説明

底支持具

【課題】 500度〜1000度の高温にも耐え得る耐熱靴用の底支持具を実現すること。
【課題手段】 底支持具を数百度以上の耐熱性のあるセラミックス製として、それを耐熱靴のソール底面に取り付けることにより、耐熱靴が数百度以上の高温にも耐え得るようにした。底支持具の耐高温性を高めるため、底支持具にネジ差込孔を貫通し、ネジ差込孔の底面側にネジ頭部収容部を形成することも、ネジ頭部収容部を、ネジ差込孔に差込まれたネジの頭部が底支持具の底面より内側まで入り込んでネジ頭部と底支持具の底面との間に断熱空間が形成される内径と深さにすることもできる。耐熱靴のソール底面に取り付けた底支持具の位置ずれ防止のためネジ差込孔を複数設けるのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
耐熱靴に取り付けて用いる底支持具に関し、特に、高炉・電炉等の炉前作業現場、鋳造作業時の高温床面、道路舗装工事現場、火災現場等、他の高温の作業現場での作業に従事する作業者が履くのに適する耐熱靴に取り付けて用いる底支持具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路舗装工事現場、火災現場等の高温場所での作業に使用される耐熱靴は従来からある。それはソールとアッパーが連結されており、ソールが耐熱性のあるニトリルゴム製、アッパーが革製又は耐熱シート製であり、ソール内面側に木やコルク等の芯材を配置固定してソールに断熱性と厚みを持たせてある。この耐熱靴を履くときは靴底の芯材の上に厚いフェルト製の中敷を敷いて、ソールの耐熱性と芯材や中敷の厚みと断熱性によって足場の高熱に耐え得るようにしてある。この耐熱靴を履けば例えば道路舗装工事現場のアスファルトのような200度程度の熱に耐えて作業を行うことが可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記従来の耐熱靴は高炉・電炉等の炉前作業現場や鋳造作業時の高温床面等、足場が500度〜1000度の高温になる作業現場では耐えられない。そのためそのような高温にも耐えうる耐熱靴の開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明は、耐熱靴のソール底面に取り付けられる底支持具であって、数百度以上の耐熱性のあるセラミックス製であることを特徴とする底支持具を提供する。
【0005】
なお、前記セラミックスはアルミナであってもよい。
【0006】
また、前記底支持具はネジ差込孔が貫通され、ネジ差込孔の底面側にネジ頭部収容部が形成されていることが好ましい。
【0007】
また、前記ネジ頭部収容部は、ネジ差込孔に差込まれたネジの頭部が底支持具の底面より内側まで入り込んでネジ頭部と底支持具の底面との間に断熱空間が形成される内径と深さであることが好ましい。
【0008】
また、前記ネジ差込孔が複数設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本件出願の底支持具は、比較的耐熱性に優れる。また耐熱靴に取り付けた際、靴内部への熱伝導が一比較的少ない。また、底支持具の交換が比較的容易である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態の一例を示す底面側斜視図。
【図2】図1に示す耐熱靴の断面説明図。
【図3】図1に示す耐熱靴の構成部材の分解説明図。
【図4】(a)は本発明の底支持具の一例を示す底面平面図、(b)は(a)のb−b断面図、(c)は(b)A部の詳細図。
【図5】耐熱靴を使用した試験の様子を示す説明図。
【図6】耐熱靴を使用した試験結果を示すグラフ。
【図7】(a)は耐熱靴の他の実施形態を示す底面図、(b)は(a)の耐熱靴に使用するネジ係止具の一例を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態1)
本発明の実施形態の一例を図面に基づいて説明する。この実施形態は図1、図2に示すようにソール1とアッパー2とが連結されている耐熱靴の場合であり、ソール底面3の踏付け側4と踵側5にボタン形状の耐熱性の底支持具6が取り付けられて耐熱性が確保され、アッパー2を耐熱材製として耐熱性が確保されている。
【0012】
前記ソール1の内面側に図2のように、踏付け側のネジ係止具10、踵側のネジ係止具11、耐熱繊維シート12、木芯13、コルク製の芯板14、パルプボード15、不織布シート16、フェルトの中敷17が積層配置されている。
【0013】
ソール1は耐熱性のあるニトリルゴム製であるが、それ限らず、歩行時の屈曲が確保される可撓性と、数百度以上の耐熱性が確保される材質であれば他の任意の材質製とすることができる。
【0014】
図2、図3に示す踏付け側のネジ係止具10はソール1の踏付け側4に、踵側のねじ係止具11はソール1の踵側5に配置されている。両ネジ係止具10、11には金属板が使用されており、金属板にはネジ孔が切られている。両ネジ係止具10、11を金属板とすることにより、ソール1に突き刺さることのある釘や番線等の貫通を防止できるようにしてある(踏み抜き事故防止具としての機能を持たせてある)。金属板としては例えば厚さ0.4mm〜数mm程度のブリキ板を使用することができる。金属板は前記貫通を防止でき、歩行時に屈曲可能な可撓性が確保されれば他の厚さ、材質であってもよい。
【0015】
図2、図3に示すように踏付け側のネジ係止具10の上に配置固定された耐熱繊維シート12には耐熱性を備えた耐熱繊維であれば任意のものを使用可能であるが、耐熱アラミド繊維、特に、帝人株式会社製の商品名「テイジンコーネックス(登録商標)」が適する。この耐熱繊維シート12の耐熱性によってソール1を通して靴内に伝わる高熱から足を保護することが可能となる。図2、図3では耐熱繊維シート12は踏付け側のネジ係止具10の上にしか配置固定されていないが、踵側5も含めたソール内側の全面に配置固定することも可能である。
【0016】
図2、図3に示すように踵側のネジ係止具11の上に配置固定された木芯13には踵側5の形状に合わせて加工した積層合板又は一枚板が使用されている。木芯13は厚手に形成されて踵側が踏付け側よりも少し高くなるようにしてある。この木芯13を備えることでソール1全体に厚みを持たせることができ耐熱性を向上させることもできる。図2に示すように木芯13の前端面(踏まず側の面)に前方段差13a、13b、13cを形成し、木芯13の後端面に後方段差13dを形成すれば、その木芯13とソール1の材料(例えばニトリルゴム)を加硫圧着すると、ソール1の内面がそれら段差形状に沿って成形されるため木芯13が前方にも後方にも位置ずれしにくくなる。
【0017】
図2、図3に示すように耐熱繊維シート12の上には、コルク製の芯板14が配置されており、この芯板14の後端側(踏まず側)は前記木芯13の前方突出部18の上にオーバーラップして配置固定されている。この芯板14を設けることでソール1全体に厚みを持たせることができ、熱伝導しにくくすることができる。芯板14はコルク製に限らず例えば厚紙、樹脂等の可撓性のある任意の材質製とすることもできる。前記金属製のネジ係止具10はこの芯板14に切り込み溝を入れて、その溝に差込むようにすることもできる。
【0018】
図2、図3に示すように木芯13並びに芯板14の上にはパルプボード15が配置固定されている。パルプボード15は厚紙を足型に切り抜いたボードである。このパルプボード15の外形は図2に示すように、ソール1の外形よりも一回り小さくして、その外側にアッパー2の下端部の吊り込み代26を内側に巻き込む空間を確保してある。
【0019】
図2、図3に示すようにパルプボード15の上には耐熱性不織布でパルプボード15と相似形に成形された不織布シート16が配置固定されている。
【0020】
図2、図3に示すように不織布シート16の上には弾性(クッション性)のある肉厚の中敷17が敷かれている。中敷17には例えば羊毛フェルト製のものを使用することができる。中敷17を敷くことでソール1の底から靴内部への熱伝導が阻害されて靴内部への熱伝導が遮断され、履き心地も向上する。中敷17は熱伝導の阻害、履き心地の面からは厚手のものを用いることが望ましい。この中敷17は、不織布シート16上に固定することもできる。
【0021】
図1、図2に示すように、ソール1と連結されるアッパー2は筒部20と甲部21とからなる。筒部20は図2に示すように表材20aと裏材20bの間に耐熱繊維材22が挟まれており、表材20aが耐熱製のあるアルミシート、裏材20bが布製である。この耐熱繊維材22にも耐熱性のある耐熱アラミド繊維をはじめとして各種材質製のものを使用できるが、例えば前記商品名「テイジンコーネックス(登録商標)」が特に適する。甲部21は図2に示すように表材21aと裏材21bの間に耐熱繊維材22が挟まれており、表材21aが耐熱製のあるクロムなめしの床ベロア革、裏材21bが布製である。床ベロア革は耐熱性と伸縮性に優れ加工もし易い。甲部21の耐熱繊維材22にも耐熱性のある耐熱アラミド繊維をはじめとして各種材質製のものを使用できるが、例えば前記商品名「テイジンコーネックス(登録商標)」が特に適する。
【0022】
甲部21の裏材21bとその外側の耐熱繊維材22の間には金属板のプロテクター27が挟まれている。このプロテクター27は靴を履いたときに爪先がカバーされて落下物等の荷重や衝撃から爪先を保護する。プロテクター27にはJIS規格品を用いることが望ましい。プロテクター27は甲部21の先端形状に合わせて先方円弧状に形成されている。
【0023】
図2に示すように前記甲部21の下端周縁部は吊り込み代26としてあり、吊り込み代26の先方側は不織布シート16と木芯13との間に、後方側は不織布シート16とコルク製の芯板14との間に、夫々巻き込まれて(吊り込まれて)ソール1の内面との間に挟まれて固定されている。
【0024】
図1、図2に示すようにソール底面3の踏付け側4と踵側5には耐熱性の底支持具6がネジ7で複数個ずつ固定されている。底支持具6は500度(足場温度)以上の耐熱性(耐熱衝撃性)があればどのようなものでも使用可能であるが、エンジニアセラミックス製のものが適する。底支持具6は、例えば径が22mm、高さが9mmのものを使用することができるが、作業者が履いた際にソール底面3が沈み込んで接地しない限り、任意の径及び高さとすることができる。底支持具6の形状は円盤状(ボタン状)であり踏付け側4と踵側5の所望位置に取り付けられている。底支持具6の配列パターン及び取付け数は図示したものに限らず任意とすることができるが、ソール底面3の外周寄りの位置に取り付けて靴が横に傾きにくくなるようにするのがよい。靴が横に傾いてソール底面3の外周縁部が高熱の足場に接触するとソール底面3が溶解して煙が発生したりソール底面3が熱損したりすることがある。
【0025】
図4(a、b)に示す底支持具6はセラミックス製の円盤状であり、中心部にネジ差込孔30が貫通されている。ネジ差込孔30の底面側にはそれに差込まれたネジ7の頭部31が内部まで入り込み可能なネジ頭部収容部30aが形成されている。ネジ頭部収容部30aはネジ頭部31が底支持具6の底面よりも内側まで収容されて、底支持具6の底面とネジ頭部31下面との間に断熱空間32が形成される内径と深さにしてある。この場合、図4(b)に示すようにネジ頭部収容部30aの奥側内周面30bは裾広がりのテーパ面にしてあるが、床接地側内周面30cは縮径しないストレートにすることにより、床接地面側までテーパ面とする場合よりも底支持具6の接地面積を広くして底支持具6を滑りにくくしてある。底支持具6の底面にはリング状の凹部33を、ネジ差込孔30を中心に同心円状に二本形成して、底支持具6に滑り止め機能と断熱機能を持たせてある。また、この凹部33を形成することで底支持具6が熱膨張で割れにくくなるようにしてある。底支持具6の底面外周縁の外側エッジR1及び前記凹部33の内側エッジR2は全周が面取りされて欠損し難くしてある。このとき、Rが大きすぎると底支持具6の接地面積が減少して滑りやすくなり、Rが小さすぎると底支持具6が欠損し易くなるため、Rは0.3〜3とすることが望ましい。底支持具6のセラミックスとしてはアルミナセラミックス(Al23:耐熱衝撃性約550〜700度)が、耐熱性及びコストの面から望ましいが、ジルコニアセラミックス(ZrO2:耐熱衝撃性約500度)、チッ化珪素セラミックス(Si34:耐熱衝撃性1000度以上)、炭化珪素セラミックス(SiC:耐熱衝撃性約900度)等、他の任意のエンジニアリングセラミックスを使用することも可能である。また、底支持具6はビッカース硬度10GPa以上のものが望ましく、それにすれば床面がレンガ等であっても磨耗しにくい。底支持具6の底面に形成される凹部33はリング状に限らず、滑り止め機能や放熱機能があれば他の任意の形状、幅、深さとすることができる。
【0026】
底支持具6の取付けに使用されるネジ7は図2に示すようなネジである。この実施形態では頭部31が平らなものが使用されている。ネジ7は底支持具6の底面からソール1を貫通でき、金属製の踏付け側のネジ係止具10又は踵側のネジ係止具11にねじ込んで底支持具6を固定できるものであれば図示したものに限らず任意形状、構造のものを用いることができる。
【0027】
ネジ7によって底支持具6をソール底面3に取り付けるには、ネジ7をねじ込む前に、予め、ソール1に下孔を、ネジ係止具10、11にネジ孔を開け、その下孔内及びネジ孔に接着剤を注入しておき、ネジ係止具10、11の上面に接着剤を盛り付けておく。また、底支持具6のネジ差込孔30内にも接着剤を注入しておく。この状態で底支持具6の底からネジ差込孔30にネジ7を差し込み(ネジ差込孔30内の接着剤にねじ込み)、ネジ差込孔30を貫通してソール1の下孔からネジ係止具10、11のネジ孔にねじ込み、更にはネジ係止具10、11の上面に盛り付けてある接着剤にまでねじ込み、そのネジ7の周囲に残った接着剤を加熱硬化させてネジ7が緩まないように固定する。接着剤としては150度程度の高温で加熱硬化し、硬化後は1200度〜1300度程度の高温にも耐えられる加熱硬化型の耐熱性無機接着剤を用いるのがよい。加熱硬化型の耐熱性無機接着剤としては例えば東亞合成株式会社製の商品名「アロンセラミック」等がある。ネジ7によって底支持具6がソール底面3に固定されると、ネジ頭部31がネジ差込孔30のネジ頭部収容部30a内に入りこみ、ネジ頭部31と底支持具6の底面との間に断熱空間32が形成される。この断熱空間32はそのままでも断熱機能があるが、必要であれば断熱空間32に前記接着剤を充填して加熱硬化させ、ネジ頭部31を底支持具6内に埋め込むこともできる。これによっても耐熱効果が向上する。
【0028】
(本発明の底支持具の使用試験例)
本発明の底支持具の一例を用いた耐熱靴を履いて耐熱試験を行なった。この耐熱試験は図5に示すように耐熱靴を履いた試験者を、溶鉱炉などの高熱炉から引き出した台座(床面温度570〜580度)上にのせて耐熱靴内の温度変化を測定する試験である。以下にその試験内容を図5に、試験結果を図6に示す。
【0029】
〔試験内容〕
1.温度測定位置
(1)靴内部:爪先、親指付根、踵、ソール内部(全て右足)
(2)その他:床(足場)温度、雰囲気温度(作業者腰付近、但し炉前服内側)
2.測定手順
(1)熱電対のセット
(a)熱電対を上記した靴内部の所定位置に取付ける。
(b)データロガーの設定を確認し、熱電対をデータロガーに取付ける。
(c)台座表面温度測定用熱電対(シース径1.6mmφ)以外の熱電対シース(1mmφ)を1m間隔程度で束ねる。
(d)試験者が耐熱性靴を装着した後、束ねたシースを一旦試験者の腰位置で留める。
(e)データロガーを所定の位置に接地する。
(f)記録を開始し、熱電対及びデータロガーの設定を再確認する。
(g)試験を開始する。
(2)温度測定
(a)炉内の台座を引き出して停止させた後に、試験者は台座表面温度測定用の熱電対を台座に固定する。
(b)被験者は台座の上に乗って所定の作業を行う。
(c)束ねた熱電対は試験者若しくは助勢者(図示しない)が試験作業の妨げとならないようにシースをコントロールする。
(3)試験の終了
(a)各部分の温度変化を確認しながら測定終了時期を決定する。但し靴または試験者に異常が表れたときはただちに試験を終了する。
(b)データを保存する。
【0030】
〔試験結果〕
図6に温度測定結果をグラフで示した。
(1)温度測定は、通常のルーティン作業(約30秒間)と、台座の上で行う試験用作業(約60秒間)の連続で実施した。
(2)試験中の台座の床面温度は570〜580度であった。
(3)靴内部温度は、試験作業中は体温程度であったが、試験終了後には爪先の温度が約40度までしか上昇しなかった。
(4)ソール内部温度は作業者が台座の床面に乗ったことと同期して温度が上昇していた。試験終了後も温度は上昇し続け、試験終了後、約3分後に最高温度70度となった。
【0031】
〔まとめ〕
試験の結果、靴内部温度の上昇は僅かであり、ソール底面も床面に直接触れてしまった部分以外は健全な状態が保たれ、底支持具の採用効果が顕著に現れている。
【0032】
(実施形態2)
本発明における底支持具6は実施形態1のボタン状(円盤状)に限らず任意の形状にすることができ、例えば、図7(a)に示すような細長板状、円弧の板状とか図示されていない馬蹄形等とすることもできる。図7(a)に示す細長板状や円弧板状の場合は一つの底支持具6にネジ差込孔30を二以上開口し、それらネジ差込孔30にネジ7を差し込んでソール1に固定することにより底支持具6の位置ずれを防止することができる。一つの底支持具6に二以上のネジ差込孔30を開口する位置ずれ防止構造は、図1に示す円盤状の底支持具6にも採用できる。その場合は二以上形成できるように一つのネジ差込孔30を小さくするか、二以上のネジ差込孔30を形成できる程度に底支持具6の直径を大きくする。
【0033】
図7(a)の円弧状の底支持具6はソール底面3の爪先側周縁部や踵側周縁部などに取り付けると足場の上を歩行してもソール底面3の爪先や踵が高熱の足場に接触せず、接触による熱損が発生しない。底支持具6をソール底面3の幅方向両側縁部と同形にし、それをソール底面3の幅方向両側縁部に取り付けると靴が傾きにくくなり、ソール底面3の幅方向両側縁部が高熱の足場に接触し難くなって幅方向両側縁部も熱損しない。甲部21のプロテクター27の上に重量物が落下するとソール1の底支持具6周辺が沈み込んで(縮んで)ソール底面3の爪先側が足場に接触し易くなるが、図7(a)のように円弧状の底支持具6は表面積が大きいためそれを爪先部分に取り付けると前記のように重量物が落下してもソール底面3の爪先側が沈み込みにくくなり足場へ接触し難くなり、熱損が防止される。
【0034】
この耐熱靴では甲部21のプロテクター27の上に重量物が落下すると、ソール1の踏付け側ネジ係止具10、耐熱繊維シート12、芯板14、パルプボード15、不織布シート16、中敷17が底支持具6によって突き上げられてプロテクター27と中敷17との間の隙間が小さくなり、足を損傷するおそれもあるが、本実施形態の耐熱靴では図7(a)の円弧状の底支持具6は表面積が大きく、プロテクター27の外周支持部27a(図2)が支えられるので、重量物が落下してもプロテクター27と中敷17の隙間が指の関節部分の厚さ(JIS規格では最大15mm程度)以上に確保され、指が損傷しにくくなる。
【0035】
図2に示すように円弧状の底支持具6をソール底面3の爪先部や踵部に取付ける場合は、図2に示したネジ係止具10、11として図7(b)に示すようにネジ止め部分40が爪先側又は踵側へ突出しているものを使用し、その突出部分にネジ7をねじ込むことにより底支持具6をソール底面3に固定することができる。図7(b)に示すネジ係止具10、11を使用すれば、円弧状の底支持具6ではなく、円盤状の底支持具6をソール底面3の爪先側周縁部や踵側周縁部に固定することもできる。
【0036】
(実施形態3)
ネジ止め具は金属板ではなく、ナットやナット状のものを使用することもでき、それをソール1やその内面側に内蔵しておき、それにネジ7をねじ込んで底支持具6をソール底面3に固定することもできる。
【0037】
(実施形態4)
ソール底面3への底支持具6の固定は前記実施形態のようにネジ7で固定するのではなく、可能であれば接着剤による固定とすることもできる。この場合は接着剤として加熱硬化型の耐熱性無機接着剤、例えば東亞合成株式会社製の商品名「アロンセラミック」等を使用することができる。
【0038】
(その他の実施形態)
耐熱靴は、ソールの内部構造や素材等は、前記したもの以外であってもよい。例えば部品を省略、追加、変更したり積層順を変えたりすることもできる。また、アッパーの構造や素材も同様に前記したものに限らず任意の構造や素材とすることができる。
【0039】
ソール底面には表面をアルミシートで被覆した耐熱繊維材を貼り付けることも出来る。この場合、貼り付けた耐熱繊維材の上から前記底支持具を取り付けるのがよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
一例として図示した耐熱靴はアッパー付きのものであるが、耐熱靴はアッパーの無いものとか、有っても他の構造、素材、形状のものであってもよい。耐熱靴は耐冷靴として使用したり、他の用途の安全靴に応用することもできる。
【符号の説明】
【0041】
1 ソール
2 アッパー
3 ソール底面
4 踏付け側
5 踵側
6 底支持具
7 ネジ
10 踏付け側ネジ係止具
11 踵側ネジ係止具
12 耐熱繊維シート
13 木芯
14 芯板
15 パルプボード
16 不織布シート
17 中敷
20 筒部
21 甲部
22 耐熱繊維材
27 プロテクター
27a 外周支持部
30 ネジ差込孔
30a ネジ頭部収容部
30b 奥側内周面
30c 床接地側内周面
31 (ネジ)頭部
32 断熱空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱靴のソール底面に取り付けられる底支持具であって、
数百度以上の耐熱性のあるセラミックス製であることを特徴とする底支持具。
【請求項2】
前記セラミックスはアルミナであることを特徴とする請求項1記載の底支持具。
【請求項3】
前記底支持具はネジ差込孔が貫通され、ネジ差込孔の底面側にネジ頭部収容部が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の底支持具。
【請求項4】
前記ネジ頭部収容部は、ネジ差込孔に差込まれたネジの頭部が底支持具の底面より内側まで入り込んでネジ頭部と底支持具の底面との間に断熱空間が形成される内径と深さであることを特徴とする請求項3記載の底支持具。
【請求項5】
前記ネジ差込孔が複数設けられていることを特徴とする請求項3または請求項4記載の底支持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−12224(P2010−12224A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−46699(P2009−46699)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【分割の表示】特願2007−128666(P2007−128666)の分割
【原出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【出願人】(390010571)株式会社リーガルコーポレーション (4)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【出願人】(594023179)株式会社帝健 (9)
【Fターム(参考)】