説明

反発誘導分子(RGM)タンパク質ファミリーのタンパク質の結合ドメイン、及びその機能的断片、及びそれらの使用

本発明は、反発誘導分子(RGM)タンパク質ファミリー並びにそれに由来するポリペプチド断片のメンバーのネオゲニン受容体−結合ドメインの特定及び使用に関する。本発明のドメイン、すなわち、ペプチド断片は、個々の能動又は受動免疫のための薬剤、並びにその発現又は進行に、RGMファミリーのメンバー及びこの分子に割り当てられる細胞受容体が関与する疾患又は病的状態のために用いられる診断及び治療薬として適している。本発明はまた、本発明の結合ドメイン、それから誘導されるポリペプチドに対するモノクローナル及びポリクローナル抗体、並びに本発明のドメイン、ポリペプチド及び抗体の生成方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反発誘導分子(RGM)タンパク質ファミリーのメンバーの受容体結合ドメイン、並びにそれから誘導されるポリペプチド断片の特定及び使用に関する。本発明のドメイン及びペプチド断片は、能動又は受動免疫のための薬剤、並びにその発現又は進行に、RGMファミリーのメンバー及びこの分子に割り当てられる細胞受容体が関与する疾患又は病的状態のために用いられる診断及び治療薬として適している。更に、本発明は、本発明の結合ドメイン、それから誘導されるポリペプチドに対するモノクローナル及びポリクローナル抗体、並びに本発明のドメイン、ポリペプチド及び抗体の製造方法に関する。
【0002】
背景技術
RGMタンパク質ファミリーのメンバーの機能は、最初はMonnier,P.P.らによって、Nature,419,p392−395,2002に開示された。このファミリーには、今までに開示されている、RGM A、RGM B(DRAGONとも呼ばれる)及びRGM C(ヘモジュベリンとも呼ばれる)と呼ばれる3種のメンバーが含まれる(Niederkofler V.et al.J.Neurosci.24,808−18,2004)。これらは、脂質アンカーによって形質膜に結合している糖タンパク質である(グリコシル−ホスファチジルイノシトールアンカー=GPIアンカー)。このタンパク質ファミリーのメンバーは、他のタンパク質に対して広範囲な配列相同性を有さず、特定されている構造上の特色は実質的に以下の領域、すなわち、N−末端シグナルペプチド;RGD配列;アミノ酸配列GDPHの周囲のタンパク分解的切断部位;フォンウィルブランド因子ドメイン(vWF D)の構造的相同体;C末端及びC−末端GPIアンカーコンセンサス配列の近傍における疎水性配列(図2も参照)である。
【0003】
ヒトにおいては、RGM Aについてのコード配列は第15染色体に、RGM Bについては第5染色体に、RGM Cについては第1染色体上に位置している。特徴的な発現パターンが観察される。RGM A及びBは、特に成人の脳及び脊髄に、RGM Cは、特に骨格筋、肝臓及び心筋に、RGM Bは更に軟骨組織で発現する。
【0004】
RGMタンパク質は、もとは局所的ニューロン投射の形成において重要な役割を演じる候補タンパク質として同定された(Stahl B.et al.,Neuron 5:p735−43,1990;Mueller B.K.et al.,Curr.Biol.6,p.1497−1502,1996;Mueller B.K in Molecular Basis of Axon Growth and Nerve Pattern Formation,Edited by H.Fujisawa,Japan Scientific Societies Press,215−229,1997)。増殖する神経線維における反発又は阻害様式において作用するそれらの能力は、神経線維の分離、クローニング及び特徴づけにおける重要な役割を演じる決定的な機能的特色であった。その活性は、簡単な細胞測定系において容易に検出することができる。RGMタンパク質は、2種の異なる細胞アッセイにおいて、阻害又は反発効果を有する。虚脱アッセイにおいては、RGMタンパク質は増殖する神経線維に添加される。RGMのRGM受容体への結合は、神経細胞成長円錐の全ての膜成分が関与する活発な反応を誘導する。その結果、最初の広がった手のような成長した円錐状物体が細い糸状に変換される。RGMの存在下で、神経線維は阻害されたままであり、非常に縮小し、もはや成長を続けることはできない。
【0005】
RGMタンパク質は、RGM受容体ネオゲニンと結合することによりそれらの効果の一部を発揮する(Rajagopalan S.et al.,Nat Cell Biol.6,pp.756−62,2004)。ネオゲニンは、DCC受容体(結腸直腸癌における除去)と密接に関係する。両方の受容体は免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーであり、細胞外、膜貫通及び細胞内ドメインを有する。両方は、更なるリガンド、ネトリン−1の受容体として開示されているが、ネオゲニンのみがRGMタンパク質と結合し、DCCは結合しない。これらの受容体の細胞外ドメインは、4個の免疫グロブリン様ドメイン、それに続く6個のフィブロネクチン繰り返しドメインを含む。
【0006】
神経系におけるRGM Aの機能は、ほとんど理解されており、非常に低い濃度で神経線維の増殖を阻害する効果は特に顕著である。成人のヒト及びおとなのラットにおける中枢神経系に対する損傷は、損傷部位におけるRGMタンパク質の蓄積をもたらす(Schwab J.M.et al.,Arch.Neurol,in press,2005;Schwab J.M.et al.,Eur.J.Neurosci.21:p.387−98,2005)。損傷した神経線維の増殖の再開が阻止され、その結果、永久に、損傷部位の位置に依存し、多少の重篤な機能障害が発生する。この、神経線維の増殖のためのRGMの阻害活性はネオゲニン受容体への結合によって媒介される(Rajagopalan S.et al.,loc.cit.)。しかし、同じ受容体は、ネトリン−1の結合によって、神経線維の増殖を促進する反対の効果も媒介する。
【0007】
最近の結果は、RGMタンパク質が、腫瘍性疾患、炎症過程、骨及び軟骨組織の形成における鉄代謝の制御において、中枢及び末梢神経系において重要な課題をも実行することを示す。
【0008】
RGM A、B及びCがネオゲニン受容体に高親和性により結合するという観察に基づき、本発明の目的は、これらの分子、特にRGM Aの機能的結合ドメインの特徴づけを詳細に行うことである。これは、RGMの阻害活性を高い可能性で中和し、その結果、神経線維の再生及び増殖再開を促進するドメイン、及び活性RGMに由来する活性RGMペプチドに対する抗体を生成することを可能にする。更に、結合ドメイン、及び活性RGMに由来する活性RGMドメインは、それ自体、治療に有効な薬剤として提供され得る。
【0009】
意外なことに、前記目的は、ヒトRGMタンパク質、特にRGM Aの結合ドメイン、及びその活性ポリペプチド断片を分離し、特徴づけることによって達成することができる。
【0010】
図面の簡単な説明
図1は、ヒト型のRGM A(GenBank # NP_064596.1)、RGM B(GenBank # NP_001012779)及びRGM C(GenBank # NP_998818.1)の配列である。
【0011】
図2は、RGM分子の構造の図表示である。N−末端シグナルペプチドとC−末端GPIアンカーとの間に、RGD配列、フォンウィルブランド因子ドメイン(VWF D)及びアンカー領域の前のC−末端の領域における疎水性配列がある。本発明の興味深い結合ドメイン領域は、vWFD及び疎水性領域の間であると推定される。図の下は、アミノ酸168及び169の間のタンパク分解的切断部位のヒトRGM Aに対応するアミノ酸部位である。
【0012】
図3Aは、蛍光顕微鏡写真を用いた、ラット神経細胞の神経線維増殖における、種々のRGM Aペプチド断片の影響である。ペプチド1は10μg/mLの濃度で阻害活性を示すが、ペプチド4は同じ濃度で不活性である。緩衝液又はPBSを用いた対応するコントロール混合物を比較のために示す。図3Bは、本発明のRGM Aペプチド1の軸索増殖−阻害活性の濃度依存性を示すための、測定した軸索増殖指数(細胞凝集サイズに対する、軸索により覆われた面積の割合、平均及び標準偏差を示す)の棒グラフを示す。RGM Aペプチド4についての対応する棒グラフを図3Cに示す。
【0013】
図4Aは、ヒト神経NTera細胞の神経線維増殖におけるRGM Aペプチド1及び4(それぞれ、30μg/mLの濃度における)の影響を説明するヒト神経NTera細胞の蛍光顕微鏡写真である。同様に示すコントロール画像(ペプチドに代えPBSとインキュベーション)と比較し、ペプチド1が神経線維増殖において阻害効果を有することが示される。図4Bは、ペプチド1、ペプチド4及びコントロール(PBS)を用いた試験シリーズについて、対応して測定された軸索増殖指数を示す(上の図:各測定値及び平均、下の図:平均及び標準偏差を示す棒グラフ)。
【0014】
図5Aは、NTera神経線維増殖アッセイにおけるRGM A断片の解析の結果である。RGM A断片2(218−284)及び6(168−422)の両方を、NTeraニューロンに90nMの濃度で加えた。両方の断片は、NTeraニューロンの神経線維増殖を強く阻害する。***=p<0.001 PBSコントロールに対する有意性。
【0015】
図5Bは、NTera神経線維増殖アッセイにおけるRGM A断片のアッセイ結果の蛍光顕微鏡写真である。RGM A断片2(218−284)、3(266−335)、4(316−386)及び6(168−422)を、NTeraニューロンに示した濃度で、ピペットで取った。軸索増殖について阻害活性を示したものは、断片2、3及び6であり、断片4は不活性であった。
【0016】
図5Cは、NTera神経線維増殖アッセイにおけるRGM A断片の解析の追加結果である。RGM A断片3(286−335)及び6(168−422)の両方をNTeraニューロンに6μg/mLの濃度で加えた。両方の断片は、NTeraニューロンの神経線維増殖を強く阻害する。**=p<0.01 バッファー制御に対する有意性、***=p<0.001 バッファー制御に対する有意性。
【0017】
図6Aは、NTera神経線維増殖アッセイにおける、RGM Aペプチド1及びそれと部分的に重複する2個のペプチド(Down−1及びUp−1)の解析結果である。ペプチドを、NTera凝集体に10μg/mL又は30μg/mLの濃度で加えた。24〜36時間後、培養物を固定化し、染色して解析した。3種全てのRGM Aペプチドは、30μg/mLの濃度で活性であり、神経線維増殖を非常に顕著に阻害した。
【0018】
図6Bは、NTera神経線維増殖アッセイにおける、更に3種のRGM Aペプチドの解析結果である。RGM Aペプチドを、NTera凝集体に10μg/mL又は30μg/mLの濃度で加えた。24〜36時間後、培養物を固定化し、染色して解析した。3種全てのRGM Aペプチド(5−AK、6−AK、7−AK)は、10μg/mLの濃度で不活性であり、ペプチド7−AK及び6−AKのみが、高濃度で、神経線維増殖を阻害する明確な傾向を示した。
【0019】
図7Aは、RGM A−ネオゲニン結合アッセイの結果である。このアッセイにおいては、ペプチドDown1に対するポリクローナル抗体は、非常に強力であり、最も低い濃度であっても(Down 1 8641及びDown 1 8640)、RGM Aリガンドと、その受容体ネオゲニンタンパク質との相互作用を遮断した。コントロール抗体(ウサギコントロール)は効果がなく、R&D Systems(PAB抗RGM)から市販されているコントロールのポリクローナル抗体は、同様にRGM A−ネオゲニン相互作用を遮断したが、実質的に低い効率であった。
【0020】
図7Bは、NTera神経線維増殖アッセイにおいて、Down−1特異的ポリクローナル抗体が、強力なRGM A断片2の阻害活性をどのように中和するのかを示す。増殖アッセイにおいて、NTera培養物を、PBS、断片2(2μg/mL)、又は断片2(2μg/mL)及び同時にポリクローナル抗体Down−1(0.6μg/mL)で処理した。
【0021】
発明の詳細な説明
I.一般用語の説明
「受容体」は、特に本発明との関連において、細胞膜に結合し、例えば、可溶性リガンドと相互作用することができ、この相互作用の結果として、例えば、細胞内部に配向するシグナル、又はシグナルカスケード(シグナル伝達とも呼ばれる)を誘導する表面分子を表す。
【0022】
「リガンド」は、天然、すなわちin vivoで形成された、又は人工的に生成された、「受容体」に対する、低分子量又は高分子量の結合パートナーを表す。リガンドは、好ましくは細胞外の環境において自由に移動することができる。
【0023】
「免疫原」は、免疫原に対する抗体の形成を誘導するのに好適な、グリコシル化された又はグリコシル化されていない形態における本発明のペプチド断片を表す。適当な場合には、免疫原(ハプテンとしての)の高分子担体への結合は有利である。
【0024】
「エピトープ」又は抗原決定基は、例えばタンパク質等の抗原の抗体特異性を決定する領域を表す。このエピトープがタンパク質の部分で新規に形成され、又は例えば、タンパク質とリガンドの相互作用により、例えば、外部の影響を通じて、接触可能な分子表面で発現される場合、用いられる用語は「ネオエピトープ」である。
【0025】
タンパク質又は抗体の「ドメイン」は、α−ヘリックス及び/又はβプリーツシート成分によって形成され、タンパク質内で区切られる複雑な構造を表す。
【0026】
特に示さない限り、「本発明のRGMタンパク質」なる用語は、ネオゲニン結合ドメイン及びRGM分子のファミリーのメンバー、特にRGM A、B及びCに由来のポリペプチドを表す。また、特に、「阻害活性を有する」機能的ポリペプチドも含まれる。
【0027】
「阻害」ポリペプチド又は「阻害活性を有する」ポリペプチドは、本明細書に開示される神経細胞増殖アッセイにおいて神経細胞の増殖を減少又は完全に阻害することである。
【0028】
特に示さない限り、「RMG]は、RGM A、B及びC、特にRGM Aを意味する。
【0029】
「ネオゲニン」又は「ネオゲニン受容体」は、同義語である。
【0030】
II.本発明の特定の態様
本発明の第一の態様は、好ましくはヒト、ラット又はマウス等のほ乳類、又はニワトリ等の家禽由来のRGM由来の、グリコシル化された、又は特にグリコシル化されていない形態における反発誘導分子(RGM)の受容体結合、特にネオゲニン受容体結合ドメインに関する。
【0031】
好ましい実施態様は、配列番号2に示されるヒトRGM A、配列番号4に示されるヒトRGM B、配列番号6に示されるヒトRGM Cに由来のネオゲニン受容体結合ドメインに関する。これに関連し、結合ドメインは、RGMのアミノ酸配列領域、特にRGD切断部位に関連する、特にC−末端、及びRGM、例えば、特にRGM AのGPIアンカー領域に関連するN−末端から、特に、150個以下、例えば、125以下、100個以下、80個以下、30個以下、又は20個以下、例えば、10〜20個、例えば11、12、13、14、15、16、17、18又は19個の長さの連続したアミノ酸残基を含むアミノ酸配列を含む。
【0032】
特に、本発明は、配列番号7に示される、以下の部分配列によって特徴づけられるネオゲニン受容体結合ドメインに関する。
【0033】
GXVEXAXYIGTTXRQ
[式中、X〜Xはいずれかのアミノ酸残基である]
特に、
はGln、His又はAsnであり;
はHis又はTyrであり、
はIle又はMetであり、
はGln又はHisであり、
はLys、Arg又はAlaであり、
はIle又はValであり、
はVal、Phe又はIleであり、
はVal又はIleである。
【0034】
言及すべき具体例は
GQHVEIQAKYIGTTIVVQR(配列番号8)
GHYVEMHARYIGTTVFVQR(配列番号9)
GNHVEIQAAYIGTTIIIRQ(配列番号10)
である。
【0035】
ネオゲニン受容体結合ドメインの具体例には、配列番号2に示される200〜350位のアミノ酸配列、配列番号4に示される200〜330位のアミノ酸、又は配列番号6に示される180〜350位のアミノ酸、又はそれらの機能的なネオゲニン受容体結合断片が含まれる。
【0036】
このようなドメイン又は断片には、特に、
配列番号2に示される200〜325、200〜300、200〜285、250〜285、又は260〜285、又は260〜280、又は断片215〜340、260〜340、250〜300、260〜291、210〜260又は290〜350位のアミノ酸;又は
配列番号4及び6を有する配列番号2の配列アラインメントに由来し(添付の図1参照)、配列番号2の前述したアミノ酸位置と関連する配列番号4及び6の配列断片;及び
配列番号4に示される200〜300、280〜340、240〜300、260〜300又は240〜280位のアミノ酸:又は
配列番号6に示される200〜350、200〜320、220〜310、250〜290又は260〜280位のアミノ酸が含まれる。
【0037】
本発明に好適な結合ドメインの更なる特定の具体例は:
RGM A由来のKITEKVSGQHVEIQAKYIGTTIVVRQVGRYLT(配列番号23);
RGM B由来のRIVERESGHYVEMHARYIGTTVFVRQVGRYLT(配列番号24);
RGM C由来のSIQTANPGNHVEIQAAYIGTTIIIRQTAGQLS(配列番号25);
RGM A由来のKITEKVSGQHVEIQAK(配列番号26);
RGM A由来のYIGTTIVVRQVGRYLT(配列番号27);
RGM A由来のVVNAVEDWDSQGLYLC(配列番号28);
RGM A由来のTIIFKNFQECVDQKVYQA(配列番号29)
RGM B由来のRIVERESGHY VEMHAR(配列番号31);
RGM B由来のYIGTTVFVRQ VGRYLT(配列番号32);
RGM C由来のSIQTANPGNH VEIQAA(配列番号33);及び
RGM C由来のYIGTTIIIRQ TAGQLS(配列番号34)である。
【0038】
ネオゲニン受容体結合ドメイン又はその結合断片の更なる具体例には、前述のペプチドの1種から、又は配列番号2に示される260〜291位、又は267〜285位の配列領域から、配列番号4に示される260〜325位の配列領域から、又は配列番号6に示される250〜300位の配列領域から、少なくとも10個、例えば、10〜30個、10〜25個、10〜20個、又は10〜15個、例えば、特に10、11、12、13、14又は15個の連続したアミノ酸残基が含まれる。
【0039】
本発明の更なる態様は、前記に定義したような、ネオゲニン受容体結合ドメインの抗原性ポリペプチド断片に関する。本発明は、特に、免疫グロブリン分子の生成に使用することができ、RGMのネオゲニン受容体への結合を調節、特に部分的又は完全に拮抗する抗原性ポリペプチド断片に関する。例えば、配列番号7、8、9、10、23〜29又は31〜34に示されるペプチドの、少なくとも10個、例えば、10〜30個、10〜25個、10〜20個、又は10〜15個、例えば、特に10、11、12、13、14、15個の連続したアミノ酸残基を含む抗原性ポリペプチド断片に言及されてもよい。
【0040】
本発明の更なる態様は、RGMに対するポリクローナル抗血清又はモノクローナル抗体(抗血清又は抗体が、好ましくは部分的又は完全に拮抗する、特に、RGMのネオゲニンへの結合を調節する)の生成のための、前記に定義したネオゲニン受容体結合ドメイン、又は前記に定義したポリペプチド断片の使用に関する。
【0041】
本発明は、また、診断又は治療に用いるための、前記に定義したRGMに対するポリクローナル抗血清又はモノクローナル抗体に関する。
【0042】
本発明は、また、ネオゲニン受容体と、RGM又はRGM断片との相互作用によって媒介される疾患及び病的状態の診断又は治療のための医薬組成物を生成するための、本発明のポリクローナル抗血清又はモノクローナル抗体の使用に関する。これらの疾患又は病的状態は、特に、
a)頭蓋骨、脳及び脊髄の機械的損傷、
b)神経変性、炎症性及び自己免疫疾患等の慢性的疾患、
c)神経再生、軸索発芽、軸索伸長、及び神経可塑性の障害、
d)腫瘍性疾患及び腫瘍転移から選択される。
【0043】
本発明は、更に、RGM又はRGM断片と関連受容体(例えば、ネオゲニン受容体)との相互作用を損なうことにより媒介される疾患又は病的状態の診断又は治療のための組成物を生成するための、前記に定義したネオゲニン受容体結合ドメイン、又は前記に定義したポリペプチド断片の使用に関する。これらの疾患又は病的状態は、特に、
a)精神異常に関連する軸索形成過程の変化、及び過度の軸索発芽及び/又は病的シナプス形成によって引き起こされる慢性的な痛みの状態、
b)正常な機能が損なわれた鉄代謝に関連する障害、特に若年性ヘモクロマトーシス、
c)正常な機能が損なわれた骨成長に関連する障害、
d)変性軟骨変形に関連する障害、
e)椎間板及び椎骨に対する損傷に関連する障害、
f)調節されない、制御されない細胞移動過程に関連する障害から選択される。
【0044】
本発明の更なる態様は、RGM結合リガンドを検出又は同定するための、前記に定義したネオゲニン受容体結合ドメイン、又は前記に定義したポリペプチド断片の使用に関する。
【0045】
本発明の更なる態様は、能動又は受動免疫のための免疫原としての、前記に定義したネオゲニン受容体結合ドメイン、又は前記に定義したポリペプチド断片の使用に関する。
【0046】
本発明は、また、前記に定義したネオゲニン受容体結合ドメイン、又は前記に定義したポリペプチド断片の抗原量を用いてほ乳類を免疫することにより得ることのできるポリクローナル抗血清、及びヒト化された形態において好適である、前記に定義したネオゲニン受容体結合ドメイン、又はポリペプチド断片に対するモノクローナル抗体、及びその抗原結合断片に関する。
【0047】
本発明は、また、
a)前記に定義したネオゲニン受容体結合ドメイン、又はポリペプチド断片、又は
b)前記に定義したモノクローナル又はポリクローナル抗体から選択される少なくとも1種の活性成分を、薬学的に好適な担体中に含む医薬組成物に関する。
【0048】
このタイプの医薬組成物は、特に、くも膜下腔内、静脈内、皮下、経口又は非経口、経鼻及び吸入投与において用いられる。
【0049】
本発明は、更に、少なくとも1種の制御性核酸配列に動作可能に結合した、前記に定義したネオゲニン受容体結合ドメイン、又は前記に定義したポリペプチド断片のための少なくとも1種のコードされた核酸配列を含む発現ベクターに関する。
【0050】
本発明は、更に、
−前記に定義された、少なくとも1種のベクターを含む組換え微生物、
−前記に定義された、モノクローナル抗体を生産する、ハイブリドーマ細胞系、
−前記に定義された、組換え微生物を培養し、生産されたタンパク質産物を培養物から分離することを含む、前記に定義したネオゲニン受容体結合ドメイン、又は前記に定義したポリペプチド断片を生成する方法に関する。この場合、前記に定義されたハイブリドーマ細胞系を培養し、生産されたタンパク質産物を培養物から分離する。
【0051】
III.本発明の実施のための更なる情報
1.ポリペプチド
本発明は、特に、RGMファミリーのタンパク質の結合ドメイン、及びこれらのドメイン由来のペプチド断片に関する。RGM A及びその結合ドメイン及びそれ由来の断片は、本発明により特に詳細に調べられたが、本発明は、相同的なタンパク質、例えば、特にRGM B及びRGM C等のRGMファミリーの相同的なメンバーの関連ドメイン及び断片にも関する。
【0052】
具体的に開示されたRGMドメイン又はペプチドの「機能的等価物」又は類似体は、本発明の文脈において、例えば、配列番号2、4又は6に示すタンパク質のネオゲニン結合ドメインに対して100%未満の相同性の程度を有するが、所望の生物学的活性を有している、RGMドメイン又はペプチドとは異なるポリペプチドである。特に、それらは、ネオゲニン受容体と結合することができ、及び/又は本明細書に開示される神経線維増殖アッセイにおいて阻害効果を示すことができるべきであり、更に、神経繊維の増殖を統計的に有意に(p<=0.05)、部分的又は完全に阻害すべきである。
【0053】
本発明による「機能的等価物」は、特に、前記の特定の配列の配列位置の少なくとも1個において、特に言及されたアミノ酸と異なるが、本明細書において言及する1種の生物学的活性を有する変異体を意味する。従って、「機能的等価物」は、1個以上のアミノ酸の付加、置換、欠失及び/又は逆位によって得ることのできる変異体を含み、前記変化は、それらが、本発明の特性のプロフィールを有する変異体をもたらす限り、あらゆる配列位置において発生することが可能である。反応性パターンにおいて変異体及び未修飾のポリペプチドの間に定性的一致がある場合、機能的等価物が特に存在し、すなわち、例えば、同一の生物学的効果が観察されるが、発現のレベルにおいて非常に異なっている。アミノ酸残基の好適な置換の具体例は以下の通りである。
【0054】
【表1】

【0055】
また、前記の意味における「機能的等価物」は、記載されたペプチドの前駆体、及びポリペプチドの機能的誘導体及び塩である。「塩」なる用語は、本発明のタンパク質分子のカルボキシル基の塩、及びアミノ基の酸付加塩の両方を意味する。カルボキシル基の塩は、それ自体公知の方法で生成することができ、ナトリウム、カルシウム、アンモニウム、鉄及び亜鉛塩等の無機塩、及びトリエタノールアミン、アルギニン、リジン、ピペリジン等のアミン等の有機塩基との塩が含まれる。例えば、塩酸又は硫酸等の鉱酸との塩、及び酢酸及びシュウ酸等の有機酸との塩等の酸付加塩は、同様に本発明の態様である。本発明のポリペプチドの「機能的等価物」は、同様に、公知の技術を用いて、機能的アミノ酸側基、又はそのN−又はC−末端により調製することができる。これらのタイプの誘導体には、例えば、アンモニア、又は一級又は二級アミンとの反応によって得られるカルボン酸基の脂肪族エステル、カルボン酸基のアミド;アシル基との反応によって調製される遊離アミノ基のN−アシル誘導体;又はアシル基との反応によって生成される遊離ヒドロキシ基のO−アシル誘導体が含まれる。
【0056】
また、「機能的等価物」には、当然に、他の生物から得られるポリペプチド、及び天然の変異体が含まれる。例えば、相同配列の領域の範囲は、配列比較によって見出すことができ、対応する酵素は、本発明の特定の要件を基礎として確立することができる。
【0057】
「機能的等価物」は、更に、前記ポリペプチド配列又はそれに由来する機能的等価物の1種、及び機能的N−又はC−末端結合(すなわち、融合タンパク質の一部の取るに足らない相互機能障害を有する)においてそれらと機能的に異なる、少なくとも1種の更なる異種配列を有する融合タンパク質である。このような異種配列の非限定的な具体例は、例えば酵素及び免疫グロブリンである。
【0058】
また、本発明の「機能的等価物」には、具体的に開示されるタンパク質及びペプチドの相同体が含まれる。それらは、例えば、少なくとも40%、又は少なくとも50%、又は少なくとも60%、例えば、少なくとも75%、又は特に少なくとも85%、例えば、90%、95%又は99%の、例えば、Pearson and Lipman,Proc.Natl.Acad.,Sci.(USA)85(8),1988,2444−2448のアルゴリズムによって計算される、具体的に開示される配列の1種に対する相同性を有する。本発明の相同ポリペプチドの相同性の割合は、特に、本明細書に具体的に開示されるアミノ酸配列の1種の完全長に基づく、アミノ酸残基の同一性の割合を意味する。
【0059】
本発明の「由来する」アミノ酸配列は、特に示さない限り、最初の配列と、少なくとも80%、又は少なくとも90%、特には91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%及び99%の同一性を有する配列を意味する。
【0060】
2個の配列の間の「同一性」は、各ケースにおいて配列の完全長にわたるアミノ酸残基の同一性、例えば、クラスタル法(Higgins DG,Sharp PM.Fast and sensitive multiple sequence alignments on a microcomputer.Comput Appl.Biosci.1989 Apr;5(2):151−1)を用いたInformax(米国)社製のVector NTI Suite 7.1ソフトウェアを用いた比較により計算した同一性を意味し、下記のパラメータ:
複数の配列パラメータ
ギャップオープニングペナルティ 10
ギャップエクステンションペナルティ 10
ギャップセパレーションペナルティ 範囲8
ギャップセパレーションペナルティ 切
アラインメントディレイについての同一性の割合 40
残基特異的ギャップ 切
親水性残基ギャップ 切
遷移計量 0
ペアワイズ配列パラメータ:
FASTアルゴリズム 入
K−チュプルサイズ 1
ギャップペナルティ 3
ウィンドウサイズ 5
最良のダイアゴナルの数 5
を設定する。
【0061】
本発明に含まれる相同体の更なる説明のために、本発明の特に興味深い、完全長タンパク質及び特定の部分配列領域についてのRGM B及びCとRGM Aとの一致の割合を示す以下の表を参照する。
【0062】
【表2】

【0063】
1)RGM A配列(配列番号2)に基づく位置を示すアミノ酸残基
2)%で表す、全長タンパク質及びペプチド断片のアミノ酸の同一性
3)方法:BLAST 2 SEQUENCES VERSION BLASTP 2.2.5 [2002年11月16日]
マトリックス:Blosum62(ギャップオープン:11ギャップエクステンション:1)
【0064】
タンパク質のグリコシル化が可能である場合、本発明の等価物には、グリコシル化パターンを変えることにより得られる、脱グリコシル化又はグリコシル化された形態、及び修飾形態における前記に示すタイプのタンパク質が含まれる。
【0065】
本発明のペプチドの相同体は、例えば、切断変異体等の変異体のコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることによって同定することができる。例えば、合成オリゴヌクレオチドの混合物の酵素連結により、核酸のレベルでコンビナトリアル変異誘発によるペプチド変異体の多様なライブラリーを生成することが可能である。退化したオリゴヌクレオチド配列由来の潜在的な相同体のライブラリーを生成することのできる、多数の方法がある。退化した遺伝子配列の化学的合成は、自動DNAシンセサイザーにより実施することができ、次いで、合成遺伝子は、適当な発現ベクターに連結することができる。退化した遺伝子のセットの使用は、1種の混合物における潜在的なタンパク質配列の所望のセットをコードする全ての配列を供給することを可能にする。退化したオリゴヌクレオチドを合成するための方法は当業者に公知である(Narang,S.A.(1983)Tetrahedron 39:3;Itakura et al.(1984)Annu.Rev.Biochem.53:323;Itakura et al.,(1984)Science 198:1056;Ike et al.(1983)Nucleic Acids Res.11:477)。
【0066】
2.核酸
本発明は、更に、RGM結合ドメイン及び前記ポリペプチドをコードする核酸配列、特に、配列番号1、3及び5、及びそれらに由来する核酸配列又は部分的配列に示す配列に関する。
【0067】
本発明の全ての核酸配列(一本鎖及び二重鎖DNA及びRNA配列、例えば、cDNA及びmRNA)は、二重らせんの個々に重複する、相補的な核酸単位のフラグメント縮合によってヌクレオチド単位から化学的合成によってそれ自体公知の方法で生成することができる。オリゴヌクレオチドの化学的合成は、例えばホスホアミダイト法(Voet,Voet,2nd edition,Wiley Press New York,pages896−897)により公知の方法で実施することができる。合成的オリゴヌクレオチドの追加、及びDNAポリメラーゼのクレノウ断片及び連結反応を用いた、ギャップ内の補充、及び一般的クローニング法は、Sambrook et al.(1989),Molecular Cloning:A laboratory manual,Cold Spring Harbor Laboratory Pressに開示されている。
【0068】
本発明による「由来する」核酸配列は、特に示さない限り、もとの配列と、少なくとも80%、又は少なくとも90%、特に91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%及び99%の同一性を有する配列を意味する。
【0069】
2個の核酸間の「同一性」は、各ケースにおける核酸の全長にわたる核酸の同一性、特に、クラスタル法(前述)を用いたInformax(米国)社製のVector NTI Suite 7.1ソフトウェアを用いた比較により得られる同一性を意味する。
【0070】
また、本発明は、例えば、人工ヌクレオチド類似体を用いて得ることのできる、前記ペプチドの1種及びその機能的等価物をコードする核酸配列に関する。
【0071】
本発明は、本発明のペプチド又はその生物学的に活性な断片をコードする分離された核酸分子、及びハイブリダイゼーションプローブ、又は本発明のコードされた核酸を同定又は増幅するためのプライマーとして用いることのできる核酸断片の両方に関する。
【0072】
本発明の核酸分子は、更に遺伝子のコーディング領域の3’及び/又は5’末端からの非翻訳配列を含む。
【0073】
「分離された」核酸分子は、核酸の天然源に存在する他の核酸分子から分離され、更に、組換え技術によって生成される場合、他の細胞物質又は培地を実質的に含まず、又は化学的に合成される場合、化学的前駆体又は他の化学物質を含まない。
【0074】
本発明の核酸分子は、分子生物学の標準的技術、及び本発明により提供される配列情報を用いて好適なcDNAライブラリーから分離することができる。例えば、cDNAはハイブリダイゼーションプローブとして具体的に開示された完全な配列又はその断片を用い、標準的ハイブリダイゼーション技術を用いて分離することができる(例えば、Sambrook,J.,Fritsch,E.F.and Maniatis,T.Molecular Cloning:A Laboratory Manual.2.2nd edition,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,1989に開示されているように)。更に、この配列に基づいて構築されたオリゴヌクレオチドプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応により、本発明の配列又はその断片を含む核酸分子を分離することが可能である。この方法で増幅された核酸を適当なベクターにクローニングし、DNA配列解析により特徴づけすることができる。また、本発明のオリゴヌクレオチドは、標準合成方法により、例えば、自動DNAシンセサイザーを用いて生成することができる。
【0075】
本発明は、更に、具体的に開示されたヌクレオチド配列又はその断片に相補的な核酸分子を含む。
【0076】
本発明のヌクレオチド配列は、他のタイプの細胞及び生物において、相同配列を同定及び/又はクローニングするために用いることのできるプローブ及びプライマーを生産することを可能にする。このようなプローブ及びプライマーは、通常、厳しい条件下で、本発明の核酸配列のセンス鎖又は対応するアンチセンス鎖の少なくとも約12個、好ましくは少なくとも約25個、例えば、約40、50又は75個の連続したヌクレオチドとハイブリダイズするヌクレオチド配列領域を含む。
【0077】
本発明の更なる核酸配列は、本発明のRGMドメイン及びペプチドをコード配列に由来し、1個以上のヌクレオチドの付加、置換、挿入又は欠失により、それらとは異なるが、所望の特性プロフィールを有するペプチドをコードする。
【0078】
また、本発明は、いわゆるサイレント変異を含む核酸配列を含み、特定のオリジナル、又は具体的に言及された配列と比較した宿主生物、並びに天然の変異体、例えばスプライス変異又はその対立遺伝子多型のコドン使用頻度に従って修飾される。保存的ヌクレオチド置換により得られる配列(すなわち、関連するアミノ酸が、同じ電荷、サイズ、極性及び/又は溶解性のアミノ酸によって置換されている)は、同様に本発明の態様である。
【0079】
また、本発明は、配列多型を介する、具体的に開示される核酸に由来の分子に関する。これらの遺伝的多型は、集団における個体の間の自然変異のために存在する。これらの自然変異は、通常、遺伝子のヌクレオチド配列において1〜5%の変異をもたらす。
【0080】
また、本発明は、更に、前記コード配列とハイブリダイズするか、それに相補的である核酸配列を含む。これらのポリヌクレオチドは、ゲノム又はcDNAライブラリーをスクリーニングすることにより見出すことができ、適当なものが、好適なプライマーを用いたPCRを用いてそれらから増幅される場合、それに続いて、例えば好適なプローブが分離される。更なる可能性は、微生物、それによりポリヌクレオチドを増加させ、それに続いてポリヌクレオチドを分離するために、本発明のポリヌクレオチド又はベクターを用いた好適な微生物の形質転換である。更なる可能性は、化学的経路による本発明のポリヌクレオチドの合成である。
【0081】
ポリヌクレオチドに「ハイブリダイズ」することのできる特性は、厳しい条件下で、ほとんど相補的な配列に結合するポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドの能力を意味するが、これらの条件下で、非相補的パートナーとの間の非特異的結合がある。この目的のため、配列は、70〜100%、特に90〜100%、例えば、95%、96%、97%、98%又は99%相補的であるべきである。相互に特異的に結合することのできる相補的配列の特性は、例えば、ノーザン又はサザーンブロッティング法において、又はPCR又はRT−PCRにおけるプライマー結合において用いられる。この目的のために、30塩基対又はそれ以上の長さを有するオリゴヌクレオチドが通常に用いられる。厳しい条件は、例えば、ノーザンブロッティング法においては、非特異的にハイブリダイズしたcDNAプローブ又はオリゴヌクレオチドを溶出するための50〜70℃、好ましくは60〜65℃における、例えば、0.1%SDSを含む0.1×SSCバッファー(20×SSC:3M NaCl、0.3Mクエン酸ナトリウム,pH7.0)等の洗浄溶液の使用を意味する。前述したように、この場合においては、相補性の程度の高い核酸のみがお互いに結合したままである。厳しい条件のセットアップは当業者に公知であり、例えば、Ausbel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,N.Y.(1989),6.3.1−6.3.6に開示されている。
【0082】
本発明の更なる態様はアンチセンス核酸に関する。これは、コードセンス核酸に相補的であるヌクレオチド配列を含む。アンチセンス核酸は、完全なコード鎖又はその一部とのみ相補的である。更なる実施態様においては、アンチセンス核酸分子は、ヌクレオチド配列のコード鎖の非コーディング領域に対してアンチセンスである。「非コーディング領域」なる用語は、5’−及び3’−非翻訳領域として言及される配列部分に関する。
【0083】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えば、約5、10、15、20、25、30、35、40、45又は50ヌクレオチド長であってもよい。本発明のアンチセンス核酸は、当該技術分野において公知の方法を用いて、化学的合成及び酵素連結反応により構築することができる。アンチセンス核酸は、それらが分子の生物学的安定性を向上し、又はアンチセンス及びセンス核酸の間に形成される二重鎖の物理的安定性を向上するように、天然のヌクレオチド、又は構築された多様に修飾されたヌクレオチドを用いて化学的に合成することができる。用いることのできる具体例は、ホスホロチオエート誘導体及びアクリジン−置換ヌクレオチドである。アンチセンス核酸を生成するために用いることのできる修飾ヌクレオチドの具体例は、特に、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β−D−ガラクトシルケオシン、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノエチル−2−チオウラシル、β−D−マンノシルケオシン、5’−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸(V)、ワイブトキソシン、シュードウラシル、ケオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、メチルウラシル−5−オキシアセテート、ウラシル−5−オキシ酢酸(V)、5−メチル−2−チオウラシル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)−ウラシル、(acp3)w及び2,6−ジアミノプリンである。また、アンチセンス核酸は、核酸がアンチセンス方向にサブクローニングされた発現ベクターを用いることにより、生物学的に生成することもできる。
【0084】
3.発現構築物及びベクター
更に、本発明は、調節性核酸配列の遺伝的制御下に本発明のRGMタンパク質又は機能的等価物又は免疫グロブリンをコードする核酸配列を含む発現構築物、及びこれらの発現構築物を少なくとも1種含むベクターに関する。
【0085】
このような本発明の構築物は、好ましくは、特定のコード配列からの5’−上流のプロモーター、及び3’−下流のターミネーター配列を、必要であれば、特に、コード配列にそれぞれ動作可能に結合した他の通常の調節要素を含む。「動作可能な結合」は、各調節要素が、コード配列の発現を意図するような機能に適合し得るような方法で結合した、プロモーター、コード配列、ターミネーター、必要であれば他の調節要素の連鎖配列を意味する。動作可能に結合することのできる配列の具体例は、標的配列及びエンハンサー、ポリアデニル化シグナル等である。他の調節要素には、選択可能マーカー、増幅シグナル、複製起点等が含まれる。好適な調節配列は、例えば、Goeddel,Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185,Academic Press,San Diego,CA(1990)に開示されている。
【0086】
人工的調節配列に加え、実際の構造遺伝子の前に天然の調節配列を存在させることが可能である。必要であれば、この天然調節は遺伝的修飾によってスイッチを切ることができ、遺伝子の発現は増加又は減少し得る。しかし、遺伝子構築物は、また、より簡単な構造を有している。すなわち、構造遺伝子の前に、追加の調節シグナルは挿入されず、調節される天然のプロモーターは除去されない。その代わり、もはや調節されず、遺伝子発現が向上又は減少するように、天然の調節配列が変異する。核酸配列は、遺伝子構築物内で1個以上のコピーで存在し得る。
【0087】
用いることのできるプロモーターの具体例は:グラム陰性菌において用いるのに好都合なcos、tac、trp、tet、trp−tet、lpp、lac、Ipp−lac、lacIq、T7、T5、T3、gal、trc、ara、SP6、λ−PR又はλ−PLプロモーター;グラム陽性菌プロモーターamy及びSPO2、酵母プロモーターADC1、MFα 、AC、P−60、CYC1、GAPDH、又は植物プロモーターCaMV/35S、SSU、OCS、Iib4、usp、STLS1、B33、not又はユビキチン又はファセオリンプロモーターである。誘導性プロモーター、例えば、光、及び特に、Pプロモーター等の温度誘導性プロモーターの使用は特に好ましい。原則として、調節配列を有する全ての天然プロモーターを用いることが可能である。更に、合成プロモーターを用いることも有利である。
【0088】
前記調節配列は、核酸配列の特定の発現及びタンパク質発現が可能になることを意図する。これは、例えば、宿主生物に依存して、遺伝子が誘導後にのみ発現又は過剰発現するか、直ちに発現及び/又は過剰発現することを意味する。
【0089】
更に、調節配列又は因子は、好ましくはプラスに影響し、それによって発現を増加又は減少する。従って、調節要素の増強は、プロモーター及び/又はエンハンサー等の強力な転写シグナルを用いることにより、転写レベルで有利に実施することができる。しかし、例えば、mRNAの安定性を向上することにより、転写を増強することも可能である。
【0090】
好適なプロモーターを好適なコードヌクレオチド配列、及びターミネーターシグナル又はポリアデニル化シグナルに融合することにより、発現カセットを生成する。例えば、T.Maniatis,E.F.Fritsch and J.Sambrook,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor, NY(1989)、及びT.J.Silhavy,M.L.Berman and L.W.Enquist,Experiments with Gene Fusions,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY(1984)、及びAusubel,F.M.et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Assoc.and Wiley Interscience(1987)に開示されたような、組換え及びクローニングの従来技術がこの目的に用いられる。
【0091】
好適な宿主生物における発現のため、組換え核酸構築物又は遺伝子構築物が、宿主における遺伝子の最適な発現を可能にする宿主特異的ベクター内に有利に挿入される。ベクターは当業者に周知であり、例えば、"Cloning Vectors"(Pouwels P.H.et al.,eds,Elsevier,Amsterdam−New York−Oxford,1985)に見出すことができる。また、ベクターは、プラスミドのみならず、当業者に公知の他の全てのベクター、例えば、ファージ、SV40、CMV、バキュロウイルス及びアデノウイルス等のウイルス、トランスポゾン、IS要素、ファスミド、コスミド、及び直鎖又は環状DNAを意味する。これらのベクターは、宿主生物における自発的複製又は染色体複製を受ける。
【0092】
言及される好適な発現ベクターは、それぞれ、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)、マルトースE−結合タンパク質及びプロテインAを標的組換えタンパク質に融合させる、pGEX(Pharmacia Biotech Inc;Smith,D.B.and Johnson,K.S.(1988)Gene 67:31−40)、pMAL(New England Biolabs,Beverly,MA)及びpRIT5(Pharmacia,Piscataway,NJ)等の従来の融合発現ベクター、
pTrc(Amann et al.,(1988)Gene 69:301−315)及びpET 11d(Studier et al.Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185,Academic Press,San Diego,California(1990) 60−89)等の非融合タンパク質発現ベクター、
pYepSec1(Baldari et al.,(1987) Embo J.6:229−234),pMFa(Kurjan and Herskowitz(1982)Cell 30:933−943),pJRY88(Schultz et al.(1987)Gene 54:113−123) 及びpYES2(Invitrogen Corporation, San Diego,CA)等の酵母S.cerevisiaeにおける発現のための酵母発現ベクターである。糸状菌等の他の真菌において用いるのに好適なベクター及びベクターを構築する方法は、van den Hondel,C.A.M.J.J.& Punt,PJ.(1991)"Gene transfer Systems and vector development for filamentous fungi, in: Applied Molecular Genetics of Fungi,J.F.Peberdy et al.,eds,pp.1−28,Cambridge University Press:Cambridgeに詳細に開示されている。
【0093】
培養した昆虫細胞(例えばsf9細胞)内でのタンパク質の発現を可能にするバキュロウィルスベクターには、pAc系(Smith et al.,(1983)Mol.Cell Biol.3:2156−2165)及びpVL系(Lucklow and Summers(1989)Virology 170:31−39)、
Becker,D.,Kemper,E.,Schell,J.and Masterson,R.(1992)"New plant binary vectors with selectable markers located proximal to the left border",Plant Mol.Biol.20:1195−1197;及びBevan,M.W.(1984)"Binary Agrobacterium vectors for plant transformation",Nucl.Acids Res.12:8711−8721)に詳細に開示されたような植物発現ベクター、
pCDM8(Seed,B.(1987)Nature 329:840)及びpMT2PC(Kaufman et al.(1987)EMBO J.6:187−195)等のほ乳類発現ベクターが含まれる。
【0094】
原核及び真核細胞についての更なる好適な発現系は、Sambrook,J.,Fritsch,E.F. and Maniatis,T.,Molecular cloning:A Laboratory Manual,2nd edition,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,1989の第16及び17章に開示されている。
【0095】
4.組換え宿主生物
本発明のベクターは、例えば、本発明の少なくとも1種のベクターを用いて形質転換される組換え生物を生産するために用いることができ、本発明のドメイン又はポリペプチドを生産するために用いることができる。前述した本発明の組換え構築物は、好適な宿主系に有利に導入され発現する。当業者によく知られているクローニング及びトランスフェクション法、例えば、共沈、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、レトロウイルストランスフェクション等は、特定の発現系における前記核酸の発現を誘発するために好ましく用いられる。好適な系は、例えば、Current Protocols in Molecular Biology,F.Ausubel et al.,eds,Wiley Interscience,New York 1997,又はSambrook et al.Molecular Cloning:A Laboratory Manual.2nd edition,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989に開示されている。
【0096】
原則として、好適な宿主生物は、本発明の核酸、その対立遺伝子多型、その機能的等価物又は誘導体を発現することのできる全ての生物である。宿主細胞は、例えば、細菌、真菌、酵母、植物又は動物細胞を意味する。好ましい生物は、例えば、大腸菌、放線菌、バシラス属又はシュードモナス属等のエシェリキア属、サッカロミセス・セレビシエ、アスペルギルス属等の真核微生物等の細菌、Sf9、CHO又はHEK293細胞等の、動物又は植物由来の高等真核細胞である。
【0097】
首尾よく形質転換された生物は、ベクター又は発現カセット内に同様に存在するマーカー遺伝子によって選択することができる。このようなマーカー遺伝子の具体例は、抗生物質耐性についての遺伝子、及び形質転換細胞の染色を生じる発色反応を触媒する酵素である。次いで、それらは自動細胞選別によって選択される。好適な抗生物質耐性遺伝子(例えば、G418又はハイグロマイシン)を有するベクターで首尾よく形質転換された微生物は、好適な抗生物質を含有する培地又は培養液により選択することができる。細胞表面に存在するマーカータンパク質は、アフィニティークロマトグラフィーを用いた選択に用いることができる。
【0098】
所望であれば、遺伝子産物を、例えば、特に、マウス、ヒツジ等の遺伝子導入動物、又は遺伝子導入植物等の遺伝子導入生物中で発現することができる。
【0099】
本発明は、更に、ペプチド産生組換え宿主生物を培養し、必要であればポリペプチドの発現を誘導し、ポリペプチドを培養物から分離することを含む、本発明のRGMドメイン又はポリペプチド、又はその機能的、生物学的活性断片の組換え生産方法に関する。所望であれば、ペプチドは、この方法により工業的スケールで生成することもできる。
【0100】
組換え宿主は、公知の方法で培養し発酵させることができる。細菌は、例えば、20〜40℃の温度及び6〜9のpHで、TB又はLB培地中で増殖することができる。好適な培養条件の詳細は、例えば、T.Maniatis,E.F.Fritsch and J.Sambrook,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY(1989)に開示されている。
【0101】
ポリペプチドが培地中に分泌されない場合、細胞を破壊し、公知のタンパク質分離方法により溶解物から生成物を得る。また、細胞は、例えば、フレンチプレッシャーセル等の高圧による高周波数超音波により浸透圧溶解により、界面活性剤、溶解酵素又は有機溶媒の作用により、ホモジナイザーにより、又は前記方法の複数の組み合わせにより破壊してもよい。
【0102】
ペプチドは、Q−セファロースクロマトグラフィー等の分子ふるいクロマトグラフィー(ゲルろ過)、イオン交換クロマトグラフィー、及び疎水性クロマトグラフィー等の公知のクロマトグラフィー法、超遠心、結晶化、塩析、透析及び天然ゲル電気泳動等の他の通常の方法によって精製することができる。好適な方法は、例えば、Cooper,T.G.,Biochemische Arbeitsmethoden,Verlag Walter de Gruyter,Berlin,New York 又はScopes,R.,Protein Purification,Springer Verlag,New York,Heidelberg,Berlinに開示されている。
【0103】
組換えペプチドの分離のために、例えば、より簡単な精製もたらす、特定のヌクレオチド配列によりcDNAを伸長し、それによって修飾ポリペプチド又は融合タンパク質をコードする、ベクター系又はオリゴヌクレオチドを用いることが特に有利である。このタイプの好適な修飾は、例えば、ヘキサ−ヒスチジンアンカーとして知られる修飾、又は抗体により抗原として認識され得るエピトープ等のアンカーとして作用する、いわゆるタグである(例えば、Harlow,E.and Lane,D.,1988,Antibodies:A Laboratory Manual.Cold Spring Harbor(N.Y.)Pressに開示されている)。これらのアンカーは、ペプチドを、例えば、クロマトグラフィーカラム中に充填することのできるポリマーマトリクス等の固相担体に付着するために用いることができ、また、マイクロタイタープレート又は他の担体上で用いることができる。
【0104】
これらのアンカーは、同時にペプチドの認識のために用いることもできる。それは、単独で、又はペプチドを誘導体化するためのアンカーと組み合わせて、蛍光色素等の従来のペプチドマーカー、基質との反応後に検出可能な反応生成物を形成する酵素マーカー、又は放射標識の認識のために用いることも可能である。
【0105】
5.免疫グロブリン
5.1定義
本発明は、本発明のRGMタンパク質又はその誘導体/等価物と特異的に結合するモノクローナル又はポリクローナル抗体、すなわち、本発明のRGMタンパク質又はその誘導体/等価物に対して特異性を有する抗体に関する。また、本発明は、これらの抗体の一部、特にその抗原結合部位、すなわち、本発明のRGMタンパク質又はその誘導体/等価物と結合する抗体断片に関する。
【0106】
本発明の抗体は、好ましくは、本発明のRGMタンパク質又はその誘導体/等価物に対して特異的に結合するために、特定の結合キネティクス(例えば、高親和性、低解離、低い速度(koff)、強い中和活性)を有するように選択される。
【0107】
従って、本発明のRGMタンパク質又はその誘導体/等価物に対し、K=10−6〜10−12Mの親和力を有する抗体が提供され得る。
【0108】
更なる態様によれば、本発明の抗体は、0.1s−1以下のKoffでRGMタンパク質又はその誘導体/等価物に結合するように選択することができる。
【0109】
抗体は好ましくは分離された抗体である。更なる態様によれば、抗体は中和抗体である。本発明の抗体には、特にモノクローナル及び組換え抗体が含まれる。本発明の抗体は、完全に単一の種に由来し、それ故、例えばヒト抗体又はマウス抗体であってもよい、アミノ酸配列を含んでもよい。更なる実施態様によれば、抗体は、キメラ抗体又はCDRグラフト抗体又は他のタイプのヒト化抗体であってもよい。
【0110】
「抗体」なる用語は、4本のポリペプチド鎖、すなわち2本の重(H)鎖及び2本の軽(L)鎖から形成される免疫グロブリン分子であることを意味すると意図される。鎖は、通常、ジスルフィド結合によって結合している。各重鎖は、重鎖の可変領域(本明細書においてHCVR又はVHと省略される)、及び重鎖の定常領域からなる。重鎖の定常領域は、3個のドメイン、CH1、CH2及びCH3からなる。各軽鎖は、軽鎖の可変領域(本明細書においてLCVR又はVLと省略される)、及び軽鎖の定常領域からなる。軽鎖の定常領域は、CLドメインからなる。VH及びVL領域は、更に、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域に分割され、フレームワーク領域と呼ばれる更に保存領域(FR)により分散されている。各VH及びVL領域は、3個のCDRs及び4個のFRsから形成され、N末端からC末端に、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順序で配置している。
【0111】
抗体の「抗原結合部位」(又は、単に抗体部位)なる用語は、本発明のRGMタンパク質又はその誘導体/等価物についての特異性を有し、断片が、RGMタンパク質又はその誘導体/等価物に特異的に結合する能力を有し続けている1以上の抗体の断片を意味する。抗体の抗原結合機能が、完全な抗体の断片によって保証され得ることが示される。抗体の「抗原結合部位」なる用語の意味に含まれる結合断片の具体例は、(i)Fab断片、すなわち、VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる一価の断片;(ii)F(ab’)断片、すなわち、ヒンジ領域におけるジスルフィド架橋により結合する2個のFab断片を含む二価の断片;(iii)VH及びCH1ドメインを含むFd断片;(iv)抗体の単一アームのVL及びVHドメインを含むFv断片;(v)VHドメイン又はVH、CH1、CH1、DH3又はVH、CH2、CH3を含むdAb断片(Ward et al.,(1989)Nature 341:544−546);(vi)分離された相補性決定領域(CDR)である。Fv断片の2個のドメイン、すなわちVL及びVHは別個の遺伝子によってコードされ、それらは、更に組換え法の使用により合成リンカーによって一緒に連結することができるが、VL及びVH領域が一価の分子を形成するために一緒に存在する場合に、単一のタンパク質鎖として産生され得る(単一鎖FV(ScFv)として知られる。例えば、Bird et al.(1988)Science 242:423−426;及びHuston et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883を参照されたい。)。また、このような単一鎖抗体は、抗体の「抗原結合部位」なる用語によって包含されることが意図される。ダイアボディ等の、他のタイプの単一鎖抗体は、同様にその中に属する。ダイアボディは、VH及びVLドメインが単一ポリペプチド鎖上に発現し(同じ鎖上の2個のドメイン間に一緒に存在するには短すぎるリンカーを用いる)、それにより、これらのドメインの他の鎖の相補性ドメインと対を形成する、2抗原部位を形成する2価の二重特異性抗体である(例えば、Holliger,P.,et al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444−6448; Poljak,R.J.,et al.(1994)Structure :1121−1123を参照されたい)。
【0112】
更なる可能性は、抗体又は抗体の一部の共有又は非共有結合により形成される、大きな免疫付着分子の一部である、1つ以上のさらなるタンパク質又はペプチドに対する抗体又はその抗原結合部位についてである。このような免疫付着分子は、4量体scFv分子を産生するために、ストレプトアビジンコア領域の使用を必要とし(Kipriyanov,S.M.,et al.(1995)Human Antibodies and Hybridomas 6:93−101)、二価及びビオチニル化scFv分子を生成するために、マーカーペプチド及びC−末端のポリヒスチジンタグのシステイン残基の使用を必要とする(Kipriyanov,S.M,et al.(1994)Mol.Immunol.13:1047−1058)。
【0113】
Fab及びF(ab’)断片等の抗体部分は、例えば、パパイン又はペプシンを用いた消化等の通常従来の技術を用いて、全体の抗体から生成することができる。更に、標準化された組換えDNA技術を用いることにより、抗体、抗体部分及び免疫付着分子を得ることが可能である。「本発明のRGMタンパク質又はその誘導体/等価物に対する特異性を有する、分離された抗体」は、本発明のRGMタンパク質又はその誘導体/等価物に対する特異性を有し、異なる抗原特異性を有する他の抗体に対して実質的にフリーである考抗体を表す。
【0114】
「中和抗体」なる用語は、特定の抗原に対するその結合が、抗原の生物学的活性の阻害をもたらす抗体を表す。この、抗原の生物学的活性の阻害は、好適なin vitro又はin vivoアッセイを用いて、抗原の生物学的活性の1以上の指標を測定することにより評価することができる。
【0115】
「モノクローナル抗体」なる用語は、ハイブリドーマに由来する抗体(例えば、ケーラー及びミルスタインの標準化されたハイブリドーマ法等のハイブリドーマ技術を用いて生成されるハイブリドーマにより分泌される抗体)を表す。従って、ハイブリドーマに由来し、本発明のRGMタンパク質又はその誘導体/等価物に対する特異性を有する抗体はモノクローナル抗体と呼ばれる。
【0116】
「組換え型抗体」なる用語は、組換え手段によって生成、発現、生成又は分離される抗体、例えば、宿主細胞にトランスフェクトされた組換え発現ベクターの使用により発現する抗体;組換えコンビナトリアル抗体ライブラリーから分離される抗体;ヒト免疫グロブリン遺伝子のために遺伝子導入された動物(例えば、マウス)から分離される抗体(例えば、Taylor,L.D.,et al.(1992)Nucl.Acids Res.20:6287−6295を参照されたい);又は特定の免疫グロブリン遺伝子配列(ヒト免疫グロブリン遺伝子配列等)を他のDNA配列と結合される、あらゆる他の方法において生成、発現、生成又は分離される抗体を表す。組換え抗体には、例えば、キメラ、CDRグラフト及びヒト化抗体が含まれる。
【0117】
「ヒト抗体」なる用語は、その可変及び定量領域が、ヒト生殖系列の免疫グロブリン配列に対応するか(Kabat,et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health und Human Services,NIH Publication No.91−3242を参照されたい)、又はそれに由来する抗体を表す。しかし、本発明のヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列(例えば、in vitroにおけるランダム又は部位特異的変異誘発、又はin vivoにおける体細胞変異により導入される変異)、例えば、CDR及び特にCDR3によりコードされないアミノ酸残基を含んでもよい。本発明の組換えヒト抗体は可変領域を有し、ヒト生殖系列の免疫グロブリン配列に由来の定常領域を含んでもよい(Kabat,E.A.,et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health und Human Services,NIH Publication No.91−3242を参照されたい)。しかし、特定の実施態様によれば、ヒト生殖系列配列のVH及びVL配列に関連するか、それらに由来する、組換え型抗体のVH及びVL領域のアミノ酸配列が、in vivoにおけるヒト抗体生殖系列レパートリー内に自然に存在しない配列であるように、このような組換えヒト抗体は、in vitroにおける変異誘発を受ける(又はヒトIg配列のために遺伝子導入される動物が用いられる場合、体細胞)。特定の実施態様によれば、このような組換え型抗体は、選択的変異誘発又は復帰突然変異又はその両方の結果である。
【0118】
「復帰突然変異」なる用語は、ヒト抗体の体細胞変異したアミノ酸のいくつか又は全てが、相同的な生殖系列抗体配列の対応する生殖系列残基に置換される方法を意味する。本発明のヒト抗体の重鎖及び軽鎖の配列を、最大の相同性を有する配列を同定するために、VBASEデータベースにおける生殖系列配列を、それぞれ別個に比較する。本発明のヒト抗体における逸脱は、このような逸脱したアミノ酸をコードする定義されたヌクレオチド位置における変異によって生殖系列配列に戻る。抗体結合についての復帰突然変異のための候補としてのこのように同定される、それぞれのアミノ酸の直接的又は間接的重要性を調査し、変異後に、ヒト抗体の所望の特性を害するアミノ酸は、最終のヒト抗体に含まれなかった。復帰突然変異のためのアミノ酸の数を最小化するために、第二の生殖系列配列が同一であり、本発明のヒト抗体の配列と、問題となるアミノ酸の両方の側で、少なくとも10個、好ましくは12個のアミノ酸と共直線化されるという条件で、最も近い生殖系列配列から逸脱するが、第二の生殖系列配列の対応するアミノ酸と同一である未変化のアミノ酸位置を残すことが可能である。復帰突然変異は、抗体最適化におけるあらゆる段階において実施することができる。
【0119】
「キメラ抗体」なる用語には、分子の個別の部分が異なる種に由来する抗体が含まれる。従って、キメラ抗体は、それに限定されないが、例えば、1つの種由来の重鎖及び軽鎖の可変領域配列を含むが、VH及び/又はVL由来のCDR領域の1個以上の配列が他の種のCDR配列に置換されている抗体である。このような抗体における可変領域は、マウスの重鎖及び軽鎖を有し、マウスCDRs(例えば、CDR3)の1個以上がヒトCDR配列に置換されていてもよい。
【0120】
「ヒト化抗体」なる用語は、非ヒト(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ニワトリ、ラクダ、ヤギ)由来の重鎖及び軽鎖の可変領域配列を含むが、VH及び/又はVL配列の少なくとも一部が、「よりヒト様」になるように修飾されている、すなわち、ヒト生殖系列の可変領域のような抗体を表す。ヒト化抗体の1つのタイプは、対応する非ヒトCDR配列を置換するために、ヒトCDR配列が非ヒトVH及びVL配列中に挿入されているCDRグラフト抗体である。
【0121】
抗体の結合反応キネティクスを測定するための方法は、いわゆる表面プラズモン共鳴に基づく。「表面プラズモン共鳴」なる用語は、例えばBIAコアシステムを用いて、バイオセンサマトリックスを用いたタンパク質濃度における変化を検出することによる生物特異的相互作用を解析することを可能にする光学現象を意味する(Pharmacia Biosensor AB,Uppsala,Sweden and Piscataway,NJ)。更なる開示については、例えば、Joensson,U.et al.(1993)Ann.Biol.Clin.51:19−26;Joensson,U.et al.(1991)Biotechniques 11:620−627;Johnsson,B.,et al.(1995)J.Mol.Recognit.:125−131;及びJohnnson,B.,et al.(1991)Anal.Biochem.198:268−277)を参照されたい。
【0122】
「Koff」なる用語は、抗体/抗原複合体由来の抗体の解離についての解離速度定数(オフレート定数)を表す。
【0123】
「K」なる用語は、特定の抗体−抗原相互作用の解離定数を表す。
【0124】
本発明の抗体の結合親和性は、ELISA又はBIAコア解析等の、標準化されたin vitro免疫アッセイを用いることにより評価することができる。
【0125】
5.2 免疫グロブリンの生産
5.2.1 ポリクローナル抗体の生産
本発明は、本発明のRGM及びポリペプチドに対するポリクローナル抗体、及びその生成に関する。
【0126】
この目的のため、少なくとも1種の本発明のRGMタンパク質又はその誘導体/等価物を宿主に免疫し、免疫に対する応答において形成された宿主の抗体含有血清を得る。
【0127】
用いられるRGMポリペプチドが弱い免疫原性のみを有するか、免疫原性を有しない場合、それらの免疫原性は、担体、好ましくは、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、リムラス・ポリフェムスヘモシアニン(LPH)、ウシ血清アルブミン(BSA)又はオブアルブミン(OVA)等の担体タンパク質とカップリングすることによって向上させることができる。多くのカップリングの可能性は当業者に利用可能であり、一般に公知である。目的にかなった可能性は、例えば、グルタルアルデヒドとの反応、例えば、水又は水性溶媒中におけるRGMタンパク質と、好適なペプチド又はペプチド混合物とのインキュベーションによる反応である。この反応は、便利に大気温度(通常は室温を意味する)で実施することができる。しかし、冷却又は穏やかな加熱も好都合である。反応は、通常は数時間以内に所望の結果をもたらし、例えば、2時間の反応時間は標準的な範囲である。グルタルアルデヒド濃度は、通常はppm〜%の範囲であり、好都合には10ppm〜1%、好ましくは100ppm〜0.5%である。反応パラメータの最適化は当業者の範囲内である。
【0128】
抗原に加え、組成物は、通常は、更に賦形剤、特に免疫化に通常に用いられるアジュバント、例えば、フロイントのアジュバントを含む。特に、最初の免疫のためにフロイントの完全アジュバントが用いられるが、全ての更なる免疫は、フロイントの不完全アジュバントを用いて実施される。免疫カクテルは、賦形剤に抗原(免疫原)を、好ましくは前述した成分混合物として加えることにより生成される。この場合、抗原は、通常、乳化される。
【0129】
宿主として適しているものは、特にげっし動物又はウサギである。これらの、又は他の好適な宿主は、免疫カクテルを、好ましくは皮下注射により注入される。抗体力価は免疫アッセイを用いて、例えば、宿主IgGに対するヒツジ抗血清及び標識されたRGMタンパク質を用いて競合的に測定することができる。従って、免疫の終わりに向かって、特定の宿主が抗体を得るのに適しているかどうかを、決定することが可能である。例えば、4回の免疫が実施される場合、3回の免疫後に抗体力価を測定し、十分な抗体力価を示す動物から抗体を得ることができる。
【0130】
形成された抗体を得るために、数週間又は数ヶ月にわたり、宿主から血液を得ることが好ましい。最終的に宿主を全採血することが可能である。所望の抗体を含む血清を、このように得られた血液から、それ自体公知の方法で得ることができる。その中に存在する抗体画分、特にRGMタンパク質認識抗体を濃縮するために、必要であれば、この方法により得られた全血清を、当業者に公知の方法で更に精製することができる。
【0131】
本発明の特定の実施態様においては、免疫原として用いられるRGMタンパク質又はその誘導体/等価物を特異的に認識する血清の少なくとも1種の抗体が選択される。これに関連し、特異性は、他のもの、特に、免疫原的に関連するタンパク質よりも免疫原について抗体のより高い結合親和性を意味する。
【0132】
5.2.2 モノクローナル抗体の生成
本発明に有用な免疫グロブリンは、それ自体公知の方法を用いて得ることができる。従って、ハイブリドーマ技術は、興味深い抗原についての単一特異性抗体を生成することを可能にする。更に、抗体ライブラリーのin vitroスクリーニング等の組換え抗体技術が開発され、同様に、このような特異抗体を生成するために用いることができる。
【0133】
従って、例えば、興味深い抗原を用いて動物を免疫することができる。このin vivoアプローチは、動物のリンパ球又は脾臓細胞由来のハイブリドーマ系を確立し、抗原と特異的に結合する抗体を分泌するハイブリドーマを選択することを更に含む。免疫される動物は、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ニワトリ、ラクダ又はヒツジ、又は前記動物の遺伝子導入型、例えば、抗原刺激後にヒト抗体を生成するヒト免疫グロブリン遺伝子を有する遺伝子導入マウスであってもよい。免疫することのできる動物の更なるタイプには、ヒト末梢血単核球、又はリンパ球又はその前駆体で再構成された重症複合型免疫不全症(SCID)を患っているマウス(hu−PBMC−SCIDキメラマウス)、並びに致死的全身照射で処理し、次いで重症複合型免疫不全症(SCID)を患っているマウス由来の骨髄細胞を用いて放射線から保護し、次いで機能的ヒトリンパ球を移植したマウス(いわゆるトリメラマウス系)が含まれる。免疫される更なる動物のタイプは、この動物が、抗原を用いて免疫した後に、抗原を外来物質として認識するように、例えば、相同組換えにより、興味深い抗原をコードする内在性遺伝子が不活性化されている(ノックアウト)動物(例えばマウス)である。これらの方法により生成されるポリクローナル又はモノクローナル抗体は、ELISA技術を含むが、これに限定されない、公知のスクリーニング方法を用いて特徴づけられ、選択されることは当業者に明らかである。
【0134】
更なる実施態様によれば、抗原を用いて組換え型抗体ライブラリーをスクリーニングする。組換え型抗体ライブラリーは、例えば、バクテリオファージの表面、酵母細胞の表面、又は細菌細胞の表面で発現し得る。組換え型抗体ライブラリーは、例えば、scFvライブラリー又はFabライブラリーであり得る。更なる実施態様においては、抗体ライブラリーは、RNA−タンパク質融体として発現し得る。
【0135】
本発明の抗体の生産の更なるアプローチには、in vivo及びin vitroのアプローチの組み合わせが含まれる。例えば、in vivoにおいて動物を抗原で免疫し、次いで、動物のリンパ球細胞から生産された組換え型抗体ライブラリー、又は単一ドメイン抗体ライブラリー(例えば、重鎖及び/又は軽鎖を有する)のin vitroスクリーニングのためにこの抗原を用いることにより、抗原が抗体レパートリーにおいて作用することを可能にすることができる。
【0136】
更なるアプローチによれば、in vivoにおいて動物を抗原で免疫し、次いで、動物のリンパ球細胞から生産された組換え型抗体ライブラリー、又は単一ドメインライブラリーを、親和性成熟にさらすことにより、抗原が抗体レパートリーにおいて作用することを可能にすることができる。更なるアプローチによれば、in vivoにおいて動物を抗原で免疫し、次いで、単一の抗体を生産する、興味深い抗体を分泌する細胞を選択し、これらの選択された細胞から重鎖及び軽鎖の可変領域についてのcDNAを得(例えば、PCRにより)、ほ乳類宿主細胞内でin vitroで重鎖及び軽鎖の可変領域を発現させ(リンパ球−抗体選択法、又は選択されたリンパ球抗体のためのSLAM法と呼ばれる)、選択された抗体遺伝子配列を選択し、更に操作することを可能にすることにより、抗原が抗体レパートリーにおいて作用することを可能にすることができる。更に、モノクローナル抗体は、ほ乳類細胞内で重鎖及び軽鎖についての抗体遺伝子を発現させ、所望の結合親和性を有する抗体を分泌するほ乳類細胞を選択することによって、発現クローニングすることにより選択されることができる。
【0137】
本発明は、定義された抗体を、RGM結合ドメイン又はポリペプチドの形態で、スクリーニング及びカウンタースクリーニングに利用可能にする。従って、本発明によれば、前述の本発明に従って所望である特性のプロフィールを示すポリクローナル及びモノクローナル抗体を選択することが可能になる。
【0138】
抗体を生成するための本発明の方法は、種々のタイプの抗体を生成するために用いることができる。これらには、実質的にヒト抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体及びCDRグラフト抗体、及びそれらの抗原結合部位が含まれる。
【0139】
本発明の抗体を生成するための方法を以下に記載する。この点について、in vivoにおけるアプローチ、in vitroにおけるアプローチ、又は両者の組み合わせを区別する。
【0140】
in vivoにおけるアプローチ:
in vivoにおいて生成された抗体を生産する細胞から開始し、最初はKoehler及びMilsteinにより開示されたハイブリドーマ技術等の標準化された技術(1975,Nature 256:495−497)(また、Brown et al.(1981)J.Immunol 127:539−46;Brown et al.(1980)J Biol Chem 255:4980−83;Yeh et al.(1976)PNAS 76:2927−31;及びYeh et al.(1982)Int.J.Cancer 29:269−75を参照されたい)によってモノクローナル抗体を生成することが可能である。モノクローナル抗体ハイブリドーマを生産するための技術は十分に周知である(一般的に、R.H.Kenneth,in Monoclonal Antibodies:A New Dimension In Biological Analyses,Plenum Publishing Corp.,New York,New York(1980);E.A.Lerner(1981)Yale J.Biol.Med.,54:387−402;M.L.Gefter et al.(1977)Somatic Cell Genet.,3:231−36を参照されたい)。この目的のために、不死化細胞系(通常は骨髄腫)を、本発明のRGMタンパク質又はその誘導体/等価物で免疫したほ乳類のリンパ球(通常、脾細胞又はリンパ節細胞又は末梢血リンパ球)と融合し、得られたハイブリドーマ細胞の培養上清をスクリーニングし、本発明のRGMタンパク質又はその誘導体/等価物に対して特異性を有するモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマを同定する。この目的のために、リンパ球及び不死化細胞系を融合するための、多くの十分に周知のプロトコールのいずれかを用いることが可能である(G.Galfre et al.(1977)Nature 266:550−52;前記で引用したGefter et al.Somatic Cell Genet,;前記で引用したLerner,Yale J.Biol.Med.,;前記で引用したKenneth,Monoclonal Antibodies,参照されたい)。当業者は、更に、同様に用いることのできる、このような方法の多くの異なる変形を知っている。通常、不死化細胞系(例えば、骨髄腫細胞系)は、リンパ球と同じほ乳類種に由来する。例えば、本発明の免疫原性調製物で免疫したマウス由来のリンパ球を、不死化マウス細胞系と融合することにより、マウスのハイブリドーマを確立することが可能である。好ましい不死化細胞系は、ヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンを含む培地(HAT培地)に対して敏感であるマウス骨髄腫細胞系である。多くの骨髄腫細胞系のいずれか1種は、標準的な方法で、融合パートナー、例えば、P3−NS1/1−Ag4−1,P3−x63−Ag8.653又はSp2/O−Ag14骨髄腫細胞系として用いられ得る。これらの骨髄腫細胞系は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC),Rockville,MDから得ることができる。通常、HAT感受性マウス骨髄腫細胞は、ポチエチレングリコール(PEG)を用いてマウス脾細胞と融合される。次いで、融合により得られたハイブリドーマ細胞を、HAT培地を用いて選択することにより、非融合又は非生産融合骨髄腫細胞が死滅する(融合していない脾臓細胞は、形質転換されていないので、数日後に死滅する)。本発明のRGMタンパク質又はその誘導体/等価物を特異的に認識するモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマ細胞を、例えば、標準的ELISAアッセイを用いることにより、このような抗体のハイブリドーマ上清をスクリーニングすることにより同定し、本発明のRGMタンパク質又はその誘導体/等価物と特異的に結合することのできる抗体を選択する。
【0141】
所望の抗体の性質に依存し、種々の宿主動物をin vivo免疫のために用いることができる。自身で興味深い抗原の内因性の形態を発現する宿主を用いることができる。また、興味深い抗原の内因性の形態を欠く宿主を用いることができる。例えば、対応する内因性遺伝子(すなわち、ノックアウトマウス)における相同的組換えにより特定の内因性タンパク質を欠くマウスが、免疫されたタンパク質に対する液性応答を起こし、その結果、タンパク質に対する高親和性のモノクローナル抗体を生産するために用いられることが表される(例えば、Roes,J.et al.(1995)J.Immunol.Methods 183:231−237;Lunn,M.P.et al.(2000)J.Neurochem.75:404−412を参照されたい)。
【0142】
本発明のRGMタンパク質又はその誘導体/等価物に対する非ヒト抗体を生産するための抗体生産のための宿主として、多くの非ヒトほ乳類が適している。これらには、マウス、ラット、ニワトリ、ラクダ、ウサギ及びヤギ(及びそれらのノックアウト形態)が含まれるが、ハイブリドーマの生産のためにはマウスが好ましい。更に、二重特異性を有するヒト抗原に対する、実質的にヒト抗体を生産するためのヒト抗体レパートリーを発現する非ヒト宿主動物を用いることが可能である。このような非ヒト動物には、以下に詳細に説明する、ヒト免疫グロブリン導入遺伝子を有する遺伝子導入動物(例えば、マウス)(hu−PBMC−SCIDキメラマウス)、及びヒト/マウス放射線キメラが含まれる。
【0143】
一実施態様によれば、本発明のRGMタンパク質又はその誘導体/等価物で免疫される動物は、抗原刺激後に非ヒトほ乳類がヒト抗体を生成するように、非ヒトほ乳類、好ましくは、ヒト免疫グロブリン遺伝子のために遺伝子導入されているマウスである。ヒト生殖系列構成を有する重鎖及び軽鎖についての免疫グロブリン導入遺伝子は、このような、重鎖及び軽鎖についての内在性遺伝子座が不活性化するように修飾されている動物に導入される。抗原による(例えば、ヒト抗原で)このような動物の刺激は、ヒト免疫グロブリン配列(すなわち、ヒト抗体)由来の抗体の生産をもたらす。ヒトモノクローナル抗体は、標準化されたハイブリドーマ技術を用いて、このような動物のリンパ球から生成することができる。ヒト免疫グロブリンを有する遺伝子導入マウス、及びヒト抗体の生産におけるその使用についての更なる記述は、例えば、米国特許第5,939,598号,WO96/33735,WO96/34096,WO98/24893及びWO99/53049(Abgenix Inc.),及び米国特許第5,545,806号,第5,569,825号,第5,625,126号,第5,633,425号,第5,661,016号,第5,770,429号,第5,814,318号,第5,877,397号及びWO99/45962(Genpharm Inc.)を参照されたい。同様に、MacQuitty,J.J.and Kay,R.M.(1992)Science 257:1188;Taylor,L.D.et al.(1992)Nucleic Acids Res.20:6287−6295;Lonberg,N.et al.(1994)Nature 368:856−859;Lonberg,N.and Huszar,D.(1995)Int.Rev.Immunol.13:65−93;Harding,F.A.und Lonberg,N.(1995)Ann.N.Y.Acad.Sci.764:536−546;Fishwild,D.M.et al.(1996)Nature Biotechnology 14:845−851;Mendez,M.J.et al.(1997)Nature Genetics 15:146−156;Green,L.L.and Jakobovits,A.(1998;J.Exp.Med.188:483−495;Green,L.L.(1999)J.Immunol.Methods 231:11−23;Yang,X.D.et al.(1999)J.Leukoc.Biol.66:401−410;Gallo,M.L.et al.(2000)Eur.J.Immunol.30:534−540を参照されたい。
【0144】
更なる実施態様においては、本発明のRGMタンパク質又はその誘導体/等価物で免疫される動物は、ヒト末梢血単核球又はリンパ球細胞又はそれらの前駆体で再構成された重症複合型免疫不全症(SCID)を患っているマウスであり得る。hu−PBMC−SCIDキメラマウスと呼ばれる、このようなマウスは、抗原刺激後にヒト免疫グロブリン応答を引き起こすことが証明された。これらのマウス及び抗体を生成するためのそれらの使用の更なる記述については、例えば、Leader,K.A.et al.(1992)Immunology 76:229−234;Bombil,F.et al.(1996) Immunobiol.195:360−375;Murphy,W.J.et al.(1996)Semin.Immunol.:233−241;Herz,U.et al.(1997)Int.Arch.Allergy Immunol.113:150−152;Albert,S.E.et al.(1997)J.Immunol.159:1393−1403;Nguyen,H.et al.(1997)Microbiol.Immunol.41:901−907;Arai,K.et al.(1998)J.Immunol.Methods 217:79−85;Yoshinari,K.and Arai,K.(1998)Hybridoma 17:41−45;Hutchins,W.A.et al.(1999)Hybridoma 18:121−129;Murphy,W.J.et al.(1999)Clin.Immunol.90:22−27;Smithson,S.L.et al.(1999)Mol.Immunol.36:113−124;Chamat,S.et al.(1999)J.Infect Diseases 180:268−277;及びHeard,C.et al.(1999)Molec.Med.:35−45を参照されたい。
【0145】
更なる実施態様においては、本発明のRGMタンパク質又はその誘導体/等価物で免疫される動物は、致死的全身照射で処理し、次いで重症複合型免疫不全症(SCID)を患っているマウス由来の骨髄細胞を用いて放射線から保護し、次いで、機能的ヒトリンパ球を移植したマウスである。トリメラ系と呼ばれるこのタイプのキメラは、興味深い抗原でマウスを免疫し、次いで、標準化されたハイブリドーマ技術を用いてモノクローナル抗体を生成することにより、ヒトモノクローナル抗体を生成するために用いられる。これらのマウス及び抗体を生成するためのそれらの使用についての更なる記述については、例えば、Eren,R.et al.(1998)Immunology 93:154−161;Reisner,Y and Dagan,S.(1998)Trends Biotechnol.16:242−246;Ilan,E.et al.(1999)Hepatology 29:553−562;及びBocher,W.O.et al.(1999)Immunology 96:634−641を参照されたい。
【0146】
in vitroにおけるアプローチ:
免疫及び選択による本発明の抗体の生産についての代案として、本発明のRGMタンパク質又はその誘導体/等価物を用いた、組換えコンビナトリアル免疫グロブリンライブラリーをスクリーニングし、それによって、本発明のRGMタンパク質又はその誘導体/等価物に対して特異的に結合する免疫グロブリンライブラリーのメンバーを分離することにより、本発明の抗体を同定し分離することが可能である。ディスプレイライブラリーを生成しスクリーニングするためのキットは市販されている(例えば、Pharmacia社製のRecombinant Phage Antibody System、カタログ番号27−9400−01;及びStratagene社製のSurfZAP(登録商標)Phage Display Kit、カタログ番号240612)。多くの実施態様においては、ディスプレイライブラリーはScFvライブラリー又はFabライブラリーである。組換え型抗体ライブラリーをスクリーニングするためのファージディスプレイ技術は十分に開示されている。抗体ディスプレイライブラリーの生成及びスクリーニングにおいて特に有利に用いることのできる方法及び化合物の具体例は、例えば、McCafferty et al.WO92/01047,米国特許第5,969,108号及びEP589877(特にsdFvのディスプレイを開示している)、Ladner et al.米国特許第5,223,409号,第5,403,484号,第5,571,698号,第5,837,500号及びEP436597(例えば、PIII融合について開示されている);Dower et al.WO91/17271,米国特許第5,427,908号,米国特許第5,580,717号及びEP527839 (特に、Fabのディスプレイを開示している); Winter et al.国際出願公開WO92/20791及びEP368,684(特に、免疫グロブリン可変ドメインについての配列のクローニングを開示している); Griffiths et al.米国特許第5,885,793号及びEP589877(特に、組換えライブラリーを用いたヒト抗原に対するヒト抗体の分離について開示している);Garrard et al.WO92/09690(特にファージ発現技術を開示している);Knappik et al.WO97/08320(ヒト組換型抗体ライブラリーHuCalを開示している);Salfeld et al.WO97/29131(ヒト抗原(ヒト腫瘍壊死因子α)に対する組換え型ヒト抗体の生産、及び組換え型抗体のin vitroについて開示している),特許出願がSalfeld et al.米国特許仮出願第60/親和性成熟126,603号及びそれに基づく特許出願(同様に、ヒト抗原(ヒトインターロイキン−12)に対する組換え型ヒト抗体の生産、及び組換え型抗体のin vitro親和性成熟を開示するに見出すことができる。
【0147】
組換え型抗体ライブラリーのスクリーニング更なる記載は、Fuchs et al.(1991)Bio/Technology 9:1370−1372;Hay et al.(1992)Hum Antibod Hybridomas 3:81−85;Huse et al.(1989)Science 246:1275−1281;Griffiths et al.(1993)EMBO J 12:725−734;Hawkins et al.(1992)J Mol Biol 226:889−896;Clarkson et al.(1991)Nature 352:624−628;Gram et al.(1992)PNAS 89:3576−3580;Garrad et al.(1991)Bio/Technology 9:1373−1377;Hoogenboom et al.(1991)Nuc Acid Res 19:4133−4137;Barbas et al.(1991)PNAS 88:7978−7982;McCafferty et al.Nature(1990)348:552−554;及びKnappik et al.(2000)J.Mol.Biol.296:57−86.等の科学出版物に見出される。
【0148】
バクテリオファージディスプレイシステムの使用の代案として、酵母細胞又は細菌細胞の表面上での組換え型抗体ライブラリーを発現させることが可能である。酵母細胞の表面上で発現するライブラリーを生産しスクリーニングする方法は、WO99/36569に開示されている。細菌細胞の表面上で発現するライブラリーを生産しスクリーニングする方法は、WO98/49286に詳細に開示されている。
【0149】
コンビナトリアルライブラリーから、興味深い抗体が確認されるとすぐに、分子生物学の標準化された技術、例えば、ライブラリーのスクリーニングの間に分離されるディスプレイパッケージ(例えば、ファージ)からのDNAのPCR増幅によって抗体の軽鎖及び重鎖をコードするDNAが分離される。PCRプライマーを生成するために用いることができる軽鎖及び重鎖抗体についての遺伝子のヌクレオチド配列は、当業者に公知である。これらの多くの配列は、例えば、Kabat,E.A.,et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication 第 91−3242号、及びヒト生殖系列VBASEの配列についてのデータベースに開示されている。
【0150】
本発明の抗体又は抗体部分は、宿主細胞内において、軽鎖及び重鎖免疫グロブリンについての遺伝子の組み換え発現によって生産することができる。宿主細胞内で、軽鎖及び重鎖が発現し、好ましくは宿主細胞が培養される培地中に分泌されるように、抗体の組換え発現について、宿主細胞は、抗体の軽鎖及び重鎖免疫グロブリンをコードするDNA断片を有する、1以上の組換え発現ベクターでトランスフェクトされる。抗体は、この培地から得ることができる。重鎖及び軽鎖抗体のための遺伝子を得、これらの遺伝子を、組換え発現ベクターに挿入し、このベクターを宿主細胞に導入するために、標準化された組換えDNA法が用いられる。このタイプの方法は、例えば、Sambrook,Fritsch and Maniatis(editors),Molecular Cloning;A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor,N.Y.,(1989),Ausubel,F.M.et al.(editors)Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates,(1989)及びBossらの米国特許第4,816,397号に開示されている。
【0151】
興味深い抗体のVH及びVL断片をコードするDNA断片が得られるとすぐに、例えば、可変領域についての遺伝子を、全長抗体鎖についての遺伝子内、Fab断片についての遺伝子内、又はscFv遺伝子内に変換するために、標準化された組換えDNA技術を用いて、これらのDNA断片を更に操作することができる。これらの操作は、VL−又はVH−をコードするDNA断片の、更なるタンパク質、例えば、抗体の定常領域又は柔軟なリンカーをコードする更なるDNA断片への動作可能な結合をもたらす。本明細書において、「動作可能な結合」なる用語は、2個のDNA断片によってコードされるアミノ酸配列がリーディングフレーム内に残留する(インフレーム)ような方法で、2個のDNA断片が一緒に連結することを意味することを意図される。
【0152】
VH領域をコードする、分離したDNAを、重鎖(CH、CH、及びCH)の定常領域をコードする更なるDNA分子に対するVH領域をコードするDNAの有効な連結のために、全長重鎖のための遺伝子に変換することができる。ヒトの重鎖の定常領域のための遺伝子配列は十分に周知であり(例えば、Kabat,E.A.,et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91−3242を参照されたい)、これらの領域にわたるDNA断片は、標準化されたPCR増幅によって得ることができる。重鎖の定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgM又はIgD由来の定常領域であってもよく、IgG1又はIgG4由来の定常領域が好ましい。重鎖のFab断片のための遺伝子は、重鎖の定常領域CH1のみをコードする更なるDNA分子を有するVHをコードするDNAの有効な連結によって得ることができる。
【0153】
VL領域をコードする、分離したDNAを、軽鎖の定常領域CLをコードする更なるDNA分子を有するVLをコードするDNAの有効な連結によって、全長の軽鎖(及びFab軽鎖のための遺伝子)のための遺伝子に変換することができる。ヒトの軽鎖の定常領域のための遺伝子配列は十分に周知であり(例えば、Kabat,E.A.,et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91−3242を参照されたい)、これらの領域にわたるDNA断片は、標準化されたPCR増幅によって得ることができる。軽鎖の定常領域は、定常カッパ又はラムダ領域であってもよく、定常カッパ領域が好ましい。
【0154】
VH及びVL配列が、連続的な単一鎖タンパク質として発現し、VL及びVH領域が柔軟なリンカーによって連結するように(Bird et al.(1988)Science 242:423−426;Huston et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883;McCafferty et al.,Nature(1990)348:552−554を参照されたい)、scFV遺伝子は、柔軟なリンカー、例えば、アミノ酸配列(Gly−Ser)をコードする更なる断片に対するVH−及びVL−をコードするDNA断片の有効な連結によって生成することができる。
【0155】
本発明のRGMタンパク質又はその誘導体/等価物に対する特異性を有する、VH及びVLの単一ドメインは、前述した方法を用いて単一ドメインライブラリーから分離することができる。所望の特異性を有する、VH鎖及びVL鎖の、2個のVH単一ドメイン鎖(CH1を有するか又は有しない)又は2個のVL鎖又は組み合わせは、本発明のRGMタンパク質又はその誘導体/等価物を結合するために用いることができる。
【0156】
本発明の組換え型抗体又は抗体部分は、部分的又は全長の軽鎖及び重鎖をコードするDNAを、発現ベクターに挿入し、転写及び翻訳制御配列に対する遺伝子の有効な連結をもたらすことにより、発現させることができる。これに関連し、「有効に連結」なる用語は、ベクター内の転写及び翻訳制御配列が、抗体遺伝子の転写及び翻訳の制御の意図される機能を満足するような方法で、抗体遺伝子がベクター内に連結することを意味することを意図する。
【0157】
発現ベクター及び発現制御配列は、それらが発現のために用いられる宿主細胞と適合するように選択される。抗体の軽鎖のための遺伝子、及び抗体の重鎖のための遺伝子は、別々のベクターに挿入することができ、又は両方の遺伝子が、通常のケースである、同じ発現ベクターに挿入される。抗体遺伝子は、標準化された方法(例えば、抗体遺伝子断片及びベクターにおける相補的な制限切断部位の連結、又は制限切断部位が存在しない場合、ブラント末端の連結)により発現ベクターに挿入される。発現ベクターは、軽鎖及び重鎖のための配列の挿入前に、抗体の定常領域のための配列を既に有していてもよい。ベクター内のCH断片とのVH断片の有効な連結、及びベクター内のCL断片とのVL断片の有効な連結が存在するように、実施例のための1つのアプローチは、VH及びVL配列を、それぞれ重鎖及び軽鎖の定常領域を既にコードする発現ベクターに挿入することによって、VH及びVL配列を全長の抗体遺伝子に変換することである。追加又は他の可能性は、宿主細胞由来の抗体鎖の分泌を促進するシグナルペプチドをコードする組換え発現ベクターに関してである。抗体鎖のための遺伝子は、シグナルペプチドを抗体鎖のための遺伝子のN末端を有するリーディングフレーム内で結合させるような方法で、ベクター内にクローニングすることができる。シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチド又は異種シグナルペプチド(すなわち、非免疫グロブリンタンパク質由来のシグナルペプチド)であってもよい。抗体鎖のための遺伝子に加え、本発明の発現ベクターは、宿主細胞内で抗体鎖のための遺伝子の発現を制御する調節塩基配列を有していてもよい。「調節塩基配列」なる用語は、抗体鎖のための遺伝子の転写又は翻訳を制御するプロモーター、エンハンサー及び更なる発現制御要素(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むことが意図される。このような調節塩基配列は、例えば、Goeddel;Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185,Academic Press,San Diego,CA(1990)に開示されている。当業者は、調節塩基配列の選択を含む発現ベクターの設計が、形質転換される宿主細胞の選択、タンパク質発現の所望の強度等の因子に依存するかもしれないことに気づく。ほ乳類宿主細胞における発現のための好ましい調節塩基配列には、サイトメガロウイルス(CMV)(CMVプロモーター/エンハンサー等)、シミアンウイルス40(SV40)(SV40プロモーター/エンハンサー等)、アデノウイルス(例えば、後期アデノウイルスの主要なプロモーター(アデノウイルスの主要な後期プロモーターについてAdMLP))及びポリオーマに由来するプロモーター及び/又はエンハンサー等の、ほ乳類細胞内で強力なタンパク質発現をもたらすウイルス成分が含まれる。ウイルス制御成分及びその配列についての更なる開示については、例えば、Stinskiの米国特許第5,168,062号、Bellらの米国特許第4,510,245号、及び Schaffnerらの米国特許第4,968,615号を参照されたい。
【0158】
抗体鎖及び調節塩基配列のための遺伝子に加え、本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞内でベクターの複製を制御する配列(例えば、複製起点)及び選択可能マーカー遺伝子等の追加の配列を有していてもよい。選択可能マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞の選択を促進する(例えば、全てAxelらの米国特許第4,399,216号,第4,634,665号及び第5,179,017号を参照されたい)。例えば、選択可能マーカー遺伝子が、ベクターが挿入された宿主細胞を、G418、ハイグロマイシン又はメトトレキセート等の活性物質に対して耐性にするのは通常である。好ましい選択可能マーカー遺伝子には、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHRF)のための遺伝子(メトトレキセートを選択/増幅するdhfr宿主細胞における使用のため)及びネオ遺伝子(G418の選択のため)が含まれる。
【0159】
軽鎖及び重鎖の発現のために、重鎖及び軽鎖をコードする発現ベクターを、標準化された技術を用いて宿主細胞にトランスフェクトする。「トランスフェクション」なる用語の種々の形態は、外来性DNAを原核又は真核宿主細胞に導入するために通常に用いられる、多くの技術、例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、DEAE−デキストラントランスフェクション等を含むことを意図する。原核又は真核宿主細胞のいずれでも、本発明の抗体を発現することは理論的には可能であるが、正確にフォールディングされ、構築され、分泌される免疫学的に活性な抗体は、このような真核細胞、特にほ乳類細胞において、原核細胞よりも高いという可能性のために、真核細胞、特にほ乳類宿主細胞における抗体の発現が好ましい。抗体遺伝子の原核細胞発現は、活性抗体の大量生産のためには効率的でないことが報告されている(Boss,M.A.and Wood,C.R.(1985)Immunology Today :12−13)。
【0160】
本発明の組換え型抗体の発現のために好ましいほ乳類宿主細胞には、CHO細胞(Urlaub and Chasin,(1980)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216−4220に開示されており、例えば、R.J.Kaufman and P.A.Sharp(1982)Mol.Biol.159:601−621に開示されているように、DHFR選択可能マーカーとして用いられる、dhfrCHOを含む)、NSO骨髄腫細胞、COS細胞、及びSP2細胞が含まれる。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターをほ乳類宿主細胞に導入する場合、宿主細胞内で抗体が発現されるまで、又は、好ましくは、宿主細胞が増殖する培地内に抗体が分泌されるまで宿主細胞を培養することにより、抗体が生産される。抗体は、タンパク質を精製するための標準化された方法を用いることにより、培地から得ることができる。
【0161】
同様に、無傷抗体の一部、例えば、Fab断片又はscFv分子を生産するために宿主細胞を用いることも可能である。前記工程の変形は本発明に含まれる。例えば、本発明の抗体の軽鎖又は重鎖(両方ではない)をコードするDNAで宿主細胞をトランスフェクトすることが望ましい。興味深い抗原の結合のために不必要である軽鎖又は重鎖が存在する場合、このような1つの軽鎖又はこのような1つの重鎖又はその両方をコードするDNAは、組換えDNA技術を用いて部分的又は完全に除去される。このように切断DNA分子により発現する分子は、同様に本発明の抗体に属する。また、1つの重鎖及び1つの軽鎖が本発明の抗体である、二官能性抗体を生成することが可能であり、他の重鎖及び軽鎖は、本発明の抗体を、標準化された化学的方法により二次抗体と架橋することにより、興味深い抗原以外の抗原に対する特異性を有している。
【0162】
本発明の抗体又はその抗原結合部位の組換え発現のための好ましいシステムにおいては、重鎖抗体及び軽鎖抗体の両方をコードする組換え発現ベクターが、リン酸カルシウムが媒介するトランスフェクションにより、dhfrCHO細胞に導入される。遺伝子の強力な転写を誘発するために、調節性CMVエンハンサー/AdMLPプロモーターのいずれの場合にも、重鎖及び軽鎖抗体のための遺伝子の組換え発現ベクター内に動作可能な結合が存在する。また、組換え発現ベクターは、メトトレキセート選択/増幅を用いることにより、ベクターでトランスフェクトされたCHO細胞を選択するために用いることのできるDHFR遺伝子を含む。重鎖及び軽鎖抗体が発現し、無傷抗体を培地から得ることができるように、選択された形質転換宿主細胞を培養する。組換え発現ベクターを生成し、宿主細胞をトランスフェクトし、形質転換体を選択し、宿主細胞を溶媒し、培地から抗体を得るために、分子生物学の標準化された技術が用いられる。従って、本発明は、本発明の宿主細胞を、本発明の抗体が合成されるまで好適な培地中で培養することによる、本発明の組換え型抗体の合成方法に関する。該方法は、更に、培地から組換え型抗体を分離することを含む。
【0163】
ファージディスプレイによる組換え型抗体ライブラリーのスクリーニングの代替え案として、本発明の抗体を同定するために、ラージコンビナトリアルライブラリーのスクリーニングのために当業者に公知の更なる方法を用いることが可能である。他の発現系の1つのタイプにおいては、組換え型抗体ライブラリーは、Szostak及びRobertsのWO98/31700、及びRoberts,R.W.and Szostak,J.W.(1997)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:12297−12302に開示されたように、RNA−タンパク質融体の形態で発現する。このシステムにおいては、共有結合融合体は、mRNA及びそれがコードするペプチド又はタンパク質の間の3’末端にピューロマイシン、ペプチジルアクセプター抗生物質を輸送する合成mRNAのin vitro翻訳によって生成する。従って、コードするペプチド又はタンパク質(例えば、抗体又はその一部)の特性、例えば、抗体又はその一部の、本発明のRGMタンパク質又はその誘導体/等価物に対する結合に基づき、mRNAの複合混合物由来の特異的mRNA(例えば、コンビナトリアルライブラリー)を濃縮することが可能である。抗体又はその一部をコードし、このようなライブラリーのスクリーニングから得られる核酸配列は、前述した方法(例えば、ほ乳類宿主細胞内で)による組換え手段により発現することができ、更なるラウンドにおいてmRNA−ペプチド融合体をスクリーニングするか(この場合、当初の選択された配列に変異体が導入される)、又は前述した方法における組換え型抗体のin vitro親和性成熟のための他の方法を用いることにより、更に、追加の親和性成熟にさらされる。
【0164】
in vivo及びin vitroにおけるアプローチの組み合わせ:
本発明の抗体は、同様にin vivo及びin vitroにおけるアプローチの組み合わせ、例えば最初に本発明のRGMタンパク質又はその誘導体/等価物が、RGMタンパク質−又はその誘導体/等価物−結合抗体の生産を促進するために宿主動物内におけるin vivoにおける抗体レパートリーにおいて作用することを可能にし、次いで、更なる抗体の選択及び/又は抗体成熟(すなわち、最適化)が、1以上のin vitro技術を用いて達成される方法を適用することにより生成することができる。一実施態様によれば、このような組み合わせ法は、最初に、抗原に対する抗体応答を刺激するために非ヒト動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ニワトリ、ラクダ、ヤギ又はそれらの遺伝子導入形態又はキメラマウス)を、本発明のRGMタンパク質又はその誘導体/等価物で免役し、次いで、RGMタンパク質又はその誘導体/等価物の作用によりin vivoで刺激されるリンパ球由来の免疫グログリン配列を用いてファージディスプレイ抗体ライブラリーを生成及びスクリーニングすることを含んでもよい。この組み合わせ法の最初の工程は、in vivoアプローチに関連して前述した方法で実施することができるが、この手法の第二の工程は、in vitroアプローチに関連して前述した方法で実施することができる。刺激されたリンパ球から生成されるファージディスプレイライブラリーのin vitroスクリーニングに続く、非ヒト動物の過剰免疫のための好ましい方法には、BioSite Inc.,により開示された方法が含まれ、例えば、WO98/47343,WO91/17271,米国特許第5,427,908号及び米国特許第5,580,717号を参照されたい。
【0165】
更なる実施態様によれば、組み合わせ法は、最初に、RGMタンパク質又はその誘導体/等価物を刺激するために非ヒト動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ニワトリ、ラクダ、ヤギ又はそれらのノックアウト及び/又は遺伝子導入形態又はキメラマウス)を、本発明のRGMタンパク質又はその誘導体/等価物で免役し、ハイブリドーマ(例えば、免疫された動物から生産される)をスクリーニングすることにより、所望の特異性を有する抗体を産生するリンパ球を選択することを含む。抗体又は単一ドメイン抗体のための遺伝子は、選択されたクローンから分離され(逆転写酵素−ポリメラーゼ連鎖反応等の、標準化されたクローニング法による)、それによって選択された抗体の結合特性を向上させるために、in vitro親和性成熟を受ける。この組み合わせ法の最初の工程は、in vivoアプローチに関連して前述した方法で実施することができるが、この手法の第二の工程は、in vitroアプローチに関連して前述した方法、特に、WO97/29131及びWO00/56772に開示されたようなin vitro親和性成熟法を用いることにより実施することができる。
【0166】
更なる組み合わせ法においては、組換え型抗体は、リンパ球抗体選択法(SLAM)として当業者に公知であり、米国特許第5,627,052号,WO92/02551及びBabcock,J.S.et al.(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:7843−7848に開示されている方法を用いることによって単一の分離されたリンパ球から生成される。この方法においては、本発明のRGMタンパク質又はその誘導体/等価物に対する免疫応答を刺激するために、非ヒト動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ニワトリ、ラクダ、ヤギ又はそれらの遺伝子導入形態又はキメラマウス)を、最初に本発明のRGMタンパク質又はその誘導体/等価物でin vivoで免疫し、興味深い抗体を分泌している単一細胞を、抗原特異的溶血プラークアッセイを用いて選択する。この目的のために、本発明のRGMタンパク質又はその誘導体/等価物、又は構造的に関連のある興味深い分子を、ビオチン等のリンカーを用いてヒツジ赤血球と結合することができ、それによって、好適な特異性の抗体を分泌している個々の細胞を、溶血プラークアッセイを用いることによって同定することができる。興味深い抗体を分泌している細胞の同定に続き、軽鎖及び重鎖の可変領域のためのcDNAを逆転写酵素−PCRによって細胞から得、次いで、これらの可変領域を、好適な免疫グロブリン定常領域(例えば、ヒト定常領域)に関連して、COS又はCHO細胞等のほ乳類宿主細胞内で発現することができる。次いで、in vivoで選択されたリンパ球に由来の、増幅した免疫グロブリン配列でトランスフェクトされた宿主細胞を、更なるin vitro検査にかけ、所望の特異性を有する抗体を発現している細胞を分離するために、例えば、トランスフェクトされた細胞を広げることにより選択する。増幅した免疫グロブリン配列は、更にin vitroで操作することができる。
【0167】
6.医薬組成物
6.1 概略
本発明は、また、活性物質として、本発明のタンパク質(RGMタンパク質:抗−RGMタンパク質抗体等のRGMタンパク質−結合リガンド)、又はRGMタンパク質をコードする核酸配列、必要であれば、薬学的に許容される担体を含む医薬組成物に関する。本発明の医薬組成物は、少なくとも1種の治療薬、例えば、本明細書に開示される障害の1種を治療するための1種以上の追加の治療薬を更に含む。
【0168】
薬学的に許容される担体には、それらが生理学的適合性である限りは、全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤、等張化剤及び吸収遅延剤が含まれる。
【0169】
薬学的に許容される担体には、例えば、水、生理食塩水、リン酸緩衝整理食塩水、乳糖、デキストロース、ショ糖、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アラビアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸、トラガカントゴム、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、シロップ及びメチルセルロースが含まれる。製剤は、更に、タルク、ステアリン酸マグネシウム及び鉱油等の滑沢剤;湿潤剤、乳化剤及び懸濁剤;メチル及びプロピルヒドロキシ安息香酸等の保存剤;酸化防止剤;抗刺激剤;キレート剤;コーティング助剤;乳化安定剤;フィルム形成剤;ゲル形成剤、臭気マスキング剤;マスキングフレーバー;樹脂:親水コロイド;溶媒;可溶化剤;中和剤;浸透促進剤;顔料;四級アンモニウム化合物;リファット剤、及び過脂肪剤;軟膏、クリーム又は油基剤;シリコーン誘導体;展着助剤;安定化剤;滅菌剤;坐剤用基剤;バインダー、充填材、滑沢剤、崩壊剤又はコーティング等の錠剤用賦形剤;噴霧剤、乾燥剤;乳白剤;増粘剤、ワックス、可塑剤;ホワイトオイル等の、薬学的に許容される担体又は従来の賦形剤を含んでもよい。配列に関して、これは、例えば、Fiedler,H.P.,Lexikon der Hilfsstoffe fuer Pharmazie, Kosmetik und angrenzende Gebiete,4th edition,Aulendorf:ECV−Editio−Cantor−Verlag,1996に示されているような熟練家の知識に基づく。また、Hager’s Handbuch der Pharmazeutoschen Praxis,Springer Verlag, Heidelbergを参照されたい。
【0170】
医薬組成物は、例えば、非経口投与のために適している。この目的のために、活性物質、例えば抗体は、好ましくは0.1〜250mg/mLの活性物質含有量を含む注射剤として生成される。注射剤は、投与形態として、フリントグラス又はガラス瓶、アンプル又は充填注射器内の液体又は凍結乾燥形態で生成することができる。
【0171】
緩衝液は、L−ヒスチジン(1〜50mM、好ましくは5〜10mM)を含み、5.0〜7.0、好ましくは6.0のpHを有する。更に好適な緩衝液には、コハク酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム又はコハク酸カリウムバッファーが含まれるが、これらに限定されない。
【0172】
溶液の浸透圧を、0〜300mM濃度(液体投与形態のために好ましくは150mM)調整するために、塩化ナトリウムを使用することができる。凍結乾燥投与形態のために、ショ糖(例えば、0〜10%、好ましくは0.5〜1.0%(w/w))等の抗凍結剤を含むことができる。更に好適な抗凍結剤には、トレハロース及び乳糖が含まれる。凍結乾燥投与形態のために、マンニトール(例えば、1〜10%、好ましくは2〜4%(w/w)等の充填剤を含むことができる。液体又は凍結乾燥投与形態の両方において、L−メチオニン(例えば、1〜50mM、好ましくは5〜10mM)等の安定剤を用いることができる。更に好適な充填剤には、グリシン及びアルギニンが含まれる。同様に、ポリソルベート80(例えば、0〜0.05%、好ましくは0.005〜0.01%(w/w)等の界面活性剤を用いることが可能である。更に界面活性剤には、ポリソルベート20及びBRIJ界面活性剤が含まれる。
【0173】
本発明の組成物は、多くの種類の形態が想定される。これらには、溶液(例えば、注射用及び輸液用溶液、ローション、点眼薬及び点耳薬)、リポソーム、分散剤、又は懸濁液等の液体、半固体及び固体形態、経口用粉末、散布粉、顆粒剤、錠剤、芳香錠剤、サチェット、カプセル、コーティング錠剤、硬及び軟ゼラチンカプセル等のカプセル、坐剤又は膣用製剤、軟膏、クリーム、ヒドロゲル、ペースト又はパッチ等の半固体製剤形態等の固体形態が含まれる。埋め込み送達装置も、本発明の活性物質を投与するために用いることができる。好ましい形態は、投与の意図する形態及び治療用途に依存する。通常、注射用又は輸液用溶液の形態における組成物が好ましい。好適な投与経路は、例えば、非経口投与(例えば、静脈注射、皮下注射、腹腔内注射、筋肉内注射)である。好ましい実施態様においては、活性物質は、静脈内注射又は注射によって投与される。更に好ましい実施態様によれば、活性成分は、筋肉内又は皮下注射により投与される。
【0174】
治療用組成物は、通常、無菌であり、生成及び保存条件下で安定でなければならない。組成物は、高活性成分濃度のために安定である、溶液、マイクロエマルジョン、分散剤、リポソーム又は更に規則正しい構造として製剤化され得る。無菌注射剤は、必要であれば、前記配合剤の1種又は組み合わせと共に、必要量の活性化合物(例えば、抗体)を好適な溶媒に導入することによって、必要であれば、次いでろ過により滅菌することによって生成することができる。分散剤は、通常、活性化合物を、基本的な分散媒体を含み、必要により更に必要な成分を含む無菌の媒体に導入することによって生成される。無菌注射剤を生成するための無菌の凍結乾燥粉末の場合、好ましい製造方法は、活性成分、及び必要であれば、ろ過により予め滅菌された溶液由来の所望の追加成分の粉末をもたらす真空乾燥及び噴霧乾燥である。溶液の正しい流動性は、例えば、レシチン等のコーティングを、分散剤の場合には必要な粒子サイズ又は用いられる界面活性剤を用いることによって維持することができる。注射用組成物の長期吸収は、モノステアリン酸塩及びゼラチン等の、吸収を遅延する薬剤を組成物に導入することによって達成することができる。
【0175】
本発明の活性物質は、当業者に公知である多種類の方法を用いて投与することができるが、皮下注射、静脈注射又は輸液が、多くの治療用途のための好ましい投与様式である。当業者は、投与の経路及び/又は様式が所望の結果に依存することに気づく。特定の実施態様によれば、埋め込み、経皮パッチ及びマイクロカプセル化送達システムを含む制御放出を用いた製剤を含む、急速な放出から化合物を保護する担体と共に活性化合物を調製することができる。エチレン−酢酸ビニル、ポリアンヒドライド、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル及びポリ乳酸等の生分解性、生体適合性ポリマーを用いることが可能である。このような製剤の調製方法は一般に当業者に公知であり、例えば、Sustained und Controlled Release Drug Delivery Systems,J.R.Robinson,ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,1978を参照されたい。
【0176】
特定の実施態様によれば、本発明の活性物質は、例えば、不活性希釈剤、又は吸収可能な食用担体中で、経口的に投与することができる。活性成分(及び所望であれば他の成分)は、硬又は軟ゼラチンカプセル中に包含させるか、錠剤に圧縮されるか、又は食物に直接加えてもよい。経口的治療投与のために、活性物質を賦形剤と混合し、嚥下可能な錠剤、口腔錠剤、カプセル、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ等の形態で用いることができる。本発明の活性成分が、非経口以外の経路により投与される場合、その不活性化を防止する材料のコーティングを選択することが必要であるかもしれない。
【0177】
本発明の活性物質は、前述した障害の治療に用いることのできる1種以上の追加の治療薬と一緒に投与することができる。
【0178】
本発明の医薬組成物は、通常、少なくとも1種の本発明の活性物質の治療に有効な量、又は予防に有効な量を含む。投与量は、所望の処置、例えば、治療的又は予防的処置が要求されるかどうかに依存して選択及び適合することができる。例えば、治療状況の要求性に依存した、1回の投与、時間をかけて複数に分割された投与、又は上昇又は減少する投与量を管理することができる。投与を促進し投与の均一性を確実にするために、単一投与形態における非経口的組成物を製剤化することが特に有利である。
【0179】
治療する医師は投与形態、特定の治療及び特定の活性物質のために最も好適な投与形態、投与の様式及び投与量を容易に決定することができる。
【0180】
本発明の活性物質の治療又は予防に有効な量は、例えば、0.1〜20mg/kgの範囲、好ましくは1〜10mg/kgであり、これに限定されない。当然、軽減すべき病状の性質及び重症度に依存してこれらの量を変えることは可能である。
【0181】
6.2 ワクチン
本発明のRGMタンパク質及びその誘導体/等価物は、治療される患者のワクチン接種のための免疫原として用いることができる。
【0182】
この目的のために用いることのできるワクチンは、一般に少なくとも1種の本発明のRGMタンパク質及び/又は少なくとも1種のそれらの誘導体/等価物を含む医薬組成物を意味する。組成物は、生理学的に許容される担体、及び必要であれば、更に賦形剤、例えば免疫賦活剤を更に含んでもよい。
【0183】
原則として、好適な担体は所望のように選択することができるが、担体の性質は、一般に投与経路によって決定される。従って、本発明のワクチンは、特に、非経口、例えば、静脈内投与、筋肉内投与及び皮下投与に好適な形態で製剤化することができる。これらの場合、担体は、好ましくは水、生理食塩水、アルコール、脂肪、ワックス及び/又は緩衝液を含む。
【0184】
本発明のワクチンにおいては、多種の免疫促進剤のいずれか1種を用いることが可能である。例えば、アジュバントが含まれる。ほとんどのアジュバントは、急速な分解から抗原を保護することを意図する物質、例えば、水酸化アルミニウム又は鉱油、及び脂質A、百日咳菌又はヒト結核菌由来のタンパク質を含む。好適なアジュバントは、通常市販されており、例えば、完全又は不完全フロイントのアジュバント;AS−2;水酸化アルミニウム(必要であればゲルとして)又はリン酸アルミニウム等のアルミニウム塩;カルシウム、鉄又は亜鉛塩;アシル化チロシンの不溶性懸濁液、アシル化糖;カチオン化又はアニオン化した誘導体化多糖類;ポリホスファゼン;生分解性ミクロスフェア;モノホスホリル−脂質Aである。GM−CSF又はインターロイキン−2、−7又は−12等のサイトカインは、同様にアジュバントとして用いることができる。
【0185】
7.治療法
7.1. 神経性障害の治療
中枢神経系に対する損傷の場合に、損傷部位にRGMタンパク質の蓄積が観察されることが先行技術(Schwab et al.(前出)を参照)において開示されている。同時に、損傷した神経線維の新たな増殖が防止される。神経線維の増殖における、この有害な効果は、受容体分子ネオゲニンに対するRGMの結合によって媒介される。従って、RGMと受容体分子ネオゲニンとの間の相互作用の調節、特に阻害は、神経線維の増殖におけるRGMの阻害活性を抑制するのに適している。
【0186】
7.2. 腫瘍性疾患の治療
長い間、ネオゲニンが、腫瘍性疾患の発現及び/又は進行に原因として関係していることが示されてきた。従って、例えば、Meyerhardtらは、Oncogene(1997)14,1129−1136において、研究された、膠芽細胞腫、髄芽細胞腫、神経芽細胞腫細胞系を含む50種以上の癌細胞系、及び結腸直腸、胸部、膵臓及び子宮癌由来の細胞系においてネオゲニンが検出されたことを報告している。ネオゲニンの過剰発現は、更に食道癌細胞系においても観察される(Hue et al.,Clinical Cancer Research(2001)7,2213−2221)。211人の肺腺癌患者における3588個の遺伝子の発現プロフィールの組織的な研究は、最近、腫瘍性疾患の発現及び進行におけるネオゲニンの関与を更に指摘した(Berrar et al.,J.Comput.Biol.(2005)12(5),534−544)。
【0187】
更に、腫瘍細胞に関連するネオゲニン受容体への結合を通じて細胞死を防止することができるという潜在的な発癌促進効果を示すことが知られているので(Matsunaga et al.Nature Cell Biol.6,749−755,2004)、腫瘍性疾患の治療のための新規治療的アプローチは、RGM−ネオゲニン相互作用を調節することにより、特に、特異的抗−RGM抗体を用いてこの相互作用を妨害することによって開発することができる。
【0188】
7.3. 鉄代謝障害の治療
ヘモジュベリンとも呼ばれるRGM Cは、ヒト及び動物の体内における鉄代謝のために非常に重要な意味を有する。若年性ヘモクロマトーシスは、体内の鉄の過負荷によって明らかになる遺伝的に比較的まれな鉄代謝性障害である。この疾患は、ヘモジュベリン分子における突然変異によって起こる(Huang et al.,The Journal of Clinical Investigation(2005),115,2087−2091)。従って、本発明の機能RGMタンパク質又はその活性ドメインの投与は、このような鉄代謝障害を緩和する有用な治療的アプローチを示す。
【0189】
7.4. 骨組織形成の促進
先行技術において、DRAGONの命名としても知られているタンパク質のRGMファミリーの1つのメンバー、特にはRGM Bが、骨の形態形成に関与していることが示されている。従って、例えば、Samadらは、20005年1月25日に発行される、印刷中のJBCにおいて、DRAGONと、タイプI及びタイプIIの骨形成タンパク質(BMP)受容体の相互作用を開示している。従って、本発明のRGMポリペプチドを投与することにより、骨成長促進効果、及びそのための骨成長の損傷又は骨損傷を有する障害の治療のための新規な治療的アプローチがあり得る。
【0190】
8.診断方法
本発明によって言及されるべき診断薬は、特に、前記で定義されたような、RGMタンパク質及び誘導体/等価物、及びそれらに対する抗体である。
【0191】
従って、本発明は、疾患に典型的な抗原又は抗体を検出することにより、前記で定義した病的状態を、質的又は量的改善をもって決定することを可能にする。
【0192】
前記決定は、好ましくは免疫学的方法を用いて実施される。原則として、抗体が用いられる、あらゆる分析的又は診断的試験方法を用いて可能となる。これらには、凝集及び沈降技術、免疫学的アッセイ、免疫組織化学法、及びウェスタンブロッティング又はドットブロット法等のイムノブロッティング技術が含まれる。また、例えば画像検査法等のin vivoにおける方法も含まれる。
【0193】
免疫アッセイにおける使用が有利である。適切には、競合的免疫アッセイ、すなわち、抗体結合のための抗原及び標識抗原(トレーサー)の競合、及びサンドウィッチ免疫アッセイ、すなわち、特異的抗体の抗原への結合を、二次抗体、通常は標識抗体を用いて検出するアッセイの両方である。これらのアッセイは、均一、すなわち、固相及び液相に分離しないアッセイ、又は不均一、すなわち、結合した標識を、結合していないもの、例えば、固相−結合抗体から分離するアッセイのいずれかである。種々の不均一及び均一な免疫アッセイ形式、例えば、RIAs(放射免疫アッセイ)、ELISA(酵素免疫アッセイ)、FIA(蛍光免疫アッセイ)、LIA(発光免疫アッセイ)、TRFIA(時間分解FIA)、IMAC(免疫活性化)、EMIT(酵素多型免疫試験)、TIA(免疫比濁法)、I−PCR(免疫−PCR)が、標識及び測定方法に依存して、特定のクラスに対して割り当てられる。
【0194】
競合的免疫アッセイは、本発明の抗原の検出に好ましい。この場合、標識された抗原(トレーサー)は、用いられる抗体に対する結合について定量化される試料の抗原と競合する。試料中の抗原量、すなわち抗原の量は、検量線を用いて置換されたトレーサーの量から決定することができる。
【0195】
これらの目的のために利用できる標識のうち、酵素が有利であることが照明された。例えば、ペルオキシダーゼ、特にセイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ及びβ−D−ガラクトシダーゼをベースとするシステムを用いることが可能である。これらの酵素について特異的な基質が利用可能であり、それらの変換は、例えば測光法により実施することができる。好適な基質システムは、アルカリホスファターゼについてp−ニトロフェニルホスフェート(p−NPP)、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルホスフェート/ニトロブルーテトラゾリウム(BCIP/NPT)、ファーストレッド/ナフトール−AS−TSホスフェート;ペルオキシダーゼについて2,2−アジノビス(3−エチルベンズチアゾリン−6−スルホン酸)(ABTS)、o−フェニレンジアミン(OPD)、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)、o−ジアニシジン、5−アミノサリチル酸、3−ジメチルアミノ安息香酸(DMAB)及び3−メチル−2−ベンゾチアゾリノンヒドラゾン(MBTH);β−D−ガラクトシダーゼについてo−ニトロフェニルβ−D−ガラクトシド(o−NPG)、p−ニトロフェニルβ−D−ガラクトシド及び4−メチルウンベリフェルβ−D−ガラクトシド(MUG)に基づく。これらの基質システムは、多くの場合、使える状態で、例えば、都合のよい緩衝剤等の追加の試薬をも含む錠剤の形態で市販されている。
【0196】
トレーサーを調製するためのペプチド又は抗体への標識のカップリングは、それ自体公知の方法で実施することができる。更に、タンパク質に対する結合のための都合よく修飾された多くの標識、例えば、ビオチン−、アビジン−、エクストラビジン−、又はストレプトアビジン−結合酵素、マレイミド−活性化酵素等が利用可能である。これらの標識は本発明に従って使用される分子と直接反応させることができる。
【0197】
不均一免疫アッセイ形式を選択した場合、分離の目的のために、抗原−抗体複合体を、例えば、抗−イディオタイプ抗体、例えば、担体に結合した、ウサギIgGに対する抗体を通じて担体に結合することができる。好適な抗体によりコーティングされる担体、特にマイクロタイタープレートは公知であり、市販されている。
【0198】
更に、本発明は、前述した少なくとも1個の抗体及び追加の成分を含む免疫アッセイセットに関する。これは、本発明の検出を実施するための手段のパックユニットとしてのコレクションを含む。使用を最大限にするため、これらの手段は、好ましくは、実質的に使える状態で供給される。有利な配置は、キットの形態における免疫アッセイによって供給される。キットは、通常、成分の配置を分離するための複数の容器を含む。全ての成分はすぐに使える希釈剤として、又は乾燥状態、又は凍結乾燥状態、又は希釈状態又は懸濁状態として供給することができ、単一成分又は全ての成分は凍結してもよく、又は使用するまで室温に保存してもよい。血清は、これらのケースにおいて、使用前に免疫アッセイを好ましくは凍結温度に保存できるように、例えば−20℃で、ショックフリーズすることが好ましい。
【0199】
免疫アッセイに加えられる追加の成分は、標準タンパク質、トレーサー;コントロール血清、好ましくは抗体でコーティングされたマイクロタイタープレート、例えば、試験用、洗浄用、又は基質反応用バッファー、及び酵素基質自身である。
【0200】
研究室及び臨床目的としての免疫アッセイ、抗体の生成及び使用の一般的原理は、例えば、Antibodies,A Laboratory Manual(Harlow,E.,and Lane,D.,Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY,1988)に見出される。
【0201】
9.スクリーニング法
また、本発明は、エフェクターが疑わしい試料をRGMタンパク質又はポリペプチドとインキュベートし、エフェクター−RGM複合体の形成について混合物を調べる、RGM受容体ネオゲニンのエフェクターを検出するための方法に関する。
【0202】
このようなエフェクターは、アゴニスト作用、部分的作用、拮抗作用又は逆アゴニスト作用を有していてもよい。それらは、例えば、合成低分子量物質、合成ペプチド、天然又は合成抗体分子又は天然物質であってもよい。
【0203】
本発明のこのような方法は、通常、将来の使用に関して最も普及されると思われる多くの異なる物質から選択することが可能な、in vitroスクリーニング法として実施される。
【0204】
例えば、コンビナトリアルケミストリーを用いて、多数の潜在的な活性物質を含む広範囲の物質ライブラリーを提供することができる。所望の活性を有する物質についてのコンビナトリアル物質ライブラリーのスクリーニングは自動化することができる。好ましくはマイクロタイタープレート上に配置した個々のアッセイの効率的な評価のためにロボットスクリーニング装置が用いられる。従って、本発明は、スクリーニング法、すなわち、好ましくは、後述する少なくとも1種の方法が用いられる、一次及び二次スクリーニング法の両方にも関する。複数の方法が用いられる場合、物質の1種の及び同じ試料、又は異なる試料について、連続的又は同時に調べることが可能である。
【0205】
このような方法を実施するための効率的な技術は、活性物質のスクリーニングの分野において公知である、SPAと省略される、シンチレーション近接アッセイである。このアッセイを実施するためのキット及び成分は、例えば、Amersham Pharmacia Biotechから購入することができる。原則として、可溶化された、又は膜結合受容体が、シンチラントを含む小さい蛍光ミクロスフェアに固定化される。例えば、放射性リガンドが固定化受容体に結合する場合、シンチラント及び放射性リガンドは空間的に近接しているので、シンチラントが励起され発光する。
【0206】
このような方法を実施するための更なる効率的な技術は、活性物質のスクリーニングの分野において公知である、FlashPlateR技術である。このアッセイを実施するためのキット及び成分は、例えば、NEN Life Science Productsから購入することができる。この原理は、同様にシンチラントでコーティングされたマイクロタイタープレート(96又は384ウェル)をベースとする。
【0207】
同様に、本発明は、これらの方法により同定することのできる、物質又は物質の混合物の一部に関する。
【0208】
以下の非限定的な生成及び使用の実施例を参照し、本発明を更に詳細に説明する。
【0209】
実験の部
1.一般情報
アッセイ方法1:ラット皮質ニューロンを用いた神経増殖試験におけるRGMタンパク質の効果の証明
神経増殖試験を実施することにより、in vitroにおけるRGMタンパク質の効果を調べた。この目的のために、ラットの皮質ニューロンを以下の媒体を用いて調製した。
【0210】
ストック媒体(1Lあたり);90mLのGB5、100mLの最小必須培地−Eagle(10×;Gibco,オーダー番号21430.020)、pH7.0、280〜310mosmのミリポア水で1000mlにする。
【0211】
GBS(1Lあたり):22.6gのNaHCO、44.4gのグルコース、ろ過により滅菌。
【0212】
植え付け培地(PM)(1Lあたり):0.8mMのグルタミン、100mLの加熱不活性化ウシ胎児血清(FCS)、100mLの加熱不活性化ウマ血清、ストック媒体で1000mLにする。
【0213】
維持媒体(MM)(1Lあたり):0.8mMのグルタミン、100mLの加熱不活性化ウマ血清、ストック媒体で1000mLにする。
【0214】
トリプシン溶液:カルシウム/マグネシウムを含まないPBS中、0.1%トリプシン、0.04%EDTA、ろ過により滅菌。
【0215】
皮質ニューロンは、妊娠しているラット(胚日齢18日(E18))を、頸椎脱臼により犠牲にし、腹腔を開き、胎児を含む子宮を除去し、PBSで洗浄することにより得た。顕微解剖鋏を用いて子宮を縦方向に切り開き、胎児を取り出した。喉を切ることにより胎児を犠牲にし、脳を除去し、前脳皮質を解剖した。皮質を、それぞれ1mLの0.1%濃度のトリプシン溶液中で37℃で5分間インキュベートし、維持媒体(MM)を用いて反応を停止し、合計10mLのMM中で5分間インキュベートした後、先端熱加工してオリフィス直径が小さくなったパスツールピペットを用いて粉砕した。細胞懸濁液を、1200rpmで10分間遠心分離し、上清を吸引して捨てた。細胞ペレットを、8mLのMMに回収し、慎重に再懸濁した。Neubauer血球計算板中で細胞の数を数え、細胞数を、MM中、約400000細胞/0.2mLに調整し、再凝集させた。この目的のために、ウェルあたり200μLの細胞懸濁液をグラスチャンバースライド(LabTeK,オーダー番号177402)に置き、37℃で24時間インキュベートした。この間にニューロンの凝集体が形成された。10〜80μLのこれらの凝集体を、ポリ−D−リジンをコーティングした96ウェルのプレート(例えば、Becton Dickinson Biocoat 96−well black plate #354640)の各ウェルに入れ、適切な場合、MMを用いて約70〜90μLにした。1時間後、10μL容量中の種々の濃度でRGMペプチドを加え、適切な場合、MMを用いて100μLにした。24〜48時間後、軸索の成長を、光学顕微鏡下の試験により最初に評価し、次いで、100μLの4%パラホルムアルデヒド溶液を加えることにより培養物を固定し、4℃に、少なくとも12時間保存した。一次抗体とのインキュベーションを除き、免疫蛍光染色によるチューブリン細胞骨格の調製のための全ての工程は室温で実施した。ウェルを、100〜300μLのPBSで5〜15分間、1回洗浄し、細胞を100μLの0.1%Triton X−100中で10〜20分間インキュベートすることにより透過化処理した。ウェルを、300μLのPBSで5〜15分間、2回洗浄し、PBS中の1%ウシ血清アルブミン溶液100μLで60分間インキュベートした。一次抗体(例えば、Sigma、モノクローナル抗−β−チューブリンイソタイプIIIクローンSDL 3D10、#T8660;Abcam、TuJI #ab14545)をPBS中の1%ウシ血清アルブミン溶液で1:1000に希釈し、ウェルあたり50μLで4℃で一晩インキュベートした。ウェルを、100〜300μLのPBSで5〜15分間、3回洗浄した。蛍光標識二次抗体(Jackson ImmunoReserch,Cy3 conjugated Affinity Pure Donkey Anti Mouse # 715−165−151)を、細胞核を可視化するために、0.5μg/mLのビスベンズイミド(H33258)を更に含むPBS中の1%ウシ血清アルブミン溶液で1:500に希釈し、この希釈液の50μLをウェルあたり室温で1〜2時間、又は4℃で一晩インキュベートした。ウェルを、100〜300μLのPBSで5〜15分間、2回洗浄し、PBSを吸引し、1滴(約50μL)のFluoromount G(Southern Biotechnology Associates Inc#010001)を各ウェルに加えた。倒立蛍光顕微鏡(Zeiss,Axiovert 200M)中に画像を記録し、各ケースにおいて、標識された二次抗体蛍光及びビスベンズイミド蛍光を検出した。2種の蛍光によって覆われた領域を、画像解析プログラム(Media Cybernetics,Image−Pro Plus)を用いて確認した。軸索増殖指数(AG−I)を確認するために、二次抗体染色(軸索増殖及び細胞凝集の染色)及びビスベンズイミド染色(細胞凝集の生殖)の領域の相違を形成し、ビスベンズイミドの領域によって分割した。従って、この指数は、細胞凝集サイズに対する軸索により覆われた領域の指標を表す。
【0216】
アッセイ方法2:ヒト皮質ニューロンを用いた神経増殖試験におけるRGMペプチドの効果の証明
ヒト多能性癌細胞系Ntera(DSMZ ACC527)は、確立された細胞培養モデルである。このケースにおいては、軸索は細胞集合体から成長し、各凝集体の周囲に軸索のコロナを形成する。
【0217】
この目的のために、2.5×10個のNtera細胞を175cmの瓶に播種し、10μMのレチノイン酸(Sigma)(培地:D−MEM(Gibco/Invitrogen 31966−021)、10%ウシ胎児血清、100u/mLのペニシリン、100μg/mLのストレプトマイシン(両方ともGibco/Invitrogen))中で3週間分化させた。次いで、分化した細胞を新しい瓶に1:6に分割し、レチノイン酸なしで更に2日間培養した。得られた細胞に接着する神経細胞を、キャッピングにより剥離し、Neurobasal培地(Neurobasal培地(Gibco/Invitrogen 21103−049)、2mMのL−グルタミン(Gibco/Invitrogen 25030−024)、100u/mLのペニシリン、100μg/mLのストレプトマイシン(両方ともGibco/Invitrogen))中、振盪したフラスコ内で一晩振盪(培養器で)することにより凝集させた。
【0218】
次の日に、Ntera凝集体を、96ウェルのプレート(Biocoat ポリ−D−リジンCellware 96ウェルBlack/Clear Plate(Becton Dickinson # 35 6640))中のポリ−D−リジン及びラミニン(Sigma)(10μg/mL)中に播種した。RGMペプチド及び断片の阻害効果を、種々の濃度の試験物質を加えることにより解析した。
【0219】
アッセイ方法3:RGM A−ネオゲニン結合アッセイ:
a)材料
・イムノプレート:Cert.Maxi Sorp F96(NUNC,439454)
・組換え型ヒトRGM A、R&D Systems;Prod.#2495−RM(260μg/mL)
・組換え型ヒトネオゲニンFc、Abbott;Ludwigshafen(ALU 1514/122;425μg/mL)
・ペルオキシダーゼ−結合、アフィニティ精製マウス抗−ヒトIgG Fc断片Ab(Jackson Immuno Research,Code:209−035−098)(0.8mg/mL)
・現像剤基質:Immuno Pure TMB Substrate Kit(Pierce,#34021)
・硫酸(Merck,#4.80354.1000)
b)方法:
1.RGM Aのイムノプレートへの結合:
・50mM NaCO中の2.5μg/mLのRGM A(R&D)(50μL/ウェル)
・37℃で1時間インキュベート
2.洗浄工程:
・PBS/0.02% Tween20で3回洗浄(100μL/ウェル)
3.非特異的結合部位のブロッキング:
・PBS/0.02% Tween中の3%BSAでブロッキング(200μL/ウェル)
・37℃で1時間インキュベート
4.ネオゲニンの結合:
・BSA PBS/0.02% Tween中の1%BSA中の希釈液中にネオゲニンを追加(初期濃度 1μg/mL)
・37℃で1時間インキュベート
5.洗浄工程:
・PBS/0.02% Tween20で3回洗浄(100μL/ウェル)
6.結合したネオゲニンの抗体による検出:
・HRPをカップリングしたマウス抗−ヒトIgG Fc断片Ab(PBS/1%BSA中に1:2500に希釈)の添加(50μL/ウェル)
・37℃で1時間インキュベート
7.洗浄工程:
・PBS/0.02% Tween20で3回洗浄(100μL/ウェル)
8.現像
・50μL/ウェルの現像基質の追加(Immuno Pure TMB基質、Pierce)
・室温で1〜30分間インキュベート
・50μLの2.5M HSO/ウェルを用いて反応の停止
【0220】
2.調製例
調製例1:ほ乳類細胞内におけるRGM Aタンパク質断片の調製
軸索の増殖及びネオゲニン結合アッセイ法における活性RGM Aドメインの特徴づけを行なうため、RGM A(AA168−422)、及びサイズにおいて70〜80アミノ酸のRGM A断片(断片1:169−238;断片2:218−284;断片3:266−335;断片4:316−386;断片5:369−238;及び断片6:(168−422))をほ乳類細胞(HEK293)内でAP融合タンパク質として発現させた。
【0221】
この目的のために、それぞれの断片をコードするDNAを、ベクターpDEST AP/ccdb/Myc/His(Invitrogen,Gateway Vektor System)にクローニングした(AP−アルカリホスファターゼ;PPC−PreScissonプロテアーゼ)。それぞれの断片領域をコードするDNAを、この目的のためにRZPDクローン(クローンAL136826(DKFZp434D0727);公開されたRZPD(配列BC015886、AL136826)からPCRによって増幅した。これを実施するため、以下のヌクレオチドを用いた。
【0222】

【0223】
得られたPCR産物を、特異的組換え(attL x attR)によってベクターpDEST AP/ccdb/Myc/His内にクローニングし、配列が正しいことを配列決定により確認した。
【0224】
HEK293細胞(ATCC CRL 1573)をプラスミドでトランスフェクトした。これを実施するために、トランスフェクションの前日に、15cmのプレートに、80%の密度で細胞を播種した。次の日に、生成業者のプロトコールに従い、DNAをリポフェクタミン2000(Invitrogen)と混合し、細胞を、それと共に12時間インキュベートした。選択的培養条件(D−MEM(Gibco/Invitrogen 31966−021)、10%ウシ胎児血清、100u/mLのペニシリン、100μg/mLのストレプトマイシン(両方ともGibco/Invitrogen)、150μg/mLのゼオシン/Invitrogen)下での更に4週間の培養後、安定に発現するクローンを、増殖培地内でアルカリホスファターゼの検出により選択した。
【0225】
タンパク質生産のために、安定に発現する細胞を増殖培地内で増殖させ、70%集密に達した時に、生産用培地(Pro293培地(BioWhittaker/Cambrex,12−764Q)、2mMグルタミン(Invitrogen))に移した。更に4日間培養した後、細胞の破片から分離して生産用培地を集め、膜濃縮器(Vivaspin30)により濃縮した。
【0226】
次いで、Ni−キレートアフィニティークロマトグラフィーにより、発現したAP−RGM融合タンパク質を上清から精製した。この目的のために、Ni−NTA−アガロース(Qiagen)を緩衝液A(50mM HEPES−KOH、100mM NaCL、10%グリセロール、10mMイミダゾール)で平衡化した。次いで、濃縮した上清を、4℃で1時間回転させながらNi−NTA−アガロースとインキュベートした。Ni−NTA−アガロースを3回洗浄し、結合したタンパク質を溶出緩衝液(250mMイミダゾールを含むバッファーA)で溶出した。
【0227】
ドット−ブロット、SDS−PAGE及びウェスタンブロット解析を用いて、タンパク質の解析を実施した。濃度は、Bradfordタンパク質検出法及びAP濃度のELISA測定により定量した。
【0228】
実施例
実施例1:ネオゲニンを発現するHEK293細胞の断片解析
a)概略:
ニワトリ由来のRGM Aタンパク質の活性な成長阻害活性が、アミノ酸の150〜350位の間に位置することは既に知られている。
【0229】
従って、この範囲をカバーするヒトRGM Aタンパク質の断片を調製した。次いで、個々のタンパク質断片を産生し、それらを培地中に放出するクローン性細胞培養を調製するために、その表面に内在的にRGM受容体を有するHEK293細胞を、これらの断片でトランスフェクトした。全ての断片を、アルカリホスファターゼ酵素と結合した融合タンパク質として生成した。細胞増殖の減少、細胞死の増加及び/又は細胞基質接着の変化によって、これらの細胞内の活性ドメインの存在は注目すべきである。
【0230】
細胞死の増加及び増殖の減少は、当然、活性断片の生産量による直接の影響を有する。産生される断片の量を、半定量的ドット−ブロット分析を用いて評価した。
【0231】
b)方法:
調製例1において調製されたRGM A断片をHEK293に導入した。安定にトランスフェクトされた細胞を、増殖培地(D−MEM(Gibco/Invitrogen 31966−021)、10%ウシ胎児血清、100u/mLのペニシリン、100μg/mLのストレプトマイシン(両方ともGibco/Invitrogen)、150μg/mLのゼオシン(Invitrogen))中で密集するまで培養した。次いで、培養上清の1mLを、スロット−ブロットチャンバー内でニトロセルロース膜(Sartorius)でろ過した。NBT/BCIP基質(Roche)と共にニトロセルロース膜をインキュベートすることによって、膜に固定化されたAP−RGM融合タンパク質を、アルカリホスファターゼ活性を検出することにより検出した。活性断片の産生量を、半定量的ドット−ブロット分析を用いて検出した。
【0232】
このアッセイに基づき、安定な細胞クローンは以下のカテゴリーに分類された。
【0233】
−多量に産生する細胞クローン(Sプロデューサ)
−中程度に産生するクローン
−弱く産生する細胞クローン
−産生しないクローン(0プロデューサ)
更に、産生しないクローンに対する多量に産生するクローンの比を決定した。
【0234】
c)結果:
評価した個々のRGM A断片について以下の値が得られた。
【0235】
【表3】

【0236】
このアッセイにおいて、断片3及び6は特に顕著な活性を示した。
【0237】
実施例2:神経線維増殖アッセイにおける、合成RGM Aペプチドの研究
この目的のために、以下のRGM Aペプチドを合成し、種々の濃度において、前記神経線維増殖アッセイ(アッセイ方法1及びアッセイ方法2)において評価した。
【0238】
ペプチド1:AA267−285
ペプチド2:AA308−325
ペプチド3:AA358−377
ペプチド4:AA378−400
(配列番号2に基づく番号付け)
今日までにアッセイされたペプチドのうち、ペプチド1が、確実に、及び再現可能に阻害活性を示した。従って、ペプチド1(AA267−285)が、RGMタンパク質の活性ドメインの一部を形成すると思われる。
【0239】
試験結果を、図3A、B、C及び4A、Bに示す。
【0240】
図3Aは、ペプチド4と比較し、ペプチド1が、ラット神経細胞を用いた試験(アッセイ方法1)において、10μg/mLの濃度で、顕著に神経線維の増殖を阻害することを示す。図3Bは、皮質ニューロンの神経線維増殖における、種々の濃度(0〜30μg/mL)のペプチド1の効果を示す。3μg/mL以上の濃度で、顕著な阻害活性が検出された。これに対し、ペプチド4は同じ濃度において活性を示さない(図3Cを参照)(Ag−I=軸索増殖指数、関連する軸索を有する神経凝集体の全面積−凝集体の面積に相当する。)。
【0241】
図4Aは、ペプチド1が30μg/mLの濃度で、ヒトNtera細胞の神経線維増殖を顕著に阻害するが、ペプチド4は阻害しないことを示す(アッセイ方法2)。図4Bは、観察されたペプチド1の阻害効果の統計的有意性を示す。
【0242】
実施例3:神経線維増殖アッセイにおける、合成RGM A断片の研究
調製例1で調製された、6種のRGM A断片(再度、以下に示す)を、ヒトNtera神経細胞を用いた軸索増殖アッセイ(前記アッセイ方法2を参照)における阻害活性についてアッセイした。
【0243】
断片1:アミノ酸169−238
断片2:アミノ酸218−284
断片3:アミノ酸266−335
断片4:アミノ酸316−386
断片5:アミノ酸369−422
断片6:アミノ酸168−422
(それぞれのケースにおいて、配列番号2に基づく番号付け)
結果を、添付する図5A、B及びCに示す。
【0244】
全体として、6種のRGM A断片を、Ntera増殖アッセイにおいてアッセイした。断片2、3及び6は活性であるが、断片1、4及び5が不活性であった。
【0245】
断片6は、in vivoで発現される、そのままの、活性な完全に処理されたRGM Aに相当する。それは、ヒトRGM Aタンパク質の重要な神経線維増殖−阻害ドメインが、断片2及び3の領域、すなわちアミノ酸218位及び335位の間に位置するというこれらのデータから得られる。従って、更に正確にこの阻害ドメインを特徴づけるために、次に工程で、断片2及び3の領域由来の短いRGM Aペプチドをアッセイする。
【0246】
実施例4:神経線維増殖アッセイにおける、合成RGM Aペプチドの研究
以下の表に示すペプチドを、軸索増殖アッセイ(アッセイ方法2を参照)においてアッセイした。
【0247】
表:ペプチド1由来の隣接するRGM Aペプチドを合成し、軸索増殖アッセイにおいて用いた。
【0248】
【表4】

【0249】
ペプチド1は、実施例2で既にアッセイした。
【0250】
試験結果を図6A及びBに示す。
【0251】
アッセイしたRGM Aペプチドのうち3種は、NTera増殖アッセイにおける神経線維増殖の大きな減少をもたらす(図6A)。これらの活性なRGM Aペプチドは以下のペプチド、すなわちペプチド1、ペプチドdown−1及びペプチドup−1である。不活性又は弱い活性のみのペプチドは以下のペプチド、すなわちペプチド5−Ak、ペプチド6−Ak及びペプチド7−Akである(図6B)。これは、RGM Aの阻害ドメインの1つが3つの活性RGM Aペプチドによって固定される領域、すなわち、約250〜300、特に約260〜291位に伸長し、従って、267〜285位のコア領域を含むヒトRGM Aタンパク質の領域に位置することを示す(配列番号7、8を参照)。高濃度のペプチド成長を阻害する傾向を示す2種のペプチド6−AK及び7−AKの活性を基準として(図6B)、同様に、RGM Aが更なる阻害ドメインを有し、それ故、本発明が約210〜260及び約290〜350位の領域におけるドメインに関することが完全に考えられる。
【0252】
実施例5:抗体を用いた、RGM Aの阻害ドメインの中和
この実験における意図は、RGM Aの阻害ドメインの活性ペプチドに対して生じたポリクローナル抗体が、RGM Aとその受容体ネオゲニンとの相互作用を遮断することができるかどうか、及び活性、及び最も強力なRGM A断片2のin vitroにおける神経線維増殖阻害を中和することができるかどうかをチェックすることであった(実施例2を参照)。
【0253】
従って、ペプチドdown−1は活性RGM A断片2の一部を形成するので、実施例の目的で用いた。キャリアタンパク質(LPH)と結合し、このペプチドを以下のスキームに従い、2匹のウサギを免疫するために用いた。
【0254】
【表5】

【0255】
数回の免疫後、上昇したdown−1に特異的な抗体を精製し、種々のアッセイ系において用いた。
【0256】
a)RGM A−ネオゲニン結合アッセイ:
アッセイ方法3に従い、方法を実施した;試験結果を図7Aに示す。
【0257】
b)軸索増殖アッセイにおける活性RGM A断片の中和:
ペプチドdown−1に対して生じたポリクローナル抗体は、RGM Aタンパク質とその受容体ネオゲニンとの相互作用を非常に効率的に遮断した。従って、次のアッセイにおいては、down−1に特異的な抗体が、非常に強力なRGM A断片2を中和することができるかどうかを調べた(実施例3を参照)。
【0258】
アッセイ方法2に従い、方法を実施した;試験結果を図7Bに示す。
【0259】
要約すると、ペプチドdown−1に対するポリクローナル抗体が、RGMAネオゲニン結合アッセイにおいて、ネオゲニンとRGM Aとの相互作用を阻止し、軸索増殖アッセイにおいてRGM A断片の阻害活性をほとんど完全に中和することが示される。従って、RGM Aタンパク質のアミノ末端アミノ酸250〜300、特に260〜291間の領域が阻害活性に特に重要であり、新規な機能的関連ドメインとして本明細書に開示される。
【図面の簡単な説明】
【0260】
【図1】図1は、ヒト型のRGM A、RGM B及びRGM Cの配列である。
【図2】図2は、RGM分子の構造の図表示である。
【図3A】図3Aは、ラット神経細胞の神経線維増殖における、種々のRGM Aペプチド断片の影響を示す蛍光顕微鏡写真である。
【図3B】図3Bは、本発明のRGM Aペプチド1の軸索増殖−阻害活性の濃度依存性を示すための、測定した軸索増殖指数の棒グラフを示す。
【図3C】図3Cは、RGM Aペプチド4についての対応する棒グラフを示す。
【図4A】図4Aは、ヒト神経NTera細胞の神経線維増殖におけるRGM Aペプチド1及び4の影響を説明するヒト神経NTera細胞の蛍光顕微鏡写真である。
【図4B】図4Bは、ペプチド1、ペプチド4及びコントロール(PBS)を用いた試験シリーズについて、対応して測定された軸索増殖指数を示す。
【図5A】図5Aは、NTera神経線維増殖アッセイにおけるRGM A断片の解析の結果である。
【図5B】図5Bは、NTera神経線維増殖アッセイにおけるRGM A断片のアッセイ結果の蛍光顕微鏡写真である。
【図5C】図5Cは、NTera神経線維増殖アッセイにおけるRGM A断片の解析の追加結果である。
【図6A】図6Aは、NTera神経線維増殖アッセイにおける、RGM Aペプチド1及びそれと部分的に重複する2個のペプチドの解析結果である。
【図6B】図6Bは、NTera神経線維増殖アッセイにおける、更に3種のRGM Aペプチドの解析結果である。
【図7A】図7Aは、RGM A−ネオゲニン結合アッセイの結果である。
【図7B】図7Bは、NTera神経線維増殖アッセイにおいて、Down−1特異的ポリクローナル抗体が、強力なRGM A断片2の阻害活性をどのように中和するのかを示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反発誘導分子(RGM)のネオゲニン受容体結合ドメイン。
【請求項2】
ほ乳類のRGMに由来する、請求項1記載のネオゲニン受容体結合ドメイン。
【請求項3】
配列番号2に示される、ヒトRGM A、配列番号4に示されるヒトRGM B、又は配列番号6に示されるヒトRGM Cに由来する、請求項1又は2記載のネオゲニン受容体結合ドメイン。
【請求項4】
RGD切断部位に対するRGMのC末端、及びGPIアンカー領域に対するN−末端のアミノ酸配列領域からの150個以下の連続したアミノ酸残基を有するアミノ酸配列を含む、請求項1から3までのいずれか1項に記載のネオゲニン受容体結合ドメイン。
【請求項5】
配列番号7に示される、以下の部分配列を特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載のネオゲニン受容体結合ドメイン。
GXVEXAXYIGTTXRQ
[式中、X〜Xはいずれかのアミノ酸残基である]
【請求項6】
配列番号2に示される200〜350位のアミノ酸、又は配列番号2に示される200〜325位のアミノ酸、又は配列番号2に示される200〜300位のアミノ酸、又は配列番号2に示される200〜285位のアミノ酸、又は配列番号2に示される250〜285位のアミノ酸、又は配列番号2に示される260〜285位のアミノ酸、又は配列番号2に示される215〜340位のアミノ酸、又は配列番号2に示される260〜340位のアミノ酸、又は配列番号2に示される250〜300位のアミノ酸、又は配列番号2に示される260〜291位のアミノ酸、又は配列番号2に示される210〜260位のアミノ酸、又は配列番号2に示される290〜350位のアミノ酸のアミン酸配列を含む、請求項1から5までのいずれか1項に記載のネオゲニン受容体結合ドメイン、又は、それらの機能的なネオゲニン受容体結合断片。
【請求項7】
配列番号2に示される260〜291又は267〜285位の配列領域、配列番号4に示される260〜325位の配列領域、又は配列番号6に示される250〜300位の配列領域に由来する、少なくとも10個の連続したアミノ酸残基を含む、ネオゲニン受容体結合ドメイン又はその結合断片。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項に記載のネオゲニン受容体結合ドメインの抗原性ポリペプチド断片。
【請求項9】
RGMのネオゲニン受容体への結合を調節する免疫グロブリン分子を製造するために用い得る、請求項8記載の抗原性ポリペプチド断片。
【請求項10】
配列番号7、8、9、10又は23〜29又は31〜34のいずれかに示す配列の1種のペプチドの少なくとも10個の連続したアミノ酸残基を含む、請求項8記載の抗原性ポリペプチド断片。
【請求項11】
RGMに対するポリクローナル抗血清又はモノクローナル抗体を製造するための、請求項1から7までのいずれか1項記載のネオゲニン受容体結合ドメイン、又は請求項7から9までのいずれか1項記載のポリペプチド断片の使用。
【請求項12】
前記抗血清又は抗体が、RGMのネオゲニン受容体への結合を調節する、請求項11記載の使用。
【請求項13】
診断又は治療において用いるための、請求項11又は12記載のRGMに対するポリクローナル抗血清又はモノクローナル抗体。
【請求項14】
ネオゲニン受容体と、RGM又はRGM断片との相互作用によって媒介される疾患又は病的状態の診断又は治療のための医薬組成物を製造するための、請求項13記載のポリクローナル抗血清又はモノクローナル抗体の使用。
【請求項15】
疾患又は病的状態が、
a)頭蓋骨、脳及び脊髄の機械的損傷、
b)神経変性、炎症性及び自己免疫疾患等の慢性的疾患
c)神経再生、軸索発芽、軸索伸長、及び神経可塑性の機能障害、
d)腫瘍性疾患及び腫瘍転移
から選択される、請求項14記載の使用。
【請求項16】
RGM又はRGM断片と関連受容体との相互作用を妨害又は損なうことにより媒介される疾患又は病的状態の診断又は治療のための組成物を製造するための、請求項1から6までのいずれか1項に記載のネオゲニン受容体結合ドメイン、又は請求項8から10までのいずれか1項に記載のポリペプチド断片の使用。
【請求項17】
疾患又は病的状態が、
a)精神異常に関連する軸索形成過程の変化、及び過度の軸索発芽及び/又は病的シナプス形成によって引き起こされる慢性的な痛みの状態、
b)正常な機能が損なわれた鉄代謝に関連する障害、
c)正常な機能が損なわれた骨成長に関連する障害、
d)変性軟骨変形に関連する障害、
e)椎間板及び椎骨に対する損傷に関連する障害、
f)調節されない、制御されない細胞移動過程に関連する障害
から選択される、請求項16記載の使用。
【請求項18】
RGM結合リガンドの検出又は同定のための標的としての、請求項1から7までのいずれか1項記載のネオゲニン受容体結合ドメイン、又は請求項8から10までのいずれか1項記載のポリペプチド断片の使用。
【請求項19】
能動又は受動免疫のための免疫原としての、請求項1から7のいずれか1項記載のネオゲニン受容体結合ドメイン、又は請求項8から10までのいずれか1項記載のポリペプチド断片の使用。
【請求項20】
請求項1から7までのいずれか1項記載のネオゲニン受容体結合ドメイン、又は請求項8から10までのいずれか1項記載のポリペプチド断片の抗原量を用いてほ乳類を免疫することにより得ることのできるポリクローナル抗血清。
【請求項21】
ヒト化された形態であってよい、請求項1から7までのいずれか1項記載のネオゲニン受容体結合ドメイン、又は請求項8から10までのいずれか1項記載のポリペプチド断片、又はその抗原結合断片に対するモノクローナル抗体。
【請求項22】
a)請求項1から7までのいずれか1項記載のネオゲニン受容体結合ドメイン、又は請求項8から10までのいずれか1項記載のポリペプチド断片、
b)請求項20又は21記載のモノクローナル又はポリクローナル抗体
から選択される少なくとも1種の活性成分を、薬学的に許容される担体中に含む医薬組成物。
【請求項23】
くも膜下腔内、静脈内、皮下、経口又は非経口、経鼻及び吸入投与のための、請求項22記載の医薬組成物。
【請求項24】
少なくとも1種の制御性核酸配列に動作可能に結合した、請求項1から7までのいずれか1項記載のネオゲニン受容体結合ドメイン、又は請求項8から10までのいずれか1項記載のポリペプチド断片をコードする、少なくとも1種のコード化された核酸配列を含む発現ベクター。
【請求項25】
請求項24記載の少なくとも1種のベクターを含む組換え微生物。
【請求項26】
請求項21記載のモノクローナル抗体を生産する、ハイブリドーマ細胞系。
【請求項27】
請求項25記載の組換え微生物を培養し、生産されたタンパク質産物を培養物から分離することを含む、請求項1から7までのいずれか1項記載のネオゲニン受容体結合ドメイン、又は請求項8から10までのいずれか1項記載のポリペプチド断片を製造する方法。
【請求項28】
請求項26記載のハイブリドーマ細胞系を培養し、生産されたタンパク質産物を培養物から分離することを含む、請求項21記載のモノクローナル抗体を製造する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【公表番号】特表2009−510002(P2009−510002A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−532684(P2008−532684)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【国際出願番号】PCT/EP2006/009497
【国際公開番号】WO2007/039256
【国際公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(502159343)アボット ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディトゲゼルシャフト (24)
【氏名又は名称原語表記】Abbott GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Max−Planck−Ring 2, D−65205 Wiesbaden, Germany
【Fターム(参考)】