説明

回転機構付軸方向微動機構およびそれを用いた位置決め装置

【課題】高応答の微動動作が可能であると共に圧電アクチュエータの破損を防止することができる微動機構を提供する。
【解決手段】転がり軸受装置20a、20bの外輪21a、21bの外周面が嵌合するハウジング27と、転がり軸受装置20a、20bの内輪23a、23bの内周面が嵌合する外周面を有する軸11と、外部から印加された電圧に応じて軸方向に伸縮する圧電アクチュエータ36とを備え、軸11の一端に配置された回転機構付軸方向微動機構41において、2つの内輪23a、23bを軸11に軸方向に固定し、外輪の一方21aをハウジング27に軸方向に拘束し、外輪の他方21bの側に圧電アクチュエータ36を配置し、圧電アクチュエータ36の伸縮により2つの外輪21a、21b間の軸方向間距離を変化させて所定の予圧を変化させ、軸方向間距離の変位量の半分が、軸11とハウジング27の相対移動量となる微動動作を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長ストロークの範囲で高精度な微細位置決めを行う回転機構付軸方向微動機構およびそれを用いた位置決め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の位置決め装置は、ねじ軸とナットを螺合させたボールねじ装置を用いて長ストロークの範囲を駆動する粗動機構と圧電アクチュエータによる微動機構を組合せて粗動動作および微動動作を行っており、粗動テーブルと微動テーブルの間やボールねじ装置のナットと移動台の間に圧電アクチュエータを配置し、基台と微動テーブルや移動台との位置を圧電アクチュエータの伸縮により変化させて長ストロークの範囲でナノメータレベルの高精度な微細位置決めを行っている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
また、ボールねじ装置のねじ軸とナットの間のバックラッシュをコイルスプリングにより無くすようにし、ねじ軸の一端と基台との間に配置した圧電アクチュエータを伸縮させてナットに固定された移動台のねじ軸の軸方向位置の微細位置決めを行っているものもある(例えば、非特許文献2参照。)。
このような場合に用いられる圧電アクチュエータは、一般に積層型の圧電アクチュエータが用いられるが、積層型の圧電アクチュエータは圧縮方向の荷重に対しては十分な強度や剛性を有するが、引張方向の荷重に対しては圧電アクチュエータの材料の機械的特性や積層間の接着強度による強度が極めて弱く、小さな引張荷重であっても破損してしまう場合がある。
【0004】
この問題を解決するために、圧電アクチュエータの製造メーカ(例えば、独国Physik Instrument社)では、図11に示すように圧電アクチュエータ100の出力軸101をバネ102で押圧し、引張荷重が出力軸に作用した場合においても圧電アクチュエータ100には圧縮荷重が作用する構造とすることを推奨している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】大塚二郎他1名著、「精密位置決め機構」、第2版、株式会社工業調査会、2001年8月15日、p.118−201
【非特許文献2】大塚二郎他2名、「1nm分解能の小型変位センサと小型超精密位置決め装置の開発」、精密工学会誌、財団法人精密工学会、平成15年10月5日、第69巻、第10号、p.1431
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した非特許文献1および非特許文献2においては、ボールねじ装置のナットと移動台の間等やねじ軸の一端と基台との間に圧電アクチュエータを配置してその両端部をナットや移動台に直接取付けているため、位置決め装置を左右に移動させると左右方向に荷重が作用し、圧電アクチュエータに引張荷重が作用して圧電アクチュエータを破損する場合があるという問題がある。
【0007】
また、非特許文献1および非特許文献2の位置決め装置に上記図11に示した構造を適用した場合は、位置決め装置の圧電アクチュエータに作用する引張荷重が、出力軸に配置されたバネによる圧縮荷重より小さい範囲における低速での移動に対しては所定の位置決めを行うことができるものの、高速応答に対しては引張方向を支持しているバネが比較的柔らかいバネであるので、位置決め装置の微動機構の剛性が低下してその固有振動数が低下し、高速での微動動作を行おうとすると発振が生じて高速応答を行うことができなくなることがあるという問題がある。
【0008】
このことは、位置決め装置が2次元方向(X−Y方向)の移動を行う2軸の重ね合わせ構造の場合や、1軸であっても移動台に取付治具等の部品が取付られた結果、移動台の質量が大きくなる場合に特に重要である。
更に、圧電アクチュエータは上記の引張荷重ばかりでなく半径方向荷重に対してもその強度が弱いために圧電アクチュエータの出力軸の先端を球面にして圧電アクチュエータに半径方向荷重やモーメント力が作用しない構造が推奨されているが、微動機構に用いる圧電アクチュエータは他の部材に直接取付ける必要があり、その取付精度等によっては半径方向荷重やモーメント力が作用して早期に破損する場合があるという問題がある。
【0009】
更に、圧電アクチュエータをボールねじ装置のねじ軸やナットの同軸上に精度よく配置しようとすると、上記非特許文献1および非特許文献2に示される構造においては、その芯出し作業が煩雑になり、位置決め装置の組立が難しいという問題がある。
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、高応答の微動動作が可能であると共に圧電アクチュエータの破損を防止することができる微動機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するために、対向配置して所定の予圧を付与した2つの転がり軸受装置と、該転がり軸受装置のそれぞれの外輪の外周面が嵌合する内周面を有するハウジングと、前記転がり軸受装置のそれぞれの内輪の内周面が嵌合する外周面を有する軸と、外部から印加された電圧に応じて軸方向に伸縮する圧電アクチュエータとを備え、前記軸の一端に配置された回転機構付軸方向微動機構において、前記2つの内輪を前記軸に軸方向に固定し、前記外輪の一方を前記ハウジングに軸方向に拘束し、前記外輪の他方の側に前記圧電アクチュエータを配置し、前記圧電アクチュエータの伸縮により前記2つの外輪間の軸方向間距離を変化させて前記所定の予圧を変化させ、前記軸方向間距離の変位量の半分が、前記軸と前記ハウジングの相対移動量となる微動動作を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
これにより、本発明は、対向配置した転がり軸受装置を剛性の非常に高いバネ部材として機能させ、圧電アクチュエータに常に圧縮荷重を掛けながら粗動動作と微動動作を行わせることができ、圧電アクチュエータの圧縮方向の高い剛性と高剛性のバネ部材との組合せにより、位置決め装置全体の剛性を高く維持することができ、高速、高応答の安定した微動動作を行うことができると共に、圧電アクチュエータの引張荷重による破損の発生を防止することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1の回転機構付軸方向微動機構を示す断面図
【図2】実施例1の位置決め装置を示す平面図
【図3】実施例1の位置決め装置を示す側方から見た説明図
【図4】実施例1の制御装置を示す側方から見た説明図
【図5】実施例2の回転機構付軸方向微動機構を示す断面図
【図6】実施例2の位置決め装置を示す側方から見た説明図
【図7】実施例3の回転機構付軸方向微動機構を示す断面図
【図8】実施例4の回転機構付軸方向微動機構を示す断面図
【図9】実施例4の位置決め装置を示す側方から見た説明図
【図10】実施例5の回転機構付軸方向微動機構を示す断面図
【図11】圧電アクチュエータ取付けのメーカ推奨例を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、図面を参照して本発明による回転機構付軸方向微動機構およびそれを用いた位置決め装置の実施例について説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は実施例1の回転機構付軸方向微動機構を示す断面図、図2は実施例1の位置決め装置を示す平面図、図3は実施例1の位置決め装置を示す側方から見た説明図、図4は実施例1の制御装置を示す側方から見た説明図である。
図2、図3、図4において、1は位置決め装置である。
2は直線案内機構であり、レール3に転動体を介して組付けられた鞍状のスライダ4からなるリニアガイド装置であって、そのレール3は位置決め装置1の基台5に設置され、スライダ4の移動台取付面4aには位置決め装置1の移動台6がボルト等により取付けられる。本実施例の直線案内機構2は基台5に粗動機構10のねじ軸11の長手方向(軸方向という)と平行にねじ軸11の両側に設置された2本のレール3と各レール3に組付けられた2個、計4個のスライダ4とにより構成されている。
【0015】
粗動機構10は、ねじ軸11の外周面に形成した螺旋状の軸軌道溝11aと、ナット12の内周面に形成した軸軌道溝11aに対向する図示しないナット軌道溝とを複数の図示しないボールを介して螺合させた送りねじ装置としてのボールねじ装置13と、ねじ軸11の一端に配置され、基台5に設置されたステッピングモータ等の正逆回転可能な駆動モータ14と、駆動モータ14とねじ軸11とを連結するカップリング15およびねじ軸11の他端に配置され、基台5に設置された深溝玉軸受等の支持軸受16とにより構成される。
【0016】
本実施例の粗動機構10のナット12は移動台6に固定され、ねじ軸11とはオーバーサイズボール等による予圧により軸方向に遊びがない状態で螺合している。また支持軸受16はねじ軸11を回転可能に支持すると共にねじ軸11の他端をその軸方向の遊びにより移動可能に支持している。
17は位置センサであり、移動台6に固定され、基台5にねじ軸11と平行に設置されたスケール18に等間隔に形成された細かな凹凸を検出してその出力信号を後述する制御装置45へ出力する機能を有している。この出力信号を用いて制御装置45が移動台6と基台5との相対移動量を測定する。
【0017】
図1において、20a、20bはそれぞれ転がり軸受装置としてのアンギュラ玉軸受であり、外輪21a、21bの内周面に形成された外輪軌道22a、22bと、内輪23a、23bの外周面に形成された内輪軌道24a、24bとの間に配設された複数の転動体としてのボール25a、25bとにより構成される。
アンギュラ玉軸受20a、20bは、正面組合せとして対向配置され、その内輪23a、23bの内周面がねじ軸11の駆動モータ14側に形成された嵌合軸26の外周面に嵌合し、外輪21a、21bの外周面は基台5にボルト等により固定されたハウジング27の内周面に嵌合して支持軸受16と共にねじ軸11を回転可能に支持する。
【0018】
29は内輪係止部であり、ねじ軸11の軸軌道溝11aと嵌合軸26との間に形成された内輪23a、23bの外径と略同等の直径を有する大径部であって、内輪23aの一方の側面を係止する。
30は内輪間座であり、内輪23a、23bと略同等の外径および内径を有する円筒状部材であって、その内周面が嵌合軸26の外周面に嵌合して対向配置されたアンギュラ玉軸受20a、20bの内輪23a、23bの間に配置される。
【0019】
31は内輪スペーサであり、内輪23a、23bと略同等の外径および内径を有する円筒状部材であって、その内周面が嵌合軸26の外周面に嵌合して内輪23bの内輪間座30の反対側に配置される。
32はロックナットであり、ねじ軸11の嵌合軸26の駆動モータ14側に設けられたねじ部33に螺合して内輪係止部29との間で内輪23a、内輪間座30、内輪23b、内輪スペーサ31を締め付け、ねじ軸11上での内輪23a、23bの軸方向の移動を固定する。
【0020】
34はカップリング取付部であり、ねじ軸11の駆動モータ14側の端部に設けられたねじ部33の谷径以下の直径を有する小径部であって、カップリング15が嵌合して取付けられ、駆動モータ14からの動力が伝達される。
36は圧電アクチュエータであり、内輪スペーサ31が挿入可能な中空部36aを有する単独または複数の圧電素子を積層した中空のアクチュエータであって、その外周面をハウジング27の内径面に嵌合して外輪21bの駆動モータ14側に配置され、外部から印加される電圧に応じて軸方向に伸縮する。
【0021】
本実施例の圧電アクチュエータ36は複数の円環状の圧電素子を積層した積層型の円筒状のアクチュエータである。
37は外輪スペーサであり、外輪21a、21bと略同等の外径および内径を有する円筒状部材であって、その外周面がハウジング27の内径面に嵌合して外輪21bと圧電アクチュエータ36の間に配置される。
【0022】
38は外輪係止部であり、ハウジング27の内周面の内輪係止部29と対向する位置に形成された外輪21a、21bの内径と略同等の直径を有する段部であって、外輪21aの一方の側面を係止する。
39はカバーであり、内輪スペーサ31が挿入可能な内径を有し、ハウジング27と略同等の外径を有する中空の円盤部材であって、ハウジング27の駆動モータ14側の端面に形成されたねじ穴27aを用いてボルト等によりハウジング27に締結され、外輪係止部38との間で外輪21a、外輪21b、外輪スペーサ37および圧電アクチュエータ36を押圧する。
【0023】
これにより、外輪21aが外輪係止部38により軸方向の移動が拘束されると共に拘束されない側の外輪21bが外輪スペーサ37および非通電とした圧電アクチュエータ36を介して押圧され、対向配置されたアンギュラ玉軸受20a、20bに所定の予圧が付与されると共に外輪21a、21bの間の軸方向間距離としての隙間40が形成される。
上記のアンギュラ玉軸受20a、20b、嵌合軸26、内輪係止部29、内輪間座30、内輪スペーサ31、ロックナット32およびハウジング27、外輪係止部38、外輪スペーサ37、圧電アクチュエータ36、カバー39等を図1に示すようにねじ軸11の同軸上に配置することにより本実施例の回転機構付軸方向微動機構41が構成される。
【0024】
この回転機構付軸方向微動機構41および粗動機構10により本実施例の位置決め装置が構成される。
図4において、45は位置決め装置1の制御装置であり、位置センサ17の出力信号等により位置決め装置1の位置決め処理を実行する制御部46、制御部46が実行するプログラムやそれに用いる各種のデータおよび制御部46による処理結果等が格納される記憶部47、並びに駆動モータ14を駆動するモータ駆動部48、圧電アクチュエータ36を駆動するアクチュエータ駆動部49を備えている。
【0025】
本実施例の記憶部47には、位置センサ17の出力信号を基に移動台6の現在位置を認識し、認識した現在位置と目標位置との偏差により粗動動作を行うモータ駆動プログラム、位置センサ17により認識した現在位置の情報を取込ながらPID制御によるフィードバック制御により微動動作を行う微動動作プログラム等により移動台6を目標位置に停止させる位置決め処理プログラムが格納されており、制御部46と位置決め処理プログラムの各ステップにより本実施例の位置決め装置1のハードウェアとして各種の機能手段が形成される。
【0026】
また、記憶部47には移動台6を停止させる目標位置とその停止時間等を記した移動先指示テーブルが格納されている。
上記の構成の作用について説明する。
位置決め装置1が作動を開始すると、制御装置45の制御部46は位置決め処理プログラムを起動する。
【0027】
位置決め処理プログラムが起動すると、制御部46は初期設定指令をアクチュエータ駆動部49に送って電圧(初期設定電圧Voという。)に変換し、これを圧電アクチュエータ36へ供給して保持する。
この初期設定電圧Voは圧電アクチュエータ36の有効ストロークの約半分の伸びを与える電圧であり、圧電アクチュエータ36に初期設定電圧Voを印加した状態での移動台6の位置が原位置となる。
【0028】
次に、制御部46は移動台6が原位置に停止していることを確認し、記憶部47の移動先指示テーブルに記された最初の目標位置とその停止時間を読出す。
目標位置等を読出した制御部46は、目標位置と現在位置(本ステップでは原位置)との長さの差(偏差という。)を算出し、算出した偏差に相当する長さをボールねじ装置13のナット12が移動するときに必要なねじ軸11の回転数を演算し、これを粗動指令としてモータ駆動部48に送って駆動モータ14の駆動信号に変換し、これを駆動モータ14へ供給する。
【0029】
本実施例の駆動モータ14はステッピングモータであるので、駆動信号は演算したねじ軸11の回転数を回転させるために必要なステッピングモータの角度ステップ数に相当するパルス信号である。
駆動信号が供給されると、駆動モータ14はその駆動信号に対応した回転数分回転し、カップリング15を介して連結しているねじ軸11が回転して移動台6に固定されているナット12を軸方向に移動させる。
【0030】
このとき、制御部46は移動台6の移動に伴って位置センサ17が出力するスケール18の凹凸を示すパルス状の出力信号を受取り、その数を計数して移動台6の位置を認識しながら移動台6の停止(駆動モータ14の回転の停止)を待って待機し、移動台6が停止した時に認識していた位置を現在位置として認識する。
このようにして、ねじ軸11を回転させてナット12に固定されている移動台6を基台5に対して軸方向に移動させる本実施例の粗動機構10による移動台6の粗動動作が行われる。
【0031】
この場合に、圧電アクチュエータ36は初期設定電圧Voが印加されているだけで位置センサ17によるフィードバック制御はかけられていない。
また、圧電アクチュエータ36は、アンギュラ玉軸受20a、20bの予圧の反力による圧縮荷重が作用した状態となっている。
粗動動作を終えた制御部46は、粗動動作を行うモータ駆動プログラムを停止し、位置センサ17の位置情報を取込ながらPID制御を行う微動動作プログラムに処理を切替える。この微動動作プログラムは、位置センサ17により認識した現在位置と上記で読出した最初の目標位置との偏差を算出し、この偏差を無くすように微動指令をアクチュエータ駆動部49に送って電圧に変換し、この制御電圧を圧電アクチュエータ36に印加して微動させるプログラムである。
【0032】
本実施例の回転機構付軸方向微動機構41では圧電アクチュエータ36の変位の半分の変位となる拘束されている側の外輪21aと内輪23aの変位量が移動台6の微動変位量となるから、そのときの圧電アクチュエータ36には偏差分の2倍の変位を与えるような制御電圧と前述した初期設定電圧Voを加算した電圧が印加されることとなる。
このとき、例えば圧電アクチュエータ36に2Xの伸びが生ずると、この伸びにより生じた押圧力は微動制御を行う前の予圧荷重に加えて外輪21bを押圧し、外輪21bを軸方向(図1において左)に移動させ、外輪21a、21b間の隙間40が2X分更に狭くなって圧電アクチュエータ36の軸方向の伸びを吸収する。
【0033】
この隙間40の変位は、ボール25bと外輪軌道22bおよび内輪軌道24bとの当接面、並びにボール25aと外輪軌道22aおよび内輪軌道24aとの当接面を微動制御を行う前の予圧荷重に加えて押圧し、これらの間に更なる弾性変形が生じてアンギュラ玉軸受20a、20bがそれぞれXずつ変位し、外輪21bが軸方向に合わせて2X変位することにより作られる。
【0034】
逆に圧電アクチュエータ36が2X縮むと押圧力が減少し、アンギュラ玉軸受20a、20bの弾性変位がそれぞれXずつ減少し、隙間40が拡がる向きに外輪21bが軸方向に合わせて2X変位することになり、圧電アクチュエータ36の縮み分を吸収する。
このように、隙間40の変位2Xを対向配置されているアンギュラ玉軸受20a、20bがXずつに分けて吸収するので、アンギュラ玉軸受20a、20bの互いを押圧する力がバランスしたときに、ねじ軸11の嵌合軸26に軸方向の移動を固定されている内輪23a、23bがねじ軸11と共に軸方向(図1において左)にX変位する。この場合のねじ軸11の移動は駆動モータ14側はカップリング15の伸長により、反対側の軸端の移動は支持軸受16の遊びにより吸収される。
【0035】
これにより、ねじ軸11に遊びがない状態で螺合しているナット12が軸方向にX移動し、ナット12が固定されている移動台6が、ハウジング27が固定されている基台5に対して図1において左方向にX移動する。つまり圧電アクチュエータ36の2Xの変位(伸縮量)の半分のXの変位となる拘束されている側の外輪21aと内輪23aの変位量が移動台6の微動変位量になる。
【0036】
このようにして微動動作が行われ、制御部46は位置センサ17により認識した現在位置と目標位置との偏差を無くすようにフィードバック制御を行いながら移動台6を目標位置に停止させることとなる。
そして、移動台6を上記で読出した停止時間の間目標位置に停止させると、制御部46は再度移動先指示テーブルに記された目標位置と停止時間を読出し、次の目標位置等が記されている場合は、微動動作のためにアクチュエータ駆動部49が保持していた制御電圧を解除し、その結果により生じた移動台6の移動量を上記と同様にして位置センサ17の出力信号により計数して新たな現在位置を認識し、その現在位置と次の目標位置との偏差に応じた粗動動作、フィードバック制御による微動動作を上記と同様にして実行する。
【0037】
このようにして、位置決め処理プログラムに従って順次に位置決め処理を行うことができる。
なお、本実施例ではアンギュラ玉軸受20a、20bの外輪21a、21b間の隙間40を圧電アクチュエータ36の伸縮により変化させて微動動作を行わせるので、結果として予圧荷重を変化させることになるが、圧電アクチュエータ36の微動動作に伴う伸びは最大で10μm程度、通常は数μm程度であり、それにより生じる予圧荷重の変化は小さいものであるので、外輪軌道22a、22bや内輪軌道24a、24b、ボール25a、25bに圧痕等が生じることはない。
【0038】
上記のように、本実施例の回転機構付軸方向微動機構41は、正面組合せのアンギュラ玉軸受20a、20bに付与した予圧の反力を外輪21a、21b側に配置した圧電アクチュエータ36に作用させ、常に圧縮荷重を掛けながら粗動動作と微動動作を行わせるので、引張荷重による破損の発生もなく、それを避けるためのバネを用いる必要もない。
また、圧電アクチュエータ36の分だけ長いハウジング27およびねじ軸11を用いるだけで、軸受ユニットを組立てる方法と同一の方法で組立てることができ、圧電アクチュエータ36の組立に特別な配慮を払うことなく容易に回転機構付軸方向微動機構41を組立てることができる。
【0039】
更に、圧電アクチュエータ36をハウジング27の内周面を案内としてハウジング27に組込めば自動的に同軸上に配置されるので、圧電アクチュエータ36に半径方向荷重やモーメント力等が作用して早期破損等が生じることはない。
更に、本実施例の回転機構付軸方向微動機構41には剛性の低いバネが存在せず、アンギュラ玉軸受20a、20bを剛性の非常に高いバネ部材として機能させ、圧電アクチュエータ36に常に圧縮荷重を掛けながら粗動動作と微動動作を行わせるので、圧縮方向の荷重に対しては非常に高い剛性を有する圧電アクチュエータ36と高剛性のバネ部材との組合せにより、位置決め装置全体の剛性が静的にも動的にも圧電アクチュエータ36を組込まない軸受ユニットと略同一の剛性を維持することができ、高速、高応答の安定した微動動作を行うことができる。
【0040】
更に、圧電アクチュエータ36をねじ軸11と同軸上に配置できるので、圧電アクチュエータ36の変位を純粋な軸方向変位とすることができ、高精度な微動動作を行うことができる。
以上説明したように、本実施例では、位置決め装置の回転機構付軸方向微動機構のハウジングの内周面に、対向配置した2個のアンギュラ玉軸受のそれぞれの外輪の外周面を嵌合させ、対向配置したアンギュラ玉軸受に付与された予圧の反力により圧電アクチュエータを押圧するようにしたことによって、対向配置したアンギュラ玉軸受を剛性の非常に高いバネ部材として機能させ、圧電アクチュエータに常に圧縮荷重を掛けながら粗動動作と微動動作を行わせることができ、圧電アクチュエータの引張荷重による破損の発生を防止することができると共に、圧電アクチュエータの圧縮方向の高い剛性と高剛性のバネ部材との組合せにより、位置決め装置全体の剛性を高く維持することができ、高速、高応答の安定した微動動作を行うことができる。
【0041】
また、圧電アクチュエータを非通電とした状態で予め予圧を付与しておくことによって、圧電アクチュエータの有効ストロークを最大限に利用することができるので、圧電アクチュエータの小型化、コストダウンが可能になる。また圧電アクチュエータには位置決め動作を行うときのみ通電すればよく、通電時間が短くなるので、圧電アクチュエータの耐久性を向上させることができる。
【0042】
更に、圧電アクチュエータを積層型としたことによって、圧電アクチュエータの製作を容易に行うことができる。
更に、位置決め装置の回転機構付軸方向微動機構の圧電アクチュエータによる微動動作を粗動動作の回転が停止しているときに行うようにしたことによって、粗動動作と微動動作の動きが重なって、粗動動作の動きを微動で補正するように制御が干渉し合うこともないので、制御装置は単純になり、微動動作時の圧電アクチュエータの変位により、アンギュラ玉軸受の予圧量が変化してもアンギュラ玉軸受は回転していないから、予圧変化に伴うトルク増加等の影響も発生しない。
【0043】
更に、位置センサからの基台と移動台との相対移動量を示す出力信号により認識した現在位置と目標位置との偏差をフィードバックして微動動作を行うようにしたことによって、ねじ軸のリード誤差や圧電アクチュエータのヒステリシス等があった場合においても高精度な微細位置決めを行うことができる。
上記に加えて、本実施例では、圧電アクチュエータを中空としてハウジングの内周面に嵌合させ、ねじ軸を挿入してねじ軸と同軸に配置するようにしたことによって、圧電アクチュエータの分だけ長いハウジングおよびねじ軸を用いるだけで、軸受ユニットを組立てる方法と同一の方法で組立てることができ、圧電アクチュエータを用いた回転機構付軸方向微動機構の組立を容易に行うことができる。
【0044】
また、対向配置した2個のアンギュラ玉軸受のそれぞれの内輪の内周面をねじ軸の嵌合部の外周面に嵌合させ、それぞれの内輪の軸方向の移動を内輪係止部とロックナットにより挟みつけてねじ軸に固定すると共に、2個のアンギュラ玉軸受の外輪の一方の軸方向の移動を外輪係止部によりハウジングに拘束し、他方を圧電アクチュエータにより軸方向に移動させるようにしたことによって、制御電圧の印加による圧電アクチュエータの変位の半分をねじ軸の変位とすることができ、圧電アクチュエータの変位の誤差を半減して高精度な微動動作を実現することができる。
【0045】
更に、圧電アクチュエータをアンギュラ玉軸受の非回転側である外輪を押圧するように配置したことによって、圧電アクチュエータへの配線を容易に行うことができる。
【実施例2】
【0046】
図5は実施例2の回転機構付軸方向微動機構を示す断面図、図6は実施例2の位置決め装置を示す側方から見た説明図である。
なお、上記実施例1と同様の部分は、同一の符号を付してその説明を省略する。
図5、図6において、50は圧電アクチュエータであり、単独または複数の圧電素子を柱上に積層した中実のアクチュエータであって、印加される電圧に応じて軸方向に伸縮する。本実施例の圧電アクチュエータ50は、角柱状に圧電素子を積層した中実のアクチュエータ(例えば、NECトーキン株式会社製、樹脂外装アクチュエータ、型式番号AE0505D08)である。
【0047】
51はピストンであり、ハウジング27の内周面に嵌合する円柱状部材であって、カバー39側の端面にはピストン51の軸芯に沿って圧電アクチュエータ50を収納する収納穴52が形成され、反対側の端面にはロックナット32との干渉を避けるための逃げ穴53が形成されている。
また、カバー39には、その軸芯に沿って収納穴52と同等の内径を有する凹穴54が形成されている。
【0048】
本実施例の収納穴52および凹穴54の内径は、角柱状の圧電アクチュエータ50の4隅が内接する直径で形成されている。これにより圧電アクチュエータ50はねじ軸11の略軸芯に配置される。
本実施例の微動装置41は、図6に示すようにカップリング15を介して駆動モータ14が連結しているねじ軸11の端部の反対側の端部に配置され、そのハウジング27はボルト等により基台5に固定されている。
【0049】
本実施例の支持軸受16はねじ軸11の駆動モータ14側の端部でカップリング15の内側に配置されて基台5に設置されており、ねじ軸11を回転可能に支持すると共にねじ軸11をその軸方向の遊びにより移動可能に支持している。
本実施例の回転機構付軸方向微動機構41は、図5に示すように正面組合せで内輪間座30を介して対向配置したアンギュラ玉軸受20a、20bの内輪23a、23bを嵌合軸26に嵌合させ、内輪係止部29との間に内輪23a、内輪間座30、内輪23bをロックナット32により締め付けて内輪23a、23bの軸方向の移動をねじ軸11に固定し、ハウジング27の内周面に嵌合する外輪21aの軸方向の移動を外輪係止部38により拘束し、ハウジング27の内周面に嵌合するピストン51の逃げ穴53にロックナット32を内包してその外周側の端面を拘束されていない側の外輪21bに当接させ、収納穴52に非通電とした圧電アクチュエータ50を挿入してカバー39の凹穴54を圧電アクチュエータ50に嵌合させ、カバー39をボルト等によりハウジング27に締結して外輪係止部38との間で外輪21a、外輪21b、ピストン51および圧電アクチュエータ50を締め付け、前記の各部品をねじ軸11の同軸上に配置する。
【0050】
これにより、圧電アクチュエータ50が収納穴52と凹穴54の底面間に挟持され、外輪21bがピストン51および圧電アクチュエータ50を介して押圧され、対向配置されたアンギュラ玉軸受20a、20bに所定の予圧が付与されると共に外輪21a、21bの間の隙間40が形成される。
本実施例の粗動機構10は、図6に示すようにねじ軸11の圧電アクチュエータ50の反対側に配置されている。
【0051】
上記の構成の作用について説明する。
本実施例の位置決め装置1には 実施例1と同様の図4に示した制御装置45が装備されている。
本実施例の粗動動作および微動動作は、上記実施例1と同様であるのでその説明を省略する。この場合に圧電アクチュエータ50が偏差Xの2倍の変位2X伸びたときには上記実施例1と同様にねじ軸11が図5において左にX変位し、このときのねじ軸11の移動は支持軸受16の軸方向の遊びとカップリング15の収縮により吸収される。
【0052】
上記のように、本実施例の回転機構付軸方向微動機構41は、正面組合せのアンギュラ玉軸受20a、20bに付与した予圧の反力を外輪21a、21b側に配置したピストン51を介して中実の圧電アクチュエータ50に作用させ、常に圧縮荷重を掛けながら粗動動作と微動動作を行わせるので、引張荷重による破損の発生もなく、それを避けるためのバネを用いる必要もない。
【0053】
また、圧電アクチュエータ50の分だけ長いハウジング27を用いるだけで、軸受ユニットを組立てる方法と同一の方法で組立てることができ、圧電アクチュエータ36の組立に特別な配慮を払うことなく容易に回転機構付軸方向微動機構41を組立てることができる。
更に、圧電アクチュエータ50をピストン51の収納穴52およびカバー39の凹穴54を案内としてピストン51に組込めば自動的に同軸上に配置されるので、圧電アクチュエータ50に半径方向荷重やモーメント力等が作用して早期破損等が生じることはない。
【0054】
更に、本実施例の回転機構付軸方向微動機構41には実施例1と同様に剛性の低いバネが存在しないので、圧縮方向の荷重に対しては非常に高い剛性を有する圧電アクチュエータ50と高剛性のバネ部材との組合せにより、位置決め装置全体の剛性が静的にも動的にも圧電アクチュエータ36を組込まない軸受ユニットと略同一の剛性を維持することができ、高速、高応答の安定した微動動作を行うことができる。
【0055】
更に、圧電アクチュエータ50をねじ軸11と同軸上に配置できるので、圧電アクチュエータ50の変位を純粋な軸方向変位とすることができ、高精度な微動動作を行うことができる。
以上説明したように、本実施例では、圧電アクチュエータを中実とし、これをねじ軸の略軸芯に配置することによっても、上記実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0056】
上記に加えて、本実施例では、圧電アクチュエータを中実としてピストンの収納穴とカバーの凹穴に嵌合させ、それぞれの底面の間に挟持してねじ軸と同軸に配置するようにしたことによって、圧電アクチュエータの分だけ長いハウジングを用いるだけで、軸受ユニットを組立てる方法と同一の方法で組立てることができ、圧電アクチュエータを用いた回転機構付軸方向微動機構の組立を容易に行うことができる他、一般に体積が大きいほど高価になる圧電アクチュエータの価格を低減して、位置決め装置のコストを低減することができる。
【0057】
また、対向配置した2個のアンギュラ玉軸受のそれぞれの内輪の内周面をねじ軸の嵌合部の外周面に嵌合させ、それぞれの内輪の軸方向の移動を内輪係止部とロックナットにより挟みつけてねじ軸に固定すると共に、2個のアンギュラ玉軸受の外輪の一方の軸方向の移動を外輪係止部によりハウジングに拘束し、他方を圧電アクチュエータによりピストンを介して軸方向に移動させるようにしたことによって、制御電圧の印加による圧電アクチュエータの変位の半分をねじ軸の変位とすることができ、圧電アクチュエータの変位の誤差を半減して高精度な微動動作を実現することができる。
【0058】
更に、圧電アクチュエータをアンギュラ玉軸受の非回転側である外輪を押圧するように配置したことによって、圧電アクチュエータへの配線を容易に行うことができる。
【実施例3】
【0059】
図7は実施例3の回転機構付軸方向微動機構を示す断面図である。
なお、上記実施例1と同様の部分は、同一の符号を付してその説明を省略する。
本実施例の粗動機構10および回転機構付軸方向微動機構41は、実施例1(例えば図3)と同様に位置決め装置1の基台5にはハウジング27が固定され、移動台6にはナット12が固定されている。
【0060】
本実施例の回転機構付軸方向微動機構41のアンギュラ玉軸受20a、20bは、背面組合せで内輪間座30を介して対向配置されており、それぞれの内輪23a、23bは嵌合軸26に嵌合し内輪間座30と共にロックナット32により内輪係止部29に締め付けられてその軸方向の移動を固定される。
本実施例のハウジング27には、そのナット12側の端部に外周面に雄ねじを形成した押えプラグ57を螺合させるねじ穴27bが設けられており、ねじ穴27bの奥側に設けられたハウジング27の内周面に嵌合する一方の外輪21aは内周面に設けられた外輪係止部38に押えプラグ57により締め付けられてその軸方向の移動を拘束される。
【0061】
外輪係止部38の外輪21aが当接する当接面の反対側の面には実施例1と同様の外周面をハウジング27の内径面に嵌合した円筒状の圧電アクチュエータ36が当接し、圧電アクチュエータ36の外側に拘束されていない側の外輪21bが配置され、ロックナット32により内輪23a、23bを締め付けたときに、外輪21bが圧電アクチュエータ36を介して外側に押圧され、背面組合せで対向配置されたアンギュラ玉軸受20a、20bに所定の予圧が付与され、外輪21bの軸方向の移動を妨げるものはない。
【0062】
このように本実施例の回転機構付軸方向微動機構41は前記の各部品を図7に示すようにねじ軸11の同軸上に配置して構成される。
上記の構成の作用について説明する。
本実施例の位置決め装置1には 実施例1と同様の図4に示した制御装置45が装備されている。
【0063】
本実施例の粗動動作は、上記実施例1と同様であるのでその説明を省略する。
粗動動作を終えた制御部46は、実施例1と同様にして現在位置と目標位置との偏差から 圧電アクチュエータ36の伸縮量を演算し、これを微動指令としてアクチュエータ駆動部49が変換した電圧を圧電アクチュエータ36へ供給して保持する。
本実施例の回転機構付軸方向微動機構41においても実施例1と同様に圧電アクチュエータ36の変位の半分の変位となる拘束されている側の外輪21aと内輪23aの変位量が移動台6の微動変位量となる。
【0064】
すなわち、本実施例の回転機構付軸方向微動機構41の圧電アクチュエータ36が印加された電圧により偏差Xの2倍の変位2X伸びた場合は、外輪係止部38に当接している圧電アクチュエータ36が外輪21bを軸方向(図7において右)に移動させ、外輪21a、21b間が拡大するように作用する。
この外輪21bの変位は、ボール25bと外輪軌道22bおよび内輪軌道24bとの当接面、並びにボール25aと外輪軌道22aおよび内輪軌道24aとの当接面を予圧荷重に加えて押圧し、これらの間に更なる弾性変形が生じてアンギュラ玉軸受20a、20bがそれぞれXずつ変位し、外輪21bが軸方向に2X変位し、外輪21a、21b間が2X拡がって圧電アクチュエータ36の軸方向の伸びを吸収する。
【0065】
このように、外輪21a、21b間の距離の拡大分2Xを対向配置されているアンギュラ玉軸受20a、20bがXずつに分けて吸収するので、アンギュラ玉軸受20a、20bの互いを押圧する力がバランスしたときに、ねじ軸11の嵌合軸26に軸方向の移動を拘束されている内輪23a、23bがねじ軸11と共に軸方向(図7において右)にX変位する。この場合のねじ軸11の移動は駆動モータ14側はカップリング15の収縮により、反対側の軸端の移動は支持軸受16の遊びにより吸収される。
【0066】
これにより、ねじ軸11に遊びがない状態で螺合しているナット12が軸方向にX移動し、ナット12が固定されている移動台6が、ハウジング27が固定されている基台5に対して図7において右方向にX移動する。
このようにして本実施例の圧電アクチュエータ36の伸びに伴う移動台6の微動動作が行われ、この微動動作において、制御部46は実施例1と同様にして偏差を基にしたフィードバック制御を行い、移動台6を目標位置に停止させる。
【0067】
その後の作動は、実施例1と同様であるのでその説明を省略する。
上記のように、本実施例の回転機構付軸方向微動機構41は、背面組合せのアンギュラ玉軸受20a、20bに付与した予圧の反力を外輪21a、21bの内側に配置した圧電アクチュエータ36に作用させ、常に圧縮荷重を掛けながら粗動動作と微動動作を行わせるので、引張荷重による破損の発生もなく、それを避けるためのバネを用いる必要もない。
【0068】
また、圧電アクチュエータ36の分だけ長いハウジング27およびねじ軸11を用いるだけで、軸受ユニットを組立てる方法と同一の方法で組立てることができ、圧電アクチュエータ36の組立に特別な配慮を払うことなく容易に回転機構付軸方向微動機構41を組立てることができる。
更に、圧電アクチュエータ36をハウジング27の内周面を案内としてハウジング27に組込めば自動的に同軸上に配置されるので、圧電アクチュエータ36に半径方向荷重やモーメント力等が作用して早期破損等が生じることはない。
【0069】
更に、本実施例の回転機構付軸方向微動機構41には実施例1と同様に剛性の低いバネが存在しないので、圧縮方向の荷重に対しては非常に高い剛性を有する圧電アクチュエータ36と高剛性のバネ部材との組合せにより、位置決め装置全体の剛性が静的にも動的にも圧電アクチュエータ36を組込まない軸受ユニットと略同一の剛性を維持することができ、高速、高応答の安定した微動動作を行うことができる。
【0070】
更に、圧電アクチュエータ36をねじ軸11と同軸上に配置できるので、圧電アクチュエータ36の変位を純粋な軸方向変位とすることができ、高精度な微動動作を行うことができる。
以上説明したように、本実施例では、アンギュラ玉軸受を背面組合せとした場合においても、上記実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0071】
上記に加えて、本実施例では、背面組合せとしたアンギュラ玉軸受の外輪の間に中空とした圧電アクチュエータを配置してハウジングの内周面に嵌合させ、ねじ軸を挿入してねじ軸と同軸に配置するようにしたことによって、圧電アクチュエータの分だけ長いハウジングおよびねじ軸を用いるだけで、軸受ユニットを組立てる方法と同一の方法で組立てることができ、圧電アクチュエータを用いた回転機構付軸方向微動機構の組立を容易に行うことができる。
【0072】
また、対向配置した2個のアンギュラ玉軸受のそれぞれの内輪の内周面をねじ軸の嵌合部の外周面に嵌合させ、それぞれの内輪の軸方向の移動を内輪係止部とロックナットにより挟みつけてねじ軸に固定すると共に、2個のアンギュラ玉軸受の外輪の一方の軸方向の移動を外輪係止部によりハウジングに拘束し、他方を圧電アクチュエータにより軸方向に移動させるようにしたことによって、制御電圧の印加による圧電アクチュエータの変位の半分をねじ軸の変位とすることができ、圧電アクチュエータの変位の誤差を半減して高精度な微動動作を実現することができる。
【0073】
更に、圧電アクチュエータをアンギュラ玉軸受の非回転側である外輪を押圧するように配置したことによって、圧電アクチュエータへの配線を容易に行うことができる。
【実施例4】
【0074】
図8は実施例4の回転機構付軸方向微動機構を示す断面図、図9は実施例4の位置決め装置を示す側方から見た説明図である。
なお、上記実施例1と同様の部分は、同一の符号を付してその説明を省略する。
図8、図9において、61はボールねじ装置13のナットであり、上記実施例1と同様に内周面に軸軌道溝11aに対向する図示しないナット軌道溝が形成されており、複数の図示しないボールを介してねじ軸11に遊びのない状態で螺合している。
【0075】
ナット61の外周面には、正面組合せとして対向配置されたアンギュラ玉軸受20a、20bの内輪23a、23bの内周面が嵌合しており、ナット61の一端にはロックナット32が螺合するねじ部62が形成されている。
63は内輪係止部であり、ナット61のねじ部62の反対側の端部に形成された内輪23a、23bの外径と略同等の直径を有する大径部であって、内輪23aの一方の側面を係止する。
【0076】
64は内輪間座であり、内輪23a、23bと略同等の外径および内径を有する円筒状部材であって、その内周面がナット61の外周面に嵌合して対向配置されたアンギュラ玉軸受20a、20bの内輪23a、23bの間に配置される。
65は内輪スペーサであり、内輪23a、23bと略同等の外径および内径を有する円筒状部材であって、その内周面がナット61の外周面に嵌合して内輪23bの内輪間座30の反対側に配置される。
【0077】
67は駆動モータであり、ねじ軸11が挿入される中空穴を有するステッピングモータ等の正逆回転可能な中空モータ(例えば、株式会社旭エンジニアリング製、中空ステッピングモータ、HSMシリーズ)であって、カップリング68によりナット61のねじ部62側と結合してナット61を回転駆動する。
本実施例のアンギュラ玉軸受20a、20bは、正面組合せで内輪間座64を介して対向配置され、内輪係止部63との間に内輪23a、内輪間座64、内輪23b、内輪スペーサ65がロックナット32により締め付けられ、内輪23a、23bがその軸方向の移動をナット61に固定される。
【0078】
また、外輪21aは実施例1と同様にハウジング27の内周面に嵌合してその軸方向の移動を外輪係止部38により拘束され、拘束されない側の外輪21bが外輪スペーサ37および圧電アクチュエータ36を介してカバー39のハウジング27への締結により押圧され、対向配置されたアンギュラ玉軸受20a、20bに所定の予圧が付与されると共に外輪21a、21bの間に隙間40が形成される。
【0079】
本実施例のねじ軸11は基台5の両側に配置された固定部69に固定され、ハウジング27および駆動モータ67は移動台6に固定されており、本実施例の粗動機構10は、軸方向の移動および回転を固定されたねじ軸11に螺合し、アンギュラ玉軸受20a、20bにより回転可能に支持されたナット61を駆動モータ67がカップリング68を介して回転させることにより形成される。
【0080】
また、本実施例の回転機構付軸方向微動機構41は、アンギュラ玉軸受20a、20b、ナット61、内輪係止部63、内輪間座64、内輪スペーサ65、ロックナット32およびハウジング27、外輪係止部38、外輪スペーサ37、圧電アクチュエータ36、カバー39等を図8に示すようにナット61の同軸上に配置することにより構成される。
上記の構成の作用について説明する。
【0081】
本実施例の位置決め装置1には 実施例1と同様の図4に示した制御装置45が装備されている。この場合にモータ駆動部48は駆動モータ67を駆動する駆動信号を送出する機能を有している。
本実施例の粗動動作は上記実施例1と同様にして位置決め処理プログラムが起動すると、制御部46はアクチュエータ駆動部49から初期設定電圧Voを圧電アクチュエータ36に印加する。この初期設定電圧Voは圧電アクチュエータ36の有効ストロークの約半分の伸びを与える電圧であり、圧電アクチュエータ36に初期設定電圧Voを印加した状態での移動台6の位置が原位置となる。
【0082】
次に、制御部46は移動台6の原位置停止を確認し、最初の目標位置等を読出す。
目標位置等を読出した制御部46は、実施例1と同様にして目標位置と現在位置との偏差を算出し、ボールねじ装置13のナット12が算出した偏差に相当する長さを移動するときに必要なナット61の回転数を演算し、これを粗動指令としてモータ駆動部48に送って駆動モータ67の駆動信号に変換し、これを駆動モータ67へ供給する。
【0083】
本実施例の駆動モータ67はステッピングモータであるので、駆動信号は演算したナット61の回転数を回転させるために必要なステッピングモータの角度ステップ数に相当するパルス信号である。
駆動信号が供給されると、駆動モータ67はその駆動信号に対応した回転数分回転し、カップリング68を介して連結しているナット61が、固定部69により基台5に固定されているねじ軸11上で回転し、アンギュラ玉軸受20a、20bによりナット61を回転可能に支持しているハウジング27に固定されている移動台6を軸方向に移動させる。
【0084】
このとき、制御部46は実施例1と同様にして移動台6の移動に伴って位置センサ17が出力する出力信号を受取り、移動台6の停止(駆動モータ67の回転の停止)により移動台6の現在位置を認識する。
このようにして、ナット61を回転させてナット61を回転可能に支持しているハウジング27に固定されている移動台6を基台5に対して軸方向に移動させる本実施例の粗動機構10による移動台6の粗動動作が行われる。
【0085】
この場合に、圧電アクチュエータ36は初期設定電圧Voが印加されているだけで位置センサ17によるフィードバック制御はかけられていない。
また、圧電アクチュエータ36は、アンギュラ玉軸受20a、20bの予圧の反力による圧縮荷重が作用した状態となっている。
粗動動作を終えた制御部46は、実施例1と同様に、制御部46は位置センサ17により認識した現在位置と上記で読出した最初の目標位置との偏差を算出し、この偏差を無くすようにアクチュエータ駆動部49により制御電圧を圧電アクチュエータ36に印加して微動動作を行う。
【0086】
本実施例の回転機構付軸方向微動機構41においても実施例1と同様に圧電アクチュエータ36の変位の半分の変位となる拘束されている側の外輪21aと内輪23aの変位量が移動台6の微動変位量となる。
すなわち、実施例1と同様にして圧電アクチュエータ36に2Xの伸びが生ずると、この伸びにより生じた押圧力は微動動作を行う前の予圧荷重に加えて外輪21bを押圧し、外輪21bを軸方向(本説明では図8において左方向)に移動させ、外輪21a、21b間の隙間40が狭くなるように作用し、その隙間40の変位は実施例1と同様にしてアンギュラ玉軸受20a、20bがそれぞれXずつ変位し、隙間40が2X狭くなって圧電アクチュエータ36の軸方向の伸びを吸収する。
【0087】
このように、隙間40の変位2Xを対向配置されているアンギュラ玉軸受20a、20bがXずつに分けて吸収するので、アンギュラ玉軸受20a、20bの互いを押圧する力がバランスしたときに、ナット61に軸方向の移動を拘束されている内輪23a、23bがナット61と共に軸方向にX変位する。この場合のナット61の移動は駆動モータ67側はカップリング68の伸長により吸収される。
【0088】
これにより、ナット61が軸方向にX移動し、ナット61に軸方向の移動を拘束されたアンギュラ玉軸受20a、20bを支持するハウジング27が固定されている移動台6が、ねじ軸11が固定されている基台5に対して図9において右方向にX移動する。
この微動動作において、制御部46は実施例1と同様にして偏差を基にしたフィードバック制御を行い、移動台6を目標位置に停止させる。
【0089】
その後の作動は、実施例1と同様であるのでその説明を省略する。
上記のように、本実施例の回転機構付軸方向微動機構41は、正面組合せのアンギュラ玉軸受20a、20bに付与した予圧の反力を外輪21a、21b側に配置した圧電アクチュエータ36に作用させ、常に圧縮荷重を掛けながら粗動動作と微動動作を行わせるので、引張荷重による破損の発生もなく、それを避けるためのバネを用いる必要もない。
【0090】
また、圧電アクチュエータ36の分だけ長いハウジング27およびねじ軸11を用いるだけで、軸受ユニットを組立てる方法と同一の方法で組立てることができ、圧電アクチュエータ36の組立に特別な配慮を払うことなく容易に回転機構付軸方向微動機構41を組立てることができる。
更に、圧電アクチュエータ36をハウジング27の内周面を案内としてハウジング27に組込めば自動的に同軸上に配置されるので、圧電アクチュエータ36に半径方向荷重やモーメント力等が作用して早期破損等が生じることはない。
【0091】
更に、本実施例の回転機構付軸方向微動機構41には実施例1と同様に剛性の低いバネが存在しないので、圧縮方向の荷重に対しては非常に高い剛性を有する圧電アクチュエータ36と高剛性のバネ部材との組合せにより、位置決め装置全体の剛性が静的にも動的にも圧電アクチュエータ36を組込まない軸受ユニットと略同一の剛性を維持することができ、高速、高応答の安定した微動動作を行うことがことができる。
【0092】
更に、圧電アクチュエータ36をナット61と同軸上に配置できるので、圧電アクチュエータ36の変位を純粋な軸方向変位とすることができ、高精度な微動動作を行うことができる。
以上説明したように、本実施例では、ハウジングに、ナットの外周面に内輪が嵌合する対向配置したアンギュラ玉軸受を設置してナットを回転可能に支持し、外輪を圧電アクチュエータにより軸方向に押圧することによっても、上記実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0093】
上記に加えて、本実施例では、圧電アクチュエータを中空としてハウジングの内周面に嵌合させ、ナットを挿入してナットと同軸に配置するようにしたことによって、圧電アクチュエータの分だけ長いハウジングおよびねじ軸を用いるだけで、軸受ユニットを組立てる方法と同一の方法で組立てることができ、圧電アクチュエータを用いた回転機構付軸方向微動機構の組立を容易に行うことができる。
【0094】
また、対向配置した2個のアンギュラ玉軸受のそれぞれの内輪の内周面をナットの外周面に嵌合させ、それぞれの内輪の軸方向の移動を内輪係止部とロックナットにより挟みつけてナットに固定すると共に、2個のアンギュラ玉軸受の外輪の一方の軸方向の移動を外輪係止部により移動台に固定したハウジングに拘束し、他方を圧電アクチュエータにより軸方向に移動させるようにしたことによって、制御電圧の印加による圧電アクチュエータの変位の半分を移動台の変位とすることができ、圧電アクチュエータの変位の誤差を半減して高精度な微動動作を実現することができる。
【0095】
更に、圧電アクチュエータをアンギュラ玉軸受の非回転側である外輪を押圧するように配置したことによって、圧電アクチュエータへの配線を容易に行うことができる。
【実施例5】
【0096】
図10は実施例5の回転機構付軸方向微動機構を示す断面図である。
なお、本実施例の回転機構付軸方向微動機構41は上記実施例1の図3と同様の部位にハウジング27を基台5に固定されて設置されている。また実施例1と同様の部分は同一の符号を付してその説明を省略する。
本実施例のねじ軸11の嵌合軸26には、背面組合せとして対向配置されたアンギュラ玉軸受20a、20bの内輪23a、23bの内周面が嵌合しており、内輪23bに隣接して中空部36aを嵌合軸26に嵌合させた圧電アクチュエータ36が配置されている。
【0097】
図10において、71は外輪間座であり、外輪21a、21bと略同等の外径および内径を有する円筒状部材であって、その外周面がハウジング27の内周面に嵌合して対向配置されたアンギュラ玉軸受20a、20bの外輪21a、21bの間に配置される。
72は外輪スペーサであり、外輪21a、21bと略同等の外径および内径を有する円筒状部材であって、その外周面がハウジング27の内径面に嵌合して外輪21bとカバー39の間に配置される。
【0098】
73はスリップリングであり、高い剛性を有するセラミック材料や複合樹脂材料等の絶縁材料で製作された嵌合軸26に内周面が嵌合する円筒状部材であって、その外周面には銅等の導電性を有する金属材料からなる2本の電極リング74が設けられ、それぞれが隣接する圧電アクチュエータ36と電気的に接続している。
75は固定側電極であり、樹脂材料等の絶縁材料で形成した厚肉平板にカーボン等の導電性材料で形成されたバネ要素を内蔵する2つのブラシ76を設けて構成されており、止めねじ等によりカバー39の内周部に取付けられる。
【0099】
ブラシ76は、それぞれ制御装置45のアクチュエータ駆動部49と電気的に接続し、ねじ軸11と共に回転する電極リング74を押圧して静止系と回転系とを電気的に接続する。これによりアクチュエータ駆動部49からの制御電圧がスリップリング73を介して圧電アクチュエータ36へ伝達される。
本実施例のアンギュラ玉軸受20a、20bは、背面組合せで外輪間座71を介して対向配置され、外輪係止部38との間に外輪21a、外輪間座71、外輪21b、外輪スペーサ72がカバー39のハウジング27への締結により締め付けられ、外輪21a、21bがその軸方向の移動をハウジング27に固定される。
【0100】
また、内輪23aは嵌合軸26の外周面に嵌合してその軸方向の移動を内輪係止部29により拘束され、拘束されない側の内輪23bが規定のトルクで締め付けられるロックナット32によりスリップリング73および圧電アクチュエータ36を介して押圧され、対向配置されたアンギュラ玉軸受20a、20bに所定の予圧が付与されると共に内輪23a、23bの間に軸方向間距離としての隙間40が形成される。
【0101】
本実施例のねじ軸11は実施例1と同様に他端を支持軸受16に支持されて駆動モータ14により回転駆動され、ハウジング27は基台5に固定され、ボールねじ装置13のナット12は移動台6に固定されており、ナット12に螺合するねじ軸11を駆動モータ14によりカップリング15を介して回転させることにより本実施例の粗動機構10が形成される。
【0102】
また、本実施例の回転機構付軸方向微動機構41は、アンギュラ玉軸受20a、20b、嵌合軸26、内輪係止部29、圧電アクチュエータ36、スリップリング73、ロックナット32およびハウジング27、外輪係止部38、外輪間座71、外輪スペーサ72、カバー39等を図10に示すようにねじ軸11の同軸上に配置することにより構成される。
【0103】
上記の構成の作用について説明する。
本実施例の位置決め装置1には、実施例1と同様の図4に示した制御装置45が装備されている。この場合にアクチュエータ駆動部49は固定側電極75のブラシ76、スリップリング73の電極リング74を介して圧電アクチュエータ36に印加する電圧を保持する機能を有している。
【0104】
本実施例の粗動動作は上記実施例1と同様であるので、その説明を省略する。
粗動動作を終えた制御部46は、実施例1と同様に、制御部46は位置センサ17により認識した現在位置と上記で読出した最初の目標位置との偏差を算出し、この偏差を無くすようにアクチュエータ駆動部49により制御電圧を圧電アクチュエータ36に印加して微動動作を行う。
【0105】
本実施例の回転機構付軸方向微動機構41においても実施例1と同様に圧電アクチュエータ36の変位の半分の変位となる拘束されている側の外輪21aと内輪23aの変位量が移動台6の微動変位量となる。
すなわち、本実施例の回転機構付軸方向微動機構41は対向配置したアンギュラ玉軸受20a、20bの内輪23aを内輪係止部29によりその軸方向の移動を拘束し、圧電アクチュエータ36を介して内輪23bを押圧して予圧を付与した状態としているので、圧電アクチュエータ36に2Xの変位が生ずる電圧が印加され、例えば圧電アクチュエータ36に2Xの伸びが生ずると、この伸びにより生じた押圧力は微動制御を行う前の予圧荷重に加えて内輪23bを押圧し、内輪23bを軸方向(図10において左)に移動させ、内輪23a、23b間の隙間40が狭くなるように作用する。
【0106】
この隙間40の変位は、ボール25bと外輪軌道22bおよび内輪軌道24bとの当接面、並びにボール25aと外輪軌道22aおよび内輪軌道24aとの当接面を微動制御を行う前の予圧荷重に加えて押圧し、これらの間に更なる弾性変形が生じてアンギュラ玉軸受20a、20bがそれぞれXずつ変位し、内輪23bが軸方向に2X変位し、隙間40が2X狭くなって圧電アクチュエータ36の軸方向の伸びを吸収する。
【0107】
このように、隙間40の変位2Xを対向配置されているアンギュラ玉軸受20a、20bがXずつに分けて吸収するので、アンギュラ玉軸受20a、20bの互いを押圧する力がバランスしたときに、ハウジング27の内周面に軸方向の移動を拘束されている外輪21a、21bが相対的に軸方向にX変位し、ハウジング27が基台5に固定されているのでねじ軸11が軸方向(図10において右)にX変位する。この場合のねじ軸11の移動は駆動モータ14側はカップリング15の収縮により、反対側の軸端の移動は支持軸受16の遊びにより吸収される。
【0108】
これにより、ねじ軸11に遊びがない状態で螺合しているナット12が軸方向にX移動し、ナット12が固定されている移動台6が、ハウジング27が固定されている基台5に対して図10において右方向にX移動する。つまり圧電アクチュエータ36の変位(伸縮量)の半分の変位となる拘束されている側の外輪21aと内輪23aの変位量が移動台6の微動変位量となる。
【0109】
この微動動作において、制御部46は実施例1と同様にして偏差を基にしたフィードバック制御を行い、移動台6を目標位置に停止させる。
その後の作動は、実施例1と同様であるのでその説明を省略する。
上記のように、本実施例の回転機構付軸方向微動機構41は、背面組合せのアンギュラ玉軸受20a、20bに付与した予圧の反力を内輪23a、23b側に配置した圧電アクチュエータ36に作用させ、常に圧縮荷重を掛けながら粗動動作と微動動作を行わせるので、引張荷重による破損の発生もなく、それを避けるためのバネを用いる必要もない。
【0110】
また、圧電アクチュエータ36の分だけ長いハウジング27およびねじ軸11を用いるだけで、軸受ユニットを組立てる方法と同一の方法で組立てることができ、圧電アクチュエータ36の組立に特別な配慮を払うことなく容易に回転機構付軸方向微動機構41を組立てることができる。
更に、圧電アクチュエータ36をねじ軸11の嵌合軸26の外周面を案内としてねじ軸11に組込めば自動的に同軸上に配置されるので、圧電アクチュエータ36に半径方向荷重やモーメント力等が作用して早期破損等が生じることはない。
【0111】
更に、本実施例の回転機構付軸方向微動機構41には実施例1と同様に剛性の低いバネが存在しないので、圧縮方向の荷重に対しては非常に高い剛性を有する圧電アクチュエータ36と高剛性のバネ部材との組合せにより、位置決め装置全体の剛性が静的にも動的にも圧電アクチュエータ36を組込まない軸受ユニットと略同一の剛性を維持することができ、高速、高応答の安定した微動動作を行うことができる。
【0112】
更に、圧電アクチュエータ36をねじ軸11と同軸上に配置できるので、圧電アクチュエータ36の変位を純粋な軸方向変位とすることができ、高精度な微動動作を行うことができる。
以上説明したように、本実施例では、対向配置したアンギュラ玉軸受の内輪側に圧電アクチュエータを配置することによっても、上記実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0113】
上記に加えて、本実施例では、圧電アクチュエータを中空としてねじ軸の外周面に嵌合させてねじ軸と同軸に配置するようにしたことによって、圧電アクチュエータの分だけ長いハウジングおよびねじ軸を用いるだけで、軸受ユニットを組立てる方法と同一の方法で組立てることができ、圧電アクチュエータを用いた回転機構付軸方向微動機構の組立を容易に行うことができる。
【0114】
また、対向配置した2個のアンギュラ玉軸受のそれぞれの外輪の外周面をハウジングの内周面に嵌合させ、それぞれの外輪の軸方向の移動を外輪係止部とカバーにより挟みつけてハウジングに固定すると共に、2個のアンギュラ玉軸受の内輪の一方の軸方向の移動を内輪係止部によりねじ軸に拘束し、他方を圧電アクチュエータにより軸方向に移動させるようにしたことによって、制御電圧の印加による圧電アクチュエータの変位の半分をねじ軸の変位とすることができ、圧電アクチュエータの変位の誤差を半減して高精度な微動動作を実現することができる。
【0115】
なお、本実施例と同様の構成をナットの外周面に嵌合する圧電アクチュエータを用いて構成すれば、上記実施例4と同様のナットとハウジングの間に形成した回転機構付軸方向微動機構として作用させることができる。
上記実施例1から実施例4においては、対向配置した内輪の間に内輪間座を設けて予圧を付与するとして説明したが、内輪の対向側の面を内輪間座の幅の半分に相当する長さ伸長させて内輪同士を直接当接させるようにしてもよい。実施例5においては同様の外輪を設けて直接当接させるようにしてもよい。
【0116】
また、上記各実施例においては、内輪スペーサや外輪スペーサを設けるとして説明したが、これらを省略して内輪や外輪をロックナットやカバーにより直接締め付け、外輪や内輪に圧電アクチュエータを直接当接させるようにしてもよい。
更に、上記各実施例においては、対向配置した2つの転がり軸受装置に非通電の圧電アクチュエータを介して予め予圧を付与しておくとして説明したが、圧電アクチュエータの非通電時には予圧が発生しないように隙間を介して圧電アクチュエータと外輪または内輪を対向させておき、位置決め装置の起動時等に所定の電圧を圧電アクチュエータに印加して対向配置した2つの転がり軸受装置に所定の予圧を発生させるようにしてもよい。このようにすれば、2つの転がり軸受装置に所定の予圧を与えるために、例えば実施例1の外輪スペーサ37の軸方向の長さ等を予圧量に合わせて精密に調整するといった、いわゆる予圧調整が不要となり、所定の電圧の印加だけで容易に精密な予圧調整が可能となる。
【0117】
更に、上記各実施例においては転がり軸受装置はアンギュラ玉軸受として説明したが、転がり軸受装置はアンギュラ玉軸受に限らず、深溝玉軸受、円錐ころ軸受等の対向配置した転がり軸受装置に予圧を付与することができるものであればどのようなものであってもよい。
更に、1個の転がり軸受による転がり軸受装置を2つ対向配置するとして説明したが、複数の転がり軸受を並列組合せで配置した1組の転がり軸受装置を2つ対向配置するようにしてもよく、例えば片側に2個1組、他方に1個の転がり軸受による2つの転がり軸受装置を対向配置するようにしてもよい。例えば実施例1の図1において右側に2個1組、左側に1個の転がり軸受を対向配置すれば、圧電アクチュエータが2X伸びたとすると、ねじ軸は図1において左方向に約1.2X移動することとなる。
【0118】
更に、上記各実施例においては、回転機構付軸方向微動機構の転がり軸受装置を粗動機構のねじ軸を支持する軸受として用いるとして説明したが、回転を行いその回転の支持部を高速で微動させる回転および軸方向微動複合運動機構全般に利用できることはいうまでもない。
更に、上記各実施例においては、送りねじ装置はねじ軸とナットとをボールを介して螺合させるボールねじ装置であるとして説明したが、送りねじ装置は前記に限らず、ねじ軸とナットとを直接螺合させる滑りねじ装置であってもよい。
【0119】
更に、上記各実施例においては、フィードバック制御を微動動作のときに行うとして説明したが、粗動動作のときに位置センサにより認識した現在位置と読出した目標位置との偏差を用いてフィードバック制御を行うようにし、偏差が所定の範囲となったときに粗動動作を停止するようにしてもよい。このようにすればねじ軸のリード精度等を補正することができ、圧電アクチュエータの微動動作による補正量を小さくすることができ、必要以上に大きな伸縮量を有する圧電アクチュエータを用いる必要がなくなる。
【符号の説明】
【0120】
1 位置決め装置
2 直線案内機構
3 レール
4 スライダ
4a 移動台取付面
5 基台
6 移動台
10 粗動機構
11 ねじ軸
11a 軸軌道溝
12、61 ナット
13 ボールねじ装置
14、67 駆動モータ
15、68 カップリング
16 支持軸受
17 位置センサ
18 スケール
20a、20b アンギュラ玉軸受
21a、21b 外輪
22a、22b 外輪軌道
23a、23b 内輪
24a、24b 内輪軌道
25a、25b ボール
26 嵌合軸
27 ハウジング
27a、27b ねじ穴
29、63 内輪係止部
30、64 内輪間座
31、65 内輪スペーサ
32 ロックナット
33、62 ねじ部
34 カップリング取付部
36、50、100 圧電アクチュエータ
36a 中空部
37、72 外輪スペーサ
38 外輪係止部
39 カバー
40 隙間
41 回転機構付軸方向微動機構
45 制御装置
46 制御部
47 記憶部
48 モータ駆動部
49 アクチュエータ駆動部
51 ピストン
52 収納穴
53 逃げ穴
54 凹穴
57 押えプラブ
69 固定部
71 外輪間座
73 スリップリング
74 電極リング
75 固定側電極
76 ブラシ
101 出力軸
102 バネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置して所定の予圧を付与した2つの転がり軸受装置と、該転がり軸受装置のそれぞれの外輪の外周面が嵌合する内周面を有するハウジングと、前記転がり軸受装置のそれぞれの内輪の内周面が嵌合する外周面を有する軸と、外部から印加された電圧に応じて軸方向に伸縮する圧電アクチュエータとを備え、前記軸の一端に配置された回転機構付軸方向微動機構において、
前記2つの内輪を前記軸に軸方向に固定し、前記外輪の一方を前記ハウジングに軸方向に拘束し、前記外輪の他方の側に前記圧電アクチュエータを配置し、
前記圧電アクチュエータの伸縮により前記2つの外輪間の軸方向間距離を変化させて前記所定の予圧を変化させ、前記軸方向間距離の変位量の半分が、前記軸と前記ハウジングの相対移動量となる微動動作を行うことを特徴とする回転機構付軸方向微動機構。
【請求項2】
対向配置して所定の予圧を付与した2つの転がり軸受装置と、前記転がり軸受装置のそれぞれの外輪の外周面が嵌合する内周面を有するハウジングと、前記転がり軸受装置のそれぞれの内輪の内周面が嵌合する外周面を有する軸と、外部から印加された電圧に応じて軸方向に伸縮する圧電アクチュエータとを備え、前記軸の一端に配置された回転機構付軸方向微動機構において、
前記2つの外輪を前記ハウジングに軸方向に固定し、前記内輪の一方を前記軸に軸方向に拘束し、前記内輪の他方の側に前記圧電アクチュエータを配置し、
前記圧電アクチュエータの伸縮により前記2つの内輪間の軸方向間距離を変化させて前記所定の予圧を変化させ、前記軸方向間距離の変位量の半分が、前記軸と前記ハウジングの相対移動量となる微動動作を行うことを特徴とする回転機構付軸方向微動機構。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記所定の予圧を、前記圧電アクチュエータを非通電とした状態で、予め付与しておくことを特徴とする回転機構付軸方向微動機構。
【請求項4】
請求項1または請求項2において、
前記所定の予圧を、前記圧電アクチュエータに所定の電圧を印加して発生させることを特徴とする回転機構付軸方向微動機構。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項において、
前記圧電アクチュエータを、前記転がり軸受装置の非回転側に配置したことを特徴とする回転機構付軸方向微動機構。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項において、
前記圧電アクチュエータが、積層型であることを特徴とする回転機構付軸方向微動機構。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか一項において、
前記圧電アクチュエータが、中空であることを特徴とする回転機構付軸方向微動機構。
【請求項8】
請求項1ないし請求項6のいずれか一項において、
前記圧電アクチュエータが、中実であり、前記転がり軸受装置の略軸芯に配置されていることを特徴とする回転機構付軸方向微動機構。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれか一項において、
前記対向配置した転がり軸受装置が、正面組合せとして配置されていることを特徴とする回転機構付軸方向微動機構。
【請求項10】
請求項1ないし請求項8のいずれか一項において、
前記対向配置した転がり軸受装置が、背面組合せとして配置されていることを特徴とする回転機構付軸方向微動機構。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のいずれか一項において、
前記転がり軸受装置の回転が停止しているときに、前記圧電アクチュエータへ通電して前記微動動作を行うことを特徴とする回転機構付軸方向微動機構。
【請求項12】
軸方向に相対移動可能に構成された基台および移動台と、
前記基台に回転可能に支持されたねじ軸と、前記ねじ軸に螺合し、前記移動台に固定されたナットとを有し、前記ねじ軸の回転により前記移動台を前記基台に対して軸方向に移動させる粗動機構と、
前記軸をねじ軸とした、請求項1ないし請求項11のいずれか一項に記載の回転機構付軸方向微動機構と、を備えたことを特徴とする位置決め装置。
【請求項13】
請求項12において、
前記基台と前記移動台との相対移動量を示す出力信号を出力する位置センサを有することを特徴とする位置決め装置。
【請求項14】
請求項13において、
前記粗動機構の粗動動作を停止した後に、前記位置センサにより認識した現在位置と目標位置との偏差をフィードバックして前記圧電アクチュエータによる前記微動動作を行うことを特徴とする位置決め装置。
【請求項15】
請求項14において、
前記制御装置が、前記位置センサにより認識した現在位置と目標位置との偏差をフィードバックして粗動動作を行い、前記偏差が所定の範囲となったときに前記粗動動作を停止させることを特徴とする位置決め装置。
【請求項16】
請求項12ないし請求項15のいずれか一項において、
前記粗動機構のねじ軸を、ステッピングモータにより駆動することを特徴とする位置決め装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−147666(P2012−147666A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−47400(P2012−47400)
【出願日】平成24年3月2日(2012.3.2)
【分割の表示】特願2005−2609(P2005−2609)の分割
【原出願日】平成17年1月7日(2005.1.7)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】