説明

半導体装置

【目的】Si−半導体素子とSiC−半導体素子を有する半導体装置において、それぞれの半導体素子を動作可能温度で動作させることができて、冷媒の圧力損失を小さくできるフィン付ベースを有する半導体装置を提供する。
【解決手段】Si−IGBTチップ4同士をまとめ、SiC−Diチップ5同士をまとめることで、SiC−Diチップ5下のフィン1a間隔を広くすることができる。その結果、Si−IGBTチップ4は175℃まで動作させ、SiC−Diチップ5は250℃まで動作させることができる。また、Si−IGBTチップ4とSiC−Diチップ5に接続する配線バー56,57,59を介しての相互の熱干渉65,66,67を小さくするができる。その結果、全体のフィン1a間隔を広くすることができて圧力損失を小さくできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、インバータ回路などの電気回路を搭載したSi−半導体素子とSiC−半導体素子からなる半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図10は、三相インバータの回路図である。三相インバータ回路は、上アームおよび下アームと、これらの接続点に接続するU端子、V端子およびW端子と、上アームの高電位側に接続するP端子と、下アームの低電位側に接続するN端子と、上下アームを構成する例えばIGBTと、これと逆並列に接続する例えば、FWD(フリーホイーリングダイオード)からなる。
【0003】
図11は、従来の半導体装置の構成図であり、同図(a)は要部平面図、同図(b)は同図(a)のX−X線で切断した要部断面図、同図(c)は、半導体装置を裏側から見たフィン付ベースの要部平面図である。この半導体装置600は図10の三相インバータ回路を搭載しているパワー半導体モジュールである。以下の説明において、Si−IGBTチップ54はシリコンで製作した絶縁ゲート型バイポーラトランジスタチップであり、SiC−Diチップ55はシリコンカーバイトで製作したショットキーバリアダイオード(SBD)からなるFWDチップである。
【0004】
また、三相インバータ回路はU相,V相,W相の3つの相があり、各相でのチップ配置はすべて同じであるので、ここでは,U相を例にして説明する。
半導体装置600は、フィン付ベース51上に導電パターン付絶縁基板52の導電膜52cを固着し、導電パターン52aに上アームとなるSi−IGBTチップ54のコレクタおよびSiC−Diチップ55のカソードが固着し、導電パターン53aに下アームとなるSi−IGBTチップ54のコレクタおよびSiC−Diチップ55のカソードが固着する。
【0005】
また、上アームのSi−IGBTチップ54のエミッタおよびSiC−Diチップ55のカソードは配線バー56で接続し、下アームのSi−IGBTチップ54のエミッタおよびSiC−Diチップ55のカソードはN端子バー59と接続する。また、導電パターン52aはP端子バー58と接続する。上アームのSiC−Di55のカソードと導電パターン53aは配線バー57で接続し、配線バー57はU端子バー57aと接続する。前記したようにV相、W相も同様の配置であるので説明は省略する。
【0006】
U端子バー57a,V端子バー57bおよびW端子バー57cは図示しない負荷に接続し、P端子バー58およびN端子バー59は図示しない電源に接続する。これらの端子の接続箇所は図示しない樹脂ケースから露出している。
【0007】
3つの導電パターン付絶縁基板52のそれぞれには上下アームを構成する2個のSi−IGBTチップ54と2個のSiC−Diチップ55が搭載されそれぞれは隣接して配置される。このように上下アームのSi−IGBTチップ54とSiC−Diチップ55をまとめて一つの導電パターン付絶縁基板52上に配置することで、Si−IGBTチップ54とSiC−Diチップ55が動作するときに生じる発熱量をそれぞれの導電パターン付絶縁基板52で同じにしてある。
【0008】
各導電パターン付絶縁基板52で発熱量が均等であるため、フィン付ベース51を構成するフィン51aも均等な間隔で配置される。ここではフィン51aはストレート状の歯(直方体)で形成され,そのフィン51aの間隔は各導電パターン付絶縁基板52下で均一である。また、チップ54,55で発熱した熱を効率よく冷媒61に逃がすためフィン51aの間隔は密にしてある。
【0009】
図12は、この半導体装置600を冷却する場合にその仕方を説明した説明図であり、同図(a)は要部断面図、同図(b)は裏側から見た要部平面図である。
フィン付ベース51にカバー60をセットする。図示していないが、カバー60には冷媒61の入口と出口がある。入口から入った冷媒61はフィン51aの隙間を通って出口に向う。冷媒61はフィン51aの密な間隔を通って流れる。この冷媒61がフィン51aの間を通過させるためには圧力を加える必要がある。この冷媒61がフィン51aの間を通過するときに必要となる圧力(入口の圧力−出口の圧力)を冷媒の圧力損失と称す。通常、図示しないポンプで冷媒61を循環させている。
【0010】
図13は、この半導体装置600の各チップの熱干渉の様子を示す図であり、同図(a)は半導体装置の要部平面図、同図(b)は同図(a)のX−X線で切断した要部断面図、同図(c)は同図(a)のY−Y線で切断した要部断面図である。この三相インバータ回路が動作すると、Si−IGBTチップ54とSiC−Diチップ55の間で熱干渉が起こる。
【0011】
同図(b)を用いて熱干渉71を説明する。U相の上アームのSi−IGBTチップ54が動作し、U相の下アームのSiC−Di55が動作を停止しているときは、Si−IGBTチップ54が発熱し、その熱は導電パターン52aから絶縁基板52bを通して隣接する導電パターン53aに伝達され、その導電パターン53aに固着している温度の低いチップ55の温度を上昇させる。逆にU相の上アームのSi−IGBTチップ54が動作を停止し、U相の下アームのSiC−Di55が動作するときは、温度の低いSi−IGBTチップ54の温度を上昇させる。
【0012】
つぎに、同図(c)を用いて熱干渉72を説明する。例えば、U相の上アームのSi−IGBTチップ54が動作している時は、SiC−Diチップ55は停止しているので、Si−IGBTチップ54が発熱し、その熱は導電パターン52aを通して隣接する温度の低いSiC−Diチップ55の温度を上昇させる。逆にU相の上アームのSi−IGBTチップ54が停止し、SiC−Diチップ55が動作するときは、温度の低いSi−IGBTチップ54の温度を上昇させる。
【0013】
熱干渉71は絶縁基板52bを介して行なわれ、熱干渉72は導電パターン52を介して行われるので熱干渉72の方が熱干渉71に比べて大きい。また、フィン付ベース1を介して行なわれる熱干渉71aは、熱がフィン51aを介して殆どが冷媒61に放出されるため小さい。尚、チップ54,55間の間隔M1,M2および導電パターン付絶縁基板2間の間隔M3は数mmである。
【0014】
従来の半導体装置600ではSi−IGBTチップ54とSiC−Di55チップ間の熱干渉72,71は、熱源から近く熱伝導の大きい導電パターン52aおよび熱源に近く冷媒から離れている絶縁基板52bを介して行なわれるため大きくなる。
【0015】
図14は、各端子バーを介してチップ間で熱のやり取りを説明した要部平面図である。上アームのSi−IGBTチップ54のエミッタとSiC−Diチップ55のアノードを接続する配線バー56、下アームのSi−IGBTチップ54のエミッタとSiC−Diチップ55のアノードを接続するN端子バー59および上アームのSiC−Diチップ55のアノードと下アームの導電パターン53aを結ぶ配線バー57を介して熱干渉65、66,67が行なわれる。
【0016】
上アームのSi−IGBTチップ54のエミッタとSiC−Diチップ55のアノードが配線バー56と接続する接続箇所の間隔N1、下アームのSi−IGBTチップ54のエミッタとSiC−Diチップ55のアノードがN端子バー59と接続する接続箇所の間隔N2および上アームのSiC−Diチップ55のアノードと下アームの導電パターン53aが配線バー57と接続する接続箇所の間隔N3が1cm〜数cm程度と狭いため、熱干渉65,66、67は大きい。
【0017】
SiC−Diチップ55の動作可能温度は250℃であるので、この温度でSiC−Diチップ55を動作させると、Si−IGBTチップ54の温度が動作可能温度の175℃を超えてしまい、Si−IGBTチップ54が熱破壊を起こす。
【0018】
そのため、このSi−IGBTチップ54の動作可能温度に律速されて、SiC−Diチップ55の動作温度を175℃以下にする必要がある。
また、特許文献1では、半導体装置は、第1放熱板、第1絶縁層、第1導電層、及び第1半導体素子(シリコンで製作したIGBT)をこの順で含む第1積層体と、第2放熱板、第2絶縁層、第2導電層、及び前記第1半導体とは異なる半導体材料で形成される第2半導体素子(SiCで製作したダイオード)をこの順で含む第2積層体と、前記第1導電層及び前記第2導電層を電気的に接続する接続部とを備え、前記第1積層体と前記第2積層体を、分離することで熱的に絶縁した半導体装置が開示されている。
【0019】
この特許文献1では、上下アームを構成するSi−IGBTチップとSiC−Diチップは隣接して配置され、Si−IGBTチップとSiC−Diチップはそれぞれ横並びのグループを形成し、それぞれのグループは交互に配置されている。冷媒はSi−IGBTチップグループを流れた後、SiC−Diチップに流れる通路となり、その通路の長さは長い。また、この通路は上アームを構成するチップを冷却する通路と下アームを構成するチップを冷却する通路の2系統からなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開2009−272482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
前記したように、Si−IGBTチップ54の動作可能温度である175℃に律速されて、SiC−Diチップ55は、動作可能温度である250℃で動作させることができない。また、Si−IGBTチップ54とSiC−Diチップ55が近接して配置されているので、相互の熱干渉が大きく、フィン51aの間隔を密にして冷却効率を高める必要がある。フィン51aの間隔が密になるため、冷媒61の圧力損失が大きくなり、冷媒循環用ポンプが大きくなる。その結果、インバータシステム全体のコストアップを招く。
【0022】
また、特許文献1では、Si−IGBTチップが位置する箇所の冷却器とSiC−Diチップが位置する箇所の冷却器の冷却構造は同一構造であり、しかも、Si−IGBTチップグループとSiC−Diチップグループは隣接して配置されており、SiC−Diチップを動作可能温度まで上げて動作させることができない。これは、Si−IGBTチップグループとSiC−Diチップグループの間は熱絶縁構造になっているが、各チップの上部に配置される特許文献1では図示していない点線で示した短い配線バーを介してSi−IGBTチップとSiC−Diチップの間に熱干渉があるためである。
【0023】
また、冷却器内を流れる冷媒の通路は2系統となっており複雑であり、その経路の長さが長いため冷媒の圧力損失が大きい。そのため、冷媒循環用ポンプが大きくなり、インバータシステム全体のコストアップを招く。
【0024】
この発明の目的は、前記の課題を解決して、Si−半導体素子とSiC−半導体素子を有する半導体装置において、それぞれの半導体素子を動作可能温度で動作させることができて、冷媒の圧力損失を小さくできるフィン付ベースを有する半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
前記の目的を達成するために、特許請求の範囲の請求項1に記載の発明によれば、纏まって配置され、シリコンで製作された複数の第1半導体素子の第1素子群と、纏まって配置され、シリコンカーバイトで製作された複数の第2半導体素子の第2素子群と、前記第1半導体素子と前記第2半導体素子をそれぞれ接続する複数の配線導体と、前記第1半導体素子および前記第2半導体素子で発生した熱を放熱する突起付放熱ベースとを有する半導体装置であって、前記第1素子群下に配置される前記突起付放熱ベースの突起間隔に比べて、前記第2素子群下に配置される前記突起付放熱ベースの突起間隔が広い構成とする。
【0026】
また、特許請求の範囲の請求項2記載の発明によれば、請求項1に記載の発明において、前記第1半導体素子が、MOS型トランジスタであり、前記第2半導体素子が、ショットキーバリアダイオードであるとよい。
【0027】
また、特許請求の範囲の請求項3記載の発明によれば、請求項1または2に記載の発明において、前記第1半導体素子と前記第2半導体素子で電気回路を構成するとよい。
また、特許請求の範囲の請求項4に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明において、前記突起が、概直方体もしくは概円柱の凸部であるとよい。
【0028】
また、特許請求の範囲の請求項5に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明において、前記配線導体の前記第1半導体素子と前記第2半導体素子の接続箇所の間に第1熱干渉軽減部が設けられているとよい。
【0029】
また、特許請求の範囲の請求項6に記載の発明によれば、請求項5に記載の発明において、前記第1熱干渉軽減部が前記配線導体に設けた開口部もしくは凹部であるとよい。
また、特許請求の範囲の請求項7に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明において、前記配線導体が前記第1半導体素子の接続箇所と前記第2半導体素子の接続箇所の間で分断されているとよい。
【0030】
また、特許請求の範囲の請求項8に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明において、前記第1素子群下とこれと対向する前記第2素子群下の間にある前記突起付放熱ベースに第2熱干渉軽減部が配置されているとよい。
【0031】
また、特許請求の範囲の請求項9に記載の発明によれば、請求項8に記載の発明において、前記第2熱干渉軽減部が、前記突起付放熱ベースに形成した切り込みもしくは前記突起付放熱ベースを分断しその側面に固着した熱絶縁部材であるとよい。
【0032】
また、特許請求の範囲の請求項10に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明において、前記突起付放熱ベースをカバーで被覆し、該カバー内壁と突起の間および突起間に媒体を流して前記突起付放熱ベースからの熱を前記媒体に放熱し、前記カバーに仕切りを設けて、前記媒体の流れを蛇行させるとよい。
【0033】
また、特許請求の範囲の請求項11に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明において、前記突起付放熱ベースをカバーで被覆し、該カバー内壁と突起の間および突起間に媒体を流して前記突起付放熱ベースからの熱を前記媒体に放熱し、該媒体の流れる方向に長短の突起を設けるとよい。
【0034】
また、特許請求の範囲の請求項12に記載の発明によれば、請求項4に記載の発明において、前記突起を三角配置とするとよい。
【発明の効果】
【0035】
この発明によれば、Si−半導体素子(チップ)下のフィン構造と、SiC−半導体素子(チップ)下のフィン構造を違えることで、Si−半導体素子は175℃まで動作させ、SiC−半導体素子はさらに高温まで動作させることができる。その結果、それぞれの半導体素子の性能を最大限に引き出すことができる。
【0036】
また、SiC−半導体素子下のフィン間隔を広くすることで、冷媒の圧力損失を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】この発明の第1実施例の半導体装置100の構成図であり、(a)は表側から見た要部平面図、(b)は裏側から見た要部平面図である。
【図2】この発明の第1実施例の半導体装置100の構成図であり、(a)の図1(a)のX−X線で切断した要部断面図、(b)は図1(a)のY1−Y1線で切断した要部断面図、(c)は図1(a)のY2−Y2線で切断した要部断面図である。
【図3】この発明の第1実施例の半導体装置100の構成図であり、(a)はU端子の要部平面図、(b)は(a)のX−X線で切断した要部断面図である。
【図4】図1の半導体装置100を冷却する場合にその仕方を説明した説明図であり、同図(a)は要部断面図、同図(b)は裏側の要部平面図である。
【図5】チップから発生した熱について説明した説明図であり、(a)は半導体装置100の要部平面図、(b)は(a)のX−X線で切断した要部断面図である。
【図6】この発明の第2実施例の半導体装置200の構成図であり、(a)は要部平面図、(b)は(a)のX−X線で切断した要部断面図である。
【図7】この発明の第3実施例の半導体装置300の構成図であり、(a)は要部平面図、(b)は(a)のX−X線で切断した要部断面図である。
【図8】この発明の第4実施例の半導体装置400の要部平面図である。
【図9】この発明の第5実施例の半導体装置500の構成図であり、(a)は要部断面図、(b)は(a)のA方向から見たフィン付ベースの要部平面図である。
【図10】三相インバータの回路図である。
【図11】従来の半導体装置の構成図であり、(a)は要部平面図、(b)は(a)のX−X線で切断した要部断面図、(c)は、半導体装置を裏面から見たフィン付ベースの要部平面図である。
【図12】この半導体装置600を冷却する場合にその仕方を説明した説明図であり、(a)は要部断面図、(b)は裏側から見た要部平面図である。
【図13】この半導体装置600の各チップの熱干渉の様子を示す図であり、(a)は半導体装置の要部平面図、(b)は(a)のX−X線で切断した要部断面図、(c)は(a)のY−Y線で切断した要部断面図である。
【図14】各端子バーを介してチップ間での熱のやり取りを説明した要部平面図である。
【図15】図1(b)の変形例であり、(a)は仕切りを設けた図、(b)は仕切りを設けた別の図である。
【図16】図15(b)の変形例であり、仕切りとフィンの間に隙間を設けた図である。
【図17】図1(b)の変形例であり、媒体の流れ方向に長さの異なるフィンを配置した図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のX−X線で切断した要部断面図、(c)は(a)のY1−Y1線で切断した要部断面図、(d)は(a)のY2−Y2線で切断した要部断面図である
【図18】図6(b)の変形例であり、(a)疎に配置されたフィンを三角配置にした図、(b)は疎密に配置された全てのフィンを三角配置にした図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
実施の形態を以下の実施例で説明する。
【実施例1】
【0039】
図1〜図3は、この発明の第1実施例の半導体装置の構成図であり、図1(a)は表側から見た要部平面図、図1(b)は裏側から見た要部平面図、図2(a)は図1(a)のX−X線で切断した要部断面図、図2(b)は図1(a)のY1−Y1線で切断した要部断面図、図2(c)は図1(a)のY2−Y2線で切断した要部断面図、図3(a)はU端子の要部平面図、図3(b)は図3(a)のX−X線で切断した要部断面図である。図1(a)は蓋12を外した状態の要部平面図である。この半導体装置100は三相インバータ回路を搭載しているパワー半導体モジュールである。
【0040】
半導体装置100は、フィン1a(突起である凸部)が密に配置された箇所31(フィン1aの間隔が狭い箇所)のフィン付ベース1(突起付放熱ベース)上に第1導電パターン付絶縁基板2を半田で固着する。このフィン1aは下駄の歯のような直方体をしている。フィン1aが疎に配置された箇所32(フィン1aの間隔が広い箇所)に第2導電パターン付絶縁基板3を半田で固着する。これらの導電パターン付絶縁基板2,3は熱伝導性が高く電気絶縁性が高いセラミックスなどの絶縁基板2b,3bと、この導電パターン付絶縁基板2,3はDCB(Direct Copper Bonding)基板などである。裏面に形成された導電膜2c,3cと、表側に形成された導電パターン2a,3aからなる。この第1導電パターン付絶縁基板2に上下2列で各列3個配置された第1導電パターン2a(上列は上アームを構成、下列は下アームを構成)にそれぞれ1個のSi−IGBTチップ4のコレクタを半田で固着する。第2導電パターン付絶縁基板3に上下2列で各列それぞれ3個配置された第2導電パターン3a(上列は上アームを構成、下列は下アームを構成)にそれぞれ1個のSiC−Di5のカソードを半田で固着する。上3列の第1導電パターン2aおよび上3列の第2導電パターン3aをそれぞれP端子バー8にワイヤ34で接続する(超音波接合する)。下列の3個のSi−IGBTチップ4のそれぞれのエミッタおよび下列の3個のSiC−Diチップ5のそれぞれのアノードをN端子バー9にワイヤ35で接続する(超音波接合する)。上列の3個のSi−IGBTチップ4のそれぞれのエミッタと下列の3個の第1導電パターン2aを接続バー6下に形成された凸部6a,6bを介してそれぞれ半田で固着する。上列の3個のSiC−Diチップ5のそれぞれのアノードと下列の3個の第2導電パターン3aを接続バー6下に形成された凸部6a,6bを介してそれぞれ半田で固着する。前記の半田は全て融点300℃以上の高温半田にすると良い。また、6個ある接続バー6の内、左側から1番目と4番目の接続バー6上に形成された凸部6cとU端子バー7aをレーザー溶接で固着する。2番目と5番目の接続バー6上に形成された凸部6cとV端子バー7bをレーザー溶接で固着する。3番目と6番目の接続バー6上に形成された凸部6cとW端子バー7cをレーザー溶接で固着する。これらは樹脂枠10で囲まれ、内部にゲル11を注入して樹脂の蓋12をする。
【0041】
フィン1aの間隔が密な箇所31(狭い箇所)上に配置されるSi−IGBTチップ4は最高動作温度を動作可能温度である175℃で動作させ、フィン1aの間隔が疎な箇所32(広い箇所)上に配置されるSiC−Diチップ5は最高動作温度を動作可能温度である250℃で動作させる。
【0042】
フィン1aの間隔が密な箇所31(狭い箇所)とフィン1aの間隔が疎な箇所32を設けることで、それぞれのチップ4,5を動作可能温度で動作させることができる。
図4は、図1の半導体装置100を冷却する場合にその仕方を説明した説明図であり、(a)は要部断面図、(b)は裏側の要部平面図である。
【0043】
フィン付ベース1にウォータジャケットであるカバー13をセットする。カバー13には冷媒14(例えば、水など)である冷媒14の入口13aと出口13bがある。入口13aから入った冷媒14はフィン1aの隙間を通って出口13bに向う。フィン1aの間隔が疎である箇所32を設けることで冷媒14の圧力損失を低減することができる。圧力損失を低減することで冷媒14を循環させる図示しないポンプを小型化できて、インバータシステム全体のコストダウンを図ることができる。なお、カバー13は、フィン付ベース1上に第1導電パターン付絶縁基板2を固着する段階で、あらかじめフィン付ベース1に固着し、一体化しておいてもよい。
【0044】
図5は、チップから発生した熱について説明した説明図であり、同図(a)は半導体装置100の要部平面図、同図(b)は同図(a)のX−X線で切断した要部断面図である。
【0045】
第1導電パターン付絶縁基板2と第2導電パターン付絶縁基板3を間隔L1を空けて配置することで、Si−IGBTチップ4とSiC−Diチップ5の間の熱干渉15を低減することができる。この間隔L1は例えば、数mm程度あれば効果がある。この熱干渉15としては、フィン付ベース1を介して起こる熱干渉15aとU端子バー7a,V端子バー7b,W端子バー7cを介して起こる熱干渉15bがあるが、熱干渉15aに比べて熱干渉15bは大きい。これは、間隔L1が数mm程度あれば、フィン付ベース1に到達した熱はフィン1aを介して殆ど冷媒14に放熱されるためである。
【0046】
一方、熱干渉15bは熱干渉15aに比べて大きいものの、Si−IGBTチップ4とSiC−Diチップ5が接続する箇所の間隔L2を数cm程度離せば、従来(従来の間隔は数mm程度)に比べると大幅に熱干渉15bを小さくすることができる。すなわち、本発明ではIGBT群とFWD群をそれぞれ纏めて、数cm離して配置するので、従来構造に比べて端子バーを介した熱干渉を低減することができる。その結果、SiC−Diチップ5を250℃で動作させた場合でも、Si−IGBTチップ4の動作温度を175℃以下に抑制できるので、Si−IGBTチップ4を安全に動作させることができる。
【0047】
また、熱干渉15(主に熱干渉15b)が小さくなるので、従来よりSiC−Diチップ5下のフィン1a同士の間隔を広くすることができて、冷媒14の圧力損失を小さくすることができる。
【0048】
尚、前記のSi−IGBTチップ4をSi−MOSFETに代えてインバータ回路を形成する場合もある。また、三相インバータ回路を搭載した例に挙げたが単相インバータ回路やチョッパ回路などの電気回路を搭載する場合もある。
【0049】
前記したように、本実施例では、Si−IGBTチップ4同士をまとめ、SiC−Diチップ5同士をまとめ、それぞれの下に配置されるフィン1aの間隔を違えることで、Si−IGBTチップ4は175℃まで動作させ、SiC−Diチップ5は250℃まで動作させることができる。その結果、それぞれのチップ4,5の性能を最大限に引き出すことができる。
【0050】
また、SiC−Diチップ5下のフィン1aの間隔を広くすることで、冷媒14の圧力損失を低減できる。その結果、冷媒用のポンプ(ファン等)を簡素化できインバータシステム全体のコストダウンを図ることができる。
【0051】
図15は、図1(b)および図4(b)の変形例であり、同図(a)は仕切りを設けた図、同図(b)は仕切りを設けた別の図である。
図15(a)と図1(b)および図4(b)との違いは、カバー13に、カバー13の入り口13a側の内壁から突出し、密な間隔に配置されたフィン1aに接する仕切り40を設けた点である。仕切り40を設けることで、入り口13aから流入した媒体14の流れの方向が仕切り40で変わり、Si−IGBTチップ4下の密な間隔に配置されたフィン1aの間を均一に流れ、カバー13の中を蛇行するようになるので、図4(b)のように仕切り40が無い場合よりも冷却効率を向上でき、好ましい。
【0052】
また、図15(b)のようにカバー13の内壁から突出し、密な間隔に配置されたフィン1aに接する仕切り40を交互に配置し、さらに疎な間隔に配置されたフィン1aに接する仕切り40を配置することで、媒体14の流れの蛇行する回数が増えてSi−IGBTチップ4下のフィン1aの冷却効率が更に向上する。なお、図15(b)では密な間隔に配置されたフィン1aに接する仕切り40および疎な間隔に配置されたフィン1aに接する仕切り40をそれぞれ2つずつ、全体で偶数個の仕切り40を交互に設けているので、カバー13の対角線上に出口13bおよび入り口13aを形成している。仕切り40を全体で奇数個形成する場合は、カバー13のひとつの辺に沿って出口13bおよび入り口13aを形成できる。
【0053】
図16は、図15(b)の変形例であり、仕切り40とフィン1aの間に隙間を設けた図である。図15(b)では仕切り40を設ける箇所が多いので、媒体14の圧力損失が大きくなる。それを改善するために、仕切り40とフィン1aの間に隙間41を設けて、この隙間41にも媒体14を流すことで媒体14の圧力損失を低下させる。隙間41の大きさは適宜調整することができる。また、密な間隔に配置されたフィン1aと仕切り40の間の隙間41の大きさと、疎な間隔に配置されたフィン1aと仕切り40の間の隙間41の大きさを異なるものとして、媒体14の圧力損失を調整すると同時にフィン1a間に導かれる流量を調整してもよい。
【0054】
図17は、図1(b)および図4(b)の変形例であり、媒体の流れ方向に長さの異なるフィンを配置した図であり、同図(a)は平面図、同図(b)は同図(a)のX−X線で切断した要部断面図、同図(c)同図(a)のY1−Y1線で切断した要部断面図、同図(d)は同図(a)のY2−Y2線で切断した要部断面図である。フィン1aの間隔が密な箇所31には長短両方のフィン1aを配置し、疎の箇所には長いフィン1aを配置する。
【実施例2】
【0055】
図6は、この発明の第2実施例の半導体装置の構成図であり、同図(a)は要部平面図、同図(b)は同図(a)のX−X線で切断した要部断面図である。図6はこの半導体装置200のフィン付ベース21の要部構成図である。
【0056】
第1実施例との違いは、フィン21aを円柱とした点である。この場合も、フィン21aの間隔が密な箇所31と疎な箇所32を設けることで、第1実施例と同様の効果がある。
【0057】
また、フィン21aの形状は直方体や円柱に限るものではなく、直方体の側壁が凹凸しているなど略直方体であったり、円柱も六方柱など略円柱であっても構わない。また、三角柱や四角柱であっても構わない。
【0058】
図18は、図6(b)の変形例であり、同図(a)疎に配置されたフィンを三角配置にした図、同図(b)は疎密に配置された全てのフィンを三角配置にした図である。
媒体14の入り口13aをカバー13の一辺の中央に位置させる。フィン21aを三角配置とすることで、媒体14の流れが蛇行し冷却効率を高めることができる。但し、三角配置とは隣接するフィン21aの中心を結ぶ直線が三角形を作る場合をここでは言う。六角形配置という場合もある。
【実施例3】
【0059】
図7は、この発明の第3実施例の半導体装置の構成図であり、同図(a)は要部平面図、同図(b)は同図(a)のX−X線で切断した要部断面図である。図7はこの半導体装置300のU端子バー7a(V端子バー7bまたはW端子バー7c)の構成図である。
【0060】
第1実施例との違いは、U端子バー7a(V端子バー7bまたはW端子バー7c)に開口部23が入っている点である。この開口部23のある箇所は熱抵抗が高くなり、Si−IGBTチップ4とSiC−Diチップ5の間の熱干渉を軽減することができる。熱干渉を軽減することで、フィン1aの間隔を広げることができて、圧力損失を小さくすることができる。また、点線で示すように、開口部23の代わりに貫通しない凹部を24を形成してもよい。この場合は開口部23で大きくなった配線インダクタンスを小さくすることができる。これらの開口部23や凹部24は熱干渉軽減部となる。
【0061】
このように、Si−IGBTチップ4(Si−半導体素子)とSiC−Diチップ5(SiC−半導体素子)に接続するU端子バー7a(V端子バー7b,W端子7c)やフィン付ベース1に熱干渉軽減部を設けることで、Si−半導体素子とSiC−半導体素子の相互の熱干渉15を小さくできる。その結果、全体のフィン1aの間隔をさらに広くすることができて、冷媒14の圧力損失を一層低減することができる。
【実施例4】
【0062】
図8は、この発明の第4実施例の半導体装置の要部平面図である。この半導体装置400と図1の半導体装置100との違いは、U端子バー7a,V端子バー7b,W端子バー7cをSi−IGBTチップ4側とSiC−Diチップ5側に引き出し図1のように互いを接続しないようにした点である。こうすることで、Si−IGBTチップ4とSiC−Diチップ5の間の端子を介しての熱干渉15を遮断することができる。それによって、フィン1aを広げることができて、冷媒14の圧力損失を小さくできる。
【0063】
また、左右のU端子バー7a,V端子バー7b,W端子バー7cは半導体装置400の外に配置される図示しない外部配線で互いに接続される。
【実施例5】
【0064】
図9は、この発明の第5実施例の半導体装置の構成図であり、同図(a)は要部断面図、同図(b)は同図(a)のA方向から見たフィン付ベースの要部平面図である。この半導体装置500と図1の半導体装置100との違いは、フィン付ベース1の熱干渉15aを起こす箇所に切り込み25を入れて、熱干渉15aを小さくした点にある。この切り込み25は熱干渉軽減部となる。切り込み25の代わりにこの箇所を切断して間に熱絶縁部材を挿入し、両側からフィン付ベース1でこの熱絶縁部材を挟み込んでもよい。この熱絶縁部材としては300℃以上の耐熱性を有し、フィン付ベース1を構成する銅やアルミニウムなどとの接触性が良好なものがよい。
【0065】
前記した、第1実施例から第5実施例を組み合わせることで、熱干渉を抑制し、圧力損失を小さくできる半導体装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0066】
1,12 フィン付ベース
1a,21a フィン
2、3 導電パターン付絶縁基板
2a、3a 導電パターン
2b,3b 絶縁基板
2c,3c 導電膜
4 Si−IGBTチップ
5 SiC−Diチップ
6 接続バー
6a,6b,6c 凸部
7a U端子バー
7b V端子バー
7c W端子バー
8 P端子バー
9 N端子バー
10 樹脂枠
11 ゲル
12 蓋
13 カバー
13a 入口
13b 出口
14 冷媒
15,15a、15b 熱干渉
16a,16b,16c,16d 熱
23 開口部
24 凹部
25 切り込み
31,32 箇所
40 仕切り
41 隙間
100,200,300,400,500 半導体装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
纏まって配置され、シリコンで製作された複数の第1半導体素子の第1素子群と、纏まって配置され、シリコンカーバイトで製作された複数の第2半導体素子の第2素子群と、前記第1半導体素子と前記第2半導体素子をそれぞれ接続する複数の配線導体と、前記第1半導体素子および前記第2半導体素子で発生した熱を放熱する突起付放熱ベースとを有する半導体装置であって、前記第1素子群下に配置される前記突起付放熱ベースの突起間隔に比べて、前記第2素子群下に配置される前記突起付放熱ベースの突起間隔が広いことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第1半導体素子が、MOS型トランジスタであり、前記第2半導体素子が、ショットキーバリアダイオードであることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1半導体素子と前記第2半導体素子で電気回路を構成することを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記突起が、概直方体もしくは概円柱の凸部であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記配線導体の前記第1半導体素子と前記第2半導体素子の接続箇所の間に第1熱干渉軽減部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1熱干渉軽減部が前記配線導体に設けた開口部もしくは凹部であることを特徴とする請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記配線導体が前記第1半導体素子の接続箇所と前記第2半導体素子の接続箇所の間で分断されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第1素子群下とこれと対向する前記第2素子群下の間にある前記突起付放熱ベースに第2熱干渉軽減部が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第2熱干渉軽減部が、前記突起付放熱ベースに形成した切り込みもしくは前記突起付放熱ベースを分断しその側面に固着した熱絶縁部材であることを特徴とする請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記突起付放熱ベースをカバーで被覆し、該カバー内壁と突起の間および突起間に媒体を流して前記突起付放熱ベースからの熱を前記媒体に放熱し、前記カバーに仕切りを設けて、前記媒体の流れを蛇行させることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記突起付放熱ベースをカバーで被覆し、該カバー内壁と突起の間および突起間に媒体を流して前記突起付放熱ベースからの熱を前記媒体に放熱し、該媒体の流れる方向に長短の突起を設けることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記突起を三角配置とすることを特徴とする請求項4に記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−44140(P2012−44140A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53332(P2011−53332)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】