説明

平版印刷材料

【課題】高い耐刷性を維持しながら保水性を改良し、特に網がらみを改善した銀錯塩拡散転写法を応用した平版印刷版を提供する。
【解決手段】支持体上に少なくともハロゲン化銀乳剤層及び物理現像核層を順に有する銀錯塩拡散転写法を応用した平版印刷材料に於て、該ハロゲン化銀乳剤層及びその上層の少なくとも一層に、無機表面処理が施された酸化チタンを含有することを特徴とする平版印刷材料

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀錯塩拡散転写法を応用した平版印刷材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
銀錯塩拡散転写法(DTR法)を利用した平版印刷版は、高感度であり、各種レーザーを搭載した出力機(プレートセッター)を用いて直接に製版できることから、今日のCTP(コンピューター・ツー・プレート)システムに好適に用いられている。
【0003】
銀錯塩拡散転写法を利用した平版印刷版として、ポリエステルフィルムやポリオレフィン樹脂被覆紙のようなフレキシブルな支持体上に、下塗り層、ハロゲン化銀乳剤層、及び物理現像核層を順次設けた印刷版(以下、フレキシブル印刷版という)が知られており、露光、現像処理の後、ハロゲン化銀乳剤層上に銀画像部が形成される。
【0004】
上記のDTRフレキシブル印刷版は、下塗り層及びハロゲン化銀乳剤層はそのまま存在し、ハロゲン化銀乳剤層上に形成された銀画像部を支える役目を担う。このようにDTRフレキシブル印刷版の表面は、ゼラチン等のポリマーバインダーによって形成されているために、陽極酸化されたアルミニウム板を用いた一般的な印刷版(例えばPS版等)に比べて保水性が低く、非画像部の地汚れや網がらみ(シャドー側網点が太ってつぶれる現象)が起こりやすいという問題があった。特に、カラー印刷においては網点再現性は重要であり、網がらみによってシャドー側の網点(80〜95%網点)の再現性が得られないことは重要な問題であった。
【0005】
上記のフレキシブル印刷版において非画像部の保水性を向上させる為に、特開平5−88371号公報には、コロイダルシリカまたはアルミナゾルを含む層を設けることが提案されており、特開平6−118654号公報には表面層にジルコニアゾルまたはチタニアゾルを用いることが提案されている。これらの微粒子を用いることによって保水性は向上するものの、網がらみは充分に改良されるまでには至っていなかった。
【0006】
下塗り層に酸化チタンを添加することが、特開平5−100430号、同平5−80518号、同平5−80520号(特許文献1)、同平5−66564号、同平6−67437号、同平9−171257号に記載されている。一方、ハロゲン化銀乳剤層に、酸化チタンを添加することが、特開昭57−35854号(特許文献2)、特開平11−84671号(特許文献3)に記載されているが、耐刷性を低下させずに保水性を充分に改良するまでには至っていなかった。特に網がらみを改善するに至らなかった。
【特許文献1】特開平5−80520号公報(第1〜2頁)
【特許文献2】特開昭57−35854号公報(第1頁)
【特許文献3】特開平11−84671号公報(第3頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、銀錯塩拡散転写法を利用した平版印刷版において、高い耐刷性を維持しながら保水性を改良し、特に網がらみを改良することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、以下の発明によって達成された。
1)支持体上に少なくともハロゲン化銀乳剤層及び物理現像核層を順に有する銀錯塩拡散転写法を応用した平版印刷材料に於いて、該ハロゲン化銀乳剤層及びその上層の少なくとも一層に、無機表面処理が施された酸化チタンを含有することを特徴とする平版印刷材料。
2)前記酸化チタンが、シリカあるいはジルコニアで表面処理されたものである上記1)に記載の平版印刷材料。
【発明の効果】
【0009】
本発明の銀錯塩拡散転写法を応用した平版印刷材料により、耐刷性を維持しながら保水性を改善し網がらみを改良することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の平版印刷材料は、支持体上にハロゲン化銀乳剤層、及び物理現像核層をこの順に有する。該印刷版の好ましい態様は、支持体とハロゲン化銀乳剤層の間に下塗り層を有する。本発明において、無機表面処理した酸化チタン(以降、単に酸化チタンと称す)をハロゲン化銀乳剤層またはその上層の少なくとも一層に含有する。即ち、酸化チタンを含有する層は、ハロゲン化銀乳剤層、物理現像核層、及びハロゲン化銀乳剤層と物理現像核層の間に必要に応じて設けられる層の少なくとも1層である。本発明において好ましくは、ハロゲン化銀乳剤層または物理現像核層に酸化チタンを含有させることであり、特に好ましくは、ハロゲン化銀乳剤層に含有させることである。
【0011】
本発明に用いられる酸化チタンは、製法により塩素法、硫酸法がありアナタース型、ルチル型、ブルカライト型等があるが、好ましくはルチル型の酸化チタンを無機物で表面処理したものである。
【0012】
酸化チタン表面の無機処理としては、アルミナ処理、シリカ処理、ジルコニア処理、亜鉛処理、錫処理、アンチモン処理などがあり、それぞれの酸化物が用いられる。これらの中でもシリカ処理、ジルコニア処理、亜鉛処理が好ましく、特にシリカ処理、ジルコニア処理が好ましい。また、これらの無機処理は複合処理であってもよく、例えば、シリカとアルミナの複合処理、ジルコニアとアルミナの複合処理、シリカ、ジルコニア及びアルミナの複合処理が挙げられる。本発明に用いられる酸化チタンは、堺化学工業(株)あるいはテイカ(株)などから入手することができる。
【0013】
酸化チタンの含有量は、使用するバインダー量にもよるが、ハロゲン化銀乳剤層に含有させる場合は、0.1〜3g/m2が好ましく、より好ましくは0.4〜1.5g/m2である。物理現像核層に含有する場合は、0.001〜0.5g/m2が好ましく、より好ましくは0.01〜0.1g/m2である。ハロゲン化銀乳剤層の上層に酸化チタンを含有する層を設ける場合はハロゲン化銀乳剤層と同様の使用量が好ましい。
【0014】
酸化チタンの平均粒子径としては、0.03〜0.8μmのものが好ましく、より好ましくは0.1〜0.4μmである。
【0015】
本発明の酸化チタンをハロゲン化銀乳剤層などに含有させる場合に、酸化チタンを層中にうまく分散するために酸化チタンをポリアクリル酸、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコールなどの親水性高分子で予め分散してハロゲン化銀乳剤層などに含有することができる。更に、酸化チタンをアニオン系、カチオン系、ノニオン系、ベタイン系の各種界面活性剤を使用してハロゲン化銀乳剤層などに含有させてもよい。
【0016】
本発明の平版印刷材料の好ましい構成は、前述したように支持体上に下塗り層、ハロゲン化銀乳剤層、及び物理現像核層をこの順に有する。これらの層は、バインダーを含有する。下塗り層及びハロゲン化銀乳剤層のバインダーとしては、ゼラチンが好ましく用いられるが、ゼラチンとその他のバインダー、例えば、澱粉、ジアルデヒド澱粉、カルボキシメチルセルロース、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ポリスチレンスルホン酸、ビニルイミダゾールとアクリルアミドの共重合体、ポリビニルアルコール等の親水性高分子、あるいはポリマーラテックスを組み合わせて含有することができる。特に、下塗り層は、ゼラチンとポリマーラテックスを併用するのが好ましい。
【0017】
下塗り層は、ハレーション防止層を兼ねるのが好ましく、そのために、カーボンブラックあるいは着色顔料を含有する。下塗り層には、更に平均粒径が0.1〜10μmの固形粉末(例えば、シリカ粒子)を含有するのが好ましく、また、現像主薬を含有することも好ましい。下塗り層のバインダー量は、0.5〜8g/m2程度で、好ましくは1〜5g/m2である。
【0018】
ハロゲン化銀乳剤層は当分野で公知のものを全て用いることが出来るが、好ましくは高感度ハロゲン化銀感光材料、高温迅速処理用ハロゲン化銀感光材料に用いられる乳剤層等が挙げられる。ハロゲン化銀乳剤層は、バインダーとしてゼラチンを0.5〜1.5g/m2含有するのが好ましい。
【0019】
ハロゲン化銀乳剤層は、例えば、塩化銀、臭化銀、塩臭化銀、及びこれらに沃化銀を含むものからなる。ハロゲン化銀結晶はロジウム塩、イリジウム塩、パラジウム塩、ルテニウム塩、ニッケル塩、白金塩等の重金属塩を含んでいてもよく、添加量はハロゲン化銀の結晶形態に特に制限はなく、立方体ないし14面体粒子、更にはコアシェル型、平板状粒子でもよい。ハロゲン化銀結晶は、単分散、多分散結晶のどちらであってもよく、その平均粒経は0.2〜0.8μmの範囲である。好ましい例の一つとしては、ロジウム塩もしくはイリジウム塩または両方を含む、塩化銀が70モル%以上の単分散もしくは多分散結晶が使用できる。
【0020】
ハロゲン化銀乳剤は、それが製造される時又は塗布される時に種々の方法で増感することが出来る。例えば、チオ硫酸ナトリウム、アルキルチオ尿素によって、又は金化合物、例えばロダン金、塩化金によって、又はこれらの両者の併用等当該技術分野においてよく知られた方法により化学的に増感することが好ましい。ハロゲン化銀乳剤は、又、例えばシアニン、メロシアニン等の色素によって増感され得る。特に、青色半導体レーザー、赤色LED、ヘリウム−ネオンレーザー等の各種波長のレーザーに高感度で対応できるように、分光増感させるのが好ましい。
【0021】
ハロゲン化銀乳剤層の上部の物理現像核層は物理現像核を含有する。物理現像核としては銀、アンチモン、ビスマス、カドミウム、コバルト、鉛、ニッケル、パラジウム、ロジウム、金、白金等の金属コロイド微粒子や、これらの金属の硫化物、多硫化物、セレン化物、又はそれらの混合物、混晶であってもよい。物理現像核層は、親水性バインダーとして、ゼラチン、澱粉、ジアルデヒド澱粉、カルボキシメチルセルロース、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ポリスチレンスルホン酸、ビニルイミダゾールとアクリルアミドの共重合体、ポリビニルアルコール等の親水性高分子又はそのオリゴマーを含むことが出来、その含有量は0.5g/m2以下であることが好ましい。更に物理現像核層には、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、カテコール等の現像主薬や、ホルマリン、ジクロロ−s−トリアジン等の公知の硬膜剤を含んでもよい。
【0022】
上記した下塗り層、ハロゲン化銀乳剤層、物理現像核層には、ゼラチンの硬膜剤を含有することが出来る。ゼラチン硬膜剤としては、例えばクロム明ばんのような無機化合物、ホルマリン、グリオキザール、マレアルデヒド、グルタルアルデヒドのようなアルデヒド類、尿素やエチレン尿素等のN−メチロール化合物、ムコクロル酸、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサンの様なアルデヒド類、2,4ジクロロ−6−ヒドロキシ−S−トリアジン塩や2,4−ジヒドロキシ−6−クロロ−トリアジン塩のような活性ハロゲンを有する化合物、ジビニルスルホン、ジビニルケトンやN,N,N−トリアクロイルヘキサヒドロトリアジン、活性な三員環であるエチレンイミノ基やエポキシ基を分子中に二個以上有する化合物類、高分子硬膜剤としてのジアルデヒド澱粉等の種々の化合物の一種もしくは二種以上を用いることが出来る。
【0023】
硬膜剤はすべての層に添加することも出来、幾つか又は一層にのみ添加することも可能である。勿論、拡散性の硬膜剤は二層以上を同時塗布する場合には、何れか一層にのみ添加することが可能である。添加方法は乳剤製造時に添加したり、塗布時にインラインで添加することも出来る。
【0024】
本発明に用いられる支持体としては、セルロースナイトレートフィルム、セルロースアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム等のプラスチック樹脂フィルム、あるいは紙の両面にポリオレフィン樹脂層を被覆したポリオレフィン樹脂被覆紙等が挙げられる。これらの支持体の中でも、特にポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルムが好ましく用いられる。これらの支持体の表面を塗布層との接着を良くする為に表面処理することも可能である。これらの支持体の厚みとしては70〜300μm程度が好ましく用いられる。
【0025】
本発明の平版印刷材料の製版に用いられる現像処理液には、アルカリ性物質、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、第三リン酸ナトリウム等、保恒剤としての亜硫酸塩、ハロゲン化銀溶剤、例えばチオ硫酸塩、チオシアン酸塩、環状イミド、2−メルカプト安息香酸、アミン等、粘稠剤、例えばヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等、カブリ防止剤、例えば臭化カリウム、更に現像剤としてハイドロキノン類、カテコール、1−フェニル−3−ピラゾリドン等、現像変性剤、例えばポリオキシアルキレン化合物、オニウム化合物等を含むことが出来る。更に現像処理液には、表面銀層のインキ乗りを良くする化合物等も使用することが出来る。
【0026】
本発明において、銀錯塩拡散転写法を実施するに当たっては、ハロゲン化銀乳剤層又は/及び物理現像核層又はそれに隣接する他の水透過性層中に現像剤を混入することも行われている。従って、このような材料においては、現像段階で使用される処理液は、現像剤を含まない、いわゆる「アルカリ性活性化液」を使用し得る。
【0027】
本発明の平版印刷版の現像後の表面銀層は、任意の公知の表面処理剤でインキ受容性に変換ないしは受容性を改善させることも出来る。印刷方法、あるいは使用する不感脂化液、給湿液等は普通によく知られた方法により施すことも出来る。
【0028】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、無論この記述により本発明が制限されるものではない。
【実施例1】
【0029】
<比較例1の平版印刷材料の作製>
下引き加工された厚みが175μmのポリエチレンテレフタレートフィルム支持体に、先ず裏塗り層を塗工した。裏塗り層は二層とし、下層に導電性カーボン(SD10M、大日本インキ化学工業(株)製)2g/m2、ゼラチン1g/m2、を含む裏塗り第一層、シリカマット剤(0.2g/m2)、ゼラチン2g/m2を含む裏塗り第二層のにそれぞれに硬膜剤、及び界面活性剤を適当量含有させて二層同時塗布し、乾燥した。支持体の反対面に、下記の下塗り層、ハロゲン化銀乳剤層を二層同時塗布し乾燥した後、50℃で2日間加温した。ついでハロゲン化銀乳剤層の上に下記の物理現像核層を塗布乾燥して平版印刷材料を作製した。
【0030】
(下塗り層)
ゼラチンを3.5g/m2、カーボンブラックを0.2g/m2、平均粒径3.5ミクロンのシリカ粉末を0.9g/m2、SBRラテックスを5g/m2、及び1−フェニル−3−ピラゾリドンを1g/m2 、硬膜剤として2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジンナトリウムを170mg/m2含有する。
【0031】
(ハロゲン化銀乳剤層)
赤色増感色素にて分光増感された高感度乳剤(沃化銀を1モル%含む塩化銀乳剤で平均粒径が0.35μmの乳剤を金・硫黄増感したもの)に、1−フェニル−3−ピラゾリドンを0.1g/m2 と、硬膜剤としてN−メチロールエチレン尿素を80mg/m2含有する。尚、このハロゲン化銀乳剤層は、銀換算で1.2g/m2、ゼラチン量が1.0g/m2で塗布されたものである。
【0032】
(物理現像核層)
特開平8−211614号公報の実施例1に準じて調製した。親水性ポリマーとしてNo.2のP−2を25mg/m2、現像主薬としてハイドロキノンを0.5g/m2、硬膜剤として10質量%ホルマリン溶液0.3g/m2含有する。
【0033】
<比較例2の平版印刷材料>
前記比較例1のハロゲン化銀乳剤層に、表面処理していない酸化チタンとして堺化学工業(株)製のR−313タイプ(平均粒径が0.2μm)を0.5g/m2含有させる以外は、比較例1と同様にして作製した。
【0034】
<比較例3の平版印刷材料>
前記比較例1のハロゲン化銀乳剤層に、平均粒径0.45μmの一次粒子シリカマット剤(日産化学工業(株)製のMP4540)を0.2g/m2含有させる以外は、比較例1と同様にして作製した。
【0035】
<比較例4の平版印刷材料>
前記比較例1の下塗り層に、表面処理していない酸化チタンとして堺化学工業(株)製のR−313タイプ(平均粒径が0.2μm)を3.0g/m2含有させる以外は、比較例1と同様にして作製した。
【0036】
<比較例5の平版印刷材料>
前記比較例1の下塗り層に、表面を酸化アルミニウムで処理した酸化チタンとして堺化学工業(株)製のR−25タイプ(平均粒径が0.2μm)を3.0g/m2含有させる以外は、比較例1と同様にして作製した。
【0037】
<本発明1の平版印刷材料>
前記比較例1のハロゲン化銀乳剤層に、表面を酸化アルミニウムで処理した酸化チタンとして堺化学工業(株)製のR−25タイプ(平均粒径が0.2μm)を0.5g/m2含有させる以外は、比較例1と同様にして作製した。
【0038】
<本発明2の平版印刷材料>
前記比較例1のハロゲン化銀乳剤層に、表面を二酸化珪素と酸化アルミニウムで処理した酸化チタンとして堺化学工業(株)製のR−7Eタイプ(平均粒径が0.23μm)を0.5g/m2含有させる以外は、比較例1と同様にして作製した。
【0039】
<本発明3の平版印刷材料>
前記比較例1のハロゲン化銀乳剤層に、表面を二酸化珪素と酸化ジルコニウムと酸化アルミニウムで処理した酸化チタンとして堺化学工業(株)製のGTR−300タイプ(平均粒径が0.26μm)を0.5g/m2含有させる以外は、比較例1と同様にして作製した。
【0040】
<本発明4の平版印刷材料>
前記比較例1のハロゲン化銀乳剤層に、表面を酸化ジルコニウムと酸化アルミニウムで処理した酸化チタンとして堺化学工業(株)製のR−61Nタイプ(平均粒径が0.26μm)を0.5g/m2含有させる以外は、比較例1と同様にして作製した。
【0041】
<本発明5の平版印刷材料>
前記比較例1のハロゲン化銀乳剤層に、表面を酸化亜鉛と二酸化珪素と酸化アルミニウムで処理した酸化チタンとしてテイカ(株)製のJR−701タイプ(平均粒径が0.27μm)を0.5g/m2含有させる以外は、比較例1と同様にして作製した。
【0042】
<本発明6の平版印刷材料>
前記比較例1の物理現像核層に、表面を二酸化珪素と酸化アルミニウムで処理した酸化チタンとして堺化学工業(株)製のR−7Eタイプ(平均粒径が0.23μm)を0.05g/m2含有させる以外は、比較例1と同様にして作製した。
【0043】
上記のようにして作製したそれぞれの平版印刷材料を、赤色LD光源の出力機と現像処理プロセッサー(感光面にのみ処理液を塗布する処理装置)を搭載したSDP−Eco1630II(三菱製紙(株)製)を用いて、1500dpi/150線の条件で0%〜100%まで5%間隔で網点走査露光及び現像処理を行った。現像処理液は三菱製紙(株)製の現像液SLM−EAC、安定液SLM−ESTを用いた。
【0044】
これらの平版印刷版を連続給水機構を有する印刷機(リョービ(株)製RYOBI660)を使用し、保水性を非画像部の汚れ濃度で、網がらみを80%と95%網点の再現性で、下記のインキ及び給湿液を使用し評価した。
【0045】
<給湿液>
日研化学(株)製 アストロマークIII 1%
その他は上水道
<インキ>
大日本インキ化学工業(株)製ニューチャンピオン ニューチャンピオン紫Sタイプ
【0046】
上記の印刷条件で5000枚印刷し、5000枚目の印刷物の非画像部の汚れ濃度と80%と95%網点の網点パーセントを測定した。その結果を表1に示す。保水性は汚れ濃度が低いほうがよく、網がらみは80%と95%網点濃度に近いものほど良いことになる。尚、網点パーセントの測定は大日本スクリーン製造(株)製のICプレートを使用した。
【0047】
【表1】

【0048】
上記の結果から明らかなように、本発明の平版印刷版は汚れ濃度が低く、80%と95%網点太りが少なく、保水性及び網がらみが改善している。尚、耐刷性を見るために100枚目と5000枚目の印刷物のベタ部の濃度を測定したが、試料間に差はなく、いずれも耐刷性に問題はなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に少なくともハロゲン化銀乳剤層及び物理現像核層を順に有する銀錯塩拡散転写法を応用した平版印刷材料に於いて、該ハロゲン化銀乳剤層及びその上層の少なくとも一層に、無機表面処理が施された酸化チタンを含有することを特徴とする平版印刷材料。
【請求項2】
前記酸化チタンが、シリカあるいはジルコニアで表面処理されたものである請求項1に記載の平版印刷材料。

【公開番号】特開2006−208708(P2006−208708A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−20202(P2005−20202)
【出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】