説明

実装基板及びこれを用いた半導体装置

【課題】放熱性、絶縁耐圧、光反射性に優れた実装基板及びこれを用いた半導体装置を提供すること。
【解決手段】実装基板10a−1は、陽極酸化処理によってアルミニウム基材20の第1の面に形成された層であり、多孔質層40とこの多孔質層の下に存在するバリア層30とからなる陽極酸化層35と、多孔質層上に、シード層50、第1の導電層60、第2の導電層70がこの順に形成され、所定の形状を有する配線領域と、この配線領域を除いた領域における多孔質層の少なくとも表面側の一部分が除去された領域とを有する。また、配線領域を除いた領域におけるバリア層が除去され、アルミニウム基材が露出した状態とされていてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実装基板に関し、特に、放熱性、絶縁耐圧、光反射性に優れた実装基板及びこれを用いた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
1997年に京都で開催された気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)で採択された気候変動枠組条約の議定書(京都議定書)で示された温室効果ガス排出の削減の動きに合わせた産業界の動きが見られる。技術革新によるLED素子(Light Emitting Diode)の発光効率の改善、蛍光体の進歩、光取り出し効率の改善等を背景として、LEDチップのコストダウンが進み、マルチLEDチップ又はLEDパッケージを実装した基板の使用が進み、LCD(Liquid Crystal Display)、FPD(Flat Panel Display)等のバックライト、屋内用照明、街路用照明等へのLED照明装置の普及が始まっている。
【0003】
LED素子はその省エネルギー性、長寿命を特徴に普及は進み始めているものの、一方高価格の割には輝度・明るさが既存の白熱灯、蛍光灯のレベルに劣ることが価格(コスト)に加え、今一つ普及を加速しない原因となっている。
【0004】
電流駆動型発光素子であるLED素子の出射光の取り出し方向における光量をアップするには、LED素子に流す電流を増やせばよいが、LED素子自身が発熱するだけでなく、LED素子の出射光の一部は、LED素子の近傍に存在する材料、例えば、蛍光体やこれを分散させている透明樹脂(白色LED素子の場合)に吸収され発熱を生じる。また、LED素子の出射光の一部は、例えば、蛍光体や透明樹脂によって散乱され、LED素子が搭載された実装基板(この実装基板は、LED素子の出射光の方向と逆の方向に配置されている。)の方向に進み、この散乱光の一部は実装基板面で反射され再び出射光の方向へ進み、蛍光体や透明樹脂に吸収され発熱を生じる。
【0005】
これらの発熱の外部への放熱が十分でないと、蛍光体の劣化を招きエネルギー変換効率は下がり、また、透明樹脂の着色を招くため、取り出された光の色調が変化してしまう。このため、LED素子が搭載された実装基板を用いたLED照明等の半導体装置における発熱は、半導体装置の信頼性の低下の重要な原因の一つとなる。
また、LED素子が搭載される実装基板の面の反射率が100%でないことによる反射ロスは、反射されない光の吸収による実装基板の発熱の原因、及び、LED素子の出射光の取り出し方向における光量の低下の重要な原因の一つとなる。
【0006】
従来、パワー素子等の発熱素子が実装される回路基板として、放熱性を有する熱伝導性基板が開発されており、多くの場合、アルミニウムや銅等の金属基材の表面に電気絶縁性接着樹脂層を形成し、この上に銅箔を張り合わせた金属ベース基板が使用されてきた。
【0007】
また、アルミナ(Al2O3)、窒化アルミニウム(AlN)等のセラミック基材の表面に直接回路を形成するセラミック回路基板が検討されてきた。
【0008】
また、アルミニウム等の金属基材の表面に陽極酸化層を形成し、この上に電気回路を形成する熱伝導性基板に関する多数の報告がある。
【0009】
例えば、「金属ベース基板および半導体装置とその製造方法」と題する後記の特許文献1には、次の記載がある。
【0010】
(1)金属基板表面に陽極酸化により形成された、厚さ2μm以下の無孔質バリヤー型酸化アルミニウム絶縁層と、該絶縁層の上に形成された金属配線層とを備えたことを特徴とする金属ベース基板。
【0011】
(2)金属基板表面に陽極酸化により形成された無孔質バリヤー型酸化アルミニウム絶縁層と、該絶縁層の上に形成された金属配線層とを備えた金属ベース基板であって、前記金属配線層がコプレーナ構造で構成され、前記金属基板とコプレーナ構造の接地線路が非接続であることを特徴とする金属ベース基板。
【0012】
(3)上記(1)又は(2)記載の金属ベース基板に半導体素子を実装して成る半導体装置。
【0013】
また、「配線板及びその製造法」と題する後記の特許文献2には、次の記載がある。
【0014】
配線板は、アルミニウム基板面にアルマイト層が形成され、アルマイト層は、封孔処理により絶縁性が向上した高絶縁層となり、高絶縁層のアルミニウム基板とは反対となる表面に、物理気相成長法または化学気相成長法により金属層が形成され、金属層の高絶縁層とは反対の面上に、金属層と共に導電層となる配線部が配されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
以下の説明において、「配線領域」は、配線パターンによって規定された形状を有する領域であり、「導体線路」とこれが接続されている「電極」又は「電極端子」を含むものとし、「配線領域」は、複数の層から構成されるものとする。「電極」又は「電極端子」には、LEDチップ(素子)又はこれがパッケージ化されたLEDパッケージがフリップチップ実装されることもある。
【0016】
先述したように、LED素子が搭載された実装基板を用いたLED照明等の半導体装置における発熱は、半導体装置の信頼性の低下の重要な原因の一つである。この信頼性の低下を抑制するためには、半導体装置からの放熱を高めることが非常に重要な課題となっており、LED照明の普及の鍵を握っている。
【0017】
また、先述したように、LED素子が搭載される実装基板の面の反射率が100%でないことによる反射ロスは、反射されない光の吸収による実装基板の発熱の原因、及び、LED素子の出射光の取り出し方向における光量の低下の重要な原因の一つである。
【0018】
実装基板の面の反射率をより100%に近い状態とすることが、実装基板の面における光反射ロスをより小さなものとし、LED素子の出射光の実装基板の方向への散乱光、蛍光体が使用されている場合に蛍光体から出射される蛍光の大部分を、LED素子の出射光の取り出し方向へ反射させ、LED素子の出射光の取り出し方向における光量をアップするための重要な課題となっている。
【0019】
また、先述した金属ベース基板の電気絶縁性接着樹脂層の熱伝導率は、一般に、金属基材よりも低いため、一般的なプリント配線用回路基板に比べて向上するものの、金属ベース基板全体として十分な熱伝導特性をもたないという問題があった。このため、このような金属ベース基板に高出力のLD(半導体レーザーダイオード)やLED素子等の半導体発光素子、パワー素子等を実装した場合、不十分な放熱性のために製品の信頼性の劣化を招くという問題があった。
【0020】
更に、先述したセラミック回路基板のセラミック基材の例として、アルミナ、窒化アルミニウムが知られているが、アルミナは高価のうえその熱伝導率は30/m・Kレベルであり、窒化アルミニウムの熱伝導率は120/m・K以上と優れるが価格はさらに高価であり、民生用への用途として価格的な課題がある。
【0021】
また、アルミナ、窒化アルミニウム基材の光反射率は、アルミニウム、銀に比較すると低いという問題がある。また、アルミナ、窒化アルミニウム基材の大サイズ化は困難であり、切断加工や孔開け加工が困難であるという問題がある。また、薄い基材とした場合、割れやすくハンドリングが困難であり、湾曲させるような使い方には全く対応できないという問題がある。
【0022】
なお、特許文献1、特許文献2には、金属基板の表面に陽極酸化層が形成されこの層上に金属配線が形成された配線基板が記載されているが、金属配線が形成された基板面に金属基板の面が露出する配線基板の構成については記載されていない。
【0023】
本発明は、上述したような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、放熱性、絶縁耐圧、光反射性に優れた実装基板及びこれを用いた半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
即ち、本発明は、陽極酸化処理によってアルミニウム基材の第1の面に形成された層であり、多孔質層とこの多孔質層の下に存在するバリア層とからなる陽極酸化層と、前記多孔質層上に、シード層、第1の導電層、第2の導電層がこの順に形成され、所定の形状を有する配線領域と、この配線領域を除いた領域における前記多孔質層の少なくとも表面側の一部分が除去された領域とを有する実装基板に係るものである。
【0025】
また、本発明は、上記の実装基板の前記バリア層露出領域に半導体素子が搭載され、この半導体素子の接続端子が前記配線領域に電気的に接続された、半導体装置に係るものである。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、陽極酸化処理によってアルミニウム基材の第1の面に形成された層であり、多孔質層とこの多孔質層の下に存在するバリア層とからなる陽極酸化層と、前記多孔質層上に、シード層、第1の導電層、第2の導電層がこの順に形成され、所定の形状を有する配線領域と、この配線領域を除いた領域における前記多孔質層の少なくとも表面側の一部分が除去された領域とを有するので、放熱性、絶縁耐圧、光反射性に優れた実装基板を提供することができる。なお、光反射性をより優れたものとするには、前記多孔質層の全てが除去された領域とするのがより望ましいが、前記多孔質層の一部が残存する状態であってもよい。
【0027】
また、本発明によれば、記の実装基板の前記バリア層露出領域に半導体素子が搭載され、この半導体素子の接続端子が前記配線領域に電気的に接続された構成を有するので、放熱性、絶縁耐圧、光反射性に優れた半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態における、実装基板の構成例aを説明する図である。
【図2】同上、構成例aの実装基板にLED素子が実装された半導体装置例を説明する図である。
【図3】同上、実装基板の構成例aを説明する平面図である。
【図4】同上、構成例aの実装基板にLED素子が実装された半導体装置例を説明する図である。
【図5】同上、実装基板の構成例bを説明する図である。
【図6】同上、構成例bの実装基板にLED素子が実装された半導体装置例を説明する図である。
【図7】同上、実装基板の構成例bを説明する平面図である。
【図8】同上、構成例bの実装基板にLED素子が実装された半導体装置例を説明する図である。
【図9】同上、陽極酸化層が形成される基材の構成例を説明する図である。
【図10】同上、陽極酸化層の形成に先立つ基材への溝の形成例を説明する図である。
【図11】同上、陽極酸化層の形成に先立つ基材への溝、レジストの形成例を説明する図である。
【図12】同上、実装基板の製造工程aを説明する図である。
【図13】同上、実装基板の製造工程bを説明する図である。
【図14】同上、構成例bの実装基板に複数のLED素子が直並列に実装された半導体装置例を説明する図である。
【図15】同上、LED素子が実装された実装基板を使用した照明装置例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実装基板では、前記配線領域を除いた領域における前記バリア層が除去され、前記アルミニウム基材が露出したアルミニウム露出領域を有する構成とするのがよい。このような構成によれば、前記バリア層が除去され、高い光反射率をもった前記アルミニウム基材の面が露出しているので、光反射性に優れた実装基板を提供することができる。
【0030】
また、前記シード層がNi、Cuの少なくとも1種を含む金属からなる層である構成とするのがよい。このような構成によれば、前記多孔質層に密着し固着強度の高い前記シード層をもった実装基板を提供することができる。
【0031】
また、前記第1の導電層がCuからなる層である構成とするのがよい。このような構成によれば、前記シード層に密着し固着強度の高い前記第1の導電層とすることができる。
【0032】
また、前記第2の導電層が、前記第1の導電層上に形成されたNiからなる層を含む多層からなる構成とするのがよい。このような構成によれば、Niからなる層は、前記第2の導電層に半導体素子が半田付けによって実装される場合に、前記第1の導電層が半田と合金化するのを抑制する層として作用するので、前記第2の導電層への半導体素子の実装の信頼性を向上させることができる実装基板を提供することができる。
【0033】
また、前記第2の導電層がNiからなる層であり、前記第2の導電層上に形成された第3の導電層を有し、この第3の導電層が、(a)Auからなる層、(b)Agからなる層、(c)Auからなる層上に形成されたAgからなる層、(d)Agからなる層上に形成されたAuからなる層、(e)同一層にAuからなる領域とAgからなる領域を有する層のうちの何れかの層である構成とするのがよい。このような構成によれば、配線層の最上層の前記第2の導電層の光反射率を高い状態とすると共に、前記第2の導電層への半導体素子の実装を容易なものとすることができる実装基板を提供することができる。
【0034】
また、前記アルミニウム基材の第1の面に対向する第2の面に、前記陽極酸化処理によって形成された前記陽極酸化層を有する構成とするのがよい。このような構成によれば、前記アルミニウム基材と前記陽極酸化層の熱膨張係数に差があるため、前記アルミニウム基材の第1の面、第2の面にほぼ等しい厚さの前記陽極酸化層を形成することによって、前記アルミニウム基材の両面の熱歪の大きさをほぼ等しくし、反りやこれによる前記陽極酸化層のマイクロクラックの発生を抑制することができる実装基板を提供することができる。
【0035】
また、前記陽極酸化層が、金属基材の第1の面に第1のアルミニウム基材の第2の面が接合されたクラッド基材における、前記第1のアルミニウム基材の第2の面に対向する第1の面に、前記陽極酸化処理によって形成された層である構成とするのがよい。前記第1のアルミニウム基材はアルミニウム合金基材であってもよく、前記金属基材は、熱抵抗が大きく、ヤング率が高く、前記第1のアルミニウム基材又はアルミニウム合金基材よりも前記陽極酸化層に近い熱膨張係数を有するので、このような構成によれば、反りやこれによる前記陽極酸化層のマイクロクラックの発生を抑制することができ、前記クラッド基材の放熱性を向上させることができる実装基板を提供することができる。
【0036】
また、前記陽極酸化層が、金属基材の第1の面に第1のアルミニウム基材の第2の面が接合され、前記金属基材の前記第1の面に対向する第2の面に第2のアルミニウム基材の第の1面が接合されたクラッド基材における、前記第1のアルミニウム基材の第2の面に対向する第1の面、及び、前記第2のアルミニウム基材の第の1面に対向する第2の面に、前記陽極酸化処理によって形成された層である構成とするのがよい。前記第1、第2のアルミニウム基材はアルミニウム合金基材であってもよく、前記金属基材は、熱抵抗が大きく、ヤング率が高く、前記第1、第2のアルミニウム基材又はアルミニウム合金基材よりも前記陽極酸化層に近い熱膨張係数を有するので、このような構成によれば、前記第1、第2のアルミニウム基材と前記陽極酸化層の熱膨張係数に差があるため、前記第1のアルミニウム基材の第1の面、前記第2のアルミニウム基材の第2の面にほぼ等しい厚さの前記陽極酸化層を形成することによって、前記クラッド基材の両面の熱歪の大きさをほぼ等しくし、反りやこれによる前記陽極酸化層のマイクロクラックの発生を抑制することができ、前記クラッド基材の放熱性を向上させることができる実装基板を提供することができる。
【0037】
また、前記陽極酸化層が、第1のアルミニウム基材の第1の面に対向する第2の面と第2のアルミニウム基材の第1の面が接合されたアルミニウム接合基材における、前記第2のアルミニウム基材の第の1面に対向する第2の面に、前記陽極酸化処理によって形成された層である構成とするのがよい。このような構成によれば、前記第1、第2のアルミニウム基材と前記陽極酸化層の熱膨張係数に差があるため、前記第1のアルミニウム基材の第1の面、前記第2のアルミニウム基材の第2の面にほぼ等しい厚さの前記陽極酸化層を形成することによって、前記アルミニウム接合基材の両面の熱歪の大きさをほぼ等しくし、反りやこれによる前記陽極酸化層のマイクロクラックの発生を抑制することができる実装基板を提供することができる。
【0038】
また、前記金属基材がSUS基材又はスチール基材である構成とするのがよい。このような構成によれば、ヤング率がアルミニウムよりも大きな前記SUS基材又はスチール基材を使用しているので、前記クラッド材の熱応力を向上させることができ、反りやこれによる前記陽極酸化層のマイクロクラックの発生を抑制することができる実装基板を提供することができる。
【0039】
また前記第1のアルミニウム基材の純度が、前記第2のアルミニウム基材の純度よりも高い構成とするのがよい。このような構成によれば、低価格な前記第2のアルミニウム基材を使用することができるので、低価格な実装基板を提供することすることができる。
【0040】
また、前記アルミニウム基材の第1の面に開口を有し、実装基板を切断して個片化するための切断領域を規定する凹状の溝が形成されている構成とするのがよい。このような構成によれば、前記凹状の溝によって複数の分画に分けられた各分画に前記配線領域が形成された大面積の基材を分画毎に切断し個片化して実装基板を製作する際の切断加工時に、前記凹状の溝の内部で大面積の基材を切断することによって、前記陽極酸化層にマイクロクラックが生じるのを抑制することができ、前記陽極酸化層の絶縁耐圧を低下させることがない実装基板を提供することができる。
【0041】
また、前記第1のアルミニウム基材の第1の面に開口を有し、前記第1のアルミニウム基材に底部を有し、実装基板を切断して個片化するための切断領域を規定する凹状の溝が形成されている構成とするのがよい。このような構成によれば、前記凹状の溝によって複数の分画に分けられた各分画に前記配線領域が形成された大面積の基材を分画毎に切断し個片化して実装基板を製作する際の切断加工時に、前記凹状の溝の内部で大面積の基材を切断することによって、前記陽極酸化層にマイクロクラックが生じるのを抑制することができ、前記陽極酸化層の絶縁耐圧を低下させることがない実装基板を提供することができる。
【0042】
また、前記第1のアルミニウム基材の第1の面に開口を有し、前記金属基材に底部を有し、実装基板を切断して個片化するための切断領域を規定する凹状の溝が形成されている構成とするのがよい。このような構成によれば、前記凹状の溝によって複数の分画に分けられた各分画に前記配線領域が形成された大面積の基材を分画毎に切断し個片化して実装基板を製作する際の切断加工時に、前記凹状の溝の内部で大面積の基材を切断することによって、前記陽極酸化層にマイクロクラックが生じるのを抑制することができ、前記陽極酸化層の絶縁耐圧を低下させることがない実装基板を提供することができる。
【0043】
本発明の半導体装置では、前記半導体素子が半導体発光素子である構成とするのがよい。このような構成によれば、発光装置として構成された放熱性、絶縁耐圧、光反射性に優れた半導体装置を提供することができる。
【0044】
また、前記半導体発光素子が、LED素子又はEL素子である構成とするのがよい。このような構成によれば、照明装置として構成された放熱性、絶縁耐圧、光反射性に優れた半導体装置を提供することができる。
【0045】
本発明の実施の形態における実装基板は、アルミニウム基材の少なくとも一方の面に、陽極酸化処理によって、多孔質層とこの多孔質層の下に存在するバリア層とからなる陽極酸化層が形成されており、アルミニウム基材の一方の面では、多孔質層上に、シード層、第1の導電層、第2の導電層がこの順に形成されてなる所定の形状のパターン(配線パターン)を有する配線領域(配線層が形成される領域)が形成されており、この配線領域以外の領域では、多孔質層の少なくとも表面側の一部分がエッチング除去された構成、或いは、多孔質層及びバリア層がエッチング除去されアルミニウム基材の面が露出した構成を有している。
【0046】
なお、アルミニウム基材の面が露出した領域は配線領域の近傍領域以外の領域とし、配線領域の近傍領域では、バリア層を残す構成としてもよい。シード層は、Ni、Cuの少なくとも1種を含む金属からなる層であり、第1の導電層はCuからなる層であり、第2の導電層は、第1の導電層上に形成されたNiからなる層を含む多層からなる構成される。
【0047】
配線領域の構成については、例えば、シード層はCuからなる層、第1の導電層はCuからなる層であり、第2の導電層はNiからなる層とこの上に形成された第3の導電層からなり、第3の導電層は、(a)Auからなる層、(b)Agからなる層、(c)Auからなる層上に形成されたAgからなる層、(d)Agからなる層上に形成されたAuからなる層、(e)同一層にAuからなる領域とAgからなる領域を有する層のうちの何れかの層である。
【0048】
バリア層は絶縁耐圧の高く、光透過性を有しているので、実装基板に入射する散乱光は、高い反射率を有するアルミニウム基材の面によって反射され、実装基板は、放熱性、絶縁耐圧、光反射性に優れたものとなっている。
【0049】
本発明の実施の形態における実装基板の製造方法は、アルミニウム基材の少なくとも一方の面に、陽極酸化処理によって、多孔質層とこの多孔質層の下に存在するバリア層とからなる陽極酸化層を形成する工程と、アルミニウム基材の一方の面において、多孔質層上に、シード層、第1の導電層、第2の導電層をこの順に形成し所定の形状を備えた配線領域を形成する工程と、この配線領域をマスクとして、アルミニウム基材の一方の面において、配線領域以外の領域の多孔質層の少なくとも表面側の一部分を除去する工程、或いは、配線領域以外の領域の多孔質層及びバリア層をエッチング除去してアルミニウム基材の面を露出させる工程を有する。
【0050】
配線領域を形成する工程程において、多孔質層上にシード層を形成した後、所定の形状の開口部を有するレジストパターンをシード層上に形成して、開口部のシード層上に第1の導電層、第2の導電層をこの順に形成し配線領域を形成する。
【0051】
以上のように、アルミニウム基材の面に陽極酸化層を形成し、多孔質層上にシード層を形成した後、レジストパターンをシード層上に形成して所定の形状の開口部を設け、開口内のシード層上に第1の導電層、第2の導電層をこの順に形成して配線領域(配線層)とし、形成された配線領域(配線層)そのものをマスクとして、配線領域以外の領域の多孔質層及びバリア層をエッチング除去してアルミニウム基材の面が露出さされた実装基板を、生産性よく製造することができる。
【0052】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は上述した作用、効果を満たす構成であればよく、これらの実施形態に限定されるものではない。なお、以下に示す図面は構成が明瞭に分かり易くなるように描いているので、縦及び横方向のおける縮尺は正確なものではない。
【0053】
以下の説明では、実装基板に実装される素子としてLED素子、実装基板が使用される半導体素装置として照明装置をそれぞれ例にとって説明するが、本発明は、この例に限定されるものではない。
【0054】
<配線領域以外の領域でバリア層が露出している実装基板の構成例a>
配線領域以外の領域でバリア層が露出している構成を有する実装基板10a−1、10a−2について説明する。
【0055】
(実装基板10a−1)
図1は、本発明の実施の形態における、実装基板の構成例aを説明する図であり、図1(A)は平面図、図1(B)はZ−Z断面図である。
【0056】
図1に示す実装基板10a−1の一方の面は、アルミニウム基材20の面に形成されたバリア層30、多孔質層40からなる、例えば、0.5kV〜1kV以上の絶縁耐圧を有する陽極酸化層35の多孔質層40に形成されたシード層50とこの上に順次形成された第1の導電層60、第2の導電層70からなる配線層が形成された配線領域、及び、陽極酸化層35の多孔質層40がエッチング除去されバリア層30が露出した領域(配線領域以外の領域である。)から構成されている。アルミニウム基材20はアルミニウム合金基材であってもよい。なお、多孔質層40の全てがエッチング除去されず、多孔質層40の一部が残存する状態であってもよく、実装基板10a−1の光反射性が向上したものとなる。後述する実装基板10a−2、実装基板10a−3についても同様である。
【0057】
シード層50は、第1の導電層60、第2の導電層70を電解メッキによって形成する際の電極として使用され、例えば、Ni層、Cu−Ni層、Cu層の何れかであり、真空蒸着、スパッター、CVD等の気相成長法、又は、無電解メッキによって形成される。
【0058】
陽極酸化層35に対する密着力はNi層、Cu−Ni層、Cu層の順に小さく、形成されるシード層50が多孔質層40内に形成される深さは、Cu層、Cu−Ni層、Ni層の順に小さくなり、パターン形成性はこの順と逆に良好となる。
【0059】
第1の導電層60は、電解メッキによって形成された、例えば、Cu層である。第2の導電層70は、電解メッキによって順次形成された、例えば、Ni層、Au又はAg層からなる2層から構成される。反射面として使用されるAg層は、Au層上に選択的に電解メッキ又は無電解メッキによって形成する。Au層が露出する部位は、実装基板にワイヤボンディング実装又はフリップチップ実装におけるLED素子の半田付け部となるので、Ag層でカバーされないことが好ましい。Ag層は反射層として使われるため酸化や硫化に耐性を有する結晶粒形、Ag合金組成が好ましい。
【0060】
実装基板10a−1の陽極酸化層35の多孔質層40がエッチング除去されたバリア層30が露出した面、及び、光反射率の高い金属からなる第2の導電層70の面は、優れた光反射性を有している。
【0061】
図1に示す実装基板10a−1は、LED素子がワイヤボンディング実装される基板であり、LED素子が、配線領域の間の領域に搭載され、電気的に実装基板10a−1に接続され実装される。
【0062】
(実装基板10a−1にLED素子がワイヤボンディング実装された半導体装置例)
図2は、本発明の実施の形態における、構成例aの実装基板にLED素子がワイヤボンディング実装された半導体装置例を説明する図であり、図2(A)は平面図、図2(B)はY−Y断面図である。図2は、照明装置として構成された半導体装置100aの主要部のみを示している。
【0063】
図2に示すLED110aは、基板101に順次形成されたn型半導体層102、活性層103、p型半導体層104、p電極106と、n型半導体層102上に形成されたn電極105を有している。
【0064】
図2に示すように、陽極酸化層35の多孔質層40上に順次形成された第1の導電層60、第2の導電層70からなる配線層の間におけるバリア層30が露出した領域に、LED110aが搭載され、電気絶縁性のダイボンディング接着剤80によって固着され、第2の導電層70とp電極106の間、及び、第2の導電層70とn電極105の間がそれぞれリードワイヤ109によって電気的接続され、LED110aが実装基板10a−1に実装される。
【0065】
LED110aのp電極106の側からの出射光Loは前方(図2の上方)へ進み、図示しない散乱体(LED素子110aの近傍に存在する材料、例えば、フィルタ、レンズ、窓材等の光学材料、蛍光体及びこれを分散させている透明樹脂等)によって散乱され、出射光Loの一部は後方散乱光Lbとなって実装基板10a−1の面、第2の導電層70の面へ入射する。
【0066】
実装基板10a−1のバリア層30が露出した面、第2の導電層70の面は、優れた光反射性を有しているので、バリア層30が露出した面、第2の導電層70の面に入射した後方散乱光Lbの大部分は反射され前方反射光Lfとなって、再び前方へ進んでいく。これによって、LED110aの出射光の取り出し方向における光量を大幅に向上させることができる。
【0067】
このように、照明装置として構成された半導体装置100aは、放熱性、絶縁耐圧、光反射性に優れたものとなっている。
【0068】
(実装基板10a−2)
図3は、本発明の実施の形態における、実装基板の構成例aを説明する平面図であり、図3(A)は平面図、図3(B)はX−X断面図である。
【0069】
図3に示す実装基板10a−2は、図1に示す実装基板10a−1と配線領域の形状のみが相違しており、その他の構成は図1に示す実装基板10a−1と同様であるので、説明は省略する。
【0070】
図3に示す実装基板10a−2は、LED素子がフリップチップ実装される基板であり、LED素子が、配線領域に搭載され、電気的に実装基板10a−2に接続され実装される。
【0071】
(構成例10a−2の実装基板にLED素子がフリップチップ実装された半導体装置例)
図4は、本発明の実施の形態における、構成例aの実装基板にLED素子が実装された半導体装置例を説明する図であり、図4(A)は平面図、図4(B)はW−W断面図である。図4は、照明装置として構成された半導体装置100bの主要部のみを示している。
【0072】
図4に示すLED110bは、基板101に順次形成されたn型半導体層102、活性層103、p型半導体層104、p電極106と、n型半導体層102上に形成されたn電極105を有している。
【0073】
図4に示すように、陽極酸化層35の多孔質層40上に形成された配線層の最上層の第2の導電層70の面に、LED110bが搭載され、LED110bのn電極105、p電極106は半田84によって第2の導電層70の面に電気的接続され、また、LED110bのp電極106がアンダーフィル82によって第2の導電層70の面に固着され、LED110bが実装基板10a−2にフリップチップ実装される。
【0074】
LED110bのn電極105からの出射光Loは前方(図4の上方)へ進み、図2に示す例と同様に、図示しない散乱体(LED素子110bの近傍に存在する材料、例えば、フィルタ、レンズ、窓材等の光学材料、蛍光体及びこれを分散させている透明樹脂等)によって散乱され、出射光Loの一部は後方散乱光Lbとなって実装基板10a−2の面、第2の導電層70の面へ入射する。
【0075】
実装基板10a−2のバリア層30が露出した面、第2の導電層70の面は、優れた光反射性を有しているので、バリア層30が露出した面、第2の導電層70の面に入射した後方散乱光Lbの大部分は反射され前方反射光Lfとなって、再び前方へ進んでいく。これによって、LED110bの出射光の取り出し方向における光量を大幅に向上させることができる。
【0076】
このように、照明装置として構成された半導体装置100bは、放熱性、絶縁耐圧、光反射性に優れたものとなっている。
【0077】
<配線領域以外の領域でアルミニウム基材面が露出している実装基板の構成例b>
配線領域以外の領域でアルミニウム基材面が露出している構成を有する実装基板10b−1、10b−2について説明する。
【0078】
(実装基板10b−1)
図5は、本発明の実施の形態における、実装基板の構成例bを説明する図であり、図5(A)は平面図、図5(B)はV−V断面図である。
【0079】
図5に示す実装基板10b−1の一方の面は、アルミニウム基材20の面に形成されたバリア層30、多孔質層40からなる、例えば、0.5kV〜1kV以上の絶縁耐圧を有する陽極酸化層35の多孔質層40に形成されたシード層50とこの上に順次形成された第1の導電層60、第2の導電層70からなる配線層が形成された配線領域、及び、陽極酸化層35の多孔質層40、バリア層30がエッチング除去されアルミニウム基材20の面が露出した領域(配線領域以外の領域である。)から構成されている。アルミニウム基材20はアルミニウム合金基材であってもよい。
【0080】
実装基板10b−1の陽極酸化層35の多孔質層40、バリア層30がエッチング除去されアルミニウム基材20が露出した面、及び、光反射率の高い金属からなる第2の導電層70の面は、優れた光反射性を有している。
【0081】
図5に示す実装基板10b−1は、LED素子がワイヤボンディング実装される基板であり、LED素子が、配線領域の間の領域に搭載され、電気的に実装基板10b−1に接続され実装される。
【0082】
(実装基板10b−1にLED素子がワイヤボンディング実装された半導体装置例)
図6は、本発明の実施の形態における、構成例bの実装基板にLED素子が実装された半導体装置例を説明する図であり、図6(A)は平面図、図6(B)はU−U断面図である。図6は、照明装置として構成された半導体装置100cの主要部のみを示している。
【0083】
図6に示すように、陽極酸化層35の多孔質層40上に順次形成された第1の導電層60、第2の導電層70からなる配線層の間におけるアルミニウム基材20が露出した領域に、LED110aが搭載され、電気絶縁性のダイボンディング接着剤80によって固着され、第2の導電層70とp電極106の間、及び、第2の導電層70とn電極105の間がそれぞれリードワイヤ109によって電気的接続され、LED110aが実装基板10b−1に実装される。
【0084】
LED110aのp電極106の側からの出射光Loは前方(図6の上方)へ進み、図2に示す例と同様に、図示しない散乱体(LED素子110aの近傍に存在する材料、例えば、フィルタ、レンズ、窓材等の光学材料、蛍光体及びこれを分散させている透明樹脂等)によって散乱され、出射光Loの一部は後方散乱光Lbとなって実装基板10b−1の面、第2の導電層70の面へ入射する。
【0085】
実装基板10b−1のアルミニウム基材20が露出した面、第2の導電層70の面は、優れた光反射性を有しているので、アルミニウム基材20が露出した面、第2の導電層70の面に入射した後方散乱光Lbの大部分は反射され前方反射光Lfとなって、再び前方へ進んでいく。これによって、LED110aの出射光の取り出し方向における光量を大幅に向上させることができる。
【0086】
このように、照明装置として構成された半導体装置100cは、放熱性、絶縁耐圧、光反射性に優れたものとなっている。
【0087】
(実装基板10b−2)
図7は、本発明の実施の形態における、実装基板の構成例bを説明する平面図であり、図7(A)は平面図、図7(B)はT−T断面図である。
【0088】
図7に示す実装基板10b−2は、図5に示す実装基板10b−1と配線領域の形状のみが相違しており、その他の構成は図5に示す実装基板10b−1と同様であるので、説明は省略する。
【0089】
図7に示す実装基板10b−2は、LED素子がフリップチップ実装される基板であり、LED素子が、配線領域に搭載され、電気的に実装基板10b−2に接続され実装される。
【0090】
(構成例10b−2の実装基板にLED素子がフリップチップ実装された半導体装置例)
図8は、本発明の実施の形態における、構成例bの実装基板にLED素子が実装された半導体装置例を説明する図であり、図8(A)は平面図、図8(B)はS−S断面図である。図8は、照明装置として構成された半導体装置100dの主要部のみを示している。
【0091】
図8に示すように、陽極酸化層35の多孔質層40上に形成された配線層の最上層の第2の導電層70の面に、LED110bが搭載され、LED110bのn電極105、p電極106は半田84によって第2の導電層70の面に電気的接続され、また、LED110bのp電極106がアンダーフィル82によって第2の導電層70の面に固着され、LED110bが実装基板10a−2にフリップチップ実装される。
【0092】
LED110bのn電極105からの出射光Loは前方(図8の上方)へ進み、図4に示す例と同様に、図示しない散乱体(LED素子110bの近傍に存在する材料、例えば、フィルタ、レンズ、窓材等の光学材料、蛍光体及びこれを分散させている透明樹脂等)によって散乱され、出射光Loの一部は後方散乱光Lbとなって実装基板10b−2の面、第2の導電層70の面へ入射する。
【0093】
実装基板10b−2のアルミニウム基材20が露出した面、第2の導電層70の面は、優れた光反射性を有しているので、アルミニウム基材20が露出した面、第2の導電層70の面に入射した後方散乱光Lbの大部分は反射され前方反射光Lfとなって、再び前方へ進んでいく。これによって、LED110bの出射光の取り出し方向における光量を大幅に向上させることができる。
【0094】
このように、照明装置として構成された半導体装置100dは、放熱性、絶縁耐圧、光反射性に優れたものとなっている。
【0095】
上述した半導体装置100a、100b、100c、100dでは、実装基板10a−1、10a−2、10b−1、10b−2に搭載されたLED素子の駆動に伴う発熱、LED素子からの出射光及びその散乱光のLED素子の近傍に存在する材料による吸収で生じる発熱を、アルミニウム基材20を通して放熱させ、LED素子とその近傍の温度上昇を抑制して、LED素子の本来有する発光効率を保持することができる。また、LED素子の近傍に存在する材料の発熱による劣化を抑制することができ、半導体装置100a、100b、100c、100dの信頼性を保持することができる。
【0096】
上述した半導体装置100a、100b、100c、100dで使用されている実装基板10a−1、10a−2、10b−1、10b−2は、配線領域が形成された面と対向する対向面に陽極酸化層35(図1〜図8に図示せず。)が形成されているものであってもよい。
【0097】
このような構成とすることによって、LED素子の駆動に伴う発熱、LED素子からの出射光及びその散乱光のLED素子の近傍に存在する材料による吸収で生じる発熱を、アルミニウム基材20を通して、対向面に形成された熱放射能の大きな陽極酸化層35から放熱させることによって、放熱性をより向上させることができ、半導体装置100a、100b、100c、100dの信頼性をより向上させることができる。
【0098】
なお、上述した半導体装置100a、100b、100c、100dでは、実装基板10a−1、10a−2、10b−1、10b−2にLED素子が搭載、実装されたものであるが、LED素子がパッケージ化されたLEDパッケージが実装基板に搭載、実装されたものであってもよい。
【0099】
<実装基板の製造方法例>
(実装基板の基材:陽極酸化層が形成される基材の構成例)
実装基板の基材として、陽極酸化によって金属表面にその金属の酸化物が形成される金属(バルブ金属)を使用することができるが、代表的には、アルミニウム基材、又は、アルミニウム基材を含む基材が使用され、アルミニウム基材の表面に、バリア層、多孔質層からなる陽極酸化層が形成され、陽極酸化層上に複数の層から構成される配線領域が形成される。
【0100】
図9は、本発明の実施の形態における、の構成例を説明する図であり、図9(A)は平面図、図9(B)はR−R断面図である。
【0101】
図9(A)に示すように、陽極酸化層が形成される大面積の基材の面は図中の点線で示す複数の分画200sに分けられ、分画200sのそれぞれに、例えば、図1、図3、図5、図7に示すような配線領域が形成された後、図中の点線位置で切断され実装基板10a−1、10a−2、10b−1、10b−2が得られる。次に、バリア層30と多孔質層40からなる陽極酸化層35が形成される基材の構成例について説明する。
【0102】
図9(B)のR1は、アルミニウム基材200を使用して、アルミニウム基材200の一方の面に陽極酸化層35が形成された状態を示している。なお、表面に形成する陽極酸化層35に十分な電気絶縁性をもたせるために、使用するアルミニウム基材200は99.99%以上の純度のものが望ましい。
【0103】
図9(B)のR2は、アルミニウム基材200を使用して、アルミニウム基材200の一方の面、及び、この一方の面の対向面に陽極酸化層35が形成された状態を示している。
【0104】
アルミニウム基材200と陽極酸化層35の熱膨張係数に差があるため、アルミニウム基材200の一方の面及び対向面にほぼ等しい厚さの陽極酸化層35を形成することによって、両面の熱歪の大きさをほぼ等しくし、反りやこれによる陽極酸化層35のマイクロクラックの発生を抑制することができる。
【0105】
図9(B)のR3は、アルミニウム基材200とSUS基材202を接合した片面クラッド材を使用して、SUS基材202との接合面と対向するアルミニウム基材200の面に陽極酸化層35が形成された状態を示している。
【0106】
片面クラッド材は、ヤング率が高く、アルミニウム基材200よりも陽極酸化層35に近い熱膨張係数を有するSUS430等のSUS基材202から構成されるので、複数の分画に分けて各分画に配線領域が形成された大面積の基材を分画毎に切断し個片化して実装基板を製作する際の切断加工時に、機械的ストレスの印加による陽極酸化層35にマイクロクラックが生じるのを抑制することができる。
【0107】
図9(B)のR4は、アルミニウム基材200、SUS基材202、アルミニウム基材204を接合した両面クラッド材を使用して、SUS基材202との接合面と対向するアルミニウム基材200及びアルミニウム基材204の面に陽極酸化層35が形成された状態を示している。SUS基材202は熱伝導率が小さいので薄くする必要がある。例えば、アルミニウム基材200は99.99%以上の純度のものでありその厚さは100μm、SUS基材202はSUS430でありその厚さは80μm、アルミニウム基材204の純度はアルミニウム基材200より低くその厚さは100μmである。このような全厚280μmの両面クラッド材は、1mm厚さのアルミニウム基材に対応する等価熱抵抗を有する。この両面クラッド材は全厚280μmと薄くなり、リジッドな実装基板には適さないが、フレキシブルな実装基板に適したものとなる。
【0108】
また、アルミニウム基材200、Fe(スチール)基材、アルミニウム基材204を接合した両面クラッド材を使用することもできる。例えば、アルミニウム基材200は99.99%以上の純度のものでありその厚さは200μm、Fe(スチール)基材の厚さは200μm、アルミニウム基材204の純度はアルミニウム基材200より低くその厚さは200μmである。このような全厚600μmの両面クラッド材は、1mm厚さのアルミニウム基材に対応する等価熱抵抗を有し、リジッドな実装基板には適したものとなる。Fe(スチール)は、SUSよりも熱伝導率が大きいので、放熱性の点ではFe(スチール)基材をクラッドコアとする両面クラッド材の使用が望ましい。
【0109】
両面クラッド材は、ヤング率が高く、アルミニウム基材200、アルミニウム基材204よりも陽極酸化層35に近い熱膨張係数を有するSUS430等のSUS基材202、又は、Fe(スチール)基材から構成されるので、複数の分画に分けて各分画に配線領域が形成された大面積の基材を分画毎に切断し個片化して実装基板を製作する際の切断加工時に、陽極酸化層35に機械的ストレスの印加によるクラックが生じるのを抑制することができる。
【0110】
図9(B)のR5は、アルミニウム基材200、アルミニウム基材204を熱伝導性接着剤によって接合した接合材を使用して、接合面と対向するアルミニウム基材200及びアルミニウム基材204の面に陽極酸化層35が形成された状態を示している。
【0111】
アルミニウム基材200、204と陽極酸化層35の熱膨張係数に差があるため、アルミニウム基材200、アルミニウム基材204にほぼ等しい厚さの陽極酸化層35を形成することによって、両面の熱歪の大きさをほぼ等しくし、反りやこれによる陽極酸化層35のマイクロクラックの発生を抑制することができる。
【0112】
なお、図9(B)のR4、R5における基材では、アルミニウム基材204はその純度がアルミニウム基材200より低純度であり、低価格のものを使用することができる。
【0113】
実装基板は、一般に、大面積の基材を用いて行われ、図9(A)に示すように、大面積の基材の面が複数の分画200sに分けられ、各分画に同一の配線パターンを有する配線領域を形成した後、分画毎に切断し個片化し、各種素子が実装される実装基板が製作される。大面積の基材に対して、陽極酸化層の形成に先立って、大面積の基材の個片化のための前処理が行われる。
【0114】
(陽極酸化層の形成に先立つ基材に対する処理例a:凹状溝の形成)
図10は、本発明の実施の形態における、陽極酸化層の形成に先立つ基材への溝の形成例を説明する図であり、図10(A)は平面図、図10(B)はQ−Q断面図である。
【0115】
大面積の基材の全表面の陽極酸化層を形成した後、切断して個片化し、実装基板を作製する場合に、切断加工時に、陽極酸化層に機械的振動等による機械的ストレスが印加されマイクロクラックを生じ、ダメージを受けることがあるので、マイクロクラックを生じないように切断加工条件を設定する必要がある。切断加工時におけるマイクロクラックの発生を抑制するには、装置コスト、生産性の観点で必ずしも好ましくないが、例えば、レーザーダイシング装置を使用するのが一つの方法である。
【0116】
実装基板へのLED素子の搭載工程、ワイヤボンディング実装工程、フリップチップ実装工程等において、陽極酸化層は、ダイボンディング接着剤やアンダーフィルの加熱硬工程や、LED素子と配線層との間の半田付け工程等の加熱工程を受ける。アルミニウム基材と陽極酸化層の熱膨張係数の差が大きいため、加熱工程では伸び応力と圧縮応力のアンバランスを生じ、陽極酸化層に生じている上記のマイクロクラックはクラックに成長する。このクラックは、実装基板の絶縁耐圧の致命的な低下、光反射率の低下の原因となるので、陽極酸化層のクラック耐性が要求される。
【0117】
本発明の実施の形態では、大面積の基材の切断加工時のマイクロクラック発生の抑制のために、アルミニウム基材の表面への陽極酸化層の形成に先立って、アルミニウム基材に対して、陽極酸化層のクラック耐性のための前処理を行う。
【0118】
図10に示す例では、図9(A)に示す点線に対応する位置に、陽極酸化層が形成されるアルミニウム基材200に凹状溝(スクライブ用溝)210を形成し、アルミニウム基材200の表面に陽極酸化層が形成された後に、凹状溝210の位置で切断加工を行う。
【0119】
凹状溝210は、断面形状が矩形、台形、V字形の何れかであってもよく、凹状溝210の幅は、切断加工のための刃の厚さよりも大であり、切断加工時に刃が凹状溝210の側壁に触れないような幅に設定される。例えば、凹状溝210の幅は100μm〜1000μmである。
【0120】
配線領域が形成され、半導体素子が搭載される実装基板面に、切断加工のための刃が直接に接触しないので、切断加工時のマイクロクラック発生を抑制することができる。
【0121】
図10(B)のQ1は、図9(B)のR1に対応する基材であり、アルミニウム基材200の内部に底部を有する凹状溝210が形成された例を示している。
【0122】
図10(B)のQ2、Q3はそれぞれ、図9(B)のR3に対応する基材であり、Q2は、アルミニウム基材200の内部に底部を有する凹状溝210が形成された例を示し、Q3は、アルミニウム基材200を貫通し、SUS基材202の内部に底部を有する凹状溝210が形成された例を示している。
【0123】
図10(B)のQ4、Q5はそれぞれ、図9(B)のR4に対応する基材であり、Q4は、アルミニウム基材200の内部に底部を有する凹状溝210が形成された例を示し、Q5は、アルミニウム基材200を貫通し、SUS基材202の内部に底部を有する凹状溝210が形成された例を示している。
【0124】
図10(B)のQ6は、図9(B)のR5に対応する基材であり、アルミニウム基材200の内部に底部を有する凹状溝210が形成された例を示している。
【0125】
図10(B)のQ3、Q5に示す例では、切断加工時に刃が、アルミニウム基材200の表面に形成される陽極酸化層、及び、凹状溝210の側壁に触れないので、切断加工時のマイクロクラック発生をより抑制することができる。
【0126】
なお、アルミニウム基材200に形成する凹状溝210は、超硬刃バイト等を使用して形成することができる。
【0127】
また、図10(B)のQ1〜Q6に示す凹状溝210に対向するように、アルミニウム基材200の他面、SUS基材202の面、アルミニウム基材204の面に形成してもよく、切断加工時のマイクロクラック発生を更により抑制することができる。
【0128】
(陽極酸化層の形成に先立つ基材に対する処理例b、処理例c)
図11は、本発明の実施の形態における、陽極酸化層の形成に先立つ基材への溝、レジストの形成例を説明する図であり、図11(A)は平面図、図11(B)はP−P断面図である。
【0129】
(処理例b:レジストパターンの形成)
図11(B)のP1に示すように、アルミニウム基材200に凹状溝210を形成せずに、図10(B)のQ1〜Q6の凹状溝210に対応する位置、即ち、切断加工位置にレジスト205を塗布することによって、レジスト205が塗布されたアルミニウム基材200の表面に陽極酸化層が形成されないようにする。
【0130】
レジスト205が塗布される厚さは、アルミニウム基材200の表面に形成される陽極酸化層の厚さより厚く、レジスト205が塗布される幅は、切断加工時に刃がアルミニウム基材200の表面に形成される陽極酸化層に触れないように設定される。レジスト205が塗布される幅は、例えば、100μm〜1000μmである。
【0131】
(処理例c:凹状溝の形成、及び、レジストパターンの形成)
図11(B)のP2に示すように、図10(B)のQ1〜Q6に示す凹状溝210が形成された位置に、更に、凹状溝210の内外にレジスト205を塗布することによって、アルミニウム基材200に形成された凹状溝210の内面に陽極酸化層が形成されないようにする。
【0132】
レジスト205が塗布される厚さは、アルミニウム基材200の表面に形成される陽極酸化層の厚さより厚く、レジスト205が塗布される幅は、凹状溝210の外幅と同程度に設定される。レジスト205が塗布される幅は、例えば、100μm〜1000μmである。
【0133】
図11(B)のP1、P2に示す例では、レジスト205が塗布され位置には陽極酸化層が形成されないので、切断加工時に刃が、アルミニウム基材200の表面に形成される陽極酸化層に触れないので、切断加工時のクラック発生をほぼ抑制することができる。
【0134】
次に、単純な矩形の配線パターンを有する配線領域を備えた実装基板を例にとって、実装基板の製造方法について説明する。なお、先述したように、大面積の基材の各分画に陽極酸化層が形成され、配線領域が形成された後、大面積の基材は分画毎に切断され個片化された実装基板が得られるが、以下の説明では、簡単のために、1つの分画から得られる実装基板の製造工程について説明する。
【0135】
(実装基板の製造工程a)
図12は、本発明の実施の形態における、実装基板の製造工程aを説明する図であり、図12(I)及び図12(J)の右図、図12(A)は平面図、図12(B)〜図12(J)、図12(d)〜図12(g)はO−O断面図である。
【0136】
(製造工程a−1)
先ず、図12(B)に示すように、図12(A)に示すアルミニウム基材20に、バリア層30、多孔質層40からなる陽極酸化層35を形成する。この陽極酸化層35は、硫酸、蓚酸、クロム酸等の電解液を使用した周知の方法によって形成される。陽極酸化層35の厚さは、陽極酸化処理条件(電解液の組成、電解液の温度、電解電圧、電解時間等)によって制御される。なお、図9のR3に示すように、アルミニウム基材と金属基材が接合された片面クラッド材のアルミニウム基材の面に陽極酸化層を形成する際に、金属基材が電解液によって腐食される恐れがある場合には、アルミニウム基材面にのみ電解液が接触する構成とするか、金属基材面に耐電解液性を有する保護膜を形成し、金属基材面に電解液に接触しないようにすることが望ましい。
【0137】
次に、図12(C)に示すように、陽極酸化層35の全面に、気相成長法又は無電解メッキによって、後述する電解メッキの電極として使用するために、Cu、Cu−Ni、Niの何れかからなり、例えば、厚さ0.3μm〜1μmの緻密なシード層50を形成する。
【0138】
次に、図12(D)に示すように、シード層50の上にメッキ用のレジストを塗布し、レジストを配線領域が所定の形状(ここでは矩形)となるようにパターニングして、レジストパターン207を形成する。
【0139】
次に、図12(E)、図12(F)に示すように、レジストパターン207をマスクとして、レジストに覆われていないシード層50の上に、電解メッキによって第1の導電層60、第2の導電層70を順次形成し配線層を形成する。第1の導電層60は、例えば、硫酸銅浴を使用して形成された厚さ10μm〜20μmの銅層であり、第2の導電層70は、例えば、厚さ数μmのNi層と、厚さ0.5μm〜1μmのAu又は厚さ1μm〜2μmのAgの2層から構成される。
【0140】
配線層の最上層が銀層である場合、この銀層の一部の上に金層を形成して、図2、図6に示すワイヤボンディング実装におけるリードワイヤ109の半田接続を容易なものとし、図4、図8に示すフリップチップ実装における半田接続を容易なものとすることができる。
【0141】
次に、図12(G)に示すように、レジストパターン207を剥離除去する。
【0142】
次に、図12(H)、図12(I)、図12(J)に示すように、配線層をマスクとして、配線層が形成された領域(配線領域)以外におけるシード層50、多孔質層40、バリア層30を順次エッチング除去する。シード層50、多孔質層40、バリア層30のエッチングに使用するエッチング液は、配線層を構成する第1の導電層60、第2の導電層70をエッチングしないものを使用する。
【0143】
図12(I)に示す多孔質層のエッチング除去では、中アルカリのエッチング液を使用して、多孔質層40をエッチング除去する。この時、前工程のシード層50のエッチングで除去しきれなかったシード層の残渣も同時に取り除かれる。
【0144】
シード層50がエッチング除去された状態で製造工程を終了すれば、図12(I)の断面図、右図の平面図に示すように、バリア層30が露出する実装基板10a−3が作製されたことになる。
【0145】
陽極酸化層35の多孔質層40は、バリア層30と比較すると、絶縁耐圧、光反射性、放熱性に劣る。このため、多孔質層40がエッチング除去され、バリア層30が露出する実装基板10a−3は、シード層50のエッチング除去工程におけるシード層の残渣の心配がなく、陽極酸化層35と配線層との密着性、絶縁耐圧、光反射性、放熱性に優れた基板となっている。
【0146】
図12(J)に示すバリア層のエッチング除去では、アルミニウム基材20の面がエッチングされないように、中〜強アルカリ(PH10〜13)のエッチング液、例えば、20%KOH液(60〜90℃)を使用して、バリア層30をエッチング除去する。この結果、図12(J)の断面図、右図の平面図に示すように、アルミニウム基材面が露出する実装基板10b−3が作製されたことになる。
【0147】
このアルミニウム基材面が露出する実装基板10b−3は、多孔質層40がエッチング除去されているので、シード層50のエッチング除去工程におけるシード層の残渣の心配がなく、バリア層30が露出する実装基板10a−3と比較すると、より光反射性、放熱性に優れた基板となっている。
【0148】
なお、図12(J)に示す例では、配線領域下部のバリア層30を残す構成を示しているが、配線領域の近傍領域でバリア層30を残す構成としてもよい。先述した図5〜図8、後述する図14においても、配線領域の近傍領域でバリア層30を残す構成としてもよい。
【0149】
以上説明した製造工程a−1では、陽極酸化層35の全面に無電解メッキ又は気相成長法によってシード層50を形成し、次に、シード層50の上にメッキ用のレジストパターン207を形成し、レジストパターン207をマスクとして、シード層50の上に、電解メッキによって第1の導電層60、第2の導電層70を順次形成し配線層を形成し、次に、レジストパターン207を除去し、次に、配線層をマスクとして、配線層が形成された領域(配線領域)以外におけるシード層50、多孔質層40、バリア層30をエッチング除去する工程による、セミアディティブ法によっている。
【0150】
この方法によれば、シード層50以外の第1の導電層60、第2の導電層70は全て電解メッキによって形成されるので、コスト的にも有利であり、生産性もよいという特徴がある。更に、配線層のパターンエッチングは薄層のシード層50だけをエッチングするだけで済むので、配線層のアンダーエッチングが殆どなく、配線層の下地の陽極酸化層35へのメッキ液によるダメージもないという特徴がある。
【0151】
この方法では、レジストパターンの形成は1回だけでよく、メッキ工程がシンプルであり、厚い第1の導電層60のエッチングが不要でありエッチング時間が短く、配線層のアンダーエッチングが少なく、陽極酸化層との密着強度の大きな細線の配線層を有し、LED素子に搭載、実装に好適な実装基板を低コストで製造することができる。
【0152】
なお、図示しないが、アルミニウム基材20に陽極酸化層35を形成した後、陽極酸化層35上にレジストパターン207を形成し、シード層50、第1の導電層60、第2の導電層70を順次、無電解メッキによって形成し配線領域を形成することもできるが、タクトタイムが長くなり、製造コストが高くなる。
【0153】
(製造工程a−2)
製造工程a−2では、図12(C)に示すシード層50の形成までは、製造工程a−1と同じである。
【0154】
次に、図12(d)に示すように、シード層50の全面に電解メッキによって第1の導電層60を形成する。例えば、硫酸銅浴を使用して、厚さ10μm〜20μmの銅層を第1の導電層60として形成する。
【0155】
次に、図12(e)に示すように、第1の導電層60の上にメッキ用のレジスト(次に示す第2の導電層70の電解メッキに耐えるレジスとである。)を塗布し、レジストを配線領域が所定の形状(ここでは矩形)となるようにパターニングして、レジストパターン209を形成する。
【0156】
次に、図12(f)に示すように、レジストパターン209をマスクとして第1の導電層60の上に、電解メッキによって第2の導電層70を形成する。例えば、厚さ数μmのNi層と、厚さ0.5μm〜1μmのAu又は厚さ1μm〜2μmのAgの2層からなる第2の導電層70を形成する。
【0157】
次に、図12(g)に示すように、レジストパターン209を剥離除去する
次に、図12(H)に示すように、第2の導電層70をマスクとして、第1の導電層60、シード層50をエッチング除去し、これによって第1の導電層60、第2の導電層70からなる配線層を形成する。
【0158】
次に行われる工程は、製造工程a−1で説明した図12(I)、図12(J)と同じであるので、説明は省略する。また、製造工程a−2における、陽極酸化層35、シード層50、第1の導電層60、第2の導電層70の構成、厚さ等は、製造工程a−1の場合と同じであるので、説明は省略する。
【0159】
以上説明した製造工程a−2では、陽極酸化層35の全面に無電解メッキ又は気相成長法によってシード層50を形成し、次に、シード層50の全面に電解メッキによって第1の導電層60を形成し、次に、第1の導電層60の上にメッキ用のレジストパターン209を形成し、次に、レジストパターン209をマスクとして第1の導電層60の上に、電解メッキによって第2の導電層70を形成し、次に、レジストパターン209を除去し、次に、第2の導電層70をマスクとして、第1の導電層60、シード層50をエッチング除去し、これによって第1の導電層60、第2の導電層70からなる配線層を形成し、次に、配線層が形成された領域(配線領域)以外におけるシード層50、多孔質層40、バリア層30をエッチング除去する工程による、サブトラクティブ法とセミアディティブ法の組み合わせによっている。
【0160】
(実装基板の製造工程b)
図13は、本発明の実施の形態における、実装基板の製造工程bを説明する図であり、図13(A)は平面図、図13(B)〜図13(G)、図13(c)〜図13(f)はN−N断面図である。
【0161】
(製造工程b−1)
先ず、図13(B)に示すように、図13(A)に示すアルミニウム基材20に、バリア層30、多孔質層40からなる陽極酸化層35を形成した後、陽極酸化層35の全面に無電解メッキ又は気相成長法によってシード層50を形成し、次に、シード層50の全面に、電解メッキによって第1の導電層60を形成する。
【0162】
次に、図13(C)に示すように、第1の導電層60の上にメッキ用のレジストを塗布し、レジストを配線領域が所定の形状(ここでは矩形)となるようにパターニングして、レジストパターン211を形成する。
【0163】
次に、図13(D)に示すように、レジストパターン211をマスクとして、第1の導電層60、シード層50をエッチング除去する。
【0164】
次に、図13(E)に示すように、レジストパターン211を除去剥離した後、多孔質層40の上にメッキ用のレジストパターン213を形成する。
【0165】
次に、図13(F)に示すように、レジストパターン213をマスクとして、第1の導電層60の上に第2の導電層70を形成する。
【0166】
次に、図13(G)に示すように、レジストパターン213を剥離除去し、これによって第1の導電層60、第2の導電層70からなる配線層を形成する。この図13(G)に示す状態は、図12(H)に示す状態と同じである。
【0167】
次に行われる工程は、製造工程a−1で説明した図12(I)、図12(J)と同じであるので、説明は省略する。また、製造工程b−1における、陽極酸化層35、シード層50、第1の導電層60、第2の導電層70の構成、厚さ等は、製造工程a−1の場合と同じであるので、説明は省略する。
【0168】
以上説明した製造工程b−1では、陽極酸化層35の全面に無電解メッキ又は気相成長法によってシード層50を形成し、次に、シード層50の全面に、電解メッキによって第1の導電層60を形成し、次に、第1の導電層60の上にエッチング用のレジストパターン211を形成し、次に、レジストパターン211をマスクとして、第1の導電層60、シード層50をエッチング除去し、次に、多孔質層40の上にメッキ用のレジストパターン213を形成し、次に、レジストパターン213をマスクとして、第1の導電層60の上に第2の導電層70を形成し、次に、レジストパターン213を除去し、これによって第1の導電層60、第2の導電層70からなる配線層を形成し、次に、配線層をマスクとして、配線層が形成された領域(配線領域)以外における多孔質層40、バリア層30をエッチング除去する工程による、セミアディティブ法とサブトラクティブ法の組み合わせによっている。この方法では、工程が複雑となる欠点がある。
【0169】
(製造工程b−2)
製造工程b−2では、図13(B)に示す第1の導電層60の形成までは、製造工程b−1と同じである。
【0170】
次に、図13(c)に示すように、第2の導電層70を形成する。
【0171】
次に、図13(d)に示すように、第2の導電層70の上にメッキ用のレジストを塗布し、レジストを配線領域が所定の形状(ここでは矩形)となるようにパターニングして、レジストパターン215を形成する。
【0172】
次に、図13(e)に示すように、レジストパターン215をマスクとして、第2の導電層70、第1の導電層60、シード層50をエッチング除去する。
【0173】
次に、図13(G)に示すように、レジストパターン215を剥離除去し、これによって第1の導電層60、第2の導電層70からなる配線層を形成する。この図13(G)に示す状態は、図12(H)に示す状態と同じである。
【0174】
次に行われる工程は、製造工程a−1で説明した図12(I)、図12(J)と同じであるので、説明は省略する。また、製造工程b−2における、陽極酸化層35、シード層50、第1の導電層60、第2の導電層70の構成、厚さ等は、製造工程a−1の場合と同じであるので、説明は省略する。
【0175】
以上説明した製造工程b−2では、陽極酸化層35の全面に無電解メッキ又は気相成長法によってシード層50を形成し、次に、シード層50の全面に、電解メッキによって第1の導電層60、第2の導電層70を順次形成し、次に、第2の導電層70の上にエッチング用のレジストパターン215を形成し、次に、レジストパターン215をマスクとして、第2の導電層70、第1の導電層60、シード層50をエッチング除去し、これによって第1の導電層60、第2の導電層70からなる配線層を形成し、次に、配線層をマスクとして、配線層が形成された領域(配線領域)以外における多孔質層40、バリア層30をエッチング除去する工程による、サブトラクティブ法によっている。この方法では、配線層のアンダーエッチングが大きくなる欠点がある。
【0176】
<実装基板に半導体素子を実装して得られる半導体装置例>
(平面光源装置)
図14は、本発明の実施の形態における、構成例bの実装基板に複数のLED素子が直並列に実装された半導体装置例を説明する図であり、図14(A)は平面図、図14(B)はM−M断面図である。図14は、照明装置として構成された半導体装置100eの主要部のみを示している。
【0177】
図14に示す半導体装置100eでは、実装基板10b−4のアルミニウム基材が露出する面に、4個のLED110aが搭載され、リードワイヤ109によって配線領域の第2の導電層70に電気的に接続されてなる直列配列が、並列に5個電気的に接続されており、+電極、−電極から宮殿される構成を有している。個々のLED110aの実装基板10b−4への搭載、実装は、図6で説明したものと同様であるので、説明は省略する。
【0178】
図14に示す照明装置として構成された半導体装置100eは、屋内外の照明、LCD用バックライト、プロジェクタ用光源等として使用することができ、実装基板10b−4のアルミニウム基材が露出する面にLED110aが搭載されているので、LED110aの出射光の取り出し方向における光量を大幅に向上させることができる。
【0179】
(照明装置)
図15は、本発明の実施の形態における、LED素子が実装された実装基板を使用した照明装置例を説明する図であり、図15(A)は電球型LED照明装置、図15(B)は直管型LED照明装置、図15(C)はガラスカバーと実装基板によって構成される直管型LED照明装置を説明する断面図である。図15は、照明装置における実装基板とLED素子のみを示しており、実装基板は、光反射性、電気絶縁性、低熱抵抗、放熱性を併せもつものである。
【0180】
図15(A)に示す電球(ライトバルブ)型LED照明装置、図15(B)、図15(C)に示す直管型LED照明装置には、LED310が実装された実装基板300が使用されている。この実装基板300のアルミニウム基材が露出する面にLED310が搭載、実装されているので、LED110aの出射光の取り出し方向における光量を大幅に向上させることができる。
【0181】
また、図15(B)、図15(C)に示す直管型LED照明装置では、直管の軸方向に細長い形状を有する実装基板300が使用されており、実装基板300にはその長手方向に複数のLED110aが搭載、実装することができるので、光量を大幅に向上させることができる。
【0182】
図15(C)に示す直管型LED照明装置では、実装基板300とガラスカバー340の接合によって直管が形成され、直管型LED照明装置とされている。LED110aが搭載、実装されていない側の実装基板300の面に陽極酸化膜層が形成されており、この陽極酸化膜層が外部に露出した構造を有しているので、放熱は非常に良好であり、長時間の連続使用が可能である。
【0183】
図15(B)、図15(C)に直管型LED照明装置を示したが、同様な構成を適用して、サークル型LED照明装置とすることもできる。
【0184】
以上説明した、照明装置を一例として、LED素子が実装された実装基板を使用した照明装置は、液晶ディスプレイのバックライト、サイネージ(電子看板)のバックライト等の平面型照明、車載用のヘッドライト等の照明、信号灯、街路灯等の屋外用照明に適用することができる。
【0185】
以上、本発明をLED素子又はLEDパッケージが実装される実装基板を例にとって説明したが、実装基板の構成、実装基板の各部の材質、寸法は一例を例示したものであり、これに限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形が可能である。
【0186】
本発明による実装基板は、絶縁性、耐熱性、放熱性が要求され、光反射性が要求されない半導体素子又はパッケージの搭載、実装にも適用することができ、また、実装基板上に各種の半導体素子を形成することができる。
【0187】
例えば、発熱性を有するトランジスタ、ダイオード、FET、サイリスタ等のパワー素子又はパッケージを実装することができ、放熱性、絶縁耐圧に優れた半導体装置を実現することができる。
【0188】
また、本発明による実装基板をソーラーセル用のフレキシブル基板として使用することができる。使用するアルミニウム基材の厚さを薄くすることによりフレキシブルなものとして、アルミニウム基材への一方の面への、陽極酸化層の形成、ソーラーセル用電極を含む配線層の形成、光電変換膜の形成、上部電極の形成の各工程をRoll to Rollで行うことができ、ソーラーセルの低価格な製造が可能となる。アルミニウム基材の他方の面に陽極酸化層を形成しておけば、陽極酸化層で電気絶縁されているだけでなく、太陽光が当たり温度が上がるソーラーセルパネルの熱を陽極酸化層から放熱させることができる。
【0189】
また、本発明による実装基板を、表示装置のフレキシブルTFT用基板として使用することができる。使用するアルミニウム基材の厚さを薄くすることによりフレキシブルなものとして、アルミニウム基材への一方の面に、表面陽極酸化層、平滑絶縁層、ゲート電極とトランジスタ活性層とソース・ドレイン電極を含むTFT、配線層が形成される。アルミニウム基材の他方の面にも陽極酸化層が形成される。このフレキシブルTFT用基板の一方の面には、OLED、LD、EL等の発光素子が形成されるが、TFTや発光素子からの発熱を、他方の面に形成された陽極酸化層から放熱させることができる。
【0190】
更に、本発明による実装基板を、OLED、LD、EL等の発光素子を使用した照明装置のフレキシブル基板として使用することができる。使用するアルミニウム基材の厚さを薄くすることによりフレキシブルなものとして、アルミニウム基材への一方の面の薄いアルミ酸化層(自然酸化層)を化学研磨、電解研磨等により取り除き鏡面としこれを一方の電極とする、又は、鏡面上に気相成長法によりアルミニウム層を形成しこれを一方の電極とする。一方の電極上に、発光層、対向電極(一方の電極に対向する。)を順次形成する。アルミニウム基材の他方の面には陽極酸化層が形成されている。アルミニウム基材の一方の面は、電極として作用すると同時に、光反射面として作用し、発光素子から発光によって生じた発熱は、アルミニウム基材の他方の面に形成された陽極酸化層から放熱させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0191】
本発明によれば、放熱性、絶縁耐圧、光反射性に優れた実装基板及びこれを用いた半導体装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0192】
10a−1、10a−2、10a−3…バリア層が露出する実装基板、
10b−1、10b−2、10b−3、10b−4…Al基材面が露出する実装基板、
20、200、204…アルミニウム基材、35…陽極酸化層、30…バリア層、
40…多孔質層、50…シード層、60…第1の導電層、70…第2の導電層、
80…ダイボンディング接着剤、82…アンダーフィル、84…半田、
100a、100b、100c、100d、100e…半導体装置、
101…基板、102…n型半導体層、103…活性層、104…p型半導体層、
105…n電極、106…p電極、109…リードワイヤ、
110a、110b、310…LED、200s…分画、202…SUS基材、
205、207、209、211、213、215…レジスト、
210…凹状溝、300…実装基板、320…ガラス球、330…ガラス直管、
340…ガラスカバー、Lo…LEDからの出射光、Lb…後方散乱光、Lf…前方反射光
【先行技術文献】
【特許文献】
【0193】
【特許文献1】特開2000−124568号公報(段落0023〜0029、段落0043〜0045、図1)
【特許文献2】特開2007−123382号公報(段落0007〜0042、図1)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極酸化処理によってアルミニウム基材の第1の面に形成された層であり、多孔質層
とこの多孔質層の下に存在するバリア層とからなる陽極酸化層と、
前記多孔質層上に、シード層、第1の導電層、第2の導電層がこの順に形成され、所
定の形状を有する配線領域と、
この配線領域を除いた領域における前記多孔質層の少なくとも表面側の一部分が除去
された領域と
を有する、実装基板。
【請求項2】
前記配線領域を除いた領域における前記バリア層が除去され、前記アルミニウム基材が露出したアルミニウム露出領域を有する、請求項1に記載の実装基板。
【請求項3】
前記シード層がNi、Cuの少なくとも1種を含む金属からなる層である、請求項1に記載の実装基板。
【請求項4】
前記第1の導電層がCuからなる層である、請求項1に記載の実装基板。
【請求項5】
前記第2の導電層が、前記第1の導電層上に形成されたNiからなる層を含む多層からなる、請求項1に記載の実装基板。
【請求項6】
前記第2の導電層がNiからなる層であり、前記第2の導電層上に形成された第3の導電層を有し、この第3の導電層が、(a)Auからなる層、(b)Agからなる層、(c)Auからなる層上に形成されたAgからなる層、(d)Agからなる層上に形成されたAuからなる層、(e)同一層にAuからなる領域とAgからなる領域を有する層のうちの何れかの層である、請求項1に記載の実装基板。
【請求項7】
前記アルミニウム基材の第1の面に対向する第2の面に、前記陽極酸化処理によって形成された前記陽極酸化層を有する、請求項1に記載の実装基板。
【請求項8】
前記陽極酸化層が、金属基材の第1の面に第1のアルミニウム基材の第2の面が接合されたクラッド基材における、前記第1のアルミニウム基材の第2の面に対向する第1の面に、前記陽極酸化処理によって形成された層である、請求項1に記載の実装基板。
【請求項9】
前記陽極酸化層が、金属基材の第1の面に第1のアルミニウム基材の第2の面が接合され、前記金属基材の前記第1の面に対向する第2の面に第2のアルミニウム基材の第の1面が接合されたクラッド基材における、前記第1のアルミニウム基材の第2の面に対向する第1の面、及び、前記第2のアルミニウム基材の第の1面に対向する第2の面に、前記陽極酸化処理によって形成された層である、請求項1に記載の実装基板。
【請求項10】
前記陽極酸化層が、第1のアルミニウム基材の第1の面に対向する第2の面と第2のアルミニウム基材の第1の面が接合されたアルミニウム接合基材における、前記第2のアルミニウム基材の第の1面に対向する第2の面に、前記陽極酸化処理によって形成された層である、請求項1に記載の実装基板。
【請求項11】
前記金属基材がSUS基材又はスチール基材である、請求項8又は請求項9に記載の実装基板。
【請求項12】
前記第1のアルミニウム基材の純度が、前記第2のアルミニウム基材の純度よりも高い、請求項9又は請求項10に記載の実装基板。
【請求項13】
前記アルミニウム基材の第1の面に開口を有し、実装基板を切断して個片化するための切断領域を規定する凹状の溝が形成されている、請求項1に記載の実装基板。
【請求項14】
前記第1のアルミニウム基材の第1の面に開口を有し、前記第1のアルミニウム基材に底部を有し、実装基板を切断して個片化するための切断領域を規定する凹状の溝が形成されている、請求項8、請求項9、請求項10の何れか1項に記載の実装基板。
【請求項15】
前記第1のアルミニウム基材の第1の面に開口を有し、前記金属基材に底部を有し、実装基板を切断して個片化するための切断領域を規定する凹状の溝が形成されている、請求項8、請求項9の何れか1項に記載の実装基板。
【請求項16】
請求項1から請求項15の何れか1項に記載の実装基板の前記バリア層露出領域に半導体素子が搭載され、この半導体素子の接続端子が前記配線領域に電気的に接続された、半導体装置。
【請求項17】
前記半導体素子が半導体発光素子である、請求項16に記載の半導体装置。
【請求項18】
前記半導体発光素子が、LED素子又はEL素子である、請求項17に記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−190972(P2012−190972A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−52703(P2011−52703)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(511064122)
【Fターム(参考)】