排ガス浄化処理装置
【課題】均一な加熱ができ、さらに、体積抵抗率が低い電極部分においては耐クラック性を向上させた電極部分と、ヒーター部分との熱膨張差を制御可能しながら熱歪みを発生し難く、かつ耐クラック性に優れた発熱部とを兼ね備える通電発熱用ハニカム体、及びその製造方法を提供する。体積抵抗率を任意に変更できる。
【解決手段】排出ガスに温度付与可能な通電発熱用ハニカム体2と、通電発熱用ハニカム体によって温度付与された排出ガスを浄化処理する触媒担体41とが備えられる排ガス浄化処理装置であって、通電発熱用ハニカム体2の両端面全面に形成される体積抵抗率が低い電極部7と、電極部7の間に体積抵抗率が高い発熱部9とが備えられてなり、触媒担体41には、多孔質の隔壁により区画された排ガスの流路となる複数のセルが備えられるとともに、隔壁には触媒が担持されている排ガス浄化処理装置1として構成されている。
【解決手段】排出ガスに温度付与可能な通電発熱用ハニカム体2と、通電発熱用ハニカム体によって温度付与された排出ガスを浄化処理する触媒担体41とが備えられる排ガス浄化処理装置であって、通電発熱用ハニカム体2の両端面全面に形成される体積抵抗率が低い電極部7と、電極部7の間に体積抵抗率が高い発熱部9とが備えられてなり、触媒担体41には、多孔質の隔壁により区画された排ガスの流路となる複数のセルが備えられるとともに、隔壁には触媒が担持されている排ガス浄化処理装置1として構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガソリン、ディーゼル等の内燃機関から排出されるHC、CO、NOX、PM等の有害物質については世界的規模で規制が強化されているが、昨今の地球温暖化問題に対して上述したエミッションのほかに、燃費の向上が求められている。
【0003】
ところで、燃費の向上を行うと排ガス温度の低下が起こる。従来は触媒がコートされたハニカム構造体を用いることで排ガス浄化を行っていたが、排ガス温度の低温化により触媒が活性しない状態が比較的長時間続く現象が発生する。とりわけ、排ガスエミッションでは始動直後の所謂コールドエミッションの排出が多くなる。このように、排ガス温度が低下し、かつ触媒を早期に暖めることができないと、結果として排ガスが浄化されないこととなり、従来技術では対応が困難になってきた。
【0004】
このような問題に対して、触媒を暖める手段として通電発熱用ハニカム体(EHC)がある。EHCを加熱するには電気を使用するため、バッテリー容量や使用できる電気容量に制約されるため、触媒活性化温度までの加熱と、燃費低減とを共に実現しづらいものとなっている。加えて、エンジンの始動時に、十分に触媒等が温まっていない状態で排ガスが流入すると、排気ガス中に含まれる窒素酸化物、一酸化炭素、炭化水素等の有害物質を浄化するために必要な高温活性状態を作れず、触媒担持される三元触媒等の排気浄化特性を十分に生かすことができない。特に、三元触媒には白金(Pt)、ロジウム(Rh)等の貴金属が使用され、約350℃以上の高温活性状態で効率的な排気浄化特性を発揮するが、低温始動時等の内燃機関冷間時においては、触媒等よる排気浄化特性が著しく悪化する。
【0005】
また、上記に絡み、触媒の貴金属量を増加する手段が考えられるが、排ガス温度が低い状態では改善効果が少なく、貴金属量の増加はコストの著しい上昇を招く。
【0006】
ここで、金属製のハニカムを使用したEHC(通電発熱用ハニカム体)が提案されているが、金属自体の重量が重く加熱に対しては多大なエネルギーが必要であり、車載使用に対しては電気の供給という観点で問題があった。また、EHCに過大な電力を与えることは燃費の低下や信頼性の低下を招く。
【0007】
また、セラミック製の通電発熱用ハニカム体(EHC)としてSiCを使用した例も提案されているが、EHCとして使用する場合、サイズや用途によって目的の体積抵抗率とする必要があるが、体積抵抗率の調整が困難で且つ一般的には電極とEHC本体の接続が困難となり、新たな問題が生じている。
【0008】
このような問題に対し、下記特許文献1〜2がある。
【0009】
特許文献1では、排気通路を有するハニカム構造体からなる触媒付きハニカム構造体(触媒を担持したハニカム構造体、以下「触媒担体」と言う)に一対の電極を付設して、触媒担体を電気加熱する際に、この触媒担体を均一に加熱するために、触媒担体の外周壁から内方へスリットを入れて電流を迂回させる構造とした電気加熱式触媒が開示されている。しかし、この特許文献1では、電極部が触媒担体等の外周壁に付設してあるため、ハニカムの長さ方向に均一な加熱がしづらく、排ガスを均一に温めることができず、局部的に触媒の活性化温度とならない虞が高い。その結果、耐クラック性を向上させることもできなければ、ヒーター部分との熱膨張差を制御出来ず、熱歪み等の不具合を防止することができない。さらに、体積抵抗率を任意に変更することも困難である。更には、EHCでの排ガスへの加熱が不十分であるため、EHCの後方(EHCの排ガス流出側方向)にセットされる触媒担体においても浄化処理効率が低減しやすい。とりわけ、エンジンのコールドスタート時において、燃費の向上を実現しづらく、消費燃料が過大となる割りに浄化効率の向上に十分つながらないため、不十分であるといわざるを得ない。
【0010】
特許文献2では、自己発熱型DPFにおいて、フィルタ本体端面に形成される電極層の形成面積及び形状を最適化することによって、フィルタ本体の温度差を低減し、再生効率の高いDPFを提供することを目的に、多孔質導電性セラミックスからなるフィルタ本体の両端面に、その中心部を除く周囲に電極層を形成させた自己発熱型ディーゼルパティキュレートフィルタが開示されている。しかし、特許文献2では、その中心部を除く周囲に電極層を形成させたもののみ開示されていることに留まり、体積抵抗率が高い発熱部については開示されていない。すなわち、このような構成では、均一な加熱ができず、或いは、耐クラック性を向上させることもできなければ、ヒーター部分との熱膨張差を制御出来ず、熱歪み等の不具合を防止することができない。さらに、体積抵抗率を任意に変更することも困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平8−218856号公報
【特許文献2】特開2000−297625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記問題点を解決すべくなされたものであり、内燃機関からの排出ガスに温度付与可能な通電発熱用ハニカム体と、前記通電発熱用ハニカム体によって温度付与された排出ガスを浄化処理する触媒担体とが備えられる排ガス浄化処理装置であって、前記通電発熱用ハニカム体には、導電性材料からなり隔壁に仕切られたガス流れ方向に実質的に平行な多数の貫通孔と、前記排ガス流入側及びガス流出側の両端面全面に形成される体積抵抗率が低い電極部と、前記電極部の間に体積抵抗率が高い発熱部とが備えられてなり、前記触媒担体には、多孔質の隔壁により区画された前記排ガスの流路となる複数のセルが備えられるとともに、前記隔壁には触媒が担持されている排ガス浄化処理装置として構成されることにより、全体として均一な加熱ができるだけでなく、耐クラック性に優れる通電発熱用ハニカム体と、通電発熱用ハニカム体によって加熱(温度付与)された排ガスによって触媒活性が促進される触媒担体とが相乗的に浄化処理効率を向上させる浄化処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明により、以下の通電発熱用ハニカム体を含む排ガス浄化処理装置が提供される。
【0014】
[1] 内燃機関からの排出ガスに温度付与可能な通電発熱用ハニカム体と、前記通電発熱用ハニカム体によって温度付与された排出ガスを浄化処理する触媒担体とが備えられる排ガス浄化処理装置であって、前記通電発熱用ハニカム体には、導電性材料からなり隔壁に仕切られたガス流れ方向に実質的に平行な多数の貫通孔と、前記排ガス流入側及びガス流出側の両端面全面に形成される体積抵抗率が低い電極部と、前記電極部の間に体積抵抗率が高い発熱部とが備えられてなり、前記触媒担体には、多孔質の隔壁により区画された前記排ガスの流路となる複数のセルが備えられるとともに、前記隔壁には触媒が担持されている排ガス浄化処理装置。
【0015】
[2] 前記通電発熱用ハニカム体に触媒が担持されている[1]に記載の排ガス浄化処理装置。
【0016】
[3] 前記通電発熱用ハニカム体によって付与される温度が触媒活性温度である[1]又は[2]に記載の排ガス浄化処理装置。
【0017】
[4] 前記通電発熱用ハニカム体における発熱部の体積抵抗率が0.1〜10Ωcmで、前記電極部の体積抵抗率が前記発熱部の体積抵抗率の1/10以下である[1]〜[3]のいずれかに記載の排ガス浄化処理装置。
【0018】
[5] 前記通電発熱用ハニカム体が金属とセラミックの複合材料から構成される[1]〜[4]のいずれかに記載の排ガス浄化処理装置。
【0019】
[6] 前記通電発熱用ハニカム体の金属の含有率を変更することで、前記通電発熱用ハニカム体に備えられる前記電極部と前記発熱部との体積抵抗率が変更可能に成型されている[1]〜[5]のいずれかに記載の排ガス浄化処理装置。
【0020】
[7] 前記通電発熱用ハニカム体の前記金属の含有率が、前記通電発熱用ハニカム体の前記両端面から中央領域に向けて漸減して形成される[1]〜[6]のいずれかに記載の排ガス浄化処理装置。
【0021】
[8] 前記通電発熱用ハニカム体の電極が、前記通電発熱用ハニカム体の前記両端面から中央領域に向けて1mm以上10mm以下の領域に形成されている[1]〜[7]のいずれかに記載の排ガス浄化処理装置。
【0022】
[9] 前記通電発熱用ハニカム体が、導電性材料からなる隔壁に仕切られたガス流れ方向に実質的に平行な多数の貫通孔を有する、複数のハニカムセグメントを並列接合して形成されるとともに、前記並列するハニカムセグメントを接合する接合材が低抵抗接合材からなる[1]〜[8]のいずれかに記載の排ガス浄化処理装置。
【0023】
[10] 前記通電発熱用ハニカム体内にストレスレリーフが形成されている[1]〜[9]のいずれかに記載の排ガス浄化処理装置。
【0024】
[11] 前記ストレスレリーフ内には、低ヤング率の充填材が充填されている[10]に記載の排ガス浄化処理装置。
【0025】
[12] 前記通電発熱用ハニカム体を構成する前記複合材料のうち、前記金属がSiからなり、前記セラミックがSiCからなるとともに、前記電極部を構成する前記Siの構成比率が、前記発熱部よりも大きい[1]〜[11]のいずれかに記載の排ガス浄化処理装置。
【0026】
[13] 前記通電発熱用ハニカム体に印加可能な電圧が12〜24Vである[1]〜[12]のいずれかに記載の排ガス浄化処理装置。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、内燃機関からの排出ガスに温度付与可能な通電発熱用ハニカム体と、前記通電発熱用ハニカム体によって温度付与された排出ガスを浄化処理する触媒担体とが備えられる排ガス浄化処理装置であって、前記通電発熱用ハニカム体には、導電性材料からなり隔壁に仕切られたガス流れ方向に実質的に平行な多数の貫通孔と、前記排ガス流入側及びガス流出側の両端面全面に形成される体積抵抗率が低い電極部と、前記電極部の間に体積抵抗率が高い発熱部とが備えられてなり、前記触媒担体には、多孔質の隔壁により区画された前記排ガスの流路となる複数のセルが備えられるとともに、前記隔壁には触媒が担持されている排ガス浄化処理装置として構成されることにより、全体として均一な加熱ができるだけでなく、体積抵抗率が低い電極部においては耐クラック性を向上でき、かつ耐クラック性に優れる通電発熱用ハニカム体と、通電発熱用ハニカム体によって加熱(温度付与)された排ガスによって触媒活性が促進される触媒担体とが相乗的に浄化処理効率を向上させる浄化処理装置を提供できるといった優れた効果を奏することができる。
【0028】
とりわけ、均一な加熱ができ、耐クラック性を向上させるとともに熱膨張差を制御しながら熱歪みを発生し難い通電発熱用ハニカム体と、通電発熱用ハニカム体により加熱した熱と、浄化の際に発生する発熱とにより触媒活性化温度まで昇温させた触媒担体とが相俟って、エンジン始動直後の排ガスを確実に浄化する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1A】本発明の一実施形態が適用される排ガス浄化処理装置の一実施形態を示すものであって、通電発熱用ハニカム体に電極端子を取り付けた状態を模式的示した平面図である。
【図1B】本発明の一実施形態が適用されるガス浄化処理装置の一実施形態を示すものであって、通電発熱用ハニカム体に電極端子を取り付けた状態を模式的示した断面図である。
【図2】本発明の排ガス浄化処理装置の別の実施形態を示すものであって、通電発熱用ハニカム体に電極端子を取り付けた状態を模式的示した断面図である。
【図3】本発明の排ガス浄化処理装置の別の実施形態を示すものであって、通電発熱用ハニカム体に電極端子を取り付けた状態を模式的示した断面図である。
【図4】本発明の排ガス浄化処理装置の別の実施形態を示すものであって、通電発熱用ハニカム体に電極端子を取り付けた状態を模式的示した断面図である。
【図5】本発明の排ガス浄化処理装置の別の実施形態を示すものであって、触媒担体の一例を示す模式図であって斜視図である。
【図6】本発明の排ガス浄化処理装置の別の実施形態を示すものであって、触媒担体の一例を示す模式図であって平面図である。
【図7】本発明の排ガス浄化処理装置の別の実施形態を示すものであって、触媒担体の一例を示す模式図であって、触媒担体の長さ方向に直交する断面を一部拡大して示す部分拡大断面図である。
【図8】本発明の排ガス浄化処理装置の一実施形態を示すものであって、実施例における評価測定の方法を模式的示した断面図である。
【図9】本発明の排ガス浄化処理装置に備えられる通電発熱用ハニカム体に通電させた際に、領域T1、T2、T3における温度と時間の関係を示すグラフである。
【図10】本発明の排ガス浄化処理装置に備えられる通電発熱用ハニカム体に通電させた際の、温度差と、D2/aLとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の排ガス浄化処理装置の形態について具体的に説明する。但し、本発明はその発明特定事項を備える排ガス浄化処理装置を広く包含するものであり、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0031】
[1]本発明の排ガス浄化処理装置:
本発明の排ガス浄化処理装置(以下、適宜「浄化処理装置」という)は、図1A、1Bに示されるように、内燃機関からの排出ガスに温度付与可能な通電発熱用ハニカム体(「Electrically Heated Catalyst:EHC」、以下、適宜「EHC」という)と、通電発熱用ハニカム体によって温度付与された排出ガスを浄化処理する触媒担体とが備えられる排ガス浄化処理装置であって、通電発熱用ハニカム体2には、導電性材料からなり隔壁に仕切られたガス流れ方向に実質的に平行な多数の貫通孔12と、排ガス流入側及びガス流出側の両端面全面に形成される体積抵抗率が低い電極部7と、電極部7の間に体積抵抗率が高い発熱部9とが備えられてなり、触媒担体41には、多孔質の隔壁43により区画された排ガスの流路となる複数のセル45が備えられるとともに、隔壁43には触媒が担持されている排ガス浄化処理装置1として構成されている。
【0032】
[1−1]本実施形態における通電発熱用ハニカム体:
本実施形態における通電発熱用ハニカム体は、内燃機関からの排出ガスに温度付与可能な通電発熱用ハニカム体として構成されることが望ましい。内燃機関からの排出ガスに温度付与可能に構成されることにより、エンジン始動直後の十分に温まっていない内燃機関からの排出ガスに温度付与することによって、排ガスが加熱されるとともに、後述の触媒担体を暖気することができ、触媒担体を触媒活性化温度に昇温させることができ、浄化装置全体としての浄化効率を向上させることができるからである。
【0033】
また、通電発熱用ハニカム体には、導電性材料からなり隔壁に仕切られたガス流れ方向に実質的に平行な多数の貫通孔と、排ガス流入側及びガス流出側の両端面全面に体積抵抗率が低い電極部と、電極部の間に体積抵抗率が高い発熱部とが備えられていることが望ましい。このように構成されることによって、通電によって排ガス温度に左右されることなく、排ガスを加熱することができるため、触媒担体に担持される触媒の活性温度に最適な温度状態となった排ガスを、その触媒担体に送り込むことができるため、浄化処理効率を向上させることができる。
【0034】
具体的には、本実施形態の備える通電発熱用ハニカム体では、図1A、1Bに示されるように、導電性材料からなり隔壁に仕切られたガス流れ方向に実質的に平行な多数の貫通孔12と、排ガス流入側及びガス流出側の両端面全面(6a,6b)に体積抵抗率が低い電極部7と、電極部7の間に体積抵抗率が高い発熱部9とが備えられており、この通電発熱用ハニカム構造体に通電する際の電流の流れを制御することにより、発熱部の発熱を制御できるように構成されることが好ましい。
【0035】
[1−1−1]電極部:
本実施形態における通電発熱用ハニカム体の電極部は、排ガス流入側及びガス流出側の両端面全面に形成されるとともに、その電極部では、体積抵抗率が低くなるように形成されることが望ましい。このように構成されることで、排ガス流入側の端部から排ガス流出側の端部へかけて、電流を十分に均質に流すことができ、後述の発熱部において排ガスに対して均一な加熱(温度付与)をすることができる。また、通電による負荷が電極部において一定となるため、通電量のばらつきにより歪みやクラックを未然に防ぐことができる。
【0036】
この点、従来では、(1)電極部は通電発熱用ハニカム体の外部に1対の電極部が設置され、一方の電極部を介して、或いは電極部から延設した電極線等の連結部を介して、ハニカム構造体と接触する1点からハニカム構造体に電流を流して、他方の電極部に通電をおこなうものや、(2)通電発熱用ハニカム体内の端面であって外周近傍に電極部を設けて、通電させる通電発熱用ハニカム体が見られる。しかし、(1)のような従来の通電発熱用ハニカム体の構造では、通電の性質上最短経路を辿って電流が流れてしまうため、一方の端面から他方の端面側方向に向けて、ハニカム全体に電流を十分に流すことができない。すなわち、一方の電極部、あるいは一方の電極部から延設した電極線等の連結部を介してハニカム構造体と接触する1点から、他方の電極部或いは他方の電極部から延設した電極線等の連結部を介して、電流が流れてしまう。そのため、ハニカム構造体全体に十分に通電がされず、通電発熱用ハニカム構造体の所望領域での発熱が十分に行われない。
【0037】
また、(2)のような従来の通電加熱型のハニカム構造体では、電極部が外周近傍にのみ形成されているため、電極部を通過した排ガスは、暖められることがあっても、電極部を通過しない排ガスは、低温状態のままであるため、全体として排ガス温度が上昇せず、触媒の活性化温度に至らない虞が高い。特に、コールドスタート時では、エンジンから排出される排ガス温度とともに、触媒担体の温度も低いため、浄化効率を低減させてしまう。このように従来の通電発熱用ハニカム体を、触媒担体等をセットしてコンバータシステムとする場合には、触媒担体の触媒活性温度に適するような十分な温度状態を作ることができず、触媒担体の機能を発揮できないものとなっている。
【0038】
さらに、前述の(1)の様な電極部を通電発熱用ハニカム体の外部に1対設置することに加えて、通電発熱用ハニカム体にスリットを形成して、通電の性質上最短経路を辿らせずに電流をハニカム構造体全体に十分に流して十分に発熱をさせようとするものも見られる。しかし、このような試みでも、一方の電極部、あるいは一方の電極部から延設した電極線等の連結部を介してハニカム構造体と接触する1点から通電させるため、熱膨張差や、熱歪み更にはクラックを低減させるには至っていない。まして、電極部を通電発熱用ハニカム体の外部に1対設置する構造に、スリットを形成する場合には、電流の流れ方向にクラックが生じることによって、所謂断線した状態と同様に、電流の流れを阻害する虞もあり、通電を所望制御しながらハニカム構造体の特性を最大限発揮することが難しいものとなっている。
【0039】
また、たとえば、コンバータシステムとしてではなく、直接通電発熱用ハニカム構造体に触媒担持して、所謂通電発熱用ハニカム触媒担体とする場合にも、同様に、触媒担体の触媒活性温度に適するような十分な温度状態を作ることができず、触媒担体の機能を発揮できず、浄化処理効率を向上させることができなかった。
【0040】
そこで、本実施形態の浄化処理装置では、ハニカム構造体の両端面全体に体積抵抗率が低い電極部を直接形成することによって、後述の発熱部に対して、通電をスムーズ且つ十分に行えるものとし、本発明の効果を奏することができるものとした。
ようにした。
【0041】
なお、この通電発熱用ハニカム体に形成される電極部は(さらに後述の発熱部は)、たとえば、車載に搭載されるバッテリー等の電源部に電気的に接続されており、電極部からの電流を受けて、一方の電極部(排ガス流入側端面に形成される電極部)−発熱部−他方の電極部(排ガス流出側端面に形成される電極部)へ電流が流れる構造となっている。
【0042】
たとえば、この通電発熱用ハニカム体の電極部の一例として、図1A、1Bに示される通電発熱用ハニカム体2を挙げることができる。図1A,1Bに示されるように、電極部は、通電発熱用ハニカム体内に体積抵抗率が低い電極部7として構成され、一方の端面(排ガス流入側端面)に電極部7aが形成され、他方の端面(排ガス流出側端面)に電極部7bが形成され、一方の端面(排ガス流入側端面))の電源端子3aから電極部7aに通電が行われ、後述で説明する発熱部9に電流が流れた後、他方の端面(排ガス流出側端面)の電源端子3bから、電流が流れ出るものを一例として挙げることができる。なお、前述のように、電極部7は体積抵抗率が低く、発熱部9は体積抵抗率が高く形成されているため、電極部7aを通電した電流が、発熱部9に通電された際に発熱部で発熱し温度上昇がおこり、排ガスの温度を上昇させることができる。
【0043】
さらに、電極が、ハニカム端面からハニカム体の中央領域に向けて1mm以上10mm以下の領域に形成されていることが好ましい。このような所望領域に電極が形成されることによって、更に、通電発熱用ハニカム体の一方の端面から、他方の端面に一律に通電しやすくなり、均一な加熱ができ、耐クラック性を向上させることができるためである。他方、電極が、ハニカム端面からハニカム体の中央領域に向けて1mm未満であると、電源との接続において信頼性が確保されず、接点抵抗の増加によって局所的な発熱が発生するという問題が生じてしまうため好ましくなく、また、電極がハニカム端面からハニカム体の中央領域に向けて10mm超の領域に形成される場合には、後述の発熱部の面積が小さくなるか、ハニカム全長が過大に長くなってしまうため、好ましくない。
【0044】
[1−1−2]発熱部:
本実施形態における通電発熱用ハニカム体には、電極部の間に体積抵抗率が高い発熱部が設けられることが望ましい。このように構成されることで、発熱部において確実に発熱をすることができるため、発熱部を通過する排ガスを十分に温度付与して加熱できる。また、通電によって生じる発熱部の温度上昇が局部的な偏りをなくして一定(均質)となるため、発熱部における発熱(温度)のばらつきを防ぎ、局部的かつ過度な発熱による歪みやクラックを未然に防ぐことができる。特に、均一な発熱は、ヒーター部分との熱膨張差を制御できるため、歪みやクラックを無くすのに寄与する。
【0045】
この点、前述した(1)外部に1対の電極部が設置される通電発熱用ハニカム体では、通電の性質上最短経路を辿って電流が流れてしまうことから、電極部から発熱部に対して通電する領域に偏りが生じてしまい、発熱部での温度上昇も局部的な偏りを生じるものとなり、局部的かつ過度な発熱による歪みやクラックが生じやすいものとなっている。特に、発熱部で均一に発熱が行われないため、ヒーター部分との熱膨張差を制御できず、歪みやクラックを生じさせていた。その結果、ハニカムの全体ではなく発熱部の局部にのみ温度上昇が留まるものとなり、通電発熱用ハニカム体全体の浄化効率向上にはならず、ハニカムの特性を十分に引き出すものとはなっていない。
【0046】
とりわけ、このような従来の通電発熱用ハニカム体に、触媒担体等をセットしてコンバータシステムとする場合には、触媒担体の触媒活性温度に適するような十分な温度状態を作ることができず、触媒担体の機能を発揮できないものとなっている。
【0047】
他方、本実施形態の浄化処理装置が備える通電発熱用ハニカム体では、そのハニカム体の両端面全体に形成される電極部間に体積抵抗率が高い発熱部を設け、その発熱部全体が前述の電極部より十分に通電される構成となっている。そのため、発熱部全体で後述の触媒担体の触媒活性温度に適するような十分な温度状態を作ること、すなわち十分な発熱をすることができるため、触媒担体の浄化処理機能を高めることができ、浄化処理装置全体として浄化処理効率を向上させることができる。
【0048】
換言すれば、発熱部は、一方の端面全面に形成される電極部から、電極部の延伸方向(ハニカムの長さ方向)に発熱部が形成され、更にその発熱部の延伸方向に、他方の電極部が形成されているため、一方の電極部から他方の電極部に電流が流れる際に、通電は、ハニカムの長さ方向に行われることになり、一方の電極部からの通電ロスも少なく、加えて発熱部全体へ通電を容易に行える。したがって、発熱部に通電しやすくなり、均一な加熱をしやすくなる。さらに、局部的な過剰な通電を防ぐことができるため、ヒーター部分との熱膨張差を防ぐことができ、通電発熱用ハニカム体において熱歪み、クラック等の不具合を容易に低減できるため好ましい。その結果、たとえば、本実施形態の通電発熱用ハニカム体の後工程に、触媒担体を設置して、排ガス浄化処理装置とする場合には、触媒担体の浄化処理に好適な、触媒活性の最適温度に温度上昇させやすくなり、温度制御も容易に行える。
【0049】
たとえば、この通電発熱用ハニカム体の発熱部の一例として、図1A、1Bに示される通電発熱用ハニカム体2を挙げることができる。図1A、1Bに示されるように、発熱部9は、通電発熱用ハニカム体内に体積抵抗率が高い発熱部として構成され、一方の端面(排ガス流入側端面)に電極部7aと他方の端面(排ガス流出側端面)に電極部7bとの間に形成されるものを挙げることができる。図に示されるように、一方の端面(排ガス流入側端面))の電源端子3aから電極部7aに通電が行われると、その電極部7aから通電した発熱部9において、発熱が生じ温度上昇が起こる。この発熱部では、体積抵抗率が高いものの発熱部9を介して更に他方の端面に形成される電極部7bに電流が流れることになる。
【0050】
また、前述のように付与する温度は触媒活性温度であることが好ましい。ガソリン車からの排出ガスに温度付与するのは、コールドスタート時において触媒温度が十分でなく、触媒活性化しづらい温度となっているため、浄化効率が低減しやすいという問題があった。したがって、本実施形態における通電発熱用ハニカム体の発熱部において、触媒活性温度まで排気ガスを温度上昇させる発熱を生じさせることにより、触媒担体での触媒による浄化処理を確実に向上させるものである。ここで、触媒活性温度は、担持する触媒によって差異はあるものの、一般的には、250℃〜400℃の範囲内である。
【0051】
また、発熱部の熱伝導率は10W/mK以上100W/mK以下であることが好ましい。発熱部の熱伝導率が前述のような所望値内であると、発熱部で発生した熱が均一に伝わるため通電加熱ハニカム部をより均一に加熱することが可能である。熱伝導率が高すぎると、発熱部で発熱した熱が外部へ放出されやすくなり、通電発熱ハニカムに触媒をコートした場合、触媒活性が得られ難くなる。
【0052】
また、発熱部のCTE(Coefficient of thermal expansion(熱膨張係数))が8.0×10−6/℃(40〜800℃)以下であることが好ましい。このように所望のCTEに形成されることで、発熱部にクラックが生じることを防ぐことができるため好ましい。
【0053】
[1−2]触媒担持通電発熱用ハニカム体:
より好ましいのは、通電発熱用ハニカム体に触媒が担持されていることである。通電発熱用ハニカム体に触媒が担持されることにより、本実施形態の浄化処理装置に備えられる触媒担体を補助しながら、相乗効果的に浄化処理効率を向上させるため好ましい。特に、通電発熱用ハニカム体は、電気によって通常のハニカムよりも早期に昇温でき、エンジン始動直後の排ガスを浄化できるため、浄化の際に発生する発熱(HC、COを酸化する際に生じる発熱)と、この触媒担持通電発熱用ハニカム体が加熱した(温度付与した)排ガスの熱と、を利用でき、更に、そのような謂わば2重の意味で加熱された排ガスが、触媒担持通電発熱用ハニカム体の後方に備えられる触媒担体を暖気させることによって、触媒担体を昇温させ早期に触媒活性できるようになっている。
【0054】
ここで、(触媒担持)通電発熱用ハニカム体は電気を使用するため、排ガス温度に関係なく加熱できる一方で、通電発熱用ハニカム体を加熱するには電気が必要となる。この際、車載に搭載されるバッテリーの容量は通常の車輌であれば12〜24Vに制限されることに加え、その電気量はエンジンによって発電されるため、通電発熱用ハニカム体が使用する電気使用量が多い場合には燃費の悪化に繋がるため、制限されることとなる。したがって、触媒担持通電発熱用ハニカム体のみでは、エンジン始動時における排ガス流量が少ない低回転領域からの始動であって、且つ使用できる電気容量も少ないため、排ガス浄化という点では十分に浄化しきれないものの、本実施形態における浄化処理装置では、前述の触媒担持通電発熱用ハニカム体の後方に、触媒担体を搭載する(備える)ため、触媒担持通電発熱用ハニカム体で十分に浄化できない排ガスも、触媒担持通電発熱用ハニカム体内で2重の意味で加熱された排ガスが触媒担体に送りこまれるため、触媒担体での浄化効率を向上させることができる。
【0055】
[1−2−1]触媒:
通電ハニカム体(その隔壁)には、酸化触媒、他の触媒や浄化材が担持されていてもよい。例えば、アルカリ金属(Li、Na、K、Cs等)やアルカリ土類金属(Ca、Ba、Sr等)からなるNOX吸蔵触媒、三元触媒、セリウム(Ce)及び/又はジルコニウム(Zr)の酸化物に代表される助触媒、HC(HydroCarbon)吸着材等が担持されていてもよい。
【0056】
触媒としては、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)等の貴金属が好適に用いられる。
【0057】
たとえば、触媒にはCeとそれ以外の少なくとも1種の希土類金属、アルカリ土類金属、または遷移金属を含んでもよい。
【0058】
ここで、希土類金属としては、たとえば、Sm、Gd、Nd、Y、Zr、Ca、La、Pr等から選択することができる。
【0059】
また、触媒に含まれるアルカリ土類金属としては、たとえば、Mg、Ca、Sr、Ba等から選択することができる。
【0060】
また、触媒に含まれる遷移金属としては、たとえば、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sc、Ti、V、Cr等から選択することができる。
【0061】
このような触媒の担持方法は特に限定されないが、例えば、通電発熱用ハニカム体の、発熱部の隔壁に対して、触媒成分を含む触媒液をウォッシュコートした後、高温で熱処理して焼き付ける方法等が挙げられる。また、例えば、ディッピング法等の従来公知のセラミック膜形成方法を利用して、セラミックスラリーをハニカム構造の基材の隔壁に付着させ、乾燥、焼成する方法等により、薄膜状の触媒層を形成してもよい。この際、触媒層の平均細孔径はセラミックスラリー中の骨材粒子の粒度や配合比等、気孔率はセラミックスラリー中の骨材粒子の粒度や造孔材の量等、コート層厚みはセラミックスラリーの濃度や膜形成に要する時間等を制御することにより所望の値に調整することができる。
【0062】
なお、酸化触媒、NOX吸蔵触媒等の触媒成分は、高分散状態で担持させるため、予めアルミナのような比表面積の大きな耐熱性無機酸化物に一旦担持させた後、ハニカム構造体(たとえば隔壁等)に担持させてもよい。
【0063】
また、上記触媒は、例えば、吸引法等の従来公知の触媒担持方法を応用して、触媒スラリーを隔壁の細孔内に担持させ、乾燥、焼成する方法等により形成してもよい。
【0064】
[1−3]本実施形態の備える通電発熱用ハニカム体の電極部と発熱部との関係:
本実施形態の備える通電発熱用ハニカム体では、電極部と発熱部とが以下の関係であることが好ましい。
【0065】
発熱部の体積抵抗率が0.1〜10Ωcmで、電極部の体積抵抗率が発熱部の1/10以下であることが好ましい。発熱部の体積抵抗率が0.1〜10Ωcmで、電極部の体積抵抗率が発熱部の体積抵抗率の1/10以下にすることによって、体積抵抗率が低い領域である電極部と、体積抵抗率が高い領域である発熱部を形成できるから好ましい。すなわち、発熱部の体積抵抗率を0.1〜10Ωcmにすることにより、発熱部において発熱を確実に生じさせ所望温度に温度上昇(加熱)させることができ、また、電極部の体積抵抗率を発熱部の体積抵抗率の1/10以下にすることにより、電極部の体積抵抗率が低くなり、発熱に伴う過剰な温度上昇を制御できるため耐クラック性を向上させることができ、さらに、電極部の長さ方向(ハニカム方向)に連なる発熱部に確実に通電させて発熱を促進させることができる。その結果、発熱部では均一な加熱ができ、また、電極部分では体積抵抗率を低くして発熱に伴う過剰な温度上昇を制御して耐クラック性を向上させることができ、さらに、前述のような電極部と発熱部とが相俟って、通電発熱用ハニカム体全体として、ヒーター部分との熱膨張差を制御しながら熱歪みを発生し難く、かつ耐クラック性に優れたものとすることができ、本願の効果をより奏することができる。加えて、本実施形態の通電発熱用ハニカム体の後工程に設置する触媒担体に、前述の発熱部で十分に加熱された排ガスが流入することにより、触媒担体に担持された触媒がその活性化温度となりやすくなるため、浄化処理効率を向上させることができ好ましい。
【0066】
他方、発熱部の体積抵抗率が0.1Ωcm未満であると、発熱部への通電が過剰となるだけでなく、発熱が十分おこらないため、排ガスを温度付与(加熱)できなくなり、その結果、浄化効率を低減させるため好ましくない。他方、10Ωcm超であると、体積抵抗率が高すぎ、目的の昇温速度が得られなくなる。さらに、電極部の抵抗が発熱部の1/10超であると、均一な通電ができないために、不均一な温度分布となるという点で問題が生じ好ましくない。
【0067】
さらに、電極部と、電極部を除いた通電発熱用ハニカム体の残部との熱膨張係数差は、1.0×10−6/℃(40〜800℃)以下であることが好ましい。このように、電極部と、電極部を除いた通電発熱用ハニカム体の残部、すなわち、電極部と、電極部を除いた通電発熱用ハニカム体の残部である発熱部との熱膨張差を所望数値内になるように形成することによって、加熱冷却時における熱応力でクラックが発生し難いものとなるため好ましい。なお、このような熱膨張差を所望数値内に制御するには、たとえば、後述の電極部分をSi金属の増量等によって形成することによって、熱膨張差が殆ど生じない電極部を形成できる。ただし、このようなものに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜公知の手法を採用して、所望の電極部を形成してもよい。
【0068】
さらに、通電発熱用ハニカム体は、金属とセラミックの複合材料から構成されることが好ましい。金属を含有させることで導電性を確保しながら、セラミックを含有させることで、成形しやすく更に、ハニカムの特性を発揮することができるためである。ただし、「通電発熱用ハニカム体は、金属とセラミックの複合材料から構成される」ものには、通電発熱用ハニカム体全体が、金属とセラミックの含有量が一定量からなる複合材料から構成されるものを意味するものではない。少なくとも、本実施形態では、体積抵抗率が低い電極部と体積抵抗率が高い発熱部とを備えることから、体積抵抗率低い電極部では、ハニカム全体に対して(電極部を除いた残余の部分に対して)金属含有率が高く構成されるとともに、体積抵抗率が高い発熱部では、ハニカム全体に対して(発熱部を除いた残余の部分に対して)金属含有率が低く構成される。このように電極部がハニカム全体に対して(電極部を除いた残余の部分に対して)金属含有率が高く構成されることによって、通電しやすくなるとともに、発熱部がハニカム全体に対して(発熱部を除いた残余の部分に対して)金属含有率が低く構成されることによって、発熱を容易行えることができ、本願の効果をより奏することができるからである。
【0069】
すなわち、金属の含有率を変更することで、電極部と発熱部における体積抵抗率を変更可能に成形できるように形成されることが好ましい。金属の含有量によって、発熱部の温度上昇を容易に制御できるためである。たとえば、本実施形態が備える通電発熱用ハニカム体の全体を、Si金属とSiCより構成し、Si金属の含有量を、各領域(たとえば上流、中流、下流の域)において調整することにより、通電発熱用ハニカム体内における体積抵抗率を任意に変更することができる。さらに、電極部においては、Si金属を含浸させる代わりに金属メッキを施して電極として形成することも好ましい。
【0070】
より好ましいのは、複合材料を構成する金属がSiからなり、セラミックがSiCからなるとともに、電極部を構成するSiの構成比率が、発熱部よりも大きいことであり、また、複合材料を構成する金属がSiからなり、セラミックがSiCからなるとともに、発熱部を構成するSiCの構成比率が電極部よりも大きいことが好ましい。すなわち、電極部を形成する場合には、Si金属とSiCより構成しながら、Si金属の含有量を、発熱部よりも多く含有させて所望の電極部として形成し、さらに、発熱部を形成する場合には、Si金属とSiCより構成しながら、Si金属の含有量を、発熱部よりも少なく含有させて所望の発熱部として形成する。このように形成することにより、電極部及び発熱部における体積抵抗率を任意に変更でき、さらに、電極部では、スムーズに通電が可能となり、発熱部では、所望温度に発熱が可能となるから好ましい。
【0071】
たとえば、発熱部のSiCとSiの比率を90:10〜50:50(重量比)として、電極部のSi含有量を、発熱部に対して1.2倍〜15倍の範囲で含有させると、電極部を構成するSiの構成比率が、発熱部よりも大きくなり、ヒーター部分との熱膨張差が殆どなく熱歪みが発生し難く耐クラック性に優れたものとなるため、本願の効果をより奏しやすくなる。
【0072】
さらに、金属の含有率が、両端面全体から通電発熱用ハニカム体の中央領域に向けて漸減して形成されることが好ましい。このように金属の含有率が、ハニカムの両端面から中央領域に向けて漸減することにより、電極部と発熱部における熱膨張差の境界が無くなり応力集中が小さくなるために、クラックが発生し難くなる。したがって、クラックの発生を防止できる。
【0073】
この金属の含有率が、両端面から通電発熱用ハニカム体の中央領域に向けて漸減する割合としては、たとえば、含有率が変化する遷移領域長さを電極部長さと同等あるいは2倍程度とするものを一例として挙げることができる。ただし、このようなものに限定されるものでなく、本発明を逸脱しないものであればよい。
【0074】
また、本実施形態の通電発熱用ハニカム体を車に搭載する場合には、許容される電力、目的の昇温性能、浄化性能を確保するために、体積抵抗率を調整する必要があるが、たとえば、Si金属量の含有比率を増加させることによって体積抵抗率が低下する。他方、Si金属量の含有比率を低下させると抵抗値は上昇する。そのため、目的抵抗に合わせた添加量を設定するなどして、所望電力、目的の昇温性能、浄化性能を確保することが好ましい。
【0075】
さらに、通電発熱用ハニカム体に印加可能な電圧が12〜24Vであることが好ましい。このような所望電圧を印加できることで、車に搭載するバッテリー容量に対応できるためである。他方、24V超であると、車に搭載するバッテリーに対応できず、また燃費効率も低減するため好ましくなく、12V未満であると、EHC内での発熱が十分とならないため、浄化処理に支障がでる虞があるため好ましくない。
【0076】
[1−4]ストレスレリーフ:
さらに、通電発熱用ハニカム体内にストレスレリーフが形成されていることも好ましい形態の一つである。このように、ストレスレリーフを設けることにより、通電発熱用ハニカム体内での応力緩和が可能となるため好ましい。このストレスレリーフとしては、単純に切り込みを入れたものでも、応力緩和という点で効果的ではあるが、より好ましいのは、そのストレスレリーフの先端部を丸く形成することである。先端を丸く形成することで、先端部分で応力が吸収され、更なる応力緩和ができるからである。さらに好ましいのは、ストレスレリーフ内に低ヤング率の部材を充填してストレスレリーフが形成されることである。このように構成されることによって、一層応力緩和が行われやすくなり振動によるクラック発生を抑制することもできる。最も好ましいのは、ストレスレリーフ内に、ストレスレリーフ以外の残部よりも、ヤング率が低く、且つ体積抵抗率が高い充填材が充填されていることが好ましい。このように構成されることで、応力緩和が行われるため振動によるクラック発生を防止できる。
【0077】
なお、低ヤング率の部材としては、たとえば、繊維状SiC、あるいは粒子状SiCとコロイダルシリカを主成分とするセメント材料等を挙げることができ、所望のヤング率としては、0.001〜0.05GPaである。
【0078】
このようなストレスレリーフとしては、たとえば、図1Aに示されるようなストレスレリーフ11を一例として挙げることができる。ただし、このようなものに限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲で公知のストレスレリーフを用いることができる。
【0079】
[1−5]通電発熱用ハニカム体のその他の構成:
本実施形態が備える通電発熱用ハニカム体の基材は、図1A,1Bに示されるように、導電性材料からなり隔壁に仕切られたガス流れ方向に実質的に平行な多数の貫通孔12を有し、ガス流入側及びガス流出側の両端面6を有するハニカム構造体からなる。このハニカム構造体には、多数の流通孔の上流側に形成される開口端部6a、及び下流側に形成される開口端部6bが形成される。ただし、本実施形態が備える通電用ハニカム構造の全体形状については、図に示した形状に特に限定されるものではなく、例えば、図1A、1Bに示されるような円筒状の他、四角柱状、三角柱状等の形状を挙げることができる。
【0080】
また、本実施形態が備える通電発熱用ハニカム体が備える流通孔の開口形状(セル形状ともいい、セルの形成方向に対して垂直な断面におけるセルの形状)としては、例えば、図1Aに示されるような四角形セルの他、六角形セル、三角形セル等の形状を挙げることができる。ただし、このような形状に限られるものではなく、公知のセルの形状を広く包含することができる。より好ましいセル形状としては、円形セル又は四角形以上の多角形セルを挙げることができる。このような円形セル又は四角形以上の多角形セルがより好ましいのは、高熱応力を緩和させながら、排ガスの流入流出を所望状態に制御しやすいからである。とりわけ、セル密度、開口率等を考慮すると、六角形セルがより好ましい。
【0081】
本実施形態が備える通電発熱用ハニカム体の基材が備えるセル密度についても特に制限はないが、本実施形態をDPFとして用いる場合には、6〜1500セル/平方インチ(0.9〜233セル/cm2)の範囲であることが好ましい。また、隔壁の厚さは、20〜2000μmの範囲であることが好ましい。
【0082】
また、本実施形態が備える通電発熱用ハニカム体の基材は、金属とセラミックとの複合材料から形成されることが好ましい。この金属としては、珪素、鉄、胴、亜鉛、錫、アルミニウム、銀、ニッケル、コバルトなどを挙げることができ、セラミックとしては、コージェライト、アルミニウムチタネート、窒化珪素、サイアロン、ムライト、アルミナ、ジルコニアなどを挙げることができる。より好ましいのは、本実施形態の通電発熱用ハニカム体の基材がSiCとSiの複合材料から形成されることが好ましく、電極部、発熱部の各部位に応じて、SiC或いは、Siの含有量が調整されることが好ましい。
【0083】
また、上記のようなハニカム構造の基材は、例えば、セラミックからなる骨材粒子、水の他、所望により有機バインダ(ヒドロキシプロポキシルメチルセルロース、メチルセルロース等)、造孔材(グラファイト、澱粉、合成樹脂等)、界面活性剤(エチレングリコール、脂肪酸石鹸等)等を混合し、混練することによって坏土とし、その坏土を所望の形状に成形し、乾燥することによって成形体を得、その成形体を焼成することによって得ることができる。
【0084】
ハニカム構造体の作製方法としては、たとえば次のような方法が一例として挙げられる。ただし、このようなハニカム構造体の作製方法に限らず、公知のハニカム構造体の作製方法を用いることもできる。
【0085】
例えば、複数本のハニカムセグメントからなるハニカムセグメント接合体であって、セグメント同士が接合材で接合され、外周面を所望形状に切削加工されて成型される場合には、次の手順で行うとよい。
【0086】
まず、ハニカムセグメントを作製する。このハニカムセグメント原料として、たとえば、SiC粉80質量部に対して金属Siを20質量部配合し、適宜成形助剤と造孔材を加え混合を行い、水を添加して粘土状とする。SiC粉、金属Siともに後に押出成形を行うために、口金のスリットに対して大きな粒径を持つような原料を除外する分級工程を経た原料が好ましい。
【0087】
粘土状になった原料を押出し成形し所望形状のハニカム成形体を成形する。次いで、得られたハニカムセグメント成形体をマイクロ波乾燥機で乾燥し、更に熱風乾燥機で完全に乾燥させた後、目封止をして焼成(仮焼き)する。
【0088】
この仮焼きは、脱脂のためにおこなわれるものであって、たとえば、酸化雰囲気において550℃で、3時間程度で行うものが挙げられるが、これに限られるものではなく、ハニカム成形体中の有機物(有機バインダ、分散剤、造孔材等)に応じて行われることが好ましい。一般に、有機バインダの燃焼温度は100〜300℃程度、造孔材の燃焼温度は200〜800℃程度であるので、仮焼温度は200〜1000℃程度とすればよい。仮焼時間としては特に制限はないが、通常は、3〜100時間程度である。
【0089】
さらに、焼成(本焼成)を行う。この「本焼成」とは、仮焼体中の成形原料を焼結させて緻密化し、所定の強度を確保するための操作を意味する。焼成条件(温度・時間)は、成形原料の種類により異なるため、その種類に応じて適当な条件を選択すればよい。たとえば、Ar不活性雰囲気で焼成する場合の焼成温度は一般的には、1400℃〜1500℃程度であるが、これに限られるものではない。
【0090】
前述のような工程を経て所望寸法の複数のハニカムセグメント(焼結体)を得た後、そのハニカムセグメントの周面に、繊維状SiC、あるいは粒子状SiCとコロイダルシリカを主成分とし、体積抵抗率低減用材料として銀、銅、鉄、ニッケル等のいずれかを含むセメント材料などの低抵抗接合材等からなる接合用スラリーを塗布し、互いに組み付けて圧着した後、加熱乾燥して、全体形状が四角柱状のハニカムセグメント接合体を得る。そして、そのハニカムセグメント接合体を、円柱形状に研削加工した後、その周面を、ハニカムセグメント成形体と同材料からなる外周コート層で被覆し、乾燥により硬化させることにより、セグメント構造を有する円柱形状のハニカム成形体を得ることができる。
【0091】
より好ましいのは、通電発熱用ハニカム体が、導電性材料からなる隔壁に仕切られたガス流れ方向に実質的に平行な多数の貫通孔を有する、複数のハニカムセグメントを並列接合して形成されるとともに、並列するハニカムセグメントを接合する接合材が、低抵抗接合材からなる通電発熱用ハニカム体として構成されることが好ましい。前述のように、接合材が、低抵抗接合材からなるものを使用して、導電性材料からなる隔壁に仕切られたガス流れ方向に実質的に平行な多数の貫通孔を有する、複数のハニカムセグメントを並列接合して形成される場合には、電極部で通電性を確実に行うことができ、且つ、発熱部に通電させて発熱を確実に行わせることができるため好ましい。
【0092】
また、セグメント構造でない一体型として通電発熱用ハニカム体を作成する場合には、たとえば、SiC粉80質量部に対して金属Siを20質量部を配合し、適宜成形助剤と造孔材を加え混合を行い、水を添加して粘土状とする。SiC粉、金属Siともに後に押出成形を行うために口金のスリットに対して大きな粒径を持つような原料を除外する分級工程を経た原料が好ましい。また、成形助剤、造孔材は任意の原料を使用しても問題無いが、成形性、最終製品の目的気孔率が得られるように設定する必要がある。
【0093】
粘土状になった原料を押出し成形しハニカム状とする。ハニカムは焼成による収縮を予め見込み焼成後に所望寸法となるようなスリット且つ所望セル数となるような口金を使用するとよい。成形後、乾燥を行いハニカム構造の乾燥体について両端の切断を行った後にAr雰囲気で焼成を行い焼成後のハニカム構造体を得ることができる。さらに必要に応じて、その周面を、ハニカムセグメント成形体と同材料からなる外周コート層で被覆し、乾燥により硬化させることにより、セグメント構造を有する円柱形状のハニカム成形体を得ることができる。
【0094】
その後、前述のようセグメント構造からなる焼成後のハニカム成形体或いは、前述のような一体型からなるハニカム成形体に対して、その両端面に、端面よりハニカム成形体の長さ方向に向かって所望長さ寸法までのハニカム隔壁内の総気孔率容積に相当する、金属板(たとえばSiからなる金属板)を載せ、真空下で加熱を行い、Siを含侵させ電極部分を形成するとよい。
【0095】
また、本実施形態の備える通電発熱用ハニカム体の嵩密度が0.8g/cm3以下であることが好ましい。本実施形態の通電発熱用ハニカム体が、車載に搭載される場合には、使用可能な電力に限界があり、重量が大きくなるとハニカムの加熱に多大なエネルギーが必要となるためである。
【0096】
なお、内部温度分布を均一にする観点からは、ハニカム構造体の直径をD、長さをL、電極部の幅をaとしたとき、以下の(1)の関係になることが好ましい。
【0097】
【数1】
【0098】
このような数値内の関係にある場合に、加熱を均一に行えて、本願の効果を奏し易いからである。他方、150より大きい場合には、例えば、ハニカム構造体の直径が、ハニカム構造体の長さ、或いは電極部の幅に対して過大となって、十分に加熱を行うことができず、内部温度分布を均一にできない。とりわけ、本実施形態の通電発熱用ハニカム体を車載する場合には、バッテリー等の電流値に限界があるため、好ましくない。また、15より小さい場合は、Dを相対的に小さくする方向であり、ガス流速が過大となり圧損増加となり、好ましくない。
【0099】
[2]触媒担体の構成:
さらに、本実施形態の浄化処理装置は、これまで説明した通電発熱用ハニカム体と、下記の構成を備える触媒担体とから概ね構成されている。
【0100】
触媒担体の基材としては、多孔質の隔壁により区画された前記排ガスの流路となる複数のセルが備えられるハニカム構造体として構成されていることが望ましく、このようなハニカム構造体の隔壁に触媒が担持されているものが望ましい。たとえば、図1B、図5〜7に示されるように、基材が、隔壁43に仕切られたガス流れ方向に実質的に平行な多数の貫通孔45を有し、ガス流入側及びガス流出側の両端面A,Bを有するハニカム構造体として構成され、このハニカム構造体には、多数の流通孔の上流側に形成される開口端部47a、及び下流側に形成される開口端部47bが形成されるものを一例として挙げることができる。なお、必要に応じて、その開口端部には互い違いに目封じされてなる目封止部が形成されていることも好ましい形態である。DPFとしてのフィルタに本実施形態を適用できるためである。ただし、本実施形態が備える触媒担体の基材の形状については、図に示した形状に特に限定されるものではなく、別の例としては、図5〜7に示されるような円筒状の他、四角柱状、三角柱状等の形状を挙げることができる。なお、このような基材の隔壁に、触媒が担持され触媒担体として、本実施形態の浄化処理装置に備えられることになる。
【0101】
また、触媒担体が備える流通孔の開口形状(セル形状ともいい、セルの形成方向に対して垂直な断面におけるセルの形状)としては、例えば、図5〜7に示されるような四角形セルの他、六角形セル、三角形セル等の形状を挙げることができる。ただし、このような形状に限られるものではなく、公知のセルの形状を広く包含することができる。より好ましいセル形状としては、円形セル又は四角形以上の多角形セルを挙げることができる。このような円形セル又は四角形以上の多角形セルがより好ましいのは、高熱応力を緩和させながら、再生時のクラックを抑制しやすく、さらに排ガスの流入流出を所望状態に制御しやすいからである。加えて、浄化性能を高めながら、構造強度を高めることができるため好ましい。とりわけ、セル密度、開口率等を考慮すると、六角形セルがより好ましい。
【0102】
触媒担体の基材が備えるセル密度についても特に制限はないが、本実施形態をDPFとして用いる場合には、6〜1500セル/平方インチ(0.9〜233セル/cm2)の範囲であることが好ましい。また、隔壁の厚さは、20〜2000μmの範囲であることが好ましい。
【0103】
また、上記のようなハニカム構造の基材は、例えば、セラミックからなる骨材粒子、水の他、所望により有機バインダ(ヒドロキシプロポキシルメチルセルロース、メチルセルロース等)、造孔材(グラファイト、澱粉、合成樹脂等)、界面活性剤(エチレングリコール、脂肪酸石鹸等)等を混合し、混練することによって坏土とし、その坏土を所望の形状に成形し、乾燥することによって成形体を得、その成形体を焼成することによって得ることができる。
【0104】
[2−1]触媒:
本実施形態が備える触媒担体では、前述のように、触媒が担持されている。また、使用用途に応じて、浄化材等を更に担持してもよい。例えば、アルカリ金属(Li、Na、K、Cs等)やアルカリ土類金属(Ca、Ba、Sr等)からなるNOX吸蔵触媒、三元触媒、セリウム(Ce)及び/又はジルコニウム(Zr)の酸化物に代表される助触媒、HC(HydroCarbon)吸着材等が担持されていてもよい。なお、担持する触媒等については、前述した触媒担持通電発熱用ハニカム体に担持する触媒と同じであるため、ここでは説明を省略し、「[1−2−1]触媒」の説明を参照されたい。
【0105】
[3]通電発熱用ハニカム体の製造方法:
これまで説明した通電発熱用ハニカム体を製造する方法として、通電発熱用ハニカム体の両端面に体積抵抗率が低い電極部を直接設けるとともに、体積抵抗率が高い発熱部とを備える通電発熱用ハニカム体を製造することが好ましい。前述のように、通電発熱用ハニカム体の両端面に体積抵抗率が低い電極部を直接設けるとともに、体積抵抗率が高い発熱部とを備えるため、均一な加熱ができ、さらに、体積抵抗率が低い電極部分においては耐クラック性を向上させた電極部分と、ヒーター部分との熱膨張差を制御可能しながら熱歪みを発生し難く、かつ耐クラック性に優れた発熱部とを兼ね備える通電発熱用ハニカム体を製造できるため、本発明の効果を普く奏することができるからである。
【0106】
好ましいのは、発熱部を成形した後に、Si金属を含侵して通電発熱用ハニカム体を製造する製造方法である。たとえば、成形原料を押出し成形しハニカム状とし、Ar雰囲気で焼成を行いハニカム構造体とした後、ハニカム焼成体の両端面に、端面より所望領域までのハニカム隔壁内の総気孔容積に相当する、金属Siの板を載せ、真空下で加熱を行い、Siを含侵させて電極部を形成して製造する方法を一例として挙げることができる。
【0107】
また、発熱部を成形した後に金属メッキ処理を施し電極部を形成して、通電発熱用ハニカム体を製造することも好ましい製造方法の一つである。
【0108】
より好ましいのは、通電発熱用ハニカム体がSiCとSiからなり、Siの含有比率が5%以上70%以下になるように、さらに好ましいのは、Siの含有比率が10%以上50%以下になるように、Siの含有量を調整して通電発熱用ハニカム体を製造することである。Siの含有比率を前述のような所望値にすることにより、体積抵抗率を調整できるため、均一な加熱が可能となり、耐クラック性をより向上させ、熱膨張差を制御し易くなる。他方、Siの含有比率が5%未満であると、体積抵抗率が過大となり、Siの含有比率が70%超であると、耐熱性及び強度が低下し、熱膨張が増加するため好ましくない。
【0109】
また、平均サイズが10〜80μm以下であるSiC粒子を使用して通電発熱用ハニカム体を製造することも好ましい製造方法である。SiC粒子の粒子が、所望径内であると、粒子が均一となって、均一な加熱をし易くなり、本願の効果を奏し易いからである。
【0110】
[4]触媒担体の製造方法:
触媒担体の作製方法としては、たとえば次のような方法が一例として挙げられる。ただし、このような触媒担体の作製方法に限らず、公知の触媒担体の作製方法を用いることもできる。
【0111】
例えば、複数本のハニカムセグメントからなるハニカムセグメント接合体であって、セグメント同士が接合材で接合され、外周面を所望形状に切削加工されて成型される場合には、次の手順で行うとよい。
【0112】
まず、ハニカムセグメントを作製する。このハニカムセグメント原料として、たとえば、SiC粉末及び金属Si粉末を80:20の質量割合で混合し、これにメチルセルロース及びヒドロキシプロポキシルメチルセルロース、界面活性剤及び水を添加して混練し、可塑性の坏土を得た。そして、所定の金型を用いて坏土を押出成形し、所望形状のハニカムセグメント成形体を成形する。次いで、得られたハニカムセグメント成形体をマイクロ波乾燥機で乾燥し、更に熱風乾燥機で完全に乾燥させた後、目封止をして焼成(仮焼き)する。
【0113】
この仮焼きは、脱脂のためにおこなわれるものであって、たとえば、酸化雰囲気において550℃で、3時間程度で行うものが挙げられるが、これに限られるものではなく、ハニカム成形体中の有機物(有機バインダ、分散剤、造孔材等)に応じて行われることが好ましい。一般に、有機バインダの燃焼温度は100〜300℃程度、造孔材の燃焼温度は200〜800℃程度であるので、仮焼温度は200〜1000℃程度とすればよい。仮焼時間としては特に制限はないが、通常は、3〜100時間程度である。
【0114】
さらに、焼成(本焼成)を行う。この「本焼成」とは、仮焼体中の成形原料を焼結させて緻密化し、所定の強度を確保するための操作を意味する。焼成条件(温度・時間)は、成形原料の種類により異なるため、その種類に応じて適当な条件を選択すればよい。たとえば、Ar不活性雰囲気で焼成する場合の焼成温度は一般的には、約1400℃〜1500℃前後程度であるが、これに限られるものではない。
【0115】
前述のような工程を経て所望寸法の複数のハニカムセグメント(焼結体)を得た後、そのハニカムセグメントの周面に、アルミノシリケートファイバ、コロイダルシリカ、ポリビニルアルコール、及び炭化珪素を混練してなる接合用スラリーを塗布し、互いに組み付けて圧着した後、加熱乾燥して、全体形状が四角柱状のハニカムセグメント接合体を得る。そして、そのハニカムセグメント接合体を、円柱形状に研削加工した後、その周面を、ハニカムセグメント成形体と同材料からなる外周コート層で被覆し、乾燥により硬化させることにより、セグメント構造を有する円柱形状のハニカム構造体を得ることができる。
【0116】
なお、成形方法としては、上述のように調製した坏土を、所望のセル形状、隔壁厚さ、セル密度を有する口金を用いて押出成形する方法等を好適に用いることができる。
【0117】
[5]本発明の通電発熱用ハニカム体のセッティング方法:
本発明の通電発熱用ハニカム体では、前述した電極部と、車載するバッテリー等の電源と接続して使用する。このような端面近傍の高電気伝導部位からバッテリー等の電源に電気接続する方法としては、たとえば、図2に示されるような、端面近傍の部位の外周を金属メッシュ等の伝導材で覆い、金属メッシュ等の伝導材と、本実施形態の通電発熱用ハニカム体との間を、金属ろう付け等の高耐熱性を有する接着処理により接着して行われることが好ましい。さらに、金属メッシュ等の伝導材料の外周側に、銅電線等の伝導材を、前述と同様の金属ろう付け等の高耐熱性を有する接着処理により接着し、それらを絶縁部材で挟む構造にして絶縁性を確保することが好ましい。また、図2に示されるように絶縁部材の外側全周を、通常の触媒コンバータに用いられるのと同様のセラミック繊維マット等の部材で覆い、外周にかかる面圧を例えば0.3MPa等といった所望面圧となるように、前述のセラミック繊維マット、及び金属メッシュを圧縮した状態で、金属キャン内に押し込み、金属キャン内に固定することが好ましい。なお、前述のような銅電線等の伝導材は金属キャンと絶縁することが好ましいため、絶縁スリーブを貫通させて電極端子につながる構造となることが好ましい。なお、図2のようなセッティングに代替するものとして図3に示されるように、一方の端面(排ガス流入側端面)の電源端子3aを図2に示されるものと別の位置に配置してセッティングなどおこなってもよく、配設スペース等に応じて、セッティング方法が適宜選択されることが好ましい。
【0118】
さらに、前述のように、通電発熱用ハニカム体を固定した金属キャン内に、触媒担体をセットする。触媒担体のセット位置は、前述の通電発熱用ハニカム体から流れてくる(温度付与して加熱された)排ガスが、触媒担体に流入するできる方向にセットする。換言すれば、通電発熱用ハニカム体の排ガス流出側方向に、触媒担体をセットする。この触媒担体のセット方法は、触媒担体の外周部を絶縁部材で挟む構造にして絶縁性を確保することが好ましい。たとえば、絶縁部材の外側全周を、通常の触媒コンバータに用いられるのと同様のセラミック繊維マット等の部材で覆い、外周にかかる面圧を例えば0.3MPa等といった所望面圧となるように、前述のセラミック繊維マットを圧縮した状態で、金属キャン内に押し込み、金属キャン内に固定するとよい。なお、配設スペース等に応じて、セッティング方法が適宜選択されることが好ましい。
【0119】
通電発熱用ハニカム体のより好ましい態様は、図4に示されるように、金属キャンの内面を絶縁コートすることである。キャンの内側に予め絶縁処理を施しておくことによって、仮に本実施形態の通電発熱用ハニカム体が金属キャン内に対してズレ等が生じても金属キャンと導通することを防ぐことができるためである。
【実施例】
【0120】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。また、実施例における各種の評価、測定は、下記方法により実施した。
【0121】
(実施例1)
SiC粉70質量部に対して金属Si30質量部を配合し、適宜成形助剤と造孔材を加え混合を行い、水を添加して粘土状とする。この際、SiC粉、金属Siともに後に押出成形を行うため、口金のスリットに対して大きな粒径を持つような原料を除外する分級工程処理を行った。
【0122】
次に、前述の粘土状になった成形原料を押出し成形しハニカム状とする。このハニカムは、焼成による収縮を予め見込み焼成後に100μmとなるようなスリット、且つセル数が62個/cm2となるような口金を使用した。成形後、乾燥を行いハニカム構造の乾燥体について両端の切断を行った。その後Ar雰囲気で焼成を行いハニカム構造体とした。なお、乾燥条件は、600℃、3hrであり、焼成条件は1430℃、3hrである。
【0123】
さらに、前述の焼成後のハニカム構造体に対して、ハニカム焼成体の両端面に、端面より2mmまでのハニカム隔壁内の総気孔率容積に相当する、厚さ0.12mmの金属Siの板を載せ、真空下で加熱を行い、Siを含侵させて電極部を形成した。この際の、加熱条件は、1400℃、1hrである。
【0124】
このようにして、Φ100mm×長さ15mm、隔壁厚さ100μmの通電発熱用ハニカム体を得ることができた。この際の通電発熱用ハニカム体の特性としては体積抵抗率0.1Ωcm、比熱0.7J/kg・K、材料嵩密度1.6g/cm3(気孔率50%)となった。
【0125】
さらに、前述のようにして得られた通電発熱用ハニカム体に、触媒コートを行った。触媒付けは、アルミナ:白金:セリア系材料=7:1:2であって、セリア系材料はCe:Zr:Pr:Y:Mn=60:20:10:5:5からなる触媒用スラリーを予め用意し、入口端面側から触媒スラリーを吸引して触媒を担持した。その後、まず120℃、2時間で乾燥させた後、550℃、1時間で触媒焼付けを行い、これを実施例1の通電発熱用ハニカム体とした。
【0126】
次に、触媒担体を製造した。コージェライト化原料に、水等の分散媒、及び造孔材を加えて、更に、有機バインダ及び分散剤を加えて混練し、粘土状の坏土を形成し、口金を用いてハニカム状に成型し、乾燥後、1420℃で3時間程度焼成し、隔壁厚さ100μm、セル数93セル/cm2、外径100mm、長さ100mmの触媒担体を作製した。
【0127】
触媒としては、三元触媒を用いた。アルミナ:セリア=7:3のウォッシュコート材料に白金:ロジウム=5:1の貴金属を担持した触媒のスラリーを準備し、ディッピング法により、上記コージェライト担体にコートし触媒を担持した。その後、まず120℃、2時間で乾燥させた後、550℃、1時間で触媒焼付けを行い、コージェライト担体容積あたりの触媒担持量として200g/L、貴金属量として2g/Lのハニカム触媒体を製造し、実施例1の後段触媒とした。
【0128】
前述のようにして得られた、実施例1の通電発熱用ハニカム体の電極部に、電源を接続した。この電気接続の方法としては、端面近傍の高電気伝導部位の外周を金属メッシュで覆い、金属メッシュとハニカム焼成体との間は高耐熱性の金属ろう付けにより接着した。金属メッシュの外周側に銅電線を金属ろう付けしそれを絶縁部材で挟む構造で絶縁性を確保した。絶縁部材の外側全周を通常触媒コンバータに用いるのと同様のセラミック繊維マットで覆い、外周にかかる面圧として0.3MPaとなるようセラミック繊維マット、および金属メッシュを圧縮した形態で、金属キャン内に押し込み、金属キャン(金属缶)内に固定した。銅電線は金属キャンと絶縁するため絶縁スリーブを貫通して電極端子につながっている構造をとった。
【0129】
さらに、前述の通電発熱用ハニカム体を固定した金属キャン内に、実施例1の触媒担体をセットした。具体的には、図1に示されるように、実施例1の通電発熱用ハニカム体の排ガス流出側方向に、触媒担体をセットした。なお、触媒担体の外周部をセラミック繊維マットからなる部材で覆い、外周にかかる面圧を0.3MPaで前述のセラミック繊維マットを圧縮した状態で、金属キャン内に押し込み、金属キャン内に固定した。この後段にセラミックマットを介して金属キャン内に固定された前述のコージェライトハニカム触媒担体を設置し、実施例1の排ガス浄化処理装置を得た。
【0130】
このようにして、電源を接続した実施例1の排ガス処理装置を構成する通電発熱用ハニカム体に対して、下記のような、各部切り出しテストピースの体積抵抗率測定、および実体のR1、R2なる抵抗測定、200V電圧をかけた際のT1〜T3位置の温度時間変化、ガスを流した際の圧力損失を測定した。その結果を表1に示す。また、実施例1のその他の物性値を表1に示す。また、この排気ガス処理装置を排気量2リッターのガソリンエンジンを搭載した車両の排気系に搭載し、米国LA−4コールドスタートモードの排気エミッション測定をシャシダイナモ試験により実施し、初期500秒間の未燃炭化水素排出量を測定した。結果を表1に示す。
【0131】
【表1】
【0132】
[2−1]実体計測値:
電源を接続した実施例、比較例の通電発熱用ハニカム体の、24V電圧をかけた際の、ガス流入側に形成される電極部の抵抗R1を測定するとともに、ガス流入側に形成される電極部と、ガス流出側に形成される電極部の抵抗R2を測定した。具体的には、図8に示されるように、ガス流入側に形成される電極部7aの抵抗R1、及びガス流入側に形成される電極部7aとガス流出側に形成される電極部7bの抵抗R2を測定した。
【0133】
[2−2]切り出しテストピース計測値(TP計測値):
実施例、比較例の通電発熱用ハニカム体の電極部から、0.1cm×1cm×1cmの試験片を取り出し、端部体積抵抗率Ω/cmを測定するとともに、実施例、比較例の通電発熱用ハニカム体の発熱部から、1cm×1cm×1cmの試験片を取り出し、中央部体積抵抗率Ωcmを測定した。
【0134】
[3]温度差最大比率(%):
実施例、比較例の通電発熱用ハニカム体の外周部であって長さ方向の中央領域をT1とし、実施例、比較例の通電発熱用ハニカム体の長さ方向に形成される発熱部の中央領域をT2とし、さらに、実施例、比較例の通電発熱用ハニカム体の、排ガス流出側に形成される電極部の中央領域をT3として、24V電圧をかけた際の温度差最大比率を求めた。具体的には、温度差最大比率=[(T1/T3)T1]×100(%)、又は温度差最大比率=[(T1−T2)T1]×100(%)の式によって、温度差最大比率を求めた。なお、T1〜T3の各領域は、図8に示されるような符号T1(発熱部9の中央領域)、T2(発熱部9の外周部領域)、T3(排ガスの流出側端面における電極部7bの中央領域)を選択した。
【0135】
[4]温度時間変化:
実施例、比較例の通電発熱用ハニカム体に10kWの電力を与えて、T1が500℃になるまで時間を測定した。
【0136】
[5]圧損比率測定:
実施例、比較例の通電発熱用ハニカム体に、PMを容積あたりの質量として4g/L堆積させ、そのPMを堆積させた通電発熱用ハニカム体に、7Nm3/minの流量で25℃の空気を流入させ、通電発熱用ハニカム体の上流と下流との圧力差を差圧計で測定し、PM堆積時の圧力損失を求めた後、実施例1の結果を1として各実施例及び比較例の相対値を求めた。
【0137】
(実施例2)
SiC粉75質量部に対して金属Si25質量部を配合し、実施例1とSi,SiC比率の変更以外は同様に、焼成後のハニカム構造体得、前述の焼成後のハニカム構造体に対して、ハニカム焼成体の両端面に、端面より2.5mmまでのハニカム隔壁内の総気孔率容積に相当する、厚さ0.30mmの金属Siの板を載せ、実施例1と同様の加熱条件で、真空下で加熱を行い、Siを含侵させて電極部を形成し、Φ100mm×長さ15mmの通電発熱用ハニカム体を得ることができた。この際の通電発熱用ハニカム体の特性としては体積抵抗率0.5Ωcm、比熱0.7J/kg・K、材料嵩密度1.6g/cm3(気孔率50%)となった。さらに、この通電発熱用ハニカム体に実施例1と同様の触媒付けをし、実施例2の通電発熱用ハニカム体を得た。また、実施例1と同様の触媒担体を用意し、実施例2の通電発熱用ハニカム体と、前述の触媒担体とを、実施例1と同様のセッティング方法によってセットし、各実験を行った。この結果を表1に示す。
【0138】
(実施例3)
SiC粉77質量部に対して金属Si23質量部を配合し、実施例1とSi,SiC比率の変更以外は同様に、焼成後のハニカム構造体得、前述の焼成後のハニカム構造体に対して、ハニカム焼成体の両端面に、端面より2.5mmまでのハニカム隔壁内の総気孔率容積に相当する、厚さ0.30mmの金属Siの板を載せ、実施例1と同様の加熱条件で、真空下で加熱を行い、Siを含侵させて電極部を形成し、Φ100mm×長さ20mmの通電発熱用ハニカム体を得ることができた。この際の通電発熱用ハニカム体の特性としては体積抵抗率2Ωcm、比熱0.7J/kg・K、材料嵩密度1.53g/cm3(気孔率50%)となった。さらに、この通電発熱用ハニカム体に実施例1と同様の触媒付けをし、実施例3の通電発熱用ハニカム体を得た。また、実施例1と同様の触媒担体を用意し、実施例3の通電発熱用ハニカム体と、前述の触媒担体とを、実施例1と同様のセッティング方法によってセットし、各実験を行った。この結果を表1に示す。
【0139】
(実施例4)
SiC粉80質量部に対して金属Si20質量部を配合し、実施例1とSi,SiC比率の変更以外は同様に、焼成後のハニカム構造体得、前述の焼成後のハニカム構造体に対して、ハニカム焼成体の両端面に、端面より3mmまでのハニカム隔壁内の総気孔率容積に相当する、厚さ0.36mmの金属Siの板を載せ、実施例1と同様の加熱条件で、真空下で加熱を行い、Siを含侵させて電極部を形成し、Φ100mm×長さ20mmの通電発熱用ハニカム体を得ることができた。この際の通電発熱用ハニカム体の特性としては体積抵抗率5Ωcm、比熱0.7J/kg・K、材料嵩密度1.5g/cm3(気孔率50%)となった。さらに、この通電発熱用ハニカム体に実施例1と同様の触媒付けをし、実施例4の通電発熱用ハニカム体を得た。また、実施例1と同様の触媒担体を用意し、実施例4の通電発熱用ハニカム体と、前述の触媒担体とを、実施例1と同様のセッティング方法によってセットし、各実験を行った。この結果を表1に示す。
【0140】
(実施例5)
SiC粉80質量部に対して金属Si20質量部を配合し、実施例1とSi,SiC比率の変更以外は同様に、焼成後のハニカム構造体得、前述の焼成後のハニカム構造体に対して、ハニカム焼成体の両端面に、端面より3mmまでのハニカム隔壁内の総気孔率容積に相当する、厚さ0.36mmの金属Siの板を載せ、実施例1と同様の加熱条件で、真空下で加熱を行い、Siを含侵させて電極部を形成し、Φ100mm×長さ20mmの通電発熱用ハニカム体を得ることができた。この際の通電発熱用ハニカム体の特性としては体積抵抗率5Ωcm、比熱0.7J/kg・K、材料嵩密度1.5g/cm3(気孔率50%)となった。さらに、この通電発熱用ハニカム体に実施例1と同様の触媒付けをし、実施例5の通電発熱用ハニカム体を得た。また、実施例1と同様の触媒担体を用意し、実施例5の通電発熱用ハニカム体と、前述の触媒担体とを、実施例1と同様のセッティング方法によってセットし、各実験を行った。この結果を表1に示す。
【0141】
(実施例6)
SiC粉77質量部に対して金属Si23質量部を配合し、実施例1とSi,SiC比率の変更以外は同様に、焼成後のハニカム構造体得、前述の焼成後のハニカム構造体に対して、ハニカム焼成体の両端面に、端面より2.5mmまでのハニカム隔壁内の総気孔率容積に相当する、厚さ0.30mmの金属Siの板を載せ、実施例1と同様の加熱条件で、真空下で加熱を行い、Siを含侵させて電極部を形成し、Φ100mm×長さ20mmの通電発熱用ハニカム体を得ることができた。この際の通電発熱用ハニカム体の特性としては体積抵抗率2Ωcm、比熱0.7J/kg・K、材料嵩密度1.53g/cm3(気孔率50%)となった。実施例6の通電発熱用ハニカム体を得た。また、実施例1と同様の触媒担体を用意し、実施例6の通電発熱用ハニカム体と、前述の触媒担体とを、実施例1と同様のセッティング方法によってセットし、各実験を行った。この結果を表1に示す。
【0142】
(実施例7)
SiC粉80質量部に対して金属Si20質量部を配合し、実施例1とSi,SiC比率の変更以外は同様に、焼成後のハニカム構造体得、前述の焼成後のハニカム構造体に対して、ハニカム焼成体の両端面に、端面より3mmまでのハニカム隔壁内の総気孔率容積に相当する、厚さ0.36mmの金属Siの板を載せ、実施例1と同様の加熱条件で、真空下で加熱を行い、Siを含侵させて電極部を形成し、Φ100mm×長さ20mmの通電発熱用ハニカム体を得ることができた。この際の通電発熱用ハニカム体の特性としては体積抵抗率5Ωcm、比熱0.7J/kg・K、材料嵩密度1.5g/cm3(気孔率50%)となった。実施例7の通電発熱用ハニカム体を得た。また、実施例1と同様の触媒担体を用意し、実施例7の通電発熱用ハニカム体と、前述の触媒担体とを、実施例1と同様のセッティング方法によってセットし、各実験を行った。この結果を表1に示す。
【0143】
(実施例8)
SiC粉80質量部に対して金属Si20質量部を配合し、実施例1とSi,SiC比率の変更以外は同様に、焼成後のハニカム構造体得、前述の焼成後のハニカム構造体に対して、ハニカム焼成体の両端面に、端面より3mmまでのハニカム隔壁内の総気孔率容積に相当する、厚さ0.36mmの金属Siの板を載せ、実施例1と同様の加熱条件で、真空下で加熱を行い、Siを含侵させて電極部を形成し、Φ100mm×長さ20mmの通電発熱用ハニカム体を得ることができた。この際の通電発熱用ハニカム体の特性としては体積抵抗率5Ωcm、比熱0.7J/kg・K、材料嵩密度1.5g/cm3(気孔率50%)となった。実施例8の通電発熱用ハニカム体を得た。また、実施例1と同様の触媒担体を用意し、実施例8の通電発熱用ハニカム体と、前述の触媒担体とを、実施例1と同様のセッティング方法によってセットし、各実験を行った。この結果を表1に示す。
【0144】
(実施例9)
実施例5と同様に、焼成後のハニカム構造体を得、前述の焼成後のハニカム構造体に対して、ハニカム焼成体の両端面に、端面より5mmまでのハニカム隔壁内の総気孔率容積に相当する、厚さ0.80mmの金属Siの板を載せ、実施例1と同様の加熱条件で、真空下で加熱を行い、Siを含侵させて電極部を形成し、Φ100mm×長さ20mmの通電発熱用ハニカム体を得ることができた。この際の通電発熱用ハニカム体の特性としては体積抵抗率5Ωcm、比熱0.7J/kg・K、材料嵩密度1.5g/cm3(気孔率50%)となった。さらに、この通電発熱用ハニカム体に実施例1と同様の触媒付けをし、実施例9の通電発熱用ハニカム体を得た。また、実施例1と同様の触媒担体を用意し、実施例9の通電発熱用ハニカム体と、前述の触媒担体とを、実施例1と同様のセッティング方法によってセットし、各実験を行った。この結果を表1に示す。
【0145】
(実施例10)
実施例5と同様に、焼成後のハニカム構造体を得、前述の焼成後のハニカム構造体に対して、ハニカム焼成体の両端面に、端面より5mmまでのハニカム隔壁内の総気孔率容積に相当する、厚さ0.80mmの金属Siの板を載せ、実施例1と同様の加熱条件で、真空下で加熱を行い、Siを含侵させて電極部を形成し、Φ100mm×長さ25mmの通電発熱用ハニカム体を得ることができた。この際の通電発熱用ハニカム体の特性としては体積抵抗率5Ωcm、比熱0.7J/kg・K、材料嵩密度1.5g/cm3(気孔率50%)となった。さらに、この通電発熱用ハニカム体に実施例1と同様の触媒付けをし、実施例10の通電発熱用ハニカム体を得た。また、実施例1と同様の触媒担体を用意し、実施例10の通電発熱用ハニカム体と、前述の触媒担体とを、実施例1と同様のセッティング方法によってセットし、各実験を行った。この結果を表1に示す。
【0146】
(実施例11)
実施例5と同様に、焼成後のハニカム構造体を得、前述の焼成後のハニカム構造体に対して、ハニカム焼成体の両端面に、端面より5mmまでのハニカム隔壁内の総気孔率容積に相当する、厚さ0.80mmの金属Siの板を載せ、実施例1と同様の加熱条件で、真空下で加熱を行い、Siを含侵させて電極部を形成し、Φ100mm×長さ30mmの通電発熱用ハニカム体を得ることができた。この際の通電発熱用ハニカム体の特性としては体積抵抗率5Ωcm、比熱0.7J/kg・K、材料嵩密度1.5g/cm3(気孔率50%)となった。さらに、この通電発熱用ハニカム体に実施例1と同様の触媒付けをし、実施例11の通電発熱用ハニカム体を得た。また、実施例1と同様の触媒担体を用意し、実施例11の通電発熱用ハニカム体と、前述の触媒担体とを、実施例1と同様のセッティング方法によってセットし、各実験を行った。この結果を表1に示す。
【0147】
(実施例12)
実施例1と同様に、焼成後のハニカム構造体を得、前述の焼成後のハニカム構造体に対して、ハニカム焼成体の両端面に、端面より1mmまでのハニカム隔壁内の総気孔率容積に相当する、厚さ0.12mmの金属Siの板を載せ、実施例1と同様の加熱条件で、真空下で加熱を行い、Siを含侵させて電極部を形成し、Φ100mm×長さ40mmの通電発熱用ハニカム体を得ることができた。この際の通電発熱用ハニカム体の特性としては体積抵抗率5Ωcm、比熱0.7J/kg・K、材料嵩密度1.5g/cm3(気孔率50%)となった。さらに、この通電発熱用ハニカム体に実施例1と同様の触媒付けをし、実施例12の通電発熱用ハニカム体を得た。また、実施例1と同様の触媒担体を用意し、実施例12の通電発熱用ハニカム体と、前述の触媒担体とを、実施例1と同様のセッティング方法によってセットし、各実験を行った。この結果を表1に示す。
【0148】
(比較例1)
実施例とは異なり、通電用ハニカムをセッティングせずに、実施例1と同様の触媒担体のみをセッティングして、各実験を行った。この結果を表1に示す。
【0149】
(比較例2)
Fe、Ni、Crを主成分とする合金組成からなる通電発熱用ハニカム体であって、Φ100mm×長さ20mm、体積抵抗率0.3Ωcm、比熱0.4J/kg・K、材料嵩密度8.0g/cm3(気孔率50%)を特性とする、比較例2の金属製通電発熱用ハニカム体を用意し、実施例1と同様の触媒担体と同様のセッティング方法によってセットし、各実験を行った。この結果を表1に示す。なお、比較例2の金属製通電発熱用ハニカム体には、触媒付けを行っていない。
【0150】
(考察)
表1より、実施例1〜12において、良好な結果を得ることができた。いずれの実施例でも、10kWの電力を与えたところ中心部で50℃/secの昇温が確認されるとともに、図10に示されるように、外周部との温度差も15%以下に抑制することができた。とりわけ、表1及び図10に示されるように、実施例1〜4、6〜8、10〜12では、11%以下であるため、内部温度分布を均一にしやすく、かつ車載されるバッテリーに十分対応可能であるため、より好ましい結果が裏付けられた。なお、図9は、T1、T2、T3の温度と時間との関係を示したグラフである。
【0151】
他方、比較例1では、通電発熱用ハニカム体がセットされていないため、未燃炭化水素排出量比が過大となり、コールドスタート時の対応ができないことが裏づけされた。さらに、比較例2では、EHC本体を金属で形成したため、嵩密度は8.0g/cm3前後となり気孔率制御も困難であり、実施例のEHCよりも重たくなる傾向がある。昇温速度は、[昇温速度=電力/(比熱×EHC質量)]で求められ、比較例2の金属製EHCでは実施例よりも比熱が低くなる傾向があるが、先述したように密度が高いため、与えたエネルギーに対して温度上昇が遅くなる傾向があり、実施例の方が触媒の活性温度まで到達する時間を短縮化できることが実験によって実証されている。
【産業上の利用可能性】
【0152】
本発明の通電発熱用ハニカム体は、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、燃焼装置排ガス処理向けに好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0153】
1:排ガス浄化処理装置、2:通電発熱用ハニカム体(EHC)、3:電源端子、3a:(一方の端面(排ガス流入側端面)の)電源端子、3b:(他方の端面(排ガス流出側端面)の)電源端子、5:フレキシブル電極、6:端面、6a:一方の端面(排ガス流入側端面)、6b:他方の端面(排ガス流出側端面)、7:電極部、7a:(一方の端面(排ガス流入側端面)の)電極部、7b:(他方の端面(排ガス流出側端面)の)電極部、9:発熱部、11:ストレスレリーフ,12:貫通孔、13:絶縁スリーブ,15:金属キャン、17:セラミック繊維マット,19:絶縁部材、20:絶縁コート、21:金属メッシュ、27:無膨張マット、41:触媒担体(DPF)、43:隔壁、45:貫通孔(セル)、47a:上流側に形成される開口端部、47b:下流側に形成される開口端部、49:目封じ部、A:端面(排ガス流入側端面の端面)、B:端面(排ガス流入側端面の端面)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガソリン、ディーゼル等の内燃機関から排出されるHC、CO、NOX、PM等の有害物質については世界的規模で規制が強化されているが、昨今の地球温暖化問題に対して上述したエミッションのほかに、燃費の向上が求められている。
【0003】
ところで、燃費の向上を行うと排ガス温度の低下が起こる。従来は触媒がコートされたハニカム構造体を用いることで排ガス浄化を行っていたが、排ガス温度の低温化により触媒が活性しない状態が比較的長時間続く現象が発生する。とりわけ、排ガスエミッションでは始動直後の所謂コールドエミッションの排出が多くなる。このように、排ガス温度が低下し、かつ触媒を早期に暖めることができないと、結果として排ガスが浄化されないこととなり、従来技術では対応が困難になってきた。
【0004】
このような問題に対して、触媒を暖める手段として通電発熱用ハニカム体(EHC)がある。EHCを加熱するには電気を使用するため、バッテリー容量や使用できる電気容量に制約されるため、触媒活性化温度までの加熱と、燃費低減とを共に実現しづらいものとなっている。加えて、エンジンの始動時に、十分に触媒等が温まっていない状態で排ガスが流入すると、排気ガス中に含まれる窒素酸化物、一酸化炭素、炭化水素等の有害物質を浄化するために必要な高温活性状態を作れず、触媒担持される三元触媒等の排気浄化特性を十分に生かすことができない。特に、三元触媒には白金(Pt)、ロジウム(Rh)等の貴金属が使用され、約350℃以上の高温活性状態で効率的な排気浄化特性を発揮するが、低温始動時等の内燃機関冷間時においては、触媒等よる排気浄化特性が著しく悪化する。
【0005】
また、上記に絡み、触媒の貴金属量を増加する手段が考えられるが、排ガス温度が低い状態では改善効果が少なく、貴金属量の増加はコストの著しい上昇を招く。
【0006】
ここで、金属製のハニカムを使用したEHC(通電発熱用ハニカム体)が提案されているが、金属自体の重量が重く加熱に対しては多大なエネルギーが必要であり、車載使用に対しては電気の供給という観点で問題があった。また、EHCに過大な電力を与えることは燃費の低下や信頼性の低下を招く。
【0007】
また、セラミック製の通電発熱用ハニカム体(EHC)としてSiCを使用した例も提案されているが、EHCとして使用する場合、サイズや用途によって目的の体積抵抗率とする必要があるが、体積抵抗率の調整が困難で且つ一般的には電極とEHC本体の接続が困難となり、新たな問題が生じている。
【0008】
このような問題に対し、下記特許文献1〜2がある。
【0009】
特許文献1では、排気通路を有するハニカム構造体からなる触媒付きハニカム構造体(触媒を担持したハニカム構造体、以下「触媒担体」と言う)に一対の電極を付設して、触媒担体を電気加熱する際に、この触媒担体を均一に加熱するために、触媒担体の外周壁から内方へスリットを入れて電流を迂回させる構造とした電気加熱式触媒が開示されている。しかし、この特許文献1では、電極部が触媒担体等の外周壁に付設してあるため、ハニカムの長さ方向に均一な加熱がしづらく、排ガスを均一に温めることができず、局部的に触媒の活性化温度とならない虞が高い。その結果、耐クラック性を向上させることもできなければ、ヒーター部分との熱膨張差を制御出来ず、熱歪み等の不具合を防止することができない。さらに、体積抵抗率を任意に変更することも困難である。更には、EHCでの排ガスへの加熱が不十分であるため、EHCの後方(EHCの排ガス流出側方向)にセットされる触媒担体においても浄化処理効率が低減しやすい。とりわけ、エンジンのコールドスタート時において、燃費の向上を実現しづらく、消費燃料が過大となる割りに浄化効率の向上に十分つながらないため、不十分であるといわざるを得ない。
【0010】
特許文献2では、自己発熱型DPFにおいて、フィルタ本体端面に形成される電極層の形成面積及び形状を最適化することによって、フィルタ本体の温度差を低減し、再生効率の高いDPFを提供することを目的に、多孔質導電性セラミックスからなるフィルタ本体の両端面に、その中心部を除く周囲に電極層を形成させた自己発熱型ディーゼルパティキュレートフィルタが開示されている。しかし、特許文献2では、その中心部を除く周囲に電極層を形成させたもののみ開示されていることに留まり、体積抵抗率が高い発熱部については開示されていない。すなわち、このような構成では、均一な加熱ができず、或いは、耐クラック性を向上させることもできなければ、ヒーター部分との熱膨張差を制御出来ず、熱歪み等の不具合を防止することができない。さらに、体積抵抗率を任意に変更することも困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平8−218856号公報
【特許文献2】特開2000−297625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記問題点を解決すべくなされたものであり、内燃機関からの排出ガスに温度付与可能な通電発熱用ハニカム体と、前記通電発熱用ハニカム体によって温度付与された排出ガスを浄化処理する触媒担体とが備えられる排ガス浄化処理装置であって、前記通電発熱用ハニカム体には、導電性材料からなり隔壁に仕切られたガス流れ方向に実質的に平行な多数の貫通孔と、前記排ガス流入側及びガス流出側の両端面全面に形成される体積抵抗率が低い電極部と、前記電極部の間に体積抵抗率が高い発熱部とが備えられてなり、前記触媒担体には、多孔質の隔壁により区画された前記排ガスの流路となる複数のセルが備えられるとともに、前記隔壁には触媒が担持されている排ガス浄化処理装置として構成されることにより、全体として均一な加熱ができるだけでなく、耐クラック性に優れる通電発熱用ハニカム体と、通電発熱用ハニカム体によって加熱(温度付与)された排ガスによって触媒活性が促進される触媒担体とが相乗的に浄化処理効率を向上させる浄化処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明により、以下の通電発熱用ハニカム体を含む排ガス浄化処理装置が提供される。
【0014】
[1] 内燃機関からの排出ガスに温度付与可能な通電発熱用ハニカム体と、前記通電発熱用ハニカム体によって温度付与された排出ガスを浄化処理する触媒担体とが備えられる排ガス浄化処理装置であって、前記通電発熱用ハニカム体には、導電性材料からなり隔壁に仕切られたガス流れ方向に実質的に平行な多数の貫通孔と、前記排ガス流入側及びガス流出側の両端面全面に形成される体積抵抗率が低い電極部と、前記電極部の間に体積抵抗率が高い発熱部とが備えられてなり、前記触媒担体には、多孔質の隔壁により区画された前記排ガスの流路となる複数のセルが備えられるとともに、前記隔壁には触媒が担持されている排ガス浄化処理装置。
【0015】
[2] 前記通電発熱用ハニカム体に触媒が担持されている[1]に記載の排ガス浄化処理装置。
【0016】
[3] 前記通電発熱用ハニカム体によって付与される温度が触媒活性温度である[1]又は[2]に記載の排ガス浄化処理装置。
【0017】
[4] 前記通電発熱用ハニカム体における発熱部の体積抵抗率が0.1〜10Ωcmで、前記電極部の体積抵抗率が前記発熱部の体積抵抗率の1/10以下である[1]〜[3]のいずれかに記載の排ガス浄化処理装置。
【0018】
[5] 前記通電発熱用ハニカム体が金属とセラミックの複合材料から構成される[1]〜[4]のいずれかに記載の排ガス浄化処理装置。
【0019】
[6] 前記通電発熱用ハニカム体の金属の含有率を変更することで、前記通電発熱用ハニカム体に備えられる前記電極部と前記発熱部との体積抵抗率が変更可能に成型されている[1]〜[5]のいずれかに記載の排ガス浄化処理装置。
【0020】
[7] 前記通電発熱用ハニカム体の前記金属の含有率が、前記通電発熱用ハニカム体の前記両端面から中央領域に向けて漸減して形成される[1]〜[6]のいずれかに記載の排ガス浄化処理装置。
【0021】
[8] 前記通電発熱用ハニカム体の電極が、前記通電発熱用ハニカム体の前記両端面から中央領域に向けて1mm以上10mm以下の領域に形成されている[1]〜[7]のいずれかに記載の排ガス浄化処理装置。
【0022】
[9] 前記通電発熱用ハニカム体が、導電性材料からなる隔壁に仕切られたガス流れ方向に実質的に平行な多数の貫通孔を有する、複数のハニカムセグメントを並列接合して形成されるとともに、前記並列するハニカムセグメントを接合する接合材が低抵抗接合材からなる[1]〜[8]のいずれかに記載の排ガス浄化処理装置。
【0023】
[10] 前記通電発熱用ハニカム体内にストレスレリーフが形成されている[1]〜[9]のいずれかに記載の排ガス浄化処理装置。
【0024】
[11] 前記ストレスレリーフ内には、低ヤング率の充填材が充填されている[10]に記載の排ガス浄化処理装置。
【0025】
[12] 前記通電発熱用ハニカム体を構成する前記複合材料のうち、前記金属がSiからなり、前記セラミックがSiCからなるとともに、前記電極部を構成する前記Siの構成比率が、前記発熱部よりも大きい[1]〜[11]のいずれかに記載の排ガス浄化処理装置。
【0026】
[13] 前記通電発熱用ハニカム体に印加可能な電圧が12〜24Vである[1]〜[12]のいずれかに記載の排ガス浄化処理装置。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、内燃機関からの排出ガスに温度付与可能な通電発熱用ハニカム体と、前記通電発熱用ハニカム体によって温度付与された排出ガスを浄化処理する触媒担体とが備えられる排ガス浄化処理装置であって、前記通電発熱用ハニカム体には、導電性材料からなり隔壁に仕切られたガス流れ方向に実質的に平行な多数の貫通孔と、前記排ガス流入側及びガス流出側の両端面全面に形成される体積抵抗率が低い電極部と、前記電極部の間に体積抵抗率が高い発熱部とが備えられてなり、前記触媒担体には、多孔質の隔壁により区画された前記排ガスの流路となる複数のセルが備えられるとともに、前記隔壁には触媒が担持されている排ガス浄化処理装置として構成されることにより、全体として均一な加熱ができるだけでなく、体積抵抗率が低い電極部においては耐クラック性を向上でき、かつ耐クラック性に優れる通電発熱用ハニカム体と、通電発熱用ハニカム体によって加熱(温度付与)された排ガスによって触媒活性が促進される触媒担体とが相乗的に浄化処理効率を向上させる浄化処理装置を提供できるといった優れた効果を奏することができる。
【0028】
とりわけ、均一な加熱ができ、耐クラック性を向上させるとともに熱膨張差を制御しながら熱歪みを発生し難い通電発熱用ハニカム体と、通電発熱用ハニカム体により加熱した熱と、浄化の際に発生する発熱とにより触媒活性化温度まで昇温させた触媒担体とが相俟って、エンジン始動直後の排ガスを確実に浄化する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1A】本発明の一実施形態が適用される排ガス浄化処理装置の一実施形態を示すものであって、通電発熱用ハニカム体に電極端子を取り付けた状態を模式的示した平面図である。
【図1B】本発明の一実施形態が適用されるガス浄化処理装置の一実施形態を示すものであって、通電発熱用ハニカム体に電極端子を取り付けた状態を模式的示した断面図である。
【図2】本発明の排ガス浄化処理装置の別の実施形態を示すものであって、通電発熱用ハニカム体に電極端子を取り付けた状態を模式的示した断面図である。
【図3】本発明の排ガス浄化処理装置の別の実施形態を示すものであって、通電発熱用ハニカム体に電極端子を取り付けた状態を模式的示した断面図である。
【図4】本発明の排ガス浄化処理装置の別の実施形態を示すものであって、通電発熱用ハニカム体に電極端子を取り付けた状態を模式的示した断面図である。
【図5】本発明の排ガス浄化処理装置の別の実施形態を示すものであって、触媒担体の一例を示す模式図であって斜視図である。
【図6】本発明の排ガス浄化処理装置の別の実施形態を示すものであって、触媒担体の一例を示す模式図であって平面図である。
【図7】本発明の排ガス浄化処理装置の別の実施形態を示すものであって、触媒担体の一例を示す模式図であって、触媒担体の長さ方向に直交する断面を一部拡大して示す部分拡大断面図である。
【図8】本発明の排ガス浄化処理装置の一実施形態を示すものであって、実施例における評価測定の方法を模式的示した断面図である。
【図9】本発明の排ガス浄化処理装置に備えられる通電発熱用ハニカム体に通電させた際に、領域T1、T2、T3における温度と時間の関係を示すグラフである。
【図10】本発明の排ガス浄化処理装置に備えられる通電発熱用ハニカム体に通電させた際の、温度差と、D2/aLとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の排ガス浄化処理装置の形態について具体的に説明する。但し、本発明はその発明特定事項を備える排ガス浄化処理装置を広く包含するものであり、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0031】
[1]本発明の排ガス浄化処理装置:
本発明の排ガス浄化処理装置(以下、適宜「浄化処理装置」という)は、図1A、1Bに示されるように、内燃機関からの排出ガスに温度付与可能な通電発熱用ハニカム体(「Electrically Heated Catalyst:EHC」、以下、適宜「EHC」という)と、通電発熱用ハニカム体によって温度付与された排出ガスを浄化処理する触媒担体とが備えられる排ガス浄化処理装置であって、通電発熱用ハニカム体2には、導電性材料からなり隔壁に仕切られたガス流れ方向に実質的に平行な多数の貫通孔12と、排ガス流入側及びガス流出側の両端面全面に形成される体積抵抗率が低い電極部7と、電極部7の間に体積抵抗率が高い発熱部9とが備えられてなり、触媒担体41には、多孔質の隔壁43により区画された排ガスの流路となる複数のセル45が備えられるとともに、隔壁43には触媒が担持されている排ガス浄化処理装置1として構成されている。
【0032】
[1−1]本実施形態における通電発熱用ハニカム体:
本実施形態における通電発熱用ハニカム体は、内燃機関からの排出ガスに温度付与可能な通電発熱用ハニカム体として構成されることが望ましい。内燃機関からの排出ガスに温度付与可能に構成されることにより、エンジン始動直後の十分に温まっていない内燃機関からの排出ガスに温度付与することによって、排ガスが加熱されるとともに、後述の触媒担体を暖気することができ、触媒担体を触媒活性化温度に昇温させることができ、浄化装置全体としての浄化効率を向上させることができるからである。
【0033】
また、通電発熱用ハニカム体には、導電性材料からなり隔壁に仕切られたガス流れ方向に実質的に平行な多数の貫通孔と、排ガス流入側及びガス流出側の両端面全面に体積抵抗率が低い電極部と、電極部の間に体積抵抗率が高い発熱部とが備えられていることが望ましい。このように構成されることによって、通電によって排ガス温度に左右されることなく、排ガスを加熱することができるため、触媒担体に担持される触媒の活性温度に最適な温度状態となった排ガスを、その触媒担体に送り込むことができるため、浄化処理効率を向上させることができる。
【0034】
具体的には、本実施形態の備える通電発熱用ハニカム体では、図1A、1Bに示されるように、導電性材料からなり隔壁に仕切られたガス流れ方向に実質的に平行な多数の貫通孔12と、排ガス流入側及びガス流出側の両端面全面(6a,6b)に体積抵抗率が低い電極部7と、電極部7の間に体積抵抗率が高い発熱部9とが備えられており、この通電発熱用ハニカム構造体に通電する際の電流の流れを制御することにより、発熱部の発熱を制御できるように構成されることが好ましい。
【0035】
[1−1−1]電極部:
本実施形態における通電発熱用ハニカム体の電極部は、排ガス流入側及びガス流出側の両端面全面に形成されるとともに、その電極部では、体積抵抗率が低くなるように形成されることが望ましい。このように構成されることで、排ガス流入側の端部から排ガス流出側の端部へかけて、電流を十分に均質に流すことができ、後述の発熱部において排ガスに対して均一な加熱(温度付与)をすることができる。また、通電による負荷が電極部において一定となるため、通電量のばらつきにより歪みやクラックを未然に防ぐことができる。
【0036】
この点、従来では、(1)電極部は通電発熱用ハニカム体の外部に1対の電極部が設置され、一方の電極部を介して、或いは電極部から延設した電極線等の連結部を介して、ハニカム構造体と接触する1点からハニカム構造体に電流を流して、他方の電極部に通電をおこなうものや、(2)通電発熱用ハニカム体内の端面であって外周近傍に電極部を設けて、通電させる通電発熱用ハニカム体が見られる。しかし、(1)のような従来の通電発熱用ハニカム体の構造では、通電の性質上最短経路を辿って電流が流れてしまうため、一方の端面から他方の端面側方向に向けて、ハニカム全体に電流を十分に流すことができない。すなわち、一方の電極部、あるいは一方の電極部から延設した電極線等の連結部を介してハニカム構造体と接触する1点から、他方の電極部或いは他方の電極部から延設した電極線等の連結部を介して、電流が流れてしまう。そのため、ハニカム構造体全体に十分に通電がされず、通電発熱用ハニカム構造体の所望領域での発熱が十分に行われない。
【0037】
また、(2)のような従来の通電加熱型のハニカム構造体では、電極部が外周近傍にのみ形成されているため、電極部を通過した排ガスは、暖められることがあっても、電極部を通過しない排ガスは、低温状態のままであるため、全体として排ガス温度が上昇せず、触媒の活性化温度に至らない虞が高い。特に、コールドスタート時では、エンジンから排出される排ガス温度とともに、触媒担体の温度も低いため、浄化効率を低減させてしまう。このように従来の通電発熱用ハニカム体を、触媒担体等をセットしてコンバータシステムとする場合には、触媒担体の触媒活性温度に適するような十分な温度状態を作ることができず、触媒担体の機能を発揮できないものとなっている。
【0038】
さらに、前述の(1)の様な電極部を通電発熱用ハニカム体の外部に1対設置することに加えて、通電発熱用ハニカム体にスリットを形成して、通電の性質上最短経路を辿らせずに電流をハニカム構造体全体に十分に流して十分に発熱をさせようとするものも見られる。しかし、このような試みでも、一方の電極部、あるいは一方の電極部から延設した電極線等の連結部を介してハニカム構造体と接触する1点から通電させるため、熱膨張差や、熱歪み更にはクラックを低減させるには至っていない。まして、電極部を通電発熱用ハニカム体の外部に1対設置する構造に、スリットを形成する場合には、電流の流れ方向にクラックが生じることによって、所謂断線した状態と同様に、電流の流れを阻害する虞もあり、通電を所望制御しながらハニカム構造体の特性を最大限発揮することが難しいものとなっている。
【0039】
また、たとえば、コンバータシステムとしてではなく、直接通電発熱用ハニカム構造体に触媒担持して、所謂通電発熱用ハニカム触媒担体とする場合にも、同様に、触媒担体の触媒活性温度に適するような十分な温度状態を作ることができず、触媒担体の機能を発揮できず、浄化処理効率を向上させることができなかった。
【0040】
そこで、本実施形態の浄化処理装置では、ハニカム構造体の両端面全体に体積抵抗率が低い電極部を直接形成することによって、後述の発熱部に対して、通電をスムーズ且つ十分に行えるものとし、本発明の効果を奏することができるものとした。
ようにした。
【0041】
なお、この通電発熱用ハニカム体に形成される電極部は(さらに後述の発熱部は)、たとえば、車載に搭載されるバッテリー等の電源部に電気的に接続されており、電極部からの電流を受けて、一方の電極部(排ガス流入側端面に形成される電極部)−発熱部−他方の電極部(排ガス流出側端面に形成される電極部)へ電流が流れる構造となっている。
【0042】
たとえば、この通電発熱用ハニカム体の電極部の一例として、図1A、1Bに示される通電発熱用ハニカム体2を挙げることができる。図1A,1Bに示されるように、電極部は、通電発熱用ハニカム体内に体積抵抗率が低い電極部7として構成され、一方の端面(排ガス流入側端面)に電極部7aが形成され、他方の端面(排ガス流出側端面)に電極部7bが形成され、一方の端面(排ガス流入側端面))の電源端子3aから電極部7aに通電が行われ、後述で説明する発熱部9に電流が流れた後、他方の端面(排ガス流出側端面)の電源端子3bから、電流が流れ出るものを一例として挙げることができる。なお、前述のように、電極部7は体積抵抗率が低く、発熱部9は体積抵抗率が高く形成されているため、電極部7aを通電した電流が、発熱部9に通電された際に発熱部で発熱し温度上昇がおこり、排ガスの温度を上昇させることができる。
【0043】
さらに、電極が、ハニカム端面からハニカム体の中央領域に向けて1mm以上10mm以下の領域に形成されていることが好ましい。このような所望領域に電極が形成されることによって、更に、通電発熱用ハニカム体の一方の端面から、他方の端面に一律に通電しやすくなり、均一な加熱ができ、耐クラック性を向上させることができるためである。他方、電極が、ハニカム端面からハニカム体の中央領域に向けて1mm未満であると、電源との接続において信頼性が確保されず、接点抵抗の増加によって局所的な発熱が発生するという問題が生じてしまうため好ましくなく、また、電極がハニカム端面からハニカム体の中央領域に向けて10mm超の領域に形成される場合には、後述の発熱部の面積が小さくなるか、ハニカム全長が過大に長くなってしまうため、好ましくない。
【0044】
[1−1−2]発熱部:
本実施形態における通電発熱用ハニカム体には、電極部の間に体積抵抗率が高い発熱部が設けられることが望ましい。このように構成されることで、発熱部において確実に発熱をすることができるため、発熱部を通過する排ガスを十分に温度付与して加熱できる。また、通電によって生じる発熱部の温度上昇が局部的な偏りをなくして一定(均質)となるため、発熱部における発熱(温度)のばらつきを防ぎ、局部的かつ過度な発熱による歪みやクラックを未然に防ぐことができる。特に、均一な発熱は、ヒーター部分との熱膨張差を制御できるため、歪みやクラックを無くすのに寄与する。
【0045】
この点、前述した(1)外部に1対の電極部が設置される通電発熱用ハニカム体では、通電の性質上最短経路を辿って電流が流れてしまうことから、電極部から発熱部に対して通電する領域に偏りが生じてしまい、発熱部での温度上昇も局部的な偏りを生じるものとなり、局部的かつ過度な発熱による歪みやクラックが生じやすいものとなっている。特に、発熱部で均一に発熱が行われないため、ヒーター部分との熱膨張差を制御できず、歪みやクラックを生じさせていた。その結果、ハニカムの全体ではなく発熱部の局部にのみ温度上昇が留まるものとなり、通電発熱用ハニカム体全体の浄化効率向上にはならず、ハニカムの特性を十分に引き出すものとはなっていない。
【0046】
とりわけ、このような従来の通電発熱用ハニカム体に、触媒担体等をセットしてコンバータシステムとする場合には、触媒担体の触媒活性温度に適するような十分な温度状態を作ることができず、触媒担体の機能を発揮できないものとなっている。
【0047】
他方、本実施形態の浄化処理装置が備える通電発熱用ハニカム体では、そのハニカム体の両端面全体に形成される電極部間に体積抵抗率が高い発熱部を設け、その発熱部全体が前述の電極部より十分に通電される構成となっている。そのため、発熱部全体で後述の触媒担体の触媒活性温度に適するような十分な温度状態を作ること、すなわち十分な発熱をすることができるため、触媒担体の浄化処理機能を高めることができ、浄化処理装置全体として浄化処理効率を向上させることができる。
【0048】
換言すれば、発熱部は、一方の端面全面に形成される電極部から、電極部の延伸方向(ハニカムの長さ方向)に発熱部が形成され、更にその発熱部の延伸方向に、他方の電極部が形成されているため、一方の電極部から他方の電極部に電流が流れる際に、通電は、ハニカムの長さ方向に行われることになり、一方の電極部からの通電ロスも少なく、加えて発熱部全体へ通電を容易に行える。したがって、発熱部に通電しやすくなり、均一な加熱をしやすくなる。さらに、局部的な過剰な通電を防ぐことができるため、ヒーター部分との熱膨張差を防ぐことができ、通電発熱用ハニカム体において熱歪み、クラック等の不具合を容易に低減できるため好ましい。その結果、たとえば、本実施形態の通電発熱用ハニカム体の後工程に、触媒担体を設置して、排ガス浄化処理装置とする場合には、触媒担体の浄化処理に好適な、触媒活性の最適温度に温度上昇させやすくなり、温度制御も容易に行える。
【0049】
たとえば、この通電発熱用ハニカム体の発熱部の一例として、図1A、1Bに示される通電発熱用ハニカム体2を挙げることができる。図1A、1Bに示されるように、発熱部9は、通電発熱用ハニカム体内に体積抵抗率が高い発熱部として構成され、一方の端面(排ガス流入側端面)に電極部7aと他方の端面(排ガス流出側端面)に電極部7bとの間に形成されるものを挙げることができる。図に示されるように、一方の端面(排ガス流入側端面))の電源端子3aから電極部7aに通電が行われると、その電極部7aから通電した発熱部9において、発熱が生じ温度上昇が起こる。この発熱部では、体積抵抗率が高いものの発熱部9を介して更に他方の端面に形成される電極部7bに電流が流れることになる。
【0050】
また、前述のように付与する温度は触媒活性温度であることが好ましい。ガソリン車からの排出ガスに温度付与するのは、コールドスタート時において触媒温度が十分でなく、触媒活性化しづらい温度となっているため、浄化効率が低減しやすいという問題があった。したがって、本実施形態における通電発熱用ハニカム体の発熱部において、触媒活性温度まで排気ガスを温度上昇させる発熱を生じさせることにより、触媒担体での触媒による浄化処理を確実に向上させるものである。ここで、触媒活性温度は、担持する触媒によって差異はあるものの、一般的には、250℃〜400℃の範囲内である。
【0051】
また、発熱部の熱伝導率は10W/mK以上100W/mK以下であることが好ましい。発熱部の熱伝導率が前述のような所望値内であると、発熱部で発生した熱が均一に伝わるため通電加熱ハニカム部をより均一に加熱することが可能である。熱伝導率が高すぎると、発熱部で発熱した熱が外部へ放出されやすくなり、通電発熱ハニカムに触媒をコートした場合、触媒活性が得られ難くなる。
【0052】
また、発熱部のCTE(Coefficient of thermal expansion(熱膨張係数))が8.0×10−6/℃(40〜800℃)以下であることが好ましい。このように所望のCTEに形成されることで、発熱部にクラックが生じることを防ぐことができるため好ましい。
【0053】
[1−2]触媒担持通電発熱用ハニカム体:
より好ましいのは、通電発熱用ハニカム体に触媒が担持されていることである。通電発熱用ハニカム体に触媒が担持されることにより、本実施形態の浄化処理装置に備えられる触媒担体を補助しながら、相乗効果的に浄化処理効率を向上させるため好ましい。特に、通電発熱用ハニカム体は、電気によって通常のハニカムよりも早期に昇温でき、エンジン始動直後の排ガスを浄化できるため、浄化の際に発生する発熱(HC、COを酸化する際に生じる発熱)と、この触媒担持通電発熱用ハニカム体が加熱した(温度付与した)排ガスの熱と、を利用でき、更に、そのような謂わば2重の意味で加熱された排ガスが、触媒担持通電発熱用ハニカム体の後方に備えられる触媒担体を暖気させることによって、触媒担体を昇温させ早期に触媒活性できるようになっている。
【0054】
ここで、(触媒担持)通電発熱用ハニカム体は電気を使用するため、排ガス温度に関係なく加熱できる一方で、通電発熱用ハニカム体を加熱するには電気が必要となる。この際、車載に搭載されるバッテリーの容量は通常の車輌であれば12〜24Vに制限されることに加え、その電気量はエンジンによって発電されるため、通電発熱用ハニカム体が使用する電気使用量が多い場合には燃費の悪化に繋がるため、制限されることとなる。したがって、触媒担持通電発熱用ハニカム体のみでは、エンジン始動時における排ガス流量が少ない低回転領域からの始動であって、且つ使用できる電気容量も少ないため、排ガス浄化という点では十分に浄化しきれないものの、本実施形態における浄化処理装置では、前述の触媒担持通電発熱用ハニカム体の後方に、触媒担体を搭載する(備える)ため、触媒担持通電発熱用ハニカム体で十分に浄化できない排ガスも、触媒担持通電発熱用ハニカム体内で2重の意味で加熱された排ガスが触媒担体に送りこまれるため、触媒担体での浄化効率を向上させることができる。
【0055】
[1−2−1]触媒:
通電ハニカム体(その隔壁)には、酸化触媒、他の触媒や浄化材が担持されていてもよい。例えば、アルカリ金属(Li、Na、K、Cs等)やアルカリ土類金属(Ca、Ba、Sr等)からなるNOX吸蔵触媒、三元触媒、セリウム(Ce)及び/又はジルコニウム(Zr)の酸化物に代表される助触媒、HC(HydroCarbon)吸着材等が担持されていてもよい。
【0056】
触媒としては、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)等の貴金属が好適に用いられる。
【0057】
たとえば、触媒にはCeとそれ以外の少なくとも1種の希土類金属、アルカリ土類金属、または遷移金属を含んでもよい。
【0058】
ここで、希土類金属としては、たとえば、Sm、Gd、Nd、Y、Zr、Ca、La、Pr等から選択することができる。
【0059】
また、触媒に含まれるアルカリ土類金属としては、たとえば、Mg、Ca、Sr、Ba等から選択することができる。
【0060】
また、触媒に含まれる遷移金属としては、たとえば、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sc、Ti、V、Cr等から選択することができる。
【0061】
このような触媒の担持方法は特に限定されないが、例えば、通電発熱用ハニカム体の、発熱部の隔壁に対して、触媒成分を含む触媒液をウォッシュコートした後、高温で熱処理して焼き付ける方法等が挙げられる。また、例えば、ディッピング法等の従来公知のセラミック膜形成方法を利用して、セラミックスラリーをハニカム構造の基材の隔壁に付着させ、乾燥、焼成する方法等により、薄膜状の触媒層を形成してもよい。この際、触媒層の平均細孔径はセラミックスラリー中の骨材粒子の粒度や配合比等、気孔率はセラミックスラリー中の骨材粒子の粒度や造孔材の量等、コート層厚みはセラミックスラリーの濃度や膜形成に要する時間等を制御することにより所望の値に調整することができる。
【0062】
なお、酸化触媒、NOX吸蔵触媒等の触媒成分は、高分散状態で担持させるため、予めアルミナのような比表面積の大きな耐熱性無機酸化物に一旦担持させた後、ハニカム構造体(たとえば隔壁等)に担持させてもよい。
【0063】
また、上記触媒は、例えば、吸引法等の従来公知の触媒担持方法を応用して、触媒スラリーを隔壁の細孔内に担持させ、乾燥、焼成する方法等により形成してもよい。
【0064】
[1−3]本実施形態の備える通電発熱用ハニカム体の電極部と発熱部との関係:
本実施形態の備える通電発熱用ハニカム体では、電極部と発熱部とが以下の関係であることが好ましい。
【0065】
発熱部の体積抵抗率が0.1〜10Ωcmで、電極部の体積抵抗率が発熱部の1/10以下であることが好ましい。発熱部の体積抵抗率が0.1〜10Ωcmで、電極部の体積抵抗率が発熱部の体積抵抗率の1/10以下にすることによって、体積抵抗率が低い領域である電極部と、体積抵抗率が高い領域である発熱部を形成できるから好ましい。すなわち、発熱部の体積抵抗率を0.1〜10Ωcmにすることにより、発熱部において発熱を確実に生じさせ所望温度に温度上昇(加熱)させることができ、また、電極部の体積抵抗率を発熱部の体積抵抗率の1/10以下にすることにより、電極部の体積抵抗率が低くなり、発熱に伴う過剰な温度上昇を制御できるため耐クラック性を向上させることができ、さらに、電極部の長さ方向(ハニカム方向)に連なる発熱部に確実に通電させて発熱を促進させることができる。その結果、発熱部では均一な加熱ができ、また、電極部分では体積抵抗率を低くして発熱に伴う過剰な温度上昇を制御して耐クラック性を向上させることができ、さらに、前述のような電極部と発熱部とが相俟って、通電発熱用ハニカム体全体として、ヒーター部分との熱膨張差を制御しながら熱歪みを発生し難く、かつ耐クラック性に優れたものとすることができ、本願の効果をより奏することができる。加えて、本実施形態の通電発熱用ハニカム体の後工程に設置する触媒担体に、前述の発熱部で十分に加熱された排ガスが流入することにより、触媒担体に担持された触媒がその活性化温度となりやすくなるため、浄化処理効率を向上させることができ好ましい。
【0066】
他方、発熱部の体積抵抗率が0.1Ωcm未満であると、発熱部への通電が過剰となるだけでなく、発熱が十分おこらないため、排ガスを温度付与(加熱)できなくなり、その結果、浄化効率を低減させるため好ましくない。他方、10Ωcm超であると、体積抵抗率が高すぎ、目的の昇温速度が得られなくなる。さらに、電極部の抵抗が発熱部の1/10超であると、均一な通電ができないために、不均一な温度分布となるという点で問題が生じ好ましくない。
【0067】
さらに、電極部と、電極部を除いた通電発熱用ハニカム体の残部との熱膨張係数差は、1.0×10−6/℃(40〜800℃)以下であることが好ましい。このように、電極部と、電極部を除いた通電発熱用ハニカム体の残部、すなわち、電極部と、電極部を除いた通電発熱用ハニカム体の残部である発熱部との熱膨張差を所望数値内になるように形成することによって、加熱冷却時における熱応力でクラックが発生し難いものとなるため好ましい。なお、このような熱膨張差を所望数値内に制御するには、たとえば、後述の電極部分をSi金属の増量等によって形成することによって、熱膨張差が殆ど生じない電極部を形成できる。ただし、このようなものに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜公知の手法を採用して、所望の電極部を形成してもよい。
【0068】
さらに、通電発熱用ハニカム体は、金属とセラミックの複合材料から構成されることが好ましい。金属を含有させることで導電性を確保しながら、セラミックを含有させることで、成形しやすく更に、ハニカムの特性を発揮することができるためである。ただし、「通電発熱用ハニカム体は、金属とセラミックの複合材料から構成される」ものには、通電発熱用ハニカム体全体が、金属とセラミックの含有量が一定量からなる複合材料から構成されるものを意味するものではない。少なくとも、本実施形態では、体積抵抗率が低い電極部と体積抵抗率が高い発熱部とを備えることから、体積抵抗率低い電極部では、ハニカム全体に対して(電極部を除いた残余の部分に対して)金属含有率が高く構成されるとともに、体積抵抗率が高い発熱部では、ハニカム全体に対して(発熱部を除いた残余の部分に対して)金属含有率が低く構成される。このように電極部がハニカム全体に対して(電極部を除いた残余の部分に対して)金属含有率が高く構成されることによって、通電しやすくなるとともに、発熱部がハニカム全体に対して(発熱部を除いた残余の部分に対して)金属含有率が低く構成されることによって、発熱を容易行えることができ、本願の効果をより奏することができるからである。
【0069】
すなわち、金属の含有率を変更することで、電極部と発熱部における体積抵抗率を変更可能に成形できるように形成されることが好ましい。金属の含有量によって、発熱部の温度上昇を容易に制御できるためである。たとえば、本実施形態が備える通電発熱用ハニカム体の全体を、Si金属とSiCより構成し、Si金属の含有量を、各領域(たとえば上流、中流、下流の域)において調整することにより、通電発熱用ハニカム体内における体積抵抗率を任意に変更することができる。さらに、電極部においては、Si金属を含浸させる代わりに金属メッキを施して電極として形成することも好ましい。
【0070】
より好ましいのは、複合材料を構成する金属がSiからなり、セラミックがSiCからなるとともに、電極部を構成するSiの構成比率が、発熱部よりも大きいことであり、また、複合材料を構成する金属がSiからなり、セラミックがSiCからなるとともに、発熱部を構成するSiCの構成比率が電極部よりも大きいことが好ましい。すなわち、電極部を形成する場合には、Si金属とSiCより構成しながら、Si金属の含有量を、発熱部よりも多く含有させて所望の電極部として形成し、さらに、発熱部を形成する場合には、Si金属とSiCより構成しながら、Si金属の含有量を、発熱部よりも少なく含有させて所望の発熱部として形成する。このように形成することにより、電極部及び発熱部における体積抵抗率を任意に変更でき、さらに、電極部では、スムーズに通電が可能となり、発熱部では、所望温度に発熱が可能となるから好ましい。
【0071】
たとえば、発熱部のSiCとSiの比率を90:10〜50:50(重量比)として、電極部のSi含有量を、発熱部に対して1.2倍〜15倍の範囲で含有させると、電極部を構成するSiの構成比率が、発熱部よりも大きくなり、ヒーター部分との熱膨張差が殆どなく熱歪みが発生し難く耐クラック性に優れたものとなるため、本願の効果をより奏しやすくなる。
【0072】
さらに、金属の含有率が、両端面全体から通電発熱用ハニカム体の中央領域に向けて漸減して形成されることが好ましい。このように金属の含有率が、ハニカムの両端面から中央領域に向けて漸減することにより、電極部と発熱部における熱膨張差の境界が無くなり応力集中が小さくなるために、クラックが発生し難くなる。したがって、クラックの発生を防止できる。
【0073】
この金属の含有率が、両端面から通電発熱用ハニカム体の中央領域に向けて漸減する割合としては、たとえば、含有率が変化する遷移領域長さを電極部長さと同等あるいは2倍程度とするものを一例として挙げることができる。ただし、このようなものに限定されるものでなく、本発明を逸脱しないものであればよい。
【0074】
また、本実施形態の通電発熱用ハニカム体を車に搭載する場合には、許容される電力、目的の昇温性能、浄化性能を確保するために、体積抵抗率を調整する必要があるが、たとえば、Si金属量の含有比率を増加させることによって体積抵抗率が低下する。他方、Si金属量の含有比率を低下させると抵抗値は上昇する。そのため、目的抵抗に合わせた添加量を設定するなどして、所望電力、目的の昇温性能、浄化性能を確保することが好ましい。
【0075】
さらに、通電発熱用ハニカム体に印加可能な電圧が12〜24Vであることが好ましい。このような所望電圧を印加できることで、車に搭載するバッテリー容量に対応できるためである。他方、24V超であると、車に搭載するバッテリーに対応できず、また燃費効率も低減するため好ましくなく、12V未満であると、EHC内での発熱が十分とならないため、浄化処理に支障がでる虞があるため好ましくない。
【0076】
[1−4]ストレスレリーフ:
さらに、通電発熱用ハニカム体内にストレスレリーフが形成されていることも好ましい形態の一つである。このように、ストレスレリーフを設けることにより、通電発熱用ハニカム体内での応力緩和が可能となるため好ましい。このストレスレリーフとしては、単純に切り込みを入れたものでも、応力緩和という点で効果的ではあるが、より好ましいのは、そのストレスレリーフの先端部を丸く形成することである。先端を丸く形成することで、先端部分で応力が吸収され、更なる応力緩和ができるからである。さらに好ましいのは、ストレスレリーフ内に低ヤング率の部材を充填してストレスレリーフが形成されることである。このように構成されることによって、一層応力緩和が行われやすくなり振動によるクラック発生を抑制することもできる。最も好ましいのは、ストレスレリーフ内に、ストレスレリーフ以外の残部よりも、ヤング率が低く、且つ体積抵抗率が高い充填材が充填されていることが好ましい。このように構成されることで、応力緩和が行われるため振動によるクラック発生を防止できる。
【0077】
なお、低ヤング率の部材としては、たとえば、繊維状SiC、あるいは粒子状SiCとコロイダルシリカを主成分とするセメント材料等を挙げることができ、所望のヤング率としては、0.001〜0.05GPaである。
【0078】
このようなストレスレリーフとしては、たとえば、図1Aに示されるようなストレスレリーフ11を一例として挙げることができる。ただし、このようなものに限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲で公知のストレスレリーフを用いることができる。
【0079】
[1−5]通電発熱用ハニカム体のその他の構成:
本実施形態が備える通電発熱用ハニカム体の基材は、図1A,1Bに示されるように、導電性材料からなり隔壁に仕切られたガス流れ方向に実質的に平行な多数の貫通孔12を有し、ガス流入側及びガス流出側の両端面6を有するハニカム構造体からなる。このハニカム構造体には、多数の流通孔の上流側に形成される開口端部6a、及び下流側に形成される開口端部6bが形成される。ただし、本実施形態が備える通電用ハニカム構造の全体形状については、図に示した形状に特に限定されるものではなく、例えば、図1A、1Bに示されるような円筒状の他、四角柱状、三角柱状等の形状を挙げることができる。
【0080】
また、本実施形態が備える通電発熱用ハニカム体が備える流通孔の開口形状(セル形状ともいい、セルの形成方向に対して垂直な断面におけるセルの形状)としては、例えば、図1Aに示されるような四角形セルの他、六角形セル、三角形セル等の形状を挙げることができる。ただし、このような形状に限られるものではなく、公知のセルの形状を広く包含することができる。より好ましいセル形状としては、円形セル又は四角形以上の多角形セルを挙げることができる。このような円形セル又は四角形以上の多角形セルがより好ましいのは、高熱応力を緩和させながら、排ガスの流入流出を所望状態に制御しやすいからである。とりわけ、セル密度、開口率等を考慮すると、六角形セルがより好ましい。
【0081】
本実施形態が備える通電発熱用ハニカム体の基材が備えるセル密度についても特に制限はないが、本実施形態をDPFとして用いる場合には、6〜1500セル/平方インチ(0.9〜233セル/cm2)の範囲であることが好ましい。また、隔壁の厚さは、20〜2000μmの範囲であることが好ましい。
【0082】
また、本実施形態が備える通電発熱用ハニカム体の基材は、金属とセラミックとの複合材料から形成されることが好ましい。この金属としては、珪素、鉄、胴、亜鉛、錫、アルミニウム、銀、ニッケル、コバルトなどを挙げることができ、セラミックとしては、コージェライト、アルミニウムチタネート、窒化珪素、サイアロン、ムライト、アルミナ、ジルコニアなどを挙げることができる。より好ましいのは、本実施形態の通電発熱用ハニカム体の基材がSiCとSiの複合材料から形成されることが好ましく、電極部、発熱部の各部位に応じて、SiC或いは、Siの含有量が調整されることが好ましい。
【0083】
また、上記のようなハニカム構造の基材は、例えば、セラミックからなる骨材粒子、水の他、所望により有機バインダ(ヒドロキシプロポキシルメチルセルロース、メチルセルロース等)、造孔材(グラファイト、澱粉、合成樹脂等)、界面活性剤(エチレングリコール、脂肪酸石鹸等)等を混合し、混練することによって坏土とし、その坏土を所望の形状に成形し、乾燥することによって成形体を得、その成形体を焼成することによって得ることができる。
【0084】
ハニカム構造体の作製方法としては、たとえば次のような方法が一例として挙げられる。ただし、このようなハニカム構造体の作製方法に限らず、公知のハニカム構造体の作製方法を用いることもできる。
【0085】
例えば、複数本のハニカムセグメントからなるハニカムセグメント接合体であって、セグメント同士が接合材で接合され、外周面を所望形状に切削加工されて成型される場合には、次の手順で行うとよい。
【0086】
まず、ハニカムセグメントを作製する。このハニカムセグメント原料として、たとえば、SiC粉80質量部に対して金属Siを20質量部配合し、適宜成形助剤と造孔材を加え混合を行い、水を添加して粘土状とする。SiC粉、金属Siともに後に押出成形を行うために、口金のスリットに対して大きな粒径を持つような原料を除外する分級工程を経た原料が好ましい。
【0087】
粘土状になった原料を押出し成形し所望形状のハニカム成形体を成形する。次いで、得られたハニカムセグメント成形体をマイクロ波乾燥機で乾燥し、更に熱風乾燥機で完全に乾燥させた後、目封止をして焼成(仮焼き)する。
【0088】
この仮焼きは、脱脂のためにおこなわれるものであって、たとえば、酸化雰囲気において550℃で、3時間程度で行うものが挙げられるが、これに限られるものではなく、ハニカム成形体中の有機物(有機バインダ、分散剤、造孔材等)に応じて行われることが好ましい。一般に、有機バインダの燃焼温度は100〜300℃程度、造孔材の燃焼温度は200〜800℃程度であるので、仮焼温度は200〜1000℃程度とすればよい。仮焼時間としては特に制限はないが、通常は、3〜100時間程度である。
【0089】
さらに、焼成(本焼成)を行う。この「本焼成」とは、仮焼体中の成形原料を焼結させて緻密化し、所定の強度を確保するための操作を意味する。焼成条件(温度・時間)は、成形原料の種類により異なるため、その種類に応じて適当な条件を選択すればよい。たとえば、Ar不活性雰囲気で焼成する場合の焼成温度は一般的には、1400℃〜1500℃程度であるが、これに限られるものではない。
【0090】
前述のような工程を経て所望寸法の複数のハニカムセグメント(焼結体)を得た後、そのハニカムセグメントの周面に、繊維状SiC、あるいは粒子状SiCとコロイダルシリカを主成分とし、体積抵抗率低減用材料として銀、銅、鉄、ニッケル等のいずれかを含むセメント材料などの低抵抗接合材等からなる接合用スラリーを塗布し、互いに組み付けて圧着した後、加熱乾燥して、全体形状が四角柱状のハニカムセグメント接合体を得る。そして、そのハニカムセグメント接合体を、円柱形状に研削加工した後、その周面を、ハニカムセグメント成形体と同材料からなる外周コート層で被覆し、乾燥により硬化させることにより、セグメント構造を有する円柱形状のハニカム成形体を得ることができる。
【0091】
より好ましいのは、通電発熱用ハニカム体が、導電性材料からなる隔壁に仕切られたガス流れ方向に実質的に平行な多数の貫通孔を有する、複数のハニカムセグメントを並列接合して形成されるとともに、並列するハニカムセグメントを接合する接合材が、低抵抗接合材からなる通電発熱用ハニカム体として構成されることが好ましい。前述のように、接合材が、低抵抗接合材からなるものを使用して、導電性材料からなる隔壁に仕切られたガス流れ方向に実質的に平行な多数の貫通孔を有する、複数のハニカムセグメントを並列接合して形成される場合には、電極部で通電性を確実に行うことができ、且つ、発熱部に通電させて発熱を確実に行わせることができるため好ましい。
【0092】
また、セグメント構造でない一体型として通電発熱用ハニカム体を作成する場合には、たとえば、SiC粉80質量部に対して金属Siを20質量部を配合し、適宜成形助剤と造孔材を加え混合を行い、水を添加して粘土状とする。SiC粉、金属Siともに後に押出成形を行うために口金のスリットに対して大きな粒径を持つような原料を除外する分級工程を経た原料が好ましい。また、成形助剤、造孔材は任意の原料を使用しても問題無いが、成形性、最終製品の目的気孔率が得られるように設定する必要がある。
【0093】
粘土状になった原料を押出し成形しハニカム状とする。ハニカムは焼成による収縮を予め見込み焼成後に所望寸法となるようなスリット且つ所望セル数となるような口金を使用するとよい。成形後、乾燥を行いハニカム構造の乾燥体について両端の切断を行った後にAr雰囲気で焼成を行い焼成後のハニカム構造体を得ることができる。さらに必要に応じて、その周面を、ハニカムセグメント成形体と同材料からなる外周コート層で被覆し、乾燥により硬化させることにより、セグメント構造を有する円柱形状のハニカム成形体を得ることができる。
【0094】
その後、前述のようセグメント構造からなる焼成後のハニカム成形体或いは、前述のような一体型からなるハニカム成形体に対して、その両端面に、端面よりハニカム成形体の長さ方向に向かって所望長さ寸法までのハニカム隔壁内の総気孔率容積に相当する、金属板(たとえばSiからなる金属板)を載せ、真空下で加熱を行い、Siを含侵させ電極部分を形成するとよい。
【0095】
また、本実施形態の備える通電発熱用ハニカム体の嵩密度が0.8g/cm3以下であることが好ましい。本実施形態の通電発熱用ハニカム体が、車載に搭載される場合には、使用可能な電力に限界があり、重量が大きくなるとハニカムの加熱に多大なエネルギーが必要となるためである。
【0096】
なお、内部温度分布を均一にする観点からは、ハニカム構造体の直径をD、長さをL、電極部の幅をaとしたとき、以下の(1)の関係になることが好ましい。
【0097】
【数1】
【0098】
このような数値内の関係にある場合に、加熱を均一に行えて、本願の効果を奏し易いからである。他方、150より大きい場合には、例えば、ハニカム構造体の直径が、ハニカム構造体の長さ、或いは電極部の幅に対して過大となって、十分に加熱を行うことができず、内部温度分布を均一にできない。とりわけ、本実施形態の通電発熱用ハニカム体を車載する場合には、バッテリー等の電流値に限界があるため、好ましくない。また、15より小さい場合は、Dを相対的に小さくする方向であり、ガス流速が過大となり圧損増加となり、好ましくない。
【0099】
[2]触媒担体の構成:
さらに、本実施形態の浄化処理装置は、これまで説明した通電発熱用ハニカム体と、下記の構成を備える触媒担体とから概ね構成されている。
【0100】
触媒担体の基材としては、多孔質の隔壁により区画された前記排ガスの流路となる複数のセルが備えられるハニカム構造体として構成されていることが望ましく、このようなハニカム構造体の隔壁に触媒が担持されているものが望ましい。たとえば、図1B、図5〜7に示されるように、基材が、隔壁43に仕切られたガス流れ方向に実質的に平行な多数の貫通孔45を有し、ガス流入側及びガス流出側の両端面A,Bを有するハニカム構造体として構成され、このハニカム構造体には、多数の流通孔の上流側に形成される開口端部47a、及び下流側に形成される開口端部47bが形成されるものを一例として挙げることができる。なお、必要に応じて、その開口端部には互い違いに目封じされてなる目封止部が形成されていることも好ましい形態である。DPFとしてのフィルタに本実施形態を適用できるためである。ただし、本実施形態が備える触媒担体の基材の形状については、図に示した形状に特に限定されるものではなく、別の例としては、図5〜7に示されるような円筒状の他、四角柱状、三角柱状等の形状を挙げることができる。なお、このような基材の隔壁に、触媒が担持され触媒担体として、本実施形態の浄化処理装置に備えられることになる。
【0101】
また、触媒担体が備える流通孔の開口形状(セル形状ともいい、セルの形成方向に対して垂直な断面におけるセルの形状)としては、例えば、図5〜7に示されるような四角形セルの他、六角形セル、三角形セル等の形状を挙げることができる。ただし、このような形状に限られるものではなく、公知のセルの形状を広く包含することができる。より好ましいセル形状としては、円形セル又は四角形以上の多角形セルを挙げることができる。このような円形セル又は四角形以上の多角形セルがより好ましいのは、高熱応力を緩和させながら、再生時のクラックを抑制しやすく、さらに排ガスの流入流出を所望状態に制御しやすいからである。加えて、浄化性能を高めながら、構造強度を高めることができるため好ましい。とりわけ、セル密度、開口率等を考慮すると、六角形セルがより好ましい。
【0102】
触媒担体の基材が備えるセル密度についても特に制限はないが、本実施形態をDPFとして用いる場合には、6〜1500セル/平方インチ(0.9〜233セル/cm2)の範囲であることが好ましい。また、隔壁の厚さは、20〜2000μmの範囲であることが好ましい。
【0103】
また、上記のようなハニカム構造の基材は、例えば、セラミックからなる骨材粒子、水の他、所望により有機バインダ(ヒドロキシプロポキシルメチルセルロース、メチルセルロース等)、造孔材(グラファイト、澱粉、合成樹脂等)、界面活性剤(エチレングリコール、脂肪酸石鹸等)等を混合し、混練することによって坏土とし、その坏土を所望の形状に成形し、乾燥することによって成形体を得、その成形体を焼成することによって得ることができる。
【0104】
[2−1]触媒:
本実施形態が備える触媒担体では、前述のように、触媒が担持されている。また、使用用途に応じて、浄化材等を更に担持してもよい。例えば、アルカリ金属(Li、Na、K、Cs等)やアルカリ土類金属(Ca、Ba、Sr等)からなるNOX吸蔵触媒、三元触媒、セリウム(Ce)及び/又はジルコニウム(Zr)の酸化物に代表される助触媒、HC(HydroCarbon)吸着材等が担持されていてもよい。なお、担持する触媒等については、前述した触媒担持通電発熱用ハニカム体に担持する触媒と同じであるため、ここでは説明を省略し、「[1−2−1]触媒」の説明を参照されたい。
【0105】
[3]通電発熱用ハニカム体の製造方法:
これまで説明した通電発熱用ハニカム体を製造する方法として、通電発熱用ハニカム体の両端面に体積抵抗率が低い電極部を直接設けるとともに、体積抵抗率が高い発熱部とを備える通電発熱用ハニカム体を製造することが好ましい。前述のように、通電発熱用ハニカム体の両端面に体積抵抗率が低い電極部を直接設けるとともに、体積抵抗率が高い発熱部とを備えるため、均一な加熱ができ、さらに、体積抵抗率が低い電極部分においては耐クラック性を向上させた電極部分と、ヒーター部分との熱膨張差を制御可能しながら熱歪みを発生し難く、かつ耐クラック性に優れた発熱部とを兼ね備える通電発熱用ハニカム体を製造できるため、本発明の効果を普く奏することができるからである。
【0106】
好ましいのは、発熱部を成形した後に、Si金属を含侵して通電発熱用ハニカム体を製造する製造方法である。たとえば、成形原料を押出し成形しハニカム状とし、Ar雰囲気で焼成を行いハニカム構造体とした後、ハニカム焼成体の両端面に、端面より所望領域までのハニカム隔壁内の総気孔容積に相当する、金属Siの板を載せ、真空下で加熱を行い、Siを含侵させて電極部を形成して製造する方法を一例として挙げることができる。
【0107】
また、発熱部を成形した後に金属メッキ処理を施し電極部を形成して、通電発熱用ハニカム体を製造することも好ましい製造方法の一つである。
【0108】
より好ましいのは、通電発熱用ハニカム体がSiCとSiからなり、Siの含有比率が5%以上70%以下になるように、さらに好ましいのは、Siの含有比率が10%以上50%以下になるように、Siの含有量を調整して通電発熱用ハニカム体を製造することである。Siの含有比率を前述のような所望値にすることにより、体積抵抗率を調整できるため、均一な加熱が可能となり、耐クラック性をより向上させ、熱膨張差を制御し易くなる。他方、Siの含有比率が5%未満であると、体積抵抗率が過大となり、Siの含有比率が70%超であると、耐熱性及び強度が低下し、熱膨張が増加するため好ましくない。
【0109】
また、平均サイズが10〜80μm以下であるSiC粒子を使用して通電発熱用ハニカム体を製造することも好ましい製造方法である。SiC粒子の粒子が、所望径内であると、粒子が均一となって、均一な加熱をし易くなり、本願の効果を奏し易いからである。
【0110】
[4]触媒担体の製造方法:
触媒担体の作製方法としては、たとえば次のような方法が一例として挙げられる。ただし、このような触媒担体の作製方法に限らず、公知の触媒担体の作製方法を用いることもできる。
【0111】
例えば、複数本のハニカムセグメントからなるハニカムセグメント接合体であって、セグメント同士が接合材で接合され、外周面を所望形状に切削加工されて成型される場合には、次の手順で行うとよい。
【0112】
まず、ハニカムセグメントを作製する。このハニカムセグメント原料として、たとえば、SiC粉末及び金属Si粉末を80:20の質量割合で混合し、これにメチルセルロース及びヒドロキシプロポキシルメチルセルロース、界面活性剤及び水を添加して混練し、可塑性の坏土を得た。そして、所定の金型を用いて坏土を押出成形し、所望形状のハニカムセグメント成形体を成形する。次いで、得られたハニカムセグメント成形体をマイクロ波乾燥機で乾燥し、更に熱風乾燥機で完全に乾燥させた後、目封止をして焼成(仮焼き)する。
【0113】
この仮焼きは、脱脂のためにおこなわれるものであって、たとえば、酸化雰囲気において550℃で、3時間程度で行うものが挙げられるが、これに限られるものではなく、ハニカム成形体中の有機物(有機バインダ、分散剤、造孔材等)に応じて行われることが好ましい。一般に、有機バインダの燃焼温度は100〜300℃程度、造孔材の燃焼温度は200〜800℃程度であるので、仮焼温度は200〜1000℃程度とすればよい。仮焼時間としては特に制限はないが、通常は、3〜100時間程度である。
【0114】
さらに、焼成(本焼成)を行う。この「本焼成」とは、仮焼体中の成形原料を焼結させて緻密化し、所定の強度を確保するための操作を意味する。焼成条件(温度・時間)は、成形原料の種類により異なるため、その種類に応じて適当な条件を選択すればよい。たとえば、Ar不活性雰囲気で焼成する場合の焼成温度は一般的には、約1400℃〜1500℃前後程度であるが、これに限られるものではない。
【0115】
前述のような工程を経て所望寸法の複数のハニカムセグメント(焼結体)を得た後、そのハニカムセグメントの周面に、アルミノシリケートファイバ、コロイダルシリカ、ポリビニルアルコール、及び炭化珪素を混練してなる接合用スラリーを塗布し、互いに組み付けて圧着した後、加熱乾燥して、全体形状が四角柱状のハニカムセグメント接合体を得る。そして、そのハニカムセグメント接合体を、円柱形状に研削加工した後、その周面を、ハニカムセグメント成形体と同材料からなる外周コート層で被覆し、乾燥により硬化させることにより、セグメント構造を有する円柱形状のハニカム構造体を得ることができる。
【0116】
なお、成形方法としては、上述のように調製した坏土を、所望のセル形状、隔壁厚さ、セル密度を有する口金を用いて押出成形する方法等を好適に用いることができる。
【0117】
[5]本発明の通電発熱用ハニカム体のセッティング方法:
本発明の通電発熱用ハニカム体では、前述した電極部と、車載するバッテリー等の電源と接続して使用する。このような端面近傍の高電気伝導部位からバッテリー等の電源に電気接続する方法としては、たとえば、図2に示されるような、端面近傍の部位の外周を金属メッシュ等の伝導材で覆い、金属メッシュ等の伝導材と、本実施形態の通電発熱用ハニカム体との間を、金属ろう付け等の高耐熱性を有する接着処理により接着して行われることが好ましい。さらに、金属メッシュ等の伝導材料の外周側に、銅電線等の伝導材を、前述と同様の金属ろう付け等の高耐熱性を有する接着処理により接着し、それらを絶縁部材で挟む構造にして絶縁性を確保することが好ましい。また、図2に示されるように絶縁部材の外側全周を、通常の触媒コンバータに用いられるのと同様のセラミック繊維マット等の部材で覆い、外周にかかる面圧を例えば0.3MPa等といった所望面圧となるように、前述のセラミック繊維マット、及び金属メッシュを圧縮した状態で、金属キャン内に押し込み、金属キャン内に固定することが好ましい。なお、前述のような銅電線等の伝導材は金属キャンと絶縁することが好ましいため、絶縁スリーブを貫通させて電極端子につながる構造となることが好ましい。なお、図2のようなセッティングに代替するものとして図3に示されるように、一方の端面(排ガス流入側端面)の電源端子3aを図2に示されるものと別の位置に配置してセッティングなどおこなってもよく、配設スペース等に応じて、セッティング方法が適宜選択されることが好ましい。
【0118】
さらに、前述のように、通電発熱用ハニカム体を固定した金属キャン内に、触媒担体をセットする。触媒担体のセット位置は、前述の通電発熱用ハニカム体から流れてくる(温度付与して加熱された)排ガスが、触媒担体に流入するできる方向にセットする。換言すれば、通電発熱用ハニカム体の排ガス流出側方向に、触媒担体をセットする。この触媒担体のセット方法は、触媒担体の外周部を絶縁部材で挟む構造にして絶縁性を確保することが好ましい。たとえば、絶縁部材の外側全周を、通常の触媒コンバータに用いられるのと同様のセラミック繊維マット等の部材で覆い、外周にかかる面圧を例えば0.3MPa等といった所望面圧となるように、前述のセラミック繊維マットを圧縮した状態で、金属キャン内に押し込み、金属キャン内に固定するとよい。なお、配設スペース等に応じて、セッティング方法が適宜選択されることが好ましい。
【0119】
通電発熱用ハニカム体のより好ましい態様は、図4に示されるように、金属キャンの内面を絶縁コートすることである。キャンの内側に予め絶縁処理を施しておくことによって、仮に本実施形態の通電発熱用ハニカム体が金属キャン内に対してズレ等が生じても金属キャンと導通することを防ぐことができるためである。
【実施例】
【0120】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。また、実施例における各種の評価、測定は、下記方法により実施した。
【0121】
(実施例1)
SiC粉70質量部に対して金属Si30質量部を配合し、適宜成形助剤と造孔材を加え混合を行い、水を添加して粘土状とする。この際、SiC粉、金属Siともに後に押出成形を行うため、口金のスリットに対して大きな粒径を持つような原料を除外する分級工程処理を行った。
【0122】
次に、前述の粘土状になった成形原料を押出し成形しハニカム状とする。このハニカムは、焼成による収縮を予め見込み焼成後に100μmとなるようなスリット、且つセル数が62個/cm2となるような口金を使用した。成形後、乾燥を行いハニカム構造の乾燥体について両端の切断を行った。その後Ar雰囲気で焼成を行いハニカム構造体とした。なお、乾燥条件は、600℃、3hrであり、焼成条件は1430℃、3hrである。
【0123】
さらに、前述の焼成後のハニカム構造体に対して、ハニカム焼成体の両端面に、端面より2mmまでのハニカム隔壁内の総気孔率容積に相当する、厚さ0.12mmの金属Siの板を載せ、真空下で加熱を行い、Siを含侵させて電極部を形成した。この際の、加熱条件は、1400℃、1hrである。
【0124】
このようにして、Φ100mm×長さ15mm、隔壁厚さ100μmの通電発熱用ハニカム体を得ることができた。この際の通電発熱用ハニカム体の特性としては体積抵抗率0.1Ωcm、比熱0.7J/kg・K、材料嵩密度1.6g/cm3(気孔率50%)となった。
【0125】
さらに、前述のようにして得られた通電発熱用ハニカム体に、触媒コートを行った。触媒付けは、アルミナ:白金:セリア系材料=7:1:2であって、セリア系材料はCe:Zr:Pr:Y:Mn=60:20:10:5:5からなる触媒用スラリーを予め用意し、入口端面側から触媒スラリーを吸引して触媒を担持した。その後、まず120℃、2時間で乾燥させた後、550℃、1時間で触媒焼付けを行い、これを実施例1の通電発熱用ハニカム体とした。
【0126】
次に、触媒担体を製造した。コージェライト化原料に、水等の分散媒、及び造孔材を加えて、更に、有機バインダ及び分散剤を加えて混練し、粘土状の坏土を形成し、口金を用いてハニカム状に成型し、乾燥後、1420℃で3時間程度焼成し、隔壁厚さ100μm、セル数93セル/cm2、外径100mm、長さ100mmの触媒担体を作製した。
【0127】
触媒としては、三元触媒を用いた。アルミナ:セリア=7:3のウォッシュコート材料に白金:ロジウム=5:1の貴金属を担持した触媒のスラリーを準備し、ディッピング法により、上記コージェライト担体にコートし触媒を担持した。その後、まず120℃、2時間で乾燥させた後、550℃、1時間で触媒焼付けを行い、コージェライト担体容積あたりの触媒担持量として200g/L、貴金属量として2g/Lのハニカム触媒体を製造し、実施例1の後段触媒とした。
【0128】
前述のようにして得られた、実施例1の通電発熱用ハニカム体の電極部に、電源を接続した。この電気接続の方法としては、端面近傍の高電気伝導部位の外周を金属メッシュで覆い、金属メッシュとハニカム焼成体との間は高耐熱性の金属ろう付けにより接着した。金属メッシュの外周側に銅電線を金属ろう付けしそれを絶縁部材で挟む構造で絶縁性を確保した。絶縁部材の外側全周を通常触媒コンバータに用いるのと同様のセラミック繊維マットで覆い、外周にかかる面圧として0.3MPaとなるようセラミック繊維マット、および金属メッシュを圧縮した形態で、金属キャン内に押し込み、金属キャン(金属缶)内に固定した。銅電線は金属キャンと絶縁するため絶縁スリーブを貫通して電極端子につながっている構造をとった。
【0129】
さらに、前述の通電発熱用ハニカム体を固定した金属キャン内に、実施例1の触媒担体をセットした。具体的には、図1に示されるように、実施例1の通電発熱用ハニカム体の排ガス流出側方向に、触媒担体をセットした。なお、触媒担体の外周部をセラミック繊維マットからなる部材で覆い、外周にかかる面圧を0.3MPaで前述のセラミック繊維マットを圧縮した状態で、金属キャン内に押し込み、金属キャン内に固定した。この後段にセラミックマットを介して金属キャン内に固定された前述のコージェライトハニカム触媒担体を設置し、実施例1の排ガス浄化処理装置を得た。
【0130】
このようにして、電源を接続した実施例1の排ガス処理装置を構成する通電発熱用ハニカム体に対して、下記のような、各部切り出しテストピースの体積抵抗率測定、および実体のR1、R2なる抵抗測定、200V電圧をかけた際のT1〜T3位置の温度時間変化、ガスを流した際の圧力損失を測定した。その結果を表1に示す。また、実施例1のその他の物性値を表1に示す。また、この排気ガス処理装置を排気量2リッターのガソリンエンジンを搭載した車両の排気系に搭載し、米国LA−4コールドスタートモードの排気エミッション測定をシャシダイナモ試験により実施し、初期500秒間の未燃炭化水素排出量を測定した。結果を表1に示す。
【0131】
【表1】
【0132】
[2−1]実体計測値:
電源を接続した実施例、比較例の通電発熱用ハニカム体の、24V電圧をかけた際の、ガス流入側に形成される電極部の抵抗R1を測定するとともに、ガス流入側に形成される電極部と、ガス流出側に形成される電極部の抵抗R2を測定した。具体的には、図8に示されるように、ガス流入側に形成される電極部7aの抵抗R1、及びガス流入側に形成される電極部7aとガス流出側に形成される電極部7bの抵抗R2を測定した。
【0133】
[2−2]切り出しテストピース計測値(TP計測値):
実施例、比較例の通電発熱用ハニカム体の電極部から、0.1cm×1cm×1cmの試験片を取り出し、端部体積抵抗率Ω/cmを測定するとともに、実施例、比較例の通電発熱用ハニカム体の発熱部から、1cm×1cm×1cmの試験片を取り出し、中央部体積抵抗率Ωcmを測定した。
【0134】
[3]温度差最大比率(%):
実施例、比較例の通電発熱用ハニカム体の外周部であって長さ方向の中央領域をT1とし、実施例、比較例の通電発熱用ハニカム体の長さ方向に形成される発熱部の中央領域をT2とし、さらに、実施例、比較例の通電発熱用ハニカム体の、排ガス流出側に形成される電極部の中央領域をT3として、24V電圧をかけた際の温度差最大比率を求めた。具体的には、温度差最大比率=[(T1/T3)T1]×100(%)、又は温度差最大比率=[(T1−T2)T1]×100(%)の式によって、温度差最大比率を求めた。なお、T1〜T3の各領域は、図8に示されるような符号T1(発熱部9の中央領域)、T2(発熱部9の外周部領域)、T3(排ガスの流出側端面における電極部7bの中央領域)を選択した。
【0135】
[4]温度時間変化:
実施例、比較例の通電発熱用ハニカム体に10kWの電力を与えて、T1が500℃になるまで時間を測定した。
【0136】
[5]圧損比率測定:
実施例、比較例の通電発熱用ハニカム体に、PMを容積あたりの質量として4g/L堆積させ、そのPMを堆積させた通電発熱用ハニカム体に、7Nm3/minの流量で25℃の空気を流入させ、通電発熱用ハニカム体の上流と下流との圧力差を差圧計で測定し、PM堆積時の圧力損失を求めた後、実施例1の結果を1として各実施例及び比較例の相対値を求めた。
【0137】
(実施例2)
SiC粉75質量部に対して金属Si25質量部を配合し、実施例1とSi,SiC比率の変更以外は同様に、焼成後のハニカム構造体得、前述の焼成後のハニカム構造体に対して、ハニカム焼成体の両端面に、端面より2.5mmまでのハニカム隔壁内の総気孔率容積に相当する、厚さ0.30mmの金属Siの板を載せ、実施例1と同様の加熱条件で、真空下で加熱を行い、Siを含侵させて電極部を形成し、Φ100mm×長さ15mmの通電発熱用ハニカム体を得ることができた。この際の通電発熱用ハニカム体の特性としては体積抵抗率0.5Ωcm、比熱0.7J/kg・K、材料嵩密度1.6g/cm3(気孔率50%)となった。さらに、この通電発熱用ハニカム体に実施例1と同様の触媒付けをし、実施例2の通電発熱用ハニカム体を得た。また、実施例1と同様の触媒担体を用意し、実施例2の通電発熱用ハニカム体と、前述の触媒担体とを、実施例1と同様のセッティング方法によってセットし、各実験を行った。この結果を表1に示す。
【0138】
(実施例3)
SiC粉77質量部に対して金属Si23質量部を配合し、実施例1とSi,SiC比率の変更以外は同様に、焼成後のハニカム構造体得、前述の焼成後のハニカム構造体に対して、ハニカム焼成体の両端面に、端面より2.5mmまでのハニカム隔壁内の総気孔率容積に相当する、厚さ0.30mmの金属Siの板を載せ、実施例1と同様の加熱条件で、真空下で加熱を行い、Siを含侵させて電極部を形成し、Φ100mm×長さ20mmの通電発熱用ハニカム体を得ることができた。この際の通電発熱用ハニカム体の特性としては体積抵抗率2Ωcm、比熱0.7J/kg・K、材料嵩密度1.53g/cm3(気孔率50%)となった。さらに、この通電発熱用ハニカム体に実施例1と同様の触媒付けをし、実施例3の通電発熱用ハニカム体を得た。また、実施例1と同様の触媒担体を用意し、実施例3の通電発熱用ハニカム体と、前述の触媒担体とを、実施例1と同様のセッティング方法によってセットし、各実験を行った。この結果を表1に示す。
【0139】
(実施例4)
SiC粉80質量部に対して金属Si20質量部を配合し、実施例1とSi,SiC比率の変更以外は同様に、焼成後のハニカム構造体得、前述の焼成後のハニカム構造体に対して、ハニカム焼成体の両端面に、端面より3mmまでのハニカム隔壁内の総気孔率容積に相当する、厚さ0.36mmの金属Siの板を載せ、実施例1と同様の加熱条件で、真空下で加熱を行い、Siを含侵させて電極部を形成し、Φ100mm×長さ20mmの通電発熱用ハニカム体を得ることができた。この際の通電発熱用ハニカム体の特性としては体積抵抗率5Ωcm、比熱0.7J/kg・K、材料嵩密度1.5g/cm3(気孔率50%)となった。さらに、この通電発熱用ハニカム体に実施例1と同様の触媒付けをし、実施例4の通電発熱用ハニカム体を得た。また、実施例1と同様の触媒担体を用意し、実施例4の通電発熱用ハニカム体と、前述の触媒担体とを、実施例1と同様のセッティング方法によってセットし、各実験を行った。この結果を表1に示す。
【0140】
(実施例5)
SiC粉80質量部に対して金属Si20質量部を配合し、実施例1とSi,SiC比率の変更以外は同様に、焼成後のハニカム構造体得、前述の焼成後のハニカム構造体に対して、ハニカム焼成体の両端面に、端面より3mmまでのハニカム隔壁内の総気孔率容積に相当する、厚さ0.36mmの金属Siの板を載せ、実施例1と同様の加熱条件で、真空下で加熱を行い、Siを含侵させて電極部を形成し、Φ100mm×長さ20mmの通電発熱用ハニカム体を得ることができた。この際の通電発熱用ハニカム体の特性としては体積抵抗率5Ωcm、比熱0.7J/kg・K、材料嵩密度1.5g/cm3(気孔率50%)となった。さらに、この通電発熱用ハニカム体に実施例1と同様の触媒付けをし、実施例5の通電発熱用ハニカム体を得た。また、実施例1と同様の触媒担体を用意し、実施例5の通電発熱用ハニカム体と、前述の触媒担体とを、実施例1と同様のセッティング方法によってセットし、各実験を行った。この結果を表1に示す。
【0141】
(実施例6)
SiC粉77質量部に対して金属Si23質量部を配合し、実施例1とSi,SiC比率の変更以外は同様に、焼成後のハニカム構造体得、前述の焼成後のハニカム構造体に対して、ハニカム焼成体の両端面に、端面より2.5mmまでのハニカム隔壁内の総気孔率容積に相当する、厚さ0.30mmの金属Siの板を載せ、実施例1と同様の加熱条件で、真空下で加熱を行い、Siを含侵させて電極部を形成し、Φ100mm×長さ20mmの通電発熱用ハニカム体を得ることができた。この際の通電発熱用ハニカム体の特性としては体積抵抗率2Ωcm、比熱0.7J/kg・K、材料嵩密度1.53g/cm3(気孔率50%)となった。実施例6の通電発熱用ハニカム体を得た。また、実施例1と同様の触媒担体を用意し、実施例6の通電発熱用ハニカム体と、前述の触媒担体とを、実施例1と同様のセッティング方法によってセットし、各実験を行った。この結果を表1に示す。
【0142】
(実施例7)
SiC粉80質量部に対して金属Si20質量部を配合し、実施例1とSi,SiC比率の変更以外は同様に、焼成後のハニカム構造体得、前述の焼成後のハニカム構造体に対して、ハニカム焼成体の両端面に、端面より3mmまでのハニカム隔壁内の総気孔率容積に相当する、厚さ0.36mmの金属Siの板を載せ、実施例1と同様の加熱条件で、真空下で加熱を行い、Siを含侵させて電極部を形成し、Φ100mm×長さ20mmの通電発熱用ハニカム体を得ることができた。この際の通電発熱用ハニカム体の特性としては体積抵抗率5Ωcm、比熱0.7J/kg・K、材料嵩密度1.5g/cm3(気孔率50%)となった。実施例7の通電発熱用ハニカム体を得た。また、実施例1と同様の触媒担体を用意し、実施例7の通電発熱用ハニカム体と、前述の触媒担体とを、実施例1と同様のセッティング方法によってセットし、各実験を行った。この結果を表1に示す。
【0143】
(実施例8)
SiC粉80質量部に対して金属Si20質量部を配合し、実施例1とSi,SiC比率の変更以外は同様に、焼成後のハニカム構造体得、前述の焼成後のハニカム構造体に対して、ハニカム焼成体の両端面に、端面より3mmまでのハニカム隔壁内の総気孔率容積に相当する、厚さ0.36mmの金属Siの板を載せ、実施例1と同様の加熱条件で、真空下で加熱を行い、Siを含侵させて電極部を形成し、Φ100mm×長さ20mmの通電発熱用ハニカム体を得ることができた。この際の通電発熱用ハニカム体の特性としては体積抵抗率5Ωcm、比熱0.7J/kg・K、材料嵩密度1.5g/cm3(気孔率50%)となった。実施例8の通電発熱用ハニカム体を得た。また、実施例1と同様の触媒担体を用意し、実施例8の通電発熱用ハニカム体と、前述の触媒担体とを、実施例1と同様のセッティング方法によってセットし、各実験を行った。この結果を表1に示す。
【0144】
(実施例9)
実施例5と同様に、焼成後のハニカム構造体を得、前述の焼成後のハニカム構造体に対して、ハニカム焼成体の両端面に、端面より5mmまでのハニカム隔壁内の総気孔率容積に相当する、厚さ0.80mmの金属Siの板を載せ、実施例1と同様の加熱条件で、真空下で加熱を行い、Siを含侵させて電極部を形成し、Φ100mm×長さ20mmの通電発熱用ハニカム体を得ることができた。この際の通電発熱用ハニカム体の特性としては体積抵抗率5Ωcm、比熱0.7J/kg・K、材料嵩密度1.5g/cm3(気孔率50%)となった。さらに、この通電発熱用ハニカム体に実施例1と同様の触媒付けをし、実施例9の通電発熱用ハニカム体を得た。また、実施例1と同様の触媒担体を用意し、実施例9の通電発熱用ハニカム体と、前述の触媒担体とを、実施例1と同様のセッティング方法によってセットし、各実験を行った。この結果を表1に示す。
【0145】
(実施例10)
実施例5と同様に、焼成後のハニカム構造体を得、前述の焼成後のハニカム構造体に対して、ハニカム焼成体の両端面に、端面より5mmまでのハニカム隔壁内の総気孔率容積に相当する、厚さ0.80mmの金属Siの板を載せ、実施例1と同様の加熱条件で、真空下で加熱を行い、Siを含侵させて電極部を形成し、Φ100mm×長さ25mmの通電発熱用ハニカム体を得ることができた。この際の通電発熱用ハニカム体の特性としては体積抵抗率5Ωcm、比熱0.7J/kg・K、材料嵩密度1.5g/cm3(気孔率50%)となった。さらに、この通電発熱用ハニカム体に実施例1と同様の触媒付けをし、実施例10の通電発熱用ハニカム体を得た。また、実施例1と同様の触媒担体を用意し、実施例10の通電発熱用ハニカム体と、前述の触媒担体とを、実施例1と同様のセッティング方法によってセットし、各実験を行った。この結果を表1に示す。
【0146】
(実施例11)
実施例5と同様に、焼成後のハニカム構造体を得、前述の焼成後のハニカム構造体に対して、ハニカム焼成体の両端面に、端面より5mmまでのハニカム隔壁内の総気孔率容積に相当する、厚さ0.80mmの金属Siの板を載せ、実施例1と同様の加熱条件で、真空下で加熱を行い、Siを含侵させて電極部を形成し、Φ100mm×長さ30mmの通電発熱用ハニカム体を得ることができた。この際の通電発熱用ハニカム体の特性としては体積抵抗率5Ωcm、比熱0.7J/kg・K、材料嵩密度1.5g/cm3(気孔率50%)となった。さらに、この通電発熱用ハニカム体に実施例1と同様の触媒付けをし、実施例11の通電発熱用ハニカム体を得た。また、実施例1と同様の触媒担体を用意し、実施例11の通電発熱用ハニカム体と、前述の触媒担体とを、実施例1と同様のセッティング方法によってセットし、各実験を行った。この結果を表1に示す。
【0147】
(実施例12)
実施例1と同様に、焼成後のハニカム構造体を得、前述の焼成後のハニカム構造体に対して、ハニカム焼成体の両端面に、端面より1mmまでのハニカム隔壁内の総気孔率容積に相当する、厚さ0.12mmの金属Siの板を載せ、実施例1と同様の加熱条件で、真空下で加熱を行い、Siを含侵させて電極部を形成し、Φ100mm×長さ40mmの通電発熱用ハニカム体を得ることができた。この際の通電発熱用ハニカム体の特性としては体積抵抗率5Ωcm、比熱0.7J/kg・K、材料嵩密度1.5g/cm3(気孔率50%)となった。さらに、この通電発熱用ハニカム体に実施例1と同様の触媒付けをし、実施例12の通電発熱用ハニカム体を得た。また、実施例1と同様の触媒担体を用意し、実施例12の通電発熱用ハニカム体と、前述の触媒担体とを、実施例1と同様のセッティング方法によってセットし、各実験を行った。この結果を表1に示す。
【0148】
(比較例1)
実施例とは異なり、通電用ハニカムをセッティングせずに、実施例1と同様の触媒担体のみをセッティングして、各実験を行った。この結果を表1に示す。
【0149】
(比較例2)
Fe、Ni、Crを主成分とする合金組成からなる通電発熱用ハニカム体であって、Φ100mm×長さ20mm、体積抵抗率0.3Ωcm、比熱0.4J/kg・K、材料嵩密度8.0g/cm3(気孔率50%)を特性とする、比較例2の金属製通電発熱用ハニカム体を用意し、実施例1と同様の触媒担体と同様のセッティング方法によってセットし、各実験を行った。この結果を表1に示す。なお、比較例2の金属製通電発熱用ハニカム体には、触媒付けを行っていない。
【0150】
(考察)
表1より、実施例1〜12において、良好な結果を得ることができた。いずれの実施例でも、10kWの電力を与えたところ中心部で50℃/secの昇温が確認されるとともに、図10に示されるように、外周部との温度差も15%以下に抑制することができた。とりわけ、表1及び図10に示されるように、実施例1〜4、6〜8、10〜12では、11%以下であるため、内部温度分布を均一にしやすく、かつ車載されるバッテリーに十分対応可能であるため、より好ましい結果が裏付けられた。なお、図9は、T1、T2、T3の温度と時間との関係を示したグラフである。
【0151】
他方、比較例1では、通電発熱用ハニカム体がセットされていないため、未燃炭化水素排出量比が過大となり、コールドスタート時の対応ができないことが裏づけされた。さらに、比較例2では、EHC本体を金属で形成したため、嵩密度は8.0g/cm3前後となり気孔率制御も困難であり、実施例のEHCよりも重たくなる傾向がある。昇温速度は、[昇温速度=電力/(比熱×EHC質量)]で求められ、比較例2の金属製EHCでは実施例よりも比熱が低くなる傾向があるが、先述したように密度が高いため、与えたエネルギーに対して温度上昇が遅くなる傾向があり、実施例の方が触媒の活性温度まで到達する時間を短縮化できることが実験によって実証されている。
【産業上の利用可能性】
【0152】
本発明の通電発熱用ハニカム体は、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、燃焼装置排ガス処理向けに好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0153】
1:排ガス浄化処理装置、2:通電発熱用ハニカム体(EHC)、3:電源端子、3a:(一方の端面(排ガス流入側端面)の)電源端子、3b:(他方の端面(排ガス流出側端面)の)電源端子、5:フレキシブル電極、6:端面、6a:一方の端面(排ガス流入側端面)、6b:他方の端面(排ガス流出側端面)、7:電極部、7a:(一方の端面(排ガス流入側端面)の)電極部、7b:(他方の端面(排ガス流出側端面)の)電極部、9:発熱部、11:ストレスレリーフ,12:貫通孔、13:絶縁スリーブ,15:金属キャン、17:セラミック繊維マット,19:絶縁部材、20:絶縁コート、21:金属メッシュ、27:無膨張マット、41:触媒担体(DPF)、43:隔壁、45:貫通孔(セル)、47a:上流側に形成される開口端部、47b:下流側に形成される開口端部、49:目封じ部、A:端面(排ガス流入側端面の端面)、B:端面(排ガス流入側端面の端面)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関からの排出ガスに温度付与可能な通電発熱用ハニカム体と、前記通電発熱用ハニカム体によって温度付与された排出ガスを浄化処理する触媒付きハニカム構造体とが備えられる排ガス浄化処理装置であって、
前記通電発熱用ハニカム体には、導電性材料からなり隔壁に仕切られたガス流れ方向に実質的に平行な多数の貫通孔と、前記排ガス流入側及びガス流出側の両端面全面に形成される体積抵抗率が低い電極部と、前記電極部の間に体積抵抗率が高い発熱部とが備えられてなり、
前記触媒付きハニカム構造体には、多孔質の隔壁により区画された前記排ガスの流路となる複数のセルが備えられるとともに、前記隔壁には触媒が担持されている排ガス浄化処理装置。
【請求項2】
前記通電発熱用ハニカム体に触媒が担持されている請求項1に記載の排ガス浄化処理装置。
【請求項3】
前記通電発熱用ハニカム体によって付与される温度が触媒活性温度である請求項1又は2に記載の排ガス浄化処理装置。
【請求項4】
前記通電発熱用ハニカム体における発熱部の体積抵抗率が0.1〜10Ωcmで、前記電極部の体積抵抗率が前記発熱部の体積抵抗率の1/10以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の排ガス浄化処理装置。
【請求項5】
前記通電発熱用ハニカム体が金属とセラミックの複合材料から構成される請求項1〜4のいずれか1項に記載の排ガス浄化処理装置。
【請求項6】
前記通電発熱用ハニカム体の金属の含有率を変更することで、前記通電発熱用ハニカム体に備えられる前記電極部と前記発熱部との体積抵抗率が変更可能に成型されている請求項1〜5のいずれか1項に記載の排ガス浄化処理装置。
【請求項7】
前記通電発熱用ハニカム体の前記金属の含有率が、前記通電発熱用ハニカム体の前記両端面から中央領域に向けて漸減して形成される請求項1〜6のいずれか1項に記載の排ガス浄化処理装置。
【請求項8】
前記通電発熱用ハニカム体の電極が、前記通電発熱用ハニカム体の前記両端面から中央領域に向けて1mm以上10mm以下の領域に形成されている請求項1〜7のいずれか1項に記載の排ガス浄化処理装置。
【請求項9】
前記通電発熱用ハニカム体が、導電性材料からなる隔壁に仕切られたガス流れ方向に実質的に平行な多数の貫通孔を有する、複数のハニカムセグメントを並列接合して形成されるとともに、前記並列するハニカムセグメントを接合する接合材が低抵抗接合材からなる請求項1〜8のいずれか1項に記載の排ガス浄化処理装置。
【請求項10】
前記通電発熱用ハニカム体内にストレスレリーフが形成されている請求項1〜9のいずれか1項に記載の排ガス浄化処理装置。
【請求項11】
前記ストレスレリーフ内には、低ヤング率の充填材が充填されている請求項10に記載の排ガス浄化処理装置。
【請求項12】
前記通電発熱用ハニカム体を構成する前記複合材料のうち、前記金属がSiからなり、前記セラミックがSiCからなるとともに、前記電極部を構成する前記Siの構成比率が、前記発熱部よりも大きい請求項1〜11のいずれか1項に記載の排ガス浄化処理装置。
【請求項13】
前記通電発熱用ハニカム体に印加可能な電圧が12〜24Vである請求項1〜12のいずれか1項に記載の排ガス浄化処理装置。
【請求項1】
内燃機関からの排出ガスに温度付与可能な通電発熱用ハニカム体と、前記通電発熱用ハニカム体によって温度付与された排出ガスを浄化処理する触媒付きハニカム構造体とが備えられる排ガス浄化処理装置であって、
前記通電発熱用ハニカム体には、導電性材料からなり隔壁に仕切られたガス流れ方向に実質的に平行な多数の貫通孔と、前記排ガス流入側及びガス流出側の両端面全面に形成される体積抵抗率が低い電極部と、前記電極部の間に体積抵抗率が高い発熱部とが備えられてなり、
前記触媒付きハニカム構造体には、多孔質の隔壁により区画された前記排ガスの流路となる複数のセルが備えられるとともに、前記隔壁には触媒が担持されている排ガス浄化処理装置。
【請求項2】
前記通電発熱用ハニカム体に触媒が担持されている請求項1に記載の排ガス浄化処理装置。
【請求項3】
前記通電発熱用ハニカム体によって付与される温度が触媒活性温度である請求項1又は2に記載の排ガス浄化処理装置。
【請求項4】
前記通電発熱用ハニカム体における発熱部の体積抵抗率が0.1〜10Ωcmで、前記電極部の体積抵抗率が前記発熱部の体積抵抗率の1/10以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の排ガス浄化処理装置。
【請求項5】
前記通電発熱用ハニカム体が金属とセラミックの複合材料から構成される請求項1〜4のいずれか1項に記載の排ガス浄化処理装置。
【請求項6】
前記通電発熱用ハニカム体の金属の含有率を変更することで、前記通電発熱用ハニカム体に備えられる前記電極部と前記発熱部との体積抵抗率が変更可能に成型されている請求項1〜5のいずれか1項に記載の排ガス浄化処理装置。
【請求項7】
前記通電発熱用ハニカム体の前記金属の含有率が、前記通電発熱用ハニカム体の前記両端面から中央領域に向けて漸減して形成される請求項1〜6のいずれか1項に記載の排ガス浄化処理装置。
【請求項8】
前記通電発熱用ハニカム体の電極が、前記通電発熱用ハニカム体の前記両端面から中央領域に向けて1mm以上10mm以下の領域に形成されている請求項1〜7のいずれか1項に記載の排ガス浄化処理装置。
【請求項9】
前記通電発熱用ハニカム体が、導電性材料からなる隔壁に仕切られたガス流れ方向に実質的に平行な多数の貫通孔を有する、複数のハニカムセグメントを並列接合して形成されるとともに、前記並列するハニカムセグメントを接合する接合材が低抵抗接合材からなる請求項1〜8のいずれか1項に記載の排ガス浄化処理装置。
【請求項10】
前記通電発熱用ハニカム体内にストレスレリーフが形成されている請求項1〜9のいずれか1項に記載の排ガス浄化処理装置。
【請求項11】
前記ストレスレリーフ内には、低ヤング率の充填材が充填されている請求項10に記載の排ガス浄化処理装置。
【請求項12】
前記通電発熱用ハニカム体を構成する前記複合材料のうち、前記金属がSiからなり、前記セラミックがSiCからなるとともに、前記電極部を構成する前記Siの構成比率が、前記発熱部よりも大きい請求項1〜11のいずれか1項に記載の排ガス浄化処理装置。
【請求項13】
前記通電発熱用ハニカム体に印加可能な電圧が12〜24Vである請求項1〜12のいずれか1項に記載の排ガス浄化処理装置。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2010−229977(P2010−229977A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81186(P2009−81186)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】
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