説明

多条農用作業機

【課題】従来より、複数の播種装置・施肥装置等を並設した多条農用作業機では、各条毎に圃場面の凹凸に追従して播種装置を揺動させていたため、各播種装置毎に鎮圧ローラ等による駆動機構が設けられていた。このため、該鎮圧ローラのスリップ等によって各播種装置毎に播種装置の駆動速度が異なる場合があり、播種精度が低下し、圃場全体における作物の収量・品質が悪化する、という問題があった。
【解決手段】播種装置8に動力を伝達する単一の駆動軸35を設け、該駆動軸35を軸支する第一ボス部材60と、播種装置8への入力軸48を軸支する第二ボス部材62とは、播種装置8の揺動に応じて伸縮可能な伸縮リンク機構53を介して連結すると共に、該伸縮リンク機構53は、複数の伝動ケース63・64を連設して構成し、該伝動ケース63・64に沿って駆動軸35から入力軸48までの動力伝達経路55を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各条毎に圃場面に追従して揺動する播種装置を並設した多条農用作業機に関し、特に、播種精度に優れた播種装置の駆動構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数の播種装置・施肥装置を並設して成る施肥播種機のように同時に複数条に渡って作業を行う多条農用作業機を用い、穀物、大豆、野菜等の種子を圃場に直接播種する際、各条毎に圃場面の凹凸に追従して播種装置を揺動させる技術(例えば、特許文献1参照)が公知となっている。該技術によると、圃場面から播種繰出部までの高さ(以下、「播種高さ」とする)を常に略一定に設定し、作業中における播種間隔や播種深さといった播種位置のばらつきを抑え、播種精度を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−298028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そして、前記技術では、各播種装置毎に駆動機構が設けられており、例えば、各播種装置に設けた鎮圧ローラを利用し、該鎮圧ローラの作業中の回転動力をチェーン伝動を介して播種装置に伝達し、該播種装置をそれぞれ単独に駆動する駆動機構(以下、「単独駆動機構」とする)が設けられている。
【0005】
このような単独駆動機構によると、作業速度の変化に追従して各播種装置を駆動できるものの、該各播種装置毎にローラ表面や圃場面の状況等が異なるため、スリップ等によって鎮圧ローラの回転速度に差が生じ、条間で駆動速度が大きく異なる場合がある。すると、作業中に前記播種間隔が条間で大きくばらついて播種精度が低下し、圃場全体における作物の収量・品質が悪化する、という問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
すなわち、請求項1においては、各条毎に圃場面に追従して揺動する播種装置を並設した多条農用作業機において、前記播種装置に動力を伝達する単一の駆動軸を設け、該駆動軸を軸支する第一支持部と、前記播種装置への入力軸を軸支する第二支持部との間は、播種装置の揺動に応じて伸縮可能な伸縮リンク機構を介して連結すると共に、該伸縮リンク機構は、複数のリンクアームを連設して構成し、該リンクアームに沿って、前記駆動軸から入力軸までの動力伝達経路を設けたものである。
請求項2においては、前記伸縮リンク機構は、二つのリンクアームの端部間を連結する中間軸を中心に中折れして伸縮可能な中折れリンクである。
請求項3においては、前記動力伝達経路は、前記駆動軸・中間軸・入力軸にそれぞれ固設される駆動スプロケット・中間スプロケット・入力スプロケット、前記駆動スプロケットと中間スプロケットとの間に巻回される第一チェーン、及び中間スプロケットと入力スプロケットとの間に巻回される第二チェーンにより構成するものである。
請求項4においては、前記駆動軸は、走行に伴う接地輪からの回転動力によって駆動するものである。
請求項5においては、前記駆動軸は、電動モータの回転動力によって駆動するものである。
請求項6においては、前記播種装置には、施肥装置、薬剤散布装置の少なくとも一方を併設装置として設けると共に、該併設装置には、前記駆動軸からの動力を伝達するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、以上のように構成したので、以下に示す効果を奏する。
すなわち、請求項1により、全ての条の播種装置を共通の駆動軸からの回転動力によって同期駆動させることができ、作業中の播種間隔が条間で大きくばらつくことがなく、播種精度が高くなり、圃場全体における作物の収量・品質が向上する。しかも、前述のような伸縮リンク機構を介するだけで、播種装置の揺動運動を阻害することなく動力伝達経路を確保することができ、同期駆動のための複雑な伝達機構や制御機構を設ける必要がなく、部品コストの低減やメンテナンス性の向上を図ることができる。
請求項2により、前記伸縮リンク機構を単純な中折れリンクによって構成することができ、更なる部品コストの低減やメンテナンス性の向上を図ることができる。
請求項3により、前記動力伝達経路をチェーン伝動によって構成することができ、駆動軸の回転動力が入力軸に確実に伝達され、播種精度が一層高くなり、作物の収量・品質が更に向上する。
請求項4により、鎮圧ローラよりも高い接地性を有する接地輪により、スリップ等の発生自体を抑えることができ、各条における播種間隔のばらつきも抑制し、播種精度が一層高くなり、作物の収量・品質が更に向上する。
請求項5により、前記播種装置への回転動力を迅速に制御することができ、圃場の状況等に応じて播種間隔を迅速に変更して適正化を図り、作物の収量・品質が更に向上する。しかも、接地輪を設ける場合よりも更に、圃場面とのスリップ等による動力変動の恐れがなく、安定した回転動力を駆動軸に伝達することができ、播種精度が一層高くなり、作物の収量・品質が更に向上する。
請求項6により、前記併設装置により播種以外の作業を並行して行うことができ、農作業の作業効率の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に関わる施肥播種機をトラクタの後部に装着した状態の全体構成を示す平面図である。
【図2】施肥播種ユニットの側面図である。
【図3】動力取出ユニットの側面一部断面図である。
【図4】施肥装置の施肥繰出部近傍の側面断面図である。
【図5】播種装置の播種繰出部近傍の側面断面図である。
【図6】伸縮リンク機構周辺の側面図である。
【図7】同じく平面一部断面図である。
【図8】平行リンクによる揺動に伴う伸縮状況を示す、伸縮リンク機構周辺の側面図である。
【図9】別形態の施肥播種機を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
なお、図1の矢印Fで示す方向を、本発明に関わる多条農用作業機である施肥播種機2の前進方向とし、以下で述べる各部材の位置や方向などは、この前進方向を基準とするものである。
【0010】
まず、該施肥播種機2をトラクタ後部のロータリ耕耘装置1に装着した場合の全体構成について、図1、図2により説明する。
該ロータリ耕耘装置1は、トラクタ後部に昇降自在に装着されると共に、前記ロータリ耕耘装置1には、左右にデプスホイール3・3を軸支するデプスフレーム4が横設されており、該デプスフレーム4に、前記施肥播種機2が装着される。
【0011】
前記ロータリ耕耘装置1は、図示せぬトラクタのPTO軸よりユニバーサルジョイント等を介して動力がギヤボックスに入力され、該ギヤボックスより、伝動軸、チェーンケースを介して、ロータリ耕耘装置1下部に横架した爪軸5に動力が伝達されて回転駆動される。該爪軸5には、直刀、なた爪又は溝掘爪等の爪6が目的に応じて複数装着される。
【0012】
このうちの直刀の回転により、施肥や播種のための溝を形成する部分を予め掘削し、また、なた爪の回転により、耕耘幅内の表土近くを砕いて耕耘して耕耘砕土層を形成し、さらに必要に応じて、溝掘爪の回転により、深く掘り起こして排水溝を掘削して水はけを良くしている。
【0013】
前記施肥播種機2において、前部上方には、前記デプスフレーム4に支持された施肥装置7が配置され、該施肥装置7よりも下方には、播種装置8、前述のように耕耘した圃場に溝を形成する作溝器9、及び覆土ディスク10が、上下揺動可能に配設されている。そして、前記作溝器9は、左右のディスク25a・25bから成るディスク対25によって構成されており、このうちの右のディスク25bの外側に前記施肥装置7からの肥料を供給し、前記ディスク対25の内側に前記播種装置8からの種子を供給するようにして、播種・施肥作業を行っている。更に、前記覆土ディスク10の後方には、転動可能に鎮圧ローラ11が配置されている。
【0014】
そして、これら施肥装置7、播種装置8、作溝器9、覆土ディスク10及び鎮圧ローラ11等から成るユニット( 以下、「施肥播種ユニット」とする)12は、いずれも1条単位で構成されており、本実施例では、左から順に、略等間隔で3個の施肥播種ユニット12L・12C・12Rが並設されている。このうち左半部に設けられた施肥播種ユニット12Lと施肥播種ニット12Cとの間には、前記施肥装置7と播種装置8を駆動するためのユニット(以下、「動力取出ユニット」とする)13が配置されている。
【0015】
次に、前記施肥播種機2の詳細構成について、図1乃至図3により説明する。
前記デプスフレーム4後部の左右略中央部には、高さ及び前後角度を調節可能とするヒッチユニット14が取り付けられ、該ヒッチユニット14の後部に、ツールバー15が横設され、該ツールバー15に、前述した3個の施肥播種ユニット12L・12C・12Rと動力取出ユニット13が取り付けられて、前記施肥播種機2が構成される。
【0016】
このうちの施肥播種ユニット12について、図1、図2により説明する。
なお、3個の施肥播種ユニット12L・12C・12Rは互いに略同一構造であるため、以下の説明では、左右中央の施肥播種ユニット12Cについてのみ説明し、他の施肥播種ユニット12L・12Rについての説明は省略する。
【0017】
施肥播種ユニット12Cでは、前記ツールバー15に係止具16が着脱可能に外嵌され、該係止具16の後部に、後で詳述するようにして、前記施肥装置7の施肥繰出部7bの前部が固定されている。
【0018】
該施肥繰出部7bの上部には、施肥ホッパ7aが設けられ、該施肥ホッパ7aの底部が前記施肥繰出部7bと連通する落下口には、板状のシャッタ17が設けられており、該シャッタ17を水平方向にスライドさせることにより、施肥作業終了時や施肥ホッパ7aを外して移動する時にはシャッタ17を閉じ、施肥作業中や余った肥料を排出する時にはシャッタ17を開けるようにしている。
【0019】
更に、前記施肥繰出部7bの下部は、蛇腹等で伸縮自在な中間パイプ7cを介して、ロート状の施肥パイプ7dの上部に連通され、該施肥パイプ7dの下部は、前記ディスク対25の右外側に配置されている。これにより、駆動中の施肥繰出部7bから送出された肥料を前記溝の外に落下させることができる。
【0020】
前記係止具16の下面には、後方に開いた平面視U字状の固定具18が外嵌固定され、該固定具18の両側面に、上下に並設された揺動アーム19・20の前部が、前高後低に回動可能に軸支される。そして、揺動アーム19・20の後部には、取付フレーム21の前フレーム21aが枢結されており、該前フレーム21aは、一対の揺動アーム19・20から成る平行リンク69によって、前記固定具18に対して揺動可能に連結されている。
【0021】
前記前フレーム21aには、前記覆土ディスク10を下端で支持する覆土ディスク支持アーム77の上端が固設されると共に、前記作溝器9におけるディスク対25の支軸78を下端で支持する作溝器支持アーム79の上端が、ボルト80により締結固定されている。そして、該ボルト80を緩めて作溝器支持アーム79を上下に摺動させた後、ボルト80を締め付けることにより、ディスク対25の高さを変更し、作溝器9による溝の深さを微調整できるようにしている。
【0022】
更に、前記前フレーム21aの下部より左右外方に、フレーム87が突設され、該フレーム87の左右側端からは、左右一対のアウタースクレーパ88・88が、前記ディスク対25に沿って後斜め下方に向かって延出され、該アウタースクレーパ88・88の下辺が、各ディスク25a・25bの外側面にアウタースクレーパ88・88自身の弾性によって押圧されている。これにより、ディスク対25の作溝作業中の回転を利用して、ディスク対25の外側面に固着する土、株、藁等を、アウタースクレーパ88・88の下辺により掻き落すようにしている。
【0023】
また、このような前フレーム21aの後方には、後フレーム21bが連設されており、該後フレーム21bの上部に、前記播種装置8の播種繰出部8bが固設されている。
【0024】
該播種繰出部8bの上部には、播種ホッパ8aが設けられ、該播種ホッパ8aの底部が前記播種繰出部8bと連通する落下口にも、前記施肥繰出部7bと同様な、開閉用の板状のシャッタ22が設けられている。
【0025】
更に、前記播種繰出部8bの下部は、播種パイプ8cの上部に連通され、該播種パイプ8cの下部は、前記ディスク対25の内側に配置されている。これにより、駆動中の播種繰出部8bから送出された種子を前記溝内に落下させることができる。
【0026】
前記後フレーム21bの後部の両側面には、ローラ支持フレーム24の前部が締結固設され、該ローラ支持フレーム24の後部は、左右に分岐して支持部24a・24bとなってローラ軸11bを回動自在に支持すると共に、該ローラ軸11bにローラ11aが外嵌固定されるようにして、前記鎮圧ローラ11が形成される。
【0027】
なお、前記ローラ支持フレーム24の途中部から後方には、前方に開いた平面視U字状のスクレーパ27が延出され、該スクレーパ27の内側に前記ローラ11aを配置すると共に、該ローラ11aの後部外周面には、前記スクレーパ27の後部内面から前方に突設した板状の掻き取り部27aの前縁が当接されている。これにより、ローラ11aの外周面に固着する土、株、藁等を鎮圧動作と同時に機械的に掻き落すことができる。
【0028】
このような構成において、前記揺動アーム19の後側の支軸19aと、前記揺動アーム20の前側の支軸20aとの間には、左右一対のリンクバネ23・23が介装されており、該リンクバネ23・23により、前記取付フレーム21に連結した作溝器9、覆土ディスク10、及び鎮圧ローラ11を一定圧力で圃場面に押し付けるので、それに伴い、同じ取付フレーム21の上部で前記平行リンク69によって揺動する前記播種装置8を圃場面の凹凸に追従させることができ、圃場面から播種繰出部8bまでの播種高さを常に略同一に設定し、作業中の播種位置のばらつきを抑えて播種精度を高めるようにしている。
【0029】
前記動力取出ユニット13について、図1,図3により説明する。
動力取出ユニット13では、その支持フレーム29の前端部が、前記ツールバー15に締結固定されている。
【0030】
該支持フレーム29は、略水平に後方に延出され、その後部は、左右に分岐して支持部29a・29bとなり、該左右の支持部29a・29b間に、緩衝ピン31の上部が上下摺動可能に挿通される。そして、該緩衝ピン31の下端は、前記支持フレーム29の前後途中部から後ろ斜め下方に延設された伝動ケース32の途中部に、前後回動可能に軸支されている。
【0031】
該伝動ケース32の下部には、車軸33aが回動自在に支持され、該車軸33aには、圃場表面を前方に回転する接地輪33が外嵌固定されている。そして、前記緩衝ピン31の下端近傍にはストッパ31aが固定され、該ストッパ31aと前記支持フレーム29の支持部29a・29bとの間の緩衝ピン31には、クッションバネ34が外嵌されている。これにより、接地輪33を一定圧力で圃場面に押しつけることができ、たとえ圃場面に凹凸があっても確実に接地輪33が接地されて回転するようにしている。
【0032】
このような構成において、前記接地輪33からの回転動力が、後述する動力伝達構成により、全ての施肥播種ユニット12L・12C・12Rにおける、施肥装置7の施肥繰出部7bと播種装置8の播種繰出部8bとに同時に伝達され、該両繰出部7b・8bが駆動されて、前記ディスク対25によって形成された溝の内外に種子と肥料が送り出される。
【0033】
次に、前記施肥繰出部7b・播種繰出部8bの繰出構造について、図1、図2、図4、図5により説明する。
このうちの施肥繰出部7bは、図1、図2、図4に示すように、その駆動軸35は、全ての施肥播種ユニット12L・12C・12Rに共通であって、前記ツールバー15の後方に平行に横設される。更に、該駆動軸35は、断面視で多角形、本実施例では6角形に形成された上で回動軸36が外嵌され、該回動軸36に、繰出ロール37が外嵌固定されている。そして、該繰出ロール37の外周には、肥料を施肥ホッパ7aから落入させる複数の繰出凹部37a・37a・・・が、溝状で略等間隔に形成されている。
【0034】
該繰出ロール37、回動軸36等は、施肥繰出部7bを構成する繰出ケース38内に嵌装されると共に、このうちの回動軸36は、該繰出ケース38の左右両側に前後回動可能に支持される。そして、該繰出ケース38の後上部には、ブラシ39がノブネジ40によって固定され、該ブラシ39の先を前記繰出ロール37の外周に接触させると共に、繰出ケース38の下部には、ガイドロート41が連設され、該ガイドロート41の下端には、前記中間パイプ7cに連通する放出口42が形成されている。
【0035】
このような構成において、前記駆動軸35により繰出ロール37が回動されると、繰出凹部37a・37a・・・が、上方の施肥ホッパ7aに臨む位置から下方のガイドロート41に向かって矢印54の方向に回転し、前記繰出凹部37a・37a・・・に落入して装填された肥料が、下方に回転搬送される。この際、前記ブラシ39によって、繰出凹部37a・37a・・・からはみ出た肥料は掻き落とされ、余分な肥料を繰り出さないようにしている。
【0036】
すると、この回転搬送された肥料は、前記放出口42内に落入し、前記中間パイプ7cから施肥パイプ7dを通って溝の外に落下する。これにより、略一定量の肥料を溝の外に確実に繰り出すことができる。
【0037】
また、前記播種繰出部8bは、図1、図2、図5に示すように、その繰出機構は目皿式であって、平面視で略同一円周上に複数の搬送孔43a・43a・・・を開口した円盤状の目皿43が、 後斜め下方に若干傾斜した回転面に沿って回転可能な構成としている。そして、該目皿43の前部下方には、前記播種パイプ8cに連通する放出口45が形成されている。
【0038】
更に、前記目皿43は、回転軸46の上端に固設され、該回転軸46の下端には、ベベルギア47が固設され、該ベベルギア47は、播種繰出部8bへの入力軸48の内端に固設されたベベルギア49と噛合されている。そして、該入力軸48は、前記取付フレーム21の後フレーム21bに左右方向に軸支されている。
【0039】
このような構成において、前記入力軸48によりベベルギア49が回動されると、噛合するベベルギア47を介して回転軸46に回転動力が伝達され、目皿43が回転し、低い方にある搬送孔43aに落入した種子44が、前記播種繰出部8bの下部の位置92から、前記放出口45の直上の位置93まで回転搬送される。
【0040】
すると、この回転搬送された種子44は、前記放出口45内に落入し、前記播種パイプ8cを通って溝内に落下する。これにより、種子44を、放出口45までの搬送中に傷つけることなく、一定量を溝内に確実に繰り出すことができる。
【0041】
次に、このような繰出構造を有する施肥繰出部7b・播種繰出部8bへの動力伝達構成について、図1乃至図9により説明する。
このうちの施肥繰出部7bにおいて、図1乃至図4に示すように、その駆動軸35は、前記動力取出ユニット13の伝動ケース32の上部を貫通している。
【0042】
該伝動ケース32においては、前記駆動軸35にスプロケット50が外嵌固定され、該スプロケット50は、テンションバネ91で張設したチェーン51を介してスプロケット95に連結される。そして、該スプロケット95が外嵌された反転軸96と同軸上には、小径の反転ギア97が固設されており、該反転ギア97に、前記車軸33a上に固設された大径の車軸ギア98が噛合して変速装置52が構成されている。
【0043】
これにより、トラクタと一緒に施肥播種機2が進行すると、動力取出ユニット13の接地輪33が回転し、この回転動力が、車軸33aから変速装置52とチェーン伝動を介して前記駆動軸35に伝達され、該駆動軸35により前記繰出ロール37が回動されると、前述のようにして、施肥ホッパ7a内の肥料が繰り出される。そして、この際の回転動力の回転方向を、ギア対97・98により、接地輪33の回転方向である矢印100の方向から矢印101の方向に反転させ、スプロケット対50・95により、該矢印101の方向と同じ矢印102の方向に設定して、駆動軸35の回転方向を前記矢印54で示す肥料繰出時の回転方向と一致させるようにしている。
【0044】
また、前記播種繰出部8bにおいて、図2、図5乃至図7に示すように、その入力軸48には、前記施肥繰出部7bを駆動する駆動軸35の回転動力が、前記伸縮リンク機構53に沿って設けた動力伝達経路55を通って伝達される。
【0045】
ここで、前記係止具16の後部の左右外側面には、左右の連結部材56L・56Rがそれぞれ連結されて後方に突出し、該連結部材56L・56Rの後部は、いずれも外方に屈曲して左右の後部平板部56La・56Raを形成し、該後部平板部56La・56Raに、前記施肥繰出部7bの前部より突設した繰出部支持部材57が、ボルト58・58により締結固定されている。
【0046】
そして、このうちの左の後部平板部56Laの前面には、前記繰出部支持部材57と一緒に、平面視上下反転L字状のリンク支持部材59の右端が、ボルト58により共締めされると共に、該リンク支持部材59に、前記伸縮リンク機構53が取り付けられている。
【0047】
該伸縮リンク機構53は、前記リンク支持部材59の後部に固定される第一ボス部材60、該第一ボス部材60に前端部が前後回動可能に外嵌される第一伝動ケース63、該第一伝動ケース63に連設される第二伝動ケース64、該第二伝動ケース64の前端部と前記第一伝動ケース63の後端部とを互いに前後回動可能に連結する中間ボス部材61、及び前記第二伝動ケース64の後端部に固定されると共に第二伝動ケース64を前記入力軸48の左端部に前後回動可能に連結する第二ボス部材62から構成される。
【0048】
つまり、前記中間ボス部材61を支点として前後方向に屈折可能な一対の伝動ケース63・64を各リンクアームとした中折れリンクが形成されている。
【0049】
従って、図7、図8に示すように、播種装置8が前記平行リンク69によって揺動し、前記入力軸48が位置65から位置66まで下降して前記第一ボス部材60から第二ボス部材62までの距離(以下、「軸間距離」とする)94が伸びた場合、前記伸縮リンク機構53が姿勢53Aから姿勢53Bに変化することにより、一対の伝動ケース63・64の成す角度が角度67から角度68まで増加し、伸縮リンク機構53の全長が伸長して、前記軸間距離94の伸びに追従することができる。
【0050】
逆に、前記入力軸48が位置65よりも上昇して軸間距離94が縮んだ場合、一対の伝動ケース63・64の成す角度が減少するように伸縮リンク機構53の姿勢が変化し、伸縮リンク機構53の全長が短縮して、前記軸間距離94の縮みに追従することができる。
【0051】
また、前記第一ボス部材60には、図6、図7に示すように、前記駆動軸35が回動自在に軸支され、該駆動軸35の途中部に、駆動スプロケット71が外嵌固設される。前記中間ボス部材61には中間軸70が回動自在に軸支され、該中間軸70の右半部には、右中間スプロケット73が外嵌固定されると共に、中間軸70の左半部には、左中間スプロケット74が外嵌固定されている。そして、前記第二ボス部材62には前記入力軸48が回動自在に軸支され、該入力軸48の左端部に、入力スプロケット76が外嵌固設される。
【0052】
このうちの駆動スプロケット71と右中間スプロケット73とは、前記第一伝動ケース63内に収容されると共に、両スプロケット71・73の間には、テンションバネ86で張設した第一チェーン72が巻回されている。更に、左中間スプロケット74と入力スプロケット76とは、前記第二伝動ケース64内に収容されると共に、両スプロケット74・76の間にも、テンションバネ86で張設した第二チェーン75が巻回されている。
【0053】
これにより、前記第一伝動ケース63と第二伝動ケース64に沿って、前記駆動スプロケット71から、第一チェーン72、右中間スプロケット73、中間軸70、左中間スプロケット74、第二チェーン75、入力スプロケット76までの動力伝達経路55を設けることができ、該動力伝達経路55を介することにより、駆動軸35からの回転動力がチェーン伝動を介して前記入力軸48に伝達される。
【0054】
なお、前記スプロケット71・73・74・76は、いずれも着脱して交換可能に構成されると共に、そのための交換用スプロケット89が、前記ローラ支持フレーム24上のスプロケットホルダー90に装着されている。これにより、前記スプロケット71・73・74・76のいずれかを所定のものに交換するだけで、変速比を変更して入力軸48の回転速度を変え、播種間隔の適正化を図ることができ、別途に複雑な変速機構を設ける必要がなくなり、装置コストの低減や施肥播種機2の軽量・コンパクト化を図ることができる。
【0055】
以上のような構成において、施肥播種機2が進行すると、動力取出ユニット13の接地輪33が回転して駆動軸35に回転動力が伝達され、該駆動軸35が回動し、全施肥播種ユニット12L・12C・12Rにおいて、全ての施肥装置7が同期駆動される。同時に、全施肥播種ユニット12L・12C・12Rにおいて、前記駆動軸35の回転動力が動力伝達経路55を介して入力軸48に伝達され、全ての播種装置8も同期駆動される。
【0056】
すなわち、各条毎に圃場面に追従して揺動する播種装置8を並設した多条農用作業機である施肥播種機2において、前記播種装置8に動力を伝達する単一の駆動軸35を設け、該駆動軸35を軸支する第一支持部である第一ボス部材60と、前記播種装置8への入力軸48を軸支する第二支持部である第二ボス部材62との間は、播種装置8の揺動に応じて伸縮可能な伸縮リンク機構53を介して連結すると共に、該伸縮リンク機構53は、複数のリンクアームである伝動ケース63・64を連設して構成し、該伝動ケース63・64に沿って、前記駆動軸35から入力軸48までの動力伝達経路55を設けたので、全ての条の播種装置8を共通の駆動軸35からの回転動力によって同期駆動させることができ、作業中の播種間隔が条間で大きくばらつくことがなく、播種精度が高くなり、圃場全体における作物の収量・品質が向上する。しかも、前述のような伸縮リンク機構53を介するだけで、播種装置8の揺動運動を阻害することなく動力伝達経路55を確保することができ、同期駆動のための複雑な伝達機構や制御機構を設ける必要がなく、部品コストの低減やメンテナンス性の向上を図ることができる。
【0057】
更に、前記伸縮リンク機構53は、二つのリンクアームである伝動ケース63・64の端部間を連結する中間軸70を中心に中折れして伸縮可能な中折れリンクであるので、前記伸縮リンク機構53を単純な中折れリンクによって構成することができ、更なる部品コストの低減やメンテナンス性の向上を図ることができる。
【0058】
加えて、前記動力伝達経路55は、前記駆動軸35・中間軸70・入力軸48にそれぞれ固設される駆動スプロケット71、中間スプロケット73・74、入力スプロケット76、前記駆動スプロケット71と中間スプロケット73との間に巻回される第一チェーン72、及び中間スプロケット74と入力スプロケット76との間に巻回される第二チェーン75により構成するので、前記動力伝達経路55をチェーン伝動によって構成することができ、駆動軸35の回転動力が入力軸48に確実に伝達され、播種精度が一層高くなり、作物の収量・品質が更に向上する。
【0059】
更に、前記駆動軸35は、走行に伴う接地輪33からの回転動力によって駆動するので、鎮圧ローラ11よりも高い接地性を有する接地輪33により、スリップ等の発生自体を抑えることができ、各条における播種間隔のばらつきも抑制し、播種精度が一層高くなり、作物の収量・品質が更に向上する。
【0060】
加えて、前記播種装置8には、施肥装置7や、図示せぬ薬剤散布装置の少なくとも一方を併設装置として設けると共に、該併設装置としての施肥装置7には、前記駆動軸35からの動力を伝達するので、前記施肥装置7により播種以外の作業である施肥作業を並行して行うことができ、農作業の作業効率の向上を図ることができる。もちろん、施肥装置7を取り外して播種装置8のみで農作業をしてもよい。
【0061】
また、別形態の施肥播種機2Aについて、図9に示す。
該施肥播種機2Aは、前記施肥播種機2における駆動軸35の回転駆動源を、接地輪33から電動モータ81に変更したものであって、駆動軸35の回転制御性や安定性の向上を図ったものである。
【0062】
該電動モータ81は、モータ本体81aと、該モータ本体81aを収容するモータケース81bと、該モータケース81bから左方に突出するモータ軸81cとから構成され、このうちのモータケース81bの左側面は、前後方向に延設された伝動ケース82の後部右側面に締結固定されると共に、該伝動ケース82の前部は、ツールバー15に着脱可能に外嵌された前記係止具28の上部に締結固定されている。
【0063】
そして、前記伝動ケース82の前部には、前記駆動軸35が貫通し、伝動ケース82内では、この駆動軸35にスプロケット83が外嵌固定されると共に、前記伝動ケース82の後部には、前記モータ軸81cが貫通し、該モータ軸81cにスプロケット85が外嵌固定される。そして、該スプロケット85と前記スプロケット83との間にはチェーン84が巻回されており、図示せぬスイッチを操作して電動モータ81が動作すると、モータ軸81cの回転動力がチェーン伝動によって駆動軸35に伝達され、該駆動軸35が回転駆動される。
【0064】
これにより、圃場の状況等に応じて播種間隔を迅速に変更したい場合でも、電動モータ81の制御操作だけで、駆動軸35に伝達する回転動力を容易に変更することができる。
【0065】
すなわち、前記駆動軸35は、電動モータ81の回転動力によって駆動するので、前記播種装置8への回転動力を迅速に制御することができ、圃場の状況等に応じて播種間隔を迅速に変更して適正化を図り、作物の収量・品質が更に向上する。しかも、接地輪33を設ける場合よりも更に、圃場面とのスリップ等による動力変動の恐れがなく、安定した回転動力を駆動軸35に伝達することができ、播種精度が一層高くなり、作物の収量・品質が更に向上する。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、各条毎に圃場面に追従して揺動する播種装置を並設した、全ての多条農用作業機に適用することができる。なお、該播種装置における種子の繰出機構は、ロール式であってもよく、本実施例の目皿式に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0067】
2 施肥播種機(多条農用作業機)
7 施肥装置(併設装置)
8 播種装置
33 接地輪
35 駆動軸
48 入力軸
53 伸縮リンク機構・中折れリンク
55 動力伝達経路
60 第一ボス部材(第一支持部)
62 第二ボス部材(第二支持部)
63・64 伝動ケース(リンクアーム)
70 中間軸
71 駆動スプロケット
72 第一チェーン
73・74 中間スプロケット
75 第二チェーン
76 入力スプロケット
81 電動モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各条毎に圃場面に追従して揺動する播種装置を並設した多条農用作業機において、前記播種装置に動力を伝達する単一の駆動軸を設け、該駆動軸を軸支する第一支持部と、前記播種装置への入力軸を軸支する第二支持部との間は、播種装置の揺動に応じて伸縮可能な伸縮リンク機構を介して連結すると共に、該伸縮リンク機構は、複数のリンクアームを連設して構成し、該リンクアームに沿って、前記駆動軸から入力軸までの動力伝達経路を設けたことを特徴とする多条農用作業機。
【請求項2】
前記伸縮リンク機構は、二つのリンクアームの端部間を連結する中間軸を中心に中折れして伸縮可能な中折れリンクであることを特徴とする請求項1に記載の多条農用作業機。
【請求項3】
前記動力伝達経路は、前記駆動軸・中間軸・入力軸にそれぞれ固設される駆動スプロケット・中間スプロケット・入力スプロケット、前記駆動スプロケットと中間スプロケットとの間に巻回される第一チェーン、及び中間スプロケットと入力スプロケットとの間に巻回される第二チェーンにより構成することを特徴とする請求項2に記載の多条農用作業機。
【請求項4】
前記駆動軸は、走行に伴う接地輪からの回転動力によって駆動することを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか一項に記載の多条農用作業機。
【請求項5】
前記駆動軸は、電動モータの回転動力によって駆動することを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか一項に記載の多条農用作業機。
【請求項6】
前記播種装置には、施肥装置、薬剤散布装置の少なくとも一方を併設装置として設けると共に、該併設装置には、前記駆動軸からの動力を伝達することを特徴とする請求項1から請求項5のうちのいずれか一項に記載の多条農用作業機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−120483(P2012−120483A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−273763(P2010−273763)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【出願人】(597041747)アグリテクノ矢崎株式会社 (56)
【Fターム(参考)】