説明

搬送装置および大型搬送装置

【課題】基台と搬送レベルとが異なる場合でも、第1アームと第2アームを同調させてほぼ直線的にワークを搬送できる搬送装置を提供する。その搬送装置を利用した大型搬送装置を提供する。
【解決手段】基台11に第1アーム12を第1軸J1廻りに回動自在に設け、第1アーム12の先端に、第1アームと長さが異なる第2アーム13を第2軸J2廻りに回動自在に設け、第2アーム13の先端にハンド14を取り付け、第1アーム12を往復揺動駆動する第1モータM1を基台11に設ける。基台11には第1軸J1と同心状に第1ピニオン16を固定し、第2アーム13の基端に、第2軸J2と同心状に第2ピニオン17を固定し、第1ピニオン16と第2ピニオン17の左右両側にラック18、19を摺動自在に設けて搬送装置10を構成する。2基の搬送装置10を一対で配置し、ハンド14同士を搬送ビームで連結することにより、大型搬送装置を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は搬送装置、とくにプレス機械への半加工品の供給および取り出しに用いられる搬送装置および2基の搬送装置で大きいワークを広い間隔をあけた2個所以上で保持して搬送する大型搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開昭52−121262号公報
【特許文献2】特開平6−143183号公報
【特許文献3】特開2000−233393号公報
【特許文献4】特開2002−66976号公報
【特許文献5】特開2005−238381号公報
【特許文献6】特開2005−161406号公報
【0003】
特許文献1には、基台に第1アームを回動自在に取り付けると共に、第1アームと同一長さの第2アームを第1アームの先端に回動自在に連結し、基台に固定した第1プーリと第2アームの基部に固定した第2プーリの間にベルトを巻き掛け、第2プーリの径を第1プーリの径の1/2とし、モータで第1アームを往復揺動させる関節タイプのロボットの腕操作装置が開示されている。このものはモータの往復駆動により、第1アームを揺動させ、プーリおよびベルトで同調して第2アームを第1アームと同一角度だけ揺動させることにより、第2アームの先端に取り付けた把持具を往復直線移動させことができる。
【0004】
さらに特許文献1には、基台に固定した固設プーリと、第2プーリと同軸で第1プーリと同径の中間プーリとの間にベルトを巻き掛け、中間プーリと同径の従動プーリを把持具に固定し、中間プーリと従動プーリとの間にベルトを巻き掛けた、把持具を平行移動させることができるものが記載されている。
【0005】
特許文献2には、特許文献1とほぼ同様の第1アームおよび第2アームを備え、基台を水平旋回させることができ、さらに第2アームと第1アームの関節部分に取り付けたモータにより、プーリおよびベルトを介して把持具を自由に回動させることができるハンドリングロボットが開示されている。
【0006】
特許文献3には、特許文献1とほぼ同様の第1アームおよび第2アームを備え、基台に取り付けた第1モータで第1アームを回動させると共に、第2モータでプーリおよおびベルトを介して第2アームを自由に回動させることができる製品取り出し装置が開示されている。このものは、第1アームと第2アームを互いに独立して回動させる2軸制御により、第2アームの先端に取り付けたチャック部(把持具)を鉛直面内の任意の位置に、かつ、任意の軌跡で移動させることができる。たとえば、上下方向に移動させて射出成型機から成形品を取り出し、水平方向に移動させて所定位置まで水平移動させることができる。なお、第1アームと第2アームの長さは同一でなくてもよい。
【0007】
特許文献4には、第1アームと第2アームを独立して作動させる点で特許文献3とほぼ同様な基板搬送用真空ロボットが開示されている。また、特許文献5には、特許文献2とほぼ同様の水平旋回式の搬送装置で、第2アームに対してハンドの角度を独立して制御することができるチルト機構を備えたものが開示されている。
【0008】
特許文献6には、隣接するプレス機械間に架設される一対のビームと、そのビームに沿って走行するキャリアと、そのキャリアに対して揺動自在に吊り下げられ、揺動駆動される揺動台と、その揺動台によって直線移動機構(伸縮機構)を介して設けられるフィードレバーとを備えたタンデムプレスラインにおけるワーク搬送装置が開示されている。このワーク搬送装置は、それぞれ独立して駆動されるキャリアの前後走行と、揺動台の前後の揺動と、フィードレバーの伸縮とを組み合わせてタンデムプレスラインのプレス間のワーク搬送を行う。すなわちプレス間をキャリアが移動する間に揺動台を揺動させ、その揺動に合わせてフィードレバーを伸縮させることにより、ワークを取り出す上下動、次のプレス機械までの前進、ワークをリリースするための上下動、および次のワークを取りに行く後退を順に行わせる。
【0009】
さらに特許文献6には、揺動台から伸縮するフィードレバーの先端に、バキュームカップを備えたアームをさらに揺動自在に設けたワーク搬送装置が開示されている。また、左右一対に設けたワーク搬送装置によって左右に延びるクロスバーを支持し、そのクロスバーに設けたバキュームカップでワークを保持する大型機械のワーク搬送装置が開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1の装置は、比較的重いワークの搬送に適する関節式の構造を備えながら、ワークを直線的に搬送することができる利点がある。しかし第1アームの長さと第2アームの長さが同一であるので、基台の高さと搬送レベルを合わせる必要がある。そのため、基台の取付位置とワークを載置する位置、たとえばプレス機械の金型など、床より高い搬送レベルで搬送する場合は、ロボットの基台の高さを搬送レベルに合わせる必要がある。このことは、特許文献2のハンドリングロボットについて、第1アームおよび第2アームを水平軸の廻りに回動させるように変更して重量物の搬送に適合させても同様である。
【0011】
特許文献3の製品取り出し装置は、本来、第1アームと第2アームを独立して制御するものであり、このもののアームの長さが同一でない点を特許文献1のアームを同調揺動させる装置に適用できたとしても、このままでは直線的な搬送はできない。このことは特許文献4についても同様である。また、特許文献5の搬送装置も、第1アームと第2アームの長さが等しい(段落[0014]参照)。
【0012】
特許文献6のワーク搬送装置は、揺動台の揺動とフィードアームの直線運動(伸縮)とを組み合わせて上下動、前進後退を行わせるため、直線運動機構に大きなストロークを要し、高速搬送に適さない。
【0013】
本発明は基台と搬送レベルとが異なる場合でも、回動連結した第1アームと第2アームを機械的に同調させてほぼ直線的にワークを高速で搬送できる搬送装置を提供することを技術課題としている。さらに本発明は、その搬送装置を利用して、重量物の搬送に適する大型搬送装置を提供することを第2の技術課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の搬送装置(請求項1)は、基台と、その基台に対して基端が第1軸まわりに回動自在に設けられる第1アームと、その第1アームの先端に、基端が前記第1軸と平行の第2軸回りに回動自在に設けられる、前記第1アームと長さが異なる第2アームと、前記第2アームの先端に取り付けられるハンドと、前記第1アームを基台に対して往復揺動駆動する駆動手段と、前記基台に、前記第1軸と同心状に固定される第1円板と、前記第2アームの基端に、前記第2軸と同心状に固定される第2円板と、前記第1円板と第2円板の外周の間に介在され、第1アームの回動に伴って第2アームを同調して回動させるトルク伝達手段とを備え、前記第1円板と第2円板の径の比率が、前記第1アームの回動に伴って同調して回動する第2アームの先端が略直線状に移動するように定められていることを特徴としている。
【0015】
このような搬送装置においては、前記第1円板の固定角度を調節する第2アームの角度調節機構を備えているものが好ましい(請求項2)。さらに前記第1アームの回動に関わらず、前記ハンドを静止座標に対して常時所定の角度に維持する平行移動機構を備えているものが好ましい(請求項3)。
【0016】
本発明の搬送装置の第2の態様(請求項4)は、 基台と、その基台に対して基端が第1軸まわりに回動自在に設けられる第1アームと、その第1アームの先端に、基端が前記第1軸と平行の第2軸回りに回動自在に設けられる第2アームと、その第2アームの先端から突出し、第2アームに対して直線運動を行う第3アームと、その第3アームの先端に取り付けられるハンドと、前記第1アームを基台に対して往復揺動駆動する駆動手段と、前記基台に、前記第1軸と同心状に固定される第1円板と、前記第2アームの基端に、前記第2軸と同心状に固定される第2円板と、前記第1円板と第2円板の外周の間に介在され、第1アームの回動に伴って第2アームを同調して回動させるトルク伝達手段と、第3アームを伸縮駆動する伸縮駆動手段と、前記第1アームの回動に伴って第3アームの先端が略直線状に移動するように制御する制御手段とを備えていることを特徴としている。
【0017】
また、前記ハンドを第2アームに対して回動させるチルト機構を備えているものが好ましい(請求項5)。
【0018】
前記第1円板および第2円板がピニオンであり、前記トルク伝達手段がそれらのピニオンと噛み合うラックを備えているものが好ましい(請求項6)。その場合、前記ラックが第1軸と第2軸を結ぶ線の両側に左右一対で配置され、かつ、少なくとも一方のピニオンが他方のピニオンとの距離の変化を許容するように設けられると共に、前記一方のピニオンが他方のピニオンから離れる方向または近づく方向に付勢されているものが一層好ましい(請求項7)。
【0019】
本発明の大型搬送装置(請求項8)は、加工機械の左右に一対で配置される前記いずれかの搬送装置と、それらの搬送装置のハンド同士を連結するビームと、そのビームに設けられるワーク保持手段とを備え、前記左右の搬送装置の第1軸同士および第2軸同士がそれぞれ同軸に配置されると共に、第1軸および第2軸がワークの搬送方向に対して直角に、かつ水平方向に延びており、第1アームの長さおよび第2アームの長さが左右の搬送装置で同一で、駆動手段同士が同調して作動するように構成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
本発明の搬送装置(請求項1)は、第1アームと第2アームの長さが異なるので、基台を搬送ラインに合わせる必要がなく、適切な位置に設置することができる。しかも第1アームと第2アームの長さが異なるにも関わらず、第1円板と第2円板の比率を第1アームの回動と同調して第2アームが回動するとき、第2アームの先端が略直線状に移動するように定められているので、従来の搬送装置と同様の搬送を行うことができる。
【0021】
前記第1円板の固定角度を調節する第2アームの角度調節機構を備えている搬送装置(請求項2)は、固定角度を調節して第2アームの位相をずらせることにより、ハンドの移動軌跡を基準位置に対して傾斜させることができる。
【0022】
また、前記第1アームの回動に関わらず、前記ハンドを静止座標に対して常時所定の角度に維持する平行移動機構を備えているもの(請求項3)は、ハンドを移動したときにワークの姿勢が変わらないため、ハンドや位置決め治具などの設計が容易である。
【0023】
本発明の搬送装置の第2の態様(請求項4)は、関節式の第1アームと第2アームによって基本的な動きが達成されるので、迅速な直線移動が可能である。さらに第2アームの先端から第3アームが出没することにより、金型を回避するなどの細かな動作を行わせることができる。さらに前記ハンドを第2アームに対して回動するチルト機構を備えているもの(請求項5)は、搬送中のワークの角度と治具などに載せるときのワークの角度を変えることができる。そのため、搬送に適切な角度で搬送して、載置に適切な角度で載置することができる。
【0024】
前記第1円板および第2円板がピニオンであり、前記トルク伝達手段がそれらのピニオンと噛み合うラックを備えているもの(請求項6)は、ベルトを用いるものに比してトルク伝達力を大きくすることができる。前記ラックが第1軸と第2軸を結ぶ線の両側に左右一対で配置され、かつ、少なくとも一方のピニオンが他方のピニオンとの距離の変化を許容するように設けられると共に、前記一方のピニオンが他方のピニオンから離れる方向または近づく方向に付勢されているもの(請求項7)は、第1アームが一方に回動したとき、バックラッシュがない側のラックを介して第1ピニオンから第2ピニオンに動力を伝え、他方に回動したとき、その向きではバックラッシュがない他方のラックを介して動力を伝える。そのため、第1アームの回動の向きが変化したとき、バックラッシュに基づく振動を抑制することができる。
【0025】
本発明の大型搬送装置(請求項8)は、加工機械の左右に一対で配置される搬送装置が協調して1枚あるいは1個のワークを搬送するので、1基当たりが負担する重量が少なくて済む。さらにワークの端部分を安定して保持することができ、ハンドに加わる負荷トルクも小さくて済む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
つぎに図面を参照しながら本発明の搬送装置の実施の形態を説明する。図1は本発明の搬送装置の一実施形態を示す側面断面図、図2aおよび図2bはそれぞれその搬送装置の簡略化した正面図および作動状態を示す正面図、図3は図1のアームの作動状態を示すスケルトン図、図4は図2aの状態から第2アームのみを回動させた状態を示す正面図、図5は図4の状態からのアームの作動状態を示すスケルトン図、図6aは本発明に関わるチルト機構の一実施形態を示す正面図、図6bおよび図6cはそのチルト機構の作動状態説明図、図7aは本発明に関わるチルト機構の他の実施形態を示す正面図、図7bおよび図7cはそのチルト機構の作動状態説明図、図8、図9および図10はそれぞれ本発明の大型搬送装置の一実施形態を示す正面図、平面図および側面図、図11a、図11bおよび図11cはそれぞれ本発明に関わる第1アームの動力伝達機構の他の実施形態を示す概略説明図、図12aおよび図12bはそれぞれ本発明に関わる第1アームの動力伝達機構のさらに他の実施形態を示す概略説明図、図13aおよび図13bは本発明の搬送装置に関わる伸縮アームの実施形態を示す正面図および側面図、図14aはその伸縮アームの背面図、図14bはその伸縮アームの第3アームの内部構造を示す正面図、図15は図13aの伸縮アームを備えた搬送装置の実施形態を示す正面図、図16はその搬送装置の作動状態を示す側面図である。
【0027】
図1に示す搬送装置10は、基台11と、その基台に対して下端が回動自在に設けられ、基準位置では上向きに延びている第1アーム12と、その第1アームの上端に回動自在に設けられ、基準位置では下向きに延びている第2アーム13と、その前記第2アームの先端に取り付けられるハンド14と、第1アーム12を基台11に対して往復揺動駆動する第1モータM1とを備えている。この実施形態では第1アーム12の回動中心(第1軸)J1および第2アーム13の回動中心(第2軸)J2はそれぞれ水平で、かつ、互いに平行である。
【0028】
さらにこの搬送装置10では、第1アーム12の回動に同調して第2アーム13を回動させる同調回動機構15として、図2aに示すように、基本的に基台11に対して動かないように設置される第1ピニオン16と、第2軸J2廻りに回動自在に設けられ、第2アーム13に固定されている第2ピニオン17と、それらのピニオン16、17と噛み合い、第1アーム12に沿って上下に移動する左右一対のラック18、19とが設けられている。ただしラック18、19は左右何れかの1本であってもよい。
【0029】
なお、図1に示すように、第1ピニオン16は、後述する第2アーム角度調整機構20の構成要素である第2モータM2を介して基台11に取り付けられており、第2モータM2が回転しない限り、回転しない。また、ラック18、19は、ピニオン16、17と噛み合う部位のみに歯18a、19aが形成され、第1アーム12によって摺動自在に支持されている。
【0030】
また、この搬送装置10では、第2アーム13の長さL2(第2アームの回動中心J2とハンド14の距離)は第1アーム12の長さL1(第1軸J1、第2軸J2間の距離)よりも短く、第1アーム12の長さL1のほぼ1/2である。そして第2ピニオン17の直径D2(ピッチ円の直径)は、第1ピニオン16の直径D1(ピッチ円の直径)のほぼ9/23と、1/2より小さくしている。
【0031】
上記のように構成される搬送装置10は、第1モータM1が一方向に回転すると、第1モータM1の出力軸に連結されている第1アーム12が第1軸J1廻りに、たとえば図2bのように時計方向に角度θ1だけ回動する。なお、符号Kは鉛直方向の基準線である。そのとき、第1ピニオン16は回転しないので、第1アーム12に支持されている一方のラック18が第1アーム12の基部側に下がり、他方のラック19は先端側に上がるように直線移動する。そしてラック18、19の逆方向の移動に伴い、第2ピニオン17が反時計方向に鉛直線に対する角度θ2まで回動する。なお、符号22は床面である。
【0032】
このときの第2アーム13の先端の高さH(第1軸J1とハンド14の間の上下の距離)は、
H=L1cosθ1−L2cosθ2
となる。そして第1ピニオン16と第2ピニオン17の直径の比率D1/D2をiとすると(D1/D2=i)、
θ2=iθ1−θ1
であるので、
H=L1cosθ1−L2cos(iθ1−θ1)
となる。この高さHと第1アームの角度θ1との関係をグラフにすると、図2bおよび図3の一点鎖線Pのように、ほぼ水平線に近くなる。
【0033】
第1アーム12と第2アーム13の長さが等しく、第2ピニオン17の直径D2が第1ピニオン16の直径D1の1/2であれば、特許文献1の装置のように、第2アーム13の先端は厳密に水平に移動するが、この搬送装置10では第1アーム12の長さL1が第2アームの長さL2の約2倍であり、第1ピニオン16の直径D1と第2ピニオン17の直径D2の比率が約23/9であるので、厳密には水平にはならず、途中では水平線からずれるが、実用上は問題はない。
【0034】
なお、第1アーム12の角度θ1のときの高さHを基準位置における高さL1−L2と等しくするには、すなわち
L1−L2=L1cosθ1−L2cos(iθ1−θ1)
とするには、
i=1+[cos-1{L1・(cosθ1−1)+L2}/L2]/θ1
とすればよい。この式から、第1アームの長さと第2アームの長さ、ならびに最終角度θ1に基づいて、第1ピニオンと第2ピニオンの径の適切な比率を計算することができる。
【0035】
上記のように図1および図2aの搬送装置10は、第2アーム13の長さL2が第1アーム12の長さL1より短いにも関わらず、第1ピニオン16の直径D1と第2ピニオン17の直径D2の比率を適切に選択しているので、図2bおよび図3に示すように、第2アーム13の先端のハンド14をほぼ水平に移動させることができる。さらに図2bから分かるように、第1アーム12を基準線Kに対して大きく揺動させた状態では、第2アーム13が鉛直線K2に対してさらに大きく揺動する。そのため、第2アーム13の先端に設けたハンド14は、プレス機械の上型と下型の間など、狭いところからワークを取り出したり、ワークを供給したりすることが容易である。なお、図2bの状態から第1モータM1を逆転させると、同一の軌跡を経由して図2aの状態に戻る。
【0036】
図3の場合は、第1アーム12を基準線Kから前側と後ろ側に、同一角度だけ揺動させている。このように前後に揺動させることにより、たとえば左端の前工程のプレスで成形したワークを、次のプレスの金型まで移動させることができる。ただし第1アーム12の揺動角度は、前後で同一にする必要はなく、搬送しようとするワークの形態、ワークを取り出す治具ないし金型、ワークを載せる次の工程の治具ないし金型に応じて適切に選択することができる。
【0037】
上記のように第2アーム13の長さを短くすると、図1のように基台11を床面22に設置しても、床面より高い搬送レベルでワークを搬送することができる。そのため、たとえば加工機械のワーク設置高さ(たとえば金型上面の高さ)が床面より高い場合でも、基台11を高くする必要がなく、安定して設置することができる。また、先端に近く、大きく動く第2アーム13を軽くできるので、全体のイナーシャが小さくなり、第1モータM1の動力を小さくすることができる。
【0038】
つぎに図1および図4を参照して、第2アームの角度調整機構20を説明する。この第2アームの角度調整機構20は、第1ピニオン16に第2モータM2を接続して、第1アーム12が静止している状態で第2アーム13のみ所定のθ3だけ進ませたり、遅らせたりするものである。第2アーム13の位相をθ3だけ進ませておくと、第1モータM1を駆動して第1アーム12を回動させたとき、図5に一点鎖線P2で示すように、第2アーム13の先端のハンド14は傾斜した搬送ラインに沿って移動する。したがって途中に邪魔な物がある場合は、その物との干渉を避けた経路で搬送させることができる。逆に移動を遅らせて搬送させると、想像線P3で示すように、逆向きに傾斜した搬送ラインとなる。
【0039】
つぎに図1および図6aを参照して、ハンドの平行移動機構24と、チルト機構25を説明する。図1および図6aに示すように、第1軸J1と同心状に第1ギヤ26が設けられている。この第1ギヤ26は、リンク式のトルク伝達機構27を介して、第2軸J2と同心状に回動自在に設けられた第2ギヤ28と連結されている。トルク伝達機構27は、それぞれ第1アーム12によって支持される軸29、30廻りに回転自在に設けられる半円状のセクタギヤ31、32と、それらのセクタギヤ31、32同士を連結するリンク33とからなる。リンク33は左右一対の2本としているが、1本でもよい。またリンク式のトルク伝達機構27に変えて、チェーン、プーリ、タイミングプーリなど、他のトルク伝達機構を採用することもできる。
【0040】
他方、第2アーム13の先端のハンド14は、軸34によって第2アーム13に回動自在に支持されている。そして前述の第2ギヤ28には、第1タイミングプーリ35が共廻りするように連結され、軸34には第2タイミングプーリ36が共廻りするように固定され、タイミングプーリ(歯付きプーリ)35、36同士はタイミングベルト(歯付きベルト)37で巻き掛け連結されている。また、第1ギヤ26と第2ギヤ28のギヤ比は1であり、第1タイミングプーリ35と第2タイミングプーリ36のギヤ比も1である。それによって上記の第1ギヤ26、トルク伝達機構27、第2ギヤ28、第1タイミングプーリ35、タイミングベルト37および第2タイミングプーリ36はハンドの平行移動機構24を構成している。
【0041】
さらにこの搬送装置10では、基台11に第3モータM3を設け、その第3モータM3の出力軸に結合した駆動ギヤ38と前記第1ギヤ26とを噛み合わせてハンドのチルト機構を構成している。
【0042】
上記のように構成される搬送装置10では、第3モータM3を停止させた状態で第1アーム12が角度θ1だけ回動すると、第1ギヤ26は静止しているので、第1アーム12に対しては第1ギヤ26は逆方向に角度θ1だけ回動する(図6b参照)。その回動はトルク伝達機構27を介して第2ギヤ28に伝えられ、第2ギヤ28も第1アーム12に対して逆方向に角度θ1だけ回動する。したがって第2ギヤ28は静止座標に対しては回動しない。第2ギヤ28の動きは第1タイミングプーリ35、タイミングベルト37および第2タイミングプーリ36を介してハンド14の軸34に伝えられ、この軸34も前述と同様に静止座標に対して回動しない。したがって第1アーム12が揺動し、それに伴って第2アーム13が揺動しても、ハンド14は元の角度を維持したままほぼ水平に移動する(図6b参照)。それによりハンド14に保持されるワークは姿勢を変えずに搬送され、平行移動機能が達成される。
【0043】
ワークの取り出し時、あるいは供給時にワークの角度を変えたい場合は、チルト機構を利用する。すなわち第1アーム12がいずれかの位置にあるとき、第3モータM3を回転させ、駆動ギヤ38を回転させる。その回転は第1ギヤ26に伝えられ、トルク伝達機構27、第2ギヤ28、第1タイミングプーリ35、タイミングベルト37および第2タイミングプーリ36を介してハンド14の軸34に伝えられ、ハンド14が所定の第1ギヤ26と同じ角度だけ回動する(図6c参照)。これにより必要に応じてワークの姿勢を変えることができる。
【0044】
図6aの平行移動機構およびチルト機構では、第1ギヤ26と第2ギヤ28の間に2個の半円状のセクタギヤ31、32を備えたトルク伝達機構27を介在させているが、図7aに示すように、第1ギヤに変わる半円形のセクタギヤ26aおよび第2ギヤに変わる回転リンク28aを、リンク33で直接連結することもできる。図6aあるいは図7aの平行移動機構は、ワークの搬送姿勢を一定とするほうが都合がよいので、通常は標準装備とするが、第2アームの調整機構およびチルト機構は、とくに必要でない場合もあり、第2モータM2、第3モータM3が追加になるので、通常はオプションとする。
【0045】
つぎに図8〜10を参照して、本発明の大型搬送装置の実施形態を説明する。図8の大型搬送装置40は、図1の搬送装置10を左右一対で、間隔をあけて配置すると共に、ハンドとして共通の搬送ビーム41を用いている。実際にワークを保持するバキュームカップあるいはグリッパは、その搬送ビーム41に着脱自在に取り付ける。また、この実施形態では左右の搬送装置10は面対称としており、基台11は共通の大型のものを用いている。第2アーム調整機構およびチルト機構は備えていない。第1モータM1の出力軸42と第1アーム12の基部とは、図9に示すように、出力軸42に固定した駆動ギヤ43と第1アーム12に固定した従動ギヤ44とによって連結されている。
【0046】
この大型搬送装置40の動作は図10に示すように図1の搬送装置10と実質的に同一であり、左右の搬送装置10が共同して1個の比較的大きいワークを搬送することができる。この大型搬送装置40においても、図3の場合と同様に、第1アーム12を左右に揺動して搬送距離を長くすることができ、ワークの取り出しおよび供給位置では第2アーム13の傾斜角度が小さくなるので、ワークの取り出し・供給が容易である。
【0047】
前記実施形態では、第1ピニオンから第2ピニオンへの動力の伝達をラックによって行っているが、図11aに示すように、ギヤ列45によって動力伝達を行うこともできる。また、図11bに示すように、プーリ46、47とベルト48、あるいはタイミングプーリとタイミングベルトで行うこともでき、さらにスプロケットとチェーンによって行うこともできる。
【0048】
図11cの第1アーム50では、第2ピニオン17が第1アーム50に対し、アームの軸線方向にいくらか移動自在に設けられ、バネ51によって第1ピニオン16側に付勢されている。この第1アーム50では、左右のラック18、19の歯の上面と第2ピニオン17の歯の下面との間にクリアランスがなく、左右のラック18、19の歯の下面と第2ピニオン17の歯の上面との間にクリアランスが寄せられている。また、左右のラック18、19の歯の下面と第1ピニオン16の歯の上面との間にクリアランスがなく、左右のラック18、19の歯の上面と第1ピニオン16の歯の下面との間にクリアランスが寄せられている。
【0049】
理解しやすいように、第1ピニオン16が回転すると考えると、第1ピニオン16が時計回りに回転するときは、第1ピニオン16の左側、左側のラック18および第2ピニオン17の左側は、付勢力に抗してクリアランスなしで動力を伝え、第2ピニオン17を時計方向に回転させる。そのとき、第1ピニオン16の歯の下面と右側のラック19の歯の上面との間、および第2ピニオン17の歯の上面と右側のラック19の歯の下面との間にはクリアランスがあるので、右側のラック19経由では動力を伝えない。逆に第1ピニオン16が反時計方向に回転するときは、前述と逆に、第1ピニオン16の右側、右側のラック19および第2ピニオン17の右側が付勢力に抗してクリアランスなしで動力を伝え、左側のラック18経由では動力を伝えない。
【0050】
このように第1ピニオン16の回転方向に応じて、左右のラック18、19が交互に動力伝達するので、第1ピニオン16の回転がいずれの向きになっても、いずれかのラックとピニオンとがクリアランス無しで動力伝達をする。したがって、第1ピニオン16の回転の向きが変わるとき、すなわち、第1アーム50の揺動の方向が変わるときにバックラッシュが生じない。それにより第2アームの振動が抑制される。この作用効果は、第2ピニオン17が第1アーム50の先端側、すなわち第1ピニオンと反対側に付勢されている場合も同様である。また、第1ピニオン16を第2ピニオン17側に、またはその逆方向に付勢してもよい。付勢手段としては、バネ51のほか、エアシリンダを利用したガススプリングなども使用できる。
【0051】
図12aおよび図12bはそれぞれバックラッシュ無しで駆動する機構の他の実施形態を示している。図12aの機構53では、第1ピニオン16と中間ピニオン52の両側にラック18、19が噛み合っており、第1ピニオン16は前述の実施形態と同様、中間ピニオン52側にバネ56aなどの付勢手段で付勢されている。そして中間ピニオン52に左右一対のアイドルギヤ54、55が噛み合うと共に、それらのアイドルギヤ54、55に第2ピニオン17が噛み合っている。さらに左右のアイドルギヤ54、55は互いに離れる方向にバネ56bなどの付勢手段で付勢されている。この機構53においても、第1ピニオン16が時計方向に回転するときは、左側のラック18および左側のアイドルギヤ54を介して第2ピニオン17にクリアランス無しで動力が伝達され、反時計方向に回転するときは、右側のラック19および右側のアイドルギヤ55を介してクリアランス無しで動力伝達される。したがって前述と同様に、第1アームの揺動の向きが変化するとき、バックラッシュが生じない。
【0052】
図12bの機構57では、第1アーム12に対し、従動ギヤ58が回転しないように固定されている。そして第1モータで駆動される駆動ギヤ59の回転は、それぞれ第1アーム12に回転自在に設けられる左右の中間ピニオン60、61を介して従動ギヤ58に動力伝達する。なお、それぞれの中間ピニオン60、61は、駆動ギヤ59と噛み合う大径ギヤ60a、61aと、従動ギヤ58と噛み合う小径ギヤ60b、61bとを共廻りするように固定したものである。
【0053】
この機構57において、駆動ギヤ59が一方に回転するときに、左の中間ピニオン60を介してバックラッシュなしに従動ギヤ58に回転を伝達するように、駆動ギヤ59と大径ギヤ60a、および小径ギヤ60bと従動ギヤ58のバックラッシュの方向を決め、かつ、駆動ギヤ59が逆方向に回転するときに、右の中間ピニオン61を介してバックラッシュなしに従動ギヤ58に回転を伝達するように、駆動ギヤ59と大径ギヤ61a、および小径ギヤ61bと従動ギヤ58のバックラッシュの方向を調整すれば、図12aの場合と同様に、第1モータの回転を、いずれの回転方向に対してもバックラッシュ無しで伝達することができ、第1アームの揺動方向が変化する場合でも振動を抑制することができる。
【0054】
図13a、図13bに示す伸縮アーム62は、図1、図2の搬送装置10の第2アーム13に相当するもので、伸縮機構を設けている。この伸縮アーム62は、第1アーム12に回動自在に取り付けられる角筒状のアームホルダ63と、そのアームホルダに対して摺動自在に収容される摺動アーム64とを備えている。アームホルダ63を第2アームと考えれば、摺動アーム64は第2アームに対して摺動自在に設けられる第3アームとなる。図15に示すように、アームホルダ63の上端の裏面側に、第1アーム12の第2ピニオン17の軸17aが固定される。
【0055】
また、図13bに示すように、アームホルダ63の側面には開口65が形成されており、摺動アーム64の側面に固定されるナットホルダ66がその開口65から突出している。なお、図13bでは理解しやすいように、ナットホルダ66は省略している。アームホルダ63の側面には、上下のブラケット67、68が取り付けられ、それらのブラケット67、68がスクリューシャフト69を回転自在に支持している。スクリューシャフト69の上端は、第4モータM4の出力軸と連結されている。ナットホルダ66には、そのスクリューシャフト69と螺合するナット70が固定されている。図13bではスクリューシャフト69や第4モータM4なども省略している。
【0056】
このように構成される伸縮アーム62は、第4モータM4が一方向に回転するとスクリューシャフト69が回転し、そのスクリューシャフトと螺合しているナット70が取り付けられている摺動アーム64が下降し、先端がアームホルダ63の下端からさらに突出するように移動する。それにより伸縮アーム62が伸びる。ただしこの実施形態ではアームホルダ63の上端から摺動アーム64の上部が常時突出しているので、ここでいう「伸びる」とは、アームホルダ63の回動中心(第2軸J2)と摺動アーム64の先端との間の距離の意味であり、実質的な伸縮アーム62全体の長さ(摺動アーム64の長さ)は変わらない。第4モータM4が逆方向に回転すると、摺動アーム64が上昇し、その先端が引っ込む方向に移動する。それにより伸縮アーム62が縮む。
【0057】
図13aの符号71は、摺動アーム64の重量をキャンセルするため、摺動アーム64を上向きに付勢するバランスシリンダである。スプリングを採用することもできる。スクリューシャフト69およびナット70としては、摩擦力を低減するため、ボールネジおよびボールナットを採用するのが好ましい。アームホルダ63と摺動アーム64の摺動部分の構造は、図14aに示すように、アームホルダ63に固定したリニアモーションベアリング(リニアボールベアリング)72と、摺動アーム64に固定したリニアモーションレール(LMレール)73とによって構成するのが好ましい。この場合、回転方向のトルクを受けるため、2本のリニアモーションレール73を採用している。
【0058】
図14a〜bの伸縮アーム62では、図6aなどのハンド14を平行に維持する平行移動機構24や、第1アーム12側から駆動するチルト機構を設けることができないため、図14bに示すように摺動アーム64に独立したチルト機構74を設けている。このチルト機構74は、摺動アーム64の上端および下端に回転自在に設けた第1ギヤ75および第2ギヤ76と、第1ギヤ75と第2ギヤ76の間でトルク伝達するトルク伝達機構77と、第1ギヤ75を回転駆動する第5モータ(図13bの符号M5)と、第2ギヤ76と連結されるハンドホルダ78とからなる。
【0059】
前記トルク伝達機構77は、第1ギヤ75と噛み合う半円状のセクタギヤ79と、第2ギヤ76と噛み合うセクタギヤ80と、それらのセクタギヤ79、80同士を連結するリンク81とからなる。ただしプーリとベルト、とくにタイミングプーリとタイミングベルト、あるいはスプロケットとチェーンなど、他のトルク伝達機構を採用することもできる。また、第4モータM4および第5モータM5は、軽量化のため、エアモータあるいは油圧モータなど、流体モータを採用することもできる。
【0060】
上記のように構成されるチルト機構74は、第5モータM5が一方向に回転すると、第1ギヤ75、トルク伝達機構77,第2ギヤ76を介してハンドホルダ78が回動してバキュームカップを保持するハンド14の傾きを制御することができる。第5モータM5の制御は、伸縮アーム62の角度、すなわちアームホルダ63の傾きに合わせて常時ハンド14の傾きを水平に保持するために使用するほか、金型やプレス機械との干渉を避けるために、ハンド14を傾けるために使用することができる。
【0061】
図15および図16に示す搬送装置82は、図1とほぼ同様の、基台に対して第1軸J1回りに回動自在に設けた第1アーム12と、その第1アーム12の先端に第2軸J2回りに回動自在に設けた伸縮アーム62とを備えている。伸縮アーム62の長さは自由に伸縮するので、図1の搬送装置10の場合のように、第1アーム12と伸縮アーム62の長さの比率、および第1ピニオン16と第2ピニオン17の直径の比率はそれほど重要でない。そのため、たとえば伸縮アーム62が縮んでいるときの長さL3(第2軸J2とハンドホルダの回動軸J3の距離)を第1アーム長さL1と同一とし、第1ピニオン(第1セクタギヤ)16の直径と第2ピニオン17の直径の比率を2:1にすることもできる。また、図16に示すように、伸縮アーム62の長さL3を第1アーム12の長さL1より常時長くしてもよい。さらに通常は短くしておき、必要なときに伸ばすようにしてもよい。その場合は瞬間的に第1アーム12の長さL1と同一長さの状態を経由するが、基本的には異なる長さである。
【0062】
図15、図16の搬送装置82においても、図1および図2の場合と同様に、第1ピニオン16と第2ピニオン17を左右一対のラックでトルク伝達させることができる。図16では、第1ピニオン16と第1アーム12の上部に設けた同径の中間ピニオン52とを図示しない左右一対のラックで連結し、左右一対のアイドルギヤ54、55を介して中間ピニオン52とアームホルダ63に固定した第2ピニオン17とを連結している。ラックおよびアイドルギヤ54、55を左右一対で設けるのは、バックラッシュをゼロにするためである。
【0063】
上記のように構成される搬送装置82は、たとえば図16に示すように、第1アーム12が中央の基準位置にあるときは伸縮アーム62を縮めておき、上流側のプレス機械にワークを取りに行くときに(図16の左側)、伸縮アーム62を伸ばす。そしてワークを取り出した後、基準位置を通るときに伸縮アーム62を縮め、下流側のプレス機械にワークを置きに行くとき(図16の右側)、再び伸縮アーム62を伸ばす。そして基準位置に戻るときに、伸縮アーム62を縮める。それにより、想像線で示す上流側および下流側のプレス機械の金型に対し、上方から接近することができ、上方に離脱することができる。そのため、金型からのワークの取り出しおよび金型へのワークの供給がスムーズになる。金型の近くに突起などの障害物がある場合は、図16の符号83で示すように、ハンド14の移動の軌跡を部分的に上昇させて、障害物を越えさせることもできる。とくにワークを保持している状態では、ワークが金型などと干渉しないように、ハンド14の移動軌跡を選択する。
【0064】
第1アーム12を回動させる第1モータM1と、摺動アーム64を移動させる第4モータM4とは、上記の2次元軌跡を実現するように、コンピュータで制御する。また、図14bのチルト機構74の第5モータM5の回転も第1アーム12の回動と電気的に同調するように制御する。ただし搬送の基本的な運動は第1アーム12の第1軸J1回りの回動と、第1アーム12と機械的に連結されているアームホルダ63の第2軸J2回りの回動に基づくので、摺動アーム64の移動量は少なくて済む。そのため、特許文献6の搬送装置に比して、ワークを迅速に、かつ、安全に搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の搬送装置の一実施形態を示す側面断面図である。
【図2】図2aおよび図2bはそれぞれその搬送装置の簡略化した正面図および作動状態を示す正面図である。
【図3】図1のアームの作動状態を示すスケルトン図である。
【図4】図2aの状態から第2アームのみを回動させた状態を示す正面図である。
【図5】図4の状態からのアームの作動状態を示すスケルトン図である。
【図6】図6aは本発明に関わるチルト機構の一実施形態を示す正面図、図6bおよび図6cはそのチルト機構の作動状態説明図である、
【図7】図7aは本発明に関わるチルト機構の他の実施形態を示す正面図、図7bおよび図7cはそのチルト機構の作動状態説明図である。
【図8】本発明の大型搬送装置の一実施形態を示す正面図である。
【図9】図8の大型搬送装置の平面図である。
【図10】図8の大型搬送装置の側面図である。
【図11】図11a、図11bおよび図11cはそれぞれ本発明に関わる第1アームの動力伝達機構の他の実施形態を示す概略説明図である。
【図12】図12aおよび図12bはそれぞれ本発明に関わる第1アームの動力伝達機構のさらに他の実施形態を示す概略説明図である。
【図13】図13aおよび図13bは本発明の搬送装置に関わる伸縮アームの実施形態を示す正面図および側面図である。
【図14】図14aはその伸縮アームの背面図、図14bはその伸縮アームの第3アームの内部構造を示す正面図である。
【図15】図13aの伸縮アームを備えた搬送装置の実施形態を示す正面図である。
【図16】図15の搬送装置の作動状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0066】
10 搬送装置
11 基台
12 第1アーム
13 第2アーム
14 ハンド
M1 第1モータ
J1 第1軸
J2 第2軸
15 同調回動機構
16 第1ピニオン
17 第2ピニオン
18 ラック(左)
18a 歯
19 ラック(右)
19a 歯
20 第2アーム角度調整機構
M2 第2モータ
L1 第1アームの長さ
L2 第2アームの長さ
D1 第1ピニオンの直径
D2 第2ピニオンの直径
K 基準線
22 床面
K2 鉛直線
P 搬送ライン
24 平行移動機構
25 チルト機構
26 第1ギヤ
27 トルク伝達機構
28 第2ギヤ
29、30 軸
31、32 セクタギヤ
33 リンク
34 軸
35 第1タイミングプーリ
36 第2タイミングプーリ
37 タイミングベルト
M3 第3モータ
38 駆動ギヤ
40 大型搬送装置
41 搬送ビーム
42 出力軸
43 駆動ギヤ
44 従動ギヤ
45 ギヤ列
46、47 プーリ
48 ベルト
50 第1アーム
51 バネ
52 中間ピニオン
53 機構
54、55 アイドルギヤ
56 バネ
57 機構
58 従動ギヤ
59 駆動ギヤ
60、61 中間ピニオン
60a、61a 大径ギヤ
60b、61b 小径ギヤ
62 伸縮アーム
63 アームホルダ
64 摺動アーム
65 開口
66 ナットホルダ
67、68 ブラケット
69 スクリューシャフト
M4 第4モータ
70 ナット
71 バランスシリンダ
72 リニアモーションベアリング
73 リニアモーションレール
74 チルト機構
75 第1ギヤ
76 第2ギヤ
77 トルク伝達機構
M5 第5モータ
78 ハンドホルダ
79、80 セクタギヤ
81 リンク
82 搬送装置
83 ハンドの移動軌跡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、
その基台に対して基端が第1軸まわりに回動自在に設けられる第1アームと、
その第1アームの先端に、基端が前記第1軸と平行の第2軸回りに回動自在に設けられる、前記第1アームと長さが異なる第2アームと、
前記第2アームの先端に取り付けられるハンドと、
前記第1アームを基台に対して往復揺動駆動する駆動手段と、
前記基台に、前記第1軸と同心状に固定される第1円板と、
前記第2アームの基端に、前記第2軸と同心状に固定される第2円板と、
前記第1円板と第2円板の外周の間に介在され、第1アームの回動に伴って第2アームを同調して回動させるトルク伝達手段とを備え、
前記第1円板と第2円板の径の比率が、前記第1アームの回動に伴って同調して回動する第2アームの先端が略直線状に移動するように定められている搬送装置。
【請求項2】
前記第1円板の固定角度を調節する第2アームの角度調節機構を備えている請求項1記載の搬送装置。
【請求項3】
前記第1アームの回動に関わらず、前記ハンドを静止座標に対して常時所定の角度に維持する平行移動機構を備えている請求項1記載の搬送装置。
【請求項4】
基台と、
その基台に対して基端が第1軸まわりに回動自在に設けられる第1アームと、
その第1アームの先端に、基端が前記第1軸と平行の第2軸回りに回動自在に設けられる第2アームと、
その第2アームの先端から突出し、第2アームに対して直線運動を行う第3アームと、
その第3アームの先端に取り付けられるハンドと、
前記第1アームを基台に対して往復揺動駆動する駆動手段と、
前記基台に、前記第1軸と同心状に固定される第1円板と、
前記第2アームの基端に、前記第2軸と同心状に固定される第2円板と、
前記第1円板と第2円板の外周の間に介在され、第1アームの回動に伴って第2アームを同調して回動させるトルク伝達手段と、
第3アームを伸縮駆動する伸縮駆動手段と、
前記第1アームの回動に伴って第3アームの先端が略直線状に移動するように制御する制御手段とを備えている搬送装置。
【請求項5】
前記ハンドを第2アームに対して回動させるチルト機構を備えている請求項1または4記載の搬送装置。
【請求項6】
前記第1円板および第2円板がピニオンであり、前記トルク伝達手段がそれらのピニオンと噛み合うラックを備えている請求項1または3記載の搬送装置。
【請求項7】
前記ラックが第1軸と第2軸を結ぶ線の両側に左右一対で配置され、かつ、少なくとも一方のピニオンが他方のピニオンとの距離の変化を許容するように設けられると共に、前記一方のピニオンが他方のピニオンから離れる方向または近づく方向に付勢されている請求項6記載の搬送装置。
【請求項8】
加工機械の左右に一対で配置される請求項1または3に記載の搬送装置と、
それらの搬送装置のハンド同士を連結するビームと、そのビームに設けられるワーク保持手段とを備え、
前記左右の搬送装置の第1軸同士および第2軸同士がそれぞれ同軸に配置されると共に、第1軸および第2軸がワークの搬送方向に対して直角に、かつ水平方向に延びており、左右の駆動手段同士が同調して作動するように構成されている大型搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−119580(P2009−119580A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−298713(P2007−298713)
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【出願人】(000100861)アイダエンジニアリング株式会社 (153)
【Fターム(参考)】