説明

埋設ストラップのセンタリング方法、それに用いる部材、それを使用するストラップ

【課題】断面ほぼ円形のストラップを断面ほぼ円形の合成樹脂に射出成型法等により埋設するとき、ストラップを中央に置いたまま合成樹脂で埋設する方法及びそれに使用する器具を提供する。
【解決手段】ストラップ11末端に合成樹脂末端部を射出成型法により形成する方法である。前記ストラップ11末端に射出成形金型にほぼ接する高さの支柱部32を少なくとも3個放射状に有するストラップ位置保持具3を取り付ける工程と、このストラップ位置保持具3付きストラップを金型に置く工程と、前記金型内に合成樹脂を射出する工程と、前記金型からストラップ11を取り出す工程を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、埋設ストラップのセンタリング方法、それに用いる部材、それを使用するストラップに関する。
【背景技術】
【0002】
ストラップ、たとえばネックストラップには様々なタイプがあり、添付の図1に示すものもその一つである。ストラップの末端は合成樹脂端部に埋設されている。
【0003】
断面ほぼ円形のストラップを断面ほぼ円形の合成樹脂端部に射出成型法等により埋設するとき、樹脂の射出圧のためにストラップが中央に留まらず、中央から少し偏ってしまい、その偏った状態で埋設されてしまうことが多い。
【0004】
ネックストラップでは、ある程度偏っても使用には差し障りはないが、見栄えが悪くなると共に、薄壁部分ができるので強度も落ちる。ネックストラップよりも強度が重視されるストラップの分野ではなおさらである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この問題を解決するため、たとえば特開平9−149811では「空間部を端部に設けた金属製の連結具」を使用している。
【0006】
この従来技術はテープ状の紐を取り扱っており、断面ほぼ円形のストラップにはそのままでは適用できない。また、窓部を介してテープを押さえているので、最終製品には窓部においてテープが露出する。これは必ずしも見栄えのよいものではない。
【0007】
本発明は、断面ほぼ円形のストラップを断面ほぼ円形の合成樹脂に射出成型法等により埋設するとき、ストラップを中央に置いたまま合成樹脂で埋設する方法、それに使用する器具及びそのような方法に基づいて作成されたストラップ、たとえばネックストラップを提供することを目的とする。なお、本明細書及び特許請求の範囲において、「ほぼ円形」という場合、「円形」のみならず、「楕円形」「長円形」も含むものとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の埋設ストラップのセンタリング方法は、ほぼ円形のストラップ末端にほぼ円形の合成樹脂末端部を射出成型法により形成するに際して、前記ストラップ末端に金型にほぼ接する高さの支柱部を少なくとも3個放射状に有するストラップ位置保持具を取り付ける工程と、このストラップ位置保持具付きストラップを金型に置く工程と、金型内に合成樹脂を射出する工程と、金型からストラップを取り出す工程を有することを特徴とする(請求項1)。
【0009】
本発明の埋設ストラップのセンタリング方法に用いる部材は、ほぼ円形のストラップ末端にほぼ円形の合成樹脂末端部を射出成型法により形成するのに用いる部材であって、前記ストラップを通すための中央開口と、この中央開口から放射状に伸びる少なくとも3本の支柱部と、この支柱部を束ねるリング部からなり、前記支柱部の先端は金型にほぼ接する高さを有することを特徴とする(請求項2)。
【0010】
本発明のストラップは、請求項1の方法を用いて形成した合成樹脂末端部を有することを特徴とする(請求項3)。
【0011】
本発明のネックストラップは、請求項1の方法を用いて形成した合成樹脂末端部を有するストラップと、物品吊り下げ具を有することを特徴とする(請求項4)。
【発明の効果】
【0012】
本発明の方法によれば、断面ほぼ円形のストラップを断面ほぼ円形の合成樹脂に射出成型法等により埋設するとき、ストラップを正確に中央に置いたまま合成樹脂で埋設することができる。その結果、ストラップを包囲する合成樹脂の壁厚が均等となり、製品の見栄えがよく、薄壁の存在による強度の劣化を避けることができる。ストラップ位置保持具はそのまま残されるが、樹脂により埋設されてしまうので、完成後には外部から見えなくなる。しかも、前記従来技術と異なり、ストラップが露出する窓部も存在しない。
【0013】
以下、添付の図面に基づき、本発明の実施例を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の1実施例を取り入れたネックストラップの全体図である。
【図2】このストラップ端部の、(a)正面図、(b)背面図、(c)平面図、(d)側面図、(e)図2(a)のe−e断面図である。
【図3】埋設ストラップのセンタリングに使用する器具の、(a)正面図、(b)背面図、(c)平面図、(d)底面図、(e)側面図、(f)図3(a)のa−a断面図、(g)図3(e)のb−b断面図である。
【図4】埋設ストラップのセンタリングに使用する器具の使用方法を示す斜視図であり、(a)は挿入前、(b)は挿入後である。
【図5】射出成形金型内に設置した状態の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に示すとおり、ネックストラップ1は、ストラップ11と物品吊り下げ具12を有する。この図示の例では、ストラップは長さ調節機構13も有している。ストラップの末端は合成樹脂製の端部2,3に埋設されていて、末端がほどけるのを防止すると共に美観を高めたり、連結機能などを持たせたりするために使用されている。
【0016】
上記ストラップ樹脂端部の一つ2は図2各図に示すように、ストラップ埋設端部21、連結用端部22、連結孔23を有する。(a)(b)に示すように、ストラップ11は断面ほぼ円形であり、ストラップの埋設端部21も断面ほぼ円形である。上記したとおり、本発明は、ストラップ11を埋設端部21に射出成型法等により埋設するとき、樹脂の射出圧を受けてもストラップ11が中央に位置した状態を続ける方法を提案するものである。
【0017】
その目的のために、本実施例では、図3各図及び図4に示すようなストラップ11の位置保持具3をストラップ11の上に嵌める。
【0018】
ストラップ位置保持具3は、ストラップ11を通すための中央開口31と、中央開口31から放射状に伸びる5本の支柱部32と、この支柱部32を束ねるリング部33からなる。素材は合成樹脂で一体成形するのが経済的であるが、金属や木材等の材料を使用することもできる。
【0019】
中央開口31は、ほぼストラップ11と同じ直径の円筒状であり、長手方向長さは約7mmである。
【0020】
5本の支柱32は、断面が花びら状で先端が細くなっており、長手方向長さは約7mmである。
【0021】
リング部33は、支柱部32の端部に位置しており、支柱部32と一体成形されている。リング部33の外輪は支柱部32の最高点よりも低いので、(g)の断面図に示すように、支柱部32がリング部33から5方向に突出する。
【0022】
本発明にとって必須ではないが、この実施例ではリング部から外方に向かって5本の突起34が形成されている。これは合成樹脂による射出成形に当たって、合成樹脂との接触面積を増やすためのものである。
【0023】
ストラップ末端に合成樹脂末端部2を形成には、まず図4(a)(b)に示すように、ストラップ11末端にストラップ位置保持具3を被せる。続いて図5に示すように、金型4内にこのストラップ位置保持具付きのストラップ末端を置く。このとき、5本の支柱部32の先端部はほぼ金型に接するので、ストラップの位置が固定される。「ほぼ接する」とは間の距離が0〜0.5mm程度であることをいう。この状態で、射出成形すれば、射出圧にもかかわらずストラップ11は合成樹脂の埋設端部21の中央に位置することになる。その状態は図2(e)に示されている。
【0024】
ストラップ位置保持具3に使用する樹脂と、射出成形に使用する樹脂は、同一樹脂又はなじみがよい樹脂であればどのようなものであってもよい。たとえば、ABSやナイロンを使用することができる。
【0025】
成形が終われば金型4から合成樹脂末端部2を取り出して完成である。ストラップ位置保持具は合成樹脂末端部2の中にそのまま残されるが、樹脂により埋設されてしまうので、完成後には外部から見えなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】特開平9−149811
【符号の説明】
【0027】
1 ネックストラップ
11 ストラップ
12 物品吊り下げ具
13 長さ調節機構
2 合成樹脂末端部
21 ストラップ埋設端部
22 連結用端部
23 連結孔
3 ストラップ位置保持具
31 中央開口
32 支柱部
33 リング部
34 突起
4 金型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ほぼ円形のストラップ(11)末端にほぼ円形の合成樹脂末端部(2)を射出成型法により形成するに際して、
前記ストラップ(11)末端に射出成形金型(4)にほぼ接する高さの支柱部(32)を少なくとも3個放射状に有するストラップ位置保持具(3)を取り付ける工程と、
このストラップ位置保持具(3)付きストラップを前記金型(4)に配置する工程と、
前記金型(4)内に合成樹脂を射出する工程と、
前記金型(4)から前記ストラップを取り出す工程を有する
ことを特徴とする埋設ストラップのセンタリング方法。
【請求項2】
ほぼ円形のストラップ(11)末端にほぼ円形の合成樹脂末端部(2)を射出成型法により形成するのに用いる部材であって、
前記ストラップ(11)を通すための中央開口(31)と、この中央開口(31)から放射状に伸びる少なくとも3本の支柱部(32)と、この支柱部(32)を束ねるリング部(33)からなり、前記支柱部(32)の先端は射出成型金型(4)にほぼ接する高さを有することを特徴とする埋設ストラップのセンタリング方法に用いるストラップ位置保持具(3)。
【請求項3】
請求項1の方法を用いて形成した合成樹脂末端部(2)を有することを特徴とするストラップ(11)。
【請求項4】
請求項1の方法を用いて形成した合成樹脂末端部(2)を有するストラップ(11)と、物品吊り下げ具(12)を有することを特徴とするネックストラップ(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−66432(P2012−66432A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211916(P2010−211916)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000114606)モリト株式会社 (198)
【Fターム(参考)】