説明

基板材料からウェハ状スライスを製造するための方法及びシステム

本発明は、基板材料からウェハ状のスライスを製造する、特に半導体デバイスの製造において使用するための方法及びシステムに関する。この方法は、研削粒子を表面上に有するカッティングワイヤを備えるスライス切断デバイスを用意するステップと、約30μS/cm以下の導電率に対応するイオン強度を有する水性冷却用及び潤滑用流体を用意するステップと、前記カッティングワイヤが接触し、前記基板材料を切断する切り溝内に、前記切り溝領域からの粉末基板材料の除去を促進しその結果使用済み流体となる前記冷却用及び潤滑用流体を分配しながら前記基板材料を前記カッティングワイヤで複数のスライスに切断するステップと、前記使用済み流体を前記切断デバイスから取り除き、前記粉末基板材料を前記使用済み流体から回収するステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板材料からウェハ状のスライスを製造する、特に半導体デバイスの製造において使用するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
典型的には、基板材料は、単独の、又は他の材料と組み合わせたシリコン又は他の半導体材料である。
【0003】
基板材料からウェハ状のスライスを製造する従来の方法及びシステムでは、鋸盤を使用して研削により基板材料を複数のスライスに切り分ける。鋸切り溝内の基板材料が粉砕されて粉体になる。
【0004】
基板材料をウェハ状スライスに切断する2つの異なる原理がある。
【0005】
この2つの原理のうちの1つ(A)は、硬質の基板材料に引き通される複数の滑らかなワイヤを組み合わせるもので、粘性液(例えば、ポリエチレングリコール又は鉱物油)と研削固体粒子(例えば、炭化ケイ素)からなる研削スラリーが、鋸切り溝内の基板材料を研削する手段となり、それに加えて、このスラリーは冷却液と潤滑剤として働くだけでなく、さらには粉末状に粉砕された基板材料の移送手段としても働く。
【0006】
他の原理(B)では、表面に研削粒子、例えば、ダイヤモンド粒子を備えるアーム付きワイヤを使用する。冷却と潤滑には、水性流体、典型的には、飲料水を使用する。これは、また、粉砕された基板材料の移送手段として使用される。アーム付きワイヤは、原理(A)に従って使用される滑らかなワイヤよりも大きな直径を有する。したがって、原理(B)の結果生じる鋸切り溝は、原理(A)の場合よりも広い。
【0007】
この両方の原理の一般的短所は、貴重な基板材料のかなりを失う点にある。多くの場合、鋸切り溝は、残りのスライスとほぼ同じ幅である。したがって、貴重な材料の約50%は、研削されて粉末状粒子になり、50%のみが、固体ウェハコンポーネント又はスライスとして残り、例えば、太陽電池及び半導体集積回路用のシリコンウェハを生産するために使用される。基板材料の多くが高純度で、高価であることを考えると、このような損失は、材料の膨大な無駄を引き起こしており、また環境汚染の潜在的発生源ともなる。
【0008】
さらに、原理Aには、研削された基板材料(いわゆる、カーフロス)、ワイヤの金属トレース、及び磨耗により生じる研削材料それ自体の微粉によるシステム内で循環する研削スラリーの汚染という短所がある。研削スラリーの汚染の程度が時間の経過とともに上昇すると、鋸切断作業の効率が低下する。スラリーが最終的に役立たなくなるか、尽きてしまった場合、これは、システムから排出され、そして廃棄され、新しいスラリーと交換されるか、又は再利用の前に再生工程に送られなければならない。さらに、粘性のある使用済みの汚染スラリーは、ウェハ表面に固着し、切断後のウェハの洗浄を手間のかかる作業にする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、全体的コストを安く抑えて基板材料からウェハ状スライスを製造するための方法を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、請求項1に記載の方法により解決される。
【0011】
本発明は、さらに、請求項30に記載のシステムに属す。
【0012】
本発明の主な利点は以下のとおりである。
【0013】
a)カーフロス(粉末状態にされた基板材料)として粉砕されてしまった貴重な半導体材料を容易に再生利用できる。粉末基板材料は、再び溶かされ、新しい基板材料(例えば、インゴット)の製造用の原材料として使用され得る。
【0014】
驚くべきことに、約30μS/cmの導電率に対応するイオン強度を有する本発明により使用される流体では、使用済み流体から粉末基板材料を効率よく取り出して、回収することができる。研削粒子を備えるワイヤを使用する方法で得られる粉末材料では、切断原理Aによる方法で使用される研削スラリー粒子と混ざらないため、粉末基板材料をかなり容易に回収することができる。
【0015】
b)さらに、浄化した後、使用済み流体の大半を切断工程に再利用でき、これにより、簡単に述べるならば、もっぱら直面しているカーフロスが高く、カッティングワイヤのコストも、切断原理Aの滑らかな切断ワイヤに対するコストと比較したときに高いものの、コストバランスが本発明の方法に有利なものとなる。
【0016】
c)切り溝領域及びツール(カッティングワイヤ)を冷却し、潤滑するための導電率が約30μS/cm以下の水性流体は、脱イオン水により容易に補うことができる。
【0017】
d)驚くべきことに、使用済み流体と接触しているウェハ表面の洗浄は、使用済みの粘性のあるスラリーで覆われたウェハ表面の洗浄に比べてかなり実行しやすいことが判明した。
【0018】
e)冷却用及び潤滑用流体のイオン強度が低いため、再生利用される粉末基板材料のイオン汚染が低くなる。また
【0019】
f)使用済み流体の浄化及び濡れたウェハ表面の洗浄を行いやすい。それに加えて、ウェハ表面の洗浄は、この工程の環境汚染源に加わる可能性のある洗浄剤を必要としない。
【0020】
g)特に、金属イオン、例えば、Mg及びCa(以下では、ミネラルと呼ぶ)の含有量が低いため、スケーリング問題が大幅に低減され、切断動作を改善するだけでなく、ウェハ表面がよりクリーンに保たれ、カッティングワイヤの耐用寿命も延びる。切断動作は、切断点における極端に高い温度(3,000〜5,000℃の範囲の温度になり得る)を生じさせることを留意しなければならない。
【0021】
h)冷却用及び潤滑用流体の低イオン強度を利用することで、粉末基板材料の凝集を回避し、流体中の粉末基板材料のコロイド懸濁を安定させる。したがって、ウェハの表面上並びにカッティングワイヤ及び機器のすべての表面上にコロイド状基板材料が被着する傾向は、実質的に低減され、このこともまた、カッティングワイヤの寿命を延ばす要因となっている。さらに、システムの導管の目詰まりも、大幅に低減される。
【0022】
i)他の重要な態様は、基板材料及びカッティングワイヤのスケーリングが最低限に抑えられるため、切り溝領域を冷却し、潤滑するための流体のイオン強度が約30μS/cm以下となるときに切断速度を上げることができるという点である。
【0023】
j)それに加えて、驚くべきことに、得られるスライス又はウェハの表面の粗さは、従来のスライス切断動作の場合に比べて低いのである。
【0024】
k)さらに、シリコン基板材料が加工される場合には、水素ガスの発生が低減される可能性がある。シリコンは、水性環境においては非常に反応性が高いため、シリカ及び水素ガスに反応する。しかし、水素ガス生産には、ガス爆発事故の発生を回避するために安全対策を高める必要がある。
【0025】
それに加えて、本発明は、原理Aにより使用される粘性流体に比べて一般的に扱いやすい低粘度の流体で動作する。
【0026】
最も単純な場合には、純粋な脱イオン水が、水性の冷却用及び潤滑用流体として使用され得る。
【0027】
水性流体から粉末基板材料を分離するために膜濾過が使用される場合、好ましくは、イオン強度は、10μS/cm以下である。
【0028】
分離効率に関するなお一層よい結果は、冷却用及び潤滑用流体が、約10μS/cm以下の導電率に対応するイオン強度を有する場合に得られる。
【0029】
特に膜濾過により粉末基板材料が流体から分離されるので、冷却用及び潤滑用流体の容易な循環が、その再調整後に可能になる。
【0030】
それに加えて、水性の冷却用及び潤滑用流体は、水性流体の冷却及び潤滑特性をさらに改善するのを助けることができる潤滑剤、湿潤剤、界面活性剤、冷却剤、スケール防止剤、及び分散剤の中から選択される、少量の添加剤を含んでいてもよい。典型的には、添加剤は、流体の重量に基づき、全体で約1重量%までとするとよい。
【0031】
スケーリングを最小限に抑えるためにミネラル含有量は低く、好ましい流体には本質的にミネラルが含まれない、つまり、ミネラル含有量は約1ppm以下であることが非常に重要である。
【0032】
切断工程に使用される好ましいカッティングワイヤは、スチール線芯からなるものである。
【0033】
他の好ましい方法では、スチール線芯は、Niコーティングされる。
【0034】
カッティングワイヤの表面を備えるために使用される研削粒子は、好ましくは、ダイヤモンド粒子、コランダム粒子、及び炭化ケイ素粒子から選択されるとよい。
【0035】
カッティングワイヤの研削粒子のサイズは、平均すると、約5μm以下、例えば約3μmとすることができる。これらの粒子サイズは、ワイヤの直径を過剰に大きくすることなく十分な研削を可能にする。
【0036】
本発明の他の好ましい方法によれば、使用済みの流体は、濾過され、粉末基板材料が濃縮物として回収される。
【0037】
同様に、使用済み流体を濾過する際に得られた濾過液は、好ましくは再利用可能な流体として回収される。
【0038】
より好ましくは、前記濾過は、膜濾過、特に精密濾過又は限外濾過の形態のダイナミック膜濾過を含む。このタイプの濾過又は分離は、粉末基板材料を濃縮物として回収するだけでなく、冷却用及び潤滑用流体として再利用するために容易に再調整される再利用可能流体を使用済み流体から得る非常に効果的な手段である。再利用可能流体の再調整は、新鮮な脱イオン水で流体を補う作業と同程度に単純なものである。
【0039】
それに加えて、使用済みの冷却用及び潤滑用流体の組成に応じて、再調整には、過剰な異物、特にカッティングワイヤから出る研削金属成分を取り除くためのイオン交換処理を含めることができる。
【0040】
さらに、再利用可能な流体の再調整には、上述のような添加剤が元の冷却用及び潤滑用流体内で使用されていた程度まで添加剤を補うことも含めることができる。
【0041】
前述のように、粉末基板材料は、濃縮物の形態で回収される。この濃縮物は、好ましくは液体の形態であり、凝集工程に通されるとよい。
【0042】
その程度まで、凝集及び沈殿工程を促進するために、好ましくは1つ又は複数の凝集剤が濃縮物内に投与される。
【0043】
このように処理された濃縮物(凝集又は非凝集)は、次いで、好ましくは、さらに液体中の粉末基板材料の含有量を高め、そこから過剰な流体を除去するために、機械的圧搾濾過器、遠心分離機、加圧又は吸引濾過器における濃縮物の処理を含むことができる脱水工程に通される。
【0044】
最後に、乾燥工程は、熱乾燥工程を含むことができる。
【0045】
本発明の好ましい一実施形態では、使用済み流体は、第1の濾過工程、及び他の固体−液体分離工程、例えば、第2の濾過工程に通される。凝集は、第1の濾過工程と他の固体−液体分離工程との間で実行されうる。
【0046】
好ましくは、第1の濾過工程で得られた濾過液は、使用済み流体の約90体積%以上になる。より好ましくは、この濾過液は、第1の濾過工程の使用済み流体の約95体積%に達する。
【0047】
それに対応して、流体及び粉末基板材料の一部を含む濃縮物により表される体積は、第1の濾過工程の後の使用済み流体の10体積%以下になる。より好ましくは、この濃縮物は、使用済み流体の約5体積%に達する。
【0048】
他の固体−液体分離工程、例えば、第2の濾過工程が施された後、濾過液体積は、第1の濾過工程で受け取った非濾過液の約98体積%に達する。
【0049】
前述のように、本方法は、広範にわたる基板材料に適用可能である。典型的には、この基板材料は、Si、Ge、Ga、As、In、P、GaN、SiC、サファイア、フェライト、セラミックス、及びガラス基板から選択され得る。
【0050】
本発明の工程は、太陽電池及びさらには半導体集積回路の製造用のウェハの製造で使用するスライスを生産するのに理想的である。
【0051】
前述のように、本発明によるウェハ状のスライスを製造するための本発明のシステムは、請求項30において定められている。
【0052】
好ましくは、流体再生利用デバイスは、再利用可能流体を前記分配ユニットに再循環させるための再循環手段を備える。
【0053】
流体が本質的に脱イオン水からなる場合、再循環は、実行が非常に単純であり、再利用可能流体に脱イオン水を補うだけでよい。
【0054】
冷却用及び潤滑用流体中で流体添加剤が使用される場合、再循環手段は、前記再利用可能流体に流体添加剤を補うための手段を備えることが好ましい。
【0055】
再生利用デバイスで使用される第1の濾過ユニットは、好ましくはダイナミック膜濾過エレメントである。
【0056】
ダイナミック膜濾過エレメント、特に精密濾過又は限外濾過デバイスの形態のものは、使用済み流体の再生利用及び使用済み流体の再循環をより経済的に行うことができる。
【0057】
好ましい再生利用デバイスは、他の固体−液体分離システム、例えば、第2の濾過ユニットを備えるが、これは、好ましくは濃縮物の流体含有量を減らすために使用される。
【0058】
その程度まで、他の固体−液体分離システムは、好ましくは圧搾濾過器を備える。圧搾濾過器から受け取った固形物は、好ましくはパドル乾燥機を備える乾燥ユニットに直接渡すことができる。
【0059】
再生利用デバイスがいったん凝集タンクを備えると、濃縮物が定期的にポンプで凝集タンクに汲み上げられ、そこで、1つ又は複数の凝集剤と混合され、次いで圧搾濾過器に送られる。
【0060】
凝集工程では、懸濁された粉末基板材料をより完全に除去することができ、再生利用流体の収量が高まる。
【0061】
好ましくは前記本発明のシステムは、排出ユニットからの使用済み流体を受け入れる貯蔵タンクを備える。次いで、使用済み流体は、貯蔵タンクから第1の濾過デバイスに移され、緩衝タンクとして使用される。貯蔵タンクの容量は、第1の濾過ユニットから得られた濃縮物が、乾燥ユニットに放出されるのに先立ち、ある期間、貯留する保持液として再循環できるように設計される。これにより、濃縮物中の全固形成分含有量は、例えば使用済み流体中の約0.5%(w/w)から例えば濃縮物中の約10%(w/w)まで増やすことができる。これにより、処理すべき濃縮物の体積は、大幅に縮小できる。
【0062】
上記利点は、図及び詳細な一実施形態に関して以下で説明する。ここで、図面について簡単に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0063】
図1は、外周12から開始して、ある深さまで切断され切り溝14を形成したインゴット10の断面を示す断面図である。切り溝14内には、外面にNiコーティング20が施されているスチール線芯18を備えるカッティングワイヤ16が配置されている。さらに、カッティングワイヤ16は、その外面上に平均約3μmのサイズのダイヤモンド粒子22の形態で研磨粒子が付着している。
【0064】
カッティングワイヤ16及びインゴット10を冷却し、潤滑するために、流体が切り溝領域14内に、特にワイヤ16がインゴット10と接触する部分に投与される。滑らかなカッティングワイヤでは、現在使用されている研削粒子装備ワイヤ16に比べて切り溝14の幅を狭くする必要があることは図1の略図から明らかである。
【0065】
切り溝領域14を冷却し、潤滑するために使用される流体は、切り溝領域14から粉末インゴット基板材料を取り除くのを補助し、これにより、切断作業が促進され、また支援される。
【0066】
約30μS/cm以下の導電率に対応するイオン強度を有する水性の冷却用及び潤滑用流体の本発明の組成のおかげで、カッティングワイヤの切断作業時に生成される粒子は、冷却用及び潤滑用流体中に安定して懸濁される。インゴット10の粉末基板材料を運ぶ冷却用及び潤滑用流体(以下では使用済み流体と称する)は、切断デバイスから撤去される。次いで、粉末基板材料は、使用済み流体から回収される。
【0067】
図2は、ウェハ状スライスを製造するための本発明のシステム30の主機能部の概要を示している。
【0068】
システム30は、複数のカッティングワイヤを備えるスライス切断デバイス32を具備する。前記スライス切断デバイス32は、複数のスライスに切断されるべきスライス切断デバイス32内に装着される基板材料(図に示されていない)を収納する。
【0069】
スライス切断デバイス32は、カッティングワイヤが基板材料と接触し、切断する切り溝領域に冷却剤及び潤滑流体を送出するための投与ユニット34を備える。
【0070】
前記システムは、さらに、スライス切断デバイス32から使用済み流体を取り除くための排出ユニット36を備える。システム30は、さらに、排出ユニット36から使用済み流体を受け取る流体再生利用デバイス38を備える。再生利用デバイス38は、導管42を通して排出ユニット36から使用済み流体を受け取る緩衝タンク40を備える。緩衝タンク40は、導管46を介して濾過ユニット44と接続される。濾過ユニット44では、使用済み流体が、濃縮物部分と濾過液部分とに分離される。濃縮物は、導管48を通して濾過ユニット44から排出され、濾過液は、導管50を通して濾過ユニット44から取り除かれる。好ましくは、濾過液と濃縮物の体積の比は、濾過液対濃縮物の体積比が約9:1以上になるように選択される。
【0071】
濃縮物は、導管48を経て、好ましくはバッチ毎に動作する脱水デバイス52に送られる。好ましくは圧搾濾過器を備える脱水デバイス52において、濃縮物は、凝集剤で処理され、次いで、圧搾濾過器で濾過され、これにより濃縮物から粉末基板材料をより完全に取り除き、流体の他の部分を再生利用することができる。
【0072】
脱水デバイス52により供給される固形物質は、乾燥機54に送られ、そこで、残りの水分が蒸発させられ、乾燥基板粉末が管路56を通って乾燥機54から出る。
【0073】
導管50を通して濾過ユニット44から取り出された濾過液は、保持タンク58内に送り込まれ、そこで、脱イオン水及び添加剤を供給することにより再調整され得る。但し、冷却用及び潤滑用流体がそのような成分を含むべきである場合には、その再調整を行う。脱イオン水及び適宜添加剤は、供給管路60を通して保持タンク58内に供給される。流体供給ポンプ62は、再調整された冷却用及び潤滑用流体を、供給管路64を介して流体分配ユニット34に供給する。
【0074】
本発明の工程の他の実施形態のより詳細な説明を、図3に関して以下に示す。
【0075】
スライス切断デバイスは、図2に関してすでに説明しており、図3では省略されている。図3は、流体再生利用及び粉末基板材料の回収のため実現されたシステムの部分70を重点的に示している。この説明は、シリコンインゴットを切断して複数のスライス又はウェハに分けるときに出現しうるような流体流に対する実施例特有のデータ、タンク容積の寸法設定、流体組成などの一態様を含む。
【0076】
平均2,000kg/hr(約2m/hr)でスライス切断デバイスから受け入れる使用済み流体72は、緩衝タンク74(総容積約2m)内に集められる。これは、0.5%(w/w)の全懸濁固体シリコン(TSSi)を含む。フィードポンプ76は、ポンプ動作で、使用済み流体を表面積20mの限外濾過(UF)膜モジュール78に通す。このモジュールは、使用済み流体を本質的に粒子を含まない透過液と粒子含有濃縮物とに分離する。濃縮物のより大きな部分(ここでは保持液と呼ぶ)が、緩衝タンク74に戻されるが、より小さな部分は、100kg/hrの流量で濃縮物タンク80に移される。結局、TSSiは、約10%(w/w)となる。
【0077】
透過液は、総容積2mの保持タンク82内に集められ、そこで、脱イオン水が加えられて、濃縮物が回路を出たことによる損失を補う。
【0078】
流体供給ポンプ84は、透明な流体を2000kg/hの流量でスライス切断デバイスに送り返す。
【0079】
透過液の小さな部分は−逆洗ポンプ86を使って−定期的にポンプ動作で限外濾過膜モジュール78に逆方向で通され、膜の洗浄が行われる。
【0080】
濃縮物タンク80内に集められた限外濾過濃縮物は、10%(w/w)の懸濁固体シリコンを含む。日に2回、濃縮物はポンプ86により凝集タンク88に放出され、そこで、フィードポンプ94、96により、すでに準備され、凝集剤計量ユニット90、92内に貯蔵されている高分子凝集剤の水溶液と混合される。凝集剤(平均してそれぞれ1kg/hr)は両方とも、ポリアクリルアミドに基づく有機重合体から得られる溶液又はエマルジョンであり、一方はアニオン性、他方はカチオン性である。攪拌すると、凝集剤は、シリコン粒子の集塊を促進し、濃縮物の濾過性を著しく改善する。
【0081】
フィードポンプ98は、凝集した濃縮物を圧搾濾過器100内に運ぶ。ここで、シリコン粒子集塊が、フィルタクロスで取り除かれ、濾過ケーキを形成するが、透明な水がフィルタクロスを透過し、管路102を介して平均流量82kg/hrでシステムから出る。濾過時に高いフィード圧力を加えることにより、圧搾濾過器内の濾過ケーキは脱水され、約50%の残留水分(w/w)が得られる。圧搾濾過器を開くと、濾過ケーキ(平均して20kg/hr)がベルトコンベヤー104上に落下する。ベルトコンベヤー104は、濾過ケーキ片をパドル乾燥機106内に送り込む。80℃を超える高温により、固形物の永久的循環の下で濾過ケーキの水分を蒸発させる。これは、乾燥機ハウジングから水蒸気として出る(平均して10kg/hr)。乾燥シリコン粉末が、管路108を通して平均10kg/hrで乾燥機から放出される。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】基板材料の切り溝内のカッティングワイヤの略図である。
【図2】本発明により使用されるシステムの好ましい一実施形態の略図である。
【図3】本発明のシステムの他の好ましい一実施形態を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板材料からウェハ状のスライスを製造する、特に半導体デバイスの製造において使用するための方法であって、
研削粒子を表面上に有するカッティングワイヤを備えるスライス切断デバイスを用意するステップと、
約30μS/cm以下の導電率に対応するイオン強度を有する水性の冷却用及び潤滑用流体を用意するステップと、
前記カッティングワイヤが接触し、前記基板材料を切断する切り溝内に、前記切り溝領域からの粉末基板材料の除去を促進してその結果使用済み流体となる前記冷却用及び潤滑用流体を投与しながら、前記基板材料を前記カッティングワイヤで複数のスライスに切断するステップと、
前記使用済み流体を前記切断デバイスから取り除き、前記粉末基板材料を前記使用済み流体から回収するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記冷却用及び潤滑用流体は、約10μS/cm以下の導電率を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記冷却用及び潤滑用流体は、潤滑剤、湿潤剤、界面活性剤、冷却剤、スケール防止剤及び分散剤から選択された添加剤を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記流体は、実質的に鉱物を含まない、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記カッティングワイヤは、スチール線芯を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記スチール線芯は、Niコーティングされている、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記研削粒子は、ダイヤモンド粒子、コランダム粒子及び炭化ケイ素粒子から選択された粒子を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記カッティングワイヤの前記研削粒子は、約5μm以下の平均粒子サイズを有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記使用済み流体を濾過して、前記粉末基板材料を濃縮物として回収する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記使用済み流体を濾過する際に得られる濾過液を、再利用可能流体として回収する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記濾過は、膜濾過、特に精密濾過又は限外濾過の形態のダイナミック膜濾過を含む、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記再利用可能流体は、冷却用及び潤滑用流体として再利用する前に再調整される、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記再利用可能流体の前記再調整は、脱イオン水を補うステップを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記再利用可能流体の前記再調整は、イオン交換処理を含む、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記再利用可能流体の前記再調整は、添加剤を補うステップを含む、請求項12〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記濃縮物は、凝集の作用を受ける、請求項9〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記凝集は、凝集剤を添加するステップを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記濃縮物に対して脱水工程を行う、請求項9〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記脱水工程は、機械的圧搾濾過器、遠心分離機、加圧濾過器、又は吸引濾過器により濃縮物を処理するステップを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記脱水工程は、熱乾燥ステップを含む、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
濾過は、2つの後続の固体−液体分離ステップにおいて実行される、請求項9〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記凝集ステップは、前記第1の濾過ステップと他の固体−液体分離ステップとの間で実行される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記濾過液は、前記第1の濾過ステップにおける前記使用済み流体の約90体積%以上に達する、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
前記濾過液は、前記第1の濾過ステップにおける前記使用済み流体の約95体積%に達する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記他の固体−液体分離ステップで得られた前記濾過液は、前記第1の濾過ステップで受け入れた前記非濾過液の約98体積%に達する、請求項22〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記基板材料の前記基板材料は、Si、Ge、GaAs、InP、GaN、SiC、サファイア、フェライト、セラミックス及びガラスから選択される、請求項1〜25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記回収された粉末基板材料は、再び溶融され、基板材料を形成する、請求項1〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記スライスは、太陽電池の製造で使用するためのものである、請求項1〜27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記スライスは、半導体集積回路の製造で使用するためのものである、請求項1〜27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
半導体デバイスの製造で使用するために基板材料からウェハ状のスライスを製造するシステムであって、
表面上に研削粒子を有するカッティングワイヤが設けられているスライス切断デバイスであり、前記カッティングワイヤが接触し、前記基板材料を切断する切り溝領域内に、前記切り溝領域からの粉末基板材料の除去を促進しその結果使用済み冷却用及び潤滑用流体を形成する冷却用及び潤滑用流体を送り込むための投与ユニットを備えるスライス切断デバイスと、
前記使用済み流体を前記スライス切断デバイスから取り除くための排出ユニットと、
前記使用済み流体を処理し、前記使用済み流体から前記粉末基板材料を分離して回収し、再利用可能流体を供給するための第1の濾過ユニットを備える流体再生利用デバイスと
を備えるシステム。
【請求項31】
前記流体再生利用デバイスは、前記再利用可能流体を前記投与ユニットに再循環させるための再循環手段を備える、請求項30に記載のシステム。
【請求項32】
前記再循環手段は、脱イオン水を前記再利用可能流体に補う手段を備える、請求項31に記載のシステム。
【請求項33】
前記再循環手段は、流体添加剤を前記再利用可能流体に補う手段を備える、請求項31又は32に記載のシステム。
【請求項34】
前記第1の濾過ユニットは、ダイナミック膜濾過エレメントを備える、請求項30〜33のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項35】
前記再生利用デバイスは、他の固体−液体分離デバイスを備える、請求項30〜34のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項36】
前記他の固体−液体分離デバイスは、圧搾濾過器を備える第2の濾過ユニットを備える、請求項35に記載のシステム。
【請求項37】
前記再生利用デバイスは、前記第1の濾過ユニットから前記粉末基板を濃縮物として受け入れる凝集タンクを備える、請求項30〜36のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項38】
前記再生利用デバイスは、凝集剤を前記凝集タンク内に送り込むための凝集剤計量ユニットを備える、請求項37に記載のシステム。
【請求項39】
前記再生利用デバイスは、脱水ユニットを備える、請求項30〜38のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項40】
前記脱水ユニットは、パドル乾燥機を備える、請求項39に記載のシステム。
【請求項41】
排出ユニットから使用済み流体を受け入れるための保持タンクを備える、請求項30〜40のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項42】
前記保持タンクと流体で連通している、前記第1の濾過ユニット内に得られる濃縮物用の再循環管路を備える、請求項41に記載のシステム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−502346(P2011−502346A)
【公表日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−530279(P2010−530279)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【国際出願番号】PCT/EP2007/009406
【国際公開番号】WO2009/056153
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(596064112)ポール・コーポレーション (70)
【氏名又は名称原語表記】Pall Corporation
【Fターム(参考)】