説明

多数個取り配線基板およびその製造方法

【課題】ガラスセラミックス焼結体で母基板が形成された多数個取り配線基板であって、配線基板領域の境界において母基板をダイシング加工により、チッピング等の不具合の発生を抑制しながら、作業性を良好として切断することが可能な多数個取り配線基板を提供する。
【解決手段】セラミック焼結体からなる母基板1に複数の配線基板領域2が縦横の並びに配列形成されてなり、配線基板領域2の境界2bにおいてダイシング加工により分割される多数個取り配線基板9aであって、母基板1のうち配線基板領域2の境界2b上に位置する部位に、未焼結のセラミック粒子層5aが被着されている多数個取り配線基板9aである。未焼結のセラミック粒子層5aによって、母基板1を切断するダイシングブレードにおける新たな砥粒の露出が促進されるため、母基板1を、チッピング等の不具合の発生を抑制しながら切断することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子や弾性表面波素子等の電子部品を搭載するために用いられる配線基板となる配線基板領域が複数個、母基板に縦横の並びに配列されてなり、配線基板領域の境界においてダイシング加工によって切断される多数個取り配線基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば半導体素子や弾性表面波素子等の電子部品を搭載するために用いられる配線基板として、ガラスセラミック焼結体からなる四角形板状の絶縁基体の上面に電子部品を搭載するための搭載部を有し、この搭載部またはその周辺から絶縁基体の下面にかけて銅や銀等の金属材料から成る複数の配線導体が形成されたものが多用されている。
【0003】
このような配線基板は、一般に、1枚の広面積の母基板から複数個の配線基板を同時集約的に得るようにした、いわゆる多数個取り配線基板の形態で製作されている。
【0004】
多数個取り配線基板は、例えば、平板状の母基板に配線基板となる配線基板領域が縦横の並びに複数個配列形成された構造を有している。
【0005】
このような多数個取り配線基板は、配線基板領域の境界において母基板にダイシング加工等の切断加工を施すことにより、個片の配線基板に分割される。ダイシング加工には、ダイヤモンドや酸化アルミニウム等の砥粒(研削材)を樹脂やガラス等の非金属無機材料,金属材料等の結合材で結合した円盤状のダイシングブレードが用いられる。このダイシングブレードを高速で回転させて母基板を切削することにより、多数個取り配線基板が個片の配線基板に分割される。
【0006】
また、このような多数個取り配線基板は、ホウケイ酸系ガラス等のガラスおよび酸化アルミニウム等のセラミック等の原料粉末を有機溶剤およびバインダとともにシート状に成形して作製したガラスセラミックグリーンシートに銅や銀等の金属材料のペーストを配線導体のパターンに印刷し、その後これらを同時焼成する方法で製作される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−125838号公報
【特許文献2】特開2001−345533号公報
【特許文献3】特開2007−59922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来技術の多数個取り配線基板は、ダイシングブレードを用いて母基板を分割する場合に、硬いガラスセラミック焼結体からなる母基板を切削することによってダイシングブレードの砥粒がすぐに磨耗したり、ダイシングブレードに母基板の切削くずが付着(いわゆる目詰まり)したりして、ダイシングブレードの切断力が低下しやすい。
【0009】
そのため、切断加工時にダイシングブレードに掛かる負荷が大きくなってダイシングブレードが破壊されたり、頻繁にダイシングブレードを交換しなければならなくなったりするという問題があった。
【0010】
また、ダイシング加工をしている(ダイシングブレードが回転して母基板を切断している)最中にダイシングブレードの切断力が低下した場合には、母基板のダイシングブレードとの接触部分が良好に切削されずに母基板に掛かる負荷が増大し、この部分で母基板、つまりは個片の配線基板にチッピング(微細な欠け)やクラック(割れ)等の不具合を発生させてしまうという問題があった。特に、近年、個片の配線基板の小型化が著しいため、わずかなチッピング等の発生でも、配線基板としての機械的強度や気密封止の信頼性等が不十分になりやすい。
【0011】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みて完成されたものであり、その目的は、ガラスセラミック焼結体で母基板が形成された多数個取り配線基板であって、配線基板領域の境界において母基板をダイシング加工により、チッピング等の不具合の発生を抑制しながら、作業性を良好として切断することが可能な多数個取り配線基板およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の多数個取り配線基板は、ガラスセラミック焼結体からなる母基板に複数の配線基板領域が縦横の並びに配列形成されてなり、前記配線基板領域の境界においてダイシング加工によって分割される多数個取り配線基板であって、前記母基板のうち前記配線基板領域の境界上に位置する部位に、未焼結のセラミック粒子層が被着されていることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の多数個取り配線基板は、上記構成において、前記未焼結のセラミック粒子層は、ガラスを介して被着していることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の多数個取り配線基板は、上記構成において、前記母基板の外周に前記配線基板領域を囲むようにダミー領域が設けられているとともに、前記母基板の表面のうち配線基板領域の境界を前記ダミー領域に延長にした延長線上に位置する部位に、前記未焼結のセラミック粒子層が、前記配線基板領域の境界上に位置する部位における幅よりも広い幅で被着していることを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の多数個取り配線基板は、ガラスセラミック焼結体からなる複数の絶縁層が積層されてなる母基板に複数の配線基板領域が縦横の並びに配列形成されてなり、前記配線基板領域の境界においてダイシング加工によって分割される多数個取り配線基板であって、前記絶縁層の層間のうち前記配線基板領域の境界に位置する部位に、未焼結のセラミック粒子層が被着していることを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明の多数個取り配線基板の製造方法は、ガラスセラミックグリーンシートを準備するとともに、該ガラスセラミックグリーンシートに複数の配線基板領域を縦横の並びに配列する工程と、 前記ガラスセラミックグリーンシートの表面のうち前記配線基板領域の境界上に位置する部位に、前記ガラスセラミックグリーンシートが焼結する温度では焼結しない、セラミック粒子を含むセラミックペーストを層状に塗布する工程と、前記ガラスセラミックグリーンシートおよび前記セラミックぺーストを加熱して、前記ガラスセラミックグリーンシートを焼結させてガラスセラミック焼結体からなる母基板とするとともに、該母基板の表面のうち前記配線基板領域の境界上に位置する部位に、未焼結のセラミック粒子層を被着させる工程とを備えることを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明の多数個取り配線基板の製造方法は、複数のガラスセラミックグリーンシートを準備するとともに、複数の該ガラスセラミックグリーンシートにそれぞれ複数の配線基板領域を縦横の並びに配列する工程と、一部の前記ガラスセラミックグリーンシート
の表面のうち前記配線基板領域の境界上に位置する部位に、前記ガラスセラミックグリーンシートが焼結する温度では焼結しないセラミック粒子を含むセラミックペーストを層状に塗布する工程と、複数の前記ガラスセラミックグリーンシートを、前記セラミックペーストが前記ガラスセラミックグリーンシート同士の間に介在するように積層して積層体を形成する工程と、該積層体を加熱して、前記ガラスセラミックグリーンシートを焼結させてガラスセラミック焼結体からなる絶縁層とするとともに、該絶縁層の層間のうち前記配線基板領域の境界に位置する部位に、未焼結のセラミック粒子層を被着させる工程とを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の多数個取り配線基板によれば、ガラスセラミック焼結体からなる母基板のうちダイシング加工される部位である配線基板領域の境界上に位置する部位に、未焼結のセラミック粒子層が被着されていることから、ダイシング加工に用いられるダイシングブレードに対して、母基板を切削する加工とともにダイシングブレードの表面に新たな砥粒を露出させる作用(いわゆる自生発刃)が促進される。
【0019】
すなわち、ダイシングブレードのダイヤモンド等の砥粒に対して、セラミック粒子層を形成する未焼結のセラミック粒子が一定の力で押し付けられるように接触し、ダイシングブレードの表面に露出している磨耗した砥粒の脱落が促進され、結合材の内部に結合されていた砥粒が新たにダイシングブレードの表面に露出するようになり、切断力が回復する。
【0020】
この場合、未焼結のセラミック粒子は、ダイシングブレードからの砥粒の脱落とともに母基板から脱落する。そして、ダイシングブレードの表面(切削面)に新たに露出した砥粒により母基板の切削が行なわれるため、母基板およびダイシングブレードに大きな負荷を掛けることなく切削加工を続けて安定して施すことができる。
【0021】
また、母基板のうち未焼結のセラミック粒子層と接している界面およびその付近では、焼結しない(つまり焼成収縮が生じない)セラミック粒子層の拘束の作用によって焼成時の収縮が抑制され、これに応じて内部に空隙が生じやすい。これによって、母基板のうちダイシング加工される部分を切削しやすくする効果も得ることができる。
【0022】
したがって、配線基板領域の境界において母基板をダイシング加工により、チッピング等の発生を抑制しながら、作業性を良好として切断することが可能な多数個取り配線基板を提供することができる。
【0023】
また、本発明の多数個取り配線基板において、未焼結のセラミック粒子層がガラスを介して被着している場合には、未焼結のセラミック粒子層をガラスセラミック焼結体からなる母基板の表面により強固に被着させることができる。
【0024】
すなわち、例えば母基板を形成するガラスセラミック焼結体からセラミック粒子層を形成するセラミック粒子間にホウケイ酸系ガラス等のガラス成分が入り込むことによって、未焼結のセラミック粒子がガラスを介してより強固に被着される。そのため、セラミック粒子層が搬送等の取り扱い時に脱落することがより効果的に抑制されて、ダイシングブレードの自生発刃の効果をより確実に得ることができる。
【0025】
また、本発明の多数個取り配線基板は、上記構成において、母基板の外周に配線基板領域を囲むようにダミー領域が設けられているとともに、配線基板領域の境界をダミー領域に延長にした延長線上に未焼結のセラミック粒子層が、配線基板領域の境界における幅よりも広い幅で被着されている場合には、より容易かつ確実に、ダイシングブレードの幅に
比べて十分に広い幅の未焼結のセラミック粒子層を母基板に被着させることができる。
【0026】
そして、ダミー領域も配線基板領域の境界の延長線に沿ってダイシングブレードで切削することにより、ダイシングブレードの幅いっぱいに、より効果的に新たな砥粒の露出を促進することができる。従って、この場合には、より効果的にチッピング等の発生を抑制することが可能で、切断の作業性をより良好とすることが可能な多数個取り配線基板を提供することができる。
【0027】
また、本発明の他の構成の多数個取り配線基板によれば、絶縁層の層間のうち配線基板領域の境界に位置する部位に、未焼結のセラミック粒子層が被着していることから、上記構成の多数個取り配線基板の場合と同様に、ダイシング加工に用いられるダイシングブレードに対して自生発刃が促進される。すなわち、絶縁層の層間に被着しているセラミック粒子層を形成する未焼結のセラミック粒子によってダイシングブレードの表面に露出している磨耗した砥粒の脱落が促進され、結合材の内部に結合されていた砥粒が新たにダイシングブレードの表面に露出する。
【0028】
そして、未焼結のセラミック粒子がダイシングブレードからの砥粒の脱落とともに母基板から脱落し、ダイシングブレードの表面(切削面)に新たに露出した砥粒により母基板の切削が行なわれるため、母基板およびダイシングブレードに大きな負荷を掛けることなく切削加工を安定して施すことができる。
【0029】
また、母基板のうち未焼結のセラミック粒子層と接している界面およびその付近では、焼結しない(つまり焼成収縮が生じない)セラミック粒子層の拘束の作用によって焼成時の収縮が抑制され、これに応じて内部に空隙が生じやすい。そのため、母基板のうちダイシング加工される部分を切削しやすくする効果も得ることができる。
【0030】
さらに、未焼結のセラミック粒子層が絶縁層の層間に被着していることから、多数個取り配線基板の搬送や電子部品の実装等の取り扱い時に脱落することが防止され、ダイシングブレードに対する自生発刃の効果をより確実に得ることができる。
【0031】
したがって、この構成の多数個取り配線基板においても、配線基板領域の境界において母基板をダイシング加工により、チッピング等の発生を抑制しながら、作業性を良好として切断することが可能な多数個取り配線基板を提供することができる。
【0032】
また、本発明の多数個取り配線基板の製造方法によれば、上記各工程を備えることから、チッピング等の発生を抑制しながら、作業性を良好として切断することが可能な多数個取り配線基板を製作することができる。
【0033】
すなわち、ガラスセラミックグリーンシートの表面のうち配線基板領域の境界上に位置する部位に、このガラスセラミックグリーンシートが焼結する温度では焼結しないセラミック粒子を含むセラミックペーストを層状に塗布した後に加熱して、ガラスセラミック焼結体からなる母基板に、この母基板の表面のうち配線基板領域の境界上に位置する部位に未焼結のセラミック粒子層を被着させることから、ダイシング加工が行なわれる部位に、ダイシングブレードの自生発刃を促進する未焼結のセラミック粒子層が被着された多数個取り配線基板を製作することができる。
【0034】
したがって、この多数個取り配線基板をダイシングブレードを用いて個片に分割する際に、ダイシングブレードにおける自生発刃が促進されるため、チッピング等の発生を抑制しながら、作業性を良好として切断することが可能な多数個取り配線基板の製造方法を提供することができる。
【0035】
また、本発明の他の構成の多数個取り配線基板の製造方法においても、上記各工程を備えることから、チッピング等の発生を抑制しながら、作業性を良好として切断することが可能な多数個取り配線基板を製作することができる。
【0036】
すなわち、一部のガラスセラミックグリーンシートの表面のうち配線基板領域の境界上に位置する部位に、このガラスセラミックグリーンシートが焼結する温度では焼結しないセラミック粒子を含むセラミックペーストを層状に塗布し、このセラミックペーストがガラスセラミックグリーンシート同士の間に介在するようにガラスセラミックグリーンシートを積層して積層体を形成した後に加熱して、ガラスセラミック焼結体からなる母基板に、この母基板の絶縁層の層間のうち配線基板領域の境界に位置する部位に、未焼結のセラミック粒子層を被着させることから、ダイシング加工が行なわれる部位に、ダイシングブレードの自生発刃を促進する未焼結のセラミック粒子層が被着された多数個取り配線基板を製作することができる。
【0037】
したがって、多数個取り配線基板をダイシングブレードを用いて個片に分割する際に、ダイシングブレードにおける自生発刃が促進されるため、チッピング等の発生を抑制しながら、作業性を良好として切断することが可能な多数個取り配線基板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】(a)は本発明の多数個取り配線基板(構成A)の実施の形態の一例を示す平面図であり、(b)はそのA−A線における断面図である。
【図2】図1に示す多数個取り配線基板(構成A)の要部を拡大して模式的に示す拡大断面図である。
【図3】図1および図2に示す多数個取り配線基板(構成A)に対してダイシング加工を施すときの要部の状態を拡大して模式的に示す拡大断面図である。
【図4】本発明の多数個取り配線基板(構成A)における要部の一例を拡大して模式的に示す要部拡大断面図である。
【図5】本発明の多数個取り配線基板(構成A)の実施の形態の他の例における要部を拡大して模式的に示す拡大断面図である。
【図6】本発明の多数個取り配線基板(構成A)の実施の形態の他の例を示す平面図である。
【図7】図6に示す多数個取り配線基板(構成A)のB−B線における断面の一例を拡大して示す要部拡大断面図である。
【図8】本発明の多数個取り配線基板(構成A)の実施の形態の他の例を示す要部拡大平面図である。
【図9】(a)は本発明の多数個取り配線基板(構成B)の実施の形態の一例を示す平面図であり、(b)は(a)のC−C線における断面図である。
【図10】図9に示す多数個取り配線基板(構成B)の要部を拡大して模式的に示す拡大断面図である。
【図11】(a)および(b)は、それぞれ本発明の多数個取り配線基板の製造方法(A)の一例を工程順に示す平面図である。
【図12】(a)および(b)は、それぞれ本発明の多数個取り配線基板の製造方法(B)の一例を工程順に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明の多数個取り配線基板およびその製造方法について、添付の図面を参照しつつ説明する。以下の説明において、母基板の表面に未焼結のセラミック粒子層が被着した多数個取り配線基板の構成および製造方法をAとし、絶縁層の層間に未焼結のセラミック粒子
層が被着した多数個取り配線基板の構成および製造方法をBとする。
【0040】
(構成Aの多数個取り配線基板)
図1(a)は、本発明の多数個取り配線基板(構成A)の実施の形態の一例を示す平面図であり、図1(b)は、図1(a)のA−A線における断面図である。図1において、1は母基板、2は配線基板領域である。母基板1に複数の配線基板領域2が縦横の並びに配列されて多数個取り配線基板(構成A)9aが基本的に形成されている。
【0041】
母基板1は、例えば、ホウケイ酸系ガラスや酸化リチウム系ガラス,リン酸塩系ガラス等のガラス成分と酸化アルミニウムや酸化マグネシウム,酸化カルシウム等のセラミック成分とを含むガラスセラミック焼結体により形成されている。
【0042】
母基板1に配列された複数の配線基板領域2は、それぞれが個片の配線基板(図示せず)となる領域である。母基板1が配線基板領域2の境界2bにおいて切断されることにより、複数の配線基板が製作される。
【0043】
個片の配線基板が電子部品搭載用基板として使用される場合には、配線基板領域2の上面の中央部や下面等に電子部品の搭載部が設けられる。この例においては、配線基板領域2の上面の中央部に凹部2aが設けられ、その凹部2aの底面が電子部品の搭載部(符号なし)とされた例を示している。
【0044】
なお、母基板1は、このような凹部2aを配線基板領域2に有しているものである必要はなく、平板状のもの(図示せず)として、配線基板領域2の平坦な上面や下面の一部を搭載部としたものでもよい。
【0045】
搭載部に搭載される電子部品(図示せず)としては、ICやLSI等の半導体集積回路素子、およびLED(発光ダイオード)やPD(フォトダイオード),CCD(電荷結合素子)等の光半導体素子を含む半導体素子、弾性表面波素子や水晶振動子等の圧電素子、容量素子、抵抗器、半導体基板の表面に微小な電子機械機構が形成されてなるマイクロマシン(いわゆるMEMS素子)等の種々の電子部品が挙げられる。
【0046】
電子部品は、搭載部に、例えばエポキシ系樹脂,ポリイミド系樹脂,アクリル系樹脂,シリコーン系樹脂,ポリエーテルアミド系樹脂等の樹脂接着剤や、Au−Sn,Sn−Ag−Cu,Sn−Cu,Sn−Pb等のはんだや、ガラス等で接着される。
【0047】
また、この例においては、搭載部の外周部分から配線基板領域2の下面にかけて、配線導体3が形成されている。配線導体3は、搭載部に搭載される電子部品と電気的に接続されて、電子部品を外部の電気回路に電気的に接続する導電路として機能する。
【0048】
配線導体3は、銅や銀,パラジウム,金等の金属材料からなるメタライズ層により形成されている。
【0049】
電子部品と配線導体3との電気的な接続は、例えば、配線導体3のうち搭載部の周辺に露出している部位に電子部品の電極(図示せず)を、ボンディングワイヤやはんだ等の導電性接続材を介して接続することにより行なうことができる。
【0050】
このような、それぞれが配線導体3を有する複数の配線基板領域2が縦横の並びに配列された母基板1は、例えば、次のようにして製作することができる。
【0051】
まず、二酸化ケイ素を含むホウケイ酸系ガラス等のガラス粉末と酸化アルミニウム、酸
化マグネシウム等のセラミック粉末とを主成分とする原料粉末を、有機溶剤,バインダと混練するとともにドクターブレードやリップコータ法等の成形方法でシート状に成形してガラスセラミックグリーンシートを作製する。次に、銅や銀等の金属材料の粉末を有機溶剤,バインダとともに混練して金属ペーストを作製する。次に、ガラスセラミックグリーンシートを母基板1の外形寸法に切断するとともに配線基板領域2となる領域のそれぞれに、所定の配線導体3のパターンにスクリーン印刷法等の印刷法で金属ペーストを印刷する。そして、複数のガラスセラミックグリーンシートを積層した後、約900〜1000℃程度
の焼成温度で焼成することにより、それぞれが配線導体3を有する複数の配線基板領域2が縦横の並びに配列された母基板1を製作することができる。
【0052】
なお、この例において、母基板1の外周には、配列された複数の配線基板領域2を取り囲むようにダミー領域4が設けられている。ダミー領域4は、多数個取り配線基板(構成A)9aの取り扱いを容易とすること等のために設けられている。
【0053】
この多数個取り配線基板(構成A)9aは、配線基板領域2の境界2b(この例では、配線基板領域2同士の境界および配線基板領域2とダミー領域4との境界)においてダイシング加工を施して切断することにより、個片の配線基板(図示せず)に分割される。
【0054】
ダイシング加工による母基板1の分割は、ダイヤモンドや酸化アルミニウム等の砥粒がガラス等の無機材料(いわゆるビトリファイド)や金属材料や樹脂材料からなる結合材で結合されてなるダイシングブレードを高速(約5000〜15000回転/分)で回転させて、配
線基板領域2の境界2bにおいて母基板1を切削することにより行なわれる。ダイシングブレードの母基板1に対する位置決めは、例えば母基板1にあらかじめ位置決め用のマーク(図示せず)を形成しておいて、その位置を画像認識装置で認識させることによって行なう。この位置決め用のマークは、例えば配線導体3と同様の材料を用い、同様の方法で母基板1に形成することができる。
【0055】
そして、図1および図2に示すように、この多数個取り配線基板(構成A)9aは、母基板1のうち配線基板領域2の境界2b上に位置する部位に、酸化アルミニウム,酸化ケイ素,炭化ケイ素等のセラミック材料の粒子(セラミック粒子6)からなる未焼結のセラミック粒子層5aが被着されている。なお、図2は図1に示す多数個取り配線基板(構成A)9aの要部を拡大して模式的に示す断面図である。図2において図1と同様の部位には同様の符号を付している。
【0056】
このように、母基板1のうちダイシング加工される部位である配線基板領域2の境界2b上に位置する部位に未焼結のセラミック粒子層5aが被着されていることから、ダイシング加工時にダイシングブレードに対して、母基板1を切削する加工とともに新たな砥粒を露出させる作用が促進される。
【0057】
すなわち、図3に示すように、R方向に回転するダイシングブレードBのダイヤモンド等の砥粒Dに対して、未焼結のセラミック粒子層5a中のセラミック粒子6が一定の力でR方向に押し付けられるように接触し、ダイシングブレードBの表面に露出している磨耗した砥粒Dの脱落が促進され、結合材(符号なし)の内部に結合されていた砥粒Dが新たにダイシングブレードBの表面に露出するようになり、切断力が回復する。なお、図3は、図1および図2に示す多数個取り配線基板(構成A)9aに対してダイシング加工を施すときの要部の状態を拡大して模式的に示す拡大断面図であり、図1および図2と同様の部位には同様の符号を付している。
【0058】
また、母基板1のうち未焼結のセラミック粒子層5aと接している界面およびその付近では、例えば図4に示すように、焼結しない(つまり焼成収縮が生じない)セラミック粒
子層5aによる拘束の作用によって焼成時の収縮が抑制され、これに応じて内部に空隙Vが生じやすい。そのため、母基板1のうちダイシング加工される部分を切削しやすくする効果も得ることができる。なお、図4は、本発明の多数個取り配線基板(構成A)9aの要部の一例を拡大して模式的に示す要部拡大断面図である。図4において図1と同様の部位には同様の符号を付している。また、図4において、空隙Vは、わかりやすくするために実際の大きさよりも大きくして示している。この場合、空隙Vが生じることによって、配線基板領域2の境界2b付近における母基板1の機械的な強度が低下して切削が容易となる。
【0059】
したがって、配線基板領域2の境界2bにおいて母基板1をダイシング加工により、チッピング等の発生を抑制しながら、作業性を良好として切断することが可能な多数個取り配線基板(構成A)9aを提供することができる。
【0060】
なお、未焼結のセラミック粒子層5aを構成するセラミック粒子6は、ファンデルワールス力による結合や水素結合等の分子間力による結合によって層状に母基板1の表面に被着されている。
【0061】
セラミック粒子6には、ダイヤモンドや酸化アルミニウム質焼結体からなる砥粒Dと硬さの差が小さい材料(例えばモース硬度が7以上の材料)が用いられる。このようなセラミック粒子6を形成するセラミック材料には、酸化アルミニウム質焼結体や酸化ケイ素質焼結体、窒化ホウ素質焼結体,窒化ケイ素質焼結体,炭化ケイ素質焼結体等の材料を用いることができる。また、未焼結のセラミック粒子6としての酸化ケイ素は、例えば石英やクリストバライト等の結晶性の二酸化ケイ素を用いることができる。
【0062】
この場合、セラミック粒子6は、砥粒Dよりも硬さ(硬度)が若干小さいものであることが、新たに露出する砥粒Dの磨耗を防ぐために好ましい。例えば、砥粒Dがダイヤモンドからなる場合であればセラミック粒子6は酸化アルミニウム等のセラミック材料や酸化ケイ素からなるものであることが好ましく、砥粒Dが酸化アルミニウム質焼結体(いわゆるコランダム砥粒等)からなる場合であればセラミック粒子6は酸化ケイ素からなるものであることが好ましい。
【0063】
また、セラミック粒子6は、石英や酸化アルミニウム等の原材料が機械的な加工で破砕されてなる不定形の破片状のものや、球状や表面の一部に凹凸を有する球状のものを用いることができる。いずれの形状でも、ダイシングブレードBの表面に新たな砥粒Dを露出させる効果を得ることは可能である。
【0064】
このようなセラミック粒子6からなる未焼結のセラミック粒子層5aは、例えば、酸化ケイ素の粉末等のセラミック粉末,有機溶剤およびバインダをともに混錬してペースト状としたセラミックペーストを、母基板1のうち配線基板領域2の境界2b上にスクリーン印刷やロールコート等の方法で塗布し、その後、約900〜1000℃程度の焼成温度でガラス
セラミックグリーンシートと同時焼成することにより形成することができる。酸化ケイ素の粉末としては、例えば平均粒径が約10〜100μmの球状や表面に凹凸を有する球状のも
の等を用いることができる。
【0065】
未焼結のセラミック粒子層5aの厚さは、多数個取り配線基板(構成A)9aの生産性や取り扱いやすさや信頼性等を考慮すれば、500μm以下であることが好ましい。すなわ
ち、未焼結のセラミック粒子層5aが厚い場合には、未焼結のセラミック粒子層5aが母基板1の表面から突出し過ぎるため、多数個取り配線基板(構成A)9aの取り扱いの際に、装置や作業者等と誤って接触したときに母基板1から剥がれやすくなる。また、未焼結のセラミック粒子層5aとなるセラミックペーストについて、厚いために塗布が難しく
なることや、塗布した後の混合物の焼成前における自重による変形が発生しやすくなること等の不具合を生じやすくなる。
【0066】
また、セラミック粒子6が前述したような平均粒径が約5〜10μmのものであれば、未焼結のセラミック粒子層5aの厚さは10μm以上であることが望ましく、ダイシングブレードBに対していわゆる自生発刃をより確実に行なわせる上では30μm以上であることがより望ましい。
【0067】
また、未焼結のセラミック粒子層5aの幅は、ダイシングブレードBの幅(約50〜300
μm)と同じ程度の幅に設定するのがよい。未焼結のセラミック粒子層5aの幅をダイシングブレードBの幅と同じ程度にしておくと、母基板1を切断するときに、ダイシングブレードBの幅の全部において効果的に新たな砥粒Dの露出を促進して、母基板1にチッピング等の不具合が発生することを抑制することができる。また、切断された個片の配線基板に不要な未焼結のセラミック粒子層5aが残留することを効果的に防止することができる。
【0068】
なお、この例では、母基板1の外周部に設けたダミー領域4にも未焼結のセラミック粒子層5aを延長して被着させている。未焼結のセラミック粒子層5aのダミー領域4に被着された部分も、配線基板領域2の境界2bに被着されている未焼結のセラミック粒子層5aと同様の材料を用い、同様の方法で被着させることができる。母基板1がダミー領域4を有する場合には、ダイシングブレードBによる母基板1の切断をより確実に不具合なく行なわせるために、ダミー領域4にも未焼結のセラミック粒子層5aを被着させることが好ましい。
【0069】
ダミー領域4に未焼結のセラミック粒子層5aを被着させた多数個取り配線基板(構成A)9aにおいて、前述した位置決め用のマークが配線基板領域2の境界2bのダミー領域4への延長線2c上に形成されている場合には、マークの部分のみ未焼結のセラミック粒子層5aを形成しないようにしたりしてマークを認識しやすくしてもよい。
【0070】
また、未焼結のセラミック粒子層5aにマンガンやコバルト等の金属酸化物の粒子(図示せず)を着色材として添加して未焼結のセラミック粒子層5aの色調を母基板1の色調と異ならせ、目視による認識や画像認識を利用しやすくしておいて、未焼結のセラミック粒子層5aを、母基板1にダイシング加工を施すときの位置決め用のパターンとして利用するようにしてもよい。
【0071】
なお、この多数個取り配線基板(構成A)9aにおいて、母基板1がガラスセラミック焼結体からなることから、例えば1000℃程度の低温での焼成が可能である。そのため、銅や銀,金等の低電気抵抗の金属材料(融点が1000℃程度)からなるメタライズ層を配線導体3として母基板1との同時焼成により形成し、配線導体3の電気抵抗を低く抑えることができる。
【0072】
また、セラミック粒子6が例えば酸化ケイ素からなる場合であれば、上記のような低温での焼成が可能であるものの機械的な強度が酸化アルミニウム質焼結体等に比べて低く、ダイシング加工時にチッピング等の機械的な破壊が発生しやすいガラスセラミック焼結体で母基板1が形成されていたとしても、ダイシング加工中にダイシングブレードBにおいて新たな砥粒Dの露出が促進されるため、母基板1に大きな負荷を掛けることなく切削を施すことができ、チッピング等の不具合が発生することを効果的に抑制することができる。そのため、低電気抵抗の個片の配線基板を、チッピング等の不具合の発生を抑えて製作することが可能な多数個取り配線基板(構成A)9aとすることができる。
【0073】
この場合、酸化ケイ素からなる未焼結のセラミック粒子6の硬さが、母基板1を形成するガラスセラミック焼結体中の酸化ケイ素を含むガラス成分の硬さと近いため、母基板1の切削に適当な砥粒DがダイシングブレードBの表面に露出するようになると考えられる。
【0074】
つまり、母基板1を切削できない程度に磨耗した砥粒Dは、セラミック粒子6に対する切削も効果的にできないようになり、未焼結のセラミック粒子層5aのセラミック粒子6に接したときに結合材から剥がれる方向に大きな応力を生じてダイシングブレードBの結合材から脱落する。
【0075】
そして、例えばダイヤモンド(モース硬度が10)からなるダイシングブレードBの砥粒Dに比べて酸化ケイ素からなるセラミック粒子6の硬度が低く(例えば、石英はモース硬度は7)、砥粒Dとセラミック粒子6との接触により新たに露出する砥粒Dが磨耗するということが抑制される。
【0076】
そのため、ダイシングブレードBの切断力が十分に確保され、機械的な強度の低いガラスセラミック焼結体で母基板1が形成されている場合でも、母基板1に大きな負荷を掛けることなく安定して切断することができ、チッピング等の不具合の発生を抑制しながら個片の配線基板に分割することができる。
【0077】
母基板1を形成するガラスセラミック焼結体としては、前述したような、ホウケイ酸系ガラスと酸化アルミニウムとを主成分とするものに限らず、リチウム系ガラスやフォルステライトを酸化アルミニウムとともに焼結させた焼結体や、これらの焼結体に酸化ジルコニウム,酸化マグネシウム,酸化カルシウム,酸化亜鉛等の添加材を含有させた焼結体等を用いることができる。
【0078】
本発明の多数個取り配線基板(構成A)9aにおいて、例えば図5に示すように、未焼結のセラミック粒子層5aがガラス7を介して母基板1の表面に被着している場合には、未焼結のセラミック粒子層5aをガラスセラミック焼結体からなる母基板1上により強固に被着させることができる。なお、図5は、本発明の多数個取り配線基板(構成A)9aの実施の形態の他の例における要部を拡大して示す拡大断面図である。図5において図1および図2と同様の部位には同様の符号を付している。
【0079】
すなわち、母基板1を形成するガラスセラミック焼結体から未焼結のセラミック粒子層5aを形成するセラミック粒子6間にホウケイ酸系ガラス等の低融点ガラス成分からなるガラス7が入り込むようにしておくことによって、個々のセラミック粒子6がガラス7を介してより強固に母基板1に被着される。そのため、未焼結のセラミック粒子層5aが搬送等の取り扱い時に容易に脱落することがより効果的に抑制され、ダイシングブレードBの自生発刃の効果をより確実に得ることができる。
【0080】
このようなガラス7としては、例えば、ホウケイ酸系ガラスやリン酸塩系ガラス等の低融点ガラス材料を用いることができる。また、このガラス7は、母基板1を形成するガラスセラミック焼結体のガラス成分であってもよい。この場合には、上記のように母基板1から未焼結のセラミック粒子層5a内に入り込むガラス7によってセラミック粒子6同士の間、およびセラミック粒子6と母基板1との間の接合を向上させる効果をより有効に得ることができる。
【0081】
このように未焼結のセラミック粒子層5aがガラス7を含む場合には、未焼結のセラミック粒子層5aにおけるセラミック粒子6の含有量を、例えばダイシングブレードBの表面に十分に新たな砥粒Dを露出させるために75〜95質量%程度としておくことが好ましい

【0082】
なお、このようなガラス7が存在している場合でも、ガラス7の硬度がセラミック粒子6に比べて低く、ダイシング時にセラミック粒子6よりも容易に切削されて脱落するため、セラミック粒子6によるダイシングブレードBに対する自生発刃の効果が妨げられる可能性は小さい。
【0083】
また、例えば図6に平面図で示すように、この多数個取り配線基板(構成A)9aは、母基板1の外周に配線基板領域2を囲むように前述したダミー領域4が設けられているとともに、配線基板領域2の境界2bをダミー領域4に延長にした延長線2c上に未焼結のセラミック粒子層5aが、配線基板領域2の境界2bにおける幅よりも広い幅で被着されている場合には、より容易かつ確実に、ダイシングブレードBの幅に比べて十分に広い幅の未焼結のセラミック粒子層5aを母基板1に被着させることができる。なお、図6は本発明の多数個取り配線基板(構成A)9aの実施の形態の他の例を示す平面図である。図6において図1と同様の部位には同様の符号を付している。
【0084】
そして、ダミー領域4を配線基板領域2の境界2bの延長線2cに沿ってダイシングブレードBで切削することにより、ダイシングブレードBの幅いっぱいに、より効果的に新たな砥粒Dの露出を促進することができる。従って、この場合には、より効果的にチッピング等の発生を抑制することが可能で、切断の作業性をより良好とすることが可能な多数個取り配線基板(構成A)9aを提供することができる。
【0085】
なお、配線基板領域2の境界2bをダミー領域4に延長した延長線2c上に未焼結のセラミック粒子層5aを、配線基板領域2の境界2bにおける幅よりも広くして被着させる場合、その幅は、前述したような効果を得る上では広いほど好ましい。
【0086】
また、このような構成は、例えば、分割された個片の配線基板に不要な未焼結のセラミック粒子層5aが残留することをより確実に抑制するために配線基板領域2同士の境界2bにおける未焼結のセラミック粒子層5aの幅をダイシングブレードBよりもわずかに狭くしておくような場合に、特に有効である。すなわち、このような場合には、配線基板領域2の境界2b部分のみの切削では、ダイシングブレードBの幅方向の両外縁部分(符号なし)において、未焼結のセラミック粒子層5aを切削することによる新たな砥粒Dの露出の促進が難しくなる。これに対し、ダミー領域4に広い幅で未焼結のセラミック粒子層5aを被着させておくと、ダイシングブレードBの幅方向の両外縁部分も、いわゆるエッジ部分も含めて、ダミー領域4において未焼結のセラミック粒子層5aによる砥粒Dの露出を促進することができるようになる。そのため、ダイシングブレードBの幅いっぱいに、より効果的に新たな砥粒Dの露出を促進することができる。
【0087】
この場合、配線基板領域2とダミー領域4との境界に被着された未焼結のセラミック粒子層5aについて、ダミー領域4側に幅を広げるようにしてもよい。このような構成にしておくと、四角形状の母基板1の一つの辺において配線基板領域2とダミー領域4との境界を切削する際に、ダイシングブレードBの幅方向の一方の外縁部分で新たな砥粒Dの露出を促進することができ、これと向かい合う他の辺においてはダイシングブレードBの他方の外縁部分で新たな砥粒Dの露出を促進することができる。そのため、ダイシングブレードBの両外縁部分において、より効果的に新たな砥粒Dの露出を促進することができる。
【0088】
また、前述のように(幅を広くして)ダミー領域4に未焼結のセラミック粒子層5aを被着させる場合には、例えば図7に拡大断面図として示すように、その未焼結のセラミック粒子層5aの厚みが幅方向の両端部において中央部よりも厚くなるようにして被着させ
てもよい。なお、図7は、図6に示す多数個取り配線基板(構成A)9aのB−B線における断面の一例を拡大して示す要部拡大断面図である。図7において図1および図6と同様の部位には同様の符号を付している。また、図7では、未焼結のセラミック粒子層5aの厚さ(未焼結のセラミック粒子層5aの厚さの幅に対する比率)を実際よりも大きくして示している。
【0089】
このような構成は、配線基板領域2同士の境界2bに比べて相対的に短いダミー領域4(配線基板領域2の境界2bの延長線2c)に被着された未焼結のセラミック粒子層5aにおいて、ダイシングブレードBの幅方向の両外縁部分における新たな砥粒Dの露出をより効果的に促進する上で有効である。すなわち、この場合には、ダミー領域4においては、主にダイシングブレードBの幅方向の両外縁部分が未焼結のセラミック粒子層5aと接することになるので、その両外縁部分において新たな砥粒Dの露出を効果的に促進することができる。
【0090】
ダミー領域4における未焼結のセラミック粒子層5aについて、その厚みが幅方向の両端部において中央部よりも厚くなるようにして被着させるには、例えば、まずセラミック粒子6を含む未焼結のセラミック粒子層5aのセラミックペーストを未焼結のセラミック粒子層5aの所定の幅に、中央部における厚みに相当する厚みで塗布後、乾燥させ、幅方向の両端部にそのセラミックペーストを追加して塗布するようにすればよい。
【0091】
なお、ダミー領域4における未焼結のセラミック粒子層5aは、図6に示す例に限らず、例えば、母基板1の外側面にまで延長して被着されたものや、ダミー領域4の全面を覆うようなものでもよい。ダミー領域4の全面を覆うように未焼結のセラミック粒子層5aを被着させる場合には、例えば図8に要部を拡大して示すように、ダミー領域4の外縁において、配線基板領域2の境界2bの延長線2c上または延長線2cを挟む部分に未焼結のセラミック粒子層5aが被着されない部分Cを設けて、ダイシングブレードBの位置決め用のマークとして利用するようにしてもよい。この、未焼結のセラミック粒子層5aが被着されない部分Cは、例えば長方形状等の四角形状や三角形状等、位置決め用のマークとして使用できるような形状であればよい。なお、図8は本発明の多数個取り配線基板(構成A)9aの実施の形態の他の例を示す要部拡大平面図である。図8において図1および図6と同様の部位には同様の符号を付している。
【0092】
この場合、前述した着色材の添加等の手段で未焼結のセラミック粒子層5aの色調を母基板1の色調と異ならせておけば、未焼結のセラミック粒子層5aが被着されない部分Cの画像認識等による認識をより容易に行なうことができる。
【0093】
なお、配線基板領域2の個片への分割は、配線基板領域2に電子部品を搭載した後で行なってもよい。配線基板領域2に電子部品を搭載した後にダイシング加工を行なうときに、特に電子部品がMEMS素子や弾性表面波素子のように機械的な動きをする機構を有するものの場合には、ダイシングに伴う切削屑が電子部品に付着すると、その機械的な動きが妨げられて誤作動する可能性が大きくなる。そのため、この場合には、まず蓋体や封止樹脂等の封止手段(図示せず)で電子部品を封止してから、母基板1にダイシング加工を施すことが好ましい。
【0094】
個片の配線基板に電子部品が搭載されてなる電子装置は、コンピュータや携帯電話,デジタルカメラ,加速度や圧力等の各種センサ等の種々の電子機器において部品として使用される。電子装置と電子機器(電子機器を構成する回路基板等)との電気的な接続は、例えば配線導体3のうち配線基板(配線基板領域2)の下面に露出する部位を、はんだや導電性接着剤等の導電性接合材を介して接合することにより行なわせることができる。
【0095】
(構成Bの多数個取り配線基板)
次に、本発明の多数個取り配線基板(構成B)について、説明する。なお、多数個取り配線基板(構成B)は、上記の多数個取り配線基板(構成A)に対して、未焼結のセラミック粒子層が絶縁層の層間に被着されている点において異なり、他の点においては同様である。以下の説明では、上記多数個取り配線基板(構成A)9aと同様の点については詳しい説明を省略する。
【0096】
図9(a)は、本発明の多数個取り配線基板(構成B)の実施の形態の一例を示す平面図であり、図9(b)は、図9(a)のC−C線における断面図である。図9において図1と同様の部位には同様の符号を付している。母基板1に複数の配線基板領域2が縦横の並びに配列されて多数個取り配線基板(構成B)9bが基本的に形成されている。
【0097】
この多数個取り配線基板(構成B)9bにおいて、母基板1は、ガラスセラミック焼結体からなる複数の絶縁層1aが積層されて形成されている。絶縁層1aを形成するガラスセラミック焼結体としては、前述した多数個取り配線基板(構成A)9aの母基板1を形成するのと同様のガラスセラミック焼結体を用いることができる。
【0098】
このような母基板1は、前述した多数個取り配線基板(構成A)9aの場合と同様に、複数のガラスセラミックグリーンシートを積層した後、約900〜1000℃程度の焼成温度で
焼成することによって製作することができる。この場合、複数のセラミックグリーンシートがそれぞれ絶縁層1aになる。
【0099】
この多数個取り配線基板(構成B)9bにおいても、前述した多数個取り配線基板(構成A)9aと同様に、例えば配線基板領域2の上面に凹部2aが設けられ、凹部2aの底面に搭載される電子部品を外部の電気回路に接続するための導電路等として機能する配線導体3が形成されている。なお、この配線導体3も、前述した多数個取り配線基板(構成A)9aの場合と同様の材料を用い、同様の方法で形成することができる。
【0100】
図9に示す多数個取り配線基板(構成B)9bの例においても、母基板1の外周にダミー領域4が設けられており、配線基板領域2の境界2b(配線基板領域2同士の境界および配線基板領域2とダミー領域4との境界)において、上記の多数個取り配線基板(構成A)9aの場合と同様のダイシングブレードを用い、同様の条件でダイシング加工を施して切断することによって個片の配線基板(図示せず)に分割される。
【0101】
そして、図9および図10に示すように、この多数個取り配線基板(構成B)9bは、絶縁層1aの層間のうち配線基板領域2の境界2bに位置する部位に未焼結のセラミック粒子層5bが被着している。なお、図10は、図9に示す多数個取り配線基板(構成B)9bの要部を拡大して模式的に示す断面図である。図10において図9と同様の部位には同様の符号を付している。
【0102】
このような多数個取り配線基板(構成B)9bによれば、絶縁層1aの層間のうち配線基板領域2の境界2bに位置する部位に、未焼結のセラミック粒子層5bが被着していることから、上記多数個取り配線基板(構成A)9aの場合と同様に、ダイシング加工に用いられるダイシングブレードに対して自生発刃が促進される。すなわち、ダイシングブレードのダイヤモンド等の砥粒に対して、絶縁層1aの層間に存在する未焼結のセラミック粒子層5bを形成する未焼結のセラミック粒子6が一定の力で押し付けられるように接触し、ダイシングブレードの表面に露出している磨耗した砥粒の脱落が促進され、結合材の内部に結合されていた砥粒が新たにダイシングブレードの表面に露出するようになる。
【0103】
そして、未焼結のセラミック粒子6がダイシングブレードからの砥粒の脱落とともに母
基板1から脱落し、ダイシングブレードの表面(切削面)に新たに露出した砥粒により母基板1の切削が行なわれるため、母基板1およびダイシングブレードに大きな負荷を掛けることなく切削加工を安定して施すことができる。
【0104】
また、母基板1のうち未焼結のセラミック粒子層5bと接している界面およびその付近では、焼結しない(つまり焼成収縮が生じない)セラミック粒子層5bの拘束の作用によって焼成時の収縮が抑制され、これに応じて内部に空隙Vが生じやすい。そのため、母基板1のうちダイシング加工される部分を切削しやすくする効果も得ることができる。
【0105】
さらに、未焼結のセラミック粒子層5bが絶縁層1aの層間に被着していることから、多数個取り配線基板(構成B)9bの搬送や電子部品の実装等の取り扱い時に未焼結のセラミック粒子層5bが剥がれて脱落することが防止され、ダイシングブレードに対する自生発刃の効果をより確実に得ることができる。この場合、未焼結のセラミック粒子層5bを構成するセラミック粒子6は、ファンデルワールス力による結合や水素結合等の分子間力による結合に加えて、上下の絶縁層1aの間に保持されて母基板1に結合しているため、誤って上記取り扱いの作業者や装置等と接触することが防止される。
【0106】
したがって、この多数個取り配線基板(構成B)9bにおいても、配線基板領域2の境界2bにおいて母基板1をダイシング加工により、チッピング等の発生を抑制しながら、作業性を良好として切断することが可能な多数個取り配線基板(構成B)9bを提供することができる。
【0107】
絶縁層1aの層間に被着した未焼結のセラミック粒子層5bを構成するセラミック粒子6としては、上記の多数個取り配線基板(構成A)9aにおける未焼結のセラミック粒子層5aの場合と同様のセラミック粒子6、例えば、酸化アルミニウム質焼結体や酸化ケイ素質焼結体、窒化ホウ素質焼結体,窒化ケイ素質焼結体,炭化ケイ素質焼結体等の材料を用いた、不定形の破片状のものや、球状や表面の一部に凹凸を有する球状の粒子等を挙げることができる。
【0108】
このような絶縁層1aの層間に被着したセラミック粒子6からなる未焼結のセラミック粒子層5bも、前述した未焼結のセラミック粒子層5aの場合と同様に、例えば、酸化ケイ素の粉末等のセラミック粉末,有機溶剤およびバインダをともに混錬してペースト状としたセラミックペーストを、母基板1のうち配線基板領域2の境界2b上にスクリーン印刷やロールコート等の方法で塗布し、その後、このセラミックペーストの上に他のガラスセラミックグリーンシートを積層した後に約900〜1000℃程度の焼成温度でガラスセラミ
ックグリーンシートと同時焼成することにより形成することができる。酸化ケイ素の粉末としては、例えば平均粒径が約10〜100μmの球状や表面に凹凸を有する球状のもの等を
用いることができる。
【0109】
未焼結のセラミック粒子層5bの厚さは、上下の絶縁層1aの間の密着性や多数個取り配線基板(構成B)9bの生産性等を考慮すれば、約50μm以下であることが好ましい。すなわち、未焼結のセラミック粒子層5bが厚過ぎる場合には、未焼結のセラミック粒子層5bが上下の絶縁層1a間の密着性を低下させる可能性がある。また、未焼結のセラミック粒子層5bとなるセラミックペーストについて、厚いために塗布が難しくなることや、塗布した後の混合物の焼成前における自重による変形が発生しやすくなること等の不具合を生じやすくなる。
【0110】
なお、絶縁層1aの層間に被着した未焼結のセラミック粒子層5bは、上下の絶縁層1aの間の密着性を重視する場合であれば、幅方向の中央部分から端部分にかけて次第に厚みが薄くなるようにしておいて、この絶縁層1a間の密着をより容易とするようにしても
よい。
【0111】
また、未焼結のセラミック粒子層5bの幅は、前述したセラミック粒子層5aの場合と同様の幅に設定すればよい。
【0112】
なお、この多数個取り配線基板(構成B)9bにおいても、前述した多数個取り配線基板(構成A)9aの場合と同様に、母基板1がガラスセラミック焼結体からなり、比較的低い温度で焼成が可能であるため低電気抵抗の金属材料によって配線導体3を形成して電気抵抗を低く抑えることや、そのガラスセラミック焼結体からなる絶縁層1aが積層されてなる母基板1に対して大きな負荷を掛けることなく切削を施すことができ、チッピング等の不具合が発生することを効果的に抑制することができること等の効果を得ることができる。
【0113】
(多数個取り配線基板の製造方法A)
次に、本発明の多数個取り配線基板の製造方法(A)について、図11を参照しつつ説明する。図11(a)および(b)は、それぞれ本発明の多数個取り配線基板の製造方法(A)を工程順に示す平面図である。図11において図1と同様の部位には同様の符号を付している。
【0114】
まず、図11(a)に示すようにガラスセラミックグリーンシート11a,11bを準備するとともに、これらのガラスセラミックグリーンシート11a,11bに複数の配線基板領域2を縦横の並びに配列する。
【0115】
ガラスセラミックグリーンシート11a,11bは、製作しようとする多数個取り配線基板(例えば図1に示す多数個取り配線基板9)の母基板1の材料に応じて、適宜組成を選定して、前述した方法と同様の方法で作製すればよい。すなわち、例えば、母基板1がホウケイ酸系のガラスセラミック焼結体からなる場合であれば、まず、二酸化ケイ素を含むホウケイ酸系ガラス等のガラス粉末と酸化アルミニウム、酸化マグネシウム等のセラミック粉末とを主成分とする原料粉末を、有機溶剤,バインダと混練するとともにドクターブレードやリップコータ法等の成形方法でシート状に成形してガラスセラミックグリーンシート11a,11bを作製し、その後、製作しようとする多数個取り配線基板9の配線基板領域2の形状および寸法に応じた仮想線Kで配線基板領域2を配列すれば、複数の配線基板領域2が縦横の並びに配列されたガラスセラミックグリーンシート11a,11bを作製することができる。
【0116】
なお、図11(a)に示す例では、2層のセラミックグリーンシート11a,11bを準備し、その一方のセラミックグリーンシート11aについては、銅や銀等の金属ペースト12を仮想線Kで囲まれた範囲、つまり配線基板領域2のそれぞれに、所定の配線導体3のパターンにスクリーン印刷法等の印刷法で金属ペースト12を印刷している。また、他方のセラミックグリーンシート11bは配線基板領域2のそれぞれの中央部を厚み方向に打ち抜いて枠状に成形している。これらのセラミックグリーンシート11a,11bについて、一方のセラミックグリーンシート11aの上に他方のセラミックグリーンシート11bを、それぞれの配線基板領域2同士が上下に対応するように積層すれば、例えば図11(b)に示すような、上面に凹部2aを有する積層体(符号なし)を作製することができる。
【0117】
次に、図11(b)に示すように、ガラスセラミックグリーンシート11a,11bの表面のうち配線基板領域2の境界2b上に位置する部位に、ガラスセラミックグリーンシート11a,11bが焼結する温度では焼結しないセラミック粒子(図11では図示せず)を含むセラミックペースト13を層状に塗布する。
【0118】
図11に示す例では、平板状の一方のセラミックグリーンシート11aの上に、配線基板領域2の並びに対応した複数の枠状の部分を有する他方のセラミックグリーンシート11bを積層しているため、この上側のセラミックグリーンシート11bの上面にセラミックペースト13aを塗布している。また、配線基板領域2の境界2bをダミー領域4に延長した延長線2c上に位置する部位にも、セラミックペースト13aを塗布している。
【0119】
このようなセラミックペースト13aは、例えば酸化アルミニウムや酸化ケイ素等のセラミック粉末に有機溶剤,バインダを添加して混練することによって作製することができる。また、セラミックペースト13aの塗布は、スクリーン印刷法等の印刷法によって行なうことができる。
【0120】
そして、ガラスセラミックグリーンシート11a,11bおよびセラミックぺースト13aを、例えば還元雰囲気の電気炉を用いて約950〜1000℃の温度で加熱して、ガラスセラミッ
クグリーンシート11a,11bを焼結させてガラスセラミック焼結体からなる母基板1とするとともに、この母基板1の表面のうち配線基板領域2の境界2bおよび延長線2c上に位置する部位に未焼結のセラミック粒子層5aを被着させれば、図1に示すような多数個取り配線基板(構成A)9aを製造することができる。
【0121】
本発明の多数個取り配線基板の製造方法(A)によれば、上記各工程を備えることから、チッピング等の発生を抑制しながら、作業性を良好として切断することが可能な多数個取り配線基板(構成A)9aを製作することができる。
【0122】
すなわち、ガラスセラミックグリーンシート11a,11bの表面のうち配線基板領域2の境界2b上に位置する部位に、このガラスセラミックグリーンシート11a,11bが焼結する温度では焼結しないセラミック粒子を含むセラミックペースト13aを層状に塗布した後に加熱して、ガラスセラミック焼結体からなる母基板1に、この母基板1の表面のうち配線基板領域2の境界2b上に位置する部位に未焼結のセラミック粒子層5aを被着させることから、ダイシング加工が行なわれる部位に、ダイシングブレードBの自生発刃を促進する未焼結のセラミック粒子層5aが被着された多数個取り配線基板(構成A)9aを製作することができる。
【0123】
したがって、この多数個取り配線基板(構成A)9aをダイシングブレードBを用いて個片に分割する際に、ダイシングブレードBにおける自生発刃が促進されるため、チッピング等の発生を抑制しながら、作業性を良好として切断することが可能な多数個取り配線基板(構成A)9aの製造方法を提供することができる。
【0124】
なお、このような製造方法で製作した多数個取り配線基板(構成A)9aにおいては、例えば、図4に示したように未焼結のセラミック粒子層5aに接する母基板1の表面部分に空隙Vが生じやすい。空隙Vは、セラミックグリーンシート11a,11bが焼結する際に収縮しようとするのに対して、未焼結のセラミック粒子層5a(セラミックペースト13a)は収縮しないため、セラミックグリーンシート11a,11b(特に上側のセラミックグリーンシート11b)のセラミックペースト13a(未焼結のセラミック粒子層5a)との境界面が拘束されることによって生じる。このような空隙Vが生じていると、母基板1のうちダイシング加工される部分を切削しやすくする効果も得ることができるため、ダイシング加工時のチッピングを効果的に抑制する効果を高めることができる。
【0125】
(多数個取り配線基板の製造方法B)
次に、本発明の多数個取り配線基板の製造方法(B)について、図12を参照しつつ説明する。図12(a)および(b)は、それぞれ本発明の多数個取り配線基板の製造方法(B)を工程順に示す平面図である。図12において図9および図11と同様の部位には同様の符
号を付している。なお、以下の説明において、前述した多数個取り配線基板の製造方法(A)と同様の部分については詳しい説明は省略する。
【0126】
まず、図12(a)に示すように複数のガラスセラミックグリーンシート11a,11bを準備するとともに、これらのガラスセラミックグリーンシート11a,11bに複数の配線基板領域2を縦横の並びに配列する。これらのガラスセラミックグリーンシート11a,11bは、前述した多数個取り配線基板の製造方法(A)の場合と同様の材料を用い、同様の方法で準備することができる。
【0127】
なお、図12(a)に示す例においても、2層のセラミックグリーンシート11a,11bを準備し、その一方のセラミックグリーンシート11aについては、銅や銀等の金属ペースト12を配線基板領域2の境界2bに相当する仮想線Kで囲まれた範囲のそれぞれに所定パターンに金属ペースト12を印刷している。また、他方のセラミックグリーンシート11bは配線基板領域2のそれぞれの中央部を厚み方向に打ち抜いて枠状に成形している。
【0128】
次に、例えば図12(a)に示すように、一部のガラスセラミックグリーンシート11a(金属ペースト12を印刷したもの)の表面のうち配線基板領域2の境界2b(仮想線K)上に位置する部位に、ガラスセラミックグリーンシートが焼結する温度では焼結しないセラミック粒子(図12では図示せず)を含むセラミックペースト13bを層状に塗布する。
【0129】
このようなセラミックペースト13bも、前述したセラミックペースト13aと同様の材料および方法で作製することができ、スクリーン印刷法等の印刷法によって塗布することができる。
【0130】
次に、図12(b)に示すように、複数のガラスセラミックグリーンシート11a,11bを、セラミックペースト13bがガラスセラミックグリーンシート11a,11b同士の間に介在するように積層して積層体(符号なし)を形成する。
【0131】
図12に示す例においても、一方のセラミックグリーンシート11aの上に枠状の他方のセラミックグリーンシート11bを、それぞれの配線基板領域2同士が上下に対応するように積層して、上面に凹部2aを有する積層体を作製している。
【0132】
そして、ガラスセラミックグリーンシート11a,11bおよびセラミックぺースト13bを、例えば還元雰囲気の電気炉を用いて約950〜1000℃の温度で加熱すれば、例えば図9に
示すような多数個取り配線基板9bを製作することができる。すなわち、この加熱によって、ガラスセラミックグリーンシート11a,11bを焼結させてガラスセラミック焼結体からなる複数(2層)の絶縁層1aが積層されてなる母基板1とするとともに、絶縁層1aの層間のうち配線基板領域2の境界2bに位置する部位に、未焼結のセラミック粒子層5bを被着させる。
【0133】
本発明の多数個取り配線基板の製造方法(B)によれば、上記各工程を備えることから、チッピング等の発生を抑制しながら、作業性を良好として切断することが可能な多数個取り配線基板(構成B)9bを製作することができる。
【0134】
すなわち、2層のガラスセラミックグリーンシート11a,11bの層間のうち配線基板領域2の境界2bに位置する部位に、このガラスセラミックグリーンシート11a,11bが焼結する温度では焼結しないセラミック粒子を含むセラミックペースト13bを層状に介在させた後に加熱して、ガラスセラミック焼結体からなる複数の絶縁層1aの層間のうち配線基板領域2の境界2bに位置する部位に未焼結のセラミック粒子層5bを被着させることから、ダイシング加工が行なわれる部位に、ダイシングブレードの自生発刃を促進する未
焼結のセラミック粒子層5bが被着された多数個取り配線基板(構成B)9bを製作することができる。
【0135】
したがって、この多数個取り配線基板(構成B)9bをダイシングブレードを用いて個片に分割する際に、ダイシングブレードにおける自生発刃が促進されるため、チッピング等の発生を抑制しながら、作業性を良好として切断することが可能な多数個取り配線基板(構成B)9bの製造方法を提供することができる。
【0136】
なお、このような製造方法で製作した多数個取り配線基板(構成B)9bにおいても、例えば、図9に示したように未焼結のセラミック粒子層5bに接する絶縁層1aの表面(母基板1の内部)に空隙Vが生じやすい。空隙Vは、セラミックグリーンシート11a,11bが焼結する際に収縮しようとするのに対して、未焼結のセラミック粒子層5b(セラミックペースト13b)は収縮しないため、セラミックグリーンシート11a,11bのセラミックペースト13b(未焼結のセラミック粒子層5b)との境界面が拘束されることによって生じる。このような空隙Vが生じていると、母基板1のうちダイシング加工される部分を切削しやすくする効果も得ることができるため、ダイシング加工時のチッピングを効果的に抑制する効果を高めることができる。
【実施例】
【0137】
厚さが1mm、外形寸法が50×50mmの正方形平板状の母基板をガラスセラミック焼結体により作製した。この母基板の中央部に、1辺の長さが2.5×3.5mmの長方形状の配線基板領域を16×13個の縦横の並びに配列し、外周部(配線基板領域の並びの外側)にダミー領域を設けて多数個取り配線基板とした。
【0138】
ガラスセラミック焼結体からなる母基板は、二酸化ケイ素を含むホウケイ酸系ガラス約5質量%および酸化アルミニウム約90質量%を主成分とし、酸化マグネシウム,酸化カルシウム等の助剤を添加して作製した原料粉末を有機溶剤,バインダとともにドクターブレード法でシート状に成形して複数のガラスセラミックグリーンシートを作製し、これを積層(5層)した後、約1000℃で焼成することにより製作した。
【0139】
母基板には、配線基板領域の上面の中央部に電子部品の搭載部を設け、搭載部から母基板の内部を通り下面にかけて、銀のメタライズ層からなる配線導体を形成した。銀のメタライズ層は、銀粉末を有機溶剤,バインダとともに混練して作製した銀の金属ペーストを、ガラスセラミックグリーンシートの表面およびガラスセラミックグリーンシートにあらかじめ形成しておいた貫通孔の内部にスクリーン印刷法で塗布,充填することにより形成した。ガラスセラミックグリーンシートの貫通孔は、金属ピンをガラスセラミックグリーンシートの厚み方向に貫通させて打ち抜く、機械的な孔開け加工により行なった。
【0140】
この母基板について、配線基板領域の境界(配線基板領域同士の境界および配線基板領域とダミー領域との境界)上に位置する部位に、酸化アルミニウムの粒子を主成分とする未焼結のセラミック粒子層を被着させて実施例の多数個取り配線基板を製作した。
【0141】
未焼結のセラミック粒子層はホウケイ酸系ガラスを用いて母基板に被着させた。未焼結のセラミック粒子としては熱的に安定なα-アルミナを用い、平均粒径が5〜10μmの粒
状のものを90質量%の割合で含むセラミックペーストを用いた。このセラミックペーストに上記のガラスとしての酸化ケイ素粉末を添加して混練し、ペースト状としたものを配線基板領域の境界にスクリーン印刷法で塗布した。
【0142】
また、比較例として、前述のようにして作製した母基板に未焼結のセラミック粒子層を被着させない多数個取り配線基板を作製した。
【0143】
これらの実施例および比較例の多数個取り配線基板について、ダイシング加工装置のステージ上にセットし、画像認識装置で配線基板領域の境界を認識させながらダイシング加工を施した。画像認識装置による配線基板領域の境界の位置の認識は、ダミー領域に、配線基板領域の延長線を挟むように一対の長方形状の位置決め用のマークを形成しておいて、その一対のマークの間を配線基板領域の境界として認識させることにより行なった。位置決め用のマークは、配線導体を形成するのと同様の金属ペーストを、配線導体用の金属ペーストの印刷と同時に(同じ版面に両方の印刷パターンを設けておいて)セラミックグリーンシートに印刷することにより形成した。
【0144】
ダイシング加工は、ダイヤモンドからなる砥粒をガラスで結合したダイシングブレード(幅100μm)を約5000回転/分の回転速度で回転させて母基板を切削することにより行
ない、母基板を配線基板領域の境界において分割して個片の配線基板を作製した。そして、個片の配線基板について、チッピングおよびクラックの有無を外観の観察(倍率20倍)により確認した。
【0145】
その結果、本発明の多数個取り配線基板の実施例においては、個片の配線基板において不良品となるようなチッピングおよびクラックが発生しなかったのに対し、比較例では約5%の個片の配線基板においてチッピングが発生していた。これにより、本発明の多数個取り配線基板は、配線基板領域の境界において母基板をダイシング加工により、チッピング等の不具合の発生を抑制しながら切断することが可能であることが確認できた。
【符号の説明】
【0146】
1・・・母基板
2・・・配線基板領域
2a・・凹部
2b・・配線基板領域の境界
2c・・境界の延長線
3・・・配線導体
4・・・ダミー領域
5a,5b・・未焼結のセラミック粒子層
6・・・セラミック粒子
7・・・ガラス
9a,9b・・多数個取り配線基板
11a,11b・・ガラスセラミックグリーンシート
12・・・金属ペースト
13a,13b・・セラミックペースト
B・・・ダイシングブレード
D・・・砥粒
C・・・未焼結のセラミック粒子層が被着されない部分
V・・・空隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスセラミック焼結体からなる母基板に複数の配線基板領域が縦横の並びに配列形成されてなり、前記配線基板領域の境界においてダイシング加工によって分割される多数個取り配線基板であって、前記母基板の表面のうち前記配線基板領域の境界上に位置する部位に、未焼結のセラミック粒子層が被着していることを特徴とする多数個取り配線基板。
【請求項2】
前記未焼結のセラミック粒子層は、ガラスを介して被着していることを特徴とする請求項1に記載の多数個取り配線基板。
【請求項3】
前記母基板の外周に前記配線基板領域を囲むようにダミー領域が設けられているとともに、前記母基板の表面のうち前記配線基板領域の境界を前記ダミー領域に延長した延長線上に位置する部位に、前記未焼結のセラミック粒子層が、前記配線基板領域の境界上に位置する部位における幅よりも広い幅で被着していることを特徴とする請求項1に記載の多数個取り配線基板。
【請求項4】
ガラスセラミック焼結体からなる複数の絶縁層が積層されてなる母基板に複数の配線基板領域が縦横の並びに配列形成されてなり、前記配線基板領域の境界においてダイシング加工によって分割される多数個取り配線基板であって、前記絶縁層の層間のうち前記配線基板領域の境界に位置する部位に、未焼結のセラミック粒子層が被着していることを特徴とする多数個取り配線基板。
【請求項5】
ガラスセラミックグリーンシートを準備するとともに、該ガラスセラミックグリーンシートに複数の配線基板領域を縦横の並びに配列する工程と、
前記ガラスセラミックグリーンシートの表面のうち前記配線基板領域の境界上に位置する部位に、前記ガラスセラミックグリーンシートが焼結する温度では焼結しないセラミック粒子を含むセラミックペーストを層状に塗布する工程と、
前記ガラスセラミックグリーンシートおよび前記セラミックぺーストを加熱して、前記ガラスセラミックグリーンシートを焼結させてガラスセラミック焼結体からなる母基板とするとともに、該母基板の表面のうち前記配線基板領域の境界上に位置する部位に、未焼結のセラミック粒子層を被着させる工程と
を備えることを特徴とする多数個取り配線基板の製造方法。
【請求項6】
複数のガラスセラミックグリーンシートを準備するとともに、複数の該ガラスセラミックグリーンシートにそれぞれ複数の配線基板領域を縦横の並びに配列する工程と、
一部の前記ガラスセラミックグリーンシートの表面のうち前記配線基板領域の境界上に位置する部位に、前記ガラスセラミックグリーンシートが焼結する温度では焼結しないセラミック粒子を含むセラミックペーストを層状に塗布する工程と、
複数の前記ガラスセラミックグリーンシートを、前記セラミックペーストが前記ガラスセラミックグリーンシート同士の間に介在するように積層して積層体を形成する工程と、
該積層体を加熱して、前記ガラスセラミックグリーンシートを焼結させてガラスセラミック焼結体からなる絶縁層とするとともに、該絶縁層の層間のうち前記配線基板領域の境界に位置する部位に、未焼結のセラミック粒子層を被着させる工程と
を備えることを特徴とする多数個取り配線基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−176254(P2011−176254A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97885(P2010−97885)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】