微細構造形成用母型およびその製造方法
【課題】モールドの表面に溝部の幅が100nm以下の微細凹凸構造だけでなく、比較的広い溝部の幅(好ましくは100〜10000nm)を有する微細凹凸構造も形成することが可能な微細構造形成用母型を提供すること。
【解決手段】2種以上の樹脂により形成された2種以上の樹脂層を備える積層体からなり、該積層体の外表面のうちの前記樹脂層の積層方向と略平行な外表面に、溝部を備える凹凸構造を有し、前記溝部の底面が、前記2種以上の樹脂層のうちの1種の樹脂層(A)の端面の少なくとも一部を含むものであり、前記溝部の底面の長手方向が前記樹脂層(A)の端面の長手方向と略平行であることを特徴とする微細構造形成用母型。
【解決手段】2種以上の樹脂により形成された2種以上の樹脂層を備える積層体からなり、該積層体の外表面のうちの前記樹脂層の積層方向と略平行な外表面に、溝部を備える凹凸構造を有し、前記溝部の底面が、前記2種以上の樹脂層のうちの1種の樹脂層(A)の端面の少なくとも一部を含むものであり、前記溝部の底面の長手方向が前記樹脂層(A)の端面の長手方向と略平行であることを特徴とする微細構造形成用母型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細構造形成用母型およびその製造方法に関し、より詳しくは、ナノインプリント用モールドなど、ラインアンドスペース構造などの微細な凹凸構造を表面に備えるモールドを作製するための母型およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ラインアンドスペース構造などの微細な凹凸構造を表面に形成する技術は、光学素子、光学フィルム、記録メディア、ディスプレイといった光学部材、半導体素子、バイオチップなど、様々な分野で注目されている。従来、このような微細凹凸構造は、フォトリソグラフィ技術を利用して形成されていたが、フォトリソグラフィ技術は、装置が高価であり、また、微細凹凸構造を形成できる面積が小さいため、その利用範囲はMicro Electro Mechanical Systems(MEMS)などの小型で付加価値の高い用途に限られていた。
【0003】
近年、このフォトリソグラフィ技術に比べて低コストで微細凹凸構造を形成できる技術として、ナノインプリント技術が注目されている。このナノインプリント技術は、表面に微細凹凸構造を備えるモールドを基板上の樹脂膜に押し付けることによって、モールド表面の微細凹凸構造を樹脂膜表面に転写する技術であり、面積が比較的大きい微細凹凸構造を形成できると言われている。
【0004】
このようなナノインプリントに用いられるモールドは、例えば、特開2005−186189号公報(特許文献1)や特開2010−5723号公報(特許文献2)に記載の超精密切削工具を用いてNi−P基板などの基材表面に直接切削加工を施して微細凹凸構造を形成することにより作製することができる。また、切削加工を施して形成した微細凹凸構造を備える母型を用いて転写技術により作製することも可能である。しかしながら、この切削加工は、幅が数μm程度の溝を形成する場合には有効であるが、数百nm以下の幅の溝を形成することは困難であった。
【0005】
このため、溝幅が数百nm以下の微細凹凸構造を備えるモールドや母型を作製する場合には、前述のリソグラフィ技術を利用する必要があり、低コスト化が十分に図られているとは言えなかった。特に、幅が50nm以下の溝を形成する場合には、ArF液浸露光やダブルパターニング、極紫外線(EUV)露光といった高コストの露光方法を利用する必要があり、モールドや母型の製造コストがさらに高くなるという問題があった。
【0006】
また、上記のように、切削加工やリソグラフィ技術によりモールドや母型の表面に直接微細凹凸構造を形成する場合、微細凹凸構造を形成できる領域は装置の可動範囲に制限される。このため、それより大面積の微細凹凸構造を形成する場合には、切削加工やリソグラフィ技術により作製された小面積の微細凹凸構造を備えるモールドや母型を繋ぎ合わせる必要があり(月刊ディスプレイ、テクノタイムズ社、2009年1月号、71−74頁(非特許文献1)参照)、従来の方法では、モールドを繋ぎ合わせる技術についても高い精度が要求されていた。
【0007】
一方、特開2006−159815号公報(特許文献3)および特開2010−56256号公報(特許文献4)には、ブロックコポリマーのミクロ相分離を利用して微細凹凸構造を形成する方法が開示されている。特に、特許文献4には、ブロックコポリマーのミクロ相分離を利用して形成した微細凹凸構造を転写する方法も開示されている。しかしながら、この方法では、微細凹凸構造がブロックコポリマーのポリマー長およびミクロ相分離構造に依存するため、溝幅が100nm以下の微細凹凸構造は形成できるものの、溝幅が数百nmの微細凹凸構造を形成することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−186189号公報
【特許文献2】特開2010−5723号公報
【特許文献3】特開2006−159815号公報
【特許文献4】特開2010−56256号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】宮内昭浩ら、「シートナノインプリントによる微細構造の形成」、月刊ディスプレイ、テクノタイムズ社、2009年1月号、71−74頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、溝部の幅が100nm以下の微細凹凸構造だけでなく、さらに広い幅(好ましくは100〜10000nm)の溝部を有する微細凹凸構造も、モールドの表面に形成することができる微細構造形成用母型およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、2種以上の樹脂により形成された2種以上の樹脂層を備える積層体の端面(樹脂層の積層方向と略平行な面)にエッチング処理を施すことによって、前記2種以上の樹脂層のうちの少なくとも1種の樹脂層の一部が除去され、この樹脂層の厚さに対応する幅を有する溝部が積層体の端面に形成されること、並びに、除去される樹脂層の厚さを調整することによって溝部の幅を制御できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明の微細構造形成用母型は、2種以上の樹脂により形成された2種以上の樹脂層を備える積層体からなり、該積層体の外表面のうちの前記樹脂層の積層方向と略平行な外表面に、溝部を備える凹凸構造を有し、前記溝部の底面が、前記2種以上の樹脂層のうちの1種の樹脂層(A)の端面の少なくとも一部を含むものであり、前記溝部の底面の長手方向が前記樹脂層(A)の端面の長手方向と略平行であることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の微細構造形成用母型の製造方法は、2種以上の樹脂を用いて2種以上の樹脂層を備える積層体を形成する工程と、前記積層体の外表面のうちの前記樹脂層の積層方向と略平行な外表面にエッチング処理を施して前記2種以上の樹脂層のうちの少なくとも1種の樹脂層の一部を除去することにより、除去した樹脂層のうちの1種の樹脂層(A)の端面の少なくとも一部を含み且つ長手方向が前記樹脂層(A)の端面の長手方向と略平行である底面を有する溝部を備える凹凸構造を形成する工程と、を含むことを特徴とする方法である。
【0014】
本発明において、前記樹脂層(A)としては、前記2種以上の樹脂のうちのエッチング速度が最も速い樹脂により形成された樹脂層が好ましい。
【0015】
本発明の微細構造形成用母型の製造方法において、厚さ(実測値)が50〜10000nmの範囲内にある樹脂層の前記外表面に前記エッチング処理を施すことによって、幅(実測値)が50〜10000nmの範囲内にある溝部を備える凹凸構造を有する本発明の微細構造形成用母型を作製することができる。また、積層方向の長さ(実測値)が10mm以上の積層体の前記外表面に前記エッチング処理を施すことによって、積層方向の長さ(実測値)が10mm以上の凹凸構造を有する本発明の微細構造形成用母型を従来よりも簡便に作製することができる。
【0016】
また、本発明の微細構造形成用母型の製造方法においては、前記エッチング処理を施して前記樹脂層(A)の一部を除去することによって、前記溝部の底面全体を前記樹脂層(A)の端面の少なくとも一部により形成させることが好ましく、前記溝部の底面の幅が前記樹脂層(A)の厚さと略同一となるように前記樹脂層(A)の一部を除去することが好ましい。これにより、前記溝部の底面全体が前記樹脂層(A)の端面の少なくとも一部である本発明の微細構造形成用母型(好ましくは、前記溝部の底面の幅が前記樹脂層(A)の厚さと略同一である本発明の微細構造形成用母型)を作製することができる。
【0017】
なお、本発明において、「樹脂層の端面」とは、樹脂層の面のうち、樹脂層の積層方向と略平行な面をいう。また、「溝部の底面の幅」および「樹脂層の厚さ」とは、それぞれ溝部の底面および樹脂層の「積層方向の長さ」をいう。
【0018】
また、本発明において、樹脂のエッチング速度の違いは、選択した前記2種以上の樹脂の端面を切りそろえ、その端面をエッチング処理した後、共焦点レーザー顕微鏡を用いて樹脂の相対エッチング深さを測定することによって判断することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、溝部の幅が100nm以下の微細凹凸構造だけでなく、さらに広い幅(好ましくは100〜10000nm)の溝部を有する微細凹凸構造も、モールドの表面に形成することが可能な微細構造形成用母型を得ることができる。また、小面積の微細凹凸構造を有する微細構造形成用母型だけでなく、大面積の微細凹凸構造を有する微細構造形成用母型も得ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の微細構造形成用母型の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明の微細構造形成用母型の他の一例を示す斜視図である。
【図3】本発明の微細構造形成用母型のさらに他の一例を示す斜視図である。
【図4】本発明の微細構造形成用母型のさらに他の一例を示す斜視図である。
【図5A】本発明の微細構造形成用母型の製造方法における積層体形成工程の一例を模式的に示す図である。
【図5B】本発明の微細構造形成用母型の製造方法における積層体形成工程の他の一例を模式的に示す図である。
【図5C】本発明の微細構造形成用母型の製造方法における積層体形成工程の更に他の一例を模式的に示す図である。
【図6A】本発明の微細構造形成用母型の製造方法におけるエッチング処理工程一例を模式的に示す図である。
【図6B】本発明の微細構造形成用母型の製造方法におけるエッチング処理工程の他の一例を模式的に示す図である。
【図6C】本発明の微細構造形成用母型の製造方法におけるエッチング処理工程の更に他の一例を模式的に示す図である。
【図7A】本発明の微細構造形成用母型の一例を示す断面図である。
【図7B】本発明の微細構造形成用母型の他の一例を示す断面図である。
【図7C】本発明の微細構造形成用母型の更に他の一例を示す断面図である。
【図8A】溝部および凸部の長手方向の形状が直線状である凹凸構造を有する本発明の微細構造形成用母型の上面図である。
【図8B】溝部および凸部の長手方向の形状が円弧状である凹凸構造を有する本発明の微細構造形成用母型の上面図である。
【図8C】溝部および凸部の長手方向の形状がS字状である凹凸構造を有する本発明の微細構造形成用母型の上面図である。
【図8D】溝部および凸部の長手方向の形状が円状である凹凸構造を有する本発明の微細構造形成用母型の上面図である。
【図9A】溝部の断面形状がU字型である凹凸構造を有する本発明の微細構造形成用母型の断面図である。
【図9B】溝部の断面形状がV字型である凹凸構造を有する本発明の微細構造形成用母型の断面図である。
【図10A】凸部の断面形状が逆U字型である凹凸構造を有する本発明の微細構造形成用母型の断面図である。
【図10B】凸部の断面形状が逆V字型である凹凸構造を有する本発明の微細構造形成用母型の断面図である。
【図11】実施例1で得られた微細構造形成用母型によって形成されたレプリカの微細凹凸構造を備える外表面を示す電子顕微鏡写真である。
【図12】実施例10で得られた微細構造形成用母型によって形成されたレプリカの微細凹凸構造を備える外表面を示す電子顕微鏡写真である。
【図13】実施例10で得られた微細構造形成用母型の多層フィルムBと多層フィルムCとの境界部を共焦点レーザー顕微鏡により観察した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明するが、本発明は前記図面に限定されるものではない。なお、以下の説明および図面中、同一または相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0022】
先ず、本発明の微細構造形成用母型について説明する。本発明の微細構造形成用母型は、2種以上の樹脂により形成された2種以上の樹脂層を備える積層体からなり、この積層体の外表面のうちの前記樹脂層の積層方向と略平行な外表面に、溝部を備える凹凸構造を有するものである。そして、本発明の微細構造形成用母型において、前記溝部の底面は、前記2種以上の樹脂層のうちの1種の樹脂層(A)の端面の少なくとも一部を含むものであり、前記溝部の底面の長手方向は、前記樹脂層(A)の端面の長手方向と略平行である。
【0023】
また、本発明の微細構造形成用母型においては、前記溝部の底面全体が、前記樹脂層(A)の端面の少なくとも一部であることが好ましく、前記溝部の底面の幅が、前記樹脂層(A)の厚さと略同一であることがより好ましい。
【0024】
以下、本発明の微細構造形成用母型について、図1〜3に沿って、2種類の樹脂により形成された2種類の樹脂層(A)および(B)を備える積層体からなる母型を例にさらに詳細に説明する。
【0025】
図1〜3に示した微細構造形成用母型において、樹脂層の積層方向、溝部の底面の長手方向および溝部の深さ方向は互いに直交しており、これらをそれぞれx軸方向、y軸方向、z軸方向とする。この場合、上下2面のxy平面と前後2面のxz平面の合計4面が、本発明にかかる「樹脂層の積層方向と略平行な外表面」に該当する。これらのうち、図1〜3に示した微細構造形成用母型においては、上面のxy平面に、溝部を備える凹凸構造が形成されているが、本発明の微細構造形成用母型は、これに限定されるものではない。
【0026】
また、図1〜3に示すように、前記溝部の底面は、2種類の樹脂層のうちの樹脂層(A)の端面の少なくとも一部を含むものである。さらに、前記樹脂層(A)の端面の長手方向は、前記溝部の底面の長手方向、すなわち、y軸方向と略平行である。
【0027】
特に、図1に示した微細構造形成用母型においては、前記溝部の底面全体が樹脂層(A)の端面全体1により形成されたものであり、前記溝部の底面の幅(x軸方向の長さ)は前記樹脂層(A)の厚さ(x軸方向の長さ)と略同一である。また、凸部の上面全体が樹脂層(B)の端面全体2により形成されたものであり、前記凸部の上面の幅(x軸方向の長さ)は前記樹脂層(B)の厚さ(x軸方向の長さ)と略同一である。さらに、溝部の内壁(凸部の側壁)は樹脂層(B)のyz平面の一部3により形成されている。
【0028】
また、図2に示した微細構造形成用母型においては、前記溝部の底面全体が樹脂層(A)の端面の一部1aにより形成されたものであり、前記溝部の底面の幅(x軸方向の長さ)は前記樹脂層(A)の厚さ(x軸方向の長さ)より小さくなっている。一方、凸部の上面については、その一部が樹脂層(B)の端面全体2により形成されたものであり、残りの部分は樹脂層(A)の端面の一部1bにより形成されたものであり、前記凸部の上面の幅(x軸方向の長さ)が前記樹脂層(B)の厚さ(x軸方向の長さ)より大きくなっている。また、溝部の内壁(凸部の側壁)は樹脂層(A)のyz平面の一部4により形成されている。
【0029】
さらに、図3に示した微細構造形成用母型においては、前記溝部の底面のうちの一部が樹脂層(A)の端面全体1により形成され、残りの部分が樹脂層(B)の端面の一部2aにより形成されたものであり、前記溝部の底面の幅(x軸方向の長さ)が前記樹脂層(A)の厚さ(x軸方向の長さ)より大きくなっている。一方、凸部の上面については、その全体が樹脂層(B)の端面の一部2bにより形成されたものであり、前記凸部の上面の幅(x軸方向の長さ)が前記樹脂層(B)の厚さ(x軸方向の長さ)より小さくなっている。また、溝部の内壁(凸部の側壁)は樹脂層(B)のyz平面の一部3により形成されている。
【0030】
図1〜3に示した微細構造形成用母型のうち、溝部の底面および凸部の上面に対して垂直な溝部の内壁(凸部の側壁)が形成されやすいという観点から、図1〜2に示した微細構造形成用母型が好ましく、図1に示した微細構造形成用母型がより好ましい。
【0031】
以上、本発明の微細構造形成用母型について、2種類の樹脂により形成された2種類の樹脂層(A)および(B)を備える積層体からなる母型を例に詳細に説明したが、本発明の微細構造形成用母型はこれに限定されるものではなく、3種以上の樹脂により形成された3種以上の樹脂層を備える積層体からなる母型も、樹脂層の種類が増加する点を除いて、その構成は2種類の樹脂層の場合と同様である。
【0032】
例えば、図4には、3種類の樹脂層(A)、(B)および(C)を備える積層体からなる微細構造形成用母型の斜視図を示す。この微細構造形成用母型においては、底面全体が樹脂層(A)の端面全体1により形成された溝部に加えて、底面全体が樹脂層(C)の端面全体5により形成された溝部を備えているが、この点を除いて、溝部および凸部の構成などは、図1に示した2種類の樹脂層(A)および(B)を備える積層体からなる微細構造形成用母型と同様である。
【0033】
本発明の微細構造形成用母型において、前記溝部の幅(実測値、図1〜4においては、x軸方向の長さの実測値)が50〜10000nmの範囲内にあることが好ましく、75〜9000nmの範囲内にあることがより好ましく、100〜8000nmの範囲内にあることが特に好ましい。また、前記凸部の幅(実測値、図1〜4においては、x軸方向の長さの実測値)としては特に制限はないが、50〜10000nmの範囲内にあることが好ましく、75〜9000nmの範囲内にあることがより好ましく、100〜8000nmの範囲内にあることが特に好ましい。さらに、隣接する前記凸部と前記溝部の幅の比(凸部/溝部、実測値の比)としては特に制限はないが、0.2〜5の範囲内にあることが好ましく、0.5〜3の範囲内にあることがより好ましい。また、前記凹凸構造の前記積層方向の長さ(実測値、図1〜4においては、x軸方向の長さの実測値)としては特に制限はないが、5mm以上であることが好ましく、10mm以上であることがより好ましく、30mm以上であることがさらに好ましく、100mm以上であることがより特に好ましい。このようなサイズの溝部、凸部および凹凸構造を有する微細構造形成用母型は、上述した通り、従来の方法では簡便に形成することはできなかった。一方、本発明においては、後述するように、前記溝部および前記凸部の幅は樹脂層の厚さを調整することによって、また、凹凸構造の積層方向の長さは、樹脂層の厚さや層数を調整することによって、容易に制御することができる。
【0034】
本発明にかかる2種以上の樹脂層は、互いにエッチング速度が異なる樹脂により形成されたものである。特に、前記樹脂層(A)としては、前記2種以上の樹脂のうちのエッチング速度が最も速い樹脂により形成されたものであることが好ましい。例えば、図1〜3に示した微細構造形成用母型においては、樹脂層(A)は、樹脂層(B)を形成する樹脂に比べてエッチング速度が速い樹脂により形成されたものである。また、図4に示した微細構造形成用母型においては、樹脂層(C)は、樹脂層(B)を形成する樹脂に比べてエッチング速度が速い樹脂により形成されたものであり、樹脂層(A)は、樹脂層(B)および(C)を形成する樹脂に比べてエッチング速度が速い樹脂により形成されたものである。このように、本発明においては、積層体を構成する樹脂層が、エッチング速度が異なる樹脂により形成されているため、エッチング処理によって溝部が形成される。
【0035】
本発明の微細構造形成用母型において、このような樹脂のエッチング速度差は大きいことが好ましい。これにより、エッチング処理により容易に溝部を有する凹凸構造を形成することができる。さらに、前記溝部の深さを深くすることが可能となり、溝部の深さと幅との比(幅/深さ、以下、「アスペクト比」という)が大きい溝部を有する凹凸構造を形成することが可能となる。前記溝部の深さ(実測値、図1〜4においては、z軸方向の長さの実測値)としては特に制限はないが、10〜5000nmの範囲内にあることが好ましく、100〜2000nmの範囲内にあることがより好ましい。また、前記アスペクト比(幅/深さ、実測値の比)としては特に制限はないが、0.5〜10の範囲内にあることが好ましく、1〜5の範囲内にあることがより好ましい。本発明において、溝部の深さは、後述するように、樹脂層を形成する樹脂の組み合わせや、エッチング処理条件を調整することによって、容易に制御することができる。
【0036】
本発明にかかる樹脂層を形成する樹脂としては、特に制限はなく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−4−メチルペンテン−1などのポリオレフィン、ポリスチレン、アクリロニトリル/スチレン系重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン系重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ(メタ)アクリレート、スチレン/ポリ(メタ)アクリレート共重合体などのビニルモノマー重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカプロラクトンなどのポリエステル、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド、ポリイミド、ポリアリレート、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)系共重合体、テトラフルオロエチレン/エチレン系共重合体、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン系共重合体、テトラフルオロエチレン/プロピレン系共重合体、ポリフルオロ(メタ)アクリレート系重合体、主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する含フッ素重合体、ポリフッ化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、エチレン/ビニルアルコール系共重合体、クロロトリフルオロエチレン/エチレン系共重合体、クロロトリフルオロエチレン/炭化水素系アルケニルエーテル系共重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン系共重合体、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン系共重合体、エチレン/メタクリル酸共重合体やエチレン/アクリル酸共重合体の分子間をナトリウムやカリウム、亜鉛などの金属イオンで分子間結合したアイオノマーといった熱可塑性樹脂が挙げられ、これらの中から選択された、エッチング速度が異なる2種以上の樹脂により本発明にかかる2種以上の樹脂層が形成される。このような樹脂の組み合わせ(前者が高エッチング速度)としては、エッチング速度差が大きいという観点から、エチレン/ビニルアルコール共重合体とナイロン6、エチレン/ビニルアルコール共重合体とアイオノマー、ナイロン6とアイオノマーといった組み合わせが好ましく、エチレン/ビニルアルコール共重合体とナイロン6といった組み合わせがより好ましい。
【0037】
次に、本発明の微細構造形成用母型の製造方法について説明する。本発明の微細構造形成用母型の製造方法は、2種以上の樹脂を用いて2種以上の樹脂層を備える積層体を形成する工程(積層体形成工程)と、前記積層体の外表面のうちの前記樹脂層の積層方向と略平行な外表面にエッチング処理を施して、前記2種以上の樹脂層のうちの少なくとも1種の樹脂層の一部を除去することにより、除去した樹脂層のうちの1種の樹脂層(A)の端面の少なくとも一部を含み且つ長手方向が前記樹脂層(A)の端面の長手方向と略平行である底面を有する溝部を備える凹凸構造を形成する工程(エッチング処理工程)と、を含む方法である。
【0038】
(積層体形成工程)
本発明にかかる積層体を形成する方法としては、2種以上の樹脂を用いて形成された2種以上の樹脂層を備える積層体が形成できる方法であれば特に制限はなく、例えば、2種以上の樹脂フィルムを交互にラミネートする方法、1種以上の樹脂フィルムを、この樹脂フィルムと異なる接着剤を用いて接着して多層化する方法、2種以上の樹脂を共押出や共射出する方法などが挙げられる。中でも、層数が増加しても容易に積層体を形成できるという観点から、共押出法が好ましく、フィードブロック法(松原弘明ら、「共押出多層キャストフィルム概要」、DICテクニカルレビュー、2008年、第14巻、9−16頁参照)がより好ましい。
【0039】
また、予め、フィードブロック法などにより多層フィルムを複数作製し、これらをラミネートすることによって所望の層数の積層体を形成することができる。これにより、共押出法や共射出法において、一度に形成することができる層数に制限がある場合でも、それを超える層数の積層体を形成することができる。このような層数としては特に制限はないが、例えば、1000層以上(好ましくは10000層以上)の樹脂層を備える積層体を形成することができる。
【0040】
上述のように、多層フィルムをラミネートして積層体を形成する場合、同種の多層フィルムをラミネートすると、接合部分の層厚が厚くなるため、最外層が異なる2種以上の多層フィルムを交互にラミネートすることが好ましい。図5Aは、2種類の多層フィルムをラミネートして、2種類の樹脂層(A)と樹脂層(B)とを交互に備える積層体を形成する方法を模式的に示した図である。なお、図5A中のx軸方向は樹脂層の積層方向を示す。図5Aに示すように、先ず、2種類の樹脂層(A)と樹脂層(B)とを交互に備える多層フィルムをフィードブロック法などによって作製する。このとき、多層フィルムとして、樹脂層(B)が最外層である多層フィルム11と、樹脂層(A)が最外層である多層フィルム12とを作製する。次に、得られた多層フィルム11と多層フィルム12とを交互にラミネートすることにより、接合部分の層厚化が抑制された、樹脂層(A)と樹脂層(B)とが交互に積層された積層体13を得ることができる。
【0041】
また、3種以上の樹脂により形成された3種以上の樹脂層を備える積層体を形成する場合においても、樹脂層の種類が増加する点を除いて、2種類の樹脂層の場合と同様に形成することができる。例えば、3種類の樹脂層(A)と樹脂層(B)と樹脂層(C)とを一定の周期で備える積層体を形成する場合、図5Bに示すように、先ず、3種類の樹脂層(A)と樹脂層(B)と樹脂層(C)とを一定の周期で備える2種類の多層フィルム21および22をフィードブロック法などによって作製する。次に、得られた多層フィルム21と多層フィルム22とを交互にラミネートすることにより、接合部分の層厚化が抑制された、樹脂層(A)と樹脂層(B)と樹脂層(C)とが一定の周期で積層された積層体23を得ることができる。
【0042】
また、2種類の樹脂層(B)および樹脂層(C)を交互に備える部分と、2種類の樹脂層(A)および樹脂層(C)を交互に備える部分とを一定の周期で備える、3種類の樹脂により形成された3種類の樹脂層を備える積層体を形成する場合、図5Cに示すように、先ず、2種類の樹脂層(B)および樹脂層(C)を一定の周期で備える多層フィルム31と、2種類の樹脂層(A)および樹脂層(C)を一定の周期で備える多層フィルム32とをそれぞれフィードブロック法などによって作製する。次に、得られた多層フィルム31と多層フィルム32とを交互にラミネートすることにより、接合部分の層厚化が抑制された、2種類の樹脂層(B)および樹脂層(C)を交互に備える部分と、2種類の樹脂層(A)および樹脂層(C)を交互に備える部分とを一定の周期で備える積層体33を得ることができる。
【0043】
多層フィルムをラミネートする方法としては、特に制限はないが、真空プレスを施しながら多層フィルムを熱圧着する方法が好ましい。これにより、熱圧着の際に、樹脂層に気泡が混入することを防ぐことができる。
【0044】
このようにして得られる積層体において、各樹脂層の厚さ(実測値、図5A、図5Bおよび図5Cにおいては、x軸方向の長さの実測値)は、所望の微細な凹凸構造における溝部や凸部の幅に応じて適宜設定することができるが、本発明の微細構造形成用母型の製造方法においては、50〜10000nmの範囲内にあることが好ましく、75〜9000nmの範囲内にあることがより好ましく、100〜8000nmの範囲内にあることが特に好ましい。このような厚さの樹脂層を備える積層体を使用することによって、比較的幅の広い(好ましくは50〜10000nm、より好ましくは75〜9000nm、特に好ましくは100〜8000nmの幅(実測値)を有する)溝部や凸部を有する凹凸構造を形成することが可能となる。また、各樹脂層の厚さの比についても、凹凸構造の凸部と溝部の幅の比に応じて適宜設定することができる。
【0045】
また、積層体の厚さ(積層方向の長さ(実測値、図5A、図5Bおよび図5Cにおいては、x軸方向の長さの実測値))は、所望の微細な凹凸構造のサイズに応じて適宜設定することができるが、本発明の微細構造形成用母型の製造方法においては、5mm以上であることが好ましく、10mm以上であることがより好ましく、30mm以上であることがさらに好ましく、100mm以上であることが特に好ましい。このような厚さの積層体を使用することによって、繋ぎ目のない、大面積の微細な凹凸構造を形成することができる。
【0046】
このような樹脂層の厚さや積層体の厚さは、使用するフィルムの厚さ、共押出や共射出の際の成形条件などを調整することによって制御することができる。また、得られた積層体に延伸処理を施すことによって、樹脂層の厚さや積層体の厚さを薄くすることも可能である。さらに、上述したように多層フィルムを熱圧着する場合には、熱圧着条件(特に、圧着温度と圧着時間)を調整することによって制御することも可能である。
【0047】
このようにして得られた積層体は、そのままの大きさでエッチング処理に供してもよいし、所定の大きさ(例えば、図5A、図5Bおよび図5Cにおいては、所定のz軸方向の長さ)に切断してエッチング処理に供してもよい。また、切断した積層体を接合して、より大面積の微細な凹凸構造を形成し得る積層体を形成してもよい。
【0048】
このような積層体を形成するための樹脂としては、上記例示した樹脂が挙げられ、これらの中から、エッチング速度が異なり且つ互いの接着性が良好な2種以上の樹脂を選択して使用する。このとき、樹脂の組み合わせを適宜選択することによって、凹凸構造の溝部の深さを容易に制御することができる。また、容易に積層体を形成できるという観点から、融点が異なる樹脂を組み合わせて使用することが好ましい。このような樹脂の組み合わせ(前者が高エッチング速度)としては、エッチング速度差が大きいという観点から、例えば、エチレン/ビニルアルコール共重合体とナイロン6、エチレン/ビニルアルコール共重合体とアイオノマー、ナイロン6とアイオノマーといった組み合わせが好ましく、エチレン/ビニルアルコール共重合体とナイロン6といった組み合わせがより好ましい。
【0049】
(平滑面形成工程)
通常、前記積層体形成工程で得られた積層体においては、各樹脂層の端面(積層方向に略平行な面)は乱雑な状態であり、そのままエッチング処理を施すと、凹凸構造の凸部の高さが不均一となり、高精度の微細な凹凸構造を備える母型を製造することは困難である。したがって、本発明の微細構造形成用母型の製造方法においては、前記積層体形成工程で得られた積層体の樹脂層の積層方向と略平行な外表面のうちの少なくとも1つの外表面を平滑にすることが好ましい。
【0050】
前記積層方向と略平行な外表面を平滑にする方法としては特に制限はないが、研磨処理が好ましい。なお、研磨処理条件については、樹脂層の種類に応じて適宜設定することができる。また、前記外表面の平滑性については、凸部の高さが所望の均一性を有する凹凸構造が形成できる程度であれば特に制限はない。
【0051】
(エッチング処理工程)
本発明にかかるエッチング処理工程は、前記積層体の外表面のうちの前記樹脂層の積層方向と略平行な外表面(好ましくは、前記平滑な外表面)にエッチング処理を施して、前記2種以上の樹脂層のうちの少なくとも1種の樹脂層の一部を除去する工程である。この工程においては、エッチング速度が速い樹脂からなる樹脂層の一部が選択的に除去される。これにより、除去された樹脂層のうちの1種の樹脂層(A)の端面の少なくとも一部を含み且つ長手方向が前記樹脂層(A)の端面の長手方向と略平行である底面を有する溝部を備える凹凸構造が形成される。
【0052】
また、前記エッチング処理においては、前記樹脂層(A)の一部を除去することにより、前記溝部の底面全体を前記樹脂層(A)の端面の少なくとも一部により形成させることが好ましく、前記溝部の底面の幅が前記樹脂層(A)の厚さと略同一となるように前記樹脂層(A)の一部を除去することがより好ましい。さらに、前記樹脂層(A)としては、前記2種以上の樹脂のうちのエッチング速度が最も速い樹脂により形成されたものが好ましい。
【0053】
図6Aおよび図7Aは、2種類の樹脂層(A)と樹脂層(B)とを交互に備える積層体にエッチング処理を施す方法を模式的に示した図である。具体的には、樹脂層の積層方向(x軸方向)に略平行な外表面のうちの1つの外表面(上面のxy平面)に対して、図6Aは、エッチング処理を施す前の積層体13の断面図であり、図7Aは、エッチング処理を施した後の微細構造形成用母型14の断面図である。なお、図6Aおよび図7A中のx軸方向は樹脂層の積層方向を示す。
【0054】
図6Aに示すように、積層体13の上面のxy平面にエッチング処理を施すと、エッチング速度が速い樹脂により形成された樹脂層(A)の一部が選択的に除去され、図7Aに示すように、樹脂層(A)の端面を底面とする溝部および樹脂層(B)の端面を上面とする凸部を有する凹凸構造が積層体の表面に形成され、目的とする微細構造形成用母型14を得ることができる。図5A、図6Aおよび図7Aに示した製造方法は、図1に示した微細構造形成用母型の製造方法であるが、本発明の微細構造形成用母型の製造方法はこれに限定されるものではなく、例えば、図2〜3に記載の微細構造形成用母型も同様にして製造することができる。
【0055】
また、3種以上の樹脂により形成された3種以上の樹脂層を備える積層体にエッチング処理を施す場合も、樹脂層の種類が増加する点を除いて、2種類の樹脂層の場合と同様にエッチング処理を施すことができる。例えば、3種類の樹脂層(A)と樹脂層(B)と樹脂層(C)とを一定の周期で備える積層体にエッチング処理を施す場合、図6Bに示すように、積層体23の上面のxy平面にエッチング処理を施すと、樹脂層(B)を形成する樹脂に比べてエッチング速度が速い樹脂により形成された樹脂層(A)および樹脂(C)の一部が選択的に除去され、図7Bに示すように、樹脂層(A)の端面を底面とする溝部、樹脂層(C)の端面を底面とする溝部および樹脂層(B)の端面を上面とする凸部を有する凹凸構造が積層体の表面に形成され、目的とする微細構造形成用母型24を得ることができる。このとき、樹脂層(A)を形成する樹脂が、樹脂層(C)を形成する樹脂に比べてエッチング速度が速い樹脂である場合には、図7Bに示すように、深さが異なる溝部が形成される。図5B、図6Bおよび図7Bに示した製造方法は、図4に示した微細構造形成用母型の製造方法であるが、本発明の微細構造形成用母型の製造方法はこれに限定されるものではない。
【0056】
また、2種類の樹脂層(B)および樹脂層(C)を交互に備える部分と、2種類の樹脂層(A)および樹脂層(C)を交互に備える部分とを一定の周期で備える、3種類の樹脂により形成された3種類の樹脂層を備える積層体にエッチング処理を施す場合、図6Cに示すように、積層体33の上面のxy平面にエッチング処理を施すと、樹脂層(B)を形成する樹脂に比べてエッチング速度が速い樹脂により形成された樹脂層(A)および樹脂(C)の一部が選択的に除去され、図7Cに示すように、樹脂層(A)の端面を底面とする溝部、樹脂層(C)の端面を底面とする溝部および樹脂層(B)の端面を上面とする凸部を有する凹凸構造が積層体の表面に形成され、目的とする微細構造形成用母型34を得ることができる。このとき、樹脂層(A)を形成する樹脂が、樹脂層(C)を形成する樹脂に比べてエッチング速度が速い樹脂である場合には、図7Cに示すように、深さが異なる溝部が形成される。特に、2種類の樹脂層(B)および樹脂層(C)を交互に備える部分と2種類の樹脂層(A)および樹脂層(C)を交互に備える部分との境界部においては、階段状の凹凸構造が形成される。
【0057】
このようにして形成される凹凸構造の溝部および凸部の幅は、樹脂層の厚さを調整することによって制御することができる。また、溝部の深さ(凸部の高さ)は、樹脂層を構成する樹脂のエッチング速度に応じてエッチング処理条件(特に、エッチング処理時間)を調整することによって制御することができる。
【0058】
本発明にかかるエッチング処理方法としては、前記2種以上の樹脂層のうちの少なくとも1種の樹脂層の一部を除去して凹凸構造を形成できる方法であれば特に制限はなく、例えば、反応性ガスエッチング、ガスエッチング、反応性イオンエッチング、イオンエッチング、反応性イオンビームエッチング、イオンビームエッチング、反応性レーザービームエッチングなどのドライエッチング処理、ディップ式ウェットエッチング、スプレー式ウェットエッチング、スピン式ウェットエッチングなどのウェットエッチング処理が挙げられる。このようなエッチング処理方法のうち、溝部の底面および凸部の上面に対して垂直な溝部の内壁(凸部の側面)を形成しやすいという観点から、イオンエッチング処理が好ましく、バレル式のプラズマエッチング処理がより好ましい。なお、エッチング処理条件については、樹脂層の種類に応じて適宜設定することができる。
【0059】
以上、本発明の微細構造形成用母型およびその製造方法の好適な実施態様を、溝部および凸部の長手方向の形状が直線状であり、溝部の断面形状がコの字型(溝部の底面と溝部の内壁とが垂直構造)であり、凸部の断面形状が逆コの字型(凸部の上面と凸部の側面とが垂直構造)である凹凸構造を例として説明したが、本発明の微細構造形成用母型は、このような凹凸構造のものに限定されるものではない。例えば、凹凸構造を形成する溝部および凸部の長手方向の形状としては、ラインアンドスペース型構造のような直線状(図8A)の他、円弧状(図8B)、S字状(図8C)、円状(図8D)などの曲線状であってもよい。また、溝部の断面形状としては、ラインアンドスペース型構造のようなコの字型(図7A)の他、U字型(溝部の底面が曲面(一部が平面になっているものも含む)、図9B)、V字型(図9C)などであってもよい。さらに、凸部の断面形状としては、ラインアンドスペース型構造のような逆コの字型(図7A)の他、逆U字型(凸部の上面が曲面(一部が平面になっているものも含む)、図10A)、逆V字型(図10B)などであってもよい。また、本発明にかかる凹凸構造は、このような溝部および凸部の長手方向の形状および断面形状を適宜組み合わせたものであってもよい。
【0060】
このような溝部および凸部の長手方向の形状が曲線状である凹凸構造は、所望の曲線状(例えば、円弧状、S字状、円状)の積層構造となるように樹脂層を積層した積層体や、平板状の樹脂層からなる積層体を所望の曲線状(例えば、円弧状、S字状、円状)の積層構造となるように変形した積層体を用いて、上記と同様に、前記積層体の樹脂層の積層方向と略平行な外表面にエッチング処理を施すことによって形成することができる。また、溝部の断面形状がU字型やV字型である凹凸構造や凸部の断面形状が逆U字型や逆V字型凹凸構造は、積層体の樹脂層の積層方向と略平行な外表面に、溝部や凸部の断面形状が所望の形状となるようにエッチング処理を施すことによって形成することができる。
【実施例】
【0061】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0062】
(厚さ測定)
多層フィルムの厚さは、デジタルマイクロメータ((株)ミツトヨ製「MDQ−30」)を用いて測定した。また、樹脂層の厚さについては、樹脂層の端面を共焦点レーザー顕微鏡((株)キーエンス製「VK−9710」)を用いて観察し、得られた画像に基づいて、画像計測ソフト(Media Cybernetics社製「Image−Pro PLUS」)を用いて測定した。
【0063】
(実施例1)
<積層体の作製>
ナイロン6(宇部興産(株)製「ウベナイロン1022B」、ガラス転移温度50℃、融点220℃、以下、「Ny6」と略す)とエチレン/ビニルアルコール共重合体((株)クラレ「エバールJ171B」、ガラス転移温度56℃、融点183℃、以下、「EvOH」と略す)とを押出機を用いてフィードブロック法により多層化し、最外層がNy6層である2種17層の多層フィルムAおよび最外層がEvOH層である2種17層の多層フィルムBをそれぞれ作製した。得られた多層フィルムAおよびBについては、それぞれに延伸処理を施して厚さを100μmに調整した。延伸処理後の多層フィルムAおよびBについて、Ny6層およびEvOH層の厚さをそれぞれ31箇所測定したところ、Ny6層の厚さ(実測値)は2970〜8580nmであり、EvOH層の厚さ(実測値)は3110〜7920nmであった。また、Ny6層の厚さの算術平均値は5790nmであり、EvOH層の厚さの算術平均値は4670nmであった。
【0064】
前記多層フィルムA(38枚)と前記多層フィルムB(39枚)とを交互に積層し、真空加圧装置(明昌機工(株)製「NM−0401」)を用いて、圧着温度105℃、圧着時間360秒、圧着圧力0.75MPaの条件で熱圧着することにより、最外層がEvOH層である2種1309層の積層体を得た。なお、熱圧着の際、圧着温度まで加熱しながら、真空度50Torrで真空プレスすることにより脱気処理を施した。
【0065】
<研磨処理>
得られた積層体の積層方向と平行な外表面の1つに、自動研磨機(Struers社製「Tegra−Force−5」)および#800〜#4000の研磨紙を用いて、研磨速度400rpmで、研磨処理を施して、平滑な外表面を形成させた。研磨後の積層体について、層厚の測定箇所を無作為に3箇所抽出し、1箇所当たり交互に連続する17層のNy6層と17層のEvOH層の全て(34層)の層厚を測定した。表1には、Ny6層(17層×3箇所)とEvOH層(17層×3箇所)の層厚(実測値)をその範囲で示す。また、隣接するNy6層とEvOH層との層厚比(実測値の比)もその範囲で示す。なお、表1には、層厚の算術平均値および層厚比の算術平均値も示した。
【0066】
(実施例2〜8)
圧着温度および圧着時間を表1に示す温度および時間に変更した以外は実施例1と同様にして最外層がEvOH層である2種1309層の積層体を作製した。この積層体に、実施例1と同様にして研磨処理を施し、平滑な外表面を形成させた。研磨後の積層体について、実施例1と同様にしてNy6層およびEvOH層の厚さを測定した。表1には、層厚の実測値および層厚(実測値)の比、並びに層厚および層厚比の算術平均値を示す。
【0067】
【表1】
【0068】
表1に示した結果から明らかなように、積層体作製時の真空プレス条件を調整することによって、Ny6層とEvOH層の厚さ、およびこれらの層厚比を制御できることがわかった。
【0069】
<プラズマエッチング処理>
実施例1で得られた積層体の研磨処理を施した外表面に、プラズマクリーナー(Harrick Plasma社製「PDC−001」)を用いてプラズマエッチング処理を施した。このプラズマエッチング処理は、内部圧力を1600Torrに調整した酸素とアルゴン(体積比=1:1)の混合ガス中、RF出力29.6W、プラズマ照射時間60分の条件で行なった。
【0070】
積層体のプラズマエッチング処理を施した外表面にポリジメチルシロキサン(東レダウコーニング製)を流し込み、型取りしてレプリカを作製し、このレプリカを電界放射型走査電子顕微鏡(日本電子(株)製「JSM−7401F」)を用いて観察した。その結果を図11に示す。図11に示した結果から明らかなように、Ny6層とEvOH層との間で段差が認められ、プラズマエッチング処理を施した積層体においては、凸部がNy6層からなり、溝部の底面がEvOH層の端面からなる凹凸構造が形成されていることが確認された。このような凹凸構造は、Ny6とEvOHのエッチング速度の違いによって形成される。
【0071】
また、溝部の内壁(凸部の側面)は、溝部の底面および凸部の上面に対して垂直であった。このことから、Ny6層とEvOH層とを備える積層体の所定の外表面にプラズマエッチングを施すことによって、垂直な側壁を有する直線状の凹凸構造を有する(ラインアンドスペース型)樹脂母型(樹脂層の積層方向長さ:7mm×溝部の底面の長手方向長さ:10mm)が得られることが確認された。さらに、共焦点レーザー顕微鏡を用いて、溝部の幅および深さ、ならびに凸部の幅を測定した。具体的には、測定箇所を無作為に3箇所抽出し、1箇所当たり交互に連続する17箇所の溝部と17箇所の凸部(合計34箇所)について測定した。その結果、溝部(17箇所×3箇所)の幅(実測値)は2540〜6870nmであり、溝部(17箇所×3箇所)の深さ(実測値)は922〜1670nmであり、凸部(17箇所×3箇所)の幅(実測値)は1520〜7890nmであった。また、隣接する凸部と溝部の幅の比(凸部/溝部、実測値の比)は0.54〜2.55であった。なお、溝部の幅の算術平均値は4380nmであり、溝部の深さの算術平均値は1450nmであり、凸部の幅の算術平均値は5560nmであり、隣接する凸部と溝部の幅の比(凸部/溝部)の算術平均値は1.29であった。
【0072】
これらの結果から明らかなように、実施例1で得られた積層体のNy6層とEvOH層の厚さが、それぞれ凹凸構造の溝部と凸部の幅にほぼ一致しており、2種以上の樹脂層を備える積層体の積層方向と平行な外表面にエッチング処理を施すことによって、積層体の各樹脂層の厚さに対応した幅を有する溝部と凸部を備える凹凸構造を形成できることが確認された。また、形成可能な溝部や凸部の幅は広範囲にわたることがわかった。
【0073】
(実施例9)
<積層体の作製>
実施例1と同様にして多層フィルムAおよび多層フィルムBを作製し、それぞれ延伸処理を施して厚さを100μmに調整した。前記多層フィルムA(250枚)と前記多層フィルムB(251枚)とを交互に積層し、真空加圧装置(北川精機(株)製「KVHC−PRESS」)を用いて、圧着温度を95℃、圧着時間を2時間、圧着圧力を500MPaの条件で熱圧着することにより、最外層がEvOH層である2種8500層の積層体を得た。なお、熱圧着の際、圧着温度まで加熱しながら、真空度10Torrで真空プレスすることにより脱気処理を施した。
【0074】
<研磨処理>
得られた積層体に、実施例1と同様にして研磨処理を施し、平滑な外表面を形成させた。研磨後の積層体について、実施例1と同様にしてNy6層およびEvOH層の厚さを測定した。表2には、層厚の実測値および層厚(実測値)の比、並びに層厚および層厚比の算術平均値を示す。
【0075】
【表2】
【0076】
<プラズマエッチング処理>
得られた積層体に、実施例1と同様にしてプラズマエッチング処理を施し、垂直な側壁を有する直線状の凹凸構造を有する(ラインアンドスペース型)樹脂母型(樹脂層の積層方向長さ:39mm×溝部の底面の長手方向長さ:55mm)を得た。この樹脂母型の溝部の幅および深さ、ならびに凸部の幅を、共焦点レーザー顕微鏡を用いて実施例1と同様にして測定した。その結果、溝部の幅(実測値)は1146〜2812nmであり、溝部の深さ(実測値)は1438〜1941nmであり、凸部の幅(実測値)は7132〜9042nmであった。なお、溝部の幅および深さ、ならびに凸部の幅の算術平均値は、それぞれ2090nm、1677nm、7361nmであった。
【0077】
これらの結果から明らかなように、実施例9で得られた積層体のNy6層とEvOH層の厚さが、それぞれ凹凸構造の溝部と凸部の幅にほぼ一致しており、交互に積層する多層フィルムの枚数を増加して積層方向と平行な外表面の面積が増大した積層体を形成し、前記外表面にエッチング処理を施すことによって、積層体の各樹脂層の厚さに対応した幅を有する溝部と凸部を備える大面積の微細な凹凸構造を有する樹脂母型を形成できることが確認された。したがって、このような大面積の微細な凹凸構造を有する樹脂母型が形成できたことから、大面積の微細な凹凸構造を有する各種部材をナノインプリントで製造できると考えられる。
【0078】
(実施例10)
<積層体の作製>
実施例1と同様にして、最外層がEvOH層である2種(Ny6、EvOH)17層の多層フィルムBを作製し、延伸処理を施して厚さを100μmに調整した。また、Ny6とエチレン−メタクリル酸共重合体系樹脂(三井・デュポン
ポリケミカル(株)、ガラス転移温度43〜49℃、以下、「ION」と略す)とを押出機を用いてフィードブロック法により多層化し、最外層がNy6層である2種(Ny6、ION)17層の多層フィルムCを作製した。得られた多層フィルムCについては、実施例1と同様に延伸処理を施して厚さを100μmに調整した。延伸処理後の多層フィルムCについて、Ny6層およびION層の厚さをそれぞれ31箇所測定したところ、Ny6層の厚さ(実測値)は2970〜8580nm、ION層の厚さ(実測値)は2129〜4035nmであった。また、Ny6層の厚さの算術平均値は5790nmであり、ION層の厚さの算術平均値は2657nmであった。
【0079】
前記多層フィルムB(51枚)と前記多層フィルムC(50枚)とを交互に積層し、真空加圧装置による圧着時間を360秒に変更した以外は実施例9と同様にして、EvOH層とNy6層とが交互に配置された部分(51枚)と、Ny6層とION層とが交互に配置された部分(50枚)とが、さらに交互に配置されており、最外層がEvOH層である3種1717層の積層体を得た。
【0080】
<研磨処理>
得られた積層体に、実施例1と同様にして研磨処理を施し、平滑な外表面を形成させた。研磨後の積層体について、実施例1と同様にしてNy6層、EvOH層およびION層の厚さを測定した。表3には、層厚の実測値および層厚(実測値)の比、並びに層厚および層厚比の算術平均値を示す。
【0081】
【表3】
【0082】
<プラズマエッチング処理>
得られた積層体に、実施例1と同様にしてプラズマエッチング処理を施して直線状の凹凸構造を有する(ラインアンドスペース型)樹脂母型(樹脂層の積層方向長さ:7mm×溝部の底面の長手方向長さ:55mm)を得た。この樹脂母型のプラズマエッチング処理を施した外表面にポリジメチルシロキサン(東レダウコーニング製)を流し込み、型取りしてレプリカを作製した。このレプリカのうち、前記樹脂母型の多層フィルムBと多層フィルムCとの境界部に相当する部分を、電界放射型走査電子顕微鏡(日本電子(株)製「JSM−7401F」)を用いて観察した。その結果を図12に示す。図12に示した結果から明らかなように、Ny6層とEvOH層との間(写真の右半分)およびNy6層とION層(写真の左半分)でそれぞれ段差が認められ、前記微細構造形成用樹脂母型においては、Ny6層の端面を基準に、溝部の底面がEvOH層の端面からなり、凸部がION層からなる階段状の微細凹凸構造が、多層フィルムBと多層フィルムCとの境界部で形成されていることが確認された。このような階段状の微細凹凸構造は、Ny6とEvOHとIONとのエッチング速度の違いによって形成される。
【0083】
また、共焦点レーザー顕微鏡を用いて、前記微細構造形成用母型の多層フィルムBと多層フィルムCとの境界部を観察した。その結果を図13に示す。図13に示した結果から明らかなように、多層フィルムBと多層フィルムCとの境界部で階段状の微細凹凸構造が形成されていることが確認された。なお、図13中の凸部はION層からなる部分であり、溝部の底面はEvOH層の端面であり、残りの部分はNy6層からなる部分である。さらに、共焦点レーザー顕微鏡を用いて実施例1と同様にして、溝部の幅(EvOH層の端面の幅)、凸部の幅(ION層からなる部分の幅)、および溝部と凸部との間隔(Ny6層からなる部分の幅)を測定した。その結果、溝部の幅(実測値)は1133〜7563nmであり、凸部の幅(実測値)は1150〜1534nmであり、溝部と凸部との間隔(実測値)は1534〜7307nmであった。なお、溝部および凸部の幅、ならびに溝部と凸部との間隔の算術平均値は、それぞれ4597nm、1406nm、3205nmであった。また、溝部の深さ(実測値)は1878〜2406nmであり、凸部の高さは257〜472nmであった。なお、溝部の深さおよび凸部の高さの算術平均値は、それぞれ2136nm、345nmであった。
【0084】
これらの結果から明らかなように、エッチング速度が異なる3種以上の樹脂層を備える積層体の積層方向と平行な外表面にエッチング処理を施すことによって、深さが異なる溝部や高さが異なる凸部を備える凹凸構造を形成できることが確認された。特に、3種類以上の樹脂層をエッチング速度が順に配置した積層体の積層方向と平行な外表面にエッチング処理を施すことによって、階段状の凹凸構造を形成できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0085】
以上説明したように、本発明によれば、溝部の幅が100nm以下の微細な凹凸構造だけでなく、さらに広い幅(好ましくは100〜10000nm)の溝部を有する微細な凹凸構造を、繋ぎ目なく、大面積で形成することができる母型を得ることができる。
【0086】
したがって、本発明の微細構造形成用母型に、電鋳などを施すことによって、上記のような微細な凹凸構造を繋ぎ目なく、大面積で備えるモールドを製造することができ、このモールドを用いることによって、導光板、偏光板、偏光素子、カラーフィルター、拡散板、回折格子、反射防止膜といった大面積の微細な凹凸構造を備える光学部材、バイオチップなどを、ナノインプリントによって高精度で製造することが可能となる。
【符号の説明】
【0087】
1:樹脂層(A)の端面全体
1a、1b:樹脂層(A)の端面の一部
2:樹脂層(B)の端面全体
2a、2b:樹脂層(B)の端面の一部
3:樹脂層(B)のyz平面の一部
4:樹脂層(A)のyz平面の一部
5:樹脂層(C)の端面全体
6:溝部の底面
7:凸部の上面
11、12、21、22、31、32:多層フィルム
13、23、33:積層体
14、24、34:微細構造形成用母型
A:樹脂層(A)
B:樹脂層(B)
C:樹脂層(C)
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細構造形成用母型およびその製造方法に関し、より詳しくは、ナノインプリント用モールドなど、ラインアンドスペース構造などの微細な凹凸構造を表面に備えるモールドを作製するための母型およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ラインアンドスペース構造などの微細な凹凸構造を表面に形成する技術は、光学素子、光学フィルム、記録メディア、ディスプレイといった光学部材、半導体素子、バイオチップなど、様々な分野で注目されている。従来、このような微細凹凸構造は、フォトリソグラフィ技術を利用して形成されていたが、フォトリソグラフィ技術は、装置が高価であり、また、微細凹凸構造を形成できる面積が小さいため、その利用範囲はMicro Electro Mechanical Systems(MEMS)などの小型で付加価値の高い用途に限られていた。
【0003】
近年、このフォトリソグラフィ技術に比べて低コストで微細凹凸構造を形成できる技術として、ナノインプリント技術が注目されている。このナノインプリント技術は、表面に微細凹凸構造を備えるモールドを基板上の樹脂膜に押し付けることによって、モールド表面の微細凹凸構造を樹脂膜表面に転写する技術であり、面積が比較的大きい微細凹凸構造を形成できると言われている。
【0004】
このようなナノインプリントに用いられるモールドは、例えば、特開2005−186189号公報(特許文献1)や特開2010−5723号公報(特許文献2)に記載の超精密切削工具を用いてNi−P基板などの基材表面に直接切削加工を施して微細凹凸構造を形成することにより作製することができる。また、切削加工を施して形成した微細凹凸構造を備える母型を用いて転写技術により作製することも可能である。しかしながら、この切削加工は、幅が数μm程度の溝を形成する場合には有効であるが、数百nm以下の幅の溝を形成することは困難であった。
【0005】
このため、溝幅が数百nm以下の微細凹凸構造を備えるモールドや母型を作製する場合には、前述のリソグラフィ技術を利用する必要があり、低コスト化が十分に図られているとは言えなかった。特に、幅が50nm以下の溝を形成する場合には、ArF液浸露光やダブルパターニング、極紫外線(EUV)露光といった高コストの露光方法を利用する必要があり、モールドや母型の製造コストがさらに高くなるという問題があった。
【0006】
また、上記のように、切削加工やリソグラフィ技術によりモールドや母型の表面に直接微細凹凸構造を形成する場合、微細凹凸構造を形成できる領域は装置の可動範囲に制限される。このため、それより大面積の微細凹凸構造を形成する場合には、切削加工やリソグラフィ技術により作製された小面積の微細凹凸構造を備えるモールドや母型を繋ぎ合わせる必要があり(月刊ディスプレイ、テクノタイムズ社、2009年1月号、71−74頁(非特許文献1)参照)、従来の方法では、モールドを繋ぎ合わせる技術についても高い精度が要求されていた。
【0007】
一方、特開2006−159815号公報(特許文献3)および特開2010−56256号公報(特許文献4)には、ブロックコポリマーのミクロ相分離を利用して微細凹凸構造を形成する方法が開示されている。特に、特許文献4には、ブロックコポリマーのミクロ相分離を利用して形成した微細凹凸構造を転写する方法も開示されている。しかしながら、この方法では、微細凹凸構造がブロックコポリマーのポリマー長およびミクロ相分離構造に依存するため、溝幅が100nm以下の微細凹凸構造は形成できるものの、溝幅が数百nmの微細凹凸構造を形成することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−186189号公報
【特許文献2】特開2010−5723号公報
【特許文献3】特開2006−159815号公報
【特許文献4】特開2010−56256号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】宮内昭浩ら、「シートナノインプリントによる微細構造の形成」、月刊ディスプレイ、テクノタイムズ社、2009年1月号、71−74頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、溝部の幅が100nm以下の微細凹凸構造だけでなく、さらに広い幅(好ましくは100〜10000nm)の溝部を有する微細凹凸構造も、モールドの表面に形成することができる微細構造形成用母型およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、2種以上の樹脂により形成された2種以上の樹脂層を備える積層体の端面(樹脂層の積層方向と略平行な面)にエッチング処理を施すことによって、前記2種以上の樹脂層のうちの少なくとも1種の樹脂層の一部が除去され、この樹脂層の厚さに対応する幅を有する溝部が積層体の端面に形成されること、並びに、除去される樹脂層の厚さを調整することによって溝部の幅を制御できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明の微細構造形成用母型は、2種以上の樹脂により形成された2種以上の樹脂層を備える積層体からなり、該積層体の外表面のうちの前記樹脂層の積層方向と略平行な外表面に、溝部を備える凹凸構造を有し、前記溝部の底面が、前記2種以上の樹脂層のうちの1種の樹脂層(A)の端面の少なくとも一部を含むものであり、前記溝部の底面の長手方向が前記樹脂層(A)の端面の長手方向と略平行であることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の微細構造形成用母型の製造方法は、2種以上の樹脂を用いて2種以上の樹脂層を備える積層体を形成する工程と、前記積層体の外表面のうちの前記樹脂層の積層方向と略平行な外表面にエッチング処理を施して前記2種以上の樹脂層のうちの少なくとも1種の樹脂層の一部を除去することにより、除去した樹脂層のうちの1種の樹脂層(A)の端面の少なくとも一部を含み且つ長手方向が前記樹脂層(A)の端面の長手方向と略平行である底面を有する溝部を備える凹凸構造を形成する工程と、を含むことを特徴とする方法である。
【0014】
本発明において、前記樹脂層(A)としては、前記2種以上の樹脂のうちのエッチング速度が最も速い樹脂により形成された樹脂層が好ましい。
【0015】
本発明の微細構造形成用母型の製造方法において、厚さ(実測値)が50〜10000nmの範囲内にある樹脂層の前記外表面に前記エッチング処理を施すことによって、幅(実測値)が50〜10000nmの範囲内にある溝部を備える凹凸構造を有する本発明の微細構造形成用母型を作製することができる。また、積層方向の長さ(実測値)が10mm以上の積層体の前記外表面に前記エッチング処理を施すことによって、積層方向の長さ(実測値)が10mm以上の凹凸構造を有する本発明の微細構造形成用母型を従来よりも簡便に作製することができる。
【0016】
また、本発明の微細構造形成用母型の製造方法においては、前記エッチング処理を施して前記樹脂層(A)の一部を除去することによって、前記溝部の底面全体を前記樹脂層(A)の端面の少なくとも一部により形成させることが好ましく、前記溝部の底面の幅が前記樹脂層(A)の厚さと略同一となるように前記樹脂層(A)の一部を除去することが好ましい。これにより、前記溝部の底面全体が前記樹脂層(A)の端面の少なくとも一部である本発明の微細構造形成用母型(好ましくは、前記溝部の底面の幅が前記樹脂層(A)の厚さと略同一である本発明の微細構造形成用母型)を作製することができる。
【0017】
なお、本発明において、「樹脂層の端面」とは、樹脂層の面のうち、樹脂層の積層方向と略平行な面をいう。また、「溝部の底面の幅」および「樹脂層の厚さ」とは、それぞれ溝部の底面および樹脂層の「積層方向の長さ」をいう。
【0018】
また、本発明において、樹脂のエッチング速度の違いは、選択した前記2種以上の樹脂の端面を切りそろえ、その端面をエッチング処理した後、共焦点レーザー顕微鏡を用いて樹脂の相対エッチング深さを測定することによって判断することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、溝部の幅が100nm以下の微細凹凸構造だけでなく、さらに広い幅(好ましくは100〜10000nm)の溝部を有する微細凹凸構造も、モールドの表面に形成することが可能な微細構造形成用母型を得ることができる。また、小面積の微細凹凸構造を有する微細構造形成用母型だけでなく、大面積の微細凹凸構造を有する微細構造形成用母型も得ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の微細構造形成用母型の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明の微細構造形成用母型の他の一例を示す斜視図である。
【図3】本発明の微細構造形成用母型のさらに他の一例を示す斜視図である。
【図4】本発明の微細構造形成用母型のさらに他の一例を示す斜視図である。
【図5A】本発明の微細構造形成用母型の製造方法における積層体形成工程の一例を模式的に示す図である。
【図5B】本発明の微細構造形成用母型の製造方法における積層体形成工程の他の一例を模式的に示す図である。
【図5C】本発明の微細構造形成用母型の製造方法における積層体形成工程の更に他の一例を模式的に示す図である。
【図6A】本発明の微細構造形成用母型の製造方法におけるエッチング処理工程一例を模式的に示す図である。
【図6B】本発明の微細構造形成用母型の製造方法におけるエッチング処理工程の他の一例を模式的に示す図である。
【図6C】本発明の微細構造形成用母型の製造方法におけるエッチング処理工程の更に他の一例を模式的に示す図である。
【図7A】本発明の微細構造形成用母型の一例を示す断面図である。
【図7B】本発明の微細構造形成用母型の他の一例を示す断面図である。
【図7C】本発明の微細構造形成用母型の更に他の一例を示す断面図である。
【図8A】溝部および凸部の長手方向の形状が直線状である凹凸構造を有する本発明の微細構造形成用母型の上面図である。
【図8B】溝部および凸部の長手方向の形状が円弧状である凹凸構造を有する本発明の微細構造形成用母型の上面図である。
【図8C】溝部および凸部の長手方向の形状がS字状である凹凸構造を有する本発明の微細構造形成用母型の上面図である。
【図8D】溝部および凸部の長手方向の形状が円状である凹凸構造を有する本発明の微細構造形成用母型の上面図である。
【図9A】溝部の断面形状がU字型である凹凸構造を有する本発明の微細構造形成用母型の断面図である。
【図9B】溝部の断面形状がV字型である凹凸構造を有する本発明の微細構造形成用母型の断面図である。
【図10A】凸部の断面形状が逆U字型である凹凸構造を有する本発明の微細構造形成用母型の断面図である。
【図10B】凸部の断面形状が逆V字型である凹凸構造を有する本発明の微細構造形成用母型の断面図である。
【図11】実施例1で得られた微細構造形成用母型によって形成されたレプリカの微細凹凸構造を備える外表面を示す電子顕微鏡写真である。
【図12】実施例10で得られた微細構造形成用母型によって形成されたレプリカの微細凹凸構造を備える外表面を示す電子顕微鏡写真である。
【図13】実施例10で得られた微細構造形成用母型の多層フィルムBと多層フィルムCとの境界部を共焦点レーザー顕微鏡により観察した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明するが、本発明は前記図面に限定されるものではない。なお、以下の説明および図面中、同一または相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0022】
先ず、本発明の微細構造形成用母型について説明する。本発明の微細構造形成用母型は、2種以上の樹脂により形成された2種以上の樹脂層を備える積層体からなり、この積層体の外表面のうちの前記樹脂層の積層方向と略平行な外表面に、溝部を備える凹凸構造を有するものである。そして、本発明の微細構造形成用母型において、前記溝部の底面は、前記2種以上の樹脂層のうちの1種の樹脂層(A)の端面の少なくとも一部を含むものであり、前記溝部の底面の長手方向は、前記樹脂層(A)の端面の長手方向と略平行である。
【0023】
また、本発明の微細構造形成用母型においては、前記溝部の底面全体が、前記樹脂層(A)の端面の少なくとも一部であることが好ましく、前記溝部の底面の幅が、前記樹脂層(A)の厚さと略同一であることがより好ましい。
【0024】
以下、本発明の微細構造形成用母型について、図1〜3に沿って、2種類の樹脂により形成された2種類の樹脂層(A)および(B)を備える積層体からなる母型を例にさらに詳細に説明する。
【0025】
図1〜3に示した微細構造形成用母型において、樹脂層の積層方向、溝部の底面の長手方向および溝部の深さ方向は互いに直交しており、これらをそれぞれx軸方向、y軸方向、z軸方向とする。この場合、上下2面のxy平面と前後2面のxz平面の合計4面が、本発明にかかる「樹脂層の積層方向と略平行な外表面」に該当する。これらのうち、図1〜3に示した微細構造形成用母型においては、上面のxy平面に、溝部を備える凹凸構造が形成されているが、本発明の微細構造形成用母型は、これに限定されるものではない。
【0026】
また、図1〜3に示すように、前記溝部の底面は、2種類の樹脂層のうちの樹脂層(A)の端面の少なくとも一部を含むものである。さらに、前記樹脂層(A)の端面の長手方向は、前記溝部の底面の長手方向、すなわち、y軸方向と略平行である。
【0027】
特に、図1に示した微細構造形成用母型においては、前記溝部の底面全体が樹脂層(A)の端面全体1により形成されたものであり、前記溝部の底面の幅(x軸方向の長さ)は前記樹脂層(A)の厚さ(x軸方向の長さ)と略同一である。また、凸部の上面全体が樹脂層(B)の端面全体2により形成されたものであり、前記凸部の上面の幅(x軸方向の長さ)は前記樹脂層(B)の厚さ(x軸方向の長さ)と略同一である。さらに、溝部の内壁(凸部の側壁)は樹脂層(B)のyz平面の一部3により形成されている。
【0028】
また、図2に示した微細構造形成用母型においては、前記溝部の底面全体が樹脂層(A)の端面の一部1aにより形成されたものであり、前記溝部の底面の幅(x軸方向の長さ)は前記樹脂層(A)の厚さ(x軸方向の長さ)より小さくなっている。一方、凸部の上面については、その一部が樹脂層(B)の端面全体2により形成されたものであり、残りの部分は樹脂層(A)の端面の一部1bにより形成されたものであり、前記凸部の上面の幅(x軸方向の長さ)が前記樹脂層(B)の厚さ(x軸方向の長さ)より大きくなっている。また、溝部の内壁(凸部の側壁)は樹脂層(A)のyz平面の一部4により形成されている。
【0029】
さらに、図3に示した微細構造形成用母型においては、前記溝部の底面のうちの一部が樹脂層(A)の端面全体1により形成され、残りの部分が樹脂層(B)の端面の一部2aにより形成されたものであり、前記溝部の底面の幅(x軸方向の長さ)が前記樹脂層(A)の厚さ(x軸方向の長さ)より大きくなっている。一方、凸部の上面については、その全体が樹脂層(B)の端面の一部2bにより形成されたものであり、前記凸部の上面の幅(x軸方向の長さ)が前記樹脂層(B)の厚さ(x軸方向の長さ)より小さくなっている。また、溝部の内壁(凸部の側壁)は樹脂層(B)のyz平面の一部3により形成されている。
【0030】
図1〜3に示した微細構造形成用母型のうち、溝部の底面および凸部の上面に対して垂直な溝部の内壁(凸部の側壁)が形成されやすいという観点から、図1〜2に示した微細構造形成用母型が好ましく、図1に示した微細構造形成用母型がより好ましい。
【0031】
以上、本発明の微細構造形成用母型について、2種類の樹脂により形成された2種類の樹脂層(A)および(B)を備える積層体からなる母型を例に詳細に説明したが、本発明の微細構造形成用母型はこれに限定されるものではなく、3種以上の樹脂により形成された3種以上の樹脂層を備える積層体からなる母型も、樹脂層の種類が増加する点を除いて、その構成は2種類の樹脂層の場合と同様である。
【0032】
例えば、図4には、3種類の樹脂層(A)、(B)および(C)を備える積層体からなる微細構造形成用母型の斜視図を示す。この微細構造形成用母型においては、底面全体が樹脂層(A)の端面全体1により形成された溝部に加えて、底面全体が樹脂層(C)の端面全体5により形成された溝部を備えているが、この点を除いて、溝部および凸部の構成などは、図1に示した2種類の樹脂層(A)および(B)を備える積層体からなる微細構造形成用母型と同様である。
【0033】
本発明の微細構造形成用母型において、前記溝部の幅(実測値、図1〜4においては、x軸方向の長さの実測値)が50〜10000nmの範囲内にあることが好ましく、75〜9000nmの範囲内にあることがより好ましく、100〜8000nmの範囲内にあることが特に好ましい。また、前記凸部の幅(実測値、図1〜4においては、x軸方向の長さの実測値)としては特に制限はないが、50〜10000nmの範囲内にあることが好ましく、75〜9000nmの範囲内にあることがより好ましく、100〜8000nmの範囲内にあることが特に好ましい。さらに、隣接する前記凸部と前記溝部の幅の比(凸部/溝部、実測値の比)としては特に制限はないが、0.2〜5の範囲内にあることが好ましく、0.5〜3の範囲内にあることがより好ましい。また、前記凹凸構造の前記積層方向の長さ(実測値、図1〜4においては、x軸方向の長さの実測値)としては特に制限はないが、5mm以上であることが好ましく、10mm以上であることがより好ましく、30mm以上であることがさらに好ましく、100mm以上であることがより特に好ましい。このようなサイズの溝部、凸部および凹凸構造を有する微細構造形成用母型は、上述した通り、従来の方法では簡便に形成することはできなかった。一方、本発明においては、後述するように、前記溝部および前記凸部の幅は樹脂層の厚さを調整することによって、また、凹凸構造の積層方向の長さは、樹脂層の厚さや層数を調整することによって、容易に制御することができる。
【0034】
本発明にかかる2種以上の樹脂層は、互いにエッチング速度が異なる樹脂により形成されたものである。特に、前記樹脂層(A)としては、前記2種以上の樹脂のうちのエッチング速度が最も速い樹脂により形成されたものであることが好ましい。例えば、図1〜3に示した微細構造形成用母型においては、樹脂層(A)は、樹脂層(B)を形成する樹脂に比べてエッチング速度が速い樹脂により形成されたものである。また、図4に示した微細構造形成用母型においては、樹脂層(C)は、樹脂層(B)を形成する樹脂に比べてエッチング速度が速い樹脂により形成されたものであり、樹脂層(A)は、樹脂層(B)および(C)を形成する樹脂に比べてエッチング速度が速い樹脂により形成されたものである。このように、本発明においては、積層体を構成する樹脂層が、エッチング速度が異なる樹脂により形成されているため、エッチング処理によって溝部が形成される。
【0035】
本発明の微細構造形成用母型において、このような樹脂のエッチング速度差は大きいことが好ましい。これにより、エッチング処理により容易に溝部を有する凹凸構造を形成することができる。さらに、前記溝部の深さを深くすることが可能となり、溝部の深さと幅との比(幅/深さ、以下、「アスペクト比」という)が大きい溝部を有する凹凸構造を形成することが可能となる。前記溝部の深さ(実測値、図1〜4においては、z軸方向の長さの実測値)としては特に制限はないが、10〜5000nmの範囲内にあることが好ましく、100〜2000nmの範囲内にあることがより好ましい。また、前記アスペクト比(幅/深さ、実測値の比)としては特に制限はないが、0.5〜10の範囲内にあることが好ましく、1〜5の範囲内にあることがより好ましい。本発明において、溝部の深さは、後述するように、樹脂層を形成する樹脂の組み合わせや、エッチング処理条件を調整することによって、容易に制御することができる。
【0036】
本発明にかかる樹脂層を形成する樹脂としては、特に制限はなく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−4−メチルペンテン−1などのポリオレフィン、ポリスチレン、アクリロニトリル/スチレン系重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン系重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ(メタ)アクリレート、スチレン/ポリ(メタ)アクリレート共重合体などのビニルモノマー重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカプロラクトンなどのポリエステル、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド、ポリイミド、ポリアリレート、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)系共重合体、テトラフルオロエチレン/エチレン系共重合体、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン系共重合体、テトラフルオロエチレン/プロピレン系共重合体、ポリフルオロ(メタ)アクリレート系重合体、主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する含フッ素重合体、ポリフッ化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、エチレン/ビニルアルコール系共重合体、クロロトリフルオロエチレン/エチレン系共重合体、クロロトリフルオロエチレン/炭化水素系アルケニルエーテル系共重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン系共重合体、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン系共重合体、エチレン/メタクリル酸共重合体やエチレン/アクリル酸共重合体の分子間をナトリウムやカリウム、亜鉛などの金属イオンで分子間結合したアイオノマーといった熱可塑性樹脂が挙げられ、これらの中から選択された、エッチング速度が異なる2種以上の樹脂により本発明にかかる2種以上の樹脂層が形成される。このような樹脂の組み合わせ(前者が高エッチング速度)としては、エッチング速度差が大きいという観点から、エチレン/ビニルアルコール共重合体とナイロン6、エチレン/ビニルアルコール共重合体とアイオノマー、ナイロン6とアイオノマーといった組み合わせが好ましく、エチレン/ビニルアルコール共重合体とナイロン6といった組み合わせがより好ましい。
【0037】
次に、本発明の微細構造形成用母型の製造方法について説明する。本発明の微細構造形成用母型の製造方法は、2種以上の樹脂を用いて2種以上の樹脂層を備える積層体を形成する工程(積層体形成工程)と、前記積層体の外表面のうちの前記樹脂層の積層方向と略平行な外表面にエッチング処理を施して、前記2種以上の樹脂層のうちの少なくとも1種の樹脂層の一部を除去することにより、除去した樹脂層のうちの1種の樹脂層(A)の端面の少なくとも一部を含み且つ長手方向が前記樹脂層(A)の端面の長手方向と略平行である底面を有する溝部を備える凹凸構造を形成する工程(エッチング処理工程)と、を含む方法である。
【0038】
(積層体形成工程)
本発明にかかる積層体を形成する方法としては、2種以上の樹脂を用いて形成された2種以上の樹脂層を備える積層体が形成できる方法であれば特に制限はなく、例えば、2種以上の樹脂フィルムを交互にラミネートする方法、1種以上の樹脂フィルムを、この樹脂フィルムと異なる接着剤を用いて接着して多層化する方法、2種以上の樹脂を共押出や共射出する方法などが挙げられる。中でも、層数が増加しても容易に積層体を形成できるという観点から、共押出法が好ましく、フィードブロック法(松原弘明ら、「共押出多層キャストフィルム概要」、DICテクニカルレビュー、2008年、第14巻、9−16頁参照)がより好ましい。
【0039】
また、予め、フィードブロック法などにより多層フィルムを複数作製し、これらをラミネートすることによって所望の層数の積層体を形成することができる。これにより、共押出法や共射出法において、一度に形成することができる層数に制限がある場合でも、それを超える層数の積層体を形成することができる。このような層数としては特に制限はないが、例えば、1000層以上(好ましくは10000層以上)の樹脂層を備える積層体を形成することができる。
【0040】
上述のように、多層フィルムをラミネートして積層体を形成する場合、同種の多層フィルムをラミネートすると、接合部分の層厚が厚くなるため、最外層が異なる2種以上の多層フィルムを交互にラミネートすることが好ましい。図5Aは、2種類の多層フィルムをラミネートして、2種類の樹脂層(A)と樹脂層(B)とを交互に備える積層体を形成する方法を模式的に示した図である。なお、図5A中のx軸方向は樹脂層の積層方向を示す。図5Aに示すように、先ず、2種類の樹脂層(A)と樹脂層(B)とを交互に備える多層フィルムをフィードブロック法などによって作製する。このとき、多層フィルムとして、樹脂層(B)が最外層である多層フィルム11と、樹脂層(A)が最外層である多層フィルム12とを作製する。次に、得られた多層フィルム11と多層フィルム12とを交互にラミネートすることにより、接合部分の層厚化が抑制された、樹脂層(A)と樹脂層(B)とが交互に積層された積層体13を得ることができる。
【0041】
また、3種以上の樹脂により形成された3種以上の樹脂層を備える積層体を形成する場合においても、樹脂層の種類が増加する点を除いて、2種類の樹脂層の場合と同様に形成することができる。例えば、3種類の樹脂層(A)と樹脂層(B)と樹脂層(C)とを一定の周期で備える積層体を形成する場合、図5Bに示すように、先ず、3種類の樹脂層(A)と樹脂層(B)と樹脂層(C)とを一定の周期で備える2種類の多層フィルム21および22をフィードブロック法などによって作製する。次に、得られた多層フィルム21と多層フィルム22とを交互にラミネートすることにより、接合部分の層厚化が抑制された、樹脂層(A)と樹脂層(B)と樹脂層(C)とが一定の周期で積層された積層体23を得ることができる。
【0042】
また、2種類の樹脂層(B)および樹脂層(C)を交互に備える部分と、2種類の樹脂層(A)および樹脂層(C)を交互に備える部分とを一定の周期で備える、3種類の樹脂により形成された3種類の樹脂層を備える積層体を形成する場合、図5Cに示すように、先ず、2種類の樹脂層(B)および樹脂層(C)を一定の周期で備える多層フィルム31と、2種類の樹脂層(A)および樹脂層(C)を一定の周期で備える多層フィルム32とをそれぞれフィードブロック法などによって作製する。次に、得られた多層フィルム31と多層フィルム32とを交互にラミネートすることにより、接合部分の層厚化が抑制された、2種類の樹脂層(B)および樹脂層(C)を交互に備える部分と、2種類の樹脂層(A)および樹脂層(C)を交互に備える部分とを一定の周期で備える積層体33を得ることができる。
【0043】
多層フィルムをラミネートする方法としては、特に制限はないが、真空プレスを施しながら多層フィルムを熱圧着する方法が好ましい。これにより、熱圧着の際に、樹脂層に気泡が混入することを防ぐことができる。
【0044】
このようにして得られる積層体において、各樹脂層の厚さ(実測値、図5A、図5Bおよび図5Cにおいては、x軸方向の長さの実測値)は、所望の微細な凹凸構造における溝部や凸部の幅に応じて適宜設定することができるが、本発明の微細構造形成用母型の製造方法においては、50〜10000nmの範囲内にあることが好ましく、75〜9000nmの範囲内にあることがより好ましく、100〜8000nmの範囲内にあることが特に好ましい。このような厚さの樹脂層を備える積層体を使用することによって、比較的幅の広い(好ましくは50〜10000nm、より好ましくは75〜9000nm、特に好ましくは100〜8000nmの幅(実測値)を有する)溝部や凸部を有する凹凸構造を形成することが可能となる。また、各樹脂層の厚さの比についても、凹凸構造の凸部と溝部の幅の比に応じて適宜設定することができる。
【0045】
また、積層体の厚さ(積層方向の長さ(実測値、図5A、図5Bおよび図5Cにおいては、x軸方向の長さの実測値))は、所望の微細な凹凸構造のサイズに応じて適宜設定することができるが、本発明の微細構造形成用母型の製造方法においては、5mm以上であることが好ましく、10mm以上であることがより好ましく、30mm以上であることがさらに好ましく、100mm以上であることが特に好ましい。このような厚さの積層体を使用することによって、繋ぎ目のない、大面積の微細な凹凸構造を形成することができる。
【0046】
このような樹脂層の厚さや積層体の厚さは、使用するフィルムの厚さ、共押出や共射出の際の成形条件などを調整することによって制御することができる。また、得られた積層体に延伸処理を施すことによって、樹脂層の厚さや積層体の厚さを薄くすることも可能である。さらに、上述したように多層フィルムを熱圧着する場合には、熱圧着条件(特に、圧着温度と圧着時間)を調整することによって制御することも可能である。
【0047】
このようにして得られた積層体は、そのままの大きさでエッチング処理に供してもよいし、所定の大きさ(例えば、図5A、図5Bおよび図5Cにおいては、所定のz軸方向の長さ)に切断してエッチング処理に供してもよい。また、切断した積層体を接合して、より大面積の微細な凹凸構造を形成し得る積層体を形成してもよい。
【0048】
このような積層体を形成するための樹脂としては、上記例示した樹脂が挙げられ、これらの中から、エッチング速度が異なり且つ互いの接着性が良好な2種以上の樹脂を選択して使用する。このとき、樹脂の組み合わせを適宜選択することによって、凹凸構造の溝部の深さを容易に制御することができる。また、容易に積層体を形成できるという観点から、融点が異なる樹脂を組み合わせて使用することが好ましい。このような樹脂の組み合わせ(前者が高エッチング速度)としては、エッチング速度差が大きいという観点から、例えば、エチレン/ビニルアルコール共重合体とナイロン6、エチレン/ビニルアルコール共重合体とアイオノマー、ナイロン6とアイオノマーといった組み合わせが好ましく、エチレン/ビニルアルコール共重合体とナイロン6といった組み合わせがより好ましい。
【0049】
(平滑面形成工程)
通常、前記積層体形成工程で得られた積層体においては、各樹脂層の端面(積層方向に略平行な面)は乱雑な状態であり、そのままエッチング処理を施すと、凹凸構造の凸部の高さが不均一となり、高精度の微細な凹凸構造を備える母型を製造することは困難である。したがって、本発明の微細構造形成用母型の製造方法においては、前記積層体形成工程で得られた積層体の樹脂層の積層方向と略平行な外表面のうちの少なくとも1つの外表面を平滑にすることが好ましい。
【0050】
前記積層方向と略平行な外表面を平滑にする方法としては特に制限はないが、研磨処理が好ましい。なお、研磨処理条件については、樹脂層の種類に応じて適宜設定することができる。また、前記外表面の平滑性については、凸部の高さが所望の均一性を有する凹凸構造が形成できる程度であれば特に制限はない。
【0051】
(エッチング処理工程)
本発明にかかるエッチング処理工程は、前記積層体の外表面のうちの前記樹脂層の積層方向と略平行な外表面(好ましくは、前記平滑な外表面)にエッチング処理を施して、前記2種以上の樹脂層のうちの少なくとも1種の樹脂層の一部を除去する工程である。この工程においては、エッチング速度が速い樹脂からなる樹脂層の一部が選択的に除去される。これにより、除去された樹脂層のうちの1種の樹脂層(A)の端面の少なくとも一部を含み且つ長手方向が前記樹脂層(A)の端面の長手方向と略平行である底面を有する溝部を備える凹凸構造が形成される。
【0052】
また、前記エッチング処理においては、前記樹脂層(A)の一部を除去することにより、前記溝部の底面全体を前記樹脂層(A)の端面の少なくとも一部により形成させることが好ましく、前記溝部の底面の幅が前記樹脂層(A)の厚さと略同一となるように前記樹脂層(A)の一部を除去することがより好ましい。さらに、前記樹脂層(A)としては、前記2種以上の樹脂のうちのエッチング速度が最も速い樹脂により形成されたものが好ましい。
【0053】
図6Aおよび図7Aは、2種類の樹脂層(A)と樹脂層(B)とを交互に備える積層体にエッチング処理を施す方法を模式的に示した図である。具体的には、樹脂層の積層方向(x軸方向)に略平行な外表面のうちの1つの外表面(上面のxy平面)に対して、図6Aは、エッチング処理を施す前の積層体13の断面図であり、図7Aは、エッチング処理を施した後の微細構造形成用母型14の断面図である。なお、図6Aおよび図7A中のx軸方向は樹脂層の積層方向を示す。
【0054】
図6Aに示すように、積層体13の上面のxy平面にエッチング処理を施すと、エッチング速度が速い樹脂により形成された樹脂層(A)の一部が選択的に除去され、図7Aに示すように、樹脂層(A)の端面を底面とする溝部および樹脂層(B)の端面を上面とする凸部を有する凹凸構造が積層体の表面に形成され、目的とする微細構造形成用母型14を得ることができる。図5A、図6Aおよび図7Aに示した製造方法は、図1に示した微細構造形成用母型の製造方法であるが、本発明の微細構造形成用母型の製造方法はこれに限定されるものではなく、例えば、図2〜3に記載の微細構造形成用母型も同様にして製造することができる。
【0055】
また、3種以上の樹脂により形成された3種以上の樹脂層を備える積層体にエッチング処理を施す場合も、樹脂層の種類が増加する点を除いて、2種類の樹脂層の場合と同様にエッチング処理を施すことができる。例えば、3種類の樹脂層(A)と樹脂層(B)と樹脂層(C)とを一定の周期で備える積層体にエッチング処理を施す場合、図6Bに示すように、積層体23の上面のxy平面にエッチング処理を施すと、樹脂層(B)を形成する樹脂に比べてエッチング速度が速い樹脂により形成された樹脂層(A)および樹脂(C)の一部が選択的に除去され、図7Bに示すように、樹脂層(A)の端面を底面とする溝部、樹脂層(C)の端面を底面とする溝部および樹脂層(B)の端面を上面とする凸部を有する凹凸構造が積層体の表面に形成され、目的とする微細構造形成用母型24を得ることができる。このとき、樹脂層(A)を形成する樹脂が、樹脂層(C)を形成する樹脂に比べてエッチング速度が速い樹脂である場合には、図7Bに示すように、深さが異なる溝部が形成される。図5B、図6Bおよび図7Bに示した製造方法は、図4に示した微細構造形成用母型の製造方法であるが、本発明の微細構造形成用母型の製造方法はこれに限定されるものではない。
【0056】
また、2種類の樹脂層(B)および樹脂層(C)を交互に備える部分と、2種類の樹脂層(A)および樹脂層(C)を交互に備える部分とを一定の周期で備える、3種類の樹脂により形成された3種類の樹脂層を備える積層体にエッチング処理を施す場合、図6Cに示すように、積層体33の上面のxy平面にエッチング処理を施すと、樹脂層(B)を形成する樹脂に比べてエッチング速度が速い樹脂により形成された樹脂層(A)および樹脂(C)の一部が選択的に除去され、図7Cに示すように、樹脂層(A)の端面を底面とする溝部、樹脂層(C)の端面を底面とする溝部および樹脂層(B)の端面を上面とする凸部を有する凹凸構造が積層体の表面に形成され、目的とする微細構造形成用母型34を得ることができる。このとき、樹脂層(A)を形成する樹脂が、樹脂層(C)を形成する樹脂に比べてエッチング速度が速い樹脂である場合には、図7Cに示すように、深さが異なる溝部が形成される。特に、2種類の樹脂層(B)および樹脂層(C)を交互に備える部分と2種類の樹脂層(A)および樹脂層(C)を交互に備える部分との境界部においては、階段状の凹凸構造が形成される。
【0057】
このようにして形成される凹凸構造の溝部および凸部の幅は、樹脂層の厚さを調整することによって制御することができる。また、溝部の深さ(凸部の高さ)は、樹脂層を構成する樹脂のエッチング速度に応じてエッチング処理条件(特に、エッチング処理時間)を調整することによって制御することができる。
【0058】
本発明にかかるエッチング処理方法としては、前記2種以上の樹脂層のうちの少なくとも1種の樹脂層の一部を除去して凹凸構造を形成できる方法であれば特に制限はなく、例えば、反応性ガスエッチング、ガスエッチング、反応性イオンエッチング、イオンエッチング、反応性イオンビームエッチング、イオンビームエッチング、反応性レーザービームエッチングなどのドライエッチング処理、ディップ式ウェットエッチング、スプレー式ウェットエッチング、スピン式ウェットエッチングなどのウェットエッチング処理が挙げられる。このようなエッチング処理方法のうち、溝部の底面および凸部の上面に対して垂直な溝部の内壁(凸部の側面)を形成しやすいという観点から、イオンエッチング処理が好ましく、バレル式のプラズマエッチング処理がより好ましい。なお、エッチング処理条件については、樹脂層の種類に応じて適宜設定することができる。
【0059】
以上、本発明の微細構造形成用母型およびその製造方法の好適な実施態様を、溝部および凸部の長手方向の形状が直線状であり、溝部の断面形状がコの字型(溝部の底面と溝部の内壁とが垂直構造)であり、凸部の断面形状が逆コの字型(凸部の上面と凸部の側面とが垂直構造)である凹凸構造を例として説明したが、本発明の微細構造形成用母型は、このような凹凸構造のものに限定されるものではない。例えば、凹凸構造を形成する溝部および凸部の長手方向の形状としては、ラインアンドスペース型構造のような直線状(図8A)の他、円弧状(図8B)、S字状(図8C)、円状(図8D)などの曲線状であってもよい。また、溝部の断面形状としては、ラインアンドスペース型構造のようなコの字型(図7A)の他、U字型(溝部の底面が曲面(一部が平面になっているものも含む)、図9B)、V字型(図9C)などであってもよい。さらに、凸部の断面形状としては、ラインアンドスペース型構造のような逆コの字型(図7A)の他、逆U字型(凸部の上面が曲面(一部が平面になっているものも含む)、図10A)、逆V字型(図10B)などであってもよい。また、本発明にかかる凹凸構造は、このような溝部および凸部の長手方向の形状および断面形状を適宜組み合わせたものであってもよい。
【0060】
このような溝部および凸部の長手方向の形状が曲線状である凹凸構造は、所望の曲線状(例えば、円弧状、S字状、円状)の積層構造となるように樹脂層を積層した積層体や、平板状の樹脂層からなる積層体を所望の曲線状(例えば、円弧状、S字状、円状)の積層構造となるように変形した積層体を用いて、上記と同様に、前記積層体の樹脂層の積層方向と略平行な外表面にエッチング処理を施すことによって形成することができる。また、溝部の断面形状がU字型やV字型である凹凸構造や凸部の断面形状が逆U字型や逆V字型凹凸構造は、積層体の樹脂層の積層方向と略平行な外表面に、溝部や凸部の断面形状が所望の形状となるようにエッチング処理を施すことによって形成することができる。
【実施例】
【0061】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0062】
(厚さ測定)
多層フィルムの厚さは、デジタルマイクロメータ((株)ミツトヨ製「MDQ−30」)を用いて測定した。また、樹脂層の厚さについては、樹脂層の端面を共焦点レーザー顕微鏡((株)キーエンス製「VK−9710」)を用いて観察し、得られた画像に基づいて、画像計測ソフト(Media Cybernetics社製「Image−Pro PLUS」)を用いて測定した。
【0063】
(実施例1)
<積層体の作製>
ナイロン6(宇部興産(株)製「ウベナイロン1022B」、ガラス転移温度50℃、融点220℃、以下、「Ny6」と略す)とエチレン/ビニルアルコール共重合体((株)クラレ「エバールJ171B」、ガラス転移温度56℃、融点183℃、以下、「EvOH」と略す)とを押出機を用いてフィードブロック法により多層化し、最外層がNy6層である2種17層の多層フィルムAおよび最外層がEvOH層である2種17層の多層フィルムBをそれぞれ作製した。得られた多層フィルムAおよびBについては、それぞれに延伸処理を施して厚さを100μmに調整した。延伸処理後の多層フィルムAおよびBについて、Ny6層およびEvOH層の厚さをそれぞれ31箇所測定したところ、Ny6層の厚さ(実測値)は2970〜8580nmであり、EvOH層の厚さ(実測値)は3110〜7920nmであった。また、Ny6層の厚さの算術平均値は5790nmであり、EvOH層の厚さの算術平均値は4670nmであった。
【0064】
前記多層フィルムA(38枚)と前記多層フィルムB(39枚)とを交互に積層し、真空加圧装置(明昌機工(株)製「NM−0401」)を用いて、圧着温度105℃、圧着時間360秒、圧着圧力0.75MPaの条件で熱圧着することにより、最外層がEvOH層である2種1309層の積層体を得た。なお、熱圧着の際、圧着温度まで加熱しながら、真空度50Torrで真空プレスすることにより脱気処理を施した。
【0065】
<研磨処理>
得られた積層体の積層方向と平行な外表面の1つに、自動研磨機(Struers社製「Tegra−Force−5」)および#800〜#4000の研磨紙を用いて、研磨速度400rpmで、研磨処理を施して、平滑な外表面を形成させた。研磨後の積層体について、層厚の測定箇所を無作為に3箇所抽出し、1箇所当たり交互に連続する17層のNy6層と17層のEvOH層の全て(34層)の層厚を測定した。表1には、Ny6層(17層×3箇所)とEvOH層(17層×3箇所)の層厚(実測値)をその範囲で示す。また、隣接するNy6層とEvOH層との層厚比(実測値の比)もその範囲で示す。なお、表1には、層厚の算術平均値および層厚比の算術平均値も示した。
【0066】
(実施例2〜8)
圧着温度および圧着時間を表1に示す温度および時間に変更した以外は実施例1と同様にして最外層がEvOH層である2種1309層の積層体を作製した。この積層体に、実施例1と同様にして研磨処理を施し、平滑な外表面を形成させた。研磨後の積層体について、実施例1と同様にしてNy6層およびEvOH層の厚さを測定した。表1には、層厚の実測値および層厚(実測値)の比、並びに層厚および層厚比の算術平均値を示す。
【0067】
【表1】
【0068】
表1に示した結果から明らかなように、積層体作製時の真空プレス条件を調整することによって、Ny6層とEvOH層の厚さ、およびこれらの層厚比を制御できることがわかった。
【0069】
<プラズマエッチング処理>
実施例1で得られた積層体の研磨処理を施した外表面に、プラズマクリーナー(Harrick Plasma社製「PDC−001」)を用いてプラズマエッチング処理を施した。このプラズマエッチング処理は、内部圧力を1600Torrに調整した酸素とアルゴン(体積比=1:1)の混合ガス中、RF出力29.6W、プラズマ照射時間60分の条件で行なった。
【0070】
積層体のプラズマエッチング処理を施した外表面にポリジメチルシロキサン(東レダウコーニング製)を流し込み、型取りしてレプリカを作製し、このレプリカを電界放射型走査電子顕微鏡(日本電子(株)製「JSM−7401F」)を用いて観察した。その結果を図11に示す。図11に示した結果から明らかなように、Ny6層とEvOH層との間で段差が認められ、プラズマエッチング処理を施した積層体においては、凸部がNy6層からなり、溝部の底面がEvOH層の端面からなる凹凸構造が形成されていることが確認された。このような凹凸構造は、Ny6とEvOHのエッチング速度の違いによって形成される。
【0071】
また、溝部の内壁(凸部の側面)は、溝部の底面および凸部の上面に対して垂直であった。このことから、Ny6層とEvOH層とを備える積層体の所定の外表面にプラズマエッチングを施すことによって、垂直な側壁を有する直線状の凹凸構造を有する(ラインアンドスペース型)樹脂母型(樹脂層の積層方向長さ:7mm×溝部の底面の長手方向長さ:10mm)が得られることが確認された。さらに、共焦点レーザー顕微鏡を用いて、溝部の幅および深さ、ならびに凸部の幅を測定した。具体的には、測定箇所を無作為に3箇所抽出し、1箇所当たり交互に連続する17箇所の溝部と17箇所の凸部(合計34箇所)について測定した。その結果、溝部(17箇所×3箇所)の幅(実測値)は2540〜6870nmであり、溝部(17箇所×3箇所)の深さ(実測値)は922〜1670nmであり、凸部(17箇所×3箇所)の幅(実測値)は1520〜7890nmであった。また、隣接する凸部と溝部の幅の比(凸部/溝部、実測値の比)は0.54〜2.55であった。なお、溝部の幅の算術平均値は4380nmであり、溝部の深さの算術平均値は1450nmであり、凸部の幅の算術平均値は5560nmであり、隣接する凸部と溝部の幅の比(凸部/溝部)の算術平均値は1.29であった。
【0072】
これらの結果から明らかなように、実施例1で得られた積層体のNy6層とEvOH層の厚さが、それぞれ凹凸構造の溝部と凸部の幅にほぼ一致しており、2種以上の樹脂層を備える積層体の積層方向と平行な外表面にエッチング処理を施すことによって、積層体の各樹脂層の厚さに対応した幅を有する溝部と凸部を備える凹凸構造を形成できることが確認された。また、形成可能な溝部や凸部の幅は広範囲にわたることがわかった。
【0073】
(実施例9)
<積層体の作製>
実施例1と同様にして多層フィルムAおよび多層フィルムBを作製し、それぞれ延伸処理を施して厚さを100μmに調整した。前記多層フィルムA(250枚)と前記多層フィルムB(251枚)とを交互に積層し、真空加圧装置(北川精機(株)製「KVHC−PRESS」)を用いて、圧着温度を95℃、圧着時間を2時間、圧着圧力を500MPaの条件で熱圧着することにより、最外層がEvOH層である2種8500層の積層体を得た。なお、熱圧着の際、圧着温度まで加熱しながら、真空度10Torrで真空プレスすることにより脱気処理を施した。
【0074】
<研磨処理>
得られた積層体に、実施例1と同様にして研磨処理を施し、平滑な外表面を形成させた。研磨後の積層体について、実施例1と同様にしてNy6層およびEvOH層の厚さを測定した。表2には、層厚の実測値および層厚(実測値)の比、並びに層厚および層厚比の算術平均値を示す。
【0075】
【表2】
【0076】
<プラズマエッチング処理>
得られた積層体に、実施例1と同様にしてプラズマエッチング処理を施し、垂直な側壁を有する直線状の凹凸構造を有する(ラインアンドスペース型)樹脂母型(樹脂層の積層方向長さ:39mm×溝部の底面の長手方向長さ:55mm)を得た。この樹脂母型の溝部の幅および深さ、ならびに凸部の幅を、共焦点レーザー顕微鏡を用いて実施例1と同様にして測定した。その結果、溝部の幅(実測値)は1146〜2812nmであり、溝部の深さ(実測値)は1438〜1941nmであり、凸部の幅(実測値)は7132〜9042nmであった。なお、溝部の幅および深さ、ならびに凸部の幅の算術平均値は、それぞれ2090nm、1677nm、7361nmであった。
【0077】
これらの結果から明らかなように、実施例9で得られた積層体のNy6層とEvOH層の厚さが、それぞれ凹凸構造の溝部と凸部の幅にほぼ一致しており、交互に積層する多層フィルムの枚数を増加して積層方向と平行な外表面の面積が増大した積層体を形成し、前記外表面にエッチング処理を施すことによって、積層体の各樹脂層の厚さに対応した幅を有する溝部と凸部を備える大面積の微細な凹凸構造を有する樹脂母型を形成できることが確認された。したがって、このような大面積の微細な凹凸構造を有する樹脂母型が形成できたことから、大面積の微細な凹凸構造を有する各種部材をナノインプリントで製造できると考えられる。
【0078】
(実施例10)
<積層体の作製>
実施例1と同様にして、最外層がEvOH層である2種(Ny6、EvOH)17層の多層フィルムBを作製し、延伸処理を施して厚さを100μmに調整した。また、Ny6とエチレン−メタクリル酸共重合体系樹脂(三井・デュポン
ポリケミカル(株)、ガラス転移温度43〜49℃、以下、「ION」と略す)とを押出機を用いてフィードブロック法により多層化し、最外層がNy6層である2種(Ny6、ION)17層の多層フィルムCを作製した。得られた多層フィルムCについては、実施例1と同様に延伸処理を施して厚さを100μmに調整した。延伸処理後の多層フィルムCについて、Ny6層およびION層の厚さをそれぞれ31箇所測定したところ、Ny6層の厚さ(実測値)は2970〜8580nm、ION層の厚さ(実測値)は2129〜4035nmであった。また、Ny6層の厚さの算術平均値は5790nmであり、ION層の厚さの算術平均値は2657nmであった。
【0079】
前記多層フィルムB(51枚)と前記多層フィルムC(50枚)とを交互に積層し、真空加圧装置による圧着時間を360秒に変更した以外は実施例9と同様にして、EvOH層とNy6層とが交互に配置された部分(51枚)と、Ny6層とION層とが交互に配置された部分(50枚)とが、さらに交互に配置されており、最外層がEvOH層である3種1717層の積層体を得た。
【0080】
<研磨処理>
得られた積層体に、実施例1と同様にして研磨処理を施し、平滑な外表面を形成させた。研磨後の積層体について、実施例1と同様にしてNy6層、EvOH層およびION層の厚さを測定した。表3には、層厚の実測値および層厚(実測値)の比、並びに層厚および層厚比の算術平均値を示す。
【0081】
【表3】
【0082】
<プラズマエッチング処理>
得られた積層体に、実施例1と同様にしてプラズマエッチング処理を施して直線状の凹凸構造を有する(ラインアンドスペース型)樹脂母型(樹脂層の積層方向長さ:7mm×溝部の底面の長手方向長さ:55mm)を得た。この樹脂母型のプラズマエッチング処理を施した外表面にポリジメチルシロキサン(東レダウコーニング製)を流し込み、型取りしてレプリカを作製した。このレプリカのうち、前記樹脂母型の多層フィルムBと多層フィルムCとの境界部に相当する部分を、電界放射型走査電子顕微鏡(日本電子(株)製「JSM−7401F」)を用いて観察した。その結果を図12に示す。図12に示した結果から明らかなように、Ny6層とEvOH層との間(写真の右半分)およびNy6層とION層(写真の左半分)でそれぞれ段差が認められ、前記微細構造形成用樹脂母型においては、Ny6層の端面を基準に、溝部の底面がEvOH層の端面からなり、凸部がION層からなる階段状の微細凹凸構造が、多層フィルムBと多層フィルムCとの境界部で形成されていることが確認された。このような階段状の微細凹凸構造は、Ny6とEvOHとIONとのエッチング速度の違いによって形成される。
【0083】
また、共焦点レーザー顕微鏡を用いて、前記微細構造形成用母型の多層フィルムBと多層フィルムCとの境界部を観察した。その結果を図13に示す。図13に示した結果から明らかなように、多層フィルムBと多層フィルムCとの境界部で階段状の微細凹凸構造が形成されていることが確認された。なお、図13中の凸部はION層からなる部分であり、溝部の底面はEvOH層の端面であり、残りの部分はNy6層からなる部分である。さらに、共焦点レーザー顕微鏡を用いて実施例1と同様にして、溝部の幅(EvOH層の端面の幅)、凸部の幅(ION層からなる部分の幅)、および溝部と凸部との間隔(Ny6層からなる部分の幅)を測定した。その結果、溝部の幅(実測値)は1133〜7563nmであり、凸部の幅(実測値)は1150〜1534nmであり、溝部と凸部との間隔(実測値)は1534〜7307nmであった。なお、溝部および凸部の幅、ならびに溝部と凸部との間隔の算術平均値は、それぞれ4597nm、1406nm、3205nmであった。また、溝部の深さ(実測値)は1878〜2406nmであり、凸部の高さは257〜472nmであった。なお、溝部の深さおよび凸部の高さの算術平均値は、それぞれ2136nm、345nmであった。
【0084】
これらの結果から明らかなように、エッチング速度が異なる3種以上の樹脂層を備える積層体の積層方向と平行な外表面にエッチング処理を施すことによって、深さが異なる溝部や高さが異なる凸部を備える凹凸構造を形成できることが確認された。特に、3種類以上の樹脂層をエッチング速度が順に配置した積層体の積層方向と平行な外表面にエッチング処理を施すことによって、階段状の凹凸構造を形成できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0085】
以上説明したように、本発明によれば、溝部の幅が100nm以下の微細な凹凸構造だけでなく、さらに広い幅(好ましくは100〜10000nm)の溝部を有する微細な凹凸構造を、繋ぎ目なく、大面積で形成することができる母型を得ることができる。
【0086】
したがって、本発明の微細構造形成用母型に、電鋳などを施すことによって、上記のような微細な凹凸構造を繋ぎ目なく、大面積で備えるモールドを製造することができ、このモールドを用いることによって、導光板、偏光板、偏光素子、カラーフィルター、拡散板、回折格子、反射防止膜といった大面積の微細な凹凸構造を備える光学部材、バイオチップなどを、ナノインプリントによって高精度で製造することが可能となる。
【符号の説明】
【0087】
1:樹脂層(A)の端面全体
1a、1b:樹脂層(A)の端面の一部
2:樹脂層(B)の端面全体
2a、2b:樹脂層(B)の端面の一部
3:樹脂層(B)のyz平面の一部
4:樹脂層(A)のyz平面の一部
5:樹脂層(C)の端面全体
6:溝部の底面
7:凸部の上面
11、12、21、22、31、32:多層フィルム
13、23、33:積層体
14、24、34:微細構造形成用母型
A:樹脂層(A)
B:樹脂層(B)
C:樹脂層(C)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種以上の樹脂を用いて2種以上の樹脂層を備える積層体を形成する工程と、
前記積層体の外表面のうちの前記樹脂層の積層方向と略平行な外表面にエッチング処理を施して前記2種以上の樹脂層のうちの少なくとも1種の樹脂層の一部を除去することにより、除去した樹脂層のうちの1種の樹脂層(A)の端面の少なくとも一部を含み且つ長手方向が前記樹脂層(A)の端面の長手方向と略平行である底面を有する溝部を備える凹凸構造を形成する工程と、
を含むことを特徴とする微細構造形成用母型の製造方法。
【請求項2】
前記エッチング処理により除去される前記樹脂層の厚さが50〜10000nmの範囲内にあり、前記積層体の積層方向の長さが10mm以上であることを特徴とする請求項1に記載の微細構造形成用母型の製造方法。
【請求項3】
前記エッチング処理において、前記樹脂層(A)の一部を除去することにより、前記溝部の底面全体を前記樹脂層(A)の端面の少なくとも一部により形成させることを特徴とする請求項1または2に記載の微細構造形成用母型の製造方法。
【請求項4】
前記エッチング処理において、前記溝部の底面の幅が前記樹脂層(A)の厚さと略同一となるように前記樹脂層(A)の一部を除去することを特徴とする請求項3に記載の微細構造形成用母型の製造方法。
【請求項5】
前記樹脂層(A)が、前記2種以上の樹脂のうちのエッチング速度が最も速い樹脂により形成されたものであることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の微細構造形成用母型の製造方法。
【請求項6】
2種以上の樹脂により形成された2種以上の樹脂層を備える積層体からなり、
該積層体の外表面のうちの前記樹脂層の積層方向と略平行な外表面に、溝部を備える凹凸構造を有し、
前記溝部の底面が、前記2種以上の樹脂層のうちの1種の樹脂層(A)の端面の少なくとも一部を含むものであり、
前記溝部の底面の長手方向が前記樹脂層(A)の端面の長手方向と略平行であることを特徴とする微細構造形成用母型。
【請求項7】
前記溝部の幅が50〜10000nmの範囲内にあり、前記凹凸構造の前記積層方向の長さが10mm以上であることを特徴とする請求項6に記載の微細構造形成用母型。
【請求項8】
前記溝部の底面全体が、前記樹脂層(A)の端面の少なくとも一部であることを特徴とする請求項6または7に記載の微細構造形成用母型。
【請求項9】
前記溝部の底面の幅が前記樹脂層(A)の厚さと略同一であることを特徴とする請求項8に記載の微細構造形成用母型。
【請求項10】
前記樹脂層(A)が、前記2種以上の樹脂のうちのエッチング速度が最も速い樹脂により形成されたものであることを特徴とする請求項6〜9のうちのいずれか一項に記載の微細構造形成用母型。
【請求項1】
2種以上の樹脂を用いて2種以上の樹脂層を備える積層体を形成する工程と、
前記積層体の外表面のうちの前記樹脂層の積層方向と略平行な外表面にエッチング処理を施して前記2種以上の樹脂層のうちの少なくとも1種の樹脂層の一部を除去することにより、除去した樹脂層のうちの1種の樹脂層(A)の端面の少なくとも一部を含み且つ長手方向が前記樹脂層(A)の端面の長手方向と略平行である底面を有する溝部を備える凹凸構造を形成する工程と、
を含むことを特徴とする微細構造形成用母型の製造方法。
【請求項2】
前記エッチング処理により除去される前記樹脂層の厚さが50〜10000nmの範囲内にあり、前記積層体の積層方向の長さが10mm以上であることを特徴とする請求項1に記載の微細構造形成用母型の製造方法。
【請求項3】
前記エッチング処理において、前記樹脂層(A)の一部を除去することにより、前記溝部の底面全体を前記樹脂層(A)の端面の少なくとも一部により形成させることを特徴とする請求項1または2に記載の微細構造形成用母型の製造方法。
【請求項4】
前記エッチング処理において、前記溝部の底面の幅が前記樹脂層(A)の厚さと略同一となるように前記樹脂層(A)の一部を除去することを特徴とする請求項3に記載の微細構造形成用母型の製造方法。
【請求項5】
前記樹脂層(A)が、前記2種以上の樹脂のうちのエッチング速度が最も速い樹脂により形成されたものであることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の微細構造形成用母型の製造方法。
【請求項6】
2種以上の樹脂により形成された2種以上の樹脂層を備える積層体からなり、
該積層体の外表面のうちの前記樹脂層の積層方向と略平行な外表面に、溝部を備える凹凸構造を有し、
前記溝部の底面が、前記2種以上の樹脂層のうちの1種の樹脂層(A)の端面の少なくとも一部を含むものであり、
前記溝部の底面の長手方向が前記樹脂層(A)の端面の長手方向と略平行であることを特徴とする微細構造形成用母型。
【請求項7】
前記溝部の幅が50〜10000nmの範囲内にあり、前記凹凸構造の前記積層方向の長さが10mm以上であることを特徴とする請求項6に記載の微細構造形成用母型。
【請求項8】
前記溝部の底面全体が、前記樹脂層(A)の端面の少なくとも一部であることを特徴とする請求項6または7に記載の微細構造形成用母型。
【請求項9】
前記溝部の底面の幅が前記樹脂層(A)の厚さと略同一であることを特徴とする請求項8に記載の微細構造形成用母型。
【請求項10】
前記樹脂層(A)が、前記2種以上の樹脂のうちのエッチング速度が最も速い樹脂により形成されたものであることを特徴とする請求項6〜9のうちのいずれか一項に記載の微細構造形成用母型。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図13】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図13】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−228877(P2012−228877A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−89536(P2012−89536)
【出願日】平成24年4月10日(2012.4.10)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年4月10日(2012.4.10)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】
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