説明

多糖シンターゼ(H)

本発明は、一般的には多糖シンターゼに関する。より詳細には、本発明は、(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼに関する。本発明は、とりわけ、細胞により生成される(1,3;1,4)−β−D−グルカンのレベルに影響を及ぼす方法、ならびに(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードする核酸およびアミノ酸配列を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
本発明は、オーストラリア仮特許出願2007907071の優先権を主張するものであり、その内容を参照により本明細書に援用する。
【0002】
発明の分野
本発明は、一般的には多糖シンターゼに関する。より具体的には、本発明は(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼに関する。
【背景技術】
【0003】
穀類の各種組織は、穀粒成長中、休眠中および発芽後において、多様な機能を有する。
【0004】
例えば、果皮膜および種皮の組織は、発育中および休眠中に種を保護することに係わる。しかし、穀粒が成熟し、穀粒のこれらの外側組織が死んだ後、組織内残留物は、ほぼ全体が細胞壁残留物から構成される。種皮とアリューロン表面との間にある核組織は、穀粒成長のために栄養素の伝達に関与するが、成熟と同時にこの組織もまた、細胞壁断片を残すのみで崩壊する。成熟した穀粒のデンプン質の胚乳の薄い有壁細胞は死ぬが、デンプンと貯蔵タンパク質が充満する。対照的に、厚い有壁かつ有核のアリューロン細胞は、穀粒の成熟時点でも生きており、タンパク体および脂肪滴が充満している。デンプン質胚乳の接触面には胚盤があり、胚乳を発育させるための栄養素を運ぶ役割をすると共に、発芽中に胚乳の貯蔵物の消化産物を成長する胚に輸送する。
【0005】
穀粒中の各組織の異なる構造と機能は、少なくとも1つには、これらの細胞種それぞれの細胞壁組成によって決まる。
【0006】
非セルロース多糖類は、穀類組織の細胞壁における主要な成分であり、例えば(1,3;1,4)−β−D−グルカン、ヘテロキシラン(主にアラビノキシラン)、グルコマンナン、キシログルカン、ペクチン多糖類およびカロースなどを含む。これら非セルロース多糖類は、通常、穀粒全重量の10%未満を構成するにすぎないが、穀粒品質の重要な決定因子である。
【0007】
個々の非セルロース多糖類とその他の壁構成成分との正確な物理的関係は述べられてこなかったが、壁中で、セルロースの微小線維は非セルロース多糖類およびタンパク質のマトリックス相に組み込まれいる。壁の完全性は、主にマトリックス相と微小線維構成素との間の広範な非共有結合相互作用、特に水素結合によって維持される。いくつかの穀粒組織の壁中に、ヘテロキシラン、リグニンおよびタンパク質の間に共有結合が存在する。各成分間の共有結合の範囲は、壁の種類および遺伝子型によっても異なる。
【0008】
非セルロース多糖類、特にヘテロキシランおよび(1,3;1,4)−β−D−グルカンは、アリューロンおよびデンプン質胚乳の壁、また恐らくは、胚盤においても、比較的高い割合を占める。これらの組織において、セルロース含量はそれに応じて低くなる。該してセルロース含有量が低い壁は、リグニンを全く含まないという事実の他、穀粒の中央部の壁の構造的な硬さに関する限定的な要件、および穀粒の発芽後に壁成分を急速に脱重合するための要件に関係すると考えられている。
【0009】
対照的に、果皮膜の細胞壁は、胚および胚乳のための保護膜を提供し、発芽中に動員されないものであるが、同細胞壁中のセルロースおよびリグニンの含有量は非常に高く、非セルロース多糖類の濃度は、それに応じて低い。
【0010】
(1,3;1,4)−β−D−グルカンは、混合結合もしくは穀類β−グルカンとも呼ばれ、非セルロース多糖類であるが、穀類および牧草が属する単子葉植物イネ科(Poaceae)の植物、および同類のイネ目(Poales)の近縁ファミリーに天然に存在する。
【0011】
これらの非セルロース多糖類は、ほとんどの穀粒のデンプン質胚乳およびアリューロン細胞壁において重要な構成物質であり、細胞壁の最高で70重量%から90%重量までを占めることがよくある。
【0012】
オオムギ、オートムギおよびライムギは(1,3;1,4)−β−D−グルカンの豊富な供与源であるが、これらに比べ、コムギ、イネおよびトウモロコシは、この多糖類濃度が低い。(1,3;1,4)−β−D−グルカンはまた、穀類および牧草の栄養組織にある細胞壁の比較的微量な成分である。栄養組織において比較的微量な成分として現れるが、(1,3;1,4)−β−D−グルカンは、例えば、動物による栄養組織の消化率の観点から、またバイオエタノール生産用に作物残滓を使用する観点からもなお重要である。
【0013】
(1,3;1,4)−β−D−グルカンは、酒造および飼料製造業者を含む大規模食品加工活動において重要である。さらには、(1,3;1,4)−β−D−グルカンなど、穀類の非デンプン質多糖類は、ヒトの栄養素として潜在的に有用な効果があることから、近年新たな関心を引き寄せている。
【0014】
しかしながら、このような関心の高さにもかかわらず、(1,3;1,4)−β−D−グルカン生合成をはじめとして、穀類中の非セルロース多糖類生合成を制御する遺伝子および酵素の知識には大きな隔たりがある。
【0015】
穀粒中の(1,3;1,4)−β−D−グルカン濃度は、遺伝子型および環境の両者により影響を受けると考えられている。例えば、穀類中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンの濃度は、遺伝子型、穂の穀粒の位置、ならびに植え付け場所、成長中の気候条件および土壌窒素などの環境条件に左右される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
細胞により生成される(1,3;1,4)−β−D−グルカンのレベルの調節を促し、これによって穀粒または栄養組織の品質を変えられるので、(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードする遺伝子の同定は望ましいと言える。そこで、細胞内の(1,3;1,4)−β−D−グルカンのレベルの調節を可能にし、それに伴う穀類または栄養組織品質の変化を可能にするため、(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードする遺伝子の特定は、是非とも必要である。
【0017】
本明細書における従来技術の参照は、従来技術がいかなる国においても共通する一般知識の一部を形成することの同意と、またはいかなる形態の示唆と解釈されるべきではない。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明により、(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼのファミリーをコードするヌクレオチド配列及び対応のアミノ酸配列が提供される。本発明により、(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼはCslH遺伝子ファミリーのメンバーによってコードされることが明らかにされた。
【0019】
(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードするヌクレオチド配列、および対応するアミノ酸配列の同定の結果として、本発明はとりわけ、細胞中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼのレベルおよび/または活性を調節する、ならびに/あるいは細胞により生成される(1,3;1,4)−β−D−グルカンのレベルを調節するための方法および組成物を提供する。
【0020】
したがって、第1の態様において、本発明は、細胞により生成される(1,3;1,4)−β−D−グルカンのレベルを調節する方法であって、該細胞中のCslHによりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼのレベルおよび/または活性を調節するステップを含む方法を提供する。
【0021】
いくつかの実施形態において、(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼのレベルおよび/または活性は、細胞中のCslH核酸の発現を調節することによって調節する。従って、第2の態様において、本発明は、細胞中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼのレベルおよび/または活性を調節する方法であって、該細胞中のCslH核酸の発現を調節するステップを含む方法を提供する。
【0022】
いくつかの実施形態において、本発明は、細胞においてCslH核酸を発現させる、過剰発現させる又は導入することにより、細胞により生成される(1,3;1,4)−β−D−グルカンのレベルを増大させることを包含する。あるいは、別の実施形態において、本発明は、細胞におけるCslH核酸のノックアウトまたはノックダウンにより細胞中のCslHによりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼの発現をダウンレギュレートする方法を提供する。
【0023】
本発明はまた、組換え発現系における(1,3;1,4)−β−D−グルカンの生成を促進する。例えば、(1,3;1,4)−β−D−グルカンは、プロモーター制御下にてCslH核酸を細胞に導入することにより組換え技術によって生成することもでき、続いてこの細胞はCslHによりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼを発現し、(1,3;1,4)−β−D−グルカンを生成する。したがって、第3の態様において、本発明は、(1,3;1,4)−β−D−グルカンの生成方法であって、単離されたCslH核酸で細胞を形質転換するステップおよびその単離されたCslH核酸を細胞に発現させるステップを含む方法を提供する。
【0024】
第4の態様において、本発明は、本発明の第3の態様の方法により生成された(1,3;1,4)−β−D−グルカンを提供する。
【0025】
第5の態様において、本発明は、
同じ分類群の野生型細胞と比較してそのレベルおよび/または活性が調節された、CslHによりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼ;ならびに/あるいは
同じ分類群の野生型細胞と比較してその発現が調節されたCslH核酸
を含む細胞を提供する。
【0026】
いくつかの実施形態において、細胞は、同じ分類群の野生型細胞と比較してそのレベルが調節された(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをさらに含む。
【0027】
さらに、第6の態様において、本発明は、本発明の第5の態様に係る1以上の細胞を含む多細胞構造物を提供する。
【0028】
本発明はまた、本発明の第5の態様に係る1以上の細胞を含む穀粒を提供する。したがって、第7の態様において、本発明は、そのレベルが調節された(1,3;1,4)−β−D−グルカンを含む穀粒であって、そのレベルおよび/または活性が調節された、CslHによりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼ、ならびに/あるいはその発現が調節されたCslH核酸分子を含む1以上の細胞を含む、上記穀粒を提供する。
【0029】
第8の態様において、本発明は、以下:
本発明の第7の態様に記載の穀粒を製粉することにより製造される穀粉;および
任意により、1以上の他の穀粒を製粉することにより製造されたる穀粉
を含む穀粉も提供する。
【0030】
上記の通り、本発明は、部分的には、(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードするCslHヌクレオチド配列およびCslHアミノ酸配列の同定および単離に基づく。
【0031】
したがって、第9の態様において、本発明は、単離されたCslH核酸分子、又はその相補体、逆相補体若しくは断片を提供する。
【0032】
第10の態様において、本発明は、本発明の第9の態様に記載の単離された核酸分子を含む遺伝子構築物またはベクターを提供する。
【0033】
第11の態様において、本発明は、本発明の第9の態様に記載の単離された核酸分子または本発明の第10の態様に記載の遺伝子構築物を含む細胞を提供する。
【0034】
第12の態様において、本発明は、本発明の第11の態様に記載の1以上の細胞を含む多細胞構造物を提供する。
【0035】
上記の通り、本発明は同様に、CslHによりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼのアミノ酸配列を提供する。
【0036】
したがって、第13の態様において、本発明は、CslHによりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼポリペプチド又はその断片を規定するアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドを提供する。
【0037】
第14の態様において、本発明は、上記に定義の単離されたCslHによりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼポリペプチドまたはそのエピトープに対して生起された、抗体またはそのエピトープ結合性フラグメントを提供する。
【0038】
本明細書を通じて、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、単語「含む(comprise)」または「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」などの、その変化形は、記述された要素もしくは整数または要素もしくは整数の群の包含を示唆するが、 その他任意の要素もしくは整数または要素もしくは整数の群の排除を示唆するものではないと理解されよう。
【0039】
ヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、本明細書において配列識別子番号(配列番号)により示される。配列番号は、配列識別子<400>1(配列番号1)、<400>2(配列番号2)などに数値的に対応する。配列識別子の概要を表1に示す。配列のリストは、本明細書の最後に示されている。
【表1】

【0040】

【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】(A)は、シロイヌナズナ(Arabidopsis)における機能獲得実験に使用した、HvCslH1::pGBW15構築体のT−DNAの概略を示す図である。Gatewayクローニング後、3×HAタグを、全長HvCslH1 ORFのNH末端に結合した。(B)は、ノーザンブロット分析により決定された、成熟HvCslH1トランスジェニックT1植物の葉における転写産物レベルの図である。上のパネル、X線フィルム撮影;下のパネル、対応する、臭化エチジウム染色したゲル。観察された2.5kbの転写産物のサイズは、タグ付加HvCslH1 mRNAの予想されたサイズに一致する。(C)ウェスタンブロット分析により決定された、3週齢のプールされたHvCslH1トランスジェニックT系統における3×HAタグ付加HvCslH1タンパク質レベルの図である。30マイクログラムの混合ミクロソーム膜タンパク質を各レーンに添加し、抗HA抗体でブロットをプロービングした。BおよびC;番号はトランスジェニック系統を指し、Col−0は、野生型の非形質転換系統を指す。Col−0、8および14系統は同じブロット由来であり、他の系統はすべて異なるブロット由来である。
【図2】β−グルカン特異的モノクローナル抗体を用いた、HvCslH1発現系の細胞壁におけるβ−グルカンの検出を示す透過型電子顕微鏡写真を示す(Meikle et al., Plant J 5:1-9, 1994)。(A〜C)8、16、11系統;(D)野生型Col−0対照;(E)6系統。AおよびDは維管束の細胞;BおよびCは葉肉細胞;Eは上皮細胞を示す。スケールバー=0.5μm(A〜C、E)、1μm(D)。
【図3】145日齢のシロイヌナズナ系統16−1ロゼット葉組織から調製されたアルコール不溶性画分(AIR)の(1,3;1,4)−β−D−グルカンエンドヒドロラーゼ消化により放出されたオリゴ糖のHPAECプロファイルを示す図である(青色線)。16−1を予め酵素処理し、緩衝液洗浄した(ピンク色線)。オオムギ(Barley)成葉(全葉鞘)のAIRを、陽性対照試料として使用した(黄緑色線)。G4G3G(3−O−β−セロビオシルD−グルコース、DP3)およびG4G4G3G(3−O−β−セロトリオシルD−グルコース、DP4)のピークを示す。
【図4】シロイヌナズナトランスジェニック系統11の高圧凍結葉の切片における、金標識抗HA抗体による3×HAタグ付加HvCslH1タンパク質の検出を示す透過型電子顕微鏡写真を示す。(AおよびB)葉肉細胞。G、ゴルジ体、cw、細胞壁、v、液胞、er、小胞体。スケールバー=0.5μm(A)、0.2μm(B)。矢印は、ゴルジ関連小胞の標識を示す。
【図5】QPCRおよびin situ PCR分析により決定された、オオムギにおけるHvCslH1の発現を示す図である。(A)さまざまなオオムギ組織中のHvCslH1の転写産物の正規化レベル(コピー/マイクロリットルcDNA)の図である。正規化のための対照遺伝子は、GAPDH、サイクロフィリンおよびα−チューブリンとした。(B)受粉後0〜24日の成長中の胚乳における、HvCslH1の転写産物の正規化レベルの図である。対照遺伝子は、GAPDH、α−チューブリンおよび伸長因子1aとした。(C)10日齢の第1葉中のHvCslH1の転写産物の正規化レベルの図である。対照遺伝子は、GAPDH、サイクロフィリンおよびHSP70とした。QPCRプロットのエラーバーは、標準偏差を示す。(D〜F)18S RNA(陽性対照、D)、HvCslH1(F)および陰性対照(E)のためのプローブを使用する、7日齢の第1葉の成熟域のin situ PCR画像である。スケールバー=100μm。
【図6】HvCslH1の構造的特徴を示す図である。(A)HvCslH1のエクソン−イントロン構造である。黒いバーがエクソンを示し、細い黒線がイントロンと5’および3’UTRを示す。四角形の上の数字はエクソンのサイズを示し、線の下の数字はイントロンのサイズを示す。イタリック体の数字は、5’および3’のUTRのサイズを指し、下線のある太字は、開始コドンの上流の公知の配列の長さを指す。数字は塩基対で表されている。太い黒いバーは、ARAMEMNON(http://aramemnon.botanik.uni-koeln.de/)により予測される、6つのコンセンサス膜貫通ドメインを示す。(B)HvCslH1のKyte−Doolittleの疎水性プロット(Kyte and Doolittle, J Mol Biol 157: 105-132, 1982)の図である。+1.6のカットオフを用いた19個のアミノ酸ウィンドウを使用した。6つの予測膜貫通ドメインを黒いバーで示す。数字はアミノ酸を示す。(C)HvCslH1の予測膜トポロジーの図である。NH、アミノ末端;COOH、カルボキシ末端;lumen、ERの内部、ゴルジ体または小胞体;cyt、細胞質、mem、膜、D,D,D,QXXRW、CAZy GT2ファミリーの特徴的モチーフ。HvCslH1におけるQXXRWモチーフの配列は、QFKRWである。
【図7】全長のオオムギ(Hordeum vulgare)およびコメ(Oryza sativa)のCSLH配列の系統樹を示す図である。CSLBファミリーは、CSLファミリーの中でCSLHファミリーと最も密接に関係しているので、シロイヌナズナ(A. thaliana)およびポプラ(Populus trichocarpa)のCSLBタンパク質配列もまた含まれる。アライメントはClustalXを使用して作成し、近隣結合を用いる固有距離アルゴリズムを使用した。各分岐群を支持するブートストラップ反復の数(総数1,000から)を、その分岐群の節間の下に示す。アクセッション番号は、HvCslH1(FJ459581)、OsCSLH1(Os10g20090、AC119148)、OsCSLH2(Os04g35020、AL606632)、OsCSLH3(Os04g35030、AL606632)、PtCSLB1(http://genome.jgi-psf.org/Poptr1_1/Poptr1_1.home.html; ID no.572982)、PtCSLB2(ID no.684214)、AtCSLB1(At2G32610、NM_128820)、AtCSLB2(At2G32620、NM_128821)、AtCSLB3(At2G32530、NM_179859)、AtCSLB4(At2G32540、NM_128813)、AtCSLB5(At4G15290、NM_117617、AtCSLB6(At4G15320、NM_117620)である。
【図8】HvCslH1が位置する、2H染色体の短腕の部分的ゲノムマップを示す図である。HvCslH1および4つのHvCSLF遺伝子のクラスターを、セントロメア(黒丸により表示)に近接するSteptoe×Morexのビンマップ上の69.2〜71.5Mbに相当する区間にマッピングした。HvCslH1はビン8に配置され、wg996マーカーと同時分離する。Steptoe×Morexの参照マップにおいて、wg996はabc162と同時分離し、abc468の2.3cM南であり、4つのHvCSLF遺伝子と同時分離するマーカーである(Burton et al., Plant Physiol 146: 1821-1833, 2008)。鍵となるマーカーを、染色体の上部からのそれらの距離をセンチモルガン(cM)で左に示し、Hanらの麦芽β−グルカンQTL分析(Theor Appl Genet 91: 921-927, 1995)におけるLOD(塩基10に対する対数オッズ)スコアを右に示す。
【図9】(A)シロイヌナズナ系統16−2由来の145日齢の葉および茎を組み合わせた材料から調製されたAIRの(1,3;1,4)−β−D−グルカンエンドヒドロラーゼ消化により放出されたオリゴ糖のHPAECプロファイルを示す図である(青色線)。16−2を予め酵素処理し、緩衝液洗浄した(ピンク色線)。オオムギ成葉(全葉鞘)のAIRを、陽性対照試料として使用した(黄緑色線)。ラミナリビオース標準(水色線)。マルトース(Gα4G)およびセロビオース(Gβ4G)の保持時間を矢印により印を付けた。(B)Aの試料の酵素消化AIRのMALDI−TOF MSクロマトグラムを表す図である。DP2(ラミナリビオース)、DP3(3−O−β−セロビオシルD−グルコース)およびDP4(3−O−β−セロトリオシルD−グルコース)のピークを示す。
【図10】オオムギ(Hordeum vulgare)およびコメ(Oryza sativa)に由来するCslH配列の間の、ヌクレオチド配列同一性、タンパク質配列同一性およびタンパク質配列類似性を示す図である。
【図11−1】オオムギ(Hordeum vulgare)およびコメ(Oryza sativa)に由来するCslHアミノ酸配列のClustalWマルチプル配列アライメントを示す図である。
【図11−2】図11−1の続き。
【図12】オオムギ(Hordeum vulgare)、コメ(Oryza sativa)、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)およびポプラ(Populus trichocarpa)に由来するCs1B、FおよびHの全長アミノ酸配列の関係を示す系統樹である。
【図13】OsCSLF2×HvCslH1トランスジェニック植物交配の親として使用された4種のトランスジェニックシロイヌナズナ植物系統の表皮細胞壁における、(1,3;1,4)−β−D−グルカン特異的モノクローナル抗体を用いた、(1,3;1,4)−β−D−グルカンの検出を例示する透過型電子顕微鏡写真である。HvCslH1系統個体15−8−3および15−11−7を、それぞれパネルAおよびBに、OsCSLF2系統個体H37−5およびH17−4−4を、それぞれパネルCおよびDに示す。
【図14】OsCSLF2×HvCslH1トランスジェニック植物交配から得られた子孫の細胞壁における、(1,3;1,4)−β−D−グルカン特異的モノクローナル抗体を用いた(1,3;1,4)−β−D−グルカンの検出を例示する透過型電子顕微鏡写真である。15−8−3×H37−5の交配による個体を(A)、15−8−3×H37−5の同胞を(B)、15−8−3×H37−7を(C)、15−8−3×H37−7の同胞を(D)、5−8−15×H37−16を(EおよびF)に、15−11−13×H37−11を(G)に、15−11−7×H17−4を(H)に示す。パネルA〜E、G〜Hは、表皮細胞を示し、パネルFは葉肉細胞を示す。
【図15】シロイヌナズナにおけるCslH遺伝子の発現に使用したpGWB15ベクターのベクターマップを示す図である。
【図16−1】オオムギ品種ヒマラヤ(cv. Himalaya)由来のCslH1遺伝子cDNAのDNA配列および翻訳アミノ酸配列を示す図である。DNA配列は10塩基ごとに番号を付け、単一の大文字オープンリーディングフレームの翻訳アミノ酸配列を、下に1文字で示す。
【図16−2】図16−1の続き。
【図16−3】図16−1の続き。
【図17−1】オオムギCslH1遺伝子cDNAおよびゲノム配列と、3種のコムギCslH1遺伝子ホモログ(TaCslH1−1、1−2および1−3)のゲノム配列との比較を示す図である。オオムギcDNA(上から、品種スクーナー(cv. Schooner)由来のHvCslH1(配列番号1)および品種ヒマラヤ由来のHvCslH1Him(配列番号69))ならびにゲノムクローン(品種モレックス(cv.Morex)由来のHvCslH1g(配列番号9)および品種ヒマラヤ由来のHvCslH1gHim(配列番号71))のDNA配列を、3種のコムギ配列(TaCslH1−1、1−2および1−3(それぞれ、配列番号78、80および81)とともに、Muscleの比較プログラムを使用してBioEditでアライメントした。アライメントの位置を配列の上に番号付けし、ダッシュはアライメントを最適化するために導入されたギャップを示す。コムギゲノム配列(TaCslH1−1)と同一のヌクレオチドは、点で表す。エクソン/イントロンの境界は、コムギゲノム配列(TaCslH1−1)において太字で示す。参照用に、CslHコード領域のATG開始コドンは、アライメント位置98において始まり、終止コドンTAAは位置3320において始まり、双方とも下線を付けてある。
【図17−2】図17−1の続き。
【図17−3】図17−1の続き。
【図17−4】図17−1の続き。
【図17−5】図17−1の続き。
【図17−6】図17−1の続き。
【図18−1】オオムギ品種ヒマラヤと、コムギのCslH1タンパク質のアミノ酸配列の比較を示す図である。オオムギ遺伝子の翻訳アミノ酸配列(最上段、HvCslH1(Him))を、3種のコムギ配列(TaCslH1−1pro、1−2proおよび1−3proとして示す)とともに、Muscleの比較プログラムを使用してBioEditでアライメントした。アライメントの位置を配列の上に番号付けし、アライメントを最適化するために導入されたオオムギ配列に単一のダッシュ(ギャップを示す)が存在する。アミノ酸は、それらの一文字形式で示し、オオムギ配列(HvCslH1(Him))と同一のアミノ酸は点で示す。
【図18−2】図18−1の続き。
【図19】子葉鞘の成長の間のオオムギ品種ヒマラヤのCslH1遺伝子の半定量的RT−PCRおよびQ−PCR発現分析の結果を示す図である。パネルAは、子葉鞘の成長の間ならびに若葉(L)、根(R)および中期胚乳(E)におけるオオムギCslH1遺伝子の発現パターンを示す半定量的RT−PCRの図である。構成的に発現される遺伝子(α−チューブリン)を対照として示す。パネルBは、発芽開始後のさまざまな時点(日)における、成長中の子葉鞘中のHvCslH1に関する、正規化発現レベル(Q−PCR)を示す。
【図20】葉の成長の間のオオムギのCslFおよびCslH1遺伝子の半定量的RT−PCR発現分析の結果を示す図である。オオムギCslH1遺伝子の発現パターンを示す半定量的RT−PCRを、他のオオムギCslF遺伝子と比較した。構成的に発現した遺伝子(α−チューブリン)を対照として示す。
【図21】胚乳成長の間のオオムギ品種ヒマラヤおよびコムギCslH1遺伝子の半定量的RT−PCR発現分析の結果を示す図である。半定量的RT−PCRは、コムギ品種ウェストニア(下のパネル)と比較したオオムギ品種ヒマラヤ遺伝子(上のパネル)の成長中の胚乳におけるCslH1遺伝子の発現パターンの差を示す。DPA=開花後の日数である。
【図22】胚乳成長期のオオムギ品種ヒマラヤおよびコムギCslH1遺伝子の定量的RT−PCR発現分析の結果を示す図である。定量的リアルタイムRT−PCRは、成長中の胚乳における、コムギCslH1遺伝子と比較したオオムギCslH1遺伝子の発現パターンの差を示す。Ta0 dpa試料を1に設定し、他の発現レベルはこれに対して相対的レベルである。
【図23】Bx17プロモーターの制御下におけるオオムギ品種ヒマラヤのCslH1ゲノム配列の発現に使用した、植物形質転換ベクターのプラスミドマップを示す図である。pZLBx17HvgH1と称する植物形質転換ベクターの略図である。環状プラスミド内部のボックスは、さまざまな遺伝エレメントを表す:Bxl7prom=オオムギHvCslH1ゲノム配列の発現を駆動するBx17プロモーター;Hvg9185_1=プライマー対SJ91およびSJ85を用いて単離されたHvCslH1ゲノムクローン1番;Nos3’=ノパリンシンターゼポリアデニル化配列;NPTII=細菌カナマイシン耐性遺伝子。選択された制限部位の位置は、プラスミドマップの外側に示す。
【図24】カナマイシン耐性を付与する、植物の選択可能なマーカープラスミドのプラスミドマップを示す図である。pCMSTLSneoと称する植物形質転換ベクターの略図である。環状プラスミド内部のボックスは、さまざまな遺伝要素を表す:35Sprom=植物の選択可能なマーカー遺伝子の発現を駆動するCaMV 35Sプロモーター;NPTII=植物カナマイシン耐性遺伝子;STLSイントロン=ジャガイモ(Solanum tuberosum)大型サブユニットイントロン;35S polyA=CaMV 35Sポリアデニル化配列;Amp res=細菌アンピシリン耐性遺伝子。選択された制限部位の位置は、プラスミドマップの外側に示す。
【図25】オオムギ品種ヒマラヤCslH1遺伝子を発現するT0植物系統10由来の単一コムギ穀粒のβグルカン含有量を示す図である。グラフは、T0系統10番由来の個体コムギ穀粒のβグルカン含有量を示す。βグルカンは、粉末重量のパーセントとして示す。
【図26】空ベクター対照(208)およびトランスジェニック(236)オオムギ中のCslH1遺伝子の定量的RT−PCR発現分析を示す図である。発現は、受粉7日後(7D)および受粉14日後(14D)における葉および成長中の穀粒において示す。
【図27】オオムギおよびコムギのCslH配列に関する、DNAコード配列およびアミノ酸配列の同一性/類似性の比較を示す図である。HvCslH1=オオムギ品種スクーナー由来のDNAコード配列(配列番号1)および対応するアミノ酸配列(配列番号2);HvCslH1(Him)オオムギ品種ヒマラヤ由来のDNAコード配列(配列番号69)および対応するアミノ酸配列(配列番号70);TaCslH1−1=コムギ品種チャイニーズ・スプリング(Chinese Spring)由来のDNAコード配列(配列番号72)および対応するアミノ酸配列(配列番号75);TaCslH1−2=コムギ品種チャイニーズ・スプリング由来のDNAコード配列(配列番号73)および対応するアミノ酸配列(配列番号76);TaCslH1−3=コムギ品種チャイニーズ・スプリング由来のDNAコード配列(配列番号74)および対応するアミノ酸配列(配列番号77)。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下の説明は、特定の実施形態のみを説明することを目的とするが、上記の説明に関する限定であることを意図しないと理解されるべきである。
【0043】
本発明は、部分的には、(1,3;1,4)−β−D−グルカンの生合成酵素をコードする遺伝子の同定に基づく。
【0044】
「(1,3;1,4)−β−D−グルカン」は、β−D−グルコピラノシル単量体が(1→4)結合および(1→3)結合の両者によって重合された直鎖の非分枝状多糖類を含むと理解されるべきである。
【0045】
天然の(1,3;1,4)−β−D−グルカンにおける(1→4)結合と(1→3)結合の比率は、一般に2.2〜2.6:1の範囲である。ただし、比率はこの範囲以外のこともある。たとえば、ソルガム胚乳の(1,3;1,4)−β−D−グルカン中、同比率は、1.15:1である。2種類の結合は、規則的な繰り返し配列にはならない。(1→3)結合単位は、2以上の(1→4)結合により分離される。2ないし3つの隣り合う(1→4)結合の領域が優勢であるが、これら単位の配置には規則性がない。結合配列は、2つのグルコース単位より、さらに前記結合への依存がなく、二次マルコフ連鎖分布に従っている。さらに、10%以下の連鎖は、5から20の隣り合う(1→4)結合の長いストレッチからなる場合がある。したがって、穀類の(1,3;1,4)−β−D−グルカンは、セロトリオシル(cellotriosyl)(G4G4GRed)、セロテトラオシル(cellotetraosyl)(G4G4G4GRed)単位、およびより長い(1→4)−β−D−オリゴグルコシル単位の(1→3)−β−結合した共重合体とみなすことができる。
【0046】
内在性(1,3;1,4)−β−D−グルカン中、三糖単位と四糖単位の比率は、穀物種によって異なる。例えば、コムギではその比率は3.0〜4.5:1であるが、オオムギでは2.9〜3.4:1、ライムギでは2.7:1およびオートムギでは1.8〜2.3:1である。さらに、実際の比率は、(1,3;1,4)−β−D−グルカン抽出の温度および条件によっても異なる可能性がある。
【0047】
穀類の(1,3;1,4)−β−D−グルカンについて報告されている平均分子量は、穀物種、細胞壁の種類、抽出手順および分子量判定に用いた手順によるが、48,000(DP約300)から3,000,000(DP〜1850)に及ぶ。これらは、分子量に関して常に多分散であって、これはオオムギ(1,3;1,4)−β−D−グルカンに関し、数平均分子量(Mw/Mn)1.18に対する加重平均により説明される。ある種のオオムギ (1,3;1,4)−β−D−グルカンはまた、少量のタンパク質と共有結合しており、推定分子量最大40,000,000を有している。
【0048】
穀粒壁からの(1,3;1,4)−β−D−グルカン抽出率は、自己会合、ならびに他の細胞壁多糖類およびタンパク質との会合の関数である。特に抽出率は、(1,3;1,4)−β−D−グルカン連鎖における分子量および結合分布に依存する。他のポリマーとの過剰な結合および高分子量が、(1,3;1,4)−β−D−グルカンを穀粒から抽出することをさらに困難にしている。
【0049】
例えば、オオムギ、オートムギおよびライムギ粉の(1,3;1,4)−β−D−グルカンの一部は、pH7.0、40℃の水で抽出することができる。さらなる画分は、より高温で溶解度を高めることができる。40℃において水溶性の総(1,3;1,4)−β−D−グルカンの割合は、植物種内でも、また植物種によっても異なる。例えば、ロウ質の多い(アミロース分が高い)オオムギは、通常のオオムギよりも水溶性の(1,3;1,4)−β−D−グルカンの割合がより高い。40℃でオオムギから抽出された(1,3;1,4)−β−D−グルカンは、65℃で抽出されたもの(2.0:1)より、三糖:四糖の比率がわずかに低い(1.7:1)。穀粒からの穀物(1,3;1,4)−β−D−グルカンを完全に抽出するためには、還元末端によるアルカリ性誘導の分解を防ぐために、NaBHを含む4M NaOHまたはBa(OH)水溶液などのアルカリ性抽出剤を使用する必要がある。アルカリで抽出されたオオムギ(1,3;1,4)−β−D−グルカン画分は、分子量が高く、(1→4):(1→3)結合の比率が高く、より多くの、連続的に結合した(1→4)結合のセグメントを有し、水による抽出物よりも三糖:四糖の比率が高い。ジメチルスルホキシド、高温の過塩素酸、トリクロロ酢酸、N−メチルモルホリノ−N−オキシドおよびジメチルアセトアミド−LiClなどの他の抽出剤も、(1,3;1,4)−β−D−グルカンの溶解度を高めるために使用してもよい。しかしこれら抽出剤は、脱重合、またはポリマーの分解を生じる可能性がある。温水またはアルカリで抽出後、(1,3;1,4)−β−D−グルカンは、中性pHおよび室温でよく溶解するようになる。しかし、冷却時に、(1,3;1,4)−β−D−グルカンは会合し、沈着する可能性がある。
【0050】
上記の通り、本発明は、1つには(1,3;1,4)−β−D−グルカンの合成を触媒する生合成酵素の同定およびそれをコードする遺伝子に基づく。かかる酵素を本明細書において「(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼ」と称する。
【0051】
本発明は、EST(expressed sequence tag)ライブラリーおよびセルロースシンターゼ(CesA)遺伝子を含む他の配列データベースの分析に、一部起因する。さらに具体的には、CesA遺伝子は、事実上、非常に大きな遺伝子スーパーファミリー(CesA遺伝子およびセルロースシンターゼ様(Csl)遺伝子ファミリーの両者を含む)のメンバーであることが、これら研究において確認された。
【0052】
しかし、ほとんどの線維束植物のCsl遺伝子ファミリーは非常に大きく、CslAからCslHと称するいくつかのグループに分類されている。シロイヌナズナでは、29のCsl遺伝子が知られており、イネにおいては37の同遺伝子が知られている。シロイヌナズナのゲノムは、細胞壁代謝に関与する700超の遺伝子を含むと概ね考えられている。しかし、基本的に、これら遺伝子の具体的な機能はあまり明らかにされていない。
【0053】
さらに、CesA遺伝子とは対照的に、Csl遺伝子の機能を特定することは困難であることが分かっている。事実、高等植物の複数のCsl遺伝子のうち、CslA及びCslFグループのみに、一定の機能が割り当てられている。
【0054】
本発明によって、CslH遺伝子ファミリーのメンバーが(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードすることが明らかにされた。
【0055】
(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードする、CslHヌクレオチド配列および対応するアミノ酸配列の同定の結果、本発明はとりわけ、細胞中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼのレベルおよび/または活性を調節し、ならびに/あるいは細胞により生成される(1,3;1,4)−β−D−グルカンのレベルを調節するための方法および組成物を提供する。
【0056】
したがって、第1の態様において、本発明は、細胞により生成される(1,3;1,4)−β−D−グルカンのレベルを調節する方法であって、該細胞中のCslHによりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼのレベルおよび/または活性を調節するステップを含む方法を提供する。
【0057】
「細胞」は、任意の適当な真核細胞または原核細胞とすることができる。したがって、本明細書において言及される「細胞」とは、酵母細胞もしくは菌糸真菌細胞などの真菌細胞;哺乳動物細胞などの動物細胞もしくは昆虫細胞;または植物細胞をはじめとする真核細胞とすることができる。あるいは、細胞は、大腸菌(E. coli)細胞を含む細菌細胞または古細菌細胞などの原核細胞とすることもできる。
【0058】
いくつかの実施形態において、細胞は、植物細胞、線維束植物細胞、例えば単子葉被子植物細胞もしくは双子葉被子植物細胞、または裸子植物細胞などである。いくつかの実施形態において、植物は単子葉植物細胞である。いくつかの実施形態において、植物は、イネ目のメンバーである。いくつかの実施形態において、単子葉植物細胞は、穀類植物細胞である。
【0059】
本明細書において用いられる「穀類植物」という用語は、ヒトまたは動物の食料用の食用穀類を作出するイネ目(イネ科植物属)のメンバーを含む。イネ目穀類植物の例としては、決して本発明を限定するものではないが、コムギ、イネ、トウモロコシ、キビ、ソルガム、ライムギ、トリチカレ、オートムギ、オオムギ、テフ、野生米、スペルトコムギなどが挙げられる。しかしながら、穀類植物という用語は同様に、アマランス、ソバ、キノアなどの、食用穀類を作出しかつ偽穀類(pseudocereal)としても知られる非イネ目種のいくつかの植物を含むと理解されるべきである。
【0060】
他の実施形態において、本発明は、他の単子葉植物、例えばロリウム種(Lolium spp)などの牧草を含むイネ目の他の非穀類植物などの使用を包含する。
【0061】
上記の通り、本発明は、1つには、細胞中のCslHによりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼのレベルおよび/または活性を調節することに基づく。
【0062】
「CslHによりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼ」は、(1,3;1,4)−β−D−グルカンの合成を触媒し、任意により、グルコピラノシル単量体の重合を触媒することができる、CslHによりコードされる任意のタンパク質とみなされるべきである。
【0063】
いくつかの実施形態において、CslHによりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼは、配列番号2に示されるアミノ酸配列又はそれに対し少なくとも50%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0064】
いくつかの実施形態において、CslHによりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼは、配列番号2に対して少なくとも50%、少なくとも51%、少なくとも52%、少なくとも53%、少なくとも54%、少なくとも55%、少なくとも56%、少なくとも57%、少なくとも58%、少なくとも59%、少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも90.5%、少なくとも91%、少なくとも91.5%、少なくとも92%、少なくとも92.5%、少なくとも93%、少なくとも93.5%、少なくとも94%、少なくとも94.5%、少なくとも95%、少なくとも95.5%、少なくとも96%、少なくとも96.5%、少なくとも97%、少なくとも97.5%、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、少なくとも99.5%又は100%のアミノ酸配列同一性を含む。
【0065】
アミノ酸配列を比較する場合に、比較される配列は、配列番号2の少なくとも100個のアミノ酸残基、少なくとも200個のアミノ酸残基、少なくとも400個のアミノ酸残基、少なくとも800個のアミノ酸残基、又は全長にわたる比較ウィンドウと比較しうる。比較ウィンドウは、2つの配列の最適アライメントのための基準配列(付加または欠失を含まない)と比較して、約20%以下の付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含む場合がある。比較ウィンドウをアライメントするための配列の最適アライメントは、Altschul et al.(Nucl. Acids Res. 25: 3389-3402, 1997)が開示したプログラムのBLASTファミリーのようなアルゴリズムをコンピュータに実装して実施することができる。配列分析の詳細な検討は、Ausubel et al.のUnit 19.3に記載されている("Current Protocols in Molecular Biology" John Wiley & Sons Inc, 1994-1998, Chapter 15,1998)。
【0066】
本発明により想定されるさらなるCslHによりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼの例としては、配列番号2のCslHによりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼのオーソログが含まれる。
【0067】
例えば、配列番号2のオオムギ(Hordeum vulgare)オーソログ又は対立遺伝子変異体には、例えば、配列番号70に示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドがある。配列番号2のイネ(Oryza sativa)オーソログには、例えば、配列番号4、配列番号6および配列番号8に示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドがある。配列番号2のコムギ(Triticum aestivum)オーソログには、例えば、配列番号75、配列番号76および配列番号77に示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドがある。
【0068】
本明細書に記載の通り、CslHによりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼの「レベル」の調節は、細胞中のCslH転写産物および/またはCslHによりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼポリペプチドのレベルの調節を含むと理解されるべきである。CslHによりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼの「活性」の調節は、細胞中のCslHによりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼの総活性、比活性、半減期および/または安定性の調節を含むと理解されるべきである。
【0069】
CslHによりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼのレベルおよび/または活性に関する「調節」によって、細胞中のCslHによりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼのレベルおよび/または活性を減少または増加させることを意図する。「減少させる」とは、例えば、細胞中のCslHによりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼのレベルまたは活性の1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%の低下を意図する。「増加させる」とは、例えば、細胞中のCslHによりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼのレベルまたは活性の1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍の増加を意図する。「調節」とは同様に、CslHによりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼを、この導入される酵素を通常は発現していない細胞に導入すること、またはそのような活性を通常有する細胞におけるCslHによりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼの実質的に完全な阻害を含む。
【0070】
いくつかの実施形態において、細胞により生成される(1,3;1,4)−β−D−グルカンのレベルは、細胞中のCslHによりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼのレベルおよび/または活性を増加させることにより増加される。別の実施形態において、細胞により生成される(1,3;1,4)−β−D−グルカンのレベルは、細胞中のCslHによりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼのレベルおよび/または活性を減少させることにより減少される。
【0071】
本発明の方法は、細胞中のCslHによりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼのレベルおよび/または活性を調節することができる、当技術分野において公知の任意の手段を包含する。これには、CslHによりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼアゴニストもしくはアンタゴニストの適用のような、細胞中でのCslHによりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼの活性を調節する薬剤の適用、細胞中でのCslHによりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼ活性を模擬する薬剤の適用、細胞中でのCslHによりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードするCslH核酸の発現の調節、または比活性、半減期および/もしくは安定性の増加したもしくは減少した(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼが細胞によって発現されるような、細胞中での改変型もしくは変異型CslH核酸の発現の達成などが含まれる。
【0072】
いくつかの実施形態において、(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼのレベルおよび/または活性は、細胞中のCslH核酸の発現を調節することにより調節する。
【0073】
したがって、第2の態様において、本発明は、細胞中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼのレベルおよび/または活性を調節する方法であって、細胞中のCslH核酸の発現を調節するステップを含む方法を提供する。
【0074】
本明細書において用いられる「CslH核酸」という用語は、以下:
(i)本明細書において定義されるCslHによりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードする核酸分子;および/または
(ii)配列番号1に示されるヌクレオチド配列に対して少なくとも50%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む核酸分子;および/または
(iii)ストリンジェントな条件下で、配列番号1に示されるヌクレオチド配列の1以上を含む核酸分子にハイブリダイズする核酸分子
を含むと理解されるべきである。
【0075】
いくつかの実施形態において、CslH核酸は、配列番号1に対して少なくとも50%、少なくとも51%、少なくとも52%、少なくとも53%、少なくとも54%、少なくとも55%、少なくとも56%、少なくとも57%、少なくとも58%、少なくとも59%、少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも90.5%、少なくとも91%、少なくとも91.5%、少なくとも92%、少なくとも92.5%、少なくとも93%、少なくとも93.5%、少なくとも94%、少なくとも94.5%、少なくとも95%、少なくとも95.5%、少なくとも96%、少なくとも96.5%、少なくとも97%、少なくとも97.5%、少なくとも98%、少なくとも98.5%、少なくとも99%、少なくとも99.5%又は100%の配列同一性を含む。
【0076】
同一性の%を計算するために、核酸配列を配列番号1と比較する際に、比較されるヌクレオチド配列は、配列番号1の少なくとも300個のヌクレオチド残基、少なくとも600個のヌクレオチド残基、少なくとも1200個のヌクレオチド残基、少なくとも2400個のヌクレオチド残基、又は全長にわたる比較ウィンドウに対して比較されるべきである。比較ウィンドウは、2個の配列の最適アライメントのための基準配列(付加または欠失を含まない)に対して比較したときに、約20%以下の付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含む場合がある。比較ウィンドウをアライメントするための配列の最適アライメントは、Altschul et al.(Nucl. Acids Res. 25: 3389-3402, 1997)が開示したプログラムのBLASTファミリーのようなアルゴリズムをコンピュータに実装して実施することができる。配列分析の詳細な検討は、Ausubel et al.のユニット19.3に記載されている("Current Protocols in Molecular Biology" John Wiley & Sons Inc, 1994-1998, Chapter 15,1998)。
【0077】
上述したように、CslH核酸は、ストリンジェントな条件下で配列番号1に示されるヌクレオチド配列を含む核酸分子に対してハイブリダイズする核酸を含みうる。本明細書において用いられる「ストリンジェントな」ハイブリダイゼーション条件とは、塩濃度が約1.5M Naイオン未満であり、通常は約0.01から1.0M Naイオン濃度(または他の塩)、pH7.0〜8.3であって、温度は少なくとも30℃を条件とする。ストリンジェントな条件は、ホルムアミドのような不安定化剤の添加によっても達成できる。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、低ストリンジェンシー条件、中程度のストリンジェンシー条件、または高ストリンジェンシー条件であってもよい。典型的な低ストリンジェンシー条件には、37℃で30%〜35%ホルムアミド、1M NaCl、1%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)の緩衝溶液を使用するハイブリダイゼーションと、50〜55℃で1×〜2×SSC中での洗浄(20×SSC=3.0M NaCl/0.3Mクエン酸三ナトリウム)を含む。典型的な中程度のストリンジェンシー条件には、37℃で40%〜45%ホルムアミド、1.0M NaCl、1%SDSの緩衝溶液中でのハイブリダイゼーションと、55℃〜60℃で0.5×〜1×SSC中での洗浄を含む。典型的な高ストリンジェンシー条件には、37℃で50%ホルムアミド、1M NaCl、1%SDSの緩衝溶液中でのハイブリダイゼーションと、60℃〜65℃での0.1×SSCの洗浄を含む。任意により、洗浄緩衝溶液は、約0.1%から約1%のSDSを含む場合もある。ハイブリダイゼーションの時間は、一般に約24時間未満であり、通常は約4時間〜約12時間である。
【0078】
ハイブリダイゼーションの特異性は、ハイブリダイゼーション後の洗浄の関数でもあり、最終洗浄液のイオン強度および温度により影響を受ける。DNA−DNAハイブリッドの場合、TはMeinkothおよびWahlの式(Anal. Biochem. 138: 267-284, 1984)から概算される。すなわち、T=81.5℃+16.6(log M)+0.41(%GC)−0.61(%ホルムアミド)−500/Lである。ここでMは、一価の陽イオンのモル濃度、%GCは、DNA中のグアノシンおよびシトシンヌクレオチドの割合、%ホルムアミドは、ハイブリダイゼーション溶液中のホルムアミドの割合であり、Lは、塩基対中のハイブリッド長さである。Tは、相補的なターゲット配列の50%が完全にマッチするプローブに対してハイブリダイズする温度(定義されたイオン強度およびpHに基づく)である。Tは、1%のミスマッチごとに約1℃下がる。したがって、T、ハイブリダイゼーションおよび/または洗浄条件は、異なる度合いの相補性を有する配列に対してハイブリダイズするために調整することができる。例えば、90%以上の同一性を有する配列は、Tを約10℃下げることによりハイブリダイズできる。一般に、ストリンジェントな条件は、定義されたイオン強度およびpHにおける特定の配列およびその相補体の熱融解点(T)よりも低くなるよう選択される。例えば、高ストリンジェンシー条件では、熱融解点(T)よりも、例えば1、2、3、4または5℃低い温度でのハイブリダイゼーションおよび/または洗浄を利用することができる。中程度のストリンジェンシー条件では、熱融解点(T)よりも、例えば6、7、8、9または10℃低い温度でのハイブリダイゼーションおよび/または洗浄を利用することができる。低ストリンジェンシー条件では、熱融解点(T)よりも、例えば12、13、14、15または20℃低い温度でのハイブリダイゼーションおよび/または洗浄を利用することができる。上記式、ハイブリダイゼーションおよび洗浄組成と望ましいTを使用することにより、当業者は、ハイブリダイゼーションおよび/または洗浄溶液のストリンジェンシーにおけるバリエーションが本来的に記載されていることを理解するだろう。望ましい程度のミスマッチは、45℃未満(水溶性溶液)または32℃未満(ホルムアミド溶液)のTの結果になるとすれば、より高温を利用できるようにSSC濃度を高めることができる。核酸のハイブリダイゼーションに関する広範なガイドは、Tijssen(Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology-Hybridization with Nucleic Acid Probes, Pt I, Chapter 2, Elsevier, New York, 1993)、Ausubel et al.編(Current Protocols in Molecular Biology, Chapter 2, Greene Publishing and Wiley-Interscience, New York, 1995)およびSambrook et al.(Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Plainview, NY, 1989)に述べられている。
【0079】
本発明により想定されるさらなるCslH核酸の例としては、配列番号1のオーソログであるコード領域を有する核酸が含まれる。
【0080】
例えば、配列番号1のオオムギ(Hordeum vulgare)コード領域オーソログ又は対立遺伝子変異体には、例えば、配列番号69に示されるヌクレオチド配列を含む核酸がある。配列番号1のイネ(Oryza sativa)コード領域オーソログには、例えば、配列番号3、配列番号5および配列番号7に示されるヌクレオチド配列を含む核酸がある。配列番号1のコムギ(Triticum aestivum)コード領域オーソログには、例えば、配列番号72、配列番号73および配列番号74に示されるヌクレオチド配列を含む核酸がある。
【0081】
本発明により想定されるCslH核酸はまた、1以上の非翻訳領域、例えば3’および5’非翻訳領域、および/またはイントロンを含んでもよい。例えば、本発明により想定されるCslH核酸は、例えば、mRNA配列、cDNA配列またはゲノムヌクレオチド配列を含む。
【0082】
いくつかの特定の実施形態において、CslH核酸は、1以上の非タンパク質コード領域および/または1以上のイントロンを含んでもよい、生物由来のゲノムヌクレオチド配列を含む。CslH核酸を含むゲノムヌクレオチド配列としては、例えば以下が挙げられる:
オオムギ(Hordeum vulgare)CslHゲノムヌクレオチド配列、例えば配列番号9および/または配列番号71に示される配列;
イネ(Oryza sativ)CslHゲノムヌクレオチド配列、例えば配列番号10、配列番号11および/または配列番号12のいずれか1以上に示される配列;ならびに/あるいは
コムギ(Triticum aestivum)CslHゲノムヌクレオチド配列、例えば配列番号78、配列番号79および/または配列番号80のいずれか1以上に示される配列。
【0083】
上記の通り、本発明は、細胞中のCslH核酸の発現を調節する方法を提供する。本発明は、細胞中のCslH核酸の発現を調節することができる任意の方法を包含する。
【0084】
CslH核酸の発現に関して「調節する」という用語は、一般的に、CslH核酸の転写および/または翻訳を増加または減少させることを指す。「減少させる」とは、例えば、CslH核酸の転写および/または翻訳の1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、 91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%の低下を包含している。「増加させる」とは、例えば、CslH核酸の転写および/または翻訳の1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍以上の増加を包含している。調節することはまた、通常特定の細胞中では見いだされないCslH核酸の発現を導入すること、または通常当該活性を有する細胞中のCslH核酸の発現の実質的に完全な阻害(例、ノックアウト)を含む。
【0085】
細胞中の特定の核酸分子の発現を調節する方法は、当技術分野において公知であり、本発明ではそのような任意の方法を包含する。CslH核酸の発現を調節する典型的な方法は、内在性CslH核酸の発現をアップレギュレーションまたはダウンレギュレーションさせるような細胞の遺伝的改変、CslH核酸での形質転換による遺伝的改変、細胞中での内在性CslH核酸の発現を調節する核酸分子の細胞への投与などを含む。
【0086】
いくつかの実施形態において、CslH核酸の発現を、細胞の遺伝子的改変により調節する。本明細書において用いられる「遺伝的に改変された」という用語は、細胞の遺伝的に改変されていない形態に比べて、遺伝的に改変された細胞中でのCslH核酸の発現の改変に影響を及ぼす任意の遺伝的改変を含むと理解されるべきである。本明細書において包含される遺伝的改変の典型的なタイプとしては、トランスポゾン、化学物質、紫外線またはファージ突然変異誘発などのランダム突然変異誘発と、内在性CslH核酸を過剰発現または過小発現する変異体の選別;細胞中でのCslH核酸の発現および/または過剰発現を指令する1以上の核酸分子の、細胞への一過的または安定的導入;内在性CslH核酸の部位特異的突然変異誘発;細胞中での内在性CslH核酸の発現を阻害する1以上の核酸分子、例えば、コサプレッション構築物またはRNAi構築物の導入などが挙げられる。
【0087】
1つの特定の実施形態において、遺伝的改変は対象となる細胞への核酸の導入を含む。
【0088】
核酸は、例えば、SambrookおよびRussell(Molecular Cloning - A Laboratory Manual, 3rd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2000)に述べられたものなど、使用される細胞種に適した、当技術分野において公知の任意の方法を用いて導入することができる。
【0089】
細胞が植物細胞である本発明のいくつかの実施形態において、核酸分子の導入のための適切な方法には、アグロバクテリウム(Agrobacterium)媒介性の形質転換、マイクロプロジェクタイルボンバードメントに基づく形質転換方法および直接的DNA取り込みに基づく方法が挙げられる。Roa-Rodriguez et al.(Agrobacterium-mediated transformation of plants, 3rd Ed. CAMBIA Intellectual Property Resource, Canberra, Australia, 2003)は、広範な植物種について、適切なアグロバクテリウム(Agrobacterium)媒介性の植物形質転換方法を総説している。マイクロプロジェクタイルボンバードメントは、植物組織を形質転換したり、植物、特に穀類植物の形質転換方法に使用されている。また、当該方法は、Casas et al.(Plant Breeding Rev. 13: 235-264, 1995)により総説されている。プロトプラスト形質転換およびエレクトロポレーションなどの直接的なDNA取り込みによる形質転換プロトコルは、Galbraith et al.(編)(Methods in Cell Biology Vol. 50, Academic Press, San Diego, 1995)に詳しく述べられている。上記方法に加えて、さまざまな他の形質転換プロトコルを用いてもよい。例えば、浸潤、細胞および組織のエレクトロポレーション、胚のエレクトロポレーション、マイクロインジェクション、花粉管経路、炭化ケイ素およびリポソーム媒介による形質転換が挙げられる。これらのような方法は、Rakoczy-Trojanowska(Cell. Mol. Biol. Lett. 7: 849-858, 2002)により総説されている。他のさまざまな植物形質転換方法もまた、当業者にとって明らかなものである。
【0090】
導入される核酸は、一本鎖であってもまたは二本鎖でもよい。核酸は、mRNAに転写され、CslHによりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼまたは別のタンパク質に翻訳される。また核酸は、RNAi構築物、コサプレッション構築物、アンチセンスRNA,tRNA、miRNA、siRNA,ntRNAなどのような非翻訳RNAをコードしてもよく、あるいは、直接細胞中で作用してもよい。導入された核酸は、未修飾のDNAもしくはRNA、またはヌクレオチド塩基、糖もしくはリン酸骨格に対する修飾を含むが、核酸に対する機能的等価性を保持する修飾DNAもしくはRNAの場合がある。導入された核酸は、細胞中で任意により複製されてもよいし、細胞の染色体または染色体外エレメントに組み込まれてもよいし、ならびに/あるいは、細胞により転写されてもよい。導入された核酸はまた、宿主細胞に関して同種または異種のいずれかでよい。すなわち、導入された核酸は、遺伝的に改変された細胞と同じ生物種の細胞から得られるか(すなわち同種)、または導入された核酸は、異なる生物種から得られる(すなわち異種)。トランスジーンは、合成トランスジーンでもよい。
【0091】
1つの特定の実施形態において、本発明は、CslH核酸を細胞において発現、過剰発現または細胞に導入することにより、細胞により生成される(1,3;1,4)−β−D−グルカンのレベルを増加させることを包含する。
【0092】
(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードするCslHヌクレオチド配列を同定することにより、さらなる実施形態において、本発明は、細胞中のCslHによりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼの発現をダウンレギュレーションする方法も提供する。
【0093】
例えば、(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードするCslH遺伝子の同定は、以下などの方法による細胞中でのCslHによりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼのノックアウトまたはノックダウンなどの方法を容易にする:
ノックアウト構築物との相同組換えによる、細胞中のCslH核酸のノックアウトまたはノックダウンを含む、細胞中のCslH核酸の挿入突然変異(植物での標的化遺伝子破壊の例としては、Terada et al., Nat. Biotechnol. 20: 1030-1034, 2002を参照);
細胞中のCslH核酸の転写後遺伝子抑制(PTGS)またはRNAi(PTSGおよびRNAiの総説については、Sharp, Genes Dev. 15(5): 485-490, 2001、およびHannon, Nature 418: 244-51, 2002を参照);
CslH核酸を標的とするアンチセンス構築物での細胞の形質転換(植物のアンチセンス抑制の例については、van der Krol et al.、Nature 333: 866-869、van der Krol et al.、BioTechniques 6: 958-967、およびvan der Krol et al.、Gen. Genet. 220: 204-212を参照);
CslH核酸を標的とするコサプレッション構築物での細胞の形質転換(植物のコサプレッションの例については、van der Krol et al.、Plant Cell 2(4): 291-299を参照);
CslH核酸を標的とする二本鎖RNAをコードする構築物での細胞の形質転換(dsRNA介在遺伝子抑制の例については、Waterhouse et al.、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95: 13959-13964, 1998を参照);
CslH核酸を標的とするsiRNAまたはヘアピンRNAをコードする構築物での細胞の形質転換(siRNAまたはヘアピンRNA介在遺伝子抑制の例については、Lu et al.、Nucl. Acids Res. 32(21): e171、doi:10.1093/nar/gnh170, 2004を参照);ならびに/あるいは
CslH核酸と機能的に連結されるようなmiNRA標的配列の挿入(例えば、miRNAが媒介する遺伝子抑制の例については、Brown et al., Blood 110(13): 4144-4152, 2007参照)。
【0094】
本発明は、細胞に投与されるCslH核酸を標的とするsiRNAまたはマイクロRNAなどの合成オリゴヌクレオチドの利用によって、細胞中のCslH核酸のダウンレギュレーションも促進するものである(合成siRNA介在抑制の例については、Caplen et al.、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98: 9742-9747, 2001、Elbashir et al.、Genes Dev. 15: 188-200, 2001、Elbashir et al.、Nature 411: 494-498, 2001、Elbashir et al.、EMBO J. 20: 6877-6888, 2001、およびElbashir et al.、Methods 26: 199-213, 2002を参照)。
【0095】
上記例の他に、導入された核酸は、CslH核酸に直接関係しないヌクレオチド配列を含むこともあるが、それでも、細胞中のCslH核酸の発現を直接的または間接的に調節することがある。例としては、細胞中の内在性CslH核酸分子の発現を促進するまたは抑制する転写因子または他のタンパク質をコードする核酸分子、直接的または間接的に内在性のCslHによりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼの発現を促進または抑制する他の非翻訳RNAなどがある。
【0096】
遺伝的に改変された細胞中での導入核酸の発現を達成するため、必要に応じ、導入核酸は1以上の制御配列に機能的に連結されてもよい。「制御配列」という用語は、機能的に連結された核酸またはそれによりコードされる転写産物もしくはタンパク質の転写、翻訳およびまたは翻訳後修飾に必要なまたは有利な任意のヌクレオチド配列を含むと理解されるべきである。各制御配列は、機能的に連結された核酸に対し生来的でもまたは外来性でもよい。制御配列としては、リーダー、ポリアデニル化配列、プロペプチドをコードする配列、プロモーター、エンハンサーまたは上流の活性化配列、シグナルペプチドをコードする配列、および転写ターミネーターが挙げられるが、これらに限定されない。典型的には、制御配列はプロモーターを少なくとも含む。
【0097】
本明細書において用いられる「プロモーター」という用語は、細胞中の核酸分子の発現を実現する、活性化する、または増強する任意の核酸をいう。プロモーターは、一般的に、プロモーターが制御する遺伝子の5'(上流)に位置させる。異種プロモーター/遺伝子の組み合わせである構築物において、プロモーターと遺伝子(該プロモーターが自然環境において制御する遺伝子、すなわち該プロモーターが由来する遺伝子)との間の距離にほぼ等しい遺伝子転写開始部位からの距離に、プロモーターを配置することが望ましい。当技術分野において周知の通り、この距離の変更は、プロモーター機能を失うことなく収めることができる。
【0098】
プロモーターは、物理応力、病原体または特に金属イオンなどの外部刺激に反応して、あるいは1以上の転写活性化因子に反応して発現が生じる細胞、組織、器官または発生段階に関し、構成的に、または特異的に、機能的に連結したヌクレオチドの発現を制御してもよい。つまり、本発明の方法に従って使用されるプロモーターは、構成的プロモーター、誘導性プロモーター、組織特異的のプロモーターまたは活性化プロモーターを含んでもよい。
【0099】
本発明は、対象となる細胞で活性を有する任意のプロモーターを使用することを包含している。つまり、細菌、真菌、動物細胞または植物細胞のいずれかで活性を有する多様なプロモーターは、当業者であれば容易に理解するだろう。しかし、いくつかの実施形態においては、植物細胞を使用する。これらの実施形態では、植物で活性な構成的、誘導性、組織特異的または活性可能なプロモーターが典型的に使用される。
【0100】
植物の構成的プロモーターは、通常植物のほぼ全ての組織での発現を指令し、環境および発生的要因からは、概ね独立している。本発明に従い使用することができる構成的プロモーターの例には、カリフラワーモザイクウイルス35Sおよび19S(CaMV35SおよびCaMV19S)プロモーターなどの植物ウイルス由来のプロモーター、例えばアグロバクテリウム(Agrobacterium)から得られるノパリンシンターゼ(nos)プロモーターなど、アグロバクテリウム種(Agrobacterium spp.)より得られるオパインプロモーターなどの細菌性植物病原体由来のプロモーター、およびルビスコ小サブユニット遺伝子(rbcS)プロモーター、植物ユビキチンプロモーター(Pubi)、イネアクチンプロモーター(Pact)およびオートムギグロブリンプロモーターなどの植物由来のプロモーターが含まれる。
【0101】
「誘導性」プロモーターには、化学的に誘導可能なプロモーターおよび物理的に誘導可能なプロモーターが含まれるが、これらに限定されない。化学的に誘導可能なプロモーターは、アルコール、抗生物質、ステロイド、金属イオンまたは他の化合物などの化学化合物により制御される活性を有するプロモーターを含む。化学的に誘導可能なプロモーターの例には、アルコール制御プロモーター(例、欧州特許第637339号参照)、テトラサイクリン制御プロモーター(例、米国特許第5,851,796号および米国特許第5,464,758号参照)、グルココルチコイド受容体プロモーター(例、米国特許第5,512,483号参照)、エストロゲン受容体プロモーター(例、欧州特許出願第1 232 273号参照)、エクジソン受容体プロモーター(例、米国特許第6,379,945号参照)などのステロイド反応プロモーター、メタロチオネインプロモーター(例、米国特許4,940,661号、米国特許第4,579,821号および米国特許第4,601,978号参照)などの金属応答プロモーター、ならびにキチナーゼプロモーターまたはリゾチームプロモーター(例、米国特許第5,654,414号参照)またはPRタンパク質プロモーター(例、米国特許第5,689,044号、米国特許第5,789,214号、豪州特許第708850号、米国特許第6,429,362号参照)などの病因関連プロモーターを含む。
【0102】
誘導性プロモーターは、温度(高温、低温とも)、光などの非化学的環境要因により制御される物理的に制御されるプロモーターである場合もある。物理的に制御されるプロモーターの例には、ヒートショックプロモーター(例、米国特許第5,447858号、豪州特許第732872号、カナダ国特許出願第1324097号参照)、低温誘導性プロモーター(例、米国特許第6,479,260号、米国特許第6,084、08号、米国特許第6,184,443号および米国特許第5,847,102号)、光誘導性プロモーター(例、米国特許第5,750,385号およびカナダ国特許第1321563号参照)、光抑制性プロモーター(例、ニュージーランド特許第5081033号および米国特許第5,639,952号)を含む。
【0103】
「組織特異的プロモーター」には、選択的にまたは特異的に、生物中の1以上の特定の細胞、組織もしくは器官、および/または生物の1以上の発生段階で発現するプロモーターが含まれる。組織特異的プロモーターは、場合によっては誘導性であってもよい。
【0104】
植物の組織特異的プロモーターの例には、米国特許出願第2001047525号に記載された通りの根特異的プロモーター、欧州特許第316441号、米国特許第5,753,475号および欧州特許出願第973922号に記載の通りの子房特異的および花托組織特異的プロモーターをはじめとする果実特異的プロモーター、ならびに豪州特許第612326号および欧州特許出願第0781849号および豪州特許第746032号に記載の通りの種子特異的プロモーターが含まれる。
【0105】
いくつかの実施形態において、組織特異的プロモーターは、種子および/または穀粒特異的プロモーターである。種子または穀粒特異的プロモーターの例には、puroindoline−b遺伝子プロモーター(例えば、Digeon et al.、Plant Mol. Biol. 39: 1101-1112, 1999を参照)、Pbf遺伝子プロモーター(例えば、Mena et al.、Plant J. 16:53-62, 1998)、GS1−2 遺伝子プロモーター(例えば、Muhitch et al.、Plant Sci. 163:865-872, 2002)、グルテリンもしくはGt1遺伝子プロモーター(例えば、Okita et al., J. Biol. Chem. 264: 12573-12581, 1989、Zheng et al.、Plant J. 4: 357-366, 1993、Sindhu et al.、Plant Sci. 130: 189-196, 1997、 Nandi et al.、Plant Sci. 163: 713-722, 2002を参照)、Hor2−4遺伝子プロモーター(例えば、KnudsenおよびMuller, Planta 195: 330-336, 1991、Patel et al.、Mol. Breeding 6: 113-123, 2000、Wong et al.、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99: 16325-16330, 2002を参照)、リポキシゲナーゼ1遺伝子プロモーター(例えば、Rouster et al.、Plant J. 15: 435-440, 1998を参照)、Chi26遺伝子プロモーター(例えば、Leah et al.、Plant J. 6: 579-589, 1994を参照)、Glu−D1−1遺伝子プロモーター (例えば、Lamacchia et al.、J. Exp. Bot. 52: 243-250, 2001、Zhang et al.、Theor. Appl. Genet. 106: 1139-1146, 2003を参照)、Hor3−1遺伝子プロモーター(例えば、Sorensen et al.、Mol. Gen. Genet. 250: 750-760, 1996、Horvath et al.、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97: 1914-1919, 2000を参照)およびWaxy(Wx)遺伝子プロモーター(例えば、Yao et al.、Acta Phytophysiol. Sin. 22: 431-436, 1996、Terada et al.、Plant Cell Physiol. 41: 881-888, 2000、Liu et al.、Transgenic Res. 12: 71-82, 2003を参照)がある。1つの特定の実施形態において、種子特異的プロモーターは胚乳特異的プロモーターである。
【0106】
プロモーターは、本明細書において「活性化可能プロモーター」と呼ばれる、1以上の所定の転写活性化因子により活性化可能であるプロモーターでもよい。例えば、活性化可能プロモーターは、上流活性化配列(UAS)に機能的に連結された最小プロモーターを含む場合がある。これはとりわけ、1以上の転写活性化因子のDNA結合部位を含む。
【0107】
本明細書に記載の通り、「最小プロモーター」という用語は、少なくともRNAポリメラーゼ結合部位、好ましくはTATAボックスおよび転写開始部位および/または1以上のCAATボックスを組み入れた任意のプロモーターを含むと理解されるべきである。細胞が植物細胞である場合、最小プロモーターは、例えばカリフラワーモザイクウイルス35S(CaMV 35S)プロモーターに由来することができる。CaMV 35S由来の最小プロモーターは、例えばCaMV 35Sプロモーターの(転写開始部位の)−90位から+1位(−90 CaMV 35S最小プロモーターとも称される)、CaMV 35Sプロモーターの−60位から+1位(−60 CaMV 35S最小プロモーターとも称される)またはCaMV 35Sプロモーターの−45位から+1位(−45 CaMV 35S最小プロモーターとも称される)に相当する配列を含むことができる。
【0108】
上述した通り、活性化可能プロモーターは、上流活性化配列(UAS)に融合された最小プロモーターを含むことがある。UASは、最小プロモーターを活性化するために転写活性因子を結合することが可能な任意の配列でありうる。転写活性因子の例として、例えば、Gal4、Pdr1、Gcn4およびAce1などの酵母由来の転写活性因子、VP16、Hap1(Hach et al.、J Biol Chem 278: 248-254, 2000)、Gaf1(Hoe et al.、Gene 215(2): 319-328, 1998)、E2F(Albani et al.、J Biol Chem 275: 19258-19267, 2000)、HAND2(Dai and Cserjesi, J Biol Chem 277: 12604-12612, 2002)、NRF−1およびEWG(Herzig et al.、J Cell Sci 113: 4263-4273, 2000)、P/CAF(Itoh et al.、Nucl Acids Res 28: 4291 - 4298, 2000)、MafA(Kataoka et al.、J Biol Chem 277: 49903-49910, 2002)、ヒト活性転写因子4(LiangおよびHai、J Biol Chem 272: 24088 - 24095, 1997)、Bcl10(Liu et al.、Biochem Biophys Res Comm 320(1): 1-6, 2004)、CREB−H(Omori et al.、Nucl Acids Res 29: 2154 - 2162, 2001)、ARR1およびARR2(Sakai et al.、Plant J 24(6): 703-711, 2000)、Fos(Szuts and Bienz, Proc Natl Acad Sci USA 97: 5351-5356, 2000)、HSF4(Tanabe et al.、J Biol Chem 274: 27845 - 27856, 1999)、MAML1(Wu et al.、Nat Genet 26: 484-489, 2000)などのウイルス由来の転写活性因子が挙げられる。
【0109】
いくつかの実施形態において、UASは、少なくともGAL4転写活性因子のDNA結合ドメインと結合可能なヌクレオチド配列を含む。UAS配列は、少なくともGAL4のDNA結合ドメインを含む転写活性因子と結合する配列であり、本明細書において、UASと呼ぶ。特定の実施形態において、UASは、配列5’-CGGAGTACTGTCCTCCGAG-3’またはその機能的ホモログを含む。
【0110】
本明細書に記載の通り、UAS配列の「機能的ホモログ」は、少なくともGAL4のDNA結合ドメインと結合でき、UASヌクレオチド配列と少なくとも50%の同一性、少なくとも65%の同一性、少なくとも80%の同一性または少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む任意のヌクレオチド配列をいうと理解されるべきである。
【0111】
活性化可能プロモーター中のUAS配列は、DNA結合ドメイン標的配列の多数のタンデムリピートを含んでもよい。例えば、UASはその天然の状態においては、DNA結合ドメイン標的配列の4つのタンデムリピートを含む。したがって、DNA結合ドメイン標的配列のタンデムリピートの数に関して本明細書において用いられる「多数」という用語は、少なくとも2つ、少なくとも3つまたは少なくとも4つのタンデムリピートを含むと理解されるべきである。
【0112】
上記の通り、制御配列は、ターミネーターも含むことがある。「ターミネーター」という用語は、転写終了のシグナルを示す転写ユニットの終端にあるDNA配列をいう。ターミネーターは、一般にポリアデニル化シグナルを含む3’非翻訳DNA配列であって、一次転写産物の3’末端に対してポリアデニル化配列の付加を促進する。プロモーター配列と同様に、ターミネーターは、使用しようとする細胞、組織または器官で機能的な任意のターミネーター配列であってもよい。植物細胞中で有用でありうる適切なターミネーター配列の例には、ノパリンシンターゼ(nos)ターミネーター、CaMV 35Sターミネーター、オクトピンシンターゼ(ocs)ターミネーター、pinIIおよびpinIIIターミネーターなどのジャガイモのプロテイナーゼ阻害遺伝子(pin)ターミネーターが含まれる。
【0113】
細胞中のCslHによりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼのレベルおよび/または活性を調節することにより、細胞中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼのレベルを調節することは、いくつかの産業上の用途がある。
【0114】
例えば、(1,3;1,4)−β−D−グルカンは、粘性溶液を形成することで知られている。水溶性穀類(1,3;1,4)−β−D−グルカンの粘性を生じる物性は穀類加工の多くの局面において重要な決定因子である。例えば、オオムギ麦芽および穀類添加物由来の不完全に分解された(1,3;1,4)−β−D−グルカンは、麦汁およびビールの粘性に寄与できるが、麦汁分離およびビールのろ過における問題を伴う(例、Bamforth、Brew. Dig. 69 (5): 12-16, 1994を参照)。したがって、例えばいくつかの実施形態において、本発明は、ビール製造への適性を高めるため、オオムギ粒の1以上の細胞中のCslHによりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼのレベルおよび/または活性を減じることにより、オオムギ粒中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンのレベルを減じるために適用することもできる。
【0115】
水溶性穀類(1,3;1,4)−β−D−グルカンは、ブタや家禽などの単胃動物に対して反栄養的な効果(antinutritive effect)をもたらすとも考えられている。「反栄養的」な効果は、胃内容物の粘度を高め、消化酵素の放散および酵素作用の分解産物の吸収を遅らせることである。言い換えれば、これは成長率を遅らせることにつながる。さらに、家禽の飼料配合において、高い(1,3;1,4)−β−D−グルカン濃度は、「粘性の」糞に関係しており、これは(1,3;1,4)−β−D−グルカンの消化性が低いことを示し、かつ生産者にとって主要な取扱いおよび衛生上の問題になりうる。したがって、別の実施形態において、本発明は、動物飼料としての植物の適合性を改善するため、動物飼料に使用される植物の1以上の細胞中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンのレベルを低下させるのに適用することができる。
【0116】
しかしながら、穀類(1,3;1,4)−β−D−グルカンは、ヒトおよび動物の食事における食物繊維の重要な構成要素である。本明細書において用いられる「食物繊維」という用語は、大腸における完全なもしくは部分的な発酵とともにヒト小腸での消化および吸収に抵抗性を示す植物の可食部または類似の炭水化物を含むと理解されるべきである。「食物繊維」は、多糖類(特に(1,3;1,4)−β−D−グルカンを含む)、オリゴ糖、リグニンおよび関連する植物物質を含む。少なくともヒトの食事において、食物繊維は、全般的な腸の調子、便通、血中コレステロールの低減、および/または血中グルコールの低減を含めた有益な生理的効果を促進する。
【0117】
ヒトおよび単胃動物は、(1,3;1,4)−β−D−グルカンを分解する酵素を作らないが、いくぶんかの脱重合が胃および小腸で発生していることが示されている。これは、片利共生微生物の活性によるものと推測される。水溶性(1,3;1,4)−β−D−グルカンと他の非デンプン質の多糖類を比較すると、腸内細菌により容易に発酵し、可消化エネルギーにわずかながら寄与する。単胃動物における反栄養的効果とは対照的に、ヒトにおける高濃度のオートムギおよびオオムギ(1,3;1,4)−β−D−グルカンは、特に食事後の血糖値およびインスリン反応を抑えることにより、非インスリン依存の糖尿病にとって有益な効果をもたらす。食物中高濃度の(1,3;1,4)−β−D−グルカン(例えば20%w/v)は、食物から食物コレステロールまたは胆汁酸の吸収を抑えることにより、血清コレステロール濃度を下げることにも関連付けられている。
【0118】
したがって、別の実施形態において、本発明は、植物またはその部分中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンレベルを高めることにより、食用植物または食用植物部分の食物繊維含有量を増加させることに適用することもできる。いくつかの実施形態において、食用植物または植物の可食部分は、穀類植物またはその一部である。
【0119】
(1,3;1,4)−β−D−グルカンは、特に(1→3)−β−D−グルカンにおいて、他のいくつかの多糖類と同じく、細網内系統の細胞の受容体との結合により媒介されるプロセスにより、ヒトの免疫反応を変化させるとも考えられている。さらに、血中の抗体が産生される前に、最初の防衛線として発動するシステムである、ヒトの補体経路のタンパク質を活性化する能力を有することがある。
【0120】
本発明は、組換え発現系における(1,3;1,4)−β−D−グルカンの生成も促進する。例えば、(1,3;1,4)−β−D−グルカンは、プロモーター制御下にてCslH核酸を細胞に導入することにより組換え技術によって生成することもでき、続いて細胞はCslHによりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼを発現し、(1,3;1,4)−β−D−グルカンを生成する。
【0121】
CslH核酸を発現させるために使用することができる多様な組換え発現系は当技術分野において周知である。組換え発現系の例は、大腸菌発現系などの細菌発現系(Baneyx, Curr. Opin. Biotechnol. 10: 411-421, 1999 おいて総説されている。例:Gene expression in recombinant microorganisms, Smith (編), Marcel Dekker, Inc. New York, 1994、およびProtein Expression Technologies: Current Status and Future Trends, Baneyx (編), Chapters 2 and 3, Horizon Bioscience, Norwich, UK, 2004も参照)、バシラスspp.発現系(例:Protein Expression Technologies: Current Status and Future Trends, 前記, chapter 4を参照)、およびストレプトミセスspp.発現系(例:Practical Streptomyces Genetics, Kieser et al.(編), Chapter 17, John Innes Foundation, Norwich, UK, 2000を参照)、サッカロミセスspp.、シゾサッカロミセス・ポンベ、ハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)およびピチアspp.の発現系、ならびに糸状菌発現系などの酵母発現系を含む真菌発現系(例:Protein Expression Technologies: Current Status and Future Trends, 前記, chapters 5, 6および7、Buckholz and Gleeson, Bio/Technology 9(11): 1067-1072, 1991、Cregg et al.Mol. Biotechnol. 16(1): 23-52, 2000、CereghinoおよびCregg, FEMS Microbiology Reviews 24: 45-66, 2000、Cregg et al.、Bio/Technology 11: 905 - 910, 1993を参照)、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞に基づく発現系(例:Protein Expression Technologies: Current Status and Future Trends, 前記, chapter 9を参照)、バキュロウイルス発現系を含む昆虫細胞培養(例:Protein Expression Technologies: Current Status and Future Trends, 前記, chapter 8、KostおよびCondreay, Curr. Opin. Biotechnol. 10: 428-433, 1999、Baculovirus Expression Vectors: A Laboratory Manual WH Freeman & Co., New York, 1992、およびThe Baculovirus Expression System: A Laboratory Manual, Chapman & Hall, London, 1992を参照)、タバコ、ダイズ、イネおよびトマト細胞発現系などの植物細胞発現系(例:Hellwig et al.、Nat Biotechnol 22: 1415-1422, 2004の概説を参照)などを含む。
【0122】
したがって、第3の態様において、本発明は、(1,3;1,4)−β−D−グルカンの生成方法であって、単離されたCslH核酸で細胞を形質転換するステップおよびその単離されたCslH核酸を細胞に発現させるステップを含む方法を提供する。
【0123】
いくつかの実施形態において、細胞は、先に定義された通りの組換え発現系から得られる細胞である。
【0124】
第4の態様において、本発明は、本発明の第3の態様の方法により生成された(1,3;1,4)−β−D−グルカンも提供する。
【0125】
第5の態様において、本発明は、
同じ分類群の野生型細胞と比較してそのレベルおよび/または活性が調節された、CslHによりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼ;ならびに/あるいは
同じ分類群の野生型細胞と比較してその発現が調節されたCslH核酸
を含む細胞を提供する。
【0126】
いくつかの実施形態において、細胞は、同じ分類群の野生型細胞と比較してそのレベルが調節された(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをさらに含む。
【0127】
いくつかの実施形態において、本発明の第5の態様の細胞は、本明細書に記載された本発明の第1または第2の態様の方法で作製される。別の実施形態において、細胞は植物細胞、単子葉植物細胞、イネ目植物細胞および/または穀類植物細胞である。
【0128】
さらに、第6の態様において、本発明は、本発明の第5の態様に係る1以上の細胞を含む多細胞構造物を提供する。
【0129】
本明細書では、「多細胞構造物」は、1以上の細胞の任意の凝集物を含む。したがって、「多細胞構造物」という用語は特に組織、器官、生物全体およびその一部を包含する。さらに、多細胞構造物は同様に、コロニー、植物カルス(plant calli)、懸濁培養物などの培養細胞の多細胞凝集物を包含すると理解されるべきである。
【0130】
上記の通り、本発明のいくつかの実施形態において、細胞は植物細胞であり、したがって本発明は、本発明の第6の態様に係る1以上の植物細胞を含む植物全体、植物組織、植物器官、植物部分、植物繁殖材料または培養植物組織を含む。
【0131】
別の実施形態において、本発明は、本発明の第5の態様に係る1以上の細胞を含む穀類植物を提供する。
【0132】
特定の実施形態において、本発明は、本発明の第5の態様に係る1以上の細胞を含む穀粒を提供する。
【0133】
したがって、第7の態様において、本発明は、そのレベルが調節された(1,3;1,4)−β−D−グルカンを含む穀粒であって、そのレベルおよび/または活性が調節された、CslHによりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼ、ならびに/あるいはその発現が調節されたCslH核酸分子を含む1以上の細胞を含む、上記穀粒を提供する。
【0134】
いくつかの実施形態において、穀粒は、同種と野生型穀粒を比較した場合に、(1,3;1,4)−β−D−グルカンのレベルが高くてもよい。別の実施形態において、穀粒は、同種由来の野生型穀粒と比較した場合に、(1,3;1,4)−β−D−グルカンのレベルが低くてもよい。
【0135】
穀粒がコムギ粒であるいくつかの実施形態において、コムギ粒は、風乾全粒の生体重基準で少なくとも1%、少なくとも1.1%、少なくとも1.2%、少なくとも1.3%、少なくとも1.4%、少なくとも1.5%、少なくとも1.6%、少なくとも1.7%、少なくとも1.8%または1.9%の(1,3;1,4)−β−D−グルカンのレベルを含む。
【0136】
第8の態様において、本発明は、以下:
本発明の第7の態様に記載の穀粒を製粉することにより製造される穀粉;および
任意により、1以上の他の穀粒を製粉することにより製造されたる穀粉
を含む穀粉も提供する。
【0137】
したがって、本発明の第7の態様である穀粒を製粉して生産される穀粉は、例えば、本発明の第9の態様の穀粉の約10重量%、20重量%、30重量%、40重量%、50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、90重量%または100重量%から構成されてもよい。
【0138】
本明細書に述べるように、「製粉」は、Brennan et al.(Manual of Flour and Husk Milling, Brennan et al.(編)、 AgriMedia, ISBN: 3-86037-277-7)に述べられた製粉などの、穀粒を製粉する当技術分野において周知の任意の方法を包含する。
【0139】
いくつかの実施形態において、穀粉に使用される本発明の第7の態様である穀粒を製粉して製造される穀粉は、野生型粉と比較した場合により高いレベルの(1,3;1,4)−β−D−グルカンを含む。
【0140】
「1以上の他の穀粒を製粉して製造される穀粉」は、先に定義された任意の穀類植物から得られる穀粒を製粉して製造される穀粉である。本発明の第8の態様である穀粉の成分は、例えば0重量%、10重量%、20重量%、30重量%、40重量%、50重量%、60重量%、70重量%、80重量%または90重量%を構成してもよい。
【0141】
いくつかの実施形態において、1以上の他の穀粒を製粉して製造される穀粉は、小麦粉である。また、これにより本発明の第8の態様の穀粉は、パン、ケーキ、ビスケットなどを調理するのに特に適している。
【0142】
上記の通り、本発明は、部分的には、(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼをコードするCslHヌクレオチド配列およびCslHアミノ酸配列の同定および単離に基づく。
【0143】
したがって、第9の態様において、本発明は、本明細書において上で定義した単離されたCslH核酸分子、又はその相補体、逆相補体若しくは断片を提供する。
【0144】
本発明において、「単離された」とは、元の環境(例えば、それが天然に存在するならば天然の環境)から取り出された物質をいい、したがって、「人の手によって」その天然の状態から改変されている。例えば、単離されたポリヌクレオチドは、ベクターもしくは組成物の一部とすることができ、又は細胞内に含まれてもよく、そのベクター、組成物、または特定の細胞は該ポリヌクレオチドの元の環境ではないので、依然として単離されている。「単離された」核酸分子は同様に、当技術分野において公知の方法を用いた化学合成によりまたはインビトロでの増幅(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応など)により作製されるものを含めて、合成核酸分子を含むと理解されるべきである。
【0145】
本発明の単離された核酸分子は、ポリリボヌクレオチドまたはポリデオキシリボヌクレオチドを含む。これは、未修飾のRNAもしくはDNA、または修飾されたRNAもしくはDNAでもよい。例えば、本発明の単離された核酸分子は、一本鎖および二本鎖のDNA、一本鎖および二本鎖領域の混合であるDNA、一本鎖および二本鎖RNA、ならびに一本鎖および/もしくは二本鎖領域の混合であるRNA、一本鎖、またはより典型的には二本鎖、もしくは一本鎖および二本鎖領域の混合でよいDNAとRNAを含むハイブリッド分子を含んでもよい。さらに、単離された核酸分子は、RNAもしくはDNA、またはRNAおよびDNAの両者を含む三本鎖領域から構成されてもよい。単離された核酸分子は、安定性または他の理由により修飾された1以上の塩基、またはDNAもしくはRNA骨格を含んでよい。「修飾」塩基は、例えば、イノシンなどのトリチル塩基および通常のものでない塩基を含む。さまざまな修飾をDNAおよびRNAに対して実施することができることから、「ポリヌクレオチド」は、化学的、酵素的または代謝的に修飾された形態を含む。
【0146】
上記の通り、本発明は、ヌクレオチド配列の断片を提供する。ヌクレオチド配列の「断片」とは、少なくとも15、20、30、40、50、100、150、200、250、300、325、350、375、400、450、500、550または600ヌクレオチド(nt)長とすべきである。これらの断片には、以下に限定されないが、診断用プローブおよびプライマーを含む多数の用途がある。もちろん、601〜3000nt長のものなどのより大きな断片も、全てではないが、CslH核酸の大部分に対応する断片と同様、本発明において有用である。
【0147】
いくつかの実施形態において、断片は、CslH核酸の機能的断片を含みうる。すなわち、本発明のポリヌクレオチド断片は、本明細書に定義される通りの(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼの機能的活性を有するポリペプチドをコードしうる。
【0148】
第10の態様において、本発明は、本発明の第9の態様の単離された核酸分子を含む遺伝子構築物またはベクターを提供する。
【0149】
ベクターまたは構築物は、さらに1以上の宿主の複製起点、1以上の宿主中で活性である選択可能なマーカー遺伝子、または細胞中で単離された核酸分子の転写を可能にする1以上の制御配列のうちの1以上を含んでもよい。
【0150】
「選択可能なマーカー遺伝子」は、細胞により発現される場合に、これら形質転換された細胞の同定および/または選択を促進する表現型を細胞に与える任意のヌクレオチド配列を含む。適切な選択マーカーをコードするヌクレオチド配列の範囲は、当技術分野において周知である。選択マーカーをコードするヌクレオチド配列の例は、抗生物質耐性遺伝子、例えばアンピシリン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、抗生物質オーレオバシジンAに対する耐性を与えるAURI−C遺伝子、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子(例:nptIおよびnptII)およびハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子(例:hpt)など、除草剤耐性遺伝子、例えばグルホシネート(glufosinate)、ホスフィノトリシンまたはビアラホス耐性遺伝子、例えばホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼコード遺伝子(例:bar)、3−エノイルピルビルシキミ酸(shikimate)5−リン酸塩シンターゼをコードする遺伝子をはじめとするグリホサート耐性遺伝子(例:aroA)、ブロミキシニル(bromyxnil)ニトリラーゼをコードする遺伝子をはじめとするブロミキシニル(bromyxnil)耐性遺伝子、ジヒドロプテレート(dihydropterate)シンターゼをコードする遺伝子をはじめとするスルホンアミド(salfonamide)耐性遺伝子(例:sul)およびアセトラクテートシンターゼをコードする遺伝子をはじめとするスルホニル尿素耐性遺伝子、GUSおよびクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)をコードする遺伝子などの酵素コードレポーター遺伝子、緑色蛍光タンパク質コード遺伝子などの蛍光レポーター遺伝子、ならびに、とりわけルシフェラーゼ遺伝子などの発光に基づくレポーター遺伝子を含む。
【0151】
さらに、選択可能なマーカー遺伝子は、構築物中の個々のオープンリーディングフレームであるか、あるいはCslHによりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼポリペプチドとの融合タンパク質として発現する場合もあることに注目すべきである。
【0152】
本発明の第10の態様は、本明細書に記載の通り、原核生物または真核生物中の遺伝子構築物の維持および/または複製、ならびに/あるいは遺伝子構築物またはその一部を原核生物または真核生物細胞のゲノムに組み込ませることを意図した、ヌクレオチド配列をさらに含む、本質的に全ての遺伝子構築物に及ぶ。
【0153】
いくつかの実施形態において、ベクターまたは構築物は、アグロバクテリウム(Agrobacterium)媒介形質転換により植物細胞に少なくとも一部移入されるようにつくられる。したがって、ベクターまたは構築物は、左および/または右T−DNA境界配列を含む。
【0154】
適切なT−DNA境界配列は、当業者によって容易に確認されよう。しかしながら、「T−DNA境界配列」という用語は、アグロバクテリウム属の種(Agrobacterium sp)の細胞からアグロバクテリウム(Agrobacterium)媒介性の形質転換を受けやすい植物細胞に移入される核酸分子の範囲を定める、実質的に相同のおよび実質的に直接反復性のヌクレオチド配列を含む。例えば、PeraltaおよびReamによる論文(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82(15): 5112-5116, 1985)およびGelvinの概説(Microbiology and Molecular Biology Reviews, 67(1): 16-37, 2003)を参照されたい。
【0155】
いくつかの実施形態において、ベクターまたは構築物は、アグロバクテリウム(Agrobacterium)媒介形質転換を介して植物に移入するためにつくられているが、本発明は、例えばBroothaerts et al.(Nature 433: 629-633, 2005)に記載されているようなアグロバクテリウム属の種(Agrobacterium sp.)以外の細菌を介して、細菌媒介による植物細胞への導入を促進する遺伝子構築物に対する任意の適切な改変も包含している。
【0156】
当業者は、所望であれば、本明細書に記載された構築物をどのように作製するか、また、所望の条件下で特定の細胞または細胞種でその発現を得るための必要条件を知るであろう。特に、本発明を実施するために必要な遺伝子操作は、大腸菌細胞などの原核細胞または植物細胞もしくは動物細胞での、本明細書に記載の遺伝子構築物またはその誘導体の増殖を必要とすることが、当業者に公知であろう。核酸分子をクローニングするための方法例は、Sambrook et al.(2000, 前記)に述べられている。
【0157】
第11の態様において、本発明は、本発明の第9の態様の単離された核酸分子または本発明の第10の態様の遺伝子構築物を含む細胞を提供する。
【0158】
本発明の第10もしくは第11の態様の単離された核酸分子、または本発明の第12の態様の遺伝子構築物は、当技術分野において周知の任意の手段を介して細胞中に導入することができる。
【0159】
上記に言及される単離された核酸分子または構築物は、エピソーム(例:プラスミド、コスミド、人工染色体または同様のもの)の一部分として、DNA分子として細胞中に維持されてもよいし、あるいは細胞のゲノムDNAに組み込まれてもよい。
【0160】
本明細書において用いられる「ゲノムDNA」という用語は、その最も広義な背景において、細胞の遺伝子相補体を構成するあらゆるDNAを含むと理解されるべきである。したがって、細胞のゲノムDNAは、染色体、ミトコンドリアDNA、色素体DNA 、葉緑体DNA、内在性プラスミドDNAなどを含むと理解されるべきである。したがって、「ゲノムに組み込まれた」という用語は、染色体への組み込み、ミトコンドリアDNAへの組み込み、色素体DNAへの組み込み、葉緑体DNAへの組み込み、内在性プラスミドへの組み込みなどを包含する。
【0161】
単離された核酸分子は、とりわけ、細胞が単離された核酸分子を発現するように、制御配列および/またはプロモーターに機能的に連結することができる。
【0162】
細胞は、原核細胞または真核細胞でありうる。したがって、細胞は大腸菌細胞もしくはアグロバクテリウム属の種(Agrobacterium spp.)の細胞を含む細菌細胞、または古細菌細胞などの原核細胞とすることができる。細胞は、酵母細胞または菌糸真菌細胞などの真菌細胞、哺乳類細胞または昆虫細胞などの動物細胞、または植物細胞を含む真核細胞であってもよい。特定の実施形態において、細胞は植物細胞である。いくつかの実施形態において、植物細胞は、単子葉植物細胞、イネ目植物細胞または穀物植物細胞である。
【0163】
第12の態様において、本発明は、本発明の第11の態様の1以上の細胞を含む、本明細書において上で定義した多細胞構造物を提供する。
【0164】
上記の通り、いくつかの実施形態において、細胞は植物細胞であり、したがって本発明は、本発明の第11の態様の1以上の細胞を含む植物全体、植物組織、植物器官、植物部分、植物繁殖材料または培養植物組織を特に含むと理解されるべきである。
【0165】
別の実施形態において、本発明は、本発明の第11の態様の1以上の細胞を含む、単子葉植物、イネ目植物もしくは穀類植物またはその部分を提供する。
【0166】
いくつかの実施形態において、本発明は、本発明の第11の態様の1以上の細胞を含む穀粒を提供する。
【0167】
上記の通り、本発明は、CslHによりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼのアミノ酸配列も提供する。したがって、第13の態様において、本発明は、本明細書において上で定義した、CslHによりコードされる単離された(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼ、またはその断片を提供する。
【0168】
単離されたポリペプチドは、ペプチド結合または修飾ペプチド結合、すなわちペプチドイソスター(isostere)によって互いに連結されたアミノ酸を含み、20種の遺伝子コードアミノ酸以外のアミノ酸を含んでもよい。本発明の単離されたポリペプチドは、翻訳後プロセシングなどの天然のプロセス、または当技術分野において周知である化学的修飾技術により修飾されてもよい。
【0169】
修飾は、ペプチド骨格、アミノ酸側鎖および/または末端を含めて、単離されたポリペプチドのどこで行われてもよい。同じ種類の修飾は、所定の単離されたポリペプチドの複数部位で同程度または種々の程度で存在してもよいことが理解されるだろう。また、本発明の単離されたポリペプチドは、多数の種類の修飾を含んでもよい。
【0170】
ポリペプチドは、例えばユビキチン化の結果として分岐しても、および/または、分岐の有無にかかわらず環状でもよい。環状の、分岐した、および分岐した環状ポリペプチドは、翻訳後自然プロセスの結果であっても、あるいは合成方法により作製されてもよい。
【0171】
修飾には、アセチル化、アシル化、ADPリボシル化、アミド化、ビオチン化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合の形成、脱メチル反応、共有結合性架橋の形成、システインの形成、ピログルタミン酸の形成、ホルミル化、ガンマカルボキシル化、グルコシル化、GPIアンカーの形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、ポリエチレングリコール(PEG)付加、タンパク質分解プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノル化、硫酸化、アルギニル化およびユビキンチン化などのトランスファーRNA媒介によるタンパク質へのアミノ酸付加が含まれる(例としては、Proteins--Structure And Molecular Properties 2nd Ed., Creighton (編), W. H. Freeman and Company, New York, 1993、Posttranslational Covalent Modification Of Proteins, Johnson (編), Academic Press, New York, 1983、Seifter et al., Meth Enzymol 182: 626-646, 1990、Rattan et al., Ann NY Acad Sci 663: 48-62,1992を参照)。
【0172】
上記の通り、本発明は、単離されたポリペプチドの断片も提供する。ポリペプチド断片は、該断片が「自立」するかまたは一部もしくは領域を形成する大きなポリペプチド内に含まれてもよい。
【0173】
ポリペプチド断片は、少なくとも3、4、5、6、8、9、10、11、12、13、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140または150アミノ酸長でありうる。
【0174】
いくつかの実施形態において、断片は、機能的断片であり、従って、(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼの機能的活性を含む。しかしながら、該断片は、CslHによりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼの1以上の生物学的機能を保有しないにもかかわらず、他の機能的活性は依然として保有されてもよい。例えば、該断片はCslHによりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼの機能的活性を欠くが、CslHによりコードされる単離された(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼポリペプチドの完全形態または成熟形態を認識する抗体に対して導入および/または結合する能力を保有する。CslHによりコードされる単離された(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼポリペプチドの完全形態または成熟形態を認識する抗体を誘導するおよび/またはそれに結合する能力を有するペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質断片は、本明細書において「CslHによりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼエピトープ」と呼ぶ。
【0175】
CslHによりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼエピトープは、3〜4個の少ないアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、エピトープは、例えば少なくとも5個、少なくとも10個、少なくとも20個、少なくとも50個、少なくとも100個または少なくとも200個のアミノ酸残基を含んでもよい。CslHによりコードされる単離された(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼポリペプチドの特定のエピトープが当該免疫学的活性を保有しているかどうかは、当技術分野で周知の方法により容易に判定することができる。したがって、1つのCslHによりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼポリペプチド断片は、1以上の、CslHによりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼエピトープを含むポリペプチドである。
【0176】
1以上の、CslHによりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼエピトープを含むポリペプチドは、当技術分野で周知の合成および組換え方法を含むポリペプチドを生成する慣用的な手段により作製することができる。いくつかの実施形態において、CslHによりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼエピトープを持つポリペプチドは、化学合成の周知の方法を用いて合成されてもよい。例えば、Houghtenは、多数のペプチドを合成する単純な方法を述べている(Houghten, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82: 5131-5135, 1985)。
【0177】
CslHによりコードされる単離された(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼポリペプチド、およびCslHによりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼエピトープを有するポリペプチドは、例えば、本発明のCslHによりコードされる単離された(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼポリペプチドと結合する抗体の生成において有用である。
【0178】
当該抗体は、とりわけ(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼポリペプチドの検出および局在決定において、また、(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼポリペプチドのアフィニティ精製において有用である。抗体は、当技術分野において周知の方法を用いて、多様な定性的または定量的イムノアッセイにおいて、慣用的に使用することができる。例えば、Harlow et al.、Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press 2nd Ed., 1988)を参照されたい。
【0179】
したがって、第14の態様において、本発明は、上記に定義の、CslHによりコードされる単離された(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼポリペプチドまたはそのエピトープに対して生起された、抗体またはそのエピトープ結合性フラグメントを提供する。
【0180】
本発明の抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、多重特異性抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、Fabフラグメント、F(ab’)フラグメント、Fab発現ライブラリーにより産生されるフラグメントおよび上記のいずれかのエピトープ結合性フラグメントを含むが、これらに限定されない。
【0181】
本明細書において用いられる「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的活性部分、すなわち、抗原に対して免疫特異的に結合する抗原結合部位を含む分子をいう。本発明の免疫グロブリン分子は、免疫グロブリン分子の任意の種類(例、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY)、クラス(例、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4,IgA1およびIgA2)またはサブクラスでありうる。
【0182】
本発明の抗体は、単一特異性、二重特異性、三重特異性またはより多重特異性でもよい。多重特異性抗体は、本発明のポリペプチドの異なるエピトープに対して特異的であってもよいし、あるいは異種ポリペプチドまたは固相担体材料などの異種エピトープと本発明のポリペプチドとの両者に対して特異的であってもよい。例えば、PCT公開WO93/17715号、WO92/08802号、WO91/00360号、WO92/05793号、Tutt et al.、J. Immunol. 147: 60-69, 1991、米国特許第4,474,893号、同第4,714,681号、同第4,925,648号、同第5,573,920号、同第5,601,819号、およびKostelny et al.、J. Immunol. 148: 1547-1553, 1992を参照されたい。
【0183】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体は、CslHによりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼのアゴニストまたはアンタゴニストとして作用してもよい。別の実施形態において、本発明の抗体は、例えばインビトロおよびインビボ診断および治療方法の両者をはじめとする本発明のポリペプチドの精製、検出および標的化のために使用してもよい。例えば、抗体は、生体サンプル中のCslHによりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼのレベルを定性的にかつ定量的に測定するためのイムノアッセイにおいて使用しうる。例として、Harlow et al.、Antibodies: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2nd ed. 1988)を参照されたい。
【0184】
本明細書において用いられる「抗体」という用語は、例えば、共有結合によって抗体がCslHによりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼまたはそのエピトープと結合するのを妨げないような任意のタイプの分子の抗体への共有結合により、修飾されている誘導体を包含すると理解されるべきである。例えば、抗体の誘導体は、例えばグルコシル化、アセチル化、PEG付加、リン酸化、アミド化、公知の保護/ブロッキング基による誘導体化、タンパク質分解切断、細胞リガンドまたは他のタンパク質との結合などにより修飾されている抗体を含む。さらに、多くの化学的修飾のいずれを公知の技術によって行ってもよい。これらは特定の化学的切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝合成などを含む。さらに、誘導体は1以上の非古典的アミノ酸を含んでもよい。
【0185】
抗体は、当技術分野で公知の方法を用いて生成することができる。
【0186】
例えば、インビボ免疫法を使用する場合、動物を遊離ペプチドで免疫してもよいが、抗ペプチド抗体力価は、キーホールリンペットヘモシアニンまたは破傷風トキソイドなどの、高分子キャリアにペプチドを結合することにより、増強させることができる。例えば、システイン残基を含むペプチドは、マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)法などのリンカーを用いてキャリアに結合させてもよく、一方、他のペプチドは、グルタルアルデヒドなどのより一般的な架橋剤を用いてキャリアに結合させてもよい。
【0187】
ウサギ、ラット、マウスなどの動物は、例えば遊離ペプチドまたはキャリアを結合したペプチドを用いて、約100マイクログラムのペプチドまたはキャリアタンパク質およびフロイントアジュバントを含むエマルジョンを腹腔内および/または皮内注射することにより、免疫することができる。例えば固体表面に吸着する遊離ペプチドを用いるELISAアッセイにより、約2週間隔で、検出可能な抗ペプチド抗体の有用な力価を提供するために、何回かの追加免疫注射が必要となることもある。免疫された動物の血清中の抗ペプチド抗体の力価は、抗ペプチド抗体の選別により、例えば、当技術分野で周知の方法により固相支持体上へのペプチドの吸着と、選択された抗体の溶出により、高めてもよい。
【0188】
CslHによりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼポリペプチドまたは1以上の、CslHによりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼエピトープを含むポリペプチドに対するポリクローナル抗体は、当技術分野で周知の様々な手法により作製することができる。例えば、本発明のポリペプチドは、抗原に対し特異的なポリクローナル抗体を含む血清の産生を誘発するため、限定するものではないが、ウサギ、マウス、ラット等の様々な宿主動物に投与することができる。例えばフロイントアジュバント(完全および不完全)、水酸化アルミニウムなどのミネラルゲル、リゾレシチンなどの界面活性物質、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油エマルジョン、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、およびBCG(カルメットゲラン桿菌)およびコリネバクテリウム・パルバムなど潜在的に有用なヒトのアジュバントなど、様々なアジュバントを、宿主動物種に応じて免疫反応を高めるために使用してもよい。当該アジュバントもまた、当技術分野において周知である。
【0189】
別の例として、モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ、遺伝子組換えおよびファージディスプレイ技術、またはその組み合わせの利用をはじめとする当技術分野で周知の多様な技術を使用して調製することができる。例えば、モノクローナル抗体は、当技術分野で周知であって、例えば、Harlow et al.、Antibodies: A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2nd ed., 1988)およびHammerling et al.、Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas (Elsecier, NY, 1981)などに教示されているものを含むハイブリドーマ技術を用いて作製することができる。本明細書において用いられる「モノクローナル抗体」という用語は、ハイブリドーマ技術により産生される抗体に限定されるものではない。「モノクローナル抗体」は、真核生物、原核生物およびファージクローンを含む任意の単一クローンから誘導され、また抗体が生成される方法以外に由来する抗体をいう。
【0190】
ハイブリドーマ技術を用いて特異的抗体を生成し、スクリーニングする方法は、慣用的に行われ、当技術分野で周知である。例えば、マウスは、本発明のポリペプチドまたは当該ペプチドを発現する細胞により免疫することができる。免疫応答が検出されると、例えば、抗原に特異的な抗体がマウスの血清中で検出された後、マウスの脾臓を摘出し、脾細胞を単離する。脾細胞は、周知の技術により、例えばATCCから入手可能な細胞株SP20由来の細胞などの適切な骨髄腫細胞に融合させる。ハイブリドーマを選択し、限界希釈によりクローニングする。ハイブリドーマクローンは、本発明のポリペプチドと結合することのできる抗体を分泌する細胞について、当技術分野で周知の方法によりアッセイする。一般に高レベルの抗体を含む腹水は、陽性ハイブリドーマクローンを有するマウスを免疫することにより生成することができる。
【0191】
1以上の、CslHによりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼエピトープを認識する抗体フラグメントは、公知の技術によって作製することができる。例えば、FabおよびF(ab’)2フラグメントは、(Fabフラグメントを生成するため)パパインなどの酵素、またはペプシン(F(ab’)2フラグメントを生成するため)を用いて、免疫グロブリン分子のタンパク質分解性切断により生成することができる。F(ab’)2フラグメントは、可変領域、軽鎖定常領域および重鎖のCH1ドメインを含む。
【0192】
本発明の抗体は、当技術分野において周知の種々のファージディスプレイ法を用いて生成することもできる。ファージディスプレイ法において、機能的抗体ドメインは、それらをコードするポリヌクレオチド配列を保持するファージ粒子の表面に提示(ディスプレイ)される。特定の実施形態において、当該ファージはレパートリーまたはコンビナトリアル抗体ライブラリー(例:ヒトまたはマウス)から発現される抗原結合ドメインを提示するために使用することができる。対象とする抗原と結合する抗原結合ドメインを発現するファージは、例えば標識化された抗原、または固体表面もしくはビーズに結合もしくは捕捉された抗原などを使用し、選択または同定することができる。これら方法に使用されるファージは、典型的には、該ファージにより発現されるfdおよびM13結合ドメインを、ファージ遺伝子IIIまたは遺伝子VIIIタンパク質のいずれかに組換え技術によって融合したFab、Fvまたはジスルフィド安定化Fv抗体ドメインと共に含む、線状ファージである。
【0193】
ファージディスプレイ法の例としては、Brinkman et al.(J. Immunol. Methods 182: 41-50, 1995)、Ames et al.(J. Immunol. Methods 184: 177-186, 1995)、Kettleborough et al.(Eur. J. Immunol. 24: 952-958, 1994)、Persic et al.(Gene 187: 9-18, 1997)、Burton et al.(Advances in Immunology 57: 191-280, 1994)、PCT公開WO90/02809号、WO91/10737号、WO92/01047号、WO92/18619号、WO93/11236号、WO95/15982号、WO95/20401号および米国特許第5,698,426号、同第5,223,409号、同第5,403,484号、同第5,580,717号、同第5,427,908号、同第5,750,753号、同第5,821,047号、同第5,571,698号、同第5,427,908号、同第5,516,637号、同第5,780,225号、同第5,658,727号、同第5,733,743号および同第5,969,108号により開示された方法が挙げられる。
【0194】
ファージ選択後、ファージ由来の抗体コード領域を単離し、全抗体または任意の望ましい他の抗原結合性フラグメントを生成するために使用することができ、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母菌および細菌を含む、任意の望ましい宿主で発現させることができる。例えば、組換え技術によりFab、Fab’およびF(ab’)2フラグメントを生産するための技術はまた、PCT公開WO92/22324、Mullinax et al.(BioTechniques 12(6): 864-869, 1992)およびSawai et al.(AJRI 34:26-34, 1995)およびBetter et al.(Science 240: 1041-1043, 1988)に開示された方法など当技術分野で周知の方法を用いて、使用することも可能である。
【0195】
一本鎖Fvおよび抗体を生産するために使用可能な技術の例は、米国特許第4,946,778号および同第5,258,498号、Huston et al.(Methods in Enzymology 203: 46-88, 1991)、Shu et al.(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 7995-7999, 1993)およびSkerra et al.(Science 240: 1038-1040, 1988)に記載されている。
【0196】
本発明をさらに、以下の非限定的な実施例により説明する。
【実施例1】
【0197】
オオムギはCSLH遺伝子を1種だけ有する
オオムギ中の候補CSLH遺伝子を、コメCSLH配列とともに、中止になったStanford cell wall website、NCBI、HarvEST、GrainGenes、Barley Gene IndexおよびBarley BaseなどのオンラインESTデータベースに照会することによりまず同定する。オオムギ由来の全CSLH関連ESTは、全長3’非翻訳領域(UTR)およびタンパク質のCOOH末端の488個の(予測では約750の)アミノ酸残基をコードする領域に含まれる約1,500bpの単一の連続配列にアライメントできた(表2)。この遺伝子をHvCslH1と名付けた。HvCslH1由来プローブを用いたオオムギBACライブラリのスクリーニングにより、すべてがHvCslH1を含むいくつかのゲノムクローンが同定され、これにより、欠落した5’末端が得られた(データ非掲載)。単一の2,256bpORFを含み、推定分子量82.6kDaおよびpI7.0であるタンパク質をコードする、2,430bpのHvCslH1 cDNA断片をPCR増幅した(図6A)。ARAMEMNONを用いたこの配列の概念上の翻訳の分析により、5つから9つの膜貫通ドメイン(TMD)が見出され、さまざまなプログラムの間のコンセンサスは、2つのNH末端および4つのCOOH末端のTMD(図6B)であり、成熟タンパク質の両末端は、細胞質性であることが予測される。このトポロジーもまた、細胞質内にD,D,D,QFKRWモチーフを含む大型の中心ドメインを配置している(図6C)。ヌクレオチドレベルでは、HvCslH1は、3種のコメCSLH遺伝子と、68〜74%の同一性(62〜69%のアミノ酸同一性)を有している(実施例6を参照されたい)(Hazen et al., Plant Physiol 128: 336-340, 2002)。系統発生学的再構成は、HvCslH1が、おそらくOsCSLH1のオオムギオーソログであることを示している(図7)。Sloop×Halcyonの倍加半数体集団を使用するHvCslH1の遺伝子マッピング(Read et al., Aust J Agr Res 54: 1145-1153, 2003)は、HvCslH1は染色体2Hの短腕上にあり、Burtonらにより報告された(Plant Physiol 146: 1821-1833, 2008)4種のHvCSLF遺伝子(HvCSLF3、4、8、10)のクラスターからおよそ1.5cMであり、非発芽オオムギ穀粒中のβ−グルカン含有量を調節する主要QTL内にあった(Han et al., Theor Appl Genet 91: 921-927, 1995;図8)ことを示している。
【0198】
支援情報
BACライブラリのスクリーニングを用い、全長HvCslHファミリーメンバーの完全なセットを得た。オオムギゲノム(品種モレックス)の6.5等価体を含むBACフィルターをスクリーニングし、3種の明らかに陽性のクローンを同定した(データ非掲載)。HindIIIを用いて消化したこれらのクローン由来のBAC DNAのブロットを検出した場合、同じ3種のクローンである3−5−10、3−7−3および3−7−8が陽性であると検証された。BAC 3−5−10および3−7−8の消化パターンは同一であると思われ、多くのバンドはBAC 3−7−3と共通であり、このことは、3種のBACはすべて、オオムギゲノムの同一の領域または非常に類似した領域を含むことを示している。ゲノムDNAのブロットを同じプローブとハイブリダイズさせた場合、単一のバンドが、HindIII、EcoRIまたはEcoRVを用いて消化したレーンに観察され、BAC消化の結果を裏付けた。すべてのHvCslH ESTもまた単一の遺伝子に由来するので(表2)、これらのデータは、オオムギゲノム中にはCSLH遺伝子が1種だけ存在することを強く示唆している。
【0199】
アダプタープライマーPCR法(Siebert et al., Nucl Acids Res 23: 1087-1088, 1995)を使用して、HvCslH1の5’末端を同定した。DNAを、BAC3−5−10および3−7−3から単離し、アダプターが連結された平滑末端DNA断片を作製するさまざまな制限酵素を用いて消化した。次いで、遺伝子の5’末端を含有する断片を増幅するために、アダプター特異的プライマーおよびHvCslH1特異的プライマー(表3)を用いて、ネステッドPCRを実施した。プライマーAP2およびH1R6を使用する、NruIにより消化されたBAC 3−7−3 DNAの増幅により、N末端配列の約20個のアミノ酸以外をすべて含む1.3kbpの断片を増幅することに成功した。H1R10プライマー、すなわち1.3kb断片の5’末端近くにアニーリングするために設計されたアンチセンスプライマーを用いたBAC 3−7−3DNAの直接配列決定は、オープンリーディングフレームの残り+配列の上流の748bpの同定を可能にした。先に得られた結果から予測されたように、BAC 3−5−10から得られた配列はBAC 3−7−3と同一であり、オオムギゲノム内にCSLH遺伝子が1種だけ存在することが確認された。
【表2】

【0200】
【表3】

【0201】

【実施例2】
【0202】
シロイヌナズナにおけるHvCslH1の発現は、(1,3;1,4)−β−D−グルカンの堆積をもたらす
シロイヌナズナにおける異種発現のために、HvCslH1 ORFを、Gatewayを可能にするバイナリーベクターのpGWB15にクローニングし(Nakagawa et al., J Biosci Bioeng 104: 34-41, 2007;図15)、HvCslH1をCaMV 35Sプロモーターの制御下に置き、3×HAエピトープタグをコードされるタンパク質のNH末端に付加した(図1A)。形質転換シロイヌナズナ種子の初期選択により、PCRでHvCslH1の含有が確認されたいくつかの推定トランスジェニック実生を同定した。これらのT植物のRNAブロット分析により、ロゼット葉中におよそ90%のHvCslH1転写産物が蓄積したことが示された(図1B)。抗HAタグ抗体を使用するウェスタンブロッティングを使用して、これらの系統におけるHvCslH1タンパク質を検出した(図1C)。混合したミクロソーム膜の分画(50,000〜100,000×gのペレット)を、プールされた3週齢のカナマイシン耐性T実生から調製した。抗HA抗体を用いたウェスタンブロッティングは、HvCslH1転写産物を含有する28の系統のうちわずか4系統だけが予想サイズ(約90kDa)のポリペプチドを蓄積したことを示した(図1C)。分子量がより大きいタンパク質およびより小さいタンパク質が検出されることもあった(例えば、レーン11)。90kDaのタンパク質は、総タンパク質抽出物(データ非掲載)または非形質転換シロイヌナズナ植物から調製された混合膜分画(図1C、Col−0レーン)中には観察されなかった。HAタグ付加HvCslH1が、HvCslH1 mRNAを発現する植物系統の一部だけに蓄積する理由、あるいは、HvCslH1のタンパク質レベルと、HvCslH1の転写産物のレベル(図1BおよびCを比較されたい)または植物中に存在するHvCslH1トランスジーンの数(データ非掲載)のいずれかとの間に相関がない理由は知られていないが、このことは以前から観察されていた(Burton et al., Science 311: 1940-1742, 2006)。HAタグ付加HvCslH1を発現する8、11、16および24系統と検出可能なレベルのタンパク質を発現しない6系統(対照)を、次の実験のために選択した。
【0203】
免疫EMを使用して、トランスジェニックシロイヌナズナ植物の細胞壁が検出可能なレベルのβ−グルカンを蓄積するかどうかを決定した。8、11、16、24および6系統の自家受粉子孫(T世代)由来の成葉片の切片を、β−グルカンに特異的なモノクローナル抗体で検出し(Meikle et al., Plant J 5: 1-9, 1994)、その後18nmの金粒子と結合した二次抗体を使用して検出した。金粒子は、HAタグ付加HvCslH1陽性の8、11および16系統(それぞれ、図2A、C、B)の細胞壁中に明らかであるが、HvCslH1を発現した(データ非掲載)24系統または検出可能なHvCslH1タンパク質を有さなかった6系統(図2E)のいずれにおいても細胞壁中に明らかではなかった。各陽性トランスジェニック系統は、組織標識の異なるパターンを示した。8系統において、表皮細胞壁、時として木部壁にまばらな標識が観察されるが(図2A)、一方11系統では、表皮壁および維管束組織壁はわずかに標識されただけであるが、より強い(よりまばらではあるが)標識が葉肉壁において観察された(図2C)。広範囲に分布する明るい標識が、16系統の成葉の細胞壁すべてに存在した(図2B)。「構成的に」発現される35Sプロモーターにより駆動される遺伝子を発現するトランスジェニックシロイヌナズナ系統による異所性多糖類産生の不規則かつ非一貫性のパターンは、以前から観察されている(Burton et al., 2006,上記)。非形質転換シロイヌナズナの葉の切片においては、標識は見られなかった(図2D)。標識レベルの低下は、このβ−グルカンを特異的に加水分解する枯草菌(Bacillus subtilis)のエンドヒドロラーゼとともにプレインキュベートを行ったトランスジェニック植物の葉切片に見られた(Burton et al., 2006,上記、データ非掲載)。
【0204】
トランスジェニックシロイヌナズナの細胞壁にβ−グルカンが存在することの生化学的確認の提供、および新生β−グルカンの微細構造の調査のために、葉および/または茎材料を、植物8、11および16系統に由来する系統の自家受粉のTおよびTの子孫からプールした。これらの系統は、HvCslH1トランスジーンについてホモ接合性であった。β−グルカンは、植物の年齢とともに蓄積されることが見出されたので、試料は植物が老齢になった際に採取した。細胞壁を調製し、(1,3:1,4)−β−グルカン特異的エンドヒドロラーゼを用いて消化し、放出されたオリゴ糖をHPAECおよびMALDI−TOF MSによってプロファイルした。(1,4)−β−グルコシド結合が(1,3)−β−D−グルコシル残基の還元末端側にある場合、(1,3;1,4)−β−D−グルカンエンドヒドロラーゼは、これらの結合を特異的に加水分解する。この酵素の作用により、さまざまな重合度(DP)の、一連のオリゴ糖が生成される。この一連の診断用オリゴ糖は三糖類のG4G3Gおよび四糖類のG4G4G3G(式中、Gは、β−D−グルコピラノース、3および4は、それぞれ(1,3)および(1,4)結合を示し、Gは還元末端残基を指す)。8および11系統ならびに植物16に由来する2種の独立した系統(16−1および16−2系統)由来の葉または葉および茎から調製した細胞壁を、(1,3;1,4)−β−D−グルカンエンドヒドロラーゼを用いて処理した場合、可変量のG4G3GおよびG4G4G3Gが放出された(図3、図9A)。これらのオリゴ糖は、酵素で処理しなかった対照では検出されなかった。G4G3GとG4G4G3Gとの比(DP3:DP4)は、16−1系統において3.5であることが推定され、これは、オオムギ葉試料由来のβ−グルカンに関して得られたDP3:DP4比の3.6と同様である。グルコース(G3G)の(1,3)−β結合二糖類であるラミナリビオースと同時溶出したピークが、複数の試料において、8、11および16−2系統においてさまざまなレベルで観察された(図9A、データ非掲載)。この産物はオオムギおよび酵素未処理の対照試料には存在せず(図9A)、その出現が、(1,3;1,4)−β−D−グルカンエンドヒドロラーゼ調製物中の酵素の混入あるいは内在性二糖類またはシロイヌナズナ内の酵素活性によるものではないことが検証される。このプロファイルにおけるオリゴ糖の種類をMALDI−TOF MS分析によってさらに確認し、MALDI−TOF MS分析は、HPAECプロファイルにおいて観察された比と同様の比でHex、HexおよびHexの存在を示した(図9B)。16−1および16−2系統におけるβ−グルカンの量は、G4G3Gのピーク面積から推定されるように、それぞれ、総細胞壁の0.005%および0.003%(w/w)であった。
【実施例3】
【0205】
HvCslH1は、HvCslH1を発現するトランスジェニックシロイヌナズナ植物の、ER関連小胞およびゴルジ関連小胞内に位置するが、細胞膜には位置しない
11系統由来の高圧凍結葉の切片を、金標識抗HA抗体とともにインキュベートし、HvCslH1の細胞内位置を決定した。標識は、小胞体およびゴルジ由来小胞に見出されたが、細胞膜には見出されなかった(図4A、B)。同様の結果が、根および実生の標識切片において観察された(データ非掲載)。
【実施例4】
【0206】
オオムギにおいて、成長中の穀粒、花の組織および二次細胞壁肥厚中の葉の細胞で、HvCslH1は、低レベルで転写される
さまざまなオオムギ組織において、HvCslH1転写産物のレベルを、定量的RT−PCR(QPCR)を使用して決定した。遺伝子特異的プライマーを表4に表す。
【表4】

【0207】
図5(A〜C)は、一連のオオムギの栄養組織および花組織のcDNAにおいて、HvCslH1転写産物が慣用的に1,000sコピー/μl cDNA未満のレベルで蓄積されたことを示す。この値は、本発明者らが通常10,000sから100,000sコピー/μl cDNAの範囲の値で研究した他のオオムギCESAおよびCSLの一部より低かった。HvCslH1転写産物のレベルは、子葉鞘および葉脚を含む、急速に伸長する細胞を含む組織において比較的低く、これらは活発にβ−グルカンを合成する組織である。
【0208】
HvCslH1転写産物のレベルは葉頂において最も高く、ここでは、細胞はもはや活発に成長せずβ−グルカンの蓄積も減っている(図5C;2、4)。葉におけるHvCslH1の転写は、10日齢の実生の葉頂から開始した約13cm長の葉内の6か所の範囲から単離されたRNAを使用してさらに特徴を調べた。これらの範囲は、完全に成熟した細胞(範囲A)から分裂細胞を含む葉脚(範囲F)を含む。in situ PCR(実施例5を参照されたい)を使用して、HvCslH1 mRNAを含む葉頂中のそれらの細胞を同定した。この技術において、遺伝子転写産物が検出された細胞は、紫から暗い褐色に染色される(図5D、18S RNA陽性対照)。転写の起こらなかった細胞は、明るい褐色に染色され、陰性対照として検出される(図5E)。HvCslH1は、維管束間の、厚膜組織の繊維細胞および木部細胞などの二次細胞壁肥厚にある細胞において大部分は転写される(図5F)。オオムギ葉から採取した切片を使用する免疫EMおよびβ−グルカン抗体での検出により、これらの細胞の細胞壁中のβ−グルカンを同定した。
【0209】
HvCslH1転写産物のレベルを、さらに、一連の24日の成長中の胚乳においてより詳細に調査した(図5B)。HvCslH1の発現は、成長中のデンプン質胚乳全体で低かった。胚乳細胞壁においてβ−グルカンが最初に検出されるおよそ1日前の4DPAにおいて、最大転写レベルに達した。この転写パターンは、成長中の穀粒においてもまた発現された、いくつかのオオムギCSLF遺伝子(HvCSLF3、4、7、8および10)の転写パターンと同様であるが、HvCSLF9および6は、さらにより高い転写産物レベルを示す。
【実施例5】
【0210】
考察
本明細書に提示したデータは、イネ科植物特異的CSLH遺伝子ファミリーのメンバーであるHvCslH1の産物が、シロイヌナズナにおいてβ−グルカンの生合成を仲介することを示している。オオムギは、ESTデータベース分析、ゲノムDNAブロット分析およびBACライブラリのスクリーニングに基づき、CSLH遺伝子を一つだけ有すると思われる。パンコムギ、イタリアンライグラス(Lolium multiflorum)、トールフェスク(Festuca arundinacae)およびミナトカモジグサ(Brachypodium distachon)(すべてイチゴツナギ亜科(Pooideae))などの他のイネ科植物のEST分析は、オオムギと同様の1種の同定CSLH遺伝子を有するが、トウモロコシ、ソルガムおよびサトウキビ(すべてキビ亜科(Panicoideae))、コメなど(エールハルタ亜科(Ehrhartoideae))は、複数のCSLH遺伝子を有すると思われる。HvCslH1 cDNAのエピトープタグ付加形態を、シロイヌナズナにおいて異種発現させた場合、タンパク質が検出された4つの植物系統の3つが、β−グルカン特異的モノクローナル抗体により認識された多糖類を、それらの細胞壁に蓄積した。トランスジェニック系統の単離細胞壁を、特異的(1,3;1,4)−β−D−グルカンエンドヒドロラーゼを用いて消化した場合、特有の三糖類(G4G3G)および四糖類(G4G4G3G)が、オオムギ胚乳由来のβ−グルカンに見出される比と同様の比で検出され、トランスジェニックシロイヌナズナ系統由来の細胞壁が、β−グルカンを含んだことを実証する。さらに、エピトープタグ付加HvCslH1は、トランスジェニック植物細胞の小胞体およびゴルジ由来小胞において見出された。HvCslH1を発現したトランスジェニックシロイヌナズナ系統の形態学的表現型は、野生型植物と同一であると思われる。
【0211】
(1,3)−および(1,4)−β−グルコシル結合の全割合ならびに16−1系統植物に由来する細胞壁の(1,3;1,4)−β−D−グルカンエンドヒドロラーゼ消化からのG4G3GおよびG4G4G3G産物の比は、オオムギ組織から単離されたβ−グルカンにおいて観察される比と同様であるが、観察された一つの独特な特徴は、16−2系統の細胞壁から、(1,3;1,4)−β−D−グルカンエンドヒドロラーゼにより放出される主要なオリゴ糖がラミナリビオースであることであった(G3G;図9A)。可変レベルのG3Gの存在はまた、三糖類の四糖類に対するレベルの増加、したがってDP3:DP4比の増大に関連した。大部分の植物系統の細胞壁消化物中にG3Gが存在することは、交互の(1,3)−β−および(1,4)−β−結合のグルコシル残基(−G3G4G3G4−)の多糖類含有切片を示す。これらが個別の多糖類中に存在するか、またはさらに通常の微細構造の特徴を有するβ−グルカン鎖の一部を構成するかは分かっていない。交互の(1,3)−β−D−グルコシルおよび(1,4)−β−D−グルコシル残基は、オオムギと、他の穀類のβ−グルカンにおいて共通ではないが、非開花植物のトクサ属(Equisetum)由来のβ−グルカンの重要な成分を表し、さらに担子菌類および子嚢菌類を含む多くの真菌由来のβ−グルカン中に検出される。G3Gはトランスジェニックシロイヌナズナにおけるβ−グルカンシンターゼの誤制御を介して生じる可能性があり、その膜の微小環境が異なるため、またはオオムギにおいて、(1,3)−βグルコシド結合形成を抑制する(または(1,4)−βグルコシド結合形成を促進する)未知の因子が、シロイヌナズナに最適以下のレベルで存在するためと思われる。植物16に由来する系統の中でこの因子のレベルがわずかに変化することが、得られた構造の違いの原因であろう。β−グルカンの構造のばらつきに関する別の考えられる説明は、組み立て後のプロセシングの微妙な差に関すると思われる(さらに、下記の支援情報を参照されたい)。
【0212】
オオムギにおいて、HvCslH1は、組織が完全に成熟した細胞を含む葉頂で最も高度に転写された。HvCslH1および任意のオオムギCSLFの連携転写(coordinate transcription)を示す証拠はなく、それらがコードする産物が、タンパク質複合体の成分ではないことを示唆している。例えば、HvCslH1の転写は、オオムギにおいてβ−グルカンが特徴的に蓄積される組織である子葉鞘または成長中の胚乳などの伸長する細胞中では高くない。通常は、細胞増殖の調節、およびおそらく暗所においてエネルギー供給源として動員できるグルコースの一時貯蔵に関係すると思われる栄養組織の一次細胞壁に見出されるが、β−グルカンは、木部管状要素および厚膜組織繊維の木化細胞壁においてもまた見出され、ここでは、β−グルカンに対する抗体を使用する免疫EMにより、中葉領域(一次細胞壁)と膜組織細胞の二次細胞壁との両方において標識が示される。in situ PCRは、葉中のHvCslH1遺伝子の転写が、維管束間の厚膜組織の繊維細胞および木部細胞などの細胞に限定されていることを示すので、植物中の他の場所における一次細胞壁のβ−グルカン合成における役割を除外することはできないが、この遺伝子の主要な役割は、二次細胞壁成長の間のβ−グルカン合成にあることが示唆される。
【0213】
β−グルカンの微細構造がどのように生じたかにかかわらず、CSLHがシロイヌナズナにおいてβ−グルカンの合成を仲介できることは明らかであり、どのようにこの多糖類が合成されるかという本発明者らの理解に関する暗示を有する研究成果である。β−グルカンの組み立てに関すると考えられる機序は、優勢なセロトリオシルおよびセロテトラオシル単位の合成、これらの(1,4)−β−単位と単一の(1,3)−β−結合とのランダムな結合、そして三糖類単位と四糖類単位のモル比を制御する手段で説明できるはずである。少なくとも2種のグルコシルトランスフェラーゼ活性が共同して作用すると思われ、一方の活性は、(1,4)−β−結合グルコース残基を連続的に付加し、三糖類および四糖類を組み立て、他方の活性は、単一の(1,3)−β−結合を付加する。多糖類シンターゼの本発明者らの最近の知見に基づき、いくつかの機序は仮定として可能である。最も簡略な説明は、1種のポリペプチドが両方のグルコシド結合型の合成に関与していることである。本発明者らのトランスジェニック実験は、CSLHタンパク質が独立してβ−グルカンを作ることができ、したがっておそらく両方の型のβ結合を生成することができることを示している。CSLHファミリーは、糖質作用性酵素(Carbohydrate Active Enzymes:CAZy)データベースにより、グリコシルトランスフェラーゼファミリー2(GT2)のメンバーであると分類され(http://www.cazy.org; Coutinho et al., J Mol Biol 328: 307-317, 2003)、このファミリーは、(1,3)−β−または(1,4)−β−結合のいずれかの合成を独立して触媒できる酵素を含み、二機能性酵素、すなわち2種のグリコシド結合を合成できる酵素の例でもある。例えば、ヒアルロン酸合成酵素(HAS)は、(1,4)−β−グルクロン酸−(1,3)−β−N−アセチルグルコサミンの繰り返し二糖単位を合成し、両方のトランスフェラーゼ活性が、1種のポリペプチドにある。マウスHAS1において、D,D,D,QXXRWモチーフを含む領域は、これらの活性の両方に関与する。D,D,D,QXXRWモチーフをさらに含む、CSLHの活性部位は、同様に二機能性であると思われる。別の可能性は、CSLHシンターゼが、単子葉植物および双子葉植物に共通の、第2の結合の合成に関与する別のグルコシルトランスフェラーゼと、唯一のグルコシド結合を合成することである。
【実施例6】
【0214】
材料と方法
バイナリーベクターの構築および植物の形質転換
HvCslH1 ORFを、オオムギ品種スクーナーの成葉頂のcDNAから、Herculase(登録商標)(Stratagene)を用い、プライマーHvH1TOPOfおよびHvH1TOPOr(表3)を使用して増幅し、PCR産物を、pENTR/D−TOPO(Invitrogen)にクローニングした。製造業者(Invitrogen)のプロトコルを使用し、LR反応を使用して、NH末端に3×HAタグを含むデスティネーションベクターpGWB15にcDNAをクローニングし(Nakagawa et al., J Biosci Bioeng 104: 34-41, 2007)、DNA配列決定により、予測配列を確認した。HvCslHl::pGBW15構築体を、大腸菌(Escherichia coli)からアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)AGL1株に、三親接合を介し、ヘルパープラスミドpRK2013を使用して移した。シロイヌナズナCol−0植物を、フローラルディップ法を使用して形質転換した(Clough and Bent, Plant J 16: 735-743, 1998)。
【0215】
RNAブロット分析
T1植物の成熟ロゼット葉からTRIzol(登録商標)(Invitrogen)を使用して抽出した、約10μgの総RNA試料を調製し、1%w/vアガロース−ホルムアルデヒドゲル上で分離した(Farrell, RNA methodologies: A laboratory guide for isolation and characterization, Academic Press, Inc., San Diego, 1993)。RNAをHybond(商標)N膜に転写し、Gene Images CDP−Star検出モジュール(Amersham-Biosciences)に概説された方法に従って、プレハイブリダイズおよびハイブリダイズを行った。プライマーH1F2およびHvH1TOPOr(表3)を用いて増幅したHvCslH1断片を、Gene Images Random Primeラベリングモジュール(Amersham)を使用し、製造業者のプロトコルに従って標識し、プローブとして使用した。
【0216】
定量的PCR分析
RNA抽出、cDNA合成およびQPCRを、Burton et al.(Plant Physiol 146, 1821-1833, 2008)に記載された変法を用いて、Burton et al.(Science 311, 1940-1942, 2006; Plant Physiol 134, 224-236, 2004)に記載のように実施した。オオムギ対照遺伝子のプライマー配列を表4に記載する。
【0217】
in situ PCR
in situ PCRを、Koltai & Bird(Plant Physiol 123: 1203-1212, 2000)の方法に従って、下記の変形を加え実施した。組織を切片にした後、ゲノムDNAを、37℃において6時間、1×DNase緩衝液および4U RNase非含有DNase(Promega)中で処理することによって取り出した。cDNAの合成を、RNase Hステップを省き、遺伝子特異的プライマー(1μg、表3)を逆転写に使用したことを除き、Thermoscript(商標)RT(Invitrogen)を使用して実施した。PCRを、1×PCR緩衝液、200μm dNTP(Promega)、0.2nmolジゴキシゲニン−11−dUTP(Roche)、2mM MgCl、200ngの各プライマーおよび2U Taq DNAポリメラーゼ(Invitrogen)を含む、最終容量50μL中で実施した。サイクリングパラメーターは、下記のとおりである:初期変性96℃2分、次いで、94℃30秒、59℃30秒、72℃1分を40サイクル。その後切片を洗浄し、1.5Uのアルカリホスファターゼ結合抗ジゴキシゲニンFabフラグメント(Roche)とともにインキュベートし、Koltai & Bird(2000、上記)により概説されたように、10〜20分発色させた。陰性対照切片では、逆転写酵素を省き、すべてのHv 18S rRNAプライマーを含み、ゲノムDNAから任意の増幅があったかどうかを確認した。
【0218】
混合ミクロソーム膜の調製
HvCslH1トランスジェニック植物のT1種子を回収し、約100個の種子を、50mg/Lカナマイシン(Sigma)を含有する1×MS寒天培地上に撒いた。3週間後、カナマイシン耐性の実生をプールし、液体窒素中で凍結し、ホモジナイズ用緩衝液(50mM NaPO緩衝液、pH7.5、0.5Mスクロース、20mM KCl、10mM DTT、0.2mM PMSF、83μL植物プロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma、P9599))を含む乳鉢および乳棒で4℃において粉砕した。ホモジネートを、50μMメッシュのフィルターを通してろ過し、S/Nを、6,000×gで10分間、4℃において遠心した。S/Nをデカントし、50,000×gで30分間、4℃において、4.5mlの超遠心管(Beckmann)において遠心した。50,000×gのS/Nをデカントし、ペレットを、10mM Tris−MES緩衝液、pH7.5に、ガラス−テフロンホモジナイザーを使用して再懸濁した。再懸濁したペレットを、Tri−MES緩衝液を用いて4.5mLに希釈し、100,000×gで、1時間、4℃において遠心した。ペレットを、上に概説したように、0.25Mスクロース、10mM Tris−MES緩衝液、pH7.5に再懸濁した。タンパク質濃度を、Bradfordアッセイ試薬(BioRad)を使用して測定し、ウシ血清アルブミンを標準として使用した。
【0219】
ウェスタンブロッティング
膜タンパク質(30μg)の試料を、60℃において20〜60分間、200mMジチオスレイトールおよび試料緩衝液(37.5mM Tris−HCl、pH7.0、10%グリセロール、3%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、0.025%ブロモフェノールブルー)中でインキュベートし、SDS:タンパク質比を1.5mgSDS対30μgのタンパク質にして、その後8%SDS−PAGEゲルに添加した。電気泳動後、ゲルをニトロセルロース(OSMONIC(商標)Nitropure 22μm)に、0.05%SDSを含有するTowbin緩衝液(25mM Tris塩基、192mMグリシン、20%メタノール)中で4℃において100V、90分間かけてブロットした。次いで、膜を、3%w/v粉乳を含有するTris緩衝生理食塩水(TBS;20mM Tris塩基、150mM NaCl)において一晩ブロッキングし、その後、1%BSAを含有するTBSで1:1000に希釈したラット抗HAポリクローナル抗体(Roche)中で室温で1時間インキュベートした。膜を0.05%SDS(TBST)を含有するTBSで3回洗浄し、次いで、3%w/v脱脂粉乳を含有するTBSで1:1000に希釈した抗ラットIgG HRP結合抗体(Dako)中でインキュベートした。膜をTBSTで3回洗浄し、その後、シグナルを、SuperSignal(登録商標)West Pico化学発光基質(Pierce)を用いて検出した。
【0220】
免疫電子顕微鏡法
シロイヌナズナ組織を固定し、Burton et al.(Science 311, 1940-1942, 2006)に従って、抗(1,3;1,4)−β−D−グルカン特異的抗体(Meikle et al., Plant J 5: 1-9, 1994)を用いて標識した。抗HA抗体を用いた標識のために、植物組織を2つの銅のプランチェットの間に置き、Leica EM高圧フリーザーにおいて急速に凍結させた(2.7×10kPaおよび−10,000℃s−1の適切な速度に設定する)。プランチェットを、−50℃、72時間に設定したLeica自動凍結置換装置中で100%エタノールに移した。試料を、室温(RT)で一晩置き、取り出し、LR White樹脂でろ過し、Burton et al.(2006、上記)に記載のようにゼラチンカプセルに包埋した。包埋した葉組織の切片をフォルムバー被覆金グリッド上に回収し、1%w/v BSAを含有するリン酸緩衝生理食塩水(PBS;137mM NaCl、10mM NaPO、2.7mM KCl、pH7.4)で1:200に希釈したラット抗HAポリクローナル抗体中で室温で1時間、次いで4℃で一晩インキュベートした。グリッドをPBSで数回洗浄し、次いで、1%w/v BSAを含有するPBSで1:20に希釈した18nm金(Jackson ImmunoResearch)と結合した抗ラット二次抗体中で室温で1時間インキュベートした。次いで、グリッドを洗浄し、染色後、Burton et al.(2006、上記)に記載のようにTEM下で見た。
【0221】
細胞壁材料の調製
アルコール不溶性画分(AIR)を、植物材料を液体窒素中で、乳鉢と乳棒を使用して粉砕することによって調製した。5倍量の80%エタノールをホモジネートに加え、その後4℃において1時間回転することによって混合した。3,400×gで5分間遠心後、上清を取り除き、残留物を室温で80%エタノール中で1時間、2回還流し、その後50%エタノール中で1時間、2回還流した。エタノール可溶性画分を取り除き、AIRを100%エタノールで1回洗浄し、その後40℃において真空乾燥させた。
【0222】
(1,3;1,4)−β−D−グルカン特異的エンドヒドロラーゼ消化
AIR(100mg、上記のように調製)を、5mLの20mM NaPO緩衝液、pH6.5中で2時間、50℃において、200rpmで振とうしてインキュベーター中で連続混合しながらインキュベートした。2時間後、懸濁液を遠心分離(3,400×g、5分)にかけ、上清(S/N)を取り除いた。別の5mLの緩衝液を加え、インキュベートおよび遠心分離を繰り返した。この2次インキュベートで得たS/Nを、酵素非含有陰性対照として使用した。ペレット化したAIRを、5mLのNaPO緩衝液に再懸濁し、これに、100μlの(1,3;1,4)−β−D−グルカンエンドヒドロラーゼ(McCleary et al., J Inst Brew 91: 285-295, 1985)を加えた。混合物を、連続混合しながら、50℃において2時間インキュベートし、その後S/Nを、(1,3;1,4)−β−D−グルカンエンドヒドロラーゼ放出オリゴ糖として回収した。陰性対照および(1,3;1,4)−β−D−グルカンエンドヒドロラーゼ処理S/Nを、グラファイト化カーボンカートリッジ上で、Packer et al.(Glycoconj J 15: 737-747, 1998)により記載のように脱塩し、乾燥させた。
【0223】
HPAEC分析
乾燥させた(1,3;1,4)−β−D−グルカンエンドヒドロラーゼ放出オリゴ糖を、100μLのMilli HOに溶解し、20μLを、0.2M NaOH中の50mM NaOAcを用いて平衡化したCarboPac PA1カラム(Dionex)に、パルスアンペロメトリック検出装置(PAD)およびオートサンプラーを搭載したDionex BioLC ICS 300システム(Dionex)を使用して注入した。オリゴ糖を、0.2M NaOH中50mMのNaOAcから0.2M NaOH中350mMまでの線形勾配で、15分かけて、1mL/分で溶出した。ラミナリビオース(Seigaku)、マルトースおよびセロビオース(双方ともSigma)を、標準として流した。
【0224】
MALDI−TOF MS分析
残りの(1,3;1,4)−β−D−グルカンエンドヒドロラーゼ放出オリゴ糖のアリコート(30μL)を凍結乾燥させ、DMSOに溶解し、NaOH法(Ciucanu and Kerek, Carb Research 131: 209-217, 1984)を使用してメチル化した。メチル化オリゴ糖を、ジクロロメタン(DCM)中に分配し、DCM相をMilliQ水で3回洗浄した。DCM相を、N気流下で乾燥させ、その後10μLの50%アセトニトリルに再溶解した。1μLのアリコートを、1μLの2,5−ジヒドロキシ安息香酸マトリックス(50%アセトニトリルに溶解して10mg/mL)と混合し、1μLの混合物を、MALDI TOF質量分析計(Voyager DSTR, Applied Biosystems)において分析するために、MALDIプレートにスポットした。
【0225】
EST分析、コンティグの組み立ておよびバイオインフォマティクス
BLASTサーチツール(Altschul et al., Nucl Acids Res 25: 3389-3402, 1997)を使用して、CSLH ESTを、現在中止になったStanford Cell Wall website、NCBI(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)、HarvEST(http://harvest.ucr.edu/)、GrainGenes(http://wheat.pw.usda.gov/GG2/index.shtml)、Barley Gene Index(http://compbio.dfci.harvard.edu/tgi/plant.html)およびBarley Base(www. barleybase.org)を含む、公共のデータベースに照会することにより得た。配列を、Sequencer(商標)3.0(GeneCodes)またはVector NTI(登録商標)Advance 9.1.0(Invitrogen)のモジュールであるContigExpressのいずれかを使用して、コンティグに組み立てた。DNAまたはタンパク質の配列を、ClustalX(Thompson et al., Nucl Acids Res 24: 4876-4882, 1997)を使用してアライメントした。系統発生学的分析を、固有近隣結合アルゴリズムを使用して実施し、ツリーのロバスト性は、1000回のブートストラップ反復を使用して評価した。配列類似性を、MatGat 2.02(http://bitincka.com/ledion/matgat/)(Campanella et al., BMC Bioinformatics 4: 29, 2003)を使用して計算した。膜貫通ドメインは、ARAMEMNON(http://aramemnon.botanik.uni-koeln.de)(Schwacke et al., Plant Physiol 131: 16-26, 2003)に記載の一連のプログラムを使用して予測した。翻訳後修飾を予測するモチーフは、Toolsメニュー(http://www.expasy.org/tools/#pattern)のExPasyに記載のプログラムを使用して同定した。タンパク質パラメーターは、ExPasy(http://www.expasy.org/cgi-bin/protparam)のProtParamを使用して計算した。
【0226】
オオムギBACスクリーニング
非Yd2 品種モレックス(Clemson University Genomics Institute, CUGI)由来のオオムギゲノムの6.5等価体を含有するBACフィルターを、プレハイブリダイゼーション溶液(0.53M NaPO4緩衝液 pH7.2、7.5%w/v SDS、1mM EDTA、11μg/mlサケ精子DNA)中で、65℃において6時間ブロッキングした。プライマーH1F1およびH1R1またはH1R5(表3)を用いて増幅した、放射性標識cDNAおよびgDNA断片を加え、65℃において、24時間インキュベートした。フィルターを、2×SSC、0.1%SDSで、室温で3回洗浄した。最終の洗浄を、1×SSC、0.1%SDSを用いて実施した。フィルターを、X線フィルムに2dで撮影した。陽性BACクローンを同定し、CUGIウェブサイト(http://www.genome.clemson.edu)に支持されたように整理した。クローンを、25μg/mlクロラムフェニコールを含有するLB寒天上に画線し、37℃において一晩増殖させた。各クローンのコロニーを採取し、25μg/mlクロラムフェニコールを含有するLB寒天上に載せた、グリッドの付いたナイロン膜に置き、37℃で一晩インキュベートした。DNAを、膜上に固定し、0.4M NaOHに浸したろ紙上に20分間置くことによって変性させ、次いで、中和溶液(1.5M NaCl、0.5M Tris−HCl pH7.2、1mM EDTA)に浸したろ紙上に置くことによって中和した。次いで、膜を、2×SSC、0.1%SDSで3回洗浄し、標準的条件(Sambrook et al., Molecular cloning: a laboratory manual, Cold Spring Harbour Laboratory Press, New York, 1989)を使用してハイブリダイズを行った。
【0227】
BAC DNAの単離
陽性クローンを、25μg/mlクロラムフェニコールを含有するLBブロス中で、37℃において一晩培養した。細胞を、遠心分離(12,000×g、3分)によってペレット化し、このペレットを90μLのTES緩衝液(25mM Tris−HCl pH8.0、10mM EDTA、15%w/vスクロース)に再懸濁した。溶解溶液(0.2M NaOH、1%SDS)のアリコート(180μL)を加え、ゆっくりと混合し、その後135μLの3M NaOAc pH4.6を加えた。染色体DNAを遠心分離(12,000×g、15分)によってペレット化した。S/Nを回収し、2μLのRNase A(10mg/mL)を加え、37℃において1時間インキュベートした。Tris飽和フェノール−クロロホルム(比1:1)の400μLのアリコートを加え、試料を再度遠心分離にかけた(12,000×g、5分)。S/Nを回収し、BAC DNAを、2〜3倍の冷却95%エタノールを使用して、室温で10分かけて沈殿させた。BAC DNAを、遠心分離(15,000×g、15分)によりペレット化し、70%エタノールで洗浄し、20〜50μLのTEに再懸濁し、4℃において保存した。
【0228】
ゲノムウォーキング
Siebert et al.(Nucl Acids Res 23: 1087-1088, 1995)のアダプターライゲーション法を使用して、公知のCSLH EST配列の上流のゲノムDNA断片を増幅した。オオムギゲノムDNAを消化するために使用した制限酵素は、EcoRV、NruI、PvuII、ScaIまたはSspIであった。一次PCR反応を、2μLのライゲートDNA(1:10希釈)、1×PCR緩衝液、2mM MgCl、アダプタープライマーAP1およびアンチセンスプライマーH1R7各100ng(表3)、0.4mM dNTPならびに1単位のTaqポリメラーゼ(Invitrogen)を含有する25μL量で実施した。サイクルパラメーターは、下記のとおりであった:96℃2分、次いで94℃30秒間、59℃30秒間、72℃1分間を40サイクル、および最終ステップ72℃で7分間。二次PCR反応を、1μLの一次PCR産物を用いて、アダプタープライマーAP2およびネスティッドプライマーH1R6各100ngを使用して実施した。反応組成およびサイクルパラメーターは、アニーリング温度に61℃を使用した以外は上記と同じであった。
【0229】
BACの配列決定
配列決定のために、0.5から1μgの単離BAC DNAを、5pmolのプライマーおよび1×Big Dye Terminator v3.1(BDT)ミックス(Applied Biosystems, USA)と、最終容量20μLで混合した。サイクルパラメーターは、下記のとおりであった:96℃15分、次いで96℃10秒間、55℃10秒間および60℃4分間を65サイクル。DNAを、0.1容量の3M NaOAc pH5.2および2.5容量の95%エタノールを用いて氷上で10分間沈殿させ、次いで12,000×gで30分回転させることによってペレット化した。ペレットを70%エタノールですすぎ、乾燥させ、配列決定のためにAGRF(Brisbane, Australia)に送付した。
【0230】
HvCslH1のマッピング
遺伝子マッピングを、60系統のSloop×Halcyonの倍加半数体(DH)マッピング集団を使用して実施した(Read et al., Aust J Agric Res 54: 1145-1153, 2003)。DNAブロットハイブリダイゼーション(Sambrook et al.,1989、上記)の標準的方法を使用して、プライマーH1F1およびH1R5(表3)を使用してPCR増幅したHvCslH1プローブを、6種の制限酵素(BamHI、DraI、EcoRI、EcoRV、HindIII、XbaI)の1種を用いて消化した、親系統のゲノムDNAを含有する膜とハイブリダイズさせた。次いで、二遺伝子ハイブリッド集団を、明らかな多型をもたらす酵素(DraI)を用いて消化した。多型をスコア化し、HvCslH1マップの位置を、MapManager QTバージョン0.30(Manly et al., Mamm genome 12: 930-932, 2001)の「find best location」機能を使用して決定した。マップの位置は、http://www.barleyworld.org/において利用可能な供給源を使用したQTLデータと相関した。
【0231】
シロイヌナズナの成長条件
シロイヌナズナの種子を、滅菌溶液(次亜塩素酸ナトリウム(有効塩素2%)、Tween−20数滴)中で15分間表面滅菌し、次いで滅菌MilliQ水で4回すすいだ。表面滅菌種子を、50mLの滅菌1×MS培地(4.33g/L MurashigeおよびSkoogの基礎塩類(Phytotechnology Laboratories)、2%w/vスクロース、1%w/vバクトアガー)を含有する85×25mmのペトリ皿に広げた。形質転換体の選択のために、50mg/Lのカナマイシン(Sigma)を培地に加えた。プレートを、4℃の低温室に3〜5日置き、同時に発芽させた。次いで、低温湿性処理プレートを、昼と夜の温度がそれぞれ23℃および17℃の環境制御成長キャビネット(Thermoline L+MモデルTPG1260 TO-5x400、Smithfield、NSW、Australia)に移した。ロゼット葉における平均光強度レベルは、16時間の明サイクルで、三足蛍光灯(Sylvania Standard F30W/133-T8 Cool White)により供給された、約70μE m−2−1であった。MSプレート上で3週間後、個々の苗を、水和させた直径42mmのJiffyペレットに移した。トレイに6つのペレットを9列並べ、3つのトレイを個々に2×3.5フィート金網台の棚に置き育てた。相対湿度を測定し、60から70%の間にした。植物に、地下灌漑によって2〜3日ごとに、Peter’s Professional(商標)General Purpose植物用肥料(Scotts Australia)を補給した水道水を与えた。
【0232】
シロイヌナズナトランスジェニック植物のゲノムDNAの抽出およびPCR分析
DNAを、単一のシロイヌナズナの葉から、Edwards et al.(Nucl Acids Res 19: 1349, 1991)に記載の方法に従って抽出した。ゲノムDNAの1μLアリコートを、プライマーH1F2およびHvCslH1TOPOr(表3)を使用する、下記のサイクリング計画:94℃2分、その後94℃20秒、57℃30秒、72℃30秒を35サイクルで、トランスジェニック植物のPCRスクリーニングにおいて鋳型として使用した。
【実施例7】
【0233】
コメおよびオオムギ由来のCslH DNAおよびアミノ酸配列のアライメント
コメおよびオオムギ双方におけるCslH配列に関するDNAおよびアミノ酸配列のアライメントを実施し、配列間の同一性および類似性のパーセントを計算し、その結果を図10に示す。DNAおよびタンパク質配列をアライメントし、http://bitincka.com/ledion/matgat/からダウンロードしたMatGATバージョン2.02におけるデフォルトパラメーターを使用して比較した。
【0234】
マルチプル配列アライメントおよび系統樹作成を、Thompson et al.(Nucl Acids Res 25: 4876-4882,1997)により記載されたClustalXプログラムを使用して実施した。タンパク質のアライメントおよび結果としての系統樹を、それぞれ図11および12に示す。
【実施例8】
【0235】
HvCslH1およびOsCSLF2トランスジェニックシロイヌナズナ系統の異種交配
タグ付加HvCslH1タンパク質が抗HA抗体を使用して検出された、2種のトランスジェニックシロイヌナズナ系統15−8および15−11を、OsCslF2、H37およびH17−4を含む他の2種のトランスジェニックシロイヌナズナ系統と、Burton et al.(Science 311: 1940-1942, 2006)により記載されたように、遺伝的に異種交配させるために選択した。HvCslH1およびOsCSLF2タンパク質を同じ細胞型の中に発現することによって、単一遺伝子(CSLHまたはCSLFだけ)トランスジェニックシロイヌナズナ植物において観察されるレベルより高いレベルの(1,3;1,4)−β−D−グルカンが細胞壁中に堆積される可能性があると考えられた。さらに、このことは、免疫電子顕微鏡研究および化学的細胞壁分析において、(1,3;1,4)−β−D−グルカン検出の助けになるはずである。
【0236】
親系統の4種すべてが、それらの細胞壁に(1,3;1,4)−β−D−グルカンを含有することを、免疫電子顕微鏡法により確認した(図13)。4種の集団それぞれに由来する個体を、雌雄の親として使用した。雌親(例えば、個体H37−5)の花はおしべの葯が裂開する前におしべを取り去り、雄親(例えば、個体15−8−3)の裂開したおしべを使用して受粉した。個々の異種交配した花を標識し、得られた種子の鞘を脱水して回収した。
【0237】
個々の異種交配子孫を土に撒き、鋳型として葉のゲノムDNAならびにHvCslH1特異的プライマーおよび、別の反応において、OsCslF2特異的プライマーを使用するPCRによりそれらの遺伝子型を決定した。成葉を固定し、包埋し、切片にし、(1,3;1,4)−β−D−グルカンモノクローナル抗体を用いて標識した。図14に観察されるように、多くの子孫が、親系統より非常に高いレベルの標識を有することが見出された。例えば、パネルDに示す個体の表皮細胞中の標識は、その15−8−3×H37−7の親と比較して非常に多い(図13)。同じ遺伝子型の同胞(図14、パネルC)は、表皮細胞壁の標識のレベルが一貫して低いことを示した。
【実施例9】
【0238】
オオムギ栽培品種ヒマラヤおよびコムギ由来のCslH cDNAおよびゲノム配列のクローニング
CslH1遺伝子の全長cDNA配列を、オオムギ栽培品種ヒマラヤから、オオムギEST配列、コメCslH1遺伝子配列(LOC_Os10g20090)に基づくプライマーを使用するcDNAからのPCR、および5’RACEの組み合わせを使用して単離した。
【0239】
HvCslH1(Him)(配列番号69)と称する2333bpのコンセンサス配列を、図16に示す。751アミノ酸(配列番号70)の単一の長いオープンリーディングフレームが存在する。
【0240】
オリゴヌクレオチドプライマーSJ91およびSJ85を、コンセンサス配列の5’および3’末端から設計し、これらを使用して、図17においてHvCslH1gHim(配列番号71)と称するゲノムDNAから3203bpのDNA断片を増幅した。
【0241】
オオムギcDNA配列およびゲノム配列のアライメントにより、CslH遺伝子が、コンセンサスGT..AGスプライスドナー/アクセプター部位に、個々に隣接する8個の小型(およそ100bp)のイントロンを有することが示された(図17)。
【0242】
CslH1のコムギホモログを、TIGRデータベースにおいてTC255929と同定した。ESTのCJ614392、CJ609729およびCJ721204により例示されるように、配列の3つのクラスにより、この仮想コンセンサスが構成された。PCRプライマーを、ATG開始コドンの周囲のオオムギ配列(SJ163)および3’末端における3種のEST型すべてのコンセンサス配列(SJ164)から設計し、コムギ栽培品種チャイニーズ・スプリング由来の全長ゲノム断片を増幅するために使用した。2種の配列型を同定し、TaCslH1−1(配列番号78)およびTaCslH1−2(配列番号79)と名付けた。
【0243】
TaCslH1−3(配列番号80)と称する第3のホモログを、材料および方法においてより詳細に記載した、プライマーSJ204およびSJ164を使用して単離した。
【0244】
オオムギ配列との比較により、イントロン−エクソン接合部が、3種の遺伝子すべてにおいて保存されていることが示された(図17)。3種のコムギ遺伝子は、94.8〜96.1%同一である。
【0245】
3種のコムギCslH1遺伝子の推定コード領域の配列(配列番号72、配列番号73および配列番号74)は、それぞれ、752アミノ酸のポリペプチド(配列番号75、配列番号76および配列番号77)をコードする。
【0246】
オオムギおよびコムギのCSLH1遺伝子のDNAコード配列およびアミノ酸配列を、muscleアライメントプログラムを使用してアライメントし、同一性および類似性のパーセントを、PAM250マトリックスを使用して計算した。同一性および類似性のパーセントを示す表を、図27に示す。
【0247】
図27に示すように、コムギタンパク質は、互いに約94〜95.0%の同一性を有し、オオムギタンパク質と約92.6〜93.1%の同一性を有する。
【実施例10】
【0248】
オオムギおよびコムギにおけるCslH遺伝子の発現
CslH1遺伝子の発現を、半定量的(RT−PCRおよびゲル電気泳動)と定量的(リアルタイムPCR)法により調査した。
【0249】
βグルカンのレベルは、子葉鞘の成長に伴い増加し、その後成長の停止後に減少するので、子葉鞘は、βグルカンの生合成に関する遺伝子の発現を調べるために良好な組織である。CslH1遺伝子は、成長の停止後にだけ最大の発現を示し、最も古い組織(6〜8日齢、図19A/Bに示すように)において高い。
【0250】
他の組織もまた調べた。成長中の葉において、CslH1遺伝子は、葉の頂点の最も古い組織において示差的および最大発現を示す(図20)。これらの結果から、CslH1遺伝子は、分裂および伸長を停止し、したがって分化する細胞において、選択的に(しかし排他的ではない)発現すると思われる。成熟胚乳中の細胞は、成長の同様の段階にある、すなわち、細胞分裂が停止し、細胞の拡大が緩慢になり、細胞が特殊化したデンプン保存柔組織に分化する。
【0251】
オオムギ胚乳組織において、CslH1遺伝子発現は、開花後4日ほどでピークを迎え、その後、後期の間に増加し、28日目で最大に達する(図21)。
【0252】
コムギにおいてCslH1遺伝子発現には大きな差があり、開花後4日目で発現はピークを迎え、その後は非常に低い。これらの結果をリアルタイムPCRにより確認し、開花後28日目において、CslH遺伝子の発現が、オオムギにおいてコムギより約10倍高いことが示された(図22)。
【実施例11】
【0253】
コムギ穀粒におけるオオムギCslH遺伝子の過剰発現
トランスジェニックコムギ植物を、バイオリスティック形質転換により、発現が胚乳組織においてのみ起こるようにグルテニンプロモーターの制御下で全長ゲノムHvCslH1(品種ヒマラヤ)遺伝子により作出させた(図23)。系統を、トランスジーンの有無に関して、若葉材料のPCRによりスクリーニングした。12種のPCR陽性系統および3種のPCR陰性系統(H1−2、−7および11)を、成熟まで温室において成長させた。RNAを、開花約15日後に成長中の穀粒から単離し、cDNAを、Superscript IIIを使用して調製した。その後、オオムギトランスジーンの発現を、リアルタイムPCRにより分析した。使用したプライマーは、コムギおよびオオムギの遺伝子双方を増幅するので、表5は、内在性のコムギCslH遺伝子と比較した相対的発現レベルを示す。
【表5】

【0254】
大部分の系統が、対照より数百倍高いレベルでオオムギCslH遺伝子を発現し、9、10、12および14系統は最も高い発現を示した(1000倍を超えて高い)。
【0255】
成熟時に、単一穀粒のβグルカン含有量に関して分析し、結果の要約を表6に示す。
【表6】

【0256】
PCR陰性系統はすべて、平均すると穀粒重量の0.69%の、最も低いβ−グルカン含有量を有し、一方、PCR陽性系統由来の穀粒は、0.97%の高い平均β−グルカン含有量を有した。表6の最後の列は、所与の系統由来の任意の単一穀粒の最大β−グルカン含有量を示し、最も高いPCR陰性系統は1.0%(大部分の穀粒はこれより非常に低い)であるが、いくつかのPCR陽性系統は有意に高いβ−グルカンレベルの穀粒を有し、9系統および10系統(最も発現が高い)は、最大1.9%のβ−グルカンを含む穀粒を有する。β−グルカンのこれらのレベルは、以前はコムギでは見られなかった。
【0257】
これらのT0植物の先端は、トランスジーンについて分離するT1種子を含有する。DNAを単一の遺伝子座に挿入した場合、3種のトランスジェニック対1種の野生型種子の比が観察されるはずである。図25は、H1トランスジェニック10系統由来の個々のT1種子のβ−グルカンレベルを示し、これにより、およそ3/4(47/61)が、PCR陰性系統の平均(0.7%)より高いβ−グルカンレベルを有することを見出すことができる。最も高いβ−グルカンレベル(1.9%)と平均PCR陰性レベル(0.7%)との比から、β−グルカン含有量の増加は、野生型コムギ穀粒で通常見られる量の2.7倍である。さらに重要な観察結果は、穀粒の多くの割合が、少なくとも1.4%のβグルカンを有することである。
【0258】
系統がホモ接合性になり、遺伝子量が増加した場合、これらの穀粒においてβ−グルカンのさらなる増加が見られることが予想される。
【実施例12】
【0259】
実施例9から11までの材料および方法
植物材料
オオムギ(Hordeum vulgare)栽培品種ヒマラヤおよびコムギ(Triticum aestivum)栽培品種チャイニーズ・スプリング、ウェストニア(Westonia)およびボブホワイト(Bob White26)を、標準的温室条件下で成長させた。
【0260】
プライマー配列
実施例9から11まで、および本実施例において参照するプライマー配列を、下記の表7に示す:
【表7】

【0261】
DNA、RNAの単離およびcDNAの合成
植物DNAを、十分に膨張した葉の組織から、CTABに基づく方法(Murray and Thompson, Nucleic Acids Res. 8: 4321-4325, 1980)を使用して単離した。総RNAを、葉および子葉鞘の組織から、Qiagen社のRNAeasyキットを使用して単離した。RNAを、成長中の胚乳からフェノールSDS法およびLiCl沈殿(Clarke et al., Functional and Integrative Genomics 8, 211-221, 2007)を使用して単離した。RNAは、DNAseを用いて、Ambion社の「DNAフリー」キットを使用して処理し、次いでcDNAを、SuperscriptlII逆転写酵素を使用して、製造業者(Clontech)の指示書に従って合成した。
【0262】
CslH遺伝子のクローニング
CslH遺伝子をクローニングする方法は、CslF遺伝子のクローニングおよび特性決定において記載された方法と同様であった(Burton et al., Plant Physiol 146: 1821-1833, 2008)。コメセルロースシンターゼ様H1遺伝子(LOC_Os10g20090)のオオムギホモログの1.8kb仮想コンセンサス配列(TC140327)を、TIGRデータベースにおいて同定した。PCRプライマー対(SJ27−SJ73およびSJ72−SJ75)を、コメCslH1配列に基づいて設計し、これらを用いてcDNA由来の配列を増幅した。次いで、遺伝子の5’末端を5’RACEにより、SMART cDNAライブラリと、ネステッドCslH1プライマーSJ28およびSJ79を使用して、製造業者(Clontech)の指示書に従って増幅した。
【0263】
全長ゲノムクローンを、プライマーSJ91およびSJ85ならびにPhusion Taqポリメラーゼ(Finnzymes)を用いて、製造業者の推奨するサイクリング条件(変性98℃30秒、その後、98℃5秒、63℃7秒および72℃3分を35サイクル)に従って増幅することによって単離し、pCRBluntII TOPOクローニングベクター(Invitrogen)にクローニングした。
【0264】
コムギCslHゲノムクローンを、PCRによって、Phusionポリメラーゼを用いて、栽培品種チャイニーズ・スプリングからプライマーSJ163およびSJ164を使用して70℃のアニーリング温度で単離した。ゲノムウォーキングキットを、製造業者(Clontech)の指示書に従って使用し、さまざまなボブホワイト(データ非掲載)から、3種のコムギCslHホモログすべてのコード領域の上流に伸長する配列を得た。第3のホモログに特異的なプライマー(SJ204)を設計し、SJ164とともに使用して第3の全長単離ゲノムクローンを単離した。予測エクソン/イントロン境界が、配列決定cDNA断片により正しくスプライシングされ得ることを確認した(データ非掲載)。
【0265】
RT−PCRによるコムギおよびオオムギ中のCslH遺伝子の発現分析
総RNAを、7日齢の植物の第1葉、さまざまな年齢の濃い色の成長した子葉鞘および開花後4日(DPA)間隔をあけて回収した成長中の穀粒の切片から単離し、DNAse処理し、Superscript IIIを用いて製造業者(Invitrogen)の指示書に従って逆転写した。PCR反応を、HotStarTaq(Qiagen)を使用して実施した。cDNAを希釈し、1μl当たり1ngの元のRNAと等量のレベルでPCR反応に使用した。半定量的RT−PCRのためにはCslH1プライマーSJ72およびSJ74、CslF遺伝子のためのプライマー対は下記のとおりであった;(CslF6;SJ107−SJ82)、(CslF4;SJ94−SJ95)、(CslF9;SJ97−SJ93)、(CslF3;SJ44−SJ38)、(CslF8;SJ96−SJ37)。アニーリング温度は59℃を使用した。試験増幅を実施して、増幅が飽和(チューブリンの24サイクルを除き、およそ32〜35サイクル)でなかったことを確実にし、産物を、アガロースゲル電気泳動後の臭化エチジウム染色によって分析した。リアルタイムPCRを3連の試料について、Rotorgene6000装置(Corbett Life Sciences, AU)においてHotStarTaq(Qiagen)、SybrGreenならびにプライマーSJ183およびSJ164ならびにアニーリング温度60℃を使用して実施した。相対的発現レベルを、コムギ0dpa試料を比較因子(1に設定)として用いて、装置のソフトウェアを使用して計算した。この試料のCt値は25.5サイクルであった。15dpaにおけるトランスジェニック穀粒の分析のために、相対的発現値を、チューブリンに対して正規化し、最も低い発現系統(H1−13)と比較した。
【0266】
Q−PCRによるオオムギ中のCslH遺伝子の発現分析
HvCslH1転写産物を、発芽後0.5から7日の成長中の子葉鞘において測定した。HvCslH1転写産物は、伸長段階の完了および葉の出現後にだけ蓄積されることが示された。発現の最も高いレベルは、子葉鞘が老化(ねじれおよび収縮)する7日後に見られた(Gibeaut et al., Planta 221:729-738, 2005)。
【0267】
胚乳においてオオムギCslH遺伝子を過剰発現するトランスジェニックコムギ植物の作製
全長オオムギ品種ヒマラヤのゲノムCslH配列(配列番号71)を、プライマーSJ91およびSJ85を使用して増幅し、高分子量グルテニンBx17プロモーターの1.9kb断片とノパリンシンターゼターミネーターの間に、EcoRI断片として挿入した(図23)。Bx17プロモーターは、成長中の胚乳において高レベルの発現をもたらす(Reddy and Appels, Theor Appl Genet 85: 616-624, 1993)。
【0268】
ボブホワイト26コムギ植物を、バイオリスティック法(Pellegrineschi et al., Genome 45: 421-430, 2002)を使用して、50mg/L G418を選択試薬として用い形質転換させた。HvCslH発現ベクター(pZLBx17HvgH1)とNPTII選択可能なマーカー(pCMSTLSneo、図24)の発現を駆動するCaMV 35Sプロモーターを有する第2のプラスミドとを等モル量で混合し、未熟胚に同時に撃ち込んだ。
【0269】
トランスジェニック植物を、トランスジーンの存在に関して、若葉組織およびSigma社のRedExtractnAmp(商標)キットを使用して、プライマーSJ244およびSJ79を用いてスクリーニングした。
【0270】
開花(葯の出現および花粉の脱落)において、先端をタグ付加し、穀粒をおよそ15dpaにおいて試料採取可能にした。先端由来の3種の穀粒をプールし、RNAを抽出し、逆転写し、トランスジーンの発現レベルを、リアルタイムPCRによりプライマーSJ183およびSJ85を使用して分析した。発現レベルを、α−チューブリン(プライマーTUBおよびTUB2F)に対して正規化し、最終的に最も低い発現体と比較した比で表した。
【0271】
成熟単一穀粒由来の粉を、β−グルカン含有量に関して、リケナーゼ酵素法(AACC Method 32-33, Megazyme assay kit, McCleary and Glennie-Holmes, J. Inst Brewing 91: 285-295, 1985)の小規模バージョンを使用して分析した。β−グルカン含有量を、粉砕全粒粉のパーセント(w/w)として表した。
【実施例13】
【0272】
オオムギ品種ゴールデンプロミス(Golden Promise)中のオオムギCslH遺伝子の過剰発現
オオムギCslH cDNA(配列番号1)の全長コード領域を、2種のGateway可能なオオムギ形質転換ベクターに移した。ベクターpRB474は、胚乳特異的発現を提供するオートムギグロブリンプロモーターを含有し(Vickers et al., Plant Mol Biol 62: 195-214, 2006)、ベクターpMDC32(Curtis and Grossniklaus, Plant Physiol. 133: 462-9, 2003)は、すべての植物組織において構成的発現を駆動する二重35Sプロモーターを含有する。
【0273】
オオムギの形質転換
ベクターを、アグロバクテリウム・ツメファシエンスに移し、オオムギ栽培品種ゴールデンプロミスの未熟胚盤を、確立されたプロトコルを使用して形質転換し、トランスジェニック植物の2種の集団を作製した。トランスジーンの挿入は、サザンブロッティングにより確認した。植物236−1から236−18は、オートムギグロブリンプロモーターにより駆動されるオオムギCslH遺伝子を含有する。植物237−1および2は、35Sプロモーターにより駆動されるオオムギCslH遺伝子を含有する。植物208−2、−3、−5および−7は対照植物であり、オートムギグロブリンプロモーターのみを有する空ベクターpRB474についてトランスジェニックである。
【0274】
転写産物の分析
葉および受粉後7および14日(DAP)の成長中の穀粒の試料を、236種の植物から回収した。総RNAを、TRIzol試薬(Invitrogen)を使用して、標準的プロトコルに従って抽出し、cDNAを、Burton et al.(Plant Physiol 146: 1821-1833, 2008)に従って合成した。定量的リアルタイムPCR(QPCR)を、Burton et al.(2008、上記)に従って実施した。CslH遺伝子の転写産物レベルを、トランスジェニック穀粒の胚乳において、一般的に非常に低い野生型胚乳レベルと比較した。
【0275】
図26に示すように、空ベクター対照系統(208)は、CslH転写産物の典型的な野生型のレベルを有する。トランスジェニック系統(236)は、7日目(7D)においてHvCslH1 mRNAレベルの有意な増加を示し、受粉後14日目(14D)においてさらに増加する。
【0276】
β−グルカンの分析
トランスジェニック植物由来のT1種子を回収した。個々の個体植物由来のバルクT1穀粒の試料を粉砕して粉にし、存在するβ−グルカンの量を、Megazyme法(上記)を使用して分析した。個々の植物からのデータを、2回の再現の平均値として表し、β−グルカンの量を穀粒重量のパーセントとして、下記の表8に示す。
【表8】

【0277】
空ベクター対照系統(208)は、およそ4%の(1,3;1,4)−β−D−グルカン含有量を有し、これは野生型ゴールデンプロミス穀粒では典型的である。T1穀粒をバルク化した(したがって、ヌル分離穀粒(null-segregant grain)を含有する)にもかかわらず、有意な数のトランスジェニック系統(網掛け部分)が対照より高い総(1,3;1,4)−β−D−グルカン含有量を示し、最も高い値は5.9%であった。
【0278】
当業者であれば、本明細書に記述されている本発明が、具体的に記述されているもの以外の変形および変更を許容することを理解するであろう。本発明はそのような全ての変形および変更を含むと理解されるべきである。本発明は同様に、個別的にまたは集合的に、本明細書において述べられ、または示されているステップ、特徴、組成物および化合物の全て、ならびに該ステップまたは特徴のいずれか2つ以上の任意のおよび全ての組合せを含む。
【0279】
同様に、本明細書において用いられる単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈上既に特段の指示がないかぎり、複数の態様を含むことに留意しなければならない。すなわち、例えば、「トランスジーン(a transgene)」への言及は、単一のトランスジーンだけでなく2以上のトランスジーンを含み、「植物細胞(a plant cell)」は単一の細胞だけでなく2以上の細胞を含むなどである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞により生成される(1,3;1,4)−β−D−グルカンのレベルを調節する方法であって、該細胞中のCslHによりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼのレベルおよび/または活性を調節するステップを含む方法。
【請求項2】
細胞中の(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼのレベルおよび/または活性を調節する方法であって、該細胞中のCslH核酸の発現を調節するステップを含む方法。
【請求項3】
(1,3;1,4)−β−D−グルカンの生成方法であって、単離されたCslH核酸で細胞を形質転換するステップ、および該細胞に該単離されたCslH核酸を発現させるステップを含む方法。
【請求項4】
前記細胞が植物細胞である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記細胞が単子葉植物細胞である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記細胞が穀類植物細胞である、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
請求項3に記載の方法により生成された(1,3;1,4)−β−D−グルカン。
【請求項8】
以下:
同じ分類群の野生型細胞と比較してそのレベルおよび/または活性が調節された、CslHによりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼ;ならびに/あるいは
同じ分類群の野生型細胞と比較してその発現が調節されたCslH核酸
のいずれか1以上を含む細胞。
【請求項9】
同じ分類群の野生型細胞と比較してそのレベルが調節された(1,3;1,4)−β−D−グルカンをさらに含む、請求項8に記載の細胞。
【請求項10】
請求項1または2に記載の方法により作製された、請求項8または9に記載の細胞。
【請求項11】
植物細胞である、請求項8〜10のいずれか1項に記載の細胞。
【請求項12】
単子葉植物細胞である、請求項11に記載の細胞。
【請求項13】
穀類植物細胞である、請求項11または12に記載の細胞。
【請求項14】
請求項8〜13のいずれか1項に記載の1以上の細胞を含む多細胞構造物。
【請求項15】
植物全体、植物組織、植物器官、植物部分、植物繁殖材料、または培養植物組織からなるリストより選択される、請求項14に記載の多細胞構造物。
【請求項16】
穀類植物、またはその組織、器官もしくは部分を含む、請求項14または15に記載の多細胞構造物。
【請求項17】
穀粒を含む、請求項16に記載の多細胞構造物。
【請求項18】
そのレベルが調節された(1,3;1,4)−β−D−グルカンを含む穀粒であって、そのレベルおよび/または活性が調節された、CslHによりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼ、ならびに/あるいはその発現が調節されたCslH核酸を含む1以上の細胞を含む、上記穀粒。
【請求項19】
以下:
請求項17または18に記載の穀粒を製粉することにより製造される穀粉;および
任意により、1以上の他の穀粒を製粉することにより製造される穀粉
を含む穀粉。
【請求項20】
単離されたCslH核酸、又はその相補体、逆相補体もしくは断片。
【請求項21】
請求項20に記載の単離された核酸分子を含む遺伝子構築物またはベクター。
【請求項22】
請求項20に記載の単離された核酸分子または請求項21に記載の遺伝子構築物を含む細胞。
【請求項23】
植物細胞である、請求項22に記載の細胞。
【請求項24】
単子葉植物細胞である、請求項23に記載の細胞。
【請求項25】
穀類植物細胞である、請求項23または24に記載の細胞。
【請求項26】
請求項22〜25のいずれか1項に記載の1以上の細胞を含む多細胞構造物。
【請求項27】
植物全体、植物組織、植物器官、植物部分、植物繁殖材料、または培養植物組織からなるリストより選択される、請求項26に記載の多細胞構造物。
【請求項28】
穀類植物、またはその組織、器官もしくは部分を含む、請求項26または27に記載の多細胞構造物。
【請求項29】
穀粒を含む、請求項28に記載の多細胞構造物。
【請求項30】
CslHによりコードされる(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼポリペプチドまたはその断片を規定するアミノ酸配列を含む、単離されたポリペプチド。
【請求項31】
ポリペプチドまたはその断片が、CslHによりコードされる1以上の(1,3;1,4)−β−D−グルカンシンターゼエピトープを含む、請求項31に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項32】
請求項30または31に記載の単離されたポリペプチドまたはその断片に対して生起された抗体またはそのエプトープ結合性フラグメント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11−1】
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【図11−2】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16−1】
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【図16−2】
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【図16−3】
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【図17−1】
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【図17−2】
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【図17−3】
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【図17−4】
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【図17−5】
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【図17−6】
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【図18−1】
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【図18−2】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公表番号】特表2011−509072(P2011−509072A)
【公表日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538283(P2010−538283)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【国際出願番号】PCT/AU2008/001906
【国際公開番号】WO2009/079714
【国際公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(510174130)ザ ユニバーシティ オブ メルボルン (2)
【出願人】(305039998)コモンウェルス サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ オーガニゼイション (92)
【出願人】(504265042)ザ ユニバーシティー オブ アデレード (2)
【出願人】(508034912)グレインズ リサーチ アンド ディベロップメント コーポレーション (2)
【Fターム(参考)】