圧電アクチュエーター、ロボット及びロボットハンド
【課題】摺動部の磨耗の進行状況を検出可能な圧電アクチュエーターを得る。
【解決手段】圧電素子と、圧電素子に積層される振動板31と、振動板31から被駆動部に当接するように突出して圧電素子の振動を被駆動部に伝達する摺動部41と、を含む圧電アクチュエーターであって、摺動部41は、被駆動部に当接する第1部材11と、少なくとも振動板31側を除く三方を第1部材11に囲まれた部材であり、かつ、第1部材11とは異なる材質からなる部材である第2部材21と、を含んで構成されていることを特徴とする圧電アクチュエーター。
【解決手段】圧電素子と、圧電素子に積層される振動板31と、振動板31から被駆動部に当接するように突出して圧電素子の振動を被駆動部に伝達する摺動部41と、を含む圧電アクチュエーターであって、摺動部41は、被駆動部に当接する第1部材11と、少なくとも振動板31側を除く三方を第1部材11に囲まれた部材であり、かつ、第1部材11とは異なる材質からなる部材である第2部材21と、を含んで構成されていることを特徴とする圧電アクチュエーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電アクチュエーター、及び当該圧電アクチュエーターを備えたロボット及びロボットハンドに関する。
【背景技術】
【0002】
圧電アクチュエーターは、高周波の交流電圧等の駆動電圧を振動(機械的振動)に変換する圧電素子と、該圧電素子の振動によって駆動される被駆動部と、を少なくとも有する駆動装置である。上述の振動は、平面視で圧電素子の一端面から突き出した摺動部(突出部)によって、被駆動部に伝達される。摺動部は被駆動部に当接しており、摩擦力を利用して圧電素子の振動を被駆動部に伝達する。被駆動部がローターの場合、圧電素子の振動を回転力として利用可能な圧電モーターを構成できる。すなわち、圧電モーターは圧電アクチュエーターの一分野である。
【0003】
かかる摺動部の態様としては、例えば特許文献1に示すように、圧電素子に積層される補強板を利用するものが知られている。圧電素子を補強板に積層して、該補強板の一部を平面視で圧電素子から突き出るようにパターニングすることで、圧電素子の振動を被駆動部に効率的に伝達可能な摺動部を形成できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−286167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし上述の構成の圧電アクチュエーターとしての圧電モーターでは、摺動部の磨耗の進行状況を検出しにくいという課題がある。詳しくは、圧電モーターを設計寿命を超えて長期間使用した場合や、過負荷が継続して加わった場合等、摺動部が削れて消耗してしまうことが想定されるが、この消耗の度合いを検出することは困難であった。特に磨耗が進行して圧電素子の端部に達すると圧電素子が損傷して圧電モーターが停止してしまう恐れがあった。換言すれば、圧電モーターの異常(寿命)を検出することが困難であるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例の圧電アクチュエーターは、圧電素子と、上記圧電素子に積層される振動板と、上記振動板から被駆動部に向かって突出して配置された摺動部と、を含む圧電アクチュエーターであって、上記摺動部は、上記被駆動部に当接する第1部材と、上記第1部材の内側に形成され、かつ、上記第1部材とは異なる材質からなる第2部材と、を含んで構成されていることを特徴とする。
【0008】
上述したように、圧電アクチュエーターは被駆動部に摺動部を当接させて駆動されるため、駆動中に動作音(駆動音若しくは摩擦音)を生じる。かかる場合において、摺動部の構成要素のうちの第1部材の磨耗が進行して、上述の第2部材が被駆動部に当接するようになると、材質の違いにより、動作音の音質すなわち周波数成分等に変化が生じる。したがって、このような構成の圧電アクチュエーターであれば摺動部の磨耗の進行を検出できる。そして、摺動部の磨耗が所定量に達したと判断される場合、圧電素子の交換等を実施できる。したがって、上述の圧電素子の損傷等を低減でき、圧電アクチュエーターの信頼性を向上させることができる。
【0009】
なお、上述の「内側に形成され」とは、第1部材が第2部材を平面視すなわち二次元的に囲んでいる場合と、第1部材が第2部材の表面を三次元的に覆っている場合と、の双方を含んでいる。摺動部の磨耗は二次元的に進行するため、どちらの態様であっても、第1部材の磨耗が所定量進んだ後で、第2部材を被駆動部に当接させることができる。
また、上述の「内側に形成され」とは、振動板側は含まない表現である。したがって、振動板と摺動部との境界において振動板と第2部材とがつながっていても良い。すなわち、「内側に形成され」とは、第2部材の全周囲が第1部材に囲まれている場合と、第2部材における振動板側を除く3方が第1部材に囲まれている場合と、の双方を含んでいる。摺動部が振動板側から磨耗することはあり得ないため、3方が第1部材に囲まれていれば、上述の効果を発揮できる。
【0010】
[適用例2]上述の圧電アクチュエーターであって、上記圧電素子は圧電体層と電極とが積層されてなる平面視で略長方形の板状部材であり、上記第2部材は平面視で上記圧電素子の短辺から突出していることを特徴とする圧電アクチュエーター。
【0011】
このような構成であれば、上述の磨耗が圧電素子に達する前に第2部材の磨耗が開始される。したがって、圧電素子が被駆動部に直接当接される現象を低減でき、圧電アクチュエーターの信頼性を向上できる。
【0012】
[適用例3]上述の圧電アクチュエーターであって、上記第2部材は上記振動板の一部を平面視で上記短辺から突出させて形成された部分であることを特徴とする圧電アクチュエーター。
【0013】
このような構成であれば、容易に摺動部内に第2部材を形成できる。したがって、圧電アクチュエーターの信頼性を、コストの上昇を抑制しつつ向上させることができる。なお、上述したように第1部材と第2部材は材質が異なる。したがって上記の構成では、第1部材は振動板の材質とは異なる材料で形成されている。
【0014】
[適用例4]上述の圧電アクチュエーターであって、上記第1部材の材質は、上記振動板の材質と異なっており、上記第2部材は平面視で上記第1部材内に島状に形成されていることを特徴とする圧電アクチュエーター。
【0015】
このような構成であれば、振動板の材質と第1部材の材質とのいずれとも異なる第3の材料で第2部材を形成できる。すなわち、第2部材の材質の選択の幅を広げることができる。そのため、上述の動作音の音質の変化をより一層確実に生じさせることができ、圧電アクチュエーターの信頼性をより一層向上させることができる。
【0016】
[適用例5]上述の圧電アクチュエーターであって、上記第1部材は、上記振動板の一部を平面視で上記短辺から突出させて形成されており、上記第2部材は平面視で上記第1部材内に島状に形成されていることを特徴とする圧電アクチュエーター。
【0017】
このような構成であれば、振動板の強度を低下させることなく摺動部を形成できる。そして該摺動部を、外側の第1部材と該第1部材で囲まれた第2部材とで構成できる。したがって、圧電アクチュエーターの信頼性をより一層向上させることができる。
【0018】
[適用例6]上述の圧電アクチュエーターであって、上記第1部材の材質と上記第2部材の材質とでは、上記被駆動部に対する摩擦係数が互いに異なることを特徴とする圧電アクチュエーター。
【0019】
上述の動作音は、擦り合わされる要素間の摩擦係数により異なる。したがってこのような構成であれば、動作音の音質変化を強調でき、摺動部の磨耗進行の検出精度を向上できる。
【0020】
[適用例7]上述の圧電アクチュエーターであって、上記第2部材の材質の上記被駆動部に対する摩擦係数は、上記第1部材の材質の上記被駆動部に対する摩擦係数よりも高いことを特徴とする圧電アクチュエーター。
【0021】
一般的に、上述の動作音は、擦り合わされる要素間の摩擦係数が高いほど鮮明になる。したがってこのような構成であれば、摺動部の磨耗が進行して第2部材に達したときに、上述の動作音をより一層鮮明にできる。そのため、摺動部の磨耗の進行の検出精度をより一層向上できる。
【0022】
[適用例8]上述の圧電アクチュエーターであって、上記第1部材の材質と上記第2部材の材質とでは、硬度が互いに異なることを特徴とする圧電アクチュエーター。
【0023】
上述の動作音は、被駆動部と擦り合わされる要素の硬度により異なる。したがってこのような構成であれば、動作音の音質変化を強調でき、摺動部の磨耗進行の検出精度を向上できる。
【0024】
[適用例9]上述の圧電アクチュエーターであって、上記第2部材の材質の硬度は、上記第1部材の材質の硬度よりも高いことを特徴とする圧電アクチュエーター。
【0025】
一般的に、上述の動作音は、被駆動部に擦り合わされる要素の硬度が高いほど鮮明になる。したがってこのような構成であれば、摺動部の磨耗が進行して第2部材に達したときに、上述の動作音をより一層鮮明にできる。そのため、摺動部の磨耗の進行の検出精度をより一層向上できる。
【0026】
[適用例10]上述の圧電アクチュエーターであって、上記第2部材の形状は、上記短辺から上記被駆動部に向かうに従って幅が狭くなることを特徴とする圧電アクチュエーター。
【0027】
このような構成であれば、第2部材の磨耗による動作音を、該磨耗の進行に伴い徐々に増大させることができる。したがって摺動部の磨耗の進行を容易に把握でき、圧電アクチュエーターの信頼性をより一層向上させることができる。なお、上述の第2部材の「形状」とは、平面形状(平面視での形状)の意味である。
【0028】
[適用例11]上述の圧電アクチュエーターであって、上記第2部材の形状は、上記短辺から上記被駆動部に向かうに従って幅が広がることを特徴とする圧電アクチュエーター。
【0029】
このような構成であれば、上記の磨耗が圧電素子の長辺方向に対して角度を有する方向から進行した場合にも、動作音の変化を早期に生じさせることができる。したがって摺動部の磨耗の進行を容易に把握でき、圧電アクチュエーターの信頼性をより一層向上させることができる。
【0030】
[適用例12]上述の圧電アクチュエーターであって、上記第2部材の形状は、略長方形であることを特徴とする圧電アクチュエーター。
【0031】
このような構成であれば、摺動部の磨耗が第2部材まで達した時点で、動作音を充分に変化させることができる。したがって、圧電アクチュエーターの信頼性をより一層向上させることができる。
【0032】
[適用例13]本適用例のロボットハンドは、上述の圧電アクチュエーターを備えたことを特徴とする。
【0033】
このような構成であれば、ロボットハンドを駆動する圧電アクチュエーターにおいて、摺動部の磨耗により異常が生じたことを容易に検知できる。したがって、連続的にロボットハンドを用いる場合の安全性等を向上できる。
【0034】
[適用例14]本適用例のロボットは、上述のロボットハンドを備えたことを特徴とする。
【0035】
このような構成であれば、ロボットハンドを駆動する圧電アクチュエーターに異常が発生した場合、早期に検知できる。したがって、ロボットを長期かつ連続的に使用する場合において、部品(圧電素子)の交換等の装置保守作業を計画的に実施できるため、突然の装置停止による想定外の生産中断を回避できるという効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】第1の実施形態にかかる圧電アクチュエーターとしての圧電モーターの分解斜視図。
【図2】圧電素子の第2電極の区分を摺動部と共に示す平面図。
【図3】第1の実施形態の振動板と摺動部を示す図。
【図4】第1の実施形態の振動体を示す図。
【図5】第2部材の磨耗の進行を示す図。
【図6】第1の実施形態の変形例の摺動部を示す図。
【図7】第2の実施形態の摺動部を示す図。
【図8】第3の実施形態の摺動部を示す図。
【図9】第4の実施形態にかかるロボットの概略を示す図。
【図10】第4の実施形態にかかるロボットハンドの概略を示す図。
【図11】ロボットハンドが備える第1の指の概略を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態にかかる圧電アクチュエーターについて、図面を参照しつつ述べる。なお本発明の実施の形態は、以下の各図に示す構造、形状に限定されるものではない。また、以下の各図においては、各構成要素を図面で認識可能な程度の寸法とするため、該構成要素の縮尺を実際とは異ならせてある。
【0038】
(第1の実施形態)
本実施形態、及び後述する各実施形態の圧電アクチュエーターとしての圧電モーターは、振動体10を構成する、振動板31と摺動部(突出部)41等に特徴を有している。そこで、まず圧電モーター1の概略について説明した後、振動板31及び摺動部41等について説明する。
【0039】
<圧電モーター>
図1は、第1の実施形態にかかる圧電モーター1の分解斜視図である。図示するように、圧電モーター1は、基台2、被駆動部としてのローター(回転体)3、圧電素子30と振動板31の積層体を含む振動体10、振動体10を固定する付勢手段80、等から構成されている。ローター3は、基台2の一方の面に対して略垂直方向の回転軸rを有している。
【0040】
図示するように、振動体10は、振動板31と該振動板の両面に配置された一対の圧電素子30等で構成されている。圧電素子30は後述するように駆動電圧としての交流電圧の印加により振動する圧電体層40を含む部材であり、平面視で略長方形である。振動板31は厚さ略0.5mmのSUS301EH(生材)からなる板状部材であり、圧電素子30と略同一の平面形状を有している。振動板31は、圧電素子30を補強する機能も果たしている。そして振動板31自体は振動しないが、圧電素子30と積層されているため、圧電素子30が振動すると振動板31も略同等に振動する。
【0041】
振動体10は、支持部35と摺動部(突出部)41とをさらに備えている。支持部35は、振動板31の双方の長辺bから突き出している部材であり、振動板31と一体的に成型されている。すなわち、振動板31と支持部35は、上述の厚さ0.5mmのSUS301EHの板材から、プレス加工、エッチング加工、切削加工、レーザー加工等の手法で一体的に成型されている。支持部35は、該長辺bに略直交する方向に延在する腕状の部分と該腕状の部分の先端に位置する略円形に広がった部分とを有している。そして上述の略円形の部分には、貫通孔37が形成されている。なお、短辺a及び長辺bについては、図3等を用いて後述する。
【0042】
摺動部41は、振動板31の一方の短辺a、すなわち長辺b方向の一方の端部から、平面視で突出する部材である。上述したように、振動板31及び圧電素子30は平面視で略長方形である。摺動部41は、かかる略長方形の振動板31及び圧電素子30の短辺a側から突出する部材である。本実施形態の摺動部41(及び後述する各実施形態の摺動部)は、第1部材11(図3参照)と第2部材21(図3参照)とで構成されている。ただし、本図では摺動部41を簡略化して図示している。
後述するように、摺動部41の一部は、上述のSUS301EHの板材から振動板31等と一体的に成型される場合もあり得る。かかる場合においては、上述の短辺aから突出する部分が摺動部41である。すなわち、同一の板材から一体的に成型された場合であっても、短辺aを境界として摺動部41と称する。
【0043】
振動体10は、摺動部41がローター3に所定の圧力で当接するように支持部35を(正確には貫通孔37)介して、後述する付勢手段80に固定されている。駆動電圧の印加により圧電素子30が振動すると、圧電素子30に積層された部材である振動板31、及び該振動板を含む振動体10全体が振動する。そして後述するように、振動板31の端部から突出する摺動部41は、楕円軌道を描くように振動する。ローター3が、かかる楕円軌道を描く振動が伝導されて所定の速度で回転することで、圧電モーター1としての機能を果たす。
【0044】
ここで圧電素子30について説明する。図示するように、圧電素子30は、圧電体層40と、圧電体層40の振動板31側に設けられた第1電極50と、圧電体層40の第1電極50とは反対側に設けられた第2電極60と、を含んでいる。第1電極50は、圧電体層40の振動板31側の略全面に亘って形成されている。一方、第2電極60は、第1の溝部71及び第2の溝部72によって、互いに電気的に隔離された5つの電極(第2電極60a〜60e)に分割されている。そして第1電極50は、かかる複数に分割された第2電極60(60a〜60e)に対する共通電極として機能している。なお、第2電極60(60a〜60e)及び溝部(71,72)については後述する。
【0045】
圧電体層40は、電気機械変換作用を示す圧電材料、特に圧電材料の中でも一般式ABO3で示されるペロブスカイト構造を有する金属酸化物からなる。圧電体層40としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の強誘電体材料や、これに酸化ニオブ、酸化ニッケル又は酸化マグネシウム等の金属酸化物を添加したもの等が好適である。具体的には、チタン酸鉛(PbTiO3)、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3)、ジルコニウム酸鉛(PbZrO3)、チタン酸鉛ランタン((Pb,La),TiO3)、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン((Pb,La)(Zr,Ti)O3)又は、マグネシウムニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛(Pb(Zr,Ti)(Mg,Nb)O3)等を用いることができる。
【0046】
図2は、圧電素子30の第2電極60の区分を摺動部41と共に示す平面図である。第2電極60は、第1の溝部71により短辺a方向に略三等分割されている。そして短辺a方向における両側の2つの電極は、第2の溝部72によって、さらに長辺b方向に略二等分割されている。したがって第2電極60は、第2電極60a〜第2電極60eの計5つの電極に分割されている。なお、短辺a及び長辺bについては、図3等を用いて後述する。
上記の5つの第2電極60のうち、第2電極60cは縦振動用電極として機能する。そして第2電極60cの短辺a方向における両側に対をなすように形成された第2電極60aと第2電極60eは、第1屈曲振動用電極として機能する。また、第2電極60bと第2電極60dは第2屈曲振動用電極として機能する。
【0047】
第2電極60a、第2電極60e、及び第2電極60cのみに選択的に駆動電圧を印加すると、圧電素子30には、主に第2電極60cによって圧電素子30の長辺b方向の略中心を中心に伸縮する縦一次振動が励振される。また、主に第2電極60aと第2電極60eによって、圧電素子30の面内で縦一次振動と直交する方向、つまり圧電素子30の短軸方向に沿って屈曲する屈曲二次振動が励振される。
【0048】
上記双方の振動の程度、すなわち圧電素子30の振幅は、駆動電圧の周波数によって変動する。振幅の逆数を振動体10のインピーダンスとした場合、駆動周波数に対してインピーダンスが極小となる周波数、すなわち振幅がピークとなる周波数が、上記双方の振動毎に現れる。かかる周波数が共振周波数(共振点)である。縦一次振動がピークとなる周波数が縦共振周波数(fr1)であり、屈曲二次振動がピークとなる周波数が屈曲共振周波数(fr2)である。そして、縦共振周波数の方が屈曲共振周波数よりも低い値(周波数)となる。双方の共振周波数の略中間の周波数で圧電アクチュエーターを駆動することで、圧電素子30に縦一次振動と屈曲二次振動の双方を励振させることができる。
そして、かかる縦一次振動と屈曲二次振動とが組み合せることで、圧電素子30に、図2における二点鎖線で示されるように伸縮しながら屈曲する振動を励振させることができる。その結果、摺動部41は、かかる2つの振動を組み合わせた楕円軌道Rを描いて振動する。
【0049】
摺動部41を反対方向に回転させる場合には、圧電素子30において駆動電圧を印加する第2電極60を、振動体10の長辺b方向に沿った中心線を軸として線対称に切り替えればよい。すなわち、複数に分割された第2電極60のうち、第2電極60b、第2電極60d及び第2電極60cのみに選択的に駆動電圧を印加することにより得られる縦一次振動と、第2電極60bと第2電極60dによって得られる屈曲二次振動とを組み合せることで、図示する回転(振動)方向(右回り方向)とは反対の方向に回転する楕円振動を得ることができる。
【0050】
ここで図1に戻り、付勢手段80について説明する。付勢手段80は、振動体10を保持する保持部材81と、保持部材81に一端が固定されたコイルばね等のばね部材82と、ばね部材82の他端に当接すると共に基台2に固定された支持ピン83と、を少なくとも備えている。
【0051】
保持部材81は、振動体10の支持部35が固定される一対の固定部84と、固定部84の間に一体的に設けられて基台2に対してスライド移動可能に支持されるスライド部85とを備えている。固定部84には、支持部35の貫通孔37に対応して、ねじ部材86が螺合される雌ねじ部87が形成されている。この雌ねじ部87に支持部35の後述する貫通孔37を挿通したねじ部材86を螺合させることで、振動体10は保持部材81に対して固定される。
【0052】
スライド部85には、厚さ方向に貫通し、且つスライド方向に延設された長孔である2つのスライド孔88が設けられている。そして、各スライド孔88に挿通されて基台2に固定されたスライドピン89によって、スライド部85は基台2に対してスライド移動可能に支持されている。
【0053】
ばね部材82は、スライド部85のスライド方向に沿って配置されたコイルばねである。ばね部材82は、固定部84に一端が固定されると共に、基台2に固定された支持ピン83の側面に他端が当接するように配置されている。ばね部材82は、振動体10が備える摺動部41をローター3に向かって付勢、すなわち押圧する。かかる状態で圧電素子30に楕円軌道を描く振動を発生させ、かつ、該振動を摺動部41によりローター3に伝達することで、ローター3を回転させることができる。上述したように、圧電素子30は任意の方向の楕円振動を発生させることができる。したがって、圧電モーターは、右回りと左回りとのどちらの方向にも回転可能である。
【0054】
上述したようにローター3は、該ローターと摺動部41との間に働く摩擦力によって回転する。すなわち圧電モーター1は、ローター3と摺動部41とが擦り合わされることで回転する。したがって、ローター3と摺動部41は磨耗しにくい材料で形成される必要がある。本実施形態の圧電モーター1が備えるローター3は、硬度が略700Hv(ビッカース硬度)のマルテンサイト系ステンレス鋼SUS440Cで構成されている。かかる材料により、ローター3は耐磨耗性と強度とを両立している。
【0055】
後述するように、本実施形態の摺動部41も、磨耗しにくい高硬度材料で形成されている。しかし、高硬度材料であっても、圧電モーター1の長期の使用により徐々に磨耗する。上述したように摺動部41は付勢手段80によりローター3に対して所定の圧力で当接されている。したがって、若干の磨耗であるならば、圧電モーター1の機能には影響しない。しかし磨耗がより一層進行すると、圧電素子30の振動の伝達に支障をきたし得る。また、摺動部41が完全に消滅した場合、圧電体層40とローター3とが短絡して、圧電モーター1を破壊し得る。そのため、本実施形態の摺動部41は、かかる磨耗(の進行)を検出するために、第1部材11と第2部材21とを組み合せて形成されている。以下、本実施形態の摺動部41及び振動板31等について詳述する。
【0056】
<摺動部>
図3は、本実施形態の振動板31と摺動部41を、支持部35及び貫通孔37と共に示す図である。図4は、本実施形態の振動体10を示す図である。図4(a)は平面図であり、図4(b)は、図4(a)のA−A’線における断面を示す図である。上述したように、そして図4(b)に示すように、振動体10は図3に示す振動板31の表裏の双方の面に各1つの圧電素子30、すなわち計2つの圧電素子30を配置して構成されている。ただし、振動体10の構成は、上述の態様に限定されるものではない。例えば、振動板31のどちらか一方の面に1つの圧電素子30を配置する構成、すなわち圧電素子30を1つのみ備える構成の振動体10も可能である。なお、以下の記載において、支持部35及び貫通孔37の説明は一部省略する。また、圧電素子30の構成については上述したので、第2電極60、及び溝部(71,72)等の説明の記載は省略する。
【0057】
圧電素子30は、平面視で略長方形であり、一対の短辺aと一対の長辺bで構成されている。振動板31も平面視で略長方形であり、第2部材21の両側に形成された切れ込み34を除くと、圧電素子30と重なっている。したがって、振動板31の長辺bは圧電素子30の長辺bと重なっており、振動板31の短辺aは、切れ込み34を除くと圧電素子30の短辺aと重なっている。そして図4に示すように、平面視で短辺aから突出する部分が、摺動部41である。
【0058】
図示するように、摺動部41は、平面視で第1部材11と第2部材21とを組み合せて構成されている。第1部材11は、硬度が18GPa(略1800Hv)のアルミナ(Al2O3)で形成されている。そして第2部材21は、振動板31と一体的に形成されている。すなわち、支持部35と同様に、SUS301EHの板材から、プレス加工等の手法で一体的に成型されている。成型されたSUS301EHの板材のうち、平面視で略長方形の圧電素子30(図1等参照)と重なる部分が振動板31である。そして、短辺aから突出する部分が第2部材21となり、両側の長辺bから突出する部分を支持部35としている。したがって、本実施形態の摺動部41は、平面視で、短辺aから突出する第2部材21と、該第2部材における振動板31側を除く3方を囲む第1部材11と、で構成されている。したがって、第2部材21は第1部材11の内側に形成されている。
【0059】
上述したように、振動板31における、第2部材21が形成されている短辺aには、該第2部材の両側に切れ込み34が形成されている。かかる切れ込み34は、第1部材11の密着性を強化するために形成されている。第1部材11の厚さは、振動板31と同様の略0.5mmである。そして第1部材11は、図示するように平面視で逆U字状の外形線を有しており、内側が上述の切れ込み34と第2部材21に嵌合するように成型されている。そして第1部材11は、エポキシ樹脂等の接着材で振動板31と接合されている。切れ込み34は、第1部材11の接着面積を増加させて、接着強度を増加させる機能を果たしている。上述したように、摺動部41は短辺aから突出する部分である。したがって、第1部材11のうち、上記切れ込み34に嵌合する部分は、摺動部41の構成要素ではない。
【0060】
上述したように、第2部材21と該第2部材を囲む第1部材11とからなる摺動部41は、圧電素子30の短辺aから突出している。したがって、摺動部41とローター3が擦り合わされて、摺動部41の磨耗が進行する場合において、まず第1部材11が磨耗し始める。そして第1部材11の磨耗がある程度まで進行した後に、第2部材21が磨耗し始める。
【0061】
図5は、第2部材21の磨耗の進行を示す図である。図5(a)は、第1部材11の磨耗が進行して、該第1部材に囲まれていた第2部材21、すなわち該第1部材の内側に配置されていた第2部材21がローター3に当接した状態を示す図である。図5(b)は、第2部材21の磨耗がある程度まで進行した状態を示す図である。かかる状態でも、圧電素子30はローター3と接触していない。したがって、本実施形態の摺動部41であれば、ローター3と第1部材11とが擦り合わされて該第1部材11の磨耗が進行した後、圧電素子30がローター3と接触するまでの間に、ローター3と第2部材21とが擦り合わされる状態を確保できる。そして、ローター3と、第1部材11あるいは第2部材21とが擦り合わされる際には、動作音(駆動音若しくは摩擦音)が発生する。
【0062】
ここで、第1部材11と第2部材21、及びローター3の材質の硬度等を述べる。上述したように、ローター3の材質は、硬度が略700Hv(ビッカース硬度)のマルテンサイト系ステンレス鋼SUS440Cである。第1部材11の材質は硬度が18GPa(略1800Hv)のアルミナである。そして上述したように、第2部材21の材質は振動板31の材質と共通するSUS301EHであり、硬度は略550Hvである。このように、本実施形態の摺動部41における第1部材11の材質と第2部材21の材質とでは、硬度が互いに異なっている。
また、ローター3の材質のSUS440Cとアルミナの摩擦係数(μ)は略1.1である。そして、SUS440CとSUS301EHの摩擦係数は略0.99である。このように、本実施形態の摺動部41における第1部材11の材質と第2部材21の材質とでは、ローター3に対する摩擦係数も異なっている。
【0063】
このように、第1部材11と第2部材21とでは硬度が異なり、かつ、ローター3に対する摩擦係数も異なる。したがって、第1部材11と第2部材21とでは、ローター3と擦り合わされる際に発生する動作音が異なってくる。そのため、圧電モーター1を長期間使用して第1部材11の磨耗が進行し、ローター3に第2部材21が当接するようになると動作音に変化が生じる。したがって、圧電モーター1の使用者等は、動作音(駆動音)によって第2部材に達するまで磨耗が進行したことを把握できる。そして本実施形態の圧電モーター1は、かかる進行状況の発信を摺動部41の材質の差を利用して行うため、磨耗度合を検出するためのセンサーや電子回路等を必要とせずに、圧電素子30の寿命が近いことを上記の使用者等に知らしめることができる。
また、マイクを含む音響センサーや周波数解析手段、PC等の計算手段を用いて、上記の動作音(の変化)自動的に検出することもできる。そしてかかる検出結果を、表示ランプ(傾向ランプ)等を用いて上記の使用者等に知らしめることができる。
【0064】
<第1の実施形態の効果>
このように、本実施形態の圧電モーター1は、摺動部41の磨耗の進行状況を周囲に発信できる。そのため、本実施形態の圧電モーター1の使用者は、摺動部41の磨耗の進行状況、及び圧電素子30が寿命に近づいたか否かを、圧電モーター1及び該圧電モーターを駆動用アクチュエーターとして用いる電子機器等を停止させずに把握できる。そして、本実施形態の圧電モーター1の使用者は、摺動部41の磨耗が所定の段階に達した時点で振動体10等を交換することが可能となる。したがって、本実施形態のアクチュエーターを用いることで、上述の磨耗が圧電素子30の端部に達して圧電素子30及び圧電モーター1が損傷する現象を低減でき、上述の電子機器等の安全性を向上できる。また、上述の損傷を低減できるため、上述の電子機器等、及び該電子機器等を用いる製造ライン等が、圧電素子30の損傷により停止する事態も低減でき、経済性を向上できる。
【0065】
(変形例)
次に、本実施形態の圧電モーター1が備える摺動部であって、図3に示す態様以外の摺動部41を、変形例として図6(図6(a)〜図6(c))に示す。なお、図6においては振動板31と、摺動部41を構成する第1部材11及び第2部材21を示し、圧電素子30を構成する第2電極等の図示は省略している。
【0066】
図6(a)は、変形例1の摺動部41を示す図である。本変形例の摺動部41は、第2部材21が、図3に示す台形ではなく略長方形である点に特徴がある。このような態様の摺動部41であれば、摺動部41の磨耗が第2部材21まで達した時点で、動作音を充分に変化させることができる。したがって、磨耗の進行をより確実に発信でき、圧電素子30及び該圧電素子を含む圧電モーター1が損傷する現象をより確実に低減できる。
【0067】
図6(b)は、変形例2の摺動部41を示す図である。本変形例の摺動部41は、第2部材21が、図3に示す台形ではなく、先端に向かうに従って幅が広がっている点に特徴がある。このような態様の摺動部41であれば、摺動部41の磨耗が斜め方向から進行した場合であっても、動作音を確実に変化させることができる。したがって、摺動部41がローター3に斜め方向から当接している場合であっても磨耗の進行をより確実に発信でき、圧電素子30及び該圧電素子を含む圧電モーター1が損傷する現象をより確実に低減できる。
なお、上述の「先端に向かうに従って幅が広がっている」とは、幅が一定の割合で広がる逆テーパー状と、幅の広がり方が一定ではなく、曲線的に広がる形状と、の双方を含んでいる。
【0068】
図6(c)は、変形例3の摺動部41を示す図である。本変形例の摺動部41は、第2部材21が変形例1の第2部材21と同様に略長方形であり、該第2部材を囲む第1部材11における、先端の半円状の部分から短辺aに向かって延在する部分の幅が、振動板31に向かうに従って広がっている点に特徴がある。このような態様の摺動部41であれば、該摺動部がローター3に対して斜め方向に当接する場合における強度を向上できる。
なお、上述の「振動板31に向かうに従って広がっている」とは、側部が直線で構成されたテーパー状でも良く、また側部が曲線で構成された形状でも良い。
【0069】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態の圧電モーターについて説明する。本実施形態の圧電モーターは、上述の第1の実施形態の圧電モーター1と同様に振動体10が備える摺動部42(図7参照)の構造に特徴がある。そして本実施形態の圧電モーターは、該摺動部を除くと圧電モーター1と略同一である。そこで本実施形態の説明は、第1の実施形態における図1等に対応する図は省略して、摺動部42の構造を示す図のみを用いて行う。
【0070】
図7は、本実施形態の圧電モーターが備える振動体10が含む摺動部42の態様を示す図である。図7(a)〜図7(c)の各図は、夫々が変形例1〜変形例3に対応している。図7(a)〜図7(c)に示すように、本実施形態の摺動部42は、第1部材12が第2部材22の全周を囲んでいる点で、第1の実施形態にかかる摺動部41と異なっている。すなわち、本実施形態の第2部材22は振動板32と一体的には形成されておらず、他の部材とは完全に独立している。したがって、第2部材22は第1部材12の中に島状に配置されている。なお、本実施形態の摺動部42は、第1部材12が振動板32と一体的に形成されていない点においては、第1の実施形態にかかる摺動部41と共通している。かかる構成により、本実施形態の摺動部42は、第2部材22の材質に、振動板32の材質及び第1部材12の材質のいずれとも異なる材料を選択することが可能である。以下、各要素の材質について述べる。なお、本実施形態の圧電モーターのローターの材質は、第1の実施形態のローター3の材質と同様に、マルテンサイト系ステンレス鋼SUS440Cである。
【0071】
本実施形態の振動板32の材質は、第1の実施形態の振動板31の材質と共通の、SUS301EHであり、硬度は略550Hvである。本実施形態の第1部材12の材質は、硬度が略16GPaのジルコニア(ZrO2)である。そして本実施形態の第2部材22の材質は、硬度が略18GPaのアルミナである。
第1部材12の材質のジルコニアとローター3の材質であるSUS440Cとの間の摩擦係数は略0.95である。そして、第2部材22の材質のアルミナとローター3の材質であるSUS440Cとの間の摩擦係数は略1.1である。
【0072】
このように、本実施形態の摺動部42を構成する第1部材12と第2部材22は、第1の実施形態の第1部材11及び第2部材21と同様に硬度が互いに異なり、かつ、被駆動部であるローター3に対する摩擦係数も異なっている。そして、上述の第1の実施形態の摺動部41とは異なり、本実施形態の摺動部42においては、第2部材22の材質の硬度が、第1部材12の材質の硬度よりも高い。また、本実施形態の摺動部42においては、第2部材22の材質のローター3(の材質)に対する摩擦係数が、第1部材12の材質のローター3(の材質)に対する摩擦係数よりも高い。
一般的に、動作音は、擦り合わされる要素間の摩擦係数が高いほど大きくなる。そしてローター3に擦り合わされる要素の硬度が高いほど高音になる。したがって、本実施形態の摺動部42を用いることで、磨耗が進行して第2部材22がローター3に当接するようになった段階で、より大きくより高い動作音を発生させることができる。
【0073】
<第2の実施形態の効果>
本実施形態の摺動部42を備える圧電モーターは、動作音の変化を利用することで、摺動部42の磨耗の進行状況を、該圧電モーター等を停止させずに把握できる点で、第1の実施形態の摺動部41を備える圧電モーター1と共通している。そして、本実施形態の摺動部42は、第2部材22が第1部材12に囲まれるように島状に形成されているため、材質の選択の幅を広げることができる。したがって、第1部材12と第2部材22の双方を好適な材料で形成できる。その結果、上述したように磨耗の進行に伴い動作音を増大させることができる。したがって、本実施形態の摺動部42を備える圧電モーターの使用者は、上記磨耗の進行状況をより一層確実に把握できる。すなわち、本実施形態の摺動部42を備える圧電モーターは、使用者に対してより効果的に寿命を認知させることができる。したがって、本実施形態の摺動部42であれば、上述の磨耗が圧電素子30の端部に達して圧電素子30及び圧電モーター等が損傷する現象をより一層低減でき、安全性及び経済性をより一層向上できる。
【0074】
なお、第1部材12及び第2部材22の材質は、上述の材料に限定されるものではない。例えば、第1部材12に炭化タングステン(WC)等を含む超硬合金を用いることもできる。かかる超硬合金は、炭化タングステンの粒径等を工夫することで、91〜93のHRA硬度(ロックウェル硬度Aスケール)を得られる。また、SUS440Cに対する摩擦係数は、略0.8である。したがって、超硬合金からなる第1部材12に、SUS440Cに対する摩擦係数が略1.1のアルミナからなる第2部材を組み合せた場合も、摺動部42の磨耗の進行に伴い動作音を充分に変化させることができる。
【0075】
また、第2部材22の材料には、上記のアルミナに換えて窒化シリコン(Si3N4)を用いることもできる。窒化シリコンは、アルミナの硬度に近い、略16GPaの硬度を有している。そしてSUS440Cに対する摩擦係数は略1.1であり、この点はアルミナと同等である。したがって、ジルコニア又は超硬合金からなる第1部材12に、窒化シリコンからなる第2部材22を組み合せた摺動部42であっても、磨耗の進行に伴い動作音を充分に変化させることができる。
【0076】
(変形例)
次に本実施形態の変形例について、図7を用いて説明する。図7(a)は変形例1の摺動部42を示す平面図であり、図7(b)は変形例2の摺動部42を示す平面図であり、図7(c)は変形例3の摺動部42を示す平面図である。第1部材12の外形は、逆U字型、すなわち半円の部分と略長方形の部分とを組み合せた形状で共通している。そして第2部材22の形状が、各々の変形例において異なっている。
【0077】
図7(a)に示す変形例1の摺動部42の第2部材22は、第1部材12と同様に逆U字型の外形を有している。このような外形の第2部材22を含む摺動部42は、磨耗が斜め方向から進行した場合であっても、動作音の音質を充分に変化させることができる。したがって、摺動部42の磨耗の進行方向を限定できない場合において好適である。
【0078】
図7(b)に示す変形例2の摺動部42の第2部材22は、摺動部42の先端方向にかけて幅が狭まるテーパー状の外形を有している。このような外形の第2部材22を含む摺動部42は、磨耗の進行に伴い摺動部42に占める第2部材の比率を増大させて、動作音の変化を強調できる。したがって、摺動部42の磨耗が、主として振動板32の長辺b(図4等参照)の方向から進行するような使用形態において好適である。
【0079】
図7(c)に示す変形例3の摺動部42の第2部材22は、摺動部42の先端方向にかけて幅が広がっており、かつ、先端が第1部材12と同様の円弧状の外形を有している。このような外形の第2部材22を含む摺動部42は、該摺動部の磨耗が、振動板32の長辺bの方向から進行する場合であっても斜め方向から進行する場合であっても略同等に動作音の音質の変化を生じさせることができる。したがって、磨耗の進行方向が限定できないような使用形態において好適である。
【0080】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態の圧電モーターについて説明する。本実施形態の圧電モーターは、上述の第1の実施形態の圧電モーター1と同様に振動体10が備える摺動部43(図8参照)の構造に特徴がある。そして本実施形態の圧電モーターは、該摺動部を除くと圧電モーター1と略同一である。そこで本実施形態の説明は、上記の第2の実施形態の説明と同様に、摺動部43の構造を示す図のみを用いて行う。なお、本実施形態の圧電モーターが備えるローター3の材質は、上述の各実施形態と同様に、SUS440Cである。
【0081】
図8は、本実施形態の圧電モーターが備える振動体10が含む摺動部43の態様を示す図である。図8(a)〜図8(c)の各図は、夫々が変形例1〜変形例3に対応している。図8(a)〜図8(c)に示すように、本実施形態の摺動部43は、第1部材13が、振動板33と一体的に形成されている点に特徴がある。すなわち、本実施形態の第1部材13は、板材をプレス加工等で成型して振動板33を形成する際に支持部35(図3等参照)及び貫通孔37(図3等参照)と同様に、振動板33と一体的に成型されている。
【0082】
本実施形態の振動板33(及び第1部材13)は、第1実施形態及び第2実施形態の振動板(31,32)と同様に、硬度が略550HvのSUS301EHで形成されている。第2部材23の材質は、アルミナである。そして第2部材23は、第2の実施形態の第2部材22と同様に、第1部材13内に島状に配置されている。すなわち第2部材23は、平面視で全周囲を第1部材13に囲まれている。したがって、摺動部43の磨耗が進行した場合、ローター3と擦り合わされる部分の材質は、SUS301EHの単体から、SUS301EHとアルミナの組み合わせ、に変化する。したがって、動作音の音質も変化する。
【0083】
ここで、第1部材13と第2部材23との硬度、及びローター3の材質であるSUS440Cに対する摩擦係数を比較する。SUS301EHの硬度は上述したように略550Hvであり、アルミナの硬度は上述したように略18GPaである。SUS440Cに対する摩擦係数は、SUS301EHが略0.99であり、アルミナは略1.1である。
このように、本実施形態の摺動部43においては、第2部材23の材質の硬度が、第1部材13の材質の硬度よりも高い。また、本実施形態の摺動部43においては、第2部材23の材質のローター3(の材質)に対する摩擦係数が、第1部材13の材質のローター3(の材質)に対する摩擦係数よりも高い。
【0084】
上述したように、動作音は、擦り合わされる要素間の摩擦係数が高いほど鮮明になる。そしてローター3に擦り合わされる要素の硬度が高いほど鮮明になる。したがって、本実施形態の摺動部43を用いることで、磨耗が進行して第2部材23がローター3に当接するようになった段階で、より大きくより鮮明な動作音を発生させることができる。したがって、本実施形態の摺動部43は、上述の他の実施形態の摺動部(41,42)と同様に、電子回路等を用いずに、磨耗の進行状況を周囲に発信できる。
【0085】
<第3の実施形態の効果>
本実施形態の摺動部43を備える圧電モーターは、動作音の変化を利用することで、摺動部43の磨耗の進行状況を、該圧電モーター等を停止させずに把握できる点で、上述の各実施形態の圧電モーターと共通している。そして、本実施形態の摺動部43は、第2部材23が第1部材13に囲まれるように島状に形成されているため、材質の選択の幅を広げることができる。すなわち、第1部材13よりも硬度等が高い材料で、第2部材23を形成できる。したがって、摺動部43の磨耗が進行して第2部材23の磨耗が始まった時点で、動作音の音質を大きく変化させて、使用者等に磨耗の進行状況を把握させることができる。したがって、本実施形態の摺動部43であれば、上述の磨耗が圧電素子30の端部に達して圧電素子30及び圧電モーター等が損傷する現象をより一層低減でき、安全性及び経済性をより一層向上できる。
また、本実施形態においては、第1部材13と振動板33とが一体的に形成されているため、摺動部43の加工精度も向上している。そしてさらには、振動板33に切れ込み34等が形成されていないため、該振動板の強度の低下も抑制されている。
【0086】
なお、第1部材13及び第2部材23の材質は、上述の材料に限定されるものではない。例えば、振動板の材質に上述の超硬合金を用いることもできる。また、第2部材23を、アルミナに換えて窒化シリコンで形成することもできる。
【0087】
(変形例)
次に本実施形態の各変形例について、図8を用いて説明する。図8(a)は変形例1の摺動部43を示す平面図であり、図8(b)は変形例2の摺動部43を示す平面図であり、図8(c)は変形例3の摺動部43を示す平面図である。図示するように、本実施形態の各変形例の摺動部43は、第2部材23の形状が、上記第2実施形態の各変形例の第2部材22の形状と略同一である。したがって、本実施形態の各変形例の摺動部43の特徴及び効果は、上記第2の実施形態の各変形例の効果等に類似している。
【0088】
図8(a)に示す変形例1の摺動部43の第2部材23は、第1部材13と同様に逆U字型の外形を有している。したがって、磨耗が斜め方向から進行した場合であっても、動作音の音質を充分に変化させることができ、磨耗の進行方向を限定できない場合において好適である。
【0089】
図8(b)に示す変形例2の摺動部43の第2部材23は、摺動部43の先端方向にかけて幅が狭まる外形を有している。このような外形の第2部材23を含む摺動部43は、磨耗の進行に伴い動作音の変化を強調できるため、摺動部43の磨耗が、主として振動板33の長辺b(図4等参照)の方向から進行するような使用形態において好適である。
【0090】
図8(c)に示す変形例3の摺動部43の第2部材23は、摺動部43の先端方向にかけて幅が広がっており、かつ、先端が第1部材13と同様の円弧状の外形を有している。このような外形の第2部材23を含む摺動部43は、どの方向から磨耗が進行しても略同等に動作音の音質の変化を生じさせることができるため、磨耗の進行方向が限定できないような使用形態において好適である。
なお、上述の「先端方向にかけて幅が狭まる」とは、側部が直線で構成されたテーパー状でもよく、また側部が曲線で構成されていても良い。同じく、「先端方向にかけて幅が広がって」とは、側部が直線で構成された逆テーパー状でもよく、また側部が曲線で構成されていても良い。
【0091】
(第4の実施形態)
次に第4の実施形態として、第1の実施形態にかかる圧電モーター1、あるいは第2の実施形態又は第3の実施形態に記載した摺動部(41,42,43)を備える圧電モーター、のいずれかと同様の構成の圧電モーターを備えたロボットハンド、及び該ロボットハンドを備えたロボットについて、図9〜図11を用いて説明する。
【0092】
図9は、ロボットハンド(201,202)を備えた、本発明の第4の実施形態にかかるロボット200の概略を示す図である。ロボット200は第1のアーム240と第2のアーム250を備えており、夫々のアーム(240,250)の先端には、第1のロボットハンド201と第2のロボットハンド202が配置されている。第1のロボットハンド201と第2のロボットハンド202とは、互いに略同一の構成を有している。そこで、以降、第1のロボットハンド201(以下、単に「ロボットハンド201」と称する。)についてのみ説明する。
【0093】
図10は、本発明の第4の実施形態にかかるロボットハンド201の概略を示す図である。図10(a)、図10(b)に示すように、ロボットハンド201は、手のひら225と、第1の指210と第2の指220を備えている。第1の指210は第1のリンク211と第2のリンク212で構成され、第2の指220は第1のリンク221と第2のリンク222で構成されている。そしてロボットハンド201は、把持するワークの大小により使用するリンク変更可能である。
【0094】
図10(a)は、ロボットハンド201が大型ワーク233を把持している状態を示している。大型ワーク233は、第1の指210の第1のリンク211と、第2の指220の第1のリンク221と、で把持されている。そして、第1の指210の第2のリンク212は第1のリンク211の中に格納され、第2の指220の第2のリンク222は第1のリンク221の中に格納されている。
【0095】
図10(b)は、ロボットハンド201が小型ワーク234を把持している状態を示している。小型ワーク234は、第1の指210の第2のリンク212と第2の指220の第2のリンク222とで把持されている。
このように、ロボットハンド201は把持するワークにより使用するリンクを変更することで、夫々のワーク(233,234)を好適に把持できる。そしてロボットハンド201は、ワークの把持及び第2のリンク(212,222)の格納等のために、複数の駆動用の圧電モーターを備えている。
【0096】
図11(a)〜(d)は、ロボットハンド201が備える第1の指210の概略を示す図である。なお、第2の指220も同一の構成を有している。図11(a)は、第2のリンク212が、第1のリンク211に形成された溝226(図11(d)参照)内に格納された状態を示している。図11(b)は、第2のリンク212が第1のリンク211から取り出される途中の状態を示している。図11(c)は、第2のリンク212が第1のリンク211から取り出された状態を示している。
【0097】
かかる動作は第2の関節(回転軸)215を中心に行われる。そして第1のリンク211の開閉動作は第1の関節(回転軸)213を中心に行われる。そして各関節(213,215)には、駆動用のアクチュエーターとして、第1の実施形態にかかる圧電モーター1、あるいは第2の実施形態又は第3の実施形態に記載した摺動部41(図3等参照)を備える圧電モーター、のいずれかと同様の構成を有する、第2の圧電モーター214及び第3の圧電モーター216が配置されている。
上述したように、第2のリンク212は、小型ワーク234を把持するリンクである。したがって第3の圧電モーター216には、第2の圧電モーター214に比べて小型かつ低駆動力の圧電モーターを用いることができる。
【0098】
このようにロボットハンド201は、把持動作を行うためのアクチュエーターとして、第1の実施形態の圧電モーター1等に類似する構成の圧電モーター(214,216)を用いている。上述したように、第1の実施形態の圧電モーター1は、摺動部41が、第2部材21と該第2部材を囲む第1部材11とで構成されており、摺動部41の磨耗の進行を動作音の音質の変化により発信できる。すなわち、使用者に磨耗の進行を知らしめることができる。
したがって、磨耗が圧電素子30(図1等参照)に達して該圧電素子が損傷する前に該圧電素子を含む振動体10(図4等参照)の交換等を実施できる。その結果、圧電モーターの、損傷さらにはロボットハンド201及びロボット200の損傷によるコストを低減できる。また、ロボット200を備える製造ラインの停止に伴うコストも低減できる。
【0099】
なお、ロボットハンド(201,202)のみではなく、第1のアーム240及び第2のアーム250を駆動するためのアクチュエーターとしても、第1の実施形態にかかる圧電モーター1等と同様の構成を有する圧電モーターを用いることができる。
また、圧電モーターを上述のようにロボットハンドの把持動作を行うためのアクチュエーターとして用いる場合、歯車等の増減速手段を介して用いることが好ましい。一般に、圧電モーターの回転数はかなり速いため、リンク(第1のリンク211等)の動きに合せて、回転数の減速を要する場合もあり得る。また一方では、回転数の増速を要する場合もあり得る。かかる場合において、圧電モーターを歯車等の増減速手段を介して用いることで、多様な動作を行うロボットハンドのアクチュエーターとして、圧電モーターを好適に利用できる。
【0100】
本発明の実施の形態は、上述の各実施形態以外にも様々な変形例が考えられる。以下、変形例を挙げて説明する。
【0101】
(変形例1)
上述の実施形態では、圧電アクチュエーターとして、被駆動部が回転軸を有するローターである圧電モーターを例に説明していた。しかし、本発明の実施の対象となる圧電アクチュエーターは、圧電モーターに限定される物ではない。例えば、直線状の被駆動部を有し、該被駆動部を往復運動させる圧電アクチュエーターも対象となる。かかる場合かかる圧電アクチュエーターであっても、被駆動部は、摺動部との間に働く摩擦力で駆動される。したがって、摺動部の磨耗の進行を把握して、圧電素子等の損傷を抑制することは重要となる。かかる場合において、上述の各実施形態の摺動部(41等)であれば磨耗の進行を周囲に発信できるため、圧電素子及び該圧電素子を用いた圧電アクチュエーターの損傷等することを低減できる。
【0102】
(変形例2)
上述の各実施形態においては、第1部材(11等)は第2部材(21等)を平面視で囲んでいた。しかし、第1部材(11等)が、第2に部材(21等)を立体的に覆う態様も可能である。かかる態様の摺動部は、振動板の厚さが充分あり、かつ第2部材に金属ガラス材料等の用いる場合に効果的である。
【0103】
(変形例3)
上述の第4の実施形態では、上述の第1の実施形態等にかかる圧電モーターを用いる機器として、ロボットハンド201及び該ロボットハンドを用いるロボット200について述べた。しかし、上述の圧電モーター(1等)を用いる機器は、ロボット200に限定される物ではない。時計のカレンダー送り装置、ICハンドラー、印刷装置、投薬ポンプ等の各種の機器におけるアクチュエーターとして用いることができる。
【符号の説明】
【0104】
1…圧電アクチュエーターとしての圧電モーター、2…基台、3…被駆動部としてのローター、10…振動体、11…第1の実施形態の第1部材、12…第2の実施形態の第1部材、13…第3の実施形態の第1部材、21…第1の実施形態の第2部材、22…第2の実施形態の第2部材、23…第3の実施形態の第2部材、30…圧電素子、31…第1の実施形態の振動板、32…第2の実施形態の振動板、33…第3の実施形態の振動板、34…切れ込み、35…支持部、37…貫通孔、40…圧電体層、41…第1の実施形態の摺動部、42…第2の実施形態の摺動部、43…第3の実施形態の摺動部、50…第1電極、60…第2電極、71…第1の溝部、72…第2の溝部、80…付勢手段、81…保持部材、82…ばね部材、83…支持ピン、84…固定部、85…スライド部、86…ねじ部材、87…雌ねじ部、88…スライド孔、89…スライドピン、200…ロボット、201…第1のロボットハンド、202…第2のロボットハンド、210…第1の指、211…第1のリンク、212…第2のリンク、213…第1の関節、214…第2の圧電モーター、215…第2の関節、216…第3の圧電モーター、220…第2の指、221…第1のリンク、222…第2のリンク、225…手のひら、226…溝、233…大型ワーク、234…小型ワーク、240…第1のアーム、250…第2のアーム、a…短辺、b…長辺、r…回転軸。
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電アクチュエーター、及び当該圧電アクチュエーターを備えたロボット及びロボットハンドに関する。
【背景技術】
【0002】
圧電アクチュエーターは、高周波の交流電圧等の駆動電圧を振動(機械的振動)に変換する圧電素子と、該圧電素子の振動によって駆動される被駆動部と、を少なくとも有する駆動装置である。上述の振動は、平面視で圧電素子の一端面から突き出した摺動部(突出部)によって、被駆動部に伝達される。摺動部は被駆動部に当接しており、摩擦力を利用して圧電素子の振動を被駆動部に伝達する。被駆動部がローターの場合、圧電素子の振動を回転力として利用可能な圧電モーターを構成できる。すなわち、圧電モーターは圧電アクチュエーターの一分野である。
【0003】
かかる摺動部の態様としては、例えば特許文献1に示すように、圧電素子に積層される補強板を利用するものが知られている。圧電素子を補強板に積層して、該補強板の一部を平面視で圧電素子から突き出るようにパターニングすることで、圧電素子の振動を被駆動部に効率的に伝達可能な摺動部を形成できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−286167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし上述の構成の圧電アクチュエーターとしての圧電モーターでは、摺動部の磨耗の進行状況を検出しにくいという課題がある。詳しくは、圧電モーターを設計寿命を超えて長期間使用した場合や、過負荷が継続して加わった場合等、摺動部が削れて消耗してしまうことが想定されるが、この消耗の度合いを検出することは困難であった。特に磨耗が進行して圧電素子の端部に達すると圧電素子が損傷して圧電モーターが停止してしまう恐れがあった。換言すれば、圧電モーターの異常(寿命)を検出することが困難であるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例の圧電アクチュエーターは、圧電素子と、上記圧電素子に積層される振動板と、上記振動板から被駆動部に向かって突出して配置された摺動部と、を含む圧電アクチュエーターであって、上記摺動部は、上記被駆動部に当接する第1部材と、上記第1部材の内側に形成され、かつ、上記第1部材とは異なる材質からなる第2部材と、を含んで構成されていることを特徴とする。
【0008】
上述したように、圧電アクチュエーターは被駆動部に摺動部を当接させて駆動されるため、駆動中に動作音(駆動音若しくは摩擦音)を生じる。かかる場合において、摺動部の構成要素のうちの第1部材の磨耗が進行して、上述の第2部材が被駆動部に当接するようになると、材質の違いにより、動作音の音質すなわち周波数成分等に変化が生じる。したがって、このような構成の圧電アクチュエーターであれば摺動部の磨耗の進行を検出できる。そして、摺動部の磨耗が所定量に達したと判断される場合、圧電素子の交換等を実施できる。したがって、上述の圧電素子の損傷等を低減でき、圧電アクチュエーターの信頼性を向上させることができる。
【0009】
なお、上述の「内側に形成され」とは、第1部材が第2部材を平面視すなわち二次元的に囲んでいる場合と、第1部材が第2部材の表面を三次元的に覆っている場合と、の双方を含んでいる。摺動部の磨耗は二次元的に進行するため、どちらの態様であっても、第1部材の磨耗が所定量進んだ後で、第2部材を被駆動部に当接させることができる。
また、上述の「内側に形成され」とは、振動板側は含まない表現である。したがって、振動板と摺動部との境界において振動板と第2部材とがつながっていても良い。すなわち、「内側に形成され」とは、第2部材の全周囲が第1部材に囲まれている場合と、第2部材における振動板側を除く3方が第1部材に囲まれている場合と、の双方を含んでいる。摺動部が振動板側から磨耗することはあり得ないため、3方が第1部材に囲まれていれば、上述の効果を発揮できる。
【0010】
[適用例2]上述の圧電アクチュエーターであって、上記圧電素子は圧電体層と電極とが積層されてなる平面視で略長方形の板状部材であり、上記第2部材は平面視で上記圧電素子の短辺から突出していることを特徴とする圧電アクチュエーター。
【0011】
このような構成であれば、上述の磨耗が圧電素子に達する前に第2部材の磨耗が開始される。したがって、圧電素子が被駆動部に直接当接される現象を低減でき、圧電アクチュエーターの信頼性を向上できる。
【0012】
[適用例3]上述の圧電アクチュエーターであって、上記第2部材は上記振動板の一部を平面視で上記短辺から突出させて形成された部分であることを特徴とする圧電アクチュエーター。
【0013】
このような構成であれば、容易に摺動部内に第2部材を形成できる。したがって、圧電アクチュエーターの信頼性を、コストの上昇を抑制しつつ向上させることができる。なお、上述したように第1部材と第2部材は材質が異なる。したがって上記の構成では、第1部材は振動板の材質とは異なる材料で形成されている。
【0014】
[適用例4]上述の圧電アクチュエーターであって、上記第1部材の材質は、上記振動板の材質と異なっており、上記第2部材は平面視で上記第1部材内に島状に形成されていることを特徴とする圧電アクチュエーター。
【0015】
このような構成であれば、振動板の材質と第1部材の材質とのいずれとも異なる第3の材料で第2部材を形成できる。すなわち、第2部材の材質の選択の幅を広げることができる。そのため、上述の動作音の音質の変化をより一層確実に生じさせることができ、圧電アクチュエーターの信頼性をより一層向上させることができる。
【0016】
[適用例5]上述の圧電アクチュエーターであって、上記第1部材は、上記振動板の一部を平面視で上記短辺から突出させて形成されており、上記第2部材は平面視で上記第1部材内に島状に形成されていることを特徴とする圧電アクチュエーター。
【0017】
このような構成であれば、振動板の強度を低下させることなく摺動部を形成できる。そして該摺動部を、外側の第1部材と該第1部材で囲まれた第2部材とで構成できる。したがって、圧電アクチュエーターの信頼性をより一層向上させることができる。
【0018】
[適用例6]上述の圧電アクチュエーターであって、上記第1部材の材質と上記第2部材の材質とでは、上記被駆動部に対する摩擦係数が互いに異なることを特徴とする圧電アクチュエーター。
【0019】
上述の動作音は、擦り合わされる要素間の摩擦係数により異なる。したがってこのような構成であれば、動作音の音質変化を強調でき、摺動部の磨耗進行の検出精度を向上できる。
【0020】
[適用例7]上述の圧電アクチュエーターであって、上記第2部材の材質の上記被駆動部に対する摩擦係数は、上記第1部材の材質の上記被駆動部に対する摩擦係数よりも高いことを特徴とする圧電アクチュエーター。
【0021】
一般的に、上述の動作音は、擦り合わされる要素間の摩擦係数が高いほど鮮明になる。したがってこのような構成であれば、摺動部の磨耗が進行して第2部材に達したときに、上述の動作音をより一層鮮明にできる。そのため、摺動部の磨耗の進行の検出精度をより一層向上できる。
【0022】
[適用例8]上述の圧電アクチュエーターであって、上記第1部材の材質と上記第2部材の材質とでは、硬度が互いに異なることを特徴とする圧電アクチュエーター。
【0023】
上述の動作音は、被駆動部と擦り合わされる要素の硬度により異なる。したがってこのような構成であれば、動作音の音質変化を強調でき、摺動部の磨耗進行の検出精度を向上できる。
【0024】
[適用例9]上述の圧電アクチュエーターであって、上記第2部材の材質の硬度は、上記第1部材の材質の硬度よりも高いことを特徴とする圧電アクチュエーター。
【0025】
一般的に、上述の動作音は、被駆動部に擦り合わされる要素の硬度が高いほど鮮明になる。したがってこのような構成であれば、摺動部の磨耗が進行して第2部材に達したときに、上述の動作音をより一層鮮明にできる。そのため、摺動部の磨耗の進行の検出精度をより一層向上できる。
【0026】
[適用例10]上述の圧電アクチュエーターであって、上記第2部材の形状は、上記短辺から上記被駆動部に向かうに従って幅が狭くなることを特徴とする圧電アクチュエーター。
【0027】
このような構成であれば、第2部材の磨耗による動作音を、該磨耗の進行に伴い徐々に増大させることができる。したがって摺動部の磨耗の進行を容易に把握でき、圧電アクチュエーターの信頼性をより一層向上させることができる。なお、上述の第2部材の「形状」とは、平面形状(平面視での形状)の意味である。
【0028】
[適用例11]上述の圧電アクチュエーターであって、上記第2部材の形状は、上記短辺から上記被駆動部に向かうに従って幅が広がることを特徴とする圧電アクチュエーター。
【0029】
このような構成であれば、上記の磨耗が圧電素子の長辺方向に対して角度を有する方向から進行した場合にも、動作音の変化を早期に生じさせることができる。したがって摺動部の磨耗の進行を容易に把握でき、圧電アクチュエーターの信頼性をより一層向上させることができる。
【0030】
[適用例12]上述の圧電アクチュエーターであって、上記第2部材の形状は、略長方形であることを特徴とする圧電アクチュエーター。
【0031】
このような構成であれば、摺動部の磨耗が第2部材まで達した時点で、動作音を充分に変化させることができる。したがって、圧電アクチュエーターの信頼性をより一層向上させることができる。
【0032】
[適用例13]本適用例のロボットハンドは、上述の圧電アクチュエーターを備えたことを特徴とする。
【0033】
このような構成であれば、ロボットハンドを駆動する圧電アクチュエーターにおいて、摺動部の磨耗により異常が生じたことを容易に検知できる。したがって、連続的にロボットハンドを用いる場合の安全性等を向上できる。
【0034】
[適用例14]本適用例のロボットは、上述のロボットハンドを備えたことを特徴とする。
【0035】
このような構成であれば、ロボットハンドを駆動する圧電アクチュエーターに異常が発生した場合、早期に検知できる。したがって、ロボットを長期かつ連続的に使用する場合において、部品(圧電素子)の交換等の装置保守作業を計画的に実施できるため、突然の装置停止による想定外の生産中断を回避できるという効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】第1の実施形態にかかる圧電アクチュエーターとしての圧電モーターの分解斜視図。
【図2】圧電素子の第2電極の区分を摺動部と共に示す平面図。
【図3】第1の実施形態の振動板と摺動部を示す図。
【図4】第1の実施形態の振動体を示す図。
【図5】第2部材の磨耗の進行を示す図。
【図6】第1の実施形態の変形例の摺動部を示す図。
【図7】第2の実施形態の摺動部を示す図。
【図8】第3の実施形態の摺動部を示す図。
【図9】第4の実施形態にかかるロボットの概略を示す図。
【図10】第4の実施形態にかかるロボットハンドの概略を示す図。
【図11】ロボットハンドが備える第1の指の概略を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態にかかる圧電アクチュエーターについて、図面を参照しつつ述べる。なお本発明の実施の形態は、以下の各図に示す構造、形状に限定されるものではない。また、以下の各図においては、各構成要素を図面で認識可能な程度の寸法とするため、該構成要素の縮尺を実際とは異ならせてある。
【0038】
(第1の実施形態)
本実施形態、及び後述する各実施形態の圧電アクチュエーターとしての圧電モーターは、振動体10を構成する、振動板31と摺動部(突出部)41等に特徴を有している。そこで、まず圧電モーター1の概略について説明した後、振動板31及び摺動部41等について説明する。
【0039】
<圧電モーター>
図1は、第1の実施形態にかかる圧電モーター1の分解斜視図である。図示するように、圧電モーター1は、基台2、被駆動部としてのローター(回転体)3、圧電素子30と振動板31の積層体を含む振動体10、振動体10を固定する付勢手段80、等から構成されている。ローター3は、基台2の一方の面に対して略垂直方向の回転軸rを有している。
【0040】
図示するように、振動体10は、振動板31と該振動板の両面に配置された一対の圧電素子30等で構成されている。圧電素子30は後述するように駆動電圧としての交流電圧の印加により振動する圧電体層40を含む部材であり、平面視で略長方形である。振動板31は厚さ略0.5mmのSUS301EH(生材)からなる板状部材であり、圧電素子30と略同一の平面形状を有している。振動板31は、圧電素子30を補強する機能も果たしている。そして振動板31自体は振動しないが、圧電素子30と積層されているため、圧電素子30が振動すると振動板31も略同等に振動する。
【0041】
振動体10は、支持部35と摺動部(突出部)41とをさらに備えている。支持部35は、振動板31の双方の長辺bから突き出している部材であり、振動板31と一体的に成型されている。すなわち、振動板31と支持部35は、上述の厚さ0.5mmのSUS301EHの板材から、プレス加工、エッチング加工、切削加工、レーザー加工等の手法で一体的に成型されている。支持部35は、該長辺bに略直交する方向に延在する腕状の部分と該腕状の部分の先端に位置する略円形に広がった部分とを有している。そして上述の略円形の部分には、貫通孔37が形成されている。なお、短辺a及び長辺bについては、図3等を用いて後述する。
【0042】
摺動部41は、振動板31の一方の短辺a、すなわち長辺b方向の一方の端部から、平面視で突出する部材である。上述したように、振動板31及び圧電素子30は平面視で略長方形である。摺動部41は、かかる略長方形の振動板31及び圧電素子30の短辺a側から突出する部材である。本実施形態の摺動部41(及び後述する各実施形態の摺動部)は、第1部材11(図3参照)と第2部材21(図3参照)とで構成されている。ただし、本図では摺動部41を簡略化して図示している。
後述するように、摺動部41の一部は、上述のSUS301EHの板材から振動板31等と一体的に成型される場合もあり得る。かかる場合においては、上述の短辺aから突出する部分が摺動部41である。すなわち、同一の板材から一体的に成型された場合であっても、短辺aを境界として摺動部41と称する。
【0043】
振動体10は、摺動部41がローター3に所定の圧力で当接するように支持部35を(正確には貫通孔37)介して、後述する付勢手段80に固定されている。駆動電圧の印加により圧電素子30が振動すると、圧電素子30に積層された部材である振動板31、及び該振動板を含む振動体10全体が振動する。そして後述するように、振動板31の端部から突出する摺動部41は、楕円軌道を描くように振動する。ローター3が、かかる楕円軌道を描く振動が伝導されて所定の速度で回転することで、圧電モーター1としての機能を果たす。
【0044】
ここで圧電素子30について説明する。図示するように、圧電素子30は、圧電体層40と、圧電体層40の振動板31側に設けられた第1電極50と、圧電体層40の第1電極50とは反対側に設けられた第2電極60と、を含んでいる。第1電極50は、圧電体層40の振動板31側の略全面に亘って形成されている。一方、第2電極60は、第1の溝部71及び第2の溝部72によって、互いに電気的に隔離された5つの電極(第2電極60a〜60e)に分割されている。そして第1電極50は、かかる複数に分割された第2電極60(60a〜60e)に対する共通電極として機能している。なお、第2電極60(60a〜60e)及び溝部(71,72)については後述する。
【0045】
圧電体層40は、電気機械変換作用を示す圧電材料、特に圧電材料の中でも一般式ABO3で示されるペロブスカイト構造を有する金属酸化物からなる。圧電体層40としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の強誘電体材料や、これに酸化ニオブ、酸化ニッケル又は酸化マグネシウム等の金属酸化物を添加したもの等が好適である。具体的には、チタン酸鉛(PbTiO3)、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3)、ジルコニウム酸鉛(PbZrO3)、チタン酸鉛ランタン((Pb,La),TiO3)、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン((Pb,La)(Zr,Ti)O3)又は、マグネシウムニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛(Pb(Zr,Ti)(Mg,Nb)O3)等を用いることができる。
【0046】
図2は、圧電素子30の第2電極60の区分を摺動部41と共に示す平面図である。第2電極60は、第1の溝部71により短辺a方向に略三等分割されている。そして短辺a方向における両側の2つの電極は、第2の溝部72によって、さらに長辺b方向に略二等分割されている。したがって第2電極60は、第2電極60a〜第2電極60eの計5つの電極に分割されている。なお、短辺a及び長辺bについては、図3等を用いて後述する。
上記の5つの第2電極60のうち、第2電極60cは縦振動用電極として機能する。そして第2電極60cの短辺a方向における両側に対をなすように形成された第2電極60aと第2電極60eは、第1屈曲振動用電極として機能する。また、第2電極60bと第2電極60dは第2屈曲振動用電極として機能する。
【0047】
第2電極60a、第2電極60e、及び第2電極60cのみに選択的に駆動電圧を印加すると、圧電素子30には、主に第2電極60cによって圧電素子30の長辺b方向の略中心を中心に伸縮する縦一次振動が励振される。また、主に第2電極60aと第2電極60eによって、圧電素子30の面内で縦一次振動と直交する方向、つまり圧電素子30の短軸方向に沿って屈曲する屈曲二次振動が励振される。
【0048】
上記双方の振動の程度、すなわち圧電素子30の振幅は、駆動電圧の周波数によって変動する。振幅の逆数を振動体10のインピーダンスとした場合、駆動周波数に対してインピーダンスが極小となる周波数、すなわち振幅がピークとなる周波数が、上記双方の振動毎に現れる。かかる周波数が共振周波数(共振点)である。縦一次振動がピークとなる周波数が縦共振周波数(fr1)であり、屈曲二次振動がピークとなる周波数が屈曲共振周波数(fr2)である。そして、縦共振周波数の方が屈曲共振周波数よりも低い値(周波数)となる。双方の共振周波数の略中間の周波数で圧電アクチュエーターを駆動することで、圧電素子30に縦一次振動と屈曲二次振動の双方を励振させることができる。
そして、かかる縦一次振動と屈曲二次振動とが組み合せることで、圧電素子30に、図2における二点鎖線で示されるように伸縮しながら屈曲する振動を励振させることができる。その結果、摺動部41は、かかる2つの振動を組み合わせた楕円軌道Rを描いて振動する。
【0049】
摺動部41を反対方向に回転させる場合には、圧電素子30において駆動電圧を印加する第2電極60を、振動体10の長辺b方向に沿った中心線を軸として線対称に切り替えればよい。すなわち、複数に分割された第2電極60のうち、第2電極60b、第2電極60d及び第2電極60cのみに選択的に駆動電圧を印加することにより得られる縦一次振動と、第2電極60bと第2電極60dによって得られる屈曲二次振動とを組み合せることで、図示する回転(振動)方向(右回り方向)とは反対の方向に回転する楕円振動を得ることができる。
【0050】
ここで図1に戻り、付勢手段80について説明する。付勢手段80は、振動体10を保持する保持部材81と、保持部材81に一端が固定されたコイルばね等のばね部材82と、ばね部材82の他端に当接すると共に基台2に固定された支持ピン83と、を少なくとも備えている。
【0051】
保持部材81は、振動体10の支持部35が固定される一対の固定部84と、固定部84の間に一体的に設けられて基台2に対してスライド移動可能に支持されるスライド部85とを備えている。固定部84には、支持部35の貫通孔37に対応して、ねじ部材86が螺合される雌ねじ部87が形成されている。この雌ねじ部87に支持部35の後述する貫通孔37を挿通したねじ部材86を螺合させることで、振動体10は保持部材81に対して固定される。
【0052】
スライド部85には、厚さ方向に貫通し、且つスライド方向に延設された長孔である2つのスライド孔88が設けられている。そして、各スライド孔88に挿通されて基台2に固定されたスライドピン89によって、スライド部85は基台2に対してスライド移動可能に支持されている。
【0053】
ばね部材82は、スライド部85のスライド方向に沿って配置されたコイルばねである。ばね部材82は、固定部84に一端が固定されると共に、基台2に固定された支持ピン83の側面に他端が当接するように配置されている。ばね部材82は、振動体10が備える摺動部41をローター3に向かって付勢、すなわち押圧する。かかる状態で圧電素子30に楕円軌道を描く振動を発生させ、かつ、該振動を摺動部41によりローター3に伝達することで、ローター3を回転させることができる。上述したように、圧電素子30は任意の方向の楕円振動を発生させることができる。したがって、圧電モーターは、右回りと左回りとのどちらの方向にも回転可能である。
【0054】
上述したようにローター3は、該ローターと摺動部41との間に働く摩擦力によって回転する。すなわち圧電モーター1は、ローター3と摺動部41とが擦り合わされることで回転する。したがって、ローター3と摺動部41は磨耗しにくい材料で形成される必要がある。本実施形態の圧電モーター1が備えるローター3は、硬度が略700Hv(ビッカース硬度)のマルテンサイト系ステンレス鋼SUS440Cで構成されている。かかる材料により、ローター3は耐磨耗性と強度とを両立している。
【0055】
後述するように、本実施形態の摺動部41も、磨耗しにくい高硬度材料で形成されている。しかし、高硬度材料であっても、圧電モーター1の長期の使用により徐々に磨耗する。上述したように摺動部41は付勢手段80によりローター3に対して所定の圧力で当接されている。したがって、若干の磨耗であるならば、圧電モーター1の機能には影響しない。しかし磨耗がより一層進行すると、圧電素子30の振動の伝達に支障をきたし得る。また、摺動部41が完全に消滅した場合、圧電体層40とローター3とが短絡して、圧電モーター1を破壊し得る。そのため、本実施形態の摺動部41は、かかる磨耗(の進行)を検出するために、第1部材11と第2部材21とを組み合せて形成されている。以下、本実施形態の摺動部41及び振動板31等について詳述する。
【0056】
<摺動部>
図3は、本実施形態の振動板31と摺動部41を、支持部35及び貫通孔37と共に示す図である。図4は、本実施形態の振動体10を示す図である。図4(a)は平面図であり、図4(b)は、図4(a)のA−A’線における断面を示す図である。上述したように、そして図4(b)に示すように、振動体10は図3に示す振動板31の表裏の双方の面に各1つの圧電素子30、すなわち計2つの圧電素子30を配置して構成されている。ただし、振動体10の構成は、上述の態様に限定されるものではない。例えば、振動板31のどちらか一方の面に1つの圧電素子30を配置する構成、すなわち圧電素子30を1つのみ備える構成の振動体10も可能である。なお、以下の記載において、支持部35及び貫通孔37の説明は一部省略する。また、圧電素子30の構成については上述したので、第2電極60、及び溝部(71,72)等の説明の記載は省略する。
【0057】
圧電素子30は、平面視で略長方形であり、一対の短辺aと一対の長辺bで構成されている。振動板31も平面視で略長方形であり、第2部材21の両側に形成された切れ込み34を除くと、圧電素子30と重なっている。したがって、振動板31の長辺bは圧電素子30の長辺bと重なっており、振動板31の短辺aは、切れ込み34を除くと圧電素子30の短辺aと重なっている。そして図4に示すように、平面視で短辺aから突出する部分が、摺動部41である。
【0058】
図示するように、摺動部41は、平面視で第1部材11と第2部材21とを組み合せて構成されている。第1部材11は、硬度が18GPa(略1800Hv)のアルミナ(Al2O3)で形成されている。そして第2部材21は、振動板31と一体的に形成されている。すなわち、支持部35と同様に、SUS301EHの板材から、プレス加工等の手法で一体的に成型されている。成型されたSUS301EHの板材のうち、平面視で略長方形の圧電素子30(図1等参照)と重なる部分が振動板31である。そして、短辺aから突出する部分が第2部材21となり、両側の長辺bから突出する部分を支持部35としている。したがって、本実施形態の摺動部41は、平面視で、短辺aから突出する第2部材21と、該第2部材における振動板31側を除く3方を囲む第1部材11と、で構成されている。したがって、第2部材21は第1部材11の内側に形成されている。
【0059】
上述したように、振動板31における、第2部材21が形成されている短辺aには、該第2部材の両側に切れ込み34が形成されている。かかる切れ込み34は、第1部材11の密着性を強化するために形成されている。第1部材11の厚さは、振動板31と同様の略0.5mmである。そして第1部材11は、図示するように平面視で逆U字状の外形線を有しており、内側が上述の切れ込み34と第2部材21に嵌合するように成型されている。そして第1部材11は、エポキシ樹脂等の接着材で振動板31と接合されている。切れ込み34は、第1部材11の接着面積を増加させて、接着強度を増加させる機能を果たしている。上述したように、摺動部41は短辺aから突出する部分である。したがって、第1部材11のうち、上記切れ込み34に嵌合する部分は、摺動部41の構成要素ではない。
【0060】
上述したように、第2部材21と該第2部材を囲む第1部材11とからなる摺動部41は、圧電素子30の短辺aから突出している。したがって、摺動部41とローター3が擦り合わされて、摺動部41の磨耗が進行する場合において、まず第1部材11が磨耗し始める。そして第1部材11の磨耗がある程度まで進行した後に、第2部材21が磨耗し始める。
【0061】
図5は、第2部材21の磨耗の進行を示す図である。図5(a)は、第1部材11の磨耗が進行して、該第1部材に囲まれていた第2部材21、すなわち該第1部材の内側に配置されていた第2部材21がローター3に当接した状態を示す図である。図5(b)は、第2部材21の磨耗がある程度まで進行した状態を示す図である。かかる状態でも、圧電素子30はローター3と接触していない。したがって、本実施形態の摺動部41であれば、ローター3と第1部材11とが擦り合わされて該第1部材11の磨耗が進行した後、圧電素子30がローター3と接触するまでの間に、ローター3と第2部材21とが擦り合わされる状態を確保できる。そして、ローター3と、第1部材11あるいは第2部材21とが擦り合わされる際には、動作音(駆動音若しくは摩擦音)が発生する。
【0062】
ここで、第1部材11と第2部材21、及びローター3の材質の硬度等を述べる。上述したように、ローター3の材質は、硬度が略700Hv(ビッカース硬度)のマルテンサイト系ステンレス鋼SUS440Cである。第1部材11の材質は硬度が18GPa(略1800Hv)のアルミナである。そして上述したように、第2部材21の材質は振動板31の材質と共通するSUS301EHであり、硬度は略550Hvである。このように、本実施形態の摺動部41における第1部材11の材質と第2部材21の材質とでは、硬度が互いに異なっている。
また、ローター3の材質のSUS440Cとアルミナの摩擦係数(μ)は略1.1である。そして、SUS440CとSUS301EHの摩擦係数は略0.99である。このように、本実施形態の摺動部41における第1部材11の材質と第2部材21の材質とでは、ローター3に対する摩擦係数も異なっている。
【0063】
このように、第1部材11と第2部材21とでは硬度が異なり、かつ、ローター3に対する摩擦係数も異なる。したがって、第1部材11と第2部材21とでは、ローター3と擦り合わされる際に発生する動作音が異なってくる。そのため、圧電モーター1を長期間使用して第1部材11の磨耗が進行し、ローター3に第2部材21が当接するようになると動作音に変化が生じる。したがって、圧電モーター1の使用者等は、動作音(駆動音)によって第2部材に達するまで磨耗が進行したことを把握できる。そして本実施形態の圧電モーター1は、かかる進行状況の発信を摺動部41の材質の差を利用して行うため、磨耗度合を検出するためのセンサーや電子回路等を必要とせずに、圧電素子30の寿命が近いことを上記の使用者等に知らしめることができる。
また、マイクを含む音響センサーや周波数解析手段、PC等の計算手段を用いて、上記の動作音(の変化)自動的に検出することもできる。そしてかかる検出結果を、表示ランプ(傾向ランプ)等を用いて上記の使用者等に知らしめることができる。
【0064】
<第1の実施形態の効果>
このように、本実施形態の圧電モーター1は、摺動部41の磨耗の進行状況を周囲に発信できる。そのため、本実施形態の圧電モーター1の使用者は、摺動部41の磨耗の進行状況、及び圧電素子30が寿命に近づいたか否かを、圧電モーター1及び該圧電モーターを駆動用アクチュエーターとして用いる電子機器等を停止させずに把握できる。そして、本実施形態の圧電モーター1の使用者は、摺動部41の磨耗が所定の段階に達した時点で振動体10等を交換することが可能となる。したがって、本実施形態のアクチュエーターを用いることで、上述の磨耗が圧電素子30の端部に達して圧電素子30及び圧電モーター1が損傷する現象を低減でき、上述の電子機器等の安全性を向上できる。また、上述の損傷を低減できるため、上述の電子機器等、及び該電子機器等を用いる製造ライン等が、圧電素子30の損傷により停止する事態も低減でき、経済性を向上できる。
【0065】
(変形例)
次に、本実施形態の圧電モーター1が備える摺動部であって、図3に示す態様以外の摺動部41を、変形例として図6(図6(a)〜図6(c))に示す。なお、図6においては振動板31と、摺動部41を構成する第1部材11及び第2部材21を示し、圧電素子30を構成する第2電極等の図示は省略している。
【0066】
図6(a)は、変形例1の摺動部41を示す図である。本変形例の摺動部41は、第2部材21が、図3に示す台形ではなく略長方形である点に特徴がある。このような態様の摺動部41であれば、摺動部41の磨耗が第2部材21まで達した時点で、動作音を充分に変化させることができる。したがって、磨耗の進行をより確実に発信でき、圧電素子30及び該圧電素子を含む圧電モーター1が損傷する現象をより確実に低減できる。
【0067】
図6(b)は、変形例2の摺動部41を示す図である。本変形例の摺動部41は、第2部材21が、図3に示す台形ではなく、先端に向かうに従って幅が広がっている点に特徴がある。このような態様の摺動部41であれば、摺動部41の磨耗が斜め方向から進行した場合であっても、動作音を確実に変化させることができる。したがって、摺動部41がローター3に斜め方向から当接している場合であっても磨耗の進行をより確実に発信でき、圧電素子30及び該圧電素子を含む圧電モーター1が損傷する現象をより確実に低減できる。
なお、上述の「先端に向かうに従って幅が広がっている」とは、幅が一定の割合で広がる逆テーパー状と、幅の広がり方が一定ではなく、曲線的に広がる形状と、の双方を含んでいる。
【0068】
図6(c)は、変形例3の摺動部41を示す図である。本変形例の摺動部41は、第2部材21が変形例1の第2部材21と同様に略長方形であり、該第2部材を囲む第1部材11における、先端の半円状の部分から短辺aに向かって延在する部分の幅が、振動板31に向かうに従って広がっている点に特徴がある。このような態様の摺動部41であれば、該摺動部がローター3に対して斜め方向に当接する場合における強度を向上できる。
なお、上述の「振動板31に向かうに従って広がっている」とは、側部が直線で構成されたテーパー状でも良く、また側部が曲線で構成された形状でも良い。
【0069】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態の圧電モーターについて説明する。本実施形態の圧電モーターは、上述の第1の実施形態の圧電モーター1と同様に振動体10が備える摺動部42(図7参照)の構造に特徴がある。そして本実施形態の圧電モーターは、該摺動部を除くと圧電モーター1と略同一である。そこで本実施形態の説明は、第1の実施形態における図1等に対応する図は省略して、摺動部42の構造を示す図のみを用いて行う。
【0070】
図7は、本実施形態の圧電モーターが備える振動体10が含む摺動部42の態様を示す図である。図7(a)〜図7(c)の各図は、夫々が変形例1〜変形例3に対応している。図7(a)〜図7(c)に示すように、本実施形態の摺動部42は、第1部材12が第2部材22の全周を囲んでいる点で、第1の実施形態にかかる摺動部41と異なっている。すなわち、本実施形態の第2部材22は振動板32と一体的には形成されておらず、他の部材とは完全に独立している。したがって、第2部材22は第1部材12の中に島状に配置されている。なお、本実施形態の摺動部42は、第1部材12が振動板32と一体的に形成されていない点においては、第1の実施形態にかかる摺動部41と共通している。かかる構成により、本実施形態の摺動部42は、第2部材22の材質に、振動板32の材質及び第1部材12の材質のいずれとも異なる材料を選択することが可能である。以下、各要素の材質について述べる。なお、本実施形態の圧電モーターのローターの材質は、第1の実施形態のローター3の材質と同様に、マルテンサイト系ステンレス鋼SUS440Cである。
【0071】
本実施形態の振動板32の材質は、第1の実施形態の振動板31の材質と共通の、SUS301EHであり、硬度は略550Hvである。本実施形態の第1部材12の材質は、硬度が略16GPaのジルコニア(ZrO2)である。そして本実施形態の第2部材22の材質は、硬度が略18GPaのアルミナである。
第1部材12の材質のジルコニアとローター3の材質であるSUS440Cとの間の摩擦係数は略0.95である。そして、第2部材22の材質のアルミナとローター3の材質であるSUS440Cとの間の摩擦係数は略1.1である。
【0072】
このように、本実施形態の摺動部42を構成する第1部材12と第2部材22は、第1の実施形態の第1部材11及び第2部材21と同様に硬度が互いに異なり、かつ、被駆動部であるローター3に対する摩擦係数も異なっている。そして、上述の第1の実施形態の摺動部41とは異なり、本実施形態の摺動部42においては、第2部材22の材質の硬度が、第1部材12の材質の硬度よりも高い。また、本実施形態の摺動部42においては、第2部材22の材質のローター3(の材質)に対する摩擦係数が、第1部材12の材質のローター3(の材質)に対する摩擦係数よりも高い。
一般的に、動作音は、擦り合わされる要素間の摩擦係数が高いほど大きくなる。そしてローター3に擦り合わされる要素の硬度が高いほど高音になる。したがって、本実施形態の摺動部42を用いることで、磨耗が進行して第2部材22がローター3に当接するようになった段階で、より大きくより高い動作音を発生させることができる。
【0073】
<第2の実施形態の効果>
本実施形態の摺動部42を備える圧電モーターは、動作音の変化を利用することで、摺動部42の磨耗の進行状況を、該圧電モーター等を停止させずに把握できる点で、第1の実施形態の摺動部41を備える圧電モーター1と共通している。そして、本実施形態の摺動部42は、第2部材22が第1部材12に囲まれるように島状に形成されているため、材質の選択の幅を広げることができる。したがって、第1部材12と第2部材22の双方を好適な材料で形成できる。その結果、上述したように磨耗の進行に伴い動作音を増大させることができる。したがって、本実施形態の摺動部42を備える圧電モーターの使用者は、上記磨耗の進行状況をより一層確実に把握できる。すなわち、本実施形態の摺動部42を備える圧電モーターは、使用者に対してより効果的に寿命を認知させることができる。したがって、本実施形態の摺動部42であれば、上述の磨耗が圧電素子30の端部に達して圧電素子30及び圧電モーター等が損傷する現象をより一層低減でき、安全性及び経済性をより一層向上できる。
【0074】
なお、第1部材12及び第2部材22の材質は、上述の材料に限定されるものではない。例えば、第1部材12に炭化タングステン(WC)等を含む超硬合金を用いることもできる。かかる超硬合金は、炭化タングステンの粒径等を工夫することで、91〜93のHRA硬度(ロックウェル硬度Aスケール)を得られる。また、SUS440Cに対する摩擦係数は、略0.8である。したがって、超硬合金からなる第1部材12に、SUS440Cに対する摩擦係数が略1.1のアルミナからなる第2部材を組み合せた場合も、摺動部42の磨耗の進行に伴い動作音を充分に変化させることができる。
【0075】
また、第2部材22の材料には、上記のアルミナに換えて窒化シリコン(Si3N4)を用いることもできる。窒化シリコンは、アルミナの硬度に近い、略16GPaの硬度を有している。そしてSUS440Cに対する摩擦係数は略1.1であり、この点はアルミナと同等である。したがって、ジルコニア又は超硬合金からなる第1部材12に、窒化シリコンからなる第2部材22を組み合せた摺動部42であっても、磨耗の進行に伴い動作音を充分に変化させることができる。
【0076】
(変形例)
次に本実施形態の変形例について、図7を用いて説明する。図7(a)は変形例1の摺動部42を示す平面図であり、図7(b)は変形例2の摺動部42を示す平面図であり、図7(c)は変形例3の摺動部42を示す平面図である。第1部材12の外形は、逆U字型、すなわち半円の部分と略長方形の部分とを組み合せた形状で共通している。そして第2部材22の形状が、各々の変形例において異なっている。
【0077】
図7(a)に示す変形例1の摺動部42の第2部材22は、第1部材12と同様に逆U字型の外形を有している。このような外形の第2部材22を含む摺動部42は、磨耗が斜め方向から進行した場合であっても、動作音の音質を充分に変化させることができる。したがって、摺動部42の磨耗の進行方向を限定できない場合において好適である。
【0078】
図7(b)に示す変形例2の摺動部42の第2部材22は、摺動部42の先端方向にかけて幅が狭まるテーパー状の外形を有している。このような外形の第2部材22を含む摺動部42は、磨耗の進行に伴い摺動部42に占める第2部材の比率を増大させて、動作音の変化を強調できる。したがって、摺動部42の磨耗が、主として振動板32の長辺b(図4等参照)の方向から進行するような使用形態において好適である。
【0079】
図7(c)に示す変形例3の摺動部42の第2部材22は、摺動部42の先端方向にかけて幅が広がっており、かつ、先端が第1部材12と同様の円弧状の外形を有している。このような外形の第2部材22を含む摺動部42は、該摺動部の磨耗が、振動板32の長辺bの方向から進行する場合であっても斜め方向から進行する場合であっても略同等に動作音の音質の変化を生じさせることができる。したがって、磨耗の進行方向が限定できないような使用形態において好適である。
【0080】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態の圧電モーターについて説明する。本実施形態の圧電モーターは、上述の第1の実施形態の圧電モーター1と同様に振動体10が備える摺動部43(図8参照)の構造に特徴がある。そして本実施形態の圧電モーターは、該摺動部を除くと圧電モーター1と略同一である。そこで本実施形態の説明は、上記の第2の実施形態の説明と同様に、摺動部43の構造を示す図のみを用いて行う。なお、本実施形態の圧電モーターが備えるローター3の材質は、上述の各実施形態と同様に、SUS440Cである。
【0081】
図8は、本実施形態の圧電モーターが備える振動体10が含む摺動部43の態様を示す図である。図8(a)〜図8(c)の各図は、夫々が変形例1〜変形例3に対応している。図8(a)〜図8(c)に示すように、本実施形態の摺動部43は、第1部材13が、振動板33と一体的に形成されている点に特徴がある。すなわち、本実施形態の第1部材13は、板材をプレス加工等で成型して振動板33を形成する際に支持部35(図3等参照)及び貫通孔37(図3等参照)と同様に、振動板33と一体的に成型されている。
【0082】
本実施形態の振動板33(及び第1部材13)は、第1実施形態及び第2実施形態の振動板(31,32)と同様に、硬度が略550HvのSUS301EHで形成されている。第2部材23の材質は、アルミナである。そして第2部材23は、第2の実施形態の第2部材22と同様に、第1部材13内に島状に配置されている。すなわち第2部材23は、平面視で全周囲を第1部材13に囲まれている。したがって、摺動部43の磨耗が進行した場合、ローター3と擦り合わされる部分の材質は、SUS301EHの単体から、SUS301EHとアルミナの組み合わせ、に変化する。したがって、動作音の音質も変化する。
【0083】
ここで、第1部材13と第2部材23との硬度、及びローター3の材質であるSUS440Cに対する摩擦係数を比較する。SUS301EHの硬度は上述したように略550Hvであり、アルミナの硬度は上述したように略18GPaである。SUS440Cに対する摩擦係数は、SUS301EHが略0.99であり、アルミナは略1.1である。
このように、本実施形態の摺動部43においては、第2部材23の材質の硬度が、第1部材13の材質の硬度よりも高い。また、本実施形態の摺動部43においては、第2部材23の材質のローター3(の材質)に対する摩擦係数が、第1部材13の材質のローター3(の材質)に対する摩擦係数よりも高い。
【0084】
上述したように、動作音は、擦り合わされる要素間の摩擦係数が高いほど鮮明になる。そしてローター3に擦り合わされる要素の硬度が高いほど鮮明になる。したがって、本実施形態の摺動部43を用いることで、磨耗が進行して第2部材23がローター3に当接するようになった段階で、より大きくより鮮明な動作音を発生させることができる。したがって、本実施形態の摺動部43は、上述の他の実施形態の摺動部(41,42)と同様に、電子回路等を用いずに、磨耗の進行状況を周囲に発信できる。
【0085】
<第3の実施形態の効果>
本実施形態の摺動部43を備える圧電モーターは、動作音の変化を利用することで、摺動部43の磨耗の進行状況を、該圧電モーター等を停止させずに把握できる点で、上述の各実施形態の圧電モーターと共通している。そして、本実施形態の摺動部43は、第2部材23が第1部材13に囲まれるように島状に形成されているため、材質の選択の幅を広げることができる。すなわち、第1部材13よりも硬度等が高い材料で、第2部材23を形成できる。したがって、摺動部43の磨耗が進行して第2部材23の磨耗が始まった時点で、動作音の音質を大きく変化させて、使用者等に磨耗の進行状況を把握させることができる。したがって、本実施形態の摺動部43であれば、上述の磨耗が圧電素子30の端部に達して圧電素子30及び圧電モーター等が損傷する現象をより一層低減でき、安全性及び経済性をより一層向上できる。
また、本実施形態においては、第1部材13と振動板33とが一体的に形成されているため、摺動部43の加工精度も向上している。そしてさらには、振動板33に切れ込み34等が形成されていないため、該振動板の強度の低下も抑制されている。
【0086】
なお、第1部材13及び第2部材23の材質は、上述の材料に限定されるものではない。例えば、振動板の材質に上述の超硬合金を用いることもできる。また、第2部材23を、アルミナに換えて窒化シリコンで形成することもできる。
【0087】
(変形例)
次に本実施形態の各変形例について、図8を用いて説明する。図8(a)は変形例1の摺動部43を示す平面図であり、図8(b)は変形例2の摺動部43を示す平面図であり、図8(c)は変形例3の摺動部43を示す平面図である。図示するように、本実施形態の各変形例の摺動部43は、第2部材23の形状が、上記第2実施形態の各変形例の第2部材22の形状と略同一である。したがって、本実施形態の各変形例の摺動部43の特徴及び効果は、上記第2の実施形態の各変形例の効果等に類似している。
【0088】
図8(a)に示す変形例1の摺動部43の第2部材23は、第1部材13と同様に逆U字型の外形を有している。したがって、磨耗が斜め方向から進行した場合であっても、動作音の音質を充分に変化させることができ、磨耗の進行方向を限定できない場合において好適である。
【0089】
図8(b)に示す変形例2の摺動部43の第2部材23は、摺動部43の先端方向にかけて幅が狭まる外形を有している。このような外形の第2部材23を含む摺動部43は、磨耗の進行に伴い動作音の変化を強調できるため、摺動部43の磨耗が、主として振動板33の長辺b(図4等参照)の方向から進行するような使用形態において好適である。
【0090】
図8(c)に示す変形例3の摺動部43の第2部材23は、摺動部43の先端方向にかけて幅が広がっており、かつ、先端が第1部材13と同様の円弧状の外形を有している。このような外形の第2部材23を含む摺動部43は、どの方向から磨耗が進行しても略同等に動作音の音質の変化を生じさせることができるため、磨耗の進行方向が限定できないような使用形態において好適である。
なお、上述の「先端方向にかけて幅が狭まる」とは、側部が直線で構成されたテーパー状でもよく、また側部が曲線で構成されていても良い。同じく、「先端方向にかけて幅が広がって」とは、側部が直線で構成された逆テーパー状でもよく、また側部が曲線で構成されていても良い。
【0091】
(第4の実施形態)
次に第4の実施形態として、第1の実施形態にかかる圧電モーター1、あるいは第2の実施形態又は第3の実施形態に記載した摺動部(41,42,43)を備える圧電モーター、のいずれかと同様の構成の圧電モーターを備えたロボットハンド、及び該ロボットハンドを備えたロボットについて、図9〜図11を用いて説明する。
【0092】
図9は、ロボットハンド(201,202)を備えた、本発明の第4の実施形態にかかるロボット200の概略を示す図である。ロボット200は第1のアーム240と第2のアーム250を備えており、夫々のアーム(240,250)の先端には、第1のロボットハンド201と第2のロボットハンド202が配置されている。第1のロボットハンド201と第2のロボットハンド202とは、互いに略同一の構成を有している。そこで、以降、第1のロボットハンド201(以下、単に「ロボットハンド201」と称する。)についてのみ説明する。
【0093】
図10は、本発明の第4の実施形態にかかるロボットハンド201の概略を示す図である。図10(a)、図10(b)に示すように、ロボットハンド201は、手のひら225と、第1の指210と第2の指220を備えている。第1の指210は第1のリンク211と第2のリンク212で構成され、第2の指220は第1のリンク221と第2のリンク222で構成されている。そしてロボットハンド201は、把持するワークの大小により使用するリンク変更可能である。
【0094】
図10(a)は、ロボットハンド201が大型ワーク233を把持している状態を示している。大型ワーク233は、第1の指210の第1のリンク211と、第2の指220の第1のリンク221と、で把持されている。そして、第1の指210の第2のリンク212は第1のリンク211の中に格納され、第2の指220の第2のリンク222は第1のリンク221の中に格納されている。
【0095】
図10(b)は、ロボットハンド201が小型ワーク234を把持している状態を示している。小型ワーク234は、第1の指210の第2のリンク212と第2の指220の第2のリンク222とで把持されている。
このように、ロボットハンド201は把持するワークにより使用するリンクを変更することで、夫々のワーク(233,234)を好適に把持できる。そしてロボットハンド201は、ワークの把持及び第2のリンク(212,222)の格納等のために、複数の駆動用の圧電モーターを備えている。
【0096】
図11(a)〜(d)は、ロボットハンド201が備える第1の指210の概略を示す図である。なお、第2の指220も同一の構成を有している。図11(a)は、第2のリンク212が、第1のリンク211に形成された溝226(図11(d)参照)内に格納された状態を示している。図11(b)は、第2のリンク212が第1のリンク211から取り出される途中の状態を示している。図11(c)は、第2のリンク212が第1のリンク211から取り出された状態を示している。
【0097】
かかる動作は第2の関節(回転軸)215を中心に行われる。そして第1のリンク211の開閉動作は第1の関節(回転軸)213を中心に行われる。そして各関節(213,215)には、駆動用のアクチュエーターとして、第1の実施形態にかかる圧電モーター1、あるいは第2の実施形態又は第3の実施形態に記載した摺動部41(図3等参照)を備える圧電モーター、のいずれかと同様の構成を有する、第2の圧電モーター214及び第3の圧電モーター216が配置されている。
上述したように、第2のリンク212は、小型ワーク234を把持するリンクである。したがって第3の圧電モーター216には、第2の圧電モーター214に比べて小型かつ低駆動力の圧電モーターを用いることができる。
【0098】
このようにロボットハンド201は、把持動作を行うためのアクチュエーターとして、第1の実施形態の圧電モーター1等に類似する構成の圧電モーター(214,216)を用いている。上述したように、第1の実施形態の圧電モーター1は、摺動部41が、第2部材21と該第2部材を囲む第1部材11とで構成されており、摺動部41の磨耗の進行を動作音の音質の変化により発信できる。すなわち、使用者に磨耗の進行を知らしめることができる。
したがって、磨耗が圧電素子30(図1等参照)に達して該圧電素子が損傷する前に該圧電素子を含む振動体10(図4等参照)の交換等を実施できる。その結果、圧電モーターの、損傷さらにはロボットハンド201及びロボット200の損傷によるコストを低減できる。また、ロボット200を備える製造ラインの停止に伴うコストも低減できる。
【0099】
なお、ロボットハンド(201,202)のみではなく、第1のアーム240及び第2のアーム250を駆動するためのアクチュエーターとしても、第1の実施形態にかかる圧電モーター1等と同様の構成を有する圧電モーターを用いることができる。
また、圧電モーターを上述のようにロボットハンドの把持動作を行うためのアクチュエーターとして用いる場合、歯車等の増減速手段を介して用いることが好ましい。一般に、圧電モーターの回転数はかなり速いため、リンク(第1のリンク211等)の動きに合せて、回転数の減速を要する場合もあり得る。また一方では、回転数の増速を要する場合もあり得る。かかる場合において、圧電モーターを歯車等の増減速手段を介して用いることで、多様な動作を行うロボットハンドのアクチュエーターとして、圧電モーターを好適に利用できる。
【0100】
本発明の実施の形態は、上述の各実施形態以外にも様々な変形例が考えられる。以下、変形例を挙げて説明する。
【0101】
(変形例1)
上述の実施形態では、圧電アクチュエーターとして、被駆動部が回転軸を有するローターである圧電モーターを例に説明していた。しかし、本発明の実施の対象となる圧電アクチュエーターは、圧電モーターに限定される物ではない。例えば、直線状の被駆動部を有し、該被駆動部を往復運動させる圧電アクチュエーターも対象となる。かかる場合かかる圧電アクチュエーターであっても、被駆動部は、摺動部との間に働く摩擦力で駆動される。したがって、摺動部の磨耗の進行を把握して、圧電素子等の損傷を抑制することは重要となる。かかる場合において、上述の各実施形態の摺動部(41等)であれば磨耗の進行を周囲に発信できるため、圧電素子及び該圧電素子を用いた圧電アクチュエーターの損傷等することを低減できる。
【0102】
(変形例2)
上述の各実施形態においては、第1部材(11等)は第2部材(21等)を平面視で囲んでいた。しかし、第1部材(11等)が、第2に部材(21等)を立体的に覆う態様も可能である。かかる態様の摺動部は、振動板の厚さが充分あり、かつ第2部材に金属ガラス材料等の用いる場合に効果的である。
【0103】
(変形例3)
上述の第4の実施形態では、上述の第1の実施形態等にかかる圧電モーターを用いる機器として、ロボットハンド201及び該ロボットハンドを用いるロボット200について述べた。しかし、上述の圧電モーター(1等)を用いる機器は、ロボット200に限定される物ではない。時計のカレンダー送り装置、ICハンドラー、印刷装置、投薬ポンプ等の各種の機器におけるアクチュエーターとして用いることができる。
【符号の説明】
【0104】
1…圧電アクチュエーターとしての圧電モーター、2…基台、3…被駆動部としてのローター、10…振動体、11…第1の実施形態の第1部材、12…第2の実施形態の第1部材、13…第3の実施形態の第1部材、21…第1の実施形態の第2部材、22…第2の実施形態の第2部材、23…第3の実施形態の第2部材、30…圧電素子、31…第1の実施形態の振動板、32…第2の実施形態の振動板、33…第3の実施形態の振動板、34…切れ込み、35…支持部、37…貫通孔、40…圧電体層、41…第1の実施形態の摺動部、42…第2の実施形態の摺動部、43…第3の実施形態の摺動部、50…第1電極、60…第2電極、71…第1の溝部、72…第2の溝部、80…付勢手段、81…保持部材、82…ばね部材、83…支持ピン、84…固定部、85…スライド部、86…ねじ部材、87…雌ねじ部、88…スライド孔、89…スライドピン、200…ロボット、201…第1のロボットハンド、202…第2のロボットハンド、210…第1の指、211…第1のリンク、212…第2のリンク、213…第1の関節、214…第2の圧電モーター、215…第2の関節、216…第3の圧電モーター、220…第2の指、221…第1のリンク、222…第2のリンク、225…手のひら、226…溝、233…大型ワーク、234…小型ワーク、240…第1のアーム、250…第2のアーム、a…短辺、b…長辺、r…回転軸。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子と、前記圧電素子に積層される振動板と、前記振動板から被駆動部に向かって突出して配置された摺動部と、を含む圧電アクチュエーターであって、
前記摺動部は、前記被駆動部に当接する第1部材と、前記第1部材の内側に形成され、かつ、前記第1部材とは異なる材質からなる第2部材と、を含んで構成されていることを特徴とする圧電アクチュエーター。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電アクチュエーターであって、
前記圧電素子は圧電体層と電極とが積層されてなる平面視で略長方形の板状部材であり、前記第2部材は平面視で前記圧電素子の短辺から突出していることを特徴とする圧電アクチュエーター。
【請求項3】
請求項2に記載の圧電アクチュエーターであって、
前記第2部材は前記振動板の一部を平面視で前記短辺から突出させて形成された部分であることを特徴とする圧電アクチュエーター。
【請求項4】
請求項2に記載の圧電アクチュエーターであって、
前記第1部材の材質は、前記振動板の材質と異なっており、
前記第2部材は平面視で前記第1部材内に島状に形成されていることを特徴とする圧電アクチュエーター。
【請求項5】
請求項2に記載の圧電アクチュエーターであって、
前記第1部材は、前記振動板の一部を平面視で前記短辺から突出させて形成されており、
前記第2部材は平面視で前記第1部材内に島状に形成されていることを特徴とする圧電アクチュエーター。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の圧電アクチュエーターであって、
前記第1部材の材質と前記第2部材の材質とでは、前記被駆動部に対する摩擦係数が互いに異なることを特徴とする圧電アクチュエーター。
【請求項7】
請求項6に記載の圧電アクチュエーターであって、
前記第2部材の材質の前記被駆動部に対する摩擦係数は、前記第1部材の材質の前記被駆動部に対する摩擦係数よりも高いことを特徴とする圧電アクチュエーター。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の圧電アクチュエーターであって、
前記第1部材の材質と前記第2部材の材質とでは、硬度が互いに異なることを特徴とする圧電アクチュエーター。
【請求項9】
請求項8に記載の圧電アクチュエーターであって、
前記第2部材の材質の硬度は、前記第1部材の材質の硬度よりも高いことを特徴とする圧電アクチュエーター。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の圧電アクチュエーターであって、
前記第2部材の形状は、前記短辺から前記被駆動部に向かうに従って幅が狭くなることを特徴とする圧電アクチュエーター。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の圧電アクチュエーターであって、
前記第2部材の形状は、前記短辺から前記被駆動部に向かうに従って幅が広がることを特徴とする圧電アクチュエーター。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の圧電アクチュエーターであって、
前記第2部材の形状は、略長方形であることを特徴とする圧電アクチュエーター。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の圧電アクチュエーターを備えたことを特徴とするロボットハンド。
【請求項14】
請求項13に記載のロボットハンドを備えたことを特徴とするロボット。
【請求項1】
圧電素子と、前記圧電素子に積層される振動板と、前記振動板から被駆動部に向かって突出して配置された摺動部と、を含む圧電アクチュエーターであって、
前記摺動部は、前記被駆動部に当接する第1部材と、前記第1部材の内側に形成され、かつ、前記第1部材とは異なる材質からなる第2部材と、を含んで構成されていることを特徴とする圧電アクチュエーター。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電アクチュエーターであって、
前記圧電素子は圧電体層と電極とが積層されてなる平面視で略長方形の板状部材であり、前記第2部材は平面視で前記圧電素子の短辺から突出していることを特徴とする圧電アクチュエーター。
【請求項3】
請求項2に記載の圧電アクチュエーターであって、
前記第2部材は前記振動板の一部を平面視で前記短辺から突出させて形成された部分であることを特徴とする圧電アクチュエーター。
【請求項4】
請求項2に記載の圧電アクチュエーターであって、
前記第1部材の材質は、前記振動板の材質と異なっており、
前記第2部材は平面視で前記第1部材内に島状に形成されていることを特徴とする圧電アクチュエーター。
【請求項5】
請求項2に記載の圧電アクチュエーターであって、
前記第1部材は、前記振動板の一部を平面視で前記短辺から突出させて形成されており、
前記第2部材は平面視で前記第1部材内に島状に形成されていることを特徴とする圧電アクチュエーター。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の圧電アクチュエーターであって、
前記第1部材の材質と前記第2部材の材質とでは、前記被駆動部に対する摩擦係数が互いに異なることを特徴とする圧電アクチュエーター。
【請求項7】
請求項6に記載の圧電アクチュエーターであって、
前記第2部材の材質の前記被駆動部に対する摩擦係数は、前記第1部材の材質の前記被駆動部に対する摩擦係数よりも高いことを特徴とする圧電アクチュエーター。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の圧電アクチュエーターであって、
前記第1部材の材質と前記第2部材の材質とでは、硬度が互いに異なることを特徴とする圧電アクチュエーター。
【請求項9】
請求項8に記載の圧電アクチュエーターであって、
前記第2部材の材質の硬度は、前記第1部材の材質の硬度よりも高いことを特徴とする圧電アクチュエーター。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の圧電アクチュエーターであって、
前記第2部材の形状は、前記短辺から前記被駆動部に向かうに従って幅が狭くなることを特徴とする圧電アクチュエーター。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の圧電アクチュエーターであって、
前記第2部材の形状は、前記短辺から前記被駆動部に向かうに従って幅が広がることを特徴とする圧電アクチュエーター。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の圧電アクチュエーターであって、
前記第2部材の形状は、略長方形であることを特徴とする圧電アクチュエーター。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の圧電アクチュエーターを備えたことを特徴とするロボットハンド。
【請求項14】
請求項13に記載のロボットハンドを備えたことを特徴とするロボット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−210049(P2012−210049A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73556(P2011−73556)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]