし、最後の1/3で、サブセレクト信号 XSUBSEL_Cを電位ローに、サブセレクト信号 XSUBSEL_A, XSUBSEL_Bを電位ハイにする。通信・タイミング制御部20はさらに、これらの各1/3期間のうち前半はサブセレクト信号SUBSELDを電位ハイ、サブセレクト信号 XSUBSEL_Dを電位ローにし、後半はサブセレクト信号SUBSELDを電位ロー、サブセレクト信号 XSUBSEL_Dを電位ハイにする。これにより、水平転送系Htrans0のラッチ群(6つのラッチ257)内の特定のラッチ257が選択される。
【0251】
4つのD0<k>,XD0<k>の部分は、水平信号線18a,18bを電流が流れるかどうかを示したチャートであり、Hレベルのときに電流が流れ、電位を表したものではない。
【0252】
<水平データ転送系の変形動作例>
図17は、6入力サブセレクタ302Aを使用した本実施形態の固体撮像装置1における水平転送系Htrans の変形動作を説明する図である。ここで、図17(1)は、1/3間引きの動作を説明する図である。図17(2)は1/3間引きの動作を説明する図である。図中においてハッチング付きのラッチ257が「ラッチデータあり」のもので間引き動作時の転送対象であり、ハッチングなしのラッチ257が「ラッチデータなし」のもので非転送対象である。
【0253】
図17(1)に示すように、1/2間引き時には、ラッチ257のデータを1つ置きに水平転送することになる。この転送対象の1つ置きのラッチ257のデータはたとえば6入力サブセレクタ302Aの奇数番目の3つの入力端に入力され水平転送ドライバ308に送られる。このとき、1つ置きのために、各6入力サブセレクタ302Aとしては、6入力端に対して奇数番目の3つの入力端が同様の関係で使用され、かつ、全ての6入力サブセレクタ302Aおよび水平転送ドライバ308が使用される。図では、このことを示すため、全ての水平転送ドライバ308をハッチング付きで示している。したがって、1/2間引き時には、水平転送チャネルの利用状態が均衡するので、効率よく水平転送チャネルを利用可能となる。
【0254】
また、図17(2)に示すように、1/3間引き時には、ラッチ257のデータを2つ置きに水平転送することになる。この転送対象の2つ置きのラッチ257のデータはたとえば6入力サブセレクタ302Aのk番目とk+3番目(kは1〜3の何れか)の2つの入力端に入力され水平転送ドライバ308に送られる。このとき、2つ置きのために、各6入力サブセレクタ302Aとしては、6入力端に対してk番目とk+3番目の2つの入力端が同様の関係で使用され、かつ、全ての6入力サブセレクタ302Aおよび水平転送ドライバ308が使用される。図では、このことを示すため、全ての水平転送ドライバ308をハッチング付きで示している。したがって、1/3間引き時にも、水平転送チャネルの利用状態が均衡するので、効率よく水平転送チャネルを利用可能となる。
【0255】
このように、6入力サブセレクタ302Aを使用することで、1/2間引きおよび1/3間引きの双方について、効率よく水平転送チャネルを利用可能となる。間引き時にも全ての水平転送チャネルを有効利用し、間引き時の効率を改善することができる。水平転送チャネル数を増やさずにフレームレートを改善することができる。図示を割愛するが、サブセレクタ302として、2入力セレクタを使用した場合は1/3間引き時に非効率的となり、3入力セレクタを使用した場合は1/2間引き時に非効率的となる。この点では、6入力サブセレクタ302Aを使用することで、1/2間引きおよび1/3間引きの双方について非効率的となる利点がある。
【0256】
なお、ここでは6入力の場合に1/2間引きおよび1/3間引きの双方について効率よく水平転送チャネルを利用可能となることを示したが、サブセレクタ302の入力数が6(=2×3)の倍数の関係を持つ限り1/2間引きおよび1/3間引きの双方について効率よく水平転送チャネルを利用可能となる。「6の倍数」と称したのは、本例では、1/2間引きおよび1/3間引きの双方を考慮していることによるもので、各間引きの割合い1/2,1/3の各逆数(2,3)の最小公倍数である「6」に基づく。
【0257】
各間引きの割合が本例と異なれば、それに応じてサブセレクタ302の最適な入力数も異なってくるのは言うまでもない。つまり、間引きの度合いが異なる複数の間引きモードに対応する場合には、各サブセレクタ302のそれぞれには何れかの間引きの割合いの逆数の入力数のものを使用するというだけでは不足であり、各間引きの割合いの逆数の最小公倍数に、1つのサブセレクタ302が担当する入力数を揃えるとよい。
【0258】
<水平データ転送系の纏め>
図18および図18Aは、本実施形態の固体撮像装置1における水平転送系Htrans の作用効果を従来技術との対比で纏めた図表である。ここで、図18は、本実施形態と特開2006−148509号公報の各水平転送系Htrans の作用効果を比較する図である。図18Aは、本実施形態の水平転送系Htrans の作用効果を図14Aおよび図14Bに示した各比較例との対比で纏めた図表である。
【0259】
図18(1)に示すように、特開2006−148509号公報の水平転送系Htrans では、水平転送ドライバ308が多段で接続されてしまうので、水平転送ドライバ308がドライブするときに流れる電流経路上に追加のトランジスタが必要になり、直列抵抗が増える。これに対して、図18(2)に示すように、本実施形態の水平転送系Htrans では、水平転送ドライバ308の前段でデータセレクトを行なうことで階層化しており、水平転送ドライバ308は1段でよい。水平転送ドライバ308がドライブするときに流れる電流経路上に追加のトランジスタが必要ではなく、直列抵抗は増えない。比較例に対して水平転送ドライバ308を1/6に削減できるし、水平転送ドライバ308の縦続接続はないので、高速動作を確実に実現できる。
【0260】
また、図18Aに示すように、本実施形態の水平転送系Htrans では、その他の様々なメリットがある。たとえば、比較例と本実施形態の水平転送系Htrans で、水平信号線18に直列に接続されるトランジスタの数を比較すると、本実施形態の方が直列のトランジスタ数は少ないため直列抵抗が少なく、より高速に動作する。水平転送のシミュレーションによると、比較例のような一般的な場合に比べて約16%高速化することが分かった。
【0261】
また、水平転送ドライバ308内の1対の転送用トランジスタ332,334と1対の選択トランジスタ336,338を全て2倍のゲート幅にし、これらのトランジスタ332,334,336,338に流れる電流と同じ電流が流れるセンスアンプ28a内の一部のトランジスタのゲート幅も2倍にすることにより、比較例のような一般的な場合に比べて約32%高速化することが分かった。
【0262】
前述のように、1/2間引きや1/3間引き時には子階層である6入力サブセレクタ302Aの制御配線のみ飛ばして出力することにより、1/2間引きや1/3間引き時にも全ての水平転送系Htrans を有効利用でき、効率よく水平転送をすることができる。
【0263】
ここで、図示を割愛するが、6入力サブセレクタ302Aとして、6入力セレクタ502Eaに代えて第1比較例の6入力サブセレクタを使用する場合(以下参考例と称する)を考える。参考例の場合、図8Dおよび図8Eにて説明したことから推測されるように、制御配線数は12本になり、トランジスタ数は12個となる。これに対して、本実施形態の水平転送系Htrans では、制御配線は5本で済む。
【0264】
比較例の水平転送系Htrans の水平走査部12を含まない部分は、6個のラッチ257(TR数=10)と、6個の水平転送ドライバ308Z(TR数=4)であり、6カラム1桁当たり84(=10×6+4×6)個のトランジスタを使用することになる。6入力セレクタ502Eaに代えて第1比較例の6入力サブセレクタを使用する場合の水平転送系Htrans の水平走査部12を含まない部分は、6個のラッチ257(TR数=10)と、1個の6入力サブセレクタ302A(TR数=12)と、1個の水平転送ドライバ308(TR数=6)であり、6カラム1桁当たり78(=10×6+12+6)個のトランジスタを使用することになる。本実施形態の水平転送系Htrans の水平走査部12を含まない部分は、6個のラッチ257(TR数=10)と、1個の6入力サブセレクタ302A(TR数=21)と、1個の水平転送ドライバ308(TR数=6)であり、6カラム1桁当たり87(=10×6+21+6)個のトランジスタを使用することになる。
【0265】
よって、本実施形態の水平転送系Htrans では、比較例に対して6カラム1桁当たりトランジスタは3つ増えてしまい、また第1比較例の6入力サブセレクタを使用する参考例に対して9つ増えてしまう。しかしながら、制御対象の水平転送ドライバ308の数が1/6に減ることにより、水平走査部12の規模を約1/6に小さくすることができる。第1比較例の6入力サブセレクタを使用する場合と本実施形態の水平転送系Htrans のどちらが回路のレイアウト面積が小さくなるかは、画素ピッチやレイアウトルールによって異なる。
【0266】
このように、本実施形態の水平転送系Htrans は、間引きを行なわないときにも比較例よりさらに高速な転送を行なうことができ、高速化の度合いは、当該比較例に比べてシミュレーションでは16%〜32%程度となる。また、間引き時にも全ての水平転送チャネルを有効利用でき、間引き時の効率を改善する水平転送系にできる。水平転送チャネル数を増やさずにフレームレートを改善することができ、6入力サブセレクタ302Aの制御配線を最小限に抑えることができる。
【0267】
以上、本発明について実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は前記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で前記実施形態に多様な変更または改良を加えることができ、そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0268】
また、前記の実施形態は、クレーム(請求項)にかかる発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組合せの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。前述した実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜の組合せにより種々の発明を抽出できる。実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、効果が得られる限りにおいて、この幾つかの構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【0269】
前記実施形態では、本実施形態の半導体装置400や信号選択回路500を固体撮像装置1の水平転送系へ適用する例で説明したが、前記実施形態の適用範囲は固体撮像装置に限らない。データを順次後段側に転送する仕組みを持つ半導体装置や固体撮像装置1を利用した撮像装置、あるいは複写機やファクシミリ装置などの画像処理装置などの電子機器であれば、どのようなものにも適用できる。1次元または2次元に配列されたラッチから特定のラッチが選択され、ラッチの情報が転送配線に転送され、転送配線のデータが外部に読み出されるものであればよい。たとえば、本実施形態の半導体装置400や信号選択回路500の仕組みは、SRAM(Static RAM)やDRAM(Dynamic RAM )などの半導体メモリへも適用できる。
【0270】
なお、固体撮像装置はワンチップとして形成された形態であってもよいし、撮像部と、信号処理部または光学系とが纏めてパッケージングされた、撮像機能を有するモジュール状の形態であってもよい。また、固体撮像装置のみではなく、撮像装置やその他のあらゆる電子機器にも適用可能である。この場合、撮像装置やその他の電子機器として、固体撮像装置と同様の効果が得られる。ここで撮像装置は、たとえば、カメラ(あるいはカメラシステム)や撮像機能を有する携帯機器のことを示す。また「撮像」は、通常のカメラ撮影時の像の撮り込みだけではなく、広義の意味として、指紋検出なども含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0271】
【図1】本実施形態の半導体装置の基本構成(第1例)を示す図である。
【図1A】本実施形態の半導体装置の基本構成(第2例)を示す図である。
【図1B】本実施形態の半導体装置を制御する制御信号を説明する図である。
【図1C】本実施形態の半導体装置に対する第1・第2比較例の半導体装置を示す図である。
【図1D】本実施形態の半導体装置に対する第3比較例の半導体装置を示す図である。
【図2】本実施形態の信号選択回路の基本構成(第1例)を説明する図である。
【図2A】本実施形態の信号選択回路の基本構成(第2例)を説明する図である。
【図2B】本実施形態の信号選択回路の基本構成(第3例)を説明する図である。
【図2C】本実施形態の信号選択回路の基本構成(第4例)を説明する図である。
【図3】本実施形態の3入力セレクタの回路構成を示す図である。
【図3A】本実施形態の3入力セレクタを1次元に複数並べたセレクタ群を示す図である。
【図3B】本実施形態の3入力セレクタを制御する制御信号を説明する図である。
【図4】第1比較例の3入力セレクタの回路構成を示す図である。
【図4A】第2比較例の3入力セレクタの回路構成を示す図である。
【図4B】第3比較例の3入力セレクタの回路構成を示す図である。
【図4C】第4比較例の3入力セレクタの回路構成を示す図である。
【図4D】第1比較例の3入力セレクタを1次元に複数並べたセレクタ群を示す図である。
【図4E】本実施形態の3入力セレクタの作用効果を比較例との対比で纏めた図(その1)である。
【図4F】本実施形態の3入力セレクタの作用効果を比較例との対比で纏めた図(その2)である。
【図5】第1変形例の3入力セレクタを1次元に複数並べたセレクタ群を示す図である。
【図6】第2変形例の3入力セレクタの回路構成を示す図である。
【図6A】第2変形例の3入力セレクタを1次元に複数並べたセレクタ群を示す図である。
【図6B】第2変形例の3入力セレクタを制御する制御信号を説明する図である。
【図7】第1例の4入力セレクタの回路構成を示す図である。
【図7A】第1例の4入力セレクタを制御する制御信号を説明する図である。
【図7B】第1例の4入力セレクタと比較例との対比を説明する図である。
【図8】本実施形態の6入力セレクタの回路ブロック図である。
【図8A】本実施形態の6入力セレクタの回路構成を示す図である。
【図8B】本実施形態の6入力セレクタを1次元に複数並べたセレクタ群を示す図である。
【図8C】本実施形態の6入力セレクタを制御する制御信号を説明する図である。
【図8D】本実施形態の第1例の6入力セレクタと比較例との対比を説明する図(その1)である。
【図8E】本実施形態の第1例の6入力セレクタと比較例との対比を説明する図(その2)である。
【図9】本実施形態の9入力セレクタの回路ブロック図である。
【図9A】本実施形態の9入力セレクタと比較例との対比を説明する図である。
【図10】本実施形態の12入力セレクタの回路ブロック図である。
【図10A】本実施形態の12入力セレクタと比較例との対比を説明する図である。
【図11】本実施形態の5入力セレクタの回路ブロック図である。
【図11A】本実施形態の第1例の5入力セレクタと比較例との対比を説明する図である。
【図12】第2例・第3例の4入力セレクタの回路ブロック図である。
【図12A】第2例・第3例の4入力セレクタと比較例や第1例の4入力セレクタとの対比を説明する図である。
【図13】固体撮像装置(CMOSイメージセンサ)の基本構成図である。
【図14】本実施形態の固体撮像装置の水平データ転送系の基本構成を示す図である。
【図14A】本実施形態の水平データ転送系に対する比較例を示す図(その1)である。
【図14B】本実施形態の水平データ転送系に対する比較例を示す図(その2)である。
【図15】本実施形態の水平転送系の詳細構成例(1ブロック分:6カラム分)を示す図である。
【図15A】本実施形態の水平転送系の詳細構成例(4つの水平転送チャネル分)を示す図である。
【図15B】データ記憶部のラッチに使用されるクロックドインバータの構成例を示す図である。
【図16】本実施形態の水平転送系の基本的な動作を説明するためのデータ例を示す図である。
【図16A】図16のデータ例における本実施形態の水平転送系の基本動作を説明するタイミングチャートである。
【図17】6入力サブセレクタを使用した本実施形態の固体撮像装置における水平転送系の変形動作を説明する図である。
【図18】本実施形態と特開2006−148509号公報の各水平転送系の作用効果を比較する図である。
【図18A】本実施形態の水平転送系の作用効果を比較例との対比で纏めた図表である。
【符号の説明】
【0272】
1…固体撮像装置、10…画素アレイ部、12…水平走査部、14…垂直走査部、18…水平信号線、19…垂直信号線、20…通信・タイミング制御部、24…読出電流制御部、250…AD変換部、252…比較部、254…カウンタ部、256…データ記憶部、257…ラッチ(データ保持回路)、26…カラムAD変換部、27…参照信号生成部、270…DA変換部、28…出力部、3…単位画素、300…データセレクタ部、301…セレクタ部(選択部)、302…サブセレクタ(信号選択部)、307…ドライバ部(駆動部)、308…水平転送ドライバ(転送駆動部)、331…インバータ、332,334…転送用トランジスタ、336,338…選択トランジスタ、400…半導体装置、401…第1トランジスタ、402…第1トランジスタ部、403…第2トランジスタ、404…第2トランジスタ部、408…相補スイッチ、500…信号選択回路、502…入力セレクタ、502A…3入力セレクタ、502V…2入力セレクタ、7…駆動制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の導電型の第1トランジスタを1つ有する第1トランジスタ部と、
前記第1の導電型とは異なる第2の導電型の第2トランジスタが“M−1”個(Mは3以上の正の整数)縦続接続された第2トランジスタ部と、
を備え、
前記第1トランジスタ部および前記第2トランジスタ部の対でM組が並列配置されており、
前記M組の前記第1トランジスタ部および前記第2トランジスタ部の内の何れか1つに対して、前記第1トランジスタの制御入力端に当該第1トランジスタをオンさせるアクティブレベルが入力されるときには、当該第1トランジスタが属する組の全ての前記第2トランジスタの制御入力端にも各第2トランジスタをオンさせるアクティブレベルが入力可能であるとともに、当該第1トランジスタが属さない他の組のそれぞれについては、前記第1トランジスタの制御入力端には当該第1トランジスタをオフさせるインアクティブレベルが入力可能で、かつ、少なくとも1つの前記第2トランジスタの制御入力端にも当該第2トランジスタをオフさせるインアクティブレベルが入力可能に構成されている
半導体装置。
【請求項2】
それぞれの組のアクティブレベルが入力される前記第1トランジスタの制御入力端は、当該第1トランジスタが属さない他の組の各第2トランジスタ部との間で、それぞれ異なる何れか1つの前記第2トランジスタの制御入力端と接続される
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
各組の前記第1トランジスタ部と前記第2トランジスタ部は、前記第1トランジスタの入力端が前記第2トランジスタ部の最も信号入力側に近い前記第2トランジスタの入力端と接続され、かつ、前記第1トランジスタの出力端が前記第2トランジスタ部の最も信号出力側に近い前記第2トランジスタの出力端と接続される
請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
各組の前記第1トランジスタ部および前記第2トランジスタ部の各信号入力側は共通に接続され、かつ組ごとに各別の信号入力端に接続され、
各組の前記第1トランジスタ部および前記第2トランジスタ部の各信号出力側は共通に信号出力端に接続され、
信号選択回路として機能するように構成される
請求項1〜3の内の何れか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記Mが3であり、3入力−1出力型の信号選択回路として機能するように構成されている
請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1トランジスタと前記第2トランジスタが相補接続されている相補スイッチが2つ並列接続されて構成されている2入力−1出力型の信号選択回路を少なくとも1つさらに備え、
前記3入力−1出力型の信号選択回路との組合せにより、“3+α”入力−1出力型の信号選択回路として機能するように構成されている
請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
6入力−1出力型の信号選択回路として機能するように構成されている
請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記3入力−1出力型の信号選択回路の信号入力側に前記2入力−1出力型の信号選択回路を3つ有し、
前記3入力−1出力型の信号選択回路の各入力側に前記2入力−1出力型の信号選択回路からの出力信号が各別に入力される
請求項7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第1トランジスタはpチャネル型のMOSトランジスタもしくはNPN型のバイポーラトランジスタである
請求項1〜8の内の何れか一項に記載の半導体装置。
【請求項10】
第1の導電型の第1トランジスタを1つ有する第1トランジスタ部と、
前記第1の導電型とは異なる第2の導電型の第2トランジスタが“M−1”個(Mは3以上の正の整数)縦続接続された第2トランジスタ部と、
を備え、
前記第1トランジスタ部および前記第2トランジスタ部の対でM組が並列配置されており、
組みごとに各別に信号が入力されるように、各組の前記第1トランジスタ部および前記第2トランジスタ部の各信号入力側が共通に接続されもしくは接続可能であり、
各組の前記第1トランジスタ部および前記第2トランジスタ部の各信号出力側は共通に接続されもしくは接続可能であり、
ある組の前記第1トランジスタが他の全ての組の前記第2トランジスタ部のそれぞれ異なる何れか1つの前記第2トランジスタと各制御入力端が共通に接続されもしくは接続可能であり、
前記第1トランジスタの制御入力端に入力される制御信号のアクティブレベルが、他組の各第2トランジスタの制御入力端にはインアクティブレベルとして入力されることにより、何れか1つの組に入力された信号を選択して出力する
半導体装置。
【請求項11】
信号の入力側と出力側を逆に取り扱うことで、1入力−複数出力型の信号選択回路として機能する
請求項4〜10の内の何れか一項に記載の半導体装置。
【請求項12】
単位画素が行列状に配列された画素アレイ部と、
前記画素アレイ部の各単位画素からアナログの画素信号を読み出す垂直走査部と、
前記画素アレイ部の各単位画素から読み出されたアナログの画素信号をデジタルデータに変換する列ごとに設けられたAD変換部と、
各列の前記AD変換部の後段にそれぞれ設けられ、前記AD変換部で変換されたデジタルデータを保持するデータ保持回路を具備するデータ記憶部と、
M列(Mは3以上の正の整数)の前記データ保持回路のデータの何れかを選択する信号選択部と、
前記信号選択部で選択されるデータに基づきデータ転送用の信号線を駆動する転送駆動部と、
前記転送駆動部を制御してデータを前記信号線を介して後段回路に転送させる水平走査部と、
を備え、
前記信号選択部は、
第1の導電型の第1トランジスタを1つ有する第1トランジスタ部および前記第1の導電型とは異なる第2の導電型の第2トランジスタが“M−1”個縦続接続された第2トランジスタ部との対でM組が並列配置されており、
各組の前記第1トランジスタ部および前記第2トランジスタ部の各信号入力側は共通に接続され、かつ組ごとに各別の前記データ保持回路からデータが入力され、
各組の前記第1トランジスタ部および前記第2トランジスタ部の各信号出力側は共通に前記転送駆動部に接続されている
ことを特徴とする固体撮像装置。
【請求項13】
前記第1トランジスタと前記第2トランジスタが相補接続されている相補スイッチが2つ並列接続されて構成されている2入力−1出力型の信号選択部をさらに備え、
前記3入力−1出力型の信号選択部の信号入力側に前記2入力−1出力型の信号選択部を3つ有し、
前記3入力−1出力型の信号選択部の各入力側に前記2入力−1出力型の信号選択部からの出力信号が各別に入力される
請求項12に記載の固体撮像装置。

【図1】
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【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図4F】
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【図5】
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【図6】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図8E】
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【図9】
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【図9A】
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【図10】
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【図10A】
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【図11】
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【図11A】
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【図12】
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【図12A】
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【図13】
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【図14】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16】
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【図16A】
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【図17】
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【図18】
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【図18A】
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【公開番号】特開2009−296312(P2009−296312A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−147951(P2008−147951)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】