説明

拡大観察用内視鏡装置

【課題】拡大観察用観察窓が粘膜面に当接していることを確認することができるようにして、最も良好な解像力を得られる状態で拡大観察を行うことができる拡大観察用内視鏡装置を提供すること。
【解決手段】外表面に当接する被写体の拡大観察像を取り込むための拡大観察用観察窓15が設けられた拡大観察用内視鏡装置において、拡大観察用観察窓15の外縁部に隣接して拡大観察用観察窓15を間に挟んだ位置関係の複数箇所に、相互間の電気的導通状態を検出するための電極16A,16Bを露出配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、外表面に当接する被写体の顕微鏡的拡大観察像を取り込むための拡大観察用観察窓が挿入部の先端に設けられた拡大観察用内視鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
体内の管腔臓器内を内視鏡で視覚的に観察して病変等の有無を検査する手技が広く一般に行われている。しかし、そのような内視鏡検査で病変を見つけても、その病変が癌であるか否か等の確定診断を行うのは困難な場合が多い。
【0003】
そこで、内視鏡検査で怪しいと思われた部分については生検鉗子等を用いて組織採取が行われるが、癌でも何でもない場合が大半であるにもかかわらず、単なる検査のために体内の管腔壁の粘膜を損傷させて出血させてしまうことになる。
【0004】
そこで近年は、例えば共焦点内視鏡等のように1mmに満たない範囲の顕微鏡的拡大像を得ることができる拡大観察用内視鏡装置が開発され、生検組織を採取することなく、内視鏡による直接観察だけで癌であるか否かの確定診断を行えるようになってきている(例えば、特許文献1、2、3)。
【特許文献1】特開2004−344201
【特許文献2】特開2005−80769
【特許文献3】特開2005−640
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような拡大観察用内視鏡装置で顕微鏡的拡大観察像を取り込む際には、被写体である体内の粘膜面に拡大観察用観察窓を当接させた状態にする必要がある。
しかし、内視鏡観察画像からは拡大観察用観察窓が粘膜面に当接しているかどうかの判別がつかないので、拡大観察用観察窓が粘膜面に当接せずに、ピントが甘くて解像力の点で折角の拡大観察機能が完全に発揮されない状態で拡大観察が行われてしまう場合があった。
【0006】
そこで本発明は、拡大観察用観察窓が粘膜面に当接していることを確認することができるようにして、最も良好な解像力を得られる状態で拡大観察を行うことができる拡大観察用内視鏡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の拡大観察用内視鏡装置は、外表面に当接する被写体の拡大観察像を取り込むための拡大観察用観察窓が設けられた拡大観察用内視鏡装置において、拡大観察用観察窓の外縁部に隣接して拡大観察用観察窓を間に挟んだ位置関係の複数箇所に、相互間の電気的導通状態を検出するための電極を露出配置したものである。
【0008】
なお、被写体の通常観察像を被写体との間に距離をおいた位置から取り込むための通常観察用観察窓が併設されていてもよく、通常観察像を表示するためのモニタと拡大観察像を表示するためのモニタの少なくとも一方に、複数の電極間の電気的導通状態が表示されるようにするとよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、拡大観察用観察窓の外縁部に隣接して拡大観察用観察窓を間に挟んだ位置関係の複数箇所に、相互間の電気的導通状態を検出するための電極を露出配置したことにより、複数箇所の電極が共に粘膜に触れるとその間が電気的に導通して、拡大観察用観察窓が粘膜面に当接していることを術者が確認することができるので、最も良好な解像力を得られる状態で拡大観察を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
外表面に当接する被写体の拡大観察像を取り込むための拡大観察用観察窓が設けられた拡大観察用内視鏡装置において、拡大観察用観察窓の外縁部に隣接して拡大観察用観察窓を間に挟んだ位置関係の複数箇所に、相互間の電気的導通状態を検出するための電極を露出配置したものである。
【実施例】
【0011】
図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図2は、本発明の拡大観察用内視鏡装置のシステム全体を略示しており、体内に挿入される可撓性の挿入部1の最先端部に、観察窓や照明窓等が配置された先端部本体2が連結され、挿入部1の基端には、各種操作部材が配置された操作部3が連結されている。
【0012】
操作部3から延出するコードの先端には、内視鏡の外部に配置されたビデオプロセッサ5と共焦点像プロセッサ6とに分かれて接続される第1のコネクタ7と第2のコネクタ8とが設けられている。
【0013】
9は、ビデオプロセッサ5から出力される映像信号による通常観察画像を表示するためのメインモニタ、10は、共焦点像プロセッサ6から出力される映像信号による顕微鏡的拡大観察画像を表示するための拡大像モニタである。
【0014】
図3は、挿入部1の最先端部分の斜視図であり、先端部本体2の先端面に、照明光を放射するための照明窓11と、その照明窓11から放射された照明光により照明された被写体の通常観察像を被写体との間に距離をおいた位置から取り込むための通常観察用観察窓12とが、前方に向けて並んで配置されている。13は、処置具挿通チャンネルの出口開口である。なお、送気送水ノズル等の図示は省略されている。
【0015】
15は、被写体の表面に当接されてその被写体の顕微鏡的拡大観察像を取り込むための拡大観察用観察窓であり、先端部本体2の先端面から前方に突出した突出部2aの先端に前方に向けて配置されている。
【0016】
そして、拡大観察用観察窓15の外縁部に隣接して拡大観察用観察窓15を間に挟んだ位置関係の二箇所に、相互間の電気的導通状態を検出するための電極16A,16Bが、拡大観察用観察窓15とほぼ同面位置に拡大観察用観察窓15と同方向に向けて露出配置されている。この実施例では二つの電極16A,16Bが拡大観察用観察窓15の光軸周りの180°対称位置に配置されている。
【0017】
図4は挿入部1の最先端部分の側面断面図であり、通常観察用観察窓12内には、広い視野角(例えば100°〜140°程度)を得るための対物光学系21が配置されて、その対物光学系21による被写体の投影位置に固体撮像素子22の撮像面が配置されている。23は、固体撮像素子22で得られた撮像信号を伝送するための信号ケーブルである。
【0018】
拡大観察用観察窓15内には共焦点光学系25が配置されていて、その奥に配置された光学単ファイバ26(シングルモードファイバ)の先端面26aの位置と拡大観察用観察窓15の外表面位置とが共焦点の位置関係になるようにセットされている。
【0019】
光学単ファイバ26の先端面26aは、例えば電磁力等を用いた走査機構27により共焦点光学系25の光軸に対して垂直な平面上で2次元的に走査され、光学単ファイバ26内を伝送されてきてその先端面26aから射出されたレーザ光が拡大観察用観察窓15の外表面に当接する粘膜で焦点を結んでそこから反射されると、その反射光が光学単ファイバ26の先端面26aに焦点を結ぶ。体内の粘膜面に蛍光色素が散布されている場合には、レーザ光により励起された蛍光が被写体になる。
【0020】
したがって、光学単ファイバ26内を通って基端側に戻される反射光をその先端面26aの走査運動に対応する位置に表示させることにより、拡大観察用観察窓15の外表面位置の被写体の1mm以下程度の領域(例えば0.5mmの領域)の鮮明な顕微鏡的拡大観察像を得ることができる。
【0021】
ただし、拡大観察用観察窓15内の光学系が、光学単ファイバ26の先端面26aをピンホールの代用とする共焦点光学系25を用いていない、いわゆる通常の拡大観察光学系により顕微鏡的拡大観察を行えるようにしたものであっても差し支えない。17A,17Bは、電極16A,16Bに接続されたリード線であり、挿入部1内に全長にわたって挿通配置されている。
【0022】
図1は、本発明の拡大観察用内視鏡装置のシステム構成のブロック図であり、照明窓11に設けられた凹レンズの裏側には、挿入部1内から第1のコネクタ7に至る空間内に配置された照明用ライトガイドファイババンドル28の射出端が配置されている。
【0023】
光源装置を兼用するビデオプロセッサ5内には、通常観察用の照明光を発生するための光源ランプ51が配置されていて、光源ランプ51から放射された照明光は集光レンズ52に導かれて照明用ライトガイドファイババンドル28の入射端に入射する。
【0024】
また、固体撮像素子22で撮像された内視鏡観察像(通常観察画像)を処理して映像信号をメインモニタ9に出力するための映像信号処理回路53や、二つの電極16A,16Bの導通状態(外部での導通状態)を検出するための導電検出回路54等が設けられている。導電検出回路54における検出結果は、メインモニタ9と拡大像モニタ10の何れかに例えばランプ点灯等によって表示される。ただし、モニタ9,10以外に表示手段を設けてもよい。
【0025】
共焦点像プロセッサ6内には、レーザ光を射出する共焦点用レーザ光源61が配置されていて、そのレーザ光源61と受光素子62とが、光カプラ63によって光学単ファイバ26の後端面26bに並列に接続されている。
【0026】
したがって、レーザ光源61から光学単ファイバ26にレーザ光が入射されるだけでなく、光学単ファイバ26の後端面26bから射出されたレーザ光が受光素子62に入射する。
【0027】
レーザ光源61から光カプラ63を経由して光学単ファイバ26に入射したレーザ光は、光学単ファイバ26の先端面26aから射出されて拡大観察用観察窓15の表面付近の焦点位置で被写体に当たって反射され、その反射光が光学単ファイバ26の先端面26aに焦点を結んで入射し、光学単ファイバ26内を通って受光素子62に入射する。
【0028】
光学単ファイバ26の先端面26aを走査する走査機構27の動作制御は同期制御回路65によって行われており、さらに受光素子62からの出力信号が光学単ファイバ26の先端面26aの動きと同期して映像信号処理回路64で画像化されてその映像信号が拡大像モニタ10に出力され、拡大観察用観察窓15の表面付近の被写体の1mm以下程度の領域の顕微鏡的拡大観察像が拡大像モニタ10に表示される。
【0029】
このように構成された拡大観察用内視鏡装置において拡大観察を良好に行うためには、拡大観察用観察窓15を被写体粘膜に当接させる必要があるが、拡大観察用観察窓15を被写体粘膜に近づけていって、図5に示されるように拡大観察用観察窓15が被写体粘膜に接近した状態では、二つの電極16A,16Bの間が電気的に導通しないので、モニタ9,10には何ら表示が行われない(又は、赤ランプを点灯させる等の表示を行ってもよい)。
【0030】
そして、図6に示されるように、拡大観察用観察窓15が被写体粘膜に当接した状態になると、二つの電極16A,16Bが各々粘膜面に密着して、二つの電極16A,16Bの間が粘膜を介して電気的に導通した状態になる。
【0031】
すると、導電検出回路54からの出力信号に基づいて、モニタ9(又は10)又は図示されていない表示手段等に例えば青色のランプが点灯し、拡大観察用観察窓15に密着した粘膜を鮮明に拡大観察できる状態であることを術者が認識することができる。なお、ランプ表示以外の表示でも差し支えなく、ブザー音等を併用しても差し支えない。
【0032】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、例えば電極16A,16Bが拡大観察用観察窓15の周囲に3個以上配置されていても差し支えない。
また本発明は、拡大観察用観察窓15のみで通常観察用観察窓11が設けられていない拡大観察専用の内視鏡にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施例の拡大観察用内視鏡装置のシステム構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例の拡大観察用内視鏡装置のシステム全体の略示図である。
【図3】本発明の実施例の拡大観察用内視鏡装置の挿入部の最先端部分の斜視図である。
【図4】本発明の実施例の拡大観察用内視鏡装置の挿入部の最先端部分の側面断面図である。
【図5】本発明の実施例の拡大観察用内視鏡装置の不十分な拡大観察状態の挿入部の最先端部分の略示図である。
【図6】本発明の実施例の拡大観察用内視鏡装置の十分な拡大観察状態の挿入部の最先端部分の略示図である。
【符号の説明】
【0034】
1 挿入部
9 メインモニタ
10 拡大像モニタ
12 通常観察用観察窓
15 拡大観察用観察窓
16A,16B 電極
17A,17B リード線
25 共焦点光学系
26 光学単ファイバ
26a 先端面
27 走査機構
54 導電検出回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外表面に当接する被写体の拡大観察像を取り込むための拡大観察用観察窓が設けられた拡大観察用内視鏡装置において、
上記拡大観察用観察窓の外縁部に隣接して上記拡大観察用観察窓を間に挟んだ位置関係の複数箇所に、相互間の電気的導通状態を検出するための電極を露出配置したことを特徴とする拡大観察用内視鏡装置。
【請求項2】
被写体の通常観察像を上記被写体との間に距離をおいた位置から取り込むための通常観察用観察窓が併設されている請求項1記載の拡大観察用内視鏡装置。
【請求項3】
上記通常観察像を表示するためのモニタと上記拡大観察像を表示するためのモニタの少なくとも一方に、上記複数の電極間の電気的導通状態が表示される請求項1記載の拡大観察用内視鏡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−202926(P2007−202926A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−27871(P2006−27871)
【出願日】平成18年2月6日(2006.2.6)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】