説明

感光性樹脂組成物

【課題】
メッキレジストの銅箔との密着性が良好で、かつアルカリ性条件下での光硬化したメッキレジストの溶解が可能であるため、レジスト除去後に残渣が再付着することのない微細配線を形成可能なメッキレジストを提供することを目的とする。
【解決手段】
カルボキシル基を含有し、酸価が50〜500mgKOH/gである親水性ポリマー(A)、2〜6官能のラジカル重合性モノマー(B)、(メタ)アクリロイル基を有するリン酸エステル化合物(C)、および光ラジカル重合開始剤(D)を必須成分として含有し、光照射による硬化部分とアルカリ現像によりパターン形成可能なことを特徴とする感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は感光性樹脂組成物、およびそれを用いたプリント配線板の微細配線形成に好適なメッキレジストに関するものである。
さらに詳しくは、メッキ時の部分的保護に用いられるレジストであり、プリント配線板を形成する際に、レジストが無い部分にのみメッキする事ができるため、回路の微細な配線など金属を自在にパターニングできる、ネガ型のメッキレジストに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器、通信機器等に用いられるプリント配線板には、高密度配線化、演算処理速度の高速化の要求が強まっている。それに伴い多層プリント配線板の製造方法として、回路基板の導体層上に層間絶縁層を交互に積み上げていくビルドアップ方式の製造技術が注目されている。
【0003】
一般的にビルドアップ方式の配線形成方法としては、例えば、銅張積層板上に、感光性樹脂のメッキレジストを形成し、光照射、アルカリ現像することでパターンを形成し、電解メッキを行い、導体層を形成する。ついで強アルカリ水溶液によりメッキレジストを膨潤剥離させた後に、非配線パターン部の無電解メッキをエッチングすることで配線パターンを形成するセミアディティブ法が知られている。
【0004】
セミアディティブ法で使用されるメッキレジストは、多官能アクリルモノマーとカルボキシル基含有の親水性ポリマーと光ラジカル重合開始剤からなるネガ型の感光性樹脂が用いられる(例えば特許文献1)。そして、光照射部はアクリル基が光ラジカル重合により架橋し硬化することで不溶化し、未照射部は親水性ポリマーによりアルカリに溶解することでパターン形成する。またパターン形成後の光硬化部の樹脂の剥離には強アルカリ水溶液を用いて樹脂部分を膨潤させ、さらにスプレー処理することで剥離する必要がある。
【0005】
演算処理速度の高速化に伴う高周波化により、配線表面の凸凹による伝送損失が発生するため、銅張積層板表面に形成される銅箔は平滑にする必要がある。
銅箔を平滑にするためには、メッキレジストと銅箔との高密着性が必要になる。しかしメッキレジストと銅箔との密着性と剥離性は相反し、両立が困難である。
このため微細配線パターンを形成するために、メッキレジストの銅箔との密着が良好で、かつ弱アルカリ性条件下で光硬化したメッキレジストの膨潤剥離が容易で、再付着しないメッキレジストが必要になる。
【0006】
光硬化したメッキレジストを容易に除去する方法としては、例えば、親水性樹脂のカルボキシル基の比率を上げ親水性を上げる方法(特許文献2)等が提案されている。
しかし、親水性を上げる方法では、光照射後のアルカリ現像によっても膨潤するため解像度が低下する問題がある。
また、メッキレジストの再付着を防止する方法としては、例えば、超音波を行う方法(特許文献3)等が提案されている。しかし、超音波による方法では微細配線パターンが剥離する問題がある。
【0007】
メッキレジストの密着性と剥離性を両立する方法として、例えば、加熱処理することで熱分解してアルカリを浸透させやすくする方法(特許文献4)等が提案されている。
しかし、熱分解で架橋を完全分解することはできず膨潤剥離となるため、10μm以下の配線や逆台形形状の配線間では剥離困難でパターン残りが発生する問題がある。
【0008】
メッキレジストの除去において、膨潤剥離での除去は、一旦剥離した微細パターン状の破片がアルカリ液中に残るため、その一部が配線上に再付着するリスクがある。しかし、溶解での除去であれば剥離片が発生しないため、再付着するリスクが一切ない。
従って、メッキレジストの銅箔との密着が良好で、かつアルカリ性条件下での光硬化したメッキレジストの溶解による除去が容易で、再付着しない微細配線可能なメッキレジストが要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−244241号公報
【特許文献2】特開平9−325487号公報
【特許文献3】特開平5−29210号公報
【特許文献4】再公表特許WO2005/022260
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、メッキレジストの銅箔との密着が良好で、かつアルカリ性条件下での光硬化したメッキレジストの溶解による完全な除去が可能で、再付着することのない微細配線可能なメッキレジストの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、カルボキシル基を含有し、酸価が50〜500mgKOH/gである親水性ポリマー(A)、2〜6官能のラジカル重合性モノマー(B)、(メタ)アクリロイル基を有するリン酸エステル化合物(C)、および光ラジカル重合開始剤(D)を必須成分として含有し、光照射による硬化させた後にアルカリ現像によりパターン形成を行った後に、硬化部分がpH12.0〜14.0のアルカリ溶液で溶解可能なことを特徴とする感光性樹脂組成物;並びにこの感光性樹脂組成物を用いることを特徴とする微細配線パターンの製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明はメッキレジストの銅箔との密着が良好で、かつアルカリ性条件下での光硬化したメッキレジストの溶解が可能で、再付着することのない微細配線を形成可能なメッキレジストを提供する。したがって、歩留まりの飛躍的な向上の効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の感光性樹脂組成物はカルボキシル基を含有し、酸価が50〜500mgKOH/gである親水性ポリマー(A)、2〜6官能のラジカル重合性モノマー(B)、(メタ)アクリロイル基を有するリン酸エステル化合物(C)、および光ラジカル重合開始剤(D)を必須成分として含有することを特徴とする。
また本発明の感光性樹脂組成物は光照射による硬化部分と未硬化部分がアルカリ現像によりパターン形成が可能であり、その後、硬化部分をpH12.0〜14.0のアルカリ溶液で処理することにより溶解させ、完全に除去することが可能である。
【0014】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレートまたはメタクリレート」を、「(メタ)アクリル酸」とは「アクリル酸またはメタクリル酸」を、「(メタ)アクリルポリマー」とは「アクリルポリマーまたはメタクリルポリマー」を、「(メタ)アクリル樹脂」とは「アクリル樹脂またはメタクリル樹脂」を、「(メタ)アクリロイル基」とは「アクリロイル基またはメタクリロイル基」を、「(メタ)アクリロイロキシ」とは「アクリロイロキシまたはメタクリロイロキシ」を意味する。
【0015】
以下において、本発明の感光性樹脂組成物の構成成分である(A)〜(D)について順に説明する。
【0016】
本発明における第一の必須成分である親水性ポリマー(A)は、アルカリ現像性を高めるために、分子内にカルボキシル基を有する。
【0017】
親水性ポリマー(A)のカルボキシル基の含有量は酸価で表わすことができる。
ここで酸価とは樹脂1gを中和するために必要な水酸化カリウムのmg数をいう。
【0018】
本発明における酸価はアルカリ性滴定溶液を用いた指示薬滴定法により測定できる。
酸価は、JIS K0070に基づいて測定するが、その具体的な方法は以下の通りである。
(i)親水性ポリマー(A)約0.1〜10gを精秤して三角フラスコに入れ、続いて中性メタノール・アセトン混合溶媒[アセトンとメタノールを1:1(容量比)で混合したもの]を加え溶解する。
(ii)フェノールフタレイン指示薬数滴を加え、0.1mol/L水酸化カリウム滴定用溶液で滴定する。指示薬の微紅色が30秒続いたときを中和の終点とする。
(iii)次式を用いて決定する。
酸価(mgKOH/g)=(A×f×5.61)/S
ただし、A:0.1mol/L水酸化カリウム滴定用溶液のmL数
f:0.1mol/L水酸化カリウム滴定用溶液の力価
S:親水性ポリマー採取量(g)
【0019】
本発明の親水性ポリマー(A)の酸価は50〜500mgKOH/gであり、好ましくは100〜200mgKOH/gである。
50mgKOH/g未満であると、メッキレジストの除去性が不十分であり、500mgKOH/gを超えるとメッキレジストの密着性が悪い。
【0020】
本発明で用いることができるカルボキシル基を含有する親水性ポリマー(A)の具体的な例としては、分子内にカルボキシル基を有する親水性(メタ)アクリル樹脂(A1)、 無水マレイン酸−スチレン共重合体の(メタ)アクリロイル基含有アルコール付加物(A2)、エポキシ基を含有するポリマーに(メタ)アクリロイル基含有モノカルボン酸を反応させてエポキシ基を開環させて水酸基を生成させ、この水酸基の一部に多価カルボン酸もしくは多価カルボン酸無水物を付加させた樹脂(A3)などがあげられる。
【0021】
本発明の親水性(メタ)アクリル樹脂(A1)は既存の方法により(メタ)アクリル酸誘導体を重合させることで得ることができる。
【0022】
親水性(メタ)アクリル樹脂(A1)の製造方法としてはラジカル重合が好ましく、溶液重合法が分子量を調節しやすいため好ましい。
【0023】
親水性(メタ)アクリル樹脂(A1)を構成するモノマー(a1)としては、(A1)中にカルボキシル基を導入するために(メタ)アクリル酸(a11)および(A1)のガラス転移点や基材密着性を調整するために(メタ)アクリル酸エステル(a12)を用いることができる。
【0024】
(a12)としてはITO基板との密着性の観点から(メタ)アクリル酸メチルまたはヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0025】
親水性(メタ)アクリル樹脂(A1)を構成するモノマー(a1)としては、感光性樹脂組成物の鉛筆硬度の観点から、芳香環含有ビニル化合物(a13)を併用してもよい。このような(a13)としてはスチレンがあげられる。
【0026】
親水性(メタ)アクリル樹脂(A1)は、さらに保護膜の鉛筆硬度を向上させる目的で必要により(メタ)アクリロイル基を側鎖または末端に導入させることが好ましい。
【0027】
側鎖に(メタ)アクリロイル基を導入する方法としては、例えば下記の(1)および(2)の方法があげられる。
【0028】
(1)(a12)の一部にイソシアネート基と反応しうる基(水酸基または1級もしくは2級アミノ基など)を有するモノマーを使用して重合体を製造し、その後(メタ)アクリロイル基とイソシアネート基を有する化合物[(メタ)アクリロイロキシエチルイソシアネート等]を反応させる方法。
【0029】
(2)(a11)または(a12)のうちの少なくとも一部にエポキシ基と反応しうる基(水酸基、カルボキシル基または1級もしくは2級アミノ基など)を有するモノマーを使用して重合体を製造し、その後(メタ)アクリロイル基とエポキシ基を有する化合物(グリシジル(メタ)アクリレート等)を反応させる方法。
【0030】
本発明の無水マレイン酸−スチレン共重合体の(メタ)アクリロイル基含有アルコール付加体(A2)は、無水マレイン酸−スチレン共重合体(a21)に(メタ)アクリロイル基を含有するアルコール(a22)を付加させたものであれば特に限定されることなく使用することができる。
【0031】
無水マレイン酸−スチレン共重合体(a21)としては無水マレイン酸とスチレンを既存の方法で共重合させることで得ることができるほか、市販品(例えばサートマー・ジャパン(株)製、「SMA3000P」)を用いることもできる。
【0032】
(a22)としては(メタ)アクリロイル基を含有するアルコールであれば特に限定なく使用することができ、感光性樹脂組成物の硬化性の観点から例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートがあげられる。
【0033】
前記のエポキシ基を含有するポリマーに(メタ)アクリロイル基含有モノカルボン酸を反応させてエポキシ基を開環させて水酸基を生成させ、この水酸基の一部に多価カルボン酸もしくは多価カルボン酸無水物を付加させた樹脂(A3)は、エポキシ基を含有するポリマー(a31)に(メタ)アクリロイル基含有モノカルボン酸(a32)を付加した後、多価カルボン酸もしくは多価カルボン酸無水物(a33)を付加させたものであれば特に限定されることなく使用することができる。
【0034】
エポキシ基を含有するポリマー(a31)としては、フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂[例えば、EOCN―102S(日本化薬社製)など]、ビスフェノールA骨格のエポキシ樹脂[例えば、1007(三菱化学製)]、グリシジル変性ポリビニルフェノールなどが挙げられる。
(a31)のうち好ましいのは硬度の観点からクレゾールノボラックエポキシ樹脂である。
【0035】
(メタ)アクリロイル基含有モノカルボン酸(a32)としては、アクリル酸、メタクリル酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸等が挙げられる。
【0036】
多価カルボン酸もしくは多価カルボン酸無水物(a33)としては、脂肪族不飽和多価カルボン酸およびその無水物(a331)、脂肪族飽和多価カルボン酸およびその無水物(a332)、芳香族多価カルボン酸およびその無水物(a333)が挙げられる。
脂肪族不飽和多価カルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸などが挙げられる。
脂肪族飽和多価カルボン酸としては、シュウ酸、コハク酸、フタル酸、アジピン酸、ドデカン二酸、ドデセニルコハク酸、ペンタデセニルコハク酸及びオクタデセニルコハク酸、ヘキサヒドロフタル酸などが挙げられる。
芳香族多価カルボン酸としては、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸などが挙げられる。
感度及び現像性の観点から、酸無水物が好ましく、これらのうち好ましいのは、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸であり、さらに好ましいのはテトラヒドロ無水フタル酸である。
【0037】
本発明の感光性樹脂組成物中の親水性樹脂(A)の含有量は、(A)〜(D)の合計重量に基づいて、通常30〜95重量%、好ましくは40〜85重量%である。
30重量%未満では樹脂硬化部分のアルカリ溶解性が悪化するため好ましくなく、95重量%を超えると樹脂硬化部分のアルカリ溶解性が高くなり過ぎてパターン形成が困難となる。
【0038】
本発明の第二の必須成分であるラジカル重合性モノマー(B)としては2〜6官能のものであれば特に限定することなく使用することができる。
このようなラジカル重合性モノマー(B)としては(メタ)アクリロイル基含有モノマー(B1)およびアリル基含有モノマー(B2)などが挙げられる。ラジカル重合性モノマー(B)は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
(メタ)アクリロイル基含有モノマー(B1)としては、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートおよびジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどがあげられる。これらのうち感光性樹脂組成物の硬化性の観点からペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートおよびジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。
【0040】
アリル基含有モノマー(B2)としてはペンタエリスリトールトリアリル エステル、フタル酸ジアリルエステル、トリメリット酸トリアリルエステルおよびピロメリット酸テトラリルエステルなどがあげられる。これらのうち感光性樹脂組成物の硬化性の観点からトリメリット酸トリアリルエステルが好ましく用いられる。
【0041】
本発明の感光性樹脂組成物中のラジカル重合化合物(B)の含有量は、(A)〜(D)の合計重量に基づいて、通常1〜40重量%、好ましくは3〜30重量%である。
1重量%未満では感光性樹脂組成物の硬化性が不十分となるためパターン形成が困難となり、40重量%を超えると樹脂硬化部分の溶解性が悪化するため好ましくない。
【0042】
本発明の第三の必須成分であるリン酸エステル化合物(C)としては、感光性樹脂組成物の硬化性の観点から、(メタ)アクリロイル基を含有しているリン酸から誘導されるエステル化合物である。
そのようなリン酸エステル化合物(C)としては、例えば下記一般式(1)で示されるようなリン酸エステル化合物(C1)が挙げられる。
【0043】
【化1】

[式中、Rは水素原子またはメチル基;Rは炭素数1〜4の直鎖または分岐のアルキレン基を表す。nは0〜3の整数である。aは1または2の整数である。]
【0044】
式(1)で示されるリン酸エステル化合物(C1)の具体例としては、市販のものを入手して用いることができる。
例えばKAYAMER PM−2(日本化薬(株)製、エチルメタクリレートアシッドホスフェート)およびKAYAMER PM−21(日本化薬(株)製、2−メタクリロイロキシエチルカプロエートアシッドホスフェート)などが挙げられる。
【0045】
本発明の感光性樹脂組成物中のリン酸エステル化合物(C)の含有量は、(A)〜(D)の合計重量に基づいて、通常0.5〜15重量%、好ましくは1〜10重量%である。
0.5重量%未満では感光性樹脂組成物の硬化物の銅張積層板に対する密着性が低下し、15重量%を超えると樹脂硬化部分のアルカリ溶解性が高くなりすぎてパターン形成が困難となる。
【0046】
本発明の第4の必須成分である光重合開始剤(D)としては公知の光ラジカル重合開始剤が挙げられ、例えば、アセトフェノン誘導体(D1)、アシルフォスフィンオキサイド誘導体(D2)、チタノセン誘導体(D3)など、およびこれらの併用があげられる。
【0047】
アセトフェノン誘導体(D1)としては、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、4−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノ−1−プロパノン、ジメチルベンジルケタール、メチルベンゾイルフォーメート、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン]が挙げられる。
【0048】
アシルフォスフィンオキサイド誘導体(D2)としては、例えば、トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドが挙げられる。
【0049】
チタノセン誘導体(D3)としては、例えば、ビス(η−2,4−シクロペンタジエンー1―イル)−ビス(2,6ージフルオロー3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニ
ル)チタニウムが挙げられる。
【0050】
これら(D1)〜(D3)のうち、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノ−1−プロパノンおよび2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オンが挙げられ、反応性の観点から2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノ−1−プロパノンが好ましい。
【0051】
光ラジカル重合開始剤(D)は、市販のものが容易に入手することができ、例えば2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノ−1−プロパノンとしては、イルガキュア907、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オンとしては、イルガキュア369(BASF社製)等が挙げられる。
【0052】
本発明の感光性樹脂組成物中の光重合開始剤(D)の含有量は、(A)〜(D)の合計重量に基づいて、通常1〜20重量%、好ましくは 5〜15重量%である。
1重量%未満では光硬化性が不十分となるため好ましくなく、20重量%を超えると形成したパターンの胴張積層板に対する密着性が低下する。
【0053】
本発明にかかる感光性樹脂組成物は、必要によりさらにその他の成分を含有していてもよい。その他の成分としては、増感剤、重合禁止剤、溶剤、シランカップリング剤、酸化防止剤などがあげられる。
【0054】
本発明のプリント配線板等の微細な 配線パターンの製造方法は以下の通りである。
(1)感光性樹脂組成物を銅張積層板へ塗布して乾燥する。
(2)フォトマスクを通して紫外線などの光照射により硬化させる。
(3)アルカリ現像により未硬化部分だけを除去してパターン形成を行う。
(4)アルカリ現像で除去した部分に電解メッキを施し、導体層を形成する。
(5)樹脂硬化部分をpH12.0〜14.0のアルカリ溶液で溶解させる。
(6)非配線パターン部の銅張積層板をエッチングする。
【0055】
アルカリ現像の際に用いる現像液はアルカリ性の溶液であれば特に限定されるわけではないが水酸化ナトリウム水溶液および水酸化カリウム水溶液が好ましく用いられる。
アルカリ現像液のpHとしては10.0〜12.0であることが好ましい。現像液のpHが10.0よりも低いと現像性が悪化し、12.0よりも高いと樹脂硬化部分が溶解するためパターン形成が困難となる。
【0056】
アルカリ現像を行う時間は、通常0.5〜5分であり、アルカリ現像を行う温度は、通常10〜50℃である。
【0057】
電解メッキによる導体層形成後に硬化樹脂部分だけを溶解させるためのアルカリ溶液はアルカリ性の溶液であれば特に限定されるわけではないが水酸化ナトリウム水溶液および水酸化カリウム水溶液が好ましく用いられる。
このアルカリ溶液のpHとしては12.0〜14.0であり、12.5〜13.5が好ましい。アルカリ溶液のpHが12.0未満では樹脂硬化部分を十分に溶解させることができない。
【0058】
樹脂硬化部分を溶解させるためにアルカリ溶液で処理を行う時間としては1〜5分間が好ましく、より好ましくは1.5分〜3分間である。銅張積層板を処理時間が1分間より短いと樹脂硬化部分が完全に溶解せず、5分間より長いと導体層を腐食するため好ましくない。アルカリ溶液で処理を行う温度は、通常10〜50℃である。
【0059】
非配線パターン部をエッチングする方法としては銅張積層板をエッチング液に浸す方法があげられる。エッチング液としては銅を溶解させるものであれば特に限定することなく使用することができるが、塩化第二鉄、塩化第二銅、塩酸、硫酸、過酸化水素、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムの水溶液などが挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらのうち銅の溶解性の観点から塩化第二鉄、塩化第二銅が好ましく用いられる。
【実施例】
【0060】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、%は重量%、部は重量部を示す。
【0061】
<合成例1:親水性ポリマー(A−1)の合成>
温度計、撹拌機、滴下ロート、および還流冷却器を備えた4口フラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート120部を加え、メタクリル酸メチル2部、スチレン68部、メタクリル酸30部を仕込み、70℃で12時間反応させた。その後グリシジルメタクリレート(東京化成工業社製)20部加え、触媒としてトリエチルアミン0.5部加えた後、75℃で18時間反応させることで、本発明のカルボキシル基を有する親水性ポリマー(A−1)を得た。
【0062】
<合成例2:親水性ポリマー(A−2)の合成>
温度計、撹拌機、滴下ロート、および還流冷却器を備えた4口フラスコに、スチレン-無水マレイン酸共重合体(サートマー・ジャパン(株)製、「SMA3000P」)90部、およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート150部を仕込み、室温で均一溶解した。ついで2−ヒドロキシメタクリレート(東京化成工業社製)60部を加え、75℃で10時間反応させることで、本発明のカルボキシル基を有する親水性ポリマー(A−2)を得た。
【0063】
<比較合成例1:比較例のためのポリマー(A’−1)の合成>
温度計、撹拌機、滴下ロート、および還流冷却器を備えた4口フラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100部を加え、メタクリル酸メチル30部、スチレン68部、メタクリル酸メチル2部を仕込み、70℃で12時間反応させることで、比較例で使用するポリマー(A’−1)を得た。
【0064】
<実施例1>
温度計、撹拌機、滴下ロート、および還流冷却器を備えた4口フラスコに、合成例1で合成のカルボキシル基を有する親水性ポリマー(A−1)140部、4官能アクリレートモノマー(B−1)(三洋化成工業社製、ネオマーEA−300)25部、メタクリロイル基を有するリン酸エステル化物(C−1)(日本化薬製、KAYAMER PM−21)5部、光重合開始剤(D−1)(BASF社製、イルガキュア907)5部およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート110部を加え、25℃で30分攪拌溶解を行い、本発明の感光性樹脂組成物(Q−1)を得た。
【0065】
<実施例2>
実施例1における親水性ポリマー(A−1)の代わりに合成例2で合成した親水性ポリマー(A−2)140部を使用した以外は実施例1と同様にして、本発明の感光性樹脂組成物(Q−2)を得た。
【0066】
<実施例3>
実施例1における4官能アクリレートモノマー(B−1)の代わりに5〜6官能アクリレートモノマー(三洋化成工業社製、ネオマーDA−600)25部を使用した以外は実施例1と同様にして、本発明の感光性樹脂組成物(Q−3)を得た。
【0067】
<比較例1>
実施例1におけるリン酸エステル化物(C−1)を使用せず、親水性ポリマー(A−1)140部を150部に変更した以外は実施例1と同様にして、比較のための感光性樹脂組成物(Q’−1)を得た。
【0068】
<比較例2>
実施例1における親水性ポリマー(A−1)140部の代わりに比較合成例1で合成のポリマー(A’−1)140部を使用した以外は実施例1と同様にして、比較のための感光性樹脂組成物(Q’−2)を得た。
【0069】
<比較例3>
実施例1における4官能アクリレート(B−1)25部の代わりに単官能アクリレートモノマーであるフェノキシエチルアクリレート(B’−1)(共栄社化学製、ライトアクリレートPO−A)25部を使用した以外は実施例1と同様にして、比較のための感光性樹脂組成物(Q’−3)を得た。
【0070】
下記の方法で銅張積層板上の銅箔との密着性およびメッキレジストの除去性の性能を評価した。
その評価結果を表1に示す。
【0071】
【表1】

【0072】
<密着性の評価方法>
感光性樹脂組成物を、両面に12μmの銅箔をプリプレグに張り合わせた厚みが0.8mmのガラス基材銅張積層板(三菱ガス化学(株)社製、「CCL−HL830」)に、乾燥後の感光性樹脂層の厚みが20μmとなるようにナイフコーターにて塗工速度0.3m/分で全面塗布した。70℃で3分間乾燥することによりメッキレジストの塗膜を形成した。
【0073】
形成したメッキレジストの塗膜に、投影型露光装置(株式会社オーク製作所社製、HMW−661F−01)を用いて配線パターンマスクを通して、得られた塗膜に超高圧水銀灯の光を60mJ/cm照射して硬化させた。
30℃の0.05%水酸化カリウム水溶液(pH11.9)を90秒間スプレーで吹き付けてアルカリ現像して、パターンを形成した。
水洗、エアーブロー後、循風乾燥機内で、60℃で20分間乾燥させた。
【0074】
観察するパターンは、10×200μmのマスク開口部から得られた部分のメッキレジストであり、このうち、縦4列×横5列の20個のパターンのうち、剥がれずに残っているパターンの個数を光学顕微鏡の倍率100倍の条件より観察し、以下の基準により評価した。
○:パターン部の剥れが全くない(20/20個)
△:一部、パターン部の剥がれがある(6/20〜19/20個)
×:パターン部がほとんど剥がれている(0/20〜5/20個)
【0075】
<メッキレジストの除去性の評価方法>
密着性の評価で使用したテストピースに以下の条件で電解メッキを行った。
前処理としてテストピースを酸性脱脂剤(PAC−200;ムラタ(株)製)に5分間浸漬させ、ついで10%硫酸水溶液に1分間浸漬させた。次にこのテストピースをメッキ溶液(硫酸銅30重量%と濃硫酸10重量%を含む水溶液)に浸漬させ、1.5A/dmの電流密度で30分間処理を行い、電解メッキを行った。
【0076】
0.7%水酸化カリウム水溶液(pH13.2)中に3分間テストピースを浸漬した後に取り出して、循風乾燥機内で、60℃、20分間乾燥させた。
テストピース の表面を光学顕微鏡の倍率100倍で観察し、以下の基準により評価した。
○:メッキレジストが全て溶解して除去されている
△:メッキレジストが膨潤して一部浮き上がっているが完全には除去されずにテストピース上に残っている
×:メッキレジストが剥離せずにテストピース上に残っている
なお、比較例1と3は、密着性の評価で剥がれが多かったために除去性の評価は行わなかった。
【0077】
本発明の実施例1〜3の感光性樹脂組成物の硬化物は、銅箔との密着性に優れ、硬化後のメッキレジストが溶解し、再付着することがない。
一方、(メタ)アクリロイル基を有するリン酸エステル化物(C)を含まない比較例1は銅箔との密着性が悪い。
ポリマー(A’−1)を使用した比較例2は、メッキレジストの除去性が悪い。
単官能アクリレートモノマー(B’−1)を使用した比較例3は露光後の硬化性が不十分であり、銅箔との密着性が悪かった。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の感光性樹脂組成物は、銅箔に対する密着性と除去性の両方が優れているため、多層プリント配線板の製造時に用いるメッキレジストとしても有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシル基を含有し、酸価が50〜500mgKOH/gである親水性ポリマー(A)、2〜6官能のラジカル重合性モノマー(B)、(メタ)アクリロイル基を有するリン酸エステル化合物(C)、および光ラジカル重合開始剤(D)を必須成分として含有し、光照射により硬化させ、アルカリ現像によりパターン形成を行った後に、硬化部分がpH12.0〜14.0のアルカリ溶液で溶解可能なことを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項2】
該リン酸エステル化合物(C)が下記一般式(1)で表されるリン酸エステル化合物(C1)である請求項1記載の感光性樹脂組成物。
【化1】

[式中、Rは水素原子またはメチル基;Rは炭素数1〜4の直鎖または分岐のアルキレン基を表す。nは0〜3の整数である。aは1または2の整数である。]
【請求項3】
(A)〜(D)の合計量に基づいて、該リン酸エステル化合物(C)を0.5〜15重量%含有する請求項1または2記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか記載の感光性樹脂組成物を光照射により硬化させ、ついでアルカリ現像によりパターン形成を行った後に、樹脂硬化部分をpH12.0〜14.0のアルカリ溶液で溶解除去させて、微細な配線を形成することを特徴とする配線パターンの製造方法。

【公開番号】特開2013−92721(P2013−92721A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235955(P2011−235955)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】