説明

定電流電源装置

【課題】電源起動時に光量が絞られてPWM信号のデューティ比が小さい場合にも、出力電圧V0の立ち上げを速やかに行うことができる定電流電源装置を提供する。
【解決手段】抵抗R2による電圧降下によってLEDアレイ2を流れるLED電流ILを検出し、コンパレータCP1によってLED電流ILに相当する抵抗R2の電圧降下と第2基準電圧Vref2とを比較することで、起動時に、LED電流ILが第2基準電圧Vref2に到達するまで、PWM信号に長い補充期間Tsの期間、1次側から2次側に電力を供給させると共に、LED電流ILが第2基準電圧Vref2に到達後は、短い補充期間Tnの期間、負荷に電力を供給させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷を定電流で駆動する定電流電源装置に係り、特にPWM制御(Pulse Width Modulation)によるパルス信号(以下、PWM信号と称す)で負荷を駆動する定電流電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LED(light emitting diode)は、電流の大きさに応じて色調が変化する特性を有している。従って、LEDを定電流で駆動するが一般的であり、調光制御を行う場合には、PWM信号でLEDをオン/オフ駆動させ、PWM信号のデューティ比によって光量を調整している。
【0003】
一方、負荷を定電流で駆動する定電流電源装置としてスイッチング電源を用いる場合には、出力電流を検出してフィードバック制御を行う必要がある。上述のようにPWM信号によってLEDを駆動する場合、LEDが点灯期間と消灯期間とを繰り返すことになり、当然ながら消灯期間ではLEDに電流が流れず、出力電流がゼロとしてフィードバックされてしまう。このように、出力電流がゼロとしてフィードバックされると、過剰な電力が供給されすぎてしまうため、フィードバック制御をLEDの点灯期間中に制限させることで、過剰な電力の供給を防止させることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1には、非絶縁方式の昇圧型チョッパー型のスイッチング電源が開示されており、LEDを点灯するON期間はLED動作電流指示値に基づいて動作電流を供給し、LEDを消灯させるOFF期間はLEDと供給電圧をn型MOSトランジスタにて切り離し、且つLED供給電圧源であるスイッチング電源のスイッチング動作も同期してオフさせている。このように特許文献1では、PWM信号に同期させてスイッチング電源をオン/オフ動作させることで、待機時の消費電力を低下させることを行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−147435号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図4に、従来技術の定電流電源装置の回路構成図を示す。
また、図5は、図4の従来技術の定電流電源装置の動作を説明するための波形図であり、(a)はPWM信号、(b)は電源ラインの出力電圧、(c)はLEDアレイ2を流れるLED電流、(d)はLED駆動信号、(e)は誤差信号FBをそれぞれ示している。
図5を参照すると、時刻t0にPWM信号が入力されると、PWM信号に同期したLED駆動信号も出力され、1次側から2次側に電力が供給されて出力電圧が立ち上がる。時刻t1で出力電圧がLEDアレイ2に電流が流れ始める順方向降下電圧VFに到達すると、LED電流が流れ初める。そして時刻t2で出力電圧が所定の電圧に到達以降は、LEDアレイ2が定電流で駆動されることになる。
【0007】
しかしながら、従来技術では、PWM信号に同期させてスイッチング電源をオン/オフ動作させるため、電源起動時の立ち上がりシーケンスにおいても、LED駆動信号がHレベルとなるLEDを点灯するON期間のみスイッチング電源はオンとなり、1次側から2次側に電力が供給される。
従って、図5に示すように、電源起動時に光量が絞られてPWM信号のデューティ比が小さい場合には、スイッチング電源はオン期間が短くなるため、出力電圧の立ち上り時間が遅延し、規定のLED電流が流れてLEDが発光するまでに時間がかかってしまうという問題点があった。
なお、特許文献1のように、非絶縁方式の昇圧型チョッパー型のスイッチング電源では、入力電圧をかさ上げして出力電圧を得るので、入力電圧と出力電圧との差分により立ち上がり時間の遅延は短くなる場合があるが、絶縁方式のDC−DCコンバータのスイッチング電源では、出力電圧が必ず0Vから立ち上がるので、出力電圧の立ち上り時間の遅延が顕著になる。
【0008】
また、PWM信号のデューティ比に応じて、スイッチング電源はオン期間が変化するため、出力電圧立ち上り時間が定まらず、規定のLED電流が流れてLEDが発光するまでの時間にバラツキが生じてしまう。
【0009】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、従来技術の問題を解決し、電源起動時に光量が絞られてPWM信号のデューティ比が小さい場合にも、出力電圧の立ち上げを速やかに行うことができる定電流電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の定電流電源装置は、負荷をオン/オフ駆動する外部パルス信号に同期させて負荷に電力を供給すると共に、2次側に供給された電力を用いて負荷を設定された定電流で駆動する定電流電源装置であって、
負荷を流れる電流を検出する負荷電流検出手段と、
負荷電流検出手段によって検出された負荷電流と予め設定された第2基準値とを比較して差分の信号を出力する誤差信号生成手段を具備し、
起動時には、負荷電流が第2基準値に到達するまで、外部パルス信号に拘わらず、第1の補充期間の間、誤差信号生成手段からの差分の信号に基づき負荷に電力を供給させ、
負荷電流が第2基準値に到達後は、外部パルス信号に拘わらず第1の補充期間より短い第2の補充期間の間、負荷電流比較手段からの差分の信号に基づき負荷に電力を供給させる補充期間生成手段を備えることを特徴とする。
また、本発明の定電流電源装置においては、補充期間は、パルス信号のON期間の終了のタイミングをトリガとして生成された所定の期間であることを特微とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る定電流電源装置の実施の形態の回路構成を示す回路構成図である。
【図2】オン発生回路5を示す回路構成図である。
【図3】図1の定常動作時における各部の信号波形、及び動作波形を示す波形図である。
【図4】従来技術の定電流電源装置の回路構成図である。
【図5】図4の各部の信号波形、及び動作波形を示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。
【0013】
(実施の形態)
図1に、本発明に係る定電流電源装置の実施の形態の回路構成を示す回路構成図を示す。
第1の実施の形態の定電流電源装置は、図1に示すように、整流回路DBと、平滑コンデンサC1と、コントローラ1と、N型のMOSFET(以下、NMOSと称す)Q1と、抵抗R1と、トランスTと、整流ダイオードD1と、平滑コンデンサC2と、抵抗R2と、NMOSQ2と、差動増幅器OTAと、サンプルアンドホールド回路SH2と、基準電圧Vref1と、基準電圧Vref2と、シャントレギュレータZ1と、オン発生回路5と、比較器CPと、オア(OR)回路ORと、インバータINV1と、P型のMOSFET(以下、PMOSと称す)Q3と、フォトダイオードPCD及びフォトトランジスタPCTRで構成されるフォトカプラとを備え、LEDアレイ2を定電流Isで駆動するように構成されている。
なお、第1の実施の形態の定電流電源装置において、図4に示す従来の定電流電源装置と同一の構成については同一符号を付与して説明を省略する。
【0014】
整流回路DBの交流入力端子ACin1、ACin2には商用交流電源ACが接続され、商用交流電源ACから入力された交流電圧が全波整流されて整流回路DBから出力される。整流回路DBの整流出力負極端子は、スイッチング素子であるN型のMOSFET(以下、NMOSと称す)Q1のソース端子が接続され、NMOSQ1のドレイン端子はトランスTの一次巻線Pを介して整流回路DBの整流出力正極端子に接続されている。また、NMOSQ1のゲート端子は1次側制御回路Cont1に接続され、1次側制御回路Cont1によってNMOSQ1がオン/オフ制御される。NMOSQ1のオン/オフ制御により、整流回路DBと平滑コンデンサC1とで整流平滑された直流電源がトランスTの一次巻線Pに印加される。
【0015】
トランスTには、NMOSQ1がオンしている時に磁気エネルギーが蓄えられ、NMOSQ1がオフしているときに蓄えられた磁気エネルギーがトランスTの二次巻線Sから電力として放出される。トランスTの二次巻線Sの両端子間には、整流ダイオードD1を介して平滑コンデンサC2が接続され、トランスTの二次巻線Sから放出された電力は、整流ダイオードD1と平滑コンデンサC2により整流平滑される。なお、平滑コンデンサC2の正極端子に接続されているラインが出力電圧V0の電源ラインとなり、平滑コンデンサC2の負極端子が接続されたラインは接地端子に接続されたGNDラインとなる。
【0016】
n個(nは任意の自然数を示す)のLED21〜2nが直列接続されてなるLEDアレイ2が外部装置から調光される駆動対象の負荷として用いられる。LEDアレイ2と、NMOSQ2と、抵抗R2とが電源ラインとGNDラインとの間に直列に接続されている。LEDアレイ2のアノード側端子が電源ラインに接続され、LEDアレイ2のカソード側端子にNMOSQ2のドレイン端子が接続され、NMOSQ2のソース端子が抵抗R2を介してGNDラインに接続されている。
【0017】
抵抗R2、差動増幅器OTA、サンプルアンドホールド回路SH2、基準電圧Vref1、コンデンサC3、及びシャントレギュレータZ1は、LEDアレイ2を流れる出力電流ILに対応する誤差信号FBを生成する誤差信号生成回路として機能する。また、フォトダイオードPCD及びフォトトランジスタPCTRで構成されるフォトカプラは、誤差信号生成回路で生成された誤差信号FBを2次側から1次側コントローラ1へ帰還するフィードバック回路として機能する。
さらに、コントローラ1は、フィードバック回路を介して帰還された誤差信号FBに基づいて1次側から2次側への電力供給を制御する制御回路として機能する。誤差信号FBがコントローラ1のFb端子に入力されることで、コントローラ1は1次側から2次側負荷への電力の供給を開始させ、フォトトランジスタPCTRで受光した誤差信号FBがなくなることで、コントローラは1次側から2次側負荷への電力供給を停止する。
また、オン発生回路5、オア(OR)回路OR、インバータINV1、PMOSQ3、電圧比較器CP、基準電圧Vref2、及び抵抗R2は、誤差信号FBが1次側へ帰還される期間を制限するので、電力供給期間の制限回路として機能する。
さらに、電圧比較器CPはオン発生回路5が発生する補充期間を長い期間tsと短い期間tnとに切換える回路として機能する。これは、LEDアレイ2に流れる電流ILが予め決められた電流まで達していない場合、補充される期間を長い期間tsに切換えることで、1次側から2次側へ供給される電力を増加させて、起動時の出力電圧VOの立ち上がり時間を早めることができる。従って、電力供給期間の制限回路は補充期間生成手段と言い換えることができる。
【0018】
図1に示すように、NMOSQ2のソース端子と抵抗R2との接続点が差動増幅器OTAの反転入力端子に接続されており、差動増幅器OTAの非反転入力端子は基準電圧Vref1の正極端子に接続されている。差動増幅器OTAは非反転入力端子に入力された基準電圧Vref1と反転入力端子に入力された抵抗R2に発生する電圧との差電圧を電流に変換して出力する。これにより、差動増幅器OTAからはLEDアレイ2を流れる出力電流ILに比例した電流が出力されることになる。
差動増幅器OTAの出力端子はサンプルアンドホールド回路SH2を介して、シャントレギュレータZ1の制御端子aに接続されている。サンプルアンドホールド回路SH2のオンオフ端子は、NMOSQ2のゲート端子と共に外部からのPWM信号端子に接続されている。
【0019】
また、PWM信号端子はオア(OR)回路ORの一方の入力端子に接続されていると共に、オン発生回路5にも接続され、オン発生回路5の出力を介してオア(OR)回路ORの他方の入力端子に接続されている。また、オア(OR)回路ORの出力端子はインバータINV1を介してPMOSQ3のゲート端子に接続されている。
ここで、オン発生回路5は、PWM信号のダウンエッジに基づいて補充期間を生成するための回路であり、PWM信号のON期間と、オン発生回路5で生成された補充期間との論理和によってPMOSQ3がオン/オフ制御される。
【0020】
シャントレギュレータZ1のアノードはGNDラインに接続され、シャントレギュレータZ1のカソードはPMOSQ3のドレイン端子に接続されている。そして、PMOSQ3のソース端子はフォトカプラを構成するフォトダイオードPCDのカソードに接続され、フォトダイオードPCDのアノードは外部補助電源Vccに接続されている。
【0021】
また、NMOSQ2のソース端子と抵抗R2との接続点には、電圧比較器CPの反転入力端子に接続されており、電圧比較器CPの非反転入力端子には基準電圧Vref2の正極端子に接続されている。基準電圧Vref2は、基準電圧Vref1よりも低い電圧が設定されている。
電圧比較器CPは非反転入力端子に入力された基準電圧Vref2と反転入力端子に入力された抵抗R2に発生する電圧とを比較して、LEDアレイ2を流れる出力電流ILに相当する抵抗R2の電圧降下が基準電圧Vref2以上であるかをオン発生回路5のDフリップフロップ論理回路DFFへ出力する。これは、電圧比較器CPは、LEDアレイ2を流れる出力電流ILの値が基準電圧Vref2に達した時にLレベル信号を出力することになる。
オン発生回路5は電圧比較器CPの出力電圧信号により補充期間を長い期間tsか短い期間tnに切り替えるが、出力電流ILの値が基準電圧Vref2に相当する電流に達した時に補充期間を短い期間tnに切り替える。
【0022】
図2は、オン発生回路5を示す回路構成図である。オン発生回路5は、Dフリップフロップ論理回路DFF、NMOSQ4、インバータINV2、コンデンサC3、抵抗R3、R4、及びPMOSQ5からなる。
NMOSQ4のゲートは、Dフリップフロップ論理回路DFFのクロック入力端子と接続され、PWM信号が入力される。Dフリップフロップ論理回路DFFのD入力端子は電圧比較器CPの出力端子に接続され、出力端子Qは、PMOSQ5のゲート端子に接続される。
また、PMOSQ5のソース端子と抵抗R3の一方の端子が別電源+Vccに接続され、PMOSQ5とPMOSQ5のドレイン端子に接続された抵抗R4との直列回路が抵抗R3と並列接続されている。NMOSQ4のドレインとインバータINV2の入力端子が接続され、前記接続点に抵抗R3と抵抗R4の他方の端子とが接続され、かつ、コンデサC3の一方の端子が接続される。コンデンサC3の他方の端子はGNDへ接地されている。インバータINV2の出力端子は、オン発生回路5の出力端子となって、オア(OR)回路ORの一方の端子へ接続される。
【0023】
オン発生回路5は、PWM信号のダウンエッジでON信号を発生して、入力されるPWM信号のパルス幅を拡張する機能を備える。オン発生回路5の詳細な動作は以下のようになる。
【0024】
PWM信号のパルス波形のダウンエッジがDフリップフロップ論理回路DFFのクロック端子に入力されると、D入力端子電圧レベルが出力端子Qから出力される。
D入力端子電圧レベルがHレベルの場合には、PMOSQ5はオフ状態になる。ここで、PWM信号がダウンエッジのためLレベルにあるので、NMOSQ4はオフ状態にあり、コンデンサC3には抵抗R3を介して電源電圧+Vccが充電され、コンデンサC3と抵抗R3との時定数の間、インバータINV2の出力からHレベル信号が出力される。すなわち、PWM信号のダウンエッジから、コンデンサC3と抵抗R3とによる時定数(ts)の期間にインバータINV2の出力からHレベル信号が出力されることになる。
【0025】
Dフリップフロップ論理回路DFFのD入力端子電圧レベルがLレベルの場合に、PWM信号のダウンエッジがDフリップフロップ論理回路DFFのクロック端子に入力されると、出力QはLレベルとなり、PMOSQ5はオン状態になる。また、NMOSQ4は、PWM信号のダウンエッジによりオフ状態になっている。
従って、抵抗R4は、抵抗R3と並列接続され、電源電圧+Vccを抵抗R3と抵抗R4との合成抵抗でコンデンサC3を充電開始する。すなわち、PWM信号のダウンエッジから、コンデンサC3と抵抗R3と抵抗R4との合成抵抗とによる時定数(t
n)の期間にインバータINV2の出力からHレベル信号が出力されることになる。
【0026】
ここで、Dフリップフロップ論理回路DFFのD入力端子は、電圧比較器CPの出力に接続されているので、LED電流ILが所定の値未満である場合には、Hレベルの信号が入力されることになる。
この場合には、PWM信号がダウンエッジ時のDフリップフロップ論理回路DFFのQ出力電圧は入力と同じHレベルとなるので、PMOSQ5はオフ状態になる。すなわち、抵抗3とコンデンサC4とによる時定数回路になり、長い時定数(ts)が形成される。
また、LED電流ILが所定の値以上である場合には、Lレベルの信号が入力されることになるので抵抗3と抵抗R4との合成抵抗とコンデンサC4とによる時定数回路になり、短い時定数(tn)が形成される。
上述のように、電圧比較器CPの出力に応じて、オン発生回路5から長いパルス(ts)と短いパルス(tn)を切換えて出力される。
【0027】
オア(OR)回路ORの他方の端子にはオン発生回路5の出力が接続され、オア(OR)回路ORの一方の端子にはPWM信号が入力されている。従って、オア(OR)回路ORの出力は、両端子の信号のオアとなるので、PWM信号のパルス幅に対して、上記の時定数(ts)または(tn)の期間を補充した出力をする。
すなわち、オン発生回路5で生成された時定数期間(ts)または(tn)は補充期間と言い換えることができる。
【0028】
以上の構成によれば、PWM信号のHレベル期間はサンプルアンドホールド回路SH2がオン状態となり、基準電圧Vref1と抵抗R2に発生する電圧との差電圧に応じた電流が差動増幅器OTAから出力され、出力電流ILに応じた誤差信号電圧がシャントレギュレータZ1の制御端子aに入力される。
また、PMOSQ3がオン状態であるので、シャントレギュレータZ1の制御端子aの電圧に応じた電流、すなわち出力電流ILに対応した電流IFがフォトダイオードPCDを流れ、当該電流が誤差信号FBとしてフォトダイオードPCDからフォトトランジスタPCTRに出力される。PMOSQ3がオン状態となるのは、インバータINV1の出力がLレベル、すなわち、オア(OR)回路OR出力がHレベル状態であり、誤差信号FBが帰還される期間は、PWM信号のオン期間と、オン発生回路5で生成された補充期間との論理和に制限させることになる。
【0029】
フォトトランジスタPCTRのコレクタ端子はコントローラ1のフィードバック入力端子Fbに接続され、フォトトランジスタPCTRのエミッタ端子は接地端子に接続されている。フォトトランジスタPCTRでは、フォトダイオードPCDからの誤差信号FBが受光されると、受光された誤差信号FBに応じた電流が流れ、コントローラ1に伝達される。これにより、コントローラ1は、誤差信号FBに応じたパルス幅のPWM信号を生成することで、NMOSQ1をオン/オフ制御して、1次側から2次側負荷に必要な電力を供給し、負荷であるLEDアレイ2が定電流Isで駆動されるように構成される。
【0030】
図3は、第1の実施の形態の定電流電源装置の起動時の立ち上がりシーケンスを示したもので、(a)はNMOSQ2を駆動するPWM信号、(a’)はオン発生回路5から出力される補充期間であるON信号、(b)はLEDアレイ2を流れる出力電流IL、(c)は2次側から1次側にフィードバックされる誤差信号FB、(d)は平滑コンデンサC2の両端子間の出力電圧VO、(e)はNMOSQ1を流れる出力電流IDPをそれぞれ示している。
また、PWM信号は、調光が暗めに設定されてPWM信号のON期間が比較的短い期間を示している。
【0031】
図3(a)に示すように、時刻T1においてPWM信号が立ち上がると、PMOSQ3がオン状態となると共に、サンプルアンドホールド回路SH2がオン状態となる。これにより、出力電流ILに応じた電流が誤差信号FBとして2次側から1次側に帰還される状態となるが、フィードバック制御の時間遅れにより、図3(c)に示すように、時刻T2までは誤差信号FBが2次側から1次側に帰還されない。
時刻T2より誤差信号FBが帰還され、1次側制御回路Cont1を介してNMOSQ1がスイッチング動作を開始させる。
また、図3(a)のPWM信号に、図3(a’)に示すON信号がオン発生回路5から出力され、2次側から1次側にフィードバックされる誤差信号FBの期間をT3〜T4期間のts期間補充する。
【0032】
NMOSQ1のスイッチング動作が開始されると、1次側から2次側に電力が供給されて平滑コンデンサC2に電荷が蓄積され、図3(d)に示すように、出力電圧VOが立ち上がる。立ち上がった出力電圧VOが時刻T5でLEDアレイ2に電流が流れ始める順方向降下電圧VFに到達すると、図3(c)に示すように、PWM信号に同期してLED電流ILが流れ始め、時刻T9において定電流Isに達する。
【0033】
ここで、図3(a’)に示すように、時刻T1〜T7の期間のON信号のパルス幅Tsは、時刻T8以降のON信号のパルス幅Tnと比較して長いパルス幅となっている。これは、時刻T5〜T6期間のLEDアレイ2に流れる出力電流ILが、定電流Isに達していないため、PWM信号のパルス幅に関わらず、出力電圧VOを急峻に立ち上げさせる。
この詳細な動作は、電圧比較器CPにより、LEDアレイ2に流れる電流を検出する抵抗R2の電圧降下を基準電圧Vref2と比較して、抵抗R2の電圧降下が基準電圧Vref2を下回っている場合には、スイッチStdを介してオン発生回路5へHレベルの信号を出力して、オン発生回路5から長い補充期間Tsを発生させる。
また、基準電圧Vref2は、基準電圧Vref1の90%前後の値に設定することが好ましい。
【0034】
時刻T8において、図3(b)に示すLEDアレイ2に流れる出力電流ILは、基準電圧Vref2に相当する電流を超えているので、電圧比較器CPの出力はLレベルとなり、スイッチStdをts側からtn側へ切替え、オン発生回路5から短い補充期間Tnを発生させる。これにより、図3(e)に示すように、NMOSQ1のスイッチング動作期間は短くなるが、時刻T9において、出力電流ILは、定電流Isに達する。
【0035】
時刻T9以降の定常動作状態は、オン発生回路5から補充期間Tnが発生され、PWM信号のパルス幅に対して補充期間Tn分誤差信号FBが出力される(時刻T13〜T14など)。この補充期間Tn動作により、PWM信号のオフ期間の出力電圧VOは、定格電圧よりもわずかに高い電圧を保持する。
【0036】
オン発生回路5は、入力されたトリガに対して予め設定されたパルス幅のワンショットパルスを発生させる回路であり、図3(a’)に示すように、PWM信号のダウンエッジ、すなわちPWM信号のON期間の終了のタイミングをトリガとして、補充期間となる予め設定されたパルス幅(tsまたはtn)のパルスが生成されるON信号を出力する。これにより、PWM信号のON期間と、当該PWM信号のON期間に引き続くパルス幅の補充期間に、PMOSQ3がオン状態となる。
従って、図3(a)に示すように、時刻T9や時刻T13でPWM信号が立ち下がると、サンプルアンドホールド回路SH2はホールド状態となるが、PMOSQ3は、パルス幅Tnの期間、すなわち時刻T9〜T10や時刻T13〜T14の期間は、ON状態に維持される。当該期間は、サンプルアンドホールド回路SH2がホールド状態となるため、PWM信号のダウンエッジ時の電圧が維持されて、図3(c)に示すように、2次側から1次側に誤差信号FBが帰還される。
これにより、平滑コンデンサC2に1次側から電力が供給されることになるが、PWM信号が立ち下がって、LEDアレイ2が駆動されていないため、供給された電力が平滑コンデンサC2に蓄積される。
時刻T9〜T10や時刻T13〜T14の期間に平滑コンデンサC2に蓄積される電力によって、時刻T9や時刻T14の時点で、図3(d)に示すように、出力電圧VO(実線)が定格電圧(点線)よりΔV分高くなるように構成されている。
換言するならば、PWM信号のオン時間に引き続くパルス幅Tnの期間で、次回のPWM信号の立ち上がりにおけるフィードバック制御の時間遅れの期間にLEDアレイ2の駆動に消費される電力が平滑コンデンサC2に1次側から供給される。
従って、PWM信号のオン時間において、出力電圧VOがほぼ定格電圧に、出力電流ILがほぼ定電流Isにそれぞれ維持されることになり、フィードバック制御に時間遅れが発生する実施の形態の回路構成であっても、負荷であるLEDアレイ2を定電流Isで駆動することができるという効果を奏する。
【0037】
なお、PWM信号のオン時間に引き続くパルス幅Tnの期間に平滑コンデンサC2に供給される電力と、PWM信号の立ち上がりにおけるフィードバック制御の時間遅れの期間に、LEDアレイ2の駆動に消費される電力とがほぼ同一であることが好ましいが、両者が多少異なっていてもPWM信号の立ち上がりにおける出力電流ILの低下を防止する効果を得ることができる。
【0038】
以上のように、実施の形態によれば、抵抗R1による電圧降下によってLEDアレイ2を流れるLED電流ILを検出し、コンパレータCP1によって検出してLED電流ILに相当する抵抗R1の電圧降下と第2基準電圧Vref2とを比較することで、起動時に、LED電流ILに相当する抵抗R1の電圧降下が第2基準電圧Vref2に到達するまで、PWM信号に同期してオン発生回路5から長い補充期間Tsを発生させ、1次側から2次側に電力を供給させるように構成されている。この構成により、実施の形態は、電源起動時に光量が絞られてPWM信号のデューティ比が小さい場合にも、出力電圧V0の立ち上げを速やかに行うことができるという効果を奏する。
【0039】
なお、上述の実施の形態では、n個(nは任意の自然数を示す)のLED21〜2nが直列接続されてなるLEDアレイ2を負荷として駆動する例を説明したが、1個のLEDでも良い。また、直流で駆動することができる負荷であれば、LEDに限定されることはない。
【0040】
なお、本発明が上記各実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、上記構成部材の数、位置、形状等は上記実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。なお、各図において、同一構成要素には同一符号を付している。
【符号の説明】
【0041】
1 コントローラ
2 LEDアレイ
21〜2n LED
C1、C2 平滑コンデンサ
C3 コンデンサ
CP コンパレータ
DB 整流回路
INV1、INV2 インバータ回路
FF1 フリップフロップ回路
D1 整流ダイオード
OR オア(OR)回路
OTA 差動増幅器
PCD フォトダイオードカプラ
PCTR フォトトランジスタカプラ
Q1、Q2、Q4 MOSFET(NMOS)
Q3、Q5 MOSFET(PMOS)
R1、R2、R3、R4 抵抗
SH1、SH2 サンプルアンドホールド回路
T トランス
Vref1 第1基準電圧
Vref2 第2基準電圧(第2基準値)
Z1 シャントレギュレータ
DFF Dフリップフロップ論理回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷をオン/オフ駆動する外部パルス信号に同期させて負荷に電力を供給すると共に、供給された電力を用いて前記負荷を設定された定電流で駆動する定電流電源装置であって、
前記負荷を流れる電流を検出する負荷電流検出手段と、
該負荷電流検出手段によって検出された前記負荷電流と予め設定された第2基準値とを比較して差分の信号を出力する誤差信号生成手段を具備し、
起動時には、前記負荷電流が前記第2基準値に到達するまで、前記外部パルス信号に拘わらず、第1の補充期間の間、前記誤差信号生成手段からの前記差分の信号に基づき負荷に電力を供給させ、
前記負荷電流が前記第2基準値に到達後は、前記外部パルス信号に拘わらず前記第1の補充期間より短い第2の補充期間の間、前記負荷電流比較手段からの前記差分の信号に基づき負荷に電力を供給させる補充期間生成手段を備えることを特徴とする定電流電源装置。
【請求項2】
前記補充期間は、前記パルス信号のON期間の終了のタイミングをトリガとして生成された所定の期間であることを特微とする請求項1記載の定電流電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−48525(P2013−48525A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186223(P2011−186223)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000106276)サンケン電気株式会社 (982)
【Fターム(参考)】