説明

情報端末用アンテナ

【課題】複数のアンテナの接近に伴うアイソレーションの劣化による受信信号の劣化を抑制する構造を備えた情報端末用アンテナを提供すること。
【解決手段】異なる周波数帯域であり異なる電力レベルの電波信号を受信する複数のアンテナ1,2と、複数のアンテナ1,2のうち受信電力の低い第1電波信号を受信する第1のアンテナ1の送出信号を増幅する少なくとも1つの信号増幅手段10と、複数のアンテナ1,2のうち第1電波信号とは周波数が異なり且つ第1電波信号よりも受信電力の高い別の電波信号を受信する少なくとも1つの別のアンテナ2の送出信号と信号増幅手段10の出力信号とを合成する少なくとも1つの信号合成手段11を備え、かつ第1電波信号の利得−周波数特性のリップルを1dB以下に抑えるのに十分なアイソレーションを確保する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報端末用アンテナに関し、より詳しくは、異なる周波数帯域の電波信号を受信する複数のアンテナを備えた情報端末用アンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
PDA(Personal―Digital―Assistance)や携電話などに代表される情報端末は、音声通信向けの周波数帯を用いた文字情報サービスを提供したり、他の端末と情報をより高速にやりとりするために無線LAN(Local―Area―Network)を搭載したり、位置情報を元にした天気情報やニュースを提供できるようにしたりするためにGPS(Global―positioning―System)が搭載されるようになり、1つの端末で複数の無線メディアが利用できるようになってきた。これに伴って1つの端末に数多くのアンテナが搭載されるようになっている。
【0003】
GPSに使用される電波は、中心周波数1.57542MHz(以下、1.5GHz帯という)であり、また無線LANに使用される周波数は、2.4〜2.5GHz(以下、2.45GHz帯という)もしくは5.15〜5.25GHz(以下、5.2GHz帯という)である。
【0004】
従来の端末は図14に示すように、例えば無線LANの送受信アンテナ30と受信アンテナ31がそれぞれ配置され、各々からケーブル32a、32bを引き出し、端末内に設けられた無線機(不図示)と接続されるダイバーシティ方式が取られている。さらに例えばGPSアンテナのような異なる周波数帯の電波を受信するアンテナを、情報端末に搭載しようとすると、そもそも端末の小型化の要求から搭載スペースが少ないという問題の上に、端末の情報表示領域の拡大の要求からさらに搭載スペースの減少といった問題が起こり、アンテナの小型化が非常に求められている。
【0005】
またアンテナでやりとりする信号は端末内に設けられた無線機と接続する必要があり、搭載されるアンテナの数だけケーブルを用いて配線しなければならない。一般的に高周波用のケーブルは高価であり、端末のコストアップに繋がる、さらに端末の組立工程においてケーブルの取り付けは非常に煩わしいものがあり、また組立工程におけるケーブルの損傷や、ヒンジ部を通るケーブルがヒンジ部の動作によって損傷してしまうといった問題まで起きている。そういった理由からケーブルをできるだけ少ない本数にすることが望まれている。そこで無線LANの受信用アンテナとGPSアンテナを一体にしてケーブルを省略することが考えられる。こういった構成では例えば特許文献1に記載されているように、電波信号を信号合成回路で合成した上で無線機へ送出する提案がされている。
【0006】
特許文献1では、図15に示すように、衛星からの情報を受信するアンテナ101の信号送出端子と地上からの情報を受信するアンテナ102の信号送出端子をライン103を介して接続するとともに、ライン103の途中に信号送出ケーブル104を取り付ける構造が記載されている。また、衛星からの受信信号は地上からの受信信号に比べて電力レベルが低いので、衛星からの情報を受信するアンテナ101の信号送出端子には2つの増幅器105、106が直列に接続されている。さらに、ライン103中において、初段の増幅器105の信号送出端にはフィルタ107が直列に接続され、地上からの情報を受信するアンテナ102の信号送出端には発振を防止するためのフィルタ108が直列に接続され、また、後段の増幅器106と地上からの情報を受信するアンテナ102側のフィルタ108のそれぞれの信号送出端には直流成分をカットするキャパシタ109,110が直列に接続されている。
【特許文献1】特開平9−139625号公報
【特許文献2】特開2004−236014号公報
【非特許文献1】1996年電子情報通信学会総合大会講演論文集 分冊1 第610、611頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図15に示した情報端末用アンテナにおいて、周波数の異なる2つのアンテナ101,102を接続する場合に生じる発振はフィルタ108により防止できる。
【0008】
しかし、同一基板上で2つのアンテナ101,102同士の接近や一体化・小型化にともない、アンテナ間アイソレーションが劣化して10dB程度しか確保できず、技術的解決をはかっても18dBしか取れない。複数のアンテナパターンを同一平面上に形成すると、アンテナパターン間のアイソレーションが取りづらくなることは特許文献2にも記載されている。実際に発明者らはサンプル数20個で、32mm角の大きさの誘電体基板上に複数の信号(1.5GHz帯と2.5GHz帯)を受信できるパッチを配置してアンテナ間アイソレーションを実際に測定した。その結果、平均値は18.3dBで標準偏差は1.4dBとなった。
これにより、増幅器105,106により増幅された信号がライン103を介して地上からの情報を受信するアンテナ102に回り込んで外部に放射され、さらに衛星からの情報を受信するアンテナ101に入射することになるので、例えば衛星からの情報を受信するアンテナがGPS用である場合、測距誤差に繋がるという問題があった。
【0009】
特に、増幅器105,106の増幅度が例えば30dB、40dBと高く要求される場合にアンテナ間アイソレーション劣化の問題が顕著に現れてくる。そのようなアイソレーションの劣化は、例えば上記の非特許文献1に記載されているようなマルチパスの影響に似た受信信号の劣化として現れる。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、複数のアンテナの接近や一体化に伴うアイソレーションの劣化による受信信号の劣化を抑制する構造を備えた情報端末用アンテナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するための本発明の第1の態様に係る情報端末用アンテナは、異なる周波数帯域であり異なる電力レベルの電波信号を受信する複数のアンテナと、前記複数のアンテナのうち受信電力の低い第1電波信号を受信する第1のアンテナの送出信号を増幅する少なくとも1つの信号増幅手段と、前記複数のアンテナのうち前記第1電波信号とは周波数が異なり且つ前記第1電波信号よりも受信電力の高い別の電波信号を受信する少なくとも1つの別のアンテナの送出信号と前記信号増幅手段の出力信号とを合成する少なくとも1つの信号合成手段を備え、かつ前記第1電波信号の利得−周波数特性のリップルを1dB以下に抑えるのに十分なアイソレーションが確保されている。
【0012】
本発明の第2の態様に係る情報端末用アンテナは、第1の態様において、前記信号増幅手段及び前記信号合成手段を通さずに前記別のアンテナから前記第1のアンテナへ至る経路のアイソレーションをX(dB)とし、さらに、前記第1のアンテナの信号送出端から前記信号増幅手段を介して前記信号合成手段における前記別のアンテナが接続される入力端へのループ利得をY(dB)とした場合に、X≦18(dB)且つX−Y≧25(dB)の関係が成立することを特徴とする。
【0013】
本発明の第3の態様に係る情報端末用アンテナは、第1、第2の態様において、前記信号合成手段は、少なくとも1つの共振器を持つハイパスフィルタとローパスフィルタの組合せにより構成されていることを特徴とする。
【0014】
本発明の第4の態様に係る情報端末用アンテナは、第1、第2の態様において、前記信号合成器は、少なくとも1つの共振器を持つフィルタとウィルキンソン型電力合成器の組合せにより構成されていることを特徴とする。
【0015】
本発明の第5の態様に係る情報端末用アンテナは、第1乃至第4のいずれか1つの態様において、複数の前記アンテナはそれぞれ平面パッチアンテナであることを特徴とする。
【0016】
本発明の第6の態様に係る情報端末用アンテナは、第1乃至第5のいずれか1つの態様において、前記第1のアンテナは衛星通信を利用した信号を受信するアンテナであり、前記別のアンテナは地上波信号を受信するアンテナであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、アンテナの小型化による複数のアンテナ間のアイソレーションの劣化があっても、アンテナ装置としての特性劣化を容易に抑えることができ、情報端末用アンテナの小型化が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明者は、GPS用アンテナと無線LAN用アンテナを同一基板上に形成した情報端末用アンテナを用意した。そして、GPS用アンテナで受信した電波信号を増幅し、無線LAN用アンテナに回り込ませてさらにGPS用アンテナに入射させ、この場合の1.5GHz帯の利得−周波数特性を調べたところ、図16の実線に示すような測定結果が得られた。
【0019】
その結果によれば、破線で示した理想的な特性線に対して、実線で示した実測の特性線には利得−周波数特性にリップルが現れ、これにより情報端末用アンテナ内でGPS信号が劣化することがわかった。即ち、そのリップルの発生は、GPS受信信号が劣化する要因の1つであることが明らかになった。
【0020】
そこで、そのリップルを小さくする本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0021】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1実施形態を示す情報端末用アンテナを示す外観を示す斜視図、図2は、その等価回路図である。
【0022】
図1において、GPSに使用される周波数1.5GHz帯の電波を受信する第1のアンテナ1と、無線LANに使用される周波数2.45GHz帯の電波を受信する第2のアンテナ2が誘電体基板3上に形成されている。また、誘電体基板3の下には回路基板(不図示)が形成され、さらに回路基板(不図示)には信号処理部(不図示)に信号を送信するためのケーブル5aが接続されている。また、ケーブル5bの先端にはコネクタ6aが取り付けられている。
【0023】
回路基板(不図示)には図2に示すような増幅器10と信号合成回路11が形成され、増幅器10の入力端子は第1のアンテナ1の信号送出端子に接続されている。また、信号合成回路11において、第1の入力端子11aには増幅器10の出力端子が接続され、第2の入力端子11bには第2のアンテナ2の信号送信用端子が接続され、さらに、出力端子11cにはケーブルの導線が接続されている。
【0024】
なお、第1のアンテナ1、第2のアンテナ2は平面パッチアンテナであり、それぞれ誘電体基板3を貫通する給電ピン(不図示)を通して増幅器10、信号合成回路11に接続されている。
また、図1において符号30は、誘電体基板3が搭載される表示装置33に取り付けられる他の送受信アンテナ30、符号34は表示装置にヒンジを介して取り付けられる入力装置、符号5bは送受信アンテナ30に接続されるケーブル5b、符号6aは、ケーブル5bの先端に接続されるコネクタ6bを示している。
【0025】
図1、図2において、第1、第2のアンテナ1、2間のアイソレーションは破線で示す第2のアンテナ2から第1のアンテナ1への方向で規定され、増幅器10の利得は第1のアンテナ1から信号合成回路11への方向で規定され、また、信号合成回路11のアイソレーションは第1の入力端子11aから第2の入力端子11bへの方向で規定される。
【0026】
図16で実線で示した特性線でリップルが乗っているのは、図1615の破線で示した矢印に示すように、アンテナ1,2間を回り込んで再び増幅器10に入力されることが原因である。
【0027】
アンテナ1,2間を回り込んで再び増幅器10に入力される1.5GHz帯信号は、アンテナ1,2間の1.5GHz帯のアイソレーションと増幅器10の1.5GHz帯の利得と信号合成回路11の1.5GHz帯のアイソレーションで構成されるループ利得により定量化される。
【0028】
ループ利得が−∞であれば、第1のアンテナ1で受信した1.5GHz帯信号が増幅器10で増幅された後に信号合成回路1を経由してケーブル5に出力される系のみに伝搬し、第2のアンテナ2から外部には放射しない。しかし、実際のループ利得は、増幅器10から第2のアンテナ2への回り込みの信号の振幅と位相の関係により、−∞の場合の利得に比べて、周波数によっては大きくなったり小さくなったりする。
【0029】
1.5GHz帯信号がアンテナ1,2間を回り込んでループ利得に影響を与えてしまう現象を定量化するため、ループ利得を横軸にし、ループ利得を−∞とした場合の増幅器10の利得と回り込みを考慮した場合の増幅器10の利得の差を縦軸にしてプロットすると、図3に示すようになる。
【0030】
図3の縦軸の利得差は、衛星から受信する1.5GHz帯の直接波Asin(x)と、信号合成回路11を介して第2のアンテナ2から第1のアンテナ2に入射する1.5GHz帯の回り込み波Bsin(x+t)とを重ね合わせた次式で求められる右辺のsin(x+α)の係数であるループ利得と、ループ利得を−∞とした場合の利得との差を示している。即ち、第2のアンテナ2から第1のアンテナ1への回り込み波が存在しない場合には、利得差は0dBとなる。なお、次式において、tは位相差を示している。
【数1】

【0031】
図3において、ループ利得が大きくなると利得差も大きくなることがわかる。例えば、ループ利得が−10dBまで劣化すると、本来得たい利得差(0dB)に比べて2〜2.5dB大きくなったり小さくなったりすることがある。リップルは、図16の破線で示す基準特性線に対して大きくなったり小さくなって現れ、利得差を基準特性線に対して0.5dB以下に抑えることが好ましいことが本発明者により確かめられている。したがって、リップルは、図16の破線で示した基準特性線に対する増加と減少の差を考慮すると、好ましい利得差の2倍、即ち1dB以下の範囲に抑えられる必要がある。
【0032】
よって、情報端末用アンテナにおいてリップルを1dB以下にするためには、図3において利得差を0.5dBより小さくする必要があり、そのためには第1のアンテナ1への回り込み信号の位相差として最悪となる0度の場合においてループ利得を−25dB以下にする必要がある。
【0033】
ここで、アンテナ1,2間のアイソレーションをX(dB)とし、増幅器10の利得から信号合成回路11のアイソレーションを引いた値をY(dB)とする。
【0034】
アイソレーションXが25dBより大きければ、Yが0dBであってもリップルを1dB以下に抑えることができる。一方、複合されるアンテナ同士の近接や一体化にともない、アイソレーションXは大きくとっても18dBでありそれ以下(X≦18)となってしまう。この場合、X−Y≧25(dB)となるように情報端末用アンテナを構成すれば、図3の利得差を0.5dB以下にすることが可能であり、リップルを許容範囲の1dB以下に抑えることが可能である。
【0035】
そのようなXとYの関係を示すと、図4に示す斜線の範囲になるようにループリ利得を確保しなければならない。また、X−Y<25(dB)の範囲ではアイソレーションが確保されないので利得−周波数特性のリップルの影響を受ける。
【0036】
図4において、例えば、アンテナ1,2間のアイソレーションXが12dB、増幅器10の利得が30dBである場合に、信号合成回路11のアイソレーションを43dBとすれば、Y=−13dBとなり、X−Y≧25となるのでリップルを1dB以下に抑えることができ、良質な情報端末用アンテナが得られる。
【0037】
図5は、アイソレーションを43dBとする信号合成回路11の具体例を示しており、第1の入力端11aと出力端11cの間に1.5GHz帯ローパスフィルタ12が接続され、第2の入力端11bと出力端11cの間に2.45GHzハイパスフィルタ13が接続されている。
【0038】
ローパスフィルタ12は、第1の入力端11aと出力端11cの間に直列に接続される4.7nHの第1、第2インダクタンス12a,12bと、第1、第2のインダクタンス12a,12bの接続点と接地線GNDの間に接続される2pFのコンデンサ12cと2.2nHの第3のインダクタンス12dを有している。
【0039】
ハイパスフィルタ13は、第2の入力端11bと出力端11cの間に直列に接続される1pFの第2、第3のコンデンサ13a,13bと、第2、第3のコンデンサ13a,13bの接続点と接地線GNDの間に接続される2.8pFの第4のコンデンサ13cと3.7nHの第4のインダクタンス13dを有している。
【0040】
この構成により、信号合成回路11は43dBのアイソレーションを確保している。なお、太い実線で囲まれた部分がLCで構成される共振器である。
【0041】
図6(a)は、図5に示す信号合成回路11の第1入力端11aと第2入力端11bの間を伝搬する信号の周波数−伝送特性を示している。図6(b)は、図5に示す信号合成回路11の第1入力端11aと出力端11cの間を伝搬する信号の周波数−伝送特性を示している。また、図6(c)は、図5に示す信号合成回路11の第2入力端11bと出力端11cの間を伝搬する信号の周波数−伝送特性を示している。
【0042】
なお、図5に示したハイパスフィルタ13とローパスフィルタ12については、上記した値に限定されるものではない。また、アイソレーションを確保するための共振器は1つに限られるものではなく、複数あってもよい。
【0043】
図7に示す実線は、図5に示した構成を有し且つ上記したコンデンサ12c,13a,13b,13cとインダクタンス12a,12b,12d,13dの値を調整するなどによって得られた周波数−利得特性線であり、破線は目標となる特性線である。図7によれば、リップルを1dB以下に抑えることが可能になった。
【0044】
ところで、図1では、第1のアンテナ1と第2のアンテナ2を同一基板上に形成したが、図8に示すように、第1のアンテナ1を第1の誘電体基板3a上に形成し、第2のアンテナ2を第2の誘電体基板3b上に形成し、それらの誘電体基板3a,3bを回路基板(不図示)上に取り付けた構造を採用してもよい。また、第1のアンテナ1と第2のアンテナ2を重ねて、或いは一体に形成してもよい。
【0045】
(第2の実施の形態)
図9は、本発明の第2実施形態に係る情報端末用アンテナを示す回路図である。図9において、図2と同じ符合は同じ要素を示している。
【0046】
図9において、第1のアンテナ1の信号送出端と信号合成回路11の第1入力端11aの間には、2つの増幅器10a,10bが直列に接続され、初段の増幅器10aと後段の増幅器10bの間には、不要な周波数帯の信号を取り除くバンドパスフィルタ14が直列に接続されている。また、信号合成回路11は、第1実施形態と同様に、第1入力端子11aと出力端子11cの間に接続される1.5GHz帯用のローパスフィルタ12と、第2入力端子11bと出力端子11cの間に接続される2.45GHz帯用のハイパスフィルタ13とから構成されている。
【0047】
この場合でも、例えば、第1のアンテナ1と第2のアンテナ2の間のアイソレーションを12dB、増幅器10a,10bの利得を30dB、信号合成回路11のアイソレーションを43dBとすれば、これにより得られる1.5GHz帯の利得−周波数特性線に生じるリップルは1dB以下になる。
【0048】
なお、信号合成回路11のアイソレーションは43dBより大きくしてもよい。
【0049】
(第3の実施の形態)
図10は、本発明の第2実施形態に係る情報端末用アンテナを示す回路図である。図10において、図2と同じ符合は同じ要素を示している。
【0050】
図10において、第1のアンテナ1の信号送出端と信号合成回路11の第1入力端の間には、2つの増幅器10a,10bが直列に接続されている。また、後段の増幅器10bの出力端は信号合成回路11の第1の入力端11aに接続されている。
【0051】
信号合成回路11は、回路基板4上に形成されたローパスフィルタ12とハイパスフィルタ13と、それらのフィルタ12,13の間に接続されるウィルキンソン型電力合成回路16とを有している。
【0052】
ウィルキンソン型電力合成回路16は、誘電体層上に形成されたマイクロストリップライン16aにより構成され、その両端の間には抵抗16bが接続され、またその中央部分は信号合成回路11の出力端11cに接続されている。また、マイクロストリップライン16aの一端はローパスフィルタ12を介して信号合成回路11の第1入力端11aに接続され、さらに、その他端はハイパスフィルタ13を介して信号合成回路11の第2入力端11bに接続されている。
【0053】
ウィルキンソン型電力合成回路16は、マイクロストリップライン16aの一方の端部から出力端11cには信号が伝搬し易いが、他方の端部には信号が伝搬されにくくなっていて、アイソレーションを取るのに適した回路となっている。
【0054】
この場合にも、信号合成回路11のアイソレーションは、第1実施形態と同様に、利得−周波数特性のリップルを1dB以下に抑える値となっている。
【0055】
(第4の実施の形態)
図11は、本発明の第4実施形態を示す情報端末用アンテナの信号合成回路であって、周波数の異なる2つのアンテナ1,2、増幅器3等の接続は第1実施形態と同様になっている。
【0056】
図11に示す信号合成回路11は、誘電体層上に形成されたウィルキンソン型電力合成回路17とハイパスフィルタ18を有している。
【0057】
ウィルキンソン型電力合成回路17は、誘電体基板上に形成されたマイクロストリップライン17aにより構成され、その両端の間には抵抗17bが接続され、またその中央部分は信号合成回路11の出力端11cに接続されている。また、マイクロストリップライン17aの一方の端部は信号合成回路11内で第1入力端11aに接続され、また、その他方の端部はハイパスフィルタ18を介して信号合成回路11内で第2入力端11bに接続されている。
【0058】
ハイパスフィルタ18は、ウィルキンソン型電力合成回路17のマイクロストリップライン17aの端部と信号合成回路11の第2入力端子11bの間に直列に接続される第1、第2のコンデンサ18a,18bと、それらのコンデンサ18a,18b同士の接続点と接地線GNDの間に接続された第3のコンデンサ18cとインダクタンス18dとを有している。本実施形態では、第1、第2のコンデンサ18a,18bは1pF、第3のコンデンサ18cは3.5pF、インダクタンス18dは3.9nHである。
【0059】
図12(a)は、そのような構成の信号合成回路11の第1入力端11aと第2入力端11bの間を伝搬する信号の周波数−伝送特性を示し、図12(b)は、信号合成回路11の第1入力端11aと出力端11cの間を伝搬する信号の周波数−伝送特性を示し、図12(c)は、信号合成回路11の第2入力端11bと出力端11cの間を伝搬する信号の周波数−伝送特性を示している。この場合、信号合成回路11内において、第1入力端11aから第2入力端11bへのアイソレーションは43dBとなっている。ただし、図12は、図11のウィルキンソン型電力合成回路17を構成するマイクロストリップライン17aが形成される誘電体基板(不図示)の厚さを0.8mm、マイクロストリップライン17aを構成する金箔の厚さを18μm、誘電体基板の誘電率を4.3、マイクロストリップライン17aのパターンの一端から中央までの長さを27mmとした場合の例である。
【0060】
(第5の実施の形態)
図13は、本発明の第5実施形態を示す回路図であり、図9と同じ符合は同じ要素を示している。
【0061】
図13において、GPS用の第1のアンテナ1の信号送出端と信号合成回路11の第1入力端11aの間には、2つの増幅器10a,10bが直列に接続され、初段の増幅器10aと後段の増幅器10bの間には、不要な周波数帯の信号を取り除くバンドパスフィルタ14が直列に接続されている。
【0062】
また、後段の増幅器10bの出力端は、第1の信号合成回路11の第1入力端11aに接続され、また、第1の信号合成回路11の第2入力端11bには無線LAN用の第2のアンテナ2の信号送出端が接続され、さらにその出力端11cには第2の信号合成回路21の第1入力端21aが接続されている。
【0063】
第2の信号合成回路21の第2入力端21bには、2.45GHz帯の無線LANの信号よりも高い周波数帯の電波、例えば5.2GHz帯の無線LANの電波を受信する第3のアンテナ9が接続されている。また、第2の信号合成回路21の出力端21cには出力端子23が接続されている。一般に5.2GHz帯の無線LAN用のアンテナで受信する電波は、GPS用のアンテナで受信する電波に比べて電力レベルが高い。
【0064】
第1の信号合成回路11は、第1入力端11aと出力端11cの間に接続されて1.5GHz帯の信号を通過させるローパスフィルタ12と、第2入力端11bと出力端11cの間に接続されて2.45GHz帯の信号を通過させるハイパスフィルタ13とを有している。また、第2の信号合成回路21は、第1入力端21aと出力端21cの間に接続されて1.5GHz帯、2.45GHz帯の信号を通過させるローパスフィルタ22と、第2入力端21bと出力端21cの間に接続されて5.2GHzの信号を通過させるハイパスフィルタ23とを有している。
【0065】
第1、第2の信号合成回路11,21のアイソレーションは、第1実施形態と同じように、電力レベルが最も低い1.5GHz帯の利得−周波数特性線に乗るリップルの大きさが1dB以下となるように、ハイパスフィルタ13,23とローパスフィルタ12,22が構成され、これによりGPSによる測定誤差が小さくなる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態に係る情報端末の外観を示す斜視図である。
【図2】図2は、本発明の第1実施形態に係る情報端末用アンテナの回路図である。
【図3】図3は、本発明の実施形態に係る情報端末用アンテナにおけるループ利得と利得差の関係を示す図である。
【図4】図4は、本発明の実施形態に係るアンテナ間アイソレーションXと増幅器及び信号合成回路におけるループ利得Yの関係を示す図である。
【図5】図5は、本発明の第1実施形態に係る情報端末用アンテナの信号合成回路の一例を示す回路構成図である。
【図6】図6(a)〜(c)は、図5に示す信号合成回路を備えた情報端末用アンテナの周波数−伝送特性図である。
【図7】図7は、本発明の第1実施形態に係る情報端末用アンテナの1.5GHz帯の出力信号の利得−周波数特性図である。
【図8】図8は、本発明の第1実施形態に係る情報端末の外観を示す斜視図である。
【図9】図9は、本発明の第2実施形態に係る情報端末用アンテナの回路図である。
【図10】図10は、本発明の第3実施形態に係る情報端末用アンテナの回路図である。
【図11】図11は、本発明の第4実施形態に係る情報端末用アンテナの信号合成回路を示す構成図である。
【図12】図12(a)〜(c)は、図12に示す信号合成回路を備えた情報端末用アンテナの周波数−伝送特性図である。
【図13】図13は、本発明の第5実施形態に係る情報端末用アンテナを示す回路図である。
【図14】図14は、従来の情報端末用アンテナを示す斜視図である
【図15】図15は、従来の情報端末用アンテナを示す回路図である。
【図16】図16は、従来の情報端末用アンテナにおける1.5GHz帯の出力信号の利得−周波数特性図である。
【符号の説明】
【0067】
1:第1のアンテナ
2:第2のアンテナ
3:誘電体基板
5a,5b:ケーブル
6a,6b:コネクタ
10:増幅器
11:信号合成回路
12:ローパスフィルタ
13:ハイパスフィルタ
14:バンドパスフィルタ
16,17:ウィルキンソン型電力合成回路
18:ハイパスフィルタ
21:信号合成回路
30:送受信アンテナ
31:受信アンテナ
32a、32b:ケーブル
33:表示装置
34:入力装置
35a、35b:コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる周波数帯域であり異なる電力レベルの電波信号を受信する複数のアンテナと、
前記複数のアンテナのうち受信電力の低い第1電波信号を受信する第1のアンテナの送出信号を増幅する少なくとも1つの信号増幅手段と、
前記複数のアンテナのうち前記第1電波信号とは周波数が異なり且つ前記第1電波信号よりも受信電力の高い別の電波信号を受信する少なくとも1つの別のアンテナの送出信号と前記信号増幅手段の出力信号とを合成する少なくとも1つの信号合成手段を備え、かつ前記第1電波信号の利得−周波数特性のリップルを1dB以下に抑えるのに十分なアイソレーションが確保されたことを特徴とする情報端末用アンテナ。
【請求項2】
前記信号増幅手段及び前記信号合成手段を通さずに前記別のアンテナから前記第1のアンテナへ至る経路のアイソレーションをX(dB)とし、さらに、前記第1のアンテナの信号送出端から前記信号増幅手段を介して前記信号合成手段における前記別のアンテナが接続される入力端へのループ利得をY(dB)とした場合に、X≦18(dB)且つX−Y≧25(dB)の関係が成立することを特徴とする請求項1に記載の情報端末用アンテナ。
【請求項3】
前記信号合成手段は、少なくとも1つの共振器を持つハイパスフィルタとローパスフィルタの組合せにより構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の情報端末用アンテナ。
【請求項4】
前記信号合成手段は、少なくとも1つの共振器を持つフィルタとウィルキンソン型電力合成器の組合せにより構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の情報端末用アンテナ。
【請求項5】
複数の前記アンテナはそれぞれ平面パッチアンテナであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載された情報端末用アンテナ。
【請求項6】
前記第1のアンテナは衛星通信を利用した信号を受信するアンテナであり、前記別のアンテナは地上波信号を受信するアンテナであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載された情報端末用アンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−319794(P2006−319794A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−141692(P2005−141692)
【出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】